生物学的製剤
【課題】繰り返し使用でき、容易にかつ効率的に製造できるNHLを治療するための抗体分子の提供。
【解決手段】CD22に対する特異性を有するマウスモノクローナル抗体から得られる少なくとも1つのCDRを含む抗体が開示される。少なくとも1つのCDRが修飾CDRであるCDR移植抗体も開示される。さらに、抗体分子の鎖をコードするDNA配列、ベクター、形質転換宿主細胞、およびCD22を発現する細胞により仲介される疾患の治療における抗体分子の使用が開示される。
【解決手段】CD22に対する特異性を有するマウスモノクローナル抗体から得られる少なくとも1つのCDRを含む抗体が開示される。少なくとも1つのCDRが修飾CDRであるCDR移植抗体も開示される。さらに、抗体分子の鎖をコードするDNA配列、ベクター、形質転換宿主細胞、およびCD22を発現する細胞により仲介される疾患の治療における抗体分子の使用が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bリンパ球抗原であるCD22の抗原決定基に対する特異性を有する抗体分子に関する。本発明はまた、この抗体分子の治療的使用とこの抗体分子の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の抗体分子には、2つの重鎖と2つの軽鎖がある。各重鎖と各軽鎖は、そのN末端に可変ドメインを有する。各可変ドメインは、3つの相補性決定領域(CDR)が交互に存在する4つのフレームワーク領域(FR)からなる。可変ドメイン中の残基は通常、カバト(Kabat)らが作成したシステムに従って番号付けがされている。このシステムは、カバト(Kabat)ら、1987、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、米国保健社会福祉省(US Department of Health and Human Services、NIH、USA(以後「カバト(Kabat)ら(前述)」)に記載されている。特に明記しない場合は、本明細書におけるこの番号付けシステムが使用されている。
【0003】
カバト(Kabat)残基表記法は、アミノ酸残基の線形の番号付けと必ずしも直接相関しない。実際の線形のアミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであってもCDRであっても、構造成分の短縮またはそこへの挿入に対応して、厳密なカバト(Kabat)番号付け中より、少ないまたは多いアミノ酸を有する。ある抗体について残基の正しいカバト(Kabat)番号付けは、抗体の配列の相同性の残基を「標準的」カバト(Kabat)番号付け配列と整列することにより、決定される。
【0004】
カバト(Kabat)番号付けに従うと、重鎖可変ドメインのCDRは、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)および残基95〜102(CDR−H3)に位置する。
【0005】
カバト(Kabat)番号付けに従うと、軽鎖可変ドメインのCDRは、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)および残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
【0006】
CDR移植抗体の構築は、ヨーロッパ特許出願EP−A−0239400に記載されており、これは、部位特異的突然変異誘発により長いオリゴヌクレオチドを使用して、マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト免疫グロブリンの可変ドメインのフレームワーク領域に移植される方法を開示する。CDRは抗体の抗体結合特異性を決定し、可変ドメインのフレームワーク領域上にある比較的短いペプチド配列である。
【0007】
CDR移植によりモノクローナル抗体をヒト化する初期の研究は、合成抗原(例えばNP)を認識するモノクローナル抗体について行われた。しかし、リゾチームを認識するマウスモノクローナル抗体と、ヒトT細胞上の抗原を認識するラットモノクローナル抗体が、CDR移植によりヒト化された例が、それぞれベルホーエン(Verhoeyen)ら(Science, 239, 1534-1536, 1988)と、リーチマン(Riechmann)ら(Nature, 332, 323-324, 1988)により記載されている。
【0008】
リーチマン(Riechmann)らは、CDR単独の移動[カバト(Kabat)(カバト(Kabat)ら(前述)、およびウー(Wu)ら、J. Exp. Med., 132, 211-250, 1970)]は、CDR移植生成物の充分な抗原結合活性を提供するのに充分ではないことを見いだした。多くのフレームワーク残基は、これらが供与体フレームワーク領域のものに対応するように、改変されなければならないことがわかった。改変することが必要なフレームワーク残基を選択するための基準は、国際特許出願WO90/07861に記載されている。
【0009】
CDR移植抗体を記載する多くの総説が公表されており、例えばボーガン(Vaughan)ら(Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998)がある。
【0010】
悪性リンパ腫は、多様な群の新生物である。大部分の症例は老人である。非ホジキンリンパ腫(NHL)は、現在米国に200,000〜250,000人の患者がいる疾患である。これは、米国で2番目に増加率の高い癌であり、毎年約55,000症例の速度で増加している。この発症頻度は、人口の高齢化や既知の危険因子への暴露のみでは説明されない速度で上昇している。
【0011】
リンパ腫の分類は複雑であり、過去数十年間に漸進的に変化してきた。1994年に改訂ヨーロッパ−アメリカリンパ腫(REAL)分類が導入された。この分類は、B細胞のリンパ腫(最も頻繁に見つかる)、T細胞のリンパ腫、および分類不可能な起源のリンパ腫とを、認められたサブタイプに分類している。日々の診療において、一般的な組織学的外観に基づくNHLの群別の低、中および高グレードへの分類は、その臨床的挙動を広く反映する。
【0012】
NHLは主にリンパ節を冒すが、個々の患者ではこの腫瘍は、体の他の部位(例えば、肝臓、脾臓、骨髄、肺、消化管および皮膚)が関与する。この疾患は通常、無痛のリンパ節の腫脹を示す。リンパ節外リンパ腫は最も頻繁に消化管を冒すが、ほとんどすべての臓器の初期リンパ腫が報告されている。全身症状には、発熱、発汗、疲労、および体重減少がある。
【0013】
最近まで、完全に疾患の解剖学的程度に基づくアンアーバー(Ann Arbor)ステージ分類システムが、NHLの治療の主要な決定因子であった。この情報は、追加の予後指標(年齢、血清乳酸脱水素酵素レベル、および動作状態を含む)を取り込むことにより改良される。それでも、アンアーバー(Ann Arbor)ステージ分類システムは、腫瘍の組織学的および免疫学的サブタイプとともに治療の主要な決定因子である。
【0014】
低グレードNHLは、無痛性の経過をたどり、患者のメジアン生存期間は8〜10年である。生存は現在利用可能な治療法によりほとんど影響を受けないが、局所的疾患の放射線照射や全身性症状の化学療法は、患者のクオリティオブライフを改善する。疾患の再発には併用化学療法がある。中グレードの疾患と特に高グレードの疾患には、緊急の治療が必要である。非常に大きい疾患の患者では放射線療法が、有効な治療法である。多くの異なる化学療法が使用されており、半分以上の患者で長期の疾患の無い生存が得られている。高用量治療は最初、再発性または抵抗性疾患の患者について導入されたが、現在は低リスク疾患の患者について第一線の治療法としてますます利用されている。ますます攻撃的になっている治療法の最近の傾向は、NHL患者の高齢と相対的弱質に対してバランスを取らなければならず、各患者の疾患の個々の予後に治療の毒性を一致させる必要がある。
【0015】
より有効で良好に許容される改善された治療が必要である。最近導入されたものには、併用療法への取り込みが増加している新しい細胞障害性薬剤、および抗体ベースの治療法の導入がある。
【0016】
非ホジキンリンパ腫は、一連のB細胞リンパ球を包含する。すなわちB細胞抗原は、抗体治療法の適当な標的である。
【0017】
CD22は、シアロアドヘシン(sialoadhesin)と呼ぶシアル酸結合タンパク質の群に属する135kDaの膜糖タンパク質である。これは、B細胞発生の初期に細胞質中で検出され、IgDと同時に細胞表面上に出現し、ほとんどの成熟B細胞上に見いだされる。B細胞活性化により発現が上昇する。最終分化によりCD22は失われ、一般に植物細胞上には存在しないと報告されている。すなわちこのインターナライズ性抗原は、プレB細胞と成熟B細胞の表面には存在するが、幹細胞または植物細胞には存在しない。
【0018】
ヒトではCD22の2つのアイソフォームが存在する。優勢な型(CD22β)は、細胞外領域中に7つの免疫グロブリン様(Ig様)ドメインを含有する。CD22α変種は、Ig様ドメイン4が欠如し、末端切断型の細胞質ドメインを有する。単球、好中球、リンパ球および赤血球へのCD22接着を阻止する抗体は、第1または第2のIg様ドメイン内で結合することが証明されている。
【0019】
CD22の細胞障害性ドメインは、B細胞抗原受容体の結合によりチロシンリン酸化され、Lyk、Sykおよびホスファチジルイノシトール3−キナーゼと結合する。CD22の機能は、B細胞活性化閾値を下方に調節することである。これはまた、適切なシアログリコ結合体を有する細胞との相互作用を介して細胞接着を仲介する。
CD22はほとんどのB細胞白血病とリンパ腫[NHL、急性リンパ性白血病(B−ALL)、慢性リンパ性白血病(B−CLL)、および特に急性非リンパ性白血病(ANLL)を含む]で発現される。
【0020】
CD22に対するモノクローナル抗体は、先行技術で記載されている。WO98/41641は、VH44とVL100にシステイン残基を有する組換え抗CD22抗体を記載する。WO96/04925は、抗CD22抗体LL2のVHとVL領域を記載する。US5686072は、抗CD22と抗CD19免疫毒素の併用を記載する。WO98/42378は、B細胞悪性腫瘍の治療のために裸の抗CD22抗体の使用を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
多くの抗体ベースの治療薬がライセンス化[例えばリツキサン(Rituxan)、(CD20に特異的な非標識キメラヒトγ1(+mγ1V領域))]されているか、またはこの疾患のために臨床治験中である。これらは、B細胞の補体性もしくはADCC性死滅、または放射性核種(例えば131Iまたは90Y)(これらは臨床家と患者にとって、関連する調製と使用の問題がある)の使用に依存する。繰り返し使用でき、容易にかつ効率的に製造できるNHLを治療するための抗体分子に対するニーズがある。また、CD22に対して高い親和性を有し、ヒトでの免疫原性の低い抗体分子に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様において本発明は、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−H1について図1にH1として示す配列(配列番号1)、CDR−H2について、図1にH2として示す配列(配列番号2)または可能なグリコシル化部位が除去されているH2、60位(カバト(Kabat)の番号付けシステムに従って)のリジン残基が別のアミノ酸で置換されているH2、またはグリコシル化部位と60位の反応性リジンの両方が除去されているH2として示す配列、またはCDR−H3について図1(配列番号3)にH3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む、重鎖を含んでなる上記抗体分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、マウスモノクローナル抗体5/44のCDRのアミノ酸配列を示す(配列番号1〜6)。
【図2】図2は、マウスモノクローナル抗体5/44の軽鎖可変ドメインの完全な配列を示す。
【図3】図3は、マウスモノクローナル抗体5/44の重鎖可変ドメインの完全な配列を示す。
【図4】図4は、CDR−H2におけるグリコシル化部位および反応性リジンの除去のための方策を示す。
【図5】図5は、5/44軽鎖配列のための移植設計図を示す。
【図6】図6は、5/44重鎖配列のための移植設計図を示す。
【図7】図7は、ベクター:pMRR14およびpMRR10.1を示す。
【図8】図8は、キメラ5/44変異体のビアコア(Biacore)アッセイ結果を示す。
【図9A】図9Aは、5/44gH1およびgL1遺伝子組立体のためのオリゴヌクレオチドを示す。
【図9B】図9Bは、5/44gH1およびgL1遺伝子組立体のためのオリゴヌクレオチドを示す。
【図10】図10は、中間体ベクター:pCR2.1(544gH1)およびpCR2.1(544gL1)を示す。
【図11】図11は、さらに別の移植片を作るために使用したオリゴヌクレオチドカセットを示す。
【図12】図12は、蛍光標識マウス5/44抗体と移植変種との間の競合アッセイを示す。
【図13A】図13Aは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13B】図13Bは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13C】図13Cは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13D】図13Dは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13E】図13Eは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13F】図13Fは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【0024】
本発明の第1の態様の抗体分子は、重鎖可変ドメインについてH1、H2およびH3(配列番号1、配列番号2,および配列番号3)から選択される少なくとも1つのCDRを含む。好ましくは抗体分子は、重鎖可変ドメインに少なくとも2つ以上、好ましくは3つのCDRを含む。
【0025】
本発明の第2の態様において、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−L1について図1にL1として示す配列(配列番号4)、CDR−L2について図1にL2として示す配列(配列番号5)またはCDR−L3について図1(配列番号6)にL3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む、軽鎖を含んでなる上記抗体分子が提供される。
【0026】
本発明の第2の態様の抗体分子は、軽鎖可変ドメインについてL1、L2およびL3(配列番号4、配列番号5、および配列番号6)から選択される少なくとも1つのCDRを含む。好ましくは抗体分子は、軽鎖可変ドメインに少なくとも2つ以上、好ましくは3つのCDRを含む。
本発明の第1と第2の態様の抗体分子は、好ましくはそれぞれ相補的軽鎖または相補的重鎖を有する。
【0027】
好ましくは本発明の第1と第2の態様の抗体分子は、可変ドメインが、CDR−H1について図1にH1として示す配列(配列番号1)、CDR−H2について図1にH2として示す配列(配列番号2)または可能なグリコシル化部位が除去されているH2、60位(カバト(Kabat)の番号付けシステムに従って)のリジン残基が別のアミノ酸で置換されているH2、またはグリコシル化部位と60位の反応性リジンの両方が除去されているH2として示す配列、またはCDR−H3について図1(配列番号3)にH3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む重鎖と、可変ドメインが、CDR−L1について図1にL1として示す配列(配列番号4)、CDR−L2について図1にL2として示す配列(配列番号5)またはCDR−L3について図1(配列番号6)にL3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む軽鎖とを含む。
【0028】
配列番号1〜6に示し上記で図1に示すCDRは、マウスモノクローナル抗体5/44から得られる。
【0029】
マウス5/44抗体の可変ドメインの完全な配列を、図2(軽鎖)(配列番号7)と図3(重鎖)(配列番号8)に示す。このマウス抗体はまた、以下で「ドナー抗体」または「マウスモノクローナル抗体」と呼ばれる。
【0030】
本発明の第1と第2の態様の最初の好ましい別の実施態様は、それぞれ図2(配列番号7)と図3(配列番号8)に示される軽鎖と重鎖の可変ドメイン配列を有するマウスモノクローナル抗体5/44である。5/44の軽鎖の定常領域はカッパであり、そして重鎖の定常領域はIgG1である。
【0031】
第2の好ましい別の実施態様において、本発明の第1と第2の態様のいずれかの抗体はキメラマウス/ヒト抗体分子であり、本明細書ではキメラ5/44抗体分子と呼ぶ。このキメラ抗体分子は、マウスモノクローナル抗体5/44の可変ドメイン(配列番号7と8)とヒト定常ドメインを含む。好ましくは、キメラ5/44抗体分子は、軽鎖にヒトCカッパドメイン(ヒーター(Hieter)ら、Cell, 22, 197-207, 1980;ジーンバンク(Genebank)受け入れ番号J00241)と、重鎖に(場合により241位のセリン残基がプロリン残基により置換されている)ヒトガンマ4ドメイン(フラナガン(Flanagan)ら、Nature, 300, 709-713, 1982)を含む。
【0032】
好ましくは本発明の抗体は、可変ドメインが、CDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2’[可能なグリコシル化部位配列が除去されており、かつCD22抗原に対するキメラ5/44抗体の親和性を予想外に上昇させ、かつ好ましくはCDR−H2としてH2’として与えられる配列(配列番号13)を有する]を含む重鎖を含む。
【0033】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2”[CDR−H2内の露出部に位置し、かつ結合剤と反応することにより抗原結合親和性を低下させる能力を有すると考えられる60位のリジン残基が、別のアミノ酸の代わりに使用され、保存性置換となる]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2”として与えられる配列(配列番号15)を有する。
【0034】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2'''[可能なグリコシル化部位配列と60位のリジン残基の両方が、別のアミノ酸の代わりに使用されている]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2'''として与えられる配列(配列番号16)を有する。
【0035】
第3の好ましい別の実施態様では、本発明の第1と第2の態様のいずれかの抗体は、CDR移植抗体分子である。「CDR移植抗体分子」という用語は、本明細書において使用されるとき、重鎖および/または軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖および/または軽鎖の可変領域フレームワークに移植された、ドナー抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)由来の1つまたはそれ以上のCDR(所望であれば、修飾CDRを含む)を含む、抗体分子を意味する。
【0036】
好ましくは、このようなCDR移植抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域と、さらには1つまたはそれ以上の前記のドナーCDRを含む、可変ドメインを有する。
【0037】
CDRが移植されると、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/タイプに関する、マウス、霊長類およびヒトフレームワーク領域を含む、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列を使用することができる。本発明において使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOMである(カバト(Kabat)ら(前述))。例えば、KOLおよびNEWMは、重鎖に使用することができ、REIは、軽鎖に使用することができ、そしてEU、LAYおよびPOMは、重鎖と軽鎖の両方に使用することができる。あるいは、ヒト生殖細胞系配列を使用してもよい。軽鎖に好ましいフレームワーク領域は、図5に示されるヒト生殖細胞系のサブグループ配列(DPK9+JK1)である(配列番号17)。重鎖に好ましいフレームワーク領域は、図6に示されるヒトサブグループ配列(DP7+JH4)である(配列番号21)。
【0038】
本発明のCDR移植抗体において、アクセプター抗体として、ドナー抗体の鎖と相同的な鎖を有するものを使用することが好ましい。アクセプターの重鎖と軽鎖は、必ずしも同じ抗体から誘導される必要はなく、所望であれば異なる鎖から誘導されたフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでいてもよい。
【0039】
また、本発明のCDR移植抗体において、フレームワーク領域は、アクセプター抗体の配列と全く同じ配列を有する必要はない。例えば、そのアクセプター鎖のクラスまたはタイプにとって一般的でない残基を、より高い頻度で存在する残基に変えてもよい。あるいは、アクセプターフレームワーク領域内で選択された残基を、ドナー抗体の同じ位置に見い出される残基に対応するように、またはドナー抗体の同じ位置に見い出される残基への保存的置換である残基に対応するように変えてもよい。このような変更は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要な最小限に保つべきである。変える必要があるアクセプターフレームワーク領域において残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967に記載されている。
【0040】
好ましくは本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター軽鎖がヒトサブグループDPK9+JK1配列(図2に示される)(配列番号17)を有するならば、軽鎖のアクセプターフレームワーク領域は、2、4、37、38、45および60位にドナー残基を含み、そしてさらに3位にドナー残基を含んでいてもよい(カバト(Kabat)ら(前述)による)。
【0041】
好ましくは本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター重鎖がヒトDP7+JH4配列(図3に示される)(配列番号21)を有するならば、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1つまたはそれ以上のドナーCDRに加えて、1、28、48、71および93位にドナー残基を含むことを特徴とし、そしてさらに67および69位にドナー残基を含んでいてもよい(カバト(Kabat)(前述)による)。
【0042】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、元々CDRが誘導された抗体からの残基である。
【0043】
好ましくは本発明の抗体は、可変ドメインが、CDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2’[CD22抗原に対するキメラ5/44抗体の親和性を上昇させるために、可能なグリコシル化部位配列が除去されており、かつ好ましくはCDR−H2としてH2’として与えられる配列(配列番号13)を有する]を含む重鎖を含む。
【0044】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2”[CDR−H2内の露出部に位置し、かつ結合剤と反応することにより抗原結合親和性を低下させる能力を有すると考えられる60位のリジン残基が、別のアミノ酸の代わりに使用されている]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2”として与えられる配列(配列番号15)を有する。
【0045】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2'''[可能なグリコシル化部位配列と60位のリジン残基の両方が、別のアミノ酸に代わりに使用されている]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2'''として与えられる配列(配列番号16)を有する。
【0046】
本発明の抗体分子は、以下を含んでいてよい:完全長の重鎖と軽鎖を有する完全な抗体分子;Fab、修飾Fab、Fab’、F(ab’)2またはFv断片のような、その断片;軽鎖または重鎖モノマーまたはダイマー;1本鎖抗体、例えば、重鎖と軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーにより結合している1本鎖Fv。同様に、重鎖と軽鎖の可変領域は、適宜、他の抗体ドメインと組合せることができる。
【0047】
本発明の抗体分子は、これに結合したエフェクターまたはレポーター分子を有していてもよい。例えば、共有ブリッジ構造によりこれに結合している重金属原子をキレート化するための大環状化合物、又はリシンのような毒素を有していてもよい。あるいは、組換えDNA技術の手順を利用することにより、完全な免疫グロブリン分子のFc断片(CH2、CH3およびヒンジドメイン)、CH2とCH3ドメインまたはCH3ドメインが、ペプチド結合により置換されているか、または同結合によりそこに結合している抗体分子である、酵素または毒素分子のような機能性の非免疫グロブリンタンパク質を製造することができる。
【0048】
本発明の抗体分子は、好ましくは少なくとも0.85×10-10M、さらに好ましくは少なくとも0.75×10-10M、そして最も好ましくは少なくとも0.5×10-10Mの結合親和性を有する。
【0049】
好ましくは、本発明の抗体分子は、軽鎖可変ドメイン5/44−gL1(配列番号19)と重鎖可変ドメイン5/44−gH7(配列番号27)を含む。これらの軽鎖と重鎖の可変ドメインの配列は、それぞれ図5と6に示される。
【0050】
本発明はまた、CD22に対する親和性が改善された本発明の抗体分子の変種に関する。このような変種は、CDRの突然変異(ヤン(Yang)ら、J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、チェーン・シャッフリング(マークス(Marks)ら、Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、大腸菌(E. coli)のミューテーター株の使用(ロウ(Low)ら、J. Mol. Biol. 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(パッテン(Patten)ら、Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージ提示法(トンプソン(Thompson)ら、J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)およびセクシュアルPCR(クラメリ(Crameri)ら、Nature, 391, 288-291, 1998)を含む、幾つかの親和性成熟プロトコールにより入手することができる。ボーガン(Vaughan)ら(前述)は、親和性成熟のこれらの方法を考察している。
【0051】
本発明はまた、本発明の抗体分子の重鎖および/または軽鎖をコードするDNA配列を提供する。
【0052】
好ましくは、このDNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖または軽鎖をコードする。
【0053】
本発明のDNA配列は、(例えば、化学的処理により製造される)合成DNA、cDNA、ゲノムDNAまたはこれらの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0054】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の本発明のDNA配列を含むクローニングまたは発現ベクターに関する。好ましくは、このクローニングまたは発現ベクターは、それぞれ本発明の抗体分子の軽鎖と重鎖をコードする2つのDNA配列を含む。
【0055】
ベクターを作成することができる一般法であるトランスフェクション法と培養法は、当業者には周知である。この点に関しては「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、エフ・エム・アウスベル(F.M. Ausubel)(編)、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク、およびコールド・スプリング・ハーバー出版(Cold Spring Harbor Publishing)により出版されたマニアティス・マニュアル(Maniatis Manual)を参照されたい。
【0056】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者には周知の方法により入手することができる。例えば、抗体の重鎖と軽鎖の一部または全部をコードするDNA配列は、要望どおりに決定DNA配列から、または対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。
【0057】
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者には広く利用可能であり、そしてこれらの既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
【0058】
分子生物学の標準法を利用することにより、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製することができる。目的とするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成法を利用して、完全に、または部分的に合成することができる。部位特異的突然変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を、適宜利用することができる。
【0059】
任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために使用することができる。細菌(例えば大腸菌(E. coli))および他の微生物系は、部分的にはFabおよびF(ab’)2断片のような抗体断片、そして特にFv断片および1本鎖抗体断片、例えば1本鎖Fvの発現のために使用することができる。真核生物、例えば哺乳動物の宿主細胞発現系は、完全な抗体分子を含む、より大きな抗体分子の製造のために使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞には、CHO、骨髄腫またはハイブリドーマ細胞がある。
【0060】
本発明はまた、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現に適した条件下で、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養すること、および抗体分子を単離することを特徴とする、本発明の抗体分子の製造方法を提供する。
【0061】
この抗体分子は、重鎖または軽鎖ポリペプチドだけを含んでいてもよく、この場合、重鎖または軽鎖ポリペプチドだけをコードする配列を使用することにより、宿主細胞をトランスフェクトする必要がある。重鎖と軽鎖の両方を含む産物の製造には、細胞株は2つのベクター(軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクターと重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクター)でトランスフェクトされる。あるいは、軽鎖と重鎖ポリペプチドをコードする配列を含むベクターである、単一のベクターを使用してもよい。
【0062】
本発明はまた、本発明の抗体分子を、薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組合せて含む、治療用または診断用組成物を提供する。
【0063】
本発明はまた、本発明の抗体分子を、薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と混合することを特徴とする、治療用または診断用組成物の製造方法を提供する。
【0064】
この抗体分子は、治療用または診断用組成物の中で唯一の活性成分であっても、あるいは他の抗体成分(例えば、抗T細胞、抗IFNγまたは抗LPS抗体)またはキサンチン類のような非抗体成分を含む、他の活性成分を伴ってもよい。
【0065】
薬剤組成物は、好ましくは治療上有効量の本発明の抗体を含む。「治療上有効量」という用語は、本明細書において使用されるとき、標的とする疾患または症状を治療、改善または予防するために、あるいは検出可能な治療または予防効果を示すために必要な治療剤の量を意味する。任意の抗体について、治療上有効用量は、最初に細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常齧歯類、ウサギ、イヌ、ブタまたは霊長類)のいずれかにおいて推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与の経路を決定するために使用してもよい。そしてこのような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与の経路を決定するために使用することができる。
【0066】
ヒト対象に対する正確な有効量は、病状の重篤度、対象の全般的な健康度、対象の年齢、体重および性別、食習慣、投与の時間と頻度、薬剤併用、反応感度、および治療法に対する耐性/応答性に依存する。この量は日常的な実験により決定することができ、そして臨床医の判断の範囲内である。一般に有効用量は、0.01mg/kg〜50mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜20mg/kg、さらに好ましくは約15mg/kgであろう。
【0067】
組成物は、個別に患者に投与しても、または他の物質、薬物またはホルモンと組合せて投与してもよい。
【0068】
本発明の抗体分子が投与される用量は、処置すべき症状の性質、悪性リンパ腫または白血病の悪性度によって、また抗体分子が予防的に使用されるか、または存在する症状を治療するために使用されるかによって異なる。
【0069】
投与の頻度は、抗体分子の半減期およびその作用時間に依存しよう。抗体分子の半減期が短ければ(例えば、2〜10時間)、1日に1回またはそれ以上の投与が必要となろう。あるいは、抗体の半減期が長ければ(例えば、2〜15日間)、1日に1回、1週間に1回または場合によっては1ないし2ヶ月毎に1回の投与しか必要でないかもしれない。
【0070】
薬剤組成物はまた、抗体の投与のために薬剤学的に許容される担体を含んでいてもよい。担体はそれ自体が、組成物を投与される個人に有害な抗体の産生を誘導してはならず、また毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活化ウイルス粒子のような、大きくゆっくり代謝される高分子である。
【0071】
薬剤学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩のような鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩のような有機酸の塩を使用することができる。
【0072】
治療用組成物中の薬剤学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含んでいてもよい。さらに湿潤剤または乳化剤のような助剤物質が、このような組成物中に存在してもよい。このような担体により薬剤組成物を、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤および懸濁剤として処方することができる。
【0073】
投与に好ましい剤形は、非経口投与に適した剤形(例えば、注射または点滴による、例えばボーラス注射または持続点滴による)を含む。製品が注射または点滴用である場合、これは油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液の形をとってよく、そして懸濁剤、保存料、安定剤および/または分散剤のような処方用剤を含んでいてもよい。あるいは抗体分子は、使用前に適切な滅菌液体で復元するための乾燥剤形にしてもよい。
【0074】
一旦処方されると、本発明の組成物は対象に直接投与することができる。処置する対象は動物であってもよい。しかし組成物はヒト対象への投与に適合させるのが好ましい。
【0075】
本発明の薬剤組成物は、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、髄腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)(例えば、WO98/20734を参照のこと)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸内経路をはじめとする、あらゆる経路により投与することができる。本発明の薬剤組成物を投与するために、ハイポスプレーも使用することができる。典型的にはこの治療用組成物は、液体の溶液または懸濁液のいずれかとして、注射用として調製することができる。注射の前に液体ビヒクルに溶解または懸濁するための固体剤形もまた調製することができる。
【0076】
組成物の直接送達は、一般に、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内への注射により、あるいは組織の間質腔へ送達される注射により達成されよう。組成物はまた、病変部に投与することができる。投薬処置は、単回投与計画であってもまたは多回投与計画であってもよい。
【0077】
組成物中の活性成分が1つの抗体分子であることは理解されるであろう。それ自体が胃腸管内で分解を受けやすいであろう。すなわち組成物が胃腸管を利用する経路により投与されるなら、この組成物は抗体を分解から防御するが、一旦これが胃腸管から吸収されると、抗体を放出する物質を含む必要があろう。
【0078】
薬剤学的に許容される担体の網羅的な考察は、レミントンの製剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(マック出版社(Mack Publishing Company)、ニュージャージー州、1991年)にある。
【0079】
また、本発明の抗体が遺伝子治療の利用により投与されることも企図される。これを達成するために、抗体鎖がDNA配列から発現しかつその場で組立てられるように、適切なDNA成分の制御下で抗体分子の重鎖と軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入される。
【0080】
本発明はまた、CD22を発現する細胞が介在する疾患の治療に使用するための、本発明の抗体分子を提供する。
【0081】
本発明はさらに、CD22を発現する細胞が介在する疾患の治療用の医薬の製造における本発明の抗体分子の使用法を提供する。
【0082】
本発明の抗体分子は、ヒトまたは動物体内に存在する、CD22を発現する細胞のレベルを低下させることが望まれる、任意の療法に利用することができる。これらのCD22発現細胞は、体内を循環しているかまたは体内の特定部位に望ましくなく高レベルに局在している。例えば高レベルのCD22を発現する細胞は、B細胞リンパ腫および白血病に存在するであろう。本発明の抗体分子は、CD22を発現する細胞が介在する疾患の治療において利用することができる。
【0083】
本発明の抗体分子は、好ましくは悪性リンパ腫および白血病、最も好ましくはNHLの治療のために使用される。
【0084】
本発明はまた、CD22を発現する細胞が介在する障害に罹患しているか、そのリスクのあるヒトまたは動物対象の治療方法であって、対象に有効量の本発明の抗体分子を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0085】
本発明の抗体分子はまた、診断、例えば、CD22を発現する細胞が関わる病状のインビボ診断およびイメージングにも使用することができる。
【0086】
本発明はさらに、添付の図面を参照する以下の実施例において例示のためだけに説明される。
【0087】
発明の詳細な説明
実施例1:候補抗体の生成
以下の選択基準を利用して、CD22に対する抗体の一団をハイブリドーマから選択した:ダウディ(Daudi)細胞への結合、ダウディ細胞でのインターナリゼーション、末梢血単核細胞(PBMC)への結合、PBMCでのインターナリゼーション、親和性(10-9Mを超える)、マウスγ1および産生速度。5/44を好ましい抗体として選択した。
【0088】
実施例2:キメラ5/44抗体分子の遺伝子クローニングおよび発現
5/44ハイブリドーマ細胞の調製およびそこからのRNA調製
【0089】
ハイブリドーマ5/44は、ヒトCD22タンパク質でマウスを免疫後、従来のハイブリドーマ法により生成した。RNAは、5/44ハイブリドーマ細胞から、RNイージー(RNEasy)キット(キアゲン(Qiagen)、クローリー(Crawley)、英国;カタログ番号74106)を用いて調製した。得られたRNAは、後述するようにcDNAに逆転写した。
【0090】
NHL腫瘍でのCD22の分布
5/44抗CD22モノクローナル抗体を用いる染色の出現率と分布を調べるために免疫組織化学試験に着手した。腫瘍のB細胞領域を確認するために、試験には対照の抗CD20および抗CD79a抗体を含めた。
【0091】
全部で50個の腫瘍を試験して、ワーキング・フォーミュレーション(Working Formulation)分類およびREAL分類システムを用いることにより、これらを以下のとおり類別した:
【0092】
・ 7個 Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫(高/I)
・ 4個 B−CLL/小リンパ球性リンパ腫(低/A)
・ 3個 リンパ形質細胞様/免疫細胞腫(低/A)
・ 1個 外套細胞(中/F)
・ 14個 濾胞性リンパ腫(低〜中/D)
・ 13個 びまん性大細胞型リンパ腫(中〜高/G、H)
・ 6個 分類不能(K)
・ 2個 T細胞リンパ腫
【0093】
40個のB細胞リンパ腫は、5/44抗体では0.1μg/mlでCD22抗原に対して陽性であり、そして濃度が0.5μg/mlまで上昇すると、さらに6個が陽性になった。0.1μg/mlで陰性であった残り2個のB細胞腫瘍では、より高濃度で試験するには残った組織が不充分であった。しかし、5/44よりも強い染色が得られた、別のセルテック(Celltech)抗CD22抗体6/13による並行試験では、48個全部のB細胞リンパ腫がCD22に対して染色陽性になった。
【0094】
すなわち、CD22抗原は、B細胞リンパ腫で広く発現されており、よってNHLにおける免疫療法の適切な標的を与えると結論づけることができる。
【0095】
5/44VHおよびVLのPCRクローニング
5/44重鎖と軽鎖の可変ドメインをコードするcDNA配列は、逆転写酵素を用いて全RNA中に存在するmRNAの1本鎖cDNAコピーを生成させることにより合成した。次にこれを、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)(PCR)による特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてマウスV領域配列の増幅のための鋳型として使用した。
【0096】
a) cDNA合成
cDNAは、以下の試薬:50mMトリス−HCl(pH8.3)、75mM KCl、10mMジチオスレイトール、3mM MgCl2、0.5mMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、20単位のRNAsin、75ngランダムヘキサヌクレオチドプライマー、2μgの5/44RNAおよび200単位のマウスモロニー白血病ウイルス逆転写酵素を含む20μlの反応容量中で合成した。42℃で60分間インキュベート後、95℃で5分間加熱して、反応を停止させた。
【0097】
b) PCR
cDNAのアリコートを、重鎖と軽鎖に特異的なプライマーの組合せを用いるPCRにかけた。シグナルペプチドの保存配列とアニーリングするために設計された変性したプライマープールを前進プライマーとして使用した。これらの配列は全て、順に、5’末端から7ヌクレオチドで開始する制限部位(VLSFuI;VHHindIII)、生じたmRNAの最適な翻訳を可能にする配列:GCCGCCACC(配列番号50)、開始コドン、および既知のマウス抗体のリーダーペプチド配列に基づく20〜30ヌクレオチドを含む(カバト(Kabat)ら、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、1991年、米国保健社会福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)、公衆衛生局(Public Health Service)、国立衛生研究所(National Institutes of Health))。
【0098】
3’プライマーは、抗体のフレームワーク4 J−C接合部に及び、VLPCR断片のクローニングを促進するために酵素BsiWIの制限部位を含むように設計される。重鎖3’プライマーは、抗体のJ−C接合部に及ぶように設計された混合物である。この3’プライマーは、クローニングを促進するためにApaI制限部位を含む。プライマーの3’領域は、既知のマウス抗体に見い出された配列に基づく混合配列を含む(カバト(Kabat)ら、1991、前述)。
【0099】
上述のプライマーの組合せにより、VHとV1のPCR産物を適切な発現ベクター(以下を参照のこと)中に直接クローン化して、キメラ(マウス−ヒト)重鎖と軽鎖を産生することができ、そしてこれらの遺伝子を哺乳動物細胞で発現させて、目的のアイソタイプのキメラ抗体を産生することができる。
【0100】
PCRのためのインキュベーション(100μl)は以下のとおり設定した。各反応液は、10mMトリス−HCl(pH8.3)、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01%w/vゼラチン、0.25mM各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、10pmol 5’プライマー混合物、10pmol 3’プライマー、1μl cDNAおよび1単位Taqポリメラーゼを含有した。反応液を95℃で5分間インキュベートし、次に94℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間のサイクルにかけた。30サイクル後、各反応液のアリコートを、アガロースゲルで電気泳動して分析した。
【0101】
重鎖V領域については、フレームワークIの開始点内のプライマープールアニーリングが、シグナルペプチドプライマープールを置換すると、増幅DNA産物だけが得られた。この断片をDNA配列決定ベクター中にクローン化した。DNA配列を決定して翻訳することにより、推定アミノ酸配列が得られた。この推定配列は、実験的に求めたN末端タンパク質配列を参照することにより証明した。図2と3は、それぞれマウスモノクローナル抗体5/44の成熟軽鎖と重鎖のV領域のDNA/タンパク質配列を示す。
【0102】
c) PCR断片の分子クローニング
次にマウスV領域配列を、発現ベクターpMRR10.1およびpMRR14中にクローン化した(図7)。これらは、ヒトカッパ軽鎖とヒトガンマ−4重鎖の定常領域をコードするDNAを含む、それぞれ軽鎖と重鎖の発現用のベクターである。VL領域は、SfuIとBsiWI制限部位を用いて、配列決定ベクターからの制限消化と連結により、発現ベクター中にサブクローン化して、プラスミドpMRR10(544cL)を作成した。重鎖DNAは、5’プライマーを用いてPCRにより増幅することによりシグナルペプチドを導入したが、これは、異なる社内のハイブリドーマ(162と呼ばれる)からのマウス重鎖抗体リーダーを使用したクローニング方策では得られなかったためである。5’プライマーは、以下の配列を有する:
【0103】
5'GCGCGCAAGCTTGCCGCCACCATGGACTTCGGATTCTCTCTCGTGTTCCTGGCACTCATTCTCAAGGGAGTGCAGTGTGAGGTGCAGCTCGTCGAGTCTGG3' (配列番号1)
【0104】
逆進プライマーは、元々のVH遺伝子クローニングに使用したものと同一であった。生じたPCR産物を酵素のHindIIIとApaIで消化してサブクローン化し、そしてそのDNA配列を確認してプラスミドpMRR14(544cH)を作成した。CHO細胞への両方の発現ベクターの一過性同時トランスフェクションによって、キメラc5/44抗体を作成した。これは、リポフェクタミン試薬を製造業者のプロトコールにより用いて達成した(インビトロジェン:ライフテクノロジー(In Vitrogen:Life Technology)、フローニンゲン、オランダ、カタログ番号11668−027)。
【0105】
グリコシル化部位と反応性リジンの除去
可能なN結合グリコシル化部位配列は、アミノ酸配列N−Y−Tを有するCDR−H2に観察された(図3)。5/44およびその断片(Fabを含む)のゲルの、SDS−PAGE、ウェスタンブロッティングおよび炭水化物染色は、この部位が実際にグリコシル化されていることを示している(図示せず)。さらにリジン残基は、CDR−H2内の露出位置に観察されたが、これは、抗体が結合体形成しうる物質との結合体形成のための追加の部位を提供することにより、抗体の結合親和性を低下させる潜在力を有する。
【0106】
図4に示されるように、PCR方策を利用することにより、グリコシル化部位および/または反応性リジンを除去するために、CDR−H2配列中にアミノ酸置換を導入した。突然変異N55Q、T57AまたはT57Vをコードする前進プライマーを使用することにより、グリコシル化部位を除去し(図4)、そして置換K60Rを含む第4の前進プライマーを作成することにより、反応性リジン残基を除去した(図4)。フレームワーク4の逆進プライマーを、これらのPCR増幅のそれぞれにおいて使用した。PCR産物を酵素XbaIとApaIで消化して、pMRR14(544cH)(これもXbaIとApaIで切断)中に挿入することにより、これらの変異体をコードする発現プラスミドを作成した。N55Q、T57AおよびT57V突然変異は、アミノ酸配列をコンセンサスN−X−T/Sから変化させることにより、グリコシル化部位を切断するが、一方K60R突然変異は、潜在的に反応性のリジンを同様に正に荷電した残基のアルギニンで置換する。生じたcH変種プラスミドを、cLプラスミドと共に同時トランスフェクトすることにより、発現されたキメラ抗体変種を作成した。
【0107】
キメラ遺伝子の活性の評価
キメラ遺伝子の活性は、CHO細胞への一過性トランスフェクションにより評価した。
【0108】
c) ビアコア(BiaCore)分析による親和定数の決定
グリコシル化部位または反応性リジンを除去したキメラ5/44またはその変種の親和性は、CD22−mFc構築体への結合についてBIA法を用いて調査した。結果を図8に示す。全ての結合測定は、BIAコア(BIAcore)(登録商標)2000機器(ファルマシア・バイオセンサー(Pharmacia Biosensor AB)、ウプサラ、スウェーデン)で実施した。このアッセイは、固定化抗マウスFcを介したCD22mFcの捕捉により実施した。抗体は可溶性相に入れた。試料、標準物質、および対照(50ul)を固定化抗マウスFcに注入し、続いて可溶性相の抗体を加えた。各サイクル後に、表面を50ulの40mM HClで30ul/分で再生した。反応速度分析は、BIA評価3.1ソフトウェア(ファルマシア(Pharmacia))を用いて実施した。
【0109】
構築体T57Aのグリコシル化部位を除去すると、キメラ5/44に比較してオンレートがわずかに速くなりオフレートが有意に遅くなり、約5倍の親和性改善があった。N55Q突然変異は、親和性に影響しなかった。この結果は、炭水化物自体の除去が(N55Qの変化のように)恐らく結合に影響しないことを示唆するため、予想外であった。親和性の改善は、T57Aの変化でのみ観察された。1つの可能な説明は、炭水化物の存在に関わりなくトレオニンからアラニンへの変換で除去される57位のトレオニンが、負の作用を及ぼしているということである。アラニンのサイズが小さいことが重要であり、そしてトレオニンの負の作用がそのサイズに関係しているという仮説は、T57V突然変異を用いて得られた結果から支持される:57位のバリンでの置換は効果がない(結果は示していない)。
【0110】
K60R突然変異によるリジンの除去は、親和性に中立的効果であった、すなわちアルギニンの導入は、親和性を傷つけることなく可能な反応性部位を除去する。
【0111】
したがって、グリコシル化部位の除去および反応性リジンの除去のための突然変異は、両方ともヒト化設計に含まれた。
【0112】
実施例2:5/44のCDR移植
5/44抗体の重鎖と軽鎖の可変領域の遺伝子の分子クローニング、およびキメラ(マウス/ヒト)5/44抗体を産生するためのその使用を上記した。マウス5/44のVLおよびVHドメインのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ図2と3に示される(配列番号7と8)。この実施例は、アデア(Adair)ら(WO91/09967)の方法による、ヒトにおける潜在的な免疫原性を低下させるためのヒトフレームワークへの5/44抗体のCDR移植を説明する。
【0113】
5/44軽鎖のCDR移植
ヒトサブグループIカッパ軽鎖V領域からのコンセンサス配列とのタンパク質配列の整列は、64%の配列同一性を示した。その結果、CDR移植軽鎖を作成するために選択したアクセプターフレームワーク領域は、ヒトVKサブグループI生殖細胞系O12、DPK9配列のものに対応した。フレームワーク4のアクセプター配列は、ヒトJ領域生殖細胞系配列JK1から誘導した。
【0114】
マウス5/44のフレームワーク領域のアミノ酸配列とアクセプター配列との比較は図5に示し、ドナーとアクセプター鎖の間に27個の違いがあることを示している。各位置で、パッキングに及ぼす作用、またはVH/VL界面での作用を介して直接または間接に抗原結合に寄与するマウス残基の可能性について分析を行った。マウス残基が重要であり、かつサイズ、極性または電荷に関してヒト残基と充分に異なると考えられたならば、そのマウス残基は保持した。この分析に基づき配列番号19と配列番号20(図5)に与えられる配列を有する、2つのバージョンのCDR移植軽鎖を作成した。
【0115】
5/44重鎖のCDR移植
5/44重鎖のCDR移植は、軽鎖に関して記述されたものと同じ方策を用いて行った。5/44重鎖のVドメインは、サブグループIに属するヒト重鎖と相同である(70%の配列同一性)ことが見い出されたため、ヒトサブグループI生殖細胞系フレームワークVH1−3、DP7の配列をアクセプターフレームワークとして使用した。フレームワーク4アクセプター配列は、ヒトJ領域生殖細胞系配列JH4から誘導した。
【0116】
5/44重鎖とフレームワーク領域との比較を図6に示すが、これは、5/44重鎖がアクセプター配列と22個の位置で異なることを示す。これらのいずれかが抗原結合に及ぼす寄与の分析によって、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27に与えられる配列を有する5つのバージョンのCDR移植重鎖を構築した(図6)。
【0117】
移植配列のための遺伝子の構築
遺伝子は、移植配列gH1とgL1をコードするように設計し、一連の重複オリゴヌクレオチドを設計し構築した(図9)。PCR組立法を利用することにより、CDR移植V領域遺伝子を作成した。10mMトリス−HCl(pH8.3)、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.001%ゼラチン、0.25mM各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、1pmol各「内部」プライマー(T1、T2、T3、B1、B2、B3)、10pmol各「外部」プライマー(F1、R1)、および1単位のTaqポリメラーゼ(アンプリTaq(AmpliTaq)、アプライド・バイオシステムズ(Applied BioSystems)、カタログ番号N808−0171)を含む、100ulの反応容量を設定した。PCRサイクルパラメータは、94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分を30サイクルであった。次に反応産物を1.5%アガロースゲルに流して、切り出し、キアゲン(QIAGEN)スピンカラム(QIAクイック(QIAquick)ゲル抽出キット、カタログ番号28706)を用いて回収した。DNAを30μlの容量で溶出した。次にgH1とgL1 DNAのアリコート(1μl)を、インビトロジェン(InVitrogen)TOPO TAクローニングベクターpCR2.1 TOPO(カタログ番号K4500−01)中に製造業者の説明書によってクローン化した。この非発現ベクターは、多数のクローンの配列決定を促進するためのクローニング中間体の役目を果たした。ベクター特異的プライマーを用いるDNA配列決定を使用することにより、gH1とgL1を含む誤りのないクローンを同定して、プラスミドpCR2.1(544gH1)とpCR2.1(544gL1)を作成した(図10)。
【0118】
オリゴヌクレオチドカセット置換法を使用することにより、ヒト化移植片gH4、5、6および7、並びにgL2を作成した。図11は、オリゴヌクレオチドカセットの設計図を示す。各変種を作成するために、ベクター(pCR2.1(544gH1)またはpCR2.1(544gL1))を、記載のように制限酵素で切断した(重鎖にはXmaI/SacII、軽鎖にはXmaI/BstEII)。大きなベクター断片をアガロースからゲル精製して、オリゴヌクレオチドカセットとの連結に使用した。これらのカセットは、2個の相補的オリゴヌクレオチドからなり(図11に示される)、0.5PMOL/ΜLの濃度で200ΜLの容量(12.5MMトリス−HCL(PH7.5)、2.5MM MgCl2、25mM NaCl、0.25mMジチオエリトリトール)中で混合される。アニーリングは、水浴(容量500ml)中で3分間95℃まで加熱し、次に反応液を室温までゆっくり冷却させることにより行った。次にアニーリングしたオリゴヌクレオチドカセットを水で10倍希釈し、次いで適切に切断したベクター中に連結した。DNA配列決定を利用することにより正しい配列を確認して、プラスミドpCR2.1(5/44−gH4−7)とpCR2.1(5/44−gL2)を作成した。次に証明した移植配列を発現ベクターpMRR14(重鎖)とpMR10.1(軽鎖)中にサブクローン化した。
【0119】
CDR移植配列のCD22結合活性
移植変種をコードするベクターを、元々のキメラ抗体鎖と一緒に種々の組合せでCHO細胞中に同時トランスフェクトした。結合活性は、元々のマウス5/44抗体の結合をラモス(Ramos)細胞(ATCCから入手;表面CD22を発現するバーキット(Burkitt's)リンパ腫リンパ芽球ヒト細胞株)への結合に関して競合させて、競合アッセイで比較した。このアッセイは、移植片をその細胞表面CD22に結合する能力において比較するための最良の方法と考えられた。結果を図8に示す。明らかなように、移植片のいずれの間にもほとんど差がなく、全てがマウスの親に対する競合でキメラより有効に奏効する。CDR−H3(gH5とgH7)の末端に3個の追加のヒト残基を導入しても、結合に影響はないようである。
【0120】
最小数のマウス残基との移植片の組合せ(gL1gH7)を選択した。軽鎖移植片gL1は6個のドナー残基を有する。残基V2、V4、L37およびQ45は、潜在的に重要なパッキング残基である。残基H38は、VH/VL界面に位置する。残基D60はCDR−L2に近い表面残基であり、抗原結合に直接寄与しうる。これらの残基の中でV2、L37、Q45およびD60は、他のサブグループからのヒトカッパ遺伝子の生殖細胞系配列において見い出される。重鎖移植片gH7は、4個のドナーフレームワーク残基を有する[残基R28は、CDR移植において使用した構造定義下のCDR−H1の一部と考えられる(アデア(Adair)ら(1991年、WO91/09967)を参照のこと]。残基E1とA71は、CDRに近い表面残基である。残基I48は潜在的なパッキング残基である。残基T93はVH/VL界面に存在する。これらの残基の中で、E1とA71はヒトサブグループIの他の生殖細胞系遺伝子に見い出される。残基I48はヒト生殖細胞系サブグループ4に見い出され、そしてT73はヒト生殖細胞系サブグループ3に見い出される。
【0121】
軽鎖と重鎖両方の完全長DNAおよびタンパク質配列は、ベクターにより提供される定常領域遺伝子内のイントロンのおよその位置を含めて図13に示し、そして軽鎖についてはそれぞれ配列番号29と配列番号28に、そして重鎖についてはそれぞれ配列番号31と配列番号30に与えられる。
【0122】
これらの軽鎖と重鎖遺伝子をコードするDNAを、これらのベクターから切り出した。重鎖DNAは、5’HindIII部位で消化し、次に大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)断片で処理することにより、5’平滑末端を作成した。3’EcoRI部位での切断によりアガロースゲルから精製して、重鎖断片が得られた。同じ方法で軽鎖断片を製造して、5’SFuI部位および3’EcoRI部位で平滑処理した。両方の断片をDHFRに基づく発現ベクター中にクローン化して、CHO細胞に安定な細胞株を作成するために使用した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bリンパ球抗原であるCD22の抗原決定基に対する特異性を有する抗体分子に関する。本発明はまた、この抗体分子の治療的使用とこの抗体分子の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の抗体分子には、2つの重鎖と2つの軽鎖がある。各重鎖と各軽鎖は、そのN末端に可変ドメインを有する。各可変ドメインは、3つの相補性決定領域(CDR)が交互に存在する4つのフレームワーク領域(FR)からなる。可変ドメイン中の残基は通常、カバト(Kabat)らが作成したシステムに従って番号付けがされている。このシステムは、カバト(Kabat)ら、1987、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、米国保健社会福祉省(US Department of Health and Human Services、NIH、USA(以後「カバト(Kabat)ら(前述)」)に記載されている。特に明記しない場合は、本明細書におけるこの番号付けシステムが使用されている。
【0003】
カバト(Kabat)残基表記法は、アミノ酸残基の線形の番号付けと必ずしも直接相関しない。実際の線形のアミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであってもCDRであっても、構造成分の短縮またはそこへの挿入に対応して、厳密なカバト(Kabat)番号付け中より、少ないまたは多いアミノ酸を有する。ある抗体について残基の正しいカバト(Kabat)番号付けは、抗体の配列の相同性の残基を「標準的」カバト(Kabat)番号付け配列と整列することにより、決定される。
【0004】
カバト(Kabat)番号付けに従うと、重鎖可変ドメインのCDRは、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)および残基95〜102(CDR−H3)に位置する。
【0005】
カバト(Kabat)番号付けに従うと、軽鎖可変ドメインのCDRは、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)および残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
【0006】
CDR移植抗体の構築は、ヨーロッパ特許出願EP−A−0239400に記載されており、これは、部位特異的突然変異誘発により長いオリゴヌクレオチドを使用して、マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト免疫グロブリンの可変ドメインのフレームワーク領域に移植される方法を開示する。CDRは抗体の抗体結合特異性を決定し、可変ドメインのフレームワーク領域上にある比較的短いペプチド配列である。
【0007】
CDR移植によりモノクローナル抗体をヒト化する初期の研究は、合成抗原(例えばNP)を認識するモノクローナル抗体について行われた。しかし、リゾチームを認識するマウスモノクローナル抗体と、ヒトT細胞上の抗原を認識するラットモノクローナル抗体が、CDR移植によりヒト化された例が、それぞれベルホーエン(Verhoeyen)ら(Science, 239, 1534-1536, 1988)と、リーチマン(Riechmann)ら(Nature, 332, 323-324, 1988)により記載されている。
【0008】
リーチマン(Riechmann)らは、CDR単独の移動[カバト(Kabat)(カバト(Kabat)ら(前述)、およびウー(Wu)ら、J. Exp. Med., 132, 211-250, 1970)]は、CDR移植生成物の充分な抗原結合活性を提供するのに充分ではないことを見いだした。多くのフレームワーク残基は、これらが供与体フレームワーク領域のものに対応するように、改変されなければならないことがわかった。改変することが必要なフレームワーク残基を選択するための基準は、国際特許出願WO90/07861に記載されている。
【0009】
CDR移植抗体を記載する多くの総説が公表されており、例えばボーガン(Vaughan)ら(Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998)がある。
【0010】
悪性リンパ腫は、多様な群の新生物である。大部分の症例は老人である。非ホジキンリンパ腫(NHL)は、現在米国に200,000〜250,000人の患者がいる疾患である。これは、米国で2番目に増加率の高い癌であり、毎年約55,000症例の速度で増加している。この発症頻度は、人口の高齢化や既知の危険因子への暴露のみでは説明されない速度で上昇している。
【0011】
リンパ腫の分類は複雑であり、過去数十年間に漸進的に変化してきた。1994年に改訂ヨーロッパ−アメリカリンパ腫(REAL)分類が導入された。この分類は、B細胞のリンパ腫(最も頻繁に見つかる)、T細胞のリンパ腫、および分類不可能な起源のリンパ腫とを、認められたサブタイプに分類している。日々の診療において、一般的な組織学的外観に基づくNHLの群別の低、中および高グレードへの分類は、その臨床的挙動を広く反映する。
【0012】
NHLは主にリンパ節を冒すが、個々の患者ではこの腫瘍は、体の他の部位(例えば、肝臓、脾臓、骨髄、肺、消化管および皮膚)が関与する。この疾患は通常、無痛のリンパ節の腫脹を示す。リンパ節外リンパ腫は最も頻繁に消化管を冒すが、ほとんどすべての臓器の初期リンパ腫が報告されている。全身症状には、発熱、発汗、疲労、および体重減少がある。
【0013】
最近まで、完全に疾患の解剖学的程度に基づくアンアーバー(Ann Arbor)ステージ分類システムが、NHLの治療の主要な決定因子であった。この情報は、追加の予後指標(年齢、血清乳酸脱水素酵素レベル、および動作状態を含む)を取り込むことにより改良される。それでも、アンアーバー(Ann Arbor)ステージ分類システムは、腫瘍の組織学的および免疫学的サブタイプとともに治療の主要な決定因子である。
【0014】
低グレードNHLは、無痛性の経過をたどり、患者のメジアン生存期間は8〜10年である。生存は現在利用可能な治療法によりほとんど影響を受けないが、局所的疾患の放射線照射や全身性症状の化学療法は、患者のクオリティオブライフを改善する。疾患の再発には併用化学療法がある。中グレードの疾患と特に高グレードの疾患には、緊急の治療が必要である。非常に大きい疾患の患者では放射線療法が、有効な治療法である。多くの異なる化学療法が使用されており、半分以上の患者で長期の疾患の無い生存が得られている。高用量治療は最初、再発性または抵抗性疾患の患者について導入されたが、現在は低リスク疾患の患者について第一線の治療法としてますます利用されている。ますます攻撃的になっている治療法の最近の傾向は、NHL患者の高齢と相対的弱質に対してバランスを取らなければならず、各患者の疾患の個々の予後に治療の毒性を一致させる必要がある。
【0015】
より有効で良好に許容される改善された治療が必要である。最近導入されたものには、併用療法への取り込みが増加している新しい細胞障害性薬剤、および抗体ベースの治療法の導入がある。
【0016】
非ホジキンリンパ腫は、一連のB細胞リンパ球を包含する。すなわちB細胞抗原は、抗体治療法の適当な標的である。
【0017】
CD22は、シアロアドヘシン(sialoadhesin)と呼ぶシアル酸結合タンパク質の群に属する135kDaの膜糖タンパク質である。これは、B細胞発生の初期に細胞質中で検出され、IgDと同時に細胞表面上に出現し、ほとんどの成熟B細胞上に見いだされる。B細胞活性化により発現が上昇する。最終分化によりCD22は失われ、一般に植物細胞上には存在しないと報告されている。すなわちこのインターナライズ性抗原は、プレB細胞と成熟B細胞の表面には存在するが、幹細胞または植物細胞には存在しない。
【0018】
ヒトではCD22の2つのアイソフォームが存在する。優勢な型(CD22β)は、細胞外領域中に7つの免疫グロブリン様(Ig様)ドメインを含有する。CD22α変種は、Ig様ドメイン4が欠如し、末端切断型の細胞質ドメインを有する。単球、好中球、リンパ球および赤血球へのCD22接着を阻止する抗体は、第1または第2のIg様ドメイン内で結合することが証明されている。
【0019】
CD22の細胞障害性ドメインは、B細胞抗原受容体の結合によりチロシンリン酸化され、Lyk、Sykおよびホスファチジルイノシトール3−キナーゼと結合する。CD22の機能は、B細胞活性化閾値を下方に調節することである。これはまた、適切なシアログリコ結合体を有する細胞との相互作用を介して細胞接着を仲介する。
CD22はほとんどのB細胞白血病とリンパ腫[NHL、急性リンパ性白血病(B−ALL)、慢性リンパ性白血病(B−CLL)、および特に急性非リンパ性白血病(ANLL)を含む]で発現される。
【0020】
CD22に対するモノクローナル抗体は、先行技術で記載されている。WO98/41641は、VH44とVL100にシステイン残基を有する組換え抗CD22抗体を記載する。WO96/04925は、抗CD22抗体LL2のVHとVL領域を記載する。US5686072は、抗CD22と抗CD19免疫毒素の併用を記載する。WO98/42378は、B細胞悪性腫瘍の治療のために裸の抗CD22抗体の使用を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
多くの抗体ベースの治療薬がライセンス化[例えばリツキサン(Rituxan)、(CD20に特異的な非標識キメラヒトγ1(+mγ1V領域))]されているか、またはこの疾患のために臨床治験中である。これらは、B細胞の補体性もしくはADCC性死滅、または放射性核種(例えば131Iまたは90Y)(これらは臨床家と患者にとって、関連する調製と使用の問題がある)の使用に依存する。繰り返し使用でき、容易にかつ効率的に製造できるNHLを治療するための抗体分子に対するニーズがある。また、CD22に対して高い親和性を有し、ヒトでの免疫原性の低い抗体分子に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様において本発明は、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−H1について図1にH1として示す配列(配列番号1)、CDR−H2について、図1にH2として示す配列(配列番号2)または可能なグリコシル化部位が除去されているH2、60位(カバト(Kabat)の番号付けシステムに従って)のリジン残基が別のアミノ酸で置換されているH2、またはグリコシル化部位と60位の反応性リジンの両方が除去されているH2として示す配列、またはCDR−H3について図1(配列番号3)にH3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む、重鎖を含んでなる上記抗体分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、マウスモノクローナル抗体5/44のCDRのアミノ酸配列を示す(配列番号1〜6)。
【図2】図2は、マウスモノクローナル抗体5/44の軽鎖可変ドメインの完全な配列を示す。
【図3】図3は、マウスモノクローナル抗体5/44の重鎖可変ドメインの完全な配列を示す。
【図4】図4は、CDR−H2におけるグリコシル化部位および反応性リジンの除去のための方策を示す。
【図5】図5は、5/44軽鎖配列のための移植設計図を示す。
【図6】図6は、5/44重鎖配列のための移植設計図を示す。
【図7】図7は、ベクター:pMRR14およびpMRR10.1を示す。
【図8】図8は、キメラ5/44変異体のビアコア(Biacore)アッセイ結果を示す。
【図9A】図9Aは、5/44gH1およびgL1遺伝子組立体のためのオリゴヌクレオチドを示す。
【図9B】図9Bは、5/44gH1およびgL1遺伝子組立体のためのオリゴヌクレオチドを示す。
【図10】図10は、中間体ベクター:pCR2.1(544gH1)およびpCR2.1(544gL1)を示す。
【図11】図11は、さらに別の移植片を作るために使用したオリゴヌクレオチドカセットを示す。
【図12】図12は、蛍光標識マウス5/44抗体と移植変種との間の競合アッセイを示す。
【図13A】図13Aは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13B】図13Bは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13C】図13Cは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13D】図13Dは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13E】図13Eは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【図13F】図13Fは、移植重鎖と軽鎖の完全長DNAおよびタンパク質配列を示す。
【0024】
本発明の第1の態様の抗体分子は、重鎖可変ドメインについてH1、H2およびH3(配列番号1、配列番号2,および配列番号3)から選択される少なくとも1つのCDRを含む。好ましくは抗体分子は、重鎖可変ドメインに少なくとも2つ以上、好ましくは3つのCDRを含む。
【0025】
本発明の第2の態様において、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−L1について図1にL1として示す配列(配列番号4)、CDR−L2について図1にL2として示す配列(配列番号5)またはCDR−L3について図1(配列番号6)にL3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む、軽鎖を含んでなる上記抗体分子が提供される。
【0026】
本発明の第2の態様の抗体分子は、軽鎖可変ドメインについてL1、L2およびL3(配列番号4、配列番号5、および配列番号6)から選択される少なくとも1つのCDRを含む。好ましくは抗体分子は、軽鎖可変ドメインに少なくとも2つ以上、好ましくは3つのCDRを含む。
本発明の第1と第2の態様の抗体分子は、好ましくはそれぞれ相補的軽鎖または相補的重鎖を有する。
【0027】
好ましくは本発明の第1と第2の態様の抗体分子は、可変ドメインが、CDR−H1について図1にH1として示す配列(配列番号1)、CDR−H2について図1にH2として示す配列(配列番号2)または可能なグリコシル化部位が除去されているH2、60位(カバト(Kabat)の番号付けシステムに従って)のリジン残基が別のアミノ酸で置換されているH2、またはグリコシル化部位と60位の反応性リジンの両方が除去されているH2として示す配列、またはCDR−H3について図1(配列番号3)にH3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む重鎖と、可変ドメインが、CDR−L1について図1にL1として示す配列(配列番号4)、CDR−L2について図1にL2として示す配列(配列番号5)またはCDR−L3について図1(配列番号6)にL3として示す配列を有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む軽鎖とを含む。
【0028】
配列番号1〜6に示し上記で図1に示すCDRは、マウスモノクローナル抗体5/44から得られる。
【0029】
マウス5/44抗体の可変ドメインの完全な配列を、図2(軽鎖)(配列番号7)と図3(重鎖)(配列番号8)に示す。このマウス抗体はまた、以下で「ドナー抗体」または「マウスモノクローナル抗体」と呼ばれる。
【0030】
本発明の第1と第2の態様の最初の好ましい別の実施態様は、それぞれ図2(配列番号7)と図3(配列番号8)に示される軽鎖と重鎖の可変ドメイン配列を有するマウスモノクローナル抗体5/44である。5/44の軽鎖の定常領域はカッパであり、そして重鎖の定常領域はIgG1である。
【0031】
第2の好ましい別の実施態様において、本発明の第1と第2の態様のいずれかの抗体はキメラマウス/ヒト抗体分子であり、本明細書ではキメラ5/44抗体分子と呼ぶ。このキメラ抗体分子は、マウスモノクローナル抗体5/44の可変ドメイン(配列番号7と8)とヒト定常ドメインを含む。好ましくは、キメラ5/44抗体分子は、軽鎖にヒトCカッパドメイン(ヒーター(Hieter)ら、Cell, 22, 197-207, 1980;ジーンバンク(Genebank)受け入れ番号J00241)と、重鎖に(場合により241位のセリン残基がプロリン残基により置換されている)ヒトガンマ4ドメイン(フラナガン(Flanagan)ら、Nature, 300, 709-713, 1982)を含む。
【0032】
好ましくは本発明の抗体は、可変ドメインが、CDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2’[可能なグリコシル化部位配列が除去されており、かつCD22抗原に対するキメラ5/44抗体の親和性を予想外に上昇させ、かつ好ましくはCDR−H2としてH2’として与えられる配列(配列番号13)を有する]を含む重鎖を含む。
【0033】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2”[CDR−H2内の露出部に位置し、かつ結合剤と反応することにより抗原結合親和性を低下させる能力を有すると考えられる60位のリジン残基が、別のアミノ酸の代わりに使用され、保存性置換となる]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2”として与えられる配列(配列番号15)を有する。
【0034】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2'''[可能なグリコシル化部位配列と60位のリジン残基の両方が、別のアミノ酸の代わりに使用されている]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2'''として与えられる配列(配列番号16)を有する。
【0035】
第3の好ましい別の実施態様では、本発明の第1と第2の態様のいずれかの抗体は、CDR移植抗体分子である。「CDR移植抗体分子」という用語は、本明細書において使用されるとき、重鎖および/または軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖および/または軽鎖の可変領域フレームワークに移植された、ドナー抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)由来の1つまたはそれ以上のCDR(所望であれば、修飾CDRを含む)を含む、抗体分子を意味する。
【0036】
好ましくは、このようなCDR移植抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域と、さらには1つまたはそれ以上の前記のドナーCDRを含む、可変ドメインを有する。
【0037】
CDRが移植されると、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/タイプに関する、マウス、霊長類およびヒトフレームワーク領域を含む、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列を使用することができる。本発明において使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOMである(カバト(Kabat)ら(前述))。例えば、KOLおよびNEWMは、重鎖に使用することができ、REIは、軽鎖に使用することができ、そしてEU、LAYおよびPOMは、重鎖と軽鎖の両方に使用することができる。あるいは、ヒト生殖細胞系配列を使用してもよい。軽鎖に好ましいフレームワーク領域は、図5に示されるヒト生殖細胞系のサブグループ配列(DPK9+JK1)である(配列番号17)。重鎖に好ましいフレームワーク領域は、図6に示されるヒトサブグループ配列(DP7+JH4)である(配列番号21)。
【0038】
本発明のCDR移植抗体において、アクセプター抗体として、ドナー抗体の鎖と相同的な鎖を有するものを使用することが好ましい。アクセプターの重鎖と軽鎖は、必ずしも同じ抗体から誘導される必要はなく、所望であれば異なる鎖から誘導されたフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでいてもよい。
【0039】
また、本発明のCDR移植抗体において、フレームワーク領域は、アクセプター抗体の配列と全く同じ配列を有する必要はない。例えば、そのアクセプター鎖のクラスまたはタイプにとって一般的でない残基を、より高い頻度で存在する残基に変えてもよい。あるいは、アクセプターフレームワーク領域内で選択された残基を、ドナー抗体の同じ位置に見い出される残基に対応するように、またはドナー抗体の同じ位置に見い出される残基への保存的置換である残基に対応するように変えてもよい。このような変更は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要な最小限に保つべきである。変える必要があるアクセプターフレームワーク領域において残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967に記載されている。
【0040】
好ましくは本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター軽鎖がヒトサブグループDPK9+JK1配列(図2に示される)(配列番号17)を有するならば、軽鎖のアクセプターフレームワーク領域は、2、4、37、38、45および60位にドナー残基を含み、そしてさらに3位にドナー残基を含んでいてもよい(カバト(Kabat)ら(前述)による)。
【0041】
好ましくは本発明のCDR移植抗体分子において、アクセプター重鎖がヒトDP7+JH4配列(図3に示される)(配列番号21)を有するならば、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1つまたはそれ以上のドナーCDRに加えて、1、28、48、71および93位にドナー残基を含むことを特徴とし、そしてさらに67および69位にドナー残基を含んでいてもよい(カバト(Kabat)(前述)による)。
【0042】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、元々CDRが誘導された抗体からの残基である。
【0043】
好ましくは本発明の抗体は、可変ドメインが、CDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2’[CD22抗原に対するキメラ5/44抗体の親和性を上昇させるために、可能なグリコシル化部位配列が除去されており、かつ好ましくはCDR−H2としてH2’として与えられる配列(配列番号13)を有する]を含む重鎖を含む。
【0044】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2”[CDR−H2内の露出部に位置し、かつ結合剤と反応することにより抗原結合親和性を低下させる能力を有すると考えられる60位のリジン残基が、別のアミノ酸の代わりに使用されている]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2”として与えられる配列(配列番号15)を有する。
【0045】
あるいはまたはさらに本発明の抗体は、可変ドメインがCDR−H2(カバト(Kabat)ら(前述)による定義に同じ)としてH2'''[可能なグリコシル化部位配列と60位のリジン残基の両方が、別のアミノ酸に代わりに使用されている]を含む重鎖を含んでいてもよい。好ましくはCDR−H2は、H2'''として与えられる配列(配列番号16)を有する。
【0046】
本発明の抗体分子は、以下を含んでいてよい:完全長の重鎖と軽鎖を有する完全な抗体分子;Fab、修飾Fab、Fab’、F(ab’)2またはFv断片のような、その断片;軽鎖または重鎖モノマーまたはダイマー;1本鎖抗体、例えば、重鎖と軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーにより結合している1本鎖Fv。同様に、重鎖と軽鎖の可変領域は、適宜、他の抗体ドメインと組合せることができる。
【0047】
本発明の抗体分子は、これに結合したエフェクターまたはレポーター分子を有していてもよい。例えば、共有ブリッジ構造によりこれに結合している重金属原子をキレート化するための大環状化合物、又はリシンのような毒素を有していてもよい。あるいは、組換えDNA技術の手順を利用することにより、完全な免疫グロブリン分子のFc断片(CH2、CH3およびヒンジドメイン)、CH2とCH3ドメインまたはCH3ドメインが、ペプチド結合により置換されているか、または同結合によりそこに結合している抗体分子である、酵素または毒素分子のような機能性の非免疫グロブリンタンパク質を製造することができる。
【0048】
本発明の抗体分子は、好ましくは少なくとも0.85×10-10M、さらに好ましくは少なくとも0.75×10-10M、そして最も好ましくは少なくとも0.5×10-10Mの結合親和性を有する。
【0049】
好ましくは、本発明の抗体分子は、軽鎖可変ドメイン5/44−gL1(配列番号19)と重鎖可変ドメイン5/44−gH7(配列番号27)を含む。これらの軽鎖と重鎖の可変ドメインの配列は、それぞれ図5と6に示される。
【0050】
本発明はまた、CD22に対する親和性が改善された本発明の抗体分子の変種に関する。このような変種は、CDRの突然変異(ヤン(Yang)ら、J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、チェーン・シャッフリング(マークス(Marks)ら、Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、大腸菌(E. coli)のミューテーター株の使用(ロウ(Low)ら、J. Mol. Biol. 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(パッテン(Patten)ら、Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージ提示法(トンプソン(Thompson)ら、J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)およびセクシュアルPCR(クラメリ(Crameri)ら、Nature, 391, 288-291, 1998)を含む、幾つかの親和性成熟プロトコールにより入手することができる。ボーガン(Vaughan)ら(前述)は、親和性成熟のこれらの方法を考察している。
【0051】
本発明はまた、本発明の抗体分子の重鎖および/または軽鎖をコードするDNA配列を提供する。
【0052】
好ましくは、このDNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖または軽鎖をコードする。
【0053】
本発明のDNA配列は、(例えば、化学的処理により製造される)合成DNA、cDNA、ゲノムDNAまたはこれらの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0054】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の本発明のDNA配列を含むクローニングまたは発現ベクターに関する。好ましくは、このクローニングまたは発現ベクターは、それぞれ本発明の抗体分子の軽鎖と重鎖をコードする2つのDNA配列を含む。
【0055】
ベクターを作成することができる一般法であるトランスフェクション法と培養法は、当業者には周知である。この点に関しては「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、エフ・エム・アウスベル(F.M. Ausubel)(編)、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク、およびコールド・スプリング・ハーバー出版(Cold Spring Harbor Publishing)により出版されたマニアティス・マニュアル(Maniatis Manual)を参照されたい。
【0056】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者には周知の方法により入手することができる。例えば、抗体の重鎖と軽鎖の一部または全部をコードするDNA配列は、要望どおりに決定DNA配列から、または対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。
【0057】
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者には広く利用可能であり、そしてこれらの既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
【0058】
分子生物学の標準法を利用することにより、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製することができる。目的とするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成法を利用して、完全に、または部分的に合成することができる。部位特異的突然変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を、適宜利用することができる。
【0059】
任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために使用することができる。細菌(例えば大腸菌(E. coli))および他の微生物系は、部分的にはFabおよびF(ab’)2断片のような抗体断片、そして特にFv断片および1本鎖抗体断片、例えば1本鎖Fvの発現のために使用することができる。真核生物、例えば哺乳動物の宿主細胞発現系は、完全な抗体分子を含む、より大きな抗体分子の製造のために使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞には、CHO、骨髄腫またはハイブリドーマ細胞がある。
【0060】
本発明はまた、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現に適した条件下で、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養すること、および抗体分子を単離することを特徴とする、本発明の抗体分子の製造方法を提供する。
【0061】
この抗体分子は、重鎖または軽鎖ポリペプチドだけを含んでいてもよく、この場合、重鎖または軽鎖ポリペプチドだけをコードする配列を使用することにより、宿主細胞をトランスフェクトする必要がある。重鎖と軽鎖の両方を含む産物の製造には、細胞株は2つのベクター(軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクターと重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクター)でトランスフェクトされる。あるいは、軽鎖と重鎖ポリペプチドをコードする配列を含むベクターである、単一のベクターを使用してもよい。
【0062】
本発明はまた、本発明の抗体分子を、薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組合せて含む、治療用または診断用組成物を提供する。
【0063】
本発明はまた、本発明の抗体分子を、薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と混合することを特徴とする、治療用または診断用組成物の製造方法を提供する。
【0064】
この抗体分子は、治療用または診断用組成物の中で唯一の活性成分であっても、あるいは他の抗体成分(例えば、抗T細胞、抗IFNγまたは抗LPS抗体)またはキサンチン類のような非抗体成分を含む、他の活性成分を伴ってもよい。
【0065】
薬剤組成物は、好ましくは治療上有効量の本発明の抗体を含む。「治療上有効量」という用語は、本明細書において使用されるとき、標的とする疾患または症状を治療、改善または予防するために、あるいは検出可能な治療または予防効果を示すために必要な治療剤の量を意味する。任意の抗体について、治療上有効用量は、最初に細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常齧歯類、ウサギ、イヌ、ブタまたは霊長類)のいずれかにおいて推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与の経路を決定するために使用してもよい。そしてこのような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与の経路を決定するために使用することができる。
【0066】
ヒト対象に対する正確な有効量は、病状の重篤度、対象の全般的な健康度、対象の年齢、体重および性別、食習慣、投与の時間と頻度、薬剤併用、反応感度、および治療法に対する耐性/応答性に依存する。この量は日常的な実験により決定することができ、そして臨床医の判断の範囲内である。一般に有効用量は、0.01mg/kg〜50mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜20mg/kg、さらに好ましくは約15mg/kgであろう。
【0067】
組成物は、個別に患者に投与しても、または他の物質、薬物またはホルモンと組合せて投与してもよい。
【0068】
本発明の抗体分子が投与される用量は、処置すべき症状の性質、悪性リンパ腫または白血病の悪性度によって、また抗体分子が予防的に使用されるか、または存在する症状を治療するために使用されるかによって異なる。
【0069】
投与の頻度は、抗体分子の半減期およびその作用時間に依存しよう。抗体分子の半減期が短ければ(例えば、2〜10時間)、1日に1回またはそれ以上の投与が必要となろう。あるいは、抗体の半減期が長ければ(例えば、2〜15日間)、1日に1回、1週間に1回または場合によっては1ないし2ヶ月毎に1回の投与しか必要でないかもしれない。
【0070】
薬剤組成物はまた、抗体の投与のために薬剤学的に許容される担体を含んでいてもよい。担体はそれ自体が、組成物を投与される個人に有害な抗体の産生を誘導してはならず、また毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活化ウイルス粒子のような、大きくゆっくり代謝される高分子である。
【0071】
薬剤学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩のような鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩のような有機酸の塩を使用することができる。
【0072】
治療用組成物中の薬剤学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含んでいてもよい。さらに湿潤剤または乳化剤のような助剤物質が、このような組成物中に存在してもよい。このような担体により薬剤組成物を、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤および懸濁剤として処方することができる。
【0073】
投与に好ましい剤形は、非経口投与に適した剤形(例えば、注射または点滴による、例えばボーラス注射または持続点滴による)を含む。製品が注射または点滴用である場合、これは油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液の形をとってよく、そして懸濁剤、保存料、安定剤および/または分散剤のような処方用剤を含んでいてもよい。あるいは抗体分子は、使用前に適切な滅菌液体で復元するための乾燥剤形にしてもよい。
【0074】
一旦処方されると、本発明の組成物は対象に直接投与することができる。処置する対象は動物であってもよい。しかし組成物はヒト対象への投与に適合させるのが好ましい。
【0075】
本発明の薬剤組成物は、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、髄腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)(例えば、WO98/20734を参照のこと)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸内経路をはじめとする、あらゆる経路により投与することができる。本発明の薬剤組成物を投与するために、ハイポスプレーも使用することができる。典型的にはこの治療用組成物は、液体の溶液または懸濁液のいずれかとして、注射用として調製することができる。注射の前に液体ビヒクルに溶解または懸濁するための固体剤形もまた調製することができる。
【0076】
組成物の直接送達は、一般に、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内への注射により、あるいは組織の間質腔へ送達される注射により達成されよう。組成物はまた、病変部に投与することができる。投薬処置は、単回投与計画であってもまたは多回投与計画であってもよい。
【0077】
組成物中の活性成分が1つの抗体分子であることは理解されるであろう。それ自体が胃腸管内で分解を受けやすいであろう。すなわち組成物が胃腸管を利用する経路により投与されるなら、この組成物は抗体を分解から防御するが、一旦これが胃腸管から吸収されると、抗体を放出する物質を含む必要があろう。
【0078】
薬剤学的に許容される担体の網羅的な考察は、レミントンの製剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(マック出版社(Mack Publishing Company)、ニュージャージー州、1991年)にある。
【0079】
また、本発明の抗体が遺伝子治療の利用により投与されることも企図される。これを達成するために、抗体鎖がDNA配列から発現しかつその場で組立てられるように、適切なDNA成分の制御下で抗体分子の重鎖と軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入される。
【0080】
本発明はまた、CD22を発現する細胞が介在する疾患の治療に使用するための、本発明の抗体分子を提供する。
【0081】
本発明はさらに、CD22を発現する細胞が介在する疾患の治療用の医薬の製造における本発明の抗体分子の使用法を提供する。
【0082】
本発明の抗体分子は、ヒトまたは動物体内に存在する、CD22を発現する細胞のレベルを低下させることが望まれる、任意の療法に利用することができる。これらのCD22発現細胞は、体内を循環しているかまたは体内の特定部位に望ましくなく高レベルに局在している。例えば高レベルのCD22を発現する細胞は、B細胞リンパ腫および白血病に存在するであろう。本発明の抗体分子は、CD22を発現する細胞が介在する疾患の治療において利用することができる。
【0083】
本発明の抗体分子は、好ましくは悪性リンパ腫および白血病、最も好ましくはNHLの治療のために使用される。
【0084】
本発明はまた、CD22を発現する細胞が介在する障害に罹患しているか、そのリスクのあるヒトまたは動物対象の治療方法であって、対象に有効量の本発明の抗体分子を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0085】
本発明の抗体分子はまた、診断、例えば、CD22を発現する細胞が関わる病状のインビボ診断およびイメージングにも使用することができる。
【0086】
本発明はさらに、添付の図面を参照する以下の実施例において例示のためだけに説明される。
【0087】
発明の詳細な説明
実施例1:候補抗体の生成
以下の選択基準を利用して、CD22に対する抗体の一団をハイブリドーマから選択した:ダウディ(Daudi)細胞への結合、ダウディ細胞でのインターナリゼーション、末梢血単核細胞(PBMC)への結合、PBMCでのインターナリゼーション、親和性(10-9Mを超える)、マウスγ1および産生速度。5/44を好ましい抗体として選択した。
【0088】
実施例2:キメラ5/44抗体分子の遺伝子クローニングおよび発現
5/44ハイブリドーマ細胞の調製およびそこからのRNA調製
【0089】
ハイブリドーマ5/44は、ヒトCD22タンパク質でマウスを免疫後、従来のハイブリドーマ法により生成した。RNAは、5/44ハイブリドーマ細胞から、RNイージー(RNEasy)キット(キアゲン(Qiagen)、クローリー(Crawley)、英国;カタログ番号74106)を用いて調製した。得られたRNAは、後述するようにcDNAに逆転写した。
【0090】
NHL腫瘍でのCD22の分布
5/44抗CD22モノクローナル抗体を用いる染色の出現率と分布を調べるために免疫組織化学試験に着手した。腫瘍のB細胞領域を確認するために、試験には対照の抗CD20および抗CD79a抗体を含めた。
【0091】
全部で50個の腫瘍を試験して、ワーキング・フォーミュレーション(Working Formulation)分類およびREAL分類システムを用いることにより、これらを以下のとおり類別した:
【0092】
・ 7個 Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫(高/I)
・ 4個 B−CLL/小リンパ球性リンパ腫(低/A)
・ 3個 リンパ形質細胞様/免疫細胞腫(低/A)
・ 1個 外套細胞(中/F)
・ 14個 濾胞性リンパ腫(低〜中/D)
・ 13個 びまん性大細胞型リンパ腫(中〜高/G、H)
・ 6個 分類不能(K)
・ 2個 T細胞リンパ腫
【0093】
40個のB細胞リンパ腫は、5/44抗体では0.1μg/mlでCD22抗原に対して陽性であり、そして濃度が0.5μg/mlまで上昇すると、さらに6個が陽性になった。0.1μg/mlで陰性であった残り2個のB細胞腫瘍では、より高濃度で試験するには残った組織が不充分であった。しかし、5/44よりも強い染色が得られた、別のセルテック(Celltech)抗CD22抗体6/13による並行試験では、48個全部のB細胞リンパ腫がCD22に対して染色陽性になった。
【0094】
すなわち、CD22抗原は、B細胞リンパ腫で広く発現されており、よってNHLにおける免疫療法の適切な標的を与えると結論づけることができる。
【0095】
5/44VHおよびVLのPCRクローニング
5/44重鎖と軽鎖の可変ドメインをコードするcDNA配列は、逆転写酵素を用いて全RNA中に存在するmRNAの1本鎖cDNAコピーを生成させることにより合成した。次にこれを、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)(PCR)による特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてマウスV領域配列の増幅のための鋳型として使用した。
【0096】
a) cDNA合成
cDNAは、以下の試薬:50mMトリス−HCl(pH8.3)、75mM KCl、10mMジチオスレイトール、3mM MgCl2、0.5mMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、20単位のRNAsin、75ngランダムヘキサヌクレオチドプライマー、2μgの5/44RNAおよび200単位のマウスモロニー白血病ウイルス逆転写酵素を含む20μlの反応容量中で合成した。42℃で60分間インキュベート後、95℃で5分間加熱して、反応を停止させた。
【0097】
b) PCR
cDNAのアリコートを、重鎖と軽鎖に特異的なプライマーの組合せを用いるPCRにかけた。シグナルペプチドの保存配列とアニーリングするために設計された変性したプライマープールを前進プライマーとして使用した。これらの配列は全て、順に、5’末端から7ヌクレオチドで開始する制限部位(VLSFuI;VHHindIII)、生じたmRNAの最適な翻訳を可能にする配列:GCCGCCACC(配列番号50)、開始コドン、および既知のマウス抗体のリーダーペプチド配列に基づく20〜30ヌクレオチドを含む(カバト(Kabat)ら、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、1991年、米国保健社会福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)、公衆衛生局(Public Health Service)、国立衛生研究所(National Institutes of Health))。
【0098】
3’プライマーは、抗体のフレームワーク4 J−C接合部に及び、VLPCR断片のクローニングを促進するために酵素BsiWIの制限部位を含むように設計される。重鎖3’プライマーは、抗体のJ−C接合部に及ぶように設計された混合物である。この3’プライマーは、クローニングを促進するためにApaI制限部位を含む。プライマーの3’領域は、既知のマウス抗体に見い出された配列に基づく混合配列を含む(カバト(Kabat)ら、1991、前述)。
【0099】
上述のプライマーの組合せにより、VHとV1のPCR産物を適切な発現ベクター(以下を参照のこと)中に直接クローン化して、キメラ(マウス−ヒト)重鎖と軽鎖を産生することができ、そしてこれらの遺伝子を哺乳動物細胞で発現させて、目的のアイソタイプのキメラ抗体を産生することができる。
【0100】
PCRのためのインキュベーション(100μl)は以下のとおり設定した。各反応液は、10mMトリス−HCl(pH8.3)、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.01%w/vゼラチン、0.25mM各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、10pmol 5’プライマー混合物、10pmol 3’プライマー、1μl cDNAおよび1単位Taqポリメラーゼを含有した。反応液を95℃で5分間インキュベートし、次に94℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間のサイクルにかけた。30サイクル後、各反応液のアリコートを、アガロースゲルで電気泳動して分析した。
【0101】
重鎖V領域については、フレームワークIの開始点内のプライマープールアニーリングが、シグナルペプチドプライマープールを置換すると、増幅DNA産物だけが得られた。この断片をDNA配列決定ベクター中にクローン化した。DNA配列を決定して翻訳することにより、推定アミノ酸配列が得られた。この推定配列は、実験的に求めたN末端タンパク質配列を参照することにより証明した。図2と3は、それぞれマウスモノクローナル抗体5/44の成熟軽鎖と重鎖のV領域のDNA/タンパク質配列を示す。
【0102】
c) PCR断片の分子クローニング
次にマウスV領域配列を、発現ベクターpMRR10.1およびpMRR14中にクローン化した(図7)。これらは、ヒトカッパ軽鎖とヒトガンマ−4重鎖の定常領域をコードするDNAを含む、それぞれ軽鎖と重鎖の発現用のベクターである。VL領域は、SfuIとBsiWI制限部位を用いて、配列決定ベクターからの制限消化と連結により、発現ベクター中にサブクローン化して、プラスミドpMRR10(544cL)を作成した。重鎖DNAは、5’プライマーを用いてPCRにより増幅することによりシグナルペプチドを導入したが、これは、異なる社内のハイブリドーマ(162と呼ばれる)からのマウス重鎖抗体リーダーを使用したクローニング方策では得られなかったためである。5’プライマーは、以下の配列を有する:
【0103】
5'GCGCGCAAGCTTGCCGCCACCATGGACTTCGGATTCTCTCTCGTGTTCCTGGCACTCATTCTCAAGGGAGTGCAGTGTGAGGTGCAGCTCGTCGAGTCTGG3' (配列番号1)
【0104】
逆進プライマーは、元々のVH遺伝子クローニングに使用したものと同一であった。生じたPCR産物を酵素のHindIIIとApaIで消化してサブクローン化し、そしてそのDNA配列を確認してプラスミドpMRR14(544cH)を作成した。CHO細胞への両方の発現ベクターの一過性同時トランスフェクションによって、キメラc5/44抗体を作成した。これは、リポフェクタミン試薬を製造業者のプロトコールにより用いて達成した(インビトロジェン:ライフテクノロジー(In Vitrogen:Life Technology)、フローニンゲン、オランダ、カタログ番号11668−027)。
【0105】
グリコシル化部位と反応性リジンの除去
可能なN結合グリコシル化部位配列は、アミノ酸配列N−Y−Tを有するCDR−H2に観察された(図3)。5/44およびその断片(Fabを含む)のゲルの、SDS−PAGE、ウェスタンブロッティングおよび炭水化物染色は、この部位が実際にグリコシル化されていることを示している(図示せず)。さらにリジン残基は、CDR−H2内の露出位置に観察されたが、これは、抗体が結合体形成しうる物質との結合体形成のための追加の部位を提供することにより、抗体の結合親和性を低下させる潜在力を有する。
【0106】
図4に示されるように、PCR方策を利用することにより、グリコシル化部位および/または反応性リジンを除去するために、CDR−H2配列中にアミノ酸置換を導入した。突然変異N55Q、T57AまたはT57Vをコードする前進プライマーを使用することにより、グリコシル化部位を除去し(図4)、そして置換K60Rを含む第4の前進プライマーを作成することにより、反応性リジン残基を除去した(図4)。フレームワーク4の逆進プライマーを、これらのPCR増幅のそれぞれにおいて使用した。PCR産物を酵素XbaIとApaIで消化して、pMRR14(544cH)(これもXbaIとApaIで切断)中に挿入することにより、これらの変異体をコードする発現プラスミドを作成した。N55Q、T57AおよびT57V突然変異は、アミノ酸配列をコンセンサスN−X−T/Sから変化させることにより、グリコシル化部位を切断するが、一方K60R突然変異は、潜在的に反応性のリジンを同様に正に荷電した残基のアルギニンで置換する。生じたcH変種プラスミドを、cLプラスミドと共に同時トランスフェクトすることにより、発現されたキメラ抗体変種を作成した。
【0107】
キメラ遺伝子の活性の評価
キメラ遺伝子の活性は、CHO細胞への一過性トランスフェクションにより評価した。
【0108】
c) ビアコア(BiaCore)分析による親和定数の決定
グリコシル化部位または反応性リジンを除去したキメラ5/44またはその変種の親和性は、CD22−mFc構築体への結合についてBIA法を用いて調査した。結果を図8に示す。全ての結合測定は、BIAコア(BIAcore)(登録商標)2000機器(ファルマシア・バイオセンサー(Pharmacia Biosensor AB)、ウプサラ、スウェーデン)で実施した。このアッセイは、固定化抗マウスFcを介したCD22mFcの捕捉により実施した。抗体は可溶性相に入れた。試料、標準物質、および対照(50ul)を固定化抗マウスFcに注入し、続いて可溶性相の抗体を加えた。各サイクル後に、表面を50ulの40mM HClで30ul/分で再生した。反応速度分析は、BIA評価3.1ソフトウェア(ファルマシア(Pharmacia))を用いて実施した。
【0109】
構築体T57Aのグリコシル化部位を除去すると、キメラ5/44に比較してオンレートがわずかに速くなりオフレートが有意に遅くなり、約5倍の親和性改善があった。N55Q突然変異は、親和性に影響しなかった。この結果は、炭水化物自体の除去が(N55Qの変化のように)恐らく結合に影響しないことを示唆するため、予想外であった。親和性の改善は、T57Aの変化でのみ観察された。1つの可能な説明は、炭水化物の存在に関わりなくトレオニンからアラニンへの変換で除去される57位のトレオニンが、負の作用を及ぼしているということである。アラニンのサイズが小さいことが重要であり、そしてトレオニンの負の作用がそのサイズに関係しているという仮説は、T57V突然変異を用いて得られた結果から支持される:57位のバリンでの置換は効果がない(結果は示していない)。
【0110】
K60R突然変異によるリジンの除去は、親和性に中立的効果であった、すなわちアルギニンの導入は、親和性を傷つけることなく可能な反応性部位を除去する。
【0111】
したがって、グリコシル化部位の除去および反応性リジンの除去のための突然変異は、両方ともヒト化設計に含まれた。
【0112】
実施例2:5/44のCDR移植
5/44抗体の重鎖と軽鎖の可変領域の遺伝子の分子クローニング、およびキメラ(マウス/ヒト)5/44抗体を産生するためのその使用を上記した。マウス5/44のVLおよびVHドメインのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ図2と3に示される(配列番号7と8)。この実施例は、アデア(Adair)ら(WO91/09967)の方法による、ヒトにおける潜在的な免疫原性を低下させるためのヒトフレームワークへの5/44抗体のCDR移植を説明する。
【0113】
5/44軽鎖のCDR移植
ヒトサブグループIカッパ軽鎖V領域からのコンセンサス配列とのタンパク質配列の整列は、64%の配列同一性を示した。その結果、CDR移植軽鎖を作成するために選択したアクセプターフレームワーク領域は、ヒトVKサブグループI生殖細胞系O12、DPK9配列のものに対応した。フレームワーク4のアクセプター配列は、ヒトJ領域生殖細胞系配列JK1から誘導した。
【0114】
マウス5/44のフレームワーク領域のアミノ酸配列とアクセプター配列との比較は図5に示し、ドナーとアクセプター鎖の間に27個の違いがあることを示している。各位置で、パッキングに及ぼす作用、またはVH/VL界面での作用を介して直接または間接に抗原結合に寄与するマウス残基の可能性について分析を行った。マウス残基が重要であり、かつサイズ、極性または電荷に関してヒト残基と充分に異なると考えられたならば、そのマウス残基は保持した。この分析に基づき配列番号19と配列番号20(図5)に与えられる配列を有する、2つのバージョンのCDR移植軽鎖を作成した。
【0115】
5/44重鎖のCDR移植
5/44重鎖のCDR移植は、軽鎖に関して記述されたものと同じ方策を用いて行った。5/44重鎖のVドメインは、サブグループIに属するヒト重鎖と相同である(70%の配列同一性)ことが見い出されたため、ヒトサブグループI生殖細胞系フレームワークVH1−3、DP7の配列をアクセプターフレームワークとして使用した。フレームワーク4アクセプター配列は、ヒトJ領域生殖細胞系配列JH4から誘導した。
【0116】
5/44重鎖とフレームワーク領域との比較を図6に示すが、これは、5/44重鎖がアクセプター配列と22個の位置で異なることを示す。これらのいずれかが抗原結合に及ぼす寄与の分析によって、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27に与えられる配列を有する5つのバージョンのCDR移植重鎖を構築した(図6)。
【0117】
移植配列のための遺伝子の構築
遺伝子は、移植配列gH1とgL1をコードするように設計し、一連の重複オリゴヌクレオチドを設計し構築した(図9)。PCR組立法を利用することにより、CDR移植V領域遺伝子を作成した。10mMトリス−HCl(pH8.3)、1.5mM MgCl2、50mM KCl、0.001%ゼラチン、0.25mM各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、1pmol各「内部」プライマー(T1、T2、T3、B1、B2、B3)、10pmol各「外部」プライマー(F1、R1)、および1単位のTaqポリメラーゼ(アンプリTaq(AmpliTaq)、アプライド・バイオシステムズ(Applied BioSystems)、カタログ番号N808−0171)を含む、100ulの反応容量を設定した。PCRサイクルパラメータは、94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分を30サイクルであった。次に反応産物を1.5%アガロースゲルに流して、切り出し、キアゲン(QIAGEN)スピンカラム(QIAクイック(QIAquick)ゲル抽出キット、カタログ番号28706)を用いて回収した。DNAを30μlの容量で溶出した。次にgH1とgL1 DNAのアリコート(1μl)を、インビトロジェン(InVitrogen)TOPO TAクローニングベクターpCR2.1 TOPO(カタログ番号K4500−01)中に製造業者の説明書によってクローン化した。この非発現ベクターは、多数のクローンの配列決定を促進するためのクローニング中間体の役目を果たした。ベクター特異的プライマーを用いるDNA配列決定を使用することにより、gH1とgL1を含む誤りのないクローンを同定して、プラスミドpCR2.1(544gH1)とpCR2.1(544gL1)を作成した(図10)。
【0118】
オリゴヌクレオチドカセット置換法を使用することにより、ヒト化移植片gH4、5、6および7、並びにgL2を作成した。図11は、オリゴヌクレオチドカセットの設計図を示す。各変種を作成するために、ベクター(pCR2.1(544gH1)またはpCR2.1(544gL1))を、記載のように制限酵素で切断した(重鎖にはXmaI/SacII、軽鎖にはXmaI/BstEII)。大きなベクター断片をアガロースからゲル精製して、オリゴヌクレオチドカセットとの連結に使用した。これらのカセットは、2個の相補的オリゴヌクレオチドからなり(図11に示される)、0.5PMOL/ΜLの濃度で200ΜLの容量(12.5MMトリス−HCL(PH7.5)、2.5MM MgCl2、25mM NaCl、0.25mMジチオエリトリトール)中で混合される。アニーリングは、水浴(容量500ml)中で3分間95℃まで加熱し、次に反応液を室温までゆっくり冷却させることにより行った。次にアニーリングしたオリゴヌクレオチドカセットを水で10倍希釈し、次いで適切に切断したベクター中に連結した。DNA配列決定を利用することにより正しい配列を確認して、プラスミドpCR2.1(5/44−gH4−7)とpCR2.1(5/44−gL2)を作成した。次に証明した移植配列を発現ベクターpMRR14(重鎖)とpMR10.1(軽鎖)中にサブクローン化した。
【0119】
CDR移植配列のCD22結合活性
移植変種をコードするベクターを、元々のキメラ抗体鎖と一緒に種々の組合せでCHO細胞中に同時トランスフェクトした。結合活性は、元々のマウス5/44抗体の結合をラモス(Ramos)細胞(ATCCから入手;表面CD22を発現するバーキット(Burkitt's)リンパ腫リンパ芽球ヒト細胞株)への結合に関して競合させて、競合アッセイで比較した。このアッセイは、移植片をその細胞表面CD22に結合する能力において比較するための最良の方法と考えられた。結果を図8に示す。明らかなように、移植片のいずれの間にもほとんど差がなく、全てがマウスの親に対する競合でキメラより有効に奏効する。CDR−H3(gH5とgH7)の末端に3個の追加のヒト残基を導入しても、結合に影響はないようである。
【0120】
最小数のマウス残基との移植片の組合せ(gL1gH7)を選択した。軽鎖移植片gL1は6個のドナー残基を有する。残基V2、V4、L37およびQ45は、潜在的に重要なパッキング残基である。残基H38は、VH/VL界面に位置する。残基D60はCDR−L2に近い表面残基であり、抗原結合に直接寄与しうる。これらの残基の中でV2、L37、Q45およびD60は、他のサブグループからのヒトカッパ遺伝子の生殖細胞系配列において見い出される。重鎖移植片gH7は、4個のドナーフレームワーク残基を有する[残基R28は、CDR移植において使用した構造定義下のCDR−H1の一部と考えられる(アデア(Adair)ら(1991年、WO91/09967)を参照のこと]。残基E1とA71は、CDRに近い表面残基である。残基I48は潜在的なパッキング残基である。残基T93はVH/VL界面に存在する。これらの残基の中で、E1とA71はヒトサブグループIの他の生殖細胞系遺伝子に見い出される。残基I48はヒト生殖細胞系サブグループ4に見い出され、そしてT73はヒト生殖細胞系サブグループ3に見い出される。
【0121】
軽鎖と重鎖両方の完全長DNAおよびタンパク質配列は、ベクターにより提供される定常領域遺伝子内のイントロンのおよその位置を含めて図13に示し、そして軽鎖についてはそれぞれ配列番号29と配列番号28に、そして重鎖についてはそれぞれ配列番号31と配列番号30に与えられる。
【0122】
これらの軽鎖と重鎖遺伝子をコードするDNAを、これらのベクターから切り出した。重鎖DNAは、5’HindIII部位で消化し、次に大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)断片で処理することにより、5’平滑末端を作成した。3’EcoRI部位での切断によりアガロースゲルから精製して、重鎖断片が得られた。同じ方法で軽鎖断片を製造して、5’SFuI部位および3’EcoRI部位で平滑処理した。両方の断片をDHFRに基づく発現ベクター中にクローン化して、CHO細胞に安定な細胞株を作成するために使用した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−H1について図1にH1として示す配列(配列番号1)、CDR−H2について図1にH2として示す配列(配列番号2)または可能なグリコシル化部位が除去されているH2、60位(カバト(Kabat)の番号付けシステムに従って)のリジン残基が別のアミノ酸で置換されているH2、またはグリコシル化部位と60位の反応性リジンの両方が除去されているH2として示す配列、またはCDR−H3について図1(配列番号3)にH3として示す配列の少なくとも1つを有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む、重鎖を含んでなる上記抗体分子
【請求項2】
ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−L1について図1にL1として示す配列(配列番号4)、CDR−L2について図1にL2として示す配列(配列番号5)またはCDR−L3について図1(配列番号6)にL3として示す配列の少なくとも1つを有するCDRを含む、軽鎖を含んでなる上記抗体分子。
【請求項3】
可変ドメインが、CDR−H1について配列番号1、CDR−H2について配列番号2もしくは配列番号13もしくは配列番号15もしくは配列番号16、またはCDR−H3について配列番号3に示す配列の少なくとも1つを有するCDRを含む、重鎖と、可変ドメインが、CDR−L1について配列番号4、CDR−L2について配列番号5、またはCDR−L3について配列番号6に示す配列の少なくとも1つを有するCDRを含む、軽鎖とを含んでなる、請求項1または請求項2の抗体分子。
【請求項4】
CDR−H1について配列番号1、CDR−H2について配列番号2もしくは配列番号13もしくは配列番号15もしくは配列番号16、CDR−H3について配列番号3、CDR−L1について配列番号4、CDR−L2について配列番号5、およびCDR−L3について配列番号6を含む、請求項3の抗体分子。
【請求項5】
CDR移植抗体分子である、請求項1〜4のいずれか1項の抗体分子。
【請求項6】
可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域と非ヒトドナーCDRとを含む、請求項5の抗体分子。
【請求項7】
重鎖の可変ドメインのヒトアクセプターフレームワーク領域は、サブグループIコンセンサス配列に基づき、配列番号8の位置の残基に対応する1、28、48、71および93位にドナー残基を含む、請求項6の抗体分子。
【請求項8】
配列番号8の位置の残基に対応する67と68位にドナー残基をさらに含む、請求項7の抗体分子。
【請求項9】
軽鎖の可変ドメインのヒトアクセプターフレームワーク領域は、サブグループIコンセンサス配列に基づき、配列番号7の位置の残基に対応する2、4、37、38、45および60位にドナー残基を含む、請求項6〜8のいずれか1項の抗体分子。
【請求項10】
配列番号7の位置の残基に対応する3位にドナー残基をさらに含む、請求項9の抗体分子。
【請求項11】
請求項7または請求項8の重鎖と、請求項9または請求項10の軽鎖とを含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項12】
軽鎖可変領域5/44−gL1(配列番号19)と重鎖可変領域5/44−gH7(配列番号27)とを含む、請求項1〜11のいずれか1項の抗体分子。
【請求項13】
軽鎖の配列は配列番号28に示す配列を含むことを特徴とする軽鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項14】
軽鎖の配列は配列番号28に示す配列からなることを特徴とする軽鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項15】
重鎖の配列は配列番号30に示す配列を含むことを特徴とする重鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項16】
重鎖の配列は配列番号30に示す配列からなることを特徴とする重鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項17】
配列番号28に示す配列を含むことを特徴とする軽鎖と、配列番号30に示す配列を含むことを特徴とする重鎖とを有する、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項18】
配列番号28に示す配列からなることを特徴とする軽鎖と、配列番号30に示す配列からなることを特徴とする重鎖とを有する、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項19】
CD22に対する改良された親和性を有する、請求項1〜18のいずれか1項の抗体分子の変種。
【請求項20】
親和性成熟プロトコールにより得られる、請求項19の変種。
【請求項21】
マウス抗CD22モノクローナル抗体5/44である、請求項1〜4のいずれか1項の抗体であって、軽鎖の可変ドメインは配列番号7に示す配列を有し、重鎖の可変ドメインは配列番号8に示す配列を有する、上記抗体。
【請求項22】
それぞれ配列番号7と配列番号8に記載の、請求項21のモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインの配列を含むキメラ抗体分子である、請求項1〜4のいずれか1項の抗体分子。
【請求項23】
ドナーCDRの欠失部分は異なる配列により置換され、機能性CDRを形成する、末端切断型ドナーCDR配列を含むハイブリッドCDRを含んでなる抗体分子。
【請求項24】
CDR配列の欠失部分は、抗体分子のフレームワーク領域が得られる抗体からである、請求項23の抗体分子。
【請求項25】
CDR配列の欠失部分は、コンセンサスフレームワーク領域を有する生殖細胞系抗体からである、請求項24の抗体分子。
【請求項26】
重鎖のCDR−H2は抗体分子中のハイブリッドである、請求項23〜25のいずれか1項の抗体分子。
【請求項27】
ドナーCDRの末端切断は1〜8個のアミノ酸である、請求項23〜26のいずれか1項の抗体分子。
【請求項28】
末端切断は4〜6個のアミノ酸である、請求項27の抗体分子。
【請求項29】
末端切断はCDRのC末端で行われる、請求項23〜28のいずれか1項の抗体分子。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子の重鎖および/または軽鎖をコードするDNA配列。
【請求項31】
請求項30のDNA配列を含むクローニングベクターまたは発現ベクター。
【請求項32】
請求項31のクローニングベクターまたは発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項33】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子、または治療で使用される請求項30のDNA配列。
【請求項34】
ヒトCD22に対する特異性を有する請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子、またはCD22を発現する細胞により仲介される病態を治療するのに使用される請求項30のDNA配列。
【請求項35】
請求項33または請求項34の抗体分子、または悪性リンパ腫を治療するのに使用される請求項33または請求項34のDNA配列。
【請求項36】
悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である、請求項35の抗体分子またはDNA配列。
【請求項37】
CD22を発現する細胞により仲介される病態の治療のために薬剤の製造における、ヒトCD22に対する特異性を有する請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子、または請求項30のDNA配列の使用。
【請求項38】
病態は悪性リンパ腫である、請求項37の使用。
【請求項39】
病態は非ホジキンリンパ腫である、請求項38。
【請求項40】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子または請求項30のDNA配列を含む治療用または診断用組成物。
【請求項41】
薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、請求項40の治療用または診断用組成物。
【請求項42】
抗T細胞、抗IFNγ、または抗LPS抗体、またはキサンチンのような非抗体成分をさらに含む、請求項40または請求項41の治療用または診断用組成物。
【請求項43】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子の製造方法であって、該抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現に適した条件下で請求項32の宿主細胞を培養し、該抗体分子を単離することを特徴とする、上記方法。
【請求項44】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子を薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と混合することを特徴とする、請求項40〜42のいずれか1項の治療用または診断用組成物の調製法。
【請求項45】
配列番号1〜28または配列番号30のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項1】
ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−H1について図1にH1として示す配列(配列番号1)、CDR−H2について図1にH2として示す配列(配列番号2)または可能なグリコシル化部位が除去されているH2、60位(カバト(Kabat)の番号付けシステムに従って)のリジン残基が別のアミノ酸で置換されているH2、またはグリコシル化部位と60位の反応性リジンの両方が除去されているH2として示す配列、またはCDR−H3について図1(配列番号3)にH3として示す配列の少なくとも1つを有するCDR[カバト(Kabat)ら(前述)が定義したように]を含む、重鎖を含んでなる上記抗体分子
【請求項2】
ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子であって、可変ドメインが、CDR−L1について図1にL1として示す配列(配列番号4)、CDR−L2について図1にL2として示す配列(配列番号5)またはCDR−L3について図1(配列番号6)にL3として示す配列の少なくとも1つを有するCDRを含む、軽鎖を含んでなる上記抗体分子。
【請求項3】
可変ドメインが、CDR−H1について配列番号1、CDR−H2について配列番号2もしくは配列番号13もしくは配列番号15もしくは配列番号16、またはCDR−H3について配列番号3に示す配列の少なくとも1つを有するCDRを含む、重鎖と、可変ドメインが、CDR−L1について配列番号4、CDR−L2について配列番号5、またはCDR−L3について配列番号6に示す配列の少なくとも1つを有するCDRを含む、軽鎖とを含んでなる、請求項1または請求項2の抗体分子。
【請求項4】
CDR−H1について配列番号1、CDR−H2について配列番号2もしくは配列番号13もしくは配列番号15もしくは配列番号16、CDR−H3について配列番号3、CDR−L1について配列番号4、CDR−L2について配列番号5、およびCDR−L3について配列番号6を含む、請求項3の抗体分子。
【請求項5】
CDR移植抗体分子である、請求項1〜4のいずれか1項の抗体分子。
【請求項6】
可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域と非ヒトドナーCDRとを含む、請求項5の抗体分子。
【請求項7】
重鎖の可変ドメインのヒトアクセプターフレームワーク領域は、サブグループIコンセンサス配列に基づき、配列番号8の位置の残基に対応する1、28、48、71および93位にドナー残基を含む、請求項6の抗体分子。
【請求項8】
配列番号8の位置の残基に対応する67と68位にドナー残基をさらに含む、請求項7の抗体分子。
【請求項9】
軽鎖の可変ドメインのヒトアクセプターフレームワーク領域は、サブグループIコンセンサス配列に基づき、配列番号7の位置の残基に対応する2、4、37、38、45および60位にドナー残基を含む、請求項6〜8のいずれか1項の抗体分子。
【請求項10】
配列番号7の位置の残基に対応する3位にドナー残基をさらに含む、請求項9の抗体分子。
【請求項11】
請求項7または請求項8の重鎖と、請求項9または請求項10の軽鎖とを含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項12】
軽鎖可変領域5/44−gL1(配列番号19)と重鎖可変領域5/44−gH7(配列番号27)とを含む、請求項1〜11のいずれか1項の抗体分子。
【請求項13】
軽鎖の配列は配列番号28に示す配列を含むことを特徴とする軽鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項14】
軽鎖の配列は配列番号28に示す配列からなることを特徴とする軽鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項15】
重鎖の配列は配列番号30に示す配列を含むことを特徴とする重鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項16】
重鎖の配列は配列番号30に示す配列からなることを特徴とする重鎖を含む、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項17】
配列番号28に示す配列を含むことを特徴とする軽鎖と、配列番号30に示す配列を含むことを特徴とする重鎖とを有する、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項18】
配列番号28に示す配列からなることを特徴とする軽鎖と、配列番号30に示す配列からなることを特徴とする重鎖とを有する、ヒトCD22に対する特異性を有する抗体分子。
【請求項19】
CD22に対する改良された親和性を有する、請求項1〜18のいずれか1項の抗体分子の変種。
【請求項20】
親和性成熟プロトコールにより得られる、請求項19の変種。
【請求項21】
マウス抗CD22モノクローナル抗体5/44である、請求項1〜4のいずれか1項の抗体であって、軽鎖の可変ドメインは配列番号7に示す配列を有し、重鎖の可変ドメインは配列番号8に示す配列を有する、上記抗体。
【請求項22】
それぞれ配列番号7と配列番号8に記載の、請求項21のモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインの配列を含むキメラ抗体分子である、請求項1〜4のいずれか1項の抗体分子。
【請求項23】
ドナーCDRの欠失部分は異なる配列により置換され、機能性CDRを形成する、末端切断型ドナーCDR配列を含むハイブリッドCDRを含んでなる抗体分子。
【請求項24】
CDR配列の欠失部分は、抗体分子のフレームワーク領域が得られる抗体からである、請求項23の抗体分子。
【請求項25】
CDR配列の欠失部分は、コンセンサスフレームワーク領域を有する生殖細胞系抗体からである、請求項24の抗体分子。
【請求項26】
重鎖のCDR−H2は抗体分子中のハイブリッドである、請求項23〜25のいずれか1項の抗体分子。
【請求項27】
ドナーCDRの末端切断は1〜8個のアミノ酸である、請求項23〜26のいずれか1項の抗体分子。
【請求項28】
末端切断は4〜6個のアミノ酸である、請求項27の抗体分子。
【請求項29】
末端切断はCDRのC末端で行われる、請求項23〜28のいずれか1項の抗体分子。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子の重鎖および/または軽鎖をコードするDNA配列。
【請求項31】
請求項30のDNA配列を含むクローニングベクターまたは発現ベクター。
【請求項32】
請求項31のクローニングベクターまたは発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項33】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子、または治療で使用される請求項30のDNA配列。
【請求項34】
ヒトCD22に対する特異性を有する請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子、またはCD22を発現する細胞により仲介される病態を治療するのに使用される請求項30のDNA配列。
【請求項35】
請求項33または請求項34の抗体分子、または悪性リンパ腫を治療するのに使用される請求項33または請求項34のDNA配列。
【請求項36】
悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である、請求項35の抗体分子またはDNA配列。
【請求項37】
CD22を発現する細胞により仲介される病態の治療のために薬剤の製造における、ヒトCD22に対する特異性を有する請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子、または請求項30のDNA配列の使用。
【請求項38】
病態は悪性リンパ腫である、請求項37の使用。
【請求項39】
病態は非ホジキンリンパ腫である、請求項38。
【請求項40】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子または請求項30のDNA配列を含む治療用または診断用組成物。
【請求項41】
薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、請求項40の治療用または診断用組成物。
【請求項42】
抗T細胞、抗IFNγ、または抗LPS抗体、またはキサンチンのような非抗体成分をさらに含む、請求項40または請求項41の治療用または診断用組成物。
【請求項43】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子の製造方法であって、該抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現に適した条件下で請求項32の宿主細胞を培養し、該抗体分子を単離することを特徴とする、上記方法。
【請求項44】
請求項1〜29のいずれか1項の抗体分子を薬剤学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と混合することを特徴とする、請求項40〜42のいずれか1項の治療用または診断用組成物の調製法。
【請求項45】
配列番号1〜28または配列番号30のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【公開番号】特開2010−22372(P2010−22372A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205660(P2009−205660)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【分割の表示】特願2004−501459(P2004−501459)の分割
【原出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【分割の表示】特願2004−501459(P2004−501459)の分割
【原出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】
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