説明

生涯需要予測方法、プログラムおよび生涯需要予測装置

【課題】十分な実績値が揃っていない場合でも保守部品の生涯需要を予測する。
【解決手段】部品毎、該部品の保守開始からの経過年毎に、該経過年までの累計製品出荷台数と、製品1台当たりの部品需要量を変換関数により変換した正規化部品需要量を算出する正規化部品需要量算出部101と、部品をグループに分類する部品グループ化部103と、グループ毎、経過(k+1)年目以降の経過年毎に、該経過年の正規化部品需要量を予測するための線形回帰式を構築する線形回帰式構築部104と、入力装置を介して入力された予測対象部品が属するグループを特定し、線形回帰式構築部104が算出した線形回帰式を使用して、予測対象部品の予測対象年における部品の需要量の予測値を算出する需要量予測値算出部106とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生涯需要予測方法、プログラムおよび生涯需要予測装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
家電や自動車などの耐久消費財では、製品の部品の生産終了後も保守部品の需要が長期間続く。そのため、製造メーカは、部品の生産終了時に該当する保守部品をまとめて調達し、在庫として保有している。この調達量を決定するため、保守期間終了までの保守部品の需要(以下、生涯需要と称する)の予測が行われている。
【0003】
従来、製造メーカでは、一定の減少幅、または一定の減少率で需要が減衰することを仮定することによって、保守部品の生涯需要を予測している。これらの方法は継続的な需要減少期にある保守部品への適用が前提となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、需要増加期の年間需要予測合計を求めるために、前年度の各月の需要実績を説明変数として回帰分析を行い、翌年度における需要のトレンドを推定する方法が開示されている。
【0005】
図22は、特許文献1で開示されている回帰分析の一例を示したグラフである。
図22に示す例では、横軸を経過月数とし、縦軸が保守部品の部品使用実績とし、各経過月における部品使用実績の回帰直線を算出している。
【0006】
また非特許文献1には、需要予測に使われている手法として、移動平均法、指数平滑法、ARIMA(Auto Regressive Integrated Moving Average:自己回帰和分移動平均)モデルが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−230555号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. L. Goodrich, “Applied Statistical Forecasting,” Business Forecast Systems, Inc. (1992),p.45-62,90-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年になり新製品の投入や新技術の導入が短期間で行われるようになり、部品の生産終了時期が早期化している。そのため、保守期間の序盤に保守部品の生涯需要を予測して調達を行う必要性が増加してきている。つまり、特許文献1や、非特許文献1に記載の技術により生涯需要を予測するには十分なデータが揃っていない状況でも生涯需要を予測して調達を行う必要性が増加してきている。
【0010】
ここで、特許文献1や、非特許文献1に記載の技術は、予測対象とされた部品のこれまでの需要傾向が今後も継続することを前提に予測を行う時系列予測手法である。
しかしながら、保守部品における需要の傾向は序盤で増加し、中盤で安定し、終盤で減少するというように、その傾向は一様ではない。
そのため、需要傾向が今後も継続することを前提に予測を行う特許文献1や、非特許文献1に記載の時系列予測手法では、需要が増加傾向にある保守期間の序盤のデータしか揃っていないなど、十分なデータが揃っていない状況において、傾向が変化する生涯需要を予測することはできない。
【0011】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、十分な実績値が揃っていない場合でも保守部品の生涯需要を予測する生涯需要予測方法、プログラムおよび生涯需要予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、部品毎、該部品の保守開始からの経過期数毎に、該経過期数までの累計製品出荷台数と、製品1台当たりの部品需要量を変換関数により変換した正規化部品需要量を算出する正規化部品需要量算出部101と、部品をグループに分類する部品グループ化部103と、グループ毎、経過(k+1)期目以降の経過期数毎に、該経過期数の正規化部品需要量を予測するための線形回帰式を構築する線形回帰式構築部104と、入力装置40を介して入力された予測対象部品が属するグループを特定し、線形回帰式構築部104が算出した線形回帰式を使用して、予測対象部品の予測対象期における部品の需要量の予測値を算出する需要量予測値算出部106とを有することを特徴とする。
その他の実施形態については、実施形態中で後記する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な実績値が揃っていない場合でも保守部品の生涯需要を予測する生涯需要予測方法、プログラムおよび生涯需要予測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る生涯需要予測装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る処理部の構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】本実施形態に係る製品出荷台数テーブルの例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る部品出荷台数テーブルの例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る製品部品対応テーブルの例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る製品属性テーブルの例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る部品属性テーブルの例を示す図である。
【図8】本実施形態に係る保守開始年テーブルの例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る累計製品出荷台数テーブルの例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る正規化部品需要量テーブルの例を示す図である。
【図11】本実施形態に係るグループテーブルの例を示す図である。
【図12】本実施形態に係る予測情報テーブルの例を示す図である。
【図13】本実施形態に係る線形回帰式テーブルの例を示す図である。
【図14】本実施形態に係る需要量予測値テーブルの例を示す図である。
【図15】本実施形態に係る生涯需要予測方法の全体処理を示すフローチャートである。
【図16】本実施形態に係る手動グループ化画面例を示す図である。
【図17】本実施形態に係る正規化部品需要量算出処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図18】本実施形態に係る線形回帰式構築処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図19】k=1の場合における線形回帰式のグラフの一例である。
【図20】本実施形態に係る需要量予測値算出処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図21】本実施形態に係る生涯需要予測画面の一例を示す図である。
【図22】特許文献1で開示されている回帰分析の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、「保守部品」を「部品」と適宜記載する。また、本実施形態は、需要予測を年次で行う場合の形態とし、経過期数を「経過年」、予測対象期を「予測対象年」などと記述するが、本発明は年次に限らず、月次や四半期など任意の期単位の需要予測に適用可能な技術である。
【0016】
《装置構成》
図1は、本実施形態に係る生涯需要予測装置の構成例を示すブロック図である。
生涯需要予測装置1は、RAM(Random Access Memory)などのメモリ10、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置20、CPU(Central Processing Unit)30、キーボードやマウスなどの入力装置(入力部)40、ディスプレイや、プリンタなどの表示装置(表示部)50を有している。
記憶装置20には、後記して説明する製品出荷台数テーブル(製品出荷台数情報)201、部品出荷台数テーブル(部品出荷台数情報)202、製品部品対応テーブル(製品部品対応情報)203、製品属性テーブル204、部品属性テーブル205、保守開始年テーブル206、累計製品出荷台数テーブル207、正規化部品需要量テーブル208、グループテーブル209、予測情報テーブル210、線形回帰式テーブル211および需要量予測値テーブル212が格納されている。
メモリ10には、記憶装置20に格納されているプログラムがロードされ、CPU30によって実行されることにより具現化する処理部100を有している。処理部100の詳細は、図2を参照して後記する。
【0017】
(処理部構成)
図2は、本実施形態に係る処理部の構成例を示す機能ブロック図である。
処理部100は、正規化部品需要量算出部101、予測情報設定部102、部品グループ化部103、線形回帰式構築部104、予測対象部品設定部105、需要量予測値算出部106、予測グラフ表示部107および予測値表示部108を有している。
正規化部品需要量算出部101は、部品毎、該部品の保守開始からの経過年毎に、該経過年までの累計製品出荷台数と、製品1台当たりの部品需要量を変換関数により変換した正規化部品需要量を算出する。
予測情報設定部102は、入力装置40を介して入力される予測に関する情報を設定する。
部品グループ化部103は、部品をグループに分類する。
線形回帰式構築部104は、グループ毎、経過(k+1)年目以降の経過年毎に、該経過年の正規化部品需要量を予測するための線形回帰式を構築する。
予測対象部品設定部105は、入力装置40を介して入力される予測対象部品の情報を設定する。
需要量予測値算出部106は、予測対象部品が属するグループを特定し、線形回帰式構築部104が構築した線形回帰式を使用して、予測対象部品の予測対象年における部品の需要量の予測値を算出する。
予測グラフ表示部107は、予測値をグラフとして表示装置50に表示する。
予測値表示部108は、予測値の一覧を表示装置50に表示する。
【0018】
なお、本実施形態では生涯需要予測装置1を1つの装置としたが、記憶装置20をデータベースとして別の装置としたり、処理部100のうちの任意の機能を別の計算機に持たせたりしてもよい。
【0019】
《各種テーブル》
次に、図2を参照しつつ、図3〜図14を参照して、本実施形態で用いる各種テーブルを説明する。
【0020】
(製品出荷台数テーブル)
図3は、本実施形態に係る製品出荷台数テーブルの例を示す図である。
製品出荷台数テーブル201は、製品毎に製品出荷開始年(製品出荷開始期)以降の年毎における該製品の製品出荷台数が登録されているテーブルであり、製品ID(Identification)と、年(期)と、その年における該製品の製品出荷台数と、が組の情報として格納されている。
【0021】
(部品出荷台数テーブル)
図4は、本実施形態に係る部品出荷台数テーブルの例を示す図である。
部品出荷台数テーブル202は、部品毎に年毎における該部品の部品出荷台数が登録されているテーブルであり、部品IDと、年と、その年における該部品の部品出荷台数と、が組の情報として格納されている。なお、ここでの「年」とは、カレンダイヤーのことである。
【0022】
(製品部品対応テーブル)
図5は、本実施形態に係る製品部品対応テーブルの例を示す図である。
製品部品対応テーブル203は、どの部品がどの製品に用いられているかが登録されているテーブルであり、製品IDと、部品IDと、が対の情報として格納されている。
【0023】
(製品属性テーブル)
図6は、本実施形態に係る製品属性テーブルの例を示す図である。
製品属性テーブル204は、部品の分類に使用される製品の種類と、製品の出荷情報が登録されているテーブルであり、製品に対し一意に付される製品IDと、製品の種類と、製品出荷開始年と、製品出荷開始年から何年間その製品が出荷され続けたかを示す製品出荷期間と、製品出荷期間における製品総出荷台数と、が組の情報として格納されている。
【0024】
(部品属性テーブル)
図7は、本実施形態に係る部品属性テーブルの例を示す図である。
部品属性テーブル205は、部品の分類に使用される部品の種類が登録されているテーブルであり、部品に対し一意に付される部品IDと、部品の種類と、が対の情報として格納されている。
【0025】
(保守開始年テーブル)
図8は、本実施形態に係る保守開始年テーブルの例を示す図である。
保守開始年テーブル206は、部品毎に、正規化部品需要量算出部101において算出される保守開始年を格納するテーブルであり、部品IDと、保守開始年(保守開始期)と、が対の情報として格納されている。
【0026】
(累計製品出荷台数テーブル)
図9は、本実施形態に係る累計製品出荷台数テーブルの例を示す図である。
累計製品出荷台数テーブル207は、部品毎、経過年(経過期)毎に、部品の累計製品出荷台数を格納するテーブルであり、部品IDと、経過年と、累計製品出荷台数と、が組の情報として格納されている。ここで、経過年とは、保守開始年を経過1年目としてカウントする年数である。
【0027】
(正規化部品需要量テーブル)
図10は、本実施形態に係る正規化部品需要量テーブルの例を示す図である。
正規化部品需要量テーブル208は、部品毎、経過年毎に、正規化部品需要量算出部101において算出される正規化部品需要量を格納するテーブルであり、部品IDと、経過年と、正規化部品需要量と、が組の情報として格納されている。
【0028】
(グループテーブル)
図11は、本実施形態に係るグループテーブルの例を示す図である。
グループテーブル209は、部品グループ化部103により作成される部品のグループに関する情報を格納するテーブルであり、部品IDと、グループに対し一意に付されるグループIDと、が対の情報として格納されている。
【0029】
(予測情報テーブル)
図12は、本実施形態に係る予測情報テーブルの例を示す図である。
予測情報テーブル210は、予測情報設定部102により設定される予測の設定情報と、予測対象部品設定部105により設定される予測対象部品の情報を格納するテーブルであり、予測対象部品と、線形回帰式の次数kと、予測開始年(予測開始期)と、予測終了年(予測終了期)と、が格納されている。
【0030】
(線形回帰式テーブル)
図13は、本実施形態に係る線形回帰式テーブルの例を示す図である。
線形回帰式テーブル211は、グループ毎、経過年毎に、線形回帰式構築部104により構築される線形回帰式の線形回帰係数を格納するテーブルであり、グループIDと、
経過年と、線形回帰係数のインデックスと、線形回帰係数と、が組の情報として格納されている。ここで、インデックスとは説明変数に付される番号である。
【0031】
(需要量予測値テーブル)
図14は、本実施形態に係る需要量予測値テーブルの例を示す図である。
需要量予測値テーブル212は、部品毎、予測対象年毎に、需要量予測値算出部106により算出される部品の需要量の予測値を格納するテーブルであり、部品IDと、予測対象年と、需要量の予測値と、が組の情報として格納されている。
【0032】
《処理の説明》
次に、図1〜図14を参照しつつ、図15〜図20に沿って本実施形態に係る生涯需要量予測方法の説明を行う。
【0033】
(全体処理)
図15は、本実施形態に係る生涯需要予測方法の全体処理を示すフローチャートである。
まず、正規化部品需要量算出部101が、部品毎、該部品の保守開始からの経過年毎に、その経過年までの累計製品出荷台数と、製品1台当たりの部品需要量を変換関数により変換した正規化部品需要量を算出する(S101)。ステップS101については、図17を参照して後記する。
次に、入力装置40を介して予測情報が入力される(S102)。ここで、入力される予測情報は、線形回帰式の次数k、予測開始年(予測開始期)、予測終了年(予測終了期)などであり、予測情報設定部102は、入力された予測情報を記憶装置20の予測情報テーブル210(図12)に格納する。
【0034】
そして、部品グループ化部103が、部品をグループに分類する部品グループ化を行う(S103)。
部品グループ化は、部品の出荷傾向が類似している部品(例えば、同一系統の冷蔵庫に使用される同一種類の部品)が同じグループに属するよう行われる。部品グループ化において、部品グループ化部103は、部品グループにグループIDを発行し、各部品の部品IDとグループIDとを対応付けて、グループテーブル209(図11)に格納する。
【0035】
部品のグループ化処理として、以下の2通りの方法が考えられる。
(1)入力装置40を介して、ユーザが手動で部品の部品グループ化を行う。この際、ユーザは、入力装置40を介して、製品属性や、部品属性の情報を生涯需要予測装置1へ入力し、部品グループ化部103は入力された製品属性または部品属性に該当する部品を同一のグループに属させる。
手動によるグループ化については、図16を参照して後記する。
【0036】
(2)部品グループ化部103が、多変量の回帰木分類などの既存の分類手法を用いることによって、製品属性または部品属性から部品を自動的に分類する。
多変量の回帰木分類を部品グループ化処理の手段として使用する場合、製品出荷開始年、製品出荷期間、製品総出荷台数などの製品属性や、部品種類などの部品属性を回帰木分類のための変数とする。部品グループ化部103は、これらの変数に関する条件で分岐する決定木を構築し、部品のグループ化を行う。一例としては、予測開始年から予測終了年までの期間をLとし、後述するステップS104において構築される経過t年目における線形回帰式の決定係数をRtとしたとき、R1+R2+・・・+RLが最大となるように決定木を構築する。
なお、回帰木分類は既存の技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0037】
次に、線形回帰式構築部104が、グループ毎および経過(k+1)年目(経過(k+1)期目)以降の経過年毎に、該経過年における正規化部品需要量を予測する線形回帰式を構築する(S104)。
ステップS104については、図18を参照して後記する。
【0038】
そして、入力装置40を介して、予測対象部品の情報が入力される(S105)。予測対象部品設定部105は、入力された予測対象部品の情報を、予測情報テーブル210(図12)に格納する。
次に、需要量予測値算出部106が、予測対象部品が属するグループの線形回帰式(ステップS104で構築)を基に、予測対象部品の予測対象年(予測対象期)における部品の需要量の予測値を算出する(S106)。
ステップS106については、図20を参照して後記する。
【0039】
ステップS106における需要量の予測値算出後、予測グラフ表示部107が算出された需要量の予測値を予測グラフとして表示装置50に表示する(S107)。
さらに、予測値表示部108が、需要量予測値テーブル212の内容(予測値)を一覧として、表示装置50に表示する(S108)。なお、ステップS108は省略可能である。
【0040】
ここで、ステップS103における手動グループ化について説明する。
図16は、本実施形態に係る手動グループ化画面例を示す図である。
手動グループ化画面1600は、未分類部品表示エリア1601と、グループ情報表示エリア1602とを有している。
未分類部品表示エリア1601は、未分類部品一覧表示エリア1611に表示される部品情報と、フィルタリスト表示エリア1612とを有している。
未分類部品一覧表示エリア1611には、グループ化されていない(これから、グループ化する)部品の製品ID、製品IDの数値、製品種類、部品ID1などが表示されている。ここで、部品IDは、図16に図示されている部品ID1の他に、図示していない部品ID2、部品ID3、・・・など、1つの部品を複数の部品IDで管理しているものとする。製品IDの数値は、製品IDの左側からみて最初に現れる数値であり、例えば製品IDが「M00001」であれば、製品IDの数値は「1」となる。製品IDの数値は、例えば、製品の型番や、あるいは仕様を表している。
【0041】
フィルタリスト表示エリア1612は、未分類部品一覧表示エリア1611をフィルタリングするための表示エリアである。フィルタリスト表示エリア1612で、ユーザがフィルタリング情報を入力した後、フィルタ実行ボタンを選択入力することによって、入力されたフィルタリング情報でフィルタリングされた結果が未分類部品一覧表示エリア1611に反映・表示される。
図16の例では、製品種類が前方一致で「レイゾウコ」であり、かつ、これまでの製品総出荷台数が100000台以上である製品に使用されている部品に関する情報が未分類部品一覧表示エリア1611に表示される。
なお、フィルタリスト表示エリア1612の行追加ボタンを選択入力することで、項目窓1614に入力されている項目を有している行が追加される。
また、ユーザがフィルタリスト表示エリア1612の行削除ボタンを選択入力することで、フィルタリスト表示エリア1612で選択されている行が削除される。
【0042】
未分類部品一覧表示エリア1611のマーク項目に表示されているチェック欄1613にチェックが選択入力され、グループ追加ボタン1631が押下されると、当該チェックの付された部品がグループ情報表示エリア1602で表示されているグループに追加される。
なお、ユーザが未分類部品一覧表示エリア1611の「全ての部品をマーク」ボタンを選択入力することにより未分類部品一覧表示エリア1611におけるすべてのチェック欄1613にチェックを入力することができ、「全てのマークをクリア」ボタンを選択入力することにより未分類部品一覧表示エリア1611におけるすべてのチェック欄1613のチェックを外すことができる。
【0043】
グループ情報表示エリア1602は、グループリスト表示エリア1621と、既にグループ化されている部品のリストを表示しているグループ内部品情報表示エリア1622とを有している。
グループリスト表示エリア1621は、作成済み、または作成中の部品グループの一覧が表示されているエリアである。図16の例では、「冷蔵庫ドア2」のグループに属し、製品の総出荷台数が500000台以上に分類されている部品の情報がグループ内部品情報表示エリア1622に表示されている。
なお、グループ内部品情報表示エリア1622に表示されている項目は、未分類部品一覧表示エリア1611と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
ユーザが、グループ名入力窓1624にグループ名を入力し、グループ追加ボタンを選択入力することで、新たな行がグループリスト表示エリア1621に表示され、新しいグループの編集が可能となる。
また、ユーザが、グループ削除ボタンを選択入力することにより、グループリスト表示エリア1621で選択されている行が削除されるとともに、該当するグループが削除される。
【0045】
また、ユーザによってグループ内部品情報表示エリア1622のマーク項目に表示されているチェック欄1623にチェックが選択入力され、グループ除外ボタン1632が押下されると、当該チェックの付された部品がグループ内部品情報表示エリア1622から削除され、グループから除外される。
なお、ユーザがグループ内部品情報表示エリア1622の「全ての部品をマーク」ボタンを選択入力することにより、すべてのチェック欄1623にチェックを入力することができ、「全てのマークをクリア」ボタンを選択入力することによりグループ内部品情報表示エリア1622におけるすべてのチェック欄1623のチェックを外すことができる。
【0046】
さらに、手動グループ化画面1600の予測期間入力エリア1603で図15のステップS102における予測期間の入力が可能である。
【0047】
(正規化部品需要量算出処理)
図17は、本実施形態に係る正規化部品需要量算出処理(図15のステップS101)の詳細な手順を示すフローチャートである。
まず、正規化部品需要量算出部101は部品属性テーブル205に登録されている部品IDを1つ取得する(S201)。以降、図17における処理の説明において、取得した部品IDに対応する部品を部品pと記載する。
次に、正規化部品需要量算出部101は、取得した部品IDをキーとして製品部品対応テーブル203から、部品pを使用しているすべての製品の製品IDを取得する(S202)。部品pは複数の製品で使用されていることがあるため、ステップS202で取得するIDは1つとは限らない。以降、図17における処理の説明において、製品部品対応テーブル203に登録されている、部品pを使用しているすべての製品の集合をMpとする。
【0048】
そして、正規化部品需要量算出部101は製品属性テーブル204を参照して、製品Mpに属する製品のうち、最も製品出荷開始年が早い製品を特定する(S203)。
次に、正規化部品需要量算出部101はステップS203で特定した製品の製品出荷開始年(製品出荷開始期)を、部品pの保守開始年(保守開始期)とし(S204)、部品pの部品IDとともに保守開始年テーブル206に格納する。以降、部品pの保守開始年をYとし、(Y+t−1)年を部品pの経過t年目とする。
【0049】
続いて、正規化部品需要量算出部101は経過年を表す変数tに1を代入する(S205)。
そして、正規化部品需要量算出部101は経過t年目における部品pの累計製品出荷台数S(t)を算出する(S206)。製品mの製品出荷開始年をy、製品mのy年における製品出荷台数をs(y)としたとき、累計製品出荷台数Sp(t)は次の式(1)で算出される。つまり、部品pの累計製品出荷台数S(t)とは、部品pが使用されているすべての製品について、その製品の出荷開始年から経過t年目までの累計出荷台数である。つまり、正規化部品需要量算出部101は保守開始年(保守開始期)以降の経過年数(経過期数)毎に、製品部品対応テーブル203に登録されている製品のうち、該部品を使用しているすべての製品の保守開始年(保守開始期)から該経過年数(経過期数)までの製品出荷台数を合計した累計製品出荷台数を算出する。
【0050】
【数1】



【0051】
正規化部品需要量算出部101は、算出した累計製品出荷台数を算出対象となっている部品pの部品IDおよび経過年とともに、累計製品出荷台数テーブル207に格納する。
続いて、正規化部品需要量算出部101は部品pの部品IDをキーとして、部品出荷台数テーブル202から(Y+t−1)年における部品出荷台数d(t)を取得する(S207)。
次に、正規化部品需要量算出部101は、部品pの経過t年目における正規化部品需要量n(t)を算出する(S208)。つまり、正規化部品需要量算出部101は、経過年数(経過期数)における該保守部品の部品出荷台数を累計製品出荷台数で除算した正規化部品需要量を算出する。ここで、後に算出される線形回帰式の誤差の分散不均一を低減するため、正規化部品需要量算出部101は製品出荷1台当たりの部品出荷台数をBox−Cox変換などで変換することで、正規化部品需要量を算出する。分散不均一性とは、誤差の分散が標本毎に異なり、一定ではないことである。
Box−Cox変換を用いる場合、変換関数fλは次の式(2)で与えられる。
【0052】
【数2】



【0053】
ここで、λはBox−Cox変換のパラメータであり、入力装置40を介してユーザにより指定される。
変換関数をfλとしたとき、n(t)は、累計製品出荷台数S(t)および経過t年目における部品出荷台数d(t)を用いた次の式(3)で算出される。
【0054】
【数3】



【0055】
なお、ここではBox−Cox変換を用いているが、Box−Cox変換に限らずロジット変換など他の変換を用いてもよい。
また、線形回帰式の誤差の分散不均一性が小さくなると予想される場合は、ステップS208による変換は行わなくてもよく、この場合、以下の説明における変換関数を、すべて恒等関数に読み換えればよい。
そして、累計製品出荷台数S(t)の算出ができない場合や、経過t年目における部品出荷台数d(t)の取得ができない場合、もしくはd(t)/S(t)がfの定義域に属さない場合、正規化部品需要量算出部101は正規化部品需要量n(t)の算出を行わない。
正規化部品需要量算出部101は算出した正規化部品需要量n(t)を、部品IDおよび正規化部品需要量n(t)の算出対象となっている経過年とともに正規化部品需要量テーブル208に格納する。
【0056】
次に、正規化部品需要量算出部101は、処理対象となっている部品pの部品IDをキーとして、部品出荷台数テーブル202において部品pの経過(t+1)年目以降の部品出荷台数のデータ(部品出荷データ)があるか否かを判定する(S209)。
ステップS209の結果、部品出荷データがある場合(ステップS209→Yes)、正規化部品需要量算出部101は経過年を表す変数tに1を加算した(S210)後、ステップS206へ処理を戻す。
【0057】
ステップS209の結果、部品出荷データがない場合(ステップS209→No)、正規化部品需要量算出部101は部品属性テーブル205に登録されているすべての部品について、ステップS201〜S210までの処理が完了したか否かを判定する(S211)。
ステップS211の結果、処理が完了していない部品がある場合(ステップS211→No)、正規化部品需要量算出部101はステップS201へ処理を戻す。
ステップS211の結果、すべての部品について処理が完了している場合(ステップS211→Yes)、処理部100は図15のステップS101の処理を終了したので、ステップS102へ処理を進める。
【0058】
(線形回帰式構築処理)
図18は、本実施形態に係る線形回帰式構築処理(図15のステップS104)の詳細な手順を示すフローチャートである。
まず、線形回帰式構築部104はグループテーブル209に登録されているグループIDを1つ取得する(S301)。以降、図18の処理の説明において、取得したグループIDに対応するグループをグループGと称し、部品の集合として参照する。
次に、線形回帰式構築部104は経過年を表す変数tに(k+1)を代入する(S302)。ここで、kは図15のステップS102で入力された次数kである。
続いて、線形回帰式構築部104はグループGの経過t年目における線形回帰式を構築するためのデータセットを構築する(S303)。データセットとは式(4)を満たす正規化部品需要量の集合である。
【0059】
ここで、データセットを構築する際の注意点を記述する。
部品は時間経過とともに需要が減少するため、部品出荷台数が「0」となる年が多くなる場合がある。部品出荷台数が「0」となる年のデータをデータセットに含めると、線形回帰式の適合度合が低くなる。そこで、線形回帰式で算出する正規化部品需要量の予測値は、需要量が正になる場合の条件付き期待値として算出する。そして、後記する図20のステップS409,S410で部品出荷台数が「0」になる場合も考慮した需要量の予測値に補正する(詳細は、図12のステップS409,S410で説明する)。データセットは次の式(4)で表される(k+1)次元ベクトルの集合とする。
【0060】
【数4】



【0061】
式(4)において、n(t−j)は正規化部品需要量であり、d(t−j)は部品qの経過(t−j)年目における部品出荷台数である。
また、式(4)における条件d(t−j)>0は、部品qの経過(t−j)年目における正規化部品需要量が「0」になる場合を除外するための条件である。
【0062】
次に、線形回帰式構築部104はステップS303で構築したデータセット(式(4))のデータ数が閾値以上であるか否かを判定する(S304)。
ここで、線形回帰式を構築するためにはデータ数が(k+1)以上でなければならないため、閾値は最低でも(k+1)とする。
ステップS304の結果、データ数が閾値未満である場合(S304→No)、線形回帰式構築部104はステップS311へ処理を進める。
【0063】
ステップS304の結果、データ数が閾値以上の場合(ステップS304→Yes)、線形回帰式構築部104はステップS303で構築したデータセットを基に、式(5)に示す線形回帰式の線形回帰係数β(t)(j=0,・・・,k)を最小二乗法により算出する(S305)ことで線形回帰式を構築する。
【0064】
【数5】



【0065】
ここで、n(t−j)(j=0,・・・,k)はグループGの経過(t−j)年目における正規化部品需要量を表す変数である。
k=1の場合、線形回帰式(式(5))は経過(t−1)年目の正規化部品需要量を説明変数、経過t年目の正規化部品需要量を目的変数とした一次式となる。この場合の線形回帰式のグラフの一例を図19に示す。
【0066】
図19は、k=1の場合における線形回帰式のグラフの一例である。
図19では、横軸に経過(t−1)年目の正規化部品需要量を示し、縦軸に経過t年目の正規化部品需要量を示している。つまり、経過(t−1)年目の正規化部品需要量を説明変数とし、経過t年目の正規化部品需要量を目的変数としている。
図19における点がグループGにおける各部品の正規化部品需要量であり、線1901が正規化部品需要量の線形回帰式を表すグラフである。この直線の傾きが係数β(t)となる。
【0067】
図18の説明に戻り、ステップS304の後、線形回帰式構築部104はステップS305で構築した線形回帰式を用いて、ステップS303で構築したデータセット中に外れ値があるか否かを判定する(S306)。これは、線形回帰式を構築するために用いたデータセットに外れ値が存在すると、線形回帰式の適合度合が低減するためである。
ここでは、部品q∈Gのデータが外れ値か否かを判定するために、次の式(6)で定義されるCookの距離D(t)を用いることとする。
【0068】
【数6】



【0069】
ここで、c(t)は線形回帰式(式(5))において、部品rの経過t年目の正規化部品需要量を予測した場合の予測値であり、c(q;t)は部品qを除いて線形回帰式(式(5))を構築した上で部品rの経過t年目の正規化部品需要量を予測した場合の予測値である。
式(6)におけるD(t)が閾値を超える場合、線形回帰式構築部104は部品qのデータが外れ値であると判定する。閾値には、一例として「1.0」を用いる。
【0070】
なお、本実施形態では外れ値の判定方法としてCookの距離を用いたが、これに限らず、てこ比による判定など、他の判定方法を用いてもよい。また、本実施形態ではCookの距離を用いたので、外れ値の判定が線形回帰係数の算出後に行われているが、可能であれば、例えばステップS303におけるデータセットの構築時に行ってもよい。
【0071】
ステップS306の結果、外れ値が存在する場合(S306→Yes)、つまり、判定にCookの距離を使用した場合、Cookの距離D(t)が閾値より大きい正規化部品需要量のデータが存在する場合、線形回帰式構築部104は、外れ値であると判定された部品qの正規化部品需要量のデータをデータセットから除去し(S307)、ステップS304へ処理を戻し、外れ値を除去したデータセットを基に再度線形回帰係数を算出する。
【0072】
ステップS306の結果、外れ値がない場合(S306→No)、つまり、外れ値の判定にCookの距離を使用した場合、すべての部品qについてのデータにおけるCookの距離D(t)が閾値以下の場合、線形回帰式構築部104は式(5)におけるj=0,・・・,kについて、グループGのグループIDと、経過年tと、インデックスjと、ステップS305で算出された線形回帰係数β(t)と、を組のデータとして線形回帰式テーブル211に格納する(S308)。ここで、線形回帰係数β(t)の「j」が線形回帰式テーブル211のインデックスとなる。
【0073】
次に、線形回帰式構築部104は、正規化部品需要量テーブル208を参照して経過年tが最終経過年であるか否かを判定する(S309)。ここで、最終経過年とは、正規化部品需要量テーブル208において、該当する経過年以降、データのない経過年である。。
ステップS309の結果、経過年tが最終経過年である場合(S309→Yes)、線形回帰式構築部104はステップS311へ処理を進める。
ステップS309の結果、経過年tが最終経過年でない場合(S309→No)、線形回帰式構築部104は経過年を表す変数tに「1」を加算して(S310)、ステップS303へ処理を戻し、経過年が1年増えたときの線形回帰式を構築する。
【0074】
ステップS304の結果、データ数が閾値未満である(S304→No)か、またはステップS309の結果、経過年tが最終経過年である場合(S309→Yes)、線形回帰式構築部104はグループテーブル209に登録されているすべてのグループについて、ステップS301〜S310までの処理を完了したか否かを判定する(S311)。
ステップS311の結果、処理が完了していないグループがある場合(S311→No)、線形回帰式構築部104はステップS301へ処理を戻す。
ステップS311の結果、すべてのグループについて処理が完了している場合(S311→Yes)、処理部100は図15のステップS104の処理を終了したので、ステップS105へ処理を進める。
【0075】
(需要量予測算出処理)
図20は、本実施形態に係る需要量予測値算出処理(図15のステップS106)の詳細な手順を示すフローチャートである。
まず、需要量予測値算出部106は、図15のステップS105において設定された予測対象部品の部品IDをキーとして、グループテーブル209からグループIDを1つ取得することで、予測対象部品が属するグループを特定する(S401)。これにより、予測対象部品が属するグループが特定される。以降、図18における処理の説明において、予測対象部品を予測対象部品pと称する、また、取得したグループIDに対応するグループをグループGと称し、部品の集合として参照する。
次に、需要量予測値算出部106は、予測対象部品pの部品IDをキーとして、正規化部品需要量テーブル208を参照し、予測開始k年前から予測開始1年前までの正規化部品需要量を取得する(S402)。ここで、kはステップS102で入力された次数kである。また、予測開始k年前とは、例えば、k=2で、予測開始年が2011年であるとすると、予測開始k年前は2009年となる。
需要量予測値算出部106は予測情報テーブル210から、予測開始年を取得し、この予測開始年をYとする。ステップS402において取得されるのは、j=1,・・・,kについて、(Y−j)年における予測対象部品pの正規化部品需要量n(Y−j−Y+1)である。取得できない正規化部品需要量がある場合は、需要量の予測はできないものとし、需要量予測値算出部106は、表示装置50にエラー表示を行わせて処理を終了する。なお、Yは前記したように予測対象部品pの保守開始年を示している。
【0076】
続いて、需要量予測値算出部106は予測対象年を表す変数yに予測開始年Yを代入し(S403)、予測対象年yを次の式(7)で経過年tに変換する(S404)。
【0077】
t=y−Y+1 ・・・(7)
【0078】
そして、需要量予測値算出部106はステップS401で取得したグループIDをキーとして、線形回帰式テーブル211から該当するグループGの経過t年目における線形回帰式(式(5))の線形回帰係数をすべて取得する(S405)。
次に、需要量予測値算出部106は、ステップS405で取得した線形回帰係数を使用した線形回帰式(式(5))を基に、経過t年目における予測対象部品pの正規化部品需要量の予測値c(t)を算出する(S406)。
説明変数には、経過(t−j)年目(j=1,・・・,k)における予測対象部品pの正規化部品需要量を用いる。経過(t−j)年目が予測開始年Yより前に該当するとき、すなわちt−j<Y−Y+1のときは、正規化部品需要量の実績値n(t−j)を用いる。t−j≧Y−Y+1のときは、正規化部品需要量の予測値c(t−j)を用いる。
【0079】
続いて、需要量予測値算出部106はステップS406で算出した正規化部品需要量の予測値c(t)を図17のステップS208で使用した変換関数fλの逆変換関数gで変換する(S407)ことで、g(c(t))を算出する。例えば、λ=0のときのBox−Cox変換では、fλ(x)=log(x)なので、g(x)=exp(x)となる。なお、図17のステップS208で変換を行わなかった場合、ステップS407は省略される。
【0080】
そして、需要量予測値算出部106は予測対象部品pの部品IDをキーとして、累計製品出荷台数テーブル207から、予測対象部品pの経過t年目における累計製品出荷台数S(t)を取得する(S408)。
次に、需要量予測値算出部106は需要量が「正」の値になる確率を算出する(S409)。
図18のステップS303で前記したように、ステップS406で算出した正規化部品需要量の予測値c(t)は、経過t年目における予測対象部品pの需要量が正になる場合の条件付き期待値である。つまり、ここまでの処理では、予測対象部品pの需要量が「0」になる場合が意図的に外されている。実際には需要量が「0」となる年もあるので、需要量が「0」になる場合が意図的に外された状態で算出された予測値は、精度がよくないことが考えられる。これを補完するため、ステップS409およびステップS410の処理が行われる。
【0081】
具体的には、ステップS409において、需要量予測値算出部106は部品の需要量が正になる確率Qを次の式(8)で算出する。
【0082】
【数7】



【0083】
ここで、|・|は集合の要素数を表す記号である。
ステップS409の後、需要量予測値算出部106は、ステップS409で算出した需要量が「正」になる確率Qを用いて、予測対象部品pの経過t年目における需要量の予測値x(t)を以下の式(9)で算出する(S410)。
【0084】
(t)=Q×g(c(t))×S(t) ・・・(9)
【0085】
ここで、g(c(t))×S(t)は、グループGの経過t年目において、部品の需要量が正になる場合における需要量の予測値である。正確には、g(c(t))は、ステップS406で算出された正規化部品需要量の予測値を、ステップS407において逆変換した値である。
【0086】
次に、需要量予測値算出部106は予測対象年yが予測情報テーブル210に格納されている予測終了年か否かを判定する(S411)。
ステップS411の結果、予想対象年yが予測終了年でない場合(ステップS411→No)、需要量予測値算出部106は予測対象年を表す変数yに1を加算して(S412)、ステップS404へ戻し、次の予測対象年について需要量の予測を行う。
ステップS411の結果、予測対象年yが予測終了年である場合(ステップS411→Yes)、処理部100は図15のステップS106の処理を終了したので、ステップS107へ処理を進める。
【0087】
図21は、図15のステップS107の処理で表示される生涯需要予測画面の一例を示す図である。
生涯需要予測画面2100は、予測設定エリア2110、グループ表示エリア2120、部品表示エリア2130、グループ情報表示エリア2140、製品情報表示エリア2150および予測結果表示エリア2160を有している。
ユーザは、まず、予測設定エリア2110の予測方法選択窓2111で予測方法と(選択された予測法法が線形回帰式であれば)線形回帰式の次数を選択設定する(図21の例では、予測方法として「線形回帰予測」が選択され、「次数:1」が選択されている)。
【0088】
そして、ユーザがグループ表示エリア2120に表示されているグループを選択すると、処理部100はグループテーブル209などを参照して、そのグループに含まれている部品の一覧を部品表示エリア2130に表示する。このとき、グループ情報表示エリア2140には、選択されているグループに関する情報が表示される。このとき、処理部100が参照するテーブルは、図示していないグループ属性テーブルなどである。
【0089】
ユーザが部品表示エリア2130に表示されている部品を選択すると(図21の例では「PY900−017_2 電子部品Bタイプc」が選択されている)、選択された部品が使用されている製品に関する情報が製品情報表示エリア2150に表示される。製品情報表示エリア2150に表示される情報は製品部品対応テーブル203などによるものである。
ここまでの作業が、図15の予測対象部品入力(S105)の処理となる。
【0090】
そして、ユーザが予測設定エリア2110の予測実行ボタン2112を選択入力すると、需要量予測値算出部106が図15の需要量の予測値算出(S106)を行い、予測グラフ表示部107が予測結果表示エリア2160に予測結果を表示する(図15の予測グラフ表示(S107)に相当)。
予測結果表示エリア2160には、製品出荷実績値が棒グラフで示されており、部品需要実績値(部品出荷台数)が折線グラフ2161で示されており、部品の需要量の予測値が折線グラフ2162で示されている。
また、処理部100は、生涯需要予測画面2100とは別に需要量予測値テーブル212の内容を一覧として表示装置50に表示する(図15の予測値表示(S108)に相当)。
【0091】
《まとめ》
本実施形態によれば、各経過年(経過期)において、前年から過去k年分(過去k期分)の正規化部品需要量を説明変数とした、線形回帰係数を求めることで、序盤、あるいは序盤の途中までのデータしかない部品(保守部品)についても、序盤、中盤、終盤に対応した部品(保守部品)の生涯需要予測が可能となる。つまり、特許文献1や、非特許文献1に記載されているような時系列予測手法で生涯需要を予測するには十分な実績値が揃っていない場合でも、本実施形態によれば部品(保守部品)の生涯需要を予測することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 生涯需要予測装置
10 メモリ
20 記憶装置
30 CPU
40 入力装置(入力部)
50 表示装置(表示部)
100 処理部
101 正規化部品需要量算出部
102 予測情報設定部
103 部品グループ化部
104 線形回帰式構築部
105 予測対象部品設定部
106 需要量予測値算出部
107 予測グラフ表示部
108 予測値表示部
201 製品出荷台数テーブル(製品出荷台数情報)
202 部品出荷台数テーブル(部品出荷台数情報)
203 製品部品対応テーブル(製品部品対応情報)
204 製品属性テーブル
205 部品属性テーブル
206 保守開始年テーブル
207 累計製品出荷台数テーブル
208 正規化部品需要量テーブル
209 グループテーブル
210 予測情報テーブル
211 線形回帰式テーブル
212 需要量予測値テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に使用されている保守部品の需要量を予測する生涯需要予測装置による生涯需要予測方法であって、
前記生涯需要予測装置は記憶部に少なくとも、
製品毎の製品出荷開始期と、製品出荷開始期以降の期毎における該製品の製品出荷台数が登録されている製品出荷台数情報と、
期毎における保守部品の部品出荷台数が登録されている部品出荷台数情報と、
製品毎に該製品に使用されている保守部品が登録されている製品部品対応情報と、
を格納しており、
前記生涯需要予測装置が、
前記部品出荷台数情報に登録されている保守部品毎に、前記製品部品対応情報に登録されている製品で、該保守部品を使用している製品のうち、最も製品出荷開始期が早い製品を特定し、特定された製品の製品出荷開始期を該保守部品の保守開始期とし、
製品出荷台数情報において、前記保守開始期以降の経過期数毎に、前記製品部品対応情報に登録されている製品のうち、該保守部品を使用しているすべての製品の前記保守開始期から該経過期数までの製品出荷台数を合計した累計製品出荷台数を算出し、
該経過期数における該保守部品の部品出荷台数を前記累計製品出荷台数で除算した正規化部品需要量を算出し、
線形回帰式の次数kと、予測開始期と、予測終了期と、が入力部を介して入力されると、
前記部品出荷台数情報に登録されている保守部品をグループに分類し、
前記グループ毎、経過(k+1)期目以降の経過期数毎に、前記経過期数のk期前から前記経過期数の1期前までの前記正規化部品需要量を説明変数とし、各説明変数の係数を算出しすることによって、前記説明変数に関する線形回帰式を構築し
予測対象部品の情報が前記入力部を介して入力されると、
前記予測対象部品が属する前記グループを特定し、
前記予測開始期から前記予測終了期までの予測対象期毎に、前記予測対象期を前記予測対象部品の経過期数に変換し、
前記算出された線形回帰式を基に、前記変換された経過期数における前記予測対象部品の前記正規化部品需要量の予測値を算出し、
前記正規化部品需要量の予測値に対して、前記変換された経過期数における前記累計製品出荷台数を乗算することにより、前記予測対象部品の前記予測対象期における前記保守部品の需要量の予測値を算出する
ことを特徴とする生涯需要予測方法。
【請求項2】
前記生涯需要予測装置は、
前記正規化部品需要量を、変換関数によって変換し、
前記正規化部品需要量の予測値を、当該変換関数の逆変換関数によって変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の生涯需要予測方法。
【請求項3】
前記生涯需要予測装置は、
前記線形回帰式を算出する際に、部品出荷台数が0ではないデータを使用し、
外れ値となる正規化部品需要量のデータを除外した後、前記線形回帰式を算出し、
前記保守部品の需要量が0とはならない確率を算出し、
前記算出した保守部品の需要量の予測値に、当該確率を乗算する
ことを特徴とする請求項1に記載の生涯需要予測方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生涯需要予測方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項5】
製品に使用されている保守部品の需要量を予測する生涯需要予測装置であって、
製品毎の製品出荷開始期と、製品出荷開始期以降の期毎における該製品の製品出荷台数が登録されている製品出荷台数情報と、
期毎における保守部品の部品出荷台数が登録されている部品出荷台数情報と、
製品毎に該製品に使用されている保守部品が登録されている製品部品対応情報と、
を格納している記憶部と、
前記部品出荷台数情報に登録されている保守部品毎に、前記製品部品対応情報に登録されている製品のうち、該保守部品を使用している製品のうち、最も製品出荷開始期が早い製品を特定し、特定された製品の製品出荷開始期を該保守部品の保守開始期とし、
前記保守開始期以降の経過期数毎に、前記製品部品対応情報に登録されている製品のうち、該保守部品を使用しているすべての製品の前記保守開始期から該経過期数までの出荷台数を合計した累計製品出荷台数を算出し、
該経過期数における該保守部品の部品出荷台数を前記累計製品出荷台数で除算した正規化部品需要量を算出する正規化部品需要量算出部と、
線形回帰式の次数kと、予測開始期と、予測終了期と、が入力部を介して入力されると、
前記部品出荷台数情報に登録されている保守部品をグループに分類する部品グループ化部と、
前記グループ毎、経過(k+1)期目以降の経過期数毎に、前記経過期数のk期前から前記経過期数の1期前までの前記正規化部品需要量を説明変数とし、各説明変数の係数を算出しすることによって、前記説明変数に関する線形回帰式を構築する線形回帰式構築部と
予測対象部品の情報が前記入力部を介して入力されると、
前記予測対象部品が属する前記グループを特定し、
前記予測開始期から前記予測終了期までの予測対象期毎に、前記予測対象期を前記予測対象部品の経過期数に変換し、
前記算出された線形回帰式を基に、前記変換された経過期数における前記予測対象部品の前記正規化部品需要量の予測値を算出し、
前記正規化部品需要量の予測値に対して、前記変換された経過期数における前記累計製品出荷台数を乗算することにより、前記予測対象部品の前記予測対象期における前記保守部品の需要量の予測値を算出する需要量予測値算出部と、
を有することを特徴とする生涯需要予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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