説明

生地シートの折り畳み積層装置および方法

【課題】生地シートの両端に引っ張りやたわみなどのストレスを与えることなく積層数の変更や積層生地の幅寸法の変更などに対応可能であり、積層生地の幅方向の両側の重なり部における非重なり部分の発生を抑制できる生地シートの折り畳み積層装置およびその方法を提供する。
【解決手段】帯状の生地シートを連続的に搬送する積層コンベアと積層生地を連続的に搬送する搬出コンベアを備え、前記積層コンベアの搬送方向Bと前記搬出コンベアの搬送方向Cが平面視において鈍角に交差するよう前記積層コンベアを前記搬出コンベアに対し傾斜する位置に調整可能に備え、前記積層コンベアは先端側に前記搬送方向Bに沿って往復動する可動先端部を備え、前記可動先端部の傾斜先端部を前記搬送方向Cに沿う位置に調節可能に備えている生地シートの折り畳み積層装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパフペストリー,デニッシュペストリー,クロワッサン等の生地と油脂を重ね合わせた多層生地や、うどんのような小麦粉の混練生地など、連続した帯状の生地シートを折り畳み積層した積層生地を製造するための生地シートの折り畳み積層装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばクロワッサン等の食品生地を製造する場合、延展装置によって予め帯状に延展された生地シートを折り畳み複数層に積層している。上述のように生地シートを折り畳み複数層に積層する構成としては、一方向へ連続的に移動する搬出コンベアの上方位置に、当該搬出コンベアに対して直交する方向へ往復動自在な積層コンベアを配置した構成である。さらに、前記積層コンベアの上方位置に、前記積層コンベアに前記生地シートを連続的に搬入する搬入コンベアを構成している。そして、一方向へ連続移動している前記搬出コンベアに対して前記積層コンベアから帯状の生地を連続的に供給すると共に前記積層コンベアを往復動することによって前記生地シートを折り畳み複数層に積層した積層生地を連続的に製造しているものである(例えば特許文献1参照)。
また、搬出コンベアの上方位置に、当該搬出コンベアに対して直交する方向へ往復動自在なコンベア端部を備えた搬入コンベア兼積層コンベアを配置した生地シートの折り畳み積層装置がある。(例えば特許文献2参照)。
前記特許文献1に記載の装置は、搬出コンベアに対し直交する方向へ往復動自在な積層コンベア配置した構成である。また、前記特許文献2に記載の装置は、搬出コンベアに対し直交する方向へ往復動自在なコンベア端部を備えた搬入コンベア兼積層コンベアを配置した構成である。したがって、前記積層コンベアから搬出コンベアに降下する生地シートは、搬出コンベアで一方向に連続的に移動しながら当該搬出コンベアの搬送方向に対し直交する方向、つまり幅方向に往復動されることにより搬出コンベアの上面に九十九状に折り畳まれ複数層に積層されるものである。
図7に示すように、このような積層生地SLは、生地シートSが搬出コンベア7の搬送方向Cに対し直交する幅方向の一方の端部から他方の端部へ向かって折り返される際に、生地シートSの幅方向(積層コンベアの搬送方向Aに直交する方向)の両端部に引っ張りとたるみが生じることとなり、生地シートSの折り畳まれた折り返し部Tが直線状とはならず積層生地SLの幅方向(搬送方向Cに直交する方向)に向かって凸状の曲線状となり、さらには、搬出コンベア7の搬送方向Cに対し平行ではなく、搬出コンベア7の搬送方向Cに対し下流側から上流側に向かって外側に広がるように傾斜する傾向がある。
よって、積層生地SLにおける幅方向の両側の重なり部には幅方向の寸法Lの非重なり部分が生じることになる。この非重なり部分は積層生地SLの中央部付近の積層数に比較して少ない積層数となる。積層生地SLは、搬出コンベア7の下流側に備えられた別の延展装置により所要厚さに延展され、例えば、三角形状や四角形状に切り出されるが、前記非重なり部分が含まれた生地では所要の積層数がないため焼成時の生地の膨張が不十分となってしまう。このような不具合を防止するために延展された積層生地SLの両端の非重なり部分は不要な部分として切り出され耳生地として処分されており、非重なり部分が広くなるほど無駄な部分が多くなる。
【0003】
また、水平に搬送される麺帯(生地シートに同義)を上方に移送した後、降下させるように配置した搬入コンベアと、当該搬入コンベアの先端から移送される前記麺帯を降下する際にひねるように案内するガイドロールと、麺帯に対し斜めに切込線を入れるカッタと、麺帯の両面を交互に押し麺帯を切込線に沿って折り曲げるトラバースと、当該トラバースにより折り曲げられ複数層に積層した麺帯を受け止め水平方向に移送する搬出コンベアを備えた生地シートの折り畳み積層装置がある。(特許文献3)。
前記特許文献3に記載の装置は、麺帯に予め切込線を形成し、該切込線に沿って麺帯を折り畳む構成である。そして、生地シートを2層の積層生地に成形する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295397号公報
【特許文献2】特開平7−213216号公報
【特許文献3】特開昭54−70488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層生地を製造する場合、積層生地における生地シートの積層数は、常に同じではなく製造される製品に応じて変更されるものである。特許文献1及び2に記載の装置では、積層コンベアによる生地シートの搬送速度の増減および往復動さの回数の増減などの変更や、搬出コンベアによる積層生地の搬出速度の増減などにより積層生地の積層数を調節できる。しかしながら、積層生地の折り返し部の傾斜の傾向があり、積層生地における幅方向の両側の重なり部には幅方向の非重なり部分が生じるという問題があった。
【0006】
また、前記特許文献3に記載の装置では、2層に積層することを前提とした装置であり、積層生地の積層数を変更する場合には、切込線を形成するカッタの配置を変更しなければならない。また、麺帯の両面を交互に押し麺帯を切込線に沿って折り曲げるトラバースは、上下のトラバースの間隔や左右への往復動距離などの調整はできないため、積層数の変更や積層生地の幅寸法の変更など、使用者の要望に対応できないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の装置では、積層コンベアの先端部が搬送方向に沿って往復動する構成であるが、積層コンベアの先端部が上流側に縮小する際には積層コンベアで搬送される生地シートの搬送を停止しなければならない。当該搬送コンベアの上流側に延展装置や生地供給装置などを備えた場合には、それら上流側の装置も停止しなければならず、生地シートの供給が不安定となる問題があった。
【0008】
そこで、帯状の生地シートを折り畳み積層した積層生地を製造する場合、生地シートの両端に引っ張りやたわみなどのストレスを与えることなく積層数の変更や積層生地の幅寸法の変更などに対応可能な生地シートの折り畳み積層装置やその方法が望まれていた。さらに、積層生地の幅方向の両側の重なり部における非重なり部分の発生を抑制できる装置やその方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、帯状の生地シートを連続的に搬送する積層コンベアと前記生地シートを折り畳んだ積層生地を連続的に搬送する搬出コンベアを備え、前記積層コンベアの搬送方向Bと前記搬出コンベアの搬送方向Cが平面視において鈍角に交差するよう前記積層コンベアを前記搬出コンベアに対し傾斜する位置に調整可能に備え、前記積層コンベアは先端側に前記搬送方向Bに沿って往復動する可動先端部を備え、前記可動先端部の傾斜先端部を前記搬送方向Cに沿う位置に調節可能に備えている生地シートの折り畳み積層装置である。
また、前記可動先端部が搬送下流側へ移動する往路においては、前記可動先端部の移動速度V2Fを前記生地シートの搬送速度V1の半分に設定し、前記可動先端部が搬送上流側へ移動する復路においては、前記可動先端部の移動速度V2Bを前記搬出コンベアに積層移載される前記生地シートが皺にならないように高速に設定する生地シートの折り畳み積層装置である。
また、前記可動先端部は、前記生地シートを搬送するベルトコンベアの先端部と、前記ベルトコンベアの先端部の下方に配置され水平方向に旋回可能な第1アシストローラとを備えている生地シートの折り畳み積層装置である。
また、前記積層装置の上流側に前記積層コンベアの搬送速度V1と同じ搬送速度で前記生地シートを連続的に搬送する搬入コンベアを備え、前記搬入コンベアは、前記搬入コンベアの搬送方向Aが前記積層コンベアの搬送方向Bと平面視において交差するよう配置され、前記搬入コンベアの先端部と前記積層コンベアの搬送面との間に前記生地シートを案内する第二アシストローラを傾斜する位置に移動調節可能に備えた生地シートの折り畳み積層装置である。
【0010】
積層コンベアの先端に備えた可動先端部を前記積層コンベアの搬送方向Bに往復動させて前記可動先端部から帯状の生地シートを連続的に搬送降下させ、前記可動先端部の移動範囲の下方に備えられ、前記搬送方向Bと平面視において鈍角に交差する搬送方向Cへ移動する搬出コンベアの搬送面に前記生地シートを移載させ、前記搬送方向Cに沿う位置に調整可能に配置された前記可動先端部にて前記生地シートを案内して前記搬出コンベアに積層生地を成形する生地シートの折り畳み積層方法である。
また、前記可動先端部が先端側へ移動する往路においては、前記可動先端部の移動速度V2Fを前記生地シートの搬送速度V1の半分にて移動させながら前記生地シートを前記搬出コンベア上に移載し、前記可動先端部が後端側へ移動する復路においては、前記可動先端部の移動速度V2Bを高速に移動させて前記生地シートが皺にならないように前記搬出コンベアに移載する生地シートの折り畳み積層方法。
また、前記積層装置の上流側に備えた搬入コンベアで前記積層コンベアの搬送速度V1と同じ搬送速度で前記生地シートを連続的に搬送し、前記搬入コンベアの搬送方向Aが前記積層コンベアの搬送方向Bと平面視において交差する方向変換位置において、前記搬入コンベアの先端部と前記積層コンベアの搬送面との間に移動調整可能に備えた第二アシストローラで前記生地シートの両端部に引っ張りやたわみが生じないように前記生地シートを案内する生地シートの折り畳み積層方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯状の生地シートを折り畳み積層した積層生地を製造するとき、積層生地の積層数や積層生地の幅寸法の変更が容易に調節可能である。また、積層生地の幅方向の両側の重なり部における非重なり部分の発生を抑制でき、前述したごとき従来の問題を解消することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る折り畳み積層装置1の平面説明図である。
【図2】図1におけるE−E矢視による折り畳み積層装置1の正面説明図である。
【図3】図1におけるF−F矢視による折り畳み積層装置1の正面説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る折り畳み積層装置1の側面説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る折り畳み積層装置1による生地シートSの積層工程の説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る折り畳み積層装置1による生地シートSの積層工程の説明図である。
【図7】従来の折り畳み積層装置による生地シートSの積層工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明するに、先ず、図1ないし図4を参照して折り畳み積層装置1の全体的構成について概念的、概略的に説明する。この折り畳み積層装置1は、所要の幅寸法W1に延展された連続する帯状の生地シートSを所要の搬送速度V1で搬送する搬入コンベア3、搬入コンベア3から搬送供給される生地シートSを受けてさらに搬送する積層コンベア5、積層コンベア5から搬送供給される生地シートSを所要の折幅W2に積層した積層生地SLとして搬送する搬出コンベア7を備えている。
【0014】
前記搬入コンベア3は、図1ないし図4に概念的、概略的に示すように、箱状のフレーム9L及びフレーム9Rを備えており、このフレーム9L及びフレーム9Rの間には、連続的に無端回動するコンベアベルト11が備えられている。また、前記フレーム9L及びフレーム9Rは、脚部8に支持されている。前記この搬入コンベア3は、例えばペストリー生地などのごとき所要の幅寸法W1及び厚さに延展された連続する帯状の生地シートSを所要の搬送速度V1で連続的に搬送するためのベルトコンベアであり、公知の構造でよいので詳細な説明は省略する。本実施の形態においては、前記搬入コンベア3の搬送方向Aは後述する搬出コンベア7の搬送方向Cと直交するよう前記搬入コンベア3および前記搬出コンベア7が配置されている。
【0015】
前記搬入コンベア3の下方位置には、積層コンベア5が備えられている。この積層コンベア5は、前記搬入コンベア3の搬送下流端部11Fから搬送供給される生地シートSを受けてさらに搬送するコンベアベルト13を備えている。
このコンベアベルト13が箱状のフレーム15L及びフレーム15Rの間に備えられている。そして、このコンベアベルト13は搬送下流端部に配置された先端ローラ17、駆動プーリ19、上流端部に配置された後端ローラ21、さらにアイドルローラ23A,23B,23Cに掛け回されている。前記駆動プーリ19は、前記フレーム15L及びフレーム15R回転自在に支持されるとともに、前記フレーム15R内に取り付けられた駆動モータM1にスプロケット−チェイン機構による動力伝達機構を介して連結されている。
【0016】
また、前記先端ローラ17は補助ローラ18とともにスパンフレーム25に回転自在に支持されている。先端ローラ17及び補助ローラ18は、前記コンベアベルト13の内側にて丸ベルトなどを介して同期回転可能に連結されている。さらに、前記スパンフレーム25は、後述する往復動機構77により搬送方向Bに沿って往復動可能に備えられている。この先端ローラ17の往復動に同調し、前記後端ローラ21も往復動可能に備えられており、前記各ローラに掛け回された前記ベルトコンベア13の張りに緩急が生じないものである。
【0017】
このコンベアベルト13の搬送方向Bは、前記搬入コンベア3搬送方向A対し同方向から傾斜した方向の範囲にて調節可能に備えられている。前記積層コンベア5は、前記搬入コンベア3の脚部8に回動機構を介して回動自在に支持されている。より詳しく説明すると、前記フレーム15L及びフレーム15Rの水平部の後端部の下方ではスパンプレート43により連結されている。スパンプレート43の下面には回動軸45が取り付けられ、前記脚部8のスパンプレート8Aの上面に取り付けられた軸受47に回動可能に支持されている。
そして、フレーム15L及びフレーム15Rの水平部の先端側下面には脚部材49が取り付けられ、その下端には2個のキャスタ51が備えられている。
【0018】
前記搬入コンベア3のフレーム9Lの下流側の側面には、回動目盛板53が取り付けられている。この回動目盛板53には、円弧状の長孔55が設けられており、その隣に目盛57が刻設されている。また、前記回動目盛板53の下側において、前記積層コンベア5のフレーム15Lの上面に指示板59が取り付けられている。そして、固定ねじ61にて前記回動目盛板53を前記指示板53と固定している。この固定ねじ61を緩めた状態で前記回動軸45を回動中心として前記積層コンベア5を前記搬入コンベア3に対し水平方向に旋回できるものである。前記本実施の形態においては、前記搬入コンベア3の搬送方向Aに対し前記積層コンベア5の搬送方向Bの平面視した際の傾きθ1は、0°〜20°の範囲にて調整可能である。
【0019】
前記先端プーリ17の下方には、前記コンベアベルト13の下流端部から搬送降下する生地シートSを前記搬出コンベア7に案内する第1アシストローラ部27が備えられている。第1アシストローラ部27には、4本のアシストローラ29A,29B,29C,29Dがそれぞれ平行に備えられている。これらアシストローラ29Aないし29Dは、前記フレーム15R側に位置する一方の端部が支持プレート31に支持され、前記フレーム15L側に位置する他方の端部が支持プレート33に支持され回動自在に備えられている。アシストローラ29Aないし29Dの互いに隣接するローラは丸ベルト35が掛け回され同期して回転する構成である。また、前記フレーム15R側において前記アシストローラ29Aの一方の端部と前記補助ローラ18の一方の端部には丸ベルト37が掛け回されおり、前記コンベアベルト13が無端回動することにより前記アシストローラ29Aないし29Dが生地シートSを先端側に送り出すように時計回りに回転従動するものである(図3参照)。
【0020】
前記支持プレート31は、前記アシストローラ29Aの長手方向の中心軸上にて前記スパンフレーム25の一方の側板26の支持部26Sに水平回動自在に支持されている。 また、前記支持プレート33は、前記支持部26Sを中心とした仮想円弧上に等間隔に複数の取り付け孔33Hが備えられている。
また、前記支持プレート33は、前記フレーム15Lに往復動可能に備えられたスライドブラケット81FLに取り付けられた支持プレート39の上面に支持され、前記支持部26Sを中心として前記アシストローラ29Aないし29Dを水平方向に旋回可能であり、適宜取付孔33Hにて取付ねじ41により前記支持プレート39に固定されている。
したがって、前記コンベアベルト13の先端、つまり、前記先端ローラ17の長手方向に対し前記アシストローラ29Aないし29Dの長手方向の平面視した際の傾きθ2を調節することが可能である。この傾きθ2は、基本的には前記角度θ1と同じに設定するものである。このとき、前記アシストローラ29Dの長手方向の向き、つまり、生地シートSが前記搬出コンベア7に向かって降下する前記積層コンベア5の傾斜先端部5Fの長手方向の向きは前記搬出コンベア7の搬送方向C沿った向きとなるよう位置調整される。
【0021】
前記搬入コンベア3と前記積層コンベア5の間には、第2アシストローラ部63が備えられている。第2アシストローラ部63は、上下方向に開閉自在のカバー69とこのカバーの内側に第2のアシストローラ65を備えている。
前記カバー69は、前記搬入コンベア3のフレーム9L、9Rの上面に取り付けられた左右の支持ブラケット67L、67Rに支持される第1カバー70と、その内側に第2カバー71を備えている。
前記第2カバー71は、前記支持ブラッケト67R側にて前記第1カバー70に対し回動自在に支持され、前記支持ブラッケト67L側にて前記第1カバー70の上面に備えられた円弧状の長孔73を介して固定ねじ75にて固定される。この第2カバー71の内側には、駆動モータを内装したモータプーリである前記アシストローラ65が備えられている。
【0022】
前記アシストローラ65は、前記カバー69が下方に閉じた状態において前記搬入コンベア3のコンベアベルト11の先端部11Fの下方であり、かつ、前記積層コンベア5のコンベアベルト13の搬送面の上方に配置されている。
また、前記アシストローラ65は、前記第2カバー71を前記第1カバー70に対し水平方向に回動することにより平面視において前記搬入コンベア3のコンベアベルト13の幅方向に対する傾きθ3を調整可能に備えられている。この傾きθ3は、前記傾きθ1の半分程度の角度に設定するものである。
【0023】
前記アシストローラ65は、図3において反時計回りに回転している。前記搬入コンベア3から供給される生地シートSは、前記アシストローラ65の左側、つまり前記搬入コンベア3側に一端戻り、前記アシストローラ65の下側を通って前記積層コンベア5の搬送面上に載置され搬送される。
また、前記搬入コンベア3の搬送方向Aと前記積層コンベア5の搬送方向Bとが平面視において同一ではなく交差した状態に方向変換している。したがって、アシストローラ65を用いることなく、生地シートSの方向変換位置にて前記生地シートSを直接に前記搬入コンベア3から垂下して前記積層コンベア5に載置して搬送する場合には、前記搬入コンベア3の先端部11Fから前記積層コンベア5の先端部13Fまでの行程は、図1において下側(搬送方向に向かって右側)が長く上側(搬送方向に向かって左側)が短い状態であるため前記生地シートSはねじられてしまい、生地シートSの方向変換位置における外側(外角側/搬送方向に向かって右側)に生地の引っ張り、あるいは方向変換位置における内側(内角側/搬送方向に向かって左側)に生地の縮みやたわみ等の欠点が生じてしまう。
【0024】
生地シートSの方向変換位置にて生地シートSの外側に比べ内側に向かって前記アシストローラ65を生地シートSの搬送方向Aに向かって深く入り込むよう折り返すことにより、生地シートSがねじられることなく生地シートSの両端に生地の引っ張り、あるいは生地の縮みやたわみが生じることが抑制できる。
なお、前記アシストローラ65の位置調整の移動方向は、前記外側を中心として水平方向に旋回することに限ることなく斜め下方に旋回するような機構であってもよい。つまり、前記生地シートSを外側に対し内側をより深く折り返すことにより前記搬入コンベア3の先端部11Fから前記積層コンベア5の先端部13Fまでの行程(長さ)を前記生地シートSの両端において等しく調整できればよいものである。
【0025】
前記積層コンベア5のベルトコンベア13の先端部13F及び後端部13Bを往復動させる往復動機構77について説明する。前記フレーム15L及びフレーム15Rの先端側には駆動軸79が左右の軸受80に取り付けられて回転可能に軸支され、その外側(図4における左右側)にはタイミングプーリ83FL及びタイミングプーリ83FRが軸着され、さらに、前記タイミングプーリ83FRの外側には、サーボモータM2が連結されている。
また、前記フレーム15L及びフレーム15Rの後端側には左右に取り付けられた支軸85にタイミングプーリ83BL及びタイミングプーリ83BRが回転自在に軸支されている。そして、前記タイミングプーリ83FLと83BL、及び前記タイミングプーリ83FRと83BRにはそれぞれ無端状のタイミングベルト87L及びタイミングベルト87Rが掛け回されている。そして、前記タイミングベルト87L及び87Rは、前記フレーム15L及び15Rの中間位置にてアイドルプーリ89及びアイドルプーリ91に支持されている。
【0026】
図1において、前記フレーム15Rの先端側の前記コンベアベルト13側に位置する側面には、ガイドレール93が前記タイミングベルト87Rの移動方向と平行に取り付けられている。また、固定部材95は前記タイミングベルト87Rの復路側(図2における下側)を挟持する。スライドブラケット87FRはコの字状に屈曲しており、図4を参照するに、外側で起立した側板部の外側(図4における左側)の面に前記固定部材95を取り付け、内側(図4における右側)の面に上下2段に2個ずつのガイドローラ97が回転自在に取り付けられている。これら上下のガイドローラ97は前記ガイドレール93を上下から挟むように配置されている。したがって、前記タイミングベルト87Rの回動に伴って前記スライドブラケット81FRが前記ガイドレール93に案内されて往復動する。
【0027】
前記スライドブラケット81FRの前記コンベアベルト13側に対向する位置には、前記スライドブラケット81FLが前記スライドブラケット81FRの往復動機構と同様な機構により往復動可能に備えられている。そして、前記スライドブラケット81FLの内側で起立した側板部及び前記スライドブラケット81FRの内側で起立した側板部の間には前記スパンフレーム25が取り付けられている。
【0028】
フレーム15Rの後端側に位置する傾斜部分の内側において前記コンベアベルト13側に位置する側面には、ガイドレール94が前記タイミングベルト87Rの傾斜した移動方向と平行に取り付けられている。また、固定部材96は前記タイミングベルト87Rの復路側を挟持する。スライドブラケット81BRはコの字状に屈曲しており、外側で起立した側板部の外側(図1における下側)の面に前記固定部材96を取り付け、内側(図1における上側)の面にガイドローラ98が回転自在に取り付けられている。このガイドローラ98は前記ガイドレール94の上面に載置されている。したがって、前記タイミングベルト87Rの回動に伴って前記スライドブラケット81BRが前記ガイドレール94に案内されて往復動する。
【0029】
前記スライドブラケット81BRの前記コンベアベルト13側に対向する位置には、スライドブラケット81BLが前記スライドブラケット81BRの往復動機構と同様な機構により往復動可能に備えられている。そして、前記スライドブラケット81BLの内側で起立した側板部及び前記スライドブラケット81BRの内側で起立した側板部の間には前記後端ローラ21が取り付けられている。
【0030】
上記往復動機構77の構成から理解できるように、前記サーボモータM2の駆動により前記駆動軸79を正逆方向に回動して前記タイミングベルト87L、87Rを同期回動することにより前記先端ローラ17、第1アシストローラ部27及び前記後端ローラ21が同期して往復動し、あわせて前記ベルトコンベア13の先端部13F及び後端部13Bが同期して往復動する。以後、前記ベルトコンベア13の先端部13F及び第1アシストローラ部27の可動部分を前記積層コンベア5の可動先端部4と称す。
【0031】
前記積層コンベア5の可動先端部4の移動速度は、往路および復路において相違する。前記可動先端部4が搬送方向に沿って伸張前進する往路では、前記可動先端部4の移動速度V2F(図5a参照)を前記積層コンベア5の搬送速度V1の半分の速度に設定する。また、前記可動先端部4が縮小後退する復路では、前記可動先端部4の移動速度V2B(図5c参照)を前記搬出コンベア7の搬送面に移載される生地シートSが皺とならないように高速度に設定する。
【0032】
前記搬出コンベア7は、無端状のコンベアベルト6を図示されない駆動プーリなどの複数のプーリに掛け回したベルトコンベアであり、所要の搬送速度V3で連続的に駆動される。
【0033】
折り畳み積層装置1は、各部の動作を設定するための設定値を入力する、さらには各部の動作状況をモニタリングするための操作パネルP備えている。また、この操作パネルPにて入力された設定値に基づき各部の動作を制御する制御装置101を備えている。この制御装置101には、前記搬出コンベア7に対する前記積層コンベア5の傾きθ1を算出するためのプログラムが組み込まれている。
前記傾きθ1の値は、前記操作パネルPにて生地シートSの幅寸法W1、搬送速度V1、積層生地SLの幅寸法W2、積層数を入力することにより算出され操作パネルの表示画面に表示される。前記積層装置5は、その傾きθ1の値に基づき前記搬出コンベア7に対して傾いた状態に位置調整され、前記固定ねじ61にて固定される。また、前記第1アシストローラ部27のアシストローラ29は前記積層コンベア5に対し傾きθ1と同じ傾きθ2に位置調整され取付ねじ41にて固定される。さらに、前記第2アシストローラ部のアシストローラ65は前記搬入コンベア3の幅方向に対し傾きθ3(θ1の半分の値)に位置調整され固定ねじ75にて固定される。
また、前記制御装置101は前記入力された値に基づき前記可動先端部4の往復動する移動距離及び前記搬出コンベア7に対する移動位置を演算して前記サーボモータM2の駆動制御装置に指令する。また、前記搬出コンベア7の搬送速度V3も前記制御装置101により制御される。
【0034】
次に、生地シートSが積層生地SLに成形される工程について図5及び図6も参照して説明する。図示されない延展装置によって所要の幅寸法W1及び厚みに延展された帯状の生地シートSは所要の搬送速度V1にて前記搬入コンベア3で搬送される。前記生地シートSが前記搬入コンベア3の先端部11Fから垂下して前記生地シートSの先端部分が前記積層コンベア5の搬送面に移乗した後に前記第2アシストローラ部63を開放した状態(図3に鎖線で図示)から下方に移動して閉じる。前記生地シートSは第2アシストローラ部63のアシストローラ65により前記先端部11F側から前記搬入コンベア3側に押し込まれ、そして、アシストローラ65の周面に沿って折り返すように湾曲され前記積層コンベア5の搬送方向Bに沿って搬送速度V1にて搬送される。前記生地シートSは、前記搬入コンベア3の先端部11Fから降下しその両端に生地の引っ張り、あるいは生地の縮みやたわみが生じることなく前記積層コンベア5の搬送面に移載される。
【0035】
前記積層コンベア5の可動先端部4は、前記積層コンベア5の搬送方向Bに沿って所要の距離を往復動する。前記生地シートSは常に搬送速度V1にて搬送されている。そして、前記可動先端部4が搬送上流側に縮小(後退)した状態から搬送下流側へ伸張(前進)する往路では、前記可動先端部4は前記搬送速度V1の半分の速度で搬出コンベア7の左側から右側に移動する(図5a)。さらに前記生地シートSは前記傾斜先端部5Fから降下し、搬送速度V3で移動する前記搬出コンベア7の搬送面上に移載される。このとき、前記生地シートSは前記搬出コンベア5の幅方向に対し前記傾きθ1と同じ大きさの傾きで移載される。
【0036】
次に、前記可動先端部4が搬送下流側に伸張(前進)した状態から搬送上流側へ縮小(後退)する復路では、前記可動先端部4は高速度で後退移動する(図5c)このとき、前記生地シートSには引っ張りや縮みがなく、皺になることなく前記搬出コンベア7の搬送面上に移載される。また、前記生地シートSは前記搬出コンベア7の幅方向右側から左側に向かって前記搬出コンベア7の上流側に傾いて移載される。前記生地シートSが移載される前記傾きは前記可動先端部4の搬送上流側への移動方向とはほぼ一致する。
【0037】
前記可動先端部4がその往復動を繰り返すことにより前記搬出コンベア7の搬送面上に九十九状に折り畳まれ所要の複数層に積層される。そして、積層生地SLの両端の折り返し部Tは前記搬出コンベア7の搬送方向Cに沿って直線状に形成される。
従来のごとく積層コンベアと搬出コンベアを直交した状態で生地シートを九十九状に折り畳み積層生地を成形する場合には、積層コンベアの先端部から垂下する生地シートを搬出コンベアの搬送面の移動により横ずれするように引っ張りながら折り返すため生地シートの両端部に生地の引っ張りや縮みが生じていた。
しかし、本発明の折り畳み積層装置1では、前記生地シートSにねじれによる引っ張りや縮みなどを起こすことなく、前記生地シートSを斜め方向に交互に折り返すようにして積層生地SLを成形する。
【0038】
次に、積層生地SLの積層数を上記実施例より増加させる場合について図6を用いて説明する。生地シートSの搬送速度V1、生地シートSの幅寸法W1及び積層生地SLの幅寸法W2を上記実施例と同じく設定し、積層数を4層から8層に増加させる場合には、前記操作パネルに各設定値を入力することにより新たな傾きθ1の値が算出される。この値は上記実施例1より小さな値となる。この新たな値に基づき前記積層コンベア5、前記第1のアシストローラ29(A,B,C,D)、前記第2のアシストローラ65の位置調整を行なう。つまり、前記傾斜先端部5Fの長手方向の向きを前記搬出コンベア7の搬送方向に沿うように調整する。また、積層装置5の可動先端部4の移動距離は上記実施例1より短く、搬出コンベア7の搬送速度V3は上記実施例1より遅く制御装置により制御駆動される。
【0039】
したがって、折り畳み積層装置1によれば、生地シートSの搬送速度V1、生地シートSの幅寸法W1、積層生地SLの積層数や幅寸法W2を任意に設定でき、それらの設定値に基づき前記積層コンベア5などの傾きが算出できる。そして、前記積層コンベア5などの位置調整が可能であるため積層生地SLの積層数や幅寸法W2の変更が容易に調節でき任意の積層生地SLが成形できる。
【0040】
また、前記積層コンベア5の傾斜先端部5Fを前記搬出コンベア7の搬送方向Cに沿うように調整可能であるため、積層生地SLの幅方向の両側に位置する折り返し部Tが直線状に形成され、さらに、前記折り返し部Tが前記搬送方向Cに対し平行となるため、積層生地SLの幅方向の両側の重なり部における非重なり部分Lの大きさを従来に比べ小さく抑制できるものである。
例えば、幅寸法W1=400mmの生地シートSを用い、積層数=4層、幅寸法W2=360mmの積層生地SLを成形した場合、積層生地SLの非重なり部分は、平均して寸法L=12mmとなった。それに対し従来の装置(例えば特許文献1に記載の装置)を用いて同様な実験を行うと、平均して寸法L=25mmの非重なり部分が生じた。したがって、本発明の折り畳み積層装置1によれば、従来の装置に比べ、非重なり部分を約半分にすることができる。なお、この際の積層コンベア5は、搬送速度V1=1.8m/min、可動先端部4の復路の移動速度V2B=40m/minに設定した。また、傾きθ1は、16°に算出され、その数値に基づき各部の傾きを位置調整した。
【0041】
また、前記積層コンベア5の上流側に搬入コンベア3を前記搬出コンベア7に直交して配置し、前記搬入コンベア3と前記積層コンベア5の間に第2のアシストローラ65を備えることにより生地シートSを搬送の過程で引っ張りや縮みを生じることなく搬送できるため、従来の直交型の積層装置との置き換えが容易に行える。
【符号の説明】
【0042】
1 折り畳み積層装置
3 搬入コンベア
4 可動先端部
5 積層コンベア
5F 傾斜先端部
11 コンベアベルト
13 コンベアベルト
17 先端ローラ
27 第1アシストローラ部
29 アシストローラ
63 第2アシストローラ部
65 アシストローラ
77 往復動機構
101 制御装置
A,B,C 搬送方向
L 非重なり部分
S 生地シート
SL 積層生地
T 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の生地シートを連続的に搬送する積層コンベアと前記生地シートを折り畳んだ積層生地を連続的に搬送する搬出コンベアを備え、前記積層コンベアの搬送方向Bと前記搬出コンベアの搬送方向Cが平面視において鈍角に交差するよう前記積層コンベアを前記搬出コンベアに対し傾斜する位置に調整可能に備え、前記積層コンベアは先端側に前記搬送方向Bに沿って往復動する可動先端部を備え、前記可動先端部の傾斜先端部を前記搬送方向Cに沿う位置に調節可能に備えていることを特徴とする生地シートの折り畳み積層装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生地シートの折り畳み積層装置において、前記可動先端部が搬送下流側へ移動する往路においては、前記可動先端部の移動速度V2Fを前記生地シートの搬送速度V1の半分に設定し、前記可動先端部が搬送上流側へ移動する復路においては、前記可動先端部の移動速度V2Bを前記搬出コンベアに積層移載される前記生地シートが皺にならないように高速に設定することを特徴とする該装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の生地シートの折り畳み積層装置において、
前記可動先端部は、前記生地シートを搬送するベルトコンベアの先端部と、前記ベルトコンベアの先端部の下方に配置され水平方向に旋回可能な第1アシストローラとを備えていることを特徴とする該装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の生地シートの折り畳み積層装置において、前記積層装置の上流側に前記積層コンベアの搬送速度V1と同じ搬送速度で前記生地シートを連続的に搬送する搬入コンベアを備え、前記搬入コンベアは、前記搬入コンベアの搬送方向Aが前記積層コンベアの搬送方向Bと平面視において交差するよう配置され、前記搬入コンベアの先端部と前記積層コンベアの搬送面との間に前記生地シートを案内する第2アシストローラを傾斜する位置に移動調節可能に備えたことを特徴とする該装置。
【請求項5】
積層コンベアの先端に備えた可動先端部を前記積層コンベアの搬送方向Bに往復動させて前記可動先端部から帯状の生地シートを連続的に搬送降下させ、前記可動先端部の移動範囲の下方に備えられ、前記搬送方向Bと平面視において鈍角に交差する搬送方向Cへ移動する搬出コンベアの搬送面に前記生地シートを移載させ、前記搬送方向Cに沿う位置に調整可能に配置された前記可動先端部にて前記生地シートを案内して前記搬出コンベアに積層生地を成形することを特徴とする生地シートの折り畳み積層方法。
【請求項6】
請求項5に記載の生地シートの折り畳み積層方法において、前記可動先端部が先端側へ移動する往路においては、前記可動先端部の移動速度V2Fを前記生地シートの搬送速度V1の半分にて移動させながら前記生地シートを前記搬出コンベア上に移載し、前記可動先端部が後端側へ移動する復路においては、前記可動先端部の移動速度V2Bを高速に移動させて前記生地シートが皺にならないように前記搬出コンベアに移載することを特徴とする該方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6のいずれかに記載の生地シートの折り畳み積層方法において、前記積層装置の上流側に備えた搬入コンベアで前記積層コンベアの搬送速度V1と同じ搬送速度で前記生地シートを連続的に搬送し、前記搬入コンベアの搬送方向Aが前記積層コンベアの搬送方向Bと平面視において交差する方向変換位置において、前記搬入コンベアの先端部と前記積層コンベアの搬送面との間に移動調整可能に備えた第2アシストローラで前記生地シートの両端部に引っ張りやたわみが生じないように前記生地シートを案内することを特徴とする該方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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