説明

生産プロセス進行中の自動車もしくは一部組み立てられた自動車のための搬送装置

本発明は、生産プロセス進行中の自動車または一部組み立てられた自動車のための搬送装置であって、搬送装置が自動車または一部組み立てられた自動車を受容するために形成されており、自動車または一部組み立てられた自動車が搬送装置により種々異なる作業ステーションに搬送されることができ、搬送装置に生産プロセス中連続的に電気エネルギが供給されることができるようになっている形式のものに関する。本発明により、搬送装置がターミナルを、搬送装置により搬送したい自動車または一部組み立てられた自動車の車載電源網の電気エネルギ供給のために有しており、ターミナルに、自動車または一部組み立てられた自動車の車載電源網が連結されることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の上位概念部に記載された形式の、生産プロセス進行中の自動車もしくは一部組み立てられた自動車のための搬送装置に関する。
【0002】
この種の搬送装置は公知である。在StuttgartのDuerr Automotion GmbH社によりこの種のシステムが提供されている。この公知のシステムでは種々異なる種類の搬送装置に電気エネルギが供給されることができる。このシステムは「MOVITRANS」の名称で知られており、とりわけ2003/2004年度版のカタログに掲載されている。その際、確かにワイヤ接続されているが、非接触式、すなわちコンタクトフリーに、個々の可動な搬送装置にエネルギならびに情報が伝送される。その際、搬送装置として懸垂軌道(Haengbahn)の車両受容装置が挙げられる。ただし、プッシュ式プラットホーム(Schubplattform)や「FTS(fahrerlose Transportsysteme:ドライバレス搬送システム)」であってもよい。その際、搬送装置は生産プロセス進行中の車両または一部組み立てられた車両を受容するために構成されている。この搬送装置により、車両もしくは一部組み立てられた車両は生産プロセス中個々の作業ステーションに搬送される。これらの作業ステーションで組み立て作業および/または検査作業が車両もしくは一部組み立てられた車両において実施される。システム「MOVITRANS」は例えばDuerr Automotion GmbH社の2003/2004年度版の製品カタログの第22頁〜23頁に記載されている。
【0003】
本発明の課題は、生産プロセス中の車両のフレキシブルな検査および構成の可能性を提案することである。
【0004】
上記課題は本発明により、搬送装置がターミナルを、搬送装置により搬送したい自動車または一部組み立てられた自動車の車載電源網の電気エネルギ供給のために有しており、ターミナルに、自動車または一部組み立てられた自動車の車載電源網が連結されることができ、ターミナルに、搬送装置の非接触式のエネルギ供給を介して、電気エネルギが供給されることにより解決される。
【0005】
これにより有利には、車両内で既に生産中車載電源電圧が利用可能であることが達成される。その結果、特に車両の電気的なコンポーネントおよび電子的なコンポーネント(例えば車両内の制御装置)の機能が既に生産中検査されることができる。
【0006】
有利には、エネルギ供給が、「循環している」エネルギ供給を生産ルーム内で、特にそこに可動に配置された搬送装置内で組織するいずれにしても存在するシステムを介して実施される。その結果、車両もしくは一部組み立てられた車両の外的なエネルギ供給のための付加的なコンタクト、レールおよびスライディングコンタクトは不要である。
【0007】
車載電源電圧は、車両が、車両バッテリを組み付けてコンタクト形成する作業ステーションを通走したときにも利用可能である。ただし、本発明により有利には、電気的なコンポーネントにおける検査作業によりバッテリに負担がかかることがなくなる。その結果、既に生産プロセス中にバッテリがかなり放電してしまうことはなくなる。
【0008】
このことは特に、車両内の電気的なコンポーネントの割合の増加と、これに由来する必要な検査作業の増加とに関して有利であることが判っている。車両が搬送装置に存在しているときに、車両に既に外的に車載電源電圧が供給され得ることにより、電気的なコンポーネントにおける検査作業は有利には既に生産進行中に行われることができる。
【0009】
特に、所定の機能範囲のために必要なすべてのコンポーネントが当該の作業ステーションで組み付けられ、コンタクト形成されたとき、検査作業を時間的に至近に実施することが可能になる。その際、欠陥が認識されれば、欠陥除去は有利には少なくともなお当該の作業ステーションにおいて、欠陥除去が限定的な手間で済むときに実施されることができる。それにより、車両が欠陥除去のために生産プロセスから除外されなければならない事態は回避されることができる。
【0010】
請求項2記載の構成では、ターミナルが制御ユニットによりアクティブ化可能ならびに非アクティブ化可能である。
【0011】
これにより有利には、その都度の作業ステーションにおける組み立て作業に基づいて、相応の作業員の安全のためにまたは電気的なコンポーネントにおける損傷の回避のために必要とされるときに、車載電源電圧を取り除くことが可能になる。相応の組み立て作業が終了すると、外的な電気エネルギ供給は再びアクティブ化されることができる。
【0012】
請求項3記載の構成では、制御ユニットが中央のホストコンピュータである。
【0013】
搬送装置への情報伝達はローカルなネットワークにより実現されていることができる。このことは例えば、背景技術との関連で述べた「MOVITRANS」により実施されることができる。つまり、所定の作業ステーションの到着時に、ホストコンピュータにより、車両のエネルギ供給のための、搬送装置に設けられたターミナルが非アクティブ化されるようにプリセットされることができる。
【0014】
請求項4記載の構成では、制御ユニットが移動式の制御装置であり、移動式の制御装置が取り外し可能に搬送装置に、または搬送装置に存在する自動車または一部組み立てられた自動車に固定されることができ、移動式の制御装置に、搬送装置を介して、電気エネルギが供給されることができる。
【0015】
有利には、移動式の制御装置に、搬送装置に設けられたターミナルとは独立的に、車両の車載電源を介して電気エネルギが供給されることもできる。これにより、仮に車両への外的な電気エネルギ供給が非アクティブ化されていても、移動式の制御装置にはなお電気エネルギが供給されることができる。つまり、移動式の制御装置の機能は、車両に外的に電気エネルギが供給されないときにも維持される。
【0016】
車両の外的な電気エネルギ供給の、移動式の制御装置によるアクティブ化および非アクティブ化は、車両の外的な電気エネルギ供給の、中央のホストコンピュータによるアクティブ化および非アクティブ化の可能性に対して択一的にまたは付加的に企図されることができる。
【0017】
中央のホストコンピュータではなく、移動式の制御装置のみを介したアクティブ化可能性および非アクティブ化可能性が企図されているのであれば、相応の機能は分散されている。
【0018】
外的な電気エネルギ供給のアクティブ化および非アクティブ化の付加的な可能性が企図されているのであれば、例えば、ホストコンピュータによりまず、ある作業ステーションの到達時に、相応の組み立て作業を実施することができるように、外的な電気エネルギ供給を非アクティブ化する可能性が存在する。例えば移動式の制御装置との作業員の相応のダイアログにより確定されることができる、相応の組み立て作業の終了後、移動式の制御装置により、例えば今まさに組み立てられたコンポーネントの機能性に関する相応の検査作業を実施することができるように、外的な電気エネルギ供給を再びアクティブ化する可能性が存在する。
【0019】
請求項5記載の構成では、移動式の制御装置が車両側の診断コネクタにコンタクト形成されることができる。
【0020】
これにより例えば、移動式の制御装置が生産プロセス前に、どの機能範囲を、生産したい車両において実現すべきかを学習する可能性が存在する。この機能範囲に応じて、車両内の相応の制御装置のためのソフトウェアが診断コネクタを介して移動式の制御装置からロードされることができる。相応に、車両側の診断コネクタとのコンタクト形成を介して、相応の検査作業が生産プロセス中行われることができる。
【0021】
請求項6記載の構成では、移動式の制御装置が取り外し可能に搬送装置に、または搬送装置に存在する自動車または一部組み立てられた自動車に固定されることができ、移動式の制御装置に、搬送装置を介してまたは車両の車載電源網を介して、電気エネルギが供給されることができ、移動式の制御装置が車両側の診断コネクタにコンタクト形成されることができる。
【0022】
請求項4および請求項5記載の構成とは異なり、ここでは、車両の外的な電気エネルギ供給のための、搬送装置のターミナルが、移動式の制御装置によりアクティブ化可能もしくは非アクティブ化可能でない。その他の点で機能形式は前記説明と同一である。
【0023】
請求項7記載の構成では、搬送装置が、ホストコンピュータとのワイヤ接続式の情報交換のためのネットワークの構成部分である。移動式の制御装置は、組み付けられた状態で、やはりワイヤ接続式の情報交換のためのネットワークの構成部分である。
【0024】
これにより、移動式の制御装置とホストコンピュータとの間の情報交換の可能性が提供されている。例えば、実施された検査作業の結果は移動式の制御装置からホストコンピュータに伝送されることができる。ホストコンピュータからは、最新のソフトウェアバージョンが移動式の制御装置に伝送されることができる。このことは有利には移動式の制御装置が生産プロセス進行中に使用されていないときに実施されることもできる。ワイヤ接続されたネットワークは例えば冒頭で述べた「MOVITRANS」システムであることができる。
【0025】
請求項8記載の構成では、移動式の制御装置が、ホストコンピュータまたは別の固定式の制御コンピュータまたは移動式の制御コンピュータとのワイヤレス式の情報交換のための送受信ユニットを装備している。この別の制御コンピュータは例えば生産ラインにおける検査ステーションまたは作業員のハンディターミナルであることができる。
【0026】
移動式の制御装置の完全な性能範囲が企図されるならば、移動式の制御装置はつまり移動式の検査/構成コンピュータである。その際、構成(Konfigurierung)は、車両の装備範囲に応じて相応のソフトウェアが移動式の制御装置により車両に伝送され、相応の機能が車両内で解放されることにより実施される。このことは、ハードウェアおよび必要な構成部分の所定の装備範囲が組み込まれており、この構成部分の機能が相応の制御装置によりソフトウェア側で解放される車両バリエーションに関する。
【0027】
移動式の制御装置を搬送装置もしくは車両もしくは一部組み立てられた車両に取り外し可能に固定することにより、移動式の制御装置は有利には、欠陥が認識されたために、車両が進行中の生産プロセスから除外されなければならないとき、車両にとどまることができる。移動式の制御装置は有利には車両に配置されることができる。その結果、例えば欠陥除去後、車両の、生産プロセスへの問題のない再編入が可能である。それというのも、移動式の制御装置内に、車両がどの装備範囲を有しているべきであるかが格納されているからである。これにより、除外後に欠陥が除去されたとき、再編入前の広範な特別な処理は不要である。車両は問題なく再び生産プロセスに組み込まれることができる。
【0028】
図面には搬送装置1が示されている。搬送装置1には車両2が取り付けられている。搬送装置1により、車両2は矢印の方向で、生産プロセス中種々異なる作業ステーションに到達し得るように搬送されることができる。
【0029】
個々の作業ステーションでは組み立て作業ならびに検査作業が行われることができる。搬送装置1の懸架装置を介して、搬送装置1に設けられたターミナル3に電圧が供給されることができる。ターミナル3には、車両2の搭載電源網が、図示のケーブル4により接続されることができる。
【0030】
搬送装置1のターミナル3は有利には、それを介して車両2の外的な電気エネルギ供給を断続するもしくはON/OFFすることができるように起動制御されることができる。
【0031】
ターミナル3は第一にホストコンピュータ5を介して起動制御可能であることができる。このために、搬送装置1には懸架装置を介して電気エネルギだけが供給されることができるわけではない。さらに、情報交換のためのワイヤ接続が設けられている。ホストコンピュータ5と搬送装置1(ひいてはターミナル3)との間のワイヤ接続を介して、車両2の外的な電気エネルギ供給は断続可能であるもしくはON/OFF可能であることができる。
【0032】
さらに、ターミナル3は択一的にまたは付加的に移動式の制御装置6を介して起動制御可能であることができる。このオプションは破線11で示されている。移動式の制御装置6にはやはり搬送装置1の懸架装置を介して、かつ択一的には車両7の車載電源網を介して電気エネルギが供給されることができる。やはり、この移動式の制御装置はワイヤ接続式の情報交換を介してホストコンピュータ5に接続されていることができる。この情報交換を介して、移動式の制御装置6には例えば車両2の制御装置のための最新のソフトウェアバージョンが供給されることができる。
【0033】
移動式の制御装置6は取り外し可能に搬送装置1に取り付けられている。検査ステップで機能障害が認識され、そのためにその車両が除外されるとき、移動式の制御装置6は有利には車両2にとどまることができる。認識された欠陥についての情報が記憶されているので、欠陥除去は有利には簡単化されることができる。さらに、移動式の制御装置6では、どのコンポーネントが車両に既に組み込まれており、どの範囲まで既に、必要なソフトウェアがロードされたかについての情報が利用可能である。これにより、車両はやはり簡単に再び生産プロセスに組み入れ可能である。
【0034】
移動式の制御装置6を起点として車両2の診断コネクタ8に通じる接続線路7が見て取れる。この診断コネクタ8を介して、移動式の制御装置6により、相応の検査ステップが主導され、監視されることができる。さらに、この診断コネクタを介してソフトウェアが移動式の制御装置6から車両の相応の制御装置にロードされることができる。特に、移動式の制御装置6がターミナル3に働かないとき、接続線路7は、それを介して車両2の車載電源網にも外的に移動式の制御装置6により主導されて電気エネルギが供給され得るように構成されていることができる。
【0035】
さらに、移動式の制御装置6もホストコンピュータ5も送受信ユニット9,10を備えて構成され得ることが見て取れる。さらに、移動式の制御装置6とホストコンピュータ5との間の、または例えば生産ラインの検査ステーションのような別の制御コンピュータとの、または作業員のハンディターミナルとのワイヤレス通信が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】搬送装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産プロセス進行中の自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)のための搬送装置(1)であって、搬送装置(1)が自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)を受容するために形成されており、自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)が搬送装置(1)により種々異なる作業ステーションに搬送されることができ、搬送装置(1)に生産プロセス中連続的にかつ非接触式に電気エネルギが供給されることができるようになっている形式のものにおいて、搬送装置(1)がターミナル(3)を、搬送装置(1)により搬送したい自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)の車載電源網の電気エネルギ供給のために有しており、ターミナル(3)に、自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)の車載電源網が連結されることができ(4)、ターミナル(3)に、搬送装置(1)の非接触式のエネルギ供給を介して、電気エネルギが供給されることを特徴とする、生産プロセス進行中の自動車もしくは一部組み立てられた自動車のための搬送装置。
【請求項2】
ターミナル(3)が制御ユニット(5,6)によりアクティブ化可能ならびに非アクティブ化可能である、請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
制御ユニット(5,6)が中央のホストコンピュータ(5)である、請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
制御ユニット(5,6)が移動式の制御装置(6,11)であり、移動式の制御装置(6,11)が取り外し可能に搬送装置(1)に、または搬送装置(1)に存在する自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)に固定されることができ、移動式の制御装置(6)に、搬送装置(1)を介してまたは車両の車載電源網を介して、電気エネルギが供給されることができる、請求項2または3記載の搬送装置。
【請求項5】
移動式の制御装置(6)が車両側の診断コネクタ(8)にコンタクト形成されることができる(7)、請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
移動式の制御装置(6)が取り外し可能に搬送装置(1)に、または搬送装置(1)に存在する自動車(2)または一部組み立てられた自動車(2)に固定されることができ、移動式の制御装置(6)に、搬送装置(1)を介してまたは車両の車載電源網を介して、電気エネルギが供給されることができ、移動式の制御装置(6)が車両側の診断コネクタ(8)にコンタクト形成されることができる(7)、請求項1から3までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項7】
搬送装置(1)が、ホストコンピュータ(5)とのワイヤ接続式の情報交換のためのネットワークの構成部分であり、移動式の制御装置(6)が、組み付けられた状態で、やはりワイヤ接続式の情報交換のためのネットワークの構成部分である、請求項4から6までのいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項8】
移動式の制御装置(6)が、ホストコンピュータ(5,10)または別の固定式の制御コンピュータまたは移動式の制御コンピュータとのワイヤレス式の情報交換のための送受信ユニット(9)を装備している、請求項4から7までのいずれか1項記載の搬送装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−501148(P2007−501148A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522228(P2006−522228)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001762
【国際公開番号】WO2005/014375
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(305002796)デュール アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Duerr Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Otto−Duerr−Strasse 8, 70435 Stuttgart, Germany
【出願人】(399008999)ダイムラークライスラー アクチエンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】DaimlerChrysler AG
【Fターム(参考)】