説明

生物剤に対する身体の部分保護用衣類

本発明は、ポリプロプレン及びポリエチレンで製造され、身体を部分的に保護するのに好適な、特に生物学的物質に対するバリアーに好適な衣類に関する。衣類は液体の浸透及び微生物の侵入に対する非常にレベルの高い保護、及び耐磨耗性を含む優れた機械的性質、卓越した柔軟性、ドレープ性、及び着心地の良さを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、生物剤に対する保護に好適な衣類に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
作業者が、感染性の生物剤にさらされている様々な状況が存在している。感染性の生物剤としては、感染、アレルギー及び毒性を引き起こしかねない遺伝子組み換え体を含む微生物である。例えば、微生物実験室、バイオテクノロジーによる生産現場等の幾つかの状況下では、感染体は、一般に良く知られている。
【0003】
その他の作業、例えば、農作業、廃棄物処理、特に病院の廃棄物処理、獣医学試験室、緊急時の清掃活動においては、作業者がさらされている薬剤はよく知られていない可能性があり、可能性のあるリスクだけで評価が行われている。
【0004】
こうした状況下では、感染体が肌に到達するのを防ぐ保護衣類が必要である。保護衣類は、使い捨ての生地からでも再使用可能な生地からでも製造可能である。安全で、効果的で且つ快適な保護バリアーのための基準を満たすための試みが、優れた多くの生地及び生産技術を発展させてきた。
【0005】
再使用可能な生地に関しては、20世紀初期から1970年代初期まで、耐水性が全くなく容易に液体などを通してしまう綿に始まり、改善された機械的性質を有するポリエステル・綿混合布へ、そして防水化学仕上げを施され強固に編まれた綿あるいはポリエステル・綿混合布へと使用される布は発展してきた。
【0006】
1980年代に、連続フィラメント糸、場合によっては微細フィラメント(マイクロファイバー)からなる強固に織られた繊維のような織物の新しい世代のものが開発された。これらのものは、化学仕上げが可能で、液体浸透抵抗を高めるためのカレンダ処理を行なうことができる。上記織物全ては、安全性及び保護バリアーを与えるための連結幾何学(interlocking geometry)によって形成されている。
【0007】
使い捨ての保護衣類は、一般に不織布で構成され、安全性及び強度を与えるための繊維接着技術(熱的、化学的、又は物理的)によって製造される。基本的な原料は、様々な種類の天然繊維(例えば、綿、木製パルプ)及び合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリオレフィン)である。
【0008】
織物は、特殊な種類の繊維を使用し、接着過程及び仕上げを行なうことで、所望の性質に達するように設計することができる。
【0009】
繊維は、手短に言うと、繊維を巻き込ませる高速ウォータージェットによって機械的に(スパンレース法)、インライン溶融紡績によって熱的に(スパンボンド法)、又は化学的バインダーによって化学的に(湿式法)接着させることができる。
【0010】
不織布は、主としてポリオレフィンから製造される。
【0011】
再使用可能な製品及び使い捨ての製品の両方は、性質を高め改善するために、補強することがよく行われる。特殊な応用において、加えられる原料を、該原料の層、コーティング、補強剤、あるいは積層材といった形態で(全体に又は部分的に)加えることがよく行われる。
【0012】
特に、織物の第二層は、液体の浸透及びすべり抵抗を改善するために使用される。又、補強、耐液体特性を得るために、化学物質が使用される。
【0013】
上述した処理により得られる様々な保護用衣類は、例えば、EP033655659B1(優先権 GB8714535)に記載されている。
【0014】
ポリエチレンは最もよく使用される生地の一つであり、異なる用途で数種類が製造されている。
【0015】
その他に、ティヴェック(登録商標)の保護材は、熱及び圧力で接着される高密度ポリエチレンからなる微細な連続フィラメントから製造されたスパンボンドオレフィンである。
【0016】
このような生地については、例えばEP850330及びUS4321781に記載されている。
【0017】
特に、このような生地で製造されたガウン(overall)もあり、液体、粉体に対する抵抗、及び化学的抵抗は高いが、耐切創性、耐摩耗性、ドレープ性、柔軟性、柔軟さ及び呼吸のしやすさについてはそれほど効果的ではない。
【0018】
防護材は、通常の使用において遭遇する応力に耐えるために十分な強さでなければならず、また着心地の良さに関する性質は非常に危険な作業環境において何よりも重要であることを考慮すると、このような全ての性状は、防護性と同様に重要である。
【0019】
従って、液体の浸透及び微生物の侵入に対する適切なレベルの防護ができ、それと同時に機械抵抗及び着心地の良さを含む他の重要な性能における特性を与えるため、より向上した効果を有する新しい保護用衣類を見出すことは絶え間なく必要である。
【0020】
〔発明の概要〕
我々は、特に生物剤に対するバリアーとして好適な、身体の特定の部位を保護するのに有効であるポリプロピレン及びポリエチレンによって製造される新規衣類を見出した。
【0021】
本発明の衣類は、液体の浸透及び微生物の侵入に対する非常にレベルの高い保護、耐引き裂き性及び耐磨耗性を含む優れた機械的性質、卓越した柔軟性、ドレープ性、及び着心地の良さを備えたガウン、上着、及びズボンである。
【0022】
本発明は、生物剤に対して身体の部分的保護に好適な新規衣類に関するものである。
【0023】
上記衣類は、ポリエチレンフィルムで積層された不織ポリプロピレンの層からなり、ポリプロピレンとポリエチレンとの重量比率は70:30〜50:50の範囲内であり、好ましくは65:35〜55:45である。
【0024】
上記衣類は、典型的には厚さが240〜270μで単位重量は35〜45g/mである不織ポリプロピレン層を、厚さが30〜70μで単位重量は20〜30g/mであるポリエチレンフィルムと積層させてなるものである。
【0025】
生地の全体の厚さは、270〜340μであり、単位重量は55〜75g/mである。
【0026】
特に、上記衣類は、厚さが245〜255μで単位重量は37.5〜40.0g/mである不織ポリプロピレン層を、厚さが40〜60μで単位重量は22.5〜27.5g/mであるポリエチレンフィルムと積層させてなるものであることが好ましい。又、その場合の上記衣類の厚さは、285〜315μであり、単位重量は60.0〜67.5g/mであることが好ましい。
【0027】
内側の層は、ポリプロピレンの連続フィラメントから製造された不織スパンボンド生地からなるものである。
【0028】
内側の層は、液体及び微生物に対するバリアー性を与えることに加えて、高いドレープ性及び快適性、更には生理的安全性及び通気性を確保している。
【0029】
外側の層は、液体の浸透及び微生物の侵入を防くのに十分小さく、それに加えて、高い通気性を確保するため、分子レベルで空気中の水分を通過させることができる細孔を有するマイクロポーラスなポリエチレンフィルムからなっている。
【0030】
それぞれの形状及び適切な比率における2つの生地の組み合わせは、化学的・物理的性質、ドレープ性及び快適性といった、今までに周知であった身体の部分的な衣類では決して到達できない組み合わせの性質を備えさせることができる。
【0031】
特に、いかなる状況においても高いドレープ性及び優れた快適性が確保される生地の柔軟性は、液体及び微生物に対するバリアー特性に悪影響を与えない。そして上記生地は、高密度の従来の生地と比較しても、液体及び微生物に対するバリアー特性は同等以上である。
【0032】
更には、耐引き裂け性及び耐磨耗性は、どんな危険な状況下での使用において遭遇する応力に対しても耐えることができる程度に十分強いものである。
【0033】
本発明の衣類の対象としては、ガウン、上着、及びズボンがある。上記衣類は、現行法の特定の要件、特に指示686/89(Italian D.L.475 04.12.92)に従ってデザインされている。
【0034】
衣類は、種類によって様々なものがあり、例えば、鋳造工場における衣類は、身体の特定の部位の保護のみを確保するため、身体の残りの部分の保護を確保するには、グローブや他の保護衣類と組み合わせて着る必要がある。
【0035】
より具体的には、本発明のガウン及び上着は、本発明のズボンと連結することができる。例えば図1に、首の付け根、胸部、腕、及びひざまでの脚部等の身体の露出部分を保護するためのガウンの正面図(1a)を示す。
【0036】
上記ガウンは、起こり得る危険な要素との接触から腕を隔離するために、手首の周囲を完全に密着させるためのゴムバンドを備えている。全ての結合部は熱溶接で継がれ、継ぎ目は、生地と同等の高いバリアー性を確保している。上記ガウンは、簡単に着用することができ、内側に2つ、外側に2つの計4つの後部固定具によって閉じることができるように、背面(1b)が開いている。
【0037】
上記衣類は、着用者を刺激したり、悪影響を与えたりする領域を避けるように設計及び製造されている。例えば、上記ガウンの採寸は厳密に行われ、装着性及び粗さが評価される。チェックされたガウンは、04/12/92付けのD.L.n.475の安全及び健康に関する要件を満たし、人間工学に関する規則EN340/94の規定に従って製造されている。
【0038】
上記衣類は、どのような作業者にも、どのような作業環境下においても快適であり、且つ該衣類が損傷を被ることを防止するために複数のサイズのものが製造される。
【0039】
例えば、EN340規則を満たす、異なるサイズのガウンのcmで表示した寸法を下記表に記載する。尚、表中の値は±3%の許容誤差を含む。
サイズ S M L
丈 110 120 130
胸囲 130 134 140
(thorax circumference)
肩幅 56 59 62
袖幅 58 59 62
測定は、気温20℃、相対湿度65%の通常の環境下で、ISO3635/‘81の試験方法に従って行った。
【0040】
製造方法は、通常の保護衣類の製造規則に基づいたものである。生地を、裁断し、穴を開け、サイズに基づいて異なる部材を選択し、番号を振る。そして、異なる部材の寸法をチェックし、異なる部材を熱溶接することにより上記衣類を製造する。そのとき、ラベルを衣類の内側に貼り付ける。
【0041】
ラベルは製造業者名以外に、型番、基準絵文字、サイズ、及び「バイオハザード」を表す絵文字を含む。特に、上記衣類は、生物剤に対する保護衣類のための欧州基準(CE)に従ってラベルが付される。
【0042】
着用者のための情報は、曖昧さがなく明瞭に書かれており、CE表示は基本的な安全及び健康に関する要件を満たしていることを保証する明白な証拠である。図2にラベルの一例を示す。
【0043】
製造工程の最後に、全ての部材が正しく継がれていること、異なる層の重ね合わせ及び重ね合わせられる異なる層を構成する構造が作業指示に従ったものであるかのチェックを行なうことで製造の管理を行っている。溶接された領域の密閉、表示適合性、及び表示位置を特にチェックする。
【0044】
最後に、使用されるまでの間衣類を保護するために、衣類を折りたたみ、仮縫いして、情報を折り込み、梱包する。
【0045】
このようにして製造された衣類は、細菌、寄生生物、菌類、及びウイルスのような生物剤に対する保護に好適なものである。
【0046】
上記衣類は、感染、アレルギー、及び毒性を引き起こす可能性のある、遺伝子組み換え体、細胞培養物、及び人体寄生生物を含むどのような微生物に対しても効果的である。
【0047】
特に、上記衣類は、血液及び体液によって伝染するB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のような微生物、BSE及び他のTSEの原因物質、及びバシルス・アントラシス菌(Bacillus Anthracis)に対して効果的である。
【0048】
上記衣類は、作業者が液体、空気、エアロゾル、あるいは固体といった様々な形態、様々な種類の危険物質にさらされる可能性のあるどんな状況下においても使用することがきる。
【0049】
感染性物質にさらされる危険のある作業環境の例としては、バイオテクノロジーによる生産現場、健康管理に関わる作業(隔離設備及び解剖設備を含む)、化学・生物学に関する作業、獣医及び診療研究室、ごみ処理場での作業、動物及び/又は動物由来の製品と接する行動が挙げられる。
【0050】
上記衣類は、通常の作業着の上に着用してもよいが、正しく着用しないと、つまり適当なサイズのものを着用しないと、その効果は保証されない。
【0051】
以下に、上記ガウンの技術的性質の評価をするために行われた幾つかの試験結果を説明する。このような結果は、単に実施例を示すものであり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0052】
(バリアー性)
保護衣類の主要な性質は、微生物の侵入に対する好適なレベルの保護による効果である。
【0053】
液体は、一般に微生物を運ぶ最も重要なベクターであることが受け入れられている。しかし、空気やエアロゾルを含む他の可能性のあるベクター、それに加えて、機械的作用によって促進される微生物の乾燥状態での侵入もまた可能性がある。
【0054】
従って、微生物に対する効果的なバリアーは、湿った状態及び乾燥した状態の両方における微生物の侵入に抵抗できるものでなければならない。
本発明に係るガウンのバリアー性を測定するため、一連の試験(試験1〜3)を行った。
【0055】
(試験1)
静水圧下における汚染された液体の浸透に対する抵抗力
この試験は、連続的に液体に接触した状況下で、代替病原体を使用し、血液に運ばれる病原体による侵入に対する生地の抵抗を測定する。
【0056】
試験は以下の二つの手順に分けられる。
(a)血液及び他の体液を模した人工血液を使用し、生地を連続して増加する圧力にさらして、人工血液の生地への浸透が視覚的に観察される。この手順(a)は、スクリーニング試験として用いられる。
(b)代理病原体の生地への侵入に対する抵抗力を測定する。微生物である代替病原体は、人に対し病原性である他の微生物の模倣体として作用する。
【0057】
人工血液は体液を模倣したものである。体液の表面張力、粘度、及び極性のような多くの要因が、体液の浸潤性及び浸透性に影響を与える可能性がある。血液及び体液(唾液は除く)の表面張力の範囲は、およそ0.042〜0.060N/mである。
【0058】
模造品の表面張力の範囲は、上記表面張力の範囲の略最低値である0.042(±0.002)N/mに調整されている。
【0059】
この試験で使用した代替病原体は、バクテリオファージphi−X174であり、人に対して病原性はないが、人に対して病原性である擬似ウイルスとしての役割を果たすものである。
【0060】
上記代替病原体は、最も小さい既知のウイルスの1つであり、直径は0.027μで、大きさ及び形状は、直径が0.03μである最も小さい血液中の病原体HCVと類似している。それゆえ、バクテリオファージphi−X174もまた、HBV(0.042μ)及びHIV(0.10μ)と同様に作用する。
【0061】
(試験結果)
(1a)人工血液に対する抵抗力におけるスクリーニング試験
この試験方法は、静水圧の大きさが異なる人工血液を使用し、生物学的液体による侵入に対する保護生地の抵抗力の測定を対象としている。
【0062】
試験は、ASTMF1670に基づいており、スクリーニング試験として用いられる。
【0063】
試験は、ランダムに選択した75mm×75mmの三つの検体に対し、気温25(±5)℃、相対湿度52%で行われ、各圧力を5分間維持することにより行なう。
【0064】
人工血液の生地への浸透は、異なった圧力下において検体毎に視覚的に観察することができ、浸透しなかった場合には合格(P)を、浸透した場合には失敗(F)を記録した。
【0065】
試験結果は以下の通りである。
圧力(Kpa) 検体1 検体2 検体3
0 P P P
1.75 P P P
3.50 P P P
7.00 P P P
14.00 P P P
20.00 P P P
熱溶接された部分に対しては、試験を繰り返し行っても同様の結果が得られた。
(1b)バクテリオファージphi−X174を使用した感染性物質の侵入に対する抵抗力の試験方法
試験は、試験系としてバクテリオファージphi−X174を使用して、感染性物質の侵入に対する保護生地の抵抗力を測定することにより行なう。
【0066】
試験は、ASTMF1671に基づいたものであり、スクリーニング検査(a)を合格した生地にのみ適用する。
【0067】
生地からランダムに選択した75mm×75mmの三つの検体に対して試験を行った。
【0068】
検体を、気温21(±5)℃で5分間毎に連続して圧力が加えられるウイルスを含む栄養を含む培養液にさらした。
【0069】
各圧力における微生物の侵入の検出は、液体の浸透が目に見えない場合であっても行った。
【0070】
加えられた圧力下で、液体に浸透したphu/ml(plaque forming units/milliliter)が1未満の場合、検体は試験に合格したことにする。加えられた圧力下で、三つの検体全てが試験を合格した場合に、生地は試験に合格したことになる。
【0071】
結果は以下の通りである。
圧力 検体1 検体2 検体3
14Kpa 0phu/ml 0phu/ml 0phu/ml
(試験2)
生物学的に汚染されたエアロゾルの侵入に対する抵抗力
試験は、コリソン噴霧器(Collison atomiser)を備えたパースペックスの箱(Parspex box)により行った。
【0072】
微生物であるブドウ球菌アウレウスATCC6538(NCIMB9518)を含む溶液を上記箱の中に散布した。二つのメンブランフィルター上の汚染されたエアロゾルの液滴を集めるために、減圧操作(underpressure)が行われる。これらフィルターの1つは、保護衣類生地によって保護されている。
【0073】
そして、フィルターを外し、微生物を抽出して、37℃で一晩培養した後、微生物の数を算出した。
【0074】
保護衣類生地の持つバリアー性の評価は、保護されたフィルター及び保護されていないフィルター上で発見されたバクテリアの比率を用いることによって行なった。
【0075】
7分間で四つの検体(直径25mmの円形)を試験した。
【0076】
生地を通って侵入した微生物に関する結果は以下の通りである。
検体1 検体2 検体3 検体4
0% 0% 0% 0%
(試験3)
生物学的に汚染されたホコリの侵入に対する抵抗力
試験は、EDANA法190.0−89/‘96に基づいたものである。
【0077】
粉体を、枯草菌ATCC9372(CIP A4)の胞子によって汚染し、30分間保護衣類生地を通して振動させた。
【0078】
生地を通って侵入した微生物の数は、24時間35℃で培養した後、算出した。
【0079】
試験は200mm×200mmの六つの検体に対して行われ、検体の一つは非汚染の対象として使用した。
【0080】
結果は以下の通りである。
検体 1 2 3 4 5 基準
微生物 0 0 0 0 0 0
(機械的性質)
生地に損傷を与え、その結果バリアー性に悪影響を与える通常の使用中に遭遇する機械的応力に対する耐久性のような他の性質は、生地の性能を評価することにおいて重要である。
【0081】
衣類の機械的性質を評価するために、幾つかの試験(試験4〜8)を行った。
【0082】
(試験4)
耐磨耗性
耐磨耗性は、Martindale法及びJ.Heal装置により、00研磨紙を使用して測定した。
【0083】
試験は、4つの検体に対して、気温20(±2)℃、相対湿度65%、9Kpaの圧力で、生地に直径0.5mmの穴が一つ開くまで(立体顕微鏡で評価)行った。
【0084】
結果は、最初の穴が開くまでの間に必要な周期で表される。
検体 1 2 3 4 平均
周期 2880 3300 2500 2500 2795
この方法により生地は四つの種類に分類され、最高区分はレベル4(>500周期)であり、最高の耐磨耗性を有する生地を示す。
【0085】
従って、試験によると、本発明の生地は、使用中の損傷に対する最高度の抵抗力を示している。
【0086】
以下に、他の機械的性質を査定するために行なわれた試験に基づく結果の一覧を示す。
【0087】
(試験5)
耐引き裂き性
Trepezoidal法−UNIENISO9073/’99
縦方向の引裂強度=59.4(±10.1)N
横方向の引裂強度=35.2(±5.7)N
(試験6)
曲げ亀裂抵抗
方法ISO7854/’84
10xで100.000周期まで検体には、いかなる損傷も見られなかった。
【0088】
(試験7)
引張強度(Grab法)
方法UNI EN ISO 13935−2/’01
検体:100×250mm
気温:20±2℃
相対湿度:65%
平均破壊強さ=72.2(±4.6)N
(試験8)
耐穿刺性
方法UNI EN 863/’96
耐穿刺性=12.4N
(発火に対する抵抗力)
保護衣類の通常の使用において、発火の原因となりうるものは数多く存在する。全ての生地は、強い熱源に当てた場合、特に酸素濃度が高い場合には燃焼してしまう。
【0089】
試験は、本発明の衣類の難燃性を評価するために行った。
【0090】
(試験9)
難燃性
試験は、EN/532/‘94則に従いプロパンガス及びブンゼンバーナーによって得られる800(±50)℃の高さ40mmの炎を使用する、EN1146/‘97法に基づいたものである。
【0091】
5つの検体は、燃焼及び白熱の痕跡が見られないという評価であった。
(化学薬品に対する抵抗性)
生地は、通常の使用において、臨床液体(clinical liquid)、皮膚消毒剤、潤滑材、及び油のような化学薬品に接触する可能性がある。
【0092】
このような化学薬品は、生地に損傷を与え、結果としてバリアー性に影響を与えるため、保護衣類は化学薬品に対する十分な抵抗力を持っていることが何よりも重要である。
【0093】
試験は4つの異なる液状の化学薬品を使用して行った。
【0094】
(試験10)
液状の化学薬品の浸透に対する抵抗力
試験はUNI EN588法に基づいたものである。
【0095】
3つの検体に対して、4つの異なる化学薬品を使用して、気温20(±2)℃、相対湿度65%、10ml/10(±1)秒の流量で試験を行った。
【0096】
複数のパラメータを評価し、以下に平均値の一覧を示す。
【0097】
浸透(%) はじき(%) 吸収(%)
SO30% 0 86.4 8.6
NaOH10% 0 86.0 10.2
n−へプタン 0 78.7 7.0
イソプロパノール 0 82.1 8.4
(継ぎ目部分の抵抗性)
最後に、保護衣類の縫い目、継ぎ目、及び接合箇所において、液体の浸透がより容易であることを考慮して、接合箇所に対して特殊な水浸透試験を行った。
【0098】
(試験11)
上昇する静水圧下における水の浸透に対する抵抗性
試験は、TEXTTEST FX3000装置を使用し、60cm/分の比率で水圧を上昇させることによって行われるUNI EN20811/‘93法に基づいたものである。
【0099】
試験は、気温20±2℃、相対湿度65%、及び水温20±2℃で行った。
【0100】
結果は、継ぎ目において、生地を通って三つ目の水滴が浸透するのに必要なcm HO及びPaで示される。
【0101】
cm HO Pa
検体1 280 27500
検体2 304 29800
検体3 282 27700
検体4 206 20200
検体5 266 26100
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】本発明の衣類を示す正面図である。
【図1B】本発明の衣類を示す背面図である。
【図2】本発明の衣類に付けられるラベルの一例を示す正面図である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンの層とポリプロピレンの層とを積層することによって製造され、
液体の浸透及び微生物の侵入に対する非常にレベルの高い保護、引き裂き抵抗及び耐摩耗性を含む優れた機械的性質、卓越した柔軟性、ドレープ性、及び着心地の良さを備えた生物剤に対する身体の部分保護に好適な新規保護衣類。
【請求項2】
ガウン又は上着又はズボンであることを特徴とする請求項1に記載の新規保護衣類。
【請求項3】
内側の層が不織ポリプロピレン層であり、外側の層がポリエチレンフィルムからなり、上記ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの重量比が、70:30〜50:50の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の新規保護衣類。
【請求項4】
内側の層が不織ポリプロピレン層であり、外側の層がポリエチレンフィルムからなり、上記ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの重量比が、65:35〜55:45の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の新規保護衣類。
【請求項5】
上記生地の厚さが270〜340μであり、上記生地の単位重量が50〜70g/mであることを特徴とする請求項3に記載の新規保護衣類。
【請求項6】
上記不織ポリプロピレン層の内側の層は、厚さが240〜270μで且つ単位重量が35〜45g/mであり、
上記外側のポリエチレンフィルムは、厚さが30〜70μで且つ単位重量が20〜30g/mであることを特徴とする請求項3に記載の新規保護衣類。
【請求項7】
上記生地の厚さが285〜315μであり、上記生地の単位重量が60.0〜67.5g/mであることを特徴とする請求項3に記載の新規保護衣類。
【請求項8】
上記不織ポリプロピレン層の内側の層は、厚さが245〜255μであり且つ単位重量が37.5〜40.0g/mであり、
上記外側のポリエチレンフィルムは、厚さが40〜60μであり且つ単位重量が22.5〜27.5g/mであることを特徴とする請求項3に記載の新規保護衣類。
【請求項9】
結合部が熱溶接で継がれたものであることを特徴とする請求項1に記載の新規保護衣類。
【請求項10】
手首の周りにゴムバンドと、
首を保護するものと、
後部に、内側に2つ、外側に2つの計4つ設けられた固定具とを備えることを特徴とする請求項2に記載のガウン。
【請求項11】
感染、アレルギー、及び毒性を引き起こしかねない、遺伝子組み換え体、細胞培養物、及びヒト内部寄生生物を含む微生物(バクテリア、寄生生物、菌類、及びウイルス)である生物剤に対する保護衣類としての請求項1に記載の新規保護衣類の使用方法。
【請求項12】
上記生物剤は、血液及び体液により伝染する微生物(HBV、HCV、及びHIV)であることを特徴とする請求項11に記載の新規保護衣類の使用方法。
【請求項13】
上記生物剤は、BSE、他のTSEの原因物質であることを特徴とする請求項11に記載の新規保護衣類の使用方法。
【請求項14】
上記生物剤は、バシルス・アントラシス菌であることを特徴とする請求項11に記載の新規保護衣類の使用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物剤に対する保護衣類として好適であり、液体の浸透及び微生物の侵入に対する非常にレベルの高い保護を行うことができ、機械的抵抗性を示すとともに、卓越した柔軟性およびドレープ性を備え、着心地が良い、新規ガウン、上着、及びズボンであって、
その生地は、不織ポリプロピレンの内側の層とポリエチレンフィルムの外側の層との積層によって製造されており、
上記ポリプロピレンと上記ポリエチレンとの単位重量の比率が、70:30〜50:50の範囲であることを特徴とする新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項2】
上記ポリプロピレンとポリエチレンとの単位重量の比率は、65:35〜55:45の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項3】
上記生地の厚さが270〜340μであり、上記生地の単位重量が50〜70g/mであることを特徴とする請求項1に記載の新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項4】
上記不織ポリプロピレン層の内側の層は、厚さが240〜270μで、且つ単位重量が35〜45g/mであり、
上記外側のポリエチレンフィルムは、厚さが30〜70μで、且つ単位重量が20〜30g/mであることを特徴とする請求項1に記載の新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項5】
上記生地の厚さが285〜315μであり、上記生地の単位重量が60.0〜67.5g/mであることを特徴とする請求項1に記載の新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項6】
上記不織ポリプロピレン層の内側の層は、厚さが245〜255μであり、且つ単位重量が37.5〜40.0g/mであり、
上記外側のポリエチレンフィルムは、厚さが40〜60μであり、且つ単位重量が22.5〜27.5g/mであることを特徴とする請求項1に記載の新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項7】
結合部が熱溶接で継がれたものであることを特徴とする請求項1に記載の新規ガウン、上着、及びズボン。
【請求項8】
感染、アレルギー、及び毒性を引き起こしかねない、遺伝子組み換え体、細胞培養物、及びヒト内部寄生生物を含む微生物(バクテリア、寄生生物、菌類、及びウイルス)である生物剤に対する保護衣類としての請求項1に記載のガウン、上着、及びズボンの使用方法。
【請求項9】
上記生物剤は、血液及び体液により伝染する微生物(HBV、HCV、及びHIV)であることを特徴とする請求項8に記載のガウン、上着、及びズボンの使用方法。
【請求項10】
上記生物剤は、BSE、他のTSEの原因物質であることを特徴とする請求項8に記載のガウン、上着、及びズボンの使用方法。
【請求項11】
上記生物剤は、バシルス・アントラシス菌であることを特徴とする請求項8に記載のガウン、上着、及びズボンの使用方法。

【図2】
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【公表番号】特表2006−507416(P2006−507416A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551163(P2004−551163)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/IT2003/000729
【国際公開番号】WO2004/043544
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505179454)シーエル.コム ソシエタ レスポンサビリタ リミタータ (2)
【Fターム(参考)】