説明

生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置

【課題】 水封槽のブレークを瞬時に且つ安定して行えるようにすることにより、浮上濾材層の自動洗浄の安定化と効率化を図る。
【解決手段】
生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置に於いて、処理槽の底部に設けた空気溜部と、空気溜部の内方に設けた水封槽と、前記空気溜部の上壁面を気密に貫通して下端部を水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管と、空気溜部と水封槽との間に配設され、一端を空気溜部内に於いて洗浄排水管内へ連通させると共に他端を空気溜部の上方空間内へ開口したU字型空気路とから自動洗浄装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屎尿や家庭用雑排水等の浄化処理に利用する生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物濾過処理装置は、従前の接触曝気処理装置等に比較して必要とする処理槽容積を削減することができ、処理装置の大幅な小形化が図れると云う特徴を有している。
しかし、汚水の生物濾過処理を高能率で継続的に行うためには、浮上濾材層の自動洗浄を所定の時間間隔で安定且つ確実に行う必要があり、そのために多くの自動洗浄技術が開発され、公開されている。
【0003】
本願発明者等は、永年に亘って当該浮上濾材層を用いた生物濾過処理装置やこれに用いる浮上濾材層の自動洗浄装置の開発に携わっており、先に特許第2975269号及び特許第2975276号等として生物濾過装置用浮上濾材の洗浄方法を開示している。
【0004】
前記生物濾過装置用浮上濾材の洗浄方法は、図5に示す如く、処理槽1内へ比重がほぼ0.3以下、粒径が1〜15mmの粒状浮上濾材を充填することにより濾材層2を形成し、該濾材層2内を上向流又は下向流で汚水を通過させるようにした生物濾過処理装置に於いて、前記処理槽1内に洗浄排水管4を立設してその下端を処理槽1の底部へ臨ませる。また、処理槽1の底部に空気溜部5を形成してその内部に水封槽6を設け、当該水封槽6へ噴気管7を挿入してその上端を前記洗浄排水管4の下方内部へ連通させる。そして、前記空気溜部5内へ洗浄用空気8を供給して水封槽6の水封を破ると共に、空気溜部5内の空気8を噴気管7を通して洗浄排水管4内へ瞬時に噴出させ、前記濾材2aの充填量の0.5〜1.5倍の処理槽1内の水を1〜90秒間に処理槽1の下部より処理槽1外へ排出及び空気溜部5内へ流入させることにより、濾材2aから余剰汚泥を剥離除去するようにしたものである。
【0005】
尚、図5に於いて、4aは洗浄排水管4の下端に設けた分岐管であり、空気溜部5を形成する壁面の外側に固定されている。また、9はスクリーン、Gは排水通路、Wは原水(汚水)、3、3a、3bは洗浄排水、11、11aは余剰沈降汚泥である。
【0006】
図6は上記生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置の作動説明図であり、浮上濾材層2の洗浄に際しては、先ず、洗浄用空気8が空気溜部5内へ供給される(図6の(1))。これにより、空気溜部5内の水位低下が始まり、処理槽1からのオーバーフロー3aが始まると共に、水封槽6の底部に沈降していた余剰汚泥11aの排出が始まり、また、洗浄排水管4からも洗浄汚水の流出3bが始まる(図6の(2))・
【0007】
空気溜部5内の水位低下が進行し、水封槽6がブレークすると(空気溜部5の気密性が喪失されて、噴気管7と水封管6の内部空間とが連通状態となること)、空気溜部5及び水封槽6内の空気8が洗浄排水管4内へ瞬時に噴出される(図6の(3))。
【0008】
空気の急激な噴出により、所謂気水鉄砲の原理によって処理槽1の上方部の洗浄水3が余剰沈降汚泥11を伴って空気溜部5内へ流入する。また、これと同時に分岐排水管4a内へも洗浄水3及び余剰沈降汚泥11が流入し、洗浄排水管4を通して外部へ排出される。
【0009】
その結果、処理槽1内の水位が瞬時に低下し、これによって浮上濾材層2の落下、渦巻乱流の発生、浮上濾材2aの展開及び撹拌洗浄等が行われると共に、水封槽6内への洗浄水3及び沈降汚泥11の流入により噴気管7が水封され、洗浄水3の排出が停止する(図6(4)・(5))。
【0010】
そして、洗浄排水管4内が満水となり且つ空気溜部5内の水位が上限位置まで上昇することにより、一サイクルの濾材洗浄操作が終了する(図6の(6))。
尚、一サイクルの洗浄に要する時間(図6の(3)〜(6)までの時間)は約3秒間であり、これ等の洗浄サイクルを所定回数(通常は1乃至2回)行ったあと、洗浄用空気8の供給が停止される。
【0011】
また、前記浮上濾材層2の洗浄は、通常24〜48時間毎に1回の頻度で定期的に実施される。
【0012】
更に、上記約3秒間の浮上濾材層2の洗浄を安定して所定回数(例えば1〜2回)定期的に行うためには、前記水封槽6のブレークが瞬時に行われること、即ち空気溜部5内の気密性が破られて空気溜部5及び水封槽6内の空気8が噴気管7を通して洗浄排水管4内へ瞬時に噴出されることが必須の要件であり、この水封槽6のブレークが瞬時に行われないと、洗浄排水管4を通して所定量の洗浄水3を急排出することが困難となり、結果として浮上濾材層2の展開,洗浄が十分に行えなくなる。
【0013】
ところで、図5及び図6に示した浮上濾材層2の洗浄方法にあっては、上記洗浄水3の急排水を円滑に行えなくなるケースがしばしば発生し、現実には、安定した浮上濾材層の自動洗浄が困難な状態にある。本願発明者等は数多くの浮上濾材層2を用いた汚水浄化槽の製造及び運転経験を通して、自動洗浄が困難な状態となる第1の原因が水封槽6のブレークの点にあることを想定し、多数のブレーク試験を通して、水封槽6の底部に溜った余剰沈降汚泥11aが水封槽6の瞬間的なブレーク性能を阻害し、これによって、水封槽6のブレークが所謂緩慢なブレーク状態になっていることを見出した。
【0014】
即ち、図6の(1)及び(2)に示したように、処理槽1の底部に沈降した余剰汚泥11は洗浄水3と共に水封槽6内へ流入し、水封槽6の底部に沈降する。この水封槽6の底部に沈降した余剰汚泥11aが噴気管7下端の内外壁面に付着することにより、噴気管7の下端開口と洗浄水液面との間が瞬時に全面通気の状態にならず、噴射管7の下端開口面積の一部分のみが通気状態となる。そのため、所定量の空気が瞬時に洗浄排水管4内へ噴射されなくなり、必要量の洗浄水3の排水能力が得られないこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第2975269号公報
【特許文献2】特許第2975276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従前の生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置に於ける上述の如き問題、即ち水封槽6の底部と洗浄排水管4とを連通する噴気管7の下端開口が、水封槽6の底部に溜った余剰汚泥等の影響により空気ブレーク時に瞬時に全開されず、その結果、洗浄排水管4内への空気の噴出量が減少して瞬時に所定量の処理水3を排出することが出来なくなり、浮上濾材層2の自動洗浄が不安定になると云う問題を解決せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明は比重がほぼ0.3以下、粒径が1〜15mmの粒状浮上濾材を充填することにより浮上濾材層を形成し、浮上濾材槽内を上向流又は下向流で汚水を通過させる生物濾過装置の処理層内に、洗浄排水管を立設してその下端を処理槽底部へ臨ませると共に、処理槽底部に水封部を備えた空気溜部を設け、前記空気溜部内へ供給した洗浄用空気を水封部の水封を破ることにより洗浄排水管内へ瞬時に噴出させ、前記濾材充填量の0.5〜1.5倍の処理槽内の水を洗浄排水管を通して1〜90秒間に処理槽の下部より処理槽外へ排出及び空気溜部内へ流入させるようにした浮上濾材層の自動洗浄装置に於いて、処理槽の底部に設けた空気溜部と、空気溜部の内方に設けた水封槽と、前記空気溜部の上壁面を気密に貫通して下端部を水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管と、空気溜部内に配設され、一端を空気溜部内に於いて洗浄排水管内へ連通させると共に他端を空気溜部の上方空間内へ開口したU字型空気路とから構成したことを発明の基本構成とするものである。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、U字型空気路をU字型空気管により形成し、当該U字型空気管を空気溜部と水封槽との間に配設するようにしたものである。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1の発明に於いて、空気溜部と、水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管の下端部と、空気溜部内に設けたU字型空気路とを合成樹脂材により一体的に形成するようにしたものである。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1の発明に於いて、空気溜部の内方に設けた水封槽と、水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管の下端部と、洗浄排水管の下端部と水封槽との間に設けたU字型空気路とを合成樹脂材により一体的に形成するようにしたものである。
【0021】
前記浮上濾材としては、発砲プラスチック製の粒体としたものが望ましい。また、前記浮上濾材を充填した処理槽内は、嫌気性であっても、好気性であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、水封槽をブレークするためのU字型空気路10の一方の開口端が空気溜部の上方空間部に位置している。また、当該上方空間部の位置レベルに於ける洗浄水3内の余剰汚泥含有量は、極く僅かである。そのため、U字型空気路10の開口端のブレーク作用が洗浄水3内の余剰汚泥11によって悪影響を受けることがなくなり、常に瞬時に水封槽6の気密性がブレークされて空気溜部内の空気が洗浄排水管内へ瞬時に噴出されることとなり、結果として、確実な洗浄水3の排水を安定して行えることになる。
【0023】
また、直管状の洗浄排水管4の下端部を水封槽6の底部まで延伸させているため、従前の下方部を二股状に分岐せしめた洗浄排水管を利用する場合よりも洗浄用空気や洗浄水の排出を円滑に行え、より安定した浮上濾材層2の展開及び浮上濾材2aの洗浄を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る浮上濾材層の自動洗浄装置の断面概要図である。
【図2】浮上濾材層の自動洗浄作用の説明図であり、図2の(1)は洗浄開始時点、図2の(2)は空気溜部への空気の供給状態、図2の(3)は水封槽のブレーク時点、図2の(4)及び(5)は洗浄水の流入と浮上濾材層の展開、洗浄の状態、図2の(6)は1サイクルの濾材洗浄の終了時点を夫々示すものである。
【図3】本発明に係る浮上濾材層の自動洗浄装置の他の実施形態の要部断面概要図である。
【図4】本発明に係る浮上濾材層の自動洗浄装置の更に他の実施形態の要部断面概要図である。
【図5】特許2975276号に係る浮上濾材層の自動洗浄装置の断面概要図である。
【図6】特許2975276号の浮上濾材層の自動洗浄作用の説明図であり、図6の(1)は洗浄開始時点、図6の(2)は空気溜部への空気の供給状態、図6の(3)は水封槽のブレーク時点、図6の(4)及び(5)は洗浄水の流入と浮上濾材層の展開、洗浄状態、図6の(6)は1サイクルの濾材洗浄の終了時点を夫々示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1乃至図4に基づいて本発明の実施形態を説明する。尚、当該実施形態の説明に於いて、前記図5及び図6と同一の部位又は部材には同一参照番号を使用する。
図1は、本発明の生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置の断面概要図であり、図に於いて、1は処理槽、2は浮上濾材層、3は洗浄水、4は洗浄排水管、5は空気溜部、6は水封槽、8は洗浄用空気、9はスクリーン、10はU字型空気路である。
【0026】
前記処理槽2は合成樹脂材や鋼板等により形成されており、その下方側部より原汚水Wが供給されると共に、浮上濾材層2内を通過する間に生物濾過処理が施され、上方側部から処理水3が排出されて行く。尚処理槽1の下方には散気管(図示省略)が設けられており、処理槽1内で好気性処理が行われる。
【0027】
生物濾過処理用浮上濾材2aは発砲製ポリスチロールにより小球体に形成されており、その直径は約1〜15mmφに選定されている。浮上濾材2aの材料としては、比重が約0.3以下の多孔質材であれば如何なるものであってもよく、前記発泡性ポリスチロールやウレタン樹脂等が好都合である。
【0028】
濾材2aの比重を0.3以下にするのは、比重が0.3を越えると洗浄時の濾材層2の展開が十分に行われないからである。また、球状浮上濾材2aの直径は1〜15mmφ位が適当であり、1mmより小さいと生物膜の生育や濾材2aの流出阻止が困難となり、また、15mmφより大きいと、処理槽1内に於ける流動性や洗浄時の洗浄性能が低下する。
更に、浮上濾材2aの形状は、廃水中に於ける流動性や洗浄時の付着物の剥離性等の点から球状体とするのが最適であるが、立方体や直方体、楕円状球体等であってもよい。
【0029】
前記浮上濾材2aは処理槽1内に約500mm〜1500mmの高さで充填される。濾材高さが500mm以下になると濾過性能が急激に低下し、また、逆に濾材高さが1500mmを越えると、濾材2aの洗浄がし難くなり、500mm〜1500mmの充填高さが最適である。
【0030】
前記空気溜部5は処理槽の下方部に固定されており、下端部が開放され且つ天井壁を備えた断面が逆U字形の形態に形成されている。
また、当該空気溜部5の容積は処理槽1の外形寸法や濾材層2の容積等によって決まるが、濾材層2の容積が0.1〜1.0mの場合、約30〜200l程度に選定される。
【0031】
前記水封槽6は、下方部を密閉した円筒形に形成されており、空気溜部5の中央に配設されており、処理槽1の底壁に固定されている。
また、前記洗浄排水管4は処理槽1のほぼ中央部に立設されており、その下端部は空気溜部5の天井壁を貫通して水封槽6の底面近傍まで延設されており、本実施形態では65Aの合成樹脂管が使用されている。
【0032】
前記U字型空気路10は、空気溜部5の側壁内面と水封槽6との間に配設されており、一方の端部開口が洗浄排水管4の側壁を貫通してその内部に位置せしめ、洗浄排水管4の内部と連通した状態で固定されており、その固定点の高さ位置は、水封槽6の上端面高さ位置より僅かに上方に選定されている。
また、当該U字型空気路10の他方の開口端は、空気溜部5の内部の天井壁近傍の位置に開放されている。尚、本実施形態に於いては、前記U字型空気路10は空気管を用いて形成されている。また、図1に於いて、8は洗浄用空気であり、当該洗浄用空気供給管の先端は空気溜部5の内部上方へ向けて開口されている。また、9はスクリーンである。
【0033】
次に、本発明に係る濾材洗浄装置の作動について説明する。図2の(1)〜(6)を参照して、約24時間乃至48時間生物濾過処理槽1が運転されると、処理槽1内の浮上濾材層2の洗浄操作が行われる。
浮上濾材層2の洗浄に際しては、先ず、洗浄用空気8が空気溜部5内へ供給される(図2の(1))。これにより、空気溜部5ないの水位低下が始まり、処理槽1からのオーバーフロー3aが始まると共に、水封槽6の底部に沈降していた余剰汚泥11aの排出が始まり、また、洗浄排水管4からも洗浄汚水の流出3bが始まる(図2の(2))。
【0034】
空気溜部5内の水位低下が進行し、水封槽6がブレークすると、空気溜部5及び水封槽6内の空気8が洗浄排水管4内へ瞬時に噴出される(図2の(3))。
【0035】
空気の急激な噴出により、所謂気水鉄砲の原理によって処理槽1の上方部の洗浄水3が余剰沈降汚泥11を伴って空気溜部5内へ流入する。また、これと同時に、洗浄排水管4の下端開口から洗浄水3及び余剰汚泥11aが洗浄排水管4内へ流入し、これを通して外部へ排出される。
【0036】
その結果、処理槽1内の水位が瞬時に低下し、引き続いて浮上濾材層2の落下、渦巻乱流の発生、濾材の展開、撹拌洗浄等が行われると共に、水封槽6内への洗浄水3及び沈降汚泥11が流入することによりU字型空気路10が水封され、洗浄水3の排出が停止する(図2の(4)・(5))。
【0037】
そして、洗浄排水管4内が満水となり且つ空気溜部5内の水位が上限位置まで上昇することにより、一サイクルの濾材洗浄操作が終了する(図2の(6))。
【0038】
尚、一サイクルの濾材洗浄に要する時間(図2の(3)〜(6)までの時間)は約3秒間であり、これ等の洗浄サイクルを所定回数例えば1〜2回行ったあと、洗浄用空気8の供給が停止される。
【0039】
前記一サイクルに於ける前記処理槽1内からの洗浄排水量及び空気溜部5内への水の流入量は、濾材充填量の0.5〜1.5倍の水を1〜90秒間に排出及び流入させるのが望ましい。その中でも、0.7〜1.5倍の水を2〜20秒間に排出及び流入させるのが、洗浄性と処理装置の総合的な処理能力の点から最も望ましい。
【0040】
排水量及び流入量が濾材充填量の容積の0.5倍よりも少ないと、処理槽1内の水位の低下速度や洗浄時間の点に問題があり、十分な洗浄が行えない。また、排水量(流入量)が1.5倍以上になると、洗浄水の後処理に手数がかかり総合的な処理性能が低下し、過剰洗浄になる。
【0041】
同様に排水時間が1秒より短いと、濾材の完全な展開時間が確保できず、洗浄度が不足する。また、逆に90秒以上になると、処理槽内の水位低下速度が遅くなり過ぎて濾材の渦巻き撹拌現象が発生しなかったり、或いは余剰洗浄を生じて、所謂窒素成分の硝化作用が弱まって脱窒効果が低下する。
【実施例1】
【0042】
浮上濾材として、比重0.05、直径4mm、球状の発泡スチロール製濾材を用い、処理槽内部に直径600mm×高さ700mmの浮上濾材層を形成した。また、原水(汚水)として、BOD200ppm及びSS100ppmの汚水を供給して浄化処理を行った。尚、48時間の浄化処理を行った後の浮上濾材層の圧損は、350mmH2Oであった。
次に、洗浄用空気を供給することにより、浮上濾材層の容積(直径600mm×高さ700mm)に相当する量の洗浄水を、3秒間で洗浄排水管及び空気溜部へ流入させ、これによって、浮上濾材層の展開及び濾材の洗浄を48時間ごとに1回づつ行った。尚、使用した洗浄装置は図1に記載の構造のものであり、洗浄排水管は65A、空気溜部の容積は100lである。
上記洗浄条件の下で洗浄をした結果、浮上濾材層の圧損は10mmHOに低下した。また、1ヶ月に約15回(1回の洗浄時間 約3秒間)の洗浄を6ヶ月間(合計洗浄回数 90回)に亘って行ったが、所定の洗浄が出来なかった等の洗浄トラブルの発生は、0回であった。
これに対して、図5に示した先登録特許発明の洗浄装置では、同じ洗浄条件の下で、90回洗浄のうちで10回の洗浄トラブルが発生していたが、本願発明によれば、洗浄トラブルを略皆無にすることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、好気性処理槽のみならず嫌気性処理槽へも適用することができ、浮上濾材層を用いる全ての浄化処理装置に於いて利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 処理槽
2 浮上濾材層
2a 浮上濾材
3 洗浄水
4 洗浄排水管
5 空気溜部
6 水封槽
8 洗浄用空気
9 スクリーン
10 U字型空気路
11 余剰沈降汚泥
11a 水封槽内の余剰沈降汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重がほぼ0.3以下、粒径が1〜15mmの粒状浮上濾材を充填することにより浮上濾材層を形成し、浮上濾材槽内を上向流又は下向流で汚水を通過させる生物濾過装置の処理層内に、洗浄排水管を立設してその下端を処理槽底部へ臨ませると共に、処理槽底部に水封部を備えた空気溜部を設け、前記空気溜部内へ供給した空気を水封部の水封を破ることにより洗浄排水管内へ瞬時に噴出させ、前記濾材充填量の0.5〜1.5倍の処理槽内の水を洗浄排水管を通して1〜90秒間に処理槽の下部より処理槽外へ排出及び空気溜部内へ流入させるようにした浮上濾材層の自動洗浄装置に於いて、処理槽の底部に設けた空気溜部と、空気溜部の内方に設けた水封槽と、前記空気溜部の上壁面を気密に貫通して下端部を水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管と、空気溜部内に配設され、一端を空気溜部内に於いて洗浄排水管内へ連通させると共に他端を空気溜部の上方空間内へ開口したU字型空気路とから構成したことを特徴とする生物濾過処理用浮上濾材層の自動洗浄装置。
【請求項2】
U字型空気路をU字型空気管により形成し、当該U字型空気管を空気溜部と水封槽との
間に配設するようにした請求項1に記載の生物濾過処理用浮上濾材の自動洗浄装置。
【請求項3】
空気溜部と、水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管の下端部と、空気溜部内に設けたU字型空気路とを合成樹脂材により一体的に形成するようにした請求項1に記載の生物濾過処理用浮上濾材の自動洗浄装置。
【請求項4】
空気溜部の内方に設けた水封槽と、水封槽の底部へ臨ませた洗浄排水管の下端部と、洗浄排水管の下端部と水封槽との間に設けたU字型空気路とを合成樹脂材により一体的に形成するようにした請求項1に記載の生物濾過処理用浮上濾材の自動洗浄装置。
【請求項5】
浮上濾材を発砲プラスチック製の粒体とした請求項1に記載の生物濾過処理用浮上濾材の自動洗浄装置。
【請求項6】
処理槽内を嫌気性又は好気性に保持するようにした請求項1に記載の生物濾過処理用浮上濾材の自動洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−184210(P2010−184210A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30807(P2009−30807)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(509044121)ベストプラント株式会社 (1)
【Fターム(参考)】