説明

生検診断用内視鏡

【課題】組織標本のコンタミネーション等を防止することができ、しかも病理診断までの処理を極めて迅速に行うことができる生検診断用内視鏡を提供すること。
【解決手段】処置具挿通チャンネル3の入口近傍から分岐する分岐路5の先端に診断用処理部10を設けて、処置具挿入口4から処置具挿通チャンネル3内と診断用処理部10内の一方に選択的に生検標本採取具50を挿入することができるようにすると共に、診断用処理部10に、その内部を拡大観察するための拡大観察手段11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は生検診断用内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の多くは、挿入部内に処置具挿通チャンネルが挿通配置されており、挿入部の先端に配置された処置具突出口から生検鉗子等のような生検標本採取具の先端を突出させて、生体組織から組織標本を採取することができるようになっている。
【0003】
そのような内視鏡の処置具挿通チャンネルに通された生検標本採取具で組織標本が採取されると、その生検標本採取具は処置具挿通チャンネルから引き抜かれる。そして、生検標本採取具から取り出された組織標本に対し、固定、染色、観察用標本作成等の手間が加えられて、顕微鏡観察による病理診断が行われる。
【0004】
しかし、そのような組織標本採取から病理診断までの処理の間に組織標本がいろいろな容器等に移し替えられる等すると、組織標本へのコンタミネーションや逆に組織標本から外部環境への汚染等が発生するおそれがある。
【0005】
そこで従来は、組織標本を収容するための標本収容容器を内視鏡の操作部に設けることで、コンタミネーション等を防止する試みがされていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/038634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明等のように、内視鏡の操作部に標本収容容器を設けて、それを病理診断までの処理工程を通じて用いれば、組織標本へのコンタミネーションを相当程度防止することができる。
【0008】
しかし、そのような構成を採用しても、病理診断を行うまでに数多くの手間がかかることには変わりがなく、時間的及び人的に余裕を持てない状態が継続されてしまう場合がある。
【0009】
本発明は、組織標本のコンタミネーション等を防止することができ、しかも病理診断までの処理を極めて迅速に行うことができる生検診断用内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の生検診断用内視鏡は、挿入部の基端に操作部が連結されて、挿入部内に挿通配置された処置具挿通チャンネルの入口開口である処置具挿入口が操作部に設けられた生検診断用内視鏡において、処置具挿通チャンネルの入口近傍から分岐する分岐路の先端に診断用処理部を設けて、処置具挿入口から処置具挿通チャンネル内と診断用処理部内の一方に選択的に生検標本採取具を挿入することができるようにすると共に、診断用処理部に、その内部を拡大観察するための拡大観察手段を設けたものである。
【0011】
なお、そのような診断用処理部に、染色液を注入するための染色液注入部が設けられているとよく、染色液注入部が、診断用処理部の軸線周り方向に回転可能に設けられていてもよい。
【0012】
また、拡大観察手段が、診断用処理部の軸線方向に移動可能に設けられていてもよく、処置具挿入口が、処置具挿通チャンネル内方向に向かう生検処置用挿入口と、分岐路方向に向かう診断処理用挿入口とを一つにつないで形成されていてもよい。そして、診断用処理部が操作部に対し着脱自在に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組織標本を採取した生検標本採取具の先端を、処置具挿通チャンネルの入口から引き出すことなく診断用処理部内に差し込むことで、組織標本のコンタミネーション等が防止される環境下において、組織採取から病理診断までの処理を極めて迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡に設けられている処置具挿入口と診断用処理部付近の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡の、図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡の外観図である。
【図4】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡の動作説明図である。
【図5】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡の動作説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡において、組織標本を診断用処理部内に移す際の動作説明図である。
【図7】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡において、組織標本が染色される状態の動作説明図である。
【図8】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡において、組織標本が拡大観察される状態の動作説明図である。
【図9】本発明の実施例に係る生検診断用内視鏡において、組織標本の病理診断が終了した後の状態の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は生検診断用内視鏡の全体構成を略示しており、可撓性挿入部1の基端が操作部2の下端に連結されている。
【0016】
可撓性挿入部1内に全長にわたって挿通配置された処置具挿通チャンネル3の出口開口は可撓性挿入部1の先端に配置され、処置具挿通チャンネル3の入口開口である処置具挿入口4は、操作部2の下端部付近に斜め上方に向けて突出配置されている。
【0017】
ただし、処置具挿通チャンネル3の入口近傍から分岐する分岐路5が操作部2内に設けられていて、その分岐路5の先端に診断用処理部10が設けられている。その結果、処置具挿入口4から処置具挿通チャンネル3内と診断用処理部10内の一方に選択的に生検標本採取具を挿入することができる。
【0018】
診断用処理部10には、その内部を拡大観察するための拡大観察手段11と、外部から診断用処理部10内に染色液を注入するための染色液注入部12とが設けられている。13は、拡大観察手段11から延出する信号ケーブルである。
【0019】
図1は、そのような構成を備えた診断用処理部10とその周辺部分を示しており、図2はII−II断面図である。処置具挿入口4は、処置具挿通チャンネル3内方向に向かう生検処置用挿入口4pと、分岐路5方向に向かう診断処理用挿入口4qとを一つにつないで、開口縁部が長孔状をなす形状に形成され、処置具挿通チャンネル3と分岐路5との分岐部は断面形状が略正円形状に形成されている。
【0020】
その結果、図4に示されるように、処置具挿入口4の生検処置用挿入口4p側からその内壁に沿って内視鏡用生検鉗子等のような生検標本採取具50を挿入すると、その生検標本採取具50は処置具挿通チャンネル3内に導かれ、図5に示されるように、診断処理用挿入口4q側からその内壁に沿って挿入すると、生検標本採取具50が分岐路5内から診断用処理部10内に導かれる。
【0021】
図1に戻って、診断用処理部10は、先端側が塞がった略円筒状の支持枠体10Aを備えている。支持枠体10Aは透明材で形成されていて、外部からその内部を照明したり内部の様子を観察したりすることができる。ただし、支持枠体10A内に照明手段を設けて、支持枠体10Aを不透明材で形成してもよい。
【0022】
分岐路5の先端部分は、操作部2から処置具挿入口4の逆側に突出する円筒状に形成されていて、その部分に支持枠体10Aが矢印Rで示されるように軸線周り方向に回転自在に、かつ矢印Lで示されるように軸線方向に移動自在に嵌合している。
【0023】
なお、支持枠体10Aが分岐路5の先端部分から抜け落ちてしまわないように、支持枠体10Aを分岐路5に対し任意の状態に手動で固定するための手動ねじ等からなる固定手段が設けられているが、その図示は省略されている。その固定手段による固定状態を完全に解除すれば、支持枠体10Aを操作部2から取り外す(即ち、診断用処理部10を操作部2から取り外す)こともできる。
【0024】
拡大観察手段11は、支持枠体10A内にフォーカスされた撮像光学系11Aと、その撮像光学系11Aの結像位置に配置された固体撮像素子11Bとを備えていて、支持枠体10A内を拡大観察することができる。ただし、拡大観察手段11がそれ以外の構成であっても差し支えない。
【0025】
固体撮像素子11Bから出力される撮像信号は、信号ケーブル13を経由して外部のビデオプロセッサ(図示せず)に送られて、支持枠体10A内の拡大観察画像がモニタ(図示せず)に表示される。
【0026】
染色液注入部12は、例えば支持枠体10Aの側壁に形成された孔を弾力性のあるゴム材又はスポンジ状の材料等で塞いで形成されている。ただしその中央部に、弾力的に押し広げ自在な閉塞孔等が形成されていてもよい。その結果、染色液が入った注射器等を染色液注入部12に外部から突き刺して、支持枠体10A内に染色液を注入することができる。
【0027】
なお、図2に(A)、(B)が並んで例示されているように、拡大観察手段11と染色液注入部12との位置関係は適宜に設定すればよい。具体的には、使用される生検標本採取具のタイプ等に対応して、図2(A)に示されるように拡大観察手段11と染色液注入部12とを180°向きを変えて配置してもよく、図2(B)に示されるように90°向きを変えて配置してもよい。
【0028】
図6〜図9は、上述のように構成された生検診断用内視鏡の処置具挿通チャンネル3に生検標本採取具50を差し込んでその先端の組織標本採取部51に採取された組織標本100を病理診断する際の処理を順に示している。
【0029】
処置具挿通チャンネル3を経由して可撓性挿入部1の先端から体内に突き出した組織標本採取部51に組織標本100が採取されたら、図6に示されるように、生検標本採取具50を手元側に引き戻す。
【0030】
ただし、組織標本採取部51を処置具挿入口4から外部に出すことなく、処置具挿通チャンネル3内から分岐路5内に直接送り込む。その結果、組織標本100のコンタミネーション等の可能性が小さくなる。
【0031】
図7に示されるように、組織標本採取部51を診断用処理部10内に差し込んだら、染色液注入部12に外部から注射器30等を突き刺して、組織標本100を染色する。染色液注入部12が設けられている支持枠体10Aは診断用処理部10の軸線周り方向に回転自在なので、組織標本100に対し適切な向きから染色液を注入することができる。
【0032】
そのようにして組織標本100が染色されたら、図8に示されるように、組織標本100を拡大観察手段11で観察し易い位置にセットして、病理診断のための拡大観察を行う。拡大観察手段11が設けられている支持枠体10Aは診断用処理部10の軸線方向に移動自在なので、組織標本100の所望の位置を観察することができる。
【0033】
そして、全ての病理診断処理が終わったら、図9に示されるように、操作部2から診断用処理部10を外すことで、組織標本100を組織標本採取部51からそのまま外して、図示されていない外部容器等に移すことができる。
【0034】
このようにして、組織標本100を内視鏡から取り出すことなく、組織標本100のコンタミネーション等を防止して、組織採取、染色から病理診断までの処理を迅速に行うことができる。
【0035】
なお、本発明は生検診断用内視鏡についての発明であって、生検標本採取具50としてはどのようなものを用いてもよいが、組織標本100を鋭利にスライスして採取することができる方式の生検標本採取具50を採用すれば、病理診断がより向上する。
【符号の説明】
【0036】
1 可撓性挿入部(挿入部)
2 操作部
3 処置具挿通チャンネル
4 処置具挿入口
4p 生検処置用挿入口
4q 診断処理用挿入口
5 分岐路
10 診断用処理部
10A 支持枠体
11 拡大観察手段
12 染色液注入部
50 生検標本採取具
100 組織標本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の基端に操作部が連結されて、上記挿入部内に挿通配置された処置具挿通チャンネルの入口開口である処置具挿入口が上記操作部に設けられた生検診断用内視鏡において、
上記処置具挿通チャンネルの入口近傍から分岐する分岐路の先端に診断用処理部を設けて、上記処置具挿入口から上記処置具挿通チャンネル内と上記診断用処理部内の一方に選択的に生検標本採取具を挿入することができるようにすると共に、
上記診断用処理部に、その内部を拡大観察するための拡大観察手段を設けたことを特徴とする生検診断用内視鏡。
【請求項2】
上記診断用処理部に、染色液を注入するための染色液注入部が設けられている請求項1記載の生検診断用内視鏡。
【請求項3】
上記染色液注入部が、上記診断用処理部の軸線周り方向に回転可能に設けられている請求項2記載の生検診断用内視鏡。
【請求項4】
上記拡大観察手段が、上記診断用処理部の軸線方向に移動可能に設けられている請求項1ないし3のいずれかの項に記載の生検診断用内視鏡。
【請求項5】
上記処置具挿入口が、上記処置具挿通チャンネル内方向に向かう生検処置用挿入口と、上記分岐路方向に向かう診断処理用挿入口とを一つにつないで形成されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の生検診断用内視鏡。
【請求項6】
上記診断用処理部が上記操作部に対し着脱自在に設けられている請求項1ないし5のいずれかの項に記載の生検診断用内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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