説明

産業用加熱システム及びその制御方法

【課題】安定的にエネルギー効率が高い産業用加熱システムを提供する。
【解決手段】産業用加熱システムは、第1流体を加熱するヒートポンプ装置(12)と、ヒートポンプ装置(12)で加熱された第1流体の熱が第2流体に伝わる熱交換器(32)と、熱交換器からの第2流体の熱が対象物に伝わる加熱室(18)と、ボイラ及び電気ヒータの少なくとも1つを含み、第2流体を加熱可能な補装置(14)と、熱交換器における第1流体の流量を調節可能な流量調節装置(82)と、熱交換器における第1流体の出口温度を計測する第1計測装置(84)と、熱交換器における第2流体の出口温度を計測する第2計測装置(86)と、第1計測装置の計測結果と第2計測装置の計測結果とに基づいて、流量調節装置及び補装置の少なくとも1つを制御する制御装置(70)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用加熱システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用加熱システムとしては、ボイラで生成した蒸気の熱を対象物に伝える構成が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ヒートポンプあるいは冷凍機の媒体の熱を対象物に伝える構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−249450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボイラを用いたシステムは、一次エネルギー効率が比較的低い。一方、ヒートポンプを用いたシステムは、熱機器性能が劣化すると、熱需要に十分に対応できない状況が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、安定的にエネルギー効率が高い産業用加熱システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、第1流体を加熱するヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置で加熱された前記第1流体の熱が第2流体に伝わる熱交換器と、前記熱交換器からの前記第2流体の熱が対象物に伝わる加熱室と、ボイラ及び電気ヒータの少なくとも1つを含み、前記第2流体を加熱可能な補装置と、前記熱交換器における前記第1流体の流量を調節可能な流量調節装置と、前記熱交換器における前記第1流体の出口温度を計測する第1計測装置と、前記熱交換器における前記第2流体の出口温度を計測する第2計測装置と、前記第1計測装置の計測結果と前記第2計測装置の計測結果とに基づいて、前記流量調節装置及び前記補装置の少なくとも1つを制御する制御装置と、を備える、産業用加熱システムが提供される。
【0007】
本発明の別の態様に従えば、ヒートポンプ装置と補熱供給装置と加熱室とを備える産業用加熱システムの制御方法であって、前記ヒートポンプ装置で加熱された第1流体の熱が第2流体に伝わる熱交換器において前記第1流体の出口温度と前記第2流体の出口温度とを計測する工程であり、前記熱交換器からの前記第2流体の熱が前記加熱室内の対象物に伝わる、前記工程と、前記第1流体に対する計測結果及び前記第2流体に対する計測結果に基づいて、(1)前記熱交換器における前記第1流体の流量制御、及び(2)前記補熱供給装置の稼働制御、の少なくとも1つを実行する工程と、を含む、産業用加熱システムの制御方法が提供される。
【0008】
上記の産業用加熱システム及びその制御方法によれば、媒体流量及び補装置稼働の最適化が図られ、エネルギー効率の向上が安定的に図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態を示す概略図である。
【図2】加熱システムのブロック図である。
【図3】加熱システムの動作の一例を示すフローチャート図である。
【図4】変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、加熱システムS1を示す概略図である。
【0011】
図1に示すように、加熱システムS1は、作動流体(第1流体)が流れるヒートポンプ(ヒートポンプ回路)20を有するヒートポンプ装置12と、ヒートポンプ以外の加熱装置を有する補装置(補熱供給装置)14と、供給装置16と、被加熱流体(第2流体)が供給され、対象物が加熱される加熱室(加熱装置)18と、制御装置70とを備える。制御装置70は、システム全体を統括的に制御する。加熱システムS1の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0012】
本実施形態において、被加熱流体(第2流体)は空気である。本実施形態において、ヒートポンプ装置12、及び補装置14の少なくとも1つによって加熱された高温の空気が加熱室18に供給される。加熱室18において、高温空気からの熱が対象物に伝わる。他の実施形態において、被加熱流体は乾燥用以外の空気、あるいは空気以外の流体にできる。空気以外の被加熱流体としては、例えば、圧縮水、薬品、粘性液などが挙げられる。
【0013】
本実施形態において、加熱室18において、加熱された空気からの熱が直接的又は間接的に対象物に伝わる。例えば、加熱室18において、加熱された空気が対象物に直接的に接することができる。あるいは、加熱室18において、加熱された空気と対象物との間に別の物質が介在することができる。
【0014】
本実施形態において、加熱対象物は産業部品や産業材料である。例えば、加熱室18において、産業部品又は産業材料の少なくとも一部が乾燥処理される。あるいは、加熱室18において、産業部品又は産業材料の少なくとも一部が熱処理される。なお、汚泥、紙、木材、樹脂、薬剤、薬品、砂、家庭ごみ、産業ごみ、工芸品、工芸材料、電気部品、電気機器、塗装物、産業用衣類、機械部品、機械製品、食料、食材、食料品など、様々な物体を加熱対象にできる。他の実施形態において、被加熱流体は乾燥用以外の空気、あるいは空気以外の流体にできる。空気以外の被加熱流体としては、例えば、水、圧縮水、薬品、粘性液などが挙げられる。また、他の実施形態において、加熱室18は、乾燥装置、及び/又は乾燥装置以外の他の熱利用装置を含むことができる。
【0015】
ヒートポンプ装置12において、ヒートポンプ20は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、作動流体の状態変化を利用して複数の物体間で熱の授受を行う回路である。ヒートポンプサイクルは一般に、エネルギー効率が比較的高いという利点を有する。
【0016】
本実施形態において、ヒートポンプ20は、吸熱部21、圧縮部22、放熱部23、及び膨張部24を有し、これらは導管を介して接続されている。ヒートポンプ20において、導管内を作動流体が流れる。本実施形態において、ヒートポンプ20は、作動流体の熱を用いて被加熱流体(水)を加熱する。
【0017】
吸熱部21では、主経路25を流れる作動流体がサイクル外の熱源(低温熱源)の熱を吸収する。本実施形態において、ヒートポンプ20の吸熱部21は、外部装置90の放熱管91に熱的に接続され、その内部で作動流体が蒸発する蒸発器を含む。放熱管91を流れる媒体(冷媒など)の熱がヒートポンプ20の吸熱部21に吸収される。熱源として、外部装置90の排熱を利用することも可能である。吸熱部21が大気など他の熱源の熱を吸収する構成とすることもできる。後述するように、本実施形態において、吸熱部21は、加熱室18から排出された流体(排ガス)からの熱を吸収可能である。
【0018】
圧縮部22は、圧縮機等によって作動流体を圧縮する。この際、通常、作動流体の温度が上がる。圧縮部22は、単段圧縮構造、又は作動流体を複数段に圧縮する多段圧縮構造を有することができる。圧縮の段数は、システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部22は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、作動流体の圧縮に適するものが適用される。圧縮機には動力が供給される。多段圧縮構造を有する圧縮部22において、多軸圧縮構造又は同軸圧縮構造が適用可能である。
【0019】
放熱部23は、圧縮部22で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路25内を流れる作動流体の熱をサイクル外の熱源(被加熱流体)に与える。放熱部の数は、システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。追加的に、ヒートポンプ20は、バイパス経路、流量センサ、流路制御弁などを有することができる。
【0020】
膨張部24は、減圧弁またはタービン等によって作動流体を膨張させる。この際、通常、作動流体の温度が下がる。タービンを使用した場合には膨張部24から動力を取り出すことができ、その動力を例えば圧縮部22に供給してもよい。ヒートポンプ20に使用される作動流体として、フロン系媒体(HFC 245fa、R134aなど)、アンモニア、水、二酸化炭素、空気などの公知の様々な熱媒体が、システムS1の仕様及び熱バランスなどに応じて用いられる。ヒートポンプ20の放熱部23を流れる作動流体の少なくとも一部が超臨界状態であってもよい。
【0021】
本実施形態において、補装置14は、ヒートポンプ以外の加熱装置として、電気ヒータ及びボイラの少なくとも1つを有する。ボイラは、油やガスなどの燃料を燃焼させてその燃焼熱によって熱媒体(水など)を加熱することができる。電気ヒータやボイラとしては公知の様々な形態が適用可能である。
【0022】
供給装置(空気供給路)16は、ヒートポンプ装置12及び補装置14の少なくとも1つを用いて加熱された流体(被加熱流体)を加熱室18に供給する。供給装置16は、第1加熱部62と、第2加熱部64とを有する。供給装置16は、被加熱流体が流れる導管、ポンプなどの流体駆動機器、流体制御用の弁などを有することができる。
【0023】
第1加熱部62は、ヒートポンプ20の放熱部23に熱的に接続されかつ空気が流れる導管を含む。第1加熱部62と放熱部23を含んで熱交換器32が構成される。熱交換器32は、低温の流体(供給装置16内の空気)と高温の流体(ヒートポンプ20内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器32は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。本実施形態において、熱交換器32の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。放熱部23の導管と第1加熱部62の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、放熱部23の導管を、第1加熱部62の導管の外周面や内部に配設することができる。第1加熱部62において、ヒートポンプ20の放熱部23からの伝達熱によって、導管内の空気が温度上昇する。
【0024】
第2加熱部64は、補装置14の放熱部に熱的に接続されかつ第1加熱部62からの空気が流れる導管を含む。補装置14の放熱部の導管と第2加熱部64の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、放熱部の導管を、第2加熱部64の導管の外周面や内部に配設することができる。
【0025】
本実施形態において、供給装置16からの被加熱流体(乾燥用空気)の出力温度は、熱需要に応じて変化できる。出力温度は、例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200℃以上にできる。
【0026】
本実施形態において、加熱室18は、流体入口部、流体出口部、排気ルート、及び必要に応じて不図示の移送装置を有する。一例において、移送装置は、コンベア、搬送車、搬送ロボットなどの様々な形態を有することができる。移送装置によって、加熱対象物が加熱室18内に投入されるとともに、加熱室18から取り出される。代替的又は追加的に、加熱室18は、加熱後の対象物の出力のために、ゲート式、旋回式などの形態を有する出力部を備えることができる。加熱した対象物の出力部は、必要に応じて加熱した対象物に化学処理などの所定の処理を行う機構を有することができる。
【0027】
本実施形態において、必要に応じて、移送装置は、加熱室18内で、加熱対象物を移動させることができる。加熱室18は、必要に応じて、不図示の脱水装置をさらに有し、それによって対象物を脱水することができる。脱水の際、対象物に必要に応じて凝集剤を添加することができる。脱水は、遠心式、加圧式、圧搾式、振動式など、対象物に応じて様々な形態が適用可能である。脱水により、対象物の容量が減少する。また、加熱室18は、必要に応じて、加熱室18に入る前の対象物に熱を与える予熱室をさらに有することができる。
【0028】
本実施形態において、システムS1は、加熱室18からの被加熱流体(排ガス)を再利用するための戻り経路72を有する。加熱室18からの放熱した後の流体が戻り経路72を流れる。戻り経路72からの流体(空気)は、放熱管74を流れる。戻り経路72の放熱管74は、低温熱源側の外部装置90の放熱管91に流体的に接続された導管93に熱的に接続される。戻り経路72からの流体(空気)の熱が導管93を流れる媒体(冷媒など)に吸収される。その媒体が放熱管91を流れ、その熱がヒートポンプ20の吸熱部21に吸収される。流体の再利用により、運転コストの削減が図られる。
【0029】
本実施形態において、システムS1はさらに、熱交換器32における作動流体の流量を調節可能な制御弁(流量調節装置)82と、熱交換器32における作動流体の出口温度を計測する温度センサ84(第1計測装置)と、熱交換器32における空気(被加熱流体)の出口温度を計測する温度センサ86(第2計測装置)とを備える。センサ84,85の配置位置は、熱交換器32の直近に限定されず、加熱室18の入口など、任意の場所に設定できる。
【0030】
図2は、システムS1のブロック図である。
設計仕様の一例において、130℃の作動流体が熱交換器32に供給される。熱交換器32において、作動流体からの熱が空気に伝わる。熱交換により、空気温度が120℃に上昇し、一方、作動流体温度が70℃に下降する。本例において、熱交換器32における作動流体の入口温度が130℃、出口温度が70℃である。また、熱交換器32における空気(被加熱流体)の出口温度が120℃である。
【0031】
ここで、熱交換器32の性能低下等により、システムS1の稼働初期段階に比べて、ヒートポンプ20に対するより多くの投入熱量が必要になる場合がある。稼働初期段階におけるヒートポンプ20の成績係数(COP:coefficient of performance)を式(1)に示す。
【0032】
以下の説明において、COP:ヒートポンプの成績係数、G:流量[kg/s]、h:エンタルピ[J/kg]、T:温度[℃]、W:エネルギー(電力・熱)[W]、<Heating・in>:放熱部入口の熱媒(作動流体)、<Heating・out>:放熱部出口の熱媒(作動流体)である。
【0033】
【数1】

【0034】
実稼働時(熱交換器性能劣化時)のヒートポンプ20の成績係数(COP’)を式(2)に示す。
【0035】
【数2】

【0036】
熱交換器32の性能が劣化すると、作動流体の出口温度が上昇し、それに伴い、ヒートポンプ20の成績係数(COP:coefficient of performance)が低下する。図2の例において、熱交換器32における作動流体の入口温度が130℃、出口温度が70℃のとき、COPが3.0である。一方、性能劣化段階において、作動流体の入口温度が130℃、出口温度が100℃のとき、COPが1.5である(式(3))。
【0037】
【数3】

【0038】
図2に示すように、本実施形態において、温度センサ84,86からの信号が制御装置70に送られる。制御装置70は、温度センサ84,86の各計測結果に基づいて、制御弁82及び補装置14の少なくとも1つを制御することができる。なお、システムS1は、供給装置16における空気供給量に対応付け可能な値(回転数、電流値など)を計測するセンサ87を有することができる。
【0039】
熱交換器32の性能劣化時において、制御弁82を制御し、ヒートポンプ20における作動流体の単位時間あたりの流量を増やすことができる。流量制御(熱媒流量の増大)により、熱交換器32の性能劣化分がカバーされる。ただし、熱媒流量を増大した場合は、結果的に、熱媒流体の熱交換器出口温度が更に上昇し、COPがより低下することになる。また、熱交換器32の性能劣化時において、補装置14を稼働制御し、被加熱流体を追加的に加熱することができる。補装置14の稼働制御(補熱供給)により、熱交換器32の性能劣化分がカバーされる。ただし、一般に、電気ヒータやボイラなどの補装置の一次エネルギー効率はヒートポンプと比較して低い。
【0040】
本実施形態において、制御装置70は、補装置14の制御に比べて、制御弁82の制御を優先的に実行する。一般に、ヒートポンプ20の成績係数は、ボイラや電気ヒータに比べて高い。COPがある程度低下する場合でも、ヒートポンプ20を優先的に使用することにより、システムS1全体でのエネルギー効率の向上が図られる。こうした補完機能は、空気入力温度(入口温度)の変動や、供給量変動にも柔軟に対応できる。本実施形態において、流量制御及び稼働制御の少なくとも1つを実行する工程は、温度センサ84,86の計測結果を、ヒートポンプ20の成績係数に基づく閾値と比較する工程を含む。
【0041】
本実施形態において、閾値は、ヒートポンプ20のCOPが約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、又は2.8であることに対応できる。一例において、熱交換器32における作動流体の出口温度が100℃であることが、COPが1.5であることに相当する。この場合、例えば、作動流体の出口温度に対する閾値を100℃に設定する。被加熱媒体の出口温度に対する閾値は、例えば125℃に設定できる。
【0042】
図3は、システムS1の動作の一例を示すフローチャート図である。
図3に示すように、ステップ301において、作動流体の熱交換器入口温度が設定される(例えば130℃)。ステップ302において、被加熱流体の熱交換器出口温度の計測値が入力される(例えば125℃)。ステップ303において、作動流体の熱交換器出口温度の計測値が入力される(例えば70℃)。
【0043】
ステップ304において、被加熱流体の熱交換器出口温度が所定の閾値(例えば125℃)と比較される。その温度が閾値に比べて大きいとき、ステップS305に進み、その温度が閾値に比べて小さいとき、ステップS306に進む。
【0044】
ステップ305において、作動流体の熱交換出口温度が所定の閾値(例えば100℃(仮))と比較される。その温度が閾値に比べて大きいとき、制御弁82を絞る制御が実行され(ステップ307)、補装置14は稼働されない(ステップ308)。その温度が閾値に比べて小さいとき、制御弁82による流量制御は実行されず(ステップ309)、補装置14は稼働されない(ステップ310)。
【0045】
ステップ306において、作動流体の熱交換出口温度が所定の閾値(例えば100℃(仮))と比較される。その温度が閾値に比べて大きいとき、制御弁82による流量制御は実行されず(ステップ311)、補装置14が稼働制御される(ステップ312)。その温度が所定の閾値に比べて小さいとき、制御弁82による流量制御が実行される。この流量制御は開度限界まで実行される(ステップ313)。開度限界に達すると、補装置14が稼働制御される(ステップ314)。
【0046】
システムS1のエネルギー効率について試算した。比較例では、作動流体の流量が一定であり、熱交換器の性能が低下した場合は電気ヒータでバックアップすることとした。バックアップ分に対して、ヒートポンプ:40%×3(COP)=120%、電気ヒータ効率:40%×1(COP)=40%であり、一次エネルギーが2/3削減されることが分かった。
【0047】
図4は、図1の加熱システムS1の変形例である。
図4に示すシステムS2において、被加熱流体(加熱空気)が循環使用される。すなわち、加熱室18から排出された空気の一部が再度加熱室18に投入される。この場合、被加熱空気の温度を計測する温度センサ86は、合流前の場所に配置でき、あるいは合流後の場所に配置できる。
【0048】
図4に示すシステムS2においても、作動流体の流量制御、及び補装置14の制御(補熱供給)を実行することにより、安定して熱需要を満たすことができる。
【0049】
上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0050】
S1,S2:加熱システム、20:ヒートポンプ、14:補装置(補熱供給装置)、16:供給装置、18:加熱室、23:放熱部、32:熱交換器、62:第1加熱部、64:第2加熱部、70:制御装置、82:制御弁(流量調節装置)、84:温度センサ(第1計測装置)、86:温度センサ(第2計測装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体を加熱するヒートポンプ装置と、
前記ヒートポンプ装置で加熱された前記第1流体の熱が第2流体に伝わる熱交換器と、
前記熱交換器からの前記第2流体の熱が対象物に伝わる加熱室と、
ボイラ及び電気ヒータの少なくとも1つを含み、前記第2流体を加熱可能な補装置と、
前記熱交換器における前記第1流体の流量を調節可能な流量調節装置と、
前記熱交換器における前記第1流体の出口温度を計測する第1計測装置と、
前記熱交換器における前記第2流体の出口温度を計測する第2計測装置と、
前記第1計測装置の計測結果と前記第2計測装置の計測結果とに基づいて、前記流量調節装置及び前記補装置の少なくとも1つを制御する制御装置と、
を備える、ことを特徴とする産業用加熱システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記補装置の制御に比べて、前記流量調節装置の制御を優先的に実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の産業用加熱システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1流体に対する計測結果又は前記第2流体に対する計測結果を、前記ヒートポンプの成績係数に基づく閾値と比較する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の産業用加熱システム。
【請求項4】
ヒートポンプ装置と補熱供給装置と加熱室とを備える産業用加熱システムの制御方法であって、
前記ヒートポンプ装置で加熱された第1流体の熱が第2流体に伝わる熱交換器において前記第1流体の出口温度と前記第2流体の出口温度とを計測する工程であり、前記熱交換器からの前記第2流体の熱が前記加熱室内の対象物に伝わる、前記工程と、
前記第1流体に対する計測結果及び前記第2流体に対する計測結果に基づいて、(1)前記熱交換器における前記第1流体の流量制御、及び(2)前記補熱供給装置の稼働制御、の少なくとも1つを実行する工程と、
を含む、ことを特徴とする産業用加熱システムの制御方法。
【請求項5】
前記補熱供給装置の稼働制御に比べて、前記第1流体の流量制御が優先的に実行される、ことを特徴とする請求項4に記載の産業用加熱システムの制御方法。
【請求項6】
前記流量制御及び前記稼働制御の少なくとも1つを実行する工程は、前記第1流体に対する計測結果又は前記第2流体に対する計測結果を、前記ヒートポンプの成績係数に基づく閾値と比較する工程を含む、ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の産業用加熱システムの制御方法。
【請求項7】
前記閾値は、前記ヒートポンプの成績係数が約1.0、1.5、2.0、又は2.5であることに対応する、ことを特徴とする産業用加熱システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231999(P2011−231999A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103767(P2010−103767)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】