説明

田植機

【課題】薬剤の散布を薬剤吐出口で一時的に止める際、コンパクトな状態で薬剤吐出口に装着できるとともに、脱着時には容量を大きくすることができる容器を簡単な構成で設けて、苗に余分な薬剤がかかることや想定外の場所への施薬、飛散を防止し、コストダウンを図り得る田植機を提供する。
【解決手段】苗載台16上面であって、条を仕切る複数の苗台リブ71a,71b,71cの間に苗マット73を載置し、苗の移植と同時に苗マット73に施薬する薬剤散布機75を、苗載台16の上方に配置し、薬剤散布機75の薬剤吐出口66に、容器81を着脱自在に備えるとともに、容器81は、容量可変構造である。また、容器81´は、この容器81´の筒部83長さを薬剤吐出口66の外周部66aに沿って延長し、薬剤吐出口66に挿通可能な構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台上面であって、条を仕切る複数の苗台リブの間に苗マットを載置し、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機を、苗載台の上方に配置した田植機に関し、より詳細には、薬剤散布機の薬剤吐出口に、容器を着脱自在に備えるとともに、前記容器は、容量可変構造であることに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植機には、図8に示すように、後部に配置される苗載台101上に苗マット102を載置させ、該苗載台101上方に薬剤散布機103を配置し、薬剤散布機103の繰出部104の下部に連結された散布ノズル105の先端部より薬剤を繰り出し、苗の移植時に薬剤散布を行う形態のものがある。 (特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2006−158380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の田植機では、薬剤散布機の薬剤吐出口から散布される薬剤を、苗マット上に落下させる(散布させる)場合と、一時的に落下させない(散布させない)場合とのどちらかに切換えるための容器を、前記薬剤散布機の薬剤吐出口近傍に備えるものの、薬剤吐出口の下方や苗マット上方に該容器が取付けられるため、天候不順時などに容器内の薬剤が雨で濡れたり、風で圃場外の不要な場所に薬剤が飛散し、高価な薬剤を無駄に消費してしまうという問題があった。また、薬剤散布量の確認のために、前記薬剤散布機の薬剤吐出口に容器を嵌め込んで着脱可能に備えるものもあるが、前記確認後に容器を取り外す際、散布ノズルなどに溜った薬剤を、この容量の小さな容器内に保持することができず、容器から薬剤がこぼれてしまい、苗マットに多量のこぼれた薬剤が落下して、苗に余分な薬剤がかかったり、前記したように周囲に飛散するなどの問題が生じる。そこで、該容器の大きさを大きくして容量を増加させることが考えられるが、この場合、容器下方に有する苗マットの苗に容器が接触してしまい、苗が破損したり、苗の移植と同時に苗マットに施薬させるための苗載台の摺動を阻害する問題もあった。
そこで、この発明の目的は、薬剤の散布を薬剤吐出口で一時的に止める際、コンパクトな状態で薬剤吐出口に装着できるとともに、脱着時には容量を大きくすることができる容器を簡単な構成で設けて、苗に余分な薬剤がかかることや想定外の場所への施薬、飛散を防止し、コストダウンを図り得る田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、苗載台上面であって、条を仕切る複数の苗台リブの間に苗マットを載置し、苗の移植と同時に前記苗マットに施薬する薬剤散布機を、前記苗載台の上方に配置した田植機において、前記薬剤散布機の薬剤吐出口に、容器を着脱自在に備えるとともに、前記容器は、容量可変構造であることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記容器は、該容器の筒部長さを前記薬剤吐出口の外周部に沿って延長し、前記薬剤吐出口に挿通可能な構造とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、苗載台上面であって、条を仕切る複数の苗台リブの間に苗マットを載置し、苗の移植と同時に前記苗マットに施薬する薬剤散布機を、苗載台の上方に配置した田植機において、薬剤散布機の薬剤吐出口に、容器を着脱自在に備えるとともに、容器は、容量可変構造であるので、薬剤を薬剤吐出口から直接容器に保持させて、薬剤の飛散を防止することができる。さらには、容器を薬剤吐出口にコンパクトな状態で装着し、苗マットの苗に容器が接触することを防止できるとともに、脱着時には容器の筒部の長さを長くすることにより容器の容量を大きくして、散布ノズルなどに溜っている薬剤を保持でき、容器から薬剤の落下や飛散を防止することができる。従って、苗に余分な薬剤がかかることや想定外の場所への施薬、飛散を防止し、コストダウンを図り得る田植機を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、容器は、この容器の筒部長さを薬剤吐出口の外周部に沿って延長し、薬剤吐出口に挿通可能な構造とするので、容器を薬剤吐出口にコンパクトな状態で装着し、苗マットの苗に容器が接触することを防止できるとともに、脱着時には容器を薬剤吐出口から引き抜くことにより、容器の筒部長さが十分に長いことから容器の容量が大きいため、散布ノズルなどに溜っている薬剤を保持でき、容器から薬剤の飛散および落下を防止することができる。従って、苗に余分な薬剤がかかることや想定外の場所への施薬、飛散を防止し、コストダウンを図り得る田植機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例としての田植機の全体構成を示す側面図、図2は田植機の苗載台部および薬剤散布機を示す側面図、図3は苗載台の平面図、図4は薬剤散布機の側面図である。
【0010】
この例の田植機1は、図1に示すように、機体後部に昇降リンク機構27を介して植付部4が配置され、車体フレーム3の前部上方には、ボンネット9に覆われたエンジン2を搭載し、図示しない前後アクスルケースを介して前輪6および後輪8が配置される。
【0011】
また、ボンネット9の後部に有するダッシュボード5上に操向ハンドル14が設けられるとともに、該操向ハンドル14の後方に運転席13が配置され、ボンネット9の左右両側部およびボンネット9後部の車体フレーム3上面は、車体カバー12で覆われる。そして、ボンネット9の左右両側および、運転席13の前方、左右両側、後方のそれぞれは、作業者が足を載せるステップとされる。
【0012】
運転席13の側部には、走行変速レバー30、植付昇降および作業走行変速用の副変速レバー31や、不図示の植付感度調節レバーなどが配置され、ダッシュボード5下部には主クラッチペダル32や、図示しない左右ブレーキペダルが配設される。また、運転席13の後方に施肥機33が備えられる。
【0013】
次いで、植付部4は、図1〜2に示すように、苗載台16、植付爪17、フロート34などから構成される。苗載台16は、前高後低に配設され、苗載台16下部の下ガイドレール18と、苗載台16前面上部の上ガイドレール19とにより、左右往復摺動自在に支持される。そして、これら下ガイドレール18および上ガイドレール19は植付センターケース20により不図示のフレームなどを介して支持される。
【0014】
植付ケース21は、植付センターケース20から不図示の連結パイプを介し
て後方へ突出される。この植付ケース21の後部には、一方向に回動するロータリケース22が設けられ、ロータリケース22の左右両側に一対の植付爪17が設けられる。このような構成により、機体の前進走行とともに苗載台16を横送り機構で左右に往復摺動させ、この往復摺動に同期させて植付爪17を駆動し、一株分の苗を切り出し、連続的に植え付け作業が行われる。そして、植付センターケース20の前部にローリング支点軸を介してトップリンク25やロワーリンク26などにより構成される昇降リンク機構27が連結され、運転席13下方に配置した昇降シリンダ28によって植付部4が昇降される。
【0015】
苗載台16は、図2〜3に示すように、この苗載台16の上面から上方であって、各条の左右両側に苗台リブ71が前後方向に突設され、苗マット載置部72が形成される。そして、隣り合う苗台リブ71間に設けられた苗マット載置部72に載置された苗マット73が、一条分とされる。この苗マット73の縦送り機構は、従動ローラ37、駆動ローラ38、苗送りベルト35などで構成される。また、苗マット載置部72の下部から上下中間位置にかけて開口部が設けられ、該開口部の上下に従動ローラ37と駆動ローラ38が配設され、従動ローラ37と駆動ローラ38の間に苗送りベルト35が巻回される。苗送りベルト35の表面には、多数の突起が設けられ、苗マット載置部72の下部から上下中間位置にかけて設けられた開口部からベルト表面が露出する。苗マット73の縦送り機構の上方に設けられた苗マット押え機構36と苗送りベルト35とで苗マット73を保持しながら、苗を正確に下方へ縦送りし、安定した植付けが行われる。なお、この例の田植機1の苗載台16は、3本の苗台リブ71のそれぞれの間に2つの苗マット73を載置させる二条型であるが、一条または三条以上の苗載台16でもよい。
【0016】
次いで、薬剤散布機75は、苗載台16の上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マット73に施薬するものであり、苗載台16の苗マット載置部72に対向して配置される。薬剤散布機75が取り扱う薬剤は、主に粉体の原料を粒状に成形したものであるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本実施例の田植機1では、薬剤散布機75は2つの苗マット載置部72の左右中央近傍の上方に1台配置される。これは、1台の薬剤散布機75で2つの苗マット載置部72に施薬可能な構成とするためである。従って、本実施例の薬剤散布機75は、適用される田植機の植え付け作業を行う条数の半分の台数があれば全ての条に対応する苗マット73に施薬可能である。ただし、1台の薬剤散布機75が1つの苗マット載置部72の上方に配置されて、1台の薬剤散布機75が1つの苗マット載置部72に施薬する構成としてもい。
【0018】
薬剤散布機75は、図4に示すように、主に薬剤ホッパ41、繰出部42、搬送部43などで構成される。そして、薬剤ホッパ41は苗マット73に施薬される薬剤を貯溜するものである。薬剤ホッパ41の上部には蓋41aが設けられる。該蓋41aを開けて薬剤ホッパ41の内部に薬剤を補充する。薬剤ホッパ41の下半部は漏斗状になっており、下端部には開口部が設けられている。薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤は、自重で薬剤ホッパ41の下端部に設けられた開口部より下方の繰出部42に落下する。
【0019】
この繰出部42は、薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤を所定量ずつ繰り出すものであり、主に繰出ケース47、繰出ロール45、ロール軸49などで構成される。薬剤ホッパ41の下端部に連結される繰出ケース47は、上下面が開口した箱状の部材であり、その内部に繰出ロール45を収容する。また、繰出ケース47の内部空間は、繰出ロール45を挟んで上半部と下半部に区画される。従って、薬剤ホッパ41から落下してきた薬剤は、繰出ケース47の上半部の空間に充填される。
【0020】
繰出ロール45は、略円柱形状の部材であり、その外周面には複数の溝が設けられ、該溝の長手方向は、繰出ロール45の両端面を貫通するロール軸49の長手方向(軸心方向)と略一致する。また、ロール軸49は、繰出ロール45を繰出ケース47の内部で回動可能に軸支するための軸であり、繰出ロール45に貫設され、ロール軸49の両端は繰出ケース47の左右側面から突出される。そして、ロール軸49を回動駆動することにより、繰出ケース47に収容された繰出ロール45が回動される。
【0021】
繰出ケース47の上半部の空間に充填された薬剤の一部は、繰出ロール45の外周面に接触され、さらにその一部が繰出ロール45の外周面に設けられた溝に収容される。そして、繰出ロール45を回動させると、該繰出ロール45の溝に収容された薬剤のみが繰出ケース47の下半部の空間に移動し、該溝から下方に落下する。なお、繰出ロール45に設けられる溝の本数、長さ、深さ、幅を変更することにより、繰り出される薬剤の量を適宜選択することができる。
【0022】
搬送部43は、繰出部42に連結され、繰出部42により繰り出された薬剤を搬送し、苗マット73に施薬するものである。この搬送部43は、主に分岐部材61、ガイド筒64、散布ノズル65などで構成される。まず、分岐部材61は、繰出ケース47の下面の開口部に設けられる略漏斗状の部材であり、上面に開口部が設けられるとともに、下端部にも左右に二箇所の開口部が設けられる。そして、繰出部42から繰り出され、分岐部材61の内部に落下してきた薬剤が、分岐部材61の下端部に設けられた二箇所の開口部に略均等に配分され、それぞれ対応するガイド筒64の中に落下され、散布ノズル65などを介して薬剤吐出口66から苗マット73上の苗に薬剤が散布される。なお、散布ノズル65の下端に、図示しない筒状の回転体を回動自在に外嵌し、該回転体の外周に複数の図示しない突起を設けて苗マット73と当接可能に配置するとともに、該回転体より突出して散布ノズル65先端内面に延設した不図示のスクレーパを設け、苗の移植時に薬剤が散布されると同時に苗載台16が左右往復動し、この往復動に伴い前記回転体が苗などに当接して回転し、この回転により散布ノズル65先端に付着した泥や薬剤などを前記スクレーパにより掻き取り、散布ノズル65の詰まりを防止させることもできる。
【0023】
このガイド筒64は、筒状の部材であり、その上端部が分岐部材61の下端部に、その略中央部が下横フレーム53dにボルト固定される。このガイド筒64の姿勢は、ガイド筒64の上端部が機体後方かつ上方を向き、ガイド筒64の下端部が機体前方かつ下方を向くように定められる。
【0024】
そして、これら薬剤散布機75は、田植機1の後部に支持フレーム53で固定される。この支持フレーム53は、主に基部フレーム53a、支持柱53b、上横フレーム53c、下横フレーム53dなどから構成される。この基部フレーム53aは、支持フレーム53の下部に有する部材であり、植付ケース21の後部に固定される。支持柱53bは略角柱形状の部材であり、その下端部が基部フレーム53aに固設される。また、支持柱53bは、その上端部が植付ケース21から略上方となる姿勢に保持される。そして、上横フレーム53cは、支持柱53bの上端に横設される略角柱形状の部材である。
【0025】
なお、複数の薬剤散布機75を設置する場合は、隣り合う薬剤散布機75にそれぞれ対応する上横フレーム53cを図示しない連結フレームなどで連結し、支持フレーム53の剛性を更に向上させてもよい。また、下横フレーム53dは、支持柱53bの中途部に横設される棒状の部材であり、その左右両端部にはそれぞれ散布ノズル65の中途部が固定される。さらにステー50は、上横フレーム53cから前方かつ上方に突設される部材であり、該ステー50に薬剤散布機75の繰出ケース47が固設される。
【0026】
以上の構成から、苗載台16の左右往復運動と、該往復運動に同期して植付爪17が行う苗75の切り出し作業により、苗マット73の下端が一定幅ずつ切断され、切断された苗マット73が下方へ搬送されて、苗が水田に植え付けられる。また、苗マット73は、苗載台16の左右端での折り返し時に縦送り機構の苗送りベルト35によって下方へと運ばれる。この植付作業の際、薬剤散布機75により同時に施薬が行われる。
【0027】
次に、本願発明の特徴である薬剤散布機の薬剤吐出口に備える薬剤保持用の容器について、その具体的構成を説明する。図5は、薬剤散布機の薬剤吐出口付近を拡大した装着時の容器を示す断面模式図(a)および脱着時の容器を示す断面模式図(b)、図6は容器と薬剤吐出口との固定方法を示す容器の側面模式図、図7は容器の他の例を示す装着時の容器を示す断面模式図(a)および脱着時の容器を示す断面模式図(b)である。
【0028】
前述したように、苗載台16の左右往復運動と、該往復運動に同期して植付爪17が行う苗75の切り出し作業により、苗マット73の苗植付作業の際、薬剤散布機75により同時に施薬が行われるが、この苗マット73への施薬を例えば一時的に止めたい場合や、薬剤の散布量を確認したい場合などには、薬剤散布機73の薬剤吐出口66に、薬剤の散布を停止させるとともに保持するための容器を着脱自在に取り付けて、その容器に薬剤を保持させることが考えられる。しかし、前記容器を取り付けるだけでは、この容器を薬剤吐出口66から取り外す際に、散布ノズル65などに溜った薬剤を、この容量の小さな容器内に保持することができず、容器から薬剤がこぼれてしまい、苗マット73の苗に余分な薬剤がかかってしまったり、圃場内外の想定外の場所に落下や飛散して、高価な薬剤を無駄に損失させてしまうといったような問題が生じる。
【0029】
そこで、薬剤吐出口66への着脱の際に、容量可変となるプラスチックや合成樹脂などから成る容器81が用いられる。この容器81は、薬剤吐出口66の筒形状(例えば円筒形)に合わせた筒形状(例えば円筒形)を有し、容器81の筒部83は、薬剤吐出口66の大きさ(直径など)よりやや大きく、この薬剤吐出口66を嵌入できる程度の大きさ(直径など)を有する。さらに、容器81における筒部83の下部83aは、山折りと谷折りとからなる、例えばストローやアコーディオンなどのような伸縮自在な蛇腹構造とされる。なお、容器81の底部82は閉塞される。
【0030】
ここで、薬剤散布機73稼働中に、苗マット73への施薬を例えば一時的に止める場合や薬剤の散布量を確認する場合などにおいて、薬剤散布機75の薬剤吐出口66に容器81を装着させる際には、図5(a)に示すように、まず、容器81における筒部83の下部83aを収縮させて薬剤吐出口66に取り付ける。このような構成にすることで、薬剤吐出口66に容器81を取付けた後、容器81の下方に有する苗マット73の苗に容器81の底部などが接触することを防ぐことができる。
【0031】
次いで、容器81の入口部から、薬剤吐出口66を嵌入して、容器81における筒部83の上部83bと、薬剤吐出口66の外周面66aとを固定させる。この際、容器81の上部83bと、薬剤吐出口66とを固定させる方法は限定されないが、例えば図6に示すように、容器81における筒部83の上部83b外周面に少なくとも2箇所以上設けられた長穴84に、薬剤吐出口66の外周面66aに長穴84の位置と一致するように設けられた留め具部材85を嵌入させ、長穴84に留め具部材85を引っ掛けて容器81の上部83bと、薬剤吐出口66とを固定させるような構成にしてもよい。
【0032】
そして、田植機1稼働中に、薬剤散布機73の繰出部42から散布ノズル65を介して繰り出される薬剤は、薬剤吐出口66の容器81内に保持されていくため、下方の苗マット73へは散布されない。
【0033】
次いで、田植機1稼働中または始動の際に苗マット73への薬剤散布を再開、もしくは田植機1の停止中に薬剤散布量の確認やメンテナンスなどで、容器81を薬剤吐出口66から取り外す場合には、図5(b)に示すように、まず、容器81における筒部83の下部83aを伸長させる。このとき、下部83aを伸長させた長さは、容器81の底部が苗マット73に届く範囲もしくはそれ以上で適宜設計される。
【0034】
このような構成で、容器81における筒部83の下部83aを伸長させたことにより、薬剤吐出口66に装着使用時の下部83aを収縮させたときの容器81内の容量vに対して、下部83aを伸長させたときの容器81内の容量Vが可変して大きくなるため、散布ノズル65内などに溜っている薬剤を、容量を大きくした容器81内に落下させて保持することができる。
【0035】
そして、作業者は指などで薬剤吐出口66の外周面66aの全ての留め具部材85を同時に容器81の長穴84内に押し込むことにより、薬剤吐出口66から容器81を抜き取ることで、散布ノズル65などに溜っていた薬剤が、容器81に回収しきれずにあふれ落ちることを防ぎ、苗に余分な薬剤がかかることや想定外の場所への施薬、飛散を防止することができる。
【0036】
また、筒部83´の長さを薬剤吐出口66の外周部66aに沿って延長し、薬剤吐出口66に挿通可能、かつ着脱自在な容器81´とすることもできる。この場合、図7(a)に示すように、容器81´の底部が苗マット73に届く程度までの長さに薬剤吐出口66の外周部66aに沿って延長した筒部83´を有する容器81´を、前述同様に薬剤散布機73稼働中に、苗マット73への施薬を例えば一時的に止める場合や薬剤の散布量を確認する場合などには、薬剤吐出口66の外周部66aに沿って薬剤吐出口66に挿通させる。
【0037】
この際、上述同様に容器81´の筒部83´の上部83b´外周面に設けられた 長穴84に、薬剤吐出口66の外周面66aに設けられた留め具部材85を引っ掛けて容器81の上部83bと、薬剤吐出口66とを固定させるような構成にしてもよいが、これに限定されず、例えば、それぞれ図示しないが、容器81´内側および薬剤吐出口66の外周面66aに設けた螺旋による固定や、両者間のボルト締結、薬剤吐出口66の外周面66aに設けられたフックに容器81´の筒部83´の上部83b´外周面に設けられた留め具を掛け留めるなど、適宜容器81´と薬剤吐出口66とが着脱自在に固定される。その結果、田植機1稼働中に、薬剤散布機73の繰出部42から散布ノズル65を介して繰り出される薬剤は、薬剤吐出口66の容器81´の底部82´に溜り、薬剤吐出口66内に保持されていくため、下方の苗マット73へは散布されない。
【0038】
そして、苗マット73への薬剤散布を再開、もしくは田植機1の停止中に薬剤散布量の確認やメンテナンスなどで、容器81´を薬剤吐出口66から取り外す場合には、図7(b)に示すように、容器81´が上述した薬剤吐出口66との固定から解除され、容器81´が薬剤吐出口66から徐々に引き抜かれる。
【0039】
このとき、薬剤吐出口66に装着固定されていた容器81´の容量v´は、容器81´内に薬剤吐出口66が嵌入されているため、容器81´自体の容量はほとんど有していないのに対して、薬剤吐出口66との固定から解除され、容器81´が薬剤吐出口66から徐々に引き抜かれる容器81´の容量V´は可変して大きくなり、薬剤吐出口66から容器81´が引き抜かれるときが容器81´の最大容量となる。従って、散布ノズル65内などに溜っている薬剤を、容量を大きくした容器81´内に落下させて保持し、散布ノズル65などに溜っていた薬剤が、容器81´に回収しきれずにあふれ落ちることを防ぎ、苗に余分な薬剤がかかることや想定外の場所への施薬、飛散を防止することができる。
【0040】
なお、容器81,81´における筒部83は、蛇腹構造や延長することに限定されず、例えば図示しないが、複数の段重ね構造にして、容器81,81´の上下部を押し引きすることにより、筒部83が伸縮され、容量が可変する構造にしてもよい。
【0041】
以上詳述したように、この例の田植機1は、苗載台16上面であって、条を仕切る複数の苗台リブ71a,71b,71cの間に苗マット73を載置し、苗の移植と同時に苗マット73に施薬する薬剤散布機75を、苗載台16の上方に配置し、薬剤散布機75の薬剤吐出口66に、容器81を着脱自在に備えるとともに、容器81は、容量可変構造である。加えて、容器81´は、この容器81´の筒部83長さを薬剤吐出口66の外周部66aに沿って延長し、薬剤吐出口66に挿通可能な構造とする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一例としての田植機の全体構成を示す側面図である。
【図2】田植機の苗載台部および薬剤散布機を示す側面図である。
【図3】苗載台の平面図である。
【図4】薬剤散布機の側面図である。
【図5】薬剤散布機の薬剤吐出口付近を拡大した装着時の容器を示す断面模式図(a)および脱着時の容器を示す断面模式図(b)である。
【図6】容器と薬剤吐出口との固定方法を示す容器の側面模式図である。
【図7】容器の他の例を示す装着時の容器を示す断面模式図(a)および脱着時の容器を示す断面模式図(b)である
【図8】従来の田植機の苗載台付近を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 田植機
65 散布ノズル
66 薬剤吐出口
66a 外周面
73 苗マット
75 薬剤散布機
81,81´ 容器
82,82´ 底部
83,83´ 筒部
83a 下部
83b,83b´ 上部
84 長穴
85 留め具部材
v,V,v´,V´ 容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台上面であって、条を仕切る複数の苗台リブの間に苗マットを載置し、苗の移植と同時に前記苗マットに施薬する薬剤散布機を、前記苗載台の上方に配置した田植機において、
前記薬剤散布機の薬剤吐出口に、容器を着脱自在に備えるとともに、前記容器は、容量可変構造であることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記容器は、該容器の筒部長さを前記薬剤吐出口の外周部に沿って延長し、前記薬剤吐出口に挿通可能な構造とすることを特徴とする、請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−182914(P2008−182914A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17358(P2007−17358)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】