説明

男性用失禁パッド

【課題】男性器へのフィット性が良好な男性用失禁パッドを提供する。
【解決手段】周縁部2aとその内方に位置する中央部2bとを有するインナーカップ2と、インナーカップ2の外側に設けられたアウターカップ3を有し、インナーカップ2は、周縁部2aがアウターカップ3に接合され、中央部2bがアウターカップ3に対して移動可能に形成されている男性用失禁パッド1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用失禁パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、男性器に宛がって用いられる男性用失禁パッドが知られている。例えば特許文献1には、1枚のシート状部材からカップ形状に形成された男性用失禁パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−136641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される男性用失禁パッドは1枚のシート状部材からカップ形状に形成されているため、男性用失禁パッドが男性器を保護して所望の形状が保持されるようにすると、男性用失禁パッドの男性器へのフィット性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、男性器へのフィット性が良好な男性用失禁パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の男性用失禁パッドとは、周縁部とその内方に位置する中央部とを有するインナーカップと、インナーカップの外側に設けられたアウターカップを有し、インナーカップは、周縁部がアウターカップに接合され、中央部がアウターカップに対して移動可能に形成されているところに特徴を有する。本発明の男性用失禁パッドは、アウターカップの内側にインナーカップが設けられ、インナーカップの中央部がアウターカップに対し移動可能に形成されているため、インナーカップの男性器へのフィット性が高められるとともに、インナーカップがアウターカップにより外部の圧力から保護され、インナーカップが外部からの圧力によって変形しにくくなる。従って、男性用失禁パッドの着用感が向上する。
【0007】
インナーカップの中央部とアウターカップの間にはクッション材が設けられていることが好ましい。このようにクッション材が設けられることにより、インナーカップの中央部が着用者の男性器に向かって押され、中央部で男性器へのフィット性をより高めることができるようになる。
【0008】
インナーカップは、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有し、第2層が中央部の一部に設けられていることが好ましい。インナーカップがこのように形成されていれば、中央部がアウターカップに追従しにくくなり、中央部がアウターカップに対し自由に動きやすくなり、中央部の男性器へのフィットを保持しやすくできる。中央部の男性器へのフィット性を高めるためには、第2層は、2以上に分割して中央部の一部に設けられていることがより好ましい。
【0009】
インナーカップは、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有し、第1層が、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布、または有孔プラスチックフィルムから構成され、第2層が、エアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成されていることが好ましい。このようにインナーカップが形成されていれば、男性用失禁パッドの着用感が向上するとともに、エアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成される第2層により尿の吸収性が高められる。
【0010】
インナーカップの内側または外側には液吸収体が備えられていることが好ましい。インナーカップに液吸収体が備えられていれば、着用者から多量の尿が排泄されても、尿を男性用失禁パッドの外側に漏らすことなく、液吸収体に尿を固定することができるようになる。
【0011】
液吸収体として、インナーカップの外側に、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収体が備えられていることも好ましい。液吸収体としてシート状吸収体を用いれば、シート状吸収体をインナーカップに設けても、インナーカップを柔軟に形成することができ、男性器へのフィット性を高めやすくなる。また、シート状吸収体をインナーカップの外側に設けることにより、インナーカップでまず尿を吸収させた後、インナーカップで吸収しきれなかった尿をシート状吸収体で吸収させるようにすることができる。従って、速やかな尿の吸収と、尿の高い吸収容量を実現できる。
【0012】
インナーカップには、複数の折り目が形成されていることが好ましい。インナーカップに複数の折り目が形成されることにより、インナーカップは中央部のアウターカップに対する移動範囲が広がり、中央部で男性器へのフィット性をより高めることができるようになる。インナーカップには、特に、複数の折り目が同心円状に形成されていることが好ましい。
【0013】
インナーカップに折り目が形成される場合、液吸収体は、インナーカップの内側または外側に、折り目と重ならないように備えられることが好ましい。このように液吸収体がインナーカップに備えられていれば、インナーカップに折り目を形成しやすくなり、インナーカップを所望の形状に折り畳みやすくなる。
【0014】
アウターカップは、インナーカップより単位面積当たりの質量が大きいことが好ましい。インナーカップとアウターカップがこのように構成されていれば、アウターカップがインナーカップより高い剛性を有しやすくなる。従って、インナーカップがアウターカップにより外部の圧力から保護され、インナーカップが外部からの圧力によって変形しにくくなる。
【0015】
インナーカップとアウターカップは水解性であってもよい。インナーカップとアウターカップが水解性であれば、男性用失禁パッドを通常の水洗トイレ等に流して廃棄することが可能となる。従って、着用者は男性用失禁パッドを廃棄する場所を気にしなくて済むようになる。
【0016】
アウターカップは、インナーカップと接合されない部分の少なくとも一部が欠如していてもよい。このようにアウターカップが形成されていれば、男性用失禁パッド内での蒸れが抑えられ、着用感が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の男性用失禁パッドは、アウターカップの内側にインナーカップが設けられ、インナーカップの中央部がアウターカップに対し移動可能に形成されているため、インナーカップの男性器へのフィット性が高められるとともに、インナーカップがアウターカップにより外部の圧力から保護され、インナーカップが外部からの圧力によって変形しにくくなる。従って、男性用失禁パッドの着用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の男性用失禁パッド(第1実施態様)の斜視図を表す。
【図2】本発明の男性用失禁パッド(第1実施態様)の平面図を表す。
【図3】図2に示した男性用失禁パッドのA−A断面図を表す。
【図4】本発明の男性用失禁パッド(第2実施態様)の斜視図を表す。
【図5】本発明の男性用失禁パッド(第2実施態様)の平面図を表す。
【図6】図5に示した男性用失禁パッドのB−B断面図を表す。
【図7】図5に示した男性用失禁パッドに液吸収体が備えられた実施態様を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の男性用失禁パッドについて、図面を参照して説明する。なお本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0020】
図1〜図3には、本発明の男性用失禁パッドの第1実施態様を示す。図1は第1実施態様にかかる男性用失禁パッドの斜視図を表し、図2は第1実施態様にかかる男性用失禁パッドの平面図を表し、図3は図2のA−A断面図を表す。なお、図2は、男性用失禁パッドの着用者の肌に面する側を表している。
【0021】
本発明の男性用失禁パッド1は、インナーカップ2と、インナーカップ2の外側に設けられたアウターカップ3を有する。男性用失禁パッド1を使用する際、インナーカップ2は着用者の肌に面するように位置し、アウターカップ3は着用者とは反対側すなわち外側に位置する。
【0022】
インナーカップ2はカップ形状を有しており、カップ形状の内部に男性器を好適に収容できる。インナーカップ2は、好ましくは、陰茎と陰嚢の両方を覆う。第1実施態様の男性用失禁パッド1は、インナーカップ2が、一方側に膨らんだカップ形状を有している。
【0023】
インナーカップ2は、周縁部2aとその内方に位置する中央部2bを有する。周縁部2aは、インナーカップ2の外縁を含むインナーカップ2の一部分であり、中央部2bは周縁部2aに隣接し周縁部2aの内方に位置する部分である。中央部2bは、その全周囲が周縁部2aに囲まれている。図1〜図3では、周縁部2aと中央部2bは点線で区分して表示されている。
【0024】
アウターカップ3はカップ形状を有しており、インナーカップ2を保護するために設けられる。インナーカップ2は、周縁部2aがアウターカップ3に接合され、中央部2bがアウターカップ3に対し移動可能に形成されている。このとき、周縁部2aは一部または全部がアウターカップ3に接合されればよい。このようにインナーカップ2とアウターカップ3が設けられることにより、インナーカップ2の男性器へのフィット性が高められるとともに、インナーカップ2がアウターカップ3により外部の圧力から保護され、インナーカップ2が外部からの圧力によって変形しにくくなる。
【0025】
インナーカップ2は、柔軟で、尿等をある程度吸収できる材料で構成されていることが好ましい。そのような材料でインナーカップ2が構成されていれば、インナーカップ2の男性器へのフィット性を高めることができるとともに、不用意に排泄された尿がインナーカップ2で吸収されて、尿が男性用失禁パッド1の外側に漏れることを防止できるようになる。
【0026】
インナーカップ2は、具体的には、親水性の不織布から構成されていることが好ましく、そのような不織布としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等が挙げられる。親水性不織布としては、スパンボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブロー法、エアレイド法やそれらの製法の組み合わせ(例えば、SMS法)等により製造された不織布を用いればよい。また、インナーカップ2は、織布や編布から構成されていてもよい。
【0027】
インナーカップ2の内側に液吸収体が備えられる場合は、インナーカップ2は液不透過性の材料で構成されていてもよい。この場合も、インナーカップ2は柔軟な材料で構成されていることが好ましい。液不透過性の材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等が挙げられる。液不透過性の不織布としては、スパンボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブロー法、エアレイド法やそれらの製法の組み合わせ(例えば、SMS法)等により製造された不織布を用いればよい。なお、本発明において、液不透過性とは撥水性の意味も含まれる。
【0028】
インナーカップ2は、複数のシート部材が重ねられて形成されていてもよい。すなわちインナーカップ2は、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有していてもよい。このとき、例えば、第1層と第2層がともに不織布である組み合わせや、第1層が不織布で第2層がプラスチックフィルムである組み合わせ、第1層が有孔プラスチックフィルムで第2層が不織布である組み合わせ等が示される。第2層の外側には、さらに第3層が設けられてもよい。
【0029】
インナーカップ2による尿の吸収性を高める点からは、インナーカップ2は、親水性のエアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成される層を有することが好ましい。エアスルー不織布やエアレイド不織布は嵩高く、繊維間隙に比較的多量の尿を保持することができるためである。
【0030】
インナーカップ2がエアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成される層を有する場合、エアスルー不織布やエアレイド不織布から構成される層は、男性器とは直接触れないように設けられることが好ましい。エアスルー不織布やエアレイド不織布は表面が比較的粗いため、男性器がエアスルー不織布やエアレイド不織布と接触すると、着用者は男性器にむずがゆさや痛みを覚えるおそれがあるためである。従ってインナーカップ2は、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有し、第1層が、比較的表面が平滑であるスパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布、または有孔プラスチックフィルムから構成され、第2層が、エアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成されることが好ましい。このとき、第1層と第2層はいずれも親水性であることが好ましい。さらに第2層の外側に第3層を設け、エアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成される第2層を第1層と第3層の間に配してもよい。第3層としては、例えば、第1層に使用可能な材料を用いればよい。
【0031】
アウターカップ3は、インナーカップ2より高い剛性を有する材料で構成されていることが好ましい。アウターカップ3がこのように構成されていれば、インナーカップ2がアウターカップ3により外部の圧力から保護され、インナーカップ2が外部からの圧力によって変形しにくくなる。具体的には、アウターカップ3はインナーカップ2より単位面積当たりの質量が大きいことが好ましい。
【0032】
アウターカップ3は液不透過性の材料で構成されていることが好ましい。そのような材料としては、インナーカップ2に用いられ得る液不透過性の材料を用いればよい。アウターカップ3がある程度の高い剛性を有するようにする点からは、アウターカップ3は液不透過性の不織布から構成されていることが好ましい。
【0033】
インナーカップ2とアウターカップ3は水解性であってもよい。水解性とは、水洗トイレ等で水に流した際に分散あるいは溶解してその原形が失われる性質を意味する。従って、インナーカップ2とアウターカップ3が水解性であれば、男性用失禁パッド1を通常の水洗トイレ等に流して廃棄することが可能となり、着用者は男性用失禁パッド1を廃棄する場所を気にしなくて済むようになる。
【0034】
インナーカップ2とアウターカップ3が水解性を有するためには、インナーカップ2とアウターカップ3が水解性材料から構成されていることが好ましい。水解性材料としては、木材パルプ繊維、非木材系植物繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維等が挙げられる。さらに水解性材料に、澱粉、ポリアクリル酸水溶液、ポリエチレンオキサイド、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等の水溶性バインダーが加えられていてもよい。
【0035】
インナーカップ2とアウターカップ3は生分解性であってもよい。生分解性とは、微生物等の生物によって分解可能であることを意味する。インナーカップ2とアウターカップ3は生分解性であれば、男性用失禁パッド1を水洗トイレに流して廃棄した際、下水処理場等で活性汚泥処理等が施されて、インナーカップ2とアウターカップ3が好適に二酸化炭素や汚泥等に分解され得る。
【0036】
インナーカップ2の中央部2bがアウターカップ3に対し移動可能に形成されるために、インナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間に空間が設けられていることが好ましい。第1実施態様の男性用失禁パッド1はインナーカップ2がアウターカップ3より狭い面積となるように構成され、インナーカップ2の周縁部2aがアウターカップ3に接合されることにより、中央部2bはアウターカップ3に対し浮くように形成されている。その結果、図3に示すように、インナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間には空間が形成される。このようにインナーカップ2の中央部2bが構成されることにより、中央部2bはアウターカップ3に対し自由に動くことができるようになり、中央部2bで男性器へのフィット性を高めることができる。
【0037】
インナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間に形成された空間には、クッション材が設けられることも好ましい。つまり、インナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間にはクッション材が設けられることが好ましい。このようにクッション材が設けられることにより、インナーカップ2の中央部2bが着用者の男性器に向かって押され、中央部2bで男性器へのフィット性をより高めることができるようになる。
【0038】
クッション材としては、発泡ウレタン、発泡ゴム、発泡ポリエステル等の発泡ポリマー;綿、パルプ繊維、合成繊維等の繊維の集合体である繊維塊を用いることができ、これらの材料をインナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間の空間に充填すればよい。
【0039】
また、天然ゴム;ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等の合成ゴム;不織布等から構成されるシート部材を折り畳み、折り畳んだシート部材をクッション材としてインナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間の空間に配してもよい。さらに、前記シート部材を、折り畳まずに、インナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間の空間に、アウターカップ3の弧状の内面に対し弦となるように接合してもよい。このようにシート部材の両端を、アウターカップ3の内面をショートカットするように、アウターカップ3の内面に接合することにより、シート部材にクッション作用を持たせることもできる。前記シート部材として不織布を用いる場合は比較的目付の大きい不織布を用いることが好ましく、目付としては50g/m2〜150g/m2(より好ましくは、60g/m2〜120g/m2)の範囲が好ましい。
【0040】
インナーカップ2の中央部2bがアウターカップ3に対し移動可能に形成されるために、インナーカップ2の中央部2bの一部に補強材を取り付けることも好ましい。中央部2bの一部に補強材を取り付けることにより、中央部2bの補強材が取り付けられた部分の剛性が高くなるのに対し、中央部2bの補強材が取り付けられない部分は剛性が低くなりやすくなり、中央部2bで剛性の異なる部分が形成されやすくなる。その結果、中央部2bがアウターカップ3に追従しにくくなり、中央部2bがアウターカップ3に対し自由に動きやすくなる。例えば、着用者の動作によって男性用失禁パッド1が外部から圧力を受けた場合、アウターカップ3の歪みやずれに対し中央部2bが追従しにくくなり、中央部2bの男性器へのフィットを保持しやすくできる。中央部2bの一部に補強材が取り付けられる場合は、インナーカップ2の中央部2bとアウターカップ3の間の空間は設けられても設けられなくてもよい。
【0041】
補強材は、インナーカップ2の内側に取り付けられても、外側に取り付けられてもよい。また、インナーカップ2の中央部2bの一部に補強材を取り付けるのと同様の効果を得るために、インナーカップ2を次のように形成してもよい。すなわち、インナーカップ2が、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有し、第2層が中央部2bの一部に設けられてもよい。このとき、第2層が補強材と同様の役割を果たす。第2層には比較的嵩高い材料を用いることが好ましく、そのような材料として、エアスルー不織布またはエアレイド不織布を用いることが好ましい。
【0042】
第2層がインナーカップ2の中央部2bの一部に設けられる場合、第2層は、中央部2bの面積の20%〜90%(より好ましくは、30%〜80%)を占めるように、中央部2bに設けられることが好ましい。また、中央部2bの男性器へのフィット性を高める点から、第2層は中央部2bにおいて2以上に分割して設けられることが好ましい。第2層が分割される数の上限は特に限定されないが、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。第2層が分割される数が10以下であれば、中央部2bに第2層が設けられた男性用失禁パッド1を製造することが容易になる。インナーカップ2に補強材を取り付ける場合も、同様の条件で補強材を設けることが好ましい。
【0043】
インナーカップ2の中央部2bの一部に補強材または第2層が設けられる場合、補強材または第2層は周縁部2aにも設けられてもよい。補強材または第2層が周縁部2aにも設けられれば、周縁部2aの剛性が高まり、男性用失禁パッド1の形状が保持されやすくなる。なお、補強材または第2層が周縁部2aにも設けられる場合は、中央部2bに設けられる補強材または第2層と、周縁部2aに設けられる補強材または第2層は、互いに離間していることが好ましい。このように補強材または第2層が設けられれば、インナーカップ2の中央部2bがアウターカップ3に対し自由に動きやすくなる。
【0044】
アウターカップ3は、インナーカップ2と接合されない部分の少なくとも一部が欠如していてもよい。すなわち、アウターカップ3には、インナーカップ2と接合されない部分に開口が形成されていてもよい。アウターカップ3に開口が形成されていれば、男性用失禁パッド1内での蒸れが抑えられ、着用感が向上する。なお、アウターカップ3に形成される開口は、その面積がアウターカップ3のインナーカップ2と接合されない部分の面積と同じかそれより小さくなるように設けられることが好ましい。このように開口が形成されれば、アウターカップ3の強度が確保されやすくなり、またインナーカップ2の中央部2bが外部から直接圧力を受けにくくなる。
【0045】
アウターカップ3の外側には、粘着剤やフック・ループ・ファスナー等の固定手段が設けられていてもよい。アウターカップ3の外側に固定手段が設けられていれば、固定手段により男性用失禁パッド1を着用者のパンツの内側に好適に固定できるようになる。
【0046】
インナーカップ2の内側または外側には液吸収体が備えられていることが好ましい。なお、インナーカップ2の外側に液吸収体が備えられる場合は、液吸収体はインナーカップ2とアウターカップ3の間に設けられる。インナーカップ2に液吸収体が備えられていれば、着用者から多量の尿が排泄されても、尿を男性用失禁パッド1の外側に漏らすことなく、液吸収体に尿を固定することができるようになる。
【0047】
液吸収体は、尿等を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。液吸収体としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いたり、あるいは吸収性材料を紙(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布等のシート部材で覆ったものを用いることができる。液吸収体に含まれる吸収性材料としては、例えば、粉砕したパルプ繊維、セルロース繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等の体液との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理が施されていてもよい。
【0048】
吸収性材料は、尿等を速やかに吸収できるようにするために親水性繊維を含むことが好ましい。また、液吸収体の吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。吸収性材料は、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いればよい。
【0049】
液吸収体としては吸水性樹脂のみを用いてもよい。あるいは、液吸収体は、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収体であってもよい。シート状吸収体は不織布間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。また、シート状吸収体は不織布間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができるとともに、柔軟に形成することができる。従って、液吸収体としてシート状吸収体を用いれば、シート状吸収体をインナーカップ2に設けても、インナーカップ2を柔軟に形成することができ、男性器へのフィット性を高めやすくなる。
【0050】
シート状吸収体に用いられる不織布は液透過性であり、そのような不織布としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維を界面活性剤で親水化したものを用いればよい。シート状吸収体に用いられる不織布としては、比較的薄くて柔軟性の高い不織布が好ましく、例えば、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、またはSMS不織布を用いることが好ましい。
【0051】
液吸収体としてシート状吸収体を用いる場合、シート状吸収体はインナーカップ2の外側に設けることが好ましい。シート状吸収体は尿の吸収速度の点では若干劣るため、シート状吸収体をインナーカップ2の外側に設けることにより、インナーカップ2でまず尿を吸収させた後、インナーカップ2で吸収しきれなかった尿をシート状吸収体で吸収させるようにすることが好ましい。
【0052】
インナーカップ2の内側または外側に液吸収体が備えられる場合、液吸収体のインナーカップ2とは反対側の面には液透過性シートが設けられてもよい。つまり、液吸収体はインナーカップ2と液透過性シートの間に配されてもよい。液透過性シートとしては、前記説明した親水性不織布や、ティッシュ、クレープ紙等を用いることができる。
【0053】
次に本発明の男性用失禁パッドの別の実施態様について説明する。図4〜図6には、本発明の男性用失禁パッドの第2実施態様として、図1〜図3に示した男性用失禁パッド1に対し、インナーカップ2に折り目4a,4b,4cが形成された男性用失禁パッド1を示す。図4は第2実施態様にかかる男性用失禁パッドの斜視図を表し、図5は第2実施態様にかかる男性用失禁パッドの平面図を表し、図6は図5のB−B断面図を表す。図5は、男性用失禁パッドの着用者の肌に面する側を表している。なお下記の説明において、図1〜図3に示した第1実施態様と重複する部分の説明は省略する。
【0054】
第2実施態様の男性用失禁パッド1は、インナーカップ2に同心円状に折り目4a,4bが形成されている。本発明では、このようにカップ形状に折り目が形成される場合も、カップ形状の範疇に含まれるものとする。「同心円状の折り目」とは、各折り目が真円状に形成される必要はなく、各折り目が閉曲線状に形成され、かつそれぞれの折り目が互いに交わらなければよい。また、折り目は明確な線状に形成される必要はなく、なだらかな山状やなだらかな谷状に折り目が形成されていてもよい。
【0055】
第2実施態様の男性用失禁パッド1は、折り目4a,4cが谷折りを表し、折り目4bが山折りを表しており、インナーカップ2が同心円状のアコーディオン状に折り畳まれている。つまり、谷折りの折り目と山折りの折り目が交互に形成されている。インナーカップ2は、外縁と折り目4aの間が周縁部2aに相当し、折り目4aよりも内方が中央部2bに相当する。第2実施態様の男性用失禁パッド1は、中央部2bを着用者に対しより広範囲に近づけて配置したり遠ざけて配置することが可能となり、中央部2bで男性器へのフィット性をより高めることができるようになる。
【0056】
図4〜図6にはインナーカップ2に同心円状の折り目が形成される実施態様を示したが、インナーカップ2に形成される折り目は同心円状でなくてもよい。例えば、複数の弧状の折り目が互いに交わらずに同心状に形成されてもよく、複数の直線状の折り目が互いに交わらずに略平行に形成されてもよく、複数の折り目が放射状に形成されてもよい。インナーカップ2に複数の折り目が形成されることにより、中央部2bのアウターカップ3に対する移動範囲が広がり、中央部2bで男性器へのフィット性をより高めることができるようになる。なかでも、図4〜図6に示したようにインナーカップ2に同心円状の折り目が形成される場合は、中央部2bで男性器へのフィット性をより高めることができる点で、特に好ましい。
【0057】
インナーカップ2に折り目が形成される場合、液吸収体は折り目と重ならないように備えられることが好ましい。特に液吸収体がパルプ繊維を含む場合は、液吸収体が比較的嵩高く形成され、インナーカップ2の液吸収体が設けられた部分で剛性が高くなりやすくなるため、パルプ繊維を含む液吸収体は折り目と重ならないようにインナーカップ2に備えられることが好ましい。
【0058】
図7には、図5に示した男性用失禁パッド1に液吸収体5を設けた実施態様の一例を示した。図7では、液吸収体5が折り目4a,4b,4cのいずれとも重ならないようにインナーカップ2に備えられている。このように液吸収体5がインナーカップ2に備えられていれば、インナーカップ2に折り目を形成しやすくなり、インナーカップ2を所望の形状に折り畳みやすくなる。
【0059】
インナーカップ2に折り目が形成され、さらにインナーカップ2において、第1層の外側に設けられた第2層が中央部2bの一部に設けられる場合においても、第2層は折り目と重ならないように設けられることが好ましい。この場合もまた、インナーカップ2に折り目を形成しやすくなり、インナーカップ2を所望の形状に折り畳みやすくなる。
【符号の説明】
【0060】
1: 男性用失禁パッド
2: インナーカップ
2a: 周縁部
2b: 中央部
3: アウターカップ
4a,4b,4c: 折り目
5: 液吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部とその内方に位置する中央部とを有するインナーカップと、
前記インナーカップの外側に設けられたアウターカップを有し、
前記インナーカップは、前記周縁部が前記アウターカップに接合され、前記中央部が前記アウターカップに対して移動可能に形成されていることを特徴とする男性用失禁パッド。
【請求項2】
前記インナーカップの中央部と前記アウターカップの間にクッション材が設けられている請求項1に記載の男性用失禁パッド。
【請求項3】
前記インナーカップは、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有し、
前記第2層が前記中央部の一部に設けられている請求項1または2に記載の男性用失禁パッド。
【請求項4】
前記第2層が2以上に分割して設けられている請求項3に記載の男性用失禁パッド。
【請求項5】
前記インナーカップは、第1層と、第1層の外側に設けられた第2層を有し、
前記第1層が、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布、または有孔プラスチックフィルムから構成され、
前記第2層が、エアスルー不織布またはエアレイド不織布から構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の男性用失禁パッド。
【請求項6】
前記インナーカップの内側または外側に液吸収体が備えられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の男性用失禁パッド。
【請求項7】
前記インナーカップの外側に、前記液吸収体として、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないシート状吸収体が備えられている請求項6に記載の男性用失禁パッド。
【請求項8】
前記インナーカップには、複数の折り目が形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の男性用失禁パッド。
【請求項9】
前記インナーカップには、複数の前記折り目が同心円状に形成されている請求項8に記載の男性用失禁パッド。
【請求項10】
前記インナーカップの内側または外側に、前記折り目と重ならないように液吸収体が備えられている請求項8または9に記載の男性用失禁パッド。
【請求項11】
前記アウターカップは、前記インナーカップより単位面積当たりの質量が大きい請求項1〜10のいずれか一項に記載の男性用失禁パッド。
【請求項12】
前記インナーカップと前記アウターカップは水解性である請求項1〜11のいずれか一項に記載の男性用失禁パッド。
【請求項13】
前記アウターカップは、前記インナーカップと接合されない部分の少なくとも一部が欠如している請求項1〜12のいずれか一項に記載の男性用失禁パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176221(P2012−176221A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68557(P2011−68557)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】