生体高分子分析支援装置及びその制御方法
【課題】 DNAを効率よく分布させることができる生体高分子分析支援装置を提供すること。
【解決手段】 生体高分子分析支援装置1のフォトセンサアレイ3は、絶縁基板17と、絶縁基板17上に互いに平行となるよう配列された複数のボトムゲートライン41と、各ボトムゲートライン41の上において配列された複数の半導体膜23と、半導体膜23を挟んで各ボトムゲートライン41に対向した複数のトップゲートライン44と、トップゲートライン44を被覆した保護絶縁膜31と、を有する。フォトセンサアレイ3の受光面には複数種のスポット60が点在している。ターゲット移動モードでは、トップゲートドライバ74がトップゲートライン44に正電圧を印加する。
【解決手段】 生体高分子分析支援装置1のフォトセンサアレイ3は、絶縁基板17と、絶縁基板17上に互いに平行となるよう配列された複数のボトムゲートライン41と、各ボトムゲートライン41の上において配列された複数の半導体膜23と、半導体膜23を挟んで各ボトムゲートライン41に対向した複数のトップゲートライン44と、トップゲートライン44を被覆した保護絶縁膜31と、を有する。フォトセンサアレイ3の受光面には複数種のスポット60が点在している。ターゲット移動モードでは、トップゲートドライバ74がトップゲートライン44に正電圧を印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子の構造を特定するために用いる生体高分子分析支援装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野、農業分野等の幅広い分野で生物の遺伝子情報が利用されるようになってきているが、遺伝子の利用に際しては、DNAの構造解明が不可欠である。DNAは螺旋状によじれあった2本のポリヌクレオチド鎖を有し、それぞれのポリヌクレオチド鎖は4種の塩基(アデニン:A、グアニン:G、シトシン:C、チミン:T)が一次元的に並んだ塩基配列を有し、アデニンとチミン、グアニンとシトシンという相補性に基づいて一方のポリヌクレオチド鎖の塩基が他方のポリヌクレオチド鎖の塩基に結合している。
【0003】
DNAの構造解明とは、塩基配列を特定することであり、DNAの塩基配列を特定するためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されており(特許文献1)、DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いて次のようにしてサンプルDNAの塩基配列を特定する。
【0004】
まず、既知の塩基配列を有した複数種類のcDNAをスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、被検出物であるサンプルDNAを一本鎖のDNAに変性して、変性したサンプルDNAに蛍光物質等を結合させる。
【0005】
次に、サンプルDNAをDNAマイクロアレイ上に塗布すると、サンプルDNAがハイブリダイゼーションによってDNAマイクロアレイ上に固定される。つまり、サンプルDNAが複数種類のcDNAのうち相補的なcDNAと結合して、二本鎖が生じる。一方、サンプルDNAは、相補性を有しないcDNAとは結合しない。サンプルDNAに蛍光物質でマーキングを施しているため、サンプルDNAと結合したcDNAが蛍光を発することになる。例えば、TCGGGAAの塩基配列を有するサンプルDNAは、AGCCCTTの塩基配列を有するcDNAと結合し、そのcDNAが蛍光を発する。
【0006】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、光源から発した励起光をコリメーターレンズによりビームとして収束し、ビームでDNAマイクロアレイを二次元走査し、集光レンズ及びフォトマルをビームの二次元走査に追従させ、ビームにより発した蛍光を集光レンズでフォトマルに集光させ、蛍光強度をフォトマルで計測し、二次元走査によってDNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測するようになっている。これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、サンプルDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したcDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによってサンプルDNAの塩基配列を特定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来のDNAマイクロアレイを用いてDNAを分析するには、少量のDNAを効率よくDNAマイクロアレイ上に分布させなければならないといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、DNAを効率よく分布させることができる生体高分子分析支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明の生体高分子分析支援装置は、
絶縁基板と、前記絶縁基板上に配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに沿って設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加するトップゲートドライバと、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の生体高分子分析支援装置の制御方法は、
絶縁基板と、前記絶縁基板上に互いに平行となるよう配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに対して平行に設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、を有する生体高分子分析支援装置を制御する方法であって、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
以上の生体高分子分析支援装置を用いる際には、蛍光標識されたサンプルを含む溶液をフォトセンサアレイの保護絶縁膜上に散布する。そして、トップゲートドライバによって正電圧が複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに印加されると、溶液中のサンプルが移動して、サンプルが保護絶縁膜上のスポットに濃縮される。そのため、サンプルが特異的な(例えば、相補的な)スポットには結合しやすくなる。一方、特異的でないスポットには結合しない。その後、フォトセンサアレイが撮像動作をする。ここで、フォトセンサアレイに向けて励起光を照射した状態でフォトセンサアレイで撮像を行えば、サンプルに結合したスポットの部分では蛍光により明るくなり、サンプルに結合していないスポットの部分では暗くなる。
【0012】
このように、フォトセンサアレイを構成する部材を利用して効率よく未知の生体高分子(サンプル)を誘引することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォトセンサアレイを構成する部材を利用して効率よく未知の生体高分子を誘引することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
〔1〕生体高分子分析支援装置の全体構成
図1は、生体高分子分析支援装置1のブロック図であり、図2は、フォトセンサアレイ3及びその周辺回路の回路図であり、図3は、フォトセンサアレイ3の概略平面図であり、図4は、図3に示された切断面IV−IVの矢視断面図である。
【0016】
図1〜図4に示すように、生体高分子分析支援装置1は、大別して、複数のフォトセンサ20,20,…を二次元配列して構成されるフォトセンサアレイ3と、フォトセンサアレイ3の受光面に二次元配列された複数のスポット60,60,…と、フォトセンサアレイ3を互いに協働して駆動するトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、フォトセンサアレイ3の受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置72と、励起光照射装置72、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御するコントローラ73と、ドレインドライバ76から入力した信号をA/D変換してコントローラ73に出力するA/Dコンバータ78と、コントローラ73から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置77と、から構成されている。
【0017】
〔2〕フォトセンサアレイ
図3〜図6を用いてフォトセンサアレイ3について詳細に説明する。ここで、図5は、フォトセンサ20の電極構造を示した平面図であり、図6は、フォトセンサ20の断面図である。
【0018】
図3〜図6に示すように、フォトセンサアレイ3は、絶縁基板17と、絶縁基板17上に互いに平行となるよう配列されたのボトムゲートライン41,41,…と、これらボトムゲートライン41,41,…を被覆したボトムゲート絶縁膜22と、ボトムゲート絶縁膜22上において各ボトムゲートライン41に沿って配列された感光性の半導体膜23,23,…と、ボトムゲート絶縁膜22上において平面視してボトムゲートライン41に対して垂直になるよう配列されたソースライン42,42,…と、ボトムゲート絶縁膜22上においてソースライン42,42,…と交互に配列されたドレインライン43,43,…と、ソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…を被覆したトップゲート絶縁膜29と、トップゲート絶縁膜29上において各ボトムゲートライン41に沿うように平行に設けられ、平面視して各ボトムゲートライン41に重なるように対向して配置されたトップゲートライン44,44,…と、トップゲートライン44,44,…を被覆した保護絶縁膜31と、を備える。
【0019】
絶縁基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0020】
ボトムゲート絶縁膜22上においては、半導体膜23,23,…がn行m列のマトリクス状に配列され、これによりフォトセンサ20,20,…がn行m列のマトリクス状に配列されている。ここで、n、mはともに2以上の自然数であり、ボトムゲートライン41の本数及びトップゲートライン44の本数はそれぞれn本となり、ソースライン42の本数とドレインライン43の本数はそれぞれm本となる。なお、以下では、ボトムゲートライン41及びトップゲートライン44の長手方向によって”行”を定義し、ボトムゲートライン41及びトップゲートライン44の長手方向を行方向という。また、ソースライン42及びドレインライン43の長手方向によって”列”を定義し、ソースライン42及びドレインライン43の長手方向を列方向という。
【0021】
図3及び図5に示すように、ボトムゲートライン41は各半導体膜23に重なる箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のボトムゲート21になる。トップゲートライン44も各半導体膜23に重なる箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のトップゲート30になる。ソースライン42は平面視して各ボトムゲートライン41と交差する箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のソース27になる。ドレインライン43も各ボトムゲートライン41と交差する箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のドレイン28になる。
【0022】
フォトセンサ20は、ダブルゲートトランジスタ型の光電変換素子である。図4〜図5に示すように、フォトセンサ20は、絶縁基板17上に形成されたボトムゲート21と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んでボトムゲート21に対向した半導体膜23と、半導体膜23の中央部上に形成されたチャネル保護膜24と、半導体膜23の両端部上に互いに離間して形成された不純物半導体膜25,26と、不純物半導体膜25上に形成されたソース27と、不純物半導体膜26上に形成されたドレイン28と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23に対向したトップゲート30と、を備えて構成される。
【0023】
ボトムゲート21は、フォトセンサ20ごとに絶縁基板17上に形成されている。行方向に配列された同じ行のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのボトムゲート21は共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0024】
ボトムゲート絶縁膜22は、全てのフォトセンサ20,20,…に共通してべた一面に成膜されており、フォトセンサ20,20,…のボトムゲート21及びボトムゲートライン41,41,…をまとめて被覆している。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0025】
ボトムゲート絶縁膜22上には、半導体膜23がフォトセンサ20ごとに形成されている。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
【0026】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、フォトセンサ20ごとにパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0027】
不純物半導体膜25上には、フォトセンサ20ごとにパターニングされたソース27が形成されている。不純物半導体膜26上には、フォトセンサ20ごとにパターニングされたドレイン28が形成されている。列方向に配列された同じ列のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのソース27は共通のソースライン42と一体に形成されており、列方向に配列された同じ列のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのドレイン28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース27、ドレイン28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0028】
トップゲート絶縁膜29は、全てのフォトセンサ20,20,…に共通してべた一面に成膜されており、フォトセンサ20,20,…のチャネル保護膜24、ソース27及びドレイン28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…をまとめて被覆している。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0029】
トップゲート絶縁膜29上には、フォトセンサ20ごとにパターニングされたトップゲート30が形成されている。行方向に配列された同じ行のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのトップゲート30は共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート30及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0030】
フォトセンサ20,20,…のトップゲート30及びトップゲートライン44,44,…は、べた一面に成膜された保護絶縁膜31によってまとめて被覆されている。保護絶縁膜31は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0031】
以上のように構成されたフォトセンサアレイ3は、保護絶縁膜31の表面を受光面としており、それぞれのフォトセンサ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換する。
【0032】
なお、保護絶縁膜31の表面に、励起光を遮蔽するとともに可視光を透過する励起光遮蔽膜を成膜しても良い。励起光遮蔽膜は例えばTiO2からなり、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものである。
【0033】
〔3〕スポット
次に、スポット60について説明する。図3、図4、図6に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、マトリクス状となってフォトセンサアレイ3の受光面上に配列されている。1つのスポット60は一本鎖のプローブDNA61が多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数のプローブDNA61は同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとにプローブDNA61の塩基配列が異なる配列となっている。DNAを構成するポリヌクレオチド核酸のような塩基は、相補的な塩基配列のみの高分子としか螺旋結合つまりハイブリダイゼーションしないので、各スポット60のプローブDNA61は、それぞれ個体情報に応じたハイブリダイゼーション特性を有している。何れのスポット60も、塩基配列が既知のものである。なお、プローブDNA61は、表面コート材32によってフォトセンサアレイ3の受光面に点着されている。
【0034】
1つのスポット60につき1つのフォトセンサ20が重なるように、スポット60,60,…が配列されている。なお、1つのスポット60につき隣り合う幾つかのフォトセンサ20,20,…が重なっても良いが、この場合には何れのスポット60でも重なったフォトセンサ20の数が同じである。
【0035】
〔4〕フォトセンサアレイの駆動回路及びコントローラ
図1、図2に示すように、フォトセンサアレイ3は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76によって駆動される。
【0036】
トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…に接続され、ボトムゲートドライバ75はボトムゲートライン41,41,…に接続されている。ドレインドライバ76はコラムスイッチ81と、プリチャージスイッチ82と、アンプ83とから構成され、コラムスイッチ81がドレインライン43,43,…に接続されている。
【0037】
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に対して、フォトセンサアレイ3が着脱可能に設けられている。フォトセンサアレイ3がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に取り付けられた場合、ソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、具体的にはソースライン42,42,…が±0〔V〕の接地に接続される。
【0038】
また、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、コントローラ73によって制御される。ここで、図7は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びコントローラ73から出力される信号のタイミングチャートである。
【0039】
図1、図2、図7等に示された制御信号φchmは、コントローラ73からトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75に出力される信号であり、制御信号φtgは、コントローラ73からトップゲートドライバ74に出力される信号であり、制御信号φtbは、コントローラ73からボトムゲートドライバ75に出力される信号であり、制御信号φpgは、コントローラ73からドレインドライバ76のプリチャージスイッチ82に出力される信号である。コントローラ73は、ハイレベルのパルスとして制御信号φchmをトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75に出力することによってトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75をターゲット移動モードM1で動作させる。
【0040】
コントローラ73は、制御信号φtgをトップゲートドライバ74に出力することによってトップゲートドライバ74をターゲット移動モードM1後のセンサ検出モードM2で動作させる。また、コントローラ73は、制御信号φbgをボトムゲートドライバ75に出力することによってボトムゲートドライバ75をセンサ検出モードM2で動作させる。ここで、コントローラ73は、制御信号φchm、制御信号φtg及び制御信号φbgを出力する。
【0041】
図2、図7において、信号φT1〜φTnは、トップゲートドライバ74によって各トップゲートライン44に出力される信号である。信号φT1〜φTnに付された数字は、トップゲートライン44の行番号を表す。つまり、例えば第一行のトップゲートライン44への出力電圧は信号φT1となり、第二行のトップゲートライン44への出力電圧は信号φT2となる。信号φB1〜φBnは、ボトムゲートドライバ75によって各ボトムゲートライン41に出力される信号である。信号φB1〜φBnに付された数字は、ボトムゲートライン41の行番号を表す。
トップゲートドライバ74は、ターゲット移動モードM1のうちの所定期間、入力された制御信号φchmをスイッチングするスイッチを選択して取り込むとともに、入力された制御信号φtgをスイッチングするスイッチを非選択(ハイインピーダンス状態)にして取り込まず、ターゲット移動モードM1のうちの所定期間、所定のトップゲートライン44に制御信号φchmを出力するように設定されている。その後、トップゲートドライバ74は、センサ検出モードM2の間、入力された制御信号φchmをスイッチングするスイッチを非選択(ハイインピーダンス状態)にして取り込まず、入力された制御信号φtgをスイッチングするスイッチを選択して取り込んで各トップゲートライン44に制御信号φtgのシフトパルス(リセットパルス)を順次出力するよう設定されている。
【0042】
具体的には、図2、図7に示すように、制御信号φchmを入力したトップゲートドライバ74は、ターゲット移動モードM1において、±0〔V〕を越えたハイレベルのパルス電圧(図7では、一例として+15〔V〕である。)をトップゲートライン44,44,…のうちの少なくとも一本に対して印加する。勿論、パルス電圧を全てのトップゲートライン44,44,…に対して印加しても良い。
【0043】
制御信号φtgを適宜取り込んだトップゲートドライバ74は、±0〔V〕を越えたハイレベルのリセットパルスφT1〜φTn(図7では、一例として+15〔V〕である。)をトップゲートライン44,44,…に印加する。信号φT1〜φTnがそれぞれローレベルの時には、第一行〜第n行のトップゲートライン44,44,…はそれぞれ−15〔V〕になっている。
【0044】
制御信号φbgを適宜取り込んだボトムゲートドライバ75は、ハイレベルのリードパルスφB1〜φBnをボトムゲートライン41,41,…に印加する。信号φB1〜φBnがそれぞれローレベルの時には、第一行〜第n行のボトムゲートライン41,41,…はそれぞれ±0〔V〕になっている。
【0045】
リセットパルスとリードパルスのタイミングについて、図7及び図8を用いて説明する。ここで、図8は、センサ検出モードM2において、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にハイレベルのリセットパルスを印加してからボトムゲートドライバ75が(i+1)行目のボトムゲートライン41にハイレベルのリードパルスを印加するまでの間のトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76によって出力される信号のタイミングチャートである。なお、iとは、1〜nのうちの任意の数である。
【0046】
図7及び図8に示すように、トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にハイレベルのリセットパルスを印加した後に所定時間を経てボトムゲートドライバ75が同じ行のボトムゲートライン41にハイレベルのリードパルスを印加するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75が出力信号をシフトする。つまり、各行では、ハイレベルのリードパルスが出力されるタイミングは、ハイレベルのリセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。
【0047】
図8において、リセット時間Tresetは、ハイレベルのリセットパルスが印加されている時間であり、読み出し時間Treadは、ハイレベルのリードパルスが印加されている時間であり、蓄電時間Teは、ハイレベルのリセットパルスの印加終了時からハイレベルのリードパルスの印加開始時までの時間である。
【0048】
図8に示すように、制御信号φpgは、センサ検出モードM2において何れの行の蓄電時間Teの間にハイレベルになる振幅信号である。制御信号φpgがハイレベルになることによってプリチャージスイッチ82がオンになり、プリチャージ電圧Vpgが全てのドレインライン43,43,…に印加される。制御信号φpgがローレベルの場合には、プリチャージスイッチ82がオフであるから、何れのドレインライン43,43,…にもプリチャージ電圧Vpgが印加されない。図8において、プリチャージ時間Tprchは、制御信号φpgがハイレベルになっている時間である。
【0049】
コラムスイッチ81はプリチャージ電圧Vpgの印加後にドレインライン43,43,…の電圧を列順次にアンプ83に出力する。アンプによって増幅された電圧がA/Dコンバータ78によってデジタルの画像信号に変換され、そのA/D変換された画像信号がコントローラ73に入力される。
【0050】
コントローラ73は励起光照射装置72を点灯させる機能を有する。また、コントローラ73は、制御信号φchmを出力することによってトップゲートドライバ74をターゲット移動モードM1で動作させ、フォトセンサアレイ3によってDNAの移動を行わせる機能を有する。
【0051】
また、コントローラ73は、制御信号φtg、制御信号φbg、制御信号φpgを出力することによってトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をセンサ検出モードM2で動作させ、フォトセンサアレイ3の撮像動作を行わせる機能を有する。これにより、コントローラ73はドレインドライバ76からA/Dコンバータ78を通じて入力した画像信号を入力することによって、フォトセンサアレイ3の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。
【0052】
また、コントローラ73は入力した二次元の画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。
【0053】
出力装置77はプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0054】
〔5〕DNA分析方法、生体高分子分析支援装置の制御方法、生体高分子分析支援装置の動作
【0055】
次に、生体高分子分析支援装置1を用いてDNAの塩基配列を分析する方法について説明する。
【0056】
まず、作業者が検体からDNAを採取して、採取した二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性してから場合によってPCR増幅を行い、得られた一本鎖DNAに蛍光物質、燐光材料又は光共鳴散乱物質を結合させ、一本鎖DNAを蛍光物質、燐光材料又は光共鳴散乱物質で標識する。蛍光物質、燐光材料又は光共鳴散乱物質は、生体高分子分析支援装置1の励起光照射装置72から出射される励起光で励起されるものを選択するが、蛍光物質としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られた一本鎖DNAは、溶液中に含まれている。以下では、この一本鎖DNAをサンプルDNAという。
【0057】
フォトセンサアレイ3をセッティングし、フォトセンサアレイ3をトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に接続し、励起光照射装置72をフォトセンサアレイ3の受光面に対向させる。
【0058】
次いで、サンプルDNAを含有した溶液をフォトセンサアレイ3の受光面に塗布する。このとき、一本鎖が二本鎖とならないようにサンプルDNAを含有した溶液を加熱する。
【0059】
次いで、コントローラ73を起動させると、コントローラ73がトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75に制御信号φchmを出力する。すると、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75がターゲット移動モードM1で動作する。即ち、図7に示すように、トップゲートドライバ74がハイレベルのパルス電圧をトップゲートライン44,44,…のうちの少なくとも一本に対して所定時間だけ印加する。
【0060】
ターゲット移動モードM1におけるサンプルDNA99の動きを図9〜図11の模式図を用いて説明する。図9に示すように、トップゲートライン44,44,…にハイレベルのパルスが印加されていない場合には、サンプルDNA99がフォトセンサアレイ3の受光面上の溶液中において浮遊している。その後、図10に示すように、ハイレベルのパルス電圧がトップゲートライン44,44,…のうちの少なくとも一本に対して印加されるので、それらの行のフォトセンサ20においてはトップゲート30に正電圧が印加される。これにより、浮遊したサンプルDNA99がそのフォトセンサ20に対応したスポット60に密集するように泳動する。従って、正電圧が印加されたトップゲートライン44の行に対応するスポット60の周辺では、サンプルDNA99の濃度が濃縮する。そのため、サンプルDNA99がそのスポット60のプローブDNA61に短時間でハイブリダイゼーションしやくなる。
【0061】
ハイレベルのパルス電圧がトップゲートドライバ74によって印加されている時には、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なものがある場合には、サンプルDNA99が相補的なスポット60のプローブDNA61とハイブリダイゼーションにより結合する。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNA99と相補的なものがなければ、サンプルDNAはどのスポット60,60,…にも結合しない。
【0062】
トップゲートドライバ74によるパルス電圧が終了すると、密集したサンプルDNA999が解離して、溶液中に浮遊する。
【0063】
その後、フォトセンサアレイ3の受光面に塗布したサンプルDNAのうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す際に除去され、ハイブリダイゼーションしたものは、フォトセンサアレイ3上に残存する。
【0064】
その後、コントローラ73が励起光照射装置72を制御して励起光照射装置72を点灯させると、励起光照射装置72からフォトセンサアレイ3の受光面に向けて励起光が出射する。
【0065】
サンプルDNAが標識されているので、スポット60,60,…のうちサンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60からは蛍光(主に可視光波長域)が発し、サンプルDNAと結合しなかったスポット60からは蛍光が発しない。そのため、サンプルDNAと結合したスポット60に対応したフォトセンサ20には高強度の蛍光が入射し、サンプルDNAと結合していないスポット60に対応したフォトセンサ20には殆ど蛍光が入射しない。フォトセンサアレイ3の受光面にスポット60,60,…が固定されているため、サンプルDNAと結合したスポット60から発した蛍光はあまり減衰せずに、そのスポット60に対応したフォトセンサ20に入射して電子−正孔対を発生させる。従って、フォトセンサ20,20,…の感度が低くても、十分に強度を検知することができる。なお、サンプルDNAに燐光材料を結合させた場合、励起光照射装置72が消灯しても、サンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60からは燐光(主に可視光波長域)が発し続ける。
【0066】
その後(ハイレベルのパルス電圧が終了してから所定時間経過後)、蛍光物質又は光共鳴散乱物質をサンプルDNAに結合した場合には励起光照射装置72が点灯した状態で、燐光材料をサンプルDNAに結合した場合には励起光照射装置72が点灯後に消灯した状態で、コントローラ73がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75、ドレインドライバ76に制御信号φtg、制御信号φbg、制御信号φpgをそれぞれ出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75、ドレインドライバ76がフォトセンサアレイ3をセンサ検出モードM2で駆動する。
【0067】
センサ検出モードM2においては、図7に示すように、トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から行順次にトップゲートライン44,44,…に対してリセットパルスを印加する。これにより、トップゲートドライバ74がトップゲートライン44,44,…を走査する。また、ボトムゲートドライバ75が1行目のボトムゲートライン41から行順次にボトムゲートライン41,41,41,…に対してリードパルスを印加する。これにより、ボトムゲートドライバ75がボトムゲートライン41,41,41,…を走査する。なお、トップゲートドライバ74による走査の周波数はボトムゲートドライバ75による走査の周波数と同じであるが、ボトムゲートドライバ75による走査の周期はトップゲートドライバ74による走査の周期よりも遅れている。
【0068】
走査中の各行のプリチャージ時間Tprch中においては、ドレインドライバ76のプリチャージスイッチ82に入力される制御信号φpgがハイレベルになるので、各行のプリチャージ時間Tprch中には、プリチャージ電圧Vpgが全てのドレインライン43,43,…に印加される。
【0069】
i行目の各フォトセンサ20の動作について詳細に説明する。図8に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを印加する。そのi行目のリセット時間Tresetにおいては、i行目の各フォトセンサ20の半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート30の電圧により反発して吐出される。
【0070】
i行目のトップゲートライン44に印加されたリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが印加されるまでの蓄電時間Teでは、入射光の光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0071】
次に、蓄電時間Teの後半のプリチャージ時間Tprch中に、ドレインドライバ76が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージ電圧Vpgを印加する。プリチャージ時間Tprchでは、i行目の各フォトセンサ20のトップゲート30の電圧が負電圧(−15〔V〕)であり、ボトムゲート21の電圧が±0〔V〕であるため、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔の電荷だけではゲート−ソース間電圧が低いので半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン28とソース27との間に電流は流れない。プリチャージ時間Tprchにおいてドレイン28とソース27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に印加されたプリチャージ電圧Vpgによってi行目の各フォトセンサ20のドレイン28に電荷がチャージされる。
【0072】
次に、ドレインドライバ76によるプリチャージ電圧Vpgの印加が終了し、ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを印加する。ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを印加している読み出し時間Treadでは、i行目の各フォトセンサ20のボトムゲート21の電圧が正電圧(+10〔V〕)であるため、i行目の各フォトセンサ20がオン状態になる。
【0073】
読み出し時間Treadにおいては、蓄電時間Teにおいて蓄積されたキャリアがトップゲート30の負電界を緩和するように働くため、ボトムゲート21の正電界により半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン28からソース27に電流が流れるようになる。従って、読み出し時間Treadでは、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0074】
ここで、蓄電時間Teにおいて半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、読み出し時間Treadにおいてドレイン28からソース27に流れる電流も大きくなる。従って、読み出し時間Treadにおけるドレインライン43,43,…の電圧の変化傾向は、蓄電時間Teで半導体膜23に入射した光量に依存する。即ち、蓄電時間Teにおいて半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、読み出し時間Treadにおけるドレインライン43,43,…の電圧の変化速度が大きくなる。そのため、i行目の読み出し時間Treadから次の(i+1)行目のプリチャージ時間Tprchまでの間に、コラムスイッチ81、読み出し時間Treadが開始してから所定の時間経過後におけるドレインライン43,43,…の電圧がコラムスイッチ81によって列順次にアンプ83に出力されて、アンプ83によって増幅され、更にA/Dコンバータ78によってA/D変換される。これにより、光の強度に換算される。なお、i行目の読み出し時間Treadから次の(i+1)行目のプリチャージ時間Tprchまでの間に、コラムスイッチ81を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。
【0075】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各フォトセンサ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、フォトセンサアレイ3がフォトセンサ20,20,…のそれぞれで光量を検知し、受光面に沿った光強度分布を二次元の画像として取得する。コントローラ73は、フォトセンサアレイ3で取得された画像を入力し、その画像を出力装置77に出力する。そして、コントローラ73の処理が終了する。
【0076】
作業者は、出力装置77により出力された画像からハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによってサンプルDNAの塩基配列を特定することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態によれば、ターゲット移動モードM1において、トップゲートライン44,44,…に正電圧を印加するだけで、サンプルDNAがフォトセンサアレイ3の表面の各スポット60に移動して濃縮するから、サンプルDNAを移動させるための電極をフォトセンサアレイ3に別途設けなくても済む。従って、フォトセンサアレイ3を構成するドレインライン44,44,…を利用して効率よく未知のサンプルDNAを誘引することができる。
【0078】
また、フォトセンサアレイ3の受光面上にスポット60,60,…が点在しているから、フォトセンサアレイ3で撮像を行うだけで二次元の画像が得られる。更に、生体高分子分析支援装置1にレンズを設けなくとも、フォトセンサアレイ3で鮮明な像を得ることができるので、生体高分子分析支援装置1をシンプルな構造にすることができる。更に、スポット60から発した光が殆ど減衰せずにフォトセンサアレイ3の受光面に入射するので、フォトセンサアレイ3の感度が高くなくても済む。
【0079】
〔変形例1〕
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、図12、図13に示すように、フォトセンサアレイ3の受光面を囲繞するような矩形枠状の浴槽101をフォトセンサアレイ3の受光面に設け、浴槽101の四つの側壁のうちトップゲートライン44に平行な側壁の内面にそれぞれ陽極102、陰極103を設ける。そして、浴槽101内にゲル等の電気泳動媒体104を収容し、電気泳動媒体104にサンプルDNAを注入すれば、サンプルDNAを陰極103から陽極102へ泳動させることができる。
【0080】
〔変形例2〕
上記実施形態では、励起光照射装置72がフォトセンサアレイ3の受光面の上からフォトセンサアレイ3に向けて励起光を照射しているが、ボトムゲート21が励起光を遮光する材質であれば、絶縁基板17の裏面(受光面と反対の面)に配置してフォトセンサアレイ3に向けて向けて励起光を照射しても良い。フォトセンサアレイ3はボトムゲート21、ボトムゲートライン41、ソース27、ソースライン42、ドレイン28、ドレインライン43の部分を除いて光透過性であるから、励起光がフォトセンサ20,20,…の間においてフォトセンサアレイ3の受光面から上へ出射する。このようなレイアウトでは、照射された励起光が直接半導体膜23に入射されることを防止できるとともにフォトセンサ20、20の間から進行する励起光がスポット60に入射するので、励起光によって蛍光受光感度特性が低下することを防止し且つハイブリダイゼーションによる蛍光を受光できるため正常に蛍光検知することができる。なお、この場合には、フォトセンサアレイ3の受光面には励起光遮蔽層を成膜しない。
【0081】
〔変形例3〕
上記実施形態では、スポット60が既知の塩基配列の一本鎖DNAからなるものであるが、その他の既知の生体高分子、例えば、既知のアミノ酸配列やペプチド配列のタンパク質、既知の細胞等からなるものでも良い。したがって、生体高分子分析支援装置1によってタンパク質のアミノ酸配列やペプチド配列を分析することが可能となる。
【0082】
〔変形例4〕
また、上記実施形態では、励起光照射装置72から発する励起光を紫外線とし、励起光によってサンプルDNAから発する光を蛍光(可視光)としたが、このような光の波長域に限定されない。但し、励起光照射装置72から発する励起光がサンプルDNAに結合させた標識物質を励起させる波長域の光であること、励起光によって標識物質から発した光の波長域が励起光の波長域と異なることが必要である。また、フォトセンサアレイ3が標識物質から発した光に対して感度を示すことが必要である。
【0083】
〔変形例5〕
また、上記実施形態では、コントローラ73がフォトセンサアレイ3から入力した画像データに従った画像を出力装置77に出力し、作業者が出力された画像からサンプルDNAの配列を特定したが、コントローラ73がサンプルDNAの配列を特定しても良い。すなわち、コントローラ73が、特徴抽出処理によって画像データ中のどの部分が蛍光を発しているかを特定し、蛍光を発している部分に対応するスポット60を特定し、その特定したスポット60に相補的な塩基配列を出力装置から出力する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】生体高分子分析支援装置1のブロック図である。
【図2】フォトセンサアレイ3及びその周辺回路の回路図である。
【図3】フォトセンサアレイ3の平面図である。
【図4】図3に示された切断面IV−IVの矢視断面図である。
【図5】フォトセンサアレイ3の1つの画素の平面図である。
【図6】図5に示された切断面VI−VIの矢視断面図である。
【図7】トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びコントローラ73によって出力される信号のタイミングチャートである。
【図8】トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76によって出力される信号のタイミングチャートである。
【図9】サンプルDNAの動き説明するための図面である。
【図10】サンプルDNAの動き説明するための図面である。
【図11】サンプルDNAの動き説明するための図面である。
【図12】変形例におけるフォトセンサアレイ3の概略平面図である。
【図13】変形例におけるフォトセンサアレイ3の概略側面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 生体高分子分析支援装置
3 フォトセンサアレイ
17 絶縁基板
23 半導体膜
31 保護絶縁膜
41 ボトムゲートライン
44 トップゲートライン
60 スポット
74 トップゲートドライバ
75 ボトムゲートドライバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子の構造を特定するために用いる生体高分子分析支援装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野、農業分野等の幅広い分野で生物の遺伝子情報が利用されるようになってきているが、遺伝子の利用に際しては、DNAの構造解明が不可欠である。DNAは螺旋状によじれあった2本のポリヌクレオチド鎖を有し、それぞれのポリヌクレオチド鎖は4種の塩基(アデニン:A、グアニン:G、シトシン:C、チミン:T)が一次元的に並んだ塩基配列を有し、アデニンとチミン、グアニンとシトシンという相補性に基づいて一方のポリヌクレオチド鎖の塩基が他方のポリヌクレオチド鎖の塩基に結合している。
【0003】
DNAの構造解明とは、塩基配列を特定することであり、DNAの塩基配列を特定するためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されており(特許文献1)、DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いて次のようにしてサンプルDNAの塩基配列を特定する。
【0004】
まず、既知の塩基配列を有した複数種類のcDNAをスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、被検出物であるサンプルDNAを一本鎖のDNAに変性して、変性したサンプルDNAに蛍光物質等を結合させる。
【0005】
次に、サンプルDNAをDNAマイクロアレイ上に塗布すると、サンプルDNAがハイブリダイゼーションによってDNAマイクロアレイ上に固定される。つまり、サンプルDNAが複数種類のcDNAのうち相補的なcDNAと結合して、二本鎖が生じる。一方、サンプルDNAは、相補性を有しないcDNAとは結合しない。サンプルDNAに蛍光物質でマーキングを施しているため、サンプルDNAと結合したcDNAが蛍光を発することになる。例えば、TCGGGAAの塩基配列を有するサンプルDNAは、AGCCCTTの塩基配列を有するcDNAと結合し、そのcDNAが蛍光を発する。
【0006】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、光源から発した励起光をコリメーターレンズによりビームとして収束し、ビームでDNAマイクロアレイを二次元走査し、集光レンズ及びフォトマルをビームの二次元走査に追従させ、ビームにより発した蛍光を集光レンズでフォトマルに集光させ、蛍光強度をフォトマルで計測し、二次元走査によってDNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測するようになっている。これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、サンプルDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したcDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによってサンプルDNAの塩基配列を特定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来のDNAマイクロアレイを用いてDNAを分析するには、少量のDNAを効率よくDNAマイクロアレイ上に分布させなければならないといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、DNAを効率よく分布させることができる生体高分子分析支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明の生体高分子分析支援装置は、
絶縁基板と、前記絶縁基板上に配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに沿って設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加するトップゲートドライバと、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の生体高分子分析支援装置の制御方法は、
絶縁基板と、前記絶縁基板上に互いに平行となるよう配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに対して平行に設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、を有する生体高分子分析支援装置を制御する方法であって、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
以上の生体高分子分析支援装置を用いる際には、蛍光標識されたサンプルを含む溶液をフォトセンサアレイの保護絶縁膜上に散布する。そして、トップゲートドライバによって正電圧が複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに印加されると、溶液中のサンプルが移動して、サンプルが保護絶縁膜上のスポットに濃縮される。そのため、サンプルが特異的な(例えば、相補的な)スポットには結合しやすくなる。一方、特異的でないスポットには結合しない。その後、フォトセンサアレイが撮像動作をする。ここで、フォトセンサアレイに向けて励起光を照射した状態でフォトセンサアレイで撮像を行えば、サンプルに結合したスポットの部分では蛍光により明るくなり、サンプルに結合していないスポットの部分では暗くなる。
【0012】
このように、フォトセンサアレイを構成する部材を利用して効率よく未知の生体高分子(サンプル)を誘引することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォトセンサアレイを構成する部材を利用して効率よく未知の生体高分子を誘引することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
〔1〕生体高分子分析支援装置の全体構成
図1は、生体高分子分析支援装置1のブロック図であり、図2は、フォトセンサアレイ3及びその周辺回路の回路図であり、図3は、フォトセンサアレイ3の概略平面図であり、図4は、図3に示された切断面IV−IVの矢視断面図である。
【0016】
図1〜図4に示すように、生体高分子分析支援装置1は、大別して、複数のフォトセンサ20,20,…を二次元配列して構成されるフォトセンサアレイ3と、フォトセンサアレイ3の受光面に二次元配列された複数のスポット60,60,…と、フォトセンサアレイ3を互いに協働して駆動するトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、フォトセンサアレイ3の受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置72と、励起光照射装置72、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御するコントローラ73と、ドレインドライバ76から入力した信号をA/D変換してコントローラ73に出力するA/Dコンバータ78と、コントローラ73から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置77と、から構成されている。
【0017】
〔2〕フォトセンサアレイ
図3〜図6を用いてフォトセンサアレイ3について詳細に説明する。ここで、図5は、フォトセンサ20の電極構造を示した平面図であり、図6は、フォトセンサ20の断面図である。
【0018】
図3〜図6に示すように、フォトセンサアレイ3は、絶縁基板17と、絶縁基板17上に互いに平行となるよう配列されたのボトムゲートライン41,41,…と、これらボトムゲートライン41,41,…を被覆したボトムゲート絶縁膜22と、ボトムゲート絶縁膜22上において各ボトムゲートライン41に沿って配列された感光性の半導体膜23,23,…と、ボトムゲート絶縁膜22上において平面視してボトムゲートライン41に対して垂直になるよう配列されたソースライン42,42,…と、ボトムゲート絶縁膜22上においてソースライン42,42,…と交互に配列されたドレインライン43,43,…と、ソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…を被覆したトップゲート絶縁膜29と、トップゲート絶縁膜29上において各ボトムゲートライン41に沿うように平行に設けられ、平面視して各ボトムゲートライン41に重なるように対向して配置されたトップゲートライン44,44,…と、トップゲートライン44,44,…を被覆した保護絶縁膜31と、を備える。
【0019】
絶縁基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0020】
ボトムゲート絶縁膜22上においては、半導体膜23,23,…がn行m列のマトリクス状に配列され、これによりフォトセンサ20,20,…がn行m列のマトリクス状に配列されている。ここで、n、mはともに2以上の自然数であり、ボトムゲートライン41の本数及びトップゲートライン44の本数はそれぞれn本となり、ソースライン42の本数とドレインライン43の本数はそれぞれm本となる。なお、以下では、ボトムゲートライン41及びトップゲートライン44の長手方向によって”行”を定義し、ボトムゲートライン41及びトップゲートライン44の長手方向を行方向という。また、ソースライン42及びドレインライン43の長手方向によって”列”を定義し、ソースライン42及びドレインライン43の長手方向を列方向という。
【0021】
図3及び図5に示すように、ボトムゲートライン41は各半導体膜23に重なる箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のボトムゲート21になる。トップゲートライン44も各半導体膜23に重なる箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のトップゲート30になる。ソースライン42は平面視して各ボトムゲートライン41と交差する箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のソース27になる。ドレインライン43も各ボトムゲートライン41と交差する箇所において幅広に設けられ、幅広となった部分がフォトセンサ20のドレイン28になる。
【0022】
フォトセンサ20は、ダブルゲートトランジスタ型の光電変換素子である。図4〜図5に示すように、フォトセンサ20は、絶縁基板17上に形成されたボトムゲート21と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んでボトムゲート21に対向した半導体膜23と、半導体膜23の中央部上に形成されたチャネル保護膜24と、半導体膜23の両端部上に互いに離間して形成された不純物半導体膜25,26と、不純物半導体膜25上に形成されたソース27と、不純物半導体膜26上に形成されたドレイン28と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23に対向したトップゲート30と、を備えて構成される。
【0023】
ボトムゲート21は、フォトセンサ20ごとに絶縁基板17上に形成されている。行方向に配列された同じ行のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのボトムゲート21は共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0024】
ボトムゲート絶縁膜22は、全てのフォトセンサ20,20,…に共通してべた一面に成膜されており、フォトセンサ20,20,…のボトムゲート21及びボトムゲートライン41,41,…をまとめて被覆している。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0025】
ボトムゲート絶縁膜22上には、半導体膜23がフォトセンサ20ごとに形成されている。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
【0026】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、フォトセンサ20ごとにパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0027】
不純物半導体膜25上には、フォトセンサ20ごとにパターニングされたソース27が形成されている。不純物半導体膜26上には、フォトセンサ20ごとにパターニングされたドレイン28が形成されている。列方向に配列された同じ列のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのソース27は共通のソースライン42と一体に形成されており、列方向に配列された同じ列のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのドレイン28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース27、ドレイン28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0028】
トップゲート絶縁膜29は、全てのフォトセンサ20,20,…に共通してべた一面に成膜されており、フォトセンサ20,20,…のチャネル保護膜24、ソース27及びドレイン28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…をまとめて被覆している。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0029】
トップゲート絶縁膜29上には、フォトセンサ20ごとにパターニングされたトップゲート30が形成されている。行方向に配列された同じ行のフォトセンサ20,20,…のそれぞれのトップゲート30は共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート30及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0030】
フォトセンサ20,20,…のトップゲート30及びトップゲートライン44,44,…は、べた一面に成膜された保護絶縁膜31によってまとめて被覆されている。保護絶縁膜31は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0031】
以上のように構成されたフォトセンサアレイ3は、保護絶縁膜31の表面を受光面としており、それぞれのフォトセンサ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換する。
【0032】
なお、保護絶縁膜31の表面に、励起光を遮蔽するとともに可視光を透過する励起光遮蔽膜を成膜しても良い。励起光遮蔽膜は例えばTiO2からなり、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものである。
【0033】
〔3〕スポット
次に、スポット60について説明する。図3、図4、図6に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、マトリクス状となってフォトセンサアレイ3の受光面上に配列されている。1つのスポット60は一本鎖のプローブDNA61が多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数のプローブDNA61は同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとにプローブDNA61の塩基配列が異なる配列となっている。DNAを構成するポリヌクレオチド核酸のような塩基は、相補的な塩基配列のみの高分子としか螺旋結合つまりハイブリダイゼーションしないので、各スポット60のプローブDNA61は、それぞれ個体情報に応じたハイブリダイゼーション特性を有している。何れのスポット60も、塩基配列が既知のものである。なお、プローブDNA61は、表面コート材32によってフォトセンサアレイ3の受光面に点着されている。
【0034】
1つのスポット60につき1つのフォトセンサ20が重なるように、スポット60,60,…が配列されている。なお、1つのスポット60につき隣り合う幾つかのフォトセンサ20,20,…が重なっても良いが、この場合には何れのスポット60でも重なったフォトセンサ20の数が同じである。
【0035】
〔4〕フォトセンサアレイの駆動回路及びコントローラ
図1、図2に示すように、フォトセンサアレイ3は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76によって駆動される。
【0036】
トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…に接続され、ボトムゲートドライバ75はボトムゲートライン41,41,…に接続されている。ドレインドライバ76はコラムスイッチ81と、プリチャージスイッチ82と、アンプ83とから構成され、コラムスイッチ81がドレインライン43,43,…に接続されている。
【0037】
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に対して、フォトセンサアレイ3が着脱可能に設けられている。フォトセンサアレイ3がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に取り付けられた場合、ソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、具体的にはソースライン42,42,…が±0〔V〕の接地に接続される。
【0038】
また、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、コントローラ73によって制御される。ここで、図7は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びコントローラ73から出力される信号のタイミングチャートである。
【0039】
図1、図2、図7等に示された制御信号φchmは、コントローラ73からトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75に出力される信号であり、制御信号φtgは、コントローラ73からトップゲートドライバ74に出力される信号であり、制御信号φtbは、コントローラ73からボトムゲートドライバ75に出力される信号であり、制御信号φpgは、コントローラ73からドレインドライバ76のプリチャージスイッチ82に出力される信号である。コントローラ73は、ハイレベルのパルスとして制御信号φchmをトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75に出力することによってトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75をターゲット移動モードM1で動作させる。
【0040】
コントローラ73は、制御信号φtgをトップゲートドライバ74に出力することによってトップゲートドライバ74をターゲット移動モードM1後のセンサ検出モードM2で動作させる。また、コントローラ73は、制御信号φbgをボトムゲートドライバ75に出力することによってボトムゲートドライバ75をセンサ検出モードM2で動作させる。ここで、コントローラ73は、制御信号φchm、制御信号φtg及び制御信号φbgを出力する。
【0041】
図2、図7において、信号φT1〜φTnは、トップゲートドライバ74によって各トップゲートライン44に出力される信号である。信号φT1〜φTnに付された数字は、トップゲートライン44の行番号を表す。つまり、例えば第一行のトップゲートライン44への出力電圧は信号φT1となり、第二行のトップゲートライン44への出力電圧は信号φT2となる。信号φB1〜φBnは、ボトムゲートドライバ75によって各ボトムゲートライン41に出力される信号である。信号φB1〜φBnに付された数字は、ボトムゲートライン41の行番号を表す。
トップゲートドライバ74は、ターゲット移動モードM1のうちの所定期間、入力された制御信号φchmをスイッチングするスイッチを選択して取り込むとともに、入力された制御信号φtgをスイッチングするスイッチを非選択(ハイインピーダンス状態)にして取り込まず、ターゲット移動モードM1のうちの所定期間、所定のトップゲートライン44に制御信号φchmを出力するように設定されている。その後、トップゲートドライバ74は、センサ検出モードM2の間、入力された制御信号φchmをスイッチングするスイッチを非選択(ハイインピーダンス状態)にして取り込まず、入力された制御信号φtgをスイッチングするスイッチを選択して取り込んで各トップゲートライン44に制御信号φtgのシフトパルス(リセットパルス)を順次出力するよう設定されている。
【0042】
具体的には、図2、図7に示すように、制御信号φchmを入力したトップゲートドライバ74は、ターゲット移動モードM1において、±0〔V〕を越えたハイレベルのパルス電圧(図7では、一例として+15〔V〕である。)をトップゲートライン44,44,…のうちの少なくとも一本に対して印加する。勿論、パルス電圧を全てのトップゲートライン44,44,…に対して印加しても良い。
【0043】
制御信号φtgを適宜取り込んだトップゲートドライバ74は、±0〔V〕を越えたハイレベルのリセットパルスφT1〜φTn(図7では、一例として+15〔V〕である。)をトップゲートライン44,44,…に印加する。信号φT1〜φTnがそれぞれローレベルの時には、第一行〜第n行のトップゲートライン44,44,…はそれぞれ−15〔V〕になっている。
【0044】
制御信号φbgを適宜取り込んだボトムゲートドライバ75は、ハイレベルのリードパルスφB1〜φBnをボトムゲートライン41,41,…に印加する。信号φB1〜φBnがそれぞれローレベルの時には、第一行〜第n行のボトムゲートライン41,41,…はそれぞれ±0〔V〕になっている。
【0045】
リセットパルスとリードパルスのタイミングについて、図7及び図8を用いて説明する。ここで、図8は、センサ検出モードM2において、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にハイレベルのリセットパルスを印加してからボトムゲートドライバ75が(i+1)行目のボトムゲートライン41にハイレベルのリードパルスを印加するまでの間のトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76によって出力される信号のタイミングチャートである。なお、iとは、1〜nのうちの任意の数である。
【0046】
図7及び図8に示すように、トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にハイレベルのリセットパルスを印加した後に所定時間を経てボトムゲートドライバ75が同じ行のボトムゲートライン41にハイレベルのリードパルスを印加するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75が出力信号をシフトする。つまり、各行では、ハイレベルのリードパルスが出力されるタイミングは、ハイレベルのリセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。
【0047】
図8において、リセット時間Tresetは、ハイレベルのリセットパルスが印加されている時間であり、読み出し時間Treadは、ハイレベルのリードパルスが印加されている時間であり、蓄電時間Teは、ハイレベルのリセットパルスの印加終了時からハイレベルのリードパルスの印加開始時までの時間である。
【0048】
図8に示すように、制御信号φpgは、センサ検出モードM2において何れの行の蓄電時間Teの間にハイレベルになる振幅信号である。制御信号φpgがハイレベルになることによってプリチャージスイッチ82がオンになり、プリチャージ電圧Vpgが全てのドレインライン43,43,…に印加される。制御信号φpgがローレベルの場合には、プリチャージスイッチ82がオフであるから、何れのドレインライン43,43,…にもプリチャージ電圧Vpgが印加されない。図8において、プリチャージ時間Tprchは、制御信号φpgがハイレベルになっている時間である。
【0049】
コラムスイッチ81はプリチャージ電圧Vpgの印加後にドレインライン43,43,…の電圧を列順次にアンプ83に出力する。アンプによって増幅された電圧がA/Dコンバータ78によってデジタルの画像信号に変換され、そのA/D変換された画像信号がコントローラ73に入力される。
【0050】
コントローラ73は励起光照射装置72を点灯させる機能を有する。また、コントローラ73は、制御信号φchmを出力することによってトップゲートドライバ74をターゲット移動モードM1で動作させ、フォトセンサアレイ3によってDNAの移動を行わせる機能を有する。
【0051】
また、コントローラ73は、制御信号φtg、制御信号φbg、制御信号φpgを出力することによってトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をセンサ検出モードM2で動作させ、フォトセンサアレイ3の撮像動作を行わせる機能を有する。これにより、コントローラ73はドレインドライバ76からA/Dコンバータ78を通じて入力した画像信号を入力することによって、フォトセンサアレイ3の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。
【0052】
また、コントローラ73は入力した二次元の画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。
【0053】
出力装置77はプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0054】
〔5〕DNA分析方法、生体高分子分析支援装置の制御方法、生体高分子分析支援装置の動作
【0055】
次に、生体高分子分析支援装置1を用いてDNAの塩基配列を分析する方法について説明する。
【0056】
まず、作業者が検体からDNAを採取して、採取した二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性してから場合によってPCR増幅を行い、得られた一本鎖DNAに蛍光物質、燐光材料又は光共鳴散乱物質を結合させ、一本鎖DNAを蛍光物質、燐光材料又は光共鳴散乱物質で標識する。蛍光物質、燐光材料又は光共鳴散乱物質は、生体高分子分析支援装置1の励起光照射装置72から出射される励起光で励起されるものを選択するが、蛍光物質としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られた一本鎖DNAは、溶液中に含まれている。以下では、この一本鎖DNAをサンプルDNAという。
【0057】
フォトセンサアレイ3をセッティングし、フォトセンサアレイ3をトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に接続し、励起光照射装置72をフォトセンサアレイ3の受光面に対向させる。
【0058】
次いで、サンプルDNAを含有した溶液をフォトセンサアレイ3の受光面に塗布する。このとき、一本鎖が二本鎖とならないようにサンプルDNAを含有した溶液を加熱する。
【0059】
次いで、コントローラ73を起動させると、コントローラ73がトップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75に制御信号φchmを出力する。すると、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75がターゲット移動モードM1で動作する。即ち、図7に示すように、トップゲートドライバ74がハイレベルのパルス電圧をトップゲートライン44,44,…のうちの少なくとも一本に対して所定時間だけ印加する。
【0060】
ターゲット移動モードM1におけるサンプルDNA99の動きを図9〜図11の模式図を用いて説明する。図9に示すように、トップゲートライン44,44,…にハイレベルのパルスが印加されていない場合には、サンプルDNA99がフォトセンサアレイ3の受光面上の溶液中において浮遊している。その後、図10に示すように、ハイレベルのパルス電圧がトップゲートライン44,44,…のうちの少なくとも一本に対して印加されるので、それらの行のフォトセンサ20においてはトップゲート30に正電圧が印加される。これにより、浮遊したサンプルDNA99がそのフォトセンサ20に対応したスポット60に密集するように泳動する。従って、正電圧が印加されたトップゲートライン44の行に対応するスポット60の周辺では、サンプルDNA99の濃度が濃縮する。そのため、サンプルDNA99がそのスポット60のプローブDNA61に短時間でハイブリダイゼーションしやくなる。
【0061】
ハイレベルのパルス電圧がトップゲートドライバ74によって印加されている時には、スポット60,60,…のなかにサンプルDNAと相補的なものがある場合には、サンプルDNA99が相補的なスポット60のプローブDNA61とハイブリダイゼーションにより結合する。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNA99と相補的なものがなければ、サンプルDNAはどのスポット60,60,…にも結合しない。
【0062】
トップゲートドライバ74によるパルス電圧が終了すると、密集したサンプルDNA999が解離して、溶液中に浮遊する。
【0063】
その後、フォトセンサアレイ3の受光面に塗布したサンプルDNAのうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す際に除去され、ハイブリダイゼーションしたものは、フォトセンサアレイ3上に残存する。
【0064】
その後、コントローラ73が励起光照射装置72を制御して励起光照射装置72を点灯させると、励起光照射装置72からフォトセンサアレイ3の受光面に向けて励起光が出射する。
【0065】
サンプルDNAが標識されているので、スポット60,60,…のうちサンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60からは蛍光(主に可視光波長域)が発し、サンプルDNAと結合しなかったスポット60からは蛍光が発しない。そのため、サンプルDNAと結合したスポット60に対応したフォトセンサ20には高強度の蛍光が入射し、サンプルDNAと結合していないスポット60に対応したフォトセンサ20には殆ど蛍光が入射しない。フォトセンサアレイ3の受光面にスポット60,60,…が固定されているため、サンプルDNAと結合したスポット60から発した蛍光はあまり減衰せずに、そのスポット60に対応したフォトセンサ20に入射して電子−正孔対を発生させる。従って、フォトセンサ20,20,…の感度が低くても、十分に強度を検知することができる。なお、サンプルDNAに燐光材料を結合させた場合、励起光照射装置72が消灯しても、サンプルDNAとハイブリダイゼーションしたスポット60からは燐光(主に可視光波長域)が発し続ける。
【0066】
その後(ハイレベルのパルス電圧が終了してから所定時間経過後)、蛍光物質又は光共鳴散乱物質をサンプルDNAに結合した場合には励起光照射装置72が点灯した状態で、燐光材料をサンプルDNAに結合した場合には励起光照射装置72が点灯後に消灯した状態で、コントローラ73がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75、ドレインドライバ76に制御信号φtg、制御信号φbg、制御信号φpgをそれぞれ出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75、ドレインドライバ76がフォトセンサアレイ3をセンサ検出モードM2で駆動する。
【0067】
センサ検出モードM2においては、図7に示すように、トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から行順次にトップゲートライン44,44,…に対してリセットパルスを印加する。これにより、トップゲートドライバ74がトップゲートライン44,44,…を走査する。また、ボトムゲートドライバ75が1行目のボトムゲートライン41から行順次にボトムゲートライン41,41,41,…に対してリードパルスを印加する。これにより、ボトムゲートドライバ75がボトムゲートライン41,41,41,…を走査する。なお、トップゲートドライバ74による走査の周波数はボトムゲートドライバ75による走査の周波数と同じであるが、ボトムゲートドライバ75による走査の周期はトップゲートドライバ74による走査の周期よりも遅れている。
【0068】
走査中の各行のプリチャージ時間Tprch中においては、ドレインドライバ76のプリチャージスイッチ82に入力される制御信号φpgがハイレベルになるので、各行のプリチャージ時間Tprch中には、プリチャージ電圧Vpgが全てのドレインライン43,43,…に印加される。
【0069】
i行目の各フォトセンサ20の動作について詳細に説明する。図8に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを印加する。そのi行目のリセット時間Tresetにおいては、i行目の各フォトセンサ20の半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート30の電圧により反発して吐出される。
【0070】
i行目のトップゲートライン44に印加されたリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが印加されるまでの蓄電時間Teでは、入射光の光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0071】
次に、蓄電時間Teの後半のプリチャージ時間Tprch中に、ドレインドライバ76が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージ電圧Vpgを印加する。プリチャージ時間Tprchでは、i行目の各フォトセンサ20のトップゲート30の電圧が負電圧(−15〔V〕)であり、ボトムゲート21の電圧が±0〔V〕であるため、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔の電荷だけではゲート−ソース間電圧が低いので半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン28とソース27との間に電流は流れない。プリチャージ時間Tprchにおいてドレイン28とソース27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に印加されたプリチャージ電圧Vpgによってi行目の各フォトセンサ20のドレイン28に電荷がチャージされる。
【0072】
次に、ドレインドライバ76によるプリチャージ電圧Vpgの印加が終了し、ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを印加する。ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを印加している読み出し時間Treadでは、i行目の各フォトセンサ20のボトムゲート21の電圧が正電圧(+10〔V〕)であるため、i行目の各フォトセンサ20がオン状態になる。
【0073】
読み出し時間Treadにおいては、蓄電時間Teにおいて蓄積されたキャリアがトップゲート30の負電界を緩和するように働くため、ボトムゲート21の正電界により半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン28からソース27に電流が流れるようになる。従って、読み出し時間Treadでは、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0074】
ここで、蓄電時間Teにおいて半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、読み出し時間Treadにおいてドレイン28からソース27に流れる電流も大きくなる。従って、読み出し時間Treadにおけるドレインライン43,43,…の電圧の変化傾向は、蓄電時間Teで半導体膜23に入射した光量に依存する。即ち、蓄電時間Teにおいて半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、読み出し時間Treadにおけるドレインライン43,43,…の電圧の変化速度が大きくなる。そのため、i行目の読み出し時間Treadから次の(i+1)行目のプリチャージ時間Tprchまでの間に、コラムスイッチ81、読み出し時間Treadが開始してから所定の時間経過後におけるドレインライン43,43,…の電圧がコラムスイッチ81によって列順次にアンプ83に出力されて、アンプ83によって増幅され、更にA/Dコンバータ78によってA/D変換される。これにより、光の強度に換算される。なお、i行目の読み出し時間Treadから次の(i+1)行目のプリチャージ時間Tprchまでの間に、コラムスイッチ81を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。
【0075】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各フォトセンサ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、フォトセンサアレイ3がフォトセンサ20,20,…のそれぞれで光量を検知し、受光面に沿った光強度分布を二次元の画像として取得する。コントローラ73は、フォトセンサアレイ3で取得された画像を入力し、その画像を出力装置77に出力する。そして、コントローラ73の処理が終了する。
【0076】
作業者は、出力装置77により出力された画像からハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによってサンプルDNAの塩基配列を特定することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態によれば、ターゲット移動モードM1において、トップゲートライン44,44,…に正電圧を印加するだけで、サンプルDNAがフォトセンサアレイ3の表面の各スポット60に移動して濃縮するから、サンプルDNAを移動させるための電極をフォトセンサアレイ3に別途設けなくても済む。従って、フォトセンサアレイ3を構成するドレインライン44,44,…を利用して効率よく未知のサンプルDNAを誘引することができる。
【0078】
また、フォトセンサアレイ3の受光面上にスポット60,60,…が点在しているから、フォトセンサアレイ3で撮像を行うだけで二次元の画像が得られる。更に、生体高分子分析支援装置1にレンズを設けなくとも、フォトセンサアレイ3で鮮明な像を得ることができるので、生体高分子分析支援装置1をシンプルな構造にすることができる。更に、スポット60から発した光が殆ど減衰せずにフォトセンサアレイ3の受光面に入射するので、フォトセンサアレイ3の感度が高くなくても済む。
【0079】
〔変形例1〕
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、図12、図13に示すように、フォトセンサアレイ3の受光面を囲繞するような矩形枠状の浴槽101をフォトセンサアレイ3の受光面に設け、浴槽101の四つの側壁のうちトップゲートライン44に平行な側壁の内面にそれぞれ陽極102、陰極103を設ける。そして、浴槽101内にゲル等の電気泳動媒体104を収容し、電気泳動媒体104にサンプルDNAを注入すれば、サンプルDNAを陰極103から陽極102へ泳動させることができる。
【0080】
〔変形例2〕
上記実施形態では、励起光照射装置72がフォトセンサアレイ3の受光面の上からフォトセンサアレイ3に向けて励起光を照射しているが、ボトムゲート21が励起光を遮光する材質であれば、絶縁基板17の裏面(受光面と反対の面)に配置してフォトセンサアレイ3に向けて向けて励起光を照射しても良い。フォトセンサアレイ3はボトムゲート21、ボトムゲートライン41、ソース27、ソースライン42、ドレイン28、ドレインライン43の部分を除いて光透過性であるから、励起光がフォトセンサ20,20,…の間においてフォトセンサアレイ3の受光面から上へ出射する。このようなレイアウトでは、照射された励起光が直接半導体膜23に入射されることを防止できるとともにフォトセンサ20、20の間から進行する励起光がスポット60に入射するので、励起光によって蛍光受光感度特性が低下することを防止し且つハイブリダイゼーションによる蛍光を受光できるため正常に蛍光検知することができる。なお、この場合には、フォトセンサアレイ3の受光面には励起光遮蔽層を成膜しない。
【0081】
〔変形例3〕
上記実施形態では、スポット60が既知の塩基配列の一本鎖DNAからなるものであるが、その他の既知の生体高分子、例えば、既知のアミノ酸配列やペプチド配列のタンパク質、既知の細胞等からなるものでも良い。したがって、生体高分子分析支援装置1によってタンパク質のアミノ酸配列やペプチド配列を分析することが可能となる。
【0082】
〔変形例4〕
また、上記実施形態では、励起光照射装置72から発する励起光を紫外線とし、励起光によってサンプルDNAから発する光を蛍光(可視光)としたが、このような光の波長域に限定されない。但し、励起光照射装置72から発する励起光がサンプルDNAに結合させた標識物質を励起させる波長域の光であること、励起光によって標識物質から発した光の波長域が励起光の波長域と異なることが必要である。また、フォトセンサアレイ3が標識物質から発した光に対して感度を示すことが必要である。
【0083】
〔変形例5〕
また、上記実施形態では、コントローラ73がフォトセンサアレイ3から入力した画像データに従った画像を出力装置77に出力し、作業者が出力された画像からサンプルDNAの配列を特定したが、コントローラ73がサンプルDNAの配列を特定しても良い。すなわち、コントローラ73が、特徴抽出処理によって画像データ中のどの部分が蛍光を発しているかを特定し、蛍光を発している部分に対応するスポット60を特定し、その特定したスポット60に相補的な塩基配列を出力装置から出力する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】生体高分子分析支援装置1のブロック図である。
【図2】フォトセンサアレイ3及びその周辺回路の回路図である。
【図3】フォトセンサアレイ3の平面図である。
【図4】図3に示された切断面IV−IVの矢視断面図である。
【図5】フォトセンサアレイ3の1つの画素の平面図である。
【図6】図5に示された切断面VI−VIの矢視断面図である。
【図7】トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びコントローラ73によって出力される信号のタイミングチャートである。
【図8】トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76によって出力される信号のタイミングチャートである。
【図9】サンプルDNAの動き説明するための図面である。
【図10】サンプルDNAの動き説明するための図面である。
【図11】サンプルDNAの動き説明するための図面である。
【図12】変形例におけるフォトセンサアレイ3の概略平面図である。
【図13】変形例におけるフォトセンサアレイ3の概略側面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 生体高分子分析支援装置
3 フォトセンサアレイ
17 絶縁基板
23 半導体膜
31 保護絶縁膜
41 ボトムゲートライン
44 トップゲートライン
60 スポット
74 トップゲートドライバ
75 ボトムゲートドライバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに沿って設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加するトップゲートドライバと、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置。
【請求項2】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に互いに平行となるよう配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに対して平行に設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、を有する生体高分子分析支援装置を制御する方法であって、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加することを特徴とする生体高分子分析支援装置の制御方法。
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに沿って設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加するトップゲートドライバと、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置。
【請求項2】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に互いに平行となるよう配列された複数のボトムゲートラインと、前記各ボトムゲートラインの上において前記各ボトムゲートラインに沿って配列された複数の感光性の半導体膜と、前記複数の半導体膜を挟んで前記各ボトムゲートラインに対向し、前記各ボトムゲートラインに対して平行に設けられた複数のトップゲートラインと、前記複数のトップゲートラインを被覆した保護絶縁膜と、を有するフォトセンサアレイと、
既知の生体高分子からなり、前記保護絶縁膜の表面上に点在した複数種のスポットと、を有する生体高分子分析支援装置を制御する方法であって、
前記複数のトップゲートラインのうちの少なくとも1つに前記生体高分子に未知の生体高分子を誘引するための電圧を印加することを特徴とする生体高分子分析支援装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−98187(P2006−98187A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283797(P2004−283797)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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