説明

生産ラインシステム

【課題】冷却インターロック機構が作動しても、冷却対象の冷却を継続して行うことができるエネルギー効率の高い生産ラインシステムを提供すること。
【解決手段】生産ラインシステム10において、ヒートポンプ20の冷却側では、冷却系を循環する冷水で切削液を冷却し、冷水をヒートポンプ20により冷却し、冷水が所定の冷却下限値以下になって冷却インターロックがONになった場合、ヒートポンプ20による冷水の冷却を停止し、切削液の冷却要求があるときは、冷水ポンプ32を作動させて冷水を冷却系に循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルを利用して少なくとも冷却対象を冷却する冷却処理工程を含む生産ラインシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエネルギーの有効活用という点でさまざまな技術が開発されてきたが、近年さらに環境問題を踏まえた省エネルギー化が求められている。そのため、エネルギー効率の高い生産ラインシステムの要望が高まっている。そこで、エネルギー効率を高めるために、加熱対象と冷却対象の熱を交換して加熱と冷却を同時に行うヒートポンプを利用した生産ラインシステムが提案されている。
【0003】
この種の生産ラインシステムとして、例えば、特許文献1に記載された塗装乾燥装置がある。この塗装乾燥装置では、温風生成用の加熱媒体の加熱と冷風生成用の冷却媒体の冷却をヒートポンプで一括して行い、工場の排温水や別個のヒートポンプの温水あるいは各炉の排気等(冷却側加熱媒体)と冷却媒体とで熱交換を行うようになっている。そして、冷却側加熱媒体の冷媒への適用により加熱量に応じた過冷却を防止することができ、極めて効率の良い安定したヒートポンプの動作を確保するようになっている。
【0004】
ここで、上記した装置を含め、一般的にヒートポンプでは、冷却対象を冷却するための冷却媒体温度が設定値以下になると、ヒートポンプ内に備わる熱交換器の凍結防止のために、ヒートポンプサイクルによる冷却対象の冷却を強制的に停止させる機構(冷却インターロック機構)が設けられている。そして、冷却媒体温度が規定値まで上昇すると、ヒートポンプサイクルによる冷却対象の冷却が再開されるようになっている。なお、冷却インターロック機構が作動しても、加熱要求に応じてヒートポンプサイクルによる加熱対象の加熱は行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−151437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の装置を含め、冷却インターロック機構が設けられている装置では、冷却インターロック機構が作動すると、冷却対象の冷却要求があっても、冷却媒体の温度が規定値に上昇するまでは、ヒートポンプサイクルによる冷却対象の冷却が行われないという問題があった。そのため、冷却対象の冷却を効率的に行うことができなかった。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、冷却インターロック機構が作動しても、冷却対象の冷却を継続して行うことができるエネルギー効率の高い生産ラインシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一形態は、冷却対象をヒートポンプサイクルにより冷却する冷却処理工程を少なくとも有する生産ラインシステムにおいて、前記冷却処理工程では、冷却系を循環する冷媒で前記冷却対象を冷却し、前記冷媒を前記ヒートポンプサイクルで冷却し、前記冷媒が所定の下限値以下になった場合、前記ヒートポンプサイクルによる前記冷媒の冷却を停止し、前記冷却対象の冷却要求があるときは、前記冷媒を前記冷却系に循環させることを特徴とする。
【0009】
この生産ラインシステムでは、冷媒が所定の下限値以下になった場合、ヒートポンプサイクルによる冷却処理工程を停止する。つまり、冷却インターロック機構を作動させて、ヒートポンプサイクルでの熱交換による冷媒の冷却を停止する。
ここで、冷却対象の冷却要求があるときには、冷媒を冷却系に循環させる。つまり、熱交換による冷媒の冷却は行わないが、冷媒を冷却系に循環させる。このとき、冷媒は所定の下限値以下であって低温(数℃程度)であるから、この低温の冷媒を冷却系に循環させることにより、冷却対象を冷媒で冷却することができる。従って、冷却インターロック機構が作動しても、冷却対象の冷却を継続して行うことができる。
また、低温の冷媒を冷却系に循環させることにより冷媒の温度上昇を速めることができる。従って、冷却インターロック状態から通常運転への回復までの時間を短縮することもできる。
これらのことにより、冷却対象の冷却を効率的に行うことができ、エネルギー効率の高い生産ラインシステムを実現することができる。
【0010】
上記した生産ラインシステムにおいて、前記冷却処理工程では、ヒートポンプ冷媒との熱交換により冷却された前記冷媒を冷媒ポンプで前記冷却系に循環させ、前記冷却系を循環する前記冷媒で前記冷却対象を冷却し、前記冷媒が所定の下限値以下になった場合、前記ヒートポンプ冷媒による前記冷媒の冷却を停止し、前記冷却対象の冷却要求があるときは、前記冷媒ポンプを作動させて前記冷媒を前記冷却系に循環させれば良い。
【0011】
このように、冷媒が所定の下限値以下になった場合、冷却インターロック機構を作動させて、ヒートポンプ冷媒との熱交換(ヒートポンプ)による冷媒の冷却を停止する一方、冷却対象の冷却要求があるときは、冷媒ポンプを作動させて冷媒を冷却系に循環させることにより、冷却インターロック機構が作動しても、冷却対象の冷却を継続して行うことができる。従って、冷却対象の冷却を効率的に行うことができ、エネルギー効率の高い生産ラインシステムを実現することができる。
【0012】
上記した生産ラインシステムにおいて、前記冷却対象は、ワークを加工する機械加工機へ供給するためにクーラント槽内に蓄えられたクーラントであり、前記クーラント槽が複数設置されていることが望ましい。
【0013】
クーラントには機械加工により切粉などが混入したりして汚れていくため、冷媒との熱交換率が低下し易く冷媒が過冷却となる確率が高い。また、冷却要求のあるクーラント槽が減少すると(例えば、設置台数中の1台のみが冷却要求を出す場合など)、熱交換される熱量(クーラントからの受熱量)が少なくなるため、冷媒が過冷却となりやすい。従って、このような生産ラインシステムでは、冷却インターロック機構が作動する回数が多くなる傾向にあるため、本発明を適用するのに好適である。
【0014】
上記した生産ラインシステムにおいて、加熱対象を加熱する加熱処理工程を有し、前記加熱処理工程と前記冷却処理工程とを一つのヒートポンプで実施し、前記ヒートポンプは、冷却・加熱同時運転、冷却単独運転あるいは加熱単独運転が可能である3モード式ヒートポンプであることが好ましい。
【0015】
このように加熱処理工程と冷却処理工程とを一つのヒートポンプで行うことにより、加熱及び冷却を、互いの相手から奪ったあるいは奪われた熱を熱源として行うことができ、エネルギー効率を極めて高いものとすることができる。そして、3モード式ヒートポンプを用いるため、冷却負荷や加熱負荷がどのように出現しあるいは変化しても、運転状態を切替えることで柔軟に対応し適切に各工程を処理することができる。
【0016】
このように3モード式ヒートポンプを用いる場合、前記冷媒が所定の下限値以下になった場合には、前記ヒートポンプは、前記加熱対象の加熱要求があるときは、前記冷却対象の冷却要求に関わらず加熱単独運転を行い、前記冷却対象の冷却要求があるときは、前記冷媒ポンプを作動させて前記冷媒を前記冷却系に循環させるようにすれば良い。
【0017】
このようにすることにより、冷却負荷や加熱負荷の状態に応じて、柔軟に対応し適切に各工程を処理することができるともに、冷却インターロック機構が作動しても、冷却対象の冷却を継続して行うことができる。従って、エネルギー効率をより高めることができる。
【0018】
上記した生産ラインシステムにおいて、前記加熱対象は、ワークの加工前あるいは加工後にワークの洗浄を行う洗浄液であることが望ましい。
【0019】
このような構成にすることにより、機械加工機における冷却処理工程の前又は後に洗浄液の加熱処理工程を隣接させることができ、冷却処理工程と加熱処理工程を一連のものとすることが可能となる。その結果、ヒートポンプから冷却処理工程あるいは加熱処理工程への距離が短くなって、配管等の短縮化により低コストとなるし、伝送ロス等が低減されてさらに省エネルギー化を図ることができる。
また、工場内において一連の加工ライン毎に加熱冷却システムを完結させることができ、フレキシブル性を極めて良好なものとすることができる。
そして、一連の加工ラインにおいてヒートポンプを使用しているので、生産中は常に冷却と加熱を同時に必要とされ、よって長時間の冷暖同時運転とすることができ、エネルギー効率の高い生産ラインとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る生産ラインシステムによれば、上記した通り、冷却インターロック機構が作動しても、冷却対象の冷却を継続して行うことができるため、冷却対象の冷却を効率的に行うことができ、エネルギー効率の高い生産ラインを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る生産ラインシステムの概略構成を示す図である。
【図2】生産ラインシステムにおけるヒートポンプサイクルの動作内容を示すフローチャートである。
【図3】冷却インターロックの処理内容を示すフローチャートである。
【図4】生産ラインシステムにおけるヒートポンプサイクルを構成する各部位の作動状態(運転状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の生産ラインシステムを具体化した実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。以下の実施の形態では、本発明を機械加工部品の製造ラインに適用した場合を例示する。
【0023】
そこで、実施の形態に係る生産ラインシステムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係る生産ラインシステムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、生産ラインシステム10は、機械加工部品製造の切削工程における切削液の冷却及びその後の洗浄工程における洗浄液の加熱を行うために配備されており、切削液を蓄える複数の切削液槽11と、洗浄液を蓄える洗浄液槽12と、切削液を冷却し洗浄液を加熱するためのヒートポンプ20とを備えている。
【0024】
ヒートポンプ20は、3モード式ヒートポンプであり、切削液を冷却するための冷媒である冷水を熱交換により冷却する冷却用熱交換器21と、洗浄液を熱交換により加熱する加熱用熱交換器22と、ヒートポンプ冷媒と空気(大気)との熱交換を行う空気熱交換器23と、ヒートポンプ冷媒を圧縮する圧縮機24とを備えている。これらの各熱交換器21,22,23と圧縮機24は、ヒートポンプサイクルに組み込まれている。そして、ヒートポンプ20では、各熱交換器21,22,23の運転を切り替えることにより、冷却・加熱(冷暖)同時運転、冷却単独運転あるいは加熱単独運転を行うことができるようになっている。
【0025】
冷却用熱交換器21には、冷水を受け入れる冷水戻り配管30及び冷水を出す冷水供給配管31が接続されており、冷水供給配管31には冷水を送る冷水ポンプ32が取り付けられている。そして、冷水ポンプ32が作動することにより、冷水戻り配管30、冷却用熱交換器21、冷水供給配管31、及び熱交換器33により構成される冷却系を冷水が循環するようになっている。
また、冷水供給配管31には、切削液槽11毎に配置された投げ込み式の熱交換器33が接続されており、各熱交換器33へ分岐した冷水供給配管31には比例弁34が設置されている。熱交換器33は、切削液槽11に投入されて冷却系を循環する冷水が通過することで、熱交換により切削液槽11内の切削液を冷却するようになっている。なお、図1には、2台の切削液槽11を図示しているが、切削液槽11を3台以上設置して冷却用熱交換器21に接続することもできる。
【0026】
一方、加熱用熱交換器22には、洗浄液を受け入れる洗浄液戻り配管40及び洗浄液を出す洗浄液供給配管41が接続されている。洗浄液戻り配管40の他端には、洗浄液を洗浄液槽12から送り出す洗浄液ポンプ42が取り付けられている。そして、加熱用熱交換器22は、洗浄液戻り配管40から導入された洗浄液を熱交換により加熱して洗浄液供給配管41に導出し、加熱された洗浄液を洗浄液槽12に戻すようになっている。
【0027】
このように、生産ラインシステム10では、切削液の冷却処理工程の前又は後に洗浄液の加熱処理工程を隣接させることができ、冷却処理工程と加熱処理工程を一連のものとすることが可能となる。従って、ヒートポンプ20から冷却処理工程あるいは加熱処理工程への距離が短くなって、配管30,31,40,41等の短縮化により低コストとなるとともに、伝送ロス等が低減されてさらに省エネルギー化を図ることができる。また、工場内において一連の加工ライン毎に加熱冷却システムを完結させることができ、フレキシブル性を極めて良好なものとすることができる。さらに、一連の加工ラインにおいて生産中は常に冷却と加熱が同時に必要とされるため、加熱及び冷却をヒートポンプ20において、互いの相手から奪ったあるいは奪われた熱を熱源として利用することができるので、長時間の冷暖同時運転を行うことができ、エネルギー効率の高い生産ラインとすることができる。さらにまた、ヒートポンプ20として3モード式ヒートポンプを用いているため、冷却負荷や加熱負荷がどのように出現しあるいは変化しても、運転状態を切替えることで柔軟に対応し適切に各工程を処理することができ、エネルギー効率を極めて高いものとすることができる。
【0028】
そして、ヒートポンプ20は、図示しない制御手段に接続されている。制御手段には、冷却用熱交換器21の出口における冷水温度(冷水供給配管31内の冷水温度)を把握して送信する図示しない冷水温度センサと、洗浄液槽12内の洗浄液温度を把握して送信する図示しない洗浄液温度センサが接続されている。また、制御手段には、各比例弁34が、制御手段の発する開度指令に基づき開度調節可能に接続されている。さらに、制御手段には、各切削液槽11内の切削液温度を把握して送信する図示しない切削液槽温度センサがそれぞれ接続されている。
【0029】
ここで、制御手段は、ヒートポンプ20の加熱側につき、運転条件に温度幅を持たせた状態で運転する。すなわち、加熱運転条件において洗浄液温度の下限値(例えば50℃)と上限値(例えば60℃)を設け、制御手段が洗浄液温度につき上限値を超えるとヒートポンプ20による加熱量を直前より減らして洗浄液温度の下降を許容し、下限値を下回るとヒートポンプ20による加熱量を直前より増やして洗浄液温度を上昇させる。なお、温度幅W(上限値と下限値の差)は、好ましくは2〜10℃である。そして、洗浄液温度の下降は、部品洗浄数(洗浄量)が急激に増加した場合や、洗浄液を補給注入した場合などに起こる。
【0030】
また、制御手段は、ヒートポンプ20の冷却側についても、運転条件に温度幅を持たせた状態で運転する。すなわち、冷却運転条件において切削液温度の冷却下限値(例えば20℃)と冷却上限値(例えば30℃)を設け、制御手段が切削液温度につき冷却下限値を下回るとヒートポンプ20による冷却量を直前より減らして切削液の温度上昇を許容し、冷却上限値を上回るとヒートポンプ20による冷却量を直前より増やして切削液温度を下降させる。なお、温度幅(冷却上限値と冷却下限値の差)は、好ましくは2〜10℃である。
また、制御手段は、切削液槽温度センサから得た個別の切削液槽11内の切削液温度や別途得た冷水温度に応じ、対応する比例弁34の開度をそれぞれ調節する。
【0031】
さらに、制御手段は、ヒートポンプ20の冷却側において、冷却用熱交換器21の凍結防止のために、冷水温度の冷却下限値(本実施の形態では7℃)を設け、冷水温度が冷却下限値以下になると冷却インターロック機構を作動させる(インターロックON)。すなわち、ヒートポンプ20において、冷却用熱交換器21による熱交換を止めて冷水の冷却(ヒートポンプの冷却運転)を停止する。但し、切削液の冷却要求がある場合には、制御手段は、冷水ポンプ32を作動させて冷却系に冷水を循環させる。この詳細については後述する。なお、冷水温度の低下は、冷却要求のある切削液槽11の数が設置した切削液槽11の数よりも少ない場合や、熱交換器33が汚れて熱交換の能力が低下した場合などに起こる。
【0032】
続いて、上記した生産ラインシステム10の動作について、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、生産ラインシステムにおけるヒートポンプサイクルの動作内容を示すフローチャートである。図3は、冷却インターロックの処理内容を示すフローチャートである。図4は、生産ラインシステムにおけるヒートポンプサイクルを構成する各部位の作動状態(運転状態)を示す図である。なお、図2及び図3に示す処理は、数msecサイクルで繰り返し行われる。
【0033】
図2に示すように、生産ラインシステム10では、まず、洗浄液の加熱要求の有無(ON/OFF)が判断される(ステップS10)。このとき、加熱要求がONである場合には(S10:ON)、加熱用熱交換器22がONされ(ステップS11)、洗浄液ポンプ42がONされる(ステップS12)。
【0034】
次に、切削液の冷却要求の有無(ON/OFF)が判断される(ステップS13)。このとき、冷却要求がONである場合には(S13:ON)、冷却インターロックのON/OFFが判断される(ステップS14)。
【0035】
ここで、冷却インターロックのON/OFFの判断処理について簡単に説明する。この判断処理は、図3に示すように、冷却用熱交換器21の出口付近における冷水温度Tcout が7℃以下であるか否かが判断される(ステップS80)。このとき、冷水温度Tcout が7℃以下である場合には(S80:Yes)、冷却インターロックがONされる(ステップS81)。これにより、冷却要求がある場合であっても、ヒートポンプ20(冷却用熱交換器21)による冷水の冷却が停止される。
【0036】
一方、冷水温度Tcout が7℃より高い場合には(S80:No)、現在の冷却インターロックのON/OFF状態が判断される。このとき、冷却インターロックがONであれば(S82:)ON)、冷水温度Tcout が15℃以上であるか否かが判断される(ステップS83)。そして、冷水温度Tcout が15℃以上の場合には(S83:Yes)、冷却インターロックがOFFされる(ステップS84)。
【0037】
なお、ステップS82において冷却インターロックがOFFの場合、又はステップS83において冷水温度Tcout が15℃より低い場合には、一旦この処理を終了する。
その後、上記したステップS80〜S84の処理が繰り返し実行されることにより、本実施の形態では、冷水温度Tcout が7℃以下になると冷却インターロックがONになり、冷却インターロックがONになった後に冷水温度Tcout が15℃以上になると冷却インターロックがOFFにされる。
【0038】
図2に戻って、ステップS14において、冷却インターロックがONである場合には(S14:ON)、冷却用熱交換器21はOFFされるが(ステップS15)、冷水ポンプ32はONされる(ステップS16)。次いで、空気熱交換器23がONされ(ステップS17)、圧縮機24がONされる(ステップS18)。
【0039】
これにより、冷却インターロックがONであっても、冷水ポンプ32によって冷水が冷却系を循環する。このとき、冷却系を循環する冷水の温度は7℃以下であるから、熱交換器33を介して冷水により切削液を冷却することができる。従って、冷却インターロックがONになっても、切削液の冷却を継続して行うことができる。また、冷水を冷却系に循環させることにより、冷水の温度上昇を速めることができるため、冷却インターロックがOFFになるまでの時間を短縮することができる。このように生産ラインシステム10では、切削液の冷却を効率的に行うことができ、エネルギー効率の高い生産ラインシステムを実現することができる。
【0040】
また、生産ラインシステム10では冷却対象が切削液であり、切削液には機械加工により切粉などが混入して汚れていくため、熱交換器33における熱交換の効率が低下していき冷水が過冷却となる確率が高く、インターロックがONになる頻度が高い。さらに、切削液槽11の設置数を増やした場合には、冷却要求のある槽が減少すると(例えば、設置台数中の1台のみが冷却要求を出す場合など)、熱交換器33で熱交換される熱量(切削液からの受熱量)が少なくなるため、冷水が過冷却となりやすい。このような本実施の形態における生産ラインシステム10では、冷却インターロックがONになる回数が多くなる傾向にあるが、切削液の冷却を効率的に行うことができるため省エネルギー化を図ることができる。
【0041】
ここで、ステップS13において、冷却要求がOFFである場合には(S13:OFF)、冷却用熱交換器21がOFFされ(ステップS20)、冷水ポンプ32もOFFされる(ステップS21)。次いで、空気熱交換器23がONされ(ステップS22)、圧縮機24がONされる(ステップS23)。これにより、ヒートポンプ20では加熱単独運転が実施される。なお、冷却要求がOFFである場合、冷却用熱交換器21はOFFされるため、冷却インターロックのON/OFF判断は行われない。
【0042】
また、ステップS14において、冷却インターロックがOFFである場合には(S14:OFF)、冷却用熱交換器21がONされ(ステップS30)、冷水ポンプ32がONされる(ステップS31)。次いで、空気熱交換器23がOFFされ(ステップS32)、圧縮機24がONされる(ステップS33)。これにより、ヒートポンプ20では冷却・加熱同時運転が実施される。
【0043】
一方、加熱要求がOFFである場合には(S10:OFF)、洗浄液ポンプ42がOFFされ(ステップS40)、加熱用熱交換器22がOFFされる(ステップS41)。次に、冷却要求の有無(ON/OFF)が判断される(ステップS42)。このとき、冷却要求がONである場合には(S42:ON)、冷却インターロックのON/OFFが判断される(ステップS43)。このとき、冷却インターロックがONである場合には(S43:ON)、冷却用熱交換器21はOFFされるが(ステップS44)、冷水ポンプ32はONされる(ステップS45)。次いで、空気熱交換器23がOFFされ(ステップS46)、圧縮機24がOFFされる(ステップS47)。
【0044】
これにより、冷却インターロックがONであっても、冷水ポンプ32が作動するため7℃以下の冷水が冷却系を循環するので、熱交換器33を介して冷水により切削液を冷却することができる。従って、切削液の冷却を継続して行うことができるとともに、冷水の温度上昇を速めて冷却インターロックがOFFになるまでの時間を短縮することができる。
【0045】
ここで、ステップS42において、冷却要求がOFFである場合には(S42:OFF)、冷却用熱交換器21がOFFされ(ステップS50)、冷水ポンプ32もOFFされる(ステップS51)。次いで、空気熱交換器23がOFFされ(ステップS52)、圧縮機24がOFFされる(ステップS53)。これにより、ヒートポンプ20は停止状態となる。なお、冷却要求がOFFである場合、冷却用熱交換器21はOFFされるため、冷却インターロックのON/OFF判断は行われない。
【0046】
また、ステップS43において、冷却インターロックがOFFである場合には(S43:OFF)、冷却用熱交換器21がONされ(ステップS60)、冷水ポンプ32がONされる(ステップS61)。次いで、空気熱交換器23がONされ(ステップS62)、圧縮機24がONされる(ステップS63)。これにより、ヒートポンプ20では冷却単独運転が実施される。
【0047】
上記した運転パターンについて、加熱要求の有無、冷却要求の有無、及び冷却インターロックのオン・オフ状態の組み合わせにより、図4に示すパターンA〜Hに分類することができる。以下、パターン毎に、上記処理との関係について簡単に説明する。
【0048】
[パターンA]
パターンAでは、加熱要求及び冷却要求がともにONであって冷却インターロックがOFFになっている。従って、ステップS10〜S14,S30〜S33の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がON、空気熱交換器23がOFF、加熱用熱交換器22がON、冷却用熱交換器21がON、洗浄液ポンプ42がON、冷水ポンプ32がONされ、ヒートポンプ20では冷却・加熱同時運転が実施される。
【0049】
[パターンB]
パターンBでは、加熱要求がON、冷却要求がOFFであって冷却インターロックがOFFになっている。従って、ステップS10〜S13,S20〜S23の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がON、空気熱交換器23がON、加熱用熱交換器22がON、冷却用熱交換器21がOFF、洗浄液ポンプ42がON、冷水ポンプ32がOFFされ、ヒートポンプ20では加熱単独運転が実施される。
【0050】
[パターンC]
パターンCでは、加熱要求がOFF、冷却要求がONであって冷却インターロックがOFFになっている。従って、ステップS10,S40〜S43,S60〜S63の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がON、空気熱交換器23がON、加熱用熱交換器22がOFF、冷却用熱交換器21がON、洗浄液ポンプ42がOFF、冷水ポンプ32がONされ、ヒートポンプ20では冷却単独運転が実施される。
【0051】
[パターンD]
パターンDでは、加熱要求及び冷却要求がともにOFFであって冷却インターロックがOFFになっている。従って、ステップS10,S40〜S42,S50〜S53の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がOFF、空気熱交換器23がOFF、加熱用熱交換器22がOFF、冷却用熱交換器21がOFF、洗浄液ポンプ42がOFF、冷水ポンプ32がOFFされ、ヒートポンプ20は停止状態となる。
【0052】
[パターンE]
パターンEでは、加熱要求及び冷却要求がともにONであって冷却インターロックがONになっている。従って、ステップS10〜S18の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がON、空気熱交換器23がON、加熱用熱交換器22がON、冷却用熱交換器21がOFF、洗浄液ポンプ42がON、冷水ポンプ32がONされ、ヒートポンプ20では加熱単独運転が実施される。つまり、冷却要求がONであっても冷却インターロックがONになっているため、ヒートポンプ20による切削液の冷却(冷水を介した間接冷却)は行わないが、冷水ポンプ32により冷水を冷却系に循環させて切削液の冷却を行うのである。これにより、冷却インターロックがONであっても、切削液の冷却を継続して行うことができる。
【0053】
[パターンF]
パターンFでは、加熱要求がON、冷却要求がOFFであって冷却インターロックがONになっている。従って、ステップS10〜S13,S20〜S23の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がON、空気熱交換器23がON、加熱用熱交換器22がON、冷却用熱交換器21がOFF、洗浄液ポンプ42がON、冷水ポンプ32がOFFされ、ヒートポンプ20では加熱単独運転が実施される。
【0054】
[パターンG]
パターンGでは、加熱要求がOFF、冷却要求がONであって冷却インターロックがONになっている。従って、ステップS10,S40〜S47の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がOFF、空気熱交換器23がOFF、加熱用熱交換器22がOFF、冷却用熱交換器21がOFF、洗浄液ポンプ42がOFF、冷水ポンプ32がONされ、ヒートポンプ20は停止状態となる。つまり、冷却要求がONであっても冷却インターロックがONになっているため、ヒートポンプ20による切削液の冷却(冷水を介した間接冷却)は行わないが、冷水ポンプ32により冷水を冷却系に循環させて切削液の冷却を行うのである。これにより、冷却インターロックがONであっても、切削液の冷却を継続して行うことができる。
【0055】
[パターンH]
パターンHでは、加熱要求及び冷却要求がともにOFFであって冷却インターロックがONになっている。従って、ステップS10,S40〜S42,S50〜S53の処理が順次実施される。その結果、圧縮機24がOFF、空気熱交換器23がOFF、加熱用熱交換器22がOFF、冷却用熱交換器21がOFF、洗浄液ポンプ42がOFF、冷水ポンプ32がOFFされ、ヒートポンプ20は停止状態となる。
【0056】
以上、詳細に説明したように、本実施の形態に係る生産ラインシステム10によれば、冷水温度が冷却下限値(本実施の形態では7℃)以下になった場合、冷却インターロックをONしてヒートポンプ20による冷水の冷却を停止する。このとき、切削液の冷却要求がある場合、冷水ポンプ32をONして冷水を冷却系に循環させる。これにより、切削液を低温の冷水で冷却することができる。従って、冷却インターロックがONであっても、切削液の冷却を継続して行うことができる。また、冷水の温度上昇を速めることができるため、冷水の温度上昇を速めて冷却インターロックがOFFになるまでの時間を短縮することができる。これらのことにより、切削液の冷却を効率的に行うことができ、生産ラインシステム10におけるエネルギー効率を高めることができる。
【0057】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、ヒートポンプ20として3モード式のものを例示したが、ヒートポンプ20はこれに限られることはなく、少なくとも冷却運転を行うものであれば良い。
【0058】
また、上記した実施の形態では、機械加工部品の製造ラインに本発明を適用した場合を例示したが、その他の生産ライン(例えば、冷却炉を備える塗装ラインなど)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 生産ラインシステム
11 切削液槽
12 洗浄液槽
20 ヒートポンプ
21 冷却用熱交換器
22 加熱用熱交換器
23 空気熱交換器
24 圧縮機
30 冷水戻り配管
31 冷水供給配管
32 冷水ポンプ
33 熱交換器
34 比例弁
40 洗浄液戻り配管
41 洗浄液供給配管
42 洗浄液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象をヒートポンプサイクルにより冷却する冷却処理工程を少なくとも有する生産ラインシステムにおいて、
前記冷却処理工程では、冷却系を循環する冷媒で前記冷却対象を冷却し、前記冷媒を前記ヒートポンプサイクルで冷却し、
前記冷媒が所定の下限値以下になった場合、前記ヒートポンプサイクルによる前記冷媒の冷却を停止し、前記冷却対象の冷却要求があるときは、前記冷媒を前記冷却系に循環させる
ことを特徴とする生産ラインシステム。
【請求項2】
請求項1に記載する生産ラインシステムにおいて、
前記冷却処理工程では、ヒートポンプ冷媒との熱交換により冷却された前記冷媒を冷媒ポンプで前記冷却系に循環させ、前記冷却系を循環する前記冷媒で前記冷却対象を冷却し、
前記冷媒が所定の下限値以下になった場合、前記ヒートポンプ冷媒による前記冷媒の冷却を停止し、前記冷却対象の冷却要求があるときは、前記冷媒ポンプを作動させて前記冷媒を前記冷却系に循環させる
ことを特徴とする生産ラインシステム。
【請求項3】
請求項2に記載する生産ラインシステムにおいて、
前記冷却対象は、ワークを加工する機械加工機へ供給するためにクーラント槽内に蓄えられたクーラントであり、
前記クーラント槽が複数設置されている
ことを特徴とする生産ラインシステム。
【請求項4】
請求項3に記載する生産ラインシステムにおいて、
加熱対象を加熱する加熱処理工程を有し、
前記加熱処理工程と前記冷却処理工程とを1つのヒートポンプで実施し、
前記ヒートポンプは、冷却・加熱同時運転、冷却単独運転あるいは加熱単独運転が可能である3モード式ヒートポンプである
ことを特徴とする生産ラインシステム。
【請求項5】
請求項4に記載する生産ラインシステムにおいて、
前記冷媒が所定の下限値以下になった場合には、
前記ヒートポンプは、前記加熱対象の加熱要求があるときは、前記冷却対象の冷却要求に関わらず加熱単独運転を行い、
前記冷却対象の冷却要求があるときは、前記冷媒ポンプを作動させて前記冷媒を前記冷却系に循環させる
ことを特徴とする生産ラインシステム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載する生産ラインシステムにおいて、
前記加熱対象は、ワークの加工前あるいは加工後にワークの洗浄を行う洗浄液である
ことを特徴とする生産ラインシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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