説明

用紙押さえ装置、画像形成システム、およびカム保持装置

【課題】カール(湾曲)した用紙を基準面となる用紙積載台に押さえ込むことができるとともに、用紙を押さえ込むための機構を用紙サイズに合わせて容易に移動させることができる機構を備える、用紙押さえ装置、画像形成システム、およびカム保持装置を提供する。
【解決手段】用紙押さえ部材1004は、カム機構により、先端部1004t1が第2位置から第1位置L3に位置決めされて、用紙押さえ爪1004tにより用紙Sの上端部領域を用紙積載台1002側に向けて押さえ込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置から排出される用紙を受けとる用紙押さえ装置、画像形成システム、およびカム保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において画像が記録された用紙は、画像形成装置に設けられた用紙積載台や、画像形成装置に隣接された後処理装置に設けられた用紙積載台に積載される。用紙積載台に載置された用紙は、カール(湾曲)することが知られている。
【0003】
用紙がカールした状態で、用紙積載台に次の用紙が進入した場合には、先に積載された用紙に進入経路が塞がれ、用紙積載台に用紙を積層収容できない。このような、用紙のカールを抑え、用紙の進入経路を確保する機構が下記特許文献1から4に開示されている。
【0004】
特許文献1には、排出された用紙を押さえ付ける機能を維持しながら、用紙押さえ部材が用紙排出動作や用紙積載台からの取り出しの邪魔になるのを防止できる機構が開示されている。特許文献2には、用紙が用紙積載台にスタックされると電磁機構のソレノイドへの励磁電流をOFFして、プランジャを弾条機構のスプリングの弾力によって突出させることで、用紙上面を抑える機構が開示されている。
【0005】
特許文献3には、排出用紙がカールする場合であっても、用紙積載台の許容枚数まで積載可能にするため、アーム付回転体を用紙の排出タイミングに合わせて回転させる機構が開示されている。特許文献4には、カールした用紙でも積載するようにするために、シート押さえ手段により排出された用紙を押さえた後、シート規制手段を排出された用紙の上方に突出させることで、シート押さえ手段が退避位置に移動したときでもシート上面高さ位置を規制することが可能な機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−55752号公報
【特許文献2】特開平01−117166号公報
【特許文献3】特開2000−219396号公報
【特許文献4】特開2009−120330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記いずれの特許文献に開示される機構においても、どの用紙のサイズでも用紙の後端を用紙積載台の端に揃えて積載する必要がある。
【0008】
一方で、用紙積載台に用紙を積載した後に、中綴じ・中折等の後処理を施す後処理装置では、用紙センタを用紙積載台のセンタに揃えて用紙積載台に積載したほうが、都合が良い。これは、用紙の後端(用紙搬送方向の後側)を用紙積載台の端に揃えて積載した場合、積載した後に用紙の束を中綴じ・中折の処理位置まで搬送する必要があり、搬送中の用紙ズレ、生産性の低下などの問題が生じるからである。
【0009】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題点を解決し、カール(湾曲)した用紙を基準面となる用紙積載台に押さえ込むことができるとともに、用紙を押さえ込むための機構を用紙サイズに合わせて容易に移動させることができる機構を備える、用紙押さえ装置、画像形成システム、およびカム保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に基づいた用紙押さえ装置は、画像形成装置から排出される用紙を受けとる用紙押さえ装置であって、排出された上記用紙が載置され、用紙搬送方向に沿って開口された長孔を有する用紙積載台と、上記用紙積載台の上記長孔において、上記用紙積載台の裏面側から表面側に向かって突出するとともに、上記長孔に沿って移動可能に設けられ、上記用紙搬送方向の下流側に向けて延びる用紙押さえ爪を有する用紙押さえ部材と、上記長孔に沿って上記用紙押さえ部材を移動させる位置変更機構と、上記用紙押さえ爪の先端部が、上記用紙積載台の表面に近接する第1位置と、上記用紙積載台の表面から上記第1位置よりも遠ざかる第2位置との間を移動可能にするカム保持装置とを備える。上記カム機構は、上記位置変更機構により、上記用紙搬送方向に沿った上記用紙の長さに対応して、上記長孔に対する位置の変更が可能に設けられている。
【0011】
他の形態においては、上記用紙押さえ部材は、上記カム機構により、上記先端部が上記第1位置に位置決めされ、上記用紙押さえ爪の上面を上記用紙が搬送される待機位置と、上記用紙が搬送された後、上記位置変更機構により、上記待機位置から上記用紙押さえ部材を上記長孔に沿って上記用紙搬送方向の上流側に向けて移動させた上流側位置と、上記上流側位置において、上記カム機構により上記先端部が上記第2位置に位置決めされる押さえ込み準備位置と、上記位置変更機構により、上記用紙押さえ部材を上記押さえ込み準備位置から上記長孔に沿って上記用紙搬送方向の下流側の所定位置まで移動させる下流側位置と、上記下流側位置において、上記カム機構により上記先端部が上記第2位置から上記第1位置に位置決めされて、上記用紙押さえ爪により上記用紙の上流側端部領域を上記用紙積載台側に向けて押さえ込み、上記待機位置と同じ状態となる押さえ込み位置と、の各位置の間を順次移動する押さえ込みサイクルが可能に設けられる。
【0012】
上記カム機構は、上記位置変更機構により、上記用紙搬送方向に沿った上記用紙の長さに対応して、上記押さえ込みサイクルの初期位置である待機位置の変更が可能に設けられている。
【0013】
他の形態においては、上記カム機構は、上記先端部が、上記第1位置から上記第2位置に向かう方向に回転力を付与する力付与部材を有するカムピンと、上記押さえ込みサイクルにしたがった上記用紙押さえ部材の移動にしたがって、上記カムピンを摺動可能に受け入れるカム溝とを含む。
【0014】
上記カム溝は、上記先端部が上記待機位置から上記上流側位置に移動するまでの間、上記先端部が上記第1位置に位置するように上記カムピンを付勢する第1溝領域と、上記先端部が上記上流側位置から上記押さえ込み準備位置に移動する際に、上記先端部が上記第1位置から上記第2位置に位置するように上記カムピンへの付勢を解除する第2溝領域と、上記先端部が上記下流側位置から上記押さえ込み位置に移動する際に、上記先端部が上記第2位置から第1位置に位置するように上記カムピンを付勢する第3溝領域とを有する。
【0015】
他の形態においては、上記用紙押さえ爪は、上記用紙の用紙搬送方向に対して直交する方向に複数配列され、上記長孔は、上記用紙の用紙搬送方向に対して直交する方向に、上記用紙押さえ爪に対応して複数設けられる。
【0016】
他の形態においては、上記用紙積載台の表面から所定の間隙を隔てて配置されるガイドカバーをさらに備え、上記ガイドカバーは、上記長孔に沿って設けられ、上記用紙積載台の表面から第1の距離を隔てた位置に設けられる第1カバー領域と、上記長孔が設けられていない領域に沿って設けられ、上記第1の距離よりも短い第2の距離の位置に設けられる第2カバー領域とを有し、上記第2の距離は、上記先端部が、上記第1位置における上記先端部と上記用紙積載台の表面との間の距離よりも大きく、上記第1の距離は、上記先端部が、上記第2位置における上記先端部と上記用紙積載台の表面との間の距離よりも小さい。
【0017】
この発明に基づいた画像形成システムは、上述のいずれかに記載の用紙押さえ装置と、該用紙押さえ装置に用紙を送り出す画像形成装置とを有する。
【0018】
この発明に基づいたカム保持装置は、作動部材を、基準面の表面に近接する第1位置と、上記基準面から上記第1位置よりも遠ざかる第2位置との間を移動可能にするカム機構を含むカム保持装置であって、上記カム機構は、上記作動部材が、上記第1位置に位置決めされる待機位置と、上記待機位置から上記作動部材を上記基準面沿って第1方向に移動させた第1移動位置と、上記第1移動位置において、上記作動部材が上記第2位置に位置決めされる準備位置と、上記作動部材を上記準備位置から上記第1方向とは反対の第2移動位置まで移動させた第2移動位置と、上記第2移動位置において、上記作動部材が上記第2位置から上記第1位置に位置決めされて上記待機位置に戻るサイクルが可能に設けられるとともに、上記サイクルの初期位置である待機位置の変更を可能にする位置変更機構を含む。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、カールした用紙を基準面となる用紙積載台に押さえ込むことができるとともに、用紙を押さえ込むための機構を用紙サイズに合わせて容易に移動させることができる機構を備える、用紙押さえ装置、画像形成システム、およびカム保持装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態における用紙押さえ装置が採用された後処理装置および画像形成装置を備える画像形成システムの概略断面図である。
【図2】実施の形態における後処理装置の用紙スタック部の要部拡大断面図である。
【図3】実施の形態における用紙押さえ装置の全体斜視図である。
【図4】実施の形態における用紙押さえ装置のガイドカバーを取り外した状態の斜視図である。
【図5】図3中V−V線矢視断面図である。
【図6】図4中のVIで囲まれた領域の部分拡大図である。
【図7】本実施の形態におけるカム機構を示す部分斜視図である。
【図8】本実施の形態におけるカム機構の構成を示す分解斜視図である。
【図9】本実施の形態におけるカム機構の動作を示す部分側面図である。
【図10】本実施の形態におけるカム溝の詳細構造を示す部分斜視図である。
【図11】本実施の形態におけるカム機構移動装置を示す部分斜視図である。
【図12】(A)から(D)は、本実施の形態におけるカム機構に用いられるカムピンの位置とカム溝の位置関係を示す部分拡大斜視図である。
【図13】「待機位置」状態を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図14】「待機位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示す部分拡大斜視図である。
【図15】「上流側位置」状態を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図16】「上流側位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示す部分拡大斜視図である。
【図17】「押さえ込み準備位置」状態を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図18】「押さえ込み準備位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示す部分拡大斜視図である。
【図19】「下流側位置」状態を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図20】「下流側位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示す部分拡大斜視図である。
【図21】「押さえ込み位置(待機位置)」状態を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図22】「押さえ込み位置(待機位置)」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示す部分拡大斜視図である。
【図23】大サイズ用紙のスタック時における用紙押さえ爪の移動軌跡を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図24】中サイズ用紙のスタック時における用紙押さえ爪の移動軌跡を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【図25】小サイズ用紙のスタック時における用紙押さえ爪の移動軌跡を示す、図3中V−V線矢視断面に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた実施の形態における用紙押さえ装置、画像形成システム、およびカム機構について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0022】
(画像形成システム)
図1は、実施の形態における用紙押さえ装置が採用された後処理装置FSおよび画像形成装置Aを備える画像形成システムの概略断面図である。
【0023】
(画像形成装置A)
画像形成装置Aは、画像読取部1、画像処理部2、画像書込部3、画像形成部4、給紙カセット5、給紙ローラ手段6、定着装置7、排紙ローラ8、自動両面コピー給紙部9を備えている。
【0024】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFが搭載されている。また、画像形成装置Aの図示左側面の排紙ローラ8側には、後処理装置FSが連結されている。自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿は、搬送路に沿って搬送され画像読取部1の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査され、CCDイメージセンサ1Aに読み込まれる。
【0025】
CCDイメージセンサ1Aにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部2において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を施された後、画像書込部3に送られる。画像書込部3に送られた画像データに基づき半導体レーザが発光駆動され、画像形成部4の感光体ドラム4Aに照射されて潜像が形成される。画像形成部4においては、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行なわれ、感光体ドラム4A上にトナー像が形成される。
【0026】
給紙カセット5から給紙ローラ手段6により給送された記録用紙S1は、感光体ドラム4Aに到達し、転写手段4Bによりトナー像が記録用紙S1に転写される。トナー像を担持した記録用紙S1は、定着装置7により定着処理され、排紙ローラ8から後処理装置FSに送り込まれる。両面コピーの場合には、片面画像処理済みの記録用紙S1は搬送路切り替え板8Aにより自動両面コピー給紙部9に送り込まれ、画像形成部4において裏面にトナー像が転写され、定着された後、排紙ローラ8から後処理装置FSに送り込まれる。
【0027】
(後処理装置FS)
後処理装置FSは、用紙搬入部20と、挿入紙給紙部30a、30bと、複数の後処理部とを有する。後処理部としては、孔あけ処理部40、折り部50、重ね合わせ処理部60、端綴じ(平綴じ)処理部71、用紙押さえ装置1000、中綴じ処理部72、および排紙部80を有する。
【0028】
挿入紙給紙部30aには挿入紙S2が装填され、挿入紙給紙部30bには他の挿入紙S3が装填される。挿入紙S2、S3は、表紙用紙や画像形成装置Aから排出される複数枚の記録用紙S1の間に挿入されるインサート用紙等の挿入紙であり、記録用紙S1と同様に、孔あけ処理や折り処理を行なうことができる。なお、以下の説明では、記録用紙S1、挿入紙S2、S3を総称して用紙Sと称する。
【0029】
挿入紙給紙部30a、30bから送り出された挿入紙S2、S3は下方に向かう搬送路を経て用紙搬入部20に搬送される。孔あけ処理部40は、用紙搬入部20の左手下流側に配置され、用紙Sにパンチ孔を開ける。
【0030】
孔あけ処理部40の下流から下方に分岐した搬送路H1は、搬送ローラ23を経て用紙スタック部100に続く。用紙スタック部100には、本発明に係わる用紙押さえ装置1000、中綴じ処理部72、折り部50が配置されており、詳しくは後述する。
【0031】
重ね合わせ処理部60は、孔あけ処理部40の下流から上方に分岐した搬送路H2の下流側に配設され、搬送路H3、H4、H5を備えている。重ね合わせ処理部60は、その下流側に位置する端綴じ処理部71において、先行する用紙Sに綴じ処理するための時間を確保するために、2部目以降の後続の用紙Sを搬送路H3および搬送路H4、H5に待機させる。
【0032】
搬送路H2の下流側に位置する搬送路は、二重に湾曲する搬送路に分岐し、内側の搬送路H4と外側の搬送路H3、H5とに分かれる。搬送路H2から分岐して湾曲する内側の搬送路H4の排出口には、搬送ローラ21が設けられ、綴じ処理を行なう際、1部目の用紙Sは、搬送路H2、H4、搬送ローラ21を経由して順次集積部70に送り込まれ、集積部70で綴じ処理される。2部目以降の用紙Sの1枚目が搬送されてきた場合、搬送ローラ21は回転を停止した状態で用紙先端を受け止め、用紙先端を搬送ローラ21のニップに当接した状態で待機させる。
【0033】
搬送路H4に搬送された用紙Sは、上記のように、搬送ローラ21にその先端が当接した状態で待機するが、次の用紙Sは、搬送路H2から搬送路H3に進入して、搬送路H5経由で搬送ローラ21に到達する。先行する用紙Sと後行する用紙Sとが搬送ローラ21で先端を当接して重なった状態になると、搬送ローラ21が回転し、2枚一緒に搬送して集積部70へと送り込む。このように2部目以降の用紙Sは重ね合わせ処理部60で先行する用紙束の綴じ処理が終了するまで待機され、綴じ処理が画像形成装置Aの生産性を落とすことなく行なわれる。
【0034】
搬送路H2の下流の搬送路H3は、さらに搬送路H5と搬送路H6に分岐している。搬送路H6は、排紙部80の一部を構成する固定排紙皿81に用紙Sを排出するもので、固定排紙皿81は、搬送路H6の下流側で、後処理装置FSの機外に突出する位置に配設され、少量の用紙Sを集積する場合に用いられる。
【0035】
排紙部80は、さらに昇降排紙皿82と後述する下部排紙皿83とを有し、搬送ローラ21と昇降排紙皿82との間には排紙ローラ22、集積部70、端綴じ処理部71、および図示しない整合機構が配置される。排紙ローラ22は、一対のローラからなり、非排紙時には一対のローラは離隔しており、排紙時に接触して用紙Sを昇降排紙皿82に排出する。
【0036】
搬送ローラ21により搬送される用紙Sは、離隔している排紙ローラ22間を図中左方向に走行し、後端が搬送ローラ21から離れたときに、集積部70に落下し、傾斜している集積部70を滑落してストッパ(図示せず)により受け止められて集積部70上で停止する。順次、用紙Sが排出され、設定枚数の用紙Sが集積部70上に集積されると、端綴じ処理部71が作動して用紙Sのストッパ側端面を綴じ処理する。
【0037】
綴じ処理された用紙Sは上記ストッパにより押し上げられて集積部70上を左上方に移動する。このとき、排紙ローラ22を構成する一対のローラが接触して用紙Sをニップし、搬送して、昇降排紙皿82に排出する。
【0038】
後処理なしで大量の画像形成を行なう際には、用紙Sは用紙搬入部20から搬送路H2、H4を経て昇降排紙皿82に排出され、昇降排紙皿82は、排紙される用紙Sの最上面が常に一定した高さになるように図の鎖線で示すように下方に移動する。したがって、昇降排紙皿82上には、数千枚の用紙を集積することが可能である。
【0039】
用紙スタック部100は、搬送ローラ23の下流で水平方向に対して斜めに配置されており、用紙Sをガイドする複数のガイド部材および規制部材と、用紙押さえ装置1000、中綴じ処理部72と、折り部50とを有し、1枚以上の用紙Sに対して、中折りモード、中折り・中綴じモード、三つ折りモードの各モードで用紙を処理し、下部排紙皿83に排出する。
【0040】
図2は、実施の形態における後処理装置の用紙スタック部100の要部拡大断面図である。図2の二点鎖線は、後述の説明のために引いた仮想平面であり、用紙Sは、大略この仮想平面に沿って斜め上方から斜め下方に向けて搬入される。また、図中右下に記すように、以下の説明において、仮想平面に沿って斜め下方に向かう方向をX方向、紙面においてX方向と直交する方向をY方向、紙面に対して垂直な方向をZ方向とする。
【0041】
用紙スタック部100を構成するガイド部材は、上流側ガイド部材101、102と下流側ガイド部材103、104からなり、上流側ガイド部材101、102の上部側に用紙押さえ装置1000が位置し、上流側ガイド部材101、102の中ほどに中綴じ処理部72が位置し、上流側ガイド部材101、102と下流側ガイド部材103、104との間に折り部50が位置する。なお、上流側ガイド部材101、102の適宜位置には、図示しない用紙幅整合部材が配置されて、用紙Sの幅方向(Z、逆Z方向)の整合を行なうが、その説明は省略する。
【0042】
折り部50の下流には、下流側ガイド部材103、104に沿って移動可能な規制部材105が設けられる。規制部材105は用紙Sの下端を所定位置に規制するものであり、用紙サイズに応じて移動される。
【0043】
上流側ガイド部材101と下流側ガイド部材103とは、用紙スタック部100の下側(逆Y方向側)に位置し、用紙Sがその面に沿って滑落し積載されるスタック面を構成する。また、上流側ガイド部材102と下流側ガイド部材104は、上流側ガイド部材101と下流側ガイド部材103と一定間隔をあけて対向配置される。
【0044】
中綴じ処理部72は、受針機構72aと打針機構72bとからなり、用紙Sの束の用紙搬送方向の中央部が規制部材105によって位置決めされると作動して、用紙Sの束を中綴じする。具体的には、規制部材105が用紙Sの用紙搬送方向(X、逆X方向)に移動することで、複数枚の用紙Sのセンタは、中綴じ処理部72に合わされてスタックされる。複数枚の用紙Sがスタックされた後、中綴じ処理部72で用紙Sの束が中綴じされる。なお、中綴じ処理部72で中綴じ処理が行なわれない場合には、用紙Sのセンタが折り部50に合うように、用紙Sがスタックされる。
【0045】
折り部50は、折り板51、折り上ローラ52、折り下ローラ53、第2折りローラ54、搬送路切替部材55、折り導入手段を構成する案内部材56と先端停止部材57を備え、用紙Sを二つ折り処理又は三つ折り処理を行なう。
【0046】
二つ折り処理においては、まず用紙Sの中央部が折り板51の位置に位置するよう規制部材105が移動される。ついで、折り上ローラ52、折り下ローラ53が回転しながら折り板51が用紙Sを折り上ローラ52と折り下ローラ53の間に挿入する。折り上ローラ52と折り下ローラ53は図示しないバネ部材で互いに圧接するよう付勢されているので、用紙Sは中央部で折り目をつけて折り処理され、破線位置に位置する搬送路切替部材55の下方を通って下部排紙皿83に排出される。
【0047】
三つ折り処理においては、搬送路切替部材55は実線で示す位置に設定される。用紙Sはその3分の1の位置で二つ折り処理と同様に折り処理され、ついで、用紙Sがその折り目を先頭にして搬送路切替部材55の上面に沿って案内部材56に導かれる。このとき、先端停止部材57は用紙のサイズに応じた所定位置に位置決めされており、用紙Sの先端の折り目を停止させる。
【0048】
先端が停止された状態でさらに折り上ローラ52と折り下ローラ53、および第2折りローラ54が回転すると、用紙Sは撓んで湾曲し、折り下ローラ53と第2折りローラ54の間で挟み込まれ、第2の折り処理が行なわれる。そして、用紙Sは、第2折りローラ54の下方を通って下部排紙皿83に排出される。
【0049】
(用紙押さえ装置1000)
ここで、用紙スタック部100において、複数枚の用紙Sがスタックされる場合に、用紙Sのカールにより、複数枚の用紙Sが適切に積層されない場合が考えられる。そこで、本実施の形態における後処理装置FSにおいては、搬送ローラ23と中綴じ処理部72との間に、用紙Sのカールを上流側ガイド部材101側(逆Y方向)に押さえる用紙押さえ装置1000が設けられている。以下、この用紙押さえ装置1000の詳細について図3から図11を参照して説明する。
【0050】
なお、図3は、用紙押さえ装置1000の全体斜視図、図4は、用紙押さえ装置のガイドカバーを取り外した状態の斜視図、図5は、図3中V−V線矢視断面図、図6は、図4中のVIで囲まれた領域の部分拡大図、図7は、カム機構を示す部分斜視図、図8は、カム機構の構成を示す分解斜視図、図9は、カム機構の動作を示す部分側面図、図10は、カム溝の詳細構造を示す部分斜視図、図11は、カム機構移動装置(位置変更機構)を示す部分斜視図である。
【0051】
図3から図5に示すように、用紙押さえ装置1000は、画像形成装置Aから排出される用紙Sを、図中F1方向から受けとる基準面となる用紙積載台1002と、この用紙積載台1002に対して所定の間隙を隔てて配置されるガイドカバー1003とを有している。用紙積載台1002には、用紙Sの用紙搬送方向に沿った長孔形状のスリット孔1002hが複数設けられている。用紙積載台1002およびガイドカバー1003は側面フレーム1001に固定されている。
【0052】
用紙積載台1002に設けられたスリット孔1002hには、用紙積載台1002の裏面側から表面側に向かって突出するとともに、スリット孔1002hに沿って上下方向に移動可能に設けられ、用紙Sの用紙搬送方向の下流側(図中F2方向)に向けて延びる用紙押さえ爪1004tを有する用紙押さえ部材1004が配置されている。よって、用紙押さえ爪1004tは、用紙Sの用紙搬送方向に対して直交する方向に複数配列されることとなり、また、スリット孔1002hは、用紙Sの用紙搬送方向に対して直交する方向に、用紙押さえ爪1004tに対応して複数設けられる。用紙押さえ部材1004は、側面視において逆U字形を有している。
【0053】
ガイドカバー1003は、用紙積載台1002の表面から第1の距離L1(図5参照))を隔てた位置において、スリット孔1002hに沿って設けられる第1カバー領域1003aと、スリット孔1002hが設けられていない領域に沿って設けられ、第1の距離L1よりも短い第2の距離L2(図5参照)の位置に設けられる第2カバー領域1003bとを有している。ガイドカバー1003は、外観においては、凹凸の波型に成形されている。
【0054】
図5に示す断面において、用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1は、用紙積載台1002の表面に近接する位置(第1位置:距離L3)に位置している状態を示しており、用紙Sは、用紙押さえ爪1004tの上面と、ガイドカバー1003の第2カバー領域1003bの内面との隙間を通過する。
【0055】
用紙押さえ部材1004は、後述する位置変更機構により、スリット孔1002hに沿って用紙の搬送方向(図示では上下方向)に沿って移動可能に設けられ、上記した折り部50に用紙Sのセンタが合うように、規制部材105(図2参照)および用紙押さえ部材1004の位置調整が行なわれる。
【0056】
(カム機構CM/位置変更機構HM)
次に、図6から図10を参照して、用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1が、用紙積載台1002の表面に近接する第1位置(距離L3)と、用紙積載台1002の表面から第1位置(距離L3)よりも遠ざかる第2位置(距離L4:図17参照)との間を移動可能にするカム機構CM、および、スリット孔1002hに沿って用紙押さえ部材1004を上下方向に移動させる位置変更機構HMについて説明する。なお、用紙搬送方向が略水平方向になる場合には、搬送方向の上流側が第1方向となり、搬送方向の下流側が第2方向となる。
【0057】
図6から図8に示すように、用紙押さえ部材1004の用紙押さえ爪1004tが複数配列されたベース部1004Bの端部にカム機構CMが設けられている。このカム機構CMは、ベース部1004Bから突出するフランジ部1004Fから延びる軸ピン1004aを有している。ベース部1004Bおよび用紙押さえ爪1004tは、この軸ピン1004aを回転軸芯CLとして回動するように設けられる。
【0058】
フランジ部1004Fの先端側には、軸ピン1004aに対して並行に延びるように、カム部材1008が設けられている。このカム部材1008は、軸ピン1004aに対して並行に延びるカムピン1008aと、このカムピン1008aの中間領域において半径方向に環状に張出す円環部1008bと、この円環部1008bの周縁部からカムピン1008aに対して並行に延び、カムピン1008aがその軸方向に摺動可能なように、カム部材1008をフランジ部1004Fの先端側に固定するための一対の固定爪1008cとを有している。
【0059】
カムピン1008aの後端部は、フランジ部1004Fに設けられたピン孔1004bに摺動可能に挿入される。また、フランジ部1004Fと円環部1008bとの間のカムピン1008aには、コイルばね1009が軸方向に圧縮された状態で挿入されている。これにより、カムピン1008aは常に図7および図8中の矢印R2に付勢された状態となる。
【0060】
用紙押さえ部材1004のフランジ部1004Fと側面フレーム1001との間には、軸ピン1004aが挿入されるピン挿入孔1006aを有する移動部材1006が設けられている。軸ピン1004aには、ねじりコイルばね1007が挿入されている。
【0061】
ねじりコイルばね1007の一端は移動部材1006側に固定され、他端は用紙押さえ部材1004側に固定される。ねじりコイルばね1007は、ねじり方向に圧縮された状態で固定されることにより、移動部材1006に対して、用紙押さえ部材1004は、軸ピン1004aを回転軸芯CLとして、図8および図9中の矢印R1に示す回転方向に付勢された状態とされる。
【0062】
移動部材1006は、ピン挿入孔1006aの軸芯と同一の軸芯に設けられる第1摺動ピン1006bが、ピン挿入孔1006aを挟んで軸ピン1004aとは反対側に設けられている。また、移動部材1006は、第1摺動ピン1006bの下方位置に、第2摺動ピン1006cを有している。さらに、移動部材1006は、後述の駆動ベルトB1(図11参照)に連結される連結部1006xが設けられている。
【0063】
移動部材1006の第1摺動ピン1006bおよび第2摺動ピン1006cは、側面フレーム1001に設けられた摺動溝1010に嵌め入れられた状態で、摺動溝1010内を上下方向に摺動する。したがって、移動部材1006自体が回転することはなく、摺動溝1010に沿って移動部材1006は上下方向に移動する。
【0064】
また、カム部材1008のカムピン1008aは、側面フレーム1001に設けられた摺動溝1010に対して並行に配置されたカム溝1005に嵌め入れられた状態でカム溝1005を上下方向に摺動する。
【0065】
(カム溝)
ここで、図10を参照して、カム溝1005の詳細について説明する。本実施の形態におけるカム溝1005は、上端領域に設けられる第1領域1005R1、中間領域に設けられる第2領域1005R2、および、下端領域に設けられる第3領域1005R3を有している。各領域に形成される溝形状は同じであり、本実施の形態における用紙押さえ装置1000にスタックされる用紙の大きさに応じて、移動部材1006を移動させて、用紙Sの大きさに適した領域における溝が用いられる。
【0066】
カム溝1005の、第1領域1005R1、第2領域1005R2、および第3領域1005R3は同じ形状であることから、ここでは第1領域1005R1について、溝形状を説明する。摺動溝1010に並行に延びるように第1深さを有する第1溝1005aが設けられている。第1溝1005aの上端側には、第1深さよりも浅い深さを有する第2溝1005cに達する上部スロープ1005bが設けられている。
【0067】
第2溝1005cは、第1溝1005aの上端部から、摺動溝1010とは反対側の領域において第1溝1005aに対して並行に設けられている。第2溝1005cの下端部には、第1溝1005a側に向かう傾斜側壁1005dが設けられ、また、第1溝1005aの下端部には、第1溝1005aの底面に向かう下部スロープ1005eが形成されている。なお、第3領域1005R3の下端においては、スロープを設ける必要がないため、下端壁1005fが形成されている。
【0068】
(位置変更機構HM)
次に、図11を参照して、移動部材1006を摺動溝1010に沿って(図中では上下方向)駆動させるための位置変更機構HMについて説明する。移動部材1006を摺動溝1010に沿って移動させるために、駆動モータ1019、下部プーリP1、上部プーリP2、中間プーリP3が設けられ、駆動モータ1019、下部プーリP1、上部プーリP2、および中間プーリP3には、駆動ベルトB1が無限軌道を構成するように掛けわたされている。この駆動ベルトB1に対して、移動部材1006の連結部1006xが連結されている。
【0069】
(カムピン1008aの動き)
次に、図12(A)から(D)を参照して、移動部材1006に設けられたカムピン1008aのカム溝1005内での動きについて説明する。図12(A)から(D)は、カム機構CMに用いられるカムピンの位置とカム溝の位置関係を示す部分拡大斜視図である。第1領域1005R1、第2領域1005R2、および第3領域1005R3の各領域内でのカムピン1008aの動きは同じであることから、一例として、第1領域1005R1におけるカムピン1008aの動きについて説明する。移動部材1006の上下位置は、位置変更機構HMによって所定高さ位置となるように制御される。
【0070】
なお、図7から図9を用いて説明したように、カムピン1008aには、ねじりコイルばね1007により、R1方向に向かう付勢力(第1溝1005aから第2溝1005cに向かう方向)が常に付与され、また、コイルばね1009により、カムピン1008aの軸方向(カム溝1005に当接する方向)であるR2方向に向かう付勢力が常に付与されている。
【0071】
図12(A)に示すカムピン1008aの位置は、用紙押さえ部材1004が後述する「待機位置」および「押さえ込み位置」に位置する場合を示している。カムピン1008aは、第1溝1005aの下端部に位置している。
【0072】
図12(B)に示すカムピン1008aの位置は、移動部材1006を摺動溝1010に沿って上昇させた位置で、用紙押さえ部材1004が後述する「上流側位置」に位置する場合を示している。カムピン1008aは、第1溝1005aの上端部を越えて、上部スロープ1005bに位置している。
【0073】
図12(C)に示すカムピン1008aの位置は、移動部材1006を摺動溝1010に沿ってさらに上昇させた位置で、用紙押さえ部材1004が後述する「押さえ込み準備位置」に位置する場合を示している。カムピン1008aは、ねじりコイルばね1007によるR1方向に向かう付勢力に基づき、第2溝1005c側に移動する。
【0074】
図12(D)に示すカムピン1008aの位置は、移動部材1006を摺動溝1010に沿って下降させた位置で、用紙押さえ部材1004が後述する「下流側位置」に位置する場合を示している。カムピン1008aは、傾斜側壁1005dに沿って徐々に下部スロープ1005e側に移動し、さらにカムピン1008aが下降することで、下部スロープ1005e上に移動する。カムピン1008aは、図12(A)から図12(D)に示すサイクルを繰り返すように、移動部材1006の往復運動が制御される。
【0075】
ここで、第1溝1005aは、先端部1004t1が「待機位置」から「上流側位置」に移動するまでの間、先端部1004t1が第1位置に位置するようにカムピンを付勢する第1溝領域を構成する。
【0076】
また、第2溝1005cは、先端部1004t1が「上流側位置」から「押さえ込み準備位置」に移動する際に、先端部1004t1が第1位置から第2位置に位置するようにカムピン1008aへの付勢を解除する第2溝領域を構成する。
【0077】
また、第2溝1005cの傾斜側壁1005dは、先端部1004t1が「下流側位置」から「押さえ込み位置」に移動する際に、先端部1004t1が第2位置から第1位置に位置するようにカムピン1008aを付勢する第3溝領域を構成する。
【0078】
(押さえ込みサイクル)
次に、上記構成からなる用紙押さえ装置1000を用いた、用紙Sの押さえ込みサイクルについて、図13から図22を参照して説明する。なお、以下の説明においては、移動部材1006が、カム溝1005の第2領域1005R2において押さえ込みサイクを実施する場合について説明する。
【0079】
なお、図13および図14は、「待機位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示し、図15および図16は、「上流側位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示し、図17および図18は、「押さえ込み準備位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示し、図19および図20は、「下流側位置」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示し、図21および図22は、「押さえ込み位置(待機位置)」状態における、カム機構の位置および用紙押さえ爪の位置を示す図である。
【0080】
「待機位置」
図13を参照して、押さえ込みサイクルの「待機位置」について説明する。「待機位置」は、カム機構により、用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1が、用紙積載台1002の表面に近接する第1位置(距離L3)に位置決めされ、用紙押さえ爪1004tの上面を用紙Sが搬送される状態である。図13においては、用紙Sの下流側端部(下端)は規制部材105(図2参照)により支持されており、用紙Sの上流側端部(上端)は、用紙押さえ爪1004tの上面とガイドカバー1003の第2カバー領域1003bの下面との間に位置している。
【0081】
図14を参照して、図12(A)に示したように、カム部材1008のカムピン1008aは、第1溝1005aの下流側の端部に位置している。
【0082】
「上流側位置」
図15を参照して、押さえ込みサイクルの「上流側位置」について説明する。「上流側位置」は、用紙Sが搬送された後、上記した位置変更機構により、「待機位置」から用紙押さえ部材1004をスリット孔1002hに沿って用紙搬送方向の上流側(図中U1方向)に向けて移動させた位置を示す。用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1は、用紙積載台1002の表面に近接する第1位置(距離L3)に位置決めされた状態である。用紙押さえ部材1004の上流側位置は、移動部材1006を上流側(図中U1方向)に所定距離移動させることにより実現される。「上流側位置」においては、用紙Sの先端部分は、用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1よりも下流側に位置する状態となる。
【0083】
図16を参照して、図12(B)に示したように、カム部材1008のカムピン1008aは、第1溝1005aの上端部を越えて、上部スロープ1005bに位置している。
【0084】
「押さえ込み準備位置」
図17を参照して、押さえ込みサイクルの「押さえ込み準備位置」について説明する。「押さえ込み準備位置」は、上流側位置において、カム機構により先端部1004t1が、第1位置からR1方向に回動して、用紙積載台1002の表面から第1位置よりも遠ざかる第2位置(距離L4)に位置決めされる状態である。
【0085】
図18を参照して、図12(C)に示したように、カムピン1008aは、移動部材1006を摺動溝1010に沿ってさらに上流側に移動させることで、ねじりコイルばね1007によるR1方向に向かう付勢力に基づき、第2溝1005c側に移動する。これより、先端部1004t1は、軸ピン1004aを回転軸芯CLとしてR1方向に回動する(図8および図9参照)。
【0086】
この際、用紙Sの上端部分に大きく湾曲するカール部分が存在する場合であっても、ガイドカバー1003の第2カバー領域1003bの下面側によって押さえ付けられる。また、先端部1004t1は、第2カバー領域1003bの下面側よりも第1カバー領域1003a側に位置している。
【0087】
「下流側位置」
図19を参照して、押さえ込みサイクルの「下流側位置」について説明する。「下流側位置」は、位置変更機構により用紙押さえ部材1004を「押さえ込み準備位置」からスリット孔1002hに沿って用紙Sの用紙搬送方向(図中D1方向)に対して下流側の所定位置まで移動させた状態である。これにより、先端部1004t1は、用紙Sの表面側に位置することとなり、逆U字形状の用紙押さえ部材1004により用紙Sの上端部分は、覆われる状態となる。用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1は、用紙積載台1002の表面から第2位置(距離L4)に位置決めされた状態である。
【0088】
図20を参照して、図12(D)に示したように、カムピン1008aは、移動部材1006を摺動溝1010に沿って下流側に移動させ、傾斜側壁1005dに沿って徐々に下部スロープ1005e側に移動し、さらにカムピン1008aが下流側に移動することで、下部スロープ1005e上に移動する。
【0089】
「押さえ込み位置(待機位置)」
図21を参照して、押さえ込みサイクルの「押さえ込み位置」について説明する。「押さえ込み位置」は、先端部1004t1が第2位置(距離L4)からR2方向に回動して第1位置(距離L3)に位置決めされ、用紙押さえ爪1004tにより用紙Sの上端部領域を用紙積載台1002側に向けて押さえ込む位置である。
【0090】
図22を参照して、図12(A)に示したように、カム部材1008のカムピン1008aは、第1溝1005aの下端部に位置している。この位置状態は、「待機位置」状態と同じである。その後、図13に示したように、用紙押さえ爪1004tの上面に次の用紙Sが搬送される状態となり、上述の各位置の間を順次移動する押さえ込みサイクルが実行される。
【0091】
なお、上記図13から図22においては、移動部材1006が、カム溝1005の第2領域1005R2において押さえ込みサイクルを実行する場合について説明したが、第1溝1005aまたは第2溝1005cにおいても同様に押さえ込みサイクルを実行することが可能である。
【0092】
ここで、図23から図25を参照して、用紙サイズに対応した用紙押さえ部材の移動軌跡について説明する。図23は大サイズ用紙における用紙押さえ部材の移動軌跡を示す断面図、図24は中サイズ用紙における用紙押さえ部材の移動軌跡を示す断面図、図25は小サイズ用紙における用紙押さえ部材の移動軌跡を示す断面図である。
【0093】
図23は、大サイズ用紙に対応し、最上段(上流側)に位置する第1領域1005R1を用いて、移動部材1006が押さえ込みサイクルを実行した場合の、用紙押さえ部材1004の移動軌跡A1を示す図である。
【0094】
また、図24は、中サイズ用紙に対応し、中段に位置する第2領域1005R2を用いて、移動部材1006が押さえ込みサイクルを実行した場合の、用紙押さえ部材1004の移動軌跡A2を示す図である。
【0095】
また、図25は、小サイズ用紙に対応し、最下段(下流側)に位置する第3領域1005R3を用いて移動部材1006が押さえ込みサイクルを実行した場合の、用紙押さえ部材1004の移動軌跡A3を示す図である。
【0096】
以上、本実施の形態おける画像形成システムによれば、画像形成装置Aから排出される用紙Sを受けとる用紙押さえ装置1000を用いることにより、画像形成装置Aから排出される用紙Sにカールが生じている場合であっても、用紙押さえ部材1004により用紙Sのカールを押さえ込み、次に搬送される用紙Sの進入を遮ることはない。
【0097】
また、カム機構を有する移動部材1006に対して一つの位置変更機構を採用することのみで、用紙搬送方向に沿った用紙Sの長さに対応して、押さえ込みサイクルの初期位置である「待機位置」の変更を可能としている。このように、簡易な機構を採用することで、装置構成の大型化を回避し、また、製造コストの上昇の抑制を可能としている。
【0098】
なお、上記実施の形態では、ガイドカバー1003の好ましい形態として、用紙積載台1002の表面から第1の距離L1(図5参照)を隔てた位置において、スリット孔1002hに沿って設けられる第1カバー領域1003aと、スリット孔1002hが設けられていない領域に沿って設けられ、第1の距離L1よりも短い第2の距離L2(図5参照)の位置に設けられる第2カバー領域1003bとを有する構成としている。
【0099】
また、第2の距離L2は、用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1が、第1位置における先端部1004t1と用紙積載台1002の表面との間の距離(L3)よりも大きく設け、第1の距離L1は、先端部1004t1が、第2位置における先端部1004t1と用紙積載台1002の表面との間の距離(L4)よりも小さくなる構成とした。
【0100】
これにより、用紙Sの大きなカールを押さえ込むことを可能としているが、用紙Sのカールの大きさが比較的小さく、カールの幅が、用紙押さえ爪1004tの先端部1004t1が第2位置に位置する場合の先端部1004t1と用紙積載台1002の表面との間の距離L4よりも小さい場合には、ガイドカバー1003を設けなくても良い場合がある。
【0101】
また、複数の用紙押さえ爪1004tを、用紙Sの用紙搬送方向に対して交差する方向に複数並べる場合について説明したが、用紙押さえ爪1004tを1本のみ用いる構成を採用することも可能である。
【0102】
また、図7から図12に示すカム機構を画像形成装置Aから排出される用紙Sを受けとる用紙押さえ装置1000に適用する場合について説明したが、上記カム機構と、このカム機構に対して押さえ込みサイクルの初期位置である待機位置の変更を可能にする位置変更機構を含む、カム保持装置を、同様のサイクルが求められる装置に適用することも可能である。
【0103】
なお、上記用紙押さえ装置1000については、後処理装置FSに設けられた搬送路H1に沿って設けるようにしたことから、用紙押さえ部材1004の移動軌跡も搬送路H1に沿った略上下方向への移動を開示しているが、搬送路H1が略水平に設けられる構成の場合には、用紙押さえ部材1004の移動軌跡も搬送路H1に沿った略水平方向への移動となる。上記実施の形態における上下方向の説明においては、上方向(用紙搬送方向の上流側)が第1方向、下方向(用紙搬送方向の下流側)が第1方向とは反対の第2方向となる。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1A イメージセンサ、2 画像処理部、3 画像書込部、4 画像形成部、4A 感光体ドラム、4B 転写手段、5 給紙カセット、6 給紙ローラ手段、7 定着装置、8,22 排紙ローラ、8A 搬送路切り替え板、9 自動両面コピー給紙部、20 用紙搬入部、21,23 搬送ローラ、30a,30b 挿入紙給紙部、40 孔あけ処理部、50 折り部、51 折り板、52 折り上ローラ、53 折り下ローラ、54 第2折りローラ、55 搬送路切替部材、56 案内部材、57 先端停止部材、60 処理部、70 集積部、71 端綴じ処理部、72 中綴じ処理部、72a 受針機構、72b 打針機構、80 排紙部、81 固定排紙皿、82 昇降排紙皿、83 下部排紙皿、100 用紙スタック部、101,102 上流側ガイド部材、103,104 下流側ガイド部材、105 規制部材、1000 用紙押さえ装置、1001 側面フレーム、1002 用紙積載台、1002h スリット孔、1003 ガイドカバー、1003a 第1カバー領域、1003b 第2カバー領域、1004 用紙押さえ部材、1004B ベース部、1004F フランジ部、1004a 軸ピン、1004b ピン孔、1004t 用紙押さえ爪、1004t1 先端部、1005 カム溝、1005R1 第1領域、1005R2 第2領域、1005R3 第3領域、1005a 第1溝、1005b 上部スロープ、1005c 第2溝、1005d 傾斜側壁、1005e 下部スロープ、1005f 下端壁、1006 移動部材、1006a ピン挿入孔、1006b 第1摺動ピン、1006c 第2摺動ピン、1006x 連結部、1007,1009 コイルばね、1008 カム部材、1008a カムピン、1008b 円環部、1008c 固定爪、1010 摺動溝、1019 駆動モータ、A 画像形成装置、B1 駆動ベルト、CL 回転軸芯、CM カム機構、DF 自動原稿送り装置、FS 後処理装置、HM 位置変更機構、P1 下部プーリ、P2 上部プーリ、P3 中間プーリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置から排出される用紙を受けとる用紙押さえ装置であって、
排出された前記用紙が載置され、用紙搬送方向に沿って開口された長孔を有する用紙積載台と、
前記用紙積載台の前記長孔において、前記用紙積載台の裏面側から表面側に向かって突出するとともに、前記長孔に沿って移動可能に設けられ、前記用紙搬送方向の下流側に向けて延びる用紙押さえ爪を有する用紙押さえ部材と、
前記長孔に沿って前記用紙押さえ部材を移動させる位置変更機構と、
前記用紙押さえ爪の先端部が、前記用紙積載台の表面に近接する第1位置と、前記用紙積載台の表面から前記第1位置よりも遠ざかる第2位置との間を移動可能にするカム機構と、を備え
前記カム機構は、前記位置変更機構により、前記用紙搬送方向に沿った前記用紙の長さに対応して、前記長孔に対する位置の変更が可能に設けられている、用紙押さえ装置。
【請求項2】
前記用紙押さえ部材は、
前記カム機構により、前記先端部が前記第1位置に位置決めされ、前記用紙押さえ爪の上面を前記用紙が搬送される待機位置と、
前記用紙が搬送された後、前記位置変更機構により、前記待機位置から前記用紙押さえ部材を前記長孔に沿って前記用紙搬送方向の上流側に向けて移動させた上流側位置と、
前記上流側位置において、前記カム機構により前記先端部が前記第2位置に位置決めされる押さえ込み準備位置と、
前記位置変更機構により、前記用紙押さえ部材を前記押さえ込み準備位置から前記長孔に沿って前記用紙搬送方向の下流側の所定位置まで移動させる下流側位置と、
前記下流側位置において、前記カム機構により前記先端部が前記第2位置から前記第1位置に位置決めされて、前記用紙押さえ爪により前記用紙の上流側端部領域を前記用紙積載台側に向けて押さえ込み、前記待機位置と同じ状態となる押さえ込み位置と、の各位置の間を順次移動する押さえ込みサイクルが可能に設けられるとともに、
前記カム機構は、前記位置変更機構により、前記用紙搬送方向に沿った前記用紙の長さに対応して、前記押さえ込みサイクルの初期位置である待機位置の変更が可能に設けられている、請求項1に記載の用紙押さえ装置。
【請求項3】
前記カム機構は、
前記先端部が、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に回転力を付与する力付与部材を有するカムピンと、
前記押さえ込みサイクルにしたがった前記用紙押さえ部材の移動にしたがって、前記カムピンを摺動可能に受け入れるカム溝と、を含み、
前記カム溝は、
前記先端部が前記待機位置から前記上流側位置に移動するまでの間、前記先端部が前記第1位置に位置するように前記カムピンを付勢する第1溝領域と、
前記先端部が前記上流側位置から前記押さえ込み準備位置に移動する際に、前記先端部が前記第1位置から前記第2位置に位置するように前記カムピンへの付勢を解除する第2溝領域と、
前記先端部が前記下流側位置から前記押さえ込み位置に移動する際に、前記先端部が前記第2位置から第1位置に位置するように前記カムピンを付勢する第3溝領域と、を有する請求項2に記載の用紙押さえ装置。
【請求項4】
前記用紙押さえ爪は、前記用紙の用紙搬送方向に対して直交する方向に複数配列され、
前記長孔は、前記前記用紙の用紙搬送方向に対して直交する方向に、前記用紙押さえ爪に対応して複数設けられる、請求項2または3に記載の用紙押さえ装置。
【請求項5】
前記用紙積載台の表面から所定の間隙を隔てて配置されるガイドカバーをさらに備え、
前記ガイドカバーは、
前記長孔に沿って設けられ、前記用紙積載台の表面から第1の距離を隔てた位置に設けられる第1カバー領域と、
前記長孔が設けられていない領域に沿って設けられ、前記第1の距離よりも短い第2の距離の位置に設けられる第2カバー領域と、を有し、
前記第2の距離は、
前記先端部が、前記第1位置における前記先端部と前記用紙積載台の表面との間の距離よりも大きく、
前記第1の距離は、
前記先端部が、前記第2位置における前記先端部と前記用紙積載台の表面との間の距離よりも小さい、請求項2から4のいずれかに記載の用紙押さえ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の用紙押さえ装置と、
該用紙押さえ装置に用紙を送り出す画像形成装置と、
を有する、画像形成システム。
【請求項7】
作動部材を、基準面の表面に近接する第1位置と、前記基準面から前記第1位置よりも遠ざかる第2位置との間を移動可能にするカム機構を含むカム保持装置であって、
前記カム機構は、
前記作動部材が、前記第1位置に位置決めされる待機位置と、
前記待機位置から前記作動部材を前記基準面沿って第1方向に移動させた第1移動位置と、
前記第1移動位置において、前記作動部材が前記第2位置に位置決めされる準備位置と、
前記作動部材を前記準備位置から前記第1方向とは反対の第2移動位置まで移動させた第2移動位置と、
前記第2移動位置において、前記作動部材が前記第2位置から前記第1位置に位置決めされて前記待機位置に戻るサイクルが可能に設けられるとともに、
前記サイクルの初期位置である待機位置の変更を可能にする位置変更機構を含む、カム保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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