説明

画像処理方法及び画像処理装置

本発明は有効又は無効な画素で構成された1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する画像処理技術である。そして、第2の線状画像オブジェクトから線分抽出を行う線分抽出ステップ、第1の画像オブジェクトから、第2の線状画像オブジェクトを除去する除去ステップ、該第1の画像オブジェクト上の該線分近傍領域を走査し、該走査対象画素を順に抽出する画素抽出ステップ、該抽出された走査対象画素が有効画素か否かを判定する有効画素判断ステップ、該有効画素判断ステップにおいて有効画素と判定された走査対象画素から直近の線分に向けた垂線を導出し、該垂線上の全ての画素を有効画素にする画素補完ステップの各ステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、画像処理の方法及び装置に関するものであり、より詳しくは1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する方法及び装置に関するものである。
従来背景
近年、インターネットをはじめとする情報通信技術の進歩に伴い、さまざまな分野におけるデジタル映像情報、デジタル画像情報等のコンテンツが急速に増加している。
例えば、これらのコンテンツを効率よく、高精度に検索するためには、コンピュータによる映像・画像の分析が必要となるが、取り出した1枚の画像中に2つ以上のオブジェクトが重なり合って映し出される場合は少なくない。
目的とする1つのオブジェクトの動きを追跡し、分析する場合にはこのような重なり合いが障害となる。そこで、特に2値化された画像中において重なり合った2つのオブジェクトがある場合、それらを分離する技術が求められている。
このような技術は、特にOCR(光学的文字認識)の分野での研究が進められており、例えばPCT/US96/04036号において開示されているように、重なった線が存在する場合における、連続した文字の画像またはその他のパターンの不明瞭な部分を復元するための方法及び装置が知られている。
該方法では、ピクセルで構成された画像における循環パターン、例えば文字の失われた部分を復元する方法として、循環パターンの失われた部分の近傍の有効なピクセルの値を求めるステップと、有効なピクセルの値、循環パターンで予め訓練した二重確率的有限状態機械に記憶されたデータの少なくとも一部を用いて循環パターンの失われた部分を含むピクセルに対する値を復元するステップとを提案している。
このような方法は、テキストなどの循環的に発現するパターンでは有効である反面、一般的な画像に用いることは難しい上、処理が複雑で映像のような高速で処理を必要とするコンテンツには不適当である。
すなわち、例えばグラウンドにラインが引かれ、さらにネットが配置された上でプレーヤーがスポーツを行っている映像の場合、プレーヤーとライン、プレーヤーとネットはほとんどの時間重なり合っていると考えられるが、プレーヤーの動きを分析するような場面においては、上記従来の方法を適用することは出来ない。また、プレーヤーは高速で移動するため、高速な処理を実現する必要がある。このような場合に有効に対応しうる技術が従来提供されていなかった。
【発明の開示】
本発明は、このような従来の背景から創出されたものであり、画像中に含まれる2つの重なり合うオブジェクトを高速に分離し抽出可能とする技術であり、特に1つのオブジェクトが線状の画像である場合に適している。以下に、順に開示する。
すなわち、有効又は無効な画素で構成された1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する画像処理方法であって、線分抽出手段により、第2の線状画像オブジェクトから線分抽出を行う線分抽出ステップ、線状画像除去手段により、第1の画像オブジェクトから、第2の線状画像オブジェクトを除去する除去ステップ、画像走査手段により、該第1の画像オブジェクト上の該線分近傍領域を走査し、該走査対象画素を順に抽出する画素抽出ステップ、有効画素判定手段により、該抽出された走査対象画素が有効画素か否かを判定する有効画素判断ステップ、画素補完手段により、該有効画素判断ステップにおいて有効画素と判定された走査対象画素から直近の線分に向けた垂線を導出し、該垂線上の全ての画素を有効画素にする画素補完ステップ、の各ステップを含む。
また、前記画像が、複数のフレームから構成された動画像における1フレームである構成でもよい。
あるいは、前記画像が、複数のフレームから構成された動画像における単数又は複数のフレームを所定の演算処理して得られる画像であってもよい。本構成において、前記演算処理が、動画像における任意の2フレーム間の差分を求める処理、又は動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理のいずれかであってもよい。
さらに、この動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理が、該1フレームの前後所定のフレームを抽出し、それぞれ該1フレームとの差分画像を取得すると共に、両差分画像のAND演算を行う処理を用いてもよい。
以上の構成において、前記線分抽出ステップで、ハフ変換を用いて線分抽出を行うこともできる。
また、本発明は、有効又は無効な画素で構成された1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する次のような画像処理装置を提供することもできる。
すなわち、本装置は、第2の線状画像オブジェクトから線分抽出を行う線分抽出手段と、第1の画像オブジェクトから、第2の線状画像オブジェクトを除去する線状画像除去手段と、該第1の画像オブジェクト上の該線分近傍領域を走査し、該走査対象画素を順に抽出する画像走査手段と、該抽出された走査対象画素が有効画素か否かを判定する有効画素判定手段と、該有効画素判断ステップにおいて有効画素と判定された走査対象画素から直近の線分に向けた垂線を導出し、該垂線上の全ての画素を有効画素にする画素補完手段とを備えることを特徴とするものである。
上記の画像処理装置において、複数のフレームから構成された動画像から1フレームを抽出するフレーム抽出手段を備え、該フレーム抽出手段で抽出された1フレームを画像として用いることもできる。
さらに、前記画像処理装置が、複数のフレームから構成された動画像から単数又は複数のフレームを抽出するフレーム抽出手段と、抽出されたフレームを所定の演算処理するフレーム演算処理手段とを備え、その演算処理結果を前記画像として用いる構成でもよい。ここで、このフレーム演算処理手段が、動画像における任意の2フレーム間の差分を求める処理、又は動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理のいずれかの処理を行う構成でもよい。
さらに、この動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理が、該1フレームの前後所定のフレームを抽出し、それぞれ該1フレームとの差分画像を取得すると共に、両差分画像のAND演算を行う処理を用いることもできる。
以上の画像処理装置において、線分抽出手段が、ハフ変換を用いて線分抽出を行う構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明による画像処理方法の処理フローチャートである。
第2図は、本発明による画像処理装置の構成図である。
第3図は、第2オブジェクトの一例を示す説明図である。
第4図は、第1オブジェクトの一例を示す説明図である。
第5図は、第1オブジェクトが除去ステップで分断された状態を示す説明図である。
第6図は、テニスコートのコートモデルを示す説明図である。
第7図は、テニスコートのネットモデルを示す説明図である。
第8図は、2値画像B(t)である。
第9図は、2値画像B(t)である。
第10図は、2値画像B(t)である。
第11図は、2値画像Bdiff(t)である。
第12図は、2値画像Blabel(t)である。
第13図は、2値画像L’(t)である。
第14図は、2値画像L’(t)である。
第15図は、B’diff(t)から線分消去後の選手近傍の拡大図である。
第16図は、B’label(t)から線分消去後の選手近傍の拡大図である。
第17図は、画素補完後のB’diff(t)の選手近傍の拡大図である。
第18図は、画素補完後のB’label(t)の選手近傍の拡大図である。
第19図は、選手領域の抽出を示す説明図である。
符号の指示部位は次の通りである。10:線分抽出ステップ、11:線分画像の除去ステップ、12:線分近傍領域の走査ステップ、13:走査対象画素が有効画素か否かの判定ステップ、14:走査対象画素と線分の垂線導出処理、15:垂線上の全ての点を有効画素に変換するステップ、30:線状の第2オブジェクト、31:第1オブジェクト、32:走査対象画素。
発明を実施するための好ましい形態
本発明の好ましい実施方法を以下に、図面に示しながら説明する。なお、本発明の実施形態は以下に限定されず、適宜変更可能である。
第1図に本発明の画像処理方法のフローチャートを、第2図には本発明による画像処理装置(以下、本装置と呼ぶ。)の構成をそれぞれ示す。
本装置(1)は、公知のパーソナルコンピュータによって構成することができ、演算処理を司るCPU(2)と共にRAM/ROMのメモリ(3)、ハードディスク等の外部記憶装置(4)の他、キーボードやマウス等の入力装置(5)、表示出力を行うモニタ(6)等から構成されている。
本装置(1)においてはその他に、映像を入力するためのイメージキャプチャ手段(7)をCPU(2)に接続して、図示しないカメラや映像再生装置からの映像信号を外部記憶装置(4)に記録するようになっている。
映像信号がアナログ信号である場合には、イメージキャプチャ手段(7)にアナログ/デジタル変換機能を実装して、外部記憶装置(4)にはデジタルデータが記録される。
本発明の核心部分では、上記イメージキャプチャ手段(7)から得られ、外部記憶装置(7)に記録された画像に対して、第1図に示すような処理を行う。
まず、CPU(2)の線分抽出部(22)が、画像中の第2オブジェクト(30)から線分を抽出するステップ(10)を有する。画像から第2オブジェクトの領域を分離する方法は任意であるが、例えば線状画像が所定の形状である場合にはその形状を元に線分を抽出すればよい。
そして、線状画像除去部(23)は、上記で得られた線分を拡大して線状の画像を少なくとも画像中の第1オブジェクト(31)の含まれる部分から除去する。(線分画像の除去ステップ(11))言うまでもなく画像全体から除去しても良い。除去された画像はメモリ(3)に格納することができる。
このように線分画像を除去した場合、第1オブジェクト(31)に重なりあった線分画像(第2オブジェクト(30))の部分が除去されるため、本来の第1オブジェクト上に帯状の無効画素部分が生じてしまう。
本発明では、これを有効に補完するため次のようなステップを備える。
便宜上、第3図に第2オブジェクト(30)の一例を、第4図に第1オブジェクト(31)の一例を、第5図には、第1オブジェクト(31)が上記の除去ステップ(11)で分断された状態をそれぞれ示す。各図中において「1」と記載された画素は有効画素であり、「0」は無効画素を示している。
第3図の左右方向に帯状に羅列した有効画素(40)が線状画像である第2オブジェクト(30)でありその他の領域は無効画素である。そして、線分抽出ステップ(10)によって線分(41)が抽出される。
一方、第1オブジェクト(31)は第4図のように「1」で表示される画素多数(50)・・の集合から構成されている。
実際の画像では上記第2オブジェクト(30)と第1オブジェクト(31)が重なり合っており、第2オブジェクト(30)を除去すると、第5図のようになる。すなわち、第1オブジェクト(31)の中に無効画素の帯(60)が生じ、第1オブジェクト(31)画像を分断してしまう。
これを補完する為、本発明では、CPU(2)の画像走査部(24)によって、線分(41)近傍の画素を順に走査し、所定の閾値内のピクセルを抽出する。
このとき、線分画像の除去ステップ(11)において前記線分(41)を線幅3ピクセルに拡大した場合(第3図ないし5の場合)には、線分から2ピクセル離れた画素を抽出すればよい。抽出された走査対象画素(32)も一時的にメモリ(3)に格納することができる。
また、図6に示すように、前記線分(41)上の画素(42)を順に走査し、その走査ごとに得られる画素(42)の画面座標に、線幅の半分の大きさ(43)に1を加えた値をx方向、y方向それぞれの方向に加減した画面座標(44)(44)(45)(45)(この場合1つの画素(42)に対して4種類)を求め、この画面座標の画素を走査対象画素(32)としてもよい。
そして、有効画素判定部(25)において、抽出された画素が有効画素か否かを判定する判定ステップ(13)を処理する。
この結果、当該画素が有効画素(「1」の情報を有する)の場合には、画素補完部(26)において、当該ピクセルと、線分(41)との間に仮想的な垂線を導出するステップ(14)と、該垂線上にある無効画素全てを有効画素に変換するステップ(15)とを順に処理する。有効画素化する処理は各画素に割り当てられた「0」の情報を「1」に書き換えることによって可能である。
以上を具体的に示すと、第5図において線分(41)から距離2ピクセルの画素(61)から画素(62)(63)・・と順に走査する時、画素(61)は無効画素であるから処理を進めない。そして、画素(62)は有効画素であるから、垂線(64)を算出して、その上にある画素(65)(66)を有効画素とする。明らかなように、これを繰り返すことによって第2オブジェクト(30)の除去に伴って失われた画素を補完することができ、元の第1オブジェクト(31)に極めて近い形状の画像を得ることができる。
本発明の要部は以上である。また、本技術の適用例として次のような構成を提供することができる。
すなわち、上記では1枚の画像を用いて処理の流れを示したが、本発明は特に時系列に複数のフレームから構成される映像を対象とするのに最適であり、その中の任意の1フレームをCPU(2)においてフレーム抽出部(20)で適宜取り出すことができる。このように取り出された1フレームを上記の画像として処理することもできる。また、後述のように複数のフレームを取り出すこともできる。
さらに、CPU(2)に取り出した画像を所定の方式で演算処理するフレーム演算処理部(21)を設けても良い。これらは公知の画像処理技術により実現を図ることができるので、本発明ではその演算方法は任意に決めることができる。
次に、本発明の実施例としてテニスコート上で競技を行うプレイヤーの映像を例にとって説明する。テニスの映像を撮影した場合、プレーヤーはテニスコートに引かれたコートラインや、ネットラインなどの線状の画像と重なりあって映るため、プレイヤーの動きを抽出する際の障害になる。そこで、本技術によって高速かつ高精度に分離抽出する。
まず、第2オブジェクト(30)として、コート・ネットラインを抽出する。このときテニスコートの仕様を利用する。第6図に示すようにコート特徴点P,・・・,Pc14、コートラインLc1,・・・,Lc9を定義する。同様に、第7図に示すようなネット特徴点Pn1,・・・,Pn3、ネットラインLn1,Ln2を定めてコートモデル、ネットモデルとして参照する。
各モデルの原点はコート中心に取り、座標軸を図中の通り定める。コートモデルはXY平面上に、ネットモデルはZX平面上に定義されている。
まずコートラインを抽出する。第6図におけるコートラインLc1,・・・,Lc9はその両端のコート特徴点を検出することによって決定する。以下のステップからなる。
(i)時刻t=0においては、初期特徴点P(0)を入力として与える。次に、P(0)で決まるコートラインL(0)について、各ラインをハフ平面に変換する。ハフ平面上における各ピーク点を中心に大きさwth,wroの検出窓W(0)を用意する。
(ii)時刻t=tにおいては、まず、原画像の2値化画像B(t)とコートラインL(t−1)の近傍領域とのANDをとり、コート近傍のみからなる2値画像(コートライン2値画像と呼ぶ)B(t)を生成する。生成された画像を第8図に示す。本図に示したコートライン2値画像及び後述のネットライン2値画像が本発明に言う画像中の線状画像オブジェクトに相当する。
(iii)これを各ライン毎にハフ変換し、各検出用窓W(t−1)で制限される範囲でピーク検出を行い、特徴点P(t)を更新する。
(iv)再び、コートラインL(t)をハフ変換し、検出窓W(t)も更新する。ステップ(ii)に戻る。
ネットラインの抽出においてもt=0での初期特徴点P(0)を入力として与え、ネットラインL(0)、検出窓W(0)を用意する。さらに、時刻t=tにおいては、原画増の2値化画像からコートライン2値画像を除いたB(t)−B(t)と、ネットラインL(t−1)の近傍領域とのANDを取り、ネットライン2値画像B(t)を生成する。B(t)に対してハフ変換、検出窓範囲内でピーク検出を行い、特徴点Pn(t)を更新する。
ここで、線分検出の手法として、上述したハフ変換と呼ばれるものが知られている(例えば米国特許第3069654号)他、このハフ変換のためのハードウェアとしては、恩田邦夫らによる「ROMを用いたHough変換ハードウェア」(昭和62年電子通信学会創立70周年記念総合全国大会、No.1587)に示されるものがある。また、日本特許第2935863号や、日本特許公開平成6−274619号に開示されたものなどがある。なお、ハフ変換についても、日本特許第2646363号などのように、多様な改良が行われており、これらを任意に用いることができる。
本発明では、CPU(2)における線分抽出部(2)においてこのようなハフ変換の演算処理を行っている。
また、線分の抽出には、この他に最小2乗法を用いた直線の近似方法など公知の様々な手法を用いることができる。また、本発明は線状画像であれば直線に限らず、円、円弧、多角形など、線状(帯状)のいかなるオブジェクトに対しても適用することができる。
次に、選手(第1オブジェクト)の抽出を行うため、次の各ステップを処理する。
(I)フレーム抽出部(20)において、時刻t=tの基準フレームと、前後s時間離れたフレームを抽出する。そして、その前後各フレームと基準フレームとの差分を求め、適当な閾値で2値画像B(t)、B(t)を作成する。該差分を求める演算は、CPU(2)のフレーム演算処理部(21)で行う。
閾値の決定方法としては、決まった固定値を閾値とする方法の他、大津の方法(平均クラス内分散を最小にすることにより閾値を決定する方法)やKittlerの方法(平均条件付きエントロピーを最小化することにより閾値を決定する方法)、領域分割法(画像をいくつかの小領域に分割し、各小領域ごとにその小領域の性質に最も適した閾値を決定する方法)など、任意の方法を用いることができる。
ここで得られた2値画像B(t)、B(t)をそれぞれ第9図及び第10図に示す。
(II)これら2つの差分画像のAND演算を行った結果得られる2値画像をBdiff(t)とし、第11図に示す。本ステップにより、最初の映像(動画像)中の1フレームにおける変化領域を求めることができる。これらはCPU(2)のフレーム演算処理部(21)において演算処理することができる。
フレーム演算処理部(21)の処理としては、上記の他、画像処理でしばしば用いられるようにフレーム抽出部(20)で任意の2フレームを抽出し、その差分を求めて公知の処理を行わせてもよい。
(III)選手ユニフォーム等の代表色に対応した色クラスタを予め用意し、時刻t=tにおける画像I(t)の画素で、その色クラスタ内に含まれるものを有効画素「1」として2値画像Blabel(t)とし、第12図に示す。色クラスタ内に含まれる画素を抽出する方法は公知であり、得られた2値画像Blabel(t)は映像中の単数のフレームをフレーム演算処理部(21)において演算処理して得られた画像である。
(IV)コート・ネットラインL(t)、L(t)を拡大処理して得られる2値画像をL’(t)、L’(t)(それぞれ第13図、第14図に示す)とし、上記Bdiff(t)、Blabel(t)からこれらの領域を消去し、B’diff(t)、B’label(t)を得る。
消去後の選手近傍の拡大図をそれぞれ第15図と第16図に示す。前述したように、本発明では、この消去処理によって選手領域との重なり部分を除去したと考えられる領域について、B’diff(t)、B’label(t)上でL’(t)、L’(t)の近傍領域を走査し、B’diff(t)、B’labe(t)上の各走査対象画素lが有効画素ならばlからL(t)あるいはL(t)に下ろした垂線vの足までにあたる画素群lpvを有効画素とする。
本処理によって得られたB’diff(t)、B’label(t)の選手近傍の拡大図をそれぞれ第17図と第18図に示す。
(V)最後に、2つの画像のOR演算を行い、2値画像Bcand(t)とする。ここで、ANDではなくOR演算をするのは、選手の手足などが動いている場合もなるべく安定にそれらの領域を抽出するためである。色ラベリング単体で選手領域を抽出すると、解像度が不足していたり選手ユニフォームが背景色と色差がほとんどない場合に、安定した抽出が困難になることがある。また、時間差分画像のみでは、選手の動きが遅い場合に検出漏れがしばしば発生してしまう。ここでは、時間差分画像によって動きの成分を補完しながら、より詳細な選手領域を安定に検出する為にOR演算を行っている。
以上の結果、2値画像Bcand(t)内で一定以上の面積を持つ領域を選手初期位置として、第19図に示すように選手の抽出を行う。
なお、第19図においては、ノイズ処理を行っており、本発明の実施においてはCPU(2)を用いて適宜このような画像処理を行うことができる。
以上説述したように、本発明によると、有効又は無効な画素で構成された1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する画像処理技術を提供することができる。上記方法は、演算処理がシンプルであり、映像のように多数のフレームを有し、1つのフレームについて高速に処理しなければならない場合に特に大きな効果を奏する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効又は無効な画素で構成された1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する画像処理方法であって、
線分抽出手段により、第2の線状画像オブジェクトから線分抽出を行う線分抽出ステップ、
線状画像除去手段により、第1の画像オブジェクトから、第2の線状画像オブジェクトを除去する除去ステップ、
画像走査手段により、該第1の画像オブジェクト上の該線分近傍領域を走査し、該走査対象画素を順に抽出する画素抽出ステップ、
有効画素判定手段により、該抽出された走査対象画素が有効画素か否かを判定する有効画素判断ステップ、
画素補完手段により、該有効画素判断ステップにおいて有効画素と判定された走査対象画素から直近の線分に向けた垂線を導出し、該垂線上の全ての画素を有効画素にする画素補完ステップ、
の各ステップを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記画像が、複数のフレームから構成された動画像における1フレームである請求の範囲1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記画像が、複数のフレームから構成された動画像における単数又は複数のフレームを所定の演算処理して得られる画像である請求の範囲1に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記演算処理が、動画像における任意の2フレーム間の差分を求める処理、又は動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理のいずれかである請求の範囲3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理が、該1フレームの前後所定のフレームを抽出し、それぞれ該1フレームとの差分画像を取得すると共に、両差分画像のAND演算を行う処理である請求の範囲4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記線分抽出ステップにおいて、ハフ変換を用いて線分抽出を行う請求の範囲1ないし5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
有効又は無効な画素で構成された1個の画像中で重なり合う第1の画像オブジェクトから第2の線状画像オブジェクトを除去する画像処理装置であって、
第2の線状画像オブジェクトから線分抽出を行う線分抽出手段と、
第1の画像オブジェクトから、第2の線状画像オブジェクトを除去する線状画像除去手段と、
該第1の画像オブジェクト上の該線分近傍領域を走査し、該走査対象画素を順に抽出する画像走査手段と、
該抽出された走査対象画素が有効画素か否かを判定する有効画素判定手段と、
該有効画素判断ステップにおいて有効画素と判定された走査対象画素から直近の線分に向けた垂線を導出し、該垂線上の全ての画素を有効画素にする画素補完手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記画像処理装置が、複数のフレームから構成された動画像から1フレームを抽出するフレーム抽出手段を備え、該フレーム抽出手段で抽出された1フレームを画像として用いる請求の範囲7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像処理装置が、複数のフレームから構成された動画像から単数又は複数のフレームを抽出するフレーム抽出手段と、抽出されたフレームを所定の演算処理するフレーム演算処理手段とを備え、その演算処理結果を前記画像として用いる請求の範囲7に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記フレーム演算処理手段が、動画像における任意の2フレーム間の差分を求める処理、又は動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理のいずれかの処理を行う請求の範囲9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記フレーム演算処理手段において、前記動画像中の任意の1フレームにおける変化領域を求める処理が、該1フレームの前後所定のフレームを抽出し、それぞれ該1フレームとの差分画像を取得すると共に、両差分画像のAND演算を行う処理である請求の範囲10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記線分抽出手段が、ハフ変換を用いて線分抽出を行う請求の範囲7ないし11に記載の画像処理装置。

【国際公開番号】WO2004/088587
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570130(P2004−570130)
【国際出願番号】PCT/JP2003/003986
【国際出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】