説明

生理活性分子間の結合を決定するための磁性粒子の使用

ビーズのような少なくとも第1の粒子又はマイクロキャリアと、例えば第2のビーズのようなマイクロキャリアでありうる第2の粒子とを使用して、生理活性分子のような微生物学的エンティティの間の相互作用を決定するためのアッセイ、ツール及び装置が開示される。少なくとも第1のマイクロキャリアは磁性である。2つのビーズが使用され、両方のビーズが磁性であるとき、ビーズは、好適には、それらの磁気モーメントの大きさが異なる。それぞれ異なる強度の結合を区別するために生理活性分子間の結合を機械的応力下におく手段が設けられる。1つの見地において、(より大きい磁気モーメントを有する)第2のビーズが、(それ自体概して移動可能な又は移動可能でない表面に結合される)捕捉分子に弱く結合されるより小さい磁気モーメントを有するビーズにリンクされるターゲット分子を磁気的に除去するために使用される。代替例として、流体摩擦力が、弱い結合を崩壊させるために、粒子の一方に与えられることができる。実施例に依存して、第1のビーズ及び/又は第2の粒子が、検出目的のために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィルス、原生動物、バクテリア、それらのオルガネラ又はリポソームのような微生物学的なエンティティと、タンパク質又はDNAのような生理活性分子との間の相互作用を決定する方法、装置及びツールを記述する。本発明は、特に、生理活性分子のような微生物学的なエンティティと他のエンティティとの間の非特異的結合及び特異的結合を区別するための解決策を示す。本発明は、プロテインマイクロアレイのような生化学的及び医薬診断アッセイの設計及び使用にアプリケーションを有する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンシングの挑戦は、高濃度のバックグラウンド物質(例えばmmol/lのアルブミン)を有する複合混合物(例えば血液)中で、小さい濃度の特定のターゲット分子(例えばpmol/lレンジ又はそれ以下の腫瘍マーカ)を検出することである。最も一般的なバイオセンシング方法は、捕捉分子(例えば抗体、核酸等)で表面をコーティングすることである。これらの分子は、ターゲットを捕捉し、ターゲットは、そののち検出される。ターゲット分子の検出は、標識を用いて又は用いずに実施されることができる。ラベリング(標識化)ステップは、表面上での捕捉の前又は後に行われることができる。標識は、直接的に、又は例えば別の生理活性分子を介して間接的に、ターゲットに結合されることができる。多くの場合、例えば蛍光分子のような光学的標識が、検出のために使用される。
【0003】
バイオセンシングにおいて重要な問題は、検出標識又はターゲット分子の、バイオセンサの表面又は捕捉分子への非特異的結合である。これはバックグラウンド信号を生成し、それによって、バイオセンサの解析感度及び特定性を低減する。診断アッセイにおいて、非特異的結合は、ストリンジェンシー(stringency)プロシージャを使用することによって低減されることができる。ストリンンジェンシープロシージャは、不所望の非特異的な吸着結合をリリースすることを意図し、捕捉分子及び(ラベリングされた)ターゲット分子の間の特異的相互作用のみを維持する。最も一般的なストリンジェンシー方法は、洗浄ステップである。洗浄溶液の組成及び温度は、所与のアッセイに関してバックグラウンドを低減するように注意深く調整される。
【0004】
多くの異なる分子がバイオチップ又は(マイクロ)アレイと呼ばれる単一表面上で同時に測定される、マルチアナライト検出への関心が高まっている。バイオチップ表面は、多くのスポット(「捕捉スポット」)から構成され、あらゆるスポットが、それぞれ異なる(複数の)捕捉分子を含む。マルチアナライトセンサ用にストリンジェントなチップ全体の洗浄ステップを開発することは難しい。この理由は、多くの起こりうるバックグラウンド信号が抑制される必要があり、異なる特異的相互作用のレンジが、乱されないままでなければならず、それぞれ異なるターゲット及び捕捉分子の固有の状態が保たれなければならないからである。結果は、より低い解析感度及びより低い解析特定性である。タンパク質及びタンパク質−タンパク質相互作用はそれぞれ非常に異質(heterogeneous)であるので、マルチアナライトのストリンジェンシー問題は、タンパク質検出に関して非常に深刻であり、タンパク質及びタンパク質−タンパク質相互作用の変性時の特定の洗浄ステップの効果は、非常に重要でありえる。
【0005】
タンパク質アレイ又はマイクロアレイのこの主要な欠点は、顕微鏡学的なガラススライド上への固有のタンパク質の適用を記述しているMacbeatch及びSchreiberの論文(2000年、Science 289、1760-1763)において認められている。非特異的なタンパク質−タンパク質結合は、ターゲット分子と結合する前に、捕捉分子上にBSAを加えることによって低減される。タンパク質マイクロアレイ技術に関する2002年12月のMacbeathのレビュー論文(2002年、Nature Genetics 32、S526-532)は、潜在的な解決策を提案することなく、タンパク質アレイ技術の主な特長として特定性を評価する問題に言及している。今日までのタンパク質アレイ技術の最も成功したアプリケーションは、免疫学の分野において達成されている。抗原及び抗体間の高い結合強度は、ストリンジェントな洗浄条件が、抗原及び抗体の非特異的相互作用を克服することを可能にする。
【0006】
ストリンジェンシー問題に対処する化学的方法は、ターゲットとより強く且つより特異的に相互作用することができる捕捉分子を設計することによる。一例は、フォトアプタマ(photo-aptamers)であり、これは、ターゲット分子の特異的なサイトにおいて架橋することができる光反応基をもつ合成捕捉分子である(Brody & Gold, 2000年, J. Biotechnol. 7, 5-13)。フォトアプタマを有する捕捉表面が、サンプルに露呈され、光励起ステップが適用されると、アプタマ結合サイトにフィットする分子が、共有結合されることになる。そののち、厳しい洗浄ステップが、光反応しなかった分子を除去するために適用されることができる。フォトアプタマ方法の不利益は、それが、あらゆるターゲットについて新しいフォトアプタマの設計を必要とし、光励起ステップが必要とされ、光架橋ステップ自体が、特異的に及び非特異的に結合される分子を区別せず、それが、終点検出方法であることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許出願公開第2002/0001855号(Prentiss他の出願)明細書は、2つの分子間の結合の強度を検出する方法を記述している。この方法において、分子の1つは、第1の表面に結合され、磁気的にラベリングされた他の分子と接触される。第1の表面は、磁界を有する第2の表面に近付けられ、これは、磁気標識に引っ張り力を及ぼすともに、2つの分子間の結合の強度に依存して、その分離をもたらす。このシステムの主な不利益は、第2の表面と(第1の表面上に存在する)磁気標識との間の物理的な距離であり、このことは、アッセイの感度を制限する。第2の表面は、磁界勾配が生成されるデバイスである。デバイスは、小さい磁石のグリッドとして形成される。その結果、デバイスは、グリッド表面の近傍に高い磁界勾配の領域を有する。局所的な勾配の大きさ及び高い勾配領域がデバイスの外側に及ぶ距離は、グリッドを構成する磁気素子のサイズと、素子によって生成される磁界とによって決定される。このデバイスの不利益は、磁界勾配が距離の関数として急速に減少することである。このように、高い勾配は、グリッド表面の非常に近傍にのみ存在する。従って、デバイスは、生物学的な結合表面の非常に近傍に持ってこられなければならないが、これは、概して、生物学的な結合表面上にカバープレートを有する流体チャンバの存在及びサンプル流体の存在のため、不可能である。
【0008】
生理活性分子のような微生物学的なエンティティの間の相互作用又は結合を決定するための、改善された方法、装置及びツールの設計が必要とされており、特に、特異的結合及び非特異的結合の間の異なる強度の結合の間の区別がなされることができる方法が必要とされる。特に、広範囲にわたる捕捉分子及びターゲット分子に同時に適用可能であるべきマルチアナライトセンサによる特異的結合及び非特異的結合の間の区別が必要とされる。マルチアナライトセンサ上のストリンジェンシーを改善するためにバッファ条件を変更することは、非常に狭い制限内でのみ行われることができるので、たんぱく質マルチアナライトセンサが必要とされる。更に、方法がマイクロアレイ装置において実際に使用されることができるようにするために、感度の損失なくダウンスケールする必要がある。
【0009】
本発明の目的は、例えばタンパク質又はDNAである生理活性分子のような微生物学的なエンティティ間の相互作用、又は生理活性分子と、ウィルス、バクテリア、原生動物、リポソーム又はそのフラグメントのような微生物学的なエンティティとの間の相互作用を決定する代替の方法、装置及びツールであって、特に上述した少なくとも1つの必要を満たすものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従って、磁性である例えばビーズ又は微生物学的エンティティのような少なくとも1つの粒子又はマイクロキャリアと、第2のビーズ又は微生物学的エンティティのようなマイクロキャリアでありうる第2の粒子と、を使用して、生理活性分子又は他の微生物学的エンティティの間の相互作用を決定するためのアッセイ、ツール及び装置を開示する。少なくとも、第1の粒子又はマイクロキャリアは磁性である。2つのビーズが使用され、両方のビーズが磁性であるとき、ビーズは、好適には、それらの磁気モーメントのサイズが異なる。液体の条件が、生理活性分子間の結合、又は生理活性分子と他の微生物学的エンティティとの間の結合、又は微生物学的エンティティ間の結合を促進し、機械的応力下にその結合をおき、それによってそれぞれ異なる強度の結合を区別することを可能にする手段が提供される。1つの見地において、例えば、(より大きい磁気モーメントを有する)第2のビーズが、捕捉分子(それ自身は概して移動可能な又は移動可能でない表面に結合される)に弱く結合される、より小さい磁気モーメントを有するビーズにリンクされるターゲット分子を磁気的に除去するために使用される。他の実施例により、例えば流体フローによって起こされるような、機械的な摩擦力が、粒子のうちの少なくとも1つに課され、それによって結合に機械的応力をもたらす。実施例に依存して、第1のビーズ及び/又は第2の粒子が、検出の目的のために使用されることができる。
【0011】
第1及び/又は第2の粒子は、個別の粒子でありうるが、粒子のクラスタ又は粒子のチェーンのような粒子の集まりの一部であってもよいことは明らかである。
【0012】
粒子のチェーンは、磁界が存在する場合、容易に形成される。粒子のこれらのチェーンは、液体中で容易に運ばれる。更に、前記粒子のチェーンは、それらの末端で強い磁界勾配を有し、これは、ストリンジェンシー特性にとって好ましい。
【0013】
1つの見地において、本発明は、少なくとも一方が磁性である第1及び第2の粒子を使用して、液体中の微生物学的なエンティティ間の結合のさまざまな異なる強度を区別する方法であって、前記使用が、液体中で移動可能な第1の粒子と、第1の微生物学的なエンティティとの間の複合体を提供し、第1の微生物学的なエンティティと第2の微生物学的なエンティティとの間の結合のための液体内の条件を提供し、液体中で移動可能な第2の粒子を、複合体に近付け、第1及び第2の微生物学的なエンティティの間の結合に機械的応力を与えるように、第1及び/又は第2の粒子に作用し、その一方で、第1の強度の結合を崩壊させ、第2のより大きい強度の結合を崩壊させないように、磁界を印加することを含む、方法を提供する。本発明の実施例において、力は、粒子間に相対的な力を生成するために、第1及び第2の粒子に直接与えられる。この相対的な力は、結合に機械的応力を生成し又はもたらす。第1及び第2の粒子は、粒子間に生成される相対的な力が粒子ではなく結合を崩壊するような機械的な剛性を有するべきである。それゆえ、粒子は、剛性のコア、骨組又はマトリックスを有することができる。結合の強度の識別は、特異的結合と非特異的結合との間の区別のために使用されることができる。第1の微生物学的なエンティティは、ターゲット分子であり、第2の微生物学的なエンティティは、捕捉分子でありえ、例えば、これらの両方が液体中にあるとき、捕捉分子は、ターゲットを捕捉することができる。第1及び第2の粒子は、磁性粒子でありえ、又は一方のみが、磁性である必要がある。第1の磁性粒子は、微生物学的なエンティティに結合されることができ、第2の磁性粒子は、微生物学的なエンティティに結合される必要がない。第1の磁性粒子は、ターゲットの微生物学的なエンティティに結合されることができる。第1の磁性粒子の磁気特性は、例えば液体に磁界勾配をおき、ターゲットに結合される磁性粒子を特異的な位置に引き寄せることによって、ターゲットを集めるために使用されることができる。第1及び/又は第2の磁性粒子は、常磁性でありえ、又は他のいかなる磁気形式であってもよい。
【0014】
第1の磁性粒子は、第2の磁性粒子の磁気モーメントより小さい、例えば10倍小さい磁気モーメントを有することができる。代替例として、第1及び第2の粒子は、両方とも磁性であり、同じ磁気モーメントを有する。第1の磁性粒子のサイズは、第2の磁性粒子のサイズより小さくてもよい。第1の磁性粒子は、1nm乃至1μmのレンジの直径を有することが好ましく、例えば10nm乃至200nmのレンジの直径を有する。第2の磁性粒子は、少なくとも100nmの直径を有することができる。
【0015】
第1又は第2の微生物学的なエンティティは、いかなる適切なエンティティであってもよいが、タンパク質又はペプチドが、ある実施例においては好ましい。一般に、2以上の第1の微生物学的なエンティティ及び/又は2以上の第2の微生物学的なエンティティが、サンプル中にある。第1又は第2の微生物学的なエンティティが、アレイ上の捕捉スポットに配置されることができる。これは、検出のために便利である。例えば、アレイは、それぞれ異なる捕捉スポット上に、少なくとも10の異なる捕捉微生物学的エンティティを含むことができる。捕捉スポットは、0.1乃至10μmの空間を占めることができる。
【0016】
本発明のある実施例において、第1及び第2の粒子の両方が、微生物学的なエンティティに結合される。例えば、第1の粒子は、ターゲットの微生物学的なエンティティに結合されることができ、第2の粒子は、捕捉の微生物学的なエンティティに結合されることができる。代替例として、第1の粒子は、第1のターゲット微生物学的エンティティに結合されることができ、第2の粒子は、第2のターゲット微生物学的エンティティに結合されることができる。第1又は第2の微生物学的エンティティは抗体でありえる。モノクローナル抗体は、特定のタンパク質に対する高レベルの特定性を与えることができる。
【0017】
別の見地において、第1及び第2の粒子の一方だけが磁性であり、他方の粒子は非磁性である。非磁性粒子は、磁性粒子より大きくてもよい。本発明は、流体摩擦力を、第1の又は第2の微生物学的エンティティに与えることを含む。そのような場合、第2の粒子に与えられる流体摩擦力は、サイズの違いのために第1の粒子に対するものより非常に大きい。非磁性粒子の異なるサイズは、結合のそれぞれ異なる強度を区別するために使用されることができる。
【0018】
印加される磁界は、1.10−4乃至10テスラでありえ、例えば、0.01乃至0.1テスラでありえる。第1及び第2の粒子が磁性である場合、磁界は、第1及び第2の粒子の間に斥力又は引力を生成することができ、又は変化し、振動し又は交番する力を生成することができる。
【0019】
本発明は、更に、結合された第1及び第2の微生物学的なエンティティを、第3の磁性粒子と接触させることを含む。第3の磁性粒子は、第1又は第2の磁性粒子の磁気モーメントより大きい磁気モーメントを有する。
【0020】
本発明は、更に、捕捉及びターゲット生理活性分子のような捕捉及びターゲット微生物学的エンティティの間の第1及び第2の結合を区別するために、第1及び第2の粒子を使用する方法であって、第1の結合が第2の結合とは異なる強度を有し、粒子の少なくとも1つが磁性である、方法であって、少なくとも1つの捕捉の微生物学的エンティティを有するサンプルを、第1の粒子に結合された少なくとも1つのターゲットの微生物学的エンティティと、接触させるステップと、結合されていない捕捉微生物学的エンティティの場合、捕捉及びターゲットの微生物学的エンティティの間の結合を可能にする条件を提供するステップと、サンプルを、結合されていない第2の粒子と接触させ、又はサンプルを、微生物学的エンティティに結合される第2の粒子と接触させるステップと、磁界を印加するステップと、ターゲット及び捕捉微生物学的エンティティの間の結合が、第1又は第2の結合であるかどうか区別するステップと、を含む方法を提供する。
【0021】
本発明は、更に、液体中の微生物学的なエンティティの間のそれぞれ異なる強度の結合を区別する装置又はツールであって、少なくとも一方が磁性であり、液体中で両方とも移動可能である第1の粒子及び第2の粒子と、第1及び第2の微生物学的なエンティティの間の結合に機械的応力を及ぼし、それぞれ異なる強度の結合を区別するように、第1及び第2の粒子に作用する手段と、を有し、機械的応力を及ぼす手段が少なくとも磁界発生器を有する、装置又はツールを提供する。機械的応力を及ぼす手段は、第1又は第2の粒子に流体摩擦力を及ぼす手段を有することができる。ツールは、基板上の捕捉スポットに配置される微生物学的なエンティティのアレイを更に有することができる。ツールは、アレイに対する粒子の側方移動を促す励起(excitation)を生成する手段を更に有することができる。
【0022】
ツールは、特異的に結合される生理活性分子の識別、分離、精製のために使用されることができる。ツールは、好適には、マイクロ流体デバイスとして製造される。
【0023】
従属請求項は、本発明の個別の実施形態を規定する。
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1−図4は、本発明のそれぞれ異なる実施例を示し、図5及び図6は、従来技術に関する。すべての図において、ビーズは、空いている円(1)及び閉じて満たされた円(2)によって表現されている。捕捉分子(C)は、点を打たれており、ターゲット分子(T)は、線を引かれている。図示される構造は、捕捉及びターゲット分子が互いに結合され、ビーズが、ターゲット捕捉複合体に破壊的な力を及ぼすに十分近くに移動されている状況に関連する。
【0026】
本発明は、特定の実施例に関して及び特定の図面を参照して記述されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ制限される。説明される図面は、概略的であり、非制限的である。図において、構成成分のいくつかのサイズは、説明の目的で、誇張して表現されており、同じ縮尺で描かれていない。「含む、有する」なる語が本説明及び特許請求の範囲において使用される場合、それは他の構成要素又はステップを除外しない。例えば単数名詞に関連して「a」又は「an」のような不定冠詞又は定冠詞が使用されるとき、他に特に述べない限り、これは、その名詞の複数も含む。
【0027】
更に、この説明及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等の語は、同様の構成要素を区別するために使用されており、必ずしも順次の又は時間的な順序を記述するものではない。このように使用される語は、適当な環境下において交換可能であり、ここに記述される本発明の実施例は、ここに記述される以外のシーケンスでの動作が可能であることを理解されたい。
【0028】
更に、本説明及び特許請求の範囲における「の上(top,over)」、「の下(bottom,under)」、その他の語は、説明の目的で使用されており、必ずしも関連する位置を記述するために使用されているわけではない。このように使用される語は、適当な環境下で交換可能であり、ここに記述される本発明の実施例は、ここに記述され又は説明される以外の向きでの動作が可能であることを理解されたい。
【0029】
本発明は、微生物学的なエンティティ(例えばウィルス、バクテリア、原生動物)及び抗体のような生理活性分子の間の相互作用の検出に関する観測に基づく。相互作用は、一般に、タンパク質−タンパク質又はペプチド−ペプチド相互作用、又は生理活性分子(例えばペプチド−ペプチド又はタンパク質−タンパク質相互作用)であり、特にマルチアナライトセンサの場合、捕捉分子−ターゲット相互作用の正確な物理化学的性質に関係ない物理的な(ストリンジェンシー)力によって、弱く又は非特異的に結合された分子を除去することが有利である。より一般的には、本発明の目的は、生理活性分子又は微生物学的なエンティティの間の弱い相互作用と強い相互作用とを区別し、又は第1の相互作用と第2のより弱い相互作用とを区別することである。
【0030】
方法が適用することが可能であるべきで最小の力は、F_min=E_min/w_maxから評価されることができる。ここで、E_minは、最も低い相互作用エネルギーであり、w_maxは、相互作用の最も大きい長さスケールである。E_minは、生理活性分子又は他の微生物学的エンティティ間の相互作用が生じる熱エネルギーによって与えられる。w_maxの値は、生物学的な相互作用(例えばイオン、ヴァンデルヴァールス、水素結合、疎水性/疎水性、ステリック)の最大相互作用レンジによって決定される。E_min=kT、T=300K及びw_max=40nmである場合、0.1pNの最小力が、本発明の実施例によって達成される結果である。
【0031】
本発明は、マルチアナライトバイオチップにおけるバックグラウンド信号を抑制するための物理的な方法を提供する。2種類の粒子が含まれる。2種類の磁性粒子は、例えば磁気モーメントがかなりの量異なり、例えば1又は数オーダー異なる:(i)検出標識の一部としてサイズが相対的に小さい、フェリチン様の磁性タンパク質又はマグネトソームのような第1のビーズ又は微生物学的エンティティ、及び(ii)フェリチン様の磁性タンパク質又はマグネトソームのような第2のビーズ又は微生物学的エンティティ、又はマグネトスピリラムマグネトタクタム(magnetospirillum magnetotactum)のような磁気セル。例えば、ビーズが使用されるとき、第2のビーズは、小さいビーズを引き寄せ、運ぶために、より大きいサイズをもちうる。大きい粒子と小さい粒子との間の力は、ピコニュートンのレンジであり、これは、強い及び弱い生理活性分子の相互作用の区別をするのに十分である。方法は、広範なレンジの検出原理及びデバイス設計に適用できる。化学的及び物理的なストリンジェンシー方法が、本発明と組み合わせられることができる。
【0032】
本発明によれば、物理的な力を印加する実際の方法は、少なくとも1つの磁性又は常磁性の粒子又はマイクロキャリア、例えばビーズ又は微生物学的エンティティに依存する。本発明により、粒子又はマイクロキャリアは、例えば球、シリンダ又はロッド、立方体、卵形等の形のような、いかなる形状であってもよく、又は例えばバクテリア、マグネトソーム、リポソーム又は原生動物のような可変の形状を有してもよい。磁性マイクロキャリア又は粒子が生理活性分子に結合されると、力が、磁界勾配を介して与えられることができる。磁性マイクロキャリア又は粒子に働く力Fは、以下に等しい。
【数1】

【0033】
ここで、mは、マイクロキャリア又は粒子の磁気モーメントであり、Bは、磁界である。右側の近似は、例えば磁気飽和によってもたらされる一定の粒子モーメントにあてはまる。
【0034】
本発明の1つの見地により、磁力は、例えばビーズのような標識である第1のマイクロキャリア又は粒子と、第1の磁性ビーズに近付けられることができる、例えば第2の磁性又は非磁性ビーズである第2のビーズのような第2のマイクロキャリア又は粒子との組み合わせを使用して、生成される。
【0035】
以下において、本発明は主にビーズの使用に関して記述される。しかしながら、本発明はビーズの使用に制限されない。以下において、「第1のビーズ」及び「第2のビーズ」について言及されているが、「第1」、「第2」、「ビーズ」なる語に限定的な解釈がなされるべきではない。本発明において用いられる「ビーズ」は、ビーズが球の形状であることを意味せず、いかなる適切な形状であってもよく、例えば球、シリンダ又はロッド、立方体、卵形等の形でありえ、又は規定されない又は一定でない形状を有してもよい。更に、「ビーズ」なる語が、以下において使用されるが、本発明は、磁性又は非磁性の前述のビーズと等価なものとして、例えばマグネトソーム、バクテリア、ウィルス、原生動物、リポソーム、タンパク質複合体である、微生物学的エンティティのような粒子の使用を含む。例えば、マグネトソームは、磁性バクテリア中に自然に存在し、それから分離可能な磁性粒子であり、磁性ビーズの役目を果たすことができ、その一方、リポソームは、一般に、非磁性ビーズとして使用されることができる人工粒子である。
【0036】
同様の考えが、「生理活性分子」なる語にもあてはまる。以下において、主に生理活性分子について言及されているが、本発明は、前述の分子と等価なものとして、例えばマグネトソーム、バクテリア、ウィルス、原生動物、リポソーム又はこれらのいずれかのフラグメント及びタンパク質複合体のような、微生物学的なエンティティの使用を含む。「微生物学的なエンティティ」なる語は、広く解釈されるべきである。「微生物学的なエンティティ」なる語は、タンパク質、ペプチド、RNA、DNA、リピド、フォスフォリピド及び炭水化物等の生理活性分子を含む。更に、生理活性分子なる語は、特にレセプタを含むことができる細胞膜の一部である、細胞膜の一部のようなセルフラグメントを含む。更に、生理活性分子なる語は、生理活性分子に潜在的に結合することができる小さい化合物に関する。この例として、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、インヒビタ又はモジュレータがある。生理活性分子は、分離され又は合成される分子でありうる。合成される分子は、例えば変化されたアミノ酸又はヌクレオチドのように自然には存在しない化合物を含むことができる。代替例として、生理活性分子は、溶解物、セル断片、オルガネラ、損われていないセル又は生体(例えばウィルス又はバクテリア)のコンテクストの範囲内にありうる。生理活性分子は、例えば血液、血清、その他体液又は分泌物のような媒体中に、又は食品、水サンプル等の生理活性分子を含む他の任意のサンプル中に存在しうる。「微生物学的なエンティティ」なる語は、ウィルス、バクテリア、原生動物及び他の細胞生物又はそれらのフラグメント、マグネトソームのような細胞生物の一部若しくはオルガネラ、又はリポソームのような人工微生物体、を含むことができる。
【0037】
分子間の相互作用とは、結合をいい、弱い結合(概して非特異的(a-specific or non-specific))及び強い結合(概して特異的結合)を含む。「弱い」、「非特異的」、「強い」、「特異的」結合なる語は、必ずしも結合の特定の程度又は絶対的な強度に関するわけではなく、むしろ相対的な関係を規定する。すなわち、「強い」又は「特異的」な結合は、「弱い」又は「非特異的」な結合より強い結合を有する。生理活性分子間の弱い結合は、0.1pNより低い力を有する結合として理解される。
【0038】
「ターゲット」及び「捕捉分子」と称される生理活性分子間の本発明において決定される相互作用は、上述した生理活性分子のいかなるものの間にもありえ、レセプタ/リガンド、レセプタ/インヒビタ、酵素/基体、抗体/抗原、DNA/RNA、RNA/RNA、ウィルス/分子、バクテリア/分子、リポソーム/分子、その他の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。決定される相互作用の好適なタイプは、ターゲット又は捕捉分子の少なくとも一方がタンパク質又はペプチドである相互作用である。相互作用のより好適なタイプは、ターゲット及び捕捉分子の双方がタンパク質又はペプチドである相互作用である。
【0039】
少なくとも1つの結合を含む分子及び/又は生物学的エンティティの間の相互作用は、本発明により広い解釈を与えられるべきである。以下の複合体は、単に例示として与えられる:
−捕捉分子に結合されるターゲット分子。
−第2のターゲット分子に結合される捕捉分子に結合される第1のターゲット分子。
−ウィルスに結合される捕捉分子。
−第2の捕捉分子に結合されるウィルスに結合される第1の捕捉分子。
−ウィルス/セル分子の複合体。
【0040】
一方の粒子が磁性である2つの粒子システムの正しい環境を選択することによって、感度の増加が得られることができる。生理活性分子を分離し、集めるための磁性ビーズの使用は、良く知られている(例えばB. Sinclairの「To bead or not to bead: Applications of magnetic bead technology」(The Scientist 12(13), p. 17, 22 June 1998)、又はDavid Wildの「The Immunoassay Handbook」(Nature Publishing Group, London, 2001, ISBN 1-56159-270-6)、又はUrs Hafeli他の「Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers」(Plenum Press, New York, 1997, ISBN: 0-306-45687-7)。これらのアプリケーションにおいて、捕捉分子は、磁性ビーズに結合され、そののち、磁力が、結合されたターゲットを除去し又は集めるために印加される。通常、これらの実験は、タンパク質の10nmの平均サイズよりかなり大きい1μm又はそれ以上のサイズを有するビーズを用いて実施される。これらのビーズは、本発明のコンテクストにおいて使用されることができるが、それらのサイズは、立体障害のためマイクロアレイ装置に重要な欠点をもたらすことがある。立体障害は、捕捉スポットのダウンスケーリング及び検知のダイナミックレンジを制限する。捕捉分子のより高い密度を有するより小さい捕捉スポットは、単位エリアあたりより高いターゲット濃度をもたらし、検知のより大きな信号対雑音比を与えるので、捕捉スポットについてのダウンスケーリングが望ましい。このように、これは、マイクロアレイにおいて要求される感度を得ることを可能にする。
【0041】
1つの見地において、少なくとも第1のビーズは、生理活性分子に付着され、第2のビーズは、生理活性分子に付着されない。しかしながら、本発明の特定の実施例によれば、生理活性分子は、第1及び第2のビーズの両方に付着されることができる。最も好適には、この場合、生理活性分子は同一ではない。
【0042】
少なくとも1つが磁性又は常磁性であるビーズは、磁界又は他のタイプのフォースフィールドの印加が、ターゲット−捕捉分子相互作用における非特異的に結合されたターゲットの除去をもたらすようなやり方で使用される。「磁性」なる語は、磁界中の磁気双極子を永久的に又は一時的に生成する磁気の任意の形式である磁性粒子のいかなる適切な形式をも含み、例えば、磁性、常磁性、超常磁性又は強磁性の形式でありうる。本発明を実施するために、ビーズの形状に制限はないが、球状の粒子は、今日、信頼できるやり方で製造するのに最も容易であり、最も安価である。磁気引力を改善するために、ビーズは、例えば表面に加えられる高い湾曲をもつ粒子、突出、ニードル、その他のような磁気的な不規則性を具えることができる。ビーズは、更に、例えば非球形状により、永久的な磁気モーメントを有することができる。本発明の好適な磁性ビーズは、超常磁性粒子である。これらは、概して強磁性体の1又は多くの小さい球状コア(3−30nm)からなる。それらの小さいサイズのため、コアは、単一の磁区からなる。超常磁性ビーズの場合、磁気モーメントは、外部磁界によって生成される。球形状のため、磁気モーメントは、粒子内部で容易に回転することができる。超常磁性粒子は、印加される磁界がない場合にはそれらの磁気モーメントが消えるという利点があり、このことは、磁気凝集を最小にする。非球形状及び/又はより大きいコアを有する粒子の利点は、磁気モーメントが概して大きく、それによって磁気操作を容易にすることである。粒子の凝集は、例えば交番磁界のような励起方法を適用することによって取り除かれることができる。
【0043】
本発明の一実施例により、ビーズは両方とも、磁性ビーズであり、最も好適には、それぞれ異なる磁気モーメントを有するビーズである。一方のビーズが磁性でない(磁気モーメント=0)ビーズの組もまた、本発明のこの見地の範囲内に含まれる。(例において説明したように)本発明の他の実施例によれば、2つのビーズが、同じ磁気モーメントを有することができる。
【0044】
本発明の1つの見地により、相互作用する分子の一方は、磁性ビーズに結合される。好適には、ターゲットが、本発明の第1のビーズにリンクされる。しかしながら、捕捉分子が磁性ビーズの一方に結合される構成、又はそれぞれ異なる捕捉分子がそれぞれ磁性ビーズに結合される構成も、本発明の範囲内であることが理解されるべきである。
【0045】
本発明の見地により、第1のビーズは、第2のビーズより小さく、第2のビーズに等しく、又は第2のビーズより大きいサイズを有することができる。しかしながら、第1のビーズがターゲット生体分子に付着されるとき、第1のビーズは、以下に詳細に説明されるいくつかの利点のために、第2のビーズより小さいことが好ましい。第1及び第2のビーズは、同じ組成を有することができる。この場合、得られうる磁気モーメントは、ビーズのサイズに関連する。しかしながら、第1及び第2のビーズの組成が異なる特定の実施例が考えられることができる。この場合、サイズと磁気モーメントとの間の相関関係は断たれる。
【0046】
第1及び第2のビーズのサイズは、それ自体、本発明を制限するファクタではない。しかしながら、バイオチップ上において相互作用を検出するために、小さいサイズで作られたビーズが、有利である。マイクロメートルの大きさのビーズが、標識として使用されるとき、あらゆる標識が少なくとも1μmの領域を占めるので、それらのビーズは、ダウンスケーリングを制限する。結果的に得られるバイオチップのサイズは、次のように評価されることができる:あらゆる捕捉スポットにおいて、少なくとも1000の粒子が、3%(N−1/2)の統計的計算バリエーションを得るために収集される必要がある。1000のダイナミックレンジを得るために、あらゆるスポットは、少なくとも1000x1000=10μmの領域を必要とする。1000の部分をもつバイオチップは、捕捉スポットのための1000×10μm=10cmの総面積に加えて、スポット間のオープンな領域等を必要とする。これは、バイオチップの場合には非常に大きく、費用対効果的であるために、cmのレンジではなくmmレンジにあるべきである。更に、立体障害により、マイクロメートルサイズのビーズは、平方マイクロメートルあたり1より高い表面上のターゲット濃度を通常生成するアッセイ条件(例えばターゲット濃度、捕捉プローブ親和性、表面上の捕捉プローブ密度)のための標識として適切でない。更に、小さい粒子は、より良い拡散特性を有し、概して大きい粒子より低い沈殿の傾向を示す。
【0047】
本発明によれば、第1のビーズは、好適には、1乃至500ナノメートルのサイズレンジ内にあり、より好適には5乃至100ナノメートルのレンジ内にある。本発明による第2のビーズは、好適には、50nm乃至5マイクロメートルのサイズレンジ内にある。しかしながら、両方のビーズとも、3nm乃至5マイクロメートルのレンジの同じサイズを有することができる。
【0048】
磁性又は常磁性のビーズが本発明の見地に従って使用される場合、磁界の印加は、磁界勾配のため、第1及び第2のビーズの間の斥力及び/又は引力をもたらし(両方のビーズが磁性である場合)、又はビーズの1つの運動をもたらしうる。ビーズを作るために使用される本発明の粒子は、磁化された又は磁化可能な材料からなりうるが、磁性粒子が付着されることができ又は取り入れられることができるポリマのような固体又は多孔物質であってもよい。ビーズの別の材料と複合される磁石粒子の使用は、ビーズの磁気モーメントとサイズとの間の直接の関係を切り離すことを可能にする。ビーズ内での磁性粒子複合体の使用は、ビーズの重さの変更も可能にする。ビーズ内での磁性粒子複合体の使用は、更に、例えば発色団基のような検出標識及び/又はタンパク質との反応のための官能基の取り込みを可能にする。磁性材料を含むビーズの良く知られている例は、ダイナビーズ(Dynabeads)である。Dynabeads M450(直径4.5ミクロン)は単量体のエポキシドでコーティングされることができ、その結果、エポキシ及びヒドロキシ基の混合物を与える。Dynabeads M-280(直径2.8ミクロン)は、p−トルエンスルホニルクロリドとの反応によってトシロキシ(tosyloxy)基に変換された、ヒドロキシル基を有するポリスチレンビーズである。
【0049】
磁性ビーズは、例えば高スループットの臨床的なイムノアッセイ装置、サンプル精製、セル抽出、その他の、生物学的解析において広く使われる。いくつかの診断会社(Roche、Bayer、Johnson&Johnson、Abbott、BioMerieux他)は、例えばイムノアッセイ、核酸抽出及びサンプル精製のための、磁性ビーズを有する試薬を製造し販売している。磁性ビーズは、ナノメートルからマイクロメートルにまで及ぶさまざまなサイズで市販されている。本発明のビーズの生理活性分子への付着又は結合のために、ビーズは、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基又はアミノ基のような官能基をもつことができる。これらは一般に、このような官能基のうちの1つをもつポリマの表面コーティングを提供するように、コーティングされてない単分散の超常磁性ビーズを処理することによって与えられることができる。例えばヒドロキシル基を提供するためにポリグリコールを伴うポリウレタンを、ヒドロキシル基を提供するためにセルロース誘導体を、カルボキシル基を提供するためのためにアクリル酸又はメタクリル酸のポリマ又はコポリマを、又はアミノ基を提供するためにアミノアルキル化されたポリマを、処理する。米国特許第4654267号明細書には、多くのこのような表面コーティングの導入が記述されている。他のコーティングされた粒子は、米国特許第4336173号、同第4459378号及び同第4654267号に従うビーズの変更によって用意されることができる。例えば、スチレン−ジビニルベンゼンから準備され、3.15μmの直径を有する、マクロレティキュラー多孔性ポリマ粒子が、孔の表面に−NO基を組み入れるために、HNOによって処理された。粒子は、Fe2+の水溶液に分散された。Fe2+は、−NO基によって酸化され、これは、孔内部での不溶性の鉄オキシ−ハイドロキシ化合物の析出をもたらす。加熱後、鉄は、多孔性粒子のボリューム全体にわたって、磁性酸化鉄の細かく分割されたグレインとして存在する。NO基は、Fe2+との反応によってNH基にかわる。孔を埋め、表面に所望の官能基を取り入れるために、異なる単量体が、孔の中及び表面において重合される。好適なタイプの粒子の場合、表面は、−(CHCHO)8−10リンケージを通じて重合体バックボーンに接続される−OH基をもつ。他の好適な表面は、メタクリル酸の重合を通じて得られる−COOH基をもつ。例えば、ビーズに最初に存在するNH基は、米国特許第4654267号明細書に記述されるようにジエポキシドと反応されることができ、続いて末端ビニル基を提供するためにメタクリル酸と反応される。メタクリル酸との溶液共重合は、以下に言及されるR452ビーズのように、末端カルボキシル基をもつ重合体コーティングを与える。同様に、アミノ基は、ジアミンを、ジエポキシドとの反応の上述の生成物と反応させることによって導かれることができ、アミノグリセリン(aminoglycerol)のようなヒドロキシルアミンとの反応は、ヒドロキシ基を与える。
【0050】
生理活性分子のビーズへの結合は、不可逆でありえるが、粒子と生理活性分子との間の架橋のためのリンカ分子の使用によって可逆でもありえる。このようなリンカの例は、特定のタンパク分解認識サイトを有するペプチド、特定の制限酵素のための認識サイトを有するオリゴヌクレオチドシーケンス、又は還元可能なジスルフィド基を含むもののような化学的に可逆な架橋基、を含む。さまざまな可逆的架橋基は、Pierce Biotechnology Inc.社(ロックフォード、イリノイ州、米国)から取得可能である。
【0051】
本発明の好適な実施例によれば、ターゲット及び捕捉分子間の特異的相互作用の検出(すなわち非特異的に結合された分子及び/又は標識の除去後)は、本発明の多くの実施例により第1の粒子である生体分子にリンクされる粒子の特性に基づいて行われる。検出は、第1の粒子の磁気特性に基づいて行われることが好ましい。
【0052】
本発明の見地によれば、磁界が、本発明の第1及び第2のビーズを含むサンプルに印加される。磁界は、本発明において説明されるように、磁性ビーズ上のそれぞれ異なる効果を与えるために、当業者に知られているいくつかのやり方で印加されることができる。磁界は、一方又は両方の粒子の磁気モーメントの向きを生成するのに十分な大きさでなければならず、好適には、両方の粒子の磁気モーメントを飽和させる大きさである。必要な磁界は、粒子のタイプ(例えば超常磁性、強磁性、球状又は非球状)に依存する。本発明によれば、磁界は、1.10−4テスラ乃至10テスラのレンジ内にあり、好適には0.01乃至1テスラのレンジ内にある。磁界は、永久磁石によって又はソレノイドのような電磁石によって生成されることができる。可変磁界は、磁石コイルの電流を変化させることによって生成されることができるが、磁性材料(硬磁性又は軟磁性)の機械的移動によっても生成されることができる。
【0053】
磁界勾配は、電流ワイヤの近傍に生成されることができるが、磁性材料にカーブした又は鋭い形状をもたせることによっても生成されることができる。磁性粒子に印加される磁界勾配は、0.01T/m乃至10T/mの範囲に及び、好適には0.1T/m乃至10T/mである。
【0054】
結合されたターゲット分子又は磁性ビーズの検出は、任意の適切な方法によって、例えば磁気的に行われることができる。例えば、検出は、抗磁センサを用いて、又は磁気誘導方法等によって、機械的方法(サーフェイス又はバルクアコースティックウェーブ、結晶マイクロバランス、振動メンブレン等)によって、光学的方法(表面プラスモン共鳴、光学干渉、回折、表面増強共鳴ラマン散乱、光学散乱等)によって、電気的方法(例えば、粒子の化学現像によって助けられる導通、その他)によって実施されることができ、又は、質量分析のような他の解析ツールが使用されることもできる。ビーズが、複合物検出標識の一部であり、例えば付加の光学活性成分、付加の電子活性(electro-active)成分等を含むことは、本発明の範囲内である。検出は、光学的に(例えば蛍光によって、エバネセント場によって起こされる蛍光、蛍光偏光、化学ルミネセンス、電気化学ルミネセンス、表面増強ラマン散乱等)、電気的に(例えばレドックス電流による導通を介して、その他)、機械的に、又はその他の方法によって行われることができる。以下のような特別な標識設計も本発明の範囲内に含まれる:
【0055】
−例えば強化された安定性、導電特性、光学特性(例えば散乱、プラスモン共鳴)等のために、金属カバー層を有する磁気コア。
−光学活性成分に囲まれる1又は複数の磁気コア。
−エンザイム、レドックス分子、レドックスエンザイムのような(生物)化学活性分子によって囲まれる1又は複数の磁気コア。
−生理活性及び/又は他の機能的な化合物が結合されるデキストレイン(dextrane)のような有機層でコーティングされた1又は複数の磁気コア。
−例えばポリスチレン(一般にラテックスとして知られる)、PMMAのようなポリマ球内にカプセル化された1又は複数の磁気コア。高分子マトリックス内で、他のシグナリング分子(例えばフルオロフォアのような)が、埋め込まれ又は共重合されることができる。
−フェリチンのような生物学的に活性な磁性粒子。
−マグネトソーム、リポソームのような磁性及び/又は検出成分を有するベシクル。
【0056】
更に、例えば「Bioconjugated nanoparticles in molecular diagnostics and therapy」(May 22-24, 2003, Jena (Germany))のような磁性ナノパーティクルの技術及びアプリケーションの例が、最近のカンフェレンスにおいて見られることができる。www.ipht-jena.de/BEREICH_3/molnano/nanoparticles2003/及び「2nd international meeting on the diagnostics applications of magnetic microspheres」(Paris, France, June 12-13, 2003)を参照されたい。
【0057】
別の実施例において、第1のビーズは、これに限定されないが、例えば抗原、発色団基、アフィニティ標識のような、検出のための付加のタグをもつことができる。ビーズが、ポリマ金属ビーズの場合のように検出タグと反応するための付加の官能基をもっているとき、検出用のタグは、磁性ビーズに容易に適用されることができる。例えば官能基を介して直接に、リンカ又はテーザ(tether)を介して間接的に、又は例えばビオチン/ストレプトアビジンのような中間分子を使用して、タグをビーズに結合するためのいくつかの技法が、当技術分野において知られている。
【0058】
第1の実施例
図1に概略的に示される本発明の第1の実施例により、生体分子間の相互作用の検出が実施される。生体分子C(好適には捕捉分子と呼ばれる)の1つは、例えば表面5が、捕捉分子が結合するポリマのような材料を含むときに直接的に、又はリンカ分子3を介して間接的に、表面5に結合される。ここで使用される表面5は、例えばガラス、プラスチック、有機結晶又は無機結晶(例えばシリコン)、アモルファス有機材料又はアモルファス無機材料(例えばシリコンナイトライド、シリコンオキサイド、シリコンオキシナイトライド、アルミニウムオキサイド)のような、生体分子で直接的(例えば架橋によって)又は間接的にコーティングするのに適した固定の基板、マトリックス又はグリッドに関する。適切な表面材料層及び結鎖化学は当業者に知られており、例えばA. M. Usmani及びN. Akmalの「Diagnostic Biosensor Polymers」(American Chemical Society, 1994 Symposium Book Series 556,Washington DC, USA, 1994)、Y. Lvov及びH. Mohwaldにより編集された「Protein Architecture, Interfacing Molecular Assemblies and Immobilization Biotechnology」(Marcel Dekker, New York, 2000)、David Wildの「The Immunoassay Handbook」(Nature Publishing Group, London, 2001, ISBN 1-56159-270-6)又はKress-Rogersの「Handbook of Biosensors and Electronic Noses. Medicine, Food and the Environment」(ISBN 0-8493-8905-4)に記述されている。
【0059】
本発明は、プラナーセンサ表面(例えばプラナーガラスバイオチップ)上で実施されることができるが、フロースルーシステム(例えばミクロビーズを含む多孔性カラム、多孔質シリコン又は多孔性酸化アルミニウムからなるフロースルーセンサ)においても実施されることができる。
【0060】
第1の実施例の1つの見地によれば、それぞれ異なる磁気モーメントを有する2のビーズ1、2が、例えば図1に概略的に示される捕捉分子−ターゲット分子相互作用の検出において非特異的結合を変調する、例えば最小化するために使用される。(複数の)知られている又は推定のターゲットTを含む生体分子の1つ又は混合物が、(直接的に又は間接的に)第1のビーズ1にリンクされる。第1のビーズ1は、第2のビーズ2より小さい磁気モーメントを有する。表面5は、捕捉分子Cの1つ又は好適には選ばれたものでコーティングされる。コーティングされた表面は、より大きい磁気モーメントを有する第2のビーズ2とともに又はそれを加える前に、ターゲット/混合物と接触される。第2のビーズ2自体は、生体分子に結合されない。十分な磁界M(図は面垂直磁界を示すが、これは必須ではない)を印加すると、結果的に、第1のビーズ1を第2のビーズ2に引き寄せる。第1及び第2のビーズ1、2の磁気モーメント及び磁界Mの強度は、ラベリングされた生体分子Tの捕捉分子C又は表面5とのより弱い又は非特異的相互作用が分子Tの除去をもたらし、すなわち、ターゲットTと捕捉分子Cとの間の結合の破壊をもたらすように選択される。自由にされたターゲット分子は、離れることができる。他方で、第1及び第2のビーズ1、2の磁気モーメント及び磁界Mの強度は、より強い、例えば特異的なターゲット−捕捉分子相互作用が、2つのビーズ1、2の間の磁気吸引によって崩壊されず、検出されることができるように、選択される。
【0061】
この実施例のいくつかのアプリケーションは、本発明の範囲内に含まれる。例えば、知られているリガンドの構造的に関連するたアナローグの集まり又は小さい化合物(捕捉分子)の大きい集まりが、表面に適用されることができ、そこで、単一タンパク質(ターゲット分子)は、タンパク質のリガンドアナローグに対する弱い適度な結合及び強い結合をアッセイするために使用されることができる。これは、アッセイされるタンパク質のアゴニスト及びアンタゴニストに関して推定の鉛化合物の発見を可能にする。同様のアッセイが、いくつかのタンパク質と共に使用されることができる。ここで、弱く又は強く結合するタンパク質は、起こりうる副作用の標示を与える。
【0062】
タンパク質成分が表面に付着され、小さい化合物が溶液中にある同様のアッセイが、小さい化合物を表面又は磁性ビーズにリンクさせるのがより容易かどうかに依存して、実施されることができる。
【0063】
本発明のこの実施例は、タンパク質工学に関しても使用されることができる。部位特異的な又はランダムに変異導入されるタンパク質の集まりは、グリッド表面上におかれることができ、特定の化合物(小さい分子又は他の1又は複数のタンパク質)の結合のためにスクリーニングされることができる。この構成により、タンパク質は、その垂直リガンドを有する小さい又は変更された結合アフィニティを有するものとして決定されることができるが、更に変更された結合特性又は変更されたリガンド特異性を示す変異体も示す。上述の例の教示に続いて、同様の実験が、タンパク質、DNA、RNA、炭水化物、リピド、フォスフォリピド、他の細胞成分の間の相互作用についても設計されることができる。更に、細胞、ベシクル、病原体及び他の生物体が、検出されることもできる。本発明のこの実施例は、生理活性分子の検出に適しているが、生理活性分子の分離及び精製にも適している。
【0064】
本発明のこの実施例に従って決定されるべき好適なタイプの相互作用は、捕捉及びターゲット分子の両方がタンパク質である相互作用である。このアプリケーションは、知られているタンパク質(捕捉分子)の集まりがグリッドに結合されるいわゆるプロテインアレイである。ターゲット分子を含む生体試料は、第1の磁性ビーズによってラベリングされ、ターゲット分子と捕捉分子との間の結合についてアッセイされる。第2の粒子は、より弱く、例えば捕捉分子に非特異的に結合されるターゲット分子を識別し又は除去するために使用される。
【0065】
本発明は、特異的結合と非特異的結合とを区別するために、バッファ条件を変更する必要なく、この方法を実施することを可能にする。
【0066】
タンパク質マイクロアレイにおいて動作するとき、第1の磁性ビーズのサイズは重要でありうる。マイクロメートルサイズの磁性ビーズは、アレイセンサの標識として使用されている(例えばBaselt D.R.、Lee G.U.他による「A biosensor based on magnetoresistance technology」(Biosensors and Bioelectronics 13 (1998) 731-739))。磁力は、大きい磁気モーメントにより、大きいビーズに容易に印加されることができるが、大きいビーズは、タンパク質−タンパク質マイクロアレイのような実験において多くの重要な不利益を有する。
【0067】
−表面への結合の良好な可能性を有するために、標識は、相当な時間の間、センサ表面と相互作用する必要がある。ビーズの表面との相互作用の効率は、標識の拡散スピードによって決定される良い部分に関する。マイクロメートルサイズの粒子の拡散は、非常にゆっくりであり(D〜10−12/s、1秒で約1μm)、これは、総アッセイ時間を増加させる。
−ゆっくりした拡散スピード、表面との長い相互作用時間及び粒子の大きい接触面積は、大きいビーズが非特異的態様で表面にくっつく可能性を増やす。
−マイクロメートルサイズの粒子は、アッセイに不利益である沈殿スピードを示す。
【0068】
−マイクロメートルサイズの粒子は、流体のフローに敏感である。アッセイの間、溶液は、多くの場合、(例えば定温放置の間)リフレッシュされ又はかき混ぜられ、さまざまな異なる流体が、連続して適用されることができる。大きいビーズが標識として使用されるとき、これらは、このような流体移動によって制御されないやり方でセンサから離されることができる。結果として、マイクロメートルサイズの標識は、終点検出のために適用されることができるだけであり、その場合でも、流体マニピュレーションは、大きな注意をもって実施される必要がある。
−小さいビーズは、(単位ボリュームあたりのビーズの数に関して)大きいビーズより高い濃度の流体に分散されることができる。こうして、小さいビーズは、ターゲット分子及びセンサ表面のより高い相互作用レートをもたらす。
【0069】
このように、マイクロメートルより小さいサイズを有するビーズを使用することが有利である。こうして、本発明の好適な実施例によれば、サブマイクロメートルの第1の磁性ビーズが使用され、その大きさは、500ナノメートルから数ナノメートルまでのレンジ内にある。
【0070】
小さい粒子を使用する場合、ビーズの磁気モーメントが減少するという問題が生じる。モーメントは、ビーズのボリューム、従ってビーズの半径の3乗に比例する。例えば、35nmのサイズ及び約10nmの磁気コアを有する超常磁性ビーズは、10−18A.mのオーダーの磁気モーメントを有する。10T/mの大きい外部勾配の場合でさえ、1fN[式(1)]の力が得られるだけである。これは、生理活性分子の間の強い結合から弱い結合を区別するにはかなり不十分である。従って、これらの小さい粒子は、磁界勾配が強く増加するときに使用されることができるだけである。
【0071】
磁気勾配を増やす知られている方法は、非常に強い湾曲又はとがった形を有する磁性材料を使用することによる。例えば、(磁性材料の飽和磁化が約1Tであるとすると、)100マイクロメートルの頂部湾曲を有する磁性ニードルは、頂部において約1T/100マイクロメートル=10T/mの磁界勾配を生成する。しかしながら、この勾配は、特に頂部から100マイクロメートルより遠くに離れると、急速に低減する。言い換えると、高い磁界勾配は、常に空間的に不均質であり、局所的にのみ印加される。従って、磁界勾配を生成する磁性材料は、動かされる必要がある第1のビーズにできるだけ近付けられる。一方、勾配生成方法は、センサ全体の流体フローを乱すべきでなく(流体チャネルは、一般に、50マイクロメートル及びそれより大きい高さを有する)、磁界及び磁界勾配の大きさ及び向きを時間的にも簡単に制御することを可能にする。
【0072】
本発明は、1つの見地において、磁力を第1のビーズに印加するための、すなわち、流体内部で第1のビーズを第2の磁性ビーズに動的に近づけることによる、新しい方法を提案する。第2のビーズの磁気モーメントは、第1のビーズに局所的に大きい磁界勾配を生成する。これは、第1及び第2のビーズの間の強い磁気相互作用に変わる。一方、第2のビーズは、それらのより大きい磁気モーメントにより、相対的に小さい磁界勾配によって磁気的に動かされることができ、又は異なる方法によって動かされることができる。
【0073】
粒子の磁気モーメントは、ビーズ間の力、それゆえストリンジェンシーを決定する。捕捉及びターゲット分子間の増加した結合の強度をもつラベリングされた捕捉分子を徐々に取り除くために、本発明の方法は、増加した磁気モーメントを有する第3の磁性粒子の少なくとも1つのタイプを用いて連続する洗浄ステップによって実施されることができ、これらのモーメントは、第2の磁性ビーズのモーメントより大きい。この段階的な洗浄は、捕捉及びターゲット分子の間の結合の強度をより狭いレンジ内に推定することを可能にする。増加する結合の強度の段階的な除去をもたらす別のやり方は、磁気モーメントが印加される磁界とともに増加するビーズを使用しながら、より大きい外部磁界を連続的に印加することによる。
【0074】
上述の実施例によれば、第2のビーズを再利用することが可能である。第2のビーズは、第1のビーズに近付けられることができ、弱く結合された第1のビーズを除去することができ、アプローチの初期ポイントから遠くに離れることができ、そののち、表面上の他の場所で弱く結合された第1のビーズを取り除くために再利用されることができる。
【0075】
上述の実施例によれば、特異的に結合されていない、第2のビーズへの結合によって取り除かれる生理活性分子にリンクされる第1のビーズを再利用することも可能である。
【0076】
上述の実施例によるターゲット検出は、いくつかのやり方で設計されることができる:
−ターゲットがセンサ表面に結合する前に、ターゲットは、それらを小さい磁性ビーズに結合させることによってラベリングされることができる。事前のラベリングは、一般的なやり方で(例えばビーズは、それらの表面上に一般的なタンパク質結合化学を有する)、又は捕捉分子(例えば磁性ビーズをもつ抗体)に対して特異的結合を有する生理活性分子によって、実施されることができる。
【0077】
−小さい磁性ビーズは、これらがセンサ表面に結合されたのち、ここでも一般的な又は特異的なやり方で、ターゲットに付着されることができる。
−アッセイは、結合アッセイ、競合アッセイ、移動アッセイ等でありえる。多分子複合体への磁力の印加は、分子解離の機会を増やす。これは、捕捉分子の高い親和性及び低い解離レートにより通常は非常にゆっくりである移動アッセイのスピードを高めるのを助けることができる。
【0078】
第1の実施例の具体例1:
磁性ビーズ間の力の決定。
ビーズのいくつかの組み合わせが可能である。良好なバランスが、ビーズのサイズ(小さいほど良い)及び磁気特性(磁気モーメント、磁気緩和)の間で求められることを必要とする。この具体例は、本発明の好適な実施例による2対の粒子について差のパラメートルの比較研究を示す。
【0079】
以下において、2つの状況を検討する:
以下の実施例において、第1及び第2のビーズは、サイズ及び磁気モーメントが異なる。実際的理由のために、本発明の第1のビーズ及び第2のビーズは、「小さい」及び「大きい」ビーズと称される。
【0080】
具体例A.
第1の(小さい)ビーズ:直径100nm、m=10−16A.m、超常磁性
第2の(大きい)ビーズ:直径1−μmm=10−13のA.m、超常磁性
【0081】
具体例B.
第1の(小さい)ビーズ:直径35nm、m=10−18A.m、超常磁性
第2の(大きい)ビーズ:直径100nm、m=10−15A.m、高密度の磁性材料
【0082】
数値の具体例において、mは、ビーズの飽和した磁気モーメントを示す。具体例は、第2のビーズが第1のビーズ上に大きい磁界勾配を生成することが可能であるように選択され、0.1pNより高い2つのビーズ間の力を生成する。以下の計算のために、粒子は、球状であると近似される。
【0083】
大きいビーズ及び小さいビーズ間の力
第1及び第2のビーズ間の引力を計算するために、2つの磁化されたビーズ間の力は、磁気モーメントのサイズ、モーメントの相対的な向き及びビーズの相対位置によって決定される。外部印加磁界の方向に沿ったビーズからビーズへのアプローチ(極から極へのアプローチ)のために、双極子間の引力が、次式によって与えられる:
【数2】

【0084】
ここで、m及びmは、個々のビーズのモーメントであり、xは、中心から中心までの隔たりである。
【0085】
第2のビーズが第1のビーズに及ぼすことができる最大磁力は、ビーズが最も近寄って接触しているときに発生する。
【0086】
具体例Aについて、引力は、表面から表面までの隔たりが50nm(x=0.6μm)である場合、46pNと計算され、接触している(x=0.55μm)場合には66pNと計算される。
【0087】
具体例Bについて、引力は、表面から表面までの隔たりが10nm(x=77.5nm)である場合、17pNと計算され、接触している(x=67.5nm)場合には29pNと計算される。
【0088】
このように、この実施例による方法は、数十ピコニュートンのオーダーの閾値力をもつより強い生体分子相互作用とより弱い生体分子相互作用とを区別するための可能性を提供する。
【0089】
大きいビーズの速度
第2のビーズは、それらの大きい磁気モーメントにより、外部的に印加される磁界勾配によって、流体内でマニピュレートされることができる。第2の粒子(大きいビーズ)のマニピュレーションスピードは、粘性媒体中の球状粒子の流れ抵抗に関する式を使用することによって評価されることができる:
【数3】

ここで、ηは、流体の粘性であり、rは、粒子の半径であり、νは、ビーズから離れる周囲流体に対する粒子スピードである。
【0090】
10T/mの勾配がある場合、具体例Aの第2のビーズは、100pNの力[式(2)]と、10mm/sの速度[式(3)]を経験する。同じ勾配において、具体例Bの第2のビーズは、1pNの力及び1mm/sの速度を有する。これは、磁界が印加されるとき、100nm乃至1μmのレンジ内の第2のビーズが、センサ表面に向かって及び離れる方に急速(mm/s)に移動することができることを意味する。更に、サイズ及び磁気モーメントのこのレンジは、本発明の方法(実施例2及び3も参照)において、より弱い及びより強い結合、例えば特異的及び非特異的な結合を区別するのに十分な力を得るために利用されることができる。
【0091】
繰り返されるストリンジェンシー
溶液中の第1及び第2のビーズは、それらが共に溶液中に存在するとき、互いにほとんど影響を及ぼさないことが示されることができる:
【0092】
(i)2つの所与の状況において、第1及び第2のビーズの磁気モーメントの比は、10又はそれより大きく、例えば10である。結果として、個々の分離されたビーズ上の磁力及びそれらの速度もまた、数オーダーの大きさ異なる。これは、第2のビーズが、センサに向かって及びセンサから離れる方へ磁気的に移動されることができる一方で、溶液中の第1のビーズがほとんど動かされないことを意味する。
【0093】
(ii)第1のビーズは、第2のビーズが非常に近付く場合にのみ[力は、式(2)のx−4のように減少する]、大きい粒子間の力を受ける。このような近づくアプローチは、第1のビーズが移動可能でない表面においては容易に達成されるが、両方のビーズが溶液中にあるときには非常に低い蓋然性を有する。
【0094】
その結果、2ビーズのストリンジェンシープロシージャは繰り返されることができ、ゆるく結合された第1のビーズを表面から規則的に除去する。センサステータスは、アッセイの終点でのみポーリングされるのではなく、規則的に監視されることができる。センサ上のダイナミクス及びカイネティクスを結果的に記録することは、生物学的な測定の改善された信頼性、精度及びスピードの利点を与える。
【0095】
大きいビーズの側方マニピュレーション
これまで、第2のビーズは、本質的に表面に対して垂直なそれらの軌道を有するセンサ表面に向かって及びセンサ表面から離れる方へ移動されるとみなされていた。第2のビーズが弱く結合された第1のビーズをピックアップする効率は、センサ表面にわたって第2のビーズの側方移動を更に生成することによって高められることができる。側方移動は、ほんの例示にすぎないが、流体のせん断流動、アコースティック励起又は磁気動作のような任意の適切な手段によって生成されることができる。磁気動作は、外部磁界勾配によって及びチップ上に生成される勾配によって生成されることができ、例えばオンチップ電流ワイヤに電流を通すことによって生成されることができる。オンチップ電流ワイヤは、勾配がごくわずかなエネルギー消費をもって結合表面の非常に近くに生成されるという利点がある。オンチップ電流ワイヤ周辺に生成される磁界勾配は、次式に等しい。
【数4】

Iは、ワイヤを通る電流であり、rは、ワイヤからの距離である。一例として、10μmの距離のところでの10mAの電流は、20T/mの磁界勾配を生成する。ビーズは、外部的に印加される均一な磁界によって磁気的に飽和され、付加の非均一な磁界が、オンチップ電流ワイヤによって生成されるものとする。20T/mの勾配は、具体例Aの大きいビーズの場合、0.2mm/sの速度を与え、具体例Bの第2のビーズの場合、21μm/sの速度を与える。センサが、10μmの幅を有するとき、第2のビーズは、1秒あたり数回又は何回も、センサを横切って動かされることができる。この側方移動は、センサ表面の第2のビーズに対する露呈を増やし、弱く結合された第1のビーズをピックアップする機会を増やすことができる。
【0096】
大きいビーズの凝集
この2つのビーズのストリンジェンシーの実施例は、2つの理由のため、磁気凝集に対して相対的に感度が低い:
(i)より低い磁気モーメントを有する第1の、例えば小さいビーズは、磁界中で凝集する傾向をほとんど有し得ない。
(ii)固定の第1のビーズ上のストリンジェンシー力は、単一の最も近い第2のビーズによって決定される[式(2)のx−4を参照]。より遠いビーズからの力は、無視できるほどであり、従って、第2のビーズの潜在的なクラスタリングは、第1のビーズに及ぼされる力を変化させない。
【0097】
しかしながら、(より高い磁気モーメントを有する)第2のビーズの非常に大きい凝集は、センサ表面への低減されたアクセス可能性を有することができるので、回避されることが好ましい。凝集は、時間の一部に磁界をオフに切り替えることによって、(例えば速い磁気緩和、小さい磁区、超常磁性により)非常に低い残余モーメントを有するビーズを使用することによって、付着防止コーティングを使用することによって、流体せん断応力によって、第2のビーズの適度な濃度を使用することによって、及び(例えば磁界の変化する大きさ及び方向を使用して)磁界の向きを変化させることによって、低減されることができる。
【0098】
検出が、ターゲット分子又は第1のビーズに関して実施される点に留意されたい。感度の高い検出ゾーンに存在しうる第2のビーズからの擬似信号を避けるために、第2のビーズは、測定中、信号寄与を生成しないことが好ましい。例えば、検出は、蛍光タグを有する第1のビーズを介して行われ、それらのタグは、第2のビーズには存在しない。
【0099】
具体例2
本発明の好適な実施例によるストリンジェンシープロシージャが、図5を参照して説明される。図5のデバイスは、マイクロフルイディックデバイスとして実現されることができる。
【0100】
1.より低い磁気モーメント及び任意により少ないサイズを有する第1のビーズ1が、ターゲット分子に付着され、ソース11に提供される。バルブ1及びポンプ13の制御下において、これらは、捕捉スポット、すなわち基板16のセンサ表面に結合される捕捉分子を有する基板16がある測定チャンバ15に導入される。表面へのビーズの運搬は、例えば流体フロー、撹拌又は磁界勾配の印加によって向上されることができる。
【0101】
2.ターゲット分子に付着される第1のビーズ1は、それらの捕捉分子への結合によって、センサ表面に固定される。この実施例の変更例は、生理活性分子間の相互作用のさまざまな異なる強度を有するさまざまな異なる捕捉スポットを、バイオチップ16上に設けることである。従って、弱い生体分子相互作用を有する捕捉スポットについていくぶん低い磁気モーメントを有する第1のビーズ1と、強い相互作用を有する捕捉スポットについていくぶん高い磁気モーメントを有する第1のビーズ1と、を選択するのが有利でありうる。
【0102】
3.より大きい磁気モーメントを有する第2のビーズ2が、バルブ2及びポンプ13の動作によって、ソース10から供給される。第2のビーズは、任意には、第1のビーズ1より大きいサイズでありうる。第2のビーズ2は、第1のビーズ1が固定されるセンサ表面に向かって移動される。移動は、磁力によって促されることができ、例えば、例えば1又は複数の永久磁石又は電磁石のような磁界発生器14によって生じさせられる。更に、液体のフローが、バルブ3及びポンプ13の動作によって、ソース12から供給されることができる。第2のビーズ2の軌道の最適な制御のために、磁力及びセンサ表面上の流体の強制されるフローが、好適に、考慮され、同調されるべきである。
【0103】
4.第2のビーズ2が、第1のビーズ1に近づくと、第1のビーズ1は、第2のビーズ2の方へ引っ張られる磁力を経験する。弱く結合された第1のビーズ1は、センサ表面から分離し、第2のビーズ2の方へ引き寄せられ、第2のビーズ2に磁気的に付着することになる。センサ表面に強く結合される第1のビーズ1は、センサ表面上にとどまる。
【0104】
5.第1のビーズ対第2のビーズの複合体が、磁気吸引により形成されるが、2つのビーズの複合体が、センサ表面から直ちには離れないということが起こりうる。その場合、例えば形成された複合体を表面から引き離す磁界勾配、センサ表面に沿ってせん断力を生成するせん断流動、超音波励起等の、付加の励起が、表面から複合体を除去するために適用されることができる。これらの励起は、表面に弱く結合されている第1のビーズの複合体を除去する。
【0105】
6.第1のビーズ1が付着された又は付着されていない第2のビーズ2は、例えばソース12中の流体を使用する洗浄によって、センサ表面から出口19に移動される。その結果、最初にセンサ表面に弱く結合された第1のビーズ1は、センサから除去される。
【0106】
7.捕捉分子に付着されたままである第1の磁性ビーズ1は、任意の適切な技法によって、例えば基板16の下に配置された、センサ回路18を使用する磁気センサ17によって、検知されることができる。第1のビーズ1が、例えば染料又は蛍光物質のような光学活性材料によってマークされている場合、第1のビーズ1の存在は、光学的に検出されることができる。第1のビーズ1が、電気化学ポテンシャルを変更し又は電気化学的電荷移動を可能にする材料によって、マークされる場合、第1のビーズの存在は、適切な電極を使用することによって検出されることができる。ビーズが、放射性物質を含む場合、それらは放射性放出物によって検出されることができる。
【0107】
上述のシーケンスは、第2のビーズ2の同じ組により数回繰り返されることができる。方法は、ウェルプレート(例えばマイクロタイタープレート)又はマイクロフルイディックカートリッジに適用されることができる。ウェルプレートは、ロボット化された高スループットアプリケーションに非常に適している;カートリッジは、センサ周辺における流体ミニチュアライゼーション及び高度な機能集積化を可能にする。
【0108】
第2の実施例
図2に概略的に示される本発明の第2の実施例により、それぞれが生理活性分子に結合される2つのビーズ1、2が使用される。ビーズ1、2は、任意には、同じ磁気モーメントを有する。1つの実験的な構成において、2つのビーズ1、2は、それぞれターゲット分子T及び捕捉分子Cに結合されることができる。代替の構成において、2つのビーズ1、2は、捕捉分子C(図3を参照)の異なる一部に結合する2つの異なるターゲット分子T1、T2に結合される。例えば、2つの異なるターゲット分子T1、T2は、捕捉分子である同じ抗原の異なるエピトープに向けられる抗体でありえ、それぞれがモノクローナル又はポリクローナル抗体でありえる。
【0109】
双方の構成において、表面上にコーティングされ又は溶液中にある捕捉分子Cは、ビーズが結合されたターゲット分子T1、T2の一方又は両方と接触され、それらの個々の結合部位又はエピトープに結合する。しかしながら、ビーズ1、2の他の組み合わせが、非特異的結合により生成されることもできる。その磁気ベクトルの急速に変化する方向を有する磁界の印加Mは、例えば瞬間的な磁界が、2つのビーズに接続する軸に対して垂直であるか又は平行であるかに依存して、2つのビーズ1、2間の磁気反発又は吸引をもたらす。2つのビーズ1、2の磁気モーメントのサイズ及び変化する磁界Mの大きさは、ターゲット分子T1、T2の一方又は両方が特異的に結合されない場合に、引力及び斥力が、その分子T1、T2の除去をもたらし、すなわち、ビーズ間の相互作用が崩壊されるように、選択される。更に、2つのビーズ1、2の磁気モーメントのサイズ及び変化する磁界Mの大きさは、1又は複数のターゲット分子T1、T2が特異的に結合される場合、例えば2つのポリクローナル又はモノクローナル抗体がそれらの個々のエピトープに特異的に結合される場合、それらが除去されないように、選択される。互いに近傍にあるビーズ1、2の存在は、例えば光学的に、検出されることができる。近傍にある2つのビーズの組み合わせは、2つの選択的結合が存在する場合にのみ、例えば2つの抗体結合及び変化する磁界の印加によるストリンジェンシーの制御により、生じうるという事実により、密接に結合されたビーズ1、2の存在は、捕捉分子Cの存在の明白な標示となる。特に、ポリクローナル抗体が使用されるとき、非特異的結合の機会又は他のエピトープに対するクロス反応が増加され、変化する磁界、ゆえに結合に対する力の印加は、所望の結合ほど特異的ではない結合を除去するために使用されることができる。このように、ターゲット分子T1、T2として2つの結合された抗体を使用する場合、抗原(捕捉分子C)の特異的な検出は、精製されたモノクローナル抗体を必要とすることなく、すなわち高レベルの特定性を必要とすることなく、得られることができる。
【0110】
磁界は、引力をもたらすことができ、すなわち2つのビーズ1、2を互いに対して押すことができ、又は反発的であってもよく、すなわち2つのビーズ1、2を互いから引き離すことができる。双方のビーズ1、2が、ターゲット分子T1、T2及び捕捉分子Cを介して互いに結合されるとき、それらは互いに非常に近付いており、2つのビーズの軸に対して垂直な磁界が生成されるとき、ビーズ1、2は互いに反発しあう。磁性ビーズ1、2は、磁界中で整列し、初めは流体中で概してランダムな向きを有する傾向があるので、磁界は、斥力を得るように絶えず変更されなければならない。磁気ベクトルの方向の変更は、回転磁界によって、例えば、3次元において急速に回転し又はランダムに又は擬似ランダムに移動する磁界を生成するように、コイルの交流電流の位相及び大きさを制御するための電流コントローラと互いに直交する3つのコイルを設けることによって、果たされることができる。この磁界は、両方のビーズ1、2の磁気モーメントの向きを生成するのに十分な大きさでなければならず、好適には、ビーズの磁気モーメントを飽和させる大きさである。必要な磁界Mは、粒子のタイプ(例えば超常磁性、強磁性体、球状又は非球状ビーズ)に依存する。2つの磁性ビーズ1、2間の双極子相互作用の位置エネルギーUは、次式によって与えられる:
【数5】

ここで、

は、それぞれのビーズの磁気モーメントを表し、rは、それぞれビーズのコア間の距離である。
【0111】
ビーズ対ビーズの力Fは、エネルギーの勾配によって与えられる:
【数6】

【0112】
磁力は、ビーズのモーメントの相対的な向き(外部印加磁界によって影響される)及びビーズからビーズへの軸に依存する。ビーズのモーメントが、相互にそろえられ、ビーズからビーズまでの軸に対して垂直に向くとき、次式の大きさの互いの反発力がある:
【数7】

【0113】
ビーズのモーメントが、相互にそろえられ、双方ともビーズからビーズまでの軸と平行に向くとき、次式の大きさの互いの引力がある:
【数8】

【0114】
上述の実施例は、身体から捕捉分子の除去を必要とするアッセイのために使用されることができる。一例は、口腔からのタンパク質の取り出しである。第1の磁性ビーズによってラベリングされたターゲット分子T1は、口腔に入れられ、口腔内のタンパク質と複合することが可能にされる。これらの複合体は、ビーズの全てを集めるために、磁石を使用して口腔から取り出される。他のターゲット分子T2によってラベリングされた第2の磁性ビーズが、回収された第1のビーズに加えられ、2つのビーズ間の複合体が、作られることができる。急速に回転する磁界が、互いにしっかりと結合されていない第1のビーズと第2のビーズとの複合体を崩壊させるために印加される。双方のビーズの残りの複合体は、特異的結合を有する。残りの第1及び第2のビーズの複合体の存在は、任意の適切な手段によって、例えば光学的に、決定されることができる。
【0115】
第3の実施例
本発明の第3の実施例によれば、2つのビーズ1、2が使用され、それらの一方だけが、磁気モーメントを有する。図4を参照されたい。2つの生理活性分子C、T間の非特異的結合は、(1)液体のフローFに非磁性ビーズ2をおくことによって、1つの分子(C又はTであるが、図4には捕捉分子Cとして示されている)に付着される非磁性ビーズ2上に生成される流体力と、(2)磁界勾配MGの印加によって他の分子に付着される磁性ビーズに作用する反対の磁力と、の組み合わせによって崩壊される。このアプリケーションは、例えばマイクロアレイのような固形基質に捕捉分子Cを付着させる必要なく、溶液中で本発明を実施することをも可能にする。
【0116】
非磁性ビーズは、商業的に入手可能である。例えば固体又は半固体材料のような任意の適切な非磁性体が、使用されることができる。例は、ラテックス、ポリスチレン、架橋デキストラン、メチルスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、セルロース、ポリアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドを含む。
【0117】
例えば、非磁性ビーズ2が0.5μmの半径を有し、流体が、η=1.10−3Pa.sの粘性を有する水であり、水流vが約1mm/sである場合、9.4pNの流体摩擦力が、非磁性ビーズ2に与えられる。磁性ビーズ1がm=1.10−15Amであり、磁界勾配MGが、dB/dz=1.10T/mである場合、10pNの磁力が、磁性ビーズ1に与えられる(磁性ビーズが取るに足らないほど小さく、流体フローによる影響を受けないと仮定する)。このように、ビーズ1の磁気モーメント、磁性及び非磁性ビーズ1、2の大きさ及び液体のフローをマニピュレートすることによって、反対に作用する流体力及び磁力がバランス状態にあるという状況が生成されることができる。生理活性分子T、C間の結合が強い(例えば特異的である)場合、複合体は、液体のフロー中の同じ位置にとどまる。弱い(例えば非特異的な)結合の場合、結合は、反対の力によってもたらされる引張力によって崩壊され、生理活性分子C、Tは、磁界に沿って移動し、又は液体のフローによって浮遊する。
【0118】
このアッセイは、また、生物学的な細胞、ウィルス又は例えばリポソーム又はベシクルのような他の生物体によって実施されることができる。これらの生物体は、圧縮又は伸張のストレス下に置かれる生物学的な複合体の一部でありえ、又は生物体それ自体が、第2のビーズとして機能することができる。それゆえ、本発明の見地によれば、ビーズを使用する必要はなく、生物体を含む任意の適切な粒子が使用されることができる。
【0119】
液体のフロー中の結合された捕捉及びターゲット分子C,Tの複合体の正確な位置は、例えば光学的に決定され又は測定されることができる。1つの例は、装置の特定の位置におけるビーズの存在を光学的に検出することを可能にする磁性及び/又は非磁性ビーズ上での発色団基の使用である。フロー及び/又は磁界は、流体フロー中の固定の位置に複合体を保つために、又は特定の方向に特定のスピードで複合体を移動するために、適応化されることができる。この実施例の場合、特異的な結合により捕捉−ターゲット分子の複合体を精製し、及び/又は濃縮することが可能である。
【0120】
代替例として、システムは、磁性及び非磁性ビーズ1、2に結合される捕捉及びターゲット分子C、Tを有するサンプルを分別するために使用されることができる。選択される大きさにより、大きい非磁性ビーズは、より小さい磁性ビーズ1より大きい流体力を経験する。サンプルを、結合されたターゲット及び捕捉分子C、Tと接触させたのち、結合された及び結合されていないターゲット分子を引き寄せる磁界勾配が印加され、他の分子は、所定の位置にあるままであり、除去されることができる。そののち、増加する反対の流体力が適用されると、第1に、非特異的な捕捉−ターゲット結合が崩壊され、捕捉分子が、フローによって除去され、第2に、特異的に結合された複合体は、フローによって除去され、結合されていないターゲット分子は、磁界によって引き寄せられたままである。
【0121】
この実施例の変形されたバージョンにおいて、各々が非磁性ビーズのさまざまな異なる大きさを有するさまざまな異なるタイプの捕捉分子が使用される。フローレート及び/又は磁界は、非磁性ビーズの大きさに従ってターゲット−捕捉分子複合体を分離するために、マニピュレートされる。
【0122】
結合された分子の上述の識別及び/又は精製は、流体フロー及び磁界が生成されることができるいかなるシステムにおいても実施されることができる;磁界は、外部的に又は内部的に(例えばコイル又は磁性体)生成されることができる。例えば米国特許5,866,345号明細書に記述されるようなメソスケールフローシステムを使用して、サンプルのボリュームは、マイクロリットルレンジにまで下げられ、検出領域ボリュームは、1nlにまで下げられることができる。
【0123】
第3の実施例の具体例
マイクロフルイディックデバイスとして実現されることができる第3の実施例の具体例が、図6を参照して記述される。磁気流体ボトルが、ゾーン28に提供される。ソース20からの流体は、例えば制御可能なポンプ21によって、ゾーン27、28、29を通って流れ、30から出るようにされる。ゾーン27及び29は、ゾーン28のフローレートと比較して、それぞれフローを増加させ、減少させるように形作られる。磁界勾配は、例えば1又は複数の永久磁石又は電磁石のような適切な磁界発生器24によって、ゾーン27−29に与えられる。磁界は、図6の左の方へ磁性ビーズを引き寄せる。ソース20からの液体のフローは、図6の右の方へビーズを追いやる傾向がある。第1の磁性ビーズ1(一般には大きさが第2の非磁性ビーズ2より非常に小さい)は、ターゲット分子によりラベリングされ、捕捉分子によりラベリングされた第2の非磁性ビーズ2と接触される。結果は、ビーズ1、2の混合物であり、それらの一部は、生体分子結合によって互いに結合される。力が均衡するとき、少なくとも1つの生体分子を介して互いに接続される第1及び第2のビーズの組み合わせは、例えばそれらが光学的又は磁気的システムのような適切な検出システムによって検出されることができるゾーン28において、静止したままである。ビーズ及び生体分子の混合物は、例えば25においてゾーン27へ注入される。最初に、ソース20からの液体のフローは低くてもよく、又は液体は静止していてもよい。磁界勾配の効果は、図6の左の方に第1の磁性ビーズ1を引っ張ることができる。ビーズ1、2が遠くに行き過ぎることを防ぐために、任意のフィルタ23が設けられることもできる。ポンプ21が、フローレートをゆっくり高めるように作動される。最初に、第1のビーズ1に結合されない非磁性ビーズ2及びその他の残りのものは、出口30を介してシステムから押し流される。ビーズ1、2の組み合わせの流体力が、十分高いレベルに達すると、これらの組み合わせは、右の方へ移動する。それらがゾーン29に入る場合、フローレートは減少し、磁界勾配によって生成される力が、ビーズが出口30に達しないように制御する。フローレートがわずかに低すぎる場合、磁界勾配は、図6の左の方へビーズ組み合わせ1、2の一部を移動させる傾向がある。しかしながら、より高いフローレートが、ゾーン27にあるとき、流体力は、組み合わせが遠くに行かないように制御する。結果は、ビーズ1、2の結合された組み合わせが流体磁気ボトル28にトラップされることである。ここで、ビーズ1及び/又はビーズ2の間の結合は、反対の磁力及び流体力によってもたらされる応力下におかれる。結合が非特異的である場合、結合は崩壊され、第1の磁性ビーズ1は、フィルタ23に向かって移動し、非磁性粒子は、システムから押し流される。それゆえ、流体磁気ボトル28にとどまるビーズの組み合わせは、特異的結合を有する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の一実施例によるマイクロアレイの詳細を示しており、第2の磁性ビーズ(2)が、ターゲット分子に結合される磁性ビーズ(1)への引力を及ぼす図。
【図2】本発明の実施例により捕捉分子に結合されるターゲット分子を表しており、第2のビーズ(2)が、磁性ビーズ(1)に斥力を及ぼし、1つのターゲット分子が捕捉分子に結合されている図。
【図3】本発明の実施例により捕捉分子に結合されるターゲット分子を表しており、第2のビーズ(2)が、磁性ビーズ(1)に斥力を及ぼし、2つのターゲット分子が捕捉分子に結合されている図。
【図4】本発明の実施例により捕捉分子に結合されるターゲット分子を表しており、第2のビーズ(2)が、磁性ビーズ(1)に斥力を及ぼし、第2のビーズ(2*)が、非磁性ビーズであり、斥力が、磁気力及び流体摩擦力(*によって示される)である図。
【図5】図1又は図2の方法を実施することが可能な本発明の実施例による装置の概略図。
【図6】図4の方法を実施することが可能な本発明の別の実施例による装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の微生物学的なエンティティの間の結合のそれぞれ異なる強度を区別するための、磁界中における第1及び第2の粒子の使用であって、前記第1及び第2の粒子のうち少なくとも一方が磁性であり、前記使用が、
前記液体中で移動可能な前記第1の粒子と第1の微生物学的なエンティティとの間の複合体を与えるステップと、
前記第1の微生物学的なエンティティと第2の微生物学的なエンティティとの間の結合のための前記液体内の条件を与えるステップと、
前記液体中で移動可能な第2の粒子を前記複合体に近づけるステップと、
第1の強度の結合を崩壊させ、より大きい第2の強度の結合を崩壊させないように磁界を印加しつつ、前記第1及び前記第2の微生物学的なエンティティの間の前記結合に機械的応力を与えるように、前記第1及び/又は前記第2の粒子に作用するステップと、
を含む、使用。
【請求項2】
前記結合の強度の区別が、特異的結合と非特異的結合との間の識別のために使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記第1の微生物学的なエンティティがターゲット分子であり、前記第2の微生物学的なエンティティが捕捉分子である、請求項1又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の粒子の双方が磁性粒子である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記第1の粒子が、微生物学的なエンティティに結合され、前記第2の磁性粒子が、微生物学的なエンティティに結合されない、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の粒子の双方が、微生物学的なエンティティに結合される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記第1の粒子が、ターゲットの微生物学的なエンティティに結合され、前記第2の粒子が、捕捉の微生物学的なエンティティに結合される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記第1の粒子が、第1のターゲットの微生物学的なエンティティに結合され、前記第2の粒子が、第2のターゲットの微生物学的なエンティティに結合される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記第1及び/又は前期第2の磁性粒子が常磁性である、請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記第1の磁性粒子が、前記第2の磁性粒子の磁気モーメントより10倍小さい磁気モーメントを有する、請求項4乃至請求項9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記第1の磁性粒子のサイズは、前記第2の磁性粒子のサイズより小さい、請求項4乃至請求項10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記第1の磁性粒子が、1nm乃至1μmの直径を有し、より好適には10nm乃至200nmの直径を有する、請求項4乃至請求項11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記第2の磁性粒子が、少なくとも100nmの直径を有する、請求項4乃至請求項12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記第1又は前記第2の微生物学的なエンティティがアレイ上の捕捉スポットに配される、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記第1及び前記第2の粒子のうち一方だけが磁性であり、他方の粒子が非磁性である、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記非磁性粒子が前記磁性粒子より大きい、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
流体摩擦力を、前記第1又は前記第2の微生物学的なエンティティに与えるステップを更に含む、請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
微生物学的なエンティティの間のそれぞれ異なる強度の結合を区別するためのツールであって、
少なくとも一方が磁性である第1の粒子及び第2の粒子と、
第1及び第2の微生物学的なエンティティの間の結合に機械的応力を及ぼし、それぞれ異なる強度の結合を区別するように、前記第1及び前記第2の粒子に作用する手段と、
少なくとも磁界発生器を有し、機械的応力を及ぼす手段と、
を有するツール。
【請求項19】
前記第1及び前記第2の粒子の双方が磁性であり、又は前記第1の粒子が磁性であって、前記第2の粒子が磁性でない、請求項18に記載のツール。
【請求項20】
前記第1及び/又は前記第2の粒子が微生物学的なエンティティに結合される、請求項18又は請求項19に記載のツール。
【請求項21】
前記微生物学的なエンティティが、タンパク質又はペプチドのような生理活性分子である、請求項18乃至請求項20のいずれか1項に記載のツール。
【請求項22】
前記機械的応力を及ぼす手段が、前記第1又は前記第2の粒子に流体摩擦力を及ぼす手段を有する、請求項18乃至請求項21のいずれか1項に記載のツール。
【請求項23】
基板上の捕捉スポットに配された微生物学的なエンティティのアレイを更に有する、請求項18乃至請求項22のいずれか1項に記載のツール。
【請求項24】
アレイに対する前記粒子の側方移動を促す励起を生成する手段を更に有する、請求項18乃至請求項23のいずれか1項に記載のツール。
【請求項25】
特異的に結合された生理活性分子の識別、分離、精製のための、請求項18乃至請求項24のいずれか1項に記載のツールの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−500346(P2007−500346A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521713(P2006−521713)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051213
【国際公開番号】WO2005/010527
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】