説明

画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】画像中のオブジェクト同士の重ねあわせを許容するイメージリターゲティングを行うことができる画像処理方法を提供する。
【解決手段】画像を入力する画像入力ステップと、所定数のレイヤを定義し、画像中の各画素が属するレイヤを設定することによりレイヤ構造を設定するレイヤ構造設定ステップと、レイヤ構造に基づき、画像の全画素についてエネルギー量を設定し、複数のコストマップを生成するコストマップ設定ステップと、生成されたコストマップを参照して、画像を分断するパスをコストマップごとに探索するパス探索ステップと、探索されたパスの中から最良のパスを代表パスとして選択するパス選択ステップと、代表パスに沿って画像のサイズを変更してリサイズ画像を出力する画像リサイズステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷及び表示装置の多様性と汎用性の増加に伴い、装置の画面サイズ、解像度及びアスペクト比の違いに合わせて映像や画像などのマルチメディアコンテンツのサイズを適切に変更する必要性が生じてきている。このようなサイズ変更は、典型的には画像を縮小するスケーリングや画像の一部を切り抜くクロッピングによって実現される。これらのサイズ変更手法は、典型的にはコンテンツの内容によらずに一様に適用され、それによってコンテンツの内容を維持するために必要な視覚情報が失われる場合もある。
【0003】
より有効なサイズ変更法として、コンテンツ中の重要な特徴を維持しながら画像や映像のサイズ変更を行うイメージリターゲティングという方法がある。重要な特徴は、画像輪郭の検出や、顔検出などのトップダウン法や、視覚的顕著性の検出などのボトムアップ法などの方法によって検出することができる。こうした方法によりコンテンツ中の重要な特徴が含まれる領域を発見し、トリミング、シームカービング、メッシュ変形イメージリターゲティング等の方法で非線形にサイズ変更を行い、重要な特徴を維持したまま画像や映像のサイズを変更することができる。
【0004】
シームカービングによる画像のサイズ変更では、典型的には、画像の全画素についてその画素が持つエネルギー量を設定し、画像を縦または横に分断するパスを構成する画素の総エネルギー量が最小になるように選択し、選択されたパスを構成する画素を削除/結合/複製/分割することによって画像サイズを横または縦にパスの幅ずつ縮小/拡大していくことができ、このプロセスは画像サイズが所望の値になるまで繰り返される(例えば、非特許文献1参照)。画素のエネルギー量は、前述した画素そのものの特徴量を元に計算するほかに、隣接画素など画像中の他の画素との相関関係、例えば輝度値の差分などを指標として計算される。
【0005】
メッシュ変形イメージリターゲティングによる画像のサイズ変更では、典型的には、画像にメッシュを割り当てメッシュの変形によって画像変形を制御し、変形後の画像が所望のサイズに収まるようにメッシュ形状を最適化することによって画像のサイズ変更を行う(例えば、非特許文献2参照)。最適化に用いる目的関数は、前述した画素毎のエネルギー量や、画像全体としての尤もらしさを指標として設計する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Avidan S, Shamir A. Seam carving for content-aware image resizing. ACM Transactions on Graphics. 2007;26(3)
【非特許文献2】Wang Y-S, Tai C-L, Sorkine O, Lee T-Y. Optimized scale-and-stretch for image resizing. ACM Transactions on Graphics. 2008;27(5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先行技術による画像サイズ変更では、特に重要領域同士が密に存在する構造を持つ画像についてサイズを減少させる場合に、非重要領域を全て削除したとしても所望のサイズを満たさないとき、必然的に重要領域を変形・削除することになる。例えば画像中に2つのオブジェクトが隣り合って存在する場合、これらのオブジェクトが存在する領域は高い重要特徴量をもつ可能性が高く、サイズ変更に伴う変形・削除はオブジェクト領域を回避して行われる可能性が高いが、もし画像の幅をこのオブジェクトの幅よりも小さく変更する場合、変形・削除はオブジェクト領域内に及び、オブジェクトの形状を歪め輪郭を破損してしまう。
【0008】
単純な例を図7に示す。従来技術を用いて図7(a)に示す画像を横方向に縮小する場合、図7(b)に示す画像のようなオブジェクト輪郭の破損した画像が生成されてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、画像中のオブジェクト輪郭の破損を抑止することができる画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、画像を入力する画像入力ステップと、所定数のレイヤを定義し、前記画像中の各画素が属するレイヤを設定することによりレイヤ構造を設定するレイヤ構造設定ステップと、前記レイヤ構造に基づき、前記画像の全画素についてエネルギー量を設定し、複数のコストマップを生成するコストマップ設定ステップと、生成された前記コストマップを参照して、前記画像を分断するパスを前記コストマップごとに探索するパス探索ステップと、探索された前記パスの中から最良のパスを代表パスとして選択するパス選択ステップと、前記代表パスに沿って前記画像のサイズを変更してリサイズ画像を出力する画像リサイズステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記コストマップ設定ステップは、前記画像の全画素または部分領域のもつエネルギー量に基づき、前記画像の全画素または部分領域のもつ縮小または拡張に対するコストを複数のコスト関数に基づき計算して、前記複数のコストマップを生成し、前記パス探索ステップは、前記コストマップに基づき画素または部分領域の集合からなるパスを探索することを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記コストマップ設定ステップは、前記レイヤ構造に基づきコスト算出に用いる画素または部分領域を前記コストマップごとに一部除外したコスト除外領域とし、前記コスト除外領域に相当するコストを新たに設定することを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記パス選択ステップは、前記パスに基づいて画像サイズの変更を実行し画質評価を行い、最良の画質が得られたパスを前記代表パスとすることを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記パス探索部で得られたパスそれぞれについて前記レイヤ構造に基づいた編集を行うパス編集ステップをさらに有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記パス編集ステップは、前記パスそれぞれについて、前記レイヤ構造に基づき画素または部分領域を一部パス除外領域とした除外領域内に含まれる前記パスを構成する画素または部分領域を前記パス除外領域輪郭部の画素または部分領域に再設定することを特徴とする。
【0016】
本発明は、画像を入力する画像入力手段と、所定数のレイヤを定義し、前記画像中の各画素が属するレイヤを設定することによりレイヤ構造を設定するレイヤ構造設定手段と、前記レイヤ構造に基づき、前記画像の全画素についてエネルギー量を設定し、複数のコストマップを生成するコストマップ設定手段と、生成された前記コストマップを参照して、前記画像を分断するパスを前記コストマップごとに探索するパス探索手段と、探索された前記パスの中から最良のパスを代表パスとして選択するパス選択ステップと、前記代表パスに沿って前記画像のサイズを変更してリサイズ画像を出力する画像リサイズ手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記画像処理方法をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力画像中の全画素について奥行き方向に属するレイヤを決定し、レイヤ構造に基づき画像リサイズに用いるコストのセットを複数パターン設定し、それぞれに基づいたパスから最良のものを選択する画像リサイズを画素単位あるいは部分領域単位で繰り返し行うことで、重要領域が画像中に広く分布し削除領域の選択が難しい場合においても良好なリサイズ結果を得ることができるという効果が得られる。
【0019】
また、レイヤ構造に基づきコスト一様な領域を設け、その内部を通るパスを領域輪郭部に再配置することで、前景を損ねず後景をリサイズするためのコスト最少の非連結性パスを容易に得ることができ、画像中の異なるレイヤに存在するオブジェクト同士を、破損・歪みを回避し、相互の重ね合わせを許容しながら配置を変更し、画像をリサイズすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】画像のリサイズ動作を示す説明図である。
【図6】画像のリサイズ結果を示す説明図である。
【図7】従来技術による画像のリサイズ例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による画像処理装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。画像処理装置100は、コンピュータ装置によって構成され、画像入力部101と、レイヤ構造設定部102と、コストマップ設定部103と、パス探索部104と、パス選択部105と、画像リサイズ部106と、画像出力部107とを備える。
【0022】
画像入力部101は、サイズ変更の対象となる元画像を入力する。レイヤ構造設定部102は、任意の数のレイヤを定義し、画像中の各画素に対してその画素が属するレイヤを設定する。コストマップ設定部103は、レイヤ構造に基づき、元画像の全画素についてエネルギー量を設定し、複数のコストマップを生成する。パス探索部104は、生成された各コストマップを参照して、画像を縦または横に分断するパスをコストマップごとに探索する。パス選択部105は、全てのコストマップのパスの中から最良のものを代表パスとして選択する。画像リサイズ部106は、選択された代表パスに沿って画素の削除/結合/複製/分割をすることによって画像サイズを横又は縦に縮小/拡大する。画像出力部107は、リサイズされた画像を出力する。
【0023】
次に、図2を参照して、図1に示す画像処理装置100の処理動作を説明する。図2は図1に示す画像処理装置100が、画像のサイズ変更を行って出力する処理動作を示すフローチャートである。まず、画像入力部101はサイズ変更の対象となる元画像を外部から入力する(ステップS1)。次に、レイヤ構造設定部101は画像を奥行き方向に分割するレイヤ数を決定し、元画像中のすべての画素について属するレイヤを決定する(ステップS2)。この画素とレイヤをそれぞれの固有画素と固有レイヤと定義する。このレイヤ数は固定のものを設定しても構わないし、画像に応じて適切なものを計算し設定しても構わないし、画像と共に付加情報として入力して設定しても構わないし、ユーザの入力操作により設定しても構わない。
【0024】
例えば、画像に応じてレイヤ数を計算する場合、画像中の画素の奥行きを推定し、その奥行きの最大値と最小値との差を任意の定数で割ったものを用いるといった方法を用いることができる。また、画素の属するレイヤは、画素ごとに奥行き推定によって求めても構わないし、画像セグメンテーションによって幾つかの領域に分割しその領域ごとに奥行推定を行っても構わないし、領域同士の前後関係を推定しその順序を示すだけでも構わない。または、画像と共に付加情報として入力して設定しても構わないし、ユーザの入力操作により設定しても構わない。またはそれらの方法の組み合わせによって設定しても構わない。例えば、画素ごとに奥行き推定を行い、推定された奥行きを画像セグメンテーションによって求められた領域ごとに平均化するといった方法を用いてもよいし、推定された奥行きを画像として提示し、ユーザの操作によって修正を加えるといった方法でもよい。
【0025】
次に、コストマップ設定部103は、任意のマップ数を決定し、元画像とレイヤ構造に基づき、マップごとにコスト算出に用いる画素を決定し、各画素についてエネルギー量を設定し、またそのエネルギー量から、画素そのものの単体コストと近傍画素との結合コストを算出し、画素ごとの合計コストを記述したコストマップをマップ数分設定する(ステップS3)。マップ数は固定のものを設定しても構わないし、画像とレイヤ構造に応じて適切なものを計算し設定しても構わないし、画像と共に付加情報として入力して設定しても構わないし、ユーザの入力操作により設定しても構わない。例えば、レイヤ構造に応じて設定する場合は、レイヤ数とマップ数を同数とする方法を用いることができる。
【0026】
マップごとにコスト算出に用いる画素を決定する方法は、例えばある一つのコストマップは元画像中の全画素を用いて生成し、別の一つのコストマップは元画像中の全画素のうち特定のレイヤの固有画素を除いたものを用いて生成することによって実現できる。また、除かれた画素に相当する部分のコストは、周辺部のコストから補間して設定しても構わないし、固定値を設定しても構わない。
【0027】
エネルギー量は、各レイヤ画像から輝度/色等の画像特徴を用いて顕著性を算出しても構わないし、顔検出などの特徴検出を用いて算出しても構わないし、ユーザの入力操作により設定しても構わない。単体コストの算出は、エネルギー値をそのまま用いても構わないし、スケーリングしても構わないし、その他の任意の関数を設計しても構わない。結合コストの算出は、ある画素とその近傍画素のエネルギーに関して任意次元のノルムを計算しても構わないし、任意の関数を設計しても構わない。また、近傍画素として隣接4近傍画素や8近傍画素を用いても構わないし、その他の任意の近傍関数を設計しても構わない。
【0028】
次に、パス探索部104は、各コストマップに基づき画像を横又は縦に分断する、コスト最少のパスをそれぞれのコストマップについて探索する(ステップS4)。パスを構成する画素群は4近傍連結でも構わないし、8近傍連結でも構わないし、その他の任意の連結規則を用いても構わない。パスとして選択される画素数は、例えば横に分断する場合は各列1画素ずつでも構わないし、複数画素ずつでも構わない。探索法は動的計画法を用いても構わないし、その他の最適化問題の解法を用いても構わないし、全探索を行っても構わない。
【0029】
次に、パス選択部105は、各コストマップに基づき探索されたパスの中から最良のものを代表パスとして選択する(ステップS5)。最良のパスの決定方法は、総コストの比較により最少パスを選択する方法でも構わないし、それぞれのパスに基づき画像をリサイズし、入力画像との類似度を比較し最良のものを選択するなどの方法でも構わない。解像度の異なる画像同士の類似度を測る方法としてはBi-Directional Warping(BDW)などが存在する(文献:Michael R, Ariel S, Shai A. Multi-operator Media Retargeting. ACM Transactions on Graphics. 2009;28(3))。
【0030】
次に、画像リサイズ部106は、選択された代表パスに基づいて画像をリサイズする(ステップS6)。リサイズの方法は、縮小の場合は、パスの画素を削除しても構わないし、パスの画素と隣接画素もしくは近傍画素とを結合しても構わないし、複数画素ずつ選択されている場合はそれらの結合でも構わない。拡大の場合は、パスの画素を複製しても構わないし、パスの画素と隣接画素とのブレンドにより新しい画素を生成しても構わないし、複数画素ずつ選択されている場合はそれらのブレンドにより新しい画素を生成しても構わない。または、画像を複数のブロックに分割しておき、パスが含まれるブロックをダウンサンプリングするといった方法でもよい。
【0031】
次に、画像リサイズ部106は、画像が目標のサイズに達しているか否かを判定し(ステップS7)、画像が目標のサイズに達していなければステップS3へ戻り、処理を繰り返す。一方、画像が目標のサイズに達していれば、画像リサイズ部106は、リサイズした画像を画像出力部107へ出力する。これを受けて、画像出力部107は、リサイズ後の画像を外部へ出力する(ステップS8)。目標のサイズは、予め内部に定義されていてもよいし、外部から元画像と一緒に入力されるようにしてもよい。
【0032】
このように、元画像に対してリサイズを行うことにより、図6に示すように画像中のオブジェクト同士の重ね合わせの発生を許容するイメージリターゲティングを実現でき、オブジェクトの歪み・破損を回避することができる。
【0033】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による画像処理装置を説明する。図3は同実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置100との差異は、新たにパス編集部108を備える点である。パス編集部108は、パス探索部104で決定された各コストマップにおけるパスをレイヤ構造に基づき編集する。
【0034】
次に、図4を参照して、図3に示す画像処理装置100の処理動作を説明する。図4は、図3に示す画像処理装置100が、画像のサイズ変更を行って出力する処理動作を示すフローチャートである。図4に示す処理動作が、図2に示す処理動作と異なる点は、ステップS4bが新たに設けられている点である。以下、図4に示す処理動作のうち、図2に示す処理動作と同様の処理動作については、簡単に説明する。
【0035】
まず、画像入力部101はサイズ変更の対象となる元画像を外部から入力する(ステップS1)。次に、レイヤ構造設定部101は画像を奥行き方向に分割するレイヤ数を決定し、元画像中のすべての画素について属するレイヤを決定する(ステップS2)。
【0036】
次に、コストマップ設定部103は、任意のマップ数を決定し、元画像とレイヤ構造に基づき、マップごとにコスト算出に用いる画素を決定し、各画素についてエネルギー量を設定し、またそのエネルギー量から、画素そのものの単体コストと近傍画素との結合コストを算出し、画素ごとの合計コストを記述したコストマップをマップ数分設定する(ステップS3)。
【0037】
次に、パス探索部104は、各コストマップに基づき画像を横又は縦に分断する、コスト最少のパスをそれぞれのコストマップについて探索する(ステップS4)。続いて、パス編集部108は、各コストマップに置いて決定されたパスを、レイヤ構造に基づき編集する(ステップS4b)。ここで、図5に示す単純な例を参照して、パス編集部108の処理動作を説明する。コストマップ設定部103は、図5(a)に示す領域Aに当たるレイヤの固有画素を除外してコストマップを生成し、除外領域のコストを図5(b)に示すように除外領域の輪郭部分のコスト値で横方向に一様に補間する。そして、パス探索部104が、このコストマップにおいて画像を縦方向に分断するパス探索を行い図5(c)、図5(d)に示すパスP1、P2が決定される。このパスP1、P2が決定されている場合、パス編集部108は、図5(e)、図5(f)に示すようにパスを除外領域の輪郭部分へ移動してパスP3、P4とする処理を行う。
【0038】
この例において、編集前後のパスのコスト値の総和は等しく、編集後のパスを構成する画素群は、図5(f)に示すように必ずしも連結していなくても構わない。この処理により、レイヤ輪郭に沿ったコスト最少の非連結性パスを高速に得ることができる。このパスに沿って画素を削除することで、例えば灰色領域が前景オブジェクトに相当する場合、前景を保存し背景領域のみを削減することができる。同様に、パスに基づく画素の増加においても前景の保存が可能である。
【0039】
次に、パス選択部105は、各コストマップに基づき探索されたパスの中から最良のものを代表パスとして選択する(ステップS5)。そして、画像リサイズ部106は、選択された代表パスに基づいて画像をリサイズする(ステップS6)。
【0040】
次に、画像リサイズ部106は、画像が目標のサイズに達しているか否かを判定し(ステップS7)、画像が目標のサイズに達していなければステップS3へ戻り、処理を繰り返す。一方、画像が目標のサイズに達していれば、画像リサイズ部106は、リサイズした画像を画像出力部107へ出力する。これを受けて、画像出力部107は、リサイズ後の画像を外部へ出力する(ステップS8)。
【0041】
以上説明したように、画像リサイズに伴うオブジェクトの歪み・破損を回避するために、入力画像にレイヤ構造を設定し、その構造に基づき複数のコストのセットを設定し、それぞれに基づき探索したパスのうち最良のものを選択する画像リサイズを画素単位あるいは部分領域単位で繰り返し行うようにした。コストのセットを複数設定する際の指標として画像の奥行き方向の情報に基づいたレイヤ構造を用いることで、前景と後景を独立にリサイズすることができる。また、複数のパスから最良のものを選択しリサイズしていくため、レイヤ構造が不正確な部分が存在していてもそれによる明確なエラーが生じにくい。したがって被写体を切り取り再配置することによりリサイズする場合のように正確な画像セグメンテーション及びレイヤ構造生成を行う必要はない。
【0042】
なお、図1、図3における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより画像のリサイズ処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0043】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0044】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
画像中のオブジェクト同士の重ね合わせの発生を許容するイメージリターゲティング方法を取ることで、オブジェクトの歪み・破損を回避ことが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
101・・・画像入力部、102・・・レイヤ構造設定部、103・・・コストマップ設定部、104・・・パス探索部、105・・・パス選択部、106・・・画像リサイズ部、107・・・画像出力部、108・・・パス編集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を入力する画像入力ステップと、
所定数のレイヤを定義し、前記画像中の各画素が属するレイヤを設定することによりレイヤ構造を設定するレイヤ構造設定ステップと、
前記レイヤ構造に基づき、前記画像の全画素についてエネルギー量を設定し、複数のコストマップを生成するコストマップ設定ステップと、
生成された前記コストマップを参照して、前記画像を分断するパスを前記コストマップごとに探索するパス探索ステップと、
探索された前記パスの中から最良のパスを代表パスとして選択するパス選択ステップと、
前記代表パスに基づいて前記画像のサイズを変更してリサイズ画像を出力する画像リサイズステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記コストマップ設定ステップは、前記画像の全画素または部分領域のもつエネルギー量に基づき、前記画像の全画素または部分領域のもつ縮小または拡張に対するコストを複数のコスト関数に基づき計算して、前記複数のコストマップを生成し、
前記パス探索ステップは、前記コストマップに基づき画素または部分領域の集合からなるパスを探索することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記コストマップ設定ステップは、前記レイヤ構造に基づきコスト算出に用いる画素または部分領域を前記コストマップごとに一部除外したコスト除外領域とし、前記コスト除外領域に相当するコストを新たに設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記パス選択ステップは、前記パスに基づいて画像サイズの変更を実行し画質評価を行い、最良の画質が得られたパスを前記代表パスとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記パス探索部で得られたパスそれぞれについて前記レイヤ構造に基づいた編集を行うパス編集ステップをさらに有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記パス編集ステップは、前記パスそれぞれについて、前記レイヤ構造に基づき画素または部分領域を一部パス除外領域とした除外領域内に含まれる前記パスを構成する画素または部分領域を前記パス除外領域輪郭部の画素または部分領域に再設定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
画像を入力する画像入力手段と、
所定数のレイヤを定義し、前記画像中の各画素が属するレイヤを設定することによりレイヤ構造を設定するレイヤ構造設定手段と、
前記レイヤ構造に基づき、前記画像の全画素についてエネルギー量を設定し、複数のコストマップを生成するコストマップ設定手段と、
生成された前記コストマップを参照して、前記画像を分断するパスを前記コストマップごとに探索するパス探索手段と、
探索された前記パスの中から最良のパスを代表パスとして選択するパス選択ステップと、
前記代表パスに基づいて前記画像のサイズを変更してリサイズ画像を出力する画像リサイズ手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84202(P2013−84202A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224916(P2011−224916)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】