説明

画像センサー深度計を内蔵した一体型ボアホールスキャン画像記録装置

【課題】 この発明に係る一体型ボアホール画像記録装置は制御機と深度計をプローブと一体化し、ボアホール画像観測記録システムを小型化し且つ経済的なものとすることを目的とする。
【解決手段】本発明の一体型画像記録装置は、ユーザ命令の入力と記録されたデータの出力を行うユーザインターフェース部と、本装置全体への給電を行うバッテリー部と、本装置全体の動作を制御し且つ画像解析から深度変化量を逐次測定するメイン制御部と、方位情報データを取得する3次元方位計センサーと、孔壁を撮像するカメラと、孔壁内を照らす照明部、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ボーリング孔を利用して地質構造を調査する為の画像による地質調査分野
【0002】
カメラセンサーを利用して孔壁を撮像し記録された画像データを解析する為の地質情報処理分野
【背景技術】
【0003】
地質調査においてボーリング孔内の撮像と深度の記録は欠かせない。得られた画像と深度によって、初めて地質学的な議論を行うことが可能となる。その為、従来の画像観測記録装置は図1に示すように3つの主要な部分、(1)制御機、(2)深度計、(3)プローブ(カメラヘッダー)で構成されていた。制御機は、プローブの降下又は上昇速度を制御するウィンチと、プローブへの電力供給やデータの入出力を行う電子制御機構からなる。孔内に下ろされたプローブによって撮像を行い、データは電信ケーブルを通して地上の制御機内のメモリに送られ保存される。プローブが降下することによって、電信ケーブルも伸びていくので、地上に置かれた深度計によって伸び具合を計測し、深度測定を行う。
【0004】
しかしこの手法では、制御機内の電子制御機とプローブ間のデータを送受信するための電信ケーブルと、深度計が必要となるため、装置が大型化せざるを得ず、経済的ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明に係る一体型ボアホール画像記録装置は、上記の問題を解決すべく創案されたもので、制御機内の電子制御機と深度計もプローブと一体化することで、装置を小型化し且つ経済的なものとすることを目的とする。
【0006】
また従来の深度計は、プローブとは独立に外部に設置されていて、回転機構、ロータリーエンコーダーまたはパルスエンコーダー、及び回転数計測部などの複雑な装置群で構成されていた。深度計もプローブと一体化するためには、上記のような複雑な装置群を必要とせずに、深度測定を行なわなければならない。したがって、前記の問題を解消するために、カメラによって撮像された画像の解析によって深度を検出する画像センサー深度計も提供し、ボアホール画像記録装置の小型化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は一体型画像記録装置であって、ユーザの操作の入力と記録されたデータの出力を行うユーザインターフェース部と、本装置全体への給電を行うバッテリー部と、本装置全体の動作を制御し且つ画像解析から深度変化量を逐次測定するメイン制御部と、方位情報データを取得する3次元方位計センサーと、孔壁を撮像するカメラと、孔壁内を照らす照明部から構成される一体型画像記録装置である。
【0008】
上記のメイン制御部に内蔵される、画像センサー深度計は画像マッチング演算部及び深度方向移動量演算部で構成される。図5に示すように、孔壁面上の2点とCCD面上の像点との幾何学的な投影関係から、下記のように、孔壁面における深度方向の移動量ΔZとCCD面上の移動量Δxとの関係式数1を導くことができる。
【数1】

【発明の効果】
【0009】
前述の通り、この発明に係る一体型ボアホール画像記録装置によって、装置が小型化されるという効果を有する。具体的には、従来、制御機とプローブを接続していた電信ケーブルは、非電信性のワイヤで代替することができ、また内蔵した深度計によって外付け深度計も不要となる。
【0010】
本発明の画像センサー深度計はカメラと一体化可能且つ、所定の演算処理がロジック回路で簡単に構成できる。そのため従来の深度計に比べて小型且つ経済的となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2に示すように本発明に係る一体型ボアホール画像記録装置(以下、本装置)は地質調査用ボアホールが掘削された段階で使用される。本装置の電源スイッチを入れ、動作開始ボタンを押す。計測開始時刻を記録動作用タイマに設定する。そして本装置の防水蓋を閉める。次に本装置を孔内の所定の観測開始位置に下ろす。設定された計測開始時間以降、孔壁の地質調査データの記録が開始される。計測中、本装置を手動または電動でボアホール内の所定観測深度の位置まで降下させる。目標位置に到達した時点で、移動中の孔壁の地質調査データ(画像データ、方位データ、深度データ)が本装置の記録媒体部に保存されている。その後、本装置を孔内から引き上げる。蓋を開けて終了ボタンを押す。記録媒体部を本装置から取り出してパソコンにて再生することができる。以下、本発明の動作の実施例を本発明の構成図図3、及び処理流れ図図4を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図3に本発明の一体型ボアホール画像記録装置の各構成要素を示す模式図である。各構成要素を下記の通り説明する。
1)カメラ
アナログ方式またはデジタル方式の小型カメラである。孔壁面の画像解析の為に視野角度120度以上の広角レンズを使用する。
2)3次元方位計センサー
画像解析の為、またはスキャン画像生成の為に方位情報が必要となる。その方位情報を3次元方位計センサーによって取得する。
3)照明部
孔壁を照らす為の照明である。
4)メイン制御部
4.1)カメラインターフェース部
アナログ方式のカメラの場合、アナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換部を加える。カメラで撮像された画像データがこのカメラインターフェース部を経て画像3原色RGBの形式に変換される。
4.2)方位計制御部
カメラのフレーム同期信号に従い、3次元方位計センサーに対して、方位情報データを出力するよう命令し、方位計からの方位情報データが入力される。
4.3)照明制御部
照明の明るさをユーザスイッチの設定によって制御する回路部である。
4.4)画像円周スキャン部
画像解析の際、孔壁を撮像した画像から円周展開画像図面が必要である為、その展開画像データを取得する回路部である。展開画像データが元の平面画像においてある円周上の画像ピクセルに当たる。そこで、フレーム単位の画像データから予め指定された円周線上にあるピクセルの画像データを順次割り出し、メモリ部に格納する処理部である。FPGA IC(Field Programmable Gate Array IC)回路によって実現する。
4.5)深度検出部
画像情報に基づいて本装置の移動量を検出する画像センサー深度計である。FPGA IC回路によって実現する。
4.6)制御CPU部
CPU ICとなるハードウェア部である。
4.7)制御ソフト部
CPUのハードウェア環境において本発明の装置の動作全体を制御する為に組み込まれるソフトウェア部である。具体的には、以下の主な機能によって実現される。
4.7.1)ユーザスイッチ、ボタンの状態を入力し所要動作を起動させ、ランプ類の点灯、消灯または点滅によって本装置の動作状況をユーザに知らせる。
4.7.2)記録媒体インターフェース(IF)部を経て記録媒体部とのデータのやり取りを行う。
4.7.3)画像データの入力及び記録媒体部への転送を行う。
4.7.4)深度データの入力及び記録媒体部への転送を行う。
4.7.5)方位データの入力及び記録媒体部への転送を行う。
4.7.6)照明の明るさを調整する。
4.7.7)カメラを動作させる為の設定を行う。
4.7.8)ビデオエンコーダを動作させる為の設定を行う。
4.8)メモリ部
下記の各部分で構成される。
4.8.1)CPU用メモリ
制御ソフトの動作またはデータ格納の為のメモリである。
4.8.2)画像用メモリ
画像データを一時的に格納する為のメモリである。
4.9)記録媒体インターフェース部
制御CPU部が送ったデータを纏めてファイリング可能なフォーマットの形式で記録媒体部へ転送する部分であり、通常は専用コントローラICまたはCPUのハードウェアによって実現する。
4.10)ビデオエンコーダ部
本装置のカメラで撮像した映像をアナログモニター上に可視化する為の部分である。専用ビデオエンコーダICで実現する。
4.11)DC−DC電源変換部
バッテリーからのDC電源の電圧を本装置の各ICに適したDC電圧に変換する為の部分である。
5)バッテリー部
2次電池で構成され、本装置に電力を供給する。
6)ユーザインターフェース部
次の部分で構成される。
6.1)記録媒体部
USBメモリまたはSDカードである。
6.2)ユーザスイッチ・ボタン部
電源スイッチ、記録動作開始または終了ボタン及びタイマ設定スイッチで構成される。
【0013】
本装置の電源が入ると、画像入力及び画像出力の処理と共に動作開始ボタン、またはタイマ設定スイッチの状態を受付けて処理する。タイマが設定された場合、動作開始ボタンが押された時刻から経過時間を計測し、設定された時刻に達するとデータ記録動作モードに入って所定情報の記録媒体への格納が実施される。タイマ設定がない場合、動作開始ボタンが押されると直ちに上記の記録動作が実施される。記録動作は動作終了ボタン(回路上、開始ボタンと同一でも構わない)が押されるまで継続する。
【0014】
広角レンズを装着したカメラ16を本装置に内蔵する。本装置の電源が入ると、カメラ16で撮像された画像信号が本装置のメイン制御部10に送られてくる。
【0015】
画像信号はまず、メイン制御部10内のカメラインターフェース部18に入力される。アナログ方式のカメラの場合、A/D変換部14を経てアナログ信号がデジタルの画像データに変換される。画像データを、カメラインターフェース部18にて画像3原色フォーマットに変換し、画像水平ライン同期信号及び画像フレーム同期信号と共に画像メモリ部8、画像円周スキャン部12及び深度検出部20へ送る。
【0016】
画像フレーム同期信号に従い、内蔵された3次元方位計に方位データ出力コマンドを出す。その方位計からの方位データが来たら直ちに取り入れてデータ格納メモリに保存する。
【0017】
0015段のカメラインターフェース部18より出力された画像3原色データをフレーム毎に画像格納用メモリに保存し、ビデオエンコーダ部6に出力する。
【0018】
画像円周スキャン部12は画像平面データから円周線上の画像データを抽出する。実現するにはFPGA ICチップを使用する。0015段のカメラインターフェース部18より出力された画像3原色データから下記の過程を経てそのピクセルの画像データを抽出し、円周画像格納用メモリ(FPGA内蔵メモリ)に保存する。
1)画像データクロック信号、画像水平同期信号及び画像フレーム同期信号に基づいて各画像データの画像平面における水平及び垂直位置(x、y)を計算する。
2)予め指定された画像座標面における円周を設ける。FPGA回路によって実現される。具体的にはFPGA内にあるメモリブロックにその円周座標を格納させる。画像クロックの同期信号に従い、1)にて計算結果と格納してある円周座標と比較して円周上のピクセルであるかどうかを判定する。
【0019】
0015段のカメラインターフェース部18より出力されたフレーム単位の画像データから深度検出部によって該当画像フレームの深度変化量を検出し、円周画像データと共にメモリに格納する。
【0020】
[孔壁面上の移動量とCCD面上の移動量の関係式]
まず、図5に示す孔壁面上にある2点と、レンズの前方の視野平面に投影したそれぞれの像点の幾何学的関係から、孔壁面上の移動距離ΔZと視野平面上の移動距離ΔXの関係式を得ることができる。
【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

数7式を数4式に代入すると、
【数8】

次に、視野平面上の移動距離ΔXとCCD面上の移動距離Δxの関係を導き、最終的に孔壁面上の移動距離ΔZとCCD面上の移動距離Δxの関係式を求める。
【数9】

【数10】

【数11】

数11式を数8式に代入すると、
【数12】

ここで、
【数13】

【数14】

数13式と数14式を数12式に代入すると、0008段の数1式が導かれる。
【0021】
時間と共にカメラは孔中心に沿って視野内の孔壁を撮像しながら移動していくが、撮像された孔壁は、次の時間に撮像された画像フレームにおいては、CCD面に対してその位置が変化している。この変化量Δxを検出することによって上記の計算式数1に基づいて、カメラの孔軸方向に沿う移動量が計算できる。変化量Δxを検出するために、画像パターンマッチングの手法を適用する。
【0022】
2枚の画像の相似性を評価する為、評価関数を定義する。本発明はロジック回路で実現可能な評価関数として、相互相関関数を適用する。時刻tにおける画像をIとし、時刻t+1における画像をIt+1とする。Iの中に含まれる画像領域P[x,y;x+m−1,y+n−1]と、It+1の中に含まれる画像領域[x,y;x+M,y+N]の中の小画像領域St+1[x,y;x+m−1,y+n−1]の相互相関関数を下記のように計算する。
【数15】

ここで、p(x+i,y+j)は時刻tにおける画像領域P内のピクセル座標(x+i,y+j)の輝度値であり、st+1(x+i,y+j)は時刻t+1における小画像領域St+1内のピクセル座標(x+i,y+j)の輝度値である。
【0023】
[画像パターンマッチング]
図6でマッチングの実施モデルを示して説明する。まず下記のような調査用領域Ωを定義する。
Ω=[x,y;x+M−1,y+N−1]の長方形画像領域
t+1(x,y)=[x,y;x+m−1,y+n−1]の長方形画像領域
∀x∈[x,x,+M−1−m]
∀y∈[y,y+N−1−n]
∀St+1⊂Ω
Ωに含まれる全領域の相互相関関数を計算して、最大値を与える小画像領域Smaxt+1を割り出す。この時、Smaxt+1は画像領域Pに最も相似だと判定できるため、時刻tにPの画像座標系内のある点(x,y)は、時刻t+1に(x,y)に移動したことになる。
【数16】

よってCCD面における移動量は
【数17】

として検出される。図7で上記相関関数に基づいて画像パターンマッチングを実現する為のロジック回路ブロック図を示す。
【0024】
記録動作モードに入った場合、制御CPU部は画像フレーム同期信号に従って円周画像データ格納メモリ、方位データ格納メモリから画像フレーム毎の円周画像データ、深度データ及び方位データを順次取り入れて記録媒体インターフェース部22を経由しUSBメモリまたはSDカードに格納する。
【0025】
制御CPU部11から出力されたデータは、記録媒体インターフェース部22において、解析時にパソコンから読めるようなフォーマットに変換され、さらにファイル名、時刻などの情報を付加されて記録媒体部3に入力される。
【0026】
ビデオエンコーダ部6は、画像メモリからフレーム毎の画像データを取り入れ、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換処理を経て、NTSCまたはPAL方式のアナログ映像信号を出力する。それによって、本装置のカメラによって撮像された映像を外部モニターにて確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 従来のボアホール画像観測記録システムの模式図である。
【図2】 本発明である一体型ボアホール画像記録装置のシステムの模式図である。
【図3】 本発明である一体型ボアホール画像記録装置の各処理部の構成図である。
【図4】 本発明の一体型ボアホール画像記録装置の各処理部における信号及びデータの処理流れ図である。
【図5】 ボアホール内の孔壁とカメラレンズの幾何学的関係、及び孔壁面上の点をレンズを通してCCD面上に写像した像点の幾何学的関係を示した図である。
【図6】 画像パターンマッチングの模式図である。
【図7】 画像パターンマッチングを実現するロジック回路ブロック図
【符号の説明】
【0028】
図3における符号の説明である。
1:ワイヤ、2:ランプ類、3:記録媒体部、4:ユーザインターフェース部、5:バッテリー部、6:ビデオエンコーダ部、7:メモリ部、8:画像用メモリ、9:CPU用メモリ、10:メイン制御部、11:制御CPU部、12:画像円周スキャン部、13:照明制御部、14:A/D変換部(アナログカメラの場合)、15:照明部、16:カメラ、17:3次元方位計センサー、18:カメラインターフェース部、19:方位計制御部、20:深度検出部、21:制御ソフト部、22:記録媒体インターフェース部、23:DC−DC電源変換部、24:ユーザボタンスイッチ。
【0029】
図5における符号の説明である。
A:時間tにおける孔壁面上のある一点。
B:時間t+1におけるA点。カメラが移動したことによって、カメラとの相対的な位置関係が変化した。
a:CCD面におけるA点の像点。
b:CCD面におけるB点の像点。
D:孔壁の直径。
f:レンズの焦点距離。
0:レンズの中心。
o:CCD面の中心。
R:孔壁の半径。
:直線A0と視野平面の交点が孔中心線となす距離。
:直線B0と視野平面の交点が孔中心線となす距離。
:CCD面におけるA点の像点である点aとCCD面中心線との距離。CCD面中心線は孔中心線と平行であり、点oを通る。
:CCD面におけるB点の像点である点bとCCD面中心線との距離。CCD面中心線は孔中心線と平行であり、点oを通る。
ΔX:XとXの距離。
:A点の深度。
:B点の深度。
ΔZ:ZとZの距離。装置の移動距離に対応。
α:A点と孔中心がなす角度。
α+Δα:B点と孔中心がなす角度。
2θ:レンズの画角。
【0030】
図6の符号の説明は0022段及び0023段を参照すること。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアホール画像観測記録装置であって、装置の移動量を計測する深度計と、撮像された画像を保存する記録媒体と、装置全体の制御を行う電子回路とを内蔵する一体型ボアホール画像観測記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の一体型ボアホール画像観測記録装置において、深度計は孔壁の画像解析によって装置の移動量検出機能を備える、一体型ボアホール画像観測記録装置。
【請求項3】
ボアホールを観測する為の観測記録装置の移動量を測る深度計であって、画像パターンマッチング方法に基づいた深度計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−235435(P2012−235435A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116334(P2011−116334)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(510054854)株式会社佐々木ボーリング工業 (2)
【Fターム(参考)】