説明

生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールからの優れた品質のポリトリメチレンエーテルグリコール

1,3−プロパンジオールの重量を基準にして約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物を含む、1,3−プロパンジオールを好適な重合触媒と接触させてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する工程を含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、両方とも参照により本明細書に援用される、2003年5月6日出願の米国仮特許出願第60/468,228号、および2003年8月5日出願の米国特許出願第10/634,611号の優先権を主張するものである。
本発明は、好ましくは再生可能な生物源から得られた1,3−プロパンジオールの使用による、優れた品質、特に色および機能性のポリトリメチレンエーテルグリコールのホモ−およびコポリエーテルの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−プロパンジオール(また、本明細書では以下「PDO」とも称される)は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、および環式化合物をはじめとする様々なポリマーの製造で有用なモノマーである。ポリトリメチレンエーテルグリコールのホモおよびコポリエーテル(本明細書では以下「PO3G」と称される)は、かかるポリマーの例である。ポリマーは最終的には繊維、フィルムなどをはじめとする様々な用途で使用される。
【0003】
1,3−プロパンジオールを生み出すための化学的ルートは公知である。例えば、1,3−プロパンジオールは、
1.ホスフィン、水、一酸化炭素、水素および酸の存在下での触媒上の酸化エチレン(「ヒドロホルミル化ルート」)
2.アクロレインの接触溶液相水和、引き続く還元(「アクロレイン・ルート」)
から製造されてもよい。
【0004】
1,3−プロパンジオールへのこれらの合成ルートの両方とも3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(本明細書では以下また「HPA」とも称される)の中間合成を含む。HPAは最終接触水素化工程でPDOへ還元される。その後の最終精製は、真空蒸留をはじめとする幾つかの方法を含む。
【0005】
トウモロコシ原料のような生物学的なおよび再生可能な資源から生み出された原料を利用する1,3−プロパンジオールへの生化学的ルートが記載されてきた。かかるPDOは本明細書では以下「生化学的PDO」と言われる。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールへ変換することができる細菌菌株は、例えば、種クレブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、および乳酸桿菌(Lactobacillus)に見いだされる。該技術は、それらのすべてが参照により本明細書に援用される、米国特許第5,633,362号明細書、同第5,686,276号明細書、およびごく最近の同第5,821,092号明細書をはじめとする幾つかの特許に開示されている。米国特許第5,821,092号明細書で、Nagarajanらは、とりわけ、組み換え生命体を用いるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生物学的生産方法を開示している。該方法は、1,2−プロパンジオールに対して特異性を有する、異種pduジオール脱水酵素遺伝子で形質変換された病原性大腸菌(E.coli bacteria)を組み入れている。形質変換された大腸菌は、炭素源としてのグリセロールの存在下で培養され、1,3−プロパンジオールは培養基から単離される。細菌および酵母の両方ともグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の炭水化物をグリセロールへ変換することができるので、該発明の方法は、ポリエステル、ポリエーテル、および他のポリマーの製造で有用な1,3−プロパンジオールモノマーの迅速な、高価でない、そして環境的に信頼できる源を提供した。
【0006】
沈殿(例えば、カルボキシレートまたは他の材料だけでなく、1,2−プロピレングリコールでの)が着色した臭気のある成分を所望の製品(酵素のような)から分離して精製調製品を得るために1980年代早期以来ずっと用いられてきた。高分子量成分を発酵槽液体から沈殿させ、次にこれらの成分を還元剤で漂白すること(DE3917645号明細書)は公知である。あるいはまた、分離のサイズより上の高分子量の物質は引き止められる、残留化合物を除去するためのマイクロ濾過、引き続くナノ濾過もまた役立つことが分かった(EP657529号明細書)。しかしながら、ナノ濾過膜は瞬時に詰まってしまい、かつ、非常に高価であり得る。
【0007】
PDO中に存在する色前駆体を除去するための様々な処理方法が先行技術で開示されているが、該方法は骨が折れ、高価であり、かつ、ポリマーのコストを増やす。例えば、Kelsey、米国特許第5,527,973号明細書は、低色ポリエステルのための出発原料として使用することができる精製1,3−プロパンジオールを提供するための方法を開示している。当該方法は、大きな装置の使用と生成物から除去することが困難である大量の水での希釈の必要性とをはじめとする幾つかの不利点を有する。Sunkaraら、米国特許第6,235,948号明細書は、好ましくはパーフッ素化イオン交換ポリマーのような不均一酸触媒と共に予熱することによる1,3−プロパンジオールからの色形成不純物の除去のための方法を開示している。触媒は濾別され、次に1,3−プロパンジオールは、好ましくは真空蒸留によって単離される。精製ジオールからのポリトリメチレンエーテルグリコールの製造は、30〜40のAPHA値を与えたが、ポリマーの分子量は報告されなかった。
【0008】
ポリアルキレンエーテルグリコールは、一般に、相当するアルキレングリコールからの酸触媒脱水またはアルキレンオキシドの酸触媒開環によって製造される。例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコールは、可溶性酸触媒を用いる1,3−プロパンジオールの脱水によってまたはオキセタンの開環重合によって製造することができる。硫酸触媒を用いるグリコールからのPO3Gの製造方法は、それらのすべてが参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2002/0007043A1号明細書および同第2002/0010374A1号明細書に十分に記載されている。該方法によって製造されたポリエーテルグリコールは当該技術で公知の方法によって精製される。ポリトリメチレンエーテルグリコールのための精製方法は典型的には(1)重合中に形成された酸エステルを加水分解するための加水分解工程、(2)酸触媒、未反応モノマー、低分子量線状オリゴマーおよび環式エーテルのオリゴマーを除去するための水抽出工程、(3)存在する残留酸を中和し沈殿させるための、典型的には水酸化カルシウムのスラリーでの塩基処理、ならびに(4)残留水および固形分を除去するためのポリマーの乾燥および濾過を含む。
【0009】
1,3−プロパンジオールの酸触媒重縮合から製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールが品質問題を有する、特に、色が業界にとって受け入れることができないことは周知である。ポリマー品質は一般に原料、PDOの品質に依存する。原料に加えて、重合工程条件およびポリマーの安定性もまたある程度変色に関与する。特にポリトリメチレンエーテルグリコールのケースでは、ポリエーテルジオールは淡色、多くの最終用途で望ましくない特性を有する傾向がある。ポリトリメチレンエーテルグリコールは酸素または空気との、特に高温での接触によって容易に変色するので、重合は窒素雰囲気下で達成され、ポリエーテルジオールは不活性ガスの存在下で貯蔵される。追加の予防措置として、低濃度の好適な酸化防止剤が添加される。約100〜500マイクロg/g(マイクログラム/グラム)ポリエーテルの濃度でのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2.6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)が好ましい。
【0010】
同様に、従来法によるポリトリメチレンエーテルグリコールの色を減らすための試みがそれほど大きな成功もなく行われてきた。例えば、Morrisら、米国特許第2,520,733号明細書は、酸触媒の存在下でのPDOの重合からのポリトリメチレンエーテルグリコールに特有の変色傾向に言及している。ポリトリメチレングリコールの色を改善しそこなった彼らが試みた多くの方法には、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、パーコレーションのみ、および水素化のみの使用が含まれる。その結果として、彼らは、酸触媒(2.5〜6重量%)の存在下でおよび約175℃〜200℃の温度で1,3−プロパンジオールから製造されたポリオールの精製方法を開発した。この精製方法には、フラー土(Fuller's earth)を通したポリマーのパーコレーション、引き続く水素化が含まれる。この広範な精製方法は、色が淡黄色である最終製品を与え、事実、この手順は、色が8ガードナー(Gardner)色、300より大きいAPHA値に相当する品質まで低下したに過ぎず、かつ、現行要件には全体的に不十分であるポリトリメチレンエーテルグリコール(該明細書の実施例XI)をもたらした。
【0011】
Masonは米国特許第3,326,985号明細書で、窒素下で、低分子量のポリトリメチレンエーテルグリコールを真空ストリッピングすることによる改善された色を有する1200〜1400の範囲の分子量のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造手順を開示している。しかしながら、色レベルは定量化されておらず、上記要件に近づかなかったであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
接触前に、1,3−プロパンジオールの重量を基準にして約10マイクロg/g[グラム当たりのマイクログラム]以下の過酸化物化合物を含む、1,3−プロパンジオールを好適な重合触媒と接触させてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する工程を含む方法が開示される。好ましくは、1,3−プロパンジオールは、PDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物を含む。同様に、好ましくは、1,3−プロパンジオールは、PDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
特に明記しない限り、すべての百分率、部、比などは重量による。商標は大文字で示される。
【0014】
さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられる時、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、これは、任意の範囲上限または好ましい値と任意の範囲下限または好ましい値との任意のペアから形成される全範囲を具体的に開示するとして理解されるべきである。
【0015】
本発明は、1,3−プロパンジオールの(酸)触媒重縮合による優れた品質のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造に関する。本発明者らは、今日まで石油化学ルートによって製造された1,3−プロパンジオールの品質が高品質PO3Gポリマーを製造するのに十分なほど良好でないことを見いだした。これは、カルボニル化合物、例えば、ヒドロキシプロピオンアルデヒド、不確かな構造の過酸化物形成化合物、一価アルコール(2−ヒドロキシエチル−1,3−ジオキサン、本明細書では以下「HED」のような)、およびpH測定によって検出できる酸性化合物のような不純物の存在のためである。一価アルコールは、重合中に連鎖停止剤としての機能を果たし、それらは、ポリマー機能性に影響を及ぼし得る「デッドエンド」としてポリマー中へ組み込まれ得る。一価アルコールは色形成に寄与するかもしれないし寄与しないかもしれない。しかしながら、一般に、カルボニル化合物はカラーボディとしばしば関係があり、カルボニル数が大きければ大きいほど、色がより暗くなるであろうと予期できよう。PDO中の上記不純物の幾らかは、酸触媒重合工程中に発色し得る。
【0016】
第1態様に従って、本発明は、接触前に、1,3−プロパンジオールの重量を基準にして約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物を含む、1,3−プロパンジオールを好適な触媒と接触させてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する工程を含む。一般に、アルケン、エーテル、およびアリル化学種は過酸化物を形成する傾向があり、形成された過酸化物は、当該技術で公知のやり方で商業的に入手可能なテストストリップの使用によってまたはヨードメトリー滴定によって測定することができる。
【0017】
本発明の別の態様に従って、1,3−プロパンジオールは、PDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物をさらに含む。好ましくは、PDOは、PDOの重量を基準にして約75マイクロg/g以下、より好ましくは約50マイクロg/g以下、最も好ましくは約25マイクロg/gのカルボニル化合物を含む。カルボニル化合物の説明に役立つ実例は、ヒドロキシプロピオンアルデヒド、および3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドと1,3−プロパンジオールとの反応によるアセタールのような、アセタール形で存在するアルデヒドである。カルボニル含有率は、当該技術で周知のやり方でカルボニル化合物のジニトロフェニルヒドラゾンへの変換後にUV検出によって測定される。
【0018】
本発明の別の態様に従って、1,3−プロパンジオールは、PDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物をさらに含む。好ましくは、PDOは、PDOの重量を基準にして約75マイクロg/g以下、より好ましくは約50マイクロg/g以下、最も好ましくは約25マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む。一価アルコール化合物の説明に役立つ実例は、HEDおよび3−ヒドロキシテトラヒドロピランである。
【0019】
本発明の別の態様に従って、1,3−プロパンジオールは少なくとも99.95重量%の前記ジオールを含有する、すなわち、それは少なくとも純度99.95%である。
【0020】
本発明の別の態様に従って、1,3−プロパンジオールと等量の蒸留水とのブレンドは6.0〜7.5、好ましくは6.0〜7.0のpH(「50/50pH」)を有する。
【0021】
別の態様に従って、本発明は、6.0〜7.5の50/50pHを有し、かつ、PDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物、約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物および約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む、生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールを好適な重合触媒と接触させてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する工程を含む方法を提供する。
【0022】
本発明者らは、少量のこれらの不純物を含有する原材料、特に本明細書で明記される限界値より下のものから出発すると、PDOおよびPO3Gを後処理する必要性を実質的に減らすまたは完全に排除することを見いだした。好ましくは、PDOは生化学的PDOである(生化学的に誘導されたものである)。最も好ましくは、本発明に従った方法で使用されるPDOは、上記のような生物学的な再生可能な源に由来する、すなわち、発酵法からおよびトウモロコシ供給原料から製造される。
【0023】
本発明の別の態様に従って、組成物は、1,3−プロパンジオールの重量を基準にして、約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物、約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物および約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む、生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールを含む。本発明に従ったさらに別の態様によれば、ポリトリメチレンエーテルグリコールは生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールの重合に由来する。
【0024】
好ましくは、本発明に従って使用される1,3−プロパンジオールは約10APHA未満の色値を有する。より好ましくは、本発明に従って使用される1,3−プロパンジオールは約5APHA未満の色値を有する。APHA色測定は、下記の試験方法1に記載される。
【0025】
簡単な手順が、PO3Gを製造するための時間のかかる手順なしに、PO3G製造向けPDO品質を確実なものにするための迅速な方法を提供する。該手順は、PO3Gで色形成の原因となるであろうPDO中の不純物が促進酸加熱試験(AAHT、試験方法6)の穏和な条件下で速やかに現出するという発見に依存している。AAHT手順は、濃硫酸(PDOを基準にして1重量%)との短い加熱期間を伴う。加熱期間は170℃で10分である。こうして、AAHT手順は色前駆体を色に変換するが、何の有意なポリエーテルグリコール形成も起こらない。好ましくは、PDOは約15APHA未満のAAHT後色値を有する。より好ましくは、PDOは約10APHA未満のAAHT後色値を有する。
【0026】
本発明のPDOから製造されたPO3Gは、PO3Gホモ−またはコ−ポリマーであり得る。例えば、PDOは他のジオール(下記の)と重合してコ−ポリマーを製造することができる。
【0027】
本発明で有用なPDOコポリマーは、1,3−プロパンジオールおよび/またはそのオリゴマーに加えて50重量%以下(好ましくは20重量%以下)のコモノマージオールを含有することができる。本方法での使用に好適であるコモノマージオールには、脂肪族ジオール、例えば、エチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,12−ドデカンジオール、脂環式ジオール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビド、ポリヒドロキシ化合物、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールが含まれる。好ましい群のコモノマージオールは、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、イソソルビド、およびそれらの混合物よりなる群から選択される。C6〜C10ジオールが特に有用である。熱安定剤、酸化防止剤および着色材料が必要ならば重合混合物にまたは最終ポリマーに添加されてもよい。
【0028】
幾つかの場合には、それらが入手可能な場合10%以上までの低分子量オリゴマーを使用することが望ましいかもしれない。このように、好ましくは出発原料は1,3−プロパンジオールとそれの二量体および三量体とを含む。最も好ましい出発原料は、90重量%以上、より好ましくは99重量%以上の1,3−プロパンジオールより構成される。
【0029】
PDOからのPO3Gの製造方法は一般に当該技術で公知である。例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第2,520,733号明細書は、ポリトリメチレンエーテルグリコールのポリマーおよびコポリマーと、ヨウ素、無機酸(例えば、硫酸)および有機酸のような脱水触媒の存在下での1,3−プロパンジオールからのこれらのポリマーの製造方法とを開示している。
【0030】
ポリトリメチレンエーテルジオールは、好ましくは、その両方とも参照により本明細書によって援用される、米国特許出願公開第2002/7043 A1号明細書および同第2002/10374 A1号明細書に記載されているように1,3−プロパンジオールの酸触媒重縮合によって製造される。ポリトリメチレンエーテルグリコールはまた、参照により同様に援用されるJ.Polymer Sci.、Polymer Chemistry Ed.28(1985)、429−444ページに記載されているように、環状エーテル、オキセタンの開環重合によって製造することもできる。1,3−プロパンジオールの重縮合はオキセタンの使用よりも好ましい。要望通り、本発明の方法によって製造されたポリエーテルグリコールは、当該技術で公知の方法によってさらに精製して存在する酸を除去することができる。ある種の用途では生成物はさらなる精製なしに使用されてもよいことが認識されるべきである。しかしながら、精製工程はポリマー品質および機能性を著しく改善し、それは(1)重合中に形成される酸エステルを加水分解するための加水分解工程ならびに(2)典型的には(a)酸、未反応モノマー、低分子量線状オリゴマーおよび環状エーテルのオリゴマーを除去するための水抽出工程、(b)存在する残留酸を中和するための固体塩基処理、および(c)残留する水および固形分を除去するためのポリマーの乾燥および濾過より構成される。
【0031】
本発明のPDOから製造されたPO3Gは、好ましくは、約50APHA未満の色値を有する。より好ましくは、PO3G色値は30APHA未満である。好ましくは、本発明のPDOモノマー/オリゴマーを使用して製造されたPO3G製品は、約250〜約5000、好ましくは約500〜約4000、最も好ましくは約1000〜約3000の分子量を有する。
【0032】
本発明の方法は、機能性およびポリマー色の点で改善されたポリトリメチレンエーテルグリコールを提供するであろう。
【0033】
材料および試験方法
試験方法1.APHA値の測定
Hunterlab ColorQuest分光比色計(Spectrocolorimeter)(Reston,VA)を用いてPDOおよびポリマー色を測定した。色数は、米国材料試験協会(ASTM)D−1209に従ってAPHA値(白金−コバルト・システム(Platinum−Cobalt System))として測定する。ポリマー分子量は滴定法から得られたそれらのヒドロキシル価から計算する。
【0034】
試験方法2.PDO含有率およびHEDの測定(ガスクロマトグラフィによる)
未希釈PDOサンプルを、ワックス(例えば、Phenomenex Zorbax Wax、DB−Wax、HP Innowax、または同等物)キャピラリーカラムと水素炎イオン化検出器(FID)とを備えたガスクロマトグラフ中へ注入する。FIDは、時間の関数として検体の濃度に比例する信号を生み出し、信号はインテグレータに確保されるかまたはコンピュータにx、yデータとして保存される。分離され、検出された各成分は、信号が時間に対してプロットされる時に「ピーク」として見られる。すべての不純物はFIDでPDOと同じ重量%応答係数を有すると仮定される。%純度は面積%として計算される。検出下限値:5マイクロg/g。
【0035】
試験方法3.カルボニル含有率の測定(分光光度分析による)
カルボニル化合物を、分光光度法定量化の前にジニトロフェニルヒドラゾン誘導体に変換する。検出下限値:2マイクロg/g。
【0036】
試験方法4.過酸化物含有率の測定
PDO中の過酸化物は、商業的に入手可能な過酸化物テストストリップ(Peroxide Test Strip)、0.5〜25マイクロg/g EM Quant(登録商標)かヨードメトリー滴定法かのいずれかを用いて測定した。滴定法は、5gのサンプルを50mlの2−プロパノール/酢酸溶液に加え、次に溶液を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定することを含む。検出下限値は0.5マイクロg/gである。テストストリップを用いる時、25マイクロg/gより高い濃度は、5〜25マイクロg/g範囲へのサンプルの希釈またはより高い濃度用にデザインされたテストストリップの使用によって定量化することができる。
【0037】
試験方法5.pHの測定(pHは対数目盛で酸性不純物のレベルを示す)
PDOと蒸留水との50:50ブレンドを使用して、pHメーターを用いて溶液のpHを測定した。
【0038】
試験方法6.AAHT手順
PDO(150g)および1.5gの濃硫酸を250mL三つ口フラスコに装入した。溶液を機械的に撹拌し、次に窒素雰囲気下で170℃に10分間加熱した。10分後に、溶液を室温まで冷却し、色を試験方法1に従って測定した。
【実施例】
【0039】
実施例1〜3
1,3−プロパンジオールは2つの石油化学ルートによって商業的に入手可能である。デュポン(DuPont)はアクロレインから出発して1,3−プロパンジオールを製造し、PDOはまた酸化エチレン源からも入手可能である。デュポンはまた、再生可能な源としてトウモロコシから誘導されたグルコースを使用して1,3−プロパンジオールを製造中である。各合成ルートからのPDOのサンプルを、上記の方法に記載されたようにPDO含有率、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジオキサン(HED)含有率、カルボニル含有率、過酸化物含有率および酸性値について分析した。結果を表1に示す。APHA値は、AAHT手順の前後のPDOについて測定し、結果を表2に示す。
【0040】
表1. 1,3 - プロパンジオ−ルに関する化学分析

*ND : 検出できない(限界値については試験方法を参照されたい)
【0041】
表1の結果は、生化学ルートに由来するPDOが石油化学源から誘導されたPDOと比べて最高の純度を有し、かつ、最少の不純物を含有することを示す。







【0042】
表2. 170℃で10分間の酸処理での1,3 - プロパンジオ−ルの変色

【0043】
表2は、実施例1のPDOがAAHT試験後に最も少なく変色し、何の色前駆体不純物も存在しないことを示唆することを示す。アクロレイン−ベースの1,3−プロパンジオールの純度は酸化エチレン−ベースのジオールより高く、かつ、少ないカルボニル化合物を含有する(表1に示されるように)。しかしながら、アクロレインベースのジオールはAAHT法でより強く変色し、比較的高い濃度の色前駆体不純物の存在を示唆する。また、このPDOは、過酸化物の存在から明らかなように過酸化物形成化合物を含有する。
【0044】
実施例4 生化学的PDOからのPO3Gの製造
生化学ルートから得られた1,3−プロパンジオールを使用して下記の通りポリマーを製造する:
窒素注入口、および蒸留ヘッドを備えた22L、四つ口丸底フラスコに、8392gの1,3−プロパンジオールを装入した。該液体を10L/分の速度で窒素スパージし、機械撹拌(フラスコの下方の磁気撹拌機によって駆動される撹拌磁石を用いる)を約15分間行った。15分後に、76.35gの硫酸を、少なくとも5分の期間にわたってポートの1つを通して分液漏斗から滴々ゆっくりと加えた。これが終了した時、15gのPDOを分液漏斗に加え、いかなる残留硫酸をも取り去るために旋回させた。これをフラスコに加えた。混合物を撹拌し、上記のようにスパージし、160℃に加熱した。反応水を重合反応の間すっと蒸留によって除去し、連続して集めた。反応を38.5時間続け、その後それを(撹拌およびスパージングを維持しながら)45℃まで放冷した。得られた粗ポリマーは、NMRによって測定されるように2130の数平均分子量および59のAPHA色を有する。
【0045】
粗材料を次の通り加水分解した。粗ポリマーを等容量の蒸留水と共に22L、五つ口丸底フラスコ(凝縮器およびメカニカル・ミキサーを備えた)に加えた。この混合物を機械的に撹拌し、約150mL/分の速度で窒素スパージし、100℃に加熱した。それを4時間還流させ、その後加熱を止め、混合物を45℃まで放冷した。撹拌を止め、スパージングを最小限まで減らした。相分離が冷却中に起こった。水相水を取り除き、廃棄した。最初の量に等しい容量の蒸留水をフラスコに残った湿潤ポリマーに加えた。混合、スパージングおよび100℃への加熱を再び1時間行い、その後加熱を止め、材料を前記のように放冷した。水相を取り除き、廃棄した。
【0046】
残留硫酸は滴定によって測定し、過剰の水酸化カルシウムで中和した。ポリマーを減圧下に90℃で3時間乾燥し、次にCELPURE C−65濾過助剤でプレコートしたWhatman濾紙を通して濾過した。得られた精製ポリマーは、NMRによって測定されるように2229の数平均分子量および32のAPHA色を有する。
【0047】
実施例5 1,3−プロパンジオールからのPO3Gの製造
使用される1,3−プロパンジオールがアクロレイン・ルートに由来することを除き、ポリマーを実施例4に記載するように製造する。
【0048】
実施例6 1,3−プロパンジオールからのPO3Gの製造
使用される1,3−プロパンジオールが酸化エチレン・ルートに由来することを除き、ポリマーを実施例4に記載するように製造する。
【0049】
表3. PO3Gポリマ−色

【0050】
表3は、実施例1のPDOから誘導された精製PO3Gが他のPDOから誘導されたポリマーより最低の色を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触前に、1,3−プロパンジオールの重量を基準にして約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物を含む、1,3−プロパンジオールを好適な重合触媒と接触させてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する工程を含む方法。
【請求項2】
前記1,3−プロパンジオールがPDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1,3−プロパンジオールがPDOの重量を基準にして約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1,3−プロパンジオールが少なくとも純度99.95%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1,3−プロパンジオールが生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1,3−プロパンジオールが再生可能な生物源を用いる発酵法に由来する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1,3−プロパンジオールが1重量%硫酸で170℃で10分間処理された時に約15APHA未満の色値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約50APHA未満の色を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約250〜約5000の分子量を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールがホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが1,3−プロパンジオールと少なくとも1つの他のC6〜C12ジオールとのコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1,3−プロパンジオールが約6.0〜7.5の50/50pHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
約6.0〜7.5の50/50pHを有し、かつ、1,3−プロパンジオールの重量を基準にして、約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物、約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物および約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む、生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールを好適な重合触媒と接触させてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する工程を含む方法。
【請求項14】
前記1,3−プロパンジオールが約10APHA未満の色を有する、請求項1または13に記載の方法。
【請求項15】
1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールの重量を基準にして、約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物、約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物および約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む組成物。
【請求項16】
前記1,3−プロパンジオールが少なくとも純度99.95%である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1,3−プロパンジオールの重量を基準にして、約100マイクロg/g以下のカルボニル化合物、約10マイクロg/g以下の過酸化物化合物および約100マイクロg/g以下の一価アルコール化合物を含む、生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項18】
前記1,3−プロパンジオールが再生可能な生物源を用いた発酵法に由来する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
生化学的に誘導された1,3−プロパンジオールの重合から誘導されたポリトリメチレンエーテルグリコール。

【公表番号】特表2007−501324(P2007−501324A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532800(P2006−532800)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/014041
【国際公開番号】WO2004/101469
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】