生体高分子検出装置及び生体高分子検出方法
【課題】化学発光基質溶液がどのスポットにも同時に接触できるようにする。
【解決手段】生体高分子検出装置1は、受光面を有する固体撮像デバイス10と、既知の生体高分子からなり、固体撮像デバイス10の受光面上に配列されたスポット60と、スポット60の両側において固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁81と、隔壁82の上に設けられてスポット60を覆った天壁83と、固体撮像デバイス10を隔壁81の延びる方向を中心として回転させ、固体撮像デバイス10を水平状態と垂直状態とに回転させる角度設定装置100と、を備える。
【解決手段】生体高分子検出装置1は、受光面を有する固体撮像デバイス10と、既知の生体高分子からなり、固体撮像デバイス10の受光面上に配列されたスポット60と、スポット60の両側において固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁81と、隔壁82の上に設けられてスポット60を覆った天壁83と、固体撮像デバイス10を隔壁81の延びる方向を中心として回転させ、固体撮像デバイス10を水平状態と垂直状態とに回転させる角度設定装置100と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子検出装置に関し、特に固体撮像デバイスを用いた生体高分子検出装置及び生体高分子検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイが開発されている(例えば、特許文献1参照)。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである。このようなDNAマイクロアレイを用いる場合、標的DNAを各スポットに滴下すると、標的DNAはそれ相補的なDNAとハイブリダイゼーションし、相補的なDNAとはハイブリダイゼーションしない。その後、化学発光基質溶液を各スポットに滴下すると、標的DNAとハイブリダイズしたDNAを含むスポットは発光し、標的DNAと結合していないスポットは発光しない。その後、これらスポットの発光状態をCCDセンサ等で同時に検出する。これにより、標的DNAを検出することができ、標的DNAが発光したスポットのDNAと相補的であることを特定することができる。
【特許文献1】特開2006−6274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、化学発光基質溶液を最初のスポットに滴下してから、最後のスポットに滴下するまでに時間差が生じてしまう。スポットの発光状態を同時に検出すると、スポットごとにバラツキが生じ、誤判定の要因となってしまう。
そこで、本発明は、化学発光基質溶液がどのスポットにも同時に接触できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度とに設定させる角度設定装置と、を備えることを特徴とする生体高分子検出装置が提供される。
【0006】
好ましくは、前記第一角度は0°であり、前記第二角度は90°であり、前記角度設定装置は前記固体撮像デバイスを90°回転させることを特徴とする。
好ましくは、前記固体撮像デバイスは光触媒層を更に備え、前記光触媒層は親水性が向上する処理が施されていることを特徴とする。
好ましくは、化学発光基質溶液を前記隔壁の間に供給する供給器を更に備える。
好ましくは、前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第二角度にし、その後、前記供給器に化学発光基質溶液の供給を前記供給器に行わせ、その後、前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第一角度にし、その後、前記固体撮像デバイスによる画像入力を行う制御部を更に備える。
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の第2の態様によれば、
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、を備えた生体高分子検出装置において、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度とに設定させる工程を含むことを特徴とする生体高分子検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角度設定装置によって固体撮像デバイスを第二角度(垂直状態)にすると、隔壁の間にある化学発光基質溶液が一方の隔壁側に片寄るので、化学発光基質溶液がスポットに接触しない。そして、角度設定装置によって固体撮像デバイスを第一角度(水平状態)にすると、化学発光基質溶液が隔壁の間において固体撮像デバイスの受光面に広がって、スポットに接触する。従って、どのスポットでも化学発光基質溶液がほぼ同時に接触する。そのため、誤判定を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
〔1〕固体撮像デバイス及びスポット
図1は、図11に示す生体高分子検出装置1に用いられる固体撮像デバイス10を示した平面図である。図2は、固体撮像デバイス10の一部の受光面を示した平面図である。図3は、1つの画素を示した平面図である。図4は、図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。なお、図2及び図3では、主に配線及び電極を示す。
【0011】
図1に示すように、固体撮像デバイス10の受光面には4つのスポット60が固定されている。スポット60は、既知の塩基配列のcDNA(プローブDNA)の群集であったり、既知の抗体の群集であったりする。スポット60は、プローブとなるcDNA(プローブDNA)、抗体その他生体高分子の溶液を固体撮像デバイス10の受光面に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知の塩基配列のcDNAを用いた場合について説明する。
【0012】
1つのスポット60では、同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNAが多数集まってその群集が固定化されている。スポット60ごとにプローブDNAの塩基配列が異なっている。プローブDNAとしては、既知のmRNAの塩基配列が用いられたり、その一部と同一の又は相補的な塩基配列のDNAが用いられたりする。
【0013】
図2に示すように、固体撮像デバイス10には、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が縦横に配列されている。また、固体撮像デバイス10には、複数のボトムゲートライン41、ソースライン42、ドレインライン43及びトップゲートライン44が設けられている。
【0014】
スポット60は、固体撮像デバイス10の受光面に点着されている。図2によれば、1つのスポット60は4つのダブルゲートトランジスタ20上に重なるように形成されているが、1つのスポット60に重なるダブルゲートトランジスタ20の数は4つに限らず、1つのスポット60につき一又は複数のダブルゲートトランジスタ20が重なっていればよい。また、スポット60の数も4つに限らず、2つ以上であればよい。
【0015】
図4に示すように、固体撮像デバイス10は、透明基板13と、ボトムゲート絶縁膜22と、トップゲート絶縁膜29と、保護絶縁膜32と、光触媒層33とを積層してなる。
【0016】
透明基板13は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、ガラス基板(例えば、石英ガラス製の基板)、プラスチック基板(例えば、ポリカーボネート又はPMMA製の基板)その他の絶縁性透明基板である。
【0017】
ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有する。ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜である。
光触媒層33は、二酸化チタン等からなる。光触媒層33に誘起光(例えば、紫外線波長域の光)が照射されると、光触媒層33の親水性が向上する光誘起親水化現象が発生する。
【0018】
この固体撮像デバイス10においては、ダブルゲートトランジスタ20が画素であり、ダブルゲートトランジスタ20が光電変換素子として利用されている。複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板13上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列されている。これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。
【0019】
図3、図4に示すように、ダブルゲートトランジスタ20は、ボトムゲート電極21、半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27、ドレイン電極28及びトップゲート電極31を有する。
【0020】
ボトムゲート電極21は透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間に形成されている。半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27及びドレイン電極28はボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間に形成されている。トップゲート電極31はトップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間に形成されている。
【0021】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板13上に形成されている。また、透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間には、複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成され、これらボトムゲートライン41,41,…が互いに平行となって行方向(横方向)に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0022】
半導体膜23は、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んで、ボトムゲート電極21に相対している。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されている。半導体膜23が受光部であり、半導体膜23に入射した光量に応じた量の電子−正孔対が半導体膜23に形成される。半導体膜23は、アモルファスシリコンからなる。
【0023】
チャネル保護膜24は、半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされたものである。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生する。
【0024】
不純物半導体膜25は、半導体膜23の一部に重なるように形成されている。不純物半導体膜25の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜26は、半導体膜23の別の部分に重なるように形成されている。不純物半導体膜26の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物(例えば、ホスフィン)を含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0025】
ソース電極27は、不純物半導体膜25に重なっている。ドレイン電極28は、不純物半導体膜26に重なっている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。ボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間には、複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が形成され、これらソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が列方向(縦方向)に延在している。列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体となって形成されており、列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体なって形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0026】
トップゲート電極31は、半導体膜23との間にチャネル保護膜24及びトップゲート絶縁膜29を挟んで、半導体膜23に相対している。トップゲート電極31は、ダブルゲートトランジスタ20ごとにトップゲート絶縁膜29上に形成されている。また、トップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間には、複数本のトップゲートライン44,44,…が形成され、これらトップゲートライン44,44,…が互いに平行となって行方向に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体となって形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0027】
以上のように構成された固体撮像デバイス10は光触媒層33の表面を受光面としており、固体撮像デバイス10が駆動されることによってダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量が電気信号に変換される。
【0028】
図5は、固体撮像デバイス10及びその周辺回路を示した回路図である。
図5に示すように、固体撮像デバイス10のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ71に、ボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ72に、ドレインライン43,43,…がドレインドライバ73に、それぞれ接続される。また、固体撮像デバイス10のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地される。トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73は、協同して固体撮像デバイス10を駆動するものである。ドレインドライバ73は、各ダブルゲートトランジスタ20において光電変換された電気信号を順次出力する。
【0029】
〔2〕流路、隔壁及び天壁
図6は、固体撮像デバイス10等を上から見て示した図である。図7は、固体撮像デバイス10等を後ろから見て示した図である。図8は、固体撮像デバイス10等を前から見て示した図である。ここで、図6は図7及び図8に示されたVI−VIに沿った面の矢視断面図であり、図7は図6に示されたVII−VIIに沿った面の矢視断面図であり、図8は図6に示されたVIII−VIIIに沿った面の矢視断面図である。
【0030】
図6〜図8に示すように、3つの隔壁81が固体撮像デバイス10の受光面に密着されている。これら隔壁81は、固体撮像デバイス10の受光面に対して立てた(垂直)状態となっているとともに、前後に延びている。また、これら隔壁81は互いに平行となって間隔をおいて配置されている。そのため、隔壁81と隔壁81との間に流路82が形成され、これら流路82が前後に延びている。隔壁81と隔壁81の間隔は3mm程度であり、隔壁81の高さが3mmである。
【0031】
隔壁81は、光触媒(例えば、二酸化チタン)によってコーティングされている。また、隔壁81は、不透明な材料からなり、誘起光(例えば、紫外線波長域の光)を遮蔽する性質を有する。
【0032】
隔壁81の上端には天壁83が取り付けられ、流路82及びスポット60が天壁83によって上から覆われている。天壁83は誘起光を透過する性質を有する。天壁83は、例えば石英ガラスからなる。なお、天壁83が、光触媒(例えば、二酸化チタン)によってコーティングされていてもよい。
【0033】
複数のスポット60は、流路82において隔壁81に沿って前後に配列されている。スポット60は、流路82の両側の隔壁81のうち右側の隔壁81に片寄って配置されている。
【0034】
〔3〕電磁バルブ
図6〜図8に示すように、流路82の後部がパイプ91の一端に接続され、パイプ91の他端が電磁バルブ93のアウトレットに接続され、電磁バルブ93のインレットがパイプ95に接続されている。流路82の後部がパイプ92の一端に接続され、パイプ92の他端が電磁バルブ94のアウトレットに接続され、電磁バルブ94のインレットがパイプ96に接続されている。流路82の前部がパイプ97の一端に接続され、パイプ97の他端が電磁バルブ98のインレットに接続され、電磁バルブ98のアウトレットがパイプ99に接続されている。
【0035】
パイプ92がパイプ91の右方において流路82に接続されている。そのため、パイプ91が流路82の両側の隔壁81のうち左側の隔壁81に片寄り、パイプ92が流路82の両側の隔壁81のうち右側の隔壁81に片寄っている。
【0036】
電磁バルブ93,94,98は電磁駆動式の開閉弁である。
【0037】
〔4〕角度設定装置
図9及び図10は、固体撮像デバイス10及び角度設定装置100等を前から見て示した図である。
角度設定装置100は、図9に示すように水平面を基準とした固体撮像デバイス10の角度を水平方向である第一角度に設定したり、図10に示すように垂直方向である第二角度に設定したりする。ここでは、第一角度を0°(水平状態)とし、第二角度を90°(垂直状態)とし、角度設定装置100は固体撮像デバイスを90°回転させているが、これに限らず、第二角度は隔壁の間にある化学発光基質溶液が一方の隔壁側に片寄ってスポットに接触しない角度であれば良く、第一角度は化学発光基質溶液が隔壁の間において固体撮像デバイスの受光面に広がって全てのスポットに接触する角度であればよい。具体的には、第一角度は−45°〜45°、第二角度は90°〜180°程度であっても良い。
尚、ここでの水平方向とは、重力の働く方向に対して直交する方向(生体高分子検出装置1が載置されている地平面に対して平行方向)をいい、垂直方向とは、重力の働く方向に対して平行な方向(生体高分子検出装置1が載置されている地平面に対する垂線方向)をいう。
【0038】
この角度設定装置100においては、軸101が前後に延びている。軸101が延びる方向と、図6に示された流路82が延びる方向は平行となっている。軸101に載置板102及び載置板103が固定されている。載置板102及び載置板103は軸101から軸101の径方向に延びており、載置板102が載置板103に対して90°となっている。
【0039】
軸101のラジアル荷重及びアキシアル荷重が軸受によって受けられ、軸101が回転可能となっている。図9に示すように、載置板102が水平状態となっている場合には、載置板103が垂直状態となっている。一方、図10に示すように、載置板102が垂直状態となっている場合には、載置板103が水平状態になっている。
【0040】
固体撮像デバイス10の受光面と反対側の面が載置板102に面接触した状態で、最も左の隔壁81が載置板103に面接触し、固体撮像デバイス10及び隔壁81が載置板102,103によって周方向に挟まれている。こうして、固体撮像デバイス10が載置板102に取り付けられている。
【0041】
〔5〕暗箱
図11及び図12は、生体高分子検出装置1を上から見て示した図である。図11及び図12において、暗箱110を破断した状態で示す。
【0042】
図11及び図12に示すように、固体撮像デバイス10及び角度設定装置100等が暗箱110内に収められている。暗箱110によって暗箱110の内側が遮光されている。角度設定装置100の軸101は軸受によって暗箱110の底に取り付けられ、その軸101が前後に延びている。
【0043】
暗箱110の左右の幅及び前後の長さは5cm程度あり、暗箱110の高さは3cm程度である。
【0044】
〔6〕角度設定装置のアクチュエータ
図11及び図12に示すように、モータ104が暗箱110内に設置されている。角度設定装置100の軸101がモータ104によって駆動される。軸101がモータ104に直結されていてもよいし、歯車列、ベルト&プーリー、チェーン&スプロケット、減速機、増速機その他の伝動機構を介してモータ104に結合されていてもよい。
【0045】
〔7〕誘起光照射装置
図11及び図12に示すように、誘起光照射装置120が暗箱110内に設置されている。誘起光照射装置120は角度設定装置100の左方に配置されている。誘起光照射装置120は右に向けて誘起光を照射する。誘起光照射装置120から発する誘起光は、天壁83を透過する。
【0046】
図12に示すように、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が垂直状態となっている場合には、固体撮像デバイス10の受光面が左方の誘起光照射装置120に向いている。一方、図11に示すように、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が水平状態となっている場合には、固体撮像デバイス10の受光面が上に向いている。
【0047】
〔8〕供給源
暗箱110の外側であって暗箱110の後ろ側には、4の試薬貯蔵槽134〜137及び空気供給器132が配置されている。試薬貯蔵槽134には供給器131が設けられ、試薬貯蔵槽135〜137には供給器133が設けられている。供給器131,133及び空気供給器にはフレキシブルなチューブ群138が接続されている。チューブ群138は、暗箱110の後面を貫通して暗箱110内に入り込み、パイプ95,96に接続している。チューブ群138によって供給器131がパイプ95に通じているとともに、供給器133及び空気供給器132がパイプ96に通じている。
【0048】
供給器131はポンプ等を有する。供給器131は、試薬貯蔵槽134内にある試薬を電磁バルブ93に向けて送液するものである。供給器133はポンプ及び切替バルブ等を有する。供給器133は、試薬貯蔵槽135〜137の何れかを選択して、選択したもの中にある試薬を電磁バルブ94に向けて送るものである。空気供給器132は、空気を電磁バルブ94に向けて送るものである。空気供給器132は、エアポンプ、ファン又はブロワである。
【0049】
〔9〕廃液槽
暗箱110の外側であって暗箱110の前側には、廃液槽140が配置されている。廃液槽140にはフレキシブルなチューブ141が接続されている。チューブ141は、暗箱110の前面を貫通して暗箱110内に入り込み、パイプ99に接続している。そのため、流路82から流れ出た試薬が電磁バルブ98を通って廃液槽140に流れ込む。
【0050】
〔10〕回路構成
図13は、生体高分子検出装置1の回路構成を示すブロック図である。
制御部152は、CPU、RAM、ROM及び駆動回路等を有する。
制御部152は、モータ104、供給器131,133及び空気供給器132の駆動・停止を行う機能を有する。
制御部152は、電磁バルブ93,94,98の開閉を行う機能を有する。
制御部152は、誘起光照射装置120の点灯・消灯を行う機能を有する。
制御部152は、誘起光照射装置120を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の撮像動作を行う。
【0051】
A/D変換器151は、ドレインドライバ73の出力(各ダブルゲートトランジスタ20で光電変換された電気信号)を量子化して制御部84に出力する。
【0052】
制御部152は、A/D変換器11の出力をメモリ154に記録する機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データとしてメモリ14に記録される。
制御部152は、メモリ154に記録された画像データに従った画像を出力装置153に出力させる機能を有する。これにより出力装置153によって画像が出力される。出力装置153は、例えばプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0053】
〔11〕検出手順
生体高分子検出装置1を用いて標的を検出する方法について説明するとともに、生体高分子検出装置1の使用方法及び動作方法について説明する。
【0054】
〔11−1〕標的の作成
スポット60がDNAからなる場合には、検出する標的としてDNAを用いることができ、スポット60が抗体からなる場合には、検出する標的として抗原を用いることができる。
【0055】
標的となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いるRT−PCR反応により得られたcDNAを用いることができる。cDNAはビオチンで標識する。標識されたcDNAを標的DNAという。
【0056】
標的に抗原を用いる場合には、標識しなくてよい。以下、標的に用いる抗原を標的DNAという。
【0057】
〔11−2〕試薬の貯留
上記〔11−1〕で作成した標的DNA又は抗体をバッファー液に混ぜ、それを試薬貯蔵槽135に貯留する。
また、試薬貯蔵槽136には洗浄液を、試薬貯蔵槽137には酵素溶液を貯蔵する。標的がDNAの場合、酵素溶液は、上記〔11−1〕で用いたビオチンに対して結合するストレプトアビジンと、化学発光用酵素(例えば、アルカリ性ホスファターゼ)とを結合してなるものを溶媒に溶かしたものである。一方、標的が抗原の場合、酵素溶液は、その標的抗原と特異的に反応するとともに化学発光用酵素(例えば、アルカリ性ホスファターゼ)と抗体を溶媒に溶かしたものである。
また、試薬貯蔵槽134に化学発光基質溶液を貯蔵する。化学発光基質は、化学発光用酵素と反応することで、発光するものであり、例えばアダマンチルジオキセタン塩素化誘導体(C18H19Cl2O7PNa2)である。
【0058】
〔11−3〕生体高分子検出装置の動作
生体高分子検出装置1を起動させると、制御部152が図14に示すシーケンス制御を実行する。
【0059】
まず、制御部152が誘起光照射装置120を消灯する。制御部152がモータ104を駆動し、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が水平状態になる(図9、図11参照)。制御部152が電磁バルブ93を閉じるとともに、電磁バルブ94,98を開く(ステップS1)。
【0060】
次に、制御部152が供給器133を駆動すると、供給器133によって試薬貯蔵槽135が選択され、試薬貯蔵槽135内にあるバッファー液が供給器133によって送液される(ステップS2)。これにより、バッファー液が電磁バルブ94を通って流路82に供給される。
【0061】
次に、制御部152が供給器133を停止するとともに、電磁バルブ94及び電磁バルブ98を閉じる(ステップS3)。これにより、バッファー液が流路82内に閉じ込められる。
【0062】
そして、制御部152が所定時間待機する(ステップS4)。この間、標的がDNAである場合には、バッファー液内の標的DNAが相補的なスポット60のプローブDNAとハイブリダイズするが、相補的でないスポット60のプローブDNAには結合しないか、結合したとしても僅かである。一方、標的が抗原である場合、バッファー液内の標的抗原が特異的なスポット60の抗体と反応するが、特異的でないスポット60の抗体と反応しない。
【0063】
次に、制御部152が電磁バルブ94,98を開き(ステップS5)、供給器133を駆動する(ステップS6)。そうすると、供給器133によって試薬貯蔵槽136が選択され、試薬貯蔵槽136内にある洗浄液が供給器133によって送液される。これにより、流路82内のバッファー液が廃液槽140へ廃棄され、更に流路82内が洗浄液によって洗浄される。ハイブリダイズした標的DNA又は反応した標的抗原は廃液槽140へ流れ出ないが、ハイブリダイズしなかった標的DNA又は反応しなかった標的抗原は洗浄液とともに廃液槽140へ流れ出る。流路82内が洗浄されたら、供給器133が制御部152によって停止される。
【0064】
次に、制御部152が供給器133を駆動すると(ステップS7)、供給器133によって試薬貯蔵槽137が選択され、試薬貯蔵槽137内にある酵素溶液が供給器133によって送液される。これにより酵素溶液が流路82に供給される。これにより、標的がDNAである場合には、酵素溶液中のストレプトアビジンが、プローブDNAにハイブリダイズした標的DNAのビオチンと結合する。一方、標的が抗原である場合には、酵素溶液中の抗体が、スポット60の抗体に結合した標的抗原と反応する。
【0065】
供給器133の停止後、制御部152が供給器133を駆動すると(ステップS8)、供給器133によって試薬貯蔵槽136が選択され、試薬貯蔵槽136内にある洗浄液が供給器133によって送液される。これにより、流路82内の酵素溶液が廃液槽140へ廃棄され、更に流路82内が洗浄液によって洗浄される。
【0066】
供給器133の停止後、制御部152が空気供給器132を駆動する(ステップS9)。そうすると、空気が流路82を流れ、強制対流により流路82が乾燥する。そして、制御部152が空気供給器132を停止する。
【0067】
次に、制御部152が誘起光照射装置120を点灯する。また、制御部152がモータ104を駆動し、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が垂直状態になる(ステップS10)。そして、制御部152が所定時間待機する(ステップS11)。
【0068】
固体撮像デバイス10が垂直状態になる(図10、図12参照)と、天壁83が誘起光照射装置120に対向し、誘起光照射装置120から発した誘起光が天壁83を透過する。そのため、誘起光が、固体撮像デバイス10の受光面に成膜された光触媒層33や、隔壁81にコーティングされた光触媒に入射する。こうして、光触媒が活性化し、親水性が向上する。
【0069】
また、固体撮像デバイス10が垂直状態になると、流路82の左側が下になり、流路82の右側が上になり、流路82の右側に片寄ったスポット60が流路82の上側になる。また、パイプ91及び電磁バルブ93も下になる。
【0070】
所定時間経過後、制御部152が電磁バル93,94,98を開く(ステップS12)。
次に、制御部152が供給器131及び空気供給器132を駆動する(ステップS13)。これにより、試薬貯蔵槽137内にある化学発光基質溶液が供給器131によって送液され、化学発光基質溶液が電磁バルブ94を通って流路82に供給される。図6及び図15に示すように、流路82の左側が下になっているから、流路82の左側の隔壁81が底になり、化学発光基質溶液160がスポット60に接しないで流路82を流れる。特に、スポット60が流路82の右に片寄って配置されているから、化学発光基質溶液160がスポット60に特に接しにくい。また、流路82には空気供給器132によって空気も送られるから、空気が流路82の上になった部分を流れるから、化学発光基質溶液160がスポット60に特に接しにくい。
【0071】
次に、制御部152が供給器131及び空気供給器132を停止するとともに、電磁バルブ93,94,98を閉じる(ステップS14)。化学発光基質溶液160が流路82内に閉じ込められる。流路82内に閉じ込められた化学発光基質溶液160はスポット60に接しない。
【0072】
次に制御部152がモータ104を駆動し、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が水平状態になる(ステップS15)。そうすると、図16に示すように、流路82内に閉じ込められた化学発光基質溶液160が隔壁81の間において固体撮像デバイス10の受光面に広がり、化学発光基質溶液160がスポット60に接する。何れのスポット60もほぼ同時に化学発光基質溶液160に濡れる。そのため、標的DNA又は標的抗原と結合したスポット60が複数ある場合、これらのスポット60がほぼ同時に光り始める。標的DNA又は標的抗原と結合していないスポット60は光らない。なお、化学発光基質と化学発光用酵素が反応することで、標的DNA又は標的抗原と結合したスポット60が光る。
【0073】
次に、制御部152が誘起光照射装置120を消灯する(ステップS16)。ステップS11で誘起光照射装置120を点灯してからステップS16で誘起光照射装置120を消灯するまでの間の数分〜数十分間、誘起光照射装置120は誘起光を照射し続ける。
次に、制御部152がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させることで、固体撮像デバイス10がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73によって駆動される(ステップS17)。これにより、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布(二次元の画像データ)が制御部152に入力され、制御部152はその画像データをメモリ154に記録する。
【0074】
次に、制御部152が、メモリ154に記録された画像データに従った画像を出力装置153に出力させる(ステップS18)。出力装置153によって出力された画像から標的DNA又は標的抗原を検出することができる。つまり、画像においてスポット60の箇所が明るければ、標的DNAの配列がそのスポット60のDNAと相補的であることを検出できるか、又は標的抗原がそのスポット60の抗体と特異的であることを検出できる。
【0075】
本実施形態によれば、固体撮像デバイス10が垂直状態にあって、隔壁81の間の流路82に化学発光基質溶液160がある状態から、固体撮像デバイス10が水平状態になると(ステップS15)、何れのスポット60もほぼ同時に化学発光基質溶液160に濡れる。そのため、化学発光基質溶液160がスポット60に接触してからその後固体撮像デバイス10によって画像入力が行われるまでの時間は、何れのスポット60でも等しく、バラツキがない。そのため、検出の誤判定を防止することができる。
【0076】
また、固体撮像デバイス10に直接スポット60が固定されているから、別途固体撮像デバイス及びレンズ等を暗箱110に設置する必要がない。そのため、暗箱110の容積を小さくすることができる。
【0077】
また、固体撮像デバイス10に直接スポット60が固定されているから、1つのスポット60つき使用する化学発光基質溶液の量を少なくすることができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなっても良い。
上記実施形態では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を用いた固体撮像デバイス10を例にして説明したが、光電変換素子としてフォトダイオードを用いた固体撮像デバイスに本発明を適用しても良い。フォトダイオードを用いた固体撮像デバイスとしては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサがある。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するための画素回路が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態における生体高分子検出装置に用いられる固体撮像デバイスを示した平面図である。
【図2】上記固体撮像デバイスの一部を示した概略平面図である。
【図3】上記固体撮像デバイスの画素を示した平面図である。
【図4】図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】上記固体撮像デバイス及びその周辺回路を示した図面である。
【図6】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を上から見て示した図である。
【図7】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を前から見て示した図である。
【図8】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を後ろから見て示した図である。
【図9】上記固体撮像デバイス及びそれを回転させる角度設定装置を前から見て示した図である。
【図10】上記固体撮像デバイス及び上記角度設定装置を前から見て示した図である。
【図11】上記生体高分子検出装置を上から見て示した図である。
【図12】上記生体高分子検出装置を上から見て示した図である。
【図13】上記生体高分子検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【図14】上記生体高分子検出装置の制御部による行われるシーケンス制御の流れを示したフローチャートである。
【図15】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を前から見て示した断面図である。
【図16】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を前から見て示した断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 生体高分子検出装置
10 固体撮像デバイス
60 スポット
81 隔壁
83 天壁
100 角度設定装置
131 供給器
152 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子検出装置に関し、特に固体撮像デバイスを用いた生体高分子検出装置及び生体高分子検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイが開発されている(例えば、特許文献1参照)。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである。このようなDNAマイクロアレイを用いる場合、標的DNAを各スポットに滴下すると、標的DNAはそれ相補的なDNAとハイブリダイゼーションし、相補的なDNAとはハイブリダイゼーションしない。その後、化学発光基質溶液を各スポットに滴下すると、標的DNAとハイブリダイズしたDNAを含むスポットは発光し、標的DNAと結合していないスポットは発光しない。その後、これらスポットの発光状態をCCDセンサ等で同時に検出する。これにより、標的DNAを検出することができ、標的DNAが発光したスポットのDNAと相補的であることを特定することができる。
【特許文献1】特開2006−6274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、化学発光基質溶液を最初のスポットに滴下してから、最後のスポットに滴下するまでに時間差が生じてしまう。スポットの発光状態を同時に検出すると、スポットごとにバラツキが生じ、誤判定の要因となってしまう。
そこで、本発明は、化学発光基質溶液がどのスポットにも同時に接触できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度とに設定させる角度設定装置と、を備えることを特徴とする生体高分子検出装置が提供される。
【0006】
好ましくは、前記第一角度は0°であり、前記第二角度は90°であり、前記角度設定装置は前記固体撮像デバイスを90°回転させることを特徴とする。
好ましくは、前記固体撮像デバイスは光触媒層を更に備え、前記光触媒層は親水性が向上する処理が施されていることを特徴とする。
好ましくは、化学発光基質溶液を前記隔壁の間に供給する供給器を更に備える。
好ましくは、前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第二角度にし、その後、前記供給器に化学発光基質溶液の供給を前記供給器に行わせ、その後、前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第一角度にし、その後、前記固体撮像デバイスによる画像入力を行う制御部を更に備える。
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の第2の態様によれば、
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、を備えた生体高分子検出装置において、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度とに設定させる工程を含むことを特徴とする生体高分子検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角度設定装置によって固体撮像デバイスを第二角度(垂直状態)にすると、隔壁の間にある化学発光基質溶液が一方の隔壁側に片寄るので、化学発光基質溶液がスポットに接触しない。そして、角度設定装置によって固体撮像デバイスを第一角度(水平状態)にすると、化学発光基質溶液が隔壁の間において固体撮像デバイスの受光面に広がって、スポットに接触する。従って、どのスポットでも化学発光基質溶液がほぼ同時に接触する。そのため、誤判定を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
〔1〕固体撮像デバイス及びスポット
図1は、図11に示す生体高分子検出装置1に用いられる固体撮像デバイス10を示した平面図である。図2は、固体撮像デバイス10の一部の受光面を示した平面図である。図3は、1つの画素を示した平面図である。図4は、図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。なお、図2及び図3では、主に配線及び電極を示す。
【0011】
図1に示すように、固体撮像デバイス10の受光面には4つのスポット60が固定されている。スポット60は、既知の塩基配列のcDNA(プローブDNA)の群集であったり、既知の抗体の群集であったりする。スポット60は、プローブとなるcDNA(プローブDNA)、抗体その他生体高分子の溶液を固体撮像デバイス10の受光面に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知の塩基配列のcDNAを用いた場合について説明する。
【0012】
1つのスポット60では、同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNAが多数集まってその群集が固定化されている。スポット60ごとにプローブDNAの塩基配列が異なっている。プローブDNAとしては、既知のmRNAの塩基配列が用いられたり、その一部と同一の又は相補的な塩基配列のDNAが用いられたりする。
【0013】
図2に示すように、固体撮像デバイス10には、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が縦横に配列されている。また、固体撮像デバイス10には、複数のボトムゲートライン41、ソースライン42、ドレインライン43及びトップゲートライン44が設けられている。
【0014】
スポット60は、固体撮像デバイス10の受光面に点着されている。図2によれば、1つのスポット60は4つのダブルゲートトランジスタ20上に重なるように形成されているが、1つのスポット60に重なるダブルゲートトランジスタ20の数は4つに限らず、1つのスポット60につき一又は複数のダブルゲートトランジスタ20が重なっていればよい。また、スポット60の数も4つに限らず、2つ以上であればよい。
【0015】
図4に示すように、固体撮像デバイス10は、透明基板13と、ボトムゲート絶縁膜22と、トップゲート絶縁膜29と、保護絶縁膜32と、光触媒層33とを積層してなる。
【0016】
透明基板13は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、ガラス基板(例えば、石英ガラス製の基板)、プラスチック基板(例えば、ポリカーボネート又はPMMA製の基板)その他の絶縁性透明基板である。
【0017】
ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有する。ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜である。
光触媒層33は、二酸化チタン等からなる。光触媒層33に誘起光(例えば、紫外線波長域の光)が照射されると、光触媒層33の親水性が向上する光誘起親水化現象が発生する。
【0018】
この固体撮像デバイス10においては、ダブルゲートトランジスタ20が画素であり、ダブルゲートトランジスタ20が光電変換素子として利用されている。複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板13上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列されている。これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。
【0019】
図3、図4に示すように、ダブルゲートトランジスタ20は、ボトムゲート電極21、半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27、ドレイン電極28及びトップゲート電極31を有する。
【0020】
ボトムゲート電極21は透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間に形成されている。半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27及びドレイン電極28はボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間に形成されている。トップゲート電極31はトップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間に形成されている。
【0021】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板13上に形成されている。また、透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間には、複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成され、これらボトムゲートライン41,41,…が互いに平行となって行方向(横方向)に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0022】
半導体膜23は、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んで、ボトムゲート電極21に相対している。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されている。半導体膜23が受光部であり、半導体膜23に入射した光量に応じた量の電子−正孔対が半導体膜23に形成される。半導体膜23は、アモルファスシリコンからなる。
【0023】
チャネル保護膜24は、半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされたものである。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生する。
【0024】
不純物半導体膜25は、半導体膜23の一部に重なるように形成されている。不純物半導体膜25の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜26は、半導体膜23の別の部分に重なるように形成されている。不純物半導体膜26の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物(例えば、ホスフィン)を含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0025】
ソース電極27は、不純物半導体膜25に重なっている。ドレイン電極28は、不純物半導体膜26に重なっている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。ボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間には、複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が形成され、これらソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が列方向(縦方向)に延在している。列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体となって形成されており、列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体なって形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0026】
トップゲート電極31は、半導体膜23との間にチャネル保護膜24及びトップゲート絶縁膜29を挟んで、半導体膜23に相対している。トップゲート電極31は、ダブルゲートトランジスタ20ごとにトップゲート絶縁膜29上に形成されている。また、トップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間には、複数本のトップゲートライン44,44,…が形成され、これらトップゲートライン44,44,…が互いに平行となって行方向に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体となって形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0027】
以上のように構成された固体撮像デバイス10は光触媒層33の表面を受光面としており、固体撮像デバイス10が駆動されることによってダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量が電気信号に変換される。
【0028】
図5は、固体撮像デバイス10及びその周辺回路を示した回路図である。
図5に示すように、固体撮像デバイス10のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ71に、ボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ72に、ドレインライン43,43,…がドレインドライバ73に、それぞれ接続される。また、固体撮像デバイス10のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地される。トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73は、協同して固体撮像デバイス10を駆動するものである。ドレインドライバ73は、各ダブルゲートトランジスタ20において光電変換された電気信号を順次出力する。
【0029】
〔2〕流路、隔壁及び天壁
図6は、固体撮像デバイス10等を上から見て示した図である。図7は、固体撮像デバイス10等を後ろから見て示した図である。図8は、固体撮像デバイス10等を前から見て示した図である。ここで、図6は図7及び図8に示されたVI−VIに沿った面の矢視断面図であり、図7は図6に示されたVII−VIIに沿った面の矢視断面図であり、図8は図6に示されたVIII−VIIIに沿った面の矢視断面図である。
【0030】
図6〜図8に示すように、3つの隔壁81が固体撮像デバイス10の受光面に密着されている。これら隔壁81は、固体撮像デバイス10の受光面に対して立てた(垂直)状態となっているとともに、前後に延びている。また、これら隔壁81は互いに平行となって間隔をおいて配置されている。そのため、隔壁81と隔壁81との間に流路82が形成され、これら流路82が前後に延びている。隔壁81と隔壁81の間隔は3mm程度であり、隔壁81の高さが3mmである。
【0031】
隔壁81は、光触媒(例えば、二酸化チタン)によってコーティングされている。また、隔壁81は、不透明な材料からなり、誘起光(例えば、紫外線波長域の光)を遮蔽する性質を有する。
【0032】
隔壁81の上端には天壁83が取り付けられ、流路82及びスポット60が天壁83によって上から覆われている。天壁83は誘起光を透過する性質を有する。天壁83は、例えば石英ガラスからなる。なお、天壁83が、光触媒(例えば、二酸化チタン)によってコーティングされていてもよい。
【0033】
複数のスポット60は、流路82において隔壁81に沿って前後に配列されている。スポット60は、流路82の両側の隔壁81のうち右側の隔壁81に片寄って配置されている。
【0034】
〔3〕電磁バルブ
図6〜図8に示すように、流路82の後部がパイプ91の一端に接続され、パイプ91の他端が電磁バルブ93のアウトレットに接続され、電磁バルブ93のインレットがパイプ95に接続されている。流路82の後部がパイプ92の一端に接続され、パイプ92の他端が電磁バルブ94のアウトレットに接続され、電磁バルブ94のインレットがパイプ96に接続されている。流路82の前部がパイプ97の一端に接続され、パイプ97の他端が電磁バルブ98のインレットに接続され、電磁バルブ98のアウトレットがパイプ99に接続されている。
【0035】
パイプ92がパイプ91の右方において流路82に接続されている。そのため、パイプ91が流路82の両側の隔壁81のうち左側の隔壁81に片寄り、パイプ92が流路82の両側の隔壁81のうち右側の隔壁81に片寄っている。
【0036】
電磁バルブ93,94,98は電磁駆動式の開閉弁である。
【0037】
〔4〕角度設定装置
図9及び図10は、固体撮像デバイス10及び角度設定装置100等を前から見て示した図である。
角度設定装置100は、図9に示すように水平面を基準とした固体撮像デバイス10の角度を水平方向である第一角度に設定したり、図10に示すように垂直方向である第二角度に設定したりする。ここでは、第一角度を0°(水平状態)とし、第二角度を90°(垂直状態)とし、角度設定装置100は固体撮像デバイスを90°回転させているが、これに限らず、第二角度は隔壁の間にある化学発光基質溶液が一方の隔壁側に片寄ってスポットに接触しない角度であれば良く、第一角度は化学発光基質溶液が隔壁の間において固体撮像デバイスの受光面に広がって全てのスポットに接触する角度であればよい。具体的には、第一角度は−45°〜45°、第二角度は90°〜180°程度であっても良い。
尚、ここでの水平方向とは、重力の働く方向に対して直交する方向(生体高分子検出装置1が載置されている地平面に対して平行方向)をいい、垂直方向とは、重力の働く方向に対して平行な方向(生体高分子検出装置1が載置されている地平面に対する垂線方向)をいう。
【0038】
この角度設定装置100においては、軸101が前後に延びている。軸101が延びる方向と、図6に示された流路82が延びる方向は平行となっている。軸101に載置板102及び載置板103が固定されている。載置板102及び載置板103は軸101から軸101の径方向に延びており、載置板102が載置板103に対して90°となっている。
【0039】
軸101のラジアル荷重及びアキシアル荷重が軸受によって受けられ、軸101が回転可能となっている。図9に示すように、載置板102が水平状態となっている場合には、載置板103が垂直状態となっている。一方、図10に示すように、載置板102が垂直状態となっている場合には、載置板103が水平状態になっている。
【0040】
固体撮像デバイス10の受光面と反対側の面が載置板102に面接触した状態で、最も左の隔壁81が載置板103に面接触し、固体撮像デバイス10及び隔壁81が載置板102,103によって周方向に挟まれている。こうして、固体撮像デバイス10が載置板102に取り付けられている。
【0041】
〔5〕暗箱
図11及び図12は、生体高分子検出装置1を上から見て示した図である。図11及び図12において、暗箱110を破断した状態で示す。
【0042】
図11及び図12に示すように、固体撮像デバイス10及び角度設定装置100等が暗箱110内に収められている。暗箱110によって暗箱110の内側が遮光されている。角度設定装置100の軸101は軸受によって暗箱110の底に取り付けられ、その軸101が前後に延びている。
【0043】
暗箱110の左右の幅及び前後の長さは5cm程度あり、暗箱110の高さは3cm程度である。
【0044】
〔6〕角度設定装置のアクチュエータ
図11及び図12に示すように、モータ104が暗箱110内に設置されている。角度設定装置100の軸101がモータ104によって駆動される。軸101がモータ104に直結されていてもよいし、歯車列、ベルト&プーリー、チェーン&スプロケット、減速機、増速機その他の伝動機構を介してモータ104に結合されていてもよい。
【0045】
〔7〕誘起光照射装置
図11及び図12に示すように、誘起光照射装置120が暗箱110内に設置されている。誘起光照射装置120は角度設定装置100の左方に配置されている。誘起光照射装置120は右に向けて誘起光を照射する。誘起光照射装置120から発する誘起光は、天壁83を透過する。
【0046】
図12に示すように、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が垂直状態となっている場合には、固体撮像デバイス10の受光面が左方の誘起光照射装置120に向いている。一方、図11に示すように、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が水平状態となっている場合には、固体撮像デバイス10の受光面が上に向いている。
【0047】
〔8〕供給源
暗箱110の外側であって暗箱110の後ろ側には、4の試薬貯蔵槽134〜137及び空気供給器132が配置されている。試薬貯蔵槽134には供給器131が設けられ、試薬貯蔵槽135〜137には供給器133が設けられている。供給器131,133及び空気供給器にはフレキシブルなチューブ群138が接続されている。チューブ群138は、暗箱110の後面を貫通して暗箱110内に入り込み、パイプ95,96に接続している。チューブ群138によって供給器131がパイプ95に通じているとともに、供給器133及び空気供給器132がパイプ96に通じている。
【0048】
供給器131はポンプ等を有する。供給器131は、試薬貯蔵槽134内にある試薬を電磁バルブ93に向けて送液するものである。供給器133はポンプ及び切替バルブ等を有する。供給器133は、試薬貯蔵槽135〜137の何れかを選択して、選択したもの中にある試薬を電磁バルブ94に向けて送るものである。空気供給器132は、空気を電磁バルブ94に向けて送るものである。空気供給器132は、エアポンプ、ファン又はブロワである。
【0049】
〔9〕廃液槽
暗箱110の外側であって暗箱110の前側には、廃液槽140が配置されている。廃液槽140にはフレキシブルなチューブ141が接続されている。チューブ141は、暗箱110の前面を貫通して暗箱110内に入り込み、パイプ99に接続している。そのため、流路82から流れ出た試薬が電磁バルブ98を通って廃液槽140に流れ込む。
【0050】
〔10〕回路構成
図13は、生体高分子検出装置1の回路構成を示すブロック図である。
制御部152は、CPU、RAM、ROM及び駆動回路等を有する。
制御部152は、モータ104、供給器131,133及び空気供給器132の駆動・停止を行う機能を有する。
制御部152は、電磁バルブ93,94,98の開閉を行う機能を有する。
制御部152は、誘起光照射装置120の点灯・消灯を行う機能を有する。
制御部152は、誘起光照射装置120を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の撮像動作を行う。
【0051】
A/D変換器151は、ドレインドライバ73の出力(各ダブルゲートトランジスタ20で光電変換された電気信号)を量子化して制御部84に出力する。
【0052】
制御部152は、A/D変換器11の出力をメモリ154に記録する機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データとしてメモリ14に記録される。
制御部152は、メモリ154に記録された画像データに従った画像を出力装置153に出力させる機能を有する。これにより出力装置153によって画像が出力される。出力装置153は、例えばプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0053】
〔11〕検出手順
生体高分子検出装置1を用いて標的を検出する方法について説明するとともに、生体高分子検出装置1の使用方法及び動作方法について説明する。
【0054】
〔11−1〕標的の作成
スポット60がDNAからなる場合には、検出する標的としてDNAを用いることができ、スポット60が抗体からなる場合には、検出する標的として抗原を用いることができる。
【0055】
標的となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いるRT−PCR反応により得られたcDNAを用いることができる。cDNAはビオチンで標識する。標識されたcDNAを標的DNAという。
【0056】
標的に抗原を用いる場合には、標識しなくてよい。以下、標的に用いる抗原を標的DNAという。
【0057】
〔11−2〕試薬の貯留
上記〔11−1〕で作成した標的DNA又は抗体をバッファー液に混ぜ、それを試薬貯蔵槽135に貯留する。
また、試薬貯蔵槽136には洗浄液を、試薬貯蔵槽137には酵素溶液を貯蔵する。標的がDNAの場合、酵素溶液は、上記〔11−1〕で用いたビオチンに対して結合するストレプトアビジンと、化学発光用酵素(例えば、アルカリ性ホスファターゼ)とを結合してなるものを溶媒に溶かしたものである。一方、標的が抗原の場合、酵素溶液は、その標的抗原と特異的に反応するとともに化学発光用酵素(例えば、アルカリ性ホスファターゼ)と抗体を溶媒に溶かしたものである。
また、試薬貯蔵槽134に化学発光基質溶液を貯蔵する。化学発光基質は、化学発光用酵素と反応することで、発光するものであり、例えばアダマンチルジオキセタン塩素化誘導体(C18H19Cl2O7PNa2)である。
【0058】
〔11−3〕生体高分子検出装置の動作
生体高分子検出装置1を起動させると、制御部152が図14に示すシーケンス制御を実行する。
【0059】
まず、制御部152が誘起光照射装置120を消灯する。制御部152がモータ104を駆動し、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が水平状態になる(図9、図11参照)。制御部152が電磁バルブ93を閉じるとともに、電磁バルブ94,98を開く(ステップS1)。
【0060】
次に、制御部152が供給器133を駆動すると、供給器133によって試薬貯蔵槽135が選択され、試薬貯蔵槽135内にあるバッファー液が供給器133によって送液される(ステップS2)。これにより、バッファー液が電磁バルブ94を通って流路82に供給される。
【0061】
次に、制御部152が供給器133を停止するとともに、電磁バルブ94及び電磁バルブ98を閉じる(ステップS3)。これにより、バッファー液が流路82内に閉じ込められる。
【0062】
そして、制御部152が所定時間待機する(ステップS4)。この間、標的がDNAである場合には、バッファー液内の標的DNAが相補的なスポット60のプローブDNAとハイブリダイズするが、相補的でないスポット60のプローブDNAには結合しないか、結合したとしても僅かである。一方、標的が抗原である場合、バッファー液内の標的抗原が特異的なスポット60の抗体と反応するが、特異的でないスポット60の抗体と反応しない。
【0063】
次に、制御部152が電磁バルブ94,98を開き(ステップS5)、供給器133を駆動する(ステップS6)。そうすると、供給器133によって試薬貯蔵槽136が選択され、試薬貯蔵槽136内にある洗浄液が供給器133によって送液される。これにより、流路82内のバッファー液が廃液槽140へ廃棄され、更に流路82内が洗浄液によって洗浄される。ハイブリダイズした標的DNA又は反応した標的抗原は廃液槽140へ流れ出ないが、ハイブリダイズしなかった標的DNA又は反応しなかった標的抗原は洗浄液とともに廃液槽140へ流れ出る。流路82内が洗浄されたら、供給器133が制御部152によって停止される。
【0064】
次に、制御部152が供給器133を駆動すると(ステップS7)、供給器133によって試薬貯蔵槽137が選択され、試薬貯蔵槽137内にある酵素溶液が供給器133によって送液される。これにより酵素溶液が流路82に供給される。これにより、標的がDNAである場合には、酵素溶液中のストレプトアビジンが、プローブDNAにハイブリダイズした標的DNAのビオチンと結合する。一方、標的が抗原である場合には、酵素溶液中の抗体が、スポット60の抗体に結合した標的抗原と反応する。
【0065】
供給器133の停止後、制御部152が供給器133を駆動すると(ステップS8)、供給器133によって試薬貯蔵槽136が選択され、試薬貯蔵槽136内にある洗浄液が供給器133によって送液される。これにより、流路82内の酵素溶液が廃液槽140へ廃棄され、更に流路82内が洗浄液によって洗浄される。
【0066】
供給器133の停止後、制御部152が空気供給器132を駆動する(ステップS9)。そうすると、空気が流路82を流れ、強制対流により流路82が乾燥する。そして、制御部152が空気供給器132を停止する。
【0067】
次に、制御部152が誘起光照射装置120を点灯する。また、制御部152がモータ104を駆動し、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が垂直状態になる(ステップS10)。そして、制御部152が所定時間待機する(ステップS11)。
【0068】
固体撮像デバイス10が垂直状態になる(図10、図12参照)と、天壁83が誘起光照射装置120に対向し、誘起光照射装置120から発した誘起光が天壁83を透過する。そのため、誘起光が、固体撮像デバイス10の受光面に成膜された光触媒層33や、隔壁81にコーティングされた光触媒に入射する。こうして、光触媒が活性化し、親水性が向上する。
【0069】
また、固体撮像デバイス10が垂直状態になると、流路82の左側が下になり、流路82の右側が上になり、流路82の右側に片寄ったスポット60が流路82の上側になる。また、パイプ91及び電磁バルブ93も下になる。
【0070】
所定時間経過後、制御部152が電磁バル93,94,98を開く(ステップS12)。
次に、制御部152が供給器131及び空気供給器132を駆動する(ステップS13)。これにより、試薬貯蔵槽137内にある化学発光基質溶液が供給器131によって送液され、化学発光基質溶液が電磁バルブ94を通って流路82に供給される。図6及び図15に示すように、流路82の左側が下になっているから、流路82の左側の隔壁81が底になり、化学発光基質溶液160がスポット60に接しないで流路82を流れる。特に、スポット60が流路82の右に片寄って配置されているから、化学発光基質溶液160がスポット60に特に接しにくい。また、流路82には空気供給器132によって空気も送られるから、空気が流路82の上になった部分を流れるから、化学発光基質溶液160がスポット60に特に接しにくい。
【0071】
次に、制御部152が供給器131及び空気供給器132を停止するとともに、電磁バルブ93,94,98を閉じる(ステップS14)。化学発光基質溶液160が流路82内に閉じ込められる。流路82内に閉じ込められた化学発光基質溶液160はスポット60に接しない。
【0072】
次に制御部152がモータ104を駆動し、角度設定装置100によって固体撮像デバイス10が水平状態になる(ステップS15)。そうすると、図16に示すように、流路82内に閉じ込められた化学発光基質溶液160が隔壁81の間において固体撮像デバイス10の受光面に広がり、化学発光基質溶液160がスポット60に接する。何れのスポット60もほぼ同時に化学発光基質溶液160に濡れる。そのため、標的DNA又は標的抗原と結合したスポット60が複数ある場合、これらのスポット60がほぼ同時に光り始める。標的DNA又は標的抗原と結合していないスポット60は光らない。なお、化学発光基質と化学発光用酵素が反応することで、標的DNA又は標的抗原と結合したスポット60が光る。
【0073】
次に、制御部152が誘起光照射装置120を消灯する(ステップS16)。ステップS11で誘起光照射装置120を点灯してからステップS16で誘起光照射装置120を消灯するまでの間の数分〜数十分間、誘起光照射装置120は誘起光を照射し続ける。
次に、制御部152がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させることで、固体撮像デバイス10がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73によって駆動される(ステップS17)。これにより、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布(二次元の画像データ)が制御部152に入力され、制御部152はその画像データをメモリ154に記録する。
【0074】
次に、制御部152が、メモリ154に記録された画像データに従った画像を出力装置153に出力させる(ステップS18)。出力装置153によって出力された画像から標的DNA又は標的抗原を検出することができる。つまり、画像においてスポット60の箇所が明るければ、標的DNAの配列がそのスポット60のDNAと相補的であることを検出できるか、又は標的抗原がそのスポット60の抗体と特異的であることを検出できる。
【0075】
本実施形態によれば、固体撮像デバイス10が垂直状態にあって、隔壁81の間の流路82に化学発光基質溶液160がある状態から、固体撮像デバイス10が水平状態になると(ステップS15)、何れのスポット60もほぼ同時に化学発光基質溶液160に濡れる。そのため、化学発光基質溶液160がスポット60に接触してからその後固体撮像デバイス10によって画像入力が行われるまでの時間は、何れのスポット60でも等しく、バラツキがない。そのため、検出の誤判定を防止することができる。
【0076】
また、固体撮像デバイス10に直接スポット60が固定されているから、別途固体撮像デバイス及びレンズ等を暗箱110に設置する必要がない。そのため、暗箱110の容積を小さくすることができる。
【0077】
また、固体撮像デバイス10に直接スポット60が固定されているから、1つのスポット60つき使用する化学発光基質溶液の量を少なくすることができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなっても良い。
上記実施形態では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を用いた固体撮像デバイス10を例にして説明したが、光電変換素子としてフォトダイオードを用いた固体撮像デバイスに本発明を適用しても良い。フォトダイオードを用いた固体撮像デバイスとしては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサがある。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するための画素回路が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態における生体高分子検出装置に用いられる固体撮像デバイスを示した平面図である。
【図2】上記固体撮像デバイスの一部を示した概略平面図である。
【図3】上記固体撮像デバイスの画素を示した平面図である。
【図4】図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】上記固体撮像デバイス及びその周辺回路を示した図面である。
【図6】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を上から見て示した図である。
【図7】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を前から見て示した図である。
【図8】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を後ろから見て示した図である。
【図9】上記固体撮像デバイス及びそれを回転させる角度設定装置を前から見て示した図である。
【図10】上記固体撮像デバイス及び上記角度設定装置を前から見て示した図である。
【図11】上記生体高分子検出装置を上から見て示した図である。
【図12】上記生体高分子検出装置を上から見て示した図である。
【図13】上記生体高分子検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【図14】上記生体高分子検出装置の制御部による行われるシーケンス制御の流れを示したフローチャートである。
【図15】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を前から見て示した断面図である。
【図16】上記固体撮像デバイス及びその周辺構造を前から見て示した断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 生体高分子検出装置
10 固体撮像デバイス
60 スポット
81 隔壁
83 天壁
100 角度設定装置
131 供給器
152 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度とに設定させる角度設定装置と、を備えることを特徴とする生体高分子検出装置。
【請求項2】
前記第一角度は0°であり、前記第二角度は90°であり、前記角度設定装置は前記固体撮像デバイスを90°回転させることを特徴とする請求項1に記載の生体高分子検出装置。
【請求項3】
前記固体撮像デバイスは光触媒層を更に備え、
前記光触媒層は親水性が向上する処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体高分子検出装置。
【請求項4】
化学発光基質溶液を前記隔壁の間に供給する供給器を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3に記載の生体高分子検出装置。
【請求項5】
前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第二角度にし、その後、前記供給器に化学発光基質溶液の供給を前記供給器に行わせ、その後、前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第一角度にし、その後、前記固体撮像デバイスによる画像入力を行う制御部を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の生体高分子検出装置。
【請求項6】
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、を備えた生体高分子検出装置において、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度となるように設定させる工程を含むことを特徴とする生体高分子検出方法。
【請求項1】
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度とに設定させる角度設定装置と、を備えることを特徴とする生体高分子検出装置。
【請求項2】
前記第一角度は0°であり、前記第二角度は90°であり、前記角度設定装置は前記固体撮像デバイスを90°回転させることを特徴とする請求項1に記載の生体高分子検出装置。
【請求項3】
前記固体撮像デバイスは光触媒層を更に備え、
前記光触媒層は親水性が向上する処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体高分子検出装置。
【請求項4】
化学発光基質溶液を前記隔壁の間に供給する供給器を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3に記載の生体高分子検出装置。
【請求項5】
前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第二角度にし、その後、前記供給器に化学発光基質溶液の供給を前記供給器に行わせ、その後、前記角度設定装置を作動して前記固体撮像デバイスを第一角度にし、その後、前記固体撮像デバイスによる画像入力を行う制御部を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の生体高分子検出装置。
【請求項6】
受光面を有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に配列されたスポットと、
前記スポットの両側において前記固体撮像デバイスの受光面上に設けられた隔壁と、
前記隔壁の上に設けられて前記スポットを覆った天壁と、を備えた生体高分子検出装置において、
前記固体撮像デバイスを第一角度と第二角度となるように設定させる工程を含むことを特徴とする生体高分子検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−66084(P2010−66084A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231743(P2008−231743)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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