説明

生物飼育用容器

【課題】動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽等の生物飼育用容器の容器内温度を、直接的または間接的に一定温度に保つために運転する温度調節装置、送風機、エアコン等の電気装置に要する電力や燃料等の使用量を削減することを課題とする。
【解決手段】動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽の壁内部、または外壁に蓄熱物質を付与した素材を配置することで、温度調節装置等の電力、燃料等使用量を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物や昆虫、魚介類や藻類等の生物を飼育する際に使用する生物飼育用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年ペット飼育のニーズが増え、一般家庭等においても動物や昆虫等の動物飼育、魚介類や藻類等の水生生物の生物飼育がなされている。生物飼育には、動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽等の生物飼育用容器が使用されている。しかし、これらの生物は温度環境の変化に弱く、飼育するためには、それぞれの生態に適した飼育環境温度に保つ必要がある。日本国内でも地域と季節によって気温や室内温度が異なるが、大まかな年間の平均室内温度は20℃程度である。例えば、熱帯魚等を飼育する場合には、水生生物飼育用水槽内の水温を25〜28℃程度に保温するために、温度調節装置等を用いて水温を直接調節したり、また、送風機やエアコン等により室内環境温度を調節することで水槽内の水を間接的に温度調節したりする。動物飼育用ケージでも、送風機やエアコン等によりケージ内の温度を直接的または間接的に調節する。このため、温度調節装置、送風機、エアコン等の電気装置等を長時間運転する必要があり、これら装置の運転に要する電力や燃料の削減が求められている。
【0003】
これまでも省エネルギーの観点から、水槽において、蓄熱体を有する熱交換器を水が循環する配管で連結した温度調節装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この水槽や温度調節装置を使用することで電力や燃料の削減に一定の効果が見られるが、さらなる削減が求められる。
【特許文献1】特開平9−140291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽等の生物飼育用容器の容器内温度を、直接的または間接的に一定温度に保つために運転する温度調節装置、送風機、エアコン等の電気装置等に要する電力や燃料等の使用量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、以下の発明を見出した。
(1)蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が容器壁内または容器壁外に配置されてなることを特徴とする生物飼育用容器。
(2)蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材と断熱素材の両方が容器壁内または容器壁外に配置されてなることを特徴とする生物飼育用容器。
(3)蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が、蓄熱物質をパッキングした袋である上記(1)または(2)記載の生物飼育用容器。
(4)蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が、蓄熱物質が担持されたシートである上記(1)または(2)記載の生物飼育用容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽等の生物飼育用容器の容器内温度を、直接的または間接的に一定温度に保つために運転する温度調節装置、送風機、エアコン等の電気装置等に要する電力や燃料等の使用量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、昆虫や動物の飼育用、魚介類や藻類等の水生生物飼育用に使われる動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽等の生物飼育用容器に関するものである。生物飼育用容器としては、一般に市販されているガラス、アクリル樹脂等の材質のものを使用できる。本発明では、蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材がこれら生物飼育用容器の壁内または壁外に配置される。
【0008】
蓄熱物質は、動物や水生生物のそれぞれの生態、植生に適した温度に相変化温度を有する物質が選ばれる。例えば、熱帯魚等を飼育する場合には、飼育用水槽内の水温を25〜28℃程度に保温するため、25〜28℃の範囲の相変化温度を有する物質を蓄熱物質として使用する。
【0009】
蓄熱物質としては、n−パラフィン類や、無機共晶物及び無機系水和物、カプリン酸等の脂肪酸類、o−クレゾール等の芳香族炭化水素化合物、パルミチン酸メチル等のエステル化合物、ラウリルアルコールやミリスチルアルコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類等の化合物が挙げられ、化学的、物理的に安定なものが用いられる。また、融点の異なる蓄熱物質を2種以上混合しても良いし、必要に応じ過冷却防止剤、比重調整剤、劣化防止剤等を添加することができる。
【0010】
蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材としては、蓄熱物質がバインダーで結着されたもの、つまり、蓄熱物質とバインダーを含有してなるコーティング層が容器の壁内または壁外に設けられたものが挙げられる。また、蓄熱物質をパッキングした袋、蓄熱物質が担持されたシート等が挙げられる。これらのうち、蓄熱物質をパッキングした袋及び蓄熱物質が担持されたシートは、所望の温度が変更になったときに蓄熱物質を容易に交換することができるため好ましい。
【0011】
本発明では、蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材と一緒に断熱素材を生物飼育用容器の壁内または壁外に設置することで、より電力や燃料等の使用量を削減することができる。断熱素材としては、グラスウールやロックウール等の無機繊維材料、ポリスチレン、ウレタンフォーム、ポリエチレン製の気泡緩衝シート等の発泡プラスチック材料、セルロースファイバー、羊毛、炭化発泡コルク、軽石、木材等の天然素材、中空粒子を使用した材料等、一般的な断熱素材を使うことができる。
【0012】
他方、断熱素材を生物飼育用容器の壁内または外壁に設置することでも、生物飼育用容器の容器内温度を直接的または間接的に一定温度に保つために運転する温度調節装置、送風機、エアコン等の電気装置等に要する電力や燃料等の一定の使用量を削減することができるが、断熱素材のみで電力や燃料等の使用量を削減する場合、断熱素材の使用量が多くなると共に、断熱素材による占有容積も大きくなるという不具合が生じる。この不具合を改善するためには、蓄熱素材や蓄熱素材と断熱素材の両方を生物飼育用容器の壁内または壁外に設置することが望ましい。
【0013】
蓄熱物質をパッキングするための袋は、一般に市販されているポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂製袋、アルミ等の金属製袋、金属に樹脂をラミネートした袋、布や紙の袋等であり、適宜選択することができる。
【0014】
蓄熱物質は、水、有機溶媒等の液体中に分散された分散液の状態で袋にパッキングされても良い。分散液にすると、パッキング時の取り扱い性が向上する。分散液の作製には界面活性剤を使用しても良い。蓄熱物質の分散性に応じて、界面活性剤を適宜選択して使用する。
【0015】
蓄熱物質を担持するためのシートとしては、硬質ポリウレタン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、発泡ポリエチレン樹脂、ガラスシート、羊毛シート、石綿などが使用可能であるが、好ましくは、アクリル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ビニロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、アセテート繊維、キュプラ繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維等を乾式もしくは湿式で抄造した不織布、織布、編物等の布帛が用いられる。なお、これらのシートは必要に応じて、坪量、厚み、面積を適宜選択することができる。蓄熱物質に必要に応じてバインダー、断熱性を高めるための合成または天然の中空粒子等を添加し、該シートに塗工または含浸または吹き付けして、蓄熱物質を担持させたシートを作製することができる。
【0016】
また、蓄熱物質が担持されたシートとして、蓄熱材を内包したマイクロカプセルを配合したゴム材料を使うこともできる。ゴム材料としては、天然ゴム、合成天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリサルファイトゴム等があり、これらは単独または二種類以上組み合わせて使用して良い。
【0017】
蓄熱物質は、そのまま、すなわち蓄熱物質単体として用いても良いが、多孔質微粒子体の細孔内に保持させたり、吸油性ポリマーに吸収させたり、マイクロカプセル化させたりすることができる。
【0018】
蓄熱物質を保持させるための多孔質微粒子体としては、シリカ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、チタン、酸化チタン、セラミック、珪藻土、ゼオライト、金属繊維等の無機系多孔質材料、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスルホン、シクロデキストリン、セルロース誘導体等の有機高分子多孔質材料等を挙げることができる。多孔質微粒子体に蓄熱物質を保持させることで、蓄熱物質の取り扱い性が向上するほか、断熱性を高めることができる場合がある。
【0019】
蓄熱物質を吸収させるための吸油性ポリマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合物、ポリノルボルネン系エラストマー、非結晶性ポリプロピレン、(メタ)アクリレートコポリマー、多孔性ビニル系ポリマー等を主成分としたものを使用することができる。これらは単独で使用しても良いが、1種以上混合したものを使用しても良い。蓄熱物質を吸油性ポリマーに吸収させることで、蓄熱物質の取り扱い性が向上するほか、断熱性を高めることができる場合がある。
【0020】
蓄熱物質は、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱物質粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱物質粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334号公報)、蓄熱物質粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等の方法で、マイクロカプセル化することができる。マイクロカプセル化した蓄熱物質は取り扱い性が向上し、分散液(スラリー)、乾燥粉体、乾燥固形物、造粒物等のいずれの形態でも使用できる。
【0021】
マイクロカプセルを袋にパッキングする場合、袋内のマイクロカプセルが自重により偏ることを防ぐため、増粘剤を添加したマイクロカプセル分散液を使うこともできる。また、パッキング袋内部を細室化してマイクロカプセルを分けて入れると、マイクロカプセルが自重により偏ることを防ぐことができる。
【0022】
蓄熱素材は、生物飼育用容器の壁内または外壁に配置するが、飼育動物や生物を観察するために、生物飼育用容器の側壁四面のうち、一面全体または一面のある部分を除いて配置することもできる。
【実施例】
【0023】
以下本発明の実施例について、図面を使って説明する。なお本発明は、実施例の内容のみに限定される訳ではない。
【0024】
実施例1
メラミン粉末12質量部に37質量%ホルムアルデヒド水溶液15.4質量部と水40質量部を加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱してメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整した10質量%スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100質量部を50℃に加温した中に、蓄熱物質として、50℃に加温したn−オクタデカン(融点約28℃)80質量部を激しく撹拌しながら添加し、粒子径が3μmになるまで乳化を行い、乳化液を得た。得られた乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し70℃で2時間撹拌を施した後、pHを9まで上げて水を添加して乾燥固形分濃度40%の蓄熱物質を内包したマイクロカプセル分散液を得た。
【0025】
このマイクロカプセル分散液100質量部にバインダーとしてガラス転移点温度−10℃のアクリル樹脂ラテックスを固形質量で8質量部添加し、マイクロカプセル塗工液を得た。
【0026】
このマイクロカプセル塗工液をディップ塗工装置にて、厚さ3.1mm、坪量110g/mのポリエステル製不織布(密度0.035g/cm、熱伝導率0.033kcal/m・hr・deg)に固形質量塗工量が800g/mになるように塗工し、70℃の熱風乾燥を施して、厚さ4mmの蓄熱物質が担持されたシート(蓄熱シート)を得た。
【0027】
生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図1に示したように、最上面を除く5面の容器壁1の外側に、各容器壁と同じ大きさに切った蓄熱シート3をそれぞれ貼り合わせ、蓄熱シート3を容器壁外に配置したアクリル製水槽を得た。
【0028】
蓄熱シート3を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0029】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、予め槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.050KWHであった。
【0030】
実施例2
図2に示したように、実施例1で作製した蓄熱シート3を容器壁外に配置したアクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外側に、断熱素材4として、ポリエチレン製の気泡緩衝材シートを一重巻きし、蓄熱シート3と断熱素材4の両方を容器壁外に配置したアクリル製水槽を得た。
【0031】
このアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0032】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.038KWHであった。
【0033】
実施例3
実施例1で作製したマイクロカプセル分散液を、スプレードライヤー乾燥装置で水分含有率3%まで乾燥し、粒子径約50μmのマイクロカプセル粉体を得た。生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図3に示したように、アクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外面に、マイクロカプセル粉体500gをパッキングした28cm×20cmのポリエチレン袋5を貼り付けた。
【0034】
この蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0035】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.040KWHであった。
【0036】
実施例4
図4に示したように、実施例3で作製した蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁外に配置したアクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外側に、断熱素材4として、ポリエチレン製の気泡緩衝材シートを一重巻きし、蓄熱物質をパッキングした袋5と断熱素材4の両方を容器壁外に配置したアクリル製水槽を得た。
【0037】
このアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0038】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.031KWHであった。
【0039】
実施例5
多孔質微粒子体である含水ケイ酸(商品名:ミズカシルP−527、水澤化学工業(株)製、比表面積55m/g、平均粒径1.6μm)100質量部に、10質量%に調製したポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA−117、(株)クラレ製)30質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用い強攪拌を施し、湿潤状態の粉末を得た。この粉末を押し出し型造粒機(商品名:ファインディスクペレッター、(株)ダルトン製)と直径2mmのスクリーンを用いた押し出し成型機で造粒を行い、さらに整粒機(商品名:マルメライザー、(株)ダルトン製)を用いて、球形化処理を施した。次に、100℃のオーブンで約30分乾燥処理を行い、直径2mmの球形粒子を得た。
【0040】
この球形粒子100質量部にヘンシェルミキサーを用いて強攪拌を施しながら、蓄熱物質として220質量部のn−オクタデカンを50℃に維持しながら、少量ずつ球形粒子に噴霧した。さらに10分間攪拌を続けた後、光学顕微鏡で球形粒子を確認したところ、蓄熱物質の全てが球形粒子中に浸透し、蓄熱物質が保持された多孔質微粒子体が得られた。蓄熱物質の保持量は69質量%であった。
【0041】
生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図3に示したように、アクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外側に、蓄熱物質が保持された多孔質微粒子体500gをパッキングした28cm×20cmのポリエチレン袋5を貼り付けた。
【0042】
この蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0043】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.039KWHであった。
【0044】
実施例6
吸油性ポリマー粉末(商品名:ノーソレックス、日本ゼオン(株)製)5質量部を水100質量部に分散させた。分散液中にn−オクタデカン40質量部を添加し、50℃に加温した後、ホモジナイザーで攪拌することにより、粒子径5μmのビーズ状スラリーとして、蓄熱物質を吸収した吸油性ポリマーの分散液を得た。生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図3に示したように、アクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外側に、蓄熱物質を吸収した吸油性ポリマーの分散液500gをパッキングした28cm×20cmのポリエチレン袋5を貼り付けた。
【0045】
この蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0046】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.041KWHであった。
【0047】
実施例7
ポリビニルアルコール0.1質量%水溶液160質量部にn−オクタデカン40質量部を添加して、50℃に加温した後、ホモジナイザーで攪拌することにより、粒子径4μmの蓄熱物質分散液を形成した。生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図3に示したように、アクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外側に、蓄熱物質分散液500gをパッキングした28cm×20cmのポリエチレン袋5を貼り付けた。
【0048】
この蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0049】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.042KWHであった。
【0050】
実施例8
生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図5に示したように、アクリル製水槽の上下面を除いた容器壁4の内面に、実施例3で作製したマイクロカプセル粉体500gをパッキングした28cm×20cmのポリエチレン袋5を貼り付けた。
【0051】
この蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁内に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0052】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.039KWHであった。
【0053】
実施例9
実施例8で作製した蓄熱物質をパッキングした袋を容器壁内に配置したアクリル製水槽の上下面を除いた4面の容器壁1の外側に、図6のように、断熱素材4として、ポリエチレン製の気泡緩衝材シートを一重巻きし、蓄熱物質をパッキングした袋5を容器壁内に、断熱素材4を容器壁外に各々配置したアクリル製水槽を得た。
【0054】
このアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0055】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.033KWHであった。
【0056】
実施例10
実施例1で作製したマイクロカプセル分散液100質量部とガラス転移温度80℃のスチレン・ブタジエンゴムラテックス(乾燥固形分濃度48%)200質量部を十分に混練りした後、80℃加熱して水分を完全に無くした厚み10mmの蓄熱シートを得た。
【0057】
生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、実施例1と同様に最上面を除く5面の容器壁1の外側に、各容器壁と同じ大きさに切った蓄熱シート3をそれぞれ貼り合わせ、蓄熱シート3を容器壁外に配置したアクリル製水槽を得た。
【0058】
蓄熱シート3を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0059】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、予め槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.049KWHであった。
【0060】
実施例11
実施例1で作製したマイクロカプセル分散液100質量部にバインダーとしてガラス転移点温度−10℃のアクリル樹脂ラテックスを固形質量で20質量部添加し、マイクロカプセル塗工液を得た。
【0061】
生物飼育用容器1として準備した横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽に対して、最上面を除く5面の容器壁の外側に、このマイクロカプセル塗工液を刷毛で塗布した後乾燥し、厚み15μmの塗層を得た。
【0062】
蓄熱物質を含有してなる塗層を容器壁外に配置したアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0063】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、予め槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.051KWHであった。
時間後の時間当たりの平均電力量は0.049KWHであった。
【0064】
比較例1
生物飼育用容器1として横幅30cm、縦幅18cm、高さ23cmの市販のアクリル製水槽を準備し、図7に示したように、これに9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0065】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.080KWHであった。
【0066】
比較例2
図8に示したように、比較例1で使用したアクリル製水槽の上下面を除いた容器壁4面に、断熱素材4として、ポリエチレン製の気泡緩衝材シートを一重巻きし、断熱素材4を容器壁外に配置したアクリル製水槽を得た。
【0067】
このアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0068】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.053KWHであった。
【0069】
比較例3
図9に示したように、比較例1で使用したアクリル製水槽2の上下面を除いた容器壁4面に、断熱素材4として、ポリエチレン製の気泡緩衝材シートを二重巻きし、断熱素材4を容器壁外に配置したアクリル製水槽を得た。なお、ポリエチレン製の気泡緩衝材シートを二重巻きにしたことによって、アクリル製水槽の周囲の占める断熱素材容積が大きくなった。
【0070】
このアクリル製水槽に9Lの水を入れ、温度調節装置2(柴田科学機器(株)製、商品名:恒温器CONTROL UNIT CU−80)を水槽上部にセットし、水槽上部にアクリル製蓋をして、26℃設定にて運転を開始した。
【0071】
アクリル製水槽内の水温が26℃に安定した後、槽内温度を10℃にセットした定温恒温槽内にアクリル製水槽を入れ、電力測定装置((株)計測技術研究所製、商品名:ワットチェッカーMODEL2000MS1)を使って、温度調節装置2の使用電力量の計測を開始した。6時間後の時間当たりの平均電力量は0.042KWHであった。
【0072】
実施例1〜11、比較例1〜3の結果から明らかなように、生物飼育用容器の容器壁内または容器壁外に蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材を配置することによって、生物飼育用容器の温度調節装置の使用電力を削減することができた。また、生物飼育用容器の容器壁内または容器壁外に蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材と断熱素材の両方を配置することによって、動物飼育用ケージや水生生物飼育用水槽の温度調節装置の使用電力を一層削減することができた。また、蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が蓄熱物質をパッキングした袋または蓄熱物質が担持されたシートである実施例1〜10の場合には、容器壁に直接蓄熱素材を塗工した実施例11と異なり、所望の温度が変更になったときに、袋やシートを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図2】本発明に係る生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図3】本発明に係る生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図4】本発明に係る生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図5】本発明に係る生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図6】本発明に係る生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図7】本発明外の生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図8】本発明外の生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【図9】本発明外の生物飼育用容器の構成を示した断面図。
【符号の説明】
【0074】
1 発熱性のある電子部品
2 温度調節装置
3 蓄熱物質が担持されたシート
4 断熱素材
5 蓄熱物質をパッキングした袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が容器壁内または容器壁外に配置されてなることを特徴とする生物飼育用容器。
【請求項2】
蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材と断熱素材の両方が容器壁内または容器壁外に配置されてなることを特徴とする生物飼育用容器。
【請求項3】
蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が、蓄熱物質をパッキングした袋である請求項1または2記載の生物飼育用容器。
【請求項4】
蓄熱物質を含有してなる蓄熱素材が、蓄熱物質が担持されたシートである請求項1または2記載の生物飼育用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate