説明

生産システム

【課題】 セル生産方式を適用してロボットなどの自動機を有効に活用することができる生産システムを提供する。
【解決手段】 作業者X,Yとロボット5が必要により入れ替わって作業する3つのセル1,2,3をトライアングル状に配置し、これらセルとレール4で1ユニットとし、この1ユニットを単位として生産ラインを構成する。ロボット5は、3つのセル1,2,3の上方に架設された環状のレール4により、各セル1,2,3に移動して作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル生産方式により作業者とロボットなどの自動機が共同して作業する生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生産機種の変更や生産量の変動に柔軟に対応する生産手段としてセル生産方式が知られている。ここで、セル生産方式とは一般に、組み立て製造作業において、一人から数人の作業員が部品の取り付けから組み立て、加工、検査までの全工程を担当する生産方式のことで、セルと呼ばれる作業台などで作業を行う。
【0003】
セル生産方式を適用した生産システムとしては、特許文献1に示されるような、各種ワークに対する所定の作業を行う複数の作業セルと、これら作業セルの配置されたラインに沿った両方向でワークを各作業セル間に搬送する搬送手段と、作業セルごとに接続され搬送手段に搬送されるワークを選別して作業セルに供給しかつ作業セルにおいて作業終了後のワークを搬送手段に送り出す選別手段と、ワークの搬送及び作業順序に従って各選別手段で選別するワーク及び作業終了後のワークの搬送方向の指令を各選別手段に対して発する生産制御手段を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−138510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の生産システムにあっては、ロボットなどの自動機を各セルに導入して自動化を図る場合、作業員が作業している間は自動機が稼働することができず、逆に自動機が稼働している間は作業員が作業することができないため、効率よくロボットなどの自動機を稼働させることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、セル生産方式を適用してロボットなどの自動機を有効に活用することができる生産システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明に係る生産システムは、作業者と自動機が入れ替わって作業ができる3つのセルをトライアングル状に配置し、これら3つのセルに対し環状レールを介して前記自動機が循環移動可能とされている。
【0008】
1つのユニット内では作業者と自動機が必要により入れ替わって作業できればよいため、前記環状レールの配置箇所は床面またはセルの上方のいずれでもよい。また、環状レールの形状は平面視でトライアングル状でなく単純な円でもよい。
【0009】
実際の生産ラインを構築する場合には、前記3つのセルと1つの環状レールとで1ユニットとし、このユニットをその向きが交互になるように複数個連接して生産ラインとする。
【0010】
上記において、連接するユニットの向きが交互になるとは、例えば3つのユニットを連接する場合、平面視で両脇のユニット(環状レール)が三角形、中央のユニット(環状レール)が逆三角形となるように配置する。また、ユニットを連接するとは複数のユニットを略直線状に配列するとともに、各ユニット間にワークを受け渡すことが可能な程度のスペースを設けることを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3つのセルがトライアングル状に配置されているので、省スペース化が図れると共に、作業者は各セルへの移動がし易い。また、各セルに対して作業者と自動機が入れ替わることができるので、機種変更や生産量の変動に対応し易い。
【0012】
自動機を3つのセルに対して移動可能とすることで、作業者が特定のセルで作業している時は、自動機は別のセルで作業することができ、自動機を有効に活用しながらセル生産を行うことができる。
【0013】
特に、3つのセルと1つのレールで1ユニットとし、このユニット単位で増減可能とすることで、生産量の変動に対して容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る生産システムの概要説明図
【図2】ドア組立作業における作業者とロボットの作業分担と作業順序を示す図
【図3】1ユニット(3セル)による二人の作業者と一台のロボットによる作業分担を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る生産システムは、図1は増減の単位となるユニットを3つ連接した生産ラインを示し、1ユニットはトライアングル状の3つのセル1,2,3とこれらセルの上方に架設された環状のレール4からなる。
【0016】
この生産ラインにあっては、中央のユニットと両脇のユニットとはトライアングルの向きが逆になるように3つのセル1,2,3が配置され、隣接する各ユニットのレール4が平行になるように配置されている。
【0017】
各ユニットのレール4にはセル1,2,3で作業するロボット(自動機)5が移動可能に設けられている。また、1ユニットには二人の作業者X,Yが配置される。そして、二人の作業者X,Yと一台のロボット5は、互いに干渉することなく各セル1,2,3で作業を行うことができる。
【0018】
また、3つのセル1,2,3の間でワークを搬送する搬送コンベア6が環状に配設されている。この搬送コンベア6とロボット5が移動するレール4を兼用させてもよい。
【0019】
以上のように構成された本発明に係る生産システムの作用について説明する。例えば、ドア組立作業は、図2に示すように、ドアフレームが投入されてから完成ドアが払い出されるまで、ドア組立の作業内容と作業順序は、作業者による仮付け作業A→ロボット5による締付け作業B→作業者による取付けなどの作業C→ロボット5による締付け作業D→作業者による結線などの作業E→ロボット5による締付け作業F→作業者による品質検査作業Gである。
【0020】
このようなドア組立作業を3つのセル1,2,3で構成される1ユニットで行うと、図3に示すような作業分担になる。
【0021】
セル1では、ドアフレームが投入されると、作業者Xによる仮付け作業A→ロボット5による締付け作業B→作業者Yによる取付けなどの作業C→待機→ロボット5による締付け作業D→作業者Xによる結線などの作業E→待機→ロボット5による締付け作業F→作業者Yによる品質検査作業G、そして完成ドアが払い出される。
【0022】
また、セル2では、ドアフレームが投入されると、作業者Yによる仮付け作業A→待機→ロボット5による締付け作業B→作業者Xによる取付けなどの作業C→待機→ロボット5による締付け作業D→作業者Yによる結線などの作業E→待機→ロボット5による締付け作業F→作業者Yによる品質検査作業G、そして完成ドアが払い出される。
【0023】
また、セル3では、ドアフレームが投入されると、待機→作業者Xによる仮付け作業A→待機→ロボット5による締付け作業B→作業者Yによる取付けなどの作業C→待機→ロボット5による締付け作業D→作業者Xによる結線などの作業E→ロボット5による締付け作業F→待機→作業者Xによる品質検査作業G、そして完成ドアが払い出される。
【0024】
このように、各セル1,2,3がトライアングル状に配置されているので、省スペース化が図れると共に、二人の作業者X,Yは各セル1,2,3に容易に移動して各種作業を分担して行うことができる。また、各セル1,2,3に対してロボット5が移動自在なので、作業順序が異なるロボット5による3つの作業B,D,Fをロボット一台で効率よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、生産量の変動に対して柔軟に対応することができると共に、ロボットなどの自動機を有効に活用しながらセル生産を行うことができる生産システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
1,2,3…セル、4…レール、5…ロボット、6…搬送コンベア、A,B,C,D,E,F,G…作業、X,Y…作業者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者と自動機が入れ替わって作業ができる3つのセルをトライアングル状に配置し、これら3つのセルに対し環状レールを介して前記自動機が循環移動可能とされていることを特徴とする生産システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生産システムにおいて、前記3つのセルと1つの環状レールとで1ユニットとし、このユニットをその向きが交互になるように複数個連接して生産ラインを構成することを特徴とする生産システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生産システムにおいて、前記連接するユニット間で組み立てられたワークが受渡し可能とされていることを特徴とする生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−83871(P2011−83871A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239961(P2009−239961)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】