説明

生物組織のための二酸化塩素治療

二酸化塩素源を含む組成物の生物組織への投与のための方法、組成物、デバイス、およびシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
二酸化塩素は、消毒剤、ならびに強酸化剤であることが知られている。二酸化塩素の殺菌、殺藻、殺真菌、漂白、および脱臭の特性も周知である。二酸化塩素の治療および美容適用が知られており、例えば、米国特許第6,280,716号は、膣のかゆみの治療への安定化二酸化塩素溶液の使用を記載する。米国特許第7,029,705号は、鼻の衛生方法への安定化二酸化塩素溶液の使用を記載する。
【0002】
二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムを、塩素ガス(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と反応させることを含む。反応は、酸性媒体中で非常に速い速度で進行するため、実質的に、全ての従来の二酸化塩素生成化学反応は、3.5以下のpHを有する酸性生成物溶液をもたらす。
【0003】
二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンからも調製され得る。環境条件において、塩素酸アニオンを使用する全ての反応は、通常、7〜9Nの範囲の強酸性条件を必要とする。より高温への試薬の加熱および生成物溶液からの二酸化塩素の連続的除去は、必要な酸性度を1N未満まで低減させ得る。
【0004】
原位置の二酸化塩素の調製方法は、「安定化二酸化塩素」と称される溶液を使用する。安定化二酸化塩素溶液は、ほとんど、または全く二酸化塩素を含有しないが、実質的に、中性またはわずかにアルカリ性のpHの亜塩素酸ナトリウムから成る。亜塩素酸ナトリウム溶液への酸の添加は、亜塩素酸ナトリウムを活性化し、二酸化塩素は、溶液の原位置で生成される。得られた溶液は、酸性である。典型的には、亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への変換の程度は低く、亜塩素酸ナトリウムの実質量は、溶液中に残留する。
【0005】
上で要約される現在の文献は、生物組織に損傷を与えている二酸化塩素組成物の使用および方法を説明する。その中で生物組織が損傷されない、生物組織の治療に二酸化塩素を使用するための方法、組成物、デバイス、およびシステムが必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
以下の実施形態は、これらの必要性を満たし、対応する。以下の要約は、広範な概要ではない。多様な実施形態の主要または重要な要素を識別することも、それらの範囲を正確に記述することも意図しない。
【0007】
有効量の二酸化塩素を創傷に提供し、それによって、創傷を治療するように、創傷に、二酸化塩素源を含む組成物を投与するステップを含む、組織中の創傷を治療する方法が提供される。投与するステップは、i)創傷を、二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させるステップ、ii)創傷を、二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスと接触させるステップであって、デバイスは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達するステップ、またはiii)創傷を、二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオン、およびオキシ−塩素アニオンが通る通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が通る通過を許可し、それによって、創傷への実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の送達を可能にする障壁物質を含む組成物と接触させるステップのうちの1つ以上を含む。
【0008】
ある実施形態では、方法は、接触させるステップの第2の反復を含み、第2の反復は、第1の反復に実質的に連続する。別の実施形態では、方法は、接触させるステップの少なくとも第3の反復をさらに含み、第3の反復は、第2の反復に実質的に連続し、第2の反復は、第1の反復に実質的に連続する。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、組成物と接触させた創傷を形成するように、創傷を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させるステップを含み、かつ超音波エネルギーを組成物と接触させた創傷に印加するステップをさらに含む。他の実施形態では、投与ステップは、デバイスと接触させた創傷を形成するように、創傷を、二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスと接触させるステップを含み、かつ超音波エネルギーをデバイスと接触させた創傷に印加するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、超音波エネルギー周波数は、約2W/cm2〜約3.5W/cm2の電力強度を伴って、約10kHz〜約100kHzである。
【0010】
他の実施形態では、方法は、洗浄デバイスを使用して、創傷を、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物で洗浄するステップを含む。いくつかの実施形態では、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物は、組成物1グラム当たり、約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。さらに他の実施形態では、投与ステップは、創傷を、二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスと接触させるステップを含み、デバイスは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を創傷に送達する洗浄デバイスである。
【0011】
ある特定の実施形態では、投与ステップは、組成物と接触させた創傷を形成するように、創傷を、二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオン、ならびにオキシ−塩素アニオンが通る通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が通る通過を許可し、それによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の創傷への送達を可能にする障壁物質を含む組成物と接触させるステップを含み、かつ超音波エネルギーを組成物と接触させた創傷に印加するステップをさらに含む。
【0012】
組織中の創傷を治療する方法のいくつかの実施形態では、組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも約200ppm−分の二酸化塩素の実際の薬用量が投与される。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、二酸化塩素発生成分を含み、該二酸化塩素発生成分は、二酸化塩素の微粒子前駆体である。任意で、実施形態のいずれかにおいて、組成物は、第2の治療薬をさらに含む。他の実施形態では、方法は、第2の治療薬を含む第2の組成物を創傷に投与するステップをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、組織中の創傷を治療する方法は、創傷を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させるステップを含み、組成物は、組成物1グラム当たり、約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。他の実施形態では、組織中の創傷を治療する方法は、約4.5〜約11のpHを含む組成物を含む。
【0014】
生物組織を洗浄するためのシステムがさらに提供され、システムは、デバイスおよび二酸化塩素を含む流体の供給源を含む。洗浄デバイスは、1)洗浄される標的組織の少なくとも一部を接触させるための、入口部および出口部ならびに開口部を有する可撓性、半剛性、もしくは剛性ポーチまたは他の格納チャンバ、2)チャンバに流体を提供するか、もしくはチャンバから流体を排出するように、チャンバ出入口部に接続する流体供給および放出システム、3)密着かつ実質的に漏れないシールを形成するように、標的組織を取り囲む組織に対してチャンバの接触を維持する手段、4)流量の均一分布を確実にするための、ポーチの内側に設置される任意の開放細胞発泡体または他の多孔性物質、ならびに5)格納チャンバを出るように流体を供給する、および/または流体が格納チャンバを出ることを可能にする流体取扱ユニットを含み、流体取扱ユニットは、二酸化塩素を含む流体の供給源から流体を供給する。
【0015】
口腔組織感染を緩和するための方法も提供される。方法は、有効量の二酸化塩素を組織に提供するように、口腔内の感染した組織に、二酸化塩素源を含む組成物を投与するステップを含み、投与するステップは、i)組成物と接触させた口腔組織を形成するように、組織を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/もしくは実質的に非刺激性である組成物と接触させて、超音波エネルギーを組成物と接触させた口腔組織に印加するステップ、ii)組織を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性である組成物と少なくとも2回の実質的に連続した適用で反復的に接触させるステップ、iii)洗浄デバイスを使用して、組織を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性である組成物で洗浄するステップ、またはiv)実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を創傷に送達する洗浄デバイスを使用して、組織を洗浄するステップのうちの1つ以上を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物は、約4.5〜約11のpHを有する。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、二酸化塩素発生成分を含み、該二酸化塩素発生成分は、二酸化塩素の微粒子前駆体である。いくつかの実施形態では、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物は、組成物1グラム当たり、約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。任意で、実施形態のいずれかでは、組成物は、第2の治療薬をさらに含む。他の実施形態では、方法は、第2の治療薬を含む第2の組成物を、感染した口腔組織に投与するステップをさらに含む。
【0017】
加えて、歯の表面をホワイトニングする方法が提供される。方法は、有効量の二酸化塩素を歯の表面に提供するように、歯の表面を、二酸化塩素源を含む有効量の組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップは、i)歯の表面を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/もしくは実質的に非刺激性である組成物と少なくとも2つの実質的に連続した適用で反復的に接触させるステップ、ii)二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/もしくは実質的に非刺激性である組成物を送達する洗浄デバイスを使用して、歯の表面を洗浄するステップ、またはiii)実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を歯の表面に送達する洗浄デバイスを使用して、洗浄デバイスを洗浄するステップの1つ以上を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物は、約4.5〜約11のpHを有する。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、二酸化塩素発生成分を含み、該二酸化塩素発生成分は、二酸化塩素の微粒子前駆体である。いくつかの実施形態では、接触させるステップは、歯の表面を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と少なくとも2回の実質的に連続した適用で反復的に接触させるステップを含み、各々の適用は、約750ppm−分〜約2000ppm−分の二酸化塩素薬用量を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも4回、実質的に連続して適用される。いくつかの実施形態では、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物は、組成物1グラム当たり、約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。
【0019】
多様な組成物および方法を図解する目的で、開示される方法、組成物、ならびにデバイスのある特定の実施形態が図に示される。しかしながら、組成物およびそれらの使用方法は、図に示される実施形態の正確な配置ならびに手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】二酸化塩素(ClO2)薬用量の関数として、多様な生物膜における細菌の対数の減少(対数死滅)を示すグラフである。MRSA=メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。PA=緑膿菌。
【図2】高タンパク質環境における時間の関数として、二酸化塩素(ClO2)の減少に関する代表的なデータを示すグラフである。示されるデータは、6.29重量%の胎児血清(FBS)を含有し、かつ名目上500のFBS/ClO2の初期重量比(mg/mg)を有する溶液に対して測定された。
【図3】ウシ胎仔血清(FBS)と二酸化塩素との初期重量比(mg/mg)の関数としての、二酸化塩素の減衰率のグラフである。
【図4】補正された二酸化塩素薬用量の関数として、多様な生物膜中の対数細菌の減少を示すグラフである。二酸化塩素薬用量は、細菌以外の有機物質(例えば、タンパク質)との反応に起因し得る二酸化塩素の消費を反映して補正された。
【図5】創傷を二酸化塩素と接触させるための多様な送達方法の評価における創傷の配置の概略図である。D−2は、創傷が2日目に生検が行われたことを示す。
【図6】異なる送達方法の後の、創傷の総細菌対数を示す棒グラフである。y軸は、組織1グラムの当たりのコロニー形成単位(CFU)における総細菌の対数である。湿気制御:創傷A1、B1、およびD1に関するデータ。洗浄ポンプ:創傷A2〜A4に関するデータ。NaCMCゲル:創傷B2〜B4に関するデータ。HPMCゲル:創傷C2〜C4に関するデータ。洗浄シリンジ:創傷D2〜D4に関するデータ。手動洗浄:創傷C1に関するデータ。NaCMC=カルボキシメチルセルロースナトリウム。HPMC=ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【図7】異なる送達方法の後の、創傷におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の総対数を示す棒グラフである。y軸は、組織1グラム当たりのCFUにおけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の対数である。湿気制御:創傷A1、B1、およびD1に関するデータ。洗浄ポンプ:創傷A2〜A4に関するデータ。NaCMCゲル:創傷B2〜B4に関するデータ。HPMCゲル:創傷C2〜C4に関するデータ。洗浄シリンジ:創傷D2〜D4に関するデータ。手動洗浄:創傷C1に関するデータ。異なる送達方法の後の、創傷におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の総対数を示す棒グラフである。y軸は、組織1グラム当たりの(コロニー形成単位)におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の対数である。湿気制御:創傷A1、B1、およびD1に関するデータ。洗浄ポンプ:創傷A2〜A4に関するデータ。NaCMCゲル:創傷B2〜B4に関するデータ。HPMCゲル:創傷C2〜C4に関するデータ。洗浄シリンジ:創傷D2〜D4に関するデータ。手動洗浄:創傷C1に関するデータ。
【図8】異なる送達方法の後の、創傷におけるシュードモナス菌の総対数を示す棒グラフである。y軸は、組織1グラム当たりのCFUにおけるシュードモナス菌の対数である。湿気制御:創傷A1、B1、およびD1に関するデータ。洗浄ポンプ:創傷A2〜A4に関するデータ。NaCMCゲル:創傷B2〜B4に関するデータ。HPMCゲル:創傷C2〜C4に関するデータ。洗浄シリンジ:創傷D2〜D4に関するデータ。手動洗浄:創傷C1に関するデータ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
組成物を含有する二酸化塩素を組織または生物学的物質に送達する方法が本明細書に提供される。方法は、創傷の治療、口腔組織感染の緩和、および歯をホワイトニングすることに有用である。
【0022】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、概して、当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。概して、本明細書で使用される命名法、ならびに細胞変性分析、微生物分析、有機および無機化学、ならびに歯科臨床研究における検査法は、当分野で周知のものであり、一般に採用される。
【0023】
本明細書で使用される、以下の用語の各々は、この項においてそれと関連する意味を有する。
【0024】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的な目的語の1つまたは1つを超えるまで(すなわち、少なくとも1つまで)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素、または1つ以上の要素を意味する。
【0025】
「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される内容により、ある程度変化する。概して、「約」とは、参照値のプラス/マイナス10%の値の範囲を包含する。例えば、「約25%」は、22.5%〜27.5%の値を包含する。
【0026】
本明細書で説明される任意の範囲の任意および全ての全整数または部分整数が本明細書に含まれることが理解される。
【0027】
本明細書で使用される、「殺菌性」は、細菌、藻類、および菌類等の病原体を不活性化または死滅させる特性を指す。
【0028】
本明細書で使用される、「歯をホワイトニングすること」は、治療前の歯のシェードに対して、歯のシェードを明るくすることを指す。明るくすることは、質的、量的、および半定量的方法を含む、歯のシェードを評価する標準の当分野で認識されている方法によって、孤立歯、あるいは原位置で歯を評価することができる。例えば、明るくすることは、例えば、治療した歯の「治療前」および「治療後」の写真を比較することによる、単純な目視検査によって評価されてもよい。あるいは、歯は、ビタクラシカルシェードガイド(典型的には、制御された可視光条件下)によって評価される時に、治療前の歯のシェードに対して、歯のシェードが2シェード以上、より明るい場合に、または複数の色分光光度計を利用し、かつ半分の明度レベルを含む、ビタブリーチドガイド3Dマスターシェードシステムを使用して評価される時に、2レベル以上である場合に、白いと見なされる。1シェードの差異は、本明細書で「シェード値ユニット」(SVU)と称される。したがって、例えば、2シェードの差は、2SVU差である。
【0029】
本明細書で使用される、「漂白剤」は、明るくすること、および/または歯の暗いシェードを助長する色原体の除去を引き起こす組成物における、活性成分、もしくは成分の組み合わせを指す。
【0030】
本明細書で使用される、「生物膜」は、表面上に層を形成する生物集合体を指し、集合体は、ポリマーの細胞外マトリックスに埋め込まれる微生物の群落を含む。典型的には、生物膜は、細菌(好気性および嫌気性)、藻類、原虫、および菌類を含む、微生物の多様な群落を含む。単一種生物膜も存在する。
【0031】
本明細書で使用される、「有効量」の薬剤は、望ましい殺菌効果、所望の美容効果、および/または望ましい生物学的治療効果をもたらす任意の量の薬剤を意味するよう意図される。一例では、歯をホワイトニングするために使用される薬剤の有効量は、1回以上の治療で歯をホワイトニングすることをもたらす量である。別の例では、創傷治療のために使用される有効量の薬剤は、創傷における細菌レベルの減少等の、創傷治癒における統計的に有意な改善をもたらす量である。
【0032】
本明細書で使用される、「創傷」は、任意の1つ以上の軟組織および/または硬組織に対する裂傷、擦傷、刺傷、火傷、および/または他の損傷を指す。そのような創傷治療と見なされる例示的な組織には、粘膜組織、ならびに表皮組織、皮膚組織、および皮下組織(下皮組織とも呼ばれる)を含む真皮組織が含まれる。本明細書で使用される、創傷は、手の爪もしくは足の爪の裂傷、刺傷、および/または剥離も包含する。創傷は、組織に部分的または完全に浸透し得る。創傷、例えば、外科創傷は、偶発的または意図的に生じ得る。
【0033】
本明細書で使用される、創傷は、創傷治癒の1つ以上の兆候が、統計的に有意な量または程度に改善される場合に「治療される」。創傷治癒の兆候は、当分野で周知である。創傷治癒の兆候は、創傷治癒の4つの一般的な重複段階:止血段階、炎症段階、増殖段階、および再造形段階の任意の1つ以上で存在し得、各々の段階または全体の治癒過程の程度もしくは期間を含む。創傷治癒の兆候の他の例には、総細菌数の減少、緑膿菌またはブドウ球菌等の特定の細菌の細菌数の減少、炎症の程度もしくは期間の減少、創傷収縮の程度もしくは速度の増加、治癒までの全体の時間の減少等が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される、「生物組織」は、生物軟組織および生物硬組織を指す。
【0035】
本明細書で使用される、「生物軟組織」は、粘膜組織および真皮組織を指し、真皮組織は、表皮組織、皮膚組織、および皮下組織(下皮組織とも呼ばれる)を包含する。「軟組織」は、本明細書で「生物軟組織」と互換可能に使用される。
【0036】
本明細書で使用される、「生物硬組織」は、哺乳動物等の動物で見出される、足および手の爪、角化硬組織、歯硬組織等を指す。「硬組織」は、本明細書で「生物硬組織」と互換可能に使用される。
【0037】
本明細書で使用される、「歯硬組織」は、エナメルおよび象牙質の少なくとも1つを指す。
【0038】
本明細書で使用される、「歯硬組織損傷」は、エナメルの微小硬度の減少、象牙質の微小硬度の減少、エナメルの表面粗度の増加、および象牙質の表面粗度の増加の少なくとも1つを指す。
【0039】
本明細書で使用される、組成物は、以下の1つ以上が、治療前の歯に対して、治療後の歯に対して満たされる場合、「歯硬組織を実質的に損傷しない」:1)エナメル微小硬度が約15%未満減少し、および/または減少は5%の信頼水準において統計的に有意ではなく、2)象牙質微小硬度が約15%未満減少し、および/または減少は5%の信頼水準において統計的に有意ではなく、3)エナメル表面粗度がわずか約20%増加し、および/または増加は5%の信頼水準において統計的に有意ではなく、かつ4)象牙質表面粗度がわずか約8%増加し、および/または増加は5%の信頼水準において統計的に有意ではない。
【0040】
本明細書で使用される、「再石灰化」は、歯の構造上または構造内の無機塩の再結晶化によって、酸で損傷した歯の構造の修復の過程を指す。
【0041】
本明細書で使用される、「脱塩」は、酸、キレート剤、または他の溶解の反応促進剤によって引き起こされる歯からのミネラル損失の過程を指す。脱塩は、脱塩剤の組成物、接触媒体、濃度、pHに応じて、歯の表面および/または歯の表面の下方で生じ得る。
【0042】
本明細書で使用される、組織の「洗浄」は、組織を溶液ですすぐことを指す。「連続的洗浄」は、治療期間中、組織を溶液の実質的に定常な流れですすぐことを指す。「断続的洗浄」は、治療の間、組織を定期的に遅延または停止される流体の流れですすぐことを指す。
【0043】
本明細書で使用される、「複数」は、2つ以上を指す。例えば、複数の接触させるステップを有する治療は、接触させることの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のステップを包含する。
【0044】
本明細書で使用される、「二酸化塩素源」は、二酸化塩素、二酸化塩素生成成分、またはそれらの組み合わせの1つを指す。
【0045】
本明細書で使用される、「口腔感染」は、病原性感染によって引き起こされる口腔内の組織の疾患または障害を指す。病原体は、細菌性、ウイルス性、または真菌性であり得る。口腔疾患は、疾患が改善されない場合に、ひいては動物の口腔の健康が悪化し続ける状態を包含する。対照的に、口腔障害とは、動物は、恒常性を維持することができるが、動物の健康状態は、障害がないであろう時よりも好ましくない口腔の健康の状態である。未治療のまま放置されても、障害は、動物の口腔の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こさない。該用語は、歯周病、口臭、鵝口瘡、および虫歯の進行を包含する。
【0046】
本明細書で使用される、「歯周病」は、病原性感染によって引き起こされる、対象の歯を支援する組織の感染である。歯周病には、歯肉炎および歯周炎が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される、「歯垢」は、歯の表面に形成する生物膜を指す。
【0048】
本明細書で使用される、疾患または障害は、疾患または障害の症状の重症度、そのような症状を患者が経験する頻度、またはそれらの両方が低減される場合に「緩和される」。
【0049】
「治療的」処置は、それらの兆候を軽減または排除する目的で、病変の兆候を呈する対象への処置である。
【0050】
「予防的」処置は、疾患に関連する病変が発達する危険性を低下させる目的で、疾患の兆候を呈しない対象、または疾患の初期兆候を呈する対象への処置である。
【0051】
本明細書で使用される、「細胞毒性」は、哺乳動物細胞の構造または機能に致死損傷を引き起こす特性を指す。組成物が、医薬品原料(API)が有効量で存在する時に、USP<87>「生体外生物反応性」(2007年現在の承認プロトコル)の寒天拡散試験の米国薬局方(USP)生物反応性制限を満たす場合に、組成物は、「実質的に非細胞毒性」または「実質的に細胞毒性ではない」と見なされる。
【0052】
本明細書で使用される、「刺激性」は、直接の、長期にわたる、もしくは繰り返しの接触によって、発赤、腫脹、かゆみ、灼熱感、または水疱形成等の局所炎症反応を引き起こす特性を指し、例えば、哺乳動物における非口腔粘膜もしくは真皮組織の炎症は、その組織への刺激の適応であり得る。組成物が、経皮または粘膜刺激を評価するための任意の標準の方法を使用することにより、わずかに刺激性である、または全く刺激性ではないと判断される場合に、組成物は、「実質的に非刺激性」または「実質的に刺激性ではない」と見なされる。経皮刺激を評価するために有用な方法の非限定的な例には、ヒト皮膚組織モデル(例えば、Chatterjee et al.,2006,Toxicol Letters 167:85−94を参照)であるEpiDerm(商標)(MatTek Corp.,Ashland,MA)、または体外真皮試料等の組織操作された真皮組織を使用する生体外試験における使用が挙げられる。粘膜刺激に有用な方法の非限定的な例には、HET−CAM(脾臓の卵試験−絨毛尿膜)、スラグ粘膜刺激試験、および組織操作された鼻もしくは副鼻腔粘膜または膣−子宮頸膣部組織を使用する生体外試験が挙げられる。ラットまたはウサギ皮膚の経皮刺激等の刺激測定の他の有用な方法には、生体内方法が含まれる(例えば、Draize皮膚試験(OECD,2002,Test Guidelines 404,Acute Dermal Irritation/Corrosion)およびEPA Health Effects Testing Guidelines、OPPTS 870.2500 Acute Dermal Irritation))。当業者は、経皮および粘膜刺激を評価する、技術分野で認識されている方法に精通している。
【0053】
本明細書で使用される、「オキシ−塩素アニオン」は、亜塩素酸塩(ClO2-)および/または塩素酸塩(CIO3-)アニオンを指す。
【0054】
本明細書で使用される、「実質的に純粋な二酸化塩素溶液」は、オキシ−塩素アニオンの非細胞毒性濃度を有する二酸化塩素の溶液を指す。本明細書で使用される、「実質的に純粋な二酸化塩素溶液」は、有効量の二酸化塩素への希釈時において、オキシ−塩素アニオンの濃縮物に対して細胞毒性ではないオキシ−塩素アニオンの濃縮物を含有する二酸化塩素の濃縮液も指す。
【0055】
「実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物」とは、全て上記の本明細書で定義されるように、有効量の二酸化塩素、ならびにオキシ塩素アニオンの非細胞毒性および/または非刺激性濃度を含有する組成物を意味する。組成物は、他の成分を含有し得るか、またはオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素で本質的に構成され得る。組成物は、二酸化塩素を含むか、または二酸化塩素で本質的に構成されるガスまたは蒸気であり得るが、溶液または増粘流体を含む任意の種類の流体であってもよい。組成物は、水性流体または非水性流体であり得る。
【0056】
「安定した」とは、二酸化塩素を形成するために使用される成分、すなわち、二酸化塩素形成成分が、二酸化塩素を形成するために相互に即時に反応しないことを意味する。成分は、ClO2が生成されるそのような時まで組み合わせが安定している限り、連続して、および/または同時に等の任意の様式で混合され得ることを理解されたい。
【0057】
「非反応性」とは、使用される構成成分または成分が、二酸化塩素を形成するために、または必要な時に製剤中のその機能を実行するための任意の構成成分または成分の能力を軽減するために存在する、他の構成成分または成分と受け入れ難い程度に即時に反応しないことを意味する。当業者が認識するように、非反応性への許容される時間枠は、どのように製剤が製剤化され保管されるか、どのくらいの期間保管されるか、およびどのように調合物が使用されるかを含む、多数の要因によって決まる。したがって、「即時反応性ではない」は、1分以上から1時間以上、1週間以上に及ぶ。
【0058】
「増粘流体組成物」という語句は、剪断応力印加下で流動することができ、流動する時に、同一濃度の対応する水性二酸化塩素溶液の粘度を超える見かけ粘度を有する組成物を包含する。これは、ニュートン流動を示す流体(剪断応力に対する剪断速度の比率が一定であり、粘度は剪断応力と無関係である)、チキソトロピー流体(流動前に克服されるべき最小降伏応力を必要とし、持続剪断とともに剪断減粘性も示す)、疑似塑性および塑性流体(流動前に克服されるべき最小降伏応力を必要とする)、ダイラタント流体組成物(剪断速度が増加することで、見かけ粘度が増加する)、および印加される降伏応力下で流動することができる他の物質を含む、増粘流体組成物の全スペクトルを包含する。
【0059】
「増粘剤成分」は、該語句が本明細書で使用される時、それが添加される溶液または混合物を増粘する特性を有する成分を指す。「増粘剤成分」とは、上で説明されるように、「増粘流体組成物」を作製するために使用され得る。
【0060】
「見かけ粘度」とは、流動をもたらす任意の一連の剪断条件における、剪断速度に対する剪断応力の比率を意味する。見かけ粘度は、ニュートン流体の剪断応力とは無関係であり、非ニュートン流体組成物の剪断速度で変化する。
【0061】
「微粒子」という用語は、全ての固形物質を意味するように定義される。非限定的な例の目的で、微粒子は、相互に散在して、何らかの方法で互いに接触し得る。これらの固形物質には、大きい粒子、小さい粒子、または大小の粒子の両方の組み合わせを含む粒子が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される、「NaDCCA」は、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムおよび/またはその二水和物を指す。
【0063】
「遊離ハロゲンの供給源」および「遊離ハロゲン供給源」とは、水との反応時にハロゲンを放出する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0064】
「遊離ハロゲン」とは、遊離ハロゲン供給源によって放出されるようなハロゲンを意味する。
【0065】
「二酸化塩素の微粒子前駆体」とは、微粒子である二酸化塩素形成成分の混合物を意味する。ASEPTROL(BASF,Florham Park,NJ)の顆粒剤は、二酸化塩素の例示的な微粒子前駆体である。
【0066】
「固形物」とは、固体形状、典型的には、多孔固体形状、または顆粒状微粒子成分の混合物を含む錠剤を意味し、微粒子成分の大きさは、実質的には、固形物の大きさよりも小さく、「実質的に小さい」とは、粒子の少なくとも50%が、固形物の大きさよりも少なくとも1桁、好ましくは少なくとも2桁小さい粒子の大きさを有することを意味する。
【0067】
有機ポリマーに関して使用される、「疎水性」または「水不溶性」という用語は、25℃で、水100グラム当たり約1グラム未満の水溶性を有する有機ポリマーを指す。
【0068】
「酸供給源」とは、それ自体が酸性であるか、または液体水または固体オキシ−塩素アニオンと接触する時に、酸性環境を生成する物質、通常、微粒子固形物質を意味する。
【0069】
本明細書で使用される、「マトリックス」は、二酸化塩素生成成分の保護担体として機能する物質である。マトリックスは、典型的には、懸濁またはさもなければ含有される二酸化塩素を形成するために反応に関与する物質中の連続する固相または液相である。マトリックスは、物質の物理的形状を提供し得る。十分に疎水性である場合、マトリックスは、内部で水分との接触から物質を保護し得る。十分に堅固である場合、マトリックスは、構造メンバーに形成され得る。十分に液体である場合、マトリックスは、マトリックス内で物質を輸送する媒体として機能し得る。十分に接着性である場合、マトリックスは、傾斜もしくは垂直、または水平な下方表面に物質を接着する手段を提供し得る。液体マトリックスは、剪断応力の印加時に即時に流動するような液体であり得るか、または流れを引き起こすために降伏応力閾値を超えることを要求し得る。いくつかの実施形態では、マトリックスは、他の成分がマトリックスと、およびマトリックス中に混合され得るように(例えば、反応を開始して、二酸化塩素を形成するために)、液体であるか、または(例えば、加熱時に)液体になることができるかのいずれかであり得る。他の実施形態では、マトリックスは、連続固体であり、二酸化塩素の生成を、例えば、水または水蒸気の浸透によって、またはエネルギー活性化可能な触媒の光活性化によって開始することができる。
【0070】
「膜」とは、第3次元よりも実質的に大きい2次元を有する物質の層を意味する。膜は、液状物質または固形物質であり得る。いくつかの物質において、液膜は、硬化、例えば、蒸発、加熱、乾燥、および/または架橋結合によって、固体膜に変形し得る。
【0071】
別途明記されるか、または文脈から明らかではない限り、上記および本明細書に記載される選好は、本明細書で議論される実施形態の全体に適用する。
【0072】
説明
創傷、感染した口腔組織、または歯の表面等の生物硬組織等の組織に、二酸化塩素を送達する方法が開示される。方法は、任意の動物で実践することができる。動物の非限定的な例は、ヒト、非ヒト霊長類等の哺乳動物、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ならびにブタ等の家畜、マウスおよびラット等の爬虫類である。ある実施形態では、方法は、ヒト組織で実践される。
【0073】
二酸化塩素は、文書で十分に立証された強力な殺菌活性を有する。不利に、先行技術の二酸化塩素含有組成物は、細胞毒性であり、粘膜組織または真皮組織等の軟組織を刺激し、歯硬組織等の硬組織を損傷し得る。二酸化塩素含有組成物の細胞毒性は、主に、オキシ−塩素アニオンの存在に由来し、二酸化塩素分解の生成物であり得る塩素の存在に由来しない。組成物を含有する二酸化塩素中に存在するオキシ−塩素アニオンが、治療を目的とする、エナメルならびに象牙質等の歯硬組織、創傷組織または口腔粘膜および歯茎等の軟組織を含む、細胞および組織と接触することを実質的に阻止または阻害することによって、組織損傷は、二酸化塩素の殺菌効果もしくは漂白効果を達成しながら、測定可能に低減または最小化され得る。
【0074】
本明細書に示される、二酸化塩素は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌(PA)もしくはそれらの組み合わせの生物膜を含む、生物膜を表面で分裂、浸透、および/またはさもなければ不活性化するのに効果的である。MRSAは、一般的な細菌、黄色ブドウ球菌の耐性変異である。それは、メチシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、およびオキサシリンを含む、ベータラクタマーゼ耐性ベータラクタム抗生物質での治療に耐え抜く能力を進化させた。PAは、低い内因性抗生物質感受性および抗生物質耐性を容易に得る能力を有する日和見病原体である。PAは、高まる臨床的関連の院内病原菌として出現した。二酸化塩素は、高タンパク質環境の存在下でさえ、生物膜を分裂、浸透、および/またはさもなければ不活性化するのに効果的であることが本明細書で示される。本明細書にさらに示される、説明される方法に従っての創傷への二酸化塩素の投与は、創傷内の総細菌数の対数を減少し得る。二酸化塩素の消費速度への創傷中の血清の影響を推定することができ、したがって、より高い正確性を伴う有効薬用量(ppm−分単位)を推定することができることがさらに示される。歯の表面を二酸化塩素組成物で治療する特定の処置計画を変更することは、所与の薬用量(ppm−分単位)に対する歯のホワイトニングの程度に統計的に有意な量の影響を及ぼし得ることも本明細書に示される。
【0075】
したがって、本明細書に記載される方法は、概して、創傷を治療するための、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性の様式での、創傷への二酸化塩素源を含む組成物の投与に関連する。
【0076】
創傷は、1つ以上の組織に対する裂傷、擦傷、刺傷、または他の損傷を指す。組織は、粘膜組織、表皮組織、皮膚組織、および皮下組織(下皮組織とも呼ばれる)を含む真皮組織、ならびに手の爪および足の爪等の硬組織のいずれかであり得る。創傷は、組織に部分的もしくは完全に浸透し得る。創傷は、偶発的な外傷を介して、または意図的に、例えば、外科創傷を介して生じ得る。創傷は、急性から慢性に及ぶ。急性創傷は、規則的な一連の段階で、かつ比較的短い時間で癒える。慢性創傷は、例えば、3ヶ月を超える長期間の創傷であり、緩慢に治る。最も一般的な慢性創傷は、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、および褥瘡である。細菌定着は、急性創傷および慢性創傷の両方における問題である。細菌定着に対する免疫反応は、創傷炎症を長引かせ、治癒を遅延し、組織損傷を引き起こし得る。生物膜の存在を特徴とする細菌定着は、現在利用可能な治療法で適切に治療するのが特に困難である。本明細書に示される、二酸化塩素は、創傷床に存在する浸出液等の高タンパク質環境の存在下でさえ、生物膜を分裂、浸透、および/またはさもなければ不活性化するための強力な薬剤である。
【0077】
いくつかの実施形態では、創傷を治療する方法は、組織を、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性である組成物と接触させるステップを含む。他の実施形態では、方法は、創傷を、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を創傷に送達するデバイスまたは組成物と接触させるステップを含む。さらに他の実施形態では、接触は、創傷組織の洗浄を含む。いくつかの実施形態では、例えば、超音波エネルギーの使用によって、二酸化塩素の組織浸透を改善するステップ等を含む、併用療法が実行される。
【0078】
本明細書に記載される方法は、概して、口腔組織の感染を緩和するための、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性の様式での、組織への二酸化塩素を含む組成物の投与にも関連する。
【0079】
本明細書に記載される方法は、殺生剤、特に、二酸化塩素の局所曝露の影響を受けやすい任意の口腔組織の任意の感染の治療に有用である。口腔組織の感染には、口臭、歯肉炎、歯周炎、虫歯形成、および鵝口瘡が含まれるが、それらに限定されない。口腔組織は、無傷であり得るか、または1つ以上の切開、裂傷、もしくは他の組織浸透開口部を有し得る。方法は、予防的もしくは治療的に実践され得る。
【0080】
口腔内の細菌は、口腔の悪臭または口臭の基礎となる揮発性硫黄化合物(VSC)を生成し得る。VSCには、硫化水素、メチルメルカプタン、およびジメチルメルカプタンが含まれる。この問題を助長し得る例示的な細菌には、フソバクテリウムヌクレアタム、トレポネーマデンティコラ、タンネレラフォーサイシア(以前はバクテロイデスフォーサイスであった)、プレボテラインターメディア、ポルフィロモナスジンジバリス、ポルフィロモナスエンドドンタリス、ならびに真正細菌の種が含まれる。
【0081】
歯垢は、歯の表面に形成する生物膜である。歯垢に関連する口腔感染には、虫歯進行、歯肉炎、および歯周炎が含まれる。何百もの細菌が歯垢中で検出されてきた一方で、歯肉炎および歯周炎を助長する最も一般的な細菌は、アクチノバチルスアクチノミセタムコミタンス、カンピロバクターレクタス、エイケネラコローデンス、ならびに7つの嫌気性種、ポルフィロモナスジンジバリス、バクテロイデスフォーサイス、トレポネーマデンティコラ、プレボテラインターメディア、フソバクテリウムヌクレアタム、真正細菌、およびスピロヘータである。ポルフィロモナスジンジバリス、グラム陰性菌は、成人性歯周炎に大いに関与すると考えられる。有害な歯周病を助長する多様なヘルペスウイルスも見出された。主に虫歯形成の基礎となる細菌は、ストレプトコッカスミュータンス、ラクトバチルスアシドフィルス、アクチノミセスビスコーサス、およびノカルジア菌である。
【0082】
口腔鵝口瘡は、最も一般的な口腔真菌感染症である。口腔鵝口瘡の原因物質は、カンジダアルビカンスおよびカンジダデュブリニエンシスである。カンジダデュブリニエンシスは、典型的には、AIDS患者、臓器移植患者、および化学療法を受ける患者等の免疫不全の患者に見出される。
【0083】
歯肉炎、歯周炎、および虫歯等の口腔感染は、多くの場合、感染に関与する細菌が、生物膜形成であり、届きにくい歯肉上ポケット(さらに届きにくい)および歯肉下ポケットに位置するため、治療するのが極めて困難である。歯周炎は、歯を取り囲み、支援する組織に影響を及ぼす炎症性疾患。歯周炎を引き起こす微生物は、歯の表面に付着および成長し、これらの微生物に対して過度に攻撃的な免疫反応がある。歯周炎は、歯の周辺の歯槽骨の進行性損失を伴い、未治療のまま放置された場合、歯の弛緩およびそれに続く損失を招き得る。標準の治療はしばしば、患者にとって不快であり、しばしば、鎮痛剤の投与を必要とする根面平滑化および歯石除去を伴う。いくつかの場合では、歯周炎を治療するために侵襲的手術が必要である。現在の治療にはしばしば、抗菌剤としてクロルヘキシジンを有する抗菌性洗口液が含まれる。クロルヘキシジンは、歯を染色する望ましくない副作用を有し得る。
【0084】
したがって、感染した口腔組織を緩和する方法が提供される。提供される方法は、二酸化塩素と歯肉上ポケットおよび歯肉下ポケット内に位置する生物膜の貯蔵所との間の接触を改善するように企図される。口腔への投与は、連続的洗浄、断続的洗浄(例えば、すすぐ、または洗浄する)、複数回の実質的に連続した適用、組織浸透を改善するための併用療法、内容物を歯肉ポケットに送達するように設計された歯科用トレイの使用、ならびにゲルもしくは溶液等の二酸化塩素組成物の組織への直接注入の形態をとり得る。いくつかの実施形態では、例えば、超音波エネルギーの使用によって、二酸化塩素の口腔粘膜組織浸透を改善するステップを含む併用療法が実行される。
【0085】
本明細書に記載される方法は、概して、歯の表面をホワイトニングするための、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性の様式での、歯の表面への二酸化塩素を含む組成物の投与にさらに関連する。
【0086】
歯の標準のシェードは、底面のエナメルおよび象牙質の自然なオフホワイトの色合いによって判定される。外因性および内因性染色は、歯の色も助長する。外因性染色は、茶、コーヒー、赤ワイン、および多音字が豊富な他の食物によって引き起こされる染色等の表面の染みを指す。外因性の染みは、歯の表面からのそれらの物理的除去を引き起こす界面活性剤および/または研磨剤の使用を介して除去され得る。
【0087】
内因性染色は、エナメル表面の下方に存在する染み、またはエナメル表面の下方に浸透する染みを指す。内因性染色は、食物分子がエナメルの傷および割れ目、またはいくつかの場合において、エナメル小柱の間に染み込む時に起こり得る。内因性変色はまた、構造組成物または歯の硬組織の厚さに対する変化に続いて生じ得る。内因性の染みの除去は、外因性染色の除去よりも困難で時間がかかる。内因性染色の除去は、化学物質、光、もしくは熱活性化の有無にかかわらず、染みを漂白するために過酸化物または過酸化物の類似物の使用を含む、多種多様の方法によって達成され得る。過酸化物の使用に関連する副作用には、歯の過敏症、軟組織刺激(例えば、歯肉刺激)、ならびに歯の表面の変化(例えば、象牙質および/またはエナメルの変化)がある。
【0088】
実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である二酸化塩素含有組成物を使用する歯のホワイトニングは、ホワイトニングに効果的であり、減少した軟組織刺激ならびに減少した歯のエナメルおよび象牙質の変化を特徴とすることが示された。2009年7月14日に出願された、同一出願人による米国特許出願第12/502,761号、同第12/502,781号、同第12/502,895号、同第12/502,907号、および同第12/502,925号を参照されたい。
【0089】
本明細書に記載される方法は、統計的に有意に改善された歯のホワイトニングを提供し得る。ある実施形態では、歯の表面をホワイトニングするための方法は、歯の表面を、二酸化塩素源を含む組成物と接触させるステップの少なくとも2回の反復を含み、反復は、実質的に連続する。ある実施形態では、各々の反復は、組成物の新鮮標本を使用する。「新鮮標本」とは、以前に生物組織に曝露されていない組成物の標本を意味する。一態様では、接触させるステップは、歯の表面を、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性である組成物と接触させるステップを含む。別の態様では、接触させるステップは、洗浄デバイスを使用して、歯の表面を洗浄するステップを含む。洗浄デバイスは、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性である流体組成物を送達し得る。あるいは、洗浄デバイスは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を送達するように修正され得る。
【0090】
I.二酸化塩素生成成分
方法は、二酸化塩素源を含む組成物を採用する。二酸化塩素源は、二酸化塩素、二酸化塩素生成成分、およびそれらの組み合わせを指す。二酸化塩素生成成分は、少なくともオキシ−塩素アニオン供給源および二酸化塩素生成の活性剤を指す。いくつかの実施形態では、活性剤は、酸供給源である。これらの実施形態では、成分は、任意で、遊離ハロゲン供給源をさらに含む。遊離ハロゲン供給源は、塩素等のカチオンハロゲン供給源であり得る。他の実施形態では、活性剤は、エネルギー活性化可能な触媒である。さらに他の実施形態では、活性剤は、乾燥または無水極性物質である。他の実施形態では、活性剤は、水、唾液、粘液、創傷浸出液、および/または水蒸気等の水性流体である。
【0091】
オキシ−塩素アニオン供給源には、概して、亜塩素酸塩および塩素酸塩が含まれる。オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩の塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩の塩、アルカリ金属塩素酸塩の塩、アルカリ土類金属塩素酸塩の塩、およびそのような塩の組み合わせであり得る。例示的な実施形態では、オキシ−塩素アニオン供給源は、金属亜塩素酸塩である。いくつかの実施形態では、金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム等のアルカリ金属亜塩素酸塩である。アルカリ土類金属亜塩素酸塩も採用され得る。アルカリ土類金属亜塩素酸塩の例には、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸カルシウム、および亜塩素酸マグネシウムが挙げられる。例示的な金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムである。
【0092】
酸供給源によって活性化される二酸化塩素生成に関して、酸供給源には、無機酸塩、強酸のアニオンおよび弱塩基のカチオンを含む塩、水と接触する時に陽子を溶液中に遊離することができる酸、有機酸、無機酸、ならびにそれらの混合物が含まれ得る。いくつかの態様では、酸供給源は、乾式貯蔵の間、金属亜塩素酸塩に実質的に反応しないが、しかしながら、水媒体の存在下にある時に、二酸化塩素を形成するように金属亜塩素酸塩と反応する微粒子の固形物質である。酸供給源は、水溶性、水中で実質的に不溶性、またはこれら2つの中間であり得る。例示的な酸供給源は、約7未満、より好ましくは、約5未満のpHを生成するものである。
【0093】
例示的な実質的に水溶性である酸供給源形成成分には、ホウ酸、クエン酸、酒石酸等の水溶性固体酸、無水マレイン酸等の水溶性有機酸無水物、ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、酸性硫酸ナトリウム(NaHSO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、およびそれらの混合物等の水溶性酸性塩が含まれるが、それらに限定されない。例示的な酸供給源形成成分は、酸性硫酸ナトリウム(重硫酸ナトリウム)である。さらなる水溶性の酸供給源形成成分が当業者に知られている。
【0094】
二酸化塩素生成成分は、任意で、遊離ハロゲン供給源を含む。一実施形態では、遊離ハロゲン供給源は、遊離塩素供給源であり、遊離ハロゲンは、遊離塩素である。無水組成物に使用される遊離ハロゲンの好適な例には、NaDCCA、トリクロロシアヌル酸等のジクロロイソシアヌル酸およびその塩類、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、および次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸の塩類、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモクロロジメチルヒダントイン等が挙げられる。遊離ハロゲンの例示的な供給源は、NaDCCAである。
【0095】
エネルギー活性化可能な触媒によって活性化される二酸化塩素生成に関して、エネルギー活性化可能な触媒は、金属酸化物、金属硫化物、および金属リン化物から成る群から選択され得る。例示的なエネルギー活性化可能な触媒には、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化ルテニウム(RuO2)、二酸化イリジウム(IrO2)、二酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸化物(Ta25)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、鉄(III)酸化物(Fe23)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化ニオブ(NbO5)、三酸化インジウム(In23)、酸化カドミウム(CdO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化マンガネーゼ(MnO2)、酸化銅(Cu2O)、五酸化バナジウム(V25)、三酸化クロミウム(CrO3)、三酸化イトリウム(YO3)、酸化銀(Ag2O)、TixZr1-x2であって、xは0〜1の間、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される金属酸化物が含まれる。エネルギー活性化可能な触媒は、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。
【0096】
二酸化塩素生成成分は、任意で、マトリックス中に存在し得る。そのようなマトリックスは、同一出願人による米国特許出願公開第2006/0024369号に記載されるもの等の有機マトリックスであり得る。これらのマトリックスにおいて、二酸化塩素は、複合体が水蒸気または電磁エネルギーに曝露される時に生成される。マトリックスは、水和ゲルまたは無水ゲルであり得る。疎水性マトリックスも採用され得る。疎水性マトリックス物質には、水不浸透性の固形成分、例えば、疎水性ワックス、疎水性油等の水不浸透性液体、および疎水性固体と疎水性液体の混合物が含まれる。疎水性マトリックスを使用する実施形態では、二酸化塩素の活性化は、同時係属の米国特許出願第61/153,847号に記載されるように、乾燥または無水極性物質であり得る。
【0097】
II.送達方法
1.非細胞毒性/非刺激性組成物
ある実施形態では、本方法は、創傷を歯の表面と、または口腔を、二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させるステップを含む。
【0098】
二酸化塩素から成る酸化剤または漂白剤を含む組成物に関して、細胞毒性は、オキシ−塩素アニオンの存在、細胞毒性を助長する他の構成物質の不在に主に由来する。したがって、組成物1グラム当たり0ミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオンから組成物1グラム当たり約0.25mg以下のオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当たり0〜約0.24、0.23、0.22、0.21、もしくは0.20mgのオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当たり0〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0,12、0.11、もしくは0.10mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当たり0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、もしくは0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含む二酸化塩素を含む、細胞毒性を助長する他の構成物質が不在である組成物は、実質的に非細胞毒性である。
【0099】
オキシ−塩素アニオンは、EPA試験方法300(Pfaff,1993,「Method 300.0 Determination of Inorganic Anions by Ion Chromatography」,Rev.2.1,US Environmental Protection Agency)または電流測定法(Amperometric Method II in Eaton et al,ed.,「Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater」19th edition,American Public Health Association,Washington DC,1995)に基づく滴定法の一般的な手順に続くイオンクロマトグラフィを含む、当業者に知られている任意の方法を用いて、二酸化塩素溶液または組成物中で測定され得る。あるいは、オキシ−塩素アニオンは、電流測定法と同等の滴定法により測定され得るが、この方法は、ヨウ化物のヨウ素への酸化、それに続く、電流滴定の代わりにチオ硫酸ナトリウムを用いた澱粉の終点までの滴定を使用し、この方法は、本明細書で、「pH7緩衝滴定」と称される。亜塩素酸塩の分析標準は、概して、約80重量%の純粋な亜塩素酸ナトリウムを含むと推測される、工業グレードの固形亜塩素酸ナトリウムから調製され得る。
【0100】
軟組織の刺激は、反応性の高い酸素種および/または酸性および塩基性の両方のpHの極度に由来し得る。二酸化塩素含有組成物による軟組織の刺激を最小化するために、実質的に非細胞毒性である組成物は、少なくとも約3.5のpHを有する。好ましくは、組成物は、少なくとも5のpH、さらにより好ましくは、約6を超えるpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは、約4.5〜約11、より好ましくは、約5〜約9、さらにより好ましくは、約6より大きく、約8未満に及ぶ。一実施形態では、pHは、約6.5〜約7.5である。オキシ−塩素アニオンの濃度は、軟組織刺激への主な寄与体であると考えられていない。
【0101】
二酸化塩素を含む非細胞毒性および/または非刺激性組成物を調製する方法は、2009年7月14日に出願された、同一出願人による米国特許第12/502,761号および同第12/502,781号、表題「Tooth Whitening Compositions and Methods」および2009年7月14日に出願された、米国出願第12/502,326号および同第12/502,356号、表題「Non−Cytotoxic Chlorine Dioxide Fluids」に記載され、それらの各々は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0102】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である組成物は、中性pHを有する実質的に純粋な二酸化塩素溶液を用いて調製され得る。いくつかの実施形態では、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、約5〜約9、より好ましくは、約6.5〜約7.5のpHを有する。
【0103】
実質的に純粋な二酸化塩素は、任意の知られている方法を用いて、二酸化塩素溶液を調製し、次いで、その溶液を通して、脱イオン水の第2の容器にガス(例えば、空気)を気泡化する(散布)ことによって調製され得、実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。ClO2および場合によってはある程度の水蒸気のみが、源溶液から生成物溶液に移入される。全ての塩成分および酸が供給源溶液中に残留する。したがって、実質的に純粋な生成物溶液中にオキシ−塩素アニオンは存在しない。二酸化塩素を調製するための一方法は、溶液のpHを約3.5未満に低下させるために亜塩素酸ナトリウムの水性溶液を鉱酸と混合し、二酸化塩素を生成するのに十分な時間、例えば、約30分間、溶液を反応させるステップを含む。その後、上述のように、得られた溶液を散布し、実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。
【0104】
実質的に純粋な二酸化塩素は、ある程度の分解を起こす場合があるが、速度は比較的遅い。溶液に蓋をして、紫外線曝露から保護することによって、分解速度は、7日間で、二酸化塩素の約5%〜約25%の減少に減速し得る。実質的に純粋な二酸化塩素は、同様に、米国特許第4,683,039号に開示される技術等のパーベーパレーション技術を用いて調製され得る。さらに、亜塩素酸金属および酸供給源は、溶液中で反応して、二酸化塩素への高い変換をもたらし、2000ppmを超える二酸化塩素溶液をもたらす。濃縮された溶液は、その後、中性pHに緩衝され得る。同様に、二酸化塩素溶液は、酸性のpHで高濃度の二酸化塩素溶液をもたらす、米国特許第5,399,288号に記載される組成物を用いて調製され得る。濃縮された溶液は、その後、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を調製するために、緩衝されて実質的に中性のpHに達し得る。
【0105】
実質的に純粋な二酸化塩素溶液の別の供給源は、ASEPTROL(BASF Corp.,Florham Park,NJ)物質を用いて調製される二酸化塩素であり、同一出願人による米国特許第US6,432,322号および同第6,699,404号に記載される。これらの特許は、水に添加される時に二酸化塩素の高い変換溶液を調製するための微粒子成分を含む、実質的に無水の固形物を開示する。固形体中の微粒子成分は、亜塩素酸ナトリウム等の金属亜塩素酸塩、重硫酸ナトリウム等の酸供給源、およびジクロロイソシアヌル酸のナトリウム塩またはその水和物等の遊離ハロゲンの供給源(集合的に、本明細書で「NaDCCA」と称される)を含む。二酸化塩素は、ASEPTROL物質が水または水媒体と接触される時に生成される。ASEPTROL物質は、米国特許第6,432,322号および同第6,699,404号に記載されるように、水性溶液中で極端に高変換率を有するように作製され得、高濃度の二酸化塩素ならびに低濃度のオキシ−塩素アニオンをもたらす。したがって、ASEPTROL物質は、実質的に中性のpHにおいて、二酸化塩素を効果的に生成するための手段を提供し、したがって、初期の酸性二酸化塩素ベースの生成物に既存する問題を回避する。
【0106】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物を増粘水性流体にする増粘剤成分をさらに含む。実質的に非細胞毒性であり、いくつかの実施形態では、非刺激性である、二酸化塩素を含む増粘水性組成物を調製するために、実質的に純粋な二酸化塩素溶液が、増粘剤成分および水媒体と混合され得る。
【0107】
方法を実践する時に使用される水性増粘流体組成物は、水媒体中に任意の増粘剤成分を含み、増粘流体組成物は、軟組織に対して非細胞毒性および/または非刺激性である。例示的な実施形態では、二酸化塩素は、組成物の調製および治療における使用の時間的尺度で、増粘剤によって悪影響を及ぼされない。多くの増粘剤が当分野で知られており、カルボマー(例えば、CARBOPOL増粘剤、Lubrizol Corp.,Wickliffe,OH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、天然スメクタイト粘土(例えば、VEEGEM,R.T.Vanderbilt Co.,Norwalk,CT)、合成粘土(例えば、LAPONITE(Southern Clay Products,Gonzales,TX)、メチルセルロース、ポリアクリレート(例えば、LUQUASORB1010,BASF,Florham Park,NJ)等の高吸収性ポリマー、ポロキサマー(PLURONIC,BASF,Florham Park,NJ)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガント、およびキサンガムを含むが、これらに限定されない。そのような増粘剤は、4つの群、天然親水コロイド(「ガム」とも称される)、半合成親水コロイド、合成親水コロイド、および粘土に分類され得る。天然親水コロイドのいくつかの例には、アカシア、トラガント、アルギン酸、カラゲナン、イナゴマメゴム、グアーガム、およびゼラチンが挙げられる。半合成親水コロイドの非限定的な例には、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。合成親水コロイド(ポリマー、架橋ポリマー、およびコポリマーを含む、「ポリマー」とも称される)のいくつかの例には、ポリアクリレート、高吸収性ポリマー、高分子量ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ポリ酸化エチレン、ならびにCARBOPOLが挙げられる。粘土(膨張粘土を含む)の非限定的な例には、LAPONITE、アタパルジャイト、ベントナイト、およびVEEGUMが挙げられる。いくつかの実施形態では、増粘剤成分は、半合成親水コロイドである。ある例示的な増粘剤成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0108】
非細胞毒性である組成物を調製する時に、組成物の1つ以上の成分は、組成物の調製前に混合され得る。あるいは、組成物の全ての成分は、使用時に調製され得る。非細胞毒性溶液または非細胞毒性増粘組成物のいずれかに関して、本明細書の他の箇所に記載されるように、非細胞毒性である二酸化塩素溶液の所望の使用に好適である任意の他の成分が含まれ得る。溶液中の二酸化塩素は、経時的に分解する。亜塩素酸アニオンの効力および生成の損失を含む、このような分解から生じる問題を回避するために、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、好ましくは、その希釈または増粘剤成分および水媒体とのその混合の直前に調製される。
【0109】
加えて、いくつかの実施形態では、二酸化塩素を含む増粘組成物は、その使用の直前に調製され得る。本明細書で使用される、「直前」とは、細胞毒性の低下した効力または兆候をもたらす期間以下の期間を指す。概して、「直前」とは、約14日未満、好ましくは約24時間以下、より好ましくは約2時間以下である。例示的な実施形態では、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、組成物の調製の約8時間以内に調製される。二酸化塩素溶液または調製された組成物が強力な紫外線または高温(例えば、周囲温度よりも高い温度、約25℃)に曝露されることを回避することにも注意を払う。
【0110】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である増粘組成物も同様に、ClO2の微粒子前駆体および水性増粘流体組成物を用いて調製され得る。二酸化塩素形成成分には、亜塩素酸金属、塩素酸金属、酸供給源、および任意のハロゲン供給源が含まれる。微粒子前駆体は、これらの1つ、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。例示的な微粒子前駆体は、ASEPTROL製品である。例示的なASEPTROL製品は、ASEPTROL S−Tab2である。ASEPTROL S−Tab2は、以下の化学成分(重量%)を有する:NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、NaDCC(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2の例示的な製造過程を記載する。顆粒剤は、固形S−Tab2錠剤を粉砕するか、またはS−Tab2成分の非固形粉末の乾燥ローラー圧縮のいずれかによって産生され得、その後、得られた圧縮リボンまたはブリケットを破砕し、次に、所望の大きさの顆粒を得るためにスクリーニングする。水または水性増粘流体への曝露時に、二酸化塩素は、ASEPTROL顆粒剤から生成される。一実施形態では、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である組成物は、−40メッシュ顆粒剤を水性増粘流体と混合することによって調製される。一実施形態では、増粘流体の増粘剤成分は、カルボキシメチルセルロースまたはHPMCである。当業者は、ClO2の微粒子前駆体を用いて調製される増粘流体組成物における二酸化塩素産生が、急速である一方で、瞬時ではないことを認識する。したがって、二酸化塩素の生成に十分な時間および対応する亜塩素酸アニオンの消費は、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物を得るために必要である。当業者は、本開示の教示および当分野の知識を考慮して、どのくらいの時間が十分であるかを容易に決定することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、水性増粘流体は、増粘剤成分の完全な水和を可能にするために、ASEPTROL顆粒剤と混合するよりもかなり前に調製される。一実施形態では、増粘流体組成物は、高粘度NaCMC粉末を蒸留水に添加することによって形成される。NaCMCを少なくとも8時間水和させ、その後、混合物を均質化するために攪拌する。実質的に非細胞毒性である組成物は、その後、寸法決めされたASEPTROL顆粒剤をNaCMC増粘流体と混合することによって調製される。水和NaCMC混合物中の水媒体との接触がASEPTROL顆粒剤を活性化し、二酸化塩素が生成される。
【0112】
別の実施形態では、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物も同様に、所望の使用の部位で形成され得る。例えば、粘膜組織、唾液、創傷浸出液の粘液等の体液または呼気等の多湿蒸気は、ASEPTROL顆粒剤等の二酸化塩素の微粒子前駆体を活性化するための水媒体としての機能を果たし得る。一実施形態では、混合物は、粉末の形態の微粒子であってもよく、増粘剤成分の層で混合し、それによって、増粘マトリックスを形成してもよい。マトリックスは、粘膜組織または創傷に直接適用され得、組織に存在する水分への曝露は、二酸化塩素の産生を活性化し、実質的に非細胞毒性である組成物を形成する。あるいは、マトリックスは、使用直前に加湿され、その後、任意の組織に適用され得る。
【0113】
ある実施形態では、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性である組成物は、原薬(API)としての二酸化塩素から本質的に成る。他の実施形態では、組成物は、抗菌剤、局所麻酔剤、局所鎮痛剤、ステロイド、またはそれらの組み合わせ等の少なくとも1つの他のAPIとの組み合わせの二酸化塩素を含む。組成物は、任意で、1つ以上の他の成分を含む。そのような成分には、着色剤および芳香剤が含まれるが、これらに限定されない。他の任意の成分には、酵素、悪臭制御剤等が含まれる。例示的な抗菌剤には、ガチフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタミシン、セフタジジム、トブラマイシンおよびストレプトマイシン等のアミノグリコシド抗生物質、アムホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、ネオマイシン、リファキシミン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ポリミキシンB、プログアニル、エコナゾール、ならびにフルコナゾールが含まれるが、それらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態では、全ての任意の成分は、二酸化塩素による組成成分の酸性化が、その所望の機能に対して、酸性化に利用可能な二酸化塩素を減少させるため、二酸化塩素による酸性化に対して比較的耐性がある。「比較的耐性がある」は、適用で二酸化塩素含有組成物を調製および使用する時間的尺度において、任意の成分の機能が、許容し難いほど消滅せず、組成物は、二酸化塩素に関する効力/能力の許容可能なレベルを保持し、実質的に非細胞毒性のままであることを意味する。いくつかの実施形態では、組成物は、実質的に非刺激性のままであり得る。耐性成分を識別することに関するガイダンスは、シリアル番号(未定)、提出日(未定)の同一出願人による米国特許出願「Additives for Chlorine Dioxide−Containing Compositions」で提供される。
【0115】
実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物は、当分野で知られている任意の方法を使用して組織に送達され得る。製剤には、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、硬膏、経皮貼布、挿入物、リンス等が含まれ得る。経口適用に関して、組成物はまた、歯科用トレイ、歯科用フィルム、または歯科用ストリップによって歯の表面または口腔組織に送達され得る。歯科用ストリップは、歯に取り付けるのに十分に可撓性であるプラスチック製バックボーンで作製された実質的に平面の物体を指す。歯科用フィルムは、歯の表面に実質的に嵌合され得る柔軟な形状適合物質で作製された実質的に平面の物体を指す。任意で、歯科用ストリップは、唾液等の水媒体中で溶解される。
【0116】
2.非細胞毒性投与のためのデバイスおよび組成物
いくつかの実施形態では、方法は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を創傷、歯の表面、または感染した口腔組織に送達するデバイスもしくは組成物を用いて実践され得る。二酸化塩素が有効量で標的組織に到達するが、オキシ−塩素アニオンが標的組織もしくは周辺組織を刺激することを実質的に阻害される方法における、二酸化塩素およびオキシ−塩素アニオンを含む組成物の投与のためのそのようなデバイス、組成物、システム、ならびに方法が、2009年7月14日に出願された、同一出願人による米国特許出願第12/502,845号、同第12/502,858号、ならびに同第12/502,877号、表題「Methods,Systems and Devices for Administration of Chlorine Dioxide」に記載される。概して、方法は、二酸化塩素自体または二酸化塩素生成成分のいずれかを含み、組織に細胞毒性を引き起こすオキシ−塩素アニオンをさらに含む二酸化塩素源を提供するステップ、およびオキシ−塩素アニオンが通る通過を実質的に阻害し、二酸化塩素が通る通過を許可するオキシ−塩素アニオン障壁をさらに提供するステップを含む。いくつかの実施形態では、オキシ−塩素アニオン障壁は、陽子が通る通過も実質的に阻害し得る。二酸化塩素源は、二酸化塩素源と組織との間に挿入されるオキシ−塩素アニオン障壁を有する組織に適用され、したがって、オキシ−塩素アニオンが組織に到達するのを阻止または実質的に最小化し、それによって、組織への実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の送達を可能にする。
【0117】
組織と接触する二酸化塩素は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない。他の実施形態では、組織と接触する実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、1グラム当たり0ミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオンから1グラム当たり約0.25mg以下のオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当たり0〜0.24、0.23、0.22、0.21、もしくは0.20mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当たり0〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、もしくは0.10mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当たり0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、もしくは0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含み、細胞毒性を助長する他の構成物質が不在であり、したがって、実質的に非細胞毒性である。いくつかの実施形態では、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、接触領域1平方メートル当たり約400ミリグラム未満、約375mg/m2未満、約350mg/m2未満、約325mg/m2未満、または約300mg/m2未満のオキシ−塩素アニオンを含む。いくつかの実施形態では、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、0〜約200mg/m2未満のオキシ−塩素アニオンを含む。他の実施形態では、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、0〜約100mg/m2未満のオキシ−塩素アニオンを含む。
【0118】
二酸化塩素源は、任意の二酸化塩素含有組成物または二酸化塩素を原位置で形成することができる成分を含み得る。例示的な実施形態では、二酸化塩素源に存在する成分は、方法の実践の間、ならびに成分が障壁と接触している間の任意の使用前の期間に、オキシ−塩素アニオン障壁と適合可能である。「適合可能な」とは、成分が、二酸化塩素源中の二酸化塩素の濃度、オキシ−塩素アニオンの通過の阻害、または障壁によって許可された二酸化塩素の通過に、受け入れ難い程度の悪影響を及ぼさないことを意味する。
【0119】
障壁は、二酸化塩素源と標的組織との間の層の形態であり得る。一態様では、二酸化塩素源を有しないオキシ−塩素障壁が最初に組織に適用される。次に、二酸化塩素源が障壁層に適用される。他の実施形態では、二酸化塩素源が最初に障壁に適用され、次に、組み合わせが組織に適用されて、障壁層は組織に接触する。二酸化塩素源が二酸化塩素生成成分を含む実施形態では、二酸化塩素の生成は、標的組織への(二酸化塩素源を有するか、または有しない)障壁の適用前、適用中、および/または適用後に活性化され得る。
【0120】
別の実施形態では、標的組織は、実質的に非細胞毒性および実質的に非刺激性の量のオキシ−塩素アニオンを含有する二酸化塩素源と接触され得、一方で、標的組織と接触するように、第2の供給源からの追加の二酸化塩素が障壁を通過し得るが、第2の供給源中のオキシ−塩素アニオンの障壁を通る通過が阻害されるように、第2の二酸化塩素源は、標的組織の反対の障壁側に位置付けられ得る。
【0121】
別の実施形態では、二酸化塩素源は、オキシ−塩素アニオンが組織から隔離されるように、1つ以上の障壁物質を含むマトリックス中に分散されてもよく、一方で、二酸化塩素は、標的組織と接触するために、必要に応じて障壁物質およびマトリックスを通過する。この実施形態では、マトリックスは、組織に直接適用されるか、または任意の介入組織接触層に適用される。一態様では、マトリックス自体が障壁物質である。障壁としても機能し得る例示的なマトリックス物質には、パラフィンワックス等のワックス、ポリエチレン、ペトロラタム、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニル酢酸(EVA)、ポリウレタン、その混合物等が含まれる。別の態様では、二酸化塩素源は、障壁物質によって被覆またはカプセル化される。例示的な障壁物質には、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンとの混合、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱物油、パラフィンワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせが含まれる。例示的な障壁物質は、親和性の高いオキシ−塩素アニオンに結合し、アニオンの遷移または拡散を妨害または停止させる化合物も含み、実質的にオキシ−塩素イオンを含まない組成物が、組織に送達されるようにする。化合物は、オキシ−塩素アニオンを用いて不溶性の沈殿物を形成し、それによって、拡散を妨害または停止させ得る。あるいは、化合物は、物質または材料上で固定され、それによって、拡散または移動を妨害する。化合物は、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、およびスルホニウム、ならびにマトリックスの一部となり得る他の正負荷化合物等のカチオンであり得る。任意で、化合物は、オキシ−塩素アニオン物質上でマトリックスに、または任意のバッキング層上で固定され得る。
【0122】
多様な物質および膜が、オキシ−塩素アニオン障壁として使用され得る。障壁は、任意の形態であってもよく、典型的には、液体または固体のいずれかである。
【0123】
いくつかの実施形態では、オキシ−塩素アニオン障壁は、液体、例えば、ペトロラタムである。この実施形態では、液体は、最初に組織に適用され得るか、または介入する組織接触層に適用されて、層としての障壁を形成し、次いで、二酸化塩素源が液体障壁層に適用され得る。二酸化塩素源は、粒子として適用され得るか、または膜を形成するために物質に包含され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、オキシ−塩素アニオン障壁は、無孔膜である。膜は、二酸化塩素に対して透過性のままであり、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性のままである場合、任意の厚さであり得、単層または複数層であり得る。例示的な無孔物質は、ポリウレタン膜である。いくつかの実施形態では、ポリウレタン膜は、厚さ約38〜約76ミクロン等の、約30〜約100ミクロンである。市販の例示的なポリウレタン膜には、CoTran(商標)9701(3M(商標)Drug Delivery Systems,St.Paul,MN)およびELASTOLLAN(BASF Corp.,Wyandotte,MI)が含まれる。ELASTOLLAN製品は、ポリエーテルベースの熱可塑性ポリウレタンである。ELASTOLLANの特定の例は、ELASTOLLAN 1185A10である。
【0125】
いくつかの実施形態では、オキシ−塩素アニオン障壁は、二酸化塩素に対して透過性であり、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性である、微孔膜である。微孔膜は、二酸化塩素に対して透過性のままであり、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性のままである場合、任意の厚さであり得、単層または複数層であり得る。一実施例では、微孔膜は、熱機械的に膨張したポリテトラフルオロエチレン(例えば、Goretex(登録商標))またはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含み得る。例えば、米国特許第4,683,039号を参照されたい。膨張したポリテトラフルオロエチレンの形成の手順は、米国特許第3,953,566号に記載される。例示的なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリジメチルシロキサンおよびPTFEの相互浸透ポリマーネットワーク(IPN)は、米国特許第4,832,009号、同第4,945,125号、および同第5,980,923号に記載される。この種類の市販の生成物、Silon−IPN(Bio Med Sciences Inc.,Allentown,PA)は、単層であり、10〜750ミクロンの厚さで入手可能である。一実施形態では、微孔膜は、約16ミクロンの厚さを有するシリコンおよびPTFEのIPNである。別の実施例では、膜は、微孔ポリプロピレン膜である。例示的な微孔ポリプロピレン膜は、厚さ約25ミクロンの単層膜であり、55%の多孔性および約0.21ミクロン×0.05ミクロンの孔の大きさを有する、CHEMPLEX Industries(Paml City,FL)から市販されている物質である。微孔膜物質は、支持物質との複合体として提供され、使用に必要な構造強度を提供し得る。いくつかの実施形態では、膜は、疎水性であり、膜の疎水性質は、水反応媒体および水受容媒体の両方が、膜を通過するのを回避する一方で、二酸化塩素の分子拡散を可能にする。そのような障壁に使用される物質に関して考慮すべき特徴には、微孔物質の疎水性、孔の大きさ、厚さ、ならびに二酸化塩素、塩素、亜塩素酸、塩素酸、塩酸、酸、および塩基の攻撃に対する化学安定性が含まれる。
【0126】
多様な他の物質および膜を使用して、障壁を形成することができる。例えば、障壁は、微小穿孔ポリオレフィン膜、二酸化塩素に対して実質的に透過性であり、組成物のイオン成分に対して実質的に不透過性であるポリスチレンフィルム、比較的開いたポリマー構造を有するポリマー物質から形成されるパーベーパレーション膜、酢酸セルロースフィルム複合体、ポリシロキサンまたはポリウレタン物質、あるいはワックスを含み得る。言うまでもなく、粘膜または真皮組織との接触に関して、微孔障壁は、特に、デバイスおよび組成物の典型的な用途の時間的尺度で、実質的に非刺激性および実質的に非細胞毒性でなければならない。
【0127】
障壁内の孔の大きさは、障壁を通る二酸化塩素の所望の流速に応じて、大きく変化し得る。孔は、二酸化塩素ガスの流れの通過を阻止するほど小さくてはいけないが、同様に、液体の流れが許されるほど大きくてもいけない。一実施形態では、孔の大きさは、約0.21ミクロン×0.05ミクロンである。障壁の孔の量および大きさは、適用の温度、障壁物質の疎水性、障壁物質の厚さ、および障壁を通過する二酸化塩素の所望の流速によっても大きく変化し得る。二酸化塩素源からの二酸化塩素の真空圧は、高温で高くなるため、低温に対してより高い温度で少数かつ小さい孔が所定の二酸化塩素流速に必要とされる。高疎水性の障壁の孔を通って流れる水性二酸化塩素源の傾向が、低疎水性の障壁の孔を通る傾向よりも低いため、ポリウレタン等の低疎水性の物質と比較して、PTFE等の高疎水性の障壁物質とともに、より多くの大きい孔が使用され得る。障壁強度に関する考慮は、選択される多孔性も決定する。概して、障壁多孔性は、約1〜約98%、約25〜約98%、または約50%〜約98%に及ぶ。
【0128】
方法を実践するために有用なシステム、組成物、およびデバイスも提供される。一態様では、システムは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素を組織に送達するために提供される。典型的なシステムは、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素源、ならびに第1のシステム成分としてオキシ−塩素アニオン、および第2のシステム成分としてオキシ−塩素アニオン障壁、二酸化塩素源と組織との間に置かれる障壁を含み、障壁は、オキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許可することによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素の組織への送達を可能にする。
【0129】
組成物およびデバイスは、上述の方法およびシステムを実施するためにも提供される。したがって、一態様は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達するための組成物を特徴とする。組成物は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素源を含むマトリックス、ならびにオキシ−塩素アニオン、およびオキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害するが、二酸化塩素の通過を許可し、それによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素の組織への送達を可能にする、少なくとも1つの障壁物質を含む。一実施形態では、マトリックスは、水性マトリックス、またはワセリン等の疎水性または無水マトリックスであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス自体が障壁物質である。例えば、マトリックスは、二酸化塩素の拡散を許可しながら、オキシ−塩素アニオンの拡散を阻害するために、非極性または弱極性であり得る。
【0130】
マトリックスのバルクは、障壁物質であり得るか、もしくはマトリックスは、組織への二酸化塩素の選択的送達を実行するのに十分な量の障壁物質を含み得る。例えば、マトリックスは、二酸化塩素の形成のための反応物質または前駆体が埋め込まれ得るか、もしくは分散されるポリマー物質を含み得、ポリマー物質は、二酸化塩素に対して透過性であるが、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性である。例えば、二酸化塩素を産生するために、光波への曝露によって、より具体的には、紫外線放射への曝露によって活性化される、反応物質または前駆体およびポリエチレンに埋め込まれるエネルギー活性化可能な触媒を含む組成物を記載する、米国特許第7,273,567号を参照されたい。
【0131】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、接着ポリマーマトリックス等の接着マトリックスであり得る。そのような接着マトリックスに有用なポリマーは、接着時に起こり得るポリマーの分解および起こり得る間接的な変化を制限するように、二酸化塩素に対して実質的に透過性であり、好ましくは、二酸化塩素による酸性化に対して比較的耐性がある。接着ポリマーは当分野で知られている。例えば、米国特許第7,384,650号を参照されたい。
【0132】
組成物は、例えば、それを組織上で拡散することによって、もしくはさもなければそれを組織に適用することによって、または以下に記載されるような送達デバイスにそれを組み込むことによって、組織に適用され得る。
【0133】
有効量の二酸化塩素が標的組織と接触するように、二酸化塩素およびオキシ−塩素アニオンを含む組成物を標的組織に送達し、一方で、オキシ−塩素アニオンが、組織と接触することを実質的に阻害または阻止するための多様な送達デバイスが想定される。実質的な阻害は、標的組織および任意の周囲または周辺の組織に対する損傷もしくは刺激を減少、最小化、または防止する。
【0134】
デバイスは、典型的には、接触される組織の遠位の層および接触される組織の近位の層を含むように一方向に配向される。遠位層は、本明細書でバッキング層とも称される。デバイスは、組織接触層に取り付けられ、デバイスを組織に適用する前に除去される、リリースライナーをさらに含み得る。一実施形態では、デバイスは、二酸化塩素源および障壁層を含む層を含む。別の実施形態では、デバイスは、(1)バッキング層、(2)二酸化塩素源を含む層、および(3)障壁層を含む。障壁層は、非口腔組織と接触するように適合され得るか、または別の組織接触層は、障壁層と組織との間に存在し得る。障壁層または追加の組織接触層は、接着性であり得る。任意の追加組織接触層も同様に、二酸化塩素に対して実質的に透過性である。いくつかの実施形態では、障壁層は、熱機械的に膨張したポリテトラフルオロエチレン膜から作製され得る。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、ASEPTROLの顆粒等の二酸化塩素の微粒子前駆体である。
【0135】
概して、バッキング層は、二酸化塩素源の二酸化塩素および他の成分に対して実質的に不透過性である、任意の好適な物質で作製され得る。バッキング層は、マトリックス層の保護カバーとしての機能を果たすことができ、支持機能も提供することができる。バッキング層の例示的な物質には、高密度および低密度ポリエチレン、ポリビニリデンジクロリド(PVDC)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属ホイル等の膜が含まれる。
【0136】
任意の組織接触層は、二酸化塩素に対して実質的に透過性である任意の物質であり得る。任意の組織接触層は、吸収性物質であり得る。この層の非限定的な例には、綿もしくは他の天然繊維または合成繊維布もしくはメッシュ、発泡体およびマットが挙げられる。
【0137】
別の実施形態では、デバイスは、二酸化塩素源が分散され、少なくとも1つの障壁物質を含む、上述のようなバッキング層およびマトリックスを含む。マトリックスは、組織と接触するために適合され得るか、または追加の組織接触層が存在し得る。マトリックスまたは追加の組織接触層のいずれかは、接着性であり得る。典型的には、マトリックスは、調製され、その後、バッキング層に覆われる。
【0138】
二酸化塩素を調製するための当分野の任意の方法は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を送達するデバイスおよび組成物において、二酸化塩素を作製するための二酸化塩素源として使用されてもよい。例えば、水中で亜塩素酸イオンを反応させて、水に溶解された二酸化塩素ガスを産生することによって、二酸化塩素を調製する多数の方法がある。二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムを塩素ガス(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と反応させるステップを含む。しかしながら、二酸化塩素形成の動態学は、亜塩素酸アニオン濃度において高次であるため、二酸化塩素生成は、通常高濃度で行われ(1000ppm超)、得られた二酸化塩素含有溶液は、典型的には、所定の適用の使用濃度に希釈されなければならない。二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンからも調製され得る。二酸化塩素は、亜塩素酸イオンを有機酸無水物と反応させることによって産生することもできる。
【0139】
水蒸気との接触時に二酸化塩素ガスを生成する物質から成る二酸化塩素生成組成物が当分野で知られている。例えば、同一出願人による米国特許第6,077,495号、同第6,294,108号、同第7,220,367号を参照されたい。米国特許第6,046,243号は、親水性物質中で溶解された亜塩素酸塩の塩および疎水性物質中の酸放出剤の複合体を開示する。複合体は、水分への曝露時に、二酸化塩素を生成する。同一出願人の米国特許出願公開第2006/0024369号は、有機マトリックスに統合される二酸化塩素生成物質を含む、二酸化塩素生成複合体を開示する。二酸化塩素は、複合体が水蒸気または電磁エネルギーに曝露される時に生成される。乾燥極性物質での活性化による、乾燥または無水二酸化塩素生成成分からの二酸化塩素生成は、同一出願人による係属中の米国仮出願第61/153,847号に開示される。米国特許第7,273,567号は、亜塩素酸アニオンの供給源およびエネルギー活性化可能な触媒を含む組成物から二酸化塩素を調製する方法を記載する。適切な電磁エネルギーへの組成物の曝露は、順に二酸化塩素ガスの産生を触媒する触媒を活性化する。
【0140】
二酸化塩素溶液はまた、粉末、顆粒、ならびに錠剤およびブリケット等の固形圧縮体を含む、固形混合物から産生されてもよく、液体と接触する時に二酸化塩素ガスを生成する成分から成る。例えば、同一出願人による米国特許第6,432,322号、同第6,699,404号、および同第7,182,883号、ならびに米国特許出願公開第2006/0169949号、および同第2007/0172412号を参照されたい。いくつかの実施形態では、二酸化塩素は、二酸化塩素の微粒子前駆体を含む組成物から生成される。したがって、二酸化塩素源は、二酸化塩素の微粒子前駆体を含むか、または本質的にそれから成る。採用される微粒子前駆体は、ASEPTROL製品、例えば、ASEPTROL S−Tab2およびASEPTROL S−Tab10であり得る。ASEPTROL S−Tab2は、以下の化学成分(重量%)を有する。NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物(NaDCC)(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2タブレットの例示的な製造過程を記載する。ASEPTROL S−Tab10は、以下の化学成分(重量%)を有する。NaClO2(26%)、NaHSO4(26%)、NaDCC(7%)、NaCl(20%)、MgCl2(21%)。米国特許第6,432,322号の実施例5は、S−Tab10タブレットの例示的な製造過程を記載する。
【0141】
本明細書の他の箇所に記載される、二酸化塩素生成の活性化は、適切な薬剤(例えば、水媒体、電磁エネルギー等)との二酸化塩素生成成分の接触による投与前であってもよい。あるいは、二酸化塩素生成は、粘液、唾液、水、創傷浸出液等の水媒体と接触させることによって、原位置で開始される。
【0142】
本開示および当分野の知識を備えて、創傷を治療するための創傷との接触、歯のホワイトニングのための歯の表面との接触、または口腔感染を治療するための歯肉粘膜組織等の口腔粘膜組織との接触のために、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を送達するデバイスおよび組成物を物理的に適合させることは、当業者の技術の範囲内である。例えば、経口適用で使用するデバイスおよび組成物は、それら自体が歯科用トレイの形態であり得るか、または歯科用トレイの手段で送達されるように適合され得る。
【0143】
3.治療計画
ある実施形態では、方法は、二酸化塩素源を含む組成物の単回投与を含み得る。別の実施形態では、方法は、接触させるステップの1回以上の反復を含み、後に続く各々の投与ステップは、先の反復に実質的に連続する。いくつかの実施形態では、方法は、投与ステップの3回、4回、5回以上の実質的に連続する反復を含む。各々の反復は、用量および接触期間において同一であり得、各々の反復は、異なり得るか、またはその両方の組み合わせであり得る。本明細書に示される、二酸化塩素源を含む組成物の組織への複数回の実質的に連続した適用は、創傷中の細菌数を減少させるのに効果的であり得る。さらに本明細書に示される、二酸化塩素源を含む組成物の複数回の実質的に連続した適用は、歯のホワイトニングに効果的である。具体的には、所与の総薬用量(百万分率の二酸化塩素の濃度掛ける分単位の曝露の総時間、ppm−分)で、統計的に有意に改善された歯のホワイトニングは、実質的に連続した様式で、より頻繁かつ短期間の適用を用いることによって達成され得ることが見出された。各々の適用は、二酸化塩素源を含む組成物の新鮮標本を使用する。「新鮮標本」とは、以前に生物組織に曝露されていない組成物の標本を意味する。したがって、新鮮標本は、最小から無の二酸化塩素の崩壊を受けている。例示的な実施形態では、治療のための組成物は、新たに作製される。本明細書で使用される、「新たに作製される」は、最終組成物の他の成分への二酸化塩素の添加が、組織を組成物と接触させる前の約1時間以内、約30分以内、または約15分以内に生じることを意味する。したがって、新たに作製された組成物は、最小から無の二酸化塩素の崩壊を受けている。
【0144】
反復の実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物が反復において同一である一方で、各々の反復における組成物は新鮮であることがより一般的である。言い換えると、1回の反復での組成物は、組成物の新鮮標本と取り換えられる。デバイスまたは組成物を使用して、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達する実施形態では、1回の反復でのデバイスまたは組成物は、未使用のデバイスまたは組成物の新鮮標本と取り換えられる。「未使用のデバイス」とは、CIO2を送達するための組織インターフェースが、以前に生物組織に曝露されていない送達デバイスを意味する。したがって、未使用のデバイスは、最小または無の二酸化塩素の崩壊を受けている。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物の単一バッチは、完全なる一連の連続反復を補うのに十分な量で、治療の開始時に調製され、新鮮標本は、各々の反復のために単一バッチから取られる。他の実施形態では、二酸化塩素を含む組成物は、各々の反復の前に新たに調製される。
【0145】
他の実施形態では、方法は、治療を交互に行うステップをさらに含み得、1つ目のステップは、二酸化塩素源を含む組成物の投与を含み、2つ目のステップは、第2の非二酸化塩素治療薬を含む組成物の投与を含む。これらのステップは、任意の順および複数の反復で行われ得る。連続したステップは、同一の組成物または異なる組成物を含んでもよい。他の非二酸化塩素治療薬の例は、本明細書の他の箇所に記載される。
【0146】
方法は、二酸化塩素源を含む組成物の投与の2つ以上の連続したステップを含み得、他の治療薬の投与の少なくとも1つのステップが続く。二酸化塩素源を含む組成物での投与ステップの数および/または期間は、第2の治療組成物での投与の数および/または期間と同一であるか、または異なり得る。二酸化塩素源を含む組成物は、複数のステップにおいて同一であり得るか、または二酸化塩素の異なる濃度等、異なり得る。同様に、第2の治療薬組成物は、複数のステップにおいて同一であり得るか、または異なり得る。同じく、治療ステップの期間は、二酸化塩素源を含む組成物に対して、および第2の治療薬成分に対して同一であるか、または異なり得る。
【0147】
治療は、1日に数回の頻度で生じ得、または1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回等のより低い頻度、あるいは数ヶ月に1回もしくはさらには1年に1回より少ない等のより低い頻度で生じ得る。所望の効力を達成するのに好適な治療の頻度は、当業者に容易に明らかであり、治療される疾患/障害の種類および重症度、ならびに組織と接触する方法等ではあるが、それらに限定されない任意の数の要因によって決まる。本明細書の他の箇所で議論されるように、治療は、組織接触の1つのエピソード、または1つ以上のエピソードを含み得る。治療エピソードは、実質的に連続するか、時間で区切られるか(例えば、数時間〜数日、数日〜数週間、および同様に数ヶ月から数年以上を含むより長い間隔)、または両方であり得る。いくつかの実施形態では、治療は、組織接触の少なくとも2つの実質的に連続したエピソードを含む。連続したエピソードは、約7.5分等の同一期間であり得るか、または5分および10分等の異なる期間であり得る。歯の表面をホワイトニングするためのいくつかの実施形態では、治療は、それぞれ7.5分の少なくとも4つの実質的に連続したエピソードである。この実施形態の一態様では、組成物は、約100〜400ppmのClO2、または約150〜約200ppmのClO2を含む。これらの実施形態における組成物のpHは、約4〜7、または約5〜6であり得る。
【0148】
創傷を治療するためのある実施形態では、創傷清拭を含む併用療法が想定される。創傷清拭は、創傷中の損傷した組織、壊死組織、および/または感染した組織を除去する過程である。創傷清拭は、残りの健常組織の治癒潜在能力を改善することで創傷治癒の利益になると考えられる。概して、創傷清拭は、外科的、機械的、化学的のいずれかで、および/またはうじ虫療法で行われ得、これらの処置は、当分野で周知である。創傷清拭は、超音波エネルギーの使用によっても達成され得る。この場合、超音波治療は、創傷を二酸化塩素組成物と接触させるステップを先行させるであろう。
【0149】
ある実施形態では、標的組織との二酸化塩素の接触を改善するための高周波機械エネルギーを含む併用療法が想定される。例示的な周波数範囲は、約5Hz〜約5MHzである。
【0150】
一実施形態では、高周波機械エネルギーは、超音波である。超音波は、ヒトの知覚の正常範囲を超えており、0〜約5W/cm2より大きいパワーを有する、周波数20kHz超〜約10MHzの音響エネルギーである。それは、創傷治癒に関係する多数の生物学的効果を引き起こし得る。
【0151】
これらには、細胞タンパク質合成および放出、血流および血管透過性、血管形成、ならびにコラーゲン含有量および配列の変更が含まれる。創傷の手入れにおける超音波エネルギーを使用した創傷および組織の手入れ法は、超音波エネルギーが、放射面から創傷または組織表面に放出されることを要求する。一実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物が適用された組織は、次に、超音波エネルギーに曝露されて、組織への二酸化塩素の浸透を増加させる。創傷の表面の下方に位置する病原体との二酸化塩素の接触を増加させることによって創傷治癒を改善するために、組織浸透を増加させることが想定される。ある特定の実施形態では、超音波処理を含む併用療法における細菌数の減少は(超音波処理の不在下での同一治療と比較して)、実質的に完全な対数殺滅(例えば、実質的に無の細菌が検出可能)に対して少なくとも約1対数、2対数、3対数、4対数以上である。例えば、治療前に8対数の初期総細菌数を有する創傷に関して、実質的に完全な対数殺滅は8対数である。細菌数は、当分野で知られている任意の方法で評価され得る。細菌数を評価するための例示的な方法は、感染した組織の組織試料を得ること、組織試料から連続希釈物を調製すること、希釈物を培養液にプレーティングすること、細菌数を評価することによる。治療前および治療後の評価は、細菌対数の減少を評価するために実行される。
【0152】
いくつかの実施形態では、超音波周波数は、約1kHz〜約100kHz、約10kHz〜約50kHz、または約20kHz〜約40kHz、およびそれらの間の全ての整数値であり得る。例えば、超音波エネルギーを使用するある特定の実施形態では、周波数は、20kHz、21、22、23、24、25〜40kHz、26kHz、27、28、29、30〜40kHz、31、32、33、34、35〜40kHz、または36kHz、37、38、39〜40kHzに及ぶ。いくつかの実施形態では、断続的に施行される少なくとも2つの異なる超音波周波数が使用され得る。いくつかの実施形態では、電力強度は、約0.1〜約5W/cm2に及び得、それらの間の全ての10分の1の値を含む。したがって、電力強度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5〜約5W/cm2、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0〜約4.5W/cm2、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9〜4.5W/cm2、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9〜4.5W/cm2、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9〜4.4W/cm2、または3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9〜4.0W/cm2であり得る。デューティーサイクルは、約20%〜約100%に及び得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、断続的に施行される少なくとも2つの異なる電力強度が使用され得る。デューティーサイクルは、同一であり得るか、または異なり得る。超音波エネルギーへの曝露の期間は、二酸化塩素源を含む組成物に対する曝露の期間と同一であり得るか、または異なり得る。いくつかの実施形態では、単一エピソードのための超音波エネルギーの期間は、約10秒〜約10分、約10秒〜約5分、および約30秒〜約5分、ならびにその間の全ての範囲に及ぶ。所与の治療の間、超音波エネルギー投与の複数のエピソードが投与され得る。複数のエピソードは、例えば、超音波エネルギーの投与の間の組織温度の冷却を許可するために、実質的に連続するか、または一定の間隔があけられる。一実施形態では、約100〜約400ppmの二酸化塩素を含む二酸化塩素を含む組成物と接触する組織は、約2〜約4W/cm2または約2.5〜約3.5W/cm2の電力強度、ならびに40%のデューティーサイクルを有する、約20〜40kHzの周波数を使用して、約2〜4分間、超音波エネルギーに曝露される。任意で、組織は、この超音波治療の少なくとも2回、3回、4回以上の反復と接触される。
【0154】
歯肉上ポケットおよび歯肉下ポケットへの二酸化塩素の浸透を改善することによって、口腔組織感染の緩和を改善するために、超音波処理も想定される。経口適用のための超音波デバイスが当分野で知られている。例えば、米国特許出願公開第20080209650号、ならびに米国特許第6,881,061号および同第7,044,737号を参照されたい。
【0155】
別の実施形態では、方法は、第2の治療薬の追加等の併用療法を含み得る。併用療法は、創傷治療または口腔組織感染の緩和を改善することを意図する別のステップの追加を指す。一実施形態では、組織を二酸化塩素組成物および別のAPIと接触させる併用療法が想定される。一実施形態では、APIは、抗菌剤、別の治療薬、またはそれらの組み合わせである。例示的な抗菌剤は、本明細書の他の箇所で開示される。他の治療薬には、局所麻酔剤、ステロイド、鎮痛剤等が含まれる。任意で、方法は、超音波エネルギーを創傷に接触させた二酸化塩素組成物に印加するステップをさらに含み得る。
【0156】
別の実施形態では、前治療を含む併用療法が想定される。組織の前治療のステップは、組織への二酸化塩素の浸透を増加することが意図される。例示的な前治療には、治療のための標的組織をジメチルスルホキシド(DMSO)と接触させ、続いて、二酸化塩素源を含む組成物を投与するステップが含まれるが、それらに限定されない。他の例示的な前治療には、組織を電磁波源で治療し、続いて、二酸化塩素源を含む組成物を投与するステップ、組織を脂肪酸で治療し、続いて、二酸化塩素源を含む組成物を投与するステップ、またはショ糖エステルで治療し、続いて、二酸化塩素源を含む組成物を投与するステップが含まれる。例えば、米国特許出願公開第20080208179号および米国特許第4,865,848号を参照されたい。
【0157】
4.組織洗浄
別の実施形態では、二酸化塩素源を含む組成物を投与またはそれを組織と接触させる方法は、洗浄を使用して実践することができる。創傷または口腔感染等の組織の洗浄とは、組織を流体組成物ですすぐ過程を指す。洗浄は、連続的または断続的のいずれかであり得る。断続的洗浄は、組成物の定期的な適用を組織に送達するよう修正された自動洗浄デバイスを使用して実践され得るか、または二酸化塩素源を含む大量の組成物で創傷もしくは口腔をすすぎ、各々の反復において大量の新鮮な組成物でこのステップを反復的に繰り返す等の手動洗浄によって実践され得る。ある二酸化塩素は、創傷浸出液中のタンパク質等の有機物と反応することによって最初に消費され得るにもかかわらず、連続的洗浄は、損傷皮膚の平方インチ当たりの二酸化塩素の有効濃度が、実質的に一定のレベルで経時的に維持され、有効量が送達されるように過度に保持されてもよいという利点を有する。そのようなものとして、創傷の洗浄は、創傷治療のための当分野の現状の生成物、例えば、含銀硬膏またはゲルと同等に効果的、またはより効果的であることが予期される。感染した口腔組織の洗浄は、歯肉上ポケットおよび歯肉下ポケットとの接触を改善することが予期され、細菌数の減少を改善し得る。
【0158】
本明細書で説明される方法での使用のための洗浄システムは、概して、2つの成分から成る:a)洗浄される創傷または他の組織を被覆する入口および出口を有するチャンバを含む洗浄デバイス、および溶液をチャンバに供給し、溶液をチャンバから排出させる手段、ならびにb)創傷または局所損傷を治療するように、チャンバに供給される二酸化塩素源を含む流体組成物。より具体的には、洗浄デバイスは、5つの成分を有し得る:1)洗浄される標的組織の少なくとも一部を接触させるための、入口部および出口部ならびに開口部を有する可撓性、半剛性、もしくは剛性ポーチまたは他の格納チャンバ、2)チャンバに流体を提供するか、もしくはチャンバから流体を排出するように、チャンバ出入口部に接続され得る流体供給および放出システム、3)密着かつ実質的に漏れないシールを形成するように、標的組織を取り囲む組織に対してチャンバの接触を維持する手段、4)流量の均一分布を確実にするための、ポーチの内側に設置され得る任意の開放細胞発泡体または他の多孔性物質、ならびに5)格納チャンバを出るように流体を供給する、および/または流体が格納チャンバを出ることを可能にする流体取扱ユニット。
【0159】
提案されたシステムの第1の成分は、ポーチまたは格納チャンバである。例示的な実施形態では、ポーチの外面は、格納容器が常に陽圧下にある場合、吸引が1つ以上の軟らかい可撓性物質に印加されるか、または1つ以上の軟らかい可撓性物質を形成する時に、1つ以上の半剛性物質もしくは剛性物質で作製される。チャンバの3次元形状は、複数の立体構造であると推測することができる。一実施形態では、チャンバの開口部は、治療されている組織の境界に適合するか、または治療されている組織の境界よりも若干大きく、ポーチの容積は、洗浄流体の適切なターンオーバーを提供するのに十分である。ポーチの別の任意の特徴は、抗菌性であるか、または生物膜形成を積極的に阻止する物質から構成され得ることである。
【0160】
このシステムの第2の成分は、流量が格納チャンバに流入して流出することを可能にするシステムである。システムは、洗浄のみを支援する単腔デバイスのように単純であり得る。しかしながら、ある実施形態では、管類は、2つ以上の管腔を含有し、それらのうちの1つは、非二酸化塩素抗菌剤または麻酔薬等の他の薬剤を、組織治療で使用するポーチに供給するために使用され得、かつそれらのうちの1つは、真空を組織領域に印加するために使用され得、および/または吸引のために使用され得る。
【0161】
ある実施形態における管システムは、可撓性PVCまたはシリコーンベースの物質から作られる単線もしくは二重線の可撓性管である。しかしながら、当業者は、任意の好適な物質が管類を作るために使用され得ることを認識し、選択される管の数は、それらが開示される方法、デバイス、および組成物の目標を達成する間は変化し得ることも認識する。例えば、1つの管腔は、真空を適用するために使用されてもよく、別の管腔は、創傷を洗浄するように、またはさらには例えば、創傷を治癒する補助をし得るガス(例えば、酸素)を提供するように、抗生物質を供給するために使用されてもよい。加えて、第3の管腔は、電気的な刺激を提供する送電線を伝導するために使用されてもよい。管腔は、相互から分離されてもよく、相互に隣接してもよく、相互に同心性であってもよく、または任意のその組み合わせであり得る。
【0162】
第3のシステムの成分は、密着かつ実質的に漏れないシールを提供するように、皮膚と接触するチャンバを維持する手段である。システムは、ストラップが標的組織上で剛性チャンバを適所に保持するように標的組織の位置で身体に巻き付けられたストラップ等、比較的単純である。ある実施形態では、取り付けシステムは、2つの成分から成る:1)好適な皮膚に優しい接着剤、例えば、アクリル接着剤に積層されるポリウレタン膜から形成される接着ウエハー、および2)ウレタン膜がポーチ物質に溶接される、同様の構成の環状ウエハー。チャンバは、まず、接着ウエハーに創傷または他の局所損傷の輪郭に適合する穴を開け、次に、そのウエハーを皮膚に取り付けることによって皮膚に取り付けられ、次いで、ポーチに取り付けられた環状ウエハーが、「皮膚側」の接着ウエハー上のウレタン膜に取り付けられる。
【0163】
第4の成分は、流量の均一分布を確実にするように、任意で、洗浄チャンバの内側に設置される、流量分布成分である。この成分は、穿孔膜、数々の穿孔管、または流体流量の均一性を改善するための当分野で知られている任意の他のデバイスであり得る。ある実施形態では、好ましい流量分布成分は、チャンバの開口部内に位置付けられ、標的組織と接触する多孔性開放細胞発泡体である。
【0164】
第5の成分は、格納チャンバを出るように流体を供給する、および/または流体が格納チャンバを出ることを可能にする流体取扱ユニットである。流体取扱ユニットは、チャンバに入るか、もしくはチャンバから出る流体の流れを可能にする任意の設計であり得る。例えば、流体供給容器は、チャンバと比較してより高い高度の位置に位置付けられてもよく、流体が重力によって容器からチャンバ内に流れることができるように、管類でチャンバに接続されてもよい。同様に、使用済み流体受容容器は、チャンバよりも低い高度で位置付けられてもよく、使用済み流体が重力によってチャンバから流体受容容器に流れ出るように、管類でチャンバ接続されてもよい。ある実施形態では、この成分は、管類の少なくとも1つの管腔の近位端に付着する、持ち運び可能な軽量の電池式ポンプである。言うまでもなく、他の管腔は、抗生物質点滴デバイス、電気デバイス等の他の物品に付着されてもよい。
【0165】
ある実施形態では、流体取扱ユニットは、肩への取り付け、または患者のベルトへの取り付けによって、それを容易に持ち運ぶことができるように設計される。真空ポンプに加えて、例示的な実施形態では、排出/吸引ユニットには、貯蔵所、バッテリー電源、および排出/吸引ユニットを作動させるかもしくは停止させるための制御スイッチも含まれる。
【0166】
二酸化塩素は、洗浄デバイスのある部分の物質を通る汚染物質または拡散によって消費され得るため、格納チャンバ内の二酸化塩素濃度は、二酸化塩素を含む新鮮な組成物を含有する流体供給容器内に存在する濃度よりも低い可能性がある。ひいては、所望の効果的なレベルで、チャンバ内で二酸化塩素濃度を維持するために十分な流量および濃度の新規の二酸化塩素混合物をチャンバに提供することが重要である。流入する流体混合物の二酸化塩素濃度は、少なくともチャンバ内の所望の濃度と同等に高くなくてはならない。ある特定の実施形態では、流入する流体混合物は、標的濃度よりも高い濃度でなくてはならない。チャンバ内の二酸化塩素の濃度が所望の濃度よりも高い場合、チャンバ内の二酸化塩素濃度が所望のレベルまで降下するまで、筐体への流速が低減し得るか、もしくは流入する溶液の濃度が減少するか、または両方の変化がもたらされ得る。チャンバ内の二酸化塩素の濃度が所望の濃度よりも低い場合、チャンバ内の二酸化塩素濃度が所望のレベルまで上昇するまで、筐体への流速が増加するか、もしくは流入する溶液の濃度が増加するか、または両方の変化がもたらされ得る。
【0167】
記載の洗浄デバイスは、組織を組成物の連続的な流れと接触させるために、二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物とともに使用され得る。別の実施形態では、洗浄デバイスは、オキシ−塩素アニオン障壁の追加によって修正され得る。具体的には、本明細書で企図されるデバイスは、オキシ−塩素アニオン障壁を含むチャンバを含み、デバイスは、二酸化塩素溶液をチャンバ内に供給するための入口部および二酸化塩素溶液を除去するための出口部ならびにオキシ−塩素アニオン障壁で被覆される開口部を有する。チャンバは、感染領域を取り囲む組織で、密着かつ実質的に漏れないシールを形成するように設計され、開口部は、感染領域に近接する。オキシ−塩素アニオン障壁は、感染領域とチャンバ開口部との間に置かれる。オキシ−塩素アニオンを含有する二酸化塩素溶液は、チャンバに導入され、二酸化塩素は、開口部を被覆するオキシ−塩素アニオン障壁を通過し、それによって、感染領域に接触し、一方で、障壁を通るオキシ−塩素アニオンの通過は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性レベルに制限される。オキシ−塩素アニオン障壁として有用な例示的な物質は、本明細書の他の箇所に記載される。
【0168】
5.用量および期間
二酸化塩素源を含む組成物によって送達される二酸化塩素の量は、広範な制限内で変化し、各々の特定の事例における個別の要件に適応され得る。量は、治療される状態、レシピエントの全般的な健康状態、投与の回数および頻度、ならびに当業者に知られている他の変数によって決まる。したがって、組織に送達される二酸化塩素の量(すなわち有効量)は、組織への二酸化塩素の所望の適用からの結果に関連する。当業者は、所与の使用に有効となるような適切な量または量範囲の二酸化塩素を容易に決定することができる。概して、有用な量は、例えば、約1〜約2000ppmの二酸化塩素、少なくとも約1〜約1000ppm、または少なくとも約20〜約400ppmを含む。いくつかの実施形態では、二酸化塩素は、少なくとも約5ppm、少なくとも約20ppm、または少なくとも約30ppmで組成物中に存在する。典型的には、二酸化塩素の量は、約1000ppm、約700ppm以下、約500ppm以下、および約200ppm以下であり得る。一実施形態では、組成物は、約30〜約100ppmの二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態では、有用な用量範囲は、接触領域(平方メートル)当たり約2.5mgの二酸化塩素〜約500mg/m2の二酸化塩素であり得る。少なくとも約10mg/m2、少なくとも約15mg/m2、および少なくとも約20mg/m2の用量も有効であり得る。
【0169】
効力を得るために組織と接触させる期間は、本明細書の教示および該分野における知識を考慮して、当業者によって容易に決定され得る。接触の期間は、例えば、感染の種類、生物膜の存在また不在、組織の種類、処置が治療的であるか、または予防的であるか、および二酸化塩素組成物の製剤(例えば、液体またはゲル、あるいは徐放製剤)に左右される。有利に、長時間の接触後でさえ、組成物は、粘膜または真皮組織を実質的に刺激しない。同様に、新鮮標本との接触の実質的に連続的な反復は、粘膜または真皮組織を実質的に刺激しない。概して、接触の期間は、数秒から数分、数時間、数日に及ぶ。いくつかの実施形態では、接触の期間は、少なくとも約60秒、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5分、少なくとも約6、7、8、9、もしくは10分、または少なくとも約11、12、13、14、もしくは15分であり得る。いくつかの実施形態では、接触期間は、16、17、18、19、もしくは20分以下、さらに21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30分以下、および約35、40、45、50、55、もしくは60分以下またはある状況においてはそれ以上であり得る。ある特定の実施形態では、接触の期間は、約1〜約60分、約5分〜約30分、または約10〜約20分に及ぶ。いくつかの実施形態では、治療のための接触の期間は、約15分である。いくつかの実施形態では、接触の期間は、少なくとも約1時間〜約72時間、少なくとも約8時間〜約48時間、または少なくとも約12時間〜約36時間に及ぶ。ある特定の実施形態では、接触の期間は、約1時間〜約6時間、または約1.5時間〜約4時間に及ぶ。
【0170】
二酸化塩素の薬用量は、ppm−分の単位で、二酸化塩素の濃度(百万分率)掛ける二酸化塩素との組織接触の期間(分)で表すことができる。薬用量は、単回治療を指す。二酸化塩素の濃度は、単回治療で使用される組成物に対する。単回治療は、1つの接触させるステップまたは複数の接触させるステップ(例えば、実質的に連続的な反復)を含み得る。いくつかの実施形態では、ppm−分における薬用量は、約100ppm−分〜約10,000ppm−分、または約200ppm−分〜約5000ppm−分に及び得る。方法が生物膜を含む感染上で実践される実施形態では、少なくとも約200ppm−分の薬用量が有用である。これらの範囲は、「きれいな」システムにおける適用、例えば、病原体以外、有機物質を少ししか有さない、または全く有さない適用に適切である。創傷浸出液等の高タンパク質環境を含む感染した生物組織を治療するための実施形態において、これらの範囲は、下に議論されるように、細菌または他の病原体の著しい減少を達成するために投与される実際の薬用量に対して好適な標的範囲である。
【0171】
組成物中の二酸化塩素の量は、タンパク質等の有機物質の存在によって減少し得る。例えば、創傷床は、血清を含む高タンパク質環境である。したがって、二酸化塩素の実際の薬用量は、創傷流体の量、創傷流体中の血清の割合、および治療組成物中の二酸化塩素の量によって変化する。したがって、実際の薬用量は、創傷床中の血清の存在による、二酸化塩素の損失のために補正された薬用量である。本明細書に示される、時間の関数として、創傷環境での実際の二酸化塩素濃度を推定し、それによって、創傷流体の存在下で二酸化塩素治療中の実際の薬用量を推定することができる。実際の薬用量の推定値は、時間の関数として、溶液中のClO2濃度を決定し、次に、治療の接触時間にわたって、その等式を積分することによって計算される。詳細は以下の通りである。
【0172】
まず、ClO2(BS/ClO2)に対する血清の開始重量比を計算する。そうするためには、創傷中の創傷流体WFの重量(mg)を推定することによって、創傷中の血清BSの推定ミリグラムを推定しなければならない。創傷流体は、概して、約5重量%の血清を含有することが推測される。したがって、創傷中の血清BSのミリグラムを推定するために、WF(mg)を5%で掛ける。
【0173】
【数1】

【0174】
ClO2の重量を計算するためには、創傷に適用されるmg単位の治療組成物Mtの量、およびその治療物質中のppm ClO2を知らなければならない。次に、治療組成物中のClO2の質量は、下の等式を用いて計算される。
【0175】
【数2】

【0176】
式中、Mtは、mg単位の治療組成物の質量であり、[ClO2]は、治療組成物中のppm単位のClO2濃度である。創傷中の血清のmgを、治療組成物中のClO2のmgで割り、BS/ClO2の比率を得る。
【0177】
【数3】

【0178】
本明細書に示される、治療組成物中のClO2の質量に対する血清の比率の関数としての二酸化塩素の減衰率K2は、下の等式によって推定される。
【0179】
【数4】

【0180】
したがって、K2は、等式3の結果を等式4に当てはめることによって推定される。次に、K2は、下の等式に当てはめられる。
【0181】
【数5】

【0182】
式中、Ctは、時間の関数としてのClO2の濃度であり、Coは、ppmの初期のClO2濃度であり、tは、分単位の時間である。次に、この関数は、創傷の治療時間にわたって、時間の関数として積分される。積分の結果は、創傷中の実際の薬用量の推定値である。きれいなシステム(上術)でのこの推定値および最小の効果的な用量は、治療組成物中の二酸化塩素濃度に関して、臨床医が適切な治療組成物を選択することを可能にし得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、方法は、約200ppm−分〜約15,000ppm−分、約500ppm−分〜約5000ppm−分、または約750ppm−分〜約2000ppm−分の実際の薬用量の治療を含む。
【0184】
(実施例)
組成物および使用する方法は、以下の実験的実施例への参照によってさらに詳しく記載される。これらの実施例は、単に例示的な目的として提供されるものであり、別途明記されない限り、限定することを意図しない。したがって、組成物、使用する方法、およびシステムは、以下の実施例に限定されると解釈されるものではなく、むしろ本明細書に提供される教示の結果として明らかになる任意および全ての変形を包含するものと解釈されるものとする。
【0185】
(実施例1)生物膜に対する二酸化塩素の効力
二酸化塩素治療は、一定期間、微生物を二酸化塩素に曝露することを含む。しばしば、二酸化塩素の薬用量と称される治療条件は、使用する治療時間にわたって、時間の関数としての二酸化塩素濃度C(t)の積分を計算することによって決定することができる。
【0186】
【数6】

【0187】
二酸化塩素濃度が治療時間にわたって通常一定しているシステム(例えば、±10%相対未満によって変化する)または治療時間にわたって直線的に変化するシステムでは、平均二酸化塩素濃度は、開始および終了濃度を平均化し、次に、曝露期間中のその平均二酸化塩素濃度に曝露時間を掛ける(平均濃度×時間)ことによって計算され得る。
【0188】
【数7】

【0189】
式中、Ctは、時間tにおける終了ClO2濃度であり、Coは、初期の二酸化塩素濃度である。薬用量は、一般にppm−分の単位で示される。
【0190】
一連の実験を行い、緑膿菌(PA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、またはその両方の組み合わせから成る細菌生物膜を死滅させるのに必要とされる二酸化塩素の薬用量を推定した。
【0191】
細菌生物膜は、回転ディスク生物膜反応器内の無孔セラミックディスク上で、7〜10日間成長させた。反応器にPA、MRSA、またはMRSAとPA細菌の混合物を植菌し、それぞれ、PA生物膜、MRSA生物膜、またはPA/MRSA混合生物膜を生成した。
【0192】
二酸化塩素溶液を、ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤を使用して、異なる名目上の濃度で生成し、次に、製造者の指示に従って、Hach Model2400UV/Vis分光光度計を用いて正確な濃度を測定した。生物膜含有ディスクの対を、異なる二酸化塩素濃度の溶液中に異なる時間浸漬し、希釈チオ硫酸ナトリウム溶液で中和し、次いで、プレーティングして各々のディスク上で生存している細菌の数を判定した。2つの未処理ディスクも中和溶液に曝露し、プレートティングして開始細菌数を判定した。全ての試験において、基準の細菌数は、1ディスク当たり107〜107.5コロニー形成単位(cfu/disk)の範囲であった。1対数減少は、cfu/diskを1桁低減させること、例えば、107.1cfu/diskから106.1cfu/diskの減少を指す。したがって、実質的に完全な死滅は、細菌の対数減少が約7〜7.5である場合に達成される。
【0193】
表1は、異なる実験で使用された試験条件を要約する。結果は、異なる細菌性生物の対数減少において提示される。PA/MRSA混合生物膜の場合において、結果は総細菌数として示される。データは、図1にも示される。
【0194】
【表1】

【0195】
これらのデータは、PA生物膜、MRSA生物膜、またはPA/MRSA混合生物膜のいずれかの完全な死滅が、約400〜1000ppm−分の薬用量で達成されたことを示す(試料2、9、および15を参照)。PA生物膜は、MRSA生物膜よりも死滅させるのが若干容易であるように思われるが、差異は小さい。約200ppm−分よりも大きい薬用量で、約5桁(すなわち、5対数)の死滅を達成することができる(試料1、7、および12を参照)。これらのデータは、二酸化塩素が、生物組織に対して実質的に非細胞毒性および/または非刺激性である生物膜を、容易に達成可能な薬用量で分裂および根絶する大きな効力を有することを示す。
【0196】
(実施例2)高タンパク質溶液中の二酸化塩素損失
酸化殺生物剤は、タンパク質等の有機物質と反応し得、有機物質によって破壊され得る。二酸化塩素が、概して、相対的非反応性酸化殺生物剤として認識される一方で、二酸化塩素は、創傷の有機物に富んだ治療環境で消費され得る。血清は、高タンパク質物質であり、特によく反応する創傷の成分である。
【0197】
一連の実験を行い、二酸化塩素濃度への血清の効果を推定および定量化した。二酸化塩素および胎児血清(FBS)の溶液を二酸化塩素およびFBSの異なる濃度で調製し、二酸化塩素濃度を、直接挿入プローブ(1mmの経路長)を有するSpectral Physics UV/Visible分光光度計で追跡した。
【0198】
初期の二酸化塩素濃度をHach Model 2400UV/Vis分光光度計で測定した。続いて、直接挿入プローブを用いて、約200〜600nmの波長範囲にわたってUV/Visスキャンを測定し、これを使用して、溶液の初期吸光度を計算した。次にFBSを添加し、その後、UV/Visスキャンを定期的に実行した。二酸化塩素の吸光ピークの面積を各々のスキャンに対して計算し、各々の時点における面積を初期スキャン(FBS添加前)のピーク面積で割ることによって、相対二酸化塩素濃度を計算した。
【0199】
相対二酸化塩素濃度を、二酸化塩素およびFBS濃度の各々の組に関して、時間に対してプロットした。この曲線を、回帰によって以下の形の関数にうまく適合させた。
【0200】
【数8】

【0201】
式中、Ctは、時間tにおけるClO2濃度であり、Coは、初期二酸化塩素濃度である。6.29重量%のFBSを含有し、名目上500(mg/mg)の初期FBS/ClO2重量比を有する溶液に関するデータが、図2に示される。等式中の指数K2は、FBS溶液中の二酸化塩素の減衰率の推定値である。溶液に添加されたFBSの質量を、溶液中の二酸化塩素の質量で割ることによって、二酸化塩素に対するFBSの重量比を計算した。
【0202】
次に、異なる溶液の濃度に対する減衰率を、各システムに関して、FBS/ClO2の初期質量比に対してプロットした。これらの結果が図3に示される。図3は、減衰率K2が初期のFBS/ClO2比率で直線的に減少し、下の等式に適合することを示す。
【0203】
【数9】

【0204】
この関連性を用いて、時間の関数として、創傷環境における実際の二酸化塩素濃度を推定し、それによって、創傷流体の存在下での二酸化塩素治療中の実際の用量を推定することが可能である。約500ppm−分より大きい実際の用量を目標とすることによって、創傷中の接近可能な生物膜のほぼ完全な死滅を予測することができる。約200ppm−分より大きい実際の用量は、約5対数死滅より大きい接近可能な生物膜をもたらすはずである。
【0205】
(実施例3)高タンパク質環境における生物膜に対する二酸化塩素の効力
一連の実験を行い、PA、MRSA、およびPA/MRSA混合物の生物膜へのFBSの効果を判定した。実施例1に記載されるように、生物膜を成長させた。ディスクを標的FBS濃度の2倍の25mLのFBS溶液に浸漬し、それに標的二酸化塩素濃度の2倍の25mLの二酸化塩素溶液を添加した。所望の接触時間の後、ディスクを治療溶液から除去し、中和し、上述のようにプレーティングした。
【0206】
治療条件および結果が表2に示される。薬用量は、初期二酸化塩素濃度に基づく名目上の用量、ならびに初期二酸化塩素濃度および上述の減衰関連性から推定される実際の薬用量の両方として与えられる。
【0207】
【表2】

【0208】
列3〜6は、測定されたデータであり、列7〜11は、計算されたデータである。肯定的な兆候を有するK2に関して(試料20〜21等)、二酸化塩素の物質的損失を引き起こすために存在するFBSが不十分であったことが推測された。したがって、そのような試料に関して、二酸化塩素は、実験の時間にわたって不変であったことが推測された。
【0209】
図4は結果のグラフである。これらのデータは、細菌死滅が「きれいなシステム」(FBSを含まない、実施例1を参照)をもたらすように、「汚れたシステム」(例えば、有機質を多く含む)における細菌死滅が、補正されたFBS濃度から予測され得ることを示す。具体的には、約2000ppm−分以上の補正された用量率が、試験された生物膜の各々の種類に対して完全死滅をもたらした。
【0210】
(実施例4)創傷治療のための二酸化塩素送達方法
この研究は、感染した創傷へのClO2の多様な送達方法の評価に関する初期データを作成するために、かつ微生物バイオバーデンおよび創傷治癒への薬物の効果を確認するために考案された。
【0211】
試験動物はブタであった(n=l)。ブタが創傷治癒のモデルとして一般に使用される理由の一つは、ブタ皮膚がヒト皮膚と多くの特性を共有するためである。ブタモデルは、ヒト創傷での使用が意図される候補薬剤の評価のための優れた手段であると見なされる。
【0212】
ブタを「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals DHEW」(NIH)に従って収容した。ブタに毎日新鮮なブタ用食餌を与え、水は随意入手可能であった。ブタを、12時間の明暗周期を有する温度制御された動物飼育室内に収容した。飼育室を清潔に保ち、害虫はいなかった。
【0213】
0日目、ブタを麻酔し、特注設計の2cmのトレフィンを使用して、16個(15)の全層創傷(1側面当たり8個)を作製した。各々の創傷は、直径2cmだった。止血が完了するまで、ガーゼスポンジ上で創傷にエピネフリン液(1:10,000の希釈物)を適用した(約10分間)。次に、各々の創傷を細菌接種材料で感染させた。
【0214】
3つの異なる細菌、緑膿菌、フゾバクテリウムsp.、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)を培養し、かつ使用して、創傷への接種材料を調製した。手術の朝、細菌培養物を無菌生理食塩水で洗浄し、生理食塩水に再懸濁し、約107CFU/mLの最終密度とした。この細菌懸濁液を使用して、各々の創傷を接種した。
【0215】
創傷を無菌Telfaガーゼで包帯し、細菌性生物膜状態を確立するように感染部を成熟させた。Telfa包帯剤を生理食塩水で湿らせ、過剰な生理食塩水は、Telfa包帯剤を絞って除去した。次に、包帯剤をTransporeテープ(3M、St.Paul,MN)で適所に固定した。二次的包帯剤として、青色の吸収パッドを使用して、創傷の全てを被覆した。青色のパッドの吸収層を、最初の数日間、皮膚に設置した。創傷が乾燥しすぎに見受けられた場合に、青色のパッドを皮膚に対して閉塞側に交換した。弾性包帯の層の層を青色のパッド上で包み、表面下での包帯剤の移動を阻止した。全ての創傷包帯剤を1日目に交換した。
【0216】
2日目に、異なる送達方法を用いて、創傷を二酸化塩素組成物で治療した。手短に、創傷A2〜A4を連続的洗浄で治療した。創傷B2〜B4およびC2〜C4の治療は、実質的に非細胞毒性である二酸化塩素ゲル組成物との接触の、複数の実質的に連続的なエピソードであった。創傷D2〜D4を、手動洗浄デバイスを用いて、断続的な洗浄で治療した。A1、B1、およびD1は対照であり、二酸化塩素で治療されなかった。C1を二酸化塩素溶液で手動で治療した。
【0217】
創傷A2〜A4:各々が二酸化塩素溶液を供給するための入口部および二酸化塩素溶液の放出のための出口部を有する洗浄デバイスで、各々の創傷を個別に被覆した。可撓性管類で、入口部を三重式可変速ポンプの出口に接続した。ポンプの入口を400ppmの二酸化塩素溶液を含有する流体供給源に接続した。可撓性管類の第2の組を出口部に接続し、共有の廃棄物容器内に排出させた。二酸化塩素溶液を再循環しなかった。
【0218】
ポンプを活性化して、3つの洗浄チャンバの各々を介して約80〜82mL/分の初期流速を達成した。UV分光光度計を用いて、二酸化塩素濃度を出口で測定した。出口の濃度が85%以上の供給源濃度になるまで、流量を必要に応じて調整した。
【0219】
創傷B2〜B4:2.83重量%のNaCMCを含む400ppmの二酸化塩素ゲルを、8回の別々の連続的適用で各々の創傷に適用した。各々の適用は、約2.5mLのゲルであった。各々の適用に関して、創傷をゲルと接触させた後、創傷を被覆し、12分間被覆したままにした。包帯剤を除去し、生理食塩水を用いてゲルを創傷からすすぎ落とした(〜3分間かかった)。したがって、2時間にわたって8回適用した。濃縮NaCMCベースのゲルおよび二酸化塩素の新たに調製された濃縮溶液(ASEPTROL S−Tab2錠剤を用いて調製)を用いて、400ppmの二酸化塩素ゲルのマスターバッチを調製した。溶液を、Luerlokユニオンに接続するシリンジを用いて混合した。別々の適用に対して、8つの一定分量をこのマスターバッチから得た。
【0220】
創傷C2〜C4:1.5重量%のHPMCを含む400ppmの二酸化塩素ゲルを使用して、これらの創傷を創傷B2〜B4と同じように治療した。400ppmの二酸化塩素ゲルのマスターバッチをNaCMCゲルに対して上述のように調製し、別々の適用に対して、8つの一定分量をマスターバッチから得た。
【0221】
創傷D2〜D4:シリンジを有する手動洗浄デバイスで、各々の創傷を被覆した。400ppmの二酸化塩素のマスターバッチ溶液を、治療の開始時に調製した。各々の適用に関して、新鮮標本(20mL)を除去し、1分間混合し、次いで、シリンジを介して創傷に適用し、9分間静置した。12時間にわたって合計12回治療した。
【0222】
創傷C1:シリンジを用いて、50mLの400ppmの二酸化塩素溶液を5分毎に投与した。したがって、2時間にわたって24〜50mLの適用となった。創傷を洗浄するために使用された溶液を洗浄後に収集したが、再利用しなかった。
【0223】
創傷A1、B1、およびD1は治療しなかった。創傷の潤いを保つために、創傷に生検を行う時が来るまで、各々の創傷を密封包帯剤で被覆した。
【0224】
治療後、各々の創傷に生検を行った。各々の生検試料中の細菌の数を以下のように評価した。生検組織試料を、リン酸緩衝生理食塩水を含有する事前に計量された容器内に設置し、組織の重量を判定した。次に、組織試料を均質化し、連続的に希釈した。連続希釈物を滴下プレーティングし、インキュベートして細菌数を判定した。一組の試料をトリプチックソイ寒天培地(TSA)上にプレーティングし、生検標本中の総細菌数を判定した。別の一組の試料をマンニット食塩寒天培地(MSA)上にプレーティングし、生検標本中に存在するブドウ球菌の数を判定した。第3の一組の試料をシュードモナス分離寒天培地(PIA)上にプレーティングし、生検標本中に存在する緑膿菌の数を判定した。細菌数は、Iog10(CFU/g)として表される。
【0225】
総細菌数に関するデータが図6に示される。湿気制御は、平均して、組織1グラム当たり、総細菌の8対数を若干超えた。治療された創傷は全て、平均して、約6以下の対数の総細菌となった。HPMCゲルデータセット(創傷X2〜X4)は、1つのゼロカウント試料を含有し、これは、図6におけるこのデータに関して示される大きなエラーを説明する。この同一試料に対するMSAおよびPIAプレートは両方ともに、肯定的な微生物培養を示し、このゼロ結果は、試料処理エラーの結果であり得る。このゼロデータを含まない、この試料に対する平均対数CFUは、他の治療と一致して5.8であった。図6におけるデータは、全ての送達方法に関して、2〜4対数の範囲における総細菌の減少が達成されたことを示す(HPMCデータセットに関するゼロデータを除外する場合、2〜3対数)。
【0226】
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に関するデータが図7に示される。湿気制御は、平均して、組織1グラム当たり、総コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の7対数を超えた。治療された創傷は全て、平均して、組織1グラム当たり、約6以下の対数のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌となった。図7におけるデータは、全ての送達方法に関して、1〜2対数の範囲におけるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の減少が達成されたことを示す。
【0227】
シュードモナス菌に関するデータが図8に示される。湿気制御は、平均して、組織1グラム当たり、総シュードモナス菌の8対数を超えた。治療された創傷は全て、平均して、組織1グラム当たり、約5対数を若干超えるか、または約5以下の対数のシュードモナス菌となった。図8におけるデータは、全ての送達方法に関して、3〜5対数の範囲におけるシュードモナス菌の減少が達成されたことを示す。
【0228】
この実施例の結果は、この試験で使用された改善された洗浄方法、ならびにゲル製剤における二酸化塩素の適用も、黄色ブドウ球菌のレベルを適度に低下させたことを示す。二酸化塩素は、3以上の対数減少を伴って、シュードモナス菌に対して強力であることが示された。さらに、この研究で改善された薬物送達方法を用いて、ブドウ球菌および総細菌レベルの両方における1〜2対数減少も達成された。
【0229】
(実施例5)ブタモデルにおける超音波処理での二酸化塩素組成物の効力
実験を実行して、創傷中の細菌レベルで、二酸化塩素投与および超音波処理の併用療法の効力を評価した。動物モデルはブタであった。16個の創傷を導入し、実施例6に記載されるように、細菌を接種した。2日目に治療した。対照創傷を二酸化塩素または超音波のいずれでも治療しなかった。約20kHzの周波数、40%のデューティーサイクル、および3.5W/cm2以下の電力強度の範囲を用いて、試験創傷を超音波エネルギーで4間治療し、各々の試験創傷は、合計3回の超音波処理治療を受けた。試験創傷を、各15分間の8回の別々の連続適用(400ppmの二酸化塩素への合計120分間の曝露)で、各々の創傷に適用された400ppmの二酸化塩素溶液で治療し、各々の適用は、溶液の新鮮標本を使用した。各々の治療された創傷は、2時間の二酸化塩素治療の経過にわたって、合計3回の4分間の超音波処理を受けた。
【0230】
実施例4に記載されるように、治療後に創傷に生検を行った。電力強度の関数として、試験創傷中の細菌数が著しく減少する(複数の対数減少)ことが見出された。3.5W/cm2で、実質的に完全な対数死滅を達成した。
【0231】
(実施例6)超音波処理でのブタモデルにおける予言的二酸化塩素効力
実験を実行して、異なるパラメータの関数として、細菌レベルで、二酸化塩素投与および超音波処理の併用療法の効力をさらに評価した。動物モデルはブタであった。16個の創傷を導入し、実施例4に記載されるように、細菌を接種した。2日目に治療した。二酸化塩素または超音波のいずれでも治療しない対照創傷、かつ超音波のみ、または二酸化塩素組成物のみで治療した対照創傷がある。試験創傷は、超音波エネルギーの周波数、電力強度、およびデューティーサイクル、治療の期間、ならびに二酸化塩素を含む組成物の製剤(例えば、液体、ゲル、または徐放)を含む、異なるパラメータの関数として、効力を研究するために考案される。実施例4に記載されるように、治療後に創傷に生検を行う。必要であれば、追加の試験動物を用いてさらなる試験を続行することができる。
【0232】
実施例5の結果に基づいて、超音波の使用は、組織への二酸化塩素浸透を改善し、したがって、二酸化塩素組成物のみの使用と比較して、統計的に有意な量、例えば、少なくとも約0.5対数、好ましくは、少なくとも約1または2対数で、細菌の対数減少を改善することが予測される。
【0233】
(実施例7)複数回の連続適用による歯のホワイトニング
この研究は、200ppmの二酸化塩素ゲルの複数回の連続適用の2つの異なる計画の歯のホワイトニングへの効力を評価するために考案された。
【0234】
5つのヒト抽出歯(臼歯)をこの研究で使用した。各々の歯を、2回、すなわち、まず最初に、歯根部を除去するために歯のセメントエナメル接合部で、次に、歯を2つの別々の頬側および舌側の半分に分離するために近遠心方向で区分した。それによって、頬側および舌側の歯切片は、各々の区分された歯切片に、(約90度の軸歯髄線角または軸歯肉線角で接続される)露出した軸および歯肉部分または象牙質の平面が示された。次に、各々の歯が、ビタクラシックシェード視覚ガイドによって視覚的に「C4」(ではあるが、「A4」より明るくはない)に類別されるほどの十分な染みを蓄積するまで、区分された歯を(入れてから室温まで冷却した)濃茶に染色した。
【0235】
染色後、各々の歯の切断された側面をアクリルポリマー(すなわち、アクリルベースのマニキュア液)で密閉した。次に、歯を左側および右側に「分割」、または機能的に「分離」した(歯は物理的には分割されなかった)。「分離線」を作製するために、まず、小さい炭化タングステンまたはダイヤモンド先端歯科用バーを使用して、狭チャネルを歯の中心下に作製し、それによって、歯切片の頬側のエナメル面または舌側のエナメル面のいずれかの上に、深さ約0.5〜1.5mm、幅1〜1.5mmのチャネルを形成した。チャネルを34〜40%のリン酸の歯科用エッチングゲル調製物で、(ゲルを調製されたチャネル内のエナメルにのみ閉じ込めるように注意して)慎重にエッチングした。次に、エッチングゲルを水ですすいで除去し、表面を乾燥させ、次いで、エナメル象牙質接着剤の薄く狭いバンドを慎重に狭チャネル内のエナメルに適用した。この物質を外気で1分間乾燥させ、次に、穏やかな流れの圧縮空気でさらに10秒間慎重に乾燥させた。その後、エナメル象牙質接着剤を、約470nmのピーク波長で光線青色光を用いて、複数の20秒の硬化の刻みで、可視光歯科用硬化ユニットへの曝露によって硬化した。チャネルを埋め、歯の舌側面の左半分および右半分を分離するための「壁」または障壁を徐々に構築するために、複合樹脂の歯科修復物質の薄く狭い層またはバンドを、いくつかのステップで添加し、歯科用可視青色光効果ユニットで硬化した。
【0236】
各々の歯の上に構築された壁は、歯の左側に適用されたホワイトニング剤が、歯の右側に適用されたホワイトニング剤の中に、および逆も同様に、移動するのを阻止する。この方法で、2つの異なる治療計画を同一の歯で比較することが可能であり、それによって、ホワイトニング効力に影響を及ぼし得る異なる歯の間で生物学的多様性を最小化することが可能である。
【0237】
2つの治療計画はともに、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)を含む名目上200ppmの二酸化塩素ゲルを用いて試験した。二酸化塩素の実際の濃度を測定し、155ppmであることが見出され、組成物のpHは5.0であった。一般的な治療プロトコルは、以下の通りである。混合後、ClO2ゲルを60mLのプラスチックシリンジ内に取り出した。60mLのシリンジを用いて、アッセイの間、ゲルを保管し、ゲルを10mLのプラスチックシリンジ内に分注した。次に、10mLのシリンジ内のゲルを、以下のように、歯部のエナメル表面上に直接分注した。0時間で、約1〜1.5mLのゲルを、ガラス顕微鏡スライドに取り付けられた各々の歯切片のエナメル表面上に分注した。得られたゲル層の厚さは、深さ約1.5〜3.0mmであった。歯切片上にゲルを分注した後、ガラススライドを、袋内で100%の湿度を維持するために、袋内に湿らせたペーパータオルの小さい細長い一片を含有するプラスチックジッパー袋内に収納した。ペーパータオルの細長い一片を、歯およびゲル表面とのプラスチック袋の任意の接触を排除するよう位置付けた。
【0238】
接触エピソードの終局時に、ガラススライドをプラスチック袋から除去し、毛先の極めて柔らかい歯ブラシおよび穏やかな流れの水道水で、ゲルを慎重に除去した。次に、歯切片をシェードに関して分析し、実験が完結するまで、考案されたゲル適用手順を繰り返した。試験された歯切片を、後の参照観察のために、ガラス顕微鏡スライド上に100%の湿度で保管した。歯が水分補給し続けるように、試験を通して管理し、脱水状態によってもたらされる過度な色アーチファクトを回避した。それぞれ15分間の接触長さで、各々の歯の左側に4回、実質的に連続して適用した。それぞれ7.5分間の接触長さで、各々の歯の右側に8回、実質的に連続して適用した。したがって、12,000ppm−分の名目上の薬用量で、合計60分間、歯の両側面を二酸化塩素組成物に曝露させた。
【0239】
各々の適用は、二酸化塩素ゲル組成物の新鮮標本を使用した。ビタクラシックシェード視覚ガイドを用いて、歯のホワイトニングを視覚的に評価した。ビタクラシカルシェードガイドによる視覚的評価:標準のビタシェードガイドとの直接比較によって、初期の基準シェードおよびそれに続くシェード変化を評価した。(製造業者に推奨されるように)ビタシェードガイドを価値評価のために以下の順:
B1*A1*B2*D2*A2*C1*C2*D4*A3*D3*B3*A3.5*B4*C3*A4*C4に配置し、B1は最も明るく、C4が最も暗い。この実施例での各々の歯の基準シェードは、C4であった。基準からのシェード値単位(ΔSVU)における変化としてのデータが報告された。
【0240】
全面的な曝露の30分後、ならびに全面的な曝露の60分後のデータが、それぞれ、表3および表4である。
【0241】
【表3】

【0242】
【表4】

【0243】
これらのデータは、所与の全曝露時間に関して、新鮮な二酸化塩素組成物のより頻繁な実質的に連続した適用が、歯のホワイトニングにおける著しい改善をもたらすことを示す。具体的には、4回の適用での6000ppm−分(30分間の曝露×200ppm)の名目上の薬用量の投与は、2回の適用での6000ppm−分の投与と比較して、歯のホワイトニングを約10%改善した。同様に、8回の適用での12,000ppm−分の名目上の薬用量の投与は、4回の適用での投与に対して、歯のホワイトニングを約15%改善した。
【0244】
これらのデータに基づいて、連続的洗浄による二酸化塩素の投与は、連続的治療と同一期間、トレイ上に二酸化塩素組成物を適用することによって達成される結果と比較して、より良好なホワイトニング結果をもたらすであろうと予測される。
【0245】
本明細書に引用される各々および全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0246】
組成物、キット、およびそれらの使用方法を具体的な実施形態を参照して開示したが、他の実施形態および変形が、記載される組成物、キット、および使用方法の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることが明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態および同等の変形形態を含むように解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織中の創傷を治療するための方法であって、当該方法は、二酸化塩素源を含む組成物を前記創傷に投与して、有効量の二酸化塩素を前記創傷に提供することにより前記創傷を治療する投与ステップを含み、
前記投与ステップは、
i)前記創傷を、前記二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させるステップ、
ii)前記創傷を、前記二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスであって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記組織に送達するデバイスと、接触させるステップ、または
iii)前記創傷を、
前記二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンと、
前記オキシ−塩素アニオンが通る通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が通る通過を許可し、それによって、前記実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の前記創傷への送達を可能にする、障壁物質と、を含む組成物と接触させるステップ、
のうちの1つ以上を含む、方法。
【請求項2】
前記接触させるステップの第2の反復をさらに含み、前記第2の反復は、前記第1の反復に実質的に連続する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触させるステップの少なくとも第3の反復をさらに含み、前記第3の反復は、前記第2の反復に実質的に連続する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与ステップは、前記創傷を、前記二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させて、組成物と接触させた創傷を形成するステップを含み、かつ超音波エネルギーを前記組成物と接触させた創傷に印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投与ステップは、洗浄デバイスを使用して、前記創傷を、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物で洗浄するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与ステップは、前記創傷を、前記二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスと接触させるステップを含み、前記デバイスは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記創傷に送達する洗浄デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与ステップは、前記創傷を、前記二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスと接触させて、デバイスと接触した創傷を形成するステップを含み、かつ超音波エネルギーを、前記デバイスと接触した創傷に印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与ステップは、前記創傷を、前記二酸化塩素源およびオキシ−塩素アニオンと、前記オキシ−塩素アニオンが通る通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が通る通過を許可し、それによって、前記実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の前記創傷への送達を可能にする、障壁物質と、を含む組成物と接触させて、組成物と接触させた創傷を形成するステップを含み、かつ超音波エネルギーを前記組成物と接触させた創傷に印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
口腔組織感染を緩和するための方法であって、当該方法は、二酸化塩素源を含む組成物を口腔中の感染した組織に投与して、有効量の二酸化塩素を前記組織に提供する投与ステップを含み、
前記投与ステップは、
i)前記組織を、前記二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と接触させて、組成物と接触させた口腔組織を形成し、かつ超音波エネルギーを前記組成物と接触させた口腔組織に印加するステップ、
ii)前記組織を、前記二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と少なくとも2回の実質的に連続した適用で反復的に接触させるステップ、
iii)洗浄デバイスを使用して、前記組織を、前記二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物で洗浄するステップ、または
iv)実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記創傷に送達する洗浄デバイスを使用して、前記組織を洗浄するステップ、
のうちの1つ以上を含む、方法。
【請求項10】
歯の表面をホワイトニングする方法であって、当該方法は、歯の表面を、二酸化塩素源を含む有効量の組成物と接触させて、有効量の二酸化塩素を前記歯の表面に提供する接触ステップを含み、前記接触ステップは、
i)前記歯の表面を、二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物と少なくとも2回の実質的に連続した適用で反復的に接触させるステップ、
ii)二酸化塩素源を含む、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性である組成物を送達する洗浄デバイスを使用して、前記歯の表面を洗浄するステップ、または
iii)実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記歯の表面に送達する洗浄デバイスを使用して、前記歯の表面を洗浄するステップ、
のうちの1つ以上を含む、方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−516891(P2012−516891A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549230(P2011−549230)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/023020
【国際公開番号】WO2010/091066
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】