説明

生物検体を高速フォーカス撮像する方法及び装置

チャンバー内に静止状態で存在する生物学的液体サンプルを撮像する方法及び装置が提供される。方法は、a)Z軸と平行なレンズ軸を有する対物レンズに対してチャンバーをZ軸位置に位置させるステップと、b)一方又は両方のチャンバー及び対物レンズを互いに対して移動させるステップと、c)Z軸に沿ったフォーカス検索範囲内を一方又は両方のチャンバー及び対物レンズが互いに対して移動している時に、生物学的液体サンプルの一以上の画像を生成するステップと、を備えることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法(U.S.C.35)第119条に基づく2009年12月31日出願の米国仮特許出願第61/291,416号の優先権の利益を主張するものであり、これに開示された内容は参照により本願に援用される。
【0002】
本発明は生物検体を撮像する方法及び装置に関し、特に分析のために生物検体を高速フォーカス撮像する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば全血液(whole blood)や尿、脳髄(cerebrospinal)、体腔内(body cavity fluids)等の生物学的液体サンプルは、スライドガラス上に塗布して顕微鏡の下に塗りつけて検査される無希釈の微量な微粒子や細胞を有する。
【0004】
塗布標本の異なる領域は、スライドをX−Y平面で操作することで検査されていた。フォーカスは、顕微鏡対物レンズに対してスライドの位置をZ軸に沿って変化することで実現される。
【0005】
これらの技術を用いることで、妥当な結果を達成することは可能だが、これらは技術者の経験や技能に大きく依存する。様々な分野のサンプルを手動で検査することも労働集約的(labor intensive)であり、そのため市販の検査室用途に用いることは実際に不可能である。
【0006】
チャンバー内に静止状態で存在する生物学的液体サンプル(biologic fluid samples)を撮像して分析する自動装置が知られている。チャンバー内に静止状態で存在するサンプルの分析を正確に行うためには、様々な異なる高さ(例えば、X−Y平面内に配置されたサンプル・チャンバーのZ軸に沿った、異なる高さ)で装置の光学系の焦点を合わせる必要がある。このような分析を効率的に行うために、異なる高さの焦点合わせを正確かつ迅速に行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生物検体を高速フォーカス撮像する方法及び装置に関し、分析を効率的に行うために、異なる高さの焦点合わせを正確かつ迅速に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、チャンバー内に静止状態で存在する生物学的液体サンプルを撮像する方法が提供される。方法は、a)対物レンズの光軸と平行なZ軸位置にチャンバーを位置させるステップと、b)一方又は両方のチャンバー及び対物レンズを互いに対してZ軸に沿って速く移動させるステップと、c)一方又は両方のチャンバー及び対物レンズを焦点検索範囲内でZ軸に沿って互いに対して速く移動させながら、生物学的液体サンプルの一以上の画像を生成するステップとを備えている。
【0009】
本発明の他の態様によれば、チャンバー内に静止状態で存在する生物学的液体サンプルを撮像する装置が提供される。装置は、フィールド照明装置(field illuminator)と、位置決め装置(positioner)と、解像機構(image dissector)と、プログラム可能な分析装置(programmable analyzer)とを備えている。
【0010】
フィールド照明装置は、光軸を有する対物レンズを備えている。位置決め装置は、一方又は両方の対物レンズ及びチャンバーを互いに位置決めするのに適用される。解像機構は、チャンバー内にあるサンプルの撮像に適用される。プログラム可能な分析装置は、一方又は両方の対物レンズ及びチャンバーを互いに対してレンズ軸と平行なZ軸に沿って移動させる位置決め装置の制御に適用される。
【0011】
分析装置はさらに、Z軸に沿ったフォーカス検索範囲(focus search range)内を一方又は両方のチャンバー及び対物レンズが移動する時に、生物学的液体サンプルの一以上の画像を生成するのに適用される。
【0012】
本発明の特徴及び利点は、以下に記載された発明の詳細な説明、及び添付図面から明らかになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生物検体を高速フォーカス撮像する方法及び装置に関し、分析を効率的に行うために、異なる高さの焦点合わせを正確かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、生物学的液体サンプルの分析装置を示す概略図である。
【図2】図2は、分析装置内の構成機器を示す概略図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る生物学的液体サンプルのカートリッジにおいて、液体モジュールが閉じられた状態を図示している。
【図4】図4は、本実施形態に係る生物学的液体サンプルのカートリッジにおいて、液体モジュールが開位置にある状態を図示している。
【図5】図5は、分析チャンバーの概略図である。
【図6】図6は、本実施形態の分析チャンバーにおいて、チャンバーの均一な高さを許容するようにセパレータが圧縮された状態を示している。
【図7】図7は、本実施形態の分析チャンバーにおいて、チャンバーの均一な高さを許容するように第一のパネルが変形された状態を示している。
【図8】図8は、サンプル・チャンバーと対物レンズとの間のZ軸位置に関連する横軸に対して、フォーカス・インデックスの縦軸を有するプロット図である。
【図9】図9A〜Cは、連続撮像モードのロール・シャッタによるフォーカスの変化を示す概略図に関し、図9Aは、チャンバー速度がゼロから一定速度(フォーカス検索中維持される)まで加速される状態を示し、図9Bは、Z軸位置の機能としての画像フォーカスを示し、図9Cは、関連するZ軸位置の縦軸に対して横軸を有するプロット図を示している。
【図10】図10は、スマート・フォーカス処理手順のフローチャートを示している。
【図11】図11は、フォーカス検索範囲20μmにおいて、Z軸位置に対するフォーカス・インデックスのプロットを示している。
【図12】図12は、フォーカス検索範囲40μmにおいて、Z軸位置に対するフォーカス・インデックスのプロットを示している。
【図13】図13は、フォーカス検索範囲80μmにおいて、Z軸位置に対するフォーカス・インデックスのプロットを示している。
【図14】図14は、チャンバー内のサンプル・フィールドに直交格子が重ね合わされた分析チャンバーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1,2に示すように、分析装置16は、分析対象の生物学的サンプル(例えば、血液)を包含するように構成された分析チャンバー(analysis chamber)20を備えたサンプル分析カートリッジ18を受容するのに適用される。装置16は、フィールド照明装置22と、解像機構24と、位置決め装置26と、プログラム可能な分析装置28とを備えている。説明上の目的で、“分析”及び“解析”の用語は、任意の検査や液体サンプルの検査に限定されず、生物学的液体サンプル内の構成成分の検査を含むものとして定義される。
【0016】
分析装置16は、本願明細書にそのまま援用される同時係属の米国特許出願第12/971,860;12/061,394号明細書及び、米国特許第7,850,916号明細書に記載されている多種類のサンプル分析チャンバー20に使用することが可能である。説明上の目的で、本発明は米国特許出願第12/971,860号明細書に記載されている分析チャンバーとカートリッジとを使用するものとして記載されている。本発明はこれに限定されないが、上述のチャンバー20とカートリッジ18とを使用する。
【0017】
図3,4に示すように、サンプル分析カートリッジ18は、液体モジュール(fluid module)30と、画像処理トレイ(image tray)32と、ハウジング34とを備えている。液体モジュール30は、例えば指やヒールスティック(heel stick)等の被検体収集サイト(subject collection site)から注射器で取り出した液体サンプルを受容するように構成されたサンプルポート(sample port)36を備えている。液体サンプルは、画像処理トレイ32内にロックされた分析チャンバー20(図5〜7参照)に選択的に移動可能なカートリッジ18内に吸引される。
【0018】
図5〜7に示すように、分析チャンバー20は、第一のパネル38と、第二のパネル40とを備えている。これらパネル38,40の少なくとも一方は、パネル38,40間に配置された生物学的液体サンプルが分析目的のために画像処理されるように、十分な透明性を備えている。第一及び第二のパネル38,40は互いに平行に位置合わせされると共に、互いに表面39,41を対向させて間隔を隔てて配置されている。
【0019】
パネル38,40間の位置合わせは、光が一方のパネル38に垂直に伝達すると共に、他方のパネル40も透明の場合は、一方のパネル38、サンプル、他方のパネル40を透過することができる領域を定めている。対向するパネル表面の離間距離(以下、チャンバー20の“高さ” 42ともいう)は、二つの表面39,41間に配置された生物学的液体サンプルが両表面と接触する距離で設定されている。
【0020】
他の実施形態において、第一及び第二のパネル38,40は互いに少なくとも三つのセパレータ44(一般的な球状ビーズ)により区分けされている。好適な実施形態において、少なくとも一方のパネル38,40もしくはセパレータ44は、チャンバー高さ42がセパレータ44の平均高さと近似することを許容するために、十分な可撓性を備えている。相対柔軟度(relative flexibility)は、セパレータ44内の小さな許容自由度にかかわらず、チャンバー20を実質的に均一な高さにする。
【0021】
チャンバー20は、約0.2〜1.0マイクロリットル(μl)のサンプルを保持する一般的なサイズであるが、その大きさは特定の容量に限定されず、分析用途に応じて変更することができる。チャンバー20は、液体サンプルを静止状態で保持することが可能である。ここでいう“静止状態”の定義は、サンプルが分析のためにチャンバー20内に配置されると共に、分析の間は意図的に動かされないことをいう。主に血液サンプルのブラウン運動(Brownian motion)によって生じる本発明の使用を不能にしない血液サンプル内の拡張運動は、構成成分(constituents)を形成する。
【0022】
図2に示すように、フィールド照明装置22は、光源46と、対物光学素子(例えば、対物レンズ48やフィルター50等)とを備えている。光源46は複数の分析のために十分な長波長領域(例えば約340nm〜670nm)の光を発生する。光源46は、例えばキセノンアークランプ、タングステンハロゲンランプ、LED、拍動性源など、選択的に所望波長の光を単一の発生源もしくは複数の発生源から発生させることが可能である。
【0023】
光源46から放射される光の通路は、サンプルが蛍光発光もしくは透過光の何れを用いて分析されるかに依存する。蛍光発光が用いられた場合、光源46から放射される光がチャンバー20内に静止状態で存在するサンプル上に直接照射されるように、対物レンズ48は光線の焦点を合わせる。光線は、解像機構24上に入射するサンプル画像の断面領域によって定義されるサンプルの少なくとも一部のフィールドを照射する。光は、サンプル内に物質(例えば蛍光色素)を生じさせて蛍光を発させると共に、特定波長の光を放射する。放射された光は、対物レンズ48を通過して戻ると共に、解像機構24によって捕捉される。
【0024】
透過光が用いられた場合、フィールド照明装置22は、液体サンプルが存在するチャンバーの第一のパネル38及び第二のパネル40(これらは光の透過を許容するように十分な透明性を備える)の間に、光を方向付けて透過させるように構成されている。伝達される光は対物レンズ48を透過した後、解像機構24によって捕捉される。
【0025】
位置決め装置26は、対物レンズ48及び分析チャンバー20の相対位置を変化させるのに適用される。対物レンズ48及び分析チャンバー20の相対位置の変化は、例えば対物レンズ48及び分析チャンバー20の一方を他方に対して関連する全ての軸(X,Y,Z)に沿って移動させるか、又は、チャンバー20を特定の軸(X,Y軸)に沿って移動させると共に、レンズを他の軸(Z軸)に沿って移動させる等、多くの異なった方法で実現することができる。
【0026】
簡略化のために、位置決め装置26は、分析チャンバー20と結合して、固定された対物レンズ48に対してカートリッジ18を複数の移動軸(X,Y,Z)に沿って移動させるのに適用される。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
チャンバー20は、チャンバー20内に存在するサンプルの全フィールドを対物レンズ48で捕捉すると共に、Z軸に沿った移動を許容してサンプル高さに対する焦点位置を変化させるように、X−Y平面を移動可能に構成されている。対物レンズ48に対するチャンバー20の動作は、これに限定されるものではないが、例えば対物レンズ48に対するチャンバー20の連続動作(continuous motion)やインクリメント動作(incremental movement)を選択的に制御可能なステッパモータ等、多くの異なる装置によって実現される。
【0028】
適用可能な解像機構24は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)タイプのデジタル画像解像機構であって、好ましくはピクセル当たりの解像度を少なくとも8ビット、最も好ましくは12ビット備えている。解像機構24は、光画像をリアルタイムもしくは経時的に確認できる電子データフォーマットに変換する。あるいは、CMOS以外の解像機構24が光画像の電子データフォーマットへの変換に用いられてもよい。
【0029】
好適な実施形態において、解像機構24は電子ロール・シャッタ(ERS)スナップショット・モードや電子ロール・シャッタ(ERS)連続モードが可能なCMOSカメラである。スナップショット・モードにおいて、カメラは不連続時間でフィールド画像を撮像するように適用される。ロール・シャッタ連続モードにおいて、カメラは特定期間でフィールド画像を撮像するように適用される。適用可能な解像機構24の一例は、米国カリフォルニア州サンジョセ(San Jose, California, U.S.A.)にあるAptina Imaging社製のモデルMT9P031画像機器である。しかしながら、本発明はこの解像機構24に限定されるものではない。
【0030】
プログラム可能な分析装置28は、本実施形態の方法を実行するのに必要な機能を選択的に作動させるようにプログラムされた中央演算処理装置(CPU)を備えている。プログラム可能な分析装置28の機能性は、ハードウェア、ソフトウェア、もしくは、これらの組み合わせによって実施されることに留意すべきである。当業者であれば、過度の実験を要することなく、ここに記載された機能を作動させるように中央演算処理装置をプログラム可能である。
【0031】
プログラム可能な分析装置28は、チャンバー20内に静止状態で存在する液体サンプルを撮像するように、フィールド照明装置22、解像機構24及び、位置決め装置26と電気的に接続されており、これらの作動を調整するようにプログラムされている。多くの具体例において、分析装置16は、サンプルの複数フィールドを撮像するプロセスを含むチャンバー20内のサンプル全体撮像を行うように作動する。チャンバー20は、分析フィールドが特定の直交する行及び列によって定義されるものとして記載される。全てのフィールド画像は、サンプル全体の画像を生成するように結合することができる。
【0032】
各サンプル・フィールドに関し、プログラム可能な分析装置28は、フィールド照明装置22、解像機構24、及び、位置決め装置26の作動を調整するようにプログラムされている。また、位置決め装置26は、フィールドのために与えられたZ軸に沿った焦点面の微差を装置16が計算することを許容する自動フォーカス・モードで作動する。自動フォーカス・モードにおいて、画像が許容可能な鮮明度(すなわちコントラスト)で捕捉されて決定されるように、分析チャンバー20及び対物レンズ48の相対位置はZ軸に沿って変化する。
【0033】
位置決め装置26は、好ましくはチャンバー20を対物レンズ48に対してZ軸に沿って一定速度で移動させる。チャンバー20の移動中に、フィールド照明装置22及び解像機構24は協働して画像を捕捉するように作動する。本発明の実施形態における一定速度の移動は、例えば停止に必要な時間による相対的に遅い作動、引き続いてチャンバー20の移動及び決定、チャンバー20を速く正確にミクロンもしくはサブミクロンのインクリメントで移動及び決定するのに必要なハードウェアとの協働など、“移動−停止−収集−移動”モードにより生じる問題を回避する。
【0034】
自動フォーカス・モードにおいて、チャンバー20の移動及び撮像は、チャンバー20が対物レンズ48に対するZ位置を変化させて個々の画像を徐々に捕捉するように調整される。図8に示すプロットは、20個のデータ・ポイントを含む1μmの解像度において、20μmのフォーカス検索範囲によるチャンバー20の対物レンズ48に対するZ軸位置と、フォーカス・インデックスとの関係を示している。このモードの一実施形態において、解像機構24は位置決め装置26によって画像を捕捉するように指示される(すなわち、外部トリガー・モード(external trigger mode))。
【0035】
位置決め装置26は、チャンバー20がZ軸に沿って所定の距離(すなわち、ΔZ)を移動する都度、解像機構24に“トリガー”信号(例えば、TTL信号)を送信する。この例において、画像が収集できる位置は以下の数式1で示される。
【0036】
【数1】

【0037】
数式1において、変数“≡”はイメージ・インデックスである。チャンバー20の初期位置(Z≡)が分かり、ΔZが当面のアプリケーションのために選択されるので、個々のインクリメント位置(incremental position)も分かる。
【0038】
このモードの他の実施形態において、解像機構24はタイミング機構(例えば、コントロール・ソフトウェア)によって周期的に独立して作動されるが、例えば画像がΔt毎に捕捉されると共にチャンバー20が速度ΔZ/Δtで移動するように、チャンバー20のZ軸移動と協調される。他の実施形態において、解像機構24は、画像が撮像された位置を記録するために、位置決め装置26に信号(例えば“ストロボ”信号)を送信することが可能である。
【0039】
両実施形態において、画像が捕捉されるインクリメント率(incremental rate)は、画像の解像度及び解像機構24が画像を生成するのに必要な時間(すなわち、“フレーム時間”)の観点から選択される。例えば、Z速度(すなわち、距離/時間)は、画像が捕捉されるZ軸位置間を移動する距離(すなわち、“フォーカス解像度”)を“フレーム時間”で除算した値以下でなければならず、以下の数式(2)で示される。
【0040】
【数2】

【0041】
フレーム時間は、解像機構24の容量に基づいて選択される。当面のアプリケーションは、許容可能なフォーカス解像度を示す。例えば、分析チャンバー20内に配置された全血サンプルの画像解析のために許容可能なフォーカス解像度は、1.0から4.0μmまでの、約2.7μmの焦点深度を有する。
【0042】
フォーカス解像度が選択されると、与えられたフォーカス範囲のための画像数は以下の数式(3)によって決定される。
【0043】
【数3】

【0044】
画像数が決定されると、フォーカス検索の合計時間は、画像数に一つのイメージ当たりのフレーム時間を乗算することで決定される。分析装置16の処理能力を向上するために、解像機構24は細部のコントラストを識別して、画像解像度を低下させることなく最大速度に設定可能である。上述のように、Aptina Imaging社製のモデルMT9P031画像機器は、スナップショット収集モードで作動可能な解像機構24の一例である。Aptina Imaging社製のモデルMT9P031画像機器は、スナップショット・モードで作動する場合、約10〜14msecのフレームの、a)4分の1中心の解析範囲、b)ビン2、c)1msecの露光時間の設定に調整される。
【0045】
上述した自動フォーカス・モードにおいて、画像が撮像される個々の位置間における分析チャンバー20の対物レンズ48に対する移動は一定速度である必要はないが、一定速度であることが好ましい。上述したように、“移動−停止−収集−移動”の撮像モードの作動には問題が伴う。分析チャンバー20の対物レンズ48に対する一定速度の移動は、これらの問題を減少させて解消する。
【0046】
他の自動フォーカス・モードにおいて、フォーカス検索範囲全体のために対物レンズ48に対してZ軸に沿って一定速度で移動する時に、分析チャンバー20は連続撮像される。最初に、チャンバー20は検索領域の開始位置(すなわち、サンプルの特定フィールド)に移動されると共に、Z軸のゼロ点から所定位置に到達するまで加速される。チャンバー20はその後、Z軸の所定位置にあるレンズ48に対して連続的に移動される。
【0047】
図9Aは、レンズ48に対するチャンバー20のZ方向の加速と、その後の定速移動とを示している。Z軸に沿った移動が一定速度に到達すると、カメラのロール・シャッタが開始されると共に、サンプルの連続撮像が開始される。ロール・シャッタ解像機構24は、フィールド内にあるサンプルの撮像をサンプル・フィールドの底部(すなわち、チャンバーの最も低いZ位置)から開始すると共に、サンプル・フィールドの上部(すなわち、チャンバーの最も高いZ位置)に向けて移動する。
【0048】
図9Bは、サンプル・フィールドの底部から上部までのサンプル画像を示している。焦点面が検索範囲内(すなわち、フィールド内のサンプルの底部と上部との間)に配置される場合、撮像される画像のコントラストは、チャンバー20がZ軸に沿って移動する間、イメージ・フィールドの底部から上部に渡りぼやけた状態から鮮明になり(blurred to sharp)、再びぼやけた状態(blurred)に変化する。コントラスト値はその時、焦点面のZ位置に対してプロットすることができる。
【0049】
図9Cは、最良な焦点面の位置52としての、Z軸位置に対応するフォーカス・インデックスのプロット(例えば、画像の鮮明度)を示している。この連続モードにおけるチャンバー20の対物レンズ48に対するZ軸方向の速度は、好ましくは解像機構24が画像を捕捉する間にチャンバー20がフォーカス範囲を通過する速度で設定される。
【0050】
上述したように、Aptina Imaging社製のモデルMT9P031画像機器は、連続撮像モードにおいて作動可能な解像機構24に適用できる一例である。Aptina Imaging社製のモデルMT9P031画像機器をロール・シャッタ連続モードで作動させる場合の推奨設定条件は、a)最大解像度、b)ビン無し(no bin)、c)ロール・シャッタ幅を27列にする1msecの露光時間である。これらの設定において、Aptina Imaging社製のモデルMT9P031は、フレーム時間を約71.66msecで作動することができる。サンプル検索範囲が80μmの場合、対物レンズ48に対するチャンバー20のZ軸方向の速度は80μm/71.66msec、すなわち1.12μm/msecである。
【0051】
他の実施形態において、プログラム可能な分析装置28は、短時間で許容可能なZ軸の焦点位置を決定するのに適用される“スマート・フォーカス(Smart Focus)”処理手順でプログラムされる。上述の方法において、Z軸のサンプル検索範囲は、規定された特定の解像度、例えば20個の画像を取得してこれら20個の画像を生成する時間を必要とする5μmの解像度及び100μmのサンプル検索範囲に従って撮像される。
【0052】
対照的にスマート・フォーカス処理手順は、最適な解像度が達成されたか否かを決定するために、前回の画像に対する個々の画像の解像度を評価する。上述したように、焦点面が検索範囲内にある場合、チャンバー20が対物レンズ48に対してZ軸に沿って移動するので、画像は焦点の外から焦点の中に移動した後、再び焦点の外に移動される。Z軸位置の機能としての解像度内におけるプロットの変更は、ベル曲線(bell curve)で現われる。
【0053】
スマート・フォーカス処理手順は、例えば勾配導関数(derivative of the slope)における変化の兆候、もしくは、データ位置に適合する多項方程式(polynomial equation)の最大位置や最少位置など、曲線勾配の変化を探すことでベル形状の関係(bell-shaped relationship)を利用する。勾配導関数の変化が決定され、もしくは、プロットの最大位置や最少位置が決定されると、さらなるZ軸の撮像は要求されない。最大位置や最少位置で捕捉された画像は最適な鮮明度を備え、さらなる分析に用いることができる。さらなる画像が必要とされないので、この技術は要求される鮮明度で画像を捕捉するのに必要な時間を短縮することができる。
【0054】
多項方程式が分析データに適合されると、精度を低減することなく解像度を低減(例えば、1μm毎に替えて4μm毎に撮像)することで、Z軸の焦点位置を決定する時間をさらに短縮することができる。20個の画像のテストデータは、フォーカス検索範囲における20μm,40μm,80μm(図11〜13に示す、1μm,2μm,4μmの収量解像度)で取得され、画像の鮮明度データはそれぞれの解像度値に選択される。多項方程式は、個々の検索範囲のためのフォーカス・データにも適合される。Z軸位置及び多項方程式に対する画像の鮮明度の値は、個々のフォーカス検索範囲にプロットされる。
【0055】
異なるフォーカス検索範囲にプロットされた結果は、画像の鮮明度データが適合される多項方程式から決定可能なデータと密接に関連することを示している。実際に、多項方程式の適合から決定可能な焦点位置が許容誤差の範囲内になるような相関関係がある。
【0056】
本発明は、位置決め装置26がチャンバー20を対物レンズ48に対してZ軸に沿って一定速度で移動させる操作モードを備えるものとして上述されている。本発明は特に、サンプル・フィールドの個々の画像がZ軸に沿った異なる位置で周期的に捕捉される第一の自動フォーカス・モード及び、チャンバー20が一定速度で移動する期間にサンプル・フィールドを連続撮像する第二の自動フォーカス・モードに適用されるものとして上述されている。これら自動フォーカス・モードの操作は、互いに独立して使用されるか、もしくは、互いに組み合わせて使用される。
【0057】
例えば、統計的に関連する分析データを含む確率が低いサンプル・フィールドは、不連続のスナップショット撮像モードを用いて分析することが可能であり、統計的に関連する分析データを含む確率が高いサンプル・フィールドは、連続撮像モードを用いて分析することが可能である。
【0058】
図14を参照すると、直交格子を重ね合わせた分析チャンバー20が概略的に示されている。サンプル54は、チャンバー20内に静止状態で存在する。チャンバーの外側周囲にあるサンプル・フィールド56は、サンプルを欠いた空の状態で示されている。他の実施形態において、周辺視野56は、統計的に高い確率でサンプル54を含む中央サンプル・フィールド58と比較して、統計的に高い確率でサンプルを欠いた状態(又は、関連する分析データを欠いた状態)にある。
【0059】
両方の自動フォーカス・モードが使用される操作モードにおいて、周辺視野56(すなわち、統計的に関連する分析データを含む確率が低い)は不連続のスナップショット撮像モードを用いて分析され、中央サンプル・フィールド58(すなわち、統計的に関連する分析データを含む確率が高い)は連続撮像モードを用いて分析される。特定のアプリケーションに応じて、本発明の操作は、望ましい精度を維持しつつ効果的で早いサンプルのプロセスが得られる両方の自動フォーカス・モードを用いる。
【0060】
本発明の方法は数々の利点を提供する。例えば、本発明の方法は、実質的に並行処理(連続処理ではなく)において、分析チャンバー20が配置されて撮像されると共に画像処理されるので、液体サンプルの迅速な分析を許容する。
【0061】
本発明の他の利点は、チャンバー20の対物レンズ48に対する連続的なZ軸移動を利用することにある。連続的なZ軸移動は、チャンバー20の対物レンズ48に対する始動及び停止動作のために位置決め装置26が適用される必要性を排除する。
【0062】
本発明は、チャンバー20を一定速度にするための反復的な加速、チャンバー20を一定速度から静止状態にするための減速、及び、チャンバー20を一旦停止させた後に対物レンズ48に対して移動させることに関連付けられる時間も排除する。その結果、始動・停止モードの操作に要求される装置よりも一般的に安価なものを用いて、分析を短時間で実施することが可能になる。
【0063】
本発明の他の利点は、結果の再現性を向上することが可能になり、したがって、接近した間隔で多くの画像が収集されて全体的な精度も向上することができる。本発明は、解像度を低減してフォーカス時間を長くすることなく、広いフォーカス検索範囲を利用することも可能にする。
【0064】
以上、本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明を逸脱しない範囲で種々の変更や同等の部材に代替されることは当業者に理解されるであろう。さらに、特定の状況や部材を本質的範囲から逸脱しない本発明の教示に適用するために多くの修正がおこなわれるであろう。すなわち、本発明の実行のために最良の形態として説明した特定の実施形態に限定されないことを意図している。
【符号の説明】
【0065】
16 分析装置
20 分析チャンバー
22 フィールド照明装置
24 解像機構
26 位置決め装置
28 プログラム可能な分析装置
48 対物レンズ
50 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に静止状態で存在する生物学的液体サンプルを撮像する方法であって、
Z軸と平行なレンズ軸を有する対物レンズに対して、チャンバーをZ軸位置に位置させるステップと、
一方又は両方のチャンバー及び対物レンズを互いに対して移動させるステップと、
Z軸に沿ったフォーカス検索範囲内を一方又は両方のチャンバー及び対物レンズが互いに対して移動している時に、生物学的液体サンプルの一以上の画像を生成するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
画像が生成される時に、一方又は両方のチャンバー及び対物レンズを互いに対してZ軸に沿って一定速度で移動させる請求項1記載の方法。
【請求項3】
画像を生成するステップは、フォーカス検索範囲内でZ軸に関連付けられると共に、定量可能なフォーカス・インデックスを有する画像の周期的な生成を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
定量可能なフォーカス・インデックスが一定である請求項3記載の方法。
【請求項5】
一以上の画像の他の画像に対するより鮮明なフォーカス・インデックスを決定するために、画像のフォーカス・インデックスを比較するステップと、
他の画像に対してより鮮明なフォーカス・インデックスを有する少なくとも一つの画像を分析するステップと、をさらに備える請求項3記載の方法。
【請求項6】
各画像のフォーカス・インデックスの相対量を決定するために、画像のフォーカス・インデックスを比較するステップと、
他の画像よりも大きな相対量のフォーカス・インデックスに関連するZ軸位置で取得された画像を用いてサンプルを分析するステップと、をさらに備える請求項4記載の方法。
【請求項7】
フォーカス検索範囲内で取得された個々の画像のZ軸位置に対するフォーカス・インデックスの相対量をプロットするステップと、
プロットのピークに位置するフォーカス・インデックスを有する画像を識別するステップと、
プロットのピークに位置するフォーカス・インデックスを有する画像を用いてサンプルを分析するステップと、をさらに備える請求項6記載の方法。
【請求項8】
フォーカス検索範囲内で取得された画像のために、個々の画像のZ軸位置に対するフォーカス・インデックスの相対量に多項方程式を適合するステップと、
多項方程式の勾配の変化を識別するステップと、
勾配の変化と関連するZ軸位置で取得された画像を用いてサンプルを分析するステップと、をさらに備える請求項6記載の方法。
【請求項9】
フォーカス検索範囲内にあるサンプルの単一画像を生成するために、サンプルの連続撮像を含む一以上のサンプル画像を生成するステップにおいて、画像がフォーカス検索範囲内のZ軸位置に関連すると共に定量可能なフォーカス・インデックスを有する複数の部分を備える請求項2記載の方法。
【請求項10】
定量可能なフォーカス・インデックスが一定である請求項9記載の方法。
【請求項11】
一以上の画像部分の他の画像部分に対するより鮮明なフォーカス・インデックスを決定するために、画像部分のフォーカス・インデックスを比較するステップと、
他の画像に対して鮮明なフォーカス・インデックスを有する少なくとも一つの画像部分を分析するステップと、をさらに備える請求項10記載の方法。
【請求項12】
各画像のフォーカス・インデックスの相対量を決定するために、画像部分のフォーカス・インデックスを比較するステップと、
他の画像よりも大きな相対量のフォーカス・インデックスに関連するZ軸位置で取得された画像部分を用いてサンプルを分析するステップと、をさらに備える請求項10記載の方法。
【請求項13】
個々の画像部分のZ軸位置に対するフォーカス・インデックスの相対量をプロットするステップと、
プロットのピークに位置するフォーカス・インデックスを有する画像部分を識別するステップと、
プロットのピークに位置するフォーカス・インデックスを有する画像部分を用いてサンプルを分析するステップと、をさらに備える請求項12記載の方法。
【請求項14】
個々の画像部分のZ軸位置に対するフォーカス・インデックスの相対量に多項方程式を適合するステップと、
多項方程式の勾配の変化を識別するステップと、
勾配の変化と関連するZ軸位置で取得された画像部分を用いてサンプルを分析するステップと、をさらに備える請求項10記載の方法。
【請求項15】
一定速度は、画像が生成される近接したZ軸に沿った位置間の距離を一つの画像を生成するのに掛かる時間で除算した値よりも低い請求項2記載の方法。
【請求項16】
画像を生成するステップは、チャンバーの第一の部分に配置されたフォーカス検索範囲内にあるサンプルを不連続な画像で周期的に生成すると共に、サンプルの単一画像を生成するために、チャンバーの一以上の第二の部分に配置されたフォーカス検索範囲内にあるサンプルを連続的に撮像するステップを含み、
チャンバーの第一の部分に配置されたサンプルの不連続な画像は、Z軸位置と関連付けられると共に、定量可能なフォーカス・インデックスを有し、
チャンバーの第二の部分に配置されたサンプルの連続的な画像は、Z軸位置と関連付けられると共に、小部分と定量可能なフォーカス・インデックスとを有する請求項2記載の方法。
【請求項17】
チャンバー内に静止状態で存在する生物学的液体サンプルを撮像する装置であって、
レンズ軸を有する対物レンズを備えたフィールド照明装置と、
一方又は両方の対物レンズ及びチャンバーを互いに対して位置決めするのに適用される位置決め装置と、
チャンバー内のサンプルの撮像に適用される解像機構と、
一方又は両方の対物レンズ及びチャンバーを互いに対して一定速度でレンズ軸と平行なZ軸に沿って移動させる位置決め装置の制御に適用され、かつ、一方又は両方のチャンバー及び対物レンズがZ軸に沿ったフォーカス検索範囲内を互いに対して一定速度で移動している時に、生物学的液体サンプルの一以上の画像を生成するのに適用されるプログラム可能な分析装置と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
分析装置は、画像が生成される時に一方又は両方のチャンバー及び対物レンズを互いに一定速度でZ軸に沿って移動させる位置決め装置の制御に適用される請求項17記載の装置。
【請求項19】
分析装置はフォーカス検索範囲内にあるサンプルの画像を周期的に生成する解像機構の制御に適用されると共に、各画像をフォーカス検索範囲内のZ軸位置に関連付けさせ、各画像は定量可能なフォーカス・インデックスを有する請求項18記載の装置。
【請求項20】
定量可能なフォーカス・インデックスは一定である請求項19記載の装置。
【請求項21】
分析装置は、一以上の画像の他の画像に対するより鮮明なフォーカス・インデックスを決定するために、画像のフォーカス・インデックスを比較すると共に、他の画像に対してより鮮明なフォーカス・インデックスを有する少なくとも一つの画像を分析するのに適用される請求項19記載の装置。
【請求項22】
分析装置は、フォーカス検索範囲内のサンプルの単一画像を生成するために連続撮像する解像機構の制御に適用されると共に、固有のZ軸位置を画像の特定部分と結合させ、各画像部分は定量可能なフォーカス・インデックスを有する請求項18記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−516650(P2013−516650A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547312(P2012−547312)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062570
【国際公開番号】WO2011/082344
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(501354521)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】