説明

生物学的に活性な因子の標的化された送達のための組成物および方法

【課題】インビトロおよびインビボでの治療剤の標的化された送達のために方法および組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、サイトカイン、増殖因子、化学療法剤、核酸、および治療用剤のような生物学的に活性な因子の標的化された送達のための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、生物における疾患および病理学を処置するために使用され得る。さらに、本発明は、ヒトまたは動物における免疫応答の増強のための方法および組成物に関する。そのような増強は、免疫応答の刺激または抑制を生じ得る。本発明の他の組成物および方法は、ワクチン、ならびに薬剤の毒性を低減するために使用される組成物および方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許出願番号08/966,940(1997年11月11日出願)の一部継続出願であり、そして「Methods and Compositions for Targeted Therapeutic Delivery」と題された米国仮出願番号60/075,811(1998年2月24日出願);米国仮出願番号60/086,696(1998年5月26日出願);および米国仮出願(番号は、いまだ付与れていない、1998年11月6日出願)の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学的に活性な因子(例えば、サイトカイン、増殖因子、化学療法剤、核酸、および治療剤)の標的化された送達のための組成物および方法に関する。さらに、本発明は、ヒトまたは動物における免疫応答の増強のための方法および組成物に関する。そのような増強は、免疫応答の刺激または抑制を生じ得る。本発明の他の組成物および方法は、ワクチンおよび薬剤の毒性の減少のために使用される組成物および方法を含む。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
特定の標的細胞への治療剤の導入は、長い間、科学者にとっての挑戦であってきた。治療剤の特異的標的化の挑戦は、長い間、生物の処置の問題であってきた。その挑戦は、治療剤に対する生物の残りの部分の多すぎる曝露を提供することなく、生物の標的細胞に十分な量の治療剤を与えることである。そのような挑戦は、薬物送達において見られる。治療剤の処方物は、活性剤を粗野に標的化する疎水性または親水性のような活性剤における化学的差異を利用している。さらに、血液脳関門を横切る能力のようなサイズの考慮は、治療剤の標的化を限定している。
【0004】
成功が限定されて使用されている1つの方法は、特異的レセプターを保有する細胞の標的化、および治療剤のキャリアとして作用するそのレセプターに対する抗体を提供することである。その治療剤は、細胞傷害性である薬剤であり得るか、またはその治療剤は、細胞死を引き起こす放射活性部分であり得る。この技術に固有の問題は、特定のレセプターの単離、そのレセプターに対する選択的活性を有し、そして他の類似のエピトープとの交叉反応性を有さない抗体の産生、および抗体に対する治療剤の放射性標識または付着である。そのような限定された治療用送達に付随する問題は、その治療剤が、標的化された細胞中の内部に決して放出され得ないこと、その治療剤は、その抗体に遊離可能に結合されず、従って一旦その治療剤が部位に送達されても、十分に活性でないか、任意の活性を有し得ないことである。
【0005】
成功が限定されている標的送達の別の例は、細胞への選択された遺伝子配列の特異的標的化にある。遺伝子を細胞に挿入するための多くの技術が、試みられている。そのような技術は、沈降技術、ウイルス技術、マイクロピペットおよび遺伝子「銃」を使用する直接的挿入、および最も粗野には細胞への核酸の曝露を含む。広く使用される沈降技術は、リン酸カルシウムを含み、そして不溶性粒子を形成するためにDNAとの同時沈降物として使用される。この目的は、これらの粒子のうちの少なくともいくつかが、一般化された細胞のエンドサイトーシスによって宿主細胞内に内部移行されるようになることである。このことは、新しい遺伝子または外因性遺伝子の発現を生じる。この技術は、遺伝子の翻訳が得られる、細胞に外因性遺伝子を入れることについて低い効率性を有する。遺伝子の内部移行は、どの細胞がトランスフェクトされるかに関して非特異的である。なぜなら、すべての曝露された細胞は外因性遺伝子を内部移行し得、エンドサイトーシスについての任意の特定の認識部位に対する依存性が存在しないからである。この技術は、インビトロで広く使用されるが、標的細胞選択の特異性の欠如、および高度に分化された細胞による取り込みが少ないため、インビボでのこの技術の使用は、企図されない。さらに、インビボでのこの技術の使用は、沈降された核酸の不溶性の性質によって限定される。
【0006】
別の類似の技術は、インビトロで細胞をトランスフェクトするためのDEAE−Dextranの使用を含む。DEAE−Dextranは、細胞に対して有害であり、そして核酸の細胞への非特異的挿入を生じる。この方法は、インビボでは賢明ではない。
【0007】
細胞をトランスフェクトするため、または細胞への外因性遺伝子の侵入を提供するための他の技術もまた限定される。ベクターとしてのウイルスの使用は、細胞への外因性遺伝子のインビトロおよびインビボ導入についていくつかの適用可能性を有する。ウイルス性タンパク質の存在が、インビボでの使用において望ましくない効果を生じるという危険が常に存在する。さらに、ウイルスベクターは、細胞に渡され得る外因性遺伝物質のサイズに関して限定され得る。
【0008】
外因性遺伝子送達はまた、核酸を捕捉したリポソームとともに使用されている。リポソームは、種々の物質(核酸を含む)で充填され得る、膜で囲まれた嚢である。リポソーム送達は、リポソームの不規則な充填のために、細胞への一定の送達を提供しない。さらに、リポソームは、特異的細胞型に対して標的化され得ない。リポソームは、破壊の問題、従ってインビボまたはインビトロ系を通じて望ましくない部位での核酸の漏出に苦しむ。
【0009】
外因性核酸を挿入するための強力技術は、マイクロピペットまたは遺伝子銃で細胞膜を穴を開け、外因性DNAを細胞に挿入することを含む。これらの技術は、いくつかの手順のために良好に作用するが、広く適用可能ではない。これらは、高度に労力を必要とし、そして非常に熟練したレシピエント細胞の操作を必要とする。これらは、インビボで良好に作用する単一の手順である技術ではない。特定の細胞が細胞の選択または標的ゾーン中の細胞をこえて核酸を受ける特異性が存在しない。細胞膜を変化させる電気的方法を使用するエレクトロポレーションは、細胞への遺伝子の挿入をインビトロで成功している。この場合もやはり、この技術は、インビボ適用のために使用され得ない。
【0010】
糖タンパク質についてのレセプターの存在に依存する特定の細胞についてのDNAの標的送達のいくつかの試みが存在した。この送達系は、DNAに非共有結合され、そしてまたリガンドに共有結合されたポリカチオン(例えば、ポリリジン)を使用した。リガンドへのポリカチオンの共有結合のそのような使用は、細胞内部移行機構が一旦開始すると、送達系の分解を可能にしない。この大きな複合体化された送達系は、ともに共有結合されており、核酸が天然において細胞において見出される方法とは非常に異なる。
【0011】
特定の細胞への特定の因子の標的化された送達は、免疫系の選択的活性化または制御において重要である。現在のところ、免疫抑制または活性化のための粗野な技術のみが存在する。免疫系は、細胞、身体内および身体外の両方からの刺激と相互作用する細胞性因子を含む広範な種々の成分を含む、身体の複雑な相互作用系である。その直接的な作用に加えて、免疫系の応答もまた、神経系、呼吸系、循環器系、および消化系を含む身体の他の系によって影響される。
【0012】
免疫系のより良好であることが知られた局面の1つは、生物への侵入、身体内での細胞変化によって提示されるか、またはワクチン接種由来の外来抗原に対して応答する能力である。免疫系のそのような活性化に応答する細胞の第1種のうちのいくつかは、食細胞およびナチュラルキラー細胞である。食細胞には、細胞の中でもとりわけ、単球、マクロファージ、および多形核好中球が挙げられる。これらの細胞は、一般に外来抗原に結合し、それを内部移行し、そしてそれを破壊し得る。それらはまた、炎症性応答のような他の免疫応答を媒介する可溶性分子を生成する。ナチュラルキラー細胞は、特定のウイルス感染した胎児性細胞および腫瘍細胞を認識および破壊し得る。免疫応答の他の因子は、外来抗原に独立して応答し得るか、または細胞もしくは抗体と協同で作用し得る両方の補体経路を含む。
【0013】
ワクチン接種に重要である免疫系の局面のうちの1つは、特定の病原または外来抗原に対する免疫系の特定の応答である。応答の一部は、その外来抗原についての「記憶」の確立を含む。第2の曝露に際して、記憶機能は、外来抗原に対するより迅速で、一般により大きな応答を可能にする。リンパ球は、他の細胞および因子と共同して、記憶機能および応答の両方における主要な役割を果たす。
【0014】
ワクチンは、長い間、生物を防御する免疫応答を刺激するために使用されてきた。アルミニウム化合物は、ワクチン接種目的のために、水に不溶性の抗原性物質を形成するために使用されてきた。金属もまた、カプセル状ポリサッカライド金属錯体ワクチンにおいて使用されている。そのような使用は、細菌性疾患の予防および処置のための複合体の使用に限定されている。選択された金属はまた、安定なアジュバントエマルジョン組成物の成分として使用されている。モノステアリン酸塩として、または脂肪酸の水酸化物塩の形態のアルミニウムが、エマルジョン化剤、またはワクチン組成物中のエマルジョンの安定剤であることが、当該分野において公知である。
【0015】
疾患または病理学の処置のための特定の治療剤または生物学的に活性な因子の標的化された送達は、現在のところ利用可能ではない。以下のような遺伝的疾患、先天的疾患、および後天性疾患を含むがそれらに限定されない疾患および病理学的状態の処置のための既存の治療は、身体中の広範な効果を有する生物学的に活性な因子の用量の投与を必要とする:細菌性疾患、ウイルス性疾患、ガン、免疫不全疾患、自己免疫疾患、精神医学的疾患、心臓血管系疾患、生殖機能不全、体細胞増殖機能不全、ストレス関連疾患、筋ジストロフィー、骨粗しょう症、眼科疾患、アレルギー、および移植拒絶。これらの治療剤は、生物学的に活性な薬剤の直接的送達のために、罹患した器官に特に標的化されない。
【0016】
例えば、ガンのための現在の処置は、化学療法剤、ならびにサイトカインおよび免疫因子のような他の生物学的に活性な因子の投与を含む。化学療法剤の全身への投与は、器官損傷、味覚および知覚のような感覚の損失、ならびに毛髪の損失のような毒性および有害な副作用を生じる。多くの化学療法剤は、造血系および胃腸系に無差別に影響し、血液および免疫細胞における変化、嘔吐、胃窮迫、および体重の減少を引き起こす迅速に分裂する細胞を殺傷するように設計される。免疫因子(例えば、サイトカイン)の全身系への投与は、望まれない免疫応答の活性化、および他の免疫機能の阻害を引き起こす。そのような治療剤は、状態のための処置を提供するが、次いで処置されなくてはならない副作用の広いアレイとともに生じる。さらに、薬物のボーラス投与は、迅速なクリアランスのために、最適でなくてもよい。
【0017】
疾患を含む生物学的状態の他の型の処置は、核酸を使用し得る。そのような治療的処置の例は、遺伝子置換、アンチセンス遺伝子治療、三重鎖遺伝子治療、およびリボザイムに基づく治療を含む。しかし、成功させるために、特定の細胞型および位置へ、ならびに細胞膜、核膜、および他の膜を横切っての、治療剤の送達のための有効な手段が必要とされる。
【0018】
遺伝子活性の変更は、多くの方法で達成され得る。例えば、特定の遺伝子メッセージまたはウイルス配列に相補的であるオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンス化合物)は、例えばウイルスに対する阻害性効果を有することが示されている。細胞またはウイルスの標的化されたRNAメッセージとハイブリダイズするアンチセンス核酸組成物を作製することによって、メッセージのタンパク質への翻訳は、中断または妨害され得る。この様式で、遺伝子活性は調整され得る。
【0019】
特定の遺伝子を不活化する能力は、大きな治療的利益を提供する。組織培養において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、およびAIDSを引き起こすヒト免疫不全ウイルスによる感染を阻害した。変異型オンコジーンに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを標的化することもまた、可能であり得る。アンチセンス技術はまた、増殖および発生を調節する能力を保持する。しかし、遺伝子治療が作用するためには、アンチセンス治療用化合物が、標的にされた部位に送達されなければならない。
【0020】
別の型の遺伝子治療は、センス核酸を使用して遺伝子活性を改変した。欠損遺伝子は、その欠損をうけにくい核酸の投与によって置換または補充される。例えば、投与された正常な核酸は、染色体に挿入されるDNA分子であり得るか、または細胞外DNA中に存在してい得、そして機能的RNAを生成し、これは順に所望の遺伝子産物を生じる。この様式において、遺伝子欠損および遺伝子産物の産生における欠損は、修正され得る。
【0021】
なおさらなる遺伝子治療は、細胞の正常な遺伝子相補体を増加する能力を有する。例えば、細胞内免疫として公知の遺伝子治療技術は、所望の遺伝子産物の細胞内の存在を可能にする。次いで、所望の遺伝子産物は、細胞の表面上で発現され、外来物として身体によって認識され、そして遺伝子産物を発現する細胞は、身体自体の免疫系によって排除される。しかし、このアプローチは、現在のところ、そのような治療剤の特定の部位への標的化された送達を促進する有効な遺伝子送達系の欠如に起因して、適切ではない。
【0022】
遺伝子治療はまた、インビボでの薬物送達の方法として使用され得る。例えば、治療用化合物をコードする遺伝子が内皮細胞に送達され得る場合、遺伝子産物は、血流への接近を促進した。現在のところ、細胞への遺伝子送達のための1つの方法は、身体から細胞を取り出し、細胞を核酸にエクスビボで曝露し、次いで細胞を身体内に再導入することである。あるいは、遺伝子治療は、ネイキッドDNA、DNA含有リポソームの注射、およびウイルス性または細菌性DNA含有ベクターの注射によって、インビボで達成されている。レトロウイルスベクターは、単離された細胞にエクスビボで遺伝子を送達するために使用され得、次いでこの細胞は、患者に注入によって戻される。しかし、レトロウイルスベクターは、以下のようないくつかの不利な点を有する:分裂している細胞にのみ遺伝子を送達し得ること、送達されるべき遺伝子のランダムな組込み、望まれない遺伝子改変を潜在的に引き起こすこと、および感染性野性型レトロウイルス形態に戻る可能性のあること。
【0023】
三重鎖DNA技術は、二重鎖DNAの特定の領域に特異的に結合し、それによって標的化された遺伝子を不活化するオリゴヌクレオチドおよび化合物を利用する遺伝子治療の別の形態である。三重鎖DNA技術の利点は、結合がmRNAレベルではなくDNAレベルであるために、オリゴヌクレオチドまたは化合物の単一のコピーのみが、遺伝子発現を改変するのに必要とされることである。しかし、三重鎖DNA技術の不利な点は、オリゴヌクレオチドまたは化合物が、細胞膜だけではなく、微生物膜(微生物感染を処置する場合)または核膜(染色体DNAに組み込まれた外来DNAの真核生物遺伝子機能または発現を改変する場合)を通過しなければならないことである。
【0024】
別の遺伝子治療技術は、遺伝的障害の処置のためのリボザイムの治療的使用に関する。リボザイムは、ハイブリダイズする領域および酵素学的領域からなる触媒性RNA分子である。リボザイムは、将来、核酸配列の標的化された領域に特異的に結合し、そして切断するために操作され得るか、またはその発現もしくは遺伝子産物への翻訳を改変するために配列を他の様式で酵素学的に改変され得る。
【0025】
種々の生物学的に活性な因子が、治療的効力を有することが報告されているヒトまたは動物から単離されている。これらの化合物は、サイトカインおよび増殖因子のような強力な生物学的に活性な分子を含むがこれらに限定されない。しかし、これらの種々の因子が天然の供給源または遺伝的に操作された物質から単離および精製され、次いでヒトまたは動物に注射される場合、それらは頻繁に重篤な副作用を引き起こし、そして望まれない毒性を示すことが見出されている。この毒性のために、化合物を治療的に使用することが困難であった。さらに、活性な化合物を抗原として使用し、分子に対する抗体を生成することは困難であってきた。さらに、そのような分子の毒性は、疾患の処置において使用される場合、因子が一般に見出されない部位におけるより高い濃度または存在に関連する。そのような強力な因子が、副作用を生じる他の部位への曝露なしに、その因子が必要とされる部位に特異的に標的化され得る場合、その全身投与に関連する問題は克服され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
標的化された送達系のための組成物および方法の非常に高い必要性がある。これらの送達系は、特定の細胞、または遺伝子治療において使用され得る遺伝子、ポリヌクレオチド、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドのような遺伝物質の器官への標的化された送達のために使用され得る。より詳細には、遺伝的化合物および他の薬物および治療用化合物の細胞膜を横切る輸送を促進し得る組成物の必要性が存在する。また必要とされるものは、細胞または周囲の環境に影響を及ぼす治療剤および生物学的因子の、特定の細胞型および器官への送達のための送達系である。
【0027】
弱毒化ワクチンの使用および不活化ワクチンの低い効力と関連する安全性の問題のために、ワクチン接種の新規な方法(例えば、免疫細胞成分の選択的活性化、およびワクチン効力を増強する方法)を提供する組成物および方法についての当該分野における必要性が存在する。体液性応答および細胞媒介応答の両方を刺激する免疫系を増強する組成物および方法についての当該分野における必要性もまた存在する。免疫応答の選択性調整、および所望の応答を生じるための免疫系の種々の成分を操作することの当該分野におけるさらなる必要性が存在する。さらに、活性化におけるより迅速な応答のための免疫応答を加速および展開し得る方法および組成物の必要性が存在する。ヒトおよび動物の両方の集団を、1用量のみでの防御を提供するワクチンでワクチン接種する能力の必要性が増加している。
【0028】
必要とされるのは、標的細胞のみへの治療剤の標的特異的送達のための組成物および方法である。それは、治療剤が標的にされた細胞によって内部移行を受ける場合、いくつかの投与および処置に好ましい。一旦細胞の中に入ると、治療剤は、治療剤が活性であるように輸送系から十分に放出されるべきである。例えば、治療剤が遺伝子を含む外因性核酸である場合、それは、転写されるべきであり、必要ならば翻訳および発現されるべきである。そのような組成物および方法は、治療剤を標的細胞に効率的に送達し得るべきである。また必要とされるものは、インビトロおよびインビボ系の両方で使用され得る組成物および方法である。
【0029】
低減した毒性を有し、そして広範な免疫疾患、ガン、ウイルス性疾患、および細菌性疾患のための治療において使用され得る治療的に有効な組成物の必要性もまた存在する。さらに、非常に高い濃度または間違った位置で見出される場合に毒性である生物学的に活性な組成物の毒性を低減し得る組成物の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1) プラットホームに結合した少なくとも1つのエフェクター分子または少なくとも1つの細胞特異的に標的化する分子を含む、標的化送達組成物。
(項目2) 項目1に記載の標的化送達組成物であって、ここで前記エフェクター分子は、前記プラットホームに、a)該プラットホームへの直接的結合;b)該プラットホームに結合された組込み分子への特異的結合;c)該プラットホームに結合された組込み分子へのより特異的ではない結合;およびd)相補的結合メンバーの結合、を含む様式で結合されている、組成物。
(項目3) 項目1に記載の標的化送達組成物であって、プラットホームに、a)該プラットホームへの直接的結合;b)該プラットホームに結合された組込み分子への特異的結合;c)該プラットホームに結合された組込み分子へのより特異的ではない結合;およびd)相補的結合メンバーの結合、を含む様式で結合された細胞特異的に標的化する分子を含む、組成物。
(項目4) 項目2に記載の標的化送達組成物であって、ここで前記エフェクター分子が治療剤および生物学的に活性な因子を含む、組成物。
(項目5) 項目1に記載の標的化送達組成物であって、ここで前記細胞特異的に標的化する分子が、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌腸毒素Bおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFα」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球−マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(「TGFα」)、熱ショックタンパク質、血液型群の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症調節タンパク質および免疫調節タンパク質、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモンのようなホルモン、細胞表面レセプター、抗体、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、センス核酸、アンチセンス核酸、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;変異p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;レセプタータンパク質、グルコース、グリコーゲン、リン脂質、およびモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体、および塩基性線維芽細胞増殖因子を含む、組成物。
(項目6) 前記プラットホームがコロイド状金属である、項目1に記載の標的化送達組成物。
(項目7) 項目1に記載の標的化送達組成物であって、ここで該組成物が、少なくとも1つのエフェクター分子および少なくとも1つの細胞特異的に標的化する分子を含む、組成物。
(項目8) 項目7に記載の標的化組成物であって、ここで前記エフェクター分子または前記細胞特異的に標的化する分子のうちの少なくとも1つが、前記プラットホームに、a)該プラットホームへの直接的結合;b)該プラットホームに結合された組込み分子への特異的結合;c)該プラットホームに結合された組込み分子へのより特異的ではない結合;およびd)相補的結合メンバーの結合、を含む様式で結合されている、組成物。
(項目9) 細胞へのエフェクター分子の標的化された送達のための方法であって、プラットホームに結合した少なくとも1つのエフェクター分子および少なくとも1つの細胞特異的に標的化する分子を含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目10) 前記組成物がさらに組み込みをする分子を含む、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記分子がインビボで投与される、項目9に記載の方法。
(項目12) 前記分子がインビトロで投与される、項目9に記載の方法。
(発明の要旨)
本発明は、特定の細胞への治療剤の標的化された送達のための方法および組成物を含む。治療剤は、細胞上の特定のレセプターのために特定の細胞によって取り込まれ、そして好ましくはレセプター媒介エンドサイトーシスによって細胞内に内部移行される。従って、異なる細胞型の混合物において、治療剤は、選択されたレセプターを有する細胞によってのみ内部移行を受け、そしてそのレセプターを欠く細胞は、影響されない。
【0031】
本発明の方法および組成物は、標的化された細胞送達系への新規かつ多目的なアプローチを提供する。本発明の好ましい実施態様は、送達構造またはプラットホームを含み、送達されるべき組成物または細胞特異的に標的化する分子はその送達構造またはプラットホームに付着される。例えば、1つの実施態様において、結合基のうちの1つのメンバーは、その送達プラットホームに結合され、そしてその結合基の相補的なメンバーは、治療剤もしくはエフェクター分子に結合されるか、または選択された細胞特異的リガンドもしくは標的化分子に結合される。より好ましい実施態様において、その結合基の相補的なメンバーのうちの1つは、細胞特異的リガンド、標的化する分子に結合し、そしてその結合基の相補的なメンバーのうちの別のものは、治療剤またはエフェクター分子に結合される。
【0032】
本発明の送達系は、標的化されたコンビナトリアル治療剤を含む新規な処置を提供する。本発明は、インビトロまたはインビボでの特定の細胞への標的化された薬物送達のための組成物および方法を含む。送達構造またはプラットホームは、好ましくは可逆的な結合のための表面を提供するが、本出願は、生物または細胞に投与されるべきエレメントの不可逆的結合を含み得る。1つの好ましい実施態様において、結合されるエレメントは、結合基のメンバーである。結合基メンバーは、抗体/抗原;酵素/基質;およびストレプトアビジン/ビオチンを含むがこれらに限定されないすべてのそのような公知のペアの結合基から選択され得る。次いで、結合基のメンバーは、細胞特異的リガンドまたは治療剤に結合され得る。その細胞特異的リガンドまたは標的化する分子は、任意の細胞特異的マーカーを含み、これは、1つもしくは少数の細胞型に特異的なマーカー、または細胞型、器官、もしくは系中で広範囲に発現されるマーカーを含む。治療剤には、生物学的に活性な薬剤、製剤、放射活性剤、もしくは細胞に有害な薬剤、核酸、または細胞活性に影響を及ぼし得る他の化合物のような薬剤を含むが、これらに限定されない。
【0033】
そのような組成物の他の実施態様は、結合基のメンバーが可逆的に結合した送達構造またはプラットホームを含む。本発明の好ましい実施態様は、結合基のメンバーに結合し得るプラットホームのようなコロイド状金を含み、標的化する分子およびエフェクター分子は、この結合基のメンバーに結合し、好ましくは細胞のレセプター媒介エンドサイトーシスを使用して治療剤の内部送達を提供する標的化された遺伝子送達系を作製する。より好ましい実施態様において、その結合基は、ストレプトアビジン/ビオチンであり、そしてその標的化する分子はサイトカインであり、そしてそのエフェクター分子は治療剤である。本発明の実施態様はまた、ポリカチオンを使用することによるような、より特異的でない方法で、エフェクター分子または標的化する分子を結合させる工程を包含し得る。
【0034】
本発明において、本方法は、標的化された送達系の調製、および投与、ならびに選択された細胞へのその標的化された送達系の送達を含む。本発明において、組成物の治療剤は、細胞部位で活性であるか、または有効であることが意図される。そのような活性は、当業者に公知の任意の形態であり得、そして細胞死、機能性タンパク質の産生、細胞性産物の産生、酵素活性、細胞性産物の輸送、細胞膜成分または核成分の産生を含むがこれらに限定されない。標的化された細胞への送達の方法は、細胞培養物もしくは培地への添加のようなインビトロ技術のために使用される方法、またはインビボ投与のために使用される方法のような方法であり得る。インビボ投与は、細胞への直接的な適用、またはヒト、動物、もしくは他の生物への治療剤の送達のために使用されるような投与経路を含み得る。
【0035】
本発明の別の好ましい実施態様は、生物学的に活性な因子または治療剤が、送達プラットホームと直接的に結合している(例えば、サイトカイン組成物のコロイド状金への結合)方法および組成物を含む。そのような組成物は、治療剤の投与と関連する毒性を低減するために使用され得るか、またはワクチン処方物中で使用され得る。本発明の組成物は、コロイド状金属の混合物(例えばヒトもしくは動物に対して通常には毒性である物質、または免疫応答を生じ得る物質と組み合わせられた金コロイド(HAuCl4))を含み、ここでこの組成物は、ヒトまたは動物に投与される場合、より毒性ではないか、またはまったく毒性ではない。このような方法および組成物は、慢性関節リウマチのような自己免疫疾患および後天性免疫不全を含むがこれに限定されない、細菌感染、ウイルス感染、ガン、および免疫疾患治療の処置において使用され得る。本発明の1つの利点は、以前に公知の方法においてよりも少量の生物学的に活性な因子が投与され得る(この因子が部位に直接的に標的化されるか、またはこの因子が送達プラットホームとの結合のために一般的な投与についてより毒性が低いため)ことである。プラットホームに結合した生物学的に活性な因子もまた、遊離可能な生物学的に活性な因子の固定された供給源、一定放出貯蔵(constant release depot)として作用し得る。
【0036】
本発明の標的化された送達は、組成物に対する免疫応答を増強または改変する本発明の組成物による、免疫系の特定の成分の同時および/または連続的に標的化された刺激のための方法および組成物を含む。免疫系の成分には、B細胞、T細胞、抗原提示細胞、食細胞、マクロファージ、および他の免疫細胞のような細胞が挙げられるがこれらに限定されない。免疫系のいくつかの細胞型はすべて同じ細胞マーカーを有し得るので、「成分特異的に標的化する分子」は、いくつかの細胞型または組織型を標的にし得る。
【0037】
本発明の別の局面は、抗原およびワクチンが免疫応答を誘導する効力を増大させることを提供する。本発明は、免疫成分特異的に標的化する分子との抗原の同時提示による、組成物での免疫系の特定の個々の成分の刺激のための組成物および方法を含む。免疫成分の標的化された活性化は、インビボまたはインビトロで生じ得る。
【0038】
本発明は、特異的成分刺激組成物の提示を介する、多くの異なる個々の免疫成分の同時刺激のための組成物および方法を含む。このような組成物の1つの実施態様は、成分特異的免疫刺激剤と組み合わせた抗原とともに送達プラットホームを含む。本発明はまた、相互作用性因子および細胞の免疫応答カスケードにおける1つ以上の工程にて成分刺激組成物を提供することによる、免疫系の連続的刺激のための組成物および方法を含む。
【0039】
好ましい実施態様において、本方法は、成分刺激組成物の連続的投与を含む。この組成物は、異なる時点または異なる投与方法で(例えば、1度目には経口的、そして2度目には注射によって)与えられる同じ成分特異的免疫刺激剤を含み得る。別の好ましい実施態様において、本方法は、異なる成分特異的免疫刺激剤の連続的投与を含む。例えば、第1の成分特異的免疫刺激剤は、免疫応答の開始工程を刺激し、続いてその後に第2の成分特異的免疫刺激剤を投与し、免疫応答のその後の工程を刺激する。本発明は、免疫系のいくつかの経路を開始させる複数の成分特異的免疫刺激剤を投与し、続いてその後に免疫応答を持続および増強するための同じまたは他の成分特異的免疫刺激剤を投与することを意図する。
【0040】
さらに、本発明において、本明細書中に記載される組成物および方法は、免疫応答の刺激、または免疫応答の抑制のために使用され得ることが意図される。免疫応答の抑制のための成分特異的免疫刺激剤の投与は、自己免疫疾患または器官拒絶を制御するために使用され得る。
【0041】
従って、本発明の目的は、治療剤で細胞に影響を及ぼすための多目的の方法および組成物を提供することである。
【0042】
本発明の別の目的は、インビトロおよびインビボでの治療剤の標的化された送達のために方法および組成物を提供することである。
【0043】
本発明のなお別の目的は、特定のレセプターを有する細胞への治療剤の標的化された送達のための方法および組成物である。
【0044】
本発明のさらなる目的は、レセプター媒介エンドサイトーシスによる、細胞への治療剤の送達のための方法および組成物を提供することである。
【0045】
本発明のなお別の目的は、特定の標的化する分子を使用して、選択された治療剤を結合および送達し得る標的化された送達系を含む方法および組成物を提供することである。
【0046】
本発明の目的は、生物学的に活性な因子の毒性効果を低減させ得る組成物および方法を提供することである。
【0047】
本発明のなお別の目的は、通常には毒性の生物学的に活性な因子を使用して、ヒトまたは動物にワクチン接種するための方法および組成物を提供することである。
【0048】
本発明のさらなる目的は、生物学的に活性な因子の徐放のための方法および組成物を提供することである。
【0049】
本発明のなおさらなる目的は、免疫応答を増強するための確実かつ容易な方法および組成物を提供することである。
【0050】
本発明の別の目的は、ワクチン効力を改善するための方法および組成物を提供することである。
【0051】
本発明の別の目的は、1用量のみの投与で有効な防御を与えるワクチンおよびワクチン接種を提供することである。
【0052】
本発明のなお別の目的は、特定の様式での個々の免疫成分の標的化された刺激ための組成物および方法を提供することである。
【0053】
本発明の別の目的は、免疫系の特定の成分に影響を及ぼし得る成分特異的免疫刺激剤を含む方法および組成物を提供することである。
【0054】
本発明のなお別の目的は、免疫応答を抑制するための方法および組成物を提供することである。
本発明のこれらの目的および他の目的、特徴、ならびに利点は、以下の好ましい実施態様の詳細な説明の総説後に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様の概略図である。
【図2】図2は、TNF−αでの送達プラットホームの飽和可能な結合速度論を示すグラフである。
【図3】図3は、マウス抗マウスIL−6抗体応答の生成に対するコロイド状金の効果を図示する。
【図4】図4は、免疫反応性における、コロイド状金に結合したIL−6で活性化された細胞におけるマウス抗マウスIL−6抗体応答の、IL−6またはコロイド状金単独で活性化された応答に対する増加を図示する。
【図5】図5は、金がIL−6に結合する効率性を図示する。
【図6】図6は、金での処理後のIL−1の生物学的活性の保持を図示する。
【図7】図7は、コロイド状金からのIL−2の遊離に対する時間の効果を図示する。
【図8】図8は、コロイド状金からのTNFαの遊離に対する希釈の効果を図示する。
【図9】図9は、コロイド状金に結合したIL−2のインビボ遊離を図示する。
【図10a】図10a〜dは、MCF−7細胞による、コロイド状金の結合したIL−1βの内部移行を図示する。
【図10b】図10a〜dは、MCF−7細胞による、コロイド状金の結合したIL−1βの内部移行を図示する。
【図10c】図10a〜dは、MCF−7細胞による、コロイド状金の結合したIL−1βの内部移行を図示する。
【図10d】図10a〜dは、MCF−7細胞による、コロイド状金の結合したIL−1βの内部移行を図示する。
【図11】図11は、TNFα、IL−6、およびIL−1βと結合したコロイド状金の免疫反応性に対する効果を図示する。
【図12】図12は、マクロファージによるEGF/CG/IL−1β複合体のインビトロ内部移行を図示する。
【図13】図13は、樹状細胞によるEGF/CG/TNF−α複合体のインビトロ内部移行を図示する。
【図14】図14は、B細胞によるEGF/CG/IL−6複合体のインビトロ内部移行を図示する。
【図15】図15は、T細胞によるEGF/CG/IL−2複合体のインビトロ内部移行を図示する。
【図16】図16は、ヒト乳ガン細胞MCF−7によるEGG/Histone/DNA/Colloidal Goldキメラのインビトロ内部移行を図示する。
【図17】図17は、EGF/Histone/DNA/Colloidal goldキメラおよびヒト乳ガン細胞HS−578−Tを使用するコントロールトランスフェクションを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(詳細な説明)
本発明は、細胞への治療剤の標的化された送達のための組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、別のエレメントが結合した送達構造体またはプラットフォームの組成物を含む。本発明の好ましい実施態様は、プラットフォームとしてのコロイド状金属を含む。このプラットフォームは、標的化する分子およびエフェクター分子が結合して標的化された遺伝子送達系を作製する結合基のメンバーを結合し得る。このような系は、好ましくは、細胞のレセプター媒介エンドサイトーシスを使用して、治療剤の内部送達を達成する。最も好ましい実施態様では、結合基は、ストレプトアビジン/ビオチンであり、そして標的化する分子は、サイトカインであり、そしてエフェクター分子は治療剤である。本発明の実施態様はまた、より特異性の低い方法においてエフェクター分子または標的化する分子を、結合パートナーを使用することなく、例えば、ポリカチオンまたはタンパク質を使用することにより、結合する工程を含み得る。本発明の他の実施態様は、送達構造体またはプラットフォームへのエフェクター分子または標的化する分子の直接的な結合または会合を含む。
【0057】
本発明は、プラットフォームとしてコロイド状金属を使用する、治療剤の標的化された送達のための方法および組成物を含む。このようなコロイド状金属は、可逆的または非可逆的に、治療剤または標的化する分子のいずれかと相互作用する分子を結合し得る。組み込みをする分子(integrating molecule)は、特異的結合分子(例えば、結合対のメンバー)であり得るか、または、より低い特異性で結合する、非特異的な組み込みをする分子であり得るかのいずれかである。このような、より特異性の低い結合の例は、ポリカチオン性分子(例えば、ポリリジンまたはヒストン)による核酸の結合である。本発明は、ポリリジン、硫酸プロタミン、ヒストン、またはアシアロ糖タンパク質を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の組み込みをする分子(例えば、ポリカチオン性エレメント)の使用を意図する。
【0058】
結合対のメンバーは、抗体−抗原対、酵素−基質対;レセプターリガンド対;およびストレプトアビジン−ビオチンを含むがこれらに限定されない、当業者に公知のこのような任意の結合対を含む。新規な結合パートナーは、特異的に設計され得る。結合パートナーの必須の特徴は、結合パートナーが特異的に連結され得るような、結合対のうちの一方と、結合対のうちの他方のメンバーとの間の特異的結合である。結合メンバーの別の所望の特徴は、対の一方のメンバーが、エフェクター分子または標的化する分子のいずれかにまた結合し得るかまたは結合しており、そして他方のメンバーが、送達プラットフォームに結合していることである。
【0059】
任意の特定の理論に束縛されることは望まないが、レセプター媒介エンドサイトーシスにおけるエンドソーム形成に生じるpHの変化が治療剤の内部細胞送達のために利用され得ると理論付けられる。コロイド状金属組成物が中性pHにある場合、この組成物はゾルである。pHが低下する場合、コロイド状金属組成物は沈澱および凝集する。低下したpHは、約7未満から約2のpH値の範囲を含む。好ましい低下したpHは、エンドソームにおいて見出されるpHであり、これは約pH4〜約pH6、最も好ましくはpH5.6である。エンドソームにおける金属粒子の凝集は、結合のための金属粒子の表面積を効果的に減少させ、これは、金属キャリアからの結合物質の放出をもたらす。
【0060】
送達プラットフォームは、好ましくは、コロイド状金属組成物である。例えば、好ましい実施態様では、送達プラットフォームは、ほぼ中性のpHで負電荷を有する、コロイド状金粒子である。この負電荷は、他の負に荷電した分子の誘引および結合を防止する。対照的に、正荷電分子は、コロイド状金粒子に誘引され、そして結合する。このような正荷電分子は、ポリリジン、ヒストン、硫酸プロタミン、およびアシアロ糖タンパク質を含むがこれらに限定されない、ポリカチオンを含む。本発明において意図するヒストンは、異なるヒストンの混合物、1つの特定の型のヒストン、または特定のヒストンの組合せであり得る。正荷電分子はまた、結合対(例えば、抗体−抗原またはストレプトアビジン/ビオチン)のメンバーを含み得る。送達プラットフォームへの正荷電分子の結合の後、相補的な結合メンバーまたはエフェクター分子が結合し得る。
【0061】
エフェクター分子は、本明細書中で標的化する分子として公知の、細胞または標的選択のための分子、および標的、治療剤、または生物学的に活性な因子に一旦送達されたら効果を提供する分子の両方を含む。エフェクター分子と金属性プラットフォームとの会合は、結合対のメンバーおよびそれらの特異的結合を使用する特異的手段を通して、またはより特異性の低い手段を通してのいずれかであり得る。例えば、より特異性の低い手段は、イオン性相互作用を含むがこれらに限定されない。
【0062】
結合メンバーの特異的結合特性の使用は、治療剤に対する結合対のメンバー、および金属性プラットフォームに対する相補的結合メンバーの一方の結合を含む。一方の結合メンバーの治療剤に対する結合は、当該分野で周知である手段を通して達成され、そしてビオチン化治療剤の結合において例示される。このビオチンは、タンパク質結合のような方法を通して結合され得るか、またはビオチン化ヌクレオシドを用いる合成を通して核酸にとり込まれ得る。ビオチンの治療剤に対する結合は、化学的結合(例えば、特異的リンカーの提供または活性な基の治療剤または標的化する分子への付加)を用いて達成され得る。
【0063】
本発明の柔軟性の一局面を提供するのは、このような結合メンバーの使用である。任意の所望の治療剤は、結合対のメンバーの一方に結合し得る。次いで、相補的結合メンバーは、金属性プラットフォームと会合する。従って、任意の治療剤は、本発明の金属性プラットフォームを用いて送達され得る。さらに、任意の標的化する分子は、結合基のメンバーの1つに結合し得る。
【0064】
治療剤の送達のための細胞または標的の選択に特異性を提供するために、細胞特異的に標的化する分子はまた、金属性プラットフォームに結合され得る。このような細胞特異的に標的化する分子は、細胞膜において見出されるレセプターを含むがこれらに限定されない、細胞上の構造体に結合する任意の分子を含む。このような細胞特異的に標的化する分子はまた、細胞膜に見出されるかまたは細胞膜に含まれない分子に結合し得る、レセプターまたはレセプターの一部を含む。このような細胞特異的に標的化する分子の例は、以下を含むがこれらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、内毒素、staphylococcusエンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFα」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン(Angiogenin)、トランスフォーミング増殖因子(「TGFα」)、熱ショックタンパク質、血液型群の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、ホルモン(例えば、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン)、細胞表面レセプター、抗体、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、センス核酸、アンチセンス核酸、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;レセプタータンパク質、グルコース、グリコーゲン、リン脂質、ならびにモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体、ならびに塩基性線維芽細胞増殖因子。
【0065】
送達デバイスまたはプラットフォームに結合するエレメントは、任意の方法により結合され得る。このようなエレメントは、組み込みをする分子、特異的に標的化する分子、治療剤、または生物学的に活性な因子を含むがこれらに限定されない。以下の例は、組み込みをする分子についての結合方法を例示するが、本方法は、このエレメントのみに限定されず、そして本発明で意図される任意のエレメントは、この方法において結合され得る。組み込みをする分子(より特異性が低い結合分子、例えば、ポリカチオン性成分または結合対のメンバーである特異的結合分子のいずれか)は、任意の方法によりコロイド状金属に結合され得る。1つの好ましい方法は、組み込みをする分子を、その組み込みをする分子の等電点pIより約1〜3pH単位高いpHの水中において再構成することである。次いで、約100〜1,000μg、好ましくは150〜800μg、最も好ましくは200〜500μgの組み込みをする分子がコロイド状金属とともにインキュベートされる。インキュベーションの継続時間は重要ではないが、好ましくは約2〜48時間、より好ましくは18〜36時間である。
【0066】
インキュベーション後、組み込みをする分子に結合したコロイド状金属プラットフォームは、ポリエチレングリコール(PEG)の1容量%の1〜100%溶液とともに一晩インキュベートすることにより、必要に応じて安定化される。あるいは、システイン、リン脂質、Brij58、またはスルフヒドリル含有化合物を用いて、コロイド状金属プラットフォームを安定化し得る。次いで、この溶液は遠心分離され、続いて得られたペレットが必要に応じて、システイン、リン脂質、スルフヒドリル含有化合物との、またはタンパク質再構成緩衝液中の1%ヒト血清アルブミン(HSA)溶液中でのインキュベーションにより安定化される。代表的には、上清における結合していない生物学的に活性な因子の免疫アッセイ測定により決定した場合、90%と95%との間の成分がこの方法により結合される。
【0067】
この様式におけるエレメントの結合は、コロイド状金属の物理的特性を変化させる。結合の前には、コロイド状金属は、0.22ミクロンフィルターを通して濾過され得ない。結合後は、コロイド状複合体は容易に濾過される。この相違は、金属がもはやコロイドとしては存在せず、イオン溶液として存在することを示唆する。
【0068】
本発明において使用されるコロイド状金属の量は、約0.001mg/mlと1.0mg/mlとの間であり、コロイド状金属のより好ましい量は約0.01mg/mlと0.1mg/mlとの間である。インビボまたはインビトロで投与されるべき、本発明による組成物の量は、所望の適用、送達すべき分子、送達について標的化される細胞、および投与態様に従って変化する。
【0069】
コロイド状組成物の調製の他の方法および使用は、関連特許出願に見出される。これらの特許出願(U.S.S.N.08/966,940および60/075,811、60/086,696)は、それらの全体が本明細書中で参考として援用される。
【0070】
次いで、エフェクター分子は、組み込みをする分子を介して金属性プラットフォームに結合される。エフェクター分子は、細胞特異的に標的化する分子または治療剤のいずれかであり得る。このエフェクター分子は、組み込みをする分子(例えば、ヒストン)に直接結合され得るか、または結合メンバーの特異的相互作用を介して結合され得る。この方法が結合メンバーを用いる特異的相互作用を含む場合、結合メンバーの一方は、プラットフォームに結合した組み込みをする分子として機能し、そして相補的結合メンバーはエフェクター分子に結合する。例えば、本発明の1つの実施態様は、ストレプトアビジンおよびビオチンの結合メンバーを含み、そしてこのストレプトアビジンは、組み込みをする分子として機能し、かつコロイド状金属プラットフォームと会合する。このビオチンは、エフェクター分子に結合される。さらに好ましい実施態様では、このビオチンは、細胞特異的に標的化する分子(例えば、TNF−α)に結合される。このビオチンはまた、治療剤(例えば、細胞外結合ドメインを含まない短縮形態の毒素)に結合される。
【0071】
本発明の1つの実施態様は、標的化された組合せ治療を開発および特注するためのプラットフォームとしての、コロイド状金に結合したストレプトアビジンの使用を含む。本発明は、リガンド/レセプター結合を用いる治療剤の標的化およびレセプター媒介エンドサイトーシス(RME)のプロセスを含む。この実施態様は、コロイド状金に結合したストレプトアビジンを使用して、ビオチン化リガンドおよび治療剤を共存させる。本質的に、コロイド状金に結合したストレプトアビジンを用いることにより、単一のコロイド状金粒子上への2つの化学的に別個の部分への結合の問題は排除される。むしろ、標的および治療の化学は、ここで、ビオチンのストレプトアビジンに対する充分に特徴付けられた結合に基づく。この実施態様の代表的な図を、図1に示す。
【0072】
(本発明のいくつかの実施態様)
本発明の組成物および方法は、本明細書中に開示されたエレメントの混合物の改変物および組合せ、ならびにそれらの結合能力および活性の方法を含む。例えば、本発明の1つの実施態様は、金属性プラットフォームに直接結合した細胞特異的に標的化する分子、および金属性プラットフォームに特異的結合または組み込みをする分子によるより特異性の低い結合のいずれかを介して結合した治療剤を含む。本発明の1つの実施態様は、コロイド状金属プラットフォームに直接結合した治療剤、および特異的結合または組み込みをする分子によるより特異性の低い結合のいずれかを介して結合した細胞特異的に標的化する分子を含む。本発明の別の実施態様は、細胞特異的に標的化する分子および治療剤の両方の、金属性プラットフォームに対する特異的結合もしくは組み込みをする分子によるより特異性の低い結合を介した結合、または細胞特異的に標的化する分子および金属性プラットフォームに対する治療剤の直接結合を含む。本発明のなおさらなる実施態様は、結合メンバーによる結合を介して金属性プラットフォームに結合した細胞特異的に標的化する分子、およびより特異性の低い結合手段を介して金属性プラットフォームに結合した治療剤を含む。本発明の対照的な実施態様は、より特異性の低い組み込みをする分子結合による結合を介した金属性プラットフォームに結合した細胞特異的に標的化する分子、および相補的結合メンバー結合による金属性プラットフォームへの治療剤を含む。このような実施態様の他の組合せおよび改変は、本発明の一部として意図される。
【0073】
送達プラットフォームに結合されるエレメント(標的化する分子、組み込みをする分子、およびエフェクター分子(例えば、治療剤および生物学的に活性な因子)を含むがこれらに限定されない)は、任意の組合せでプラットフォームに結合され得る。例えば、2つのエフェクター分子は、標的およびエフェクター複合体がサイトカインおよびサイトカインレセプターのコロイド状金属粒子に対する結合により生成され得るように、プラットフォームに結合され得る。あるいは、遺伝子送達系は、核酸成分およびサイトカインレセプターをコロイド状金属粒子に結合することにより生成され得る。治療系は、化学治療剤およびサイトカインレセプターをコロイド状金属粒子に結合することにより生成され得る。さらに、ガン抗原に対する抗体は、標的化する分子であり得、そして化学治療剤とともにコロイド状金属に結合され得る。化学治療剤を標的細胞(例えば、ガン細胞)に送達する際に、低濃度の化学治療剤が使用され、それにより化学治療剤の全身毒性を減少させ得る。
【0074】
本発明の別の実施態様は、1つの分子を細胞表面レセプターに結合し、一方、第2の分子を標的細胞に近位な細胞外表面に放出させるための方法として、2以上の生物学的に活性な因子の同じコロイド状金属粒子に対する結合を使用することである。このような遅速放出貯蔵物は、生物学的に活性な分子をそれらの特異的作用部位に送達するために役立つ。
【0075】
本発明のなお別の実施態様は、生物学的バリアを横切り、次いで、第2の成分または群を第1の成分と共に運ぶ、これらの成分のうちの一方についての特異的分子輸送機構を用いる方法として2以上のエレメントの同じ送達プラットフォーム(例えば、コロイド状金属粒子)への結合を使用することである。例えば、送達プラットフォームに結合した成分のうちの1つは、グルコースであり得る。グルコースは、特異的血液脳輸送系を有し、エフェクター分子(例えば、生物学的に活性な分子)とともにコロイド状金属に結合される。血液脳関門を横切るグルコース能動輸送は、それ自体はおよび自発的には、この生物学的バリアを横切ることができない、任意の関連する生物学的に活性な因子についての導管として役立つ。次いで、これらの組成物は、送達された因子に対して通常は利用可能でない領域(例えば、脳)への治療分子の送達のためのビヒクルとして役立つ。
【0076】
(好ましい送達プラットフォーム)
コロイド状金属は、好ましい送達プラットフォームであるが、類似の様式で機能する他の物質は、本発明に含まれることが意図される。特定の理論に束縛されることを望まないが、本発明におけるコロイド状金属、より好ましくはコロイド状金の役割は、関連するエレメントについてのドッキング部位として作用するのみではない。それとは反対に、その役割は、結合エレメントの役割と同様に重要であり得る。例えば、ある薬物は、細胞によって内部移行された後でのみ活性になる。RMEを内部移行の方法として用いる薬物は、しばしば、膜小器官に捕捉されたままであり、そして最終的には膜小器官であるエンドソームにおいて破壊される。薬物の不活化は、しばしば、エンドソームのpHの減少の結果である。コロイド状金の価値が認識されるのは、エンドソームのpHにおけるこの生理学的変化である。本発明者らは、酸性、すなわち、エンドソーム様の環境に曝された場合に、タンパク質結合コロイド状金が物理的変化を受けることを観察した。非常に単純な実験では、飽和濃度のBSAと結合したコロイド状金を、2つの異なるpH(7.4および5.6)でMES緩衝液に対して透析した。この実験の結果は、生理学的(すなわち、7.4)pHに対して透析したコロイド状金が、そのコロイド状状態のままであることを示した。しかし、酸性pHに対して透析した同じ調製物は、非常に大きな凝集物を形成した。このような凝集物を形成することにより、コロイド状金は、エンドソームを溶解することにより、推定薬物の細胞内放出を容易にする。
【0077】
(投与のための方法および組成物)
本発明の組成物は、インビトロまたはインビボの系に投与され得る。インビボでの投与は、標的細胞への直接適用または以下を含むがこれらに限定されない医薬品により使用されるような投与経路を含み得る:処方物は、経口、直腸、経皮、眼(硝子体内または房内(intracameral)を含む)、鼻、局所(頬内および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、気管内、および硬膜外を含む)投与に適切な処方物を含む。処方物は、好都合な単位投薬形態で存在し得、そして従来の薬学的技術によって調製され得る。このような技術は、活性成分および薬学的キャリアまたは賦形剤を合わせる工程を含む。一般に、処方物は、組成物を液体キャリアもしくは微細に分割した固体キャリアまたはその両方と均質かつ緊密に合わせ、次いで必要に応じて製品を成形することにより調製される。
【0078】
(定義)
本明細書中で使用される用語「毒性反応」および「毒性」は、動物またはヒトの以下の反応を含むがこれらに限定されない:発熱;水腫(脳水腫を含む);精神病;自己免疫疾患;出血;ショック(出血性ショック);敗血症;悪液質;または死。
【0079】
用語「生物学的に活性な因子」および「治療剤」は、以下を含むがこれらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、内毒素、staphylococcusエンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFα」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(「TGFα」)、熱ショックタンパク質、血液型群の炭水化物部分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ホルモン、例えば、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン(glucogen)、副甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン、細胞表面レセプター、抗体、化学治療剤、ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、センス核酸、アンチセンス核酸、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;ならびに免疫治療薬物、例えば、AZT、医薬品および他の治療薬物。
【0080】
治療剤および処置されるべき生物の例は、以下の表に見出される。この表は、他の治療剤が本発明により意図されるという点で、制限をしない。
【0081】
【表1】

用語「細胞特異的に標的化する分子」は、以下を含むがこれらに限定されない:インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、インターロイキン−15(「IL−15」)、インターロイキン−16(「IL−16」)、インターロイキン−17(「IL−17」)、インターロイキン−18(「IL−18」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、内毒素、staphylococcusエンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNFα」)、トランスフォーミング増殖因子−β(「TGF−β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージ、CSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(「TGFα」)、熱ショックタンパク質、血液型群の炭水化物部分。Rh因子、線維芽細胞増殖因子ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、ホルモン、例えば、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン(glucogon)、副甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン、細胞表面レセプター、抗体、核酸、ヌクレオチド、DNA、RNA、センス核酸、アンチセンス核酸、ガン細胞特異的抗原;例えば、MART、MAGE、BAGE、およびHSP;変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;レセプタータンパク質、グルコース、グリコーゲン、リン脂質、ならびにモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体、ならびに塩基性線維芽細胞増殖因子。
【0082】
本明細書中で用いられる用語「コロイド状金属」は、液体水中に分散した任意の水不溶性金属粒子または金属性化合物(ヒドロゾル)を含む。コロイド状金属は、周期表のIA族、IB族、IIB族およびIIIB族の金属、ならびに遷移金属、特にVIII族の遷移金属から選択され得る。好ましい金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムである。他の適切な金属はまた、種々の酸化状態における以下を含み得る:リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、白金およびガドリニウム。金属は、好ましくは、適切な金属化合物に由来する、好ましくはイオン状態(例えばA13+、Ru3+、Zn2+、Fe3+、Ni2+およびCa2+イオン)で提供される。好ましい金属は金、特にAu3+の形態である。特に好ましい形態のコロイド状金は、HAuC14(E−Y Laboratories、Inc.、San Mateo、California)である。別の好ましい金属は、銀であり、特に約0.1%と0.001%との間の濃度を有するホウ酸ナトリウム緩衝液中の、最も好ましくは、約0.01%溶液中のものである。好ましくは、このようなコロイド状銀溶液の色は黄色であり、そしてコロイド状粒子は、1〜40ナノメートルの範囲である。このような金属イオンは、単独で錯体中に、または他の無機イオンとともに錯体中に存在し得る。
【0083】
(本発明のいくつかの実施態様)
(遺伝子治療のための方法および組成物)
本発明は、特定の細胞への外来性核酸または遺伝情報の標的化される送達についての方法および組成物を含む。外来の遺伝情報は、細胞上の特定のレセプターによって特定の細胞により取り上げられ、そして好ましくは、レセプター媒介性エンドサイトーシスにより細胞内に内部移行される。従って、異なる細胞型の混合物においては、外来性核酸は、選択されたレセプターを有する細胞によってのみ内部移行され、そしてレセプターを欠失する細胞には影響がない。
【0084】
本発明は、特定細胞のインビトロまたはインビボのトランスフェクションについての組成物および方法を含む。このような組成物の1つの実施態様は、コロイド状金属に対して結合されるポリカチオンに対して結合された核酸を含む。本発明の好ましい実施態様は、プラットホームとしてのコロイド状金を含み、このコロイド状金は、標的化する分子およびエフェクター分子に結合して、細胞のレセプター媒介性エンドサイトーシスを使用する標的化された遺伝子送達系を生じ、トランスフェクションを達成し得る。より好ましい実施態様では、標的化する分子はサイトカインであり、そしてエフェクター分子はDNAまたはRNAのような外来性遺伝物質である。この実施態様はまた、ポリカチオンのような組み込みをする分子を含む。
【0085】
本発明において、この方法は標的化される遺伝子送達系の調製およびトランスフェクションのための細胞への標的化される遺伝子送達系の送達を含む。組成物の核酸は細胞により最終的には翻訳され、そして発現されることが本発明において意図される。このような発現は、当業者に公知の任意の形態においてであり得、そして機能するタンパク質、細胞産物の産生、酵素活性、細胞産物の輸送、細胞膜成分の産生または核成分を含むがこれらに限定されない。標的化される細胞への送達の方法は、細胞培養物への添加のようなインビトロ技術について使用される方法またはインビボ投与について使用される方法のような方法であり得る。インビボ投与は、細胞への直接投与、またはヒト、動物もしくは他の生物について使用されるような投与経路を含み得る。
【0086】
図16および図17は、本発明の実施態様を使用する実験を示す。図16は、ヒト乳癌細胞であるMCF−7における、レセプターによって標的化される首尾良い遺伝子送達を実証する。EGF/ヒストンキメラは、40nmのコロイド状金上で構築された。沈殿および再懸濁の際に、pSVβ−ガラクトシダーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNAは、上記のようにインキュベートおよび再遠心分離された。酵素(β−ガラクトシダーゼ)の存在は、細胞を基質であるX−galとインキュベートすることにより検出された。青緑色染色は、遺伝子産物が存在する細胞を示すが、ピンク色の染色は、EGF/ヒストン/DNA/コロイド状金のキメラの存在を示す。
【0087】
図17は、EGF/ヒストン/DNA/コロイド状金のキメラを使用するコントロールのトランスフェクションを示す。ヒト乳癌細胞であるHS−578−Tは、図16に記載したのと同一のキメラでMCF−7細胞と同時に処理された。次いで、この細胞はX−galで処理されてトランスフェクト遺伝子の存在が検出された。図17は、黒色染色により見出されるように、HS−578−T細胞はキメラと結合し得るが内部移行され得なかったことを明らかに示す。従って、青緑発色が見出されないのはトランスフェクションがないことを示す。
【0088】
(免疫刺激)
本発明は、特定の免疫成分の同時または連続的な標的化を通じての免疫応答の増強およびワクチンの効力増加のための組成物および方法に関する。より詳細には、抗原提示細胞(APC)(例えば、マクロファージおよび樹状細胞)ならびにリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)を含むがこれらに限定されない特定の免疫成分は、1つ以上の成分特異的免疫刺激剤により個別にもたらされる。とりわけ好ましい実施態様は、成分特異的免疫刺激剤と組み合わせた特定の抗原を使用する免疫応答の活性化を提供する。本明細書で使用されるように、成分特異的免疫刺激剤は、免疫系の成分に特異的であり、そしてその成分をもたらし得る薬剤を意味し、その結果この成分は免疫応答における活性を有する。この薬剤は、免疫系の幾つかの異なる成分をもたらし得、そしてこの能力は本発明の方法および組成物において使用され得る。この薬剤は天然に存在し得るかまたは分子生物学の技術またはタンパク質レセプター操作を通じて生成および操作され得る。
【0089】
免疫応答におけるこの成分の活性化は、免疫応答の他の成分の刺激または抑制を生じ得、免疫応答の全体的な刺激または抑制を導く。発現の容易さのために、免疫成分の刺激が本明細書に記載されるが、免疫成分の全ての応答が、用語刺激(刺激、抑制、拒絶およびフィードバック活性を含むがこれらに限定されない)により意図されるがことが理解される。
【0090】
もたらされる免疫成分は複数の活性を有し得、フィードバック機構の抑制と刺激の両方または開始もしくは抑制を導く。本発明は、本明細書で詳述される免疫学的応答の例により限定されないが、免疫系の全ての局面における成分特異的効果を意図する。
【0091】
免疫系の個々の成分の活性化は、同時、連続または任意のそれらの組み合わせであり得る。本発明の方法の1つの実施態様においては、多成分特異的免疫刺激剤が同時に投与される。この方法において、免疫系は4つの別々の調製物で同時に刺激され、これら各々は成分特異的免疫刺激剤を含む組成物を含む。好ましくは、この組成物はコロイド状金属と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む。より好ましくは、この組成物は、あるサイズの粒子または異なるサイズの粒子のコロイド状金属および抗原と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む。最も好ましくは、この組成物は、あるサイズの粒子のコロイド状金属および抗原、または異なるサイズの粒子のコロイド状金属および抗原と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む。
【0092】
本発明者らは、個々の免疫成分に特異的な刺激、アップレギュレーション、影響を提供するために特定の成分特異的免疫刺激剤を使用し得ることを見出した。例えば、インターロイキン−1β(IL−1β)はマクロファージを特異的に刺激し、一方、TNF−α(腫瘍壊死因子α)およびFlt−3リガンドは樹状細胞を特異的に刺激する。熱殺傷Mycobacterium butyricumおよびインターロイキン−6(IL−6)はB細胞の特異的な刺激因子であり、そしてインターロイキン−2(IL−2)はT細胞の特異的な刺激因子である。このような成分特異的免疫刺激剤を含む組成物は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞の特異的活性化をそれぞれ提供する。例えば、マクロファージは、成分特異的免疫刺激剤であるIL−1βを含む組成物が投与される時に活性化される。好ましい組成物はコロイド状金属と会合したIL−1βであり、そして最も好ましい組成物は、コロイド状金属および抗原(その抗原に対して特異的なマクロファージ応答を提供するための抗原)と会合したIL−1βである。
【0093】
免疫応答の多くのエレメントが、効果的なワクチン接種に必要とされる。同時刺激方法の実施態様は、1)マクロファージについてのIL−1β、2)樹状細胞についてのTNF−αおよびFlt−3リガンド、3)B細胞についてのIL−6、および4)T細胞についてのIL−2、を含む成分特異的免疫刺激剤の組成物の、4つの別々の調製物を投与することである。成分特異的免疫刺激剤の組成物は、当業者に公知の任意の経路により投与され得、そして所望される免疫応答に依存して同じ経路または異なる経路を使用し得る。
【0094】
本発明の方法および組成物の別の実施態様において、個々の免疫成分が同時に活性化される。例えば、この連続的な活性化は、2つの段階、誘導段階(primer phase)および免疫段階に分けられ得る。誘導段階はAPC(好ましくはマクロファージおよび樹状細胞)の刺激を含み、一方、免疫段階はリンパ球(好ましくはB細胞およびT細胞)の刺激を含む。2つの段階のそれぞれにおいて、個々の免疫成分の活性化は、同時または連続的であり得る。連続的な活性化については、活性化の好ましい方法はマクロファージ、次いで樹状細胞、次いでB細胞、次いでT細胞の活性化である。最も好ましい方法は、組み合わされた連続的活性化であり、ここで、マクロファージおよび樹状細胞の同時活性化、次いでB細胞およびT細胞の同時活性化が存在する。これは、免疫系の幾つかの経路を開始させるための多成分特異的免疫刺激剤の方法および組成物の例である。
【0095】
本発明の方法および組成物は、任意の型のワクチンの有効性を増強するために使用され得る。本方法は、活性化のために特異的免疫成分を標的化することによりワクチンの有効性を増強させる。コロイド状金属および抗原と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む組成物は、抗原と特異的免疫成分との間の接触を増加させるために使用される。ワクチンが現在使用可能である疾患の例としては、コレラ、ジフテリア、ヘモフィルス、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふく風邪、百日咳、痘瘡、肺炎球菌性肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核、腸チフス、水痘帯状疱疹、百日咳、および黄熱病が挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
免疫系に対して抗原を送達するために使用される投与経路およびパッケージングの組み合わせは、所望される免疫応答の設計における強力なツールである。本発明は、免疫刺激組成物の長期間放出を提供し得る様々なパッケージング方法(例えば、リポソーム、マイクロカプセルまたはミクロスフェアを含む)を含む方法および組成物を含む。これらのパッケージング系は、抗原を保持するための内部貯蔵物として作用し、そして免疫系の活性化のために抗原を徐々に放出する。例えば、リポソームは、抗原、およびコロイド状金属と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む組成物で充填され得る。さらなる組み合わせは、活性ワクチンの候補物であるか、または推定上のワクチンについてのDNAを含むようにパッケージングされるウイルス粒子が点在するコロイド状金粒子である。次いで、この金粒子はまた、ウイルスを特定の免疫細胞に対して標的化するために使用され得るサイトカインを含む。さらに、2つ以上の潜在的なワクチン候補物を標的化する融合タンパク質ワクチンを作製し得、そして2つ以上の適用のためのワクチンを生成し得る。この粒子はまた、物質を徐々に放出し得るポリエチレングリコールの添加により化学的に改変されてきた免疫原を含み得る。
【0097】
抗原/成分に特異的な免疫刺激剤/金属複合体はリポソームから徐々に放出され、免疫系により外来物として認識され、そして成分特異的免疫刺激剤が指向される特異的成分によって免疫系を活性化させる。免疫応答のカスケードは、成分特異的免疫刺激剤の存在によってより迅速に活性化され、そして免疫応答がより迅速かつより特異的に生じる。
【0098】
本発明において意図される他の方法および組成物は、コロイド状金属粒子が異なるサイズを有する、抗原/成分に特異的な免疫刺激剤/コロイド状金属複合体の使用を含む。成分特異的免疫刺激剤の連続投与は、これらの異なるサイズのコロイド状金属粒子の使用による1用量投与において達成され得る。1用量は、抗原および各々を、異なったサイズのコロイド状金属粒子と複合体化した、4つの独立した成分特異的免疫刺激剤を含む。従って、同時投与は、この集団に対するより効果的なワクチンおよびさらなる保護を得るための免疫成分の連続的な活性化を提供する。連続活性化を伴うこのような単用量投与の他の型は、異なるサイズのコロイド状粒子およびリポソーム、または異なるサイズのコロイド状金属粒子が充填されるリポソームの組み合わせにより提供され得る。
【0099】
上記のこのようなワクチン接種系の使用は、1用量で投与され得るワクチンの提供において非常に重要である。1用量投与は、家畜のような動物集団または動物の野生集団の処置において重要である。1用量投与は、貧困者、ホームレス、地方在住者または不適切な健康管理を有する発展途上国における人々のような健康管理に抵抗する集団の処置において重要である。全ての国における多くの人々は、ワクチン接種のような予防的なタイプの健康管理への利用できない。結核のような感染性疾患の再出現は、一回与えて、長期にわたって持続的に効果的な防御をなお提供し得るワクチンについての需要を増加させた。本発明の組成物および方法は、このような効果的な防御を提供する。
【0100】
本発明の方法および組成物はまた、免疫応答の一部である成分を刺激または抑制することにより、免疫応答が生じる疾患を処置するために使用され得る。このような疾患の例としては、アジソン病、アレルギー、アナフィラキシー、ブルトン症候群、癌(固形腫瘍、および血保有(blood borne)腫瘍を含む)、湿疹、橋本甲状腺炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、後天性免疫不全症候群、移植拒絶(例えば、腎臓、心臓、膵臓、肺、骨および肝臓移植)、グレーヴズ病、多発性内分泌腺自己免疫疾患、肝炎、顕微鏡的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、腹腔炎(coeliac disease)、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、リウマチ疾患、全身性エリトマトーデス、慢性関節リウマチ、セロネガティブ脊椎炎、鼻炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、硬化性胆管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギヤン−バレー症候群、重症筋無力症、ランバート−イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、じんま疹、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖IgM過剰症候群、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイドーシス、慢性リンパ性白血病および非ホジキンリンパ腫が挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
本発明の組成物は、成分特異的免疫刺激剤を含む。組成物は、1つの成分特異的免疫刺激剤または多成分特異的免疫刺激剤を含み得る。この組成物の好ましい実施態様は、コロイド状金属と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む。より好ましい実施態様は、コロイド状金属と会合した成分特異的免疫刺激剤、および成分特異的免疫刺激剤の効果を特異的に標的化するための他のエレメント(抗原、レセプター分子、核酸、医薬品、化学療法剤およびキャリアを含むがこれらに限定されない)を含有する組成物を含む。本発明の組成物は、免疫成分に対して任意の様式で送達され得る。1つの実施態様において、抗原および成分特異的免疫刺激剤は、単一のコロイド状金属粒子が抗原および免疫刺激剤の両方に結合されるような様式でコロイド状金属に対して結合される。
【0102】
(要旨)
本発明の1つの開示される実施態様において、刺激される特異的免疫成分は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞である。好ましい実施態様において、組成物は成分特異的免疫刺激剤を含有する。より好ましい実施態様において、組成物は、コロイド状金属と会合した成分特異的免疫刺激剤を含む。別の開示される実施態様において、抗原および成分特異的免疫刺激剤は、コロイド状金属(例えば、コロイド状金)に対して結合され、そして得られたキメラ分子は免疫成分に提示される。
【0103】
本発明は、様々な異なる送達プラットホームまたはキャリアの組み合わせにおける抗原および成分特異的免疫刺激剤の提示を含む。例えば、好ましい実施態様は、リポソームキャリア中の成分特異的免疫刺激剤およびコロイド状金と会合した抗原の投与を含む。さらなる組み合わせは、活性ワクチン候補物であるか、または推定ワクチンについてのDNAを含むようにパッケージングされたウイルス粒子が点在するコロイド状金粒子である。次いで、金粒子はまた、ウイルスを特定の免疫細胞に対して標的化するために使用され得るサイトカインを含む。このような実施態様は、長期応答のために抗原を免疫系に対して徐々に放出する内部ワクチン調製物を提供する。この型のワクチンは、ワクチンの1回投与のために特に有益である。全ての型のキャリア(リポソームおよびマイクロカプセルを含むがこれらに限定されない)は、本発明において意図される。
【0104】
(毒性の減少およびワクチン投与)
本発明は、通常の毒性生物活性因子のヒトまたは動物に対する投与のための組成物および方法を含む。一般には、本発明に関する組成物は、免疫応答を生成し得るヒトまたは動物に対して通常は毒性である物質と組み合わされたコロイド状金属の混合物を含み、ここでこの組成物は、ヒトまたは動物に投与される場合、ヒトまたは動物に対して毒性が弱いかまたは非毒性である。この組成物は、必要に応じて、水溶液のような薬学的に受容可能なキャリア、または賦形剤、緩衝剤、抗原安定化剤または殺菌キャリアを含む。パラフィンオイルのようなオイルもまた、必要に応じてこの組成物中に含まれ得る。
【0105】
本発明の組成物は、接種したときに通常は毒性である生物学的に活性な因子に対して、ヒトまたは動物をワクチン接種するために使用され得る。さらに、本発明は、特定の疾患をサイトカインまたは増殖因子で処置するために使用され得る。ヒトまたは動物に投与する前に、生物学的に活性な因子をコロイド状金属と混合することにより、生物学的に活性な因子の毒性は低減または除去され、それにより、その因子がその治療効果を発揮することを可能にする。コロイド状金属とこのような生物学的に活性な因子との組み合わせは毒性を低減させながら、治療結果を維持または増加させ、それにより、効力を改善する。なぜなら、より高濃度の生物学的に活性な因子が投与され得るか、または生物学的に活性な複数の因子の組み合わせの使用を可能にするからである。それゆえ、生物学的に活性な因子との組み合わせたコロイド状金属の使用は、より高濃度の生物学的に活性な因子、または以前は使用できなかった毒性物質がヒトまたは動物に対して投与するために使用されることを可能にする。
【0106】
本発明の1つの実施態様は、コロイド状金属と会合した生物学的に活性な因子をワクチン調製物として使用することである。このようなワクチンの多くの利点の中でもとりわけ、通常は毒性の因子の毒性の低減である。生物学的に活性な因子に対するワクチンは、任意の方法により調製され得る。生物学的に活性な因子に対するワクチンを調製するための1つの好ましい方法は、塩を含まない媒体、好ましくは滅菌水中で、選択された生物学的に活性な因子とコロイド状金属とを混合することである。塩を含まない媒体は、例えば、Tris緩衝剤で必要に応じて緩衝化され得る。本発明の1つの実施態様において、コロイド状金属溶液は、生物学的に活性な因子の溶液で1:1に希釈される。
【0107】
この媒体は、好ましくはナトリウム塩を含むべきではない。コロイド状金溶液は明るいピンク色を呈し、この色は生物学的に活性な因子の溶液を添加した場合に変化しないべきである。コロイド状金溶液がピンク色から紫色に変化する場合、これは、金が沈殿し、そして効果的な免疫のために再構成され得ないことを示す。このコロイド状金および生物学に活性な因子の混合物の貯蔵寿命は約24時間である。
【0108】
次いで、生物学的に活性な因子およびコロイド状金属の混合物は、適切な動物に対して注入される。例えば、約2〜5kgの間の体重のウサギは、コロイド状金および1mgのIL−1またはIL−2のいずれかのサイトカインを含む組成物の2週間ごとの投与後に顕著な副作用を受けなかった。生物学的に活性な因子が本発明に従って投与された場合に非毒性であることから、抗原の最適な量が動物に対して投与され得る。本発明による組成物は、単回用量で投与され得るか、または二次免疫応答を充分に利用するために適切な時間スケールにわたって間隔が開けられてそれらは多回用量で投与され得る。例えば、抗体力価は1ヶ月に一度追加抗原を投与することにより維持されている。
【0109】
ワクチンは、薬学的に受容可能なアジュバントをさらに含み得、アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、リポ多糖、モノホスホリルリピドA、ムラミルジペプチド、リピドAを含有するリポソーム、ミョウバン、ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、およびキーホールリンペッドヘモシアニンが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいアジュバントは、フロイント不完全アジュバントであり、これは、好ましくはコロイド状金属および生物学的に活性な因子の混合物で1:1に希釈される。
【0110】
本発明で使用される生物学的に活性な因子の量は、25mlの金において結合したタンパク質の約200μgと500μgとの間であり、これは、次いで、200μlまで連続的に濃縮される。インビボで投与される理想的な濃度は、約6.5mgのタンパク質/kg体重である。実際の量は、処置される特定の患者および状態に依存して変化する。体内において放出される結合した生物学的に活性な因子の量は、コロイド状金属に最初に結合したタンパク質の量、および患者に対して投与されたタンパク質の総濃度に依存する。
【0111】
この組成物の使用の方法は、生物学的に活性な因子と混合されたコロイド状金属を含む有効量の組成物をヒトまたは動物に対して投与する工程を含み、ここで、この化合物は、ヒトまたは動物に対して投与される場合は毒性が少ないかまたは非毒性である。本発明による組成物は、通常は毒性である物質に対するワクチンとして投与され得るかまたは治療薬であり得るが、ここで、通常は毒性の薬剤の毒性は低減され、それにより、より長い期間にわたる、より多量の薬剤の投与を可能にする。
【0112】
本発明の実施において、組成物を投与するプロセスは、重要であるとは考えられない。本発明に従って組成物が投与され得る経路は、皮下、筋肉内、腹腔内、経口および静脈内経路を含むがこれらに限定されない。好ましい投与経路は、静脈内経路である。別の好ましい投与経路は筋肉内である。
【0113】
インターロイキン−2(IL−2)は、腎臓癌の処置において有意な治療結果を示すことが公知である。しかし、その毒性の副作用は、顕著な数の患者の死をもたらす。対照的に、IL−2がコロイド状金と混合される場合、毒性がほとんど観察されないかまたは観察されず、そして強力な免疫応答が生じる。IL−2治療に以前に使用された用量は、1日あたり体重70kgの人間あたり21×106単位の桁のIL−2である(70kgの人間あたり7×106単位のIL−2のTID)。1単位は約50ピコグラムに等しく、2単位は約0.1ナノグラムに等しく、よって20×106単位は1ミリグラムに等しい。本発明の1つの実施態様において、ウサギに与えられたIL−2の量は、3kgのウサギあたり約1mgである。事実上、本明細書において記載される生物学的に活性な因子の投与の効果の研究は、以前にヒトに与えられた量よりも20倍よりも多い用量を含んだ。
【0114】
別の実施態様では、IL−2(3kgの動物あたり1mg)が、2週間の期間にわたって3日毎に3羽のウサギに投与される場合、全ての動物が臨床的に病気のようであり、そしてそのうちの2羽の動物がIL−2の明らかな毒性効果により死亡した。同じ用量のIL−2をコロイド状金と組み合わせ、次いで同じ2週間の期間にわたって3羽のウサギに投与する場合、毒性は観察されず、そして顕著な抗体応答が3羽全ての動物に生じた。本明細書において使用される「ポジティブな抗体応答」は、免疫後の血液を免疫前の血液と比較する、直接ELISAにより決定される場合、特異的抗体応答性における3〜4倍の増加として定義される。直接ELISAはIL−2をマイクロタイタープレート上へ結合する工程、およびアルカリホスファターゼと結合体化したヤギ抗ウサギIgGにより、プレート上のIL−2に対して結合したIgGの量を決定する工程により実施される。従って、IL−2の生物学的な効果が残ることが考えられる。毒性効果が最小化されたので、より高く、より効果的な免疫応答が必要とされる場合、必要ならば、より高濃度のIL−2が投与され得る。
【0115】
別の実施態様において、本発明はコロイド状金属に結合された1以上の生物学的に活性な因子を含む組成物の投与により疾患を処置するための方法を包含する。投与後、生物学的に活性な因子はコロイド状金属から放出される。何らかの理論に束縛されることは望まないが、放出が単に循環時間の関数ではなく、平衡定数により制御されることが考えられる。
【0116】
コロイド状金属:生物学的に活性な因子の複合体(「複合体」)が細胞と25日間インキュベートされる場合、生物学的に活性な因子のうちの5%のみがコロイド状金属から放出されたことが見出された。従って、循環時間のみでは生物学的に活性な因子がインビボで複合体から放出される機構を説明しない。しかし、放出される生物学的に活性な量は、部分的に、体内の複合体の濃度に依存することが見出されている。複合体の様々な希釈物を分析した場合(CytELIZA
assay system CytImmune Sciences, Inc.,College Park,MD)、複合体のより希薄な溶液が、有意に多量の生物学的に活性な因子を放出したことが見出された。例えば、複合体の1:100希釈物において生物学的に活性な因子の放出は本質的に見出されなかったが、35,000pgを超える生物学的に活性な因子が、同じ試料の複合体の1:100,000希釈物中に放出された。
【0117】
従って、複合体の濃度が低くなるほど、生物学的に活性な因子の放出される量が多くなる。複合体の濃度が高くなるほど、生物学的に活性な因子の放出される量が少なくなる。従って、血液および細胞外液による複合体のインビボ連続希釈に起因して、以前に公知の方法により投与され得るよりも低用量の生物学的に活性な因子の患者に対する投与によって同じ治療効果を達成する可能性がある。
【0118】
コロイド状金属:生物学的に活性な因子の複合体から放出される生物学的に活性な因子の量は、コロイド状金属に最初に結合される生物学的に活性な因子の量に依存することもまた見出されている。より多くの生物学的に活性な因子が、より多量の最初に結合された生物学的に活性な因子を有する複合体からインビボで放出される。従って、当業者はコロイド状金属に最初に結合される生物学的に活性な因子の量を変化させることにより送達される生物学的に活性な因子の量を制御し得る。
【0119】
これらの組み合わされた特徴は、多量の生物学的に活性な因子がコロイド状金属に結合され得、それにより、生物学的に活性な因子の毒性を、単独で投与された場合よりも毒性を低くさせる方法を提供する。次いで、少量のコロイド状金属:生物学的に活性な複合体が患者に対して投与され得、複合体から生物学的に活性な因子の緩徐な放出を生じる。この方法は、癌および免疫疾患のような疾患の処置のための、延長された低用量の生物学的に活性な/治療用因子を提供する。
【0120】
本発明の組成物は、多数の疾患の処置に有用であり、これらの疾患としては、白血病のような癌(固形腫瘍および血保有腫瘍を含む);慢性関節リウマチのような自己免疫疾患;骨粗鬆症のようなホルモン欠損疾患;末端肥大症のような分泌過多に起因するホルモン異常;敗血症性ショックのような感染性疾患;酵素欠損疾患(例えば、フェニルケトン尿症を生じる、フェニルアラニンを代謝できないこと)のような遺伝病;およびAIDSのような自己免疫疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
【0121】
本発明は以下の実施例によりさらに例示されるが、これらの実施例は本発明の範囲に制限を課すとは、如何なる方法によっても解釈されない。これに対して、様々な他の実施態様、改変物およびそれらの等価物に対して手段が有され得、これは、本明細書の説明を読んだ後には、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱することなくそれら自体を当業者に示唆し得ることが、明らかに理解される。
【実施例】
【0122】
(実施例I)
本実施例は、コロイド状金が、中和されなければ毒性の物質を中和し、そして抗体応答を可能にさせることを実証する。IL−2(3kgの動物あたり1mg)を2週間の期間にわたって3日毎に3羽のウサギに投与した場合、全ての動物が臨床的に病気に見え、そして2羽の動物がIL−2の明らかな毒性効果により死亡した。同用量のIL−2をコロイド状金と組み合わせ、次いで3羽のウサギに同じ2週間の期間で投与する場合には毒性は観察されず、そして有意な抗体応答が3羽全ての動物に生じる。ポジティブな抗体応答は、免疫後の血液を免疫前の血液と比較する、直接ELISAにより決定した場合、特定の抗体反応性における3〜4倍の増加として定義される。直接ELISAは、IL−2をマイクロタイタープレートに結合し、そしてアルカリホスファターゼに結合体化したヤギ抗ウサギIgGにより、そのプレート上のIL−2に結合したIgGの量を決定することにより行われる。
【0123】
(実施例II)
本実施例は、コロイド状金が、そうでなければ毒性の物質を中和し、そして抗体応答を可能にすることをさらに実証する。内毒素またはリピドA(35mgのマウスあたり、25、50、および100μg)を2週間の期間にわたって4日毎に皮下注射により投与する。10匹のマウスについて、内毒素を「純粋な状態(neat)」で与え、そして残りの10匹には内毒素をコロイド状金と1:1に混合する。注射容量を、炭酸カリウム/クエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5、1:1で希釈)の添加により調製する。同じプロトコルをまた、リピドAが試験薬物である場合に用いる。
【0124】
動物を、それぞれの注射の15分、30分および60分後にチェックし、次いで毎時および毎日に確認する。生存する動物を、内毒素またはリピドAのいずれかのと同時に注射した毒性物質に対する特異的な抗体応答について試験する。コロイド状金と組み合わせたエンドトシシンまたはリピドAのいずれかを注射したほとんどの動物が生存したが、一方で純粋な内毒素またはリピドAを注射した動物は2週間の試験期間の間に死亡した。さらに、生存した動物は、直接ELISAにより決定した場合、特定の毒物に対する抗体応答を有した。
【0125】
(実施例III)
本実施例は、インビボにおけるサイトカイン活性に対するコロイド状金の効果を例示する。マウスの群に、免疫療法を受けている癌患者に対して与えられるIL−2の用量に近似する用量のIL−2を与える。以前の実験では、ヌードマウスに与えた18μgのIL−2錠剤は移植片腫瘍のサイズを減少させたが、動物を2週間以内に殺した。Paciotti,G.F.,およびTamarkin,L.,Interleukin−2 Differentially Effects the Proliferation of a Hormone−Dependent and a Hormone−Independent Human Breast Cancer Cell Line In Vitro and In Vivo,Anti−Cancer Research,8:1233−1240 (1988)を参照のこと。これは本明細書において参考として援用される。
【0126】
マウスモデル系における金の効果を以下の手順で試験する:マウスの群をIL−2単独、コロイド状金と混合したIL−2、コロイド状金単独、または生理食塩水溶液を浸透圧性小型ポンプを通じて処置する。マウスを7日間にわたって処置し、処置後、それらを屠殺してそれらのリンパ球を採取する。この細胞を、フローサイトメトリー分析のために、特異的マウスモノクローナル抗体を使用してT細胞マーカーまたはB細胞マーカーについて染色する。活性化したT細胞およびB細胞を、T細胞の数、サプレッサーT細胞に対するヘルパーT細胞の比、活性化された細胞性IL−2レセプター、B細胞数、およびナチュラルキラー細胞(「NK」)数を評価することにより決定する。
【0127】
IL−2単独で処置した生存した僅かな動物は、T細胞の数および活性(IL−2レセプターにより決定した場合)における増加を示した。実質的に全ての動物がコロイド状金と組み合わせたIL−2処置において生存し、そしてこれらの動物は、(直接ELISAにより測定される、活性化B細胞および全IgGにより決定した場合)両方のB細胞機能の増加、(活性の指標としてのIL−2レセプター数を使用してT細胞数および活性により決定した場合)T細胞機能の増加、およびNK活性における増加を示した。
【0128】
(実施例IV)
以下の生物学的実験は、コロイド状金が、リポ多糖(LPS)の毒性を軽減することを示す。LPSは、細菌の細胞壁の脂質/糖部分である。動物に注射した場合、この分子は、敗血症性ショックの臨床反応の多くを模倣する。従って、マウスにコロイド状金の存在下または非存在下で種々の量のLPSを注射した。詳細には、Balbicマウスに、コロイド状金の存在下または非存在下でLPSを100μgまたは400μgのどちらかを投与した(W.E.coli 055:B5株;10mg/ml(水);Difco Labs)。15nmコロイド状金混合物(E.Y.Labs)のpHを、約10に調節し、一方、LPSのpHを0.1NのNaOHで8に調節した。引き続き、適切な量(すなわち、100μgの用量には10μlを、400μgの用量には40μl)を、500μlのコロイド状金に添加した。この混合物を30分間静置し、引き続きマウスに注射(腹腔内)した。
【0129】
注射の12時間後内に、すべてのマウスが抑制および活動消失の臨床兆候を示した。注射の24時間後内に、400μgの用量のコントロールのマウスが致死し始めた。72時間後までに、400μgの用量の全てのコントロールのマウスが致死し、一方、金で処置したマウスの75%が生存し、臨床改善の兆候(すなわち、運動)を示し始めた。さらに金で処置された100μg用量におけるマウスは、観察の36時間を通してより活発であった。
【0130】
(実施例V)
以下の実験は、マウスIL−6に対するマウスの抗体産生のための推定アジュバントとしてのコロイド状金の使用を記載する。この実験は2つの目標のために実行した:第1は、コロイド状金が「自己抗原」への免疫応答を生じる(すなわち、マウスモデルを使用するマウスタンパク質に対する免疫応答を生じる)アジュバントとして用いられ得るか否かを決定するため;第2は、IL−6が癌悪液質、転移、および敗血症に関与すると考えられるサイトカインの1つであるため、自己の系における抗体の産生能力が、IL−6および同様の内因性化合物に対するワクチン産生における利点を証明し得る。
【0131】
簡略に記述すれば、実験は以下の通りである。数匹のマウスにコロイド状金/マウスIL−6混合物を、上記のように免疫した。約3週間後、上記のように、マウスを屠殺して、そして幹の血液(trunk blood)を収集し、そして直接ELISAによりマウスIL−6に対する抗体の存在について分析した。直接ELISAからの結果、コロイド状金と組み合わせたマウスIL−6で免疫したマウスにおける血清の抗体力価の決定を図3に示す。図3は、マウスがマウスIL−6に対する抗体応答を生じたことを実証する。従って、これは、金が、敗血症、癌悪液質および転移に関与すると考えられる内因性(すなわちそれ自体の)の毒素およびサイトカインに対して抗体を産生する際に有用であることを示す。
【0132】
これらの結果に基づいて、コロイド状金はまた、「自己抗原」に対する免疫応答を通じて、トランスジェニックマウスにおいてモノクローナル抗体を産生するために有用であり得る。任意のコロイド状金結合抗原は、トランスジェニックマウス免疫のために用いられ得、これはインビボでのモノクローナル抗体の産生を生じる。
【0133】
(実施例VI)
以下の実験は、コロイド状金と混合されたサイトカインがその生物学的活性を保持することを示す。これらの実験のために用いられたモデルは、当該分野で周知のモデルの1つである。Paciotti,G.F.およびL.Tamarkin,Interleukin 1 directly regulates hormone−dependent human breast cancer cell proliferation in vitro,Mol.Endocrinol.,2:459−464,1988;ならびにPaciotti,G.F.,およびL.Tamarkin,Interleukin−1 differentially synchronizes estrogen−dependent and estrogen−independent human breast cancer cells in the GoIG I−phase of the cell cycle,Anti Cancer Research,11:25−32,1991を参照のこと。このモデルは、エストロゲン応答性ヒト乳癌細胞、MCF−7の増殖を直接阻害するサイトカイン、IL−1の能力に基づいている。簡略に言えば、IL−1単独で、これらの乳癌細胞の表面上の十分に特徴付けられたIL−1レセプターを通じてこれらの細胞の増殖を阻害する。
【0134】
以下の実験は、IL−1がこれらの細胞の増殖を阻害する能力を決定することにより、IL−1がコロイド状金と混合された場合、その生物学的活性を保持する能力を示す。約8,000のMCF−7細胞を24ウェル組織培養プレートにプレートした。翌日、15nmの金粒子を14,000rpmで10分間遠心分離し、滅菌水に再懸濁した。ヒトIL−1αを、水中で再構成し、水中で5×10-5Mの初期ストックとした。金およびIL−1のpHを、0.1M NaOHを用いて約8.0に調整した。混合前に、IL−1を希釈し、250μlの金を含む、2×10-6M、2×10-8M、および2×10-10Mの作用ストックとした(最終容量=0.5ml)。金のコントロールは、250μlの金および250μlの滅菌水からなった。次いで、それぞれの作用ストックを、さらに組織培地で1/20に希釈し、10-7M、10-9Mおよび10-11Mの最終濃度とした。次いで、適切なコントロールと一緒にこれらの溶液をMCF−7細胞に直接添加した。図6に示したこれらのデータは、金を含む場合、または含まない場合のIL−1の添加後の種々の日数での細胞数である。
【0135】
(実施例VII)
以下の実験は、金がサイトカインに結合する効率を示す。この実験は、タンパク質を金と組み合わせ、次いで遠心分離する場合、タンパク質が溶液から除去されることを実証する。この実験では、ARI’s Cytokit−6からのIL−6標準物質を用いた。混合前に、金およびサイトカイン液のpHを0.1N NaOHを用いてpH9に調整した。このタンパク質を、IL−6についてのARIの診断キットにおいて用いる前に、金か水のどちらかを用いてプレインキュベートした。このインキュベーションの後に、コロイド状金IL−6混合物を遠心分離し、上清を用いて、標準曲線を作成した。図3に見られ得るように、金は、アッセイの用量範囲内において、実質的に全てのIL−6との結合で非常に有効であった。この結合はIL−6を上清から除去する。IL−6の最も高い最終濃度(1000ng/ml)でさえ、金は、溶液から約90%のIL−6を除去した。この量は、IL−6/金上清の1000ng/mlのODに基づき、これは、IL−6標準物質100ng/ml単独と類似している。
【0136】
(実施例VIII)
以下の実施例は、金のコロイド状液をIL−6と混合した際における物理的な変化、ワクチンのための潜在的な抗原を示す。金の粒子は約15nmのサイズであるが、それらは、0.22μmのシリンジフィルターを通して濾過され得ない。本発明者らは、これをこのコロイド状混合物中の金粒子の性質に起因すると考える。コロイド状混合形態としての金が、個々のスフェアーより大きく凝集するということが理論化される。個々の粒子はフィルターの孔径よりも小さいが、この凝集体は、より大きく、従って濾過不能である。しかし、一旦、コロイド状金をタンパク質とインキュベートすれば、これは0.22μmのフィルターを通して容易に濾過するということを本発明者らは観察した。従って、サイトカインの結合は、金粒子同士の物理的相互作用を変化させるようであり、これは金粒子を各々、15nmの粒子として作用させ、粒子を容易に濾過させることを可能にする。この実験は、コロイド状金属に対する抗原の結合の特徴を規定する。
【0137】
(実施例IX)
ヒトIL−2を、pH11で、水中で再構成した。IL−2の200μgを25mlのコロイド状金と24時間インキュベートした。次いで、コロイド状金結合IL−2溶液を室温で、微量遠心分離で、14,000rpm、20分間遠心分離した。次いで、上清をペレットから取り出した。次いで、IL−2複合体を24ウェルプレートのそれぞれのウェルに入れ、37℃で25日間インキュベートした。サンプルを、4、5、7、8、9、11、13、17、21、23、および25日にウェルから取り出した。このサンプルを遠心分離し、コロイド状金:IL−2複合体を取り出した。この上清を凍結した。最後のサンプルを採取し、凍結させた後、すべてのサンプルをIL−2についてCytImmune Science,Inc.の CytELISA−2サンドイッチEIAでバッチ分析した。このアッセイの結果は図7である。
【0138】
(実施例X)
ヒトTNFαを、pH11で、水中で再構成した。TNFαの200μgをコロイド状金と24時間インキュベートした。次いで、TNFα:コロイド状金溶液を室温で、微量遠心分離で、14,000rpm、20分間遠心分離した。次いで、上清をペレットから取り出した。次いで、このペレットを1mlの水に再構成し、そして、ミルク緩衝液で希釈し、最終濃度1:100、1:1,000、1:10,000および1:100,000とし、そして、室温で24時間インキュベートした。次いで、サンプルを、CytImmune Science,Inc.の CytELISA TNFαアッセイを用いて分析に供した。このアッセイの結果は図8である。
【0139】
この実験は、この希釈の結果として、コロイドが、それに結合したサイトカインをより多く放出するということを示す。従って、コロイド状金によるサイトカインの結合および放出は、血液および細胞外液によるコロイド状金の階段希釈を含むインビボ状態に適用可能な平衡状態の動態を示す。
【0140】
(実施例XI)
500μgの組換えIL−2を0.5mlのpH=11の水に溶解した。次いで、この溶液に、実施例9に記載の方法によりコロイド状金の25mlを添加した。Balb/Cマウスにコロイド状金結合IL−2の0.1mlまたはそのままのIL−2の100μgのどちらかを注射(腹腔内)した。このマウス(マウス4匹/群/時点)を、注射後に種々の時点(0、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0および24時間)で屠殺し、幹の血液を採取した。得られた血清をIL−2について、CytImmune Science,Inc.の競合EIAで分析した。試験した時点をとおして、コロイド状金からのIL−2の放出は、二峰性のパターンを有するようであった(図7)。これについての1つの説明は、コロイド状金から腹部(abdomen chich)へ放出されたIL−2の(引き続いて血液プールと平衡した)平衡状態であり得る。
【0141】
(実施例XII)
50,000のMCF−7細胞を、6ウェルプレートのそれぞれのウェルへ、10%CSSを含有するフェノールレッドを含まないIMEM 2ml中にプレートした。この細胞を70〜80%コンフルエントになるまで増殖させた。200μgのIL−1βを、実施例9に記載の方法を用いて、コロイド状金に結合させた。結合後に、複合体化物質を遠心分離し、1%HSA溶液を用いてブロックした。100μlのコロイド状金結合IL−1β複合体を、それぞれのウェルに添加し、1〜5日間インキュベートした。次いで、この細胞を10%チャコール剥離ウシ胎仔血清(FBS)含有のフェノールレッドを含まないIMEMを用いて洗浄した。コロイド状金:IL−1β複合体のMCF−7細胞への結合を、明視野および相対比顕微鏡(bright field and phase contrast microscopy)を用いて細胞表面のコロイド状金の可視化により検出した。細胞表面に残存しているコロイド状金/IL−1βを、蛍光と明視野画像との間の陰性シグナルとして決定される細胞へ内部移行したウサギ抗ヒトIL−1βを用いた、蛍光顕微鏡により可視化した。このアッセイの結果を図10に図示する。
【0142】
図10aは、未処理MCF−7細胞(コントロール)の明視野表示であり、図10bは、FITCが結合した抗体の非特異的結合由来のバックグラウンド蛍光を示す。図10bは、コロイド状金結合IL−1βを用いて処理したMCF−7細胞についての明視野表示を図示し、図10dは、コロイド状金結合IL−1β複合体を用いて処理したMCF−7細胞についてのFITC蛍光および複合体の内部移行を図示する。これらの図中のコロイド状金:IL−1b複合体のいくつかは、明るいスポットによって示されるように、細胞膜に結合し、いくつかは、暗いスポットによって示されるように、細胞内へ内部移行される。
【0143】
この実施例は、コロイド状金属:生物学的活性因子複合体が細胞表面のレセプターに結合し得ること、および、続いて、この複合体が細胞内に内部移行することを示す。
【0144】
(実施例XIII)
50,000のMCF−7細胞を、6ウェルプレートのそれぞれのウェルの、10%CSSを含有するフェノールレッドを含まないIMEM 2ml中にプレートした。この細胞を70〜80%コンフルエントになるまで増殖させた。次いで、この細胞を、0.5μg/mlのTNFα、5.0μg/mlのTNFα、または50μg/mlのTNFα、0.5μg/mlのIL−1β、5.0μg/mlのIL−1β、50μg/mlのIL−1βのいずれかの培地で処理した。
【0145】
100μgのIL−1βを、実施例9に記載の方法を用いて、コロイド状金に結合させた。結合後に、複合化物質を遠心分離し、1%HSA溶液を用いてブロックした。100μlのコロイド状金結合IL−1β複合体を、それぞれのウェルに添加し、24〜48時間インキュベートした。次いで、この細胞を10%CSS含有のフェノールレッドを含まないIMEMを用いて洗浄した。IL−1β:コロイド状金:TNFα ジ−サイトカインのMCF−7細胞への結合を、明視野または相対比顕微鏡(bright field or phase contrast microscopy)を用いて細胞表面のコロイド状金の可視化により検出した。
【0146】
これらのデータは、コロイド状金が、2つ以上の生物学的に活性な因子を同時に結合し得ることを示し、これは、細胞膜に結合し得、そして標的化薬物送達システムを提供し得る、目的の複合体の生成を可能にする。
【0147】
(実施例XIV)
それぞれ100μgのIL−6、IL−1βおよびTNFαを、実施例9に記載の方法を用いて、同じコロイド状金溶液に同時に結合した。遠心分離およびHSA溶液を用いたブロッキングの後、このサンプルを、TNF−αについてのCytImmune Science,Inc.のサンドイッチアッセイにおける未知物として用いた。このアッセイにおいて、モノクローナル抗体を用いて、サンプル中のTNF−αを捕獲した。次いで、TNF−αに結合したこのモノクローナル抗体を、ウサギ抗ヒトTNF−α抗体、次いで酵素標識化ヤギ抗ウサギ抗体を用いて検出した。
【0148】
同じコロイド状金粒子がIL−6、IL−1βおよびTNFαに結合したことを実証するために、TNF−αに対するモノクローナル抗体を用い、TNFα、IL−6およびIL−1βで同時にコートされたコロイド状金粒子を含む四連サンプルの3セットを捕獲した。トリ−サイトカイン粒子を実証するために、サンプルの1つのセットはTNF−αポリクローナル抗体を用いて、別のセットは、IL−6ポリクローナル抗体で、そしてその他のセットは、IL−1βポリクローナル抗体を用いて検出した。すべてのサンプルをヤギ抗ウサギ抗体を用いて同時に検出した。予想通り、コロイド状金結合TNF−αを、TNF−αモノクローナル/ポリクローナル抗体結合ペアを用いて容易に捕獲および検出した。さらに、同じサンプルは、IL−6およびIL−1βについて有意な量の免疫反応を示したが、これは3つのサイトカインが同じ粒子に結合した場合のみ可能なことであった。このアッセイの結果を図11に図示する。
【0149】
これらのデータは、コロイド状金が、2つ以上の生物学的に活性な因子を同時に結合し得ることを示し、これは、細胞膜に結合し得、そして標的化された薬物送達システムを提供し得る、目的の複合体の生成を可能にする。これらの目的の複合体はまた、トランスジェニックマウスの免疫化のために、「自己抗原」に対する免疫応答の産生、および複数のモノクローナル抗体の産生にも用いられ得る。例えば、この実験由来の目的の複合体は、TNFα、IL−6およびIL−1βモノクローナル抗体の同時の産生を誘発するために用いられ得る。
【0150】
(実施例XV)
以下は、コロイド状金への分子結合後の一般的な実験プロトコールである。この分子を水中で再構成した。200μgの分子を25mLのコロイド状金と24時間インキュベートした。次いで、分子:コロイド状金複合体溶液を室温で、微量遠心分離で、14,000rpm、20分間遠心分離した。次いで、上清をペレットから取り出した。
【0151】
(実施例XVI)
50μgの上皮増殖因子(EGF)をpH=11.0で、25mlの40nmコロイド状金粒子に結合させた。この溶液をロッキングプラットフォーム上で24時間、振とうした。50μg(50μlとして添加した)の標的化するサイトカイン(すなわち、標的マクロファージに対するIL−1β、標的T細胞に対するIL−2、標的B細胞に対するIL−6、ならびに標的樹状細胞に対するTNFαまたはFlt−3リガンドのいずれか)を、EGF/Au溶液に添加して、そしてさらに24時間、振とうした。コロイド状金結合物質およびコロイド状金非結合物質を分離するために、次いで、溶液を14,000rpmで遠心分離した。この上清を取り出し、そしてペレットを1%ヒト血清アルブミン含有の1ml水中に再構成した。
【0152】
(実施例XVII)
EGFを、実施例2の手順を用いてコロイド状金(CG)に結合した。次いで、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG複合体に結合し、EGF/CG/TNF−αキメラを生成した。
【0153】
(実施例XVIII)
EGFを、実施例2の手順を用いてコロイド状金(CG)に結合した。次いで、インターロイキン−6(IL−6)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG複合体に結合し、EGF/CG/IL−6キメラを生成した。
【0154】
(実施例XIX)
EGFを、実施例2の手順を用いてコロイド状金(CG)に結合した。次いで、インターロイキン−2(IL−2)を、実施例1の手順を用いてEGF/CG複合体に結合し、EGF/CG/IL−2キメラを生成した。
【0155】
(実施例XX)
当該分野で周知のように、全血サンプルから軟膜を分離した。100〜500mLの全血をヘパリンへ採取した。この血液を、50%(v/v)のフィコール−ハイパーク溶液上へ注意深く上層し、そして2700rpmで7分間、遠心分離した。この軟膜つまり、血清/フィコール境界での白血球の収集を、パスツールピペットを用いて採取し、そして0.5mg/mLヘパリン含有の10mL PBS中に入れた。これを1500rpmで遠心分離し、そしてペレットを洗浄し、そして再遠心した。この細胞を、PBS溶液中で2回洗浄し、そしてもう一度遠心分離した。
【0156】
この細胞を、10%ウシ胎仔血清または正常ヒト血清のいずれかを含有するRPMIに再懸濁し、そして106細胞/ウェルの細胞密度で、6ウェルプレート内で培養した。次いで、この細胞を50〜100μLの1つまたは全ての抗原/サイトカイン混合物を用いて刺激した。
【0157】
図12に示すように、マクロファージのみがEGF/CG/IL−1βキメラを内部移行し、一方、樹状細胞のみがEGF/CG/TNF−αキメラを内部移行した(図13)。同様に、B細胞のみがEGF/CG/IL−6キメラを内部移行し(図14)、そして、T細胞のみがEGF/CG/IL−2キメラを内部移行した(図15)。
【0158】
この実験により示されるように、特定の成分特異的免疫刺激因子が、個々の免疫成分に特異的である。従って、成分特異的免疫刺激因子を用いて特異的免疫成分を標的化することが可能である。それによって、この標的化は、それらの免疫応答を増強し、免疫応答全般における活性上昇を生じる。
【0159】
(実施例XXI)
この実験のために、ブドウ球菌内毒素Bを推定の抗原/ワクチン分子として用いた。なぜなら、コロイド状金への毒素の結合がその毒性を軽減するという証拠があるからである。500μgの毒素を250mlの40nmコロイド状金粒子に最初に結合した。次いで、このコロイド状液をアリコートにした。50μgの標的化するサイトカイン(IL−1β、IL−2、IL−6およびTNFα)をアリコートの1つに添加し、そして24時間、再インキュベートした。この毒素−AU−サイトカインコロイドを14,000rpmで遠心分離し、そして上清を取り出した。このペレットを1mlの水中に再構成した。このペレットをサンドイッチまたは競合ELISAのいずれかによりサイトカイン濃度についてアッセイした。これを行い、生理食塩水または毒素単独を受けるコントロール動物に注射された純粋な(非結合の)サイトカインの量を決定した。
【0160】
この免疫計画は、純粋な毒素/サイトカイン混合物(組成物コントロールとして)または毒素−Au−サイトカインキメラの、同時または連続する投与を含んだ。マウス5匹/群に、2.5μgの純粋な毒素か、またはコロイド状金を結合した同用量の毒素/サイトカイン混合物を、1、5、および9日目に注射した。14日間の免疫期間の間に、さらに2つの群のマウスは、表1で提供されるスケジュールに従って、純粋な毒素/サイトカインまたは毒素−Au−サイトカインを受けた。
【0161】
【表2】

すべての群を、1μgの純粋な毒素単独で30日目に再接種した。防御免疫を、純粋な毒素の能力の軽減または欠如により実証し、罹患率を誘導した。コロイド状金に結合した毒素が毒素の毒性を非常に軽減したということが重要な観察である。第二に、毒素への血清抗体の力価は、純粋な処置のみを受けた力価より10倍高かった。しかし、続く処置を受ける動物の血清抗体は、純粋な処置を受ける動物より100倍大きかった。最後に、純粋な毒素の再接種の際、毒素で処置された動物の100%が致死したが、同時の群では、わずか20%の致死率を観察した。
【0162】
従って、本発明の組成物および方法は、ワクチンの有効性を増加するために用いられ得る。
【0163】
(実施例XXII)
この実験は、EGFと結合したコロイド状金を用いた、ヒト乳癌細胞MCF−7への細菌遺伝子、βガラクトシダーゼ(b−gal)の送達を示す。この実験のために、β−galプラスミドDNAを、コロイド状金粒子と対になった40nm−EGFに直接結合させた。関連の特許出願に開示された方法により25μ。一旦、遊離のEGFを結合画分から分離すれば、5μgのpSV βガラクトシダーゼプラスミドを、ロッキングプラットホーム上で、EGF/Auとともに一晩インキュベートした。この物質を遠心分離し、ペレットをpH=11で水を用いて1mlに再構成した。100μlを、6ウェル培養プレート中で増殖しているMCF−7細胞に添加した。
【0164】
EGF/DNA Auを細胞とともに48時間インキュベートし、分子キメラのレセプター媒介エンドサイトーシスを可能にした。続いて、この細胞を、無血清培地で2回、PBSで2回、洗浄し、そして次いで、0.25%のグルタルアルデヒド溶液(PBS中)を用いて、15分間固定した。この固定した細胞をPBSを用いて4回洗浄した。βガラクトシダーゼ基質(X−gal)を、2mM MgCl2、5mM K4Fe(CN)6・3H2Oおよび5mM K3Fe(CN)6を含有する緩衝液中の0.2%溶液として、細胞に添加した。この細胞および基質液を一晩インキュベートした。
【0165】
首尾よい細胞遺伝子トランスフェクションおよび発現は、X−gal基質の緑色産物への転換により示される。トランスフェクションは、細胞上の緑色染色の存在により確認される。実際には、染色の存在は、遺伝子が送達され、転写されたこと、そして生物学的に活性な酵素が翻訳されたことを示す。
【0166】
β−gal酵素活性について陽性に染色されたごくわずかな細胞が観察された。これは、DNAとコロイド状金との間の結合効率の乏しさ、リソソームの捕獲および/または転写の効率の乏しさを含むいくつかの因子に起因し得た。
【0167】
(実施例XXIII)
この実験は、実施例2のトランスフェクションの欠乏が、プラスミドDNAの金への結合の乏しさに起因していたかどうかを調査するために設計された。これを試験するために、金キメラを、ヒストン(すべてのアイソタイプの異種混合物または個々のアイソタイプのいずれかとして添加した)、ポリリジンまたは硫酸プロタミンのような標的化するタンパク質およびDNA結合タンパク質として、EGFを用いて生成し、DNAに吸着させた。25μgのEGFを、上記のように、40nmのコロイド状金粒子に結合させた。続いて、ヒストン、ポリリジンまたは硫酸プロタミンを、0.1〜100μg/mlの範囲の種々の濃度でEGF Au溶液に添加した。
【0168】
DNA結合部分の添加の際に、本発明者らは、コロイド状金EGF溶液が綿状になりそして引き続き沈殿したことを観察した。この沈殿物を超音波処理および遠心分離し、そして再懸濁し、最終容量を水中で1mlとした。15μgのpSV βガラクトシダーゼプラスミドをロッキングプラットホーム上で一晩インキュベートした。この物質を再度、遠心分離し、上清を取り除き、そして0.5mlの水をペレットに添加した。このペレットを再度、超音波処理し、そして0.1mlの溶液を、10%チャコール剥離化ウシ胎仔血清を補充されたフェノールレッドを含まないIMEMを用いて24ウェルプレートで増殖したMCF−7またはHS−578−Tヒト乳癌細胞のいずれかに添加した。この細胞および金/タンパク質/DNAキメラを、それが細胞に取り込まれる間、48時間、互いとインキュベートした。
【0169】
図16に見られ得るように、βガラクトシダーゼ遺伝子をMCF−7細胞に有効にトランスフェクトした。なぜなら、緑の株がほとんどすべての細胞において見られるためである。より興味深いことには、EGFレセプターを有することが公知であるHS578−T細胞は、キメラの細胞外結合を示したのみである(図17参照)。これは、この細胞株においてEGFレセプター系が内部移行を受けないことを示唆する。
【0170】
(実施例XXIV)
透析カセットを用い、コロイド状金粒子に対するpH変化の効果を示した。透析カセット(Pierce;Slide−A−LyzerTM;カットオフ分子量2000)を、本発明で記載されたコロイド状金粒子を用いてロードした。次いで、このカセットを2つのMES緩衝化溶液の1つに入れた。MESは、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸である。一次溶液のpHは7.4であり、二次溶液のpHは5.6であった。このカセットを24時間、透析した。続いて、カセット中のコロイド状金溶液を収集し、6ウェルの培養プレートに入れ、そして写真撮影した。pH7.4で24時間後、コロイド状金粒子は変化なく、MES緩衝液の中で懸濁したままである。MES緩衝液のpHを5.6に変化させたカセットで、24時間後、カセットに黒い沈殿が存在し、これはコロイド状金粒子の沈殿を示している。この実施例は、周囲の環境のpHが酸性化した場合のコロイド状金の状態における潜在的な変化を記載した。これは、内部移行後のエンドソームの酸性化と類似している。
【0171】
(実施例XXV)
コロイド状金に結合したストレプトアビジンは、飽和可能な結合動態を示した。この実験のために、500μgのストレプトアビジンを、50mlの32nmコロイド状金に1時間結合させた。引き続き、5mlの安定化溶液(5%PEG1450、0.1%BSA)をチューブに添加し、そしてさらに30分間、混合させた。この溶液を遠心分離して、非結合のストレプトアビジンを除去し、そして5mlの安定化溶液で2回洗浄した。最終スピンの後、このペレットを、安定化溶液を用いて5mlの容量に再構成した。1mlのアリコートを、微量遠心チューブに分配した。これらのチューブに、ビオチン化ヒトTNFαの漸増量を添加した。ビオチン化サイトカインを、ストレプトアビジン金と1時間インキュベートした。この物質を10,000rpmで10分間、遠心分離した。得られた上清を採集し、そしてTNF決定のために保存した。それぞれのチューブ由来のペレットを安定化溶液で1回洗浄し、そして再遠心分離した。このスピン由来の上清を廃棄した。ペレットを安定化溶液を用いて1mlに再構成した。そして、ペレットと最初の上清の両方を、本発明者らのCYTELISATMTNFキットを用いて、TNF濃度についてアッセイした。ビオチン化TNF免疫反応性の90%より大きいものがペレットに見出され得(図2)、これはビオチン化TNFが金に結合したストレプトアビジンによって捕獲されたことを示す。
【0172】
(実施例XXVI)
この実験は、標的化された薬物送達システムとして、ストレプトアビジン金複合体の実施可能性を評価することであった。このことが起こるために、ストレプトアビジン結合体化コロイド状金は、ビオチン化された標的化するリガンドおよびビオチン化治療剤の両方に結合しなければならない。これを検討するために、本発明者らは、以下の実験を実行した。
【0173】
100mlの32nmコロイド状金溶液を、飽和濃度のストレプトアビジンを用いて結合した。1時間後、溶液を遠心分離し、そして上記のように洗浄した。次いで、ストレプトアビジンに結合したコロイド状金を飽和下濃度のビオチン化サイトカインを用いて結合した。この物質をボルテックスし、そして室温で1時間インキュベートした。その後、溶液を遠心分離し、そしてペレットをビオチン化ポリリジンの溶液とともにインキュベートした。1時間のインキュベーションの後、この溶液を再遠心分離し、そして洗浄した。最終スピンおよび再懸濁(溶液の最終容量は約1mlであった)の後、50μgのβガラクトシダーゼレポーター遺伝子を、濃縮したストレプトアビジン/ビオチン化サイトカイン/ポリリジン キメラとともに1時間インキュベートした。この物質を遠心分離し、非結合のプラスミドDNAを除去した。最終構成物(ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチン ポリリジン−DNA)を14,000rpmで遠心分離した。この上清を、260nmでのそのODを決定することによりDNAの存在についてアッセイした。本発明者らは、ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチン ポリリジン構築物とともにプラスミドDNAをインキュベーションした後に、上清の260nmでのODにおける0.95から0.25への低下を観察した。このDNAは、ビオチン EGF−SAP−Au−ビオチン ポリリジン−DNAにより結合され、そして、溶液からペレット中へ遠心分離された。これらのデータは、新しい薬物送達システムが、コロイド状金へのアビジン結合を用いて開発されたことを示す。次いで、標的化および送達ペイロードのビオチン化を、これらの分子を、薬物/遺伝子送達システムに基づいた、コロイド状金に結合するための方法として用いた。
【0174】
当然のことながら、前述は本発明の特定の実施例のみに関しており、そして、多くの改変または変更が、本明細書において、添付の請求項に示されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされ得るということが理解されるべきである。
【0175】
本特許は、少なくとも1つのカラー写真を含む。カラー写真を含むこの特許のコピーは、請求および必要な費用の支払いによって、米国特許庁によって提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−286808(P2009−286808A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213829(P2009−213829)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【分割の表示】特願2000−520162(P2000−520162)の分割
【原出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】(500209088)サイティミューン サイエンシーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】