説明

画像処理パイプライン回路

【課題】 画像処理機能の追加、削除および順序の変更を、画像処理モジュールと接続モジュールのみで行い、パイプライン段数に制約のない画像処理パイプライン回路を提供する。
【解決手段】 少なくとも1つの画像入力部11と、複数の画像処理モジュール12〜14と、一方の出力が他方の入力となる2つの画像処理モジュールを連結する少なくとも1つの接続モジュール16、17と、少なくとも1つの画像出力部15とからなる画像処理パイプライン回路100において、接続モジュール16、17が垂直同期信号と水平同期信号のいずれか1つもしくは両方を第1の同期信号として受け取り、第1の同期信号に接続モジュールが連結する2つの画像処理モジュール間の相対的な遅延量を付加した第2の同期信号を生成する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理機能の簡単な追加、削除および順序の変更に関し、詳しくは、画像処理パイプライン回路に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理アルゴリズムは画像処理対象物によって千差万別であり、必要な画像処理機能の種類と処理順序も同様に千差万別である。画像処理パイプライン回路は、画像処理アルゴリズムに応じて複数の画像処理機能を組み合わせて構成する。例えば特許文献1においては、図6に示すように、入力画像データが画像入力部61から画像処理モジュール62に送られ、画像処理モジュール62の出力画像データが画像処理モジュール63へ、画像処理モジュール63の出力画像データが画像処理モジュール64へと順次送られて、最後は画像処理モジュール64の出力画像データが画像出力部65へと送られる。主接続モジュール66は、画像処理モジュール62〜64が持つ遅延量に応じた水平同期信号を生成している。副接続モジュール67〜69は、主接続モジュール66が生成した水平同期信号を元に、画像処理モジュール62〜64が必要とする有効画像領域の有効範囲信号を生成している。
【0003】
また、特許文献2においては、図8に示すように、予めプロセッシング・モジュールPM(#1〜#6)とイメージ・メモリIM(#7〜#10)とディレイ・モジュールDM(#11及び#12)とネットワーク回路とを実装しておき、結合を制御することで画像処理アルゴリズムの変更に対応している。
【特許文献1】特開2000−172834
【特許文献2】特開昭61−13379
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6においては、画像処理機能の追加、削除および順序の変更を行うと、画像処理モジュール62〜64以外に周辺回路である主接続モジュール66と副接続モジュール67〜69の設計変更が必要になるという問題がある。さらに、画像処理モジュールには、例えば当該画素とその近傍を合わせた3×3の画素というように、当該画素に対する画像処理結果を求めるためにその周囲の画素データを必要とするものがある。この場合、処理結果を得るために次のラインの画素データが必要であり、処理結果が得られるのは次のラインということになる。つまり、画像処理モジュールが水平方向だけでなく垂直方向にも遅延を持つことになる。
【0005】
図6において、このような垂直方向に遅延を持つ画像処理モジュールの数が増えると、図7に示すように、有効画像領域73、74がフレーム77、78の範囲を超えて下にはみ出してしまうことになる。この場合、正常な処理が行われないため、画像処理パイプラインの段数に制約が生じてしまうという問題がある。また、図8においても、図6の場合と同様に垂直方向への遅延に対して対応できないという問題がある。また、使用目的に応じては、必要としない機能を実装していることとなる場合があり、回路規模の増大とみなされる場合がある。さらに、画像の膨張操作などで行われる同じ処理を複数回行う場合には、同じ処理機能を持つ画像処理モジュールを複数個、事前に持たせておく必要がある。従って図8方法は、同一機能を複数回行う場合の処理において、機能の柔軟性に問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、画像処理機能の追加、削除および順序の変更を、画像処理モジュールと接続モジュールのみで行い、パイプライン段数に制約のない画像処理パイプライン回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理パイプライン回路は、少なくとも1つの画像入力部と、複数の画像処理モジュールと、一方の出力が他方の入力となる2つの前記画像処理モジュールを連結する少なくとも1つの接続モジュールと、少なくとも1つの画像出力部とからなる画像処理パイプライン回路であって、
前記接続モジュールが垂直同期信号と水平同期信号のいずれか1つもしくは両方を第1の同期信号として受け取り、前記第1の同期信号に前記接続モジュールが連結する2つの前記画像処理モジュール間の相対的な遅延量を付加した第2の同期信号を生成する手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の画像処理パイプライン回路は、さらに、前記画像入力部の出力が、第1の前記画像処理モジュール及び第1の前記接続モジュールに入力され、
前記第1の画像処理モジュール及び前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記画像処理モジュールに入力され、且つ前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記接続モジュールに入力され、
前記第2の画像処理モジュール及び前記第2の接続モジュールの出力が、第3の前記画像処理モジュールに入力され、
前記第3の画像処理モジュールの出力が、前記画像出力部に入力されることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像処理パイプライン回路は、さらに、前記画像入力部の出力が、第1の前記画像処理モジュール及び第1の前記接続モジュールに入力され、
前記第1の画像処理モジュールの出力が、前記第1の接続モジュールに入力され、
前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記画像処理モジュール及び第2の前記接続モジュールに入力され、
前記第2の画像処理モジュールの出力が、前記第2の接続モジュールに入力され、
前記第2の接続モジュールの出力が、第3の前記画像処理モジュールに入力され、
前記第3の画像処理モジュールの出力が、前記画像出力部に入力されることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像処理パイプライン回路は、さらに、前記画像入力部の出力が、第1の前記画像処理モジュール及び第1の前記接続モジュールに入力され、
前記第1の画像処理モジュールの出力が、前記第1の接続モジュールに入力され、
前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記画像処理モジュール、第2の前記接続モジュール、第4の前記画像処理モジュール及び第4の前記接続モジュールに入力され、
前記第2の画像処理モジュールの出力が、前記第2の接続モジュールに入力され、且つ前記第4の画像処理モジュールの出力が、前記第4の接続モジュールに入力され、
前記第2の接続モジュール及び前記第4の接続モジュールの出力が、第3の前記画像処理モジュールに入力され、
前記第3の画像処理モジュールの出力が、前記画像出力部に入力されることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像処理パイプライン回路の前記接続モジュールは、自ら生成した前記第2の同期信号を基準とする水平および垂直方向の有効範囲信号を生成することを特徴とする。
【0012】
本発明の画像処理パイプライン回路の複数の前記画像処理モジュールとそれらを接続する前記接続モジュールで構成される画像処理パイプライン回路において、各画素の処理結果を得るまでの遅延時間が、前記画像処理モジュールが持つ遅延量の総和に等しいことを特徴とする。
【0013】
本発明による画像処理パイプライン回路の前記接続モジュールは前記有効範囲信号を生成する有効範囲信号生成回路を含み、
前記有効範囲信号生成回路は、
任意のビット数からなる有効範囲開始点設定信号と有効範囲長設定信号とが入力されると、該設定信号のいずれかを選択して出力するセレクタと、
前記セレクタから出力される前記各設定信号が示す設定数をカウントダウンするダウンカウンタと、
前記ダウンカウンタから出力される前記各設定数のゼロ信号が入力され、前記有効範囲信号を生成して出力するレジスタとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明による画像処理パイプライン回路の前記接続モジュールは、前記画像処理モジュールが持つ前記遅延量の総和を付加する総遅延量付加回路をさらに含み、
前記総遅延量付加回路は、水平同期信号が常に一定周期である場合において、
前記画像処理モジュールが持つ水平方向における総遅延量を水平同期信号に付加する水平同期信号遅延回路と、
前記水平同期信号遅延回路から受け取った水平同期信号を基準として、垂直方向における総遅延量を垂直同期信号に付加する垂直同期信号生成回路とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明による画像処理パイプライン回路の前記接続モジュールは、前記画像処理モジュールが持つ前記遅延量の総和を付加する総遅延量付加回路をさらに含み、
前記総遅延量付加回路は、水平同期信号が一定周期でない場合において、
前記画像処理モジュールの前記水平同期信号の画素クロックをカウントするカウンタと、
前記カウンタの計数値を記憶するメモリと、
前記画像処理モジュールが持つ水平方向及び垂直方向における遅延量から総遅延量を生成する遅延量生成回路と、
前記遅延量生成回路で生成された総遅延量が経過した後、前記メモリから読み出された前記計数値を基に水平同期信号を再成する水平同期信号生成回路と、
前記遅延量生成回路で生成された総遅延量が経過した後、入力された垂直同期信号を出力する垂直同期信号生成回路とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像処理パイプライン回路によれば、連結する2つの画像処理モジュール間の相対的な遅延量のみで接続モジュールが構成できるため、画像処理モジュールと接続モジュールを追加するだけで画像処理機能の追加、削除および順序の変更が可能である。また、同じ画像処理機能を複数回実行するアルゴリズムへの対応や、アルゴリズムに最適化した回路構成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら説明する。図1は本発明の画像処理パイプライン回路のブロック図である。図2は本発明の画像処理パイプライン回路のフレームと有効画像領域の対応を表す図である。図3は本発明の図1bの詳細な画像処理パイプラインのブロック図である。
【実施例1】
【0018】
図1aは、本発明による第1の実施の形態である画像処理パイプライン回路のブロック図である。図1aは、例えばノイズ除去もしくは画像強調処理を行う場合で、第1の画像処理モジュール12および第2の画像処理モジュール13の出力画像のデータ幅が、第2の画像処理モジュール13および第3の画像処理モジュール14の入力画像のデータ幅と同じである。
【0019】
図1aに示すように、本画像処理パイプライン回路100では、入力画像データが画像入力部11から第1の画像処理モジュール12に送られ、第1の画像処理モジュール12の出力画像データが処理されたものから順に第2の画像処理モジュール13へ送られる。以下同様に、第2の画像処理モジュール13の出力画像データが第3の画像処理モジュール14へと順次送られて、最後は第3の画像処理モジュール14の出力画像データが画像出力部15へと送られる。
【0020】
このとき、画像処理モジュール12〜14が持つ遅延量の分だけ出力画像データは入力画像データに対して遅れが生じる。この遅れに対応するために、第1の接続モジュール16は画像入力部11から受け取った第1の同期信号に第1の画像処理モジュール12が第2の画像処理モジュール13に対して相対的に持つ遅延量を付加した第2の同期信号を生成し、第2の画像処理モジュール13と第2の接続モジュール17に供給する。この第2の同期信号を基に第2の画像処理モジュール13は、入力が画像入力部11のときと同様に動作することができる。
【0021】
同様に、第2の接続モジュール17は第1の接続モジュール16の第2の同期信号を第1の同期信号として受け取り、第2の画像処理モジュール13が第3の画像処理モジュール14に対して相対的に持つ遅延量を付加した第2の同期信号を生成して第3の画像処理モジュール14に供給する。従って、第3の画像処理モジュール14も、第2の接続モジュール17から受け取った第2の同期信号により、入力が画像入力部11のときと同様に動作することができる。
【実施例2】
【0022】
図1bは、本発明による第2の実施の形態である画像処理パイプライン回路のブロック図である。図1bは、例えばノイズ除去等の前処理後に膨張・収縮もしくはラベリング処理を行う場合で、第1の画像処理モジュール12および第2の画像処理モジュール13の出力画像のデータ幅が、第2の画像処理モジュール13および第3の画像処理モジュール14の入力画像のデータ幅とそれぞれ異なっている。
【0023】
図1bに示すように、本画像処理パイプライン回路200では、第1の画像処理モジュール12および第2の画像処理モジュール13の出力画像のデータ幅が第2の画像処理モジュール13および第3の画像処理モジュール14の入力画像のデータ幅とそれぞれ異なっているため、この整合を取る回路を第1の接続モジュール16および第2の接続モジュール17に組み込んでいる。従って、第1の画像処理モジュール12の出力画像データが第1の接続モジュール16を経由して第2の画像処理モジュール13へ、第2の画像処理モジュール13の出力画像データが第2の接続モジュール17を経由して第3の画像処理モジュール14へと送られている。これにより、ノイズ除去等の前処理後に行う膨張・収縮もしくはラベリング処理は遅延によるデータの不整合を生じることなく動作することができる。
【実施例3】
【0024】
図1cは、本発明による第3の実施の形態である画像処理パイプライン回路のブロック図である。図1cは、例えば複数画像の差分・加算・比較処理を行う画像間演算のように複数入力を持つ処理を行う場合で、図1bの場合と同様に、出力画像のデータ幅と入力画像のデータ幅とがそれぞれ異なっており、且つ、一部で画像データの並列処理が行われている。
【0025】
図1cに示すように、本画像処理パイプライン回路300では、第1の画像処理モジュール12の出力画像データが第1の接続モジュール16を経由して第2の画像処理モジュール13と第4の画像処理モジュール18へ送られ、各々の出力画像データがそれぞれ第2の接続モジュール17と第4の接続モジュール19を経由して第3の画像処理モジュール14へと送られている。このとき、第3の画像処理モジュール14へ供給される同期信号は第2の接続モジュール17と第4の接続モジュール19から供給されるもののうち遅延量の多い方を採用する。遅延量の少ない方の画像データは遅延量の多い方に合わせるために接続モジュール内部で遅延量の差分ほど遅延させる。これにより、画像間演算のように複数入力を持つ処理は並列演算においてもデータの不整合を生じることなく動作することができる。
【0026】
このように、接続モジュールは当該画像処理モジュール間の相対的な情報のみを利用しているため、新たに画像処理機能を追加する場合は、画像処理モジュールと接続モジュールを1つずつ追加するだけで良い。また、接続モジュールに垂直同期信号と水平同期信号が両方含まれている場合は、図2に示すようにフレーム25に対する入力画像21の相対位置関係が、フレーム26と画像処理モジュールの出力画像22、フレーム27と画像処理モジュールの出力画像23、フレーム28と画像処理モジュールの出力画像24のように維持されるため、画像処理モジュールを追加する際に上限がない。
【0027】
図3に本発明の第2の実施の詳細なブロック図を示す。本画像処理パイプライン回路200では、入力画像の画素データが画像入力部31のAD/BINから第1の画像処理モジュール32のAD/BINに送られ、第1の画像処理モジュール32で処理された画像データが処理されたものから順にOUTから出力されて第1の接続モジュール36のiAD/iBINに送られ、第1の接続モジュール36で第1の画像処理モジュール32の出力画素と第2の画像処理モジュール33の入力画素のデータ幅の整合を取ってoAD/oBINから出力され、第2の画像処理モジュール33のAD/BINへ送られる。以下同様に、第2の画像処理モジュール33のOUTから第2の接続モジュール37を経由して第3の画像処理モジュール34のAD/BINへと順次送られて、最後は第3の画像処理モジュール34の出力画像データとその有効範囲を表す信号がそれぞれOUTとOUT_ENから出力されて画像出力部35のDATAとDATA_ENへと送られる。
【0028】
第2の画像処理モジュール33及び第3の画像処理モジュール34が入力画像データを処理するために必要とする、フレーム有効範囲を表す信号PRD、水平有効範囲を表す信号XENB、垂直有効範囲を表す信号YENBは、第1の接続モジュール36及び第2の接続モジュール37が生成する。第1の接続モジュール36は、画像入力部31から垂直同期信号VSYNC、水平同期信号HSYNC、フレーム有効信号PRDを受け取り、第1の画像処理モジュール32が第2の画像処理モジュール33に対して相対的に持つ遅延量を付加して、第2の画像処理モジュール33へフレーム有効信号PRD、水平有効範囲信号XENB、垂直有効範囲信号YENBを出力する。第2の接続モジュール37は、第1の接続モジュール36から垂直同期信号oVSYNC、水平同期信号oHSYNC、フレーム有効信号oPRDを受け取り、第2の画像処理モジュール33が第3の画像処理モジュール34に対して相対的に持つ遅延量を付加して、第3の画像処理モジュール34へフレーム有効信号oPRD、水平有効範囲信号oXENB、垂直有効範囲信号oYENBを出力する。相対的遅延量は、水平方向をiLINE、垂直方向をiDOTとして、各画像処理モジュールが持つ遅延量を入力する。
【0029】
接続モジュールは上記説明に加えて、クロックイネーブル、X座標値、Y座標値の生成や、タイミングの異なる複数の水平有効範囲信号といった具合に同類の信号を複数生成することも可能である。
【0030】
画像入力部31は、画像撮像センサ、ビデオ信号IC、フレームメモリ、PCIバス、ISAバス、IEEE1394、USB、又はRS232Cであっても良い。画像出力部35は、モニタ、ビデオ信号IC、フレームメモリ、PCIバス、ISAバス、IEEE1394、USB、又はRS232Cであっても良い。
【0031】
図4は、本発明による有効範囲信号生成回路のブロック図である。図4において有効範囲信号生成回路400の有効範囲信号は、同期信号を有効範囲開始点設定信号及び有効範囲長設定信号で制御することにより作成される。従って同期信号が水平同期信号である場合を説明する。電源投入時においてレジスタ43、44はリセットがかけられ、出力端子Qは共にローレベルに設定される。セレクタ41には、任意のビット数からなる有効範囲開始点設定信号及び有効範囲長設定信号が入力され、同期信号がローの時、有効範囲開始点設定信号が選択されて、ダウンカウンタ42のD端子に入力される。有効範囲開始点設定信号は、ダウンカウンタ42のロード端子LDがハイレベルで取り込まれ、カウントダウンされる。ダウンカウンタ42の出力端子Qは任意のビット数分の端子を有し、リップルキャリー出力端子RCは出力端子Qの全端子の論理和を取って反転したものが出力される。
【0032】
ダウンカウンタ42で設定信号がカウントダウンされ、出力端子Qの任意のビット数分の端子がすべてローレベルになると、リップルキャリー出力端子RCからハイレベルが出力される。このハイレベル信号は、イネーブル信号としてレジスタ44のイネーブル端子ENへ入力されると共に、同期信号の反転信号との論理和が取られて、レジスタ43のイネーブル端子ENへ入力される。レジスタ43の出力端子Qは初期状態でローレベルにあるが、同期信号の反転信号がデータ端子Dとイネーブル端子ENに加わることによりハイレベルとなり、レジスタ44のデータ端子Dをハイレベルに設定している。従って前述したイネーブル信号により出力端子Qはハイレベルへ遷移し、有効範囲の開始点となる。
【0033】
レジスタ43にイネーブル信号が入力された時点では、既にデータ端子Dに加わっている同期信号の反転信号はハイからローレベルへ遷移しているため、このレベルが取り込まれ出力端子Qはローレベルへ遷移する。次に同期信号がハイレベルになると、セレクタ41は有効範囲長設定信号を選択し、同様のプロセスでイネーブル信号が生成される。このイネーブル信号によりレジスタ44のデータ端子Dのローレベルが取り込まれ、出力端子Qはローレベルへ遷移して有効範囲の終点となる。以上のプロセスがクロック信号CLKによるタイミングで繰り返し進行し、1ライン分の有効範囲が次々と生成されていく。
【0034】
以上、同期信号が水平同期信号である場合を説明したが、同期信号を垂直同期信号に、クロック信号CLKを水平同期信号に変えることで、垂直方向の有効範囲信号生成回路となる。有効範囲の設定には、水平及び垂直方向の有効範囲開始点設定信号及び有効範囲長設定信号として、開始点までのドット数又はライン数及び有効範囲長としてのドット数又はライン数がそれぞれ与えられる。本回路は、従来の比較器を用いた構成に比べて回路構成が簡単であるため、設計工数が少なくて済む。また、レジスタ43の出力端子Qを、初期設定のローレベルから同期信号の反転信号でハイレベルとし、再びイネーブル信号が入力された時点でローレベルへ遷移させることにより、有効範囲開始点と有効範囲長の設定値が共に小さい値であっても、正常な動作が可能となる。
【0035】
図5aは、本発明による水平同期信号が常に一定周期である場合の総遅延量付加回路のブロック図とそのタイミングチャートである。水平同期信号が常に一定周期であるため、単一回路内で必要とする遅延量を水平同期に付加することができる。このため総遅延量付加回路500は、水平同期信号遅延回路51と垂直同期信号生成回路52とから構成される。水平同期信号遅延回路51はレジスタまたはメモリ等のデータ保持機能を持ち、水平方向の所定の画素数分の遅れ量が水平方向遅延量として入力され、保持されると共に、水平同期信号に付加されて出力される。垂直同期信号生成回路52は、入力された垂直方向遅延量を垂直同期信号に付加するが、垂直方向遅延量は水平同期信号のラインの数とし、水平同期信号遅延回路51から受け取った水平同期信号を基準として生成される。これにより総遅延量付加回路500は、画像処理モジュールの処理内容に応じた遅延量と等しい遅延量を、各同期信号に付加することができる。
【0036】
図5aのタイミングチャートに見られるように、水平同期信号が常に一定周期であるため、第1の水平同期信号に対して一定の水平方向遅延量が付加されて、第2の水平同期信号が生成される。また、第1の垂直同期信号に対して、水平同期信号の1ライン分の遅れ量に一定の水平同期遅延量が付加されて第2の垂直同期信号が生成される。
【0037】
図5bは、本発明による水平同期信号が一定周期でない場合の総遅延量付加回路のブロック図とそのタイミングチャートである。一定周期でない水平同期信号に対応するため総遅延量の経過に続いて、一定周期でない水平同期信号の再現と垂直同期信号の出力を行う必要がある。このため総遅延量付加回路510は、カウンタ53とメモリ54と遅延量生成回路55と水平同期信号生成回路56と垂直同期信号生成回路57とから構成される。図5bにおいて、カウンタ53は第1の水平同期信号の画素クロックをカウントし、メモリ54は、カウンタ53がカウントした計数値を記憶する。遅延量生成回路55は、画像処理モジュールの水平方向の遅延量を示すドット数と垂直方向における遅延量を示すライン数が入力されると、その値を基に総遅延量を生成する。水平同期信号生成回路56は、遅延量生成回路55で生成された総遅延量を入力し、総遅延量の時間が経過すると、メモリ54から読み出された計数値を基に入力された水平同期信号と同じ波形を生成し、第2の水平同期信号として出力する。垂直同期信号生成回路57は、同様に入力した総遅延量の時間が経過すると、入力された第1の垂直同期信号を第2の垂直同期信号として、出力を開始する。これにより総遅延量付加回路510は、画像処理モジュールの処理内容に応じた遅延量と等しい遅延量を、各同期信号に付加することができる。
【0038】
図5bの上半分のタイミングチャートに見られるように、一定周期でない水平同期信号を再現するため、第1の水平同期信号の各ハイレベルとローレベルの間隔は、カウンタにより一定のクロックでサンプリングカウントされる。このカウントされた各レベルのカウント値はメモリに書き込まれ保存される。総遅延量の時間が経過すると、記憶されたカウント値がメモリから読み出され、第2の水平同期信号として再現される。第1の垂直同期信号は、総遅延量の時間が経過すると第2の垂直同期信号として出力される。下半分においては、このプロセスのタイミングの拡大チャートが示されており、第1の水平同期信号のハイレベルのサンプルカウント数30、ローレベルのサンプルカウント数400等の数値が記憶され、総遅延量の時間の経過後、再度読み出されて第2の水平同期信号として再現されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】a〜cは、本発明による画像処理パイプライン回路のブロック図である。
【図2】本発明の画像処理パイプライン回路のフレームと有効画像領域の対応を表す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である画像処理パイプライン回路の詳細ブロック図である。
【図4】本発明による有効範囲信号生成回路のブロック図である。
【図5a】本発明による総遅延量付加回路のブロック図である。
【図5b】本発明による総遅延量付加回路のブロック図である。
【図6】従来の画像処理パイプライン回路のブロック図である。
【図7】従来の画像処理パイプライン回路のフレームと有効画像領域の対応を表す図である。
【図8】従来の画像処理パイプライン回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
11、31 画像入力部
12、32 第1の画像処理モジュール
13、33 第2の画像処理モジュール
14、34 第3の画像処理モジュール
15、35 画像出力部
16、36 第1の接続モジュール
17、37 第2の接続モジュール
18 第4の画像処理モジュール
19 第4の接続モジュール
21 入力画像の有効範囲
22〜24 出力画像の有効範囲
25〜28 フレームの有効範囲
41 セレクタ
42 ダウンカウンタ
43、44 レジスタ
51 水平同期信号遅延回路
52、57 垂直同期信号生成回路
53 カウンタ
54 メモリ
55 遅延量生成回路
56 水平同期信号生成回路
100、200、300 画像処理パイプライン回路
400 有効範囲信号生成回路
500、510 総遅延量付加回路
D データ端子
LD ロード端子
CLK クロック端子
RC リップルキャリー出力端子
Q 出力端子
EN イネーブル端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの画像入力部と、複数の画像処理モジュールと、一方の出力が他方の入力となる2つの前記画像処理モジュールを連結する少なくとも1つの接続モジュールと、少なくとも1つの画像出力部とからなる画像処理パイプライン回路であって、
前記接続モジュールが垂直同期信号と水平同期信号のいずれか1つもしくは両方を第1の同期信号として受け取り、前記第1の同期信号に前記接続モジュールが連結する2つの前記画像処理モジュール間の相対的な遅延量を付加した第2の同期信号を生成する手段を有することを特徴とする画像処理パイプライン回路。
【請求項2】
前記画像入力部の出力が、第1の前記画像処理モジュール及び第1の前記接続モジュールに入力され、
前記第1の画像処理モジュール及び前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記画像処理モジュールに入力され、且つ前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記接続モジュールに入力され、
前記第2の画像処理モジュール及び前記第2の接続モジュールの出力が、第3の前記画像処理モジュールに入力され、
前記第3の画像処理モジュールの出力が、前記画像出力部に入力されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項3】
前記画像入力部の出力が、第1の前記画像処理モジュール及び第1の前記接続モジュールに入力され、
前記第1の画像処理モジュールの出力が、前記第1の接続モジュールに入力され、
前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記画像処理モジュール及び第2の前記接続モジュールに入力され、
前記第2の画像処理モジュールの出力が、前記第2の接続モジュールに入力され、
前記第2の接続モジュールの出力が、第3の前記画像処理モジュールに入力され、
前記第3の画像処理モジュールの出力が、前記画像出力部に入力されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項4】
前記画像入力部の出力が、第1の前記画像処理モジュール及び第1の前記接続モジュールに入力され、
前記第1の画像処理モジュールの出力が、前記第1の接続モジュールに入力され、
前記第1の接続モジュールの出力が、第2の前記画像処理モジュール、第2の前記接続モジュール、第4の前記画像処理モジュール及び第4の前記接続モジュールに入力され、
前記第2の画像処理モジュールの出力が、前記第2の接続モジュールに入力され、且つ前記第4の画像処理モジュールの出力が、前記第4の接続モジュールに入力され、
前記第2の接続モジュール及び前記第4の接続モジュールの出力が、第3の前記画像処理モジュールに入力され、
前記第3の画像処理モジュールの出力が、前記画像出力部に入力されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項5】
前記接続モジュールは、自ら生成した前記第2の同期信号を基準とする1つもしくは複数の水平および垂直方向の有効範囲信号を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項6】
複数の前記画像処理モジュールとそれらを接続する前記接続モジュールで構成される画像処理パイプライン回路において、各画素の処理結果を得るまでの遅延時間が、前記画像処理モジュールが持つ遅延量の総和に等しいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項7】
前記接続モジュールは前記有効範囲信号を生成する有効範囲信号生成回路を含み、
前記有効範囲信号生成回路は、
任意のビット数からなる有効範囲開始点設定信号と有効範囲長設定信号とが入力されると、該設定信号のいずれかを選択して出力するセレクタと、
前記セレクタから出力される前記各設定信号が示す設定数をカウントダウンするダウンカウンタと、
前記ダウンカウンタから出力される前記各設定数のゼロ信号が入力され、前記有効範囲信号を生成して出力するレジスタとを含むことを特徴とする請求項5に記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項8】
前記接続モジュールは、前記画像処理モジュールが持つ前記遅延量の総和を付加する総遅延量付加回路をさらに含み、
前記総遅延量付加回路は、水平同期信号が常に一定周期である場合において、
前記画像処理モジュールが持つ水平方向における総遅延量を水平同期信号に付加する水平同期信号遅延回路と、
前記水平同期信号遅延回路から受け取った水平同期信号を基準として、垂直方向における総遅延量を垂直同期信号に付加する垂直同期信号生成回路とを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理パイプライン回路。
【請求項9】
前記接続モジュールは、前記画像処理モジュールが持つ前記遅延量の総和を付加する総遅延量付加回路をさらに含み、
前記総遅延量付加回路は、水平同期信号が一定周期でない場合において、
前記画像処理モジュールの前記水平同期信号の画素クロックをカウントするカウンタと、
前記カウンタの計数値を記憶するメモリと、
前記画像処理モジュールが持つ水平方向及び垂直方向における遅延量から総遅延量を生成する遅延量生成回路と、
前記遅延量生成回路で生成された総遅延量が経過した後、前記メモリから読み出された前記計数値を基に水平同期信号を再成する水平同期信号生成回路と、
前記遅延量生成回路で生成された総遅延量が経過した後、入力された垂直同期信号を出力する垂直同期信号生成回路とを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理パイプライン回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−318315(P2006−318315A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141900(P2005−141900)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【Fターム(参考)】