画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラム
【課題】 所定の方向に延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができる画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】 画像処理装置1は、互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体に対応する領域の領域相対長さを閾値毎に算出し、相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する。
【解決手段】 画像処理装置1は、互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体に対応する領域の領域相対長さを閾値毎に算出し、相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の方向に延在する線状体(磁気記録メディア用の針状粒子、液晶分子、ディジタル記録メディア用の記録マーク、層状構造物等)が撮像された画像を対象として線状体に関する情報(所定の方向に沿った線状体の長さ、所定の方向と直交する方向に沿った線状体の長さ等)を取得する画像処理方法においては、線状体に該当する画素を特定するための閾値を設定する場合、モード法が用いられるのが従来一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】“2値化”、[online]、[平成20年2月25日検索]、インターネット<URL:http://mikilab.doshisha.ac.jp/dia/research/person/shuto/research/0605/two-level.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、モード法による閾値の設定にあっては、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像の明度ヒストグラムが双峰性に乏しいものとなることが多いため、画像から線状体の像を適正なサンプルとして抽出することが困難であった。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができる画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像処理方法は、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理方法であって、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定し、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定する特定工程と、特定工程において特定された画素によって形成された領域の領域相対長さを閾値毎に算出する算出工程と、線状体高明度画像の場合には、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出し、線状体低明度画像の場合には、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する抽出工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
この画像処理方法では、互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体に対応する領域の領域相対長さを閾値毎に算出し、相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する。閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群においては、明度ヒストグラムが双峰性に乏しいものとなるような場合でも、上に凸の曲状部が比較的顕著に現れる。従って、線状体に該当する画素を特定するために、領域相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値とすることで、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することが可能となる。なお、領域相対長さとは、「所定の方向に延在する画素列のうち領域を形成する画素が存在する画素列を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するものである。
【0007】
本発明に係る画像処理方法においては、抽出工程では、領域相対長さプロット群において曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線のうち一方の近似直線から所定の距離以上離れ且つ一方の近似直線に最も近いプロットの明度を最適閾値としてもよい。或いは、抽出工程では、領域相対長さプロット群において曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線の交点に対応する明度を最適閾値としてもよい。これらの場合、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を簡便に且つ正確に算出することができる。
【0008】
本発明に係る画像処理方法においては、所定の明度範囲は、線状体高明度画像の場合には、所定の方向に沿った画素列毎に画素列の平均明度値をプロットして得られる平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値から画像の最高明度値までの明度範囲であり、線状体低明度画像の場合には、中央値から画像の最低明度値までの明度範囲であることが好ましい。この場合、サンプルとしての線状体の抽出の高精度化を維持しつつ、処理の負荷を軽減して処理速度を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る画像処理方法は、抽出工程において線状体のサンプルとして抽出された領域を対象として、所定の方向に沿った領域の長さ、所定の方向と直交する方向に沿った領域の長さ、及び所定の方向と直交する方向において隣り合う領域間の距離の少なくとも1つを取得する取得工程を含むことが好ましい。これにより、線状体に関する情報を精度良く取得することができる。
【0010】
また、本発明に係る画像処理装置は、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置であって、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定し、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定する特定手段と、特定手段によって特定された画素によって形成された領域の領域相対長さを閾値毎に算出する算出手段と、線状体高明度画像の場合には、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出し、線状体低明度画像の場合には、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明に係る画像処理プログラムは、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置のコンピュータに対し、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定し、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定する特定処理と、特定処理によって特定された画素によって形成された領域の領域相対長さを閾値毎に算出する算出処理と、線状体高明度画像の場合には、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出し、線状体低明度画像の場合には、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する抽出処理と、を実行させることを特徴とする。
【0012】
これらの画像処理装置及び画像処理プログラムによれば、上述した画像処理方法と同様に、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明に係る画像処理装置の一実施形態の構成図である。図1に示されるように、画像処理装置1は、各種の演算を実行するコンピュータ等の演算部2と、演算部2による演算結果等を表示するディスプレイ等の表示部3と、を備えている。この画像処理装置1は、水平方向に延在する線状体が多数撮像された画像(ここでは、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像)を処理して、線状体に関する情報を取得する装置である。なお、線状体の平均明度値とは、画像において線状体に対応する領域に含まれる全画素の明度の平均値であり、画像の平均明度値とは、画像を構成する全画素の明度の平均値である。また、画素の明度は、例えば256階調で示される。
【0016】
演算部2は、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定する画素特定部(特定手段)5と、画素特定部5によって特定された画素が形成する領域の領域相対長さを閾値毎に算出する領域相対長さ算出部(算出手段)6と、を有している。更に、演算部2は、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部(2点のプロット間のプロットがその2点のプロット間を結ぶ線分の上側となる部分)に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出するサンプル抽出部7と、サンプル抽出部7によって線状体のサンプルとして抽出された領域を対象として、線状体に関する情報を取得する情報取得部8と、演算部2に対して各種の処理を実行させる画像処理プログラムを格納する記録媒体9と、を有している。
【0017】
図2は、図1の演算部の記録媒体に格納された画像処理プログラムの構成図である。図2に示されるように、画像処理プログラム10は、画素特定部5の機能を実現する画素特定モジュール12と、領域相対長さ算出部6の機能を実現する領域相対長さ算出モジュール13と、を含んでいる。更に、画像処理プログラム10は、サンプル抽出部7の機能を実現するサンプル抽出モジュール14と、情報取得部8の機能を実現する情報取得モジュール15と、プログラム全体の動作を制御するメインモジュール16と、を含んでいる。この画像処理プログラム10は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD、USBメモリ等の記録媒体9に格納された態様で流通可能である。
【0018】
次に、本発明に係る画像処理方法の一実施形態として、上述した画像処理装置1による画像の処理手順について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明は、積層型電子部品の切断面、すなわち線状体として導体が絶縁体を挟んで多数撮像された線状体高明度画像を処理する場合であって、より具体的には、図4(a)に示される実施例1の元画像、及び図4(b)に示される実施例2の元画像を処理する場合である。
【0019】
まず、画素特定部5が、水平方向に延在する画素列毎に平均明度値L(y)を算出する(ステップS31)。図5は、水平方向に延在する画素列毎に平均明度値L(y)をプロットして得られる平均明度値プロット群を示すグラフである。そして、画素特定部5が、図5の平均明度値プロット群が元画像の平均明度値を横切った回数に基づいて、導体の層数を算出する(ステップS32)。続いて、画素特定部5が、図5の平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値Lcen(=(極小値の平均値+極大値の平均値)/2)を算出すると共に(ステップS33)、元画像の最高明度値Lmaxを算出する(ステップS34)。実施例1の場合は、中央値Lcenが153、最高明度値Lmaxが252であり(図12(a)参照)、実施例2の場合は、中央値Lcenが184、最高明度値Lmaxが255であった(図13(a)参照)。なお、平均明度値L(y)とは、水平方向に延在する各画素列を構成する全画素の明度の平均値であり、画像の最高明度値Lmaxとは、画像を構成する全画素の明度の最高値である。
【0020】
更に、画素特定部5が、中央値Lcenから最高明度値Lmaxまでを所定の明度範囲として、その明度範囲内の各明度を閾値として設定し(ステップS35)、閾値以上の明度を有する画素が黒となり且つ閾値未満の明度を有する画素が白となるように元画像を2値化することで、閾値以上の明度を有する画素を特定する(ステップS36)。続いて、領域相対長さ算出部6が、画素特定部5によって特定された画素が形成する複数の領域の領域相対長さを算出する(ステップS37)。これらのステップS35〜S37の閾値の設定、画素の特定、及び領域相対長さの算出は、中央値Lcenから最高明度値Lmaxまでの所定の明度範囲内に含まれる全ての明度のそれぞれを閾値として閾値毎に実施される。なお、領域相対長さは、「水平方向に延在する画素列のうち領域を形成する画素が存在する画素列を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するものであって、ここでは次の式により算出される。
【数1】
【0021】
続いて、サンプル抽出部7が、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する(ステップS38)。図6は、実施例1について閾値毎に領域相対長さを示す表であり、図7は、実施例2について閾値毎に領域相対長さを示す表である。また、図8(a)は、実施例1について閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群を示すグラフであり、図8(b)は、実施例2について閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群を示すグラフである。
【0022】
ここで、サンプル抽出部7による最適閾値の設定について、実施例1の場合と実施例2の場合とに分けてより詳細に説明する。以下の最適閾値の設定方法によれば、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を簡便に且つ正確に算出することができる。
【0023】
実施例1の場合、図8(a)の領域相対長さプロット群において曲状部CPの前後に連続する直状部SP1,SP2によって形成される2本の近似直線L1,L2(例えば最小2乗法によるもの)は、横軸をX軸とし縦軸をY軸とすると、L1:Y=−0.080X+98.318,L2:Y=−2.383X+586.477となる。サンプル抽出部7は、2本の近似直線L1,L2の交点LP(X=212,Y=81.3)に対応する明度として、Y=81.3を与える閾値201を最適閾値として設定する。
【0024】
また、実施例2の場合、図8(b)の領域相対長さプロット群において曲状部CPの前後に連続する直状部SP1,SP2によって形成される2本の近似直線L1,L2(例えば最小2乗法によるもの)は、横軸をX軸とし縦軸をY軸とすると、L1:Y=−0.124X+111.012,L2:Y=−2.509X+646.785となる。サンプル抽出部7は、2本の近似直線L1,L2の交点LP(X=225,Y=83.2)に対応する明度として、Y=83.2を与える閾値212を最適閾値として設定する。
【0025】
なお、サンプル抽出部7は、2本の近似直線L1,L2のうち一方の近似直線から所定の距離以上離れ且つ一方の近似直線に最も近いプロットの明度を最適閾値としてもよい。実施例1の場合、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を0.2とすると、閾値190が最適閾値となり、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を1.0とすると、閾値202が最適閾値となる。また、実施例2の場合、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を0.2とすると、閾値202が最適閾値となり、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を1.0とすると、閾値211が最適閾値となる。
【0026】
最後に、ステップS38に続いて、情報取得部8が、サンプル抽出部7によって線状体のサンプルとして抽出された領域を対象として、線状体に関する情報を取得する(ステップS39)。ここでは、図9に示されるサンプル抽出画像の破線上の画素列(垂直方向の画素列)において、線状体に関する情報が取得される。なお、線状体に関する情報としては、水平方向に沿った各領域の長さ(すなわち導体の長さ)、水平方向と直交する方向に沿った各領域の長さ(すなわち導体の厚さ)、及び水平方向と直交する方向において隣り合う領域間の距離(すなわち絶縁体の厚さ)がある。
【0027】
図10は、実施例1の元画像を対象として閾値を最適閾値201とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムであり、このとき平均厚さは、絶縁体が5.27μm、導体が0.98μmであった。一方、図11(a)は、実施例1の元画像を対象として閾値を元画像の平均明度値122とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムであり、このとき平均厚さは、絶縁体が4.53μm、導体が1.61μmであった。また、図11(b)は、実施例1の元画像を対象として閾値を中央値Lcen153とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムであり、このとき平均厚さは、絶縁体が4.82μm、導体が1.36μmであった。これらの結果から、元画像の平均明度値や中央値Lcenを閾値として設定すると、絶縁体は過小評価され、導体は過大評価されることが分かる。
【0028】
以上説明したように、画像処理装置1は、互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体に対応する領域の領域相対長さを閾値毎に算出し、相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する。図12(a)及び図13(a)に示されように、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像の明度ヒストグラムは双峰性に乏しいものとなることが多く、画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出し得る明度に対応する高明度側の山の立上がり部RPは極めて判別し難い。しかしながら、図12(b)及び図13(b)に示されように、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群においては、立上がり部RPに対応する上に凸の曲状部CPが比較的顕著に現れる。従って、線状体に該当する画素を特定するために、領域相対長さプロット群における上に凸の曲状部CPから所定の明度を最適閾値(図12,13における一点鎖線)とすることで、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができ、延いては種々の線状体に関する情報を精度良く取得することが可能となる。ちなみに、図12(c)及び図13(c)に示されように、閾値毎に領域相対面積(「画像を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するもの)をプロットして得られる領域相対面積プロット群においては、立上がり部RPに対応する上に凸の曲状部が顕著に現れない。なお、図12は、実施例1についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフであり、図13は、実施例2についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフである。
【0029】
また、画像処理装置1は、平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値Lcenから元画像の最高明度値Lmaxまでを所定の明度範囲として、その明度範囲内の各明度を閾値として設定する。これにより、サンプルとしての線状体の抽出の高精度化を維持しつつ、処理の負荷を軽減して処理速度を向上させることができる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、画像処理装置1は、水平方向に延在する線状体が撮像された画像を処理するものであったが、水平方向に限定されず、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理することが可能である。その場合、「所定の方向に延在する画素列のうち領域を形成する画素が存在する画素列を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するものを領域相対長さとすればよい。
【0032】
また、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像を画像処理装置1が処理する場合には、平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値Lcenから元画像の最低明度値Lminまでの所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定すればよい。なお、画像の最低明度値Lminとは、画像を構成する全画素の明度の最低値である。
【0033】
また、画像処理装置1は、所定の明度範囲内の各明度を閾値として設定したが、これに限定されない。一例として、複数階調置きの明度を閾値として設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る画像処理装置の一実施形態の構成図である。
【図2】図1の演算部の記録媒体に格納された画像処理プログラムの構成図である。
【図3】図1の画像処理装置による画像の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の画像処理装置の処理対象となる元画像の一例を示す図である。
【図5】水平方向に延在する画素列毎に平均明度値L(y)をプロットして得られる平均明度値プロット群を示すグラフである。
【図6】実施例1について閾値毎に領域相対長さを示す表である。
【図7】実施例2について閾値毎に領域相対長さを示す表である。
【図8】閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群を示すグラフである。
【図9】図1の画像処理装置によるサンプル抽出画像を示す図である。
【図10】実施例1の元画像を対象として閾値を最適閾値とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムである。
【図11】実施例1の元画像を対象として閾値を元画像の平均明度値又は中央値Lcenとした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムである。
【図12】実施例1についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフである。
【図13】実施例2についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1…画像処理装置、5…画素特定部(特定手段)、6…領域相対長さ算出部(算出手段)、7…サンプル抽出部(抽出手段)、10…画像処理プログラム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の方向に延在する線状体(磁気記録メディア用の針状粒子、液晶分子、ディジタル記録メディア用の記録マーク、層状構造物等)が撮像された画像を対象として線状体に関する情報(所定の方向に沿った線状体の長さ、所定の方向と直交する方向に沿った線状体の長さ等)を取得する画像処理方法においては、線状体に該当する画素を特定するための閾値を設定する場合、モード法が用いられるのが従来一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】“2値化”、[online]、[平成20年2月25日検索]、インターネット<URL:http://mikilab.doshisha.ac.jp/dia/research/person/shuto/research/0605/two-level.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、モード法による閾値の設定にあっては、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像の明度ヒストグラムが双峰性に乏しいものとなることが多いため、画像から線状体の像を適正なサンプルとして抽出することが困難であった。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができる画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像処理方法は、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理方法であって、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定し、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定する特定工程と、特定工程において特定された画素によって形成された領域の領域相対長さを閾値毎に算出する算出工程と、線状体高明度画像の場合には、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出し、線状体低明度画像の場合には、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する抽出工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
この画像処理方法では、互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体に対応する領域の領域相対長さを閾値毎に算出し、相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する。閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群においては、明度ヒストグラムが双峰性に乏しいものとなるような場合でも、上に凸の曲状部が比較的顕著に現れる。従って、線状体に該当する画素を特定するために、領域相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値とすることで、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することが可能となる。なお、領域相対長さとは、「所定の方向に延在する画素列のうち領域を形成する画素が存在する画素列を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するものである。
【0007】
本発明に係る画像処理方法においては、抽出工程では、領域相対長さプロット群において曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線のうち一方の近似直線から所定の距離以上離れ且つ一方の近似直線に最も近いプロットの明度を最適閾値としてもよい。或いは、抽出工程では、領域相対長さプロット群において曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線の交点に対応する明度を最適閾値としてもよい。これらの場合、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を簡便に且つ正確に算出することができる。
【0008】
本発明に係る画像処理方法においては、所定の明度範囲は、線状体高明度画像の場合には、所定の方向に沿った画素列毎に画素列の平均明度値をプロットして得られる平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値から画像の最高明度値までの明度範囲であり、線状体低明度画像の場合には、中央値から画像の最低明度値までの明度範囲であることが好ましい。この場合、サンプルとしての線状体の抽出の高精度化を維持しつつ、処理の負荷を軽減して処理速度を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る画像処理方法は、抽出工程において線状体のサンプルとして抽出された領域を対象として、所定の方向に沿った領域の長さ、所定の方向と直交する方向に沿った領域の長さ、及び所定の方向と直交する方向において隣り合う領域間の距離の少なくとも1つを取得する取得工程を含むことが好ましい。これにより、線状体に関する情報を精度良く取得することができる。
【0010】
また、本発明に係る画像処理装置は、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置であって、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定し、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定する特定手段と、特定手段によって特定された画素によって形成された領域の領域相対長さを閾値毎に算出する算出手段と、線状体高明度画像の場合には、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出し、線状体低明度画像の場合には、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明に係る画像処理プログラムは、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置のコンピュータに対し、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定し、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定する特定処理と、特定処理によって特定された画素によって形成された領域の領域相対長さを閾値毎に算出する算出処理と、線状体高明度画像の場合には、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出し、線状体低明度画像の場合には、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する抽出処理と、を実行させることを特徴とする。
【0012】
これらの画像処理装置及び画像処理プログラムによれば、上述した画像処理方法と同様に、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明に係る画像処理装置の一実施形態の構成図である。図1に示されるように、画像処理装置1は、各種の演算を実行するコンピュータ等の演算部2と、演算部2による演算結果等を表示するディスプレイ等の表示部3と、を備えている。この画像処理装置1は、水平方向に延在する線状体が多数撮像された画像(ここでは、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像)を処理して、線状体に関する情報を取得する装置である。なお、線状体の平均明度値とは、画像において線状体に対応する領域に含まれる全画素の明度の平均値であり、画像の平均明度値とは、画像を構成する全画素の明度の平均値である。また、画素の明度は、例えば256階調で示される。
【0016】
演算部2は、所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、閾値以上の明度を有する画素を閾値毎に特定する画素特定部(特定手段)5と、画素特定部5によって特定された画素が形成する領域の領域相対長さを閾値毎に算出する領域相対長さ算出部(算出手段)6と、を有している。更に、演算部2は、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部(2点のプロット間のプロットがその2点のプロット間を結ぶ線分の上側となる部分)に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出するサンプル抽出部7と、サンプル抽出部7によって線状体のサンプルとして抽出された領域を対象として、線状体に関する情報を取得する情報取得部8と、演算部2に対して各種の処理を実行させる画像処理プログラムを格納する記録媒体9と、を有している。
【0017】
図2は、図1の演算部の記録媒体に格納された画像処理プログラムの構成図である。図2に示されるように、画像処理プログラム10は、画素特定部5の機能を実現する画素特定モジュール12と、領域相対長さ算出部6の機能を実現する領域相対長さ算出モジュール13と、を含んでいる。更に、画像処理プログラム10は、サンプル抽出部7の機能を実現するサンプル抽出モジュール14と、情報取得部8の機能を実現する情報取得モジュール15と、プログラム全体の動作を制御するメインモジュール16と、を含んでいる。この画像処理プログラム10は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD、USBメモリ等の記録媒体9に格納された態様で流通可能である。
【0018】
次に、本発明に係る画像処理方法の一実施形態として、上述した画像処理装置1による画像の処理手順について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明は、積層型電子部品の切断面、すなわち線状体として導体が絶縁体を挟んで多数撮像された線状体高明度画像を処理する場合であって、より具体的には、図4(a)に示される実施例1の元画像、及び図4(b)に示される実施例2の元画像を処理する場合である。
【0019】
まず、画素特定部5が、水平方向に延在する画素列毎に平均明度値L(y)を算出する(ステップS31)。図5は、水平方向に延在する画素列毎に平均明度値L(y)をプロットして得られる平均明度値プロット群を示すグラフである。そして、画素特定部5が、図5の平均明度値プロット群が元画像の平均明度値を横切った回数に基づいて、導体の層数を算出する(ステップS32)。続いて、画素特定部5が、図5の平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値Lcen(=(極小値の平均値+極大値の平均値)/2)を算出すると共に(ステップS33)、元画像の最高明度値Lmaxを算出する(ステップS34)。実施例1の場合は、中央値Lcenが153、最高明度値Lmaxが252であり(図12(a)参照)、実施例2の場合は、中央値Lcenが184、最高明度値Lmaxが255であった(図13(a)参照)。なお、平均明度値L(y)とは、水平方向に延在する各画素列を構成する全画素の明度の平均値であり、画像の最高明度値Lmaxとは、画像を構成する全画素の明度の最高値である。
【0020】
更に、画素特定部5が、中央値Lcenから最高明度値Lmaxまでを所定の明度範囲として、その明度範囲内の各明度を閾値として設定し(ステップS35)、閾値以上の明度を有する画素が黒となり且つ閾値未満の明度を有する画素が白となるように元画像を2値化することで、閾値以上の明度を有する画素を特定する(ステップS36)。続いて、領域相対長さ算出部6が、画素特定部5によって特定された画素が形成する複数の領域の領域相対長さを算出する(ステップS37)。これらのステップS35〜S37の閾値の設定、画素の特定、及び領域相対長さの算出は、中央値Lcenから最高明度値Lmaxまでの所定の明度範囲内に含まれる全ての明度のそれぞれを閾値として閾値毎に実施される。なお、領域相対長さは、「水平方向に延在する画素列のうち領域を形成する画素が存在する画素列を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するものであって、ここでは次の式により算出される。
【数1】
【0021】
続いて、サンプル抽出部7が、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する(ステップS38)。図6は、実施例1について閾値毎に領域相対長さを示す表であり、図7は、実施例2について閾値毎に領域相対長さを示す表である。また、図8(a)は、実施例1について閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群を示すグラフであり、図8(b)は、実施例2について閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群を示すグラフである。
【0022】
ここで、サンプル抽出部7による最適閾値の設定について、実施例1の場合と実施例2の場合とに分けてより詳細に説明する。以下の最適閾値の設定方法によれば、領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ画像の平均明度値よりも高い明度を簡便に且つ正確に算出することができる。
【0023】
実施例1の場合、図8(a)の領域相対長さプロット群において曲状部CPの前後に連続する直状部SP1,SP2によって形成される2本の近似直線L1,L2(例えば最小2乗法によるもの)は、横軸をX軸とし縦軸をY軸とすると、L1:Y=−0.080X+98.318,L2:Y=−2.383X+586.477となる。サンプル抽出部7は、2本の近似直線L1,L2の交点LP(X=212,Y=81.3)に対応する明度として、Y=81.3を与える閾値201を最適閾値として設定する。
【0024】
また、実施例2の場合、図8(b)の領域相対長さプロット群において曲状部CPの前後に連続する直状部SP1,SP2によって形成される2本の近似直線L1,L2(例えば最小2乗法によるもの)は、横軸をX軸とし縦軸をY軸とすると、L1:Y=−0.124X+111.012,L2:Y=−2.509X+646.785となる。サンプル抽出部7は、2本の近似直線L1,L2の交点LP(X=225,Y=83.2)に対応する明度として、Y=83.2を与える閾値212を最適閾値として設定する。
【0025】
なお、サンプル抽出部7は、2本の近似直線L1,L2のうち一方の近似直線から所定の距離以上離れ且つ一方の近似直線に最も近いプロットの明度を最適閾値としてもよい。実施例1の場合、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を0.2とすると、閾値190が最適閾値となり、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を1.0とすると、閾値202が最適閾値となる。また、実施例2の場合、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を0.2とすると、閾値202が最適閾値となり、一方の近似直線を近似直線L1とし所定の距離を1.0とすると、閾値211が最適閾値となる。
【0026】
最後に、ステップS38に続いて、情報取得部8が、サンプル抽出部7によって線状体のサンプルとして抽出された領域を対象として、線状体に関する情報を取得する(ステップS39)。ここでは、図9に示されるサンプル抽出画像の破線上の画素列(垂直方向の画素列)において、線状体に関する情報が取得される。なお、線状体に関する情報としては、水平方向に沿った各領域の長さ(すなわち導体の長さ)、水平方向と直交する方向に沿った各領域の長さ(すなわち導体の厚さ)、及び水平方向と直交する方向において隣り合う領域間の距離(すなわち絶縁体の厚さ)がある。
【0027】
図10は、実施例1の元画像を対象として閾値を最適閾値201とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムであり、このとき平均厚さは、絶縁体が5.27μm、導体が0.98μmであった。一方、図11(a)は、実施例1の元画像を対象として閾値を元画像の平均明度値122とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムであり、このとき平均厚さは、絶縁体が4.53μm、導体が1.61μmであった。また、図11(b)は、実施例1の元画像を対象として閾値を中央値Lcen153とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムであり、このとき平均厚さは、絶縁体が4.82μm、導体が1.36μmであった。これらの結果から、元画像の平均明度値や中央値Lcenを閾値として設定すると、絶縁体は過小評価され、導体は過大評価されることが分かる。
【0028】
以上説明したように、画像処理装置1は、互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、線状体に対応する領域の領域相対長さを閾値毎に算出し、相対長さプロット群における上に凸の曲状部から所定の明度を最適閾値として、そのときに形成された領域を線状体のサンプルとして抽出する。図12(a)及び図13(a)に示されように、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像の明度ヒストグラムは双峰性に乏しいものとなることが多く、画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出し得る明度に対応する高明度側の山の立上がり部RPは極めて判別し難い。しかしながら、図12(b)及び図13(b)に示されように、閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群においては、立上がり部RPに対応する上に凸の曲状部CPが比較的顕著に現れる。従って、線状体に該当する画素を特定するために、領域相対長さプロット群における上に凸の曲状部CPから所定の明度を最適閾値(図12,13における一点鎖線)とすることで、所定の方向に沿って延在する線状体が撮像された画像から線状体の像をサンプルとして精度良く抽出することができ、延いては種々の線状体に関する情報を精度良く取得することが可能となる。ちなみに、図12(c)及び図13(c)に示されように、閾値毎に領域相対面積(「画像を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するもの)をプロットして得られる領域相対面積プロット群においては、立上がり部RPに対応する上に凸の曲状部が顕著に現れない。なお、図12は、実施例1についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフであり、図13は、実施例2についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフである。
【0029】
また、画像処理装置1は、平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値Lcenから元画像の最高明度値Lmaxまでを所定の明度範囲として、その明度範囲内の各明度を閾値として設定する。これにより、サンプルとしての線状体の抽出の高精度化を維持しつつ、処理の負荷を軽減して処理速度を向上させることができる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、画像処理装置1は、水平方向に延在する線状体が撮像された画像を処理するものであったが、水平方向に限定されず、所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理することが可能である。その場合、「所定の方向に延在する画素列のうち領域を形成する画素が存在する画素列を構成する画素の総数」に対する「領域を形成する画素の総数」の割合に相当するものを領域相対長さとすればよい。
【0032】
また、線状体の平均明度値が画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像を画像処理装置1が処理する場合には、平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値Lcenから元画像の最低明度値Lminまでの所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、閾値以下の明度を有する画素を閾値毎に特定すればよい。なお、画像の最低明度値Lminとは、画像を構成する全画素の明度の最低値である。
【0033】
また、画像処理装置1は、所定の明度範囲内の各明度を閾値として設定したが、これに限定されない。一例として、複数階調置きの明度を閾値として設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る画像処理装置の一実施形態の構成図である。
【図2】図1の演算部の記録媒体に格納された画像処理プログラムの構成図である。
【図3】図1の画像処理装置による画像の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の画像処理装置の処理対象となる元画像の一例を示す図である。
【図5】水平方向に延在する画素列毎に平均明度値L(y)をプロットして得られる平均明度値プロット群を示すグラフである。
【図6】実施例1について閾値毎に領域相対長さを示す表である。
【図7】実施例2について閾値毎に領域相対長さを示す表である。
【図8】閾値毎に領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群を示すグラフである。
【図9】図1の画像処理装置によるサンプル抽出画像を示す図である。
【図10】実施例1の元画像を対象として閾値を最適閾値とした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムである。
【図11】実施例1の元画像を対象として閾値を元画像の平均明度値又は中央値Lcenとした場合の絶縁体及び導体の厚さヒストグラムである。
【図12】実施例1についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフである。
【図13】実施例2についての明度ヒストグラム、領域相対長さプロット群及び領域相対面積プロット群を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1…画像処理装置、5…画素特定部(特定手段)、6…領域相対長さ算出部(算出手段)、7…サンプル抽出部(抽出手段)、10…画像処理プログラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理方法であって、
所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、前記閾値以上の明度を有する画素を前記閾値毎に特定し、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、前記閾値以下の明度を有する画素を前記閾値毎に特定する特定工程と、
前記特定工程において特定された前記画素によって形成された領域の領域相対長さを前記閾値毎に算出する算出工程と、
前記線状体高明度画像の場合には、前記閾値毎に前記領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出し、前記線状体低明度画像の場合には、前記領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出する抽出工程と、を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記抽出工程では、前記領域相対長さプロット群において前記曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線のうち一方の前記近似直線から所定の距離以上離れ且つ一方の前記近似直線に最も近いプロットの明度を前記最適閾値とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記抽出工程では、前記領域相対長さプロット群において前記曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線の交点に対応する明度を前記最適閾値とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記所定の明度範囲は、前記線状体高明度画像の場合には、前記所定の方向に沿った画素列毎に前記画素列の平均明度値をプロットして得られる平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値から前記画像の最高明度値までの明度範囲であり、前記線状体低明度画像の場合には、前記中央値から前記画像の最低明度値までの明度範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記抽出工程において前記線状体のサンプルとして抽出された前記領域を対象として、前記所定の方向に沿った前記領域の長さ、前記所定の方向と直交する方向に沿った前記領域の長さ、及び前記所定の方向と直交する方向において隣り合う前記領域間の距離の少なくとも1つを取得する取得工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の画像処理方法。
【請求項6】
所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置であって、
所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、前記閾値以上の明度を有する画素を前記閾値毎に特定し、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、前記閾値以下の明度を有する画素を前記閾値毎に特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記画素によって形成された領域の領域相対長さを前記閾値毎に算出する算出手段と、
前記線状体高明度画像の場合には、前記閾値毎に前記領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出し、前記線状体低明度画像の場合には、前記領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出する抽出手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置のコンピュータに対し、
所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、前記閾値以上の明度を有する画素を前記閾値毎に特定し、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、前記閾値以下の明度を有する画素を前記閾値毎に特定する特定処理と、
前記特定処理によって特定された前記画素によって形成された領域の領域相対長さを前記閾値毎に算出する算出処理と、
前記線状体高明度画像の場合には、前記閾値毎に前記領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出し、前記線状体低明度画像の場合には、前記領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出する抽出処理と、を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理方法であって、
所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、前記閾値以上の明度を有する画素を前記閾値毎に特定し、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、前記閾値以下の明度を有する画素を前記閾値毎に特定する特定工程と、
前記特定工程において特定された前記画素によって形成された領域の領域相対長さを前記閾値毎に算出する算出工程と、
前記線状体高明度画像の場合には、前記閾値毎に前記領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出し、前記線状体低明度画像の場合には、前記領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出する抽出工程と、を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記抽出工程では、前記領域相対長さプロット群において前記曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線のうち一方の前記近似直線から所定の距離以上離れ且つ一方の前記近似直線に最も近いプロットの明度を前記最適閾値とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記抽出工程では、前記領域相対長さプロット群において前記曲状部の前後に連続する直状部によって形成される2本の近似直線の交点に対応する明度を前記最適閾値とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記所定の明度範囲は、前記線状体高明度画像の場合には、前記所定の方向に沿った画素列毎に前記画素列の平均明度値をプロットして得られる平均明度値プロット群における極小値の平均値と極大値の平均値との中央値から前記画像の最高明度値までの明度範囲であり、前記線状体低明度画像の場合には、前記中央値から前記画像の最低明度値までの明度範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記抽出工程において前記線状体のサンプルとして抽出された前記領域を対象として、前記所定の方向に沿った前記領域の長さ、前記所定の方向と直交する方向に沿った前記領域の長さ、及び前記所定の方向と直交する方向において隣り合う前記領域間の距離の少なくとも1つを取得する取得工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の画像処理方法。
【請求項6】
所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置であって、
所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、前記閾値以上の明度を有する画素を前記閾値毎に特定し、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、前記閾値以下の明度を有する画素を前記閾値毎に特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記画素によって形成された領域の領域相対長さを前記閾値毎に算出する算出手段と、
前記線状体高明度画像の場合には、前記閾値毎に前記領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出し、前記線状体低明度画像の場合には、前記領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出する抽出手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
所定の方向に延在する線状体が撮像された画像を処理する画像処理装置のコンピュータに対し、
所定の明度範囲において互いに異なる複数の明度のそれぞれを閾値として、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも高いと判断される線状体高明度画像の場合には、前記閾値以上の明度を有する画素を前記閾値毎に特定し、前記線状体の平均明度値が前記画像の平均明度値よりも低いと判断される線状体低明度画像の場合には、前記閾値以下の明度を有する画素を前記閾値毎に特定する特定処理と、
前記特定処理によって特定された前記画素によって形成された領域の領域相対長さを前記閾値毎に算出する算出処理と、
前記線状体高明度画像の場合には、前記閾値毎に前記領域相対長さをプロットして得られる領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも高い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出し、前記線状体低明度画像の場合には、前記領域相対長さプロット群において上に凸の曲状部に対応する明度であり且つ前記画像の平均明度値よりも低い明度を最適閾値として、そのときに形成された前記領域を前記線状体のサンプルとして抽出する抽出処理と、を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図9】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図9】
【公開番号】特開2009−223665(P2009−223665A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68095(P2008−68095)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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