説明

用紙裁断機構

【課題】可動刃を固定刃に対して上方から擦り合わせるように下降させる裁断ユニット、裁断ユニットの搬送方向両側には駆動部を有する搬送ローラ対、及び駆動制御部を有する用紙裁断機構において、切断用紙片の搬送方向下流端上面に可動刃下降による擦り傷が付かないようにする。
【解決手段】駆動制御部15は、刃駆動部28が可動刃の下降を開始する時には搬送ローラ対21,22が停止しており、また、可動刃が用紙を裁断し終えた瞬間あるいはその直後の所定下降位置で、裁断ユニット13の搬送方向下流側に位置する搬送ローラ対22を作動する、ようにローラ駆動部25,26を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送手段によって搬送し、裁断手段によって、搬送方向に対する直交方向に用紙を裁断する用紙裁断機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図15は、一般的な用紙裁断機構の要部の縦断面図(特許文献1等)である。この用紙裁断機構は、下側に固定刃201を備え、上側に可動刃202を備え、両刃201,202の用紙搬送方向Fの上流側と下流側にそれぞれ搬送ローラ対203,204を備えている。両搬送ローラ対203,204によって用紙Pを上下から挟持し、搬送方向Fに搬送し、搬送方向Fの所定位置において、可動刃202を固定刃201に対して上方から擦り合わせるように下降させることにより、裁断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−239312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図15に示す用紙裁断機構では、図16に示されるように、裁断時、可動刃202の先端202aが固定刃201の先端201aを下方に通過して、最下降位置まで下降する際に、両搬送ローラ対203,204は停止状態で維持されているので、可動刃202のしのぎ面202bと用紙Pとが擦れ、裁断後の用紙片P1の搬送方向下流端部Paに傷が付く、という不具合が生じる。
【0005】
なお、上記不具合に対し、用紙裁断後、可動刃を最下降位置まで下降させることなく所定下降位置で停止し、その後直ぐに上昇させれば、理論上、用紙に傷は発生しないことになるが、各種用紙の幅に合わせて可動刃の折り返し位置(停止位置)を精度良く設定することは、実質的に困難であり、正確な応答性を確保することは困難である。
【0006】
本発明は、裁断時に、容易に、可動刃により用紙片に傷が付くのを防止できる用紙裁断機構を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、用紙を搬送手段によって搬送し、裁断手段によって、搬送方向に対する直交方向に用紙を裁断する用紙裁断機構において、前記裁断手段として、前記直交方向に沿って配置された固定刃及び可動刃と、該可動刃を前記固定刃に対して上方から擦り合わせるように下降させる刃駆動部と、を備え、前記搬送手段として、前記用紙を上下から挟んで搬送する搬送ローラ対と、該搬送ローラ対を駆動するローラ駆動部と、を備え、さらに、用紙裁断機構は、前記刃駆動部及び前記ローラ駆動部を制御する駆動制御手段を、備えており、前記駆動制御手段は、前記刃駆動部が前記可動刃の下降を開始する時に、前記搬送ローラ対が停止しているように前記ローラ駆動部を制御し、前記可動刃が用紙を裁断し終えた瞬間あるいは裁断直後の最下降位置手前の所定下降位置で、前記裁断手段の搬送方向下流側に位置する前記搬送ローラ対を作動して裁断後の用紙片を搬送するように、前記ローラ駆動部を制御するようになっている。
【0008】
本発明は、前記用紙裁断機構において、さらに次のような構成を備えることもできる。
【0009】
(a)前記駆動制御手段は、下降する前記可動刃が用紙を裁断し終えた瞬間あるいはその直後の所定下降位置を検知する位置検知手段を備えている。
【0010】
(b)前記(a)のような位置検知手段の代わりに、前記駆動制御手段は、前記可動刃が下降を開始した時から、用紙を裁断し終えた瞬間あるいはその直後の前記所定下降位置までの下降時間を計測する下降時間計測手段を備えている。
【0011】
(c)前記可動刃の刃先は、前記直交方向に沿って延びると共に水平に対して傾斜しており、前記刃駆動部は、前記可動刃を、垂直方向に対して、前記刃先の低い側に傾斜した方向に、下降させるようになっている。
【0012】
(d)前記搬送手段は、用紙の前記直交方向の一方側の端縁を前記搬送方向に沿ってガイドする基準ガイド面を備えており、前記刃駆動部が、前記基準ガイド面の配置側とは反対側に配置されており、前記可動刃の刃先は、前記直交方向に沿って延びると共に、水平に対して、前記刃駆動部側が低くなるように傾斜しており、前記所定下降位置は、可動刃が、用紙の基準ガイド面に当接する用紙端縁を裁断し終えた瞬間あるいはその直後であって、かつ、最下降位置手前の位置に設定されている。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明によると、用紙が切断された瞬間あるいはその直後において、最下降位置に達する前に、搬送下流側に位置する裁断後の用紙片は、速やかに可動刃及び固定刃から搬送下流側に離されるので、裁断後の用紙片の搬送上流端部に可動刃による擦り傷が生じるのを防ぐことができ、裁断用紙の品質を保つことができる。
【0014】
(2)上記構成(a)あるいは(b)によると、用紙が裁断された瞬間あるいはその直後の所定下降位置を、位置検知手段あるいは時間計測手段により検知することにより、裁断完了時点を正確に把握することができ、用紙の品質を、より向上させることができる。
【0015】
(3)構成(c)によると、裁断時、まず、刃先の低い方の端部により用紙の搬送方向端部に切り目を付け、それから順次、刃先の高い方に向かって裁断してゆくので、用紙を円滑に裁断することができ、裁断面が綺麗に仕上がる。
【0016】
(4)構成(d)のように、基準ガイド面を設け、所定下降位置を前記基準ガイド面における可動刃の位置を対象としているので、如何なる大きさの用紙に対しても、所定下降位置を設定変更することなく、用紙が幅方向に完全に裁断された瞬間あるいはその直後に、用紙片を引き離すことができる。すなわち、用紙の大きさに対する所定下降位置の設定変更作業が不要となり、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る用紙裁断機構を備えた用紙加工装置の全体を示す模式縦断面図である。
【図2】図1の用紙裁断機構の平面図である。
【図3】図2の裁断ユニットの正面図(III矢視図)である。
【図4】図2の裁断ユニットの上方斜視図である。
【図5】可動刃の動きを示す図3と同じ部分の正面略図である。
【図6】可動刃の下降開始位置の状態を示す図5と同じ部分の正面略図である。
【図7】可動刃が所定下降位置まで下降した状態を示す図5と同じ部分の正面略図である。
【図8】可動刃が最下降位置まで下降した態を示す図5と同じ部分の正面略図である。
【図9】可動刃が下降開始位置で停止し、用紙を搬送している状態を示す図6のIX-IX断面拡大図である。
【図10】可動刃が下降開始位置で、用紙が停止した状態を示す図6のIX-IX断面拡大図である。
【図11】可動刃が所定下降位置まで下降して、用紙の裁断が略終了した瞬間の状態を示す図7のXI-XI断面拡大図である。
【図12】裁断ユニットの変形例を示す図5と同様の正面略図である。
【図13】裁断ユニットの別の変形例を示す図5と同様の正面略図である。
【図14】裁断ユニットの別の変形例を示す図9と同様の断面図である。
【図15】従来の裁断ユニットの図9と同様の断面拡大図である。
【図16】図15の裁断ユニットの裁断時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る用紙裁断機構30を備えた用紙加工装置の全体を示す模式縦断面図である。用紙加工装置は、装置本体10の用紙搬送方向F側の端部に排紙トレイ12を備え、用紙搬送方向F側とは反対側の端部に給紙トレイ11を備え、該給紙トレイ11と排紙トレイ12との間に、略水平な搬送経路19が構成されている。搬送経路19の途中には、搬送手段として、複数の搬送ローラ対21、22、23、…が搬送方向Fに間隔をおいて配置されると共に、搬送ローラ対21、22、23間に、裁断ユニット(裁断手段)13及び折り型形成ユニット14が搬送上流側から順に配置されている。各搬送ローラ対21,22,23は、それぞれ上下一対の搬送ローラ21A、21B、22A、22B、23A、23Bから構成されている。下側の各搬送ローラ21A、22A,23Aは、それぞれローラ駆動部25,26,27に動力伝達可能に連結されており、各ローラ駆動部25,26,27により矢印R1方向に回転することにより、用紙Pを上下から挟持した状態で、搬送方向Fに搬送するようになっている。各搬送ローラ対21,22,23の下側の駆動側の搬送ローラ21A、22A、23Aは、表面がウレタンでできており、摩擦により大きな搬送力が発生する。一方、上側の従動側の搬送ローラ21B、22B、23Bはスポンジ等の軟性部材でできており、用紙の表面を傷付けないようになっている。
【0019】
裁断ユニット13及び折り型形成ユニット14には、刃駆動部28及び押し型駆動部29がそれぞれ連結されており、これら駆動部28,29及び前記各搬送ローラ対21,22,23のローラ駆動部25,26,27は、装置本体10に内蔵された駆動制御部(駆動制御手段)15に電気的に接続されている。また、装置本体10内には、裁断ユニット13及び折り型形成ユニット14の下方に、くず箱16が配置されている。
【0020】
図2は図1の用紙裁断機構30の平面図であり、用紙裁断機構30は、前記裁断ユニット13と、該裁断ユニット13の搬送方向Fの上流側と下流側に配置された前記搬送ローラ対21、22と、前記裁断ユニット用の刃駆動部28と、前記搬送ローラ対21、22用のローラ駆動部25,26とから構成されている。
【0021】
搬送方向Fと直交する水平方向Wを「搬送幅方向」と称するとすると、搬送経路19の搬送幅方向Wの一方側には、搬送方向Fと平行に延びる基準ガイド面20aを有する基準ガイド板20が立設されている。前記刃駆動部28及び各ローラ駆動部25,26は、搬送幅方向Wの他方側、すなわち前記基準ガイド板20とは反対側に配置されている。
【0022】
図3は、図2の裁断ユニット13のIII矢視図、図4は、図2の裁断ユニット3の上方斜視図、図5は可動刃の動きを示す正面略図、図6乃至図8は、可動刃の下降開始位置、所定下降位置及び最下降位置の状態を示す正面略図である。図4において、裁断ユニット13は、下側の固定刃40と、上側の可動刃41とを備え、両刃40,41は搬送幅方向Wに沿って延びように配置されている。固定刃40は、その上端の刃先40aが水平状態となるように、下側の固定板43に固定されている。可動刃41は、水平に対して、その下端の刃先41aが搬送幅方向Wの刃駆動部28側に行くに従って低くなるように傾斜した状態で配置されており、搬送上流側に配置された上側ガイド体47に沿って上下方向に移動する。可動刃41の刃先41aの水平に対する傾斜角度は、1°乃至5°程度であり、該実施の形態では、たとえば1.5°程度に設定されている。
【0023】
可動刃41の刃駆動部28側の基端部41cは、上下一対の平行なリンク部材44a、44b及び該両リンク部材44a、44bを連結する連結部材44cよりなる平行リンク機構44により、裁断ユニットケース(図示せず)等の適宜固定部材に支持され、可動刃41の刃駆動部28側と反対側の先端部41dも、基端部41c側の平行リンク機構44と同様な平行リンク機構46により、適宜の固定部材に支持されており、これにより、可動刃41は、傾斜状態を保って上下方向に平行移動できるようになっている。
【0024】
刃駆動部28は、駆動モータ31と、該駆動モータ31にベルト伝導機構32により連結されたギヤ式減速機33と、該ギヤ式減速機33の出力ディスク34に偏心支持された偏心アーム35とを備えている。駆動モータ31の回転により、ベルト伝導機構32及びギヤ式減速機33を介して出力ディスク34を回転し、この出力ディスク34の回転運動を偏心アーム35の上下方向の運動に変換して、前記平行リンク機構44に伝達し、この平行リンク機構44の上下方向の運動により、可動刃41を上下方向に移動するようになっている。
【0025】
図3において、可動刃41を平行リンク機構44、46により支持しているので、可動刃41の上下方向の動きは、垂直方向ではなく、矢印Kで示すように、下降するに従って搬送幅方向Wの基端部41c側に移動するように、斜めに下降する。すなわち、可動刃41の下降方向は、垂直方向に対して、刃先41aの低い側に傾斜した方向Kとなっている。
【0026】
可動刃41の基端部41c側の平行リンク機構44の上方には、可動刃41のホーム位置を検知するためのホーム位置センサ51と、可動刃41がホーム位置から所定量だけ下降した所定下降位置を検出するための所定下降位置(下降量)センサ52が配置されている。両位置センサ51,52は光式センサであり、コの字状部分を有している。一方、平行リンク機構44の上側リンク部材44aには遮光板53が設けられている。
【0027】
前記遮光板53は、平行リンク機構44の上側リンク部材44aの回動中心O1を中心とする円周に沿った円弧形に形成されており、前記上側リンク部材44aの回動に伴い、前記回動軸芯O1回りに矢印B1及びB2方向に移動し、前記各位置センサ51,52のコの字状部分内を出入りする。これにより、各位置センサ51,52を通光状態(オン状態)と遮光状態(オフ状態)との間で切り換え、オン信号及びオフ信号を駆動制御部15に入力する。
【0028】
ホーム位置センサ51の配置位置は、図3及び図6に示すように、可動刃41の刃先41aの略全幅が固定刃40の刃先40aよりも高くなる下降開始位置まで上昇した時に、遮光板53の上端がホーム位置センサ51を遮光状態とする位置である。なお、この時の遮光板53は、所定下降位置センサ52も遮光状態としている。
【0029】
一方、所定下降位置センサ52の配置位置は、可動刃41がホーム位置から下降して、図7に示すように、基準ガイド面20aにおける可動刃41の刃先41aが、固定刃40の刃先40aと同じ高さ、あるいは1乃至3mm程度低い位置に来た時、すなわち、所定下降位置まで下降した時に、搬送下流側の搬送ローラ対22が作動するように、設定されている。なお、前記所定下降位置は、可動刃41の最下降位置よりも上方である。実際の機械では、図3の所定下降位置センサ52が遮光状態から通光状態に切り換えられた時点と、搬送下流側のローラ対22が作動開始する時点とでは、クラッチ等の作動の関係でタイムラグが生じると考えられる。この場合、タイムラグを考慮して、図7の所定下降位置まで下降する前の適切な位置を所定下降位置センサ52により検知し、所定下降位置においては搬送上流側の搬送ローラ対22が確実に作動するように設定される。勿論、タイムラグが0の場合には、図7の状態を所定下降位置センサ52により検知するように、設定される。
【0030】
すなわち、図3において、可動刃41がホーム位置に位置している時には、ホーム位置センサ51及び所定下降位置センサ52は、共に遮光状態に維持されており、可動刃41が下降し始めると、ホーム位置センサ51は遮光状態から通光状態に切り換わるが、所定下降位置センサ52は遮光状態が維持される。そして、可動刃41が図7の所定下降位置まで下降したとき、あるいはその前の適切な位置で、所定下降位置センサ52が遮光状態から通光状態に切り換わり、その後、図8に示す最下降位置までは、両位置センサ51、52は共に通光状態が維持される。
【0031】
前記各位置センサ51,52の状態がそれぞれ駆動制御部15に入力されることにより、駆動制御部15は、可動刃41のホーム位置及び所定下降位置をそれぞれ認識するのである。
【0032】
図9は、図3のIX-IX断面拡大図であり、固定刃40に対して可動刃41は搬送方向F側に位置しており、可動刃41の下端部のしのぎ面41bは搬送方向F側に形成され、固定刃40の上端部のしのぎ面40bは搬送方向Fと反対側に形成されている。すなわち、可動刃41の搬送方向Fと反対側の面を固定刃40の搬送方向F面とを擦り合わせることにより、用紙Pを裁断するのである。
【0033】
(制御内容及び作用)
図1において、駆動制御部15の入力部には、少なくとも各位置センサ51,52からの可動刃41の位置に関する検知信号が入力され、駆動制御部15の出力部は、入力された各検知信号に基づき、所望の制御を行うように、各搬送ローラ対21,22、23のローラ駆動部25,26,27に対する駆動及び停止信号、並びに裁断ユニット13の刃駆動部28及び折り型形成工ユニット14の押し型駆動部29に対する駆動及び停止信号を発する。
【0034】
特に、本発明に関する制御として、可動刃41が下降開始位置から所定下降位置まで下降する間は、両ローラ駆動部25,26を停止させ、所定下降位置(図7)まで下降した時には、所定下降位置センサ52からの検知信号により、停止状態の搬送下流側の搬送ローラ対22が作動して、裁断された用紙片P1が搬送方向Fに搬送されるように、プログラムが設定されている。前記所定下降位置の具体的な位置は、基準ガイド面20aにおいて、図11に示すように、可動刃41の刃先41aが固定刃40の刃先40aよりも2mm乃至3mm程度の寸法dだけ下方に通過した位置であり、同時に、図7に示す可動刃41の基端部41cにおいて、可動刃41の刃先41aが固定刃40の刃先40aよりも15mm程度下方に通過した位置である。
【0035】
以下、駆動制御部15による用紙裁断機構30の各駆動部25、26、28の制御及び裁断作業の詳細を説明する。
【0036】
(1)図9のように可動刃41がホーム位置まで上昇して停止した状態において、両搬送ローラ対21,22が駆動し、これにより、搬送経路19内の長尺の用紙Pは、両搬送ローラ対21,22のニップ部で挟持されて搬送方向Fに搬送される。用紙Pが搬送方向Fの所定位置まで搬送されると、駆動制御部15から各搬送ローラ対21,22のローラ駆動部25,26への停止信号により、図10に示すように、用紙Pは搬送方向Fの所定位置で停止される。
【0037】
(2)次に、搬送ローラ対21,22が停止し、用紙を挟持した状態で、駆動制御部15から裁断ユニット13の刃駆動部28へ駆動信号が発せられることにより、裁断ユニット13の刃駆動部28が駆動する。これにより、可動刃41は、図6に示すホーム位置から矢印K方向に斜めに下降し、可動刃41の刃先41aと固定刃40の刃先40aにより、用紙Pを可動刃41の基端部41c側から先端部41d側へと裁断する。用紙裁断時において、両ローラ対21,22が停止している時間は、0.1秒乃至0.3秒程度である。
【0038】
(3)図7のように、用紙全幅の裁断が終了した瞬間あるいはその直後であって、可動刃41が所定下降位置まで下降すると、図3の所定下降位置センサ52からの検知信号により、図11のように、裁断ユニット13の搬送下流側の搬送ローラ対22が駆動し、裁断された用紙片P1を搬送方向Fに搬送し、可動刃41から引き離す。続いて、可動刃41は図7の所定下降位置から図8に示す最下降位置まで下降するが、この下降行程では、裁断された用紙片P1の搬送下流端部は可動刃41から離れているので、用紙片P1には可動刃41のしのぎ面41bによる擦り傷が生じることはなく、品質のよい裁断部分とすることができる。
【0039】
(4)図8のように最下降位置まで下降した可動刃41は、続いて図3の出力ディスク34の回転により、偏心アーム36を介して図7のホーム位置まで押し上げられる。そして、再び、両搬送ローラ対21,22が駆動し、長尺の用紙Pが裁断ユニット13を通過するように搬送される。
【0040】
本実施の形態によると、
(1)可動刃41が最下降位置まで到達する途中であって、所定下降位置まで下降し、裁断が終了し、あるいは終了した直後に、搬送下流側の搬送ローラ対22が作動して、裁断された用紙片P1を可動刃41から搬送方向Fへ引き離すので、用紙片P1に擦り傷が生じることが無く、品質の良い裁断用紙を提供できる。
【0041】
(2)可動刃41の刃先41aは水平に対して傾斜し、かつ、垂直方向に対して、刃先41aの低い側に傾斜したK方向に、可動刃41が下降するので、可動刃41を垂直に下降させる場合に比べ、まず、用紙Pの搬送幅方向の端部に切り目を付け、それから刃先41aの低い方から高い方へ、軽い押し付け荷重で円滑に裁断することができる。
【0042】
(3)搬送幅方向Wの一方側に搬送方向Fに沿って用紙をガイドする基準ガイド面20aを備え、刃駆動部28を基準ガイド面20aの配置側とは反対側に配置し、可動刃41の刃先41aを、刃駆動部28側が低くなるように傾斜しているので、各種大きさの用紙に対して、基準ガイド面20aにおける一つの所定下降位置を設定しておくだけで、常に、用紙の裁断を終了した瞬間又は直後に、搬送下流側の搬送ローラ対22を作動させることができ、裁断作業前における設定及び調整が簡単である。
【0043】
[第2の実施の形態]
前記第1の実施の形態では、可動刃41の所定下降位置を検知する手段として、可動刃41と共に移動する遮光板53の位置を直接検知する所定下降位置センサ52を設けたが、可動刃41の下降速度と、ホーム位置から所定下降位置までの距離に基づいて、所定下降位置まで下降する時間を算出し、その必要下降時間を駆動制御部15に記憶させておいてもよい。すなわち、可動刃41がホーム位置から下降する際に、下降開始からの時間をカウントし、必要下降時間が経過した時に、搬送下流側の搬送ローラ対22を駆動するように制御する。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0044】
[第3の実施の形態]
図12は第3の実施の形態であり、可動刃41の刃先41aは水平状態となっており、また、可動刃41は垂直に下降する構成である。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0045】
[第4の実施の形態]
図13は第4の実施の形態であり、可動刃41の刃先41aは第1の実施の形態と同様に傾斜しているが、可動刃41は垂直に下降する構成である。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0046】
[第5の実施の形態]
図14は第5の実施の形態であり、固定刃40の変形例を示している。すなわち、固定刃40の刃先40aを、搬送経路19の下面よりも少し下方に配置し、前記刃先40aの上方を覆うように、搬送経路19の下面と略同一高さに、ガイドカバー65を設けた例である。搬送経路19の下面と刃先40aとの距離cは、たとば5mm程度である。この構造によると、裁断ユニット13内に用紙Pを通過させる場合に、用紙が固定刃40の刃先40aに擦れることがなく、搬送中における用紙Pの擦り傷の発生を防止することができる。
【0047】
[その他の実施の形態]
(1)前記第1の実施の形態において、ホーム位置センサ51及び所定下降位置センサ52として、接触式のマイクロスイッチ、磁気式の近接スイッチ等を配置することも可能である。
(2)用紙の種類によっては、図6のように、下降方向を刃先41aの低い側に傾斜させる代わりに、下降方向を刃先41aの刃先41aの高い側に傾斜させる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
13 裁断ユニット(裁断手段)
15 駆動制御部(駆動制御手段)
20 基準ガイド板
20a 基準ガイド面
21、22 搬送ローラ対(搬送手段)
25、26 ローラ駆動部
28 刃駆動部
30 用紙裁断機構
40 固定刃
40a 固定刃の刃先
41 可動刃
41a 可動刃の刃先
41c 可動刃の基端部
41d 可動刃の先端部
51 ホーム位置センサ
52 所定下降位置センサ
53 遮光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送手段によって搬送し、裁断手段によって、搬送方向に対する直交方向に用紙を裁断する用紙裁断機構において、
前記裁断手段として、前記直交方向に沿って配置された固定刃及び可動刃と、該可動刃を前記固定刃に対して上方から擦り合わせるように下降させる刃駆動部と、を備え、
前記搬送手段として、前記用紙を上下から挟んで搬送する搬送ローラ対と、該搬送ローラ対を駆動するローラ駆動部と、を備え、
さらに、用紙裁断機構は、前記刃駆動部及び前記ローラ駆動部を制御する駆動制御手段を、備えており、
前記駆動制御手段は、前記刃駆動部が前記可動刃の下降を開始する時に、前記搬送ローラ対が停止しているように前記ローラ駆動部を制御し、前記可動刃が用紙を裁断し終えた瞬間あるいは裁断直後の最下降位置手前で、前記裁断手段の搬送方向下流側に位置する前記搬送ローラ対を作動して裁断後の用紙片を搬送するように、前記ローラ駆動部を制御するようになっている、
ことを特徴とする用紙裁断機構。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、下降する前記可動刃が用紙を裁断し終えた瞬間あるいはその直後の所定下降位置を検知する位置検知手段を備えている、請求項1記載の用紙裁断機構。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記可動刃が下降を開始した時から、用紙を裁断し終えた瞬間あるいはその直後の前記所定下降位置までの下降時間を計測する下降時間計測手段を備えている、請求項1記載の用紙裁断機構。
【請求項4】
前記可動刃の刃先は、前記直交方向に沿って延びると共に水平に対して傾斜しており、
前記刃駆動部は、前記可動刃を、垂直方向に対して、前記刃先の低い側に傾斜した方向に、下降させるようになっている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の用紙裁断機構。
【請求項5】
前記搬送手段は、用紙の前記直交方向の一方側の端縁を前記搬送方向に沿ってガイドする基準ガイド面を備えており、
前記刃駆動部が、前記基準ガイド面の配置側とは反対側に配置されており、
前記可動刃の刃先は、前記直交方向に沿って延びると共に、水平に対して、前記刃駆動部側が低くなるように傾斜しており、
前記所定下降位置は、可動刃が、用紙の基準ガイド面に当接する用紙端縁を裁断し終えた瞬間あるいはその直後であって、かつ、最下降位置手前の位置に設定されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の用紙裁断機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−200974(P2011−200974A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70463(P2010−70463)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】