画像処理システム、画像処理方法、およびプログラム
【課題】光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現することが可能な、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、サンプルに対する光の照射角度および撮像器の受光角度を変化させて撮像して得られる各画像データから、光輝材群の分布を表す基礎データをそれぞれ生成し、これらを少なくともサンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶手段に記憶させておいて、仮想3次元空間51に配置される3次元モデル55の表面の部分領域57ごとに、部分領域57内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIが上記条件を満たす基礎データを適用して、光輝材群の分布を表す画像を部分領域57の画像として生成する。
【解決手段】光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、サンプルに対する光の照射角度および撮像器の受光角度を変化させて撮像して得られる各画像データから、光輝材群の分布を表す基礎データをそれぞれ生成し、これらを少なくともサンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶手段に記憶させておいて、仮想3次元空間51に配置される3次元モデル55の表面の部分領域57ごとに、部分領域57内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIが上記条件を満たす基礎データを適用して、光輝材群の分布を表す画像を部分領域57の画像として生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムに関し、特に、仮想3次元空間に配置される3次元モデルの表面に画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体などの塗装色を、コンピュータによって表示装置の画面上に表現する技術が知られている。例えば、アルミ粉などの光輝材を含むメタリック系塗装では、光の照射角度や視点の受光角度によって見え方(特に明るさ)が異なることから、特許文献1には、メタリック系塗装からの反射光を受光角度を変化させて測定した、受光角度毎の分光反射率に基づいてメタリック系塗装の塗装色を再現する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−33347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、光輝材を含むメタリック系塗装のような、粒状物群を内包するサンプルにおいては、観察距離が近い場合などに、個々の粒状物による光の反射が観察されるようになる。また、光の照射角度に応じて、個々の粒状物により反射される光の方向などがそれぞれに変化し、その結果、サンプルの見え方が異なってくる。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、受光角度毎の分光反射率に基づいて塗装色を巨視的に再現する技術では、個々の粒状物による光の反射を表現することができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現することが可能な、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の画像処理システムは、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段と、仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像処理方法は、コンピュータを用い、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶手段に記憶させ、仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のプログラムは、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段、および、仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。コンピュータは、例えばパーソナルコンピュータ等である。プログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM、メモリカード、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されても良い。また、プログラムは、例えばインターネット等の通信路を介して流通させても良い。
【0009】
上記本発明によると、3次元モデル表面の部分領域毎ごとに、この部分領域に照射される仮想的な光の照射角度が、サンプルに対する光の照射角度の条件を満たす基礎データが適用されるので、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを、3次元モデル表面に表現することができる。
【0010】
このとき、前記複数の基礎データは、前記粒状物群としての光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、該サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度を変化させて撮像した、それぞれの画像データに基づいて生成されるものとしても良い。これによると、光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、3次元モデル表面に表現することができる。
【0011】
また、本発明の画像処理システムは、前記画像データから、前記光輝材群の分布を表す前記基礎データを生成する生成手段を更に備え、前記描画手段が、前記基礎データに基づいて、前記光輝材群の分布を表す画像を、前記部分領域の画像として生成するようにしても良い。これによると、光輝材群の分布を表す画像を、3次元モデル表面に表示することができる。
【0012】
このとき、前記画像データは、種類の異なる光輝材群をそれぞれ含むサンプル毎に作成され、前記生成手段は、前記サンプル毎の画像データに基づいて、前記種類の異なる光輝材群を所与の比率で配合した場合の分布を表す前記基礎データを生成するようにしても良い。これによると、種類の異なる光輝材群を配合したサンプルの画像データを作成することなく、種類の異なる光輝材群を配合した場合の分布を表す画像を、3次元モデル表面に表示することができる。
【0013】
本発明の一態様では、前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの姿勢を表す前記基礎データを生成し、前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応付けて記憶し、前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群によるそれぞれの姿勢に応じた前記仮想的な光の反射を計算して得られる画像を、前記部分領域の画像として生成する。
【0014】
この態様によると、光輝材群によるそれぞれの姿勢に応じた仮想的な光の反射を計算して、部分領域の画像を生成するので、部分領域に照射される仮想的な光の挙動を、実際にサンプルに照射される光の挙動に近づけることができる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す前記基礎データを生成し、前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す画像を、前記部分領域の画像として生成する。
【0016】
この態様によると、部分領域に照射される仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が、サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件を満たす基礎データを適用して、光輝材のそれぞれの明度を表す画像を生成するので、部分領域に表示される画像の明度分布を、実際にサンプルを観察した場合の明度分布に近づけることができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記記憶手段は、前記それぞれの画像データを、前記複数の基礎データとして、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記画像データの画像を、前記部分領域の画像とする。
【0018】
この態様によると、光の照射角度および視点の受光角度に応じたサンプルの実際の見え方を、3次元モデル表面に表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理方法の工程例を表すフローチャートである。この画像処理方法は、サンプルからの反射光を測定する測定工程(S1)と、レンダリングに利用される基礎データを生成するデータ生成工程(S2)と、表示装置の画面に車体などの3次元モデルを表示するレンダリング工程(S3)とを、主要な工程として含んでいる。
【0021】
このうち、データ生成工程(S2)及びレンダリング工程(S3)は、本発明の一実施形態に係る画像処理システムにより実現される。この画像処理システムは、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータにより構成される。
【0022】
画像処理システムの構成例を、図2に示す。画像処理システム1は、システム全体の制御を司る制御部2と、通信部3と、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される表示部4と、キーボードやマウスなどで構成される操作部5と、ハードディスクなどで構成される記憶部6と、を含むコンピュータとして構成されている。
【0023】
制御部2は、CPU(マイクロプロセッサ等の中央演算装置)やCPUの作業領域とされるRAM(ランダムアクセスメモリ)などを含んで構成される。記憶部6は、制御部2のCPUの動作に必要なプログラムを記憶している。このプログラムは、本発明の一実施形態に係るプログラムである。例えばCD−ROM等の情報記憶媒体に格納されていても良いし、例えばインターネット等の通信路を介して取得しても良い。
【0024】
ここで、制御部2は、本発明の一実施形態に係るプログラムに基づくCPUのソフトウェア的な動作によって、本発明の生成手段および描画手段として機能する。また、制御部2のRAMや記憶部6は、本発明の記憶手段として機能する。
【0025】
以下、上記図1に示した測定工程(S1)、データ生成工程(S2)及びレンダリング工程(S3)について、それぞれ詳細に説明する。
【0026】
[測定工程]
図3は、測定工程(S1)の具体的な工程例を表すフローチャートである。測定工程(S1)は、サンプルの分光反射率を測定する工程(S11、S12)と、サンプルを撮像する工程(S13)とを含んでいる。
【0027】
測定工程(S1)に用いられるサンプルの構成例を、図4に示す。サンプル20は、複数の光輝材21(光輝材群)を含む塗料22を基板24の表面に塗布した、いわゆるメタリック系塗装のサンプルである。光輝材21は、アルミニウム粉などの金属粉からなり、塗料22内に散在している。塗料22は、透明性を有しており、外部から光輝材21を観察できるようになっている。
【0028】
光輝材21は、塗料22や基板24と比して反射率が大きいなど、周囲と比して反射特性が異なることから、光を照射したときの見え方(特に、視点位置が近い場合の見え方)に大きな影響を及ぼす。また、それぞれの光輝材21の姿勢が異なるため、光の照射角度や視点の受光角度に応じて、それぞれの光輝材21により反射される光の見え方が異なってくる。
【0029】
ここで、測定工程(S1)では、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成されたサンプル群、および塗料に含まれる顔料の種類(B1〜Bq)ごとに作成されたサンプル群が、それぞれ測定に供される。
【0030】
光輝材の種類(A1〜Ap)は、例えば、光輝材としてのアルミニウム粉の粒度(大きさ)や表面平滑度など、サンプルの反射特性に影響を与える要素の程度を互いに異ならせて分類したものである。また、アルミニウムとは異なる素材からなる光輝材についても、光輝材の種類に含めて良い。なお、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれには、透明の塗料内に所定量の光輝材が混入されており、また白色基板が用いられている。
【0031】
なお、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群以外にも、白色基板を用い、光輝材の濃度を数段階に亘ってそれぞれ変化させたサンプル、および、黒色基板を用い、光輝材の濃度を数段階に亘ってそれぞれ変化させたサンプルについても、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成する。以下、これらのサンプルを「予備サンプル群」という。
【0032】
顔料の種類(B1〜Bq)は、塗料の着色に利用される顔料の種類のことである。なお、顔料の種類(B1〜Bq)ごとのサンプル群のそれぞれには、塗料内に、所定量の顔料とともに標準的な光輝材が混入されている。
【0033】
測定工程(S1)に用いられる測定系の構成例の概略を、図5に示す。この測定系は、サンプル20に光を照射する光源31と、サンプル20からの反射光を受光して、分光反射率を測定する受光器32と、サンプル20を撮像する撮像器33と、を含んでいる。
【0034】
この撮像器33は、サンプル20の一定の広さの領域を撮像できるものであり、サンプル20からの反射光を受光して、この反射光が為す光学像を撮像する。また、撮像器33は、その受光方向が、受光器32の受光方向と一致するように設けられている。
【0035】
この測定系において、光源31から照射される光の照射方向と、サンプル20表面の法線方向とが為す角度θiを、サンプル20に対する光の照射角度θiと定義することができる。また、受光器32および撮像器33がサンプル20からの反射光を受光する受光方向と、サンプル20表面の法線方向とが為す角度θoを、サンプル20に対する受光器32および撮像器33の受光角度θoと定義することができる。
【0036】
また、この測定系は、光源31を移動させて、サンプル20に対する照射角度θiを変化させる機構(図示せず)を含んでいる。また、受光器32および撮像器33を共に移動させて、サンプル20に対する受光角度θoを変化させる機構(図示せず)も含んでいる。これにより、この測定系では、光源31のサンプル20に対する照射角度θiと、受光器32および撮像器33のサンプル20に対する受光角度θoと、を変化させて、反射光の分光反射率を測定することができ、また、反射光が為す光学像を撮像することができる。
【0037】
以上に説明したサンプル群および測定系を用いて、上記図3に示す測定工程(S1)の各工程(S11〜S13)が行われる。
【0038】
S11の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれについて、照射角度θiおよび受光角度θoを変更しながら、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に、サンプルの分光反射率を測定する。そして、分光反射率のデータを、光輝材別分光反射率データベース11に格納する。光輝材別分光反射率データベース11では、図6に示すようなテーブルによって、分光反射率のデータRef(θi、θo、λ)が、測定時の照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。また、このテーブルは、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0039】
また、S11の工程では、予備サンプル群のそれぞれについても分光反射率を測定し、分光反射率のデータを光輝材別分光反射率データベース11に格納する。これらは、後述する色彩値XYZおよび隠蔽率ζを算出する際に利用される。
【0040】
S12の工程では、顔料の種類(B1〜Bq)ごとのサンプル群のそれぞれについて、照射角度θiおよび受光角度θoを変更しながら、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に、サンプルの分光反射率を測定する。そして、分光反射率のデータを、顔料別分光反射率データベース12に格納する。この顔料別分光反射率データベース12でも、図6に示すようなテーブルによって、分光反射率のデータRef(θi、θo、λ)が、測定時の照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。また、このテーブルは、顔料の種類(B1〜Bq)ごとに作成される。
【0041】
なお、S11およびS12の工程において、分光反射率のデータは、測定された分光反射率の強度を基準となる強度で正規化して得られるものである。基準となる強度は、例えば、照射角度θiを45度、受光角度θoを0度の条件で、白色の基板の分光反射率を測定した場合の強度とすることができる。
【0042】
S13の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれについて、照射角度θiおよび受光角度θoを変更しながら、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に、サンプルを撮像する。そして、撮像により得られる画像データを、光輝材別画像データベース13に格納する。この画像データは、例えばビットマップ形式などの画像データとすることができる。光輝材別画像データベース13では、図7に示すようなテーブルによって、画像データBMP(θi、θo)が、測定時の照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。また、このテーブルは、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0043】
なお、上記図5に示したように、測定系では、受光器32および撮像器33がサンプル20に対して同じ受光角度θoを有し、これらを共に移動させる図示しない機構を含んでいるので、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれについて、分光反射率を測定するS11の工程と、サンプルを撮像するS13の工程は、並行して行うことができる。
【0044】
[データ生成工程]
図8は、データ生成工程(S2)の具体的な工程例を表すフローチャートである。また、このフローチャートは、画像処理システム1の動作例を表すものである。
【0045】
画像処理システム1は、上述の光輝材別分光反射率データベース11、顔料別分光反射率データベース12および光輝材別画像データベース13を、例えばDVD−ROM等の情報記憶媒体やネットワーク等の通信路を介して取得し、これらのデータベース11〜13を、自身の記憶部6に構築する。または、外部の記憶装置に構築されたこれらのデータベース11〜13を、必要に応じて参照するようにしても良い。
【0046】
S21の工程では、命題配合δがユーザによって設定される。命題配合δとは、塗料に含める光輝材および顔料の配合比であり、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとの濃度(XA1(%)〜XAp(%))および顔料の種類(B1〜Bq)ごとの濃度(YB1(%)〜YBq(%))を含んで表される。
【0047】
S22の工程では、命題配合δにおける反射光の色彩値XYZを、光輝材別分光反射率データベース11および顔料別分光反射率データベース12に格納されている分光反射率のデータに基づいて算出する。この色彩値XYZの算出は、命題配合δに含まれる光輝材の種類(A1〜Ap)および顔料の種類(B1〜Bq)に対応する分光反射率のデータをそれぞれ読出して、これらを命題配合δが表す配合比に応じて平均的に合色する技術である。この技術は、特開平10−310727号公報などに開示されている公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。なお、色彩値XYZは、例えばXYZ表色系に基づく値として算出することができる。
【0048】
また、反射光の色彩値XYZは、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に算出されて、色彩値データベース35に格納される。この色彩値データベース35は、画像処理システム1の記憶部6に構築される。また、色彩値データベース35では、図9に示すようなテーブルによって、色彩値XYZが照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。ここで、色彩値XYZと対応付けられた照射角度θiおよび受光角度θoは、後述するレンダリング工程(S3)で色彩値XYZを読出すための条件となる。なお、色彩値XYZを、照射角度θiの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲、および受光角度θoの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲と対応づけて、これらの角度範囲を、色彩値XYZを読出すための条件としても良い。
【0049】
S23の工程では、命題配合δの場合に光輝材が基板表面を覆う割合を表す隠蔽率ζを算出する。この隠蔽率ζは、光輝材別分光反射率データベース11に格納されている、予備サンプル群のそれぞれについて測定された分光反射率のデータに基づいて算出される。なお、分光反射率のデータは、サンプルに対する照射角度θiおよび受光角度θoが正反射の条件となるものを用いることができる。
【0050】
隠蔽率ζの算出について、命題配合δに含まれる光輝材が1種類の場合を例に、図10に示すグラフを用いて説明する。このグラフは、予備サンプル群のそれぞれについて測定された分光反射率のデータに基づいて作成することができる。すなわち、白色基板を用いた、光輝材を含まないサンプルの反射率を1とし、黒色基板を用いた、光輝材を含まないサンプルの反射率を0としたとき、光輝材は白色と黒色の中間の色(例えば、銀色)を有することから、光輝材の濃度が増加するのに伴って、白色基板を用いたサンプルでは反射率が1から漸減していき、黒色基板を用いたサンプルでは反射率が0から漸増していく。そして、基板表面が光輝材により全て覆われた場合には、白色基板を用いたサンプルと黒色基板を用いたサンプルの反射率が同じになる。
【0051】
ここで、光輝材の濃度が同じである場合、白色基板を用いたサンプルでも、黒色基板を用いたサンプルでも、基板表面が光輝材に覆われている割合は同じであるはずなので、白色基板を用いたサンプルの反射率と黒色基板を用いたサンプルの反射率の差分は、基板表面のうち光輝材に覆われていない領域(両者とも同じ割合)が白色であるか黒色であるかの違いに基づくものである。これにより、この反射率の差分から、基板表面が光輝材に覆われていない割合を求めることができ、ひいては、基板表面が光輝材に覆われている割合である隠蔽率ζを求めることができる。
【0052】
命題配合δに含まれる光輝材が複数種類の場合については、光輝材が1種類の場合の考え方を応用して求めることができる。すなわち、命題配合δに複数種類の光輝材が含まれているとした場合、各種類について上記図10に示したグラフを作成し、各種類の光輝材の濃度に対応する、白色基板を用いたサンプルの反射率と、黒色基板を用いたサンプルの反射率とをそれぞれのグラフから読取って、白色基板を用いたサンプルの反射率の総和と、黒色基板を用いたサンプルの反射率の総和との差分に基づいて、命題配合δの場合の隠蔽率ζを求めることができる。
【0053】
S24の工程は、光輝材分布リストの作成工程である。図11に、光輝材分布リストの作成工程(S24)の詳細なフローチャートを示す。
【0054】
S241の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)の中から対象となる種類を選択し、光輝材別画像データベース13から、選択された種類の光輝材に係る、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に得られている複数の画像データを読出して、それぞれ解析する。
【0055】
この解析は、画像データの中で、所定以上の明度を有する光輝材を、光を反射している光輝材として、このような光輝材の粒度(大きさ)および傾きを求める。画像データは、例えば図12に示すように、明度がそれぞれ異なる複数の光輝材の像42を含む、一定の広さの画像41を表すデータである。
【0056】
具体的には、まず、画像データの中で、所定以上の明度を有する画素を「明」、それ以外の画素を「暗」として2値化した画像データを得る。この2値化した画像データでは、所定以上の明度を有する1または複数の光輝材が、「明」画素の集合としてそれぞれ表される。
【0057】
所定以上の明度を有するか否かは、例えば、画像データ内の各画素の色彩値をXYZ表色系の色彩値に変換し、明度を表す値(Y値)により判断することができる。また、判断の閾値は、例えば、サンプルからの反射光を、正反射の受光角度から所定角度(例えば25度程度)外れた受光角度で受光した場合の明度とすることができる。この場合の明度は、例えば、光輝材別分光反射率データベース11に格納されている分光反射率のデータから求めることができる。
【0058】
次に、2値化した画像データの中で、「明」画素の集合として表されている1または複数の光輝材の粒度(大きさ)をそれぞれ求める。光輝材の粒度は、例えば、光輝材を包含する外接円の大きさとして求めることができる。
【0059】
また、光輝材別画像データベース13に格納されている画像データは、サンプルに対して受光角度θoで撮像されたものであるので、2値化した画像データから求めた光輝材の大きさを、受光角度θoに応じて補正することが好ましい。具体的には、サンプルに対して受光角度0で撮像した場合(サンプルを真上から撮像した場合)の大きさとなるように、2値化した画像データから求めた光輝材の大きさを、受光角度θoの余弦関数(cosθo)で除算することが好ましい。
【0060】
次に、2値化した画像データの中で、「明」画素の集合として表されている1または複数の光輝材の傾きをそれぞれ求める。光輝材の傾きは、サンプル表面に対する光輝材の傾きを表すものであり、例えば、光輝材で光が正反射されていると仮定して、画像データを撮像した際の照射角度θiおよび受光角度θoから求めることができる。この場合、1つの画像データで観察される1または複数の光輝材の傾きは、全て同じとなる。
【0061】
光輝材の傾きの算出方法を説明する図を、図13に示す。サンプル20に対する光源31の照射角度θiおよび撮像器33の受光角度θoの撮像条件で、光輝材21による光の正反射が観察された場合、光輝材21の反射面のサンプル20表面に対する傾きθt(すなわち、光輝材21の反射面の法線とサンプル20表面の法線とが為す角度θt)は、受光角度θoと照射角度θiの差分の2分の1で表すことができる。
【0062】
S242の工程では、S241の工程で求めた光輝材の粒度(大きさ)および傾きを、照射角度θiの角度毎にまとめて、照射角度θiの角度毎の傾きリスト39を作成する。すなわち、S241の工程では、選択された種類の光輝材に係る、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に得られている複数の画像データをそれぞれ解析して、光輝材の粒度および傾きを求めているので、求めた光輝材の粒度および傾きの中で照射角度θiが共通するものをまとめて、照射角度θiの角度毎の傾きリスト39を作成する。なお、本実施形態では、傾きリスト39が光輝材分布リストに相当する。
【0063】
照射角度θiの角度毎の傾きリスト39は、画像処理システム1の記憶部6や制御部2のRAMなどに格納される。傾きリスト39の内容例を、図14に示す。この傾きリスト39では、それぞれの光輝材の大きさおよび傾きが記述されており、またそれぞれの光輝材には番号が振られている。
【0064】
上記S241およびS242の工程は、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに実行され、全種類の実行が完了したら、光輝材分布リストの作成工程が終了する(S243)。これにより、照射角度θiの角度毎の傾きリスト39が、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0065】
S25の工程は、基礎データの生成工程である。図15に、基礎データの生成工程(S25)の詳細なフローチャートを示す。基礎データは、後述するレンダリング工程(S3)で光輝材を含むサンプルを表現するために用いられるデータであり、例えば「光輝材性状データ」などと呼ばれる。
【0066】
なお、以下の工程(S251ないしS256)は、照射角度θiの各角度の中から選択された照射角度θiについて実行され、照射角度θiの角度毎に基礎データが生成される(S257)。
【0067】
S251の工程では、命題配合δに応じて、マッピングに使用する光輝材の種類を決定し、選択された照射角度θiに関して光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに存在する複数の傾きリスト39の中から、決定された種類の光輝材に係る傾きリスト39を読出す。命題配合δには、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとの濃度(XA1(%)〜XAp(%))が含まれており、これらの濃度に対応する確率で、光輝材の種類(A1〜Ap)の中からマッピングに使用する光輝材の種類を決定する。
【0068】
S252の工程では、読出した傾きリスト39から基礎データのマッピングに用いる光輝材の番号をランダムに選択する。
【0069】
S253の工程では、基礎データの領域内に、選択した番号の光輝材の大きさに応じて、光輝材の範囲をマッピングする。基礎データの領域は、データがマッピングされるマップ単位が配列した、一定の広さを有している。光輝材の範囲のマッピングは、基礎データの領域内の何れかの位置において、光輝材が存在することを表すデータ(例えば「1」)を、光輝材の大きさに応じた範囲に含まれるマップ単位に対してマッピングすることによって行う。このように、光輝材の範囲がマッピングされる基礎データは、分布マップ46とされる。
【0070】
S254の工程では、基礎データの領域内に、選択した番号の光輝材の傾きのデータをマッピングする。傾きのデータのマッピングは、基礎データの領域内で、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に含まれるマップ単位に対して、傾きのデータをマッピングすることによって行う。このように、光輝材の傾きのデータがマッピングされる基礎データは、傾きマップ47とされる。
【0071】
S255の工程では、基礎データの領域内に、光輝材の傾きの方向のデータをマッピングする。光輝材の傾きの方向は、0度以上360度未満の範囲でランダムに決定される。傾きの方向のデータのマッピングは、基礎データの領域内で、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に含まれるマップ単位に対して、傾きの方向のデータをマッピングすることによって行う。このように、光輝材の傾きの方向のデータがマッピングされる基礎データは、方向マップ48とされる。
【0072】
上記S251ないしS255の工程は、基礎データの領域内にマッピングされた光輝材の範囲が、隠蔽率ζを満たすまで繰り返される(S256)。すなわち、基礎データの領域内に含まれるマップ単位の総数に対し、データがマッピングされたマップ単位の総数が占める割合が、隠蔽率ζを満たすまで繰り返される。
【0073】
以上のようにして、選択された照射角度θiについての分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48が生成される。これらの内容例を、図16に示す。
【0074】
分布マップ46は、傾きリスト39から選択された光輝材の大きさに応じて、光輝材の範囲がマッピングされていることから、光輝材の粒度分布を反映する。
【0075】
また、分布マップ46は、光輝材の範囲がランダムな位置にマッピングされ、これが隠蔽率ζを満たすまで繰り返されることから、光輝材の位置分布を反映する。なお、光輝材の範囲がランダムな位置にマッピングされることから、既にマッピングされている光輝材の範囲の一部または全部が、新たにマッピングされる光輝材の範囲に上書きされる場合があるが、この場合、光輝材の重なり具合を反映することができる。
【0076】
また、分布マップ46は、マッピングに使用する光輝材の種類が命題配合δに応じて決定されていることから、命題配合δで複数種類の光輝材を配合した場合の、複数種類の光輝材の粒度分布や位置分布を反映する。
【0077】
傾きマップ47および方向マップ48は、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に、それぞれ光輝材の傾きの値および傾きの方向の値がマッピングされていることから、各光輝材の姿勢を反映する。
【0078】
なお、本実施形態の基礎データである分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48は、光輝材の粒度や位置などの分布を表すデータや、光輝材の姿勢などの状態を表すデータがマッピングされたものであり、画像データとは異なるものである。
【0079】
図15の説明に戻り、上記S251ないしS256の工程は、照射角度θiの角度毎に実行され、全ての角度について実行が完了したら、基礎データの生成工程が終了する(S257)。これにより、分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48が、照射角度θiの角度毎に生成される。
【0080】
また、照射角度θiの角度毎に生成された分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48は、基礎データデータベース49に格納される。この基礎データデータベース49は、画像処理システム1の記憶部6に構築される。また、基礎データデータベース49では、図17に示すようなテーブルによって、各マップが、照射角度θiとそれぞれ対応づけられる。ここで、各マップと対応付けられた照射角度θiは、後述するレンダリング工程(S3)で各マップを読出すための条件となる。なお、各マップを、照射角度θiの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲と対応づけて、これらの角度範囲を、各マップを読出すための条件としても良い。
【0081】
[レンダリング工程]
図18は、レンダリング工程(S3)の具体的な工程例を表すフローチャートである。また、このフローチャートは、画像処理システム1の動作例を表すものである。
【0082】
画像処理システム1において、制御部2のRAMには、仮想3次元空間が構築される。この仮想3次元空間には、光源および視点が設定され、視点から仮想3次元空間を見た様子が表示部4の画面に表示される。
【0083】
S31の工程では、仮想3次元空間に、例えば車両の形状をした3次元モデルが配置される。仮想3次元空間内の状態を、図19に模式的に示す。仮想3次元空間51に配置された3次元モデル55には光源52から仮想的な光が照射され、また、この3次元モデル55から反射された仮想的な光が視点53において観察される。
【0084】
3次元モデル55の表面は、一定の広さを有する平面で構成された複数の部分領域57に分割されている。これら複数の部分領域57は、例えば、3次元モデル55の表面を分割するそれぞれのポリゴンに対応させることができる。また、それぞれの部分領域57内には、その中心等に代表位置が設定されている。
【0085】
仮想3次元空間51において、部分領域57の代表位置に対して照射される仮想的な光の照射方向と、部分領域57の代表位置での法線方向とが為す角度θIを、部分領域57の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIと定義することができる。また、視点53が部分領域57の代表位置からの反射光を受光する受光方向と、部分領域57の代表位置での法線方向とが為す角度θOを、部分領域57の代表位置に対する視点53の受光角度θOと定義することができる。
【0086】
S32の工程では、複数の部分領域57の中から描画対象となる一つの部分領域57を選択し、選択された部分領域57の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIおよび視点53の受光角度θOを求める。
【0087】
S33の工程では、求めた仮想的な光の照射角度θIおよび視点53の受光角度θOが、サンプルに対する光の照射角度θiおよび受光角度θoに基づく上述の条件(図9参照)を満たす、色彩値XYZを、色彩値データベース35から読出し、この色彩値XYZを描画対象の部分領域57の色彩値として決定する。
【0088】
S34の工程では、求めた仮想的な光の照射角度θIが、サンプルに対する光の照射角度θiに基づく上述の条件(図17参照)を満たす、分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48を、基礎データデータベース49から読出し、これらのマップを描画対象の部分領域57に適用する。これにより、描画対象の部分領域57内には、1または複数の範囲が光輝材の範囲として含まれ、また、それぞれの光輝材の範囲は、描画対象の部分領域57とは独立した傾きを持つことになる。
【0089】
S35の工程では、読出した色彩値XYZおよびマップ46〜48を利用して、描画対象の部分領域57内の画像を生成する。具体的には、描画対象の部分領域57内の画像は、色彩値XYZを部分領域57内の基本の色彩値とした上で、図20に示すように、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲59における仮想的な光の反射を計算して生成する。光輝材の範囲59における仮想的な光の反射は、傾きマップ47および方向マップ48にマッピングされている光輝材の傾きおよび方向のデータを用いて計算する。
【0090】
上記S32ないしS35の工程は、3次元モデル55の表面に含まれる全ての部分領域57について実行され、これにより、3次元モデル55の表面全体に亘って、部分領域57ごとに画像が描画される(S36)。
【0091】
以上に説明した本実施形態によると、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲59における仮想的な光の反射を、傾きマップ47および方向マップ48にマッピングされている光輝材の傾きおよび方向のデータを用いて計算して、部分領域57の画像を生成するので、部分領域57に照射される仮想的な光の挙動を、実際にサンプルに照射される光の挙動に近づけることができる。このため、塗料に含まれる個々の光輝材による光の反射を、3次元モデル55の表面において表現することができる。
【0092】
また、本実施形態では、サンプルに対する光の照射角度θiの条件と対応付けて、分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48を、基礎データデータベース49に記憶させるので、記憶させる基礎データの数を軽減させることができる。
【0093】
また、本実施形態では、照射角度θiの角度毎に傾きリスト39を作成し、また、照射角度θiの角度毎に分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48を作成している。これは、複数の光輝材が重なり合っている場合に、光を照射する照射角度θiに応じて、下側(基板側)に位置する光輝材が影に覆われる範囲が変化し、これによって、実際に光が反射される領域の大きさや位置が変化して、サンプルの見え方が異なってくるためである。
【0094】
[変形例]
以下、本発明の変形例について説明する。なお、上記実施形態と重複する構成および工程については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0095】
図21に、光輝材分布リストの作成工程(S24)の変形例のフローチャートを示す。
【0096】
S741の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)の中から対象となる種類を選択し、光輝材別画像データベース13から、選択された種類の光輝材に係る、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に得られている複数の画像データを読出して、それぞれ解析する。
【0097】
この解析は、画像データの中で、所定以上の明度を有する光輝材を、光を反射している光輝材として、このような光輝材の粒度(大きさ)および明度の値を求める。なお、光輝材の粒度(大きさ)は、上記実施形態と同様にして求めることができる。
【0098】
具体的には、画像データ内の、所定以上の明度を有する1または複数の光輝材を、所定以上の明度を有する画素の集合として判断し、それぞれの集合について明度の値を求める。この明度の値は、例えば、閾値以上の明度を段階的に区分した値とすることができる。明度は、例えば、画像データ内の各画素の色彩値をXYZ表色系の色彩値に変換し、明度を表す値(Y値)により判断することができる。また、所定以上の明度を有する画素の集合の中に、異なる明度の画素が存在する場合には、集合内の明度の平均を取るようにしても良い。
【0099】
S742の工程では、画像データから求めた光輝材の粒度(大きさ)および明度の値をまとめた明度リスト69を作成する。本変形例では、この明度リスト69が光輝材分布リストに相当する。この明度リスト69は、それぞれの画像データに対応して複数作成される。すなわち、明度リスト69は、選択された種類の光輝材について、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に複数作成される。これらは、画像処理システム1の記憶部6や制御部2のRAMなどに格納される。明度リスト69の内容例を、図22に示す。明度リスト69では、それぞれの光輝材の大きさおよび明度の値が記述されており、またそれぞれの光輝材には番号が振られている。
【0100】
上記S741およびS742の工程は、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに実行され、全種類の実行が完了したら、光輝材分布リストの作成工程が終了する(S243)。これにより、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎の明度リスト69が、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0101】
図23に、基礎データの生成工程(S25)の変形例のフローチャートを示す。なお、以下の工程(S754の工程を含む、S251ないしS256の工程)は、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせの中から選択された組み合わせ(θi、θo)について実行され、組み合わせ毎に基礎データが生成される(S757)。
【0102】
S754の工程では、基礎データの領域内に、選択した番号の光輝材の明度のデータをマッピングする。明度のデータのマッピングは、基礎データの領域内で、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に含まれるマップ単位に対して、明度のデータをマッピングすることによって行う。このように、光輝材の明度のデータがマッピングされる基礎データは、明度マップ70とされる。
【0103】
分布マップ46および明度マップ70の内容例を、図24に示す。明度マップ70は、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に、それぞれ光輝材の明度のデータがマッピングされている。
【0104】
上記S754の工程を含む、S251ないしS256の工程は、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に実行され、全ての組み合わせについて実行が完了したら、基礎データの生成工程が終了する(S757)。これにより、分布マップ46および明度マップ70が、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に生成され、基礎データデータベース49に格納される。
【0105】
また、基礎データデータベース49では、図25に示すようなテーブルによって、各マップが、照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。ここで、各マップと対応付けられた照射角度θiおよび受光角度θoは、レンダリング工程(S3)で各マップを読出すための条件となる。なお、各マップを、照射角度θiの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲、および受光角度θoの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲と対応づけて、これらの角度範囲を、各マップを読出すための条件としても良い。
【0106】
図26は、レンダリング工程(S3)の変形例を表すフローチャートである。
【0107】
S84の工程では、求めた仮想的な光の照射角度θIおよび視点53の受光角度θOが、サンプルに対する光の照射角度θiおよび受光角度θoに基づく上述の条件(図25参照)を満たす、分布マップ46および明度マップ70を、基礎データデータベース49から読出し、これらのマップを描画対象の部分領域57に適用する。これにより、描画対象の部分領域57内には、1または複数の範囲が光輝材の範囲として含まれ、また、それぞれの光輝材の範囲は、明度を変化させるための情報を持つことになる。
【0108】
S85の工程では、読出した色彩値XYZ、分布マップ46および明度マップ70を利用して、描画対象の部分領域57内の画像を生成する。具体的には、描画対象の部分領域57内の画像は、色彩値XYZを部分領域57内の基本の色彩値とした上で、図27に示すように、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲79の明度を変化させて生成する。光輝材の範囲79の明度の変化は、明度マップ70にマッピングされている明度のデータを用い、例えば、部分領域57内の光輝材の範囲79が存在していない位置の明度を基準に、光輝材の範囲79の明度を変化させる。
【0109】
以上に説明した本変形例によると、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲79の明度を、明度マップ70にマッピングされている光輝材の明度のデータに応じて変更して、部分領域57の画像を生成するので、部分領域57の画像における明度の分布を、実際にサンプルを観察した場合の明度の分布に近づけることができる。これにより、塗料に含まれる個々の光輝材による光の反射を、3次元モデル55の表面において表現することができる。
【0110】
また、本変形例では、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲79の明度を変更することにより、個々の光輝材による光の反射を表現しているので、レンダリング処理の負担を軽減することができる。
【0111】
なお、本発明は、上述の形式に限定されるものでない。例えば、上記実施形態および変形例では、サンプルを撮像して得られる画像データに基づいて、光輝材の分布や状態を表すデータをマッピングした基礎データを生成していたが、これに限らず、サンプルを撮像して得られる画像データを、基礎データとして、3次元モデルの部分領域に貼付するようにしても良い。すなわち、光輝材別画像データベース13に格納された、それぞれの画像データに対応づけられている照射角度θiおよび受光角度θoを(図7参照)、レンダリング工程(S3)で画像データを読出すための条件とし、レンダリングを行う際に、部分領域57の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIおよび受光角度θOが上記条件を満たす画像データを、光輝材別画像データベース13から読出して、読出した画像データの画像を部分領域57の画像とする。これによると、光の照射角度および視点の受光角度に応じたサンプルの実際の見え方を、3次元モデル表面に表現することができる。また、基礎データを生成する処理の負担や、レンダリング処理の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】画像処理方法の工程例を表すフローチャートである。
【図2】画像処理システムの構成例を表すブロック図である。
【図3】測定工程の具体的な工程例を表すフローチャートである。
【図4】光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルの構成例を模式的に表す図である。
【図5】測定系の構成例を概略的に表す図である。
【図6】分光反射率テーブルの内容例を表す図である。
【図7】画像データテーブルの内容例を表す図である。
【図8】データ生成工程の具体的な工程例(画像処理システムの動作例)を表すフローチャートである。
【図9】色彩データテーブルの内容例を表す図である。
【図10】隠蔽率の算出方法を説明するための図である。
【図11】データ生成工程に含まれる一部の工程(光輝材分布リストの作成工程)を詳細に表すフローチャートである。
【図12】画像データの内容例を表す図である。
【図13】光輝材の傾きの算出方法を説明するための図である。
【図14】光輝材分布リストの一例である傾きリストの内容例を表す図である。
【図15】データ生成工程に含まれる他の一部の工程(基礎データの生成工程)を詳細に表すフローチャートである。
【図16】基礎データの一例である分布マップ、傾きマップおよび方向マップの内容例を表す図である。
【図17】データマップテーブルの内容例を表す図である。
【図18】レンダリング工程の具体的な工程例(画像処理システムの動作例)を表すフローチャートである。
【図19】仮想3次元空間内の状態例を模式的に表す図である。
【図20】仮想3次元空間内の要部を拡大した図である。
【図21】データ生成工程に含まれる一部の工程(光輝材分布リストの作成工程)の変形例を詳細に表すフローチャートである。
【図22】光輝材分布リストの一例である明度リストの内容例を表す図である。
【図23】データ生成工程に含まれる他の一部の工程(基礎データの生成工程)の変形例を詳細に表すフローチャートである。
【図24】基礎データの一例である分布マップおよび明度マップの内容例を表す図である。
【図25】データマップテーブルの内容例を表す図である。
【図26】レンダリング工程の具体的な工程例(画像処理システムの動作例)の変形例を表すフローチャートである。
【図27】仮想3次元空間内の要部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0113】
1 画像処理システム、2 制御部、3 通信部、4 表示部、5 操作部、6 記憶部、11 光輝材別分光反射率データベース、12 顔料別分光反射率データベース、13 光輝材別画像データベース、20 サンプル、21 光輝材、22 塗料、24 基板、31 光源、32 受光器、33 撮像器、35 色彩値データベース、39 傾きリスト、41 画像、42 光輝材の像、46 分布マップ、47 傾きマップ、48 方向マップ、49 基礎データデータベース、51 仮想3次元空間、52 光源、53 視点、55 3次元モデル、57 部分領域、59 光輝材範囲、69 明度リスト、70 明度マップ、79 光輝材範囲。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムに関し、特に、仮想3次元空間に配置される3次元モデルの表面に画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体などの塗装色を、コンピュータによって表示装置の画面上に表現する技術が知られている。例えば、アルミ粉などの光輝材を含むメタリック系塗装では、光の照射角度や視点の受光角度によって見え方(特に明るさ)が異なることから、特許文献1には、メタリック系塗装からの反射光を受光角度を変化させて測定した、受光角度毎の分光反射率に基づいてメタリック系塗装の塗装色を再現する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−33347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、光輝材を含むメタリック系塗装のような、粒状物群を内包するサンプルにおいては、観察距離が近い場合などに、個々の粒状物による光の反射が観察されるようになる。また、光の照射角度に応じて、個々の粒状物により反射される光の方向などがそれぞれに変化し、その結果、サンプルの見え方が異なってくる。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、受光角度毎の分光反射率に基づいて塗装色を巨視的に再現する技術では、個々の粒状物による光の反射を表現することができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現することが可能な、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の画像処理システムは、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段と、仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像処理方法は、コンピュータを用い、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶手段に記憶させ、仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のプログラムは、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段、および、仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。コンピュータは、例えばパーソナルコンピュータ等である。プログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM、メモリカード、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されても良い。また、プログラムは、例えばインターネット等の通信路を介して流通させても良い。
【0009】
上記本発明によると、3次元モデル表面の部分領域毎ごとに、この部分領域に照射される仮想的な光の照射角度が、サンプルに対する光の照射角度の条件を満たす基礎データが適用されるので、光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを、3次元モデル表面に表現することができる。
【0010】
このとき、前記複数の基礎データは、前記粒状物群としての光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、該サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度を変化させて撮像した、それぞれの画像データに基づいて生成されるものとしても良い。これによると、光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、3次元モデル表面に表現することができる。
【0011】
また、本発明の画像処理システムは、前記画像データから、前記光輝材群の分布を表す前記基礎データを生成する生成手段を更に備え、前記描画手段が、前記基礎データに基づいて、前記光輝材群の分布を表す画像を、前記部分領域の画像として生成するようにしても良い。これによると、光輝材群の分布を表す画像を、3次元モデル表面に表示することができる。
【0012】
このとき、前記画像データは、種類の異なる光輝材群をそれぞれ含むサンプル毎に作成され、前記生成手段は、前記サンプル毎の画像データに基づいて、前記種類の異なる光輝材群を所与の比率で配合した場合の分布を表す前記基礎データを生成するようにしても良い。これによると、種類の異なる光輝材群を配合したサンプルの画像データを作成することなく、種類の異なる光輝材群を配合した場合の分布を表す画像を、3次元モデル表面に表示することができる。
【0013】
本発明の一態様では、前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの姿勢を表す前記基礎データを生成し、前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応付けて記憶し、前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群によるそれぞれの姿勢に応じた前記仮想的な光の反射を計算して得られる画像を、前記部分領域の画像として生成する。
【0014】
この態様によると、光輝材群によるそれぞれの姿勢に応じた仮想的な光の反射を計算して、部分領域の画像を生成するので、部分領域に照射される仮想的な光の挙動を、実際にサンプルに照射される光の挙動に近づけることができる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す前記基礎データを生成し、前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す画像を、前記部分領域の画像として生成する。
【0016】
この態様によると、部分領域に照射される仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が、サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件を満たす基礎データを適用して、光輝材のそれぞれの明度を表す画像を生成するので、部分領域に表示される画像の明度分布を、実際にサンプルを観察した場合の明度分布に近づけることができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記記憶手段は、前記それぞれの画像データを、前記複数の基礎データとして、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記画像データの画像を、前記部分領域の画像とする。
【0018】
この態様によると、光の照射角度および視点の受光角度に応じたサンプルの実際の見え方を、3次元モデル表面に表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理方法の工程例を表すフローチャートである。この画像処理方法は、サンプルからの反射光を測定する測定工程(S1)と、レンダリングに利用される基礎データを生成するデータ生成工程(S2)と、表示装置の画面に車体などの3次元モデルを表示するレンダリング工程(S3)とを、主要な工程として含んでいる。
【0021】
このうち、データ生成工程(S2)及びレンダリング工程(S3)は、本発明の一実施形態に係る画像処理システムにより実現される。この画像処理システムは、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータにより構成される。
【0022】
画像処理システムの構成例を、図2に示す。画像処理システム1は、システム全体の制御を司る制御部2と、通信部3と、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される表示部4と、キーボードやマウスなどで構成される操作部5と、ハードディスクなどで構成される記憶部6と、を含むコンピュータとして構成されている。
【0023】
制御部2は、CPU(マイクロプロセッサ等の中央演算装置)やCPUの作業領域とされるRAM(ランダムアクセスメモリ)などを含んで構成される。記憶部6は、制御部2のCPUの動作に必要なプログラムを記憶している。このプログラムは、本発明の一実施形態に係るプログラムである。例えばCD−ROM等の情報記憶媒体に格納されていても良いし、例えばインターネット等の通信路を介して取得しても良い。
【0024】
ここで、制御部2は、本発明の一実施形態に係るプログラムに基づくCPUのソフトウェア的な動作によって、本発明の生成手段および描画手段として機能する。また、制御部2のRAMや記憶部6は、本発明の記憶手段として機能する。
【0025】
以下、上記図1に示した測定工程(S1)、データ生成工程(S2)及びレンダリング工程(S3)について、それぞれ詳細に説明する。
【0026】
[測定工程]
図3は、測定工程(S1)の具体的な工程例を表すフローチャートである。測定工程(S1)は、サンプルの分光反射率を測定する工程(S11、S12)と、サンプルを撮像する工程(S13)とを含んでいる。
【0027】
測定工程(S1)に用いられるサンプルの構成例を、図4に示す。サンプル20は、複数の光輝材21(光輝材群)を含む塗料22を基板24の表面に塗布した、いわゆるメタリック系塗装のサンプルである。光輝材21は、アルミニウム粉などの金属粉からなり、塗料22内に散在している。塗料22は、透明性を有しており、外部から光輝材21を観察できるようになっている。
【0028】
光輝材21は、塗料22や基板24と比して反射率が大きいなど、周囲と比して反射特性が異なることから、光を照射したときの見え方(特に、視点位置が近い場合の見え方)に大きな影響を及ぼす。また、それぞれの光輝材21の姿勢が異なるため、光の照射角度や視点の受光角度に応じて、それぞれの光輝材21により反射される光の見え方が異なってくる。
【0029】
ここで、測定工程(S1)では、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成されたサンプル群、および塗料に含まれる顔料の種類(B1〜Bq)ごとに作成されたサンプル群が、それぞれ測定に供される。
【0030】
光輝材の種類(A1〜Ap)は、例えば、光輝材としてのアルミニウム粉の粒度(大きさ)や表面平滑度など、サンプルの反射特性に影響を与える要素の程度を互いに異ならせて分類したものである。また、アルミニウムとは異なる素材からなる光輝材についても、光輝材の種類に含めて良い。なお、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれには、透明の塗料内に所定量の光輝材が混入されており、また白色基板が用いられている。
【0031】
なお、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群以外にも、白色基板を用い、光輝材の濃度を数段階に亘ってそれぞれ変化させたサンプル、および、黒色基板を用い、光輝材の濃度を数段階に亘ってそれぞれ変化させたサンプルについても、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成する。以下、これらのサンプルを「予備サンプル群」という。
【0032】
顔料の種類(B1〜Bq)は、塗料の着色に利用される顔料の種類のことである。なお、顔料の種類(B1〜Bq)ごとのサンプル群のそれぞれには、塗料内に、所定量の顔料とともに標準的な光輝材が混入されている。
【0033】
測定工程(S1)に用いられる測定系の構成例の概略を、図5に示す。この測定系は、サンプル20に光を照射する光源31と、サンプル20からの反射光を受光して、分光反射率を測定する受光器32と、サンプル20を撮像する撮像器33と、を含んでいる。
【0034】
この撮像器33は、サンプル20の一定の広さの領域を撮像できるものであり、サンプル20からの反射光を受光して、この反射光が為す光学像を撮像する。また、撮像器33は、その受光方向が、受光器32の受光方向と一致するように設けられている。
【0035】
この測定系において、光源31から照射される光の照射方向と、サンプル20表面の法線方向とが為す角度θiを、サンプル20に対する光の照射角度θiと定義することができる。また、受光器32および撮像器33がサンプル20からの反射光を受光する受光方向と、サンプル20表面の法線方向とが為す角度θoを、サンプル20に対する受光器32および撮像器33の受光角度θoと定義することができる。
【0036】
また、この測定系は、光源31を移動させて、サンプル20に対する照射角度θiを変化させる機構(図示せず)を含んでいる。また、受光器32および撮像器33を共に移動させて、サンプル20に対する受光角度θoを変化させる機構(図示せず)も含んでいる。これにより、この測定系では、光源31のサンプル20に対する照射角度θiと、受光器32および撮像器33のサンプル20に対する受光角度θoと、を変化させて、反射光の分光反射率を測定することができ、また、反射光が為す光学像を撮像することができる。
【0037】
以上に説明したサンプル群および測定系を用いて、上記図3に示す測定工程(S1)の各工程(S11〜S13)が行われる。
【0038】
S11の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれについて、照射角度θiおよび受光角度θoを変更しながら、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に、サンプルの分光反射率を測定する。そして、分光反射率のデータを、光輝材別分光反射率データベース11に格納する。光輝材別分光反射率データベース11では、図6に示すようなテーブルによって、分光反射率のデータRef(θi、θo、λ)が、測定時の照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。また、このテーブルは、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0039】
また、S11の工程では、予備サンプル群のそれぞれについても分光反射率を測定し、分光反射率のデータを光輝材別分光反射率データベース11に格納する。これらは、後述する色彩値XYZおよび隠蔽率ζを算出する際に利用される。
【0040】
S12の工程では、顔料の種類(B1〜Bq)ごとのサンプル群のそれぞれについて、照射角度θiおよび受光角度θoを変更しながら、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に、サンプルの分光反射率を測定する。そして、分光反射率のデータを、顔料別分光反射率データベース12に格納する。この顔料別分光反射率データベース12でも、図6に示すようなテーブルによって、分光反射率のデータRef(θi、θo、λ)が、測定時の照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。また、このテーブルは、顔料の種類(B1〜Bq)ごとに作成される。
【0041】
なお、S11およびS12の工程において、分光反射率のデータは、測定された分光反射率の強度を基準となる強度で正規化して得られるものである。基準となる強度は、例えば、照射角度θiを45度、受光角度θoを0度の条件で、白色の基板の分光反射率を測定した場合の強度とすることができる。
【0042】
S13の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれについて、照射角度θiおよび受光角度θoを変更しながら、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に、サンプルを撮像する。そして、撮像により得られる画像データを、光輝材別画像データベース13に格納する。この画像データは、例えばビットマップ形式などの画像データとすることができる。光輝材別画像データベース13では、図7に示すようなテーブルによって、画像データBMP(θi、θo)が、測定時の照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。また、このテーブルは、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0043】
なお、上記図5に示したように、測定系では、受光器32および撮像器33がサンプル20に対して同じ受光角度θoを有し、これらを共に移動させる図示しない機構を含んでいるので、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとのサンプル群のそれぞれについて、分光反射率を測定するS11の工程と、サンプルを撮像するS13の工程は、並行して行うことができる。
【0044】
[データ生成工程]
図8は、データ生成工程(S2)の具体的な工程例を表すフローチャートである。また、このフローチャートは、画像処理システム1の動作例を表すものである。
【0045】
画像処理システム1は、上述の光輝材別分光反射率データベース11、顔料別分光反射率データベース12および光輝材別画像データベース13を、例えばDVD−ROM等の情報記憶媒体やネットワーク等の通信路を介して取得し、これらのデータベース11〜13を、自身の記憶部6に構築する。または、外部の記憶装置に構築されたこれらのデータベース11〜13を、必要に応じて参照するようにしても良い。
【0046】
S21の工程では、命題配合δがユーザによって設定される。命題配合δとは、塗料に含める光輝材および顔料の配合比であり、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとの濃度(XA1(%)〜XAp(%))および顔料の種類(B1〜Bq)ごとの濃度(YB1(%)〜YBq(%))を含んで表される。
【0047】
S22の工程では、命題配合δにおける反射光の色彩値XYZを、光輝材別分光反射率データベース11および顔料別分光反射率データベース12に格納されている分光反射率のデータに基づいて算出する。この色彩値XYZの算出は、命題配合δに含まれる光輝材の種類(A1〜Ap)および顔料の種類(B1〜Bq)に対応する分光反射率のデータをそれぞれ読出して、これらを命題配合δが表す配合比に応じて平均的に合色する技術である。この技術は、特開平10−310727号公報などに開示されている公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。なお、色彩値XYZは、例えばXYZ表色系に基づく値として算出することができる。
【0048】
また、反射光の色彩値XYZは、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に算出されて、色彩値データベース35に格納される。この色彩値データベース35は、画像処理システム1の記憶部6に構築される。また、色彩値データベース35では、図9に示すようなテーブルによって、色彩値XYZが照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。ここで、色彩値XYZと対応付けられた照射角度θiおよび受光角度θoは、後述するレンダリング工程(S3)で色彩値XYZを読出すための条件となる。なお、色彩値XYZを、照射角度θiの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲、および受光角度θoの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲と対応づけて、これらの角度範囲を、色彩値XYZを読出すための条件としても良い。
【0049】
S23の工程では、命題配合δの場合に光輝材が基板表面を覆う割合を表す隠蔽率ζを算出する。この隠蔽率ζは、光輝材別分光反射率データベース11に格納されている、予備サンプル群のそれぞれについて測定された分光反射率のデータに基づいて算出される。なお、分光反射率のデータは、サンプルに対する照射角度θiおよび受光角度θoが正反射の条件となるものを用いることができる。
【0050】
隠蔽率ζの算出について、命題配合δに含まれる光輝材が1種類の場合を例に、図10に示すグラフを用いて説明する。このグラフは、予備サンプル群のそれぞれについて測定された分光反射率のデータに基づいて作成することができる。すなわち、白色基板を用いた、光輝材を含まないサンプルの反射率を1とし、黒色基板を用いた、光輝材を含まないサンプルの反射率を0としたとき、光輝材は白色と黒色の中間の色(例えば、銀色)を有することから、光輝材の濃度が増加するのに伴って、白色基板を用いたサンプルでは反射率が1から漸減していき、黒色基板を用いたサンプルでは反射率が0から漸増していく。そして、基板表面が光輝材により全て覆われた場合には、白色基板を用いたサンプルと黒色基板を用いたサンプルの反射率が同じになる。
【0051】
ここで、光輝材の濃度が同じである場合、白色基板を用いたサンプルでも、黒色基板を用いたサンプルでも、基板表面が光輝材に覆われている割合は同じであるはずなので、白色基板を用いたサンプルの反射率と黒色基板を用いたサンプルの反射率の差分は、基板表面のうち光輝材に覆われていない領域(両者とも同じ割合)が白色であるか黒色であるかの違いに基づくものである。これにより、この反射率の差分から、基板表面が光輝材に覆われていない割合を求めることができ、ひいては、基板表面が光輝材に覆われている割合である隠蔽率ζを求めることができる。
【0052】
命題配合δに含まれる光輝材が複数種類の場合については、光輝材が1種類の場合の考え方を応用して求めることができる。すなわち、命題配合δに複数種類の光輝材が含まれているとした場合、各種類について上記図10に示したグラフを作成し、各種類の光輝材の濃度に対応する、白色基板を用いたサンプルの反射率と、黒色基板を用いたサンプルの反射率とをそれぞれのグラフから読取って、白色基板を用いたサンプルの反射率の総和と、黒色基板を用いたサンプルの反射率の総和との差分に基づいて、命題配合δの場合の隠蔽率ζを求めることができる。
【0053】
S24の工程は、光輝材分布リストの作成工程である。図11に、光輝材分布リストの作成工程(S24)の詳細なフローチャートを示す。
【0054】
S241の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)の中から対象となる種類を選択し、光輝材別画像データベース13から、選択された種類の光輝材に係る、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に得られている複数の画像データを読出して、それぞれ解析する。
【0055】
この解析は、画像データの中で、所定以上の明度を有する光輝材を、光を反射している光輝材として、このような光輝材の粒度(大きさ)および傾きを求める。画像データは、例えば図12に示すように、明度がそれぞれ異なる複数の光輝材の像42を含む、一定の広さの画像41を表すデータである。
【0056】
具体的には、まず、画像データの中で、所定以上の明度を有する画素を「明」、それ以外の画素を「暗」として2値化した画像データを得る。この2値化した画像データでは、所定以上の明度を有する1または複数の光輝材が、「明」画素の集合としてそれぞれ表される。
【0057】
所定以上の明度を有するか否かは、例えば、画像データ内の各画素の色彩値をXYZ表色系の色彩値に変換し、明度を表す値(Y値)により判断することができる。また、判断の閾値は、例えば、サンプルからの反射光を、正反射の受光角度から所定角度(例えば25度程度)外れた受光角度で受光した場合の明度とすることができる。この場合の明度は、例えば、光輝材別分光反射率データベース11に格納されている分光反射率のデータから求めることができる。
【0058】
次に、2値化した画像データの中で、「明」画素の集合として表されている1または複数の光輝材の粒度(大きさ)をそれぞれ求める。光輝材の粒度は、例えば、光輝材を包含する外接円の大きさとして求めることができる。
【0059】
また、光輝材別画像データベース13に格納されている画像データは、サンプルに対して受光角度θoで撮像されたものであるので、2値化した画像データから求めた光輝材の大きさを、受光角度θoに応じて補正することが好ましい。具体的には、サンプルに対して受光角度0で撮像した場合(サンプルを真上から撮像した場合)の大きさとなるように、2値化した画像データから求めた光輝材の大きさを、受光角度θoの余弦関数(cosθo)で除算することが好ましい。
【0060】
次に、2値化した画像データの中で、「明」画素の集合として表されている1または複数の光輝材の傾きをそれぞれ求める。光輝材の傾きは、サンプル表面に対する光輝材の傾きを表すものであり、例えば、光輝材で光が正反射されていると仮定して、画像データを撮像した際の照射角度θiおよび受光角度θoから求めることができる。この場合、1つの画像データで観察される1または複数の光輝材の傾きは、全て同じとなる。
【0061】
光輝材の傾きの算出方法を説明する図を、図13に示す。サンプル20に対する光源31の照射角度θiおよび撮像器33の受光角度θoの撮像条件で、光輝材21による光の正反射が観察された場合、光輝材21の反射面のサンプル20表面に対する傾きθt(すなわち、光輝材21の反射面の法線とサンプル20表面の法線とが為す角度θt)は、受光角度θoと照射角度θiの差分の2分の1で表すことができる。
【0062】
S242の工程では、S241の工程で求めた光輝材の粒度(大きさ)および傾きを、照射角度θiの角度毎にまとめて、照射角度θiの角度毎の傾きリスト39を作成する。すなわち、S241の工程では、選択された種類の光輝材に係る、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に得られている複数の画像データをそれぞれ解析して、光輝材の粒度および傾きを求めているので、求めた光輝材の粒度および傾きの中で照射角度θiが共通するものをまとめて、照射角度θiの角度毎の傾きリスト39を作成する。なお、本実施形態では、傾きリスト39が光輝材分布リストに相当する。
【0063】
照射角度θiの角度毎の傾きリスト39は、画像処理システム1の記憶部6や制御部2のRAMなどに格納される。傾きリスト39の内容例を、図14に示す。この傾きリスト39では、それぞれの光輝材の大きさおよび傾きが記述されており、またそれぞれの光輝材には番号が振られている。
【0064】
上記S241およびS242の工程は、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに実行され、全種類の実行が完了したら、光輝材分布リストの作成工程が終了する(S243)。これにより、照射角度θiの角度毎の傾きリスト39が、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0065】
S25の工程は、基礎データの生成工程である。図15に、基礎データの生成工程(S25)の詳細なフローチャートを示す。基礎データは、後述するレンダリング工程(S3)で光輝材を含むサンプルを表現するために用いられるデータであり、例えば「光輝材性状データ」などと呼ばれる。
【0066】
なお、以下の工程(S251ないしS256)は、照射角度θiの各角度の中から選択された照射角度θiについて実行され、照射角度θiの角度毎に基礎データが生成される(S257)。
【0067】
S251の工程では、命題配合δに応じて、マッピングに使用する光輝材の種類を決定し、選択された照射角度θiに関して光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに存在する複数の傾きリスト39の中から、決定された種類の光輝材に係る傾きリスト39を読出す。命題配合δには、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとの濃度(XA1(%)〜XAp(%))が含まれており、これらの濃度に対応する確率で、光輝材の種類(A1〜Ap)の中からマッピングに使用する光輝材の種類を決定する。
【0068】
S252の工程では、読出した傾きリスト39から基礎データのマッピングに用いる光輝材の番号をランダムに選択する。
【0069】
S253の工程では、基礎データの領域内に、選択した番号の光輝材の大きさに応じて、光輝材の範囲をマッピングする。基礎データの領域は、データがマッピングされるマップ単位が配列した、一定の広さを有している。光輝材の範囲のマッピングは、基礎データの領域内の何れかの位置において、光輝材が存在することを表すデータ(例えば「1」)を、光輝材の大きさに応じた範囲に含まれるマップ単位に対してマッピングすることによって行う。このように、光輝材の範囲がマッピングされる基礎データは、分布マップ46とされる。
【0070】
S254の工程では、基礎データの領域内に、選択した番号の光輝材の傾きのデータをマッピングする。傾きのデータのマッピングは、基礎データの領域内で、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に含まれるマップ単位に対して、傾きのデータをマッピングすることによって行う。このように、光輝材の傾きのデータがマッピングされる基礎データは、傾きマップ47とされる。
【0071】
S255の工程では、基礎データの領域内に、光輝材の傾きの方向のデータをマッピングする。光輝材の傾きの方向は、0度以上360度未満の範囲でランダムに決定される。傾きの方向のデータのマッピングは、基礎データの領域内で、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に含まれるマップ単位に対して、傾きの方向のデータをマッピングすることによって行う。このように、光輝材の傾きの方向のデータがマッピングされる基礎データは、方向マップ48とされる。
【0072】
上記S251ないしS255の工程は、基礎データの領域内にマッピングされた光輝材の範囲が、隠蔽率ζを満たすまで繰り返される(S256)。すなわち、基礎データの領域内に含まれるマップ単位の総数に対し、データがマッピングされたマップ単位の総数が占める割合が、隠蔽率ζを満たすまで繰り返される。
【0073】
以上のようにして、選択された照射角度θiについての分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48が生成される。これらの内容例を、図16に示す。
【0074】
分布マップ46は、傾きリスト39から選択された光輝材の大きさに応じて、光輝材の範囲がマッピングされていることから、光輝材の粒度分布を反映する。
【0075】
また、分布マップ46は、光輝材の範囲がランダムな位置にマッピングされ、これが隠蔽率ζを満たすまで繰り返されることから、光輝材の位置分布を反映する。なお、光輝材の範囲がランダムな位置にマッピングされることから、既にマッピングされている光輝材の範囲の一部または全部が、新たにマッピングされる光輝材の範囲に上書きされる場合があるが、この場合、光輝材の重なり具合を反映することができる。
【0076】
また、分布マップ46は、マッピングに使用する光輝材の種類が命題配合δに応じて決定されていることから、命題配合δで複数種類の光輝材を配合した場合の、複数種類の光輝材の粒度分布や位置分布を反映する。
【0077】
傾きマップ47および方向マップ48は、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に、それぞれ光輝材の傾きの値および傾きの方向の値がマッピングされていることから、各光輝材の姿勢を反映する。
【0078】
なお、本実施形態の基礎データである分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48は、光輝材の粒度や位置などの分布を表すデータや、光輝材の姿勢などの状態を表すデータがマッピングされたものであり、画像データとは異なるものである。
【0079】
図15の説明に戻り、上記S251ないしS256の工程は、照射角度θiの角度毎に実行され、全ての角度について実行が完了したら、基礎データの生成工程が終了する(S257)。これにより、分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48が、照射角度θiの角度毎に生成される。
【0080】
また、照射角度θiの角度毎に生成された分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48は、基礎データデータベース49に格納される。この基礎データデータベース49は、画像処理システム1の記憶部6に構築される。また、基礎データデータベース49では、図17に示すようなテーブルによって、各マップが、照射角度θiとそれぞれ対応づけられる。ここで、各マップと対応付けられた照射角度θiは、後述するレンダリング工程(S3)で各マップを読出すための条件となる。なお、各マップを、照射角度θiの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲と対応づけて、これらの角度範囲を、各マップを読出すための条件としても良い。
【0081】
[レンダリング工程]
図18は、レンダリング工程(S3)の具体的な工程例を表すフローチャートである。また、このフローチャートは、画像処理システム1の動作例を表すものである。
【0082】
画像処理システム1において、制御部2のRAMには、仮想3次元空間が構築される。この仮想3次元空間には、光源および視点が設定され、視点から仮想3次元空間を見た様子が表示部4の画面に表示される。
【0083】
S31の工程では、仮想3次元空間に、例えば車両の形状をした3次元モデルが配置される。仮想3次元空間内の状態を、図19に模式的に示す。仮想3次元空間51に配置された3次元モデル55には光源52から仮想的な光が照射され、また、この3次元モデル55から反射された仮想的な光が視点53において観察される。
【0084】
3次元モデル55の表面は、一定の広さを有する平面で構成された複数の部分領域57に分割されている。これら複数の部分領域57は、例えば、3次元モデル55の表面を分割するそれぞれのポリゴンに対応させることができる。また、それぞれの部分領域57内には、その中心等に代表位置が設定されている。
【0085】
仮想3次元空間51において、部分領域57の代表位置に対して照射される仮想的な光の照射方向と、部分領域57の代表位置での法線方向とが為す角度θIを、部分領域57の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIと定義することができる。また、視点53が部分領域57の代表位置からの反射光を受光する受光方向と、部分領域57の代表位置での法線方向とが為す角度θOを、部分領域57の代表位置に対する視点53の受光角度θOと定義することができる。
【0086】
S32の工程では、複数の部分領域57の中から描画対象となる一つの部分領域57を選択し、選択された部分領域57の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIおよび視点53の受光角度θOを求める。
【0087】
S33の工程では、求めた仮想的な光の照射角度θIおよび視点53の受光角度θOが、サンプルに対する光の照射角度θiおよび受光角度θoに基づく上述の条件(図9参照)を満たす、色彩値XYZを、色彩値データベース35から読出し、この色彩値XYZを描画対象の部分領域57の色彩値として決定する。
【0088】
S34の工程では、求めた仮想的な光の照射角度θIが、サンプルに対する光の照射角度θiに基づく上述の条件(図17参照)を満たす、分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48を、基礎データデータベース49から読出し、これらのマップを描画対象の部分領域57に適用する。これにより、描画対象の部分領域57内には、1または複数の範囲が光輝材の範囲として含まれ、また、それぞれの光輝材の範囲は、描画対象の部分領域57とは独立した傾きを持つことになる。
【0089】
S35の工程では、読出した色彩値XYZおよびマップ46〜48を利用して、描画対象の部分領域57内の画像を生成する。具体的には、描画対象の部分領域57内の画像は、色彩値XYZを部分領域57内の基本の色彩値とした上で、図20に示すように、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲59における仮想的な光の反射を計算して生成する。光輝材の範囲59における仮想的な光の反射は、傾きマップ47および方向マップ48にマッピングされている光輝材の傾きおよび方向のデータを用いて計算する。
【0090】
上記S32ないしS35の工程は、3次元モデル55の表面に含まれる全ての部分領域57について実行され、これにより、3次元モデル55の表面全体に亘って、部分領域57ごとに画像が描画される(S36)。
【0091】
以上に説明した本実施形態によると、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲59における仮想的な光の反射を、傾きマップ47および方向マップ48にマッピングされている光輝材の傾きおよび方向のデータを用いて計算して、部分領域57の画像を生成するので、部分領域57に照射される仮想的な光の挙動を、実際にサンプルに照射される光の挙動に近づけることができる。このため、塗料に含まれる個々の光輝材による光の反射を、3次元モデル55の表面において表現することができる。
【0092】
また、本実施形態では、サンプルに対する光の照射角度θiの条件と対応付けて、分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48を、基礎データデータベース49に記憶させるので、記憶させる基礎データの数を軽減させることができる。
【0093】
また、本実施形態では、照射角度θiの角度毎に傾きリスト39を作成し、また、照射角度θiの角度毎に分布マップ46、傾きマップ47および方向マップ48を作成している。これは、複数の光輝材が重なり合っている場合に、光を照射する照射角度θiに応じて、下側(基板側)に位置する光輝材が影に覆われる範囲が変化し、これによって、実際に光が反射される領域の大きさや位置が変化して、サンプルの見え方が異なってくるためである。
【0094】
[変形例]
以下、本発明の変形例について説明する。なお、上記実施形態と重複する構成および工程については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0095】
図21に、光輝材分布リストの作成工程(S24)の変形例のフローチャートを示す。
【0096】
S741の工程では、光輝材の種類(A1〜Ap)の中から対象となる種類を選択し、光輝材別画像データベース13から、選択された種類の光輝材に係る、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に得られている複数の画像データを読出して、それぞれ解析する。
【0097】
この解析は、画像データの中で、所定以上の明度を有する光輝材を、光を反射している光輝材として、このような光輝材の粒度(大きさ)および明度の値を求める。なお、光輝材の粒度(大きさ)は、上記実施形態と同様にして求めることができる。
【0098】
具体的には、画像データ内の、所定以上の明度を有する1または複数の光輝材を、所定以上の明度を有する画素の集合として判断し、それぞれの集合について明度の値を求める。この明度の値は、例えば、閾値以上の明度を段階的に区分した値とすることができる。明度は、例えば、画像データ内の各画素の色彩値をXYZ表色系の色彩値に変換し、明度を表す値(Y値)により判断することができる。また、所定以上の明度を有する画素の集合の中に、異なる明度の画素が存在する場合には、集合内の明度の平均を取るようにしても良い。
【0099】
S742の工程では、画像データから求めた光輝材の粒度(大きさ)および明度の値をまとめた明度リスト69を作成する。本変形例では、この明度リスト69が光輝材分布リストに相当する。この明度リスト69は、それぞれの画像データに対応して複数作成される。すなわち、明度リスト69は、選択された種類の光輝材について、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に複数作成される。これらは、画像処理システム1の記憶部6や制御部2のRAMなどに格納される。明度リスト69の内容例を、図22に示す。明度リスト69では、それぞれの光輝材の大きさおよび明度の値が記述されており、またそれぞれの光輝材には番号が振られている。
【0100】
上記S741およびS742の工程は、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに実行され、全種類の実行が完了したら、光輝材分布リストの作成工程が終了する(S243)。これにより、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎の明度リスト69が、光輝材の種類(A1〜Ap)ごとに作成される。
【0101】
図23に、基礎データの生成工程(S25)の変形例のフローチャートを示す。なお、以下の工程(S754の工程を含む、S251ないしS256の工程)は、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせの中から選択された組み合わせ(θi、θo)について実行され、組み合わせ毎に基礎データが生成される(S757)。
【0102】
S754の工程では、基礎データの領域内に、選択した番号の光輝材の明度のデータをマッピングする。明度のデータのマッピングは、基礎データの領域内で、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に含まれるマップ単位に対して、明度のデータをマッピングすることによって行う。このように、光輝材の明度のデータがマッピングされる基礎データは、明度マップ70とされる。
【0103】
分布マップ46および明度マップ70の内容例を、図24に示す。明度マップ70は、分布マップ46にマッピングされた光輝材の範囲と同じ範囲に、それぞれ光輝材の明度のデータがマッピングされている。
【0104】
上記S754の工程を含む、S251ないしS256の工程は、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に実行され、全ての組み合わせについて実行が完了したら、基礎データの生成工程が終了する(S757)。これにより、分布マップ46および明度マップ70が、照射角度θiの各角度と受光角度θoの各角度の組み合わせ毎に生成され、基礎データデータベース49に格納される。
【0105】
また、基礎データデータベース49では、図25に示すようなテーブルによって、各マップが、照射角度θiおよび受光角度θoと対応づけられる。ここで、各マップと対応付けられた照射角度θiおよび受光角度θoは、レンダリング工程(S3)で各マップを読出すための条件となる。なお、各マップを、照射角度θiの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲、および受光角度θoの各角度をそれぞれ含む複数の角度範囲と対応づけて、これらの角度範囲を、各マップを読出すための条件としても良い。
【0106】
図26は、レンダリング工程(S3)の変形例を表すフローチャートである。
【0107】
S84の工程では、求めた仮想的な光の照射角度θIおよび視点53の受光角度θOが、サンプルに対する光の照射角度θiおよび受光角度θoに基づく上述の条件(図25参照)を満たす、分布マップ46および明度マップ70を、基礎データデータベース49から読出し、これらのマップを描画対象の部分領域57に適用する。これにより、描画対象の部分領域57内には、1または複数の範囲が光輝材の範囲として含まれ、また、それぞれの光輝材の範囲は、明度を変化させるための情報を持つことになる。
【0108】
S85の工程では、読出した色彩値XYZ、分布マップ46および明度マップ70を利用して、描画対象の部分領域57内の画像を生成する。具体的には、描画対象の部分領域57内の画像は、色彩値XYZを部分領域57内の基本の色彩値とした上で、図27に示すように、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲79の明度を変化させて生成する。光輝材の範囲79の明度の変化は、明度マップ70にマッピングされている明度のデータを用い、例えば、部分領域57内の光輝材の範囲79が存在していない位置の明度を基準に、光輝材の範囲79の明度を変化させる。
【0109】
以上に説明した本変形例によると、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲79の明度を、明度マップ70にマッピングされている光輝材の明度のデータに応じて変更して、部分領域57の画像を生成するので、部分領域57の画像における明度の分布を、実際にサンプルを観察した場合の明度の分布に近づけることができる。これにより、塗料に含まれる個々の光輝材による光の反射を、3次元モデル55の表面において表現することができる。
【0110】
また、本変形例では、部分領域57内に含まれるそれぞれの光輝材の範囲79の明度を変更することにより、個々の光輝材による光の反射を表現しているので、レンダリング処理の負担を軽減することができる。
【0111】
なお、本発明は、上述の形式に限定されるものでない。例えば、上記実施形態および変形例では、サンプルを撮像して得られる画像データに基づいて、光輝材の分布や状態を表すデータをマッピングした基礎データを生成していたが、これに限らず、サンプルを撮像して得られる画像データを、基礎データとして、3次元モデルの部分領域に貼付するようにしても良い。すなわち、光輝材別画像データベース13に格納された、それぞれの画像データに対応づけられている照射角度θiおよび受光角度θoを(図7参照)、レンダリング工程(S3)で画像データを読出すための条件とし、レンダリングを行う際に、部分領域57の代表位置に対する仮想的な光の照射角度θIおよび受光角度θOが上記条件を満たす画像データを、光輝材別画像データベース13から読出して、読出した画像データの画像を部分領域57の画像とする。これによると、光の照射角度および視点の受光角度に応じたサンプルの実際の見え方を、3次元モデル表面に表現することができる。また、基礎データを生成する処理の負担や、レンダリング処理の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】画像処理方法の工程例を表すフローチャートである。
【図2】画像処理システムの構成例を表すブロック図である。
【図3】測定工程の具体的な工程例を表すフローチャートである。
【図4】光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルの構成例を模式的に表す図である。
【図5】測定系の構成例を概略的に表す図である。
【図6】分光反射率テーブルの内容例を表す図である。
【図7】画像データテーブルの内容例を表す図である。
【図8】データ生成工程の具体的な工程例(画像処理システムの動作例)を表すフローチャートである。
【図9】色彩データテーブルの内容例を表す図である。
【図10】隠蔽率の算出方法を説明するための図である。
【図11】データ生成工程に含まれる一部の工程(光輝材分布リストの作成工程)を詳細に表すフローチャートである。
【図12】画像データの内容例を表す図である。
【図13】光輝材の傾きの算出方法を説明するための図である。
【図14】光輝材分布リストの一例である傾きリストの内容例を表す図である。
【図15】データ生成工程に含まれる他の一部の工程(基礎データの生成工程)を詳細に表すフローチャートである。
【図16】基礎データの一例である分布マップ、傾きマップおよび方向マップの内容例を表す図である。
【図17】データマップテーブルの内容例を表す図である。
【図18】レンダリング工程の具体的な工程例(画像処理システムの動作例)を表すフローチャートである。
【図19】仮想3次元空間内の状態例を模式的に表す図である。
【図20】仮想3次元空間内の要部を拡大した図である。
【図21】データ生成工程に含まれる一部の工程(光輝材分布リストの作成工程)の変形例を詳細に表すフローチャートである。
【図22】光輝材分布リストの一例である明度リストの内容例を表す図である。
【図23】データ生成工程に含まれる他の一部の工程(基礎データの生成工程)の変形例を詳細に表すフローチャートである。
【図24】基礎データの一例である分布マップおよび明度マップの内容例を表す図である。
【図25】データマップテーブルの内容例を表す図である。
【図26】レンダリング工程の具体的な工程例(画像処理システムの動作例)の変形例を表すフローチャートである。
【図27】仮想3次元空間内の要部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0113】
1 画像処理システム、2 制御部、3 通信部、4 表示部、5 操作部、6 記憶部、11 光輝材別分光反射率データベース、12 顔料別分光反射率データベース、13 光輝材別画像データベース、20 サンプル、21 光輝材、22 塗料、24 基板、31 光源、32 受光器、33 撮像器、35 色彩値データベース、39 傾きリスト、41 画像、42 光輝材の像、46 分布マップ、47 傾きマップ、48 方向マップ、49 基礎データデータベース、51 仮想3次元空間、52 光源、53 視点、55 3次元モデル、57 部分領域、59 光輝材範囲、69 明度リスト、70 明度マップ、79 光輝材範囲。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段と、
仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段と、
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記複数の基礎データは、前記粒状物群としての光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、該サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度を変化させて撮像した、それぞれの画像データに基づいて生成される、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理システムであって、
前記画像データから、前記光輝材群の分布を表す前記基礎データを生成する生成手段を更に備え、
前記描画手段は、前記基礎データに基づいて、前記光輝材群の分布を表す画像を、前記部分領域の画像として生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理システムであって、
前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの姿勢を表す前記基礎データを生成し、
前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応付けて記憶し、
前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群によるそれぞれの姿勢に応じた前記仮想的な光の反射を計算して得られる画像を、前記部分領域の画像として生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理システムであって、
前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す前記基礎データを生成し、
前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、
前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す画像を、前記部分領域の画像として生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項6】
請求項3ないし5の何れかに記載の画像処理システムであって、
前記画像データは、種類の異なる光輝材群をそれぞれ含むサンプル毎に作成され、
前記生成手段は、前記サンプル毎の画像データに基づいて、前記種類の異なる光輝材群を所与の比率で配合した場合の分布を表す前記基礎データを生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
請求項2に記載の画像処理システムであって、
前記記憶手段は、前記それぞれの画像データを、前記複数の基礎データとして、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、
前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記画像データの画像を、前記部分領域の画像とする、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項8】
コンピュータを用い、
光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶手段に記憶させ、
仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段、および、
仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段と、
仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段と、
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記複数の基礎データは、前記粒状物群としての光輝材群を含む塗料が塗布されたサンプルを、該サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度を変化させて撮像した、それぞれの画像データに基づいて生成される、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理システムであって、
前記画像データから、前記光輝材群の分布を表す前記基礎データを生成する生成手段を更に備え、
前記描画手段は、前記基礎データに基づいて、前記光輝材群の分布を表す画像を、前記部分領域の画像として生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理システムであって、
前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの姿勢を表す前記基礎データを生成し、
前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応付けて記憶し、
前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群によるそれぞれの姿勢に応じた前記仮想的な光の反射を計算して得られる画像を、前記部分領域の画像として生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理システムであって、
前記生成手段は、前記画像データから、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す前記基礎データを生成し、
前記記憶手段は、前記複数の基礎データを、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、
前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記光輝材群の分布およびそれぞれの明度を表す画像を、前記部分領域の画像として生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項6】
請求項3ないし5の何れかに記載の画像処理システムであって、
前記画像データは、種類の異なる光輝材群をそれぞれ含むサンプル毎に作成され、
前記生成手段は、前記サンプル毎の画像データに基づいて、前記種類の異なる光輝材群を所与の比率で配合した場合の分布を表す前記基礎データを生成する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
請求項2に記載の画像処理システムであって、
前記記憶手段は、前記それぞれの画像データを、前記複数の基礎データとして、前記サンプルに対する光の照射角度および撮像手段の受光角度の条件に対応付けて記憶し、
前記描画手段は、前記部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度および視点の受光角度が前記条件を満たす前記画像データの画像を、前記部分領域の画像とする、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項8】
コンピュータを用い、
光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶手段に記憶させ、
仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
光の照射角度に応じて見え方の異なる、粒状物群を内包するサンプルを表現するための複数の基礎データを、少なくとも前記サンプルに対する光の照射角度の条件と対応づけて記憶する記憶手段、および、
仮想3次元空間に配置される3次元モデル表面の部分領域ごとに、該部分領域内の代表位置に対する仮想的な光の照射角度が前記条件を満たす前記基礎データを適用して、前記部分領域の画像を生成する描画手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2008−176740(P2008−176740A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11934(P2007−11934)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】
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