説明

生物機能性組成物の滅菌の手段および方法

本発明は、とりわけ、安定化剤である少なくとも一つの担体;および該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子を含む閉じた滅菌容器に関し、前記担体は、部分的にまたは完全に接着された生体分子を覆っており、そして前記少なくとも一つの担体は、ジペプチドまたはトリペプチドのような(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニン、およびそれらの混合物から成る群より選択される。本発明は、本発明に従う滅菌容器を作製するための方法、およびそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、安定化剤である少なくとも一つの担体;および該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子を含む閉じた滅菌容器に関し、前記担体は、部分的にまたは完全に接着された生体分子を覆っており、そして前記少なくとも一つの担体は、ジペプチドまたはトリペプチドのような(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニン、およびそれらの混合物から成る群より選択される。本発明は、本発明に従う滅菌容器を作製するための方法、およびそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、特許出願および製造者のマニュアルを含む多数の文献が引用されている。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連していると考えられなくとも、その全体を参考文献として本明細書中に援用する。より具体的には、すべての参照された文献は、本明細書中に援用されるものとして各個々の文献が具体的および個別に示されているように、同じ程度で本明細書中に援用される。
【0003】
治療薬および予防薬の製造における主要な関心事は、微生物混入物がそのような製品のレシピエントまたはユーザーへ伝達され得ないことを保証することである。しかしながら、これらの医薬製品は、一般的に、例えばウイルスのような病原体を含有しているかもしれない生物学的材料から供給され、またはそれらの製造工程は、病原体が混入されていることが疑わしい試薬または培養培地を利用する。
【0004】
国際的指針は、それ故、これらの潜在的細菌性またはウイルス性混入物質を除去する、または不活性化する専用の工程を医薬品の製造プロセスに導入することを推奨している。1996年2月14日のEuropean Note for Guidance CPMP/BWB/268/95は、約4Log(=4log10)またはそれ以上感染性を減少させることが可能な方法として、ウイルスを不活性化する、または除去するための明らかに効果的な方法が何であるかを規定している。
【0005】
多数の方法が、ウイルスおよびその他の混入物質の除去または不活性化のために存在している;例えば、エチレンオキシド処理、溶剤−界面活性剤(SD) 処理、加熱または酸pH処理、クロマトグラフィー、ナノフィルター、低温滅菌または照射。
【0006】
しかしながら、これらの方法のすべては、深刻な欠点に悩まされている。
エチレンオキシド処理は、しばしばタンパク質と反応するという欠点を有する。加えて、エチレンの副産物の既知の組織毒性および発癌可能性のため、生物学的製剤へは非常に少量のエチレンオキシドを加えることのみ許容されている。
【0007】
WO 97/42980は、熱不活性化を使用する、生物学的に活性な化合物の滅菌方法を記載している。該方法は、熱安定性を与えるのに十分な量のトレハロースを含有する乾燥サンプルを得ること、および実質的にウイルスを不活性化するのに十分な温度および持続時間の加熱条件に乾燥サンプルを曝露することを含んでいる。しかしながら、適用される時間および温度は、滅菌の規定に適合していない。滅菌とは、すべての形態の微生物生命体(細菌、ウイルス、真菌、胞子)の除去または破壊のために有効なプロセスとして定義されている(WHO Aids Series No.2, second edition. Guidelines on sterilization and disinfection methods’effective against human immunodeficiency virus (HIV). Geneva: World Health Organization, 1989)。統計上の理由から、完全除去を検証の間に証明することができない。従って、用語“無菌性保証レベル”(SAL)が、滅菌度の尺度として使用される。ISO 11139: 2006(1)に従うと、無菌性保証レベル(SAL)は滅菌後のアイテムに存在する単一の生存可能微生物の可能性である。用語SALは一般的に10−6又は10−3の定量的値をとる。この定量値を滅菌の保証に適用する場合、10−6のSALが10−3のSALよりも低い値をとるが、より大きな滅菌の保証を提供する。10−6のSALとは、特定のアイテムが混入しているのは百万の内の1未満(10−6)の可能性であることを意味する。SAL=10−6は臨床アイテムについて受容可能な基準である。乾熱滅菌によりSAL=10−6を保証するためには、時間および温度が重要である。以下の時間および温度の組み合わせが一般的に受け入れられており、SAL=10−6を保証するには上回るべきである:
170℃(340゜F)で60分
160℃(320゜F)で120分
150℃(300゜F)で150分
121℃(250゜F)で12時間。
【0008】
WO 97/42980に記載の方法は、SAL=10−6を保証するには十分ではない。従って、用語“滅菌”が誤用されており、該方法は、滅菌方法というよりむしろ“ウイルス減少方法”である。
【0009】
US 5,730,933は、照射滅菌を使用する生物機能性化合物の不活性化のための方法を開示している。照射滅菌は、高い貫通能力、相対的に低い化学的反応性、および温度、圧力、真空度または湿度を調節することなく即効性の利点を有する。さらに、照射滅菌は、産業界で多様な製品で広く用いられ、線量レベルおよびその生物学的効果の両方についてよく知られている。一般的には、>25kGyの照射線量が滅菌過程の検証の間にSAL=10−6を保証することが証明されている。
【0010】
US 5,730,933に開示された照射滅菌方法は、タンパク質(ゼラチン、ウシ血清アルブミン)およびフリーラジカル消去剤を含有する保護溶液中での生体化合物のインキュベーションならびに生体化合物の凍結を含んでいる。生物学的に活性な化合物の凍結は、US 5,730,933に開示された方法の本質的な部分であるが、生物機能性化合物の活性が、US 5,730,933中に引用された実施例において、滅菌及び凍結前の活性の10パーセント未満に劇的に減少するという欠点を有している。さらに、US 5,730,933で使用されたタンパク質含有溶液は、これらの溶液中でインキュベートされた生物機能的化合物が微生物に汚染される高いリスクを有しているという欠点を有する。
【0011】
汚染されていない生物学的製剤を生産するための別の溶液は、それらの無菌生産である。しかしながら、このアプローチの主な欠点は、全生産工程を無菌室内、無菌条件下で実施しなければならないことである。このことは多くの時間を必要とし、そしてコストも高い。加えて、無菌生産によっては低い安全レベルしか達成できない。通常、無菌生産はSAL=10−3のみしか保証できず、該プロセスは、無菌条件下で生産される千の特定のアイテム中で1未満しか微生物汚染がないのを保証することが検証されるのを意味する。これは通常の滅菌の千分の一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO 97/42980
【特許文献2】US 5,730,933
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】WHO Aids Series No.2, second edition. Guidelines on sterilization and disinfection methods’effective against human immunodeficiency virus (HIV). Geneva: World Health Organization, 1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故、生物学的製剤の製造に適合する滅菌方法を提供する必要性がある。
生物機能性化合物を滅菌する場合の主要な課題は、滅菌間に活性化合物の不可逆的変化を避けることである。治療用タンパク質は、一般的には複雑な構造を有しそして極めて脆弱である;即ち、分解(それら一次構造の修飾)および/または変性(それらの二次、三次および四次構造の修飾)に感受性があり、それは病原性の強いウイルス不活性化または滅菌方法にそれらが耐えるのを困難にしている。
【0015】
滅菌後のこれらの分子修飾は、これらの化合物の生物学的活性又は抗原特性の喪失、貯蔵によるそれらの剤形の減少した安定性、およびそのような製品のレシピエントに、繰り返しの投与または適用によるアレルギー反応のリスクを与えるであろう新規の免疫原性特性、を生じさせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、担体、該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子、接着された生体分子を部分的にまたは完全に覆う少なくとも一つの安定化剤;および任意に蓋、を含む滅菌容器に関し、前記少なくとも一つの安定化剤は、(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンおよびそれらの混合物、並びに請求の範囲で特徴付けられた他の態様から成る群から選択される。
【0017】
加えて、本発明は、安定化剤である少なくとも一つの担体;および該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子、を含む密閉滅菌容器に関し、前記担体は接着された生体分子を部分的または完全に覆い、そして前記少なくとも一つの担体は、例えば、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンおよびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0018】
驚いたことに、本発明に従う容器、または本発明の方法に従って作製可能な容器または作製される容器中に生体分子を提供することにより、当該技術分野の水準に勝る、以下の利点が達成される。
【0019】
本発明の容器中に含まれる生体分子は、10−6のSALを得ることが知られている標準滅菌法後でさえも、それらの活性を非常に高い程度で保持している。それ故、生体分子を含有する容器は滅菌前に充填および密閉でき、そして滅菌でき、好ましくは、最終またはバルク滅菌できる。滅菌(最終またはバルク)は、非滅菌または半滅菌条件下での、生体分子含有容器の作製を可能にする。この特徴のため、即ち、無菌状態下で作製しなくてはならない、従来の生体分子用容器の作製のためのコストと比較して、生産コストを大幅に減少することができる。
【0020】
そのような方法で得られた(最終またはバルク)滅菌されている滅菌容器は、測定可能な病原体を含有していない(即ち、生存可能なまたは本質的に生存可能な病原体が存在しない、または不活性化された病原体またはそれらの活性を有意なパーセンテージで保持している病原体が検出不可能である量)、安定な生物機能性製品を含む。
【0021】
本発明はさらに、滅菌容器を作製するための方法に関する。
当該方法は、生物機能性製品へ安定性を与えるのに十分な量で安定化剤を含有する容器中にサンプルを得ること、および病原体、特に細菌およびウイルスを実質的に不活性化するのに十分な期間、該サンプルを滅菌条件下に曝露すること、を含む。滅菌条件は、エチレンオキシド処理、加熱不活性化、加圧滅菌、プラズマ滅菌および好ましくは、ベータ線またはガンマ線照射などの照射を含む。
【0022】
滅菌過程の間に、スカベンジャーを加える必要はない。
安定化剤の導入により、ほとんどの生体分子を、長時間室温でも保管できる。
容器中の担体上での生体分子の可逆的接着のため、適した溶媒を添加後、生体分子の急速な放出が達成された。このことは、患者への注射のための、生体分子含有溶液の直接使用を可能にする。
【0023】
図面は以下のことを示す:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】可逆的に接着された生体分子および保護コーティングを有する担体を含んでいるバイアルが示されている。生体分子(例えば、サイトカイン)は、安定化剤溶液により包埋され、それによって貯蔵間の脱水または滅菌間の照射のようなストレス影響に対して保護される。
【図2】異なる担体が示されている:a)担体は、非可溶性ゲルまたは可溶性ゲルである;b)担体は、不織網状繊維構造体(non woven fibre network)である;c)担体は、網目状または織網状繊維構造体(woven fibre network)である;d)保護コーティングそれ自体が担体であり、そして生体分子を覆っており、またはバイアルそれ自体が担体である;e)担体は、開放多孔質(海綿の様な)または焼結構造を有する;f)担体は、ナノ、マイクロまたはマクロ粒子を含む;g)バイアルそれ自体が担体であり、表面を増加させるミクロ構造またはマクロ構造を有する(例えば、針状の構造)。
【図3】バイアルそれ自体が担体である例が示されている。最初に、乾燥により生体分子を担体に接着させた。続いて、安定化剤溶液を添加し、そして同様に乾燥させた。生体分子(ここでは、インターロイキン8=IL-8)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、ヒト好中性顆粒球に対するIL-8の走化活性である。
【図4】バイアルそれ自体が担体である例が示されている。最初に、乾燥により生体分子を担体に接着させた。続いて、安定化剤溶液を添加し、そして同様に乾燥させた。生体分子(ここでは、インターロイキン8=IL-8)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての加速貯蔵(45℃)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、ヒト好中性顆粒球に対するIL-8の走化活性である。
【図5】バイアルそれ自体が担体である例が示されている。最初に、乾燥により生体分子を担体に接着させた。続いて、安定化剤溶液を添加し、そして同様に乾燥させた。生体分子(ここでは、dsDNA)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の一部を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、初期値のパーセントでの検出可能DNA量である。
【図6】安定化剤それ自体が担体である例が示されている。生体分子および安定化剤溶液を添加し、一緒に乾燥した。生体分子(ここでは、インターロイキン8=IL-8)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、ヒト好中性顆粒球に対するIL-8の走化活性である。
【図7】安定化剤それ自体が担体である例が示されている。生体分子および安定化剤溶液を添加し、一緒に乾燥した。生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての貯蔵および/または滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【図8】生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)の生物学的活性に対する異なる脱離溶液の影響。0.5M H2SO4を除いて、この実験で試験された他の脱離溶液は、生体分子の生物学的活性に有意な影響を与えなかった。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【図9】生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)の脱離は、生体分子を開放多孔性ポリウレタンフォーム(供給元 A、大きい孔)へ接着させた後に試験した。クエン酸緩衝液pH4.75および1M NaClが少量の生体分子しか脱離させなかった一方、有意により多くの生体分子を、それぞれ、1M NaCl+0.02Mイミダゾールおよびリン酸緩衝食塩水で脱離できた。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【図10】生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)の脱離は、生体分子を開放多孔性ポリウレタンフォーム(供給元 B、より小さい孔)へ接着させた後に試験した。0.02Mイミダゾールの有無にかかわらず、クエン酸緩衝液pH4.75およびリン酸緩衝食塩水は1M NaClよりも少しだけ良く脱離した。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【図11】生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)の脱離は、生体分子を開放多孔性ポリウレタンフォーム(供給元Smith&Nephews、小さい孔)へ接着させた後に試験した。生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての貯蔵および/または滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液(アルブミンおよびマンニトール)は生体分子を保護した。抗体の回収は、ほとんど100%(5μg/ml)である。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【図12】生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)の脱離は、生体分子をPVA−ヒドロゲルへ接着させた後に試験した。生体分子は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての貯蔵および/または滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。抗体の回収率は非常に高かった。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【図13−1】例示の切断可能リンカーの化学的構造。
【図13−2】例示の切断可能リンカーの化学的構造。
【図14】凍結乾燥および滅菌後の抗肝炎抗体を保護するために使用されたアミノ酸組成物の抗A型肝炎試験(機能性ELISA)。
【図15】サポニンの構造クラスはアミノ酸併用の保護効果を増強する可能性を有する。好適であるのはサポニン グリシルリジン酸の使用である。
【図16】グリチルリチン酸を添加した少なくとも3個のアミノ酸の併用および2個のアミノ酸の併用は、50kGyのベータ線照射で滅菌した場合、固定化抗体の最大保護を提供する。
【図17】アミノ酸組成物は、異なるストレス条件下で保護を提供する。最高の保護が、異なる線量でのベータ線照射、および温度上昇下での人工的エージングについて提供される。ガンマ線照射またはエチレンオキシド滅菌法ではより少ないが、なお有意義である。
【図18】少なくとも5個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは長期貯蔵間の保護を提供する。非滅菌サンプルについては、45℃で62日後、約80%の抗原結合能力が温存された。滅菌サンプル(ベータ線、25kGy)では、45℃で62日後、それらの抗原結合能力の約70%を維持した。2個のみのアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、滅菌に関わらず、貯蔵プロセスの間に約40%のみの抗原結合能力しか維持しなかった。ポストコーティングなしでは、20〜30%のみの活性しか保存されなかった。
【図19】少なくとも5個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは長期貯蔵間の保護を提供する。非滅菌サンプルについては、45℃で62日後、約80%の抗原結合能力が温存された。滅菌サンプル(ベータ線、25kGy)では、45℃で62日後、それらの抗原結合能力の約70%を維持した。2個のみのアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、滅菌に関わらず、貯蔵プロセスの間に約40%のみの抗原結合能力しか維持しなかった。ポストコーティングなしでは、20〜30%のみの活性しか保存されなかった。
【図20】ポストコーティング溶液への1mMグリチルリチン酸の添加は保護効果を強化する。少なくとも5個のアミノ酸およびグリチルリチン酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、長期貯蔵間に保護を提供する。非滅菌サンプルについては、45℃で62日後、約90%の抗原結合能力が保存された。滅菌サンプル(ベータ線、25kGy)は、45℃で62日後、それらの抗原結合能力の約80%を維持した。2個のアミノ酸およびグリチルリチン酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、滅菌に関わらず、貯蔵プロセスの間に約70%の抗原結合能力が維持された。ポストコーティングなしでは、20〜30%のみの活性しか保存されなかった。
【図21】ポストコーティング溶液への1mMグリチルリチン酸の添加は保護効果を強化する。少なくとも5個のアミノ酸およびグリチルリチン酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、長期貯蔵間に保護を提供する。非滅菌サンプルについては、45℃で62日後、約90%の抗原結合能力が保存された。滅菌サンプル(ベータ線、25kGy)は、45℃で62日後、それらの抗原結合能力の約80%を維持した。2個のアミノ酸およびグリチルリチン酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、滅菌に関わらず、貯蔵プロセスの間に約70%の抗原結合能力が維持された。ポストコーティングなしでは、20〜30%のみの活性しか保存されなかった。
【図22】ガンマ線照射で滅菌したサンプルは、18個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングで保護した場合、約85%の活性を維持し;この効果はグリチルリチン酸でさらには増強されず;5個のアミノ酸では残存活性は75%であり;2個のアミノ酸では40%のみを維持した。2個のアミノ酸での保護はグリチルリチン酸の添加により改善し、残存活性は65%である。ETOで滅菌したサンプルは、18個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングで保護した場合、約85%の活性を維持し;この効果はグリチルリチン酸でさらには増強されない。5または2個のアミノ酸で保護した場合、ほとんど保護効果を有せず;グリチルリチン酸の添加はわずかに保護を増強する。
【図23】アミノ酸、ジペプチドまたはそれらの混合物、任意にグリチルリチン酸と一緒のアミノ酸ポストコーティング。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第一の態様において、本発明は、担体、該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子、該(1または複数の)生体分子を部分的にまたは完全に覆う少なくとも一つの安定化剤、および任意に蓋、を含む滅菌容器に関し、前記少なくとも一つの安定化剤は、(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンおよびそれらの混合物から成る群より選択され、好ましくは、該安定化剤それ自体が担体である。
【0026】
本発明は、安定化剤である少なくとも一つの担体;および該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子を含む密閉滅菌容器を提供し、前記担体は該接着された生体分子を部分的にまたは完全に覆い、そして前記少なくとも一つの担体は、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンおよびそれらの混合物から成る群より選択される。
【0027】
本発明の文脈において用語“容器”は、生体分子のためのすべての適した容器を指す。これらの容器は、限定されるわけではないが、バイアル、アンプル、冷凍容器(cryocontainers)、チューブ、小型ガラス瓶(phials)、フラスコ 、ビンおよびバッグから選択できる。
【0028】
容器および蓋(容器が蓋を含む場合)は、別々の要素により形成でき(例えば、ゴム栓を有するガラスバイアル)、または一つのピースで製造することもできる(例えば、プラスチックアンプル)。
【0029】
用語“生体分子”、“担体”及び“安定化剤”に関連する用語“少なくとも一つの”は、少なくとも一つの種類の生体分子および/または少なくとも一つの種類の安定化剤のような少なくとも一つの種類の分子の存在に関する。本用語は、分子の数には関していない。
【0030】
本発明の文脈において、用語“生体分子”は、基本的に生物起源であるいずれの材料を記述し、それは医薬的、診断的および科学的応用に関連する特徴を有している。生体分子は、(ポリ)ペプチドまたはペプチド、炭水化物、脂質および脂肪酸、および核酸などの、好ましくは生分解性の重合体分子、ならびに一次代謝産物、二次代謝産物および天然産物などの小分子を含む、好ましくは生体により産生される有機分子である。その他の好ましい生体分子は、上述の分子の組み合わせ、例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン、糖脂質、核酸−タンパク質複合体である。用語“生体分子”は、天然起源物から単離することができる天然の分子を含むだけでなく、天然に存在する生体分子またはそれらの生物学的に活性な断片(の誘導体)、並びに、人工的、組換え的または半合成的分子、即ち、合成的に、半合成的にまたは組換え的に産生される天然に存在する分子または人工的な分子も含む。人工分子は、例えば、導入された改変を有する、天然に存在する分子から誘導されたものである。上述のクラスに属しているもの以外の生分解性重合体分子は、リグニンおよびポリヒドロキシルアルカノエート(天然重合体)、およびポリアルキレンエステル、ポリ乳酸およびその共重合体、ポリアミドエステル、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコールおよびポリ酸無水物(人工重合体)である。上述の分子または分子のクラスのすべてが用語“生体分子”の範囲に入る。
【0031】
当業者には、本発明に適用される用語“生体分子”が、真核または原核細胞、組織、ウイルスならびにそれらの断片(例えば、細胞小器官、膜またはカプシド)などの構造内あるいは構造上に含まれている上述の生体分子も含むことが理解されよう。本発明に関する用語“生体分子”は、肝細胞または腫瘍細胞内に、またはそれらの上に含まれている生体分子ならびにそれらの断片も含む。本発明のこの態様において、生体分子は単離形で固体担体に結合することができるか、または前記真核または原核細胞、組織、ウイルスまたはそれらの断片中にあるいは上に含まれることができる。もしくは、生体分子を含む構造(好ましくは、それらの表面上に)が、本発明に従う担体として働くことができる。
【0032】
好ましい生体分子は、医薬的、診断的および/または科学的応用について関係する特性を発揮する。言い換えると、本発明に応用可能な生体分子は、好ましくは生物学的活性を発揮し、そのことがそれらを(1または複数の)薬学的活性剤、(1または複数の)診断薬および/または(1または複数の)研究ツールとして、有用および応用可能にしている。
【0033】
本明細書で使用される用語“(ポリ)ペプチド”は、ペプチドの群並びにポリペプチドの群(後者の用語は用語“タンパク質”と互換的に使用される)を含む分子の群を記述する。ペプチドの群は、30個のアミノ酸までの分子から成り、ポリペプチドの群は30個以上のアミノ酸を有する分子から成る。本発明に従うと、“ペプチド”の群は、30個のアミノ酸または未満の長さのタンパク質の断片も記述する。ポリペプチドまたはペプチドは、さらに二量体、三量体およびそれより高次のオリゴマーを形成しても、即ち、一つ以上のポリペプチドまたはペプチド分子から成っていてもよい。こうした二量体、三量体などを形成しているポリペプチドまたはペプチド分子は、同一でもあるいは同一でなくてもよい。対応するより高次の構造は、それ故にホモまたはヘテロ二量体、ホモまたはヘテロ三量体などと名付けられる。用語“ポリペプチド”、“タンパク質”および“ペプチド”は、天然に修飾されたポリペプチド/ タンパク質およびペプチドも意味し、ここで該修飾は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などにより達成される。こうした修飾は、本分野では公知である。特に好ましい(ポリ)ペプチドは、抗体またはそれらの結合特異性を保持するそれらの断片、酵素、受容体、膜タンパク質、輸送タンパク質、血液凝固因子、ホルモン、サイトカインまたはそれらの機能的断片である。
【0034】
用語“ペプチド”の範囲に入る好適な安定化剤は、ジペプチドおよびトリペプチドである。従って、担体であることができる少なくとも一つの安定化剤は、好ましくは、ジおよび/またはトリペプチドである。より好ましくは、安定化剤は少なくとも2個(少なくとも2個の安定化剤に相当する、または安定化剤が担体である場合、少なくとも2個の担体;以下の数字に従って変えられるべき)、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の異なるジおよび/またはトリペプチドを含むことができる。代表的なジペプチドには、グリシルグルタミン(Gly−Gln、グルタミン単独と比較して増強された安定性を示している)、グリシルチロシン(Gly−Tyr)、アラニルグルタミン(Ala−Gln、後者二つはチロシン単独と比較して水での増加した溶解性を示している)およびグリシルグリシンが挙げられる。さらに天然に存在するジペプチドは、カルノシン(ベータ−アラニル−L−ヒスチジン)、アンセリン(ベータ−アラニル−N−メチルヒスチジン)、ホモアンセリン(N−(4−アミノブチリル)−L−ヒスチジン)、キョートルフィン(L−チロシル−L−アルギニン)、バレニン(またはオフィジン)(ベータ−アラニル−N tau−メチルヒスチジン)、グロリン(N−プロピオニル−γ−L−グルタミル−L−オルニチン−δ−lac エチルエステル)およびバレチン(シクロ−[(6−ブロモ−8−エン−トリプトファン)−アルギニン])である。さらなる人工ジペプチドは、アスパルテーム(N−L−a−アスパルチル−L−フェニルアラニン 1−メチルエステル)およびシュードプロリンである。代表的なトリペプチドには、グルタチオン(γ−グルタミル−システイニル−グリシン)およびその類似体オフタルミン酸(L−γ−グルタミル−L−α−アミノブチリル−グリシン)およびノルオフタルミン酸(γ−グルタミル−アラニル−グリシン)である。さらなるトリペプチドは、イソロイシン−プロリン−プロリン(IPP)、グリプロメイト(Gly−Pro−Glu)、サイロトロピン放出ホルモン(TRH、チロリベリンまたはプロチレリン)(L−ピログルタミル−L−ヒスチジニル−L−プロリンアミド)、メラノスタチン(プロリル−ロイシル−グリシンアミド)、ロイペプチン(N−アセチル−L−ロイシル−L−ロイシル−L−アルギニナール)およびエイセニン(pGlu−Gln−Ala−OH)が挙げられる。本発明に従った医学的応用(以下を参照)に関連して使用される場合、安定化剤として使用される少なくとも一つのトリペプチドおよびより好ましくはすべてのトリペプチドが何らの薬理学的特性も発揮しないことが好ましい。本発明のこの好ましい態様に従った組成物は、好ましくは、タンパク質またはアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドではないタンパク質の断片を含有していない。従って、本発明のこの好ましい態様において、組成物は、タンパク質または3個より多いアミノ酸から成るそれらの断片を含有していない。その代わり、この態様に従った組成物は、好ましくは、少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、さらにより好ましくは少なくとも4個、少なくとも5個,少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個の異なるアミノ酸、またはより多くは少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または少なくとも20個などの異なるアミノ酸をさらに含む。
【0035】
本発明に従う用語“核酸”または“核酸分子”は、cDNAまたはゲノムDNAなどのDNA、およびアンチセンスRNAまたはsiRNAなどのRNAを含む。さらに含まれるのは、DNAまたはRNAの合成または半合成誘導体および混合ポリマーなどの当該技術分野において既知の核酸模倣分子である。こうした核酸模倣分子または核酸誘導体は、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミデート核酸、2’-O-メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール核酸(HNA)、ロックド核酸(LNA)およびペプチド核酸(PNA)を含む(Braasch and Corey, Chem Biol 2001, 8: 1を参照)。LNAは、リボース環が2’−酸素および4’−炭素間のメチレン結合により制約されているRNA誘導体である。核酸分子は、当業者により容易に認識されるように、追加の非天然または誘導体ヌクレオチド塩基を含有することができる。核酸分子はさらに、リボザイム、アプタマー、プラスミドおよび染色体を含む。核酸分子は、単離形で、またはタンパク質(例えば、ヒストンタンパク質またはリボソームのタンパク質)などの他の生体分子との複合体で、本発明に従って使用することができる。
【0036】
用語“炭水化物”は、通常アルデヒドまたはケトン官能基の部分ではない各々の炭素原子上に一つ結合された複数のヒドロキシル基を有するアルデヒドまたはケトンである有機化合物に関する。分子の長さに依存して、炭水化物はモノ、オリゴまたはポリサッカリドと称される。炭水化物が非炭水化物分子に結合されると、生じた分子は配糖体と称される。修飾炭水化物は、例えば、N−アセチルエステル、カルボキシル又はスルフェート側鎖を有し、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトサミン、グルコサミンを含有することができる。代表的な炭水化物は、アミロペクチン、グリコーゲン、デンプン、アルファ−およびベータ−グルカン、デキストランおよびグリコサミノグリカン様ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸および配糖体などのそれらの誘導体である。
【0037】
特に好ましいタンパク質は、抗体またはそれらの結合特異性を保持するそれらの断片である。本発明において適用可能な抗体は、例えば、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができる。用語“抗体 ”は、まだそれらの結合特異性を保持している抗体の誘導体も含む。抗体の断片には、とりわけ、Fab断片、F(ab’)2またはFv断片が含まれる。抗体およびそれらの断片を作製するための技術は当該技術分野では公知であり、例えば、Harlow and Lane “ Antibodies, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988およびHarlow and Lane “Using Antibodies: A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1998 に記載されている。これらの抗体は、例えば、目的とする分子の免疫沈降、または患者の体液から望まれない分子を除去するために使用することができる。
【0038】
用語“抗体”は合成、キメラ、単鎖(scFvなど)およびヒト化抗体またはまだそれらの結合特異性を保持している抗体の誘導体または断片なども含む。多様な手順は当該技術分野において既知であり、そのような抗体および/または断片の作製のために使用することができる。さらに、単鎖抗体の作製のために記載されている技術は、目的の分子またはそれらの断片へ特異的に結合する単鎖抗体を産生するために適応できる。また、トランスジェニック動物を、ヒト化抗体を発現するために使用することができる。最も好ましくは、該抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の作製については、連続細胞株培養により産生される抗体を提供するいずれの技術も使用できる。そのような技術の例には、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein Nature 256 (1975), 495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, Immunology Today 4 (1983), 72)およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al., Human Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985), 77-96)が含まれる。BIAcore systemにおいて用いられた表面プラズモン共鳴を、目的の生体分子のエピトープへ結合するファージ抗体の効率を増加させるために使用できる(Schier, Human Antibody Hybridomas 7 (1996), 97-105; Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7-13)。用語“抗体”が、細胞中で発現することができる抗体構築物、例えば、とりわけウイルスまたはプラスミドベクターを介してトランスフェトおよび/または遺伝子導入することができる抗体構築物を含むことも、本発明の文脈において予想される。抗体またはそれらの断片が一度得られたら、該抗体それ自身又はそれをコードするDNAを配列決定することができ、抗体またはそれらの断片を小規模または大規模で組換え的に産生するための情報が提供される。組み換え抗体の作製方法は、当業者には既知である。
【0039】
本分野では公知であるように、抗体またはそれらの誘導体または断片は、さらに化学的に修飾できる。
該抗体はいずれのクラスの抗体でもよい。該抗体はモノクローナルであり、IgG、IgMまたはIgYクラスであるのが最も好適である。IgY抗体は、ニワトリにおけるIgG抗体の類似体を表す。
【0040】
安定化剤は、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から成る群より選択される。同じことが、担体である安定化剤にも当てはまり、それについて以下の例示のリストも適用される。
【0041】
好ましくは、安定化剤は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、ラクトアルブミン)、Hsp100/Clpファミリー、Hsp90ファミリー、Hsp70ファミリー、Hsp60/GroELファミリーの熱ショックタンパク質および低分子量熱ショックタンパク質(sHsps)、一般的シャペロン:BiP、GRP94、GRP170、レクチンシャペロン:カルネキシンおよびカルレティキュリン、HSP47およびERp29などの非古典的分子シャペロン、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ペプチジルプロリル シス−トランス−イソメラーゼ(PPI)またはERp57などのフォールディングシャペロンから選択される。
【0042】
安定化剤は、アミノ−、N−アセチル−、ヒドロキシエチル−、スルフェート−修飾を有するまたは有しない、モノ−、オリゴおよびポリサッカリド、好ましくはヒドロキシエチル澱粉(HES)、グリコーゲン、アミラーゼ、デキストラン、デキストリンまたはイヌリン、キシロース、マンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、フコース、グリセリンアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、ラクトース、ラクツロース、トレハロース、マルトース、スクロース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、であることができる。安定化剤は、シャペロンまたはカゼインも含む。シャペロンは、他の巨大分子構造の非共有結合フォールディング/アンフォールディングおよび組立/分解を助けるタンパク質であるが、巨大分子構造がそれらの正常な生物学的機能を果たしている時には、これらの構造には発生しない。
【0043】
さらに、安定化剤はイオン液体または適合溶質であること、または含むことができる。イオン液体は、イオンが弱く配位されている塩であり、それためこれらの溶剤が液体であることを生じている。イオン液体は、それらにより覆われている物質を、有害な可能性のある重大な影響または放射線照射から保護するのに適していると示唆されている。本発明の文脈において、イオン液体は、滅菌での分解から生体分子を保護すると考えられる。適合溶質は、タンパク質表面から排除されるべきそれらの特性により特徴付けられる、両性、水結合有機分子である。
【0044】
安定化剤は、サポニンである、またはサポニンを含有することができる。サポニンは、天然起源で見い出される、天然起源から誘導されるまたは化学的に合成できる、二次代謝産物を形成している化学化合物のクラスである。サポニンは多様な植物種において特に豊富に観察される。サポニンは、現象的には水溶液中で振盪した場合に石鹸様泡立ちを生み出すことにより、そして構造的には脂溶性トリテルペン誘導体と組み合わされた1またはそれ以上の親水性グリコシド部分を有するそれらの組成物により、両親媒性グリコシドにグループ分けされる。サポニンの例は、グリシルリチン酸、グリシルレチン酸、グルクロン酸、エスチン、ヘデラコサイド(hederacoside)およびジギトニンである。本発明に従った医学的応用(以下を参照)に関連して使用される場合、安定化剤として使用されるサポニンは何らの薬理学的特性も発揮しないことが好ましい。
【0045】
好ましくは、サポニンはグリチルリチン酸(グリシルリジン酸も)またはそれらの誘導体であり、そして適合溶質はエクトインまたはヒドロキシエクトインである。
グリチルリチン酸の誘導体は当該技術分野では公知であり、炭水化物部内へのアミノ酸残基の結合、またはグリチルリチン酸のグリコシド鎖内への2−アセトアミド−β−D−グルコピラノシルアミンの導入による、カルボキシルおよび水酸基上でのグリチルリチン酸の変換により生成されるものが含まれる。その他の誘導体は、グリチルリチン酸のアミド、二つのアミノ酸残基および遊離30−COOH官能基を有するグリチルリチン酸のコンジュゲート、グリチルリチン酸分子の炭水化物部でのアミノ酸アルキルエステルの少なくとも一つの残基のコンジュゲートである。具体的な誘導体の例は、例えば、Kondratenko et al. (Russian Journal of Bioorganic Chemistry, Vol 30(2), (2004), pp. 148-153)に見ることができる。
【0046】
好ましい態様において、少なくとも一つの安定化剤および/または少なくとも一つの生体分子は、緩衝溶液に含まれている。使用されるべき緩衝液は、とりわけ、被覆される/包埋されるべき生体分子に依存する。生体分子との接触に一般的に適した緩衝液は、例えば、リン酸塩、クエン酸、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、乳酸塩、アンモニウム、グリシン、バルビツール酸塩、HEPES、MOPS、MES、TRISである。抗体に適した代表的な緩衝剤は、以下にさらに記載されている。
【0047】
別の好ましい態様において、少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物は、少なくとも二つの異なるアミノ酸のアミノ酸混合物を含む。本発明の態様のより好ましい態様において、少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物は2から18個の間の、より好ましくは2〜10個、さらにより好ましくは2〜8個、および最も好ましくは2〜5個または5〜8個の異なるアミノ酸を含む。もしくは、少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個または少なくとも8個の異なるアミノ酸、またはより多くは少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または少なくとも20個などの異なるアミノ酸を含む。少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物に含まれる異なるアミノ酸の数は、好ましくは18個を超えない。
【0048】
安定化剤を形成する、または安定化組成物中に含有されているアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸ならびに人工アミノ酸またはそれらの誘導体から選択することができる。天然に存在するアミノ酸とは、例えば、タンパク質を構成する20のアミノ酸:グリシン、プロリン、アルギニン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸(本発明に従うと、前記用語はアスパラギン酸およびグルタミン酸の塩も含む)、グルタミン、システイン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、メチオニン、セリン、バリン、チロシン、スレオニンおよびトリプトファン、である。他の天然に存在するアミノ酸は、例えば、カルニチン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ホモシステイン、シトルリン、ヒドロキシリジンまたはベータ−アラニンである。
【0049】
アミノ酸の誘導体は、例えば、N−アセチル−トリプトファン、ホスホノセリン、ホスホノスレオニン、ホスホノチロシン、メラニン、アルギニノコハク酸およびそれらの塩またはDOPAである。人工アミノ酸は、異なる側鎖長および/または側鎖構造を有するアミノ酸および/またはアルファ−C原子と異なった部位にアミノ基を有するアミノ酸である。
【0050】
もし少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物がシステインを含むならば、乾燥重量で1%未満、好ましくは、0.5%未満のシステインを少なくとも二つのアミノ酸の混合物内に含む。このことは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または少なくとも10個のアミノ酸、またはより多くは少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または少なくとも20個などのアミノ酸を含む組成物へも適用される。
【0051】
システインに含まれるSH基のため、システインを含む組成物は、例えば、SH基で起こる酸化を受けやすく、そして不快な匂いを生じ、および/または組成物は褐色の色合いに変色する。これらの望ましくない効果を最小限に抑えるために、特に組成物が医療装置に関連して使用される場合、組成物中に含まれるシステインは上述のごとく減少させるべきである。しかしながら、たとえこれらの効果が望ましくなくとも、それらは、より高い比率のシステインを含みまたはさもなくば褐色がかった色または不快な匂いをもたらしている本発明の組成物の適合性には影響を及ばさない。
【0052】
より好ましい態様において、少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物は、上に定義した少なくとも二つの異なるアミノ酸のアミノ酸混合物および好ましくはグリチルリチン酸であるサポニンを含む。この態様において、安定化剤または安定化組成物は、好ましくはアミノ酸、ジペプチドおよび/またはトリペプチドではないタンパク質またはタンパク質の断片を含まない。従って、本発明のこの好ましい態様においては、組成物はタンパク質または三つを超えるアミノ酸から成るそれらの断片、またはヒトまたは動物起源である加水分解タンパク質を含有していない。そのような組成物は、それらに埋め込まれた生体分子が夾雑する危険性がない。それはさらに、既知の安定化組成物より費用効率が高い代替物である。
【0053】
別のより好ましい態様において、サポニンは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または少なくとも10個の異なるアミノ酸、またはより多くは少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または少なくとも20個などの異なるアミノ酸を含む組成物のように、最低アミノ酸数の上記リストに含まれているいずれかの数の異なるアミノ酸を含んでいる、前記少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物中に含まれている。
【0054】
特に好適であるのは、(a)非極性、脂肪族R基を有するアミノ酸;(b)極性、非荷電R基を有するアミノ酸;(c)正に荷電したR基を有するアミノ酸;(d)負に荷電したR基を有するアミノ酸;および(e)芳香族R基を有するアミノ酸、の各群の少なくとも一つのアミノ酸を含む組成物である。
【0055】
天然に存在するアミノ酸は、上記の特徴的な群に分類することができ(Nelson D.L. & Cox M.M., “Lehninger Biochemie” (2005), pp. 122-127)、それぞれから少なくとも一つのアミノ酸を本発明に従った組成物のために選択した。人工アミノ酸などの天然に存在しないアミノ酸もそれに応じて分類できる。少なくとも2または少なくとも3など、各群の1より多くののアミノ酸を本発明に従った組成物に含ませることができるが、現在のところ、1個のみのアミノ酸を各群から選択するのが好ましい。当業者はさらに、各群の同数のアミノ酸が、本発明に従って使用される組成物中に存在しなくてもよいことを理解している。むしろ、各群の少なくとも一つのアミノ酸が存在する限り、任意の組み合わせのアミノ酸を選択できる。
【0056】
特に好適であるのは、組成物中に含まれているアミノ酸がアラニン、グルタミン酸、リジン、スレオニンおよびトリプトファンである組成物である。別の特に好ましい安定化組成物は、アスパラギン酸塩、アルギニン、フェニルアラニン、セリンおよびバリンを含む。
【0057】
同様に特に好ましいのは、組成物中に含まれているアミノ酸がアルギニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、グルタミン酸、リジンおよびトリプトファンである、またはそれらから選択される、少なくとも一つの安定化剤または安定化組成物である。この組成物は、滅菌後、特に照射後のその特性に関して特に都合がよいことが示されている。アミノ酸の前記組み合わせは、照射後に何らの不快な匂いまたは退色ももたらさないことが示された。しかしながら、たとえこれらの影響が望ましくないにしても、それらは、より高い比率のシステインを含んでいる、またはさもなければ褐色がかった色または不快な匂いをもたらしている本発明の組成物の適合性には影響を及ばさない。
【0058】
生体分子は、担体に可逆的に接着する。用語“接着された”と互換的に使用される用語“固定化された”または“固定化すること”は、担体上への生体分子の固定に関する。
用語“可逆的に接着された”とは、担体へ接着されている場合、生体分子が適した手段により前記担体から放出されることができることと定義される。接着の種類、例えば、接着が共有結合または非共有結合であるかに依存して、生体分子を放出する異なった手段が適用可能である。例は、生体分子がタンパク質の場合におけるプロテアーゼによる切断、pH変化または温度の変化である。生体分子は必要とされるまで担体に接着されており、そしてその時に初めて担体から放出される。
【0059】
上述の技術は、固体担体上に生体分子を固定化する、あるいは可逆的に接着させるための単なる例である。本発明はこれらの例に限定されないことを強調しておく。その代わり、当該技術水準で既知のいずれかの従来法を、固体担体上に(一つまたは複数の)生体分子を固定化する、あるいは可逆的に接着させるために適用できる。
【0060】
生体分子の可逆的接着は、該生体分子が担体から迅速に放出することができるように選択される。このことに関し、用語“迅速”とは、前記生体分子の50%以上(60%、70%または80%など)が、1時間、30分または20分など2時間以内、30分または20分で60%、30分または20分で70%、30分または20分で80%、好ましくは10分以内に85%以上、および最も好ましくは1分以内に98%以上、などのいずれかの組み合わせで放出できることを意味する。このことは、例えば、以下に記載されている方法の一つを適用することにより達成できる。そのような迅速な放出は、本発明の容器を医療または臨床応用に適したものにしている(以下を参照)。さらに、生体分子の可逆的接着は、該生体分子が臨床応用直前に放出されるように、好ましくは選択される。
【0061】
可逆的接着は、共有結合または非共有結合であることができる。
好ましくは、非共有結合は高度の親和性および特異性を有する非共有結合である。そのような非共有結合の例は、ストレプトアビジン−ビオチンまたはアビジン−ビオチン系により形成されるものである。この例において、ストレプトアビジン/アビジンは適した担体に共有結合で結合されている。ビオチン化生体分子が次ぎに非共有結合で、しかし高い親和性でストレプトアビジン/アビジンに結合される。過剰のビオチンを添加することにより、該結合は競合的に抑制され、そしてビオチン化生体分子が放出される。
【0062】
生体分子はリンカー、好ましくは切断可能リンカーを介して接着することができる。適したリンカーには、限定されるわけではないが、
a)チオール、メルカプタン、システイン、メルカプトエタノールまたはジチオスレイトールなどの-SH基を有する試薬の添加により容易に切断できる、SDAD(NHS-SS−ジアジリン)、スルホSAND、DSPなどのジスルフィド架橋を有するリンカー
b)特異的プロテアーゼ、好ましくはヒト酵素で切断できる、ペプチド結合を有するリンカー
c)超音波を介して切断可能であるリンカー
d)例えば、ヒドロキシルアミンにより切断できる、エステル結合様EGSを有するリンカー
e)より高いpH(例えば、pH 11.6)で切断できる、スルホン様BSOCOESを有するリンカー
d)メタ過ヨウ素酸ナトリウムにより切断できる、シス−ジオール様DSTを有するリンカー、
が含まれる。
【0063】
もしくは、生体分子は、本発明の方法に関連して以下でさらに詳細に記述する、乾燥により可逆的に接着させてもよい。この態様において、可逆的接着は、生体分子および安定化剤として使用された(一つまたは複数の)分子および固体担体を乾燥後に一緒に固着させることにより達成される。担体が安定化剤である場合、生体分子および安定化剤として使用された分子を一緒に固着させる。生体分子の放出は、上の化合物への液体の添加により起こり、こうして担体から生体分子および安定化分子を溶解させる/可溶化させる。
【0064】
担体は、二次元または三次元であることができる。担体は平面、球面、ビーズ様、メッシュ、ネットまたはファイバーネットであってもよい。
一つの好ましい態様において、担体は容器に含まれているか、または容器の一部を形成する。この態様に有用な容器は、ガラスまたはプラスチックバイアルである。容器表面は、表面を増加させるため、この目的に特別な構造、例えば針状の微細構造を示すことができる。
【0065】
別の好ましい態様において、そして担体が安定化剤ではない場合、担体は固体、好ましくは多孔質(例えば、フォームまたは海綿)容器である。適した担体材料は、ガラス、医療用ステンレス鋼、金属合金(例えば、クロム−コバルト−モリブデン、窒化酸化チタン(chrome cobalt molybdenum, titan nitride oxide))、ヒドロキシアパタイト、シリコン、ポリスチレン、ポリ−L−乳酸;ポリウレタン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリアクリルニトリル、ポリアミド、PMMA、フリースワディング(fleece wadding)、開放多孔質フォーム、プラスチックまたはガラス、および網状プラスチックまたはガラス、および海綿(海綿動物)由来の構造体、または(焼結)セラミックスからなる群より選択される。
【0066】
他の好ましい固体担体は、メッシュ、ファイバーネットまたは焼結材料である。
さらに好ましい態様において、担体はビーズである。ビーズはろ過により、またはもしDynabeads(登録商標)又はMACS(登録商標)ビーズのような磁気ビーズが使用されたならば磁石により、生体分子から分離できる。加えて、ナノビーズを使用することができ、それは生体分子−ビーズ複合体として患者内に注射できる。
【0067】
さらに好ましい態様において、担体は半固体である。半固体担体の材料は、例えば、ヒドロゲル(例えば、PolyHema)またはゼラチン様たんぱく質混合物(例えば、Matrigel)のような膨潤可能であるゲルから選択できる。異なる好ましい態様において、担体は可溶化可能である。担体は、可溶性ポリマー、例えば、ポリサッカリド、ポリペプチドまたはポリエチレングリコールから選択することができる。さらになる可溶化可能担体には、結晶またはイオン液体が含まれる。一般的に、本発明に従う安定化剤は可溶化可能である。
【0068】
より好ましい態様において、可溶化可能担体は、好ましくは、水性、任意に緩衝液に溶解するタンパク質性構造および/または炭水化物構造を含む。
好ましい態様において、容器は内部に空気酸素を本質的には含んでいない。この態様において、用語“本質的には含んでいない”とは、空気と比較して、本発明の容器内の空気酸素が非常に低い含量であることを指す。従って、“空気酸素を本質的には含んでいない”とは、10%未満%、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、さらにより好ましくは1%未満、および最も好ましくは0%から1%の間の、容器内の空気酸素の含量を意味する。
【0069】
別の好ましい態様において、容器は内部に液体、好ましくは水を本質的には含んでいない。この態様において、用語“本質的には含んでいない”とは、生体分子および安定化剤の全容積または容器の水非含有内容物と比較して本発明の容器内の液体、好ましくは水が非常に低い含量であることを指す。従って、“液体を本質的には含んでいない”とは、10%未満%、好ましくは5%未満、より好ましくは1%、0.5%または0.2%未満のような2%未満の容器内の液体の含量を意味する。
【0070】
上の二つの態様は、容器内の環境を最適化することにより、安定化剤/担体に接着されおよび滅菌を施されている生体分子の安定性のさらなる増強を生じる。例えば、容器から液体を除去することにより、水のような液体へ放射線照射を適用することで発生する反応性酸素種をより少なくするので、滅菌により容器内の担体/安定化剤に接着されている生体分子が破壊されることをより少なくする。
【0071】
代替の好ましい態様において、容器は、以下に記述した本発明の方法により作製できる、または作製される。
別の態様において、本発明は生体分子のための容器を作製する方法に関し:(a)容器内に担体を挿入すること;(b)前記担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;(c)少なくとも一つの生体分子が少なくとも一つの安定化剤により部分的にまたは完全に覆われるように、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも一つの安定化剤を含む溶液中で、少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する前記担体をインキュベートすること;(d)容器を密閉すること;および(e)容器を滅菌すること、を含む。
【0072】
担体が安定化剤であるケースについては、本発明は、滅菌された生体分子のための容器を作製する方法に関し:(a)ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される安定化剤である少なくとも一つの担体を容器内に挿入すること;(b)少なくとも一つの生体分子が前記少なくとも一つの担体により部分的にまたは完全に被覆されるように、前記担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;(c)容器を密閉すること;および(d)容器を滅菌すること、を含む。
【0073】
本発明はさらに、生体分子のための容器を作製する方法に関し:(a)担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;(b)少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する担体を容器内に挿入すること;(c)少なくとも一つの生体分子が少なくとも一つの安定化剤により部分的にまたは完全に覆われるように、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも一つの安定化剤を含む溶液中で、少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する前記担体をインキュベートすること;(d)容器を密閉すること;および(e)容器を滅菌すること、を含む。
【0074】
さらに別の態様において、本発明は生体分子のための容器を作製する方法に関し:(a)担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;(b)少なくとも一つの生体分子が少なくとも一つの安定化剤により部分的にまたは完全に覆われるように、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも一つの安定化剤を含む溶液中で、少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する担体をインキュベートすること;(c)少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する担体を容器内に挿入すること;(d)容器を密閉すること;および(e)容器を滅菌すること、を含む。
【0075】
担体が安定化剤であるケースについては、本発明は、滅菌された生体分子のための容器を作製する方法に関し:(a)少なくとも一つの生体分子が前記少なくとも一つの安定化剤により部分的にまたは完全に覆われるように、ジペプチドまたはトリペプチドなどの(ポリ)ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される安定化剤である担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;(b)少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する担体を容器内に挿入すること;(c)容器を密閉すること;および(d)容器を滅菌すること、を含む。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、生体分子のための最終的滅菌容器を作製する方法を提供し、以下の工程を含む:
(a)担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;
(b)接着された生体分子を有する担体を容器内に挿入すること
(c)生体分子が少なくとも一つの安定化剤により部分的にまたは完全に覆われるように、(ポリ)ペプチド、アミノ酸、澱粉、糖、リン酸塩、多価アルコール、ポリエチレングリコールまたはそれらの混合物から選択される一つまたはそれ以上の安定化剤を含む組成物中で担体をインキュベートすること;
(d)容器を密閉すること;
(e)最終的に容器を滅菌すること。
【0077】
工程(a)、(b)および(c)は、異なった順序で行うことができる:(a)、(b)および(c)を連続的に行うことができる。もしくは、工程(b)を工程(a)の前に行うことができ、そして次ぎに工程(c)を続ける。第三の代替案において、順序は最初に(b)、次ぎに(c)、次ぎに(a)である。
【0078】
本発明の容器について与えられた定義、および前記容器に関連して記述された好ましい態様は、適用可能な場合、本発明の上述の方法、特に担体および/または安定化剤または安定化組成物の性質および/または組成物、生体分子、および安定化剤および/または担体および/または生体分子の接着または放出に関する方法のものが準用される。このことは、特に、安定化剤がアミノ酸混合物、およびサポニンおよび特に好適なそれらの態様のような好適な追加の構成物質であることに関連する好適な態様において含まれる。
【0079】
本発明の方法に適用できる別の代替法において、担体へ生体分子を可逆的に接着させることおよび/または少なくとも一つの安定化剤を含む溶液中でのインキュベーションは、容器内への被覆担体の挿入に先立った切断工程を含むバルク生産において行われる。バルク生産の方法は、当業者には公知である。
【0080】
接着された生体分子を有する担体の挿入は手動または自動で行うことができる。
容器の閉鎖は、例えば、蓋(例えば、ゴム栓)を適用すること、一ピースで形成されるガラスまたはプラスチック容器の場合は開口部を溶融させることにより実施できる。
【0081】
本方法およびそれにより作製される本発明の容器の主な利点は、生体分子含有容器を(最終またはバルク)滅菌できることである。本発明の文脈において用語“最終滅菌”は、作製プロセスの最後に、即ち、生体分子および安定化剤が担体に接着され、そして前記担体が容器内に挿入された後で滅菌を実施できることである。適した滅菌方法には、限定されるわけではないが、エチレンオキシド(EO)処理、(乾燥)加熱または酸pH処理、溶剤−界面活性剤(SD)処理、X線、加圧滅菌またはプラズマ滅菌が含まれる。特に好適であるのは照射であり、好まれるのはベータ線照射またはガンマ線照射である。
【0082】
それ故、(最終またはバルク)滅菌は、非滅菌または半滅菌条件下での生体分子含有容器の作製を可能にする。この特徴のため、完全滅菌下(即ち、無菌状態)で作製しなければならなかった、生体分子のための従来の容器の作製コストと比較して作製コストを非常に低減できる。
【0083】
しかしながら、滅菌が最後である必要はなく、むしろ、少なくとも一つの安定化剤の添加後の別の時に行うことができる。本発明の滅菌法の別の利点は、生物学的材料の滅菌に凍結が必要とされないことである。このことは、滅菌されるべき生物学的材料の生物機能性が、当該技術水準で既知の方法(例えば、US 5,730,933)と比較して、非常に増強できるので非常に都合がよい。
【0084】
さらに好ましい態様において、少なくとも一つの安定化剤はサポニン、好ましくはグリシルリジン酸またはそれらの誘導体を含む。適した誘導体は上に定義されている。
別の好ましい態様において、本発明の方法はさらに、生体分子を乾燥する工程を含む。この工程は、好ましくは、少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する担体をインキュベートした後に、または、担体が安定化剤である場合、上述のように少なくとも一つの安定化剤を含む溶液中で前記担体に少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させた後に実施する。生体分子および安定化剤として使用された分子(例えばアミノ酸、随意に、サポニンに関連する、および/または随意に、上述のジおよび/またはトリペプチドに関連する)が乾燥後に一緒に固着されて可逆的接着が達成される場合、可逆的に接着する工程は、担体と生体分子を一緒に乾燥させることを含む。接着の可逆性に対応する生体分子の放出は、上記一緒に固着した化合物への液体の添加により起こり、このようにして担体から生体分子及び安定化分子を溶解する/可溶化する。好ましくは、残存液体含量が、本来適用した組成物の10%未満%、好ましくは5%未満、より好ましくは1%、0.5%または0.2%未満のような2%未満になるまで生体分子を乾燥する。好適な乾燥方法は、風乾、噴霧乾燥、凍結乾燥および沈殿などの安定化組成物を除去するために使用された方法を含むが、それらに限定されない。さらに適した技術は、結晶化および微結晶化を含む。
【0085】
本発明に従った方法は、さらに工程(f)、即ち、担体からの生体分子の溶出を含む。溶出は使用された担体に依存して適用され、限定されるわけではないが、高塩分濃度の溶液、ビオチン含有溶液、またはプロテアーゼまたはSH含有物質を含む溶液を含むことができる。
【0086】
さらなる態様において、本発明は、好ましくは、1時間、30分または20分など2時間以内に接着された生体分子の50%以上(60%、70%または80%など)、30分または20分で60%、30分または20分で70%、30分または20分で80%、より好ましくは10分以内に85%以上、および最も好ましくは1分以内に98%以上などのいずれかの組み合わせの速度で担体から生体分子を脱離させる溶液が適用される容器を含む。担体からの(一つまたは複数の)生体分子の脱離は、例えば、高または低イオン強度、pHの変化、および/または前記溶液中に存在するスルフヒドリル基含有物質、ヒドロキシルアミン、過ヨウ素酸、プロテアーゼによる、非共有結合および/または共有結合の切断により達成できる。
【0087】
別の態様において、(一つまたは複数の)生体分子は、超音波および/または照射(好ましくは、赤外、可視または紫外光)の助けにより担体から脱離される。
本発明に従う方法のさらなる利点は、前記方法により作製された生体分子含有容器が長期貯蔵に適していることである。医療市場への新規製品または修正製品の導入は、製品が使用された場合、安全性および効力に影響することができる性能のいかなる大きな減少もなく、長期間(1〜5年)貯蔵できるという保証を必要とする。そのような製品については、全期間、熟成(ambient-aged)サンプルは通常存在しないので、全期間サンプルが入手可能になるまで、“加速エージング(accelerated-aging)”試験を実施し、これらの製品についての性能および貯蔵寿命クレームの裏付けとしての実験データを提供する必要がある。
【0088】
加速エージングの簡便化されたアプローチは、単一の加速温度で試験すること、次ぎに、温度が10℃上昇する毎に、化学反応の速度が因子Q10増加することを述べているルールを用いること、に基づいている。一般に用いられる医療用ポリマーで選択される典型的な関係はQ10=2である;即ち、使用または貯蔵温度よりそれぞれ10℃上昇するにつれて反応速度が倍になる。
【0089】
診断または治療に使用される生体分子の十分な貯蔵寿命を達成するため、これらの生体分子は、その変性を防止するために冷凍される必要がある(Cleland et al., (2001), Journal of Pharmaceutical Sciences Vol. 90, pp. 310-321)。さらに、目的の生体分子は、糖(例えば、スクロース、トレハロース、マンニトール)または塩などのいわゆるリオプロテクタント(lyoprotectant)を含有する安定化溶液中でインキュベートされる必要がある。しかしながら、生体分子は凍結により変性する危険性があるため、特に、例えば、IgM抗体のような不安定生体分子のために、4℃または室温での貯蔵法についての要求が存在する。
【0090】
驚いたことに、本発明に従う少なくとも一つの安定化剤により覆われた、本発明に従う容器中の生体分子を提供することにより(即ち、全体的にまたは部分的に(即ち、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、さらにより好ましくは、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または99%など)担体中/上に可逆的に接着された)、前記生体分子は、それらの生物学的活性の有意な喪失なしに、45℃で7日間まで貯蔵することができることを発見した。前述のルールに従うと、この“加速エージング”は、5℃で16週間の貯蔵に相当する。
【0091】
好ましくは、貯蔵温度は、−273℃から−15℃であり、特に好ましいのは、2℃〜8℃および2℃〜30℃の温度である。
本発明の容器または方法の好ましい態様において、少なくとも一つの安定化剤および/または少なくとも一つの生体分子は緩衝化された、好ましくは水性溶液に含まれている。使用されるべき緩衝液は、とりわけ、覆われる/包埋されるべき生体分子に依存する。生体分子との接触に一般的に適した緩衝液は、例えば、リン酸塩、クエン酸、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、乳酸塩、アンモニウム、グリシン、バルビツール酸塩、HEPES、MOPS、MES、TRISである。
【0092】
本発明の容器または方法の別の好ましい態様において、前記安定化剤は、1%未満、より好ましくは0.3%未満のツイーン(Tween)、好ましくはツイーン80を含む。
ツイーンは、いくつかの医薬品および食品製品で使用される乳化剤および界面活性剤のクラスであるポリソルベートについての一般名称である。それらは油性成分を水性製品内へ可溶化するためにしばしば使用される。ポリソルベートは、脂肪酸でエステル化されたペグ化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)から誘導される油性液体である。ポリソルベートの例は、ポリソルベート20(ツイーン20またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ツイーン40またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミレート)、ポリソルベート60(ツイーン60またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)およびポリソルベート80(ツイーン80またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)である。ツイーン80が、本発明で使用される組成物において最も好適である。
【0093】
本発明の過程において、1%未満のツイーン(好ましくは、生体分子およびアミノ酸の乾燥質量に関して)の添加が、本発明に従った液体組成物の取り扱い間での泡沫化を回避することが見出されている。
【0094】
好ましい態様において、本発明の方法は、容器を密閉することに先立ち、および少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させた後または少なくとも一つの接着された生体分子を有する担体を容器内に挿入した後、容器から空気中酸素を除去するおよび/または容器から液体、好ましくは水を除去する。
【0095】
本発明の容器に関連して上述したように、上記の態様の特色は、容器内の環境を最適化することにより、安定化剤/担体に接着されおよび滅菌を施されている生体分子の安定性のさらなる増強を生じる。例えば、容器から液体を除去することで、滅菌により容器内の担体/安定化剤に接着されている生体分子が破壊されることをより少なくする。
【0096】
異なる態様において、本発明は、少なくとも一つの生体分子を含む滅菌溶液を作製するための方法に関し:(a)本発明に従う生体分子のための容器を作製するための方法を実施すること;そして(b)担体から少なくとも一つの生体分子を溶出すること;そして任意に(c)工程(b)と同時に、先だってまたは後で、構造的に変性された生体分子を復元することを可能にする復元溶液を適用すること、を含む。もしくは、この態様の工程(b)および(c)は、上にさらに記述した本発明の滅菌容器を作製するための方法の一部を形成することができる。
【0097】
用語“溶出すること”とは、担体からの少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子の放出に関する。溶出は、好ましくは、接着の種類(即ち、それが上述の共有結合かまたは非共有結合かにより)に依存した適した条件下、緩衝化または非緩衝化塩溶液などの緩衝化水性溶液または水を使用して達成することができる。
【0098】
溶出速度はすでに上述されている。上に規定された適した溶出速度は、本発明の容器を医療応用に適したものにしており、そこで装置は数分以内で医療応用のために準備されるべく要求される。この態様において、容器内に適した、好ましくは水性溶液を注入することにより溶出が達成され、そして、溶出された生体分子が容器から離れそして患者の体内に広がるように、患者へ適用される。
【0099】
好ましくは、復元溶液はシャペロン(例えば、Hsp100/Clpファミリー、Hsp90ファミリー、Hsp70ファミリー、Hsp60/GroELファミリーの熱ショックタンパク質および低分子量熱ショックタンパク質(sHsps))を含む。一般的なシャペロンは、例えば、BiP、GRP94、GRP170であり、レクチンシャペロンは、例えば、カルネキシンおよびカルレティキュリンであり、非古典的分子シャペロンは、例えば、HSP47およびERp29であり、フォールディングシャペロンは、例えば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ペプチジルプロリル シス−トランス−イソメラーゼ(PPI)、ERp57、イオン液体、および/またはアルギニンである。
【0100】
好ましい態様において、工程(b)および任意に(c)後、滅菌溶液の作製のための方法はさらに、溶出した少なくとも一つの生体分子をカラムまたはフィルター上に適用することを含む。適したカラムまたはフィルターは、例えば、DEAE、適したマトリクス様セファロースまたはスチロールに結合されたコレスチラミン、ポリエチレンイミン、などのイオン交換カラム、またはセファロースG25または炭で満たされているカラムなどの分子ふるいカラムである。
【0101】
前記の適用は、その担体からの生体分子の放出後の直接のおよび/または患者内への注入間の、生体分子含有溶液の精製に相当する。この工程は、接着された生体分子に損傷を与えるであろう物質の除去、並びに滅菌プロセス間に形成されたであろう変性生体分子の除去を可能にする。
【0102】
本発明に従う容器は、診断、予防および治療への応用に使用することができる。従って、本発明の容器は医療用装置または診断用装置の一部を形成する。本発明に従って安定化された生体分子を含む生物学的構成要素、および非生物学的部分の併用であるそのような装置は、生物学的装置併用製品とも称される。
【0103】
治療用装置には、単独でまたはその他の要素または体外循環に使用される医療用装置と組み合わされた、医療用インプラント、カテーテル、ステント、チュービングが含まれる。
【0104】
治療アプローチは、医療用装置の文脈において本発明の容器のin vivo用途並びにex vivo用途を含むことができる。従って、本発明の容器を含む装置をin vivo用途のために患者体内に移植することができ、容器内へ(体)液が入ることで生体分子を徐々に放出する。ex vivo用途のためには、本発明の容器を含む装置を、処置すべき体液の循環と接続することができる。患者の動脈または静脈に由来する血液を、例えば、そのような装置を介して導き、そしてその後患者体内に導管から戻すことができる(血流との接続)。あるいは、体液サンプルは、in vitroで担体と共にインキュベーションすることができる。後者の処置の次の工程において、体液を患者の体内に再導入することができる。これらすべての応用は、含まれている生体分子を溶解するために容器内へ液体を作用させる必要があり、続いて、例えば、薬として作用することができる。
【0105】
本発明の全体にわたり使用される場合、用語“患者”は、病気を持っている患者または疾患を有する患者、並びに健康な被検体を含む。本発明に従う患者は、医学的配慮、ケア、または治療を受けるいずれかのヒトである。このヒトは、ほとんどの場合、しかし常にではないが、病気であるかまたは傷害を有しており、そしてそのような場合、医師またはその他の医療専門家による治療を必要としている。言い換えると、用語“患者”は、病気であってもなくてもよい“被検体”と互換的に使用される。被検体は、動物であってもよく、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。上述に従って、患者はまた、例えば、疾患状態または健康状態について、緊急にまたは日常的に診断される健康なヒトである。
【実施例】
【0106】
実施例が本発明を例示する。
実施例1:ガラスバイアル中のインターロイキン−8を滅菌した;バイアルそれ自体が担体である。
【0107】
実験法:
インターロイキン−8(IL-8, R&A, 208-IL)を、10μg/ml までPBS溶液(Ca2+/Mg2+非含有、PAA, H15−002)で希釈した。5μlの溶液(50ng IL-8)をガラスバイアルに添加し、乾燥するまで4時間回転させた。25μlの安定化溶液(A=20g/lアルブミン(Biotest Pharma)および10g/lマンニトール(Serag Wiesner, 219675)、B=20g/lアミノ酸混合物および1mMグリチルリチン酸(アンモニウム塩、Fluka, 50531))を加え、一晩回転/乾燥させた。
【0108】
バイアルは≧25kGy(ベータ線照射)で滅菌した。非滅菌対照は、低温状態下で貯蔵した。
アッセイ:
好中性顆粒球は10% ACDA全血から分離した。20mlのACDA血(10%)を2mlのHES(Grifols 662650)で沈降させた。上清を7mlのパーコール(Percoll)(L6143)にピペットで移し、2000xgで20分遠心分離した。単離した顆粒球を1%自己血清中に再懸濁し、0.5x106/mlの細胞数に設定した。
【0109】
陽性対照として、5μlのIL-8水溶液(50ng)を、25μlの安定化溶液(AおよびB)に溶解した。各滅菌バイアルに1mlのPBS(Ca2+/Mg2+含有, Hyclone, SH3026401)(1%自己血清で)を加え、乾燥フィルムを溶解させた。
【0110】
サンプルの走化活性を検出するため、滅菌および非滅菌バイアルからの完全IL-8水溶液および対照を12ウェルプレート内にピペットで加えた。遊走フィルター(3μm、Corning, 3462)を挿入し、500μlの顆粒球浮遊液をフィルター内にピペットで加えた。プレートを、37℃で30分インキュベートした。遊走した細胞の数は、FACSおよび計数ビーズ(Invitrogen,C36950)により各ウェル中の細胞を計数することにより検出した。
【0111】
結果:
図3を参照。
生体分子(ここでは、インターロイキン8=IL-8)は、もし安定化剤が加えられていなければ、続いての滅菌(≧25kGy照射)の間に生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、ヒト好中性顆粒球に対するIL-8の走化活性である。
【0112】
実施例2:ガラスバイアル中のインターロイキン−8を滅菌した;安定化剤それ自体が担体である。
実験:
インターロイキン−8(IL-8)を、10μg/ml までPBS溶液(Ca2+/Mg2+非含有、PAA, H15−002)で希釈した。5μlの溶液(50ng IL-8)および25μlの安定化溶液(A=20g/lアルブミン(Biotest Pharma)および10g/lマンニトール(Serag Wiesner, 219675)、B=20g/lアミノ酸混合物および1mMグリチルリチン酸(アンモニウム塩、Fluka, 50531))を混合し、ガラスバイアル内へピペットで加えた。バイアルを一晩回転/乾燥した。
【0113】
バイアルは≧25kGyでの照射により滅菌した。非滅菌対照は、低温状態下で貯蔵した。
アッセイ:
好中性顆粒球は10% ACDA全血から分離した。20mlのACDA血(10%)を2mlのHES(Grifols 662650)で沈降させた。上清を7mlのパーコール(L6143)にピペットで移し、2000xgで20分遠心分離した。単離した顆粒球を1%自己血清中に再懸濁し、0.5x106/mlの細胞数に設定した。
【0114】
陽性対照として、5μlのIL-8水溶液(50ng)を、25μlの安定化溶液(AおよびB)に溶解した。各滅菌バイアルに1mlのPBS(Ca2+/Mg2+含有, Hyclone, SH3026401)(1%自己血清で)を加え、乾燥フィルムを溶解させた。
【0115】
サンプルの走化活性を検出するため、滅菌および非滅菌バイアルからの完全IL-8水溶液および対照を12ウェルプレート内にピペットで加えた。遊走フィルター(3μm)を挿入し、500μlの顆粒球浮遊液をフィルター内にピペットで加えた。プレートを、37℃で30分インキュベートした。遊走した細胞の数は、各ウェル中の細胞を計数することにより検出した(FACSおよび計数ビーズにより)。
【0116】
結果:
図6を参照。
生体分子(ここでは、インターロイキン8=IL-8)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての滅菌(≧25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、ヒト好中性顆粒球に対するIL-8の走化活性である。
【0117】
実施例3:ガラスバイアル中の抗マウスIgGを滅菌した;安定化剤それ自体が担体である。
実験法:
抗マウスIgG(ビオチン化、Jackson ImmunoResearch, 115-065-003)を、PBS(Ca2+/Mg2+非含有、PAA, H15-002)で4μg/mlに希釈した。25μl(100ng)の抗体溶液および2倍に濃縮した25μlの安定化溶液(A=20g/lアルブミン(Biotest Pharma)および10g/lマンニトール(Serag Wiesner, 219675)、B=20g/lアミノ酸混合物および1mMグリチルリチン酸(アンモニウム塩、Fluka, 50531))を混合し、ガラスバイアル内にピペットで加えた。バイアルを一晩、回転/乾燥させた。
【0118】
バイアルは≧25kGyでの照射により滅菌した。非滅菌対照は、低温状態下で貯蔵した。
アッセイ:
ELISAプレート(Greiner Bio-one, 655061)を抗原(マウスIgG,Innovativ Research,Ir-Ms-Gf)で覆った:抗原を1μg/mlに希釈し、100μlを各ウェルにピペットで加え、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄用緩衝液(25x濃縮、Invitrogen,WB02)で2回洗浄した。プレートをアルブミン(5%)でブロックし、再び3回洗浄した。
【0119】
すべてのサンプルバイアルに、200μlのPBSを加え、乾燥フィルムを溶解させた(理論上は5μg/ml)。サンプルを、PBSで10ng/mlに希釈した。抗体濃度を計算するため、新鮮な抗体の段階希釈液を調製した。
【0120】
サンプルおよび標品を、ピペットでELISAプレート(各2x200μl)に加え、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。各ウェルに、200μlのストレプトアビジン溶液(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識、Pierce,21126,PBSで0.1μg/mlに希釈)を加え、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。HRP発色基質TMB(TMB=テトラメチルベンジジン、Invitrogen、00−2023)を、H2Oで1:2に希釈し、200μlを各ウェルに加えた。プレートを、外界温度で15分インキュベートし、光から保護した。呈色反応を停止するため、50μlの希H2SO4(蒸留水で1:5に希釈、Merck, 1007311000)を加え、プレートの吸収を、450nmで検出した(Fusion Photometer A153601, PerkinElmer)。
【0121】
結果:
図7を参照。
生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての貯蔵および/または滅菌(≧25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液A(アルブミンおよびマンニトール)およびB(異なるアミノ酸を有する溶液)両方が生体分子を保護した。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【0122】
実施例4:抗マウスIgGを滅菌した;担体はポリウレタンフォームである。
実験:
微多孔質ポリウレタン(PU)フォーム(Smith&Nephew, 66012608)から、規定された直径(1cm)を有するサンプルを型取りした。抗マウスIgG(ビオチン化、Jackson ImmunoResearch, 115-065-003)をサンプルに結合させた:抗体は、PBS(Ca2+/Mg2+非含有、PAA, H15-002)または安定化溶液(20g/lアルブミン(Biotest Pharma )および10g/lマンニトール(Serag Wiesner, 219675)のPBS溶液)のいずれかで5μg/mlに希釈し、そしてPUサンプルを抗体溶液で覆った。サンプルを、37℃で1時間インキュベートした。
【0123】
抗体溶液を除去し、PUサンプルを2時間風乾した。サンプルは、ベータ線照射(25kGy)により滅菌し、非滅菌対照は低温状態下で貯蔵した。
アッセイ:
ELISAプレート(Greiner Bio-one, 655061)を抗原(マウスIgG,Innovativ Research,Ir-Ms-Gf)で覆った:抗原を1μg/mlに希釈し、100μlを各ウェルにピペットで加え、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄用緩衝液(25x濃縮、Invitrogen,WB02)で2回洗浄した。プレートをアルブミン(5%)でブロックし、再び3回洗浄した。
【0124】
PUサンプルをPBSで覆い、外界温度で1時間インキュベートした。サンプル溶液を採取し、1:20に希釈し、さらにPBSで1:4に連続的に希釈した。サンプルの抗体濃度を計算するため、新鮮な抗体の段階希釈液を調製した。
【0125】
サンプルおよび標品を、ピペットでELISAプレート(各2x200μl)に加え、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。各ウェルに、200μlのストレプトアビジン溶液(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識、Pierce,21126,PBSで0.1μg/mlに希釈)を加え、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。HRP発色基質TMB(TMB=テトラメチルベンジジン、Invitrogen、00−2023)を、H2Oで1:2に希釈し、200μlを各ウェルに加えた。プレートを、外界温度で15分インキュベートし、光から保護した。呈色反応を停止するため、50μlの希H2SO4(蒸留水で1:5に希釈、Merck, 1007311000)を加えた。プレートの吸収を、450nmで検出した(Fusion Photometer A153601, PerkinElmer)。
【0126】
結果:
生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての貯蔵および/または滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液(アルブミンおよびマンニトール)は生体分子を保護した。抗体の回収率はほとんど100 %(5μg/ml)である。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【0127】
実施例5:抗マウスIgGを滅菌した;担体はPVAヒドロゲルである。
実験法
ポリビニルアルコール(PVA, Sigma, 341584-25G)の7%(m/v)水溶液(85℃に加熱)を調製した。水溶液を外界温度まで冷却した。抗マウスIgG(ビオチン化、Jackson ImmunoResearch, 115-065-003)を、PBSで200μg/mlまで希釈した。
【0128】
ヒドロゲル混合物は以下の通りに構成されている:
6.75ml PVA水溶液(7%)
4.5μl 抗マウスIgG(200μg/ml)
2.25 PBSまたは安定化溶液(20g/lアルブミン(Biotest Pharma)および10g/lマンニトール(Serag Wiesner, 219675)PBS溶液)
PVAヒドロゲルを、小さいペトリ皿に注いだ(直径35mm、2ml溶液)。ハイドロゲルフィルムを48時間風乾した。サンプルはベータ線照射(25kGy)によって滅菌し、非滅菌対照は低温状態下で貯蔵した。
【0129】
アッセイ:
ELISAプレート(Greiner Bio-one, 655061)を抗原(マウスIgG,Innovativ Research,Ir-Ms-Gf)で覆った:抗原を1μg/mlに希釈し、100μlを各ウェルにピペットで加え、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄用緩衝液(25x濃縮、Invitrogen,WB02)で2回洗浄した。プレートをアルブミン(5%)でブロックし、再び3回洗浄した。
【0130】
PVAヒドロゲルを6ウェルプレートに置き、2ml のPBS(Ca2+/Mg2+非含有、PAA, H15-002)で覆った。30分、1時間及び2時間後、PBSを集め、新鮮なPBSで置き換えた。
段階希釈したサンプルおよび標品を、ピペットでELISAプレート(各2x200μl)に加え、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。各ウェルに、200μlのストレプトアビジン溶液(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識、Pierce,21126,PBSで0.1μg/mlに希釈)を加え、外界温度で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。発色基質TMB(TMB=テトラメチルベンジジン、Invitrogen、00−2023)を、H2Oで1:2に希釈し、200μlを各ウェルに加えた。プレートを、外界温度で15分インキュベートし、光から保護した。呈色反応を停止するため、50μlの希H2SO4(蒸留水で1:5に希釈、Merck, 1007311000)を加え、プレートの吸収を、450nmで検出した(Fusion Photometer A153601, PerkinElmer)。
【0131】
結果:
生体分子(ここでは、抗マウスIgG抗体)は、もし安定化剤が加えられなかったならば、続いての貯蔵および/または滅菌(25kGy照射)間に、その生物学的機能の大部分を失う。対照的に、安定化剤溶液(アルブミンおよびマンニトール)は生体分子を保護した。溶出した抗体の回収率は非常に高かった。示されているのは、抗原への特異的結合である。
【0132】
実施例6:具体的アミノ酸組成物の保護効果
20mgのヒト抗A型肝炎抗体(ベリグロビン(Beriglobin)(ヒトIgG, AK)、CSL Behring)および40mgの保護用組成物を水に溶解してサンプル当たり525μlの総量となし、そして凍結乾燥した。その後、サンプルを1mlの水に溶解し、HAV(A型肝炎ウイルス)IgG ELISAを使用して機能性について試験した。
【0133】
組成物:
20g アルギニン
20g ヒスチジン
20g リジン
3g グルタミン酸
2g トリプトファン
20g グリシン
15g アラニン
0.2g ツイーン80
1g グリチルリチン酸アンモニウム塩
NaOHおよび/またはNaClを使用してpHを約7.2に調整した。その後、溶液を滅菌濾過にかけた。
【0134】
400μlの溶液(40mgの固体化合物に相当する)を125μlのベリグロビン(20mgの抗体に相当する)と混合した。
凍結乾燥:
凍結乾燥は次のように実施した:
初期凍結温度−40℃;
3時間の凍結後、0.1 mBarの真空開始;
23時間の間、約1.5℃/時間の温度上昇;
6時間乾燥、6℃および0.004mBarで一晩。
【0135】
滅菌:
凍結乾燥サンプルを、25kGyで照射し、そして一つは50kGyのベータ線照射。
結果:
HAV ELISAの結果は、図14に示されている。
【0136】
乾燥および滅菌後、白色で無臭気の本質的に安定なケーキ状物質を得た。1mlの水を各サンプルに加え、溶解行動をモニターした。溶解は30秒未満以内に起こり、凝集体は存在していなかった。24時間後でも、巨視的または顕微鏡的凝集は検出不能であった。
【0137】
結論:
組成物の適用は、非照射対照と比較して、ベリグロビンのA型肝炎抗体部分の非常にわずかな喪失しか生じさせなかった。
【0138】
実施例7:安定化化合物としての異なるサポニンの試験。サポニンの構造クラスは抗体に対する安定化効果を有する。
材料&方法
すべての実験は、同じ基本ELISAアッセイデザイン(上記を参照)に基づいている;
ELISAプレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用;
被覆表面のストレス曝露
LO-MM-3機能性のELISA検出。
【0139】
実験法:
プレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用および滅菌;並びに一般的ELISA手順は、材料&方法の節に記述したように行った。照射線量(電子ビーム)は50kGyであった。
【0140】
結果:
実験の結果は図15に示されている。サポニンの構造クラスは、アミノ酸併用の保護効果を増強する可能性を有する。好適であるのは、サポニングリチルリチン酸の使用である。
【0141】
実施例8:少なくとも3個の異なるアミノ酸、または少なくとも2個の異なるアミノ酸およびグリチルリチン酸などのサポニン、を含む安定化組成物は、非常に良好な保護を提供する。
【0142】
材料&方法
すべての実験は、同じ基本ELISAアッセイデザイン(上記を参照)に基づいている;
ELISAプレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用;
被覆表面のストレス曝露
LO-MM-3機能性のELISA検出。
【0143】
実験法:
アミノ酸を0.5M NaOH(Merck, 106482)かまたは0.5M HCl(Merck, 100319)のいずれかに溶解して最大濃度の保存溶液を得た。アミノ酸保存溶液を異なる組み合わせで混合し、ポストコーティング溶液中で20g/lの総アミノ酸濃度を得た。
【0144】
アミノ酸混合物のpHをおよそ7.0に設定した。
プレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用および滅菌;並びに一般的ELISA手順は、材料&方法の節に記述したように行った。照射線量(電子ビーム)は50kGyであった。
【0145】
結果:
実験の結果は図16に示されている。少なくとも3個のアミノ酸の併用、およびグリチルリチン酸を添加した2個のアミノ酸の併用は、50kGyのベータ線照射で滅菌した場合、固定化抗体の最大保護(75%以上)を提供する。
【0146】
実施例9:好適なアミノ酸組成物は異なるストレス条件下での保護を提供する。
材料&方法
すべての実験は、同じ基本ELISAアッセイデザイン(上記を参照)に基づいている;
ELISAプレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用;
被覆表面のストレス曝露
LO-MM-3機能性のELISA検出。
【0147】
実験法:
使用した組成物:
保護用組成物A(リットル当たりの化合物)
20g アルギニン
20g ヒスチジン
20g リジン
3g グルタミン
2g トリプトファン
20g グリシン
15g アラニン
0.2g ツイーン80
1g グリチルリチン酸アンモニウム塩
NaOHおよび/またはHClを使用し、pHを約7.2に調整した。その後、溶液を滅菌した。
【0148】
プレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用および滅菌;並びに一般的ELISA手順は、材料&方法の節に記述したように行った。
結果:
実験の結果は図17に示されている。アミノ酸組成物は、異なるストレス条件下で保護を提供する。最高の保護が、異なる線量でのベータ線照射、および温度上昇下での人工的エージングについて提供される。ガンマ線照射またはエチレンオキシド滅菌法ではより少ないが、なお有意義である。
【0149】
実施例10:アミノ酸ポストコーティングは、長期貯蔵間の保護を提供する。
実験法:
アミノ酸を0.5M NaOH(Merck, 106482)かまたは0.5M HCl(Merck, 100319)のいずれかに溶解して最大濃度の保存溶液を得た。アミノ酸保存溶液を混合し、ポストコーティング溶液で200mMの総アミノ酸濃度を得た。アミノ酸は等モル比で使用した。
18個のアミノ酸:Ala、Arg、Asp、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val
5個のアミノ酸(1):Asp、Arg、Phe、Ser、Val
5個のアミノ酸(2):Ala、Glu、Lys、Thr、Trp
2個のアミノ酸(1):Asp、Val
2個のアミノ酸(2):Ala、Glu
アミノ酸混合物のpHをおよそ7.0に設定し;混合物を、さらにPBSで希釈して200mMの最終濃度を得た。
【0150】
プレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用および滅菌;並びに一般的ELISA手順は、材料&方法の節に記述したように行った。長期貯蔵は、加速エージング過程によりシミュレーションした。プレートを45℃で貯蔵し、貯蔵0、10、25、41および62日後に抗体活性を決定した。このことは、0、6、12、24および36ヶ月の5℃での実時間エージングに等しい。
【0151】
結果:
少なくとも5個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは長期貯蔵間の保護を提供する。非滅菌サンプルについては、45℃で62日後、約80%の抗原結合能力が温存された。滅菌サンプル(ベータ線、25kGy)では、45℃で62日後、それらの抗原結合能力の約70%を維持した。2個のみのアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、滅菌に関わらず、貯蔵プロセスの間に約40%のみの抗原結合能力しか維持しなかった。ポストコーティング溶液への1mMグリチルリチン酸の添加は保護効果を強化する。少なくとも5個のアミノ酸およびグリチルリチン酸を含有する非滅菌サンプルについては、45℃で62日後、約90%の抗原結合能力が保存された。滅菌サンプル(ベータ線、25kGy)は、45℃で62日後、それらの抗原結合能力の約80%を維持した。2個のアミノ酸およびグリチルリチン酸を含有するアミノ酸ポストコーティングは、貯蔵プロセスの間に約70%の抗原結合能力が維持された。
【0152】
実施例11:アミノ酸ポストコーティングは、異なる滅菌プロセス間の保護を提供する。
実験法:
アミノ酸を0.5M NaOH(Merck, 106482)かまたは0.5M HCl(Merck, 100319)のいずれかに溶解して最大濃度の貯蔵溶液を得た。アミノ酸貯蔵溶液を混合し、ポストコーティング溶液で200mMの総アミノ酸濃度を得た。アミノ酸は等モル比で使用した。
18個のアミノ酸:Ala、Arg、Asp、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val
5個のアミノ酸:Asp、Arg、Phe、Ser、Val
2個のアミノ酸:Asp、Val
アミノ酸混合物のpHをおよそ7.0に設定し;混合物を、さらにPBSで希釈して200mMの最終濃度を得た。
【0153】
プレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用および滅菌;並びに一般的ELISA手順は、材料&方法の節に記述したように行った。一つのプレートを照射した(ガンマ線、25kGy)。照射はBeta-Gamma-Service, Bruchsal, Germanyで行なった 。別のプレートを、EO(ETO BO1 サイクル)により滅菌した;滅菌は、Rose GmbH, Trier, Germanyで行なった。
【0154】
結果:
ガンマ線照射で滅菌したサンプルは、18個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングで保護した場合、約85%の活性を維持し;この効果はグリチルリチン酸でさらには増強されず;5個のアミノ酸では残存活性は75%であり;2個のアミノ酸では40%のみを維持した。2個のアミノ酸での保護はグリチルリチン酸の添加により改善し、残存活性は65%である。ETOで滅菌したサンプルは、18個のアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングで保護した場合、約85%の活性を維持し;この効果はグリチルリチン酸でさらには増強されない。5または2個のアミノ酸で保護した場合、ほとんど保護効果を有せず;グリチルリチン酸の添加はわずかに保護を増強する。
【0155】
実施例12:アミノ酸およびジペプチドから成るポストコーティングは、高照射線量に対する保護を提供する。
材料&方法
すべての実験は、同じ基本ELISAアッセイデザイン(上記を参照)に基づいている;
ELISAプレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用;
被覆表面のストレス曝露
LO-MM-3機能性のELISA検出。
【0156】
実験法:
アミノ酸を0.5M NaOH(Merck, 106482)かまたは0.5M HCl(Merck, 100319)のいずれかに溶解して最大濃度の貯蔵溶液を得た。アミノ酸貯蔵溶液を混合し、ポストコーティング溶液中で20g/lの総アミノ酸濃度を得た。ジペプチド単独では10g/lの濃度で使用し、そしてアミノ酸との併用では2g/lの濃度で使用した。
7個のアミノ酸:Arg、His、Lys、Glu、Trp、Gly、Ala
2個のジペプチド:Gly−Tyr、Gly−Gln
アミノ酸混合物のpHをおよそ7.0に設定した。
【0157】
プレートへのLO-MM-3の吸着およびポストコーティングの適用および滅菌;並びに一般的ELISA手順は、材料&方法の節に記述したように行った。照射線量(電子ビーム)は50kGyであった。
【0158】
結果:
50kGyのベータ線照射で滅菌されたサンプルは、7個のみのアミノ酸を含有するアミノ酸ポストコーティングで保護された場合、約60%活性を維持した;この効果は、Gly−Tyrまたはジペプチドの併用のようなジペプチドの添加でさらに増強された。グリチルリチン酸は、アミノ酸ジペプチド併用の保護効果をさらには増強しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた滅菌容器であって;
安定化剤である少なくとも一つの担体;および
該担体に可逆的に接着された少なくとも一つの生体分子
を含み、ここで前記担体は接着された生体分子を部分的にまたは完全に覆い、そして前記少なくとも一つの担体が(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンおよびそれらの混合物から成る群より選択される、前記容器。
【請求項2】
前記生体分子の50%以上が2時間あるいはそれ未満で、好ましくは85%以上が10分あるいはそれ未満で該担体から放出されるように、該少なくとも一つの生体分子が該担体に接着されている、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
該少なくとも一つの生体分子が、(ポリ)ペプチド、核酸、炭水化物、脂質およびそれらの組合せから成る群より選択される、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
該(ポリ)ペプチドが、抗体、酵素、受容体、膜タンパク質、輸送タンパク質、血液凝固因子、ホルモン、サイトカイン、増殖因子またはそれらの機能性断片である、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
該担体が、固体、半固体または可溶性である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
該半固体担体が、ヒドロゲルまたはゼラチン様たんぱく質混合物を含む、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
該可溶性担体が、水性、任意に緩衝化溶液に溶解する構造を含む、請求項5に記載の容器。
【請求項8】
生体分子のための滅菌容器を作製する方法であって、
(a)(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される安定化剤である、少なくとも一つの担体を容器内に挿入すること;
(b)少なくとも一つの生体分子が前記少なくとも一つの担体により部分的にまたは完全に覆われるように、前記担体に該少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;
(c)該容器を密閉すること;および
(d)該容器を滅菌すること;
を含む、前記方法。
【請求項9】
生体分子のための滅菌容器を作製する方法であって、
(a)少なくとも一つの生体分子が少なくとも一つの安定化剤により部分的にまたは完全に覆われるように、(ポリ)ペプチド、アミノ酸、多価アルコール、ポリエチレングリコール、イオン液体、適合溶質、サポニンまたはそれらの混合物から選択される前記安定化剤である担体に、少なくとも一つの生体分子を可逆的に接着させること;
(b)該少なくとも一つの可逆的に接着された生体分子を有する担体を容器内に挿入すること;
(c)該容器を密閉すること;および
(d)該容器を滅菌すること;
を含む、前記方法。
【請求項10】
該担体への該生体分子の前記可逆的接着が、容器内への該被覆担体の挿入に先立った切断工程を含むバルク生産において行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記可逆的接着が、前記生体分子と共に前記担体を乾燥させることを含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該滅菌が、エチレンオキシド(EO)、ベータ線照射、ガンマ線照射、X線、加熱不活性化、加圧滅菌またはプラズマ滅菌により行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の容器または請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該(ポリ)ペプチドが、アルブミン、シャペロンまたはカゼインであり;
該サポニンが、グリチルリチン酸であり;
前記適合溶質が、エクトインまたはヒドロキシエクトインであり;および/または
該アミノ酸が、少なくとも二つの異なるアミノ酸、および好ましくは、少なくとも三つの異なるアミノ酸の混合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の容器または請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該少なくとも一つの安定化剤が緩衝化溶液に含まれている、請求項1〜7または13のいずれか一項に記載の容器または請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノ酸の混合物が、
(a)非極性、脂肪族R基を有するアミノ酸;
(b)極性、非荷電R基を有するアミノ酸;
(c)正に荷電したR基を有するアミノ酸;
(d)負に荷電したR基を有するアミノ酸;および
(e)芳香族R基を有するアミノ酸;
の各群の少なくとも一つのアミノ酸を含む、請求項13または14に記載の容器または方法。
【請求項16】
前記混合物に含まれているアミノ酸が、プロリン、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸、スレオニン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、リジン、トリプトファン、アルギニン、フェニルアラニン、グリシン、メチオニンおよびシステインから選択され、システインの含量が該固形乾燥アミノ酸混合物の1%未満である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の容器または方法。
【請求項17】
前記混合物に含まれるアミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、リジン、グルタミン酸、トリプトファン、グリシンおよびアラニンであるかまたはこれらから選択される、請求項13〜16のいずれか一項に記載の容器または方法。
【請求項18】
前記サポニンが、グリチルリチン酸またはそれらの誘導体であり、そして前記アミノ酸が少なくとも二つのアミノ酸の混合物である、請求項13〜17のいずれか一項に記載の容器または方法。
【請求項19】
前記安定化剤が、1%未満、より好ましくは0.3%未満のツイーン、好ましくはツイーン80を含む、請求項1〜7または13〜18のいずれか一項に記載の容器または請求項8〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
内部が本質的に空気中酸素を含んでいない、前記請求項のいずれか一項に記載の容器。
【請求項21】
内部が本質的に液体、好ましくは水を含んでいない、前記請求項のいずれか一項に記載の容器。
【請求項22】
工程(b)の後、および工程(c)の前に、
該容器から空気中酸素を除去すること;および/または
該容器から液体、好ましくは水を除去すること;
をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法であって、
(e)該容器から該少なくとも一つの生体分子を溶出すること;そして任意に
(f)工程(b)と同時に、先だってまたは後で、構造的に変性された生体分子を復元することを可能にする復元溶液を適用すること;
をさらに含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2012−521776(P2012−521776A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502684(P2012−502684)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054390
【国際公開番号】WO2010/112576
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(508329885)ロイコケア・アクチェンゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】