説明

画像処理装置、画像処理方法、及び、表示装置

【課題】入力画像データのサイズを変換して出力する回路を用いて、この回路の仕様上の制限に適合しない画像データを、画質の劣化を伴わない方法によってサイズ変換する。
【解決手段】プロジェクター11は、第1の方向または第2方向のいずれかについて、サイズ変換する画像データが当該方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換回路133と、回転処理回路131とを備え、制御部103の制御により、処理対象の画像データをサイズ変換回路133によって制限された方向でサイズ変換を行う際、回転後の処理対象のデータの第1の方向におけるサイズを拡張することで所定データ単位の整数倍とし、サイズ変換回路133により第2の方向のサイズ変換を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を処理する画像処理装置、画像処理方法、及び、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等の画像出力装置において、画像中の指定された領域を拡大して出力したり、出力サイズよりも大きな画像を縮小して表示するため、入力画像データのサイズ変換処理を行う処理回路を備えた画像出力装置があった。
画像データのサイズ変換を行う処理回路の一部には、仕様上、入出力する画像データの幅(横方向のサイズ)または高さ(縦方向のサイズ)が制限されていることがある。この制限は、例えば、処理回路内部のレジスターの構成により、画像を入出力するメモリーへのアクセスを所定データ単位(具体例としては、8バイト単位または8画素単位)で行う必要があることに起因するものである。この制限はハードウェアの仕様によるものであるから、ソフトウェアによりサイズ変換を行う構成とすれば回避可能であるが、サイズ変換を専用のハードウェアで行う場合にはCPUの処理負荷を軽減できる、高速処理が可能である等の利点があるため、上記のような制限のもとにサイズ変換を行うことが多かった。すなわち、処理対象の画像データのサイズをいったんサイズ変換処理の仕様に合わせて変換してから、サイズ変換を行っていた。このような場合に、処理対象の画像データのサイズを拡大または縮小する技術としては、複数の画素の画素値を用いて、その領域の内部に新たな画素値を生成する補間法があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−268389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、補間により処理対象の画像データの画素数を変換する場合、画像の劣化を生じるという問題が指摘されていた。特に、ハードウェアの仕様の制限に適合させるため複数段階の補間処理を行うと、劣化が無視できないという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、入力画像データのサイズを変換して出力する回路を用いて、この回路の仕様上の制限に適合しない画像データを、画質の劣化を伴わない方法によってサイズ変換することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、入力画像データの第1の方向および第2の方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、前記入力画像データが前記第1の方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換手段と、前記入力画像データを回転させる回転処理手段と、処理対象の画像データを前記第1の方向でサイズ変換を行う際、前記処理対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、前記処理対象の画像データを前記回転処理手段により回転させ、回転後の前記処理対象のデータの前記第1の方向におけるサイズを拡張することで前記所定データ単位の整数倍とし、前記サイズ変換手段により前記第2の方向のサイズ変換を実行させる制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、処理対象の画像データを回転させることで、仕様上の制限を受けない方向のサイズ変換のみを行うことにより第1及び第2の方向の両方のサイズ変換を行うことができる。これにより、サイズ変換機能を有するハードウェアの制限の範囲内で、画像データの劣化を招くことなく、高い自由度で画像データのサイズ変換を行うことができる。
ここで、第1の方向及び第2の方向は、互いに略直交する方向であり、例えば、処理対象の画像データが直交する方向に配列された画素からなるデータである場合には、第1の方向及び第2の方向は、横方向及び縦方向、或いはその逆に相当する。
【0006】
また、本発明は、上記画像処理装置において、前記サイズ変換手段及び前記回転処理手段は、メモリーの作業領域に展開された前記処理対象のデータを処理するものであり、前記制御手段は、前記作業領域において前記処理対象の画像データに隣接する不定データを含めた範囲を新たに処理対象の画像データとすることで、前記第1の方向におけるサイズを拡張することを特徴とする。
本発明によれば、メモリーの作業領域に展開された処理対象のデータを改変することなく処理対象のデータのサイズを容易に拡張できる。
【0007】
また、本発明は、上記画像処理装置において、前記制御手段は、前記サイズ変換手段により前記処理対象の画像データのサイズ変換をさせた後、前記回転処理手段により逆方向に回転させることを特徴とする。
本発明によれば、処理対象の画像データを入力時と同じ向きの画像として出力できる。
【0008】
また、本発明は、上記画像処理装置において、前記制御手段は、前記サイズ変換手段及び前記回転処理手段による処理後の画像データが前記作業領域の先頭アドレス側に位置するように、前記回転処理手段によって前記処理対象の画像データを回転させる前に前記作業領域内で前記処理対象の画像データを移動させることを特徴とする。
本発明によれば、処理後の画像データを出力する際の先頭のアドレスがずれないように処理できる。
【0009】
また、本発明は、上記画像処理装置において、前記サイズ変換手段は、サイズ変換前後の画像データの前記第1の方向の画素数が所定画素数の整数倍となっていること、或いは、サイズ変換前後の前記第1の方向のデータが所定バイト数の整数倍となっていることが制限されていることを特徴とする。
処理対象の画像データの画素数あるいはデータサイズが制限されている場合に、この制限を満たすように補間演算等を行うことなくサイズ変換できる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明は、入力画像データの第1の方向および第2の方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、前記入力画像データが前記第1の方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換手段と、前記入力画像データを回転させる回転処理手段とを用い、処理対象の画像データを前記第1の方向でサイズ変換を行う際、前記処理対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、回転後の前記処理対象のデータの前記第1の方向におけるサイズを拡張することで前記所定データ単位の整数倍とし、前記サイズ変換手段により前記第2の方向のサイズ変換を実行させることを特徴とする。
本発明によれば、処理対象の画像データを回転させることで、仕様上の制限を受けない方向のサイズ変換のみを行うことにより第1の方向及び第2の方向の両方のサイズ変換を行うことができる。これにより、サイズ変換機能を有するハードウェアの制限の範囲内で、画像データの劣化を招くことなく、高い自由度で画像データのサイズ変換を行うことができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明は、入力画像データの第1の方向および第2の方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、縦方向または横方向のいずれかについて、サイズ変換する画像データが当該方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換手段と、前記表示対象の画像データを回転させる回転処理手段と、前記表示対象の画像データを前記サイズ変換手段によって制限された方向でサイズ変換を行う際、前記表示対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、回転後の前記処理対象のデータの前記第1の方向におけるサイズを拡張することで前記所定データ単位の整数倍とし、前記サイズ変換手段により前記第2の方向のサイズ変換を実行させる制御手段と、前記サイズ変換手段及び前記回転処理手段により処理された画像データを表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、処理対象の画像データを回転させることで、仕様上の制限を受けない方向のサイズ変換のみを行うことにより第1の方向及び第2の方向の両方のサイズ変換を行うことができる。これにより、サイズ変換機能を有するハードウェアの制限の範囲内で、画像データの劣化を招くことなく、高い自由度で画像データのサイズ変換を行うことができ、画像を拡大または縮小して表示することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理対象の画像データを回転させることで、仕様上の制限を受けない方向のサイズ変換のみを行うことにより、制限を受ける方向及び制限を受けない方向の両方のサイズ変換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る表示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】画像データを拡大する処理手順を具体的に示す説明図である。
【図3】画像データを縮小する処理手順を具体的に示す説明図である。
【図4】画像データを拡大及び回転する処理手順を具体的に示す説明図である。
【図5】画像データを拡大及び回転する処理手順を具体的に示す説明図である。
【図6】画像データを拡大及び回転する処理手順を具体的に示す説明図である。
【図7】プロジェクターが画像データのサイズを変換する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について説明する。
図1は、表示システム10の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る表示システム10は、表示装置としてのプロジェクター11をPC(Personal Computer)13に有線または無線接続して構成され、プロジェクター11はPC13から受信される画像情報に応じた画像を投射面としてのスクリーンSC上に投射する。プロジェクター11は、PC13から受信した画像情報に応じた画像が静止画像であっても動画像であっても投射できる。
プロジェクター11は、PC13やビデオ再生装置、DVD再生装置等の外部の装置に接続されるI/F(インターフェイス)部101を備えている。例えば、I/F部101は、USBインターフェイス、有線または無線LANインターフェイス、アナログ映像信号が入力されるVGA端子、デジタル映像信号が入力されるDVI(Digital Visual Interface)、NTSC、PAL、SECAM等のコンポジット映像信号が入力されるS映像端子、コンポジット映像信号が入力されるRCA端子、コンポーネント映像信号が入力されるD端子、HDMI(登録商標)規格に準拠したHDMIコネクター等を備えている。
プロジェクター11は、I/F部101のLANインターフェイスまたはUSBインターフェイスを介してPC13に接続される。
【0015】
プロジェクター11は、大きく分けて光学的な画像の形成を行う光学系と映像信号を電気的に処理する画像処理系とからなる。光学系は、照明光学系31、光変調装置である液晶パネル32、及び投射光学系33から構成されている。照明光学系31は、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源を備えている。また、照明光学系31は、光源が発した光を液晶パネル32に導くリフレクター及び補助リフレクターを備えていてもよく、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、或いは光源が発した光の光量を液晶パネル32に至る経路上で低減させる調光素子等を備えたものであってもよい。
液晶パネル32は、後述する画像処理系からの信号を受けて、パネル面に画像を形成する。液晶パネル32は、カラーの投影を行うため、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネルからなる。そのため、照明光学系31からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する各液晶パネルに入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系によって合成され、投射光学系33に射出される。
【0016】
投射光学系33は、投射する画像の拡大・縮小および焦点の調整を行うズームレンズ、ズームの度合いを調整するズーム調整用モーター、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用モーター等を備えている。この光学系には、制御部103の制御に従って投射光学系33が備える各モーターを駆動する投射光学系駆動部121、及び、制御部103の制御に従って照明光学系31が備える光源を駆動する光源駆動部117が接続されている。
【0017】
一方、画像処理系は、プロジェクター11全体を統合的に制御する制御部103を中心に構成され、制御部103が処理するデータや制御部103が実行する制御プログラム105Aを記憶した記憶部105、操作パネル45及びリモコン受光部41を介した操作を検出する入力処理部123、I/F部101を介して入力された入力映像を処理する表示制御部107、画像処理部113、表示制御部107から出力される映像信号に基づいて液晶パネル32を駆動して描画を行う光変調装置駆動部119を備えている。
【0018】
制御部103(制御手段)は、記憶部105に記憶された制御プログラム105Aを読み出して実行することにより、プロジェクター11の各部を制御する。制御部103は、入力処理部123から入力される操作信号に基づいて、操作者が行った操作の内容を検出し、この操作に応じて表示制御部107、投射光学系駆動部121及び光源駆動部117を制御して、スクリーンSCに映像を投射させる。
【0019】
また、プロジェクター11の外装筐体(図示略)には各種スイッチ及びインジケーターランプを備えた操作パネル45が配置されている。操作パネル45は入力処理部123に接続されており、入力処理部123は、制御部103の制御に従い、プロジェクター11の動作状態や設定状態に応じて操作パネル45のインジケーターランプを適宜点灯或いは点滅させる。この操作パネル45のスイッチが操作されると、操作されたスイッチに対応する操作信号が入力処理部123から制御部103に出力される。
また、プロジェクター11は、操作者が使用するリモコン(図示略)がボタン操作に対応して送信した赤外線信号を、リモコン受光部41によって受光する。リモコン受光部41は、上記リモコンから受光した赤外線信号をデコードして、上記リモコンにおける操作内容を示す操作信号を生成し、制御部103に出力する。
【0020】
I/F部101には表示制御部107が接続される。表示制御部107には、フレームメモリー115を有する画像処理部113が接続されている。画像処理部113は、I/F部101を介して入力される入力映像をフレームメモリー115に展開し、アナログ/デジタル変換、インターレース/プログレッシブ変換、解像度変換等の各種変換処理を適宜実行し、予め設定されたフォーマットの映像信号を生成して表示制御部107に出力する。表示制御部107は、画像処理部113により処理された映像信号を光変調装置駆動部119に出力し、液晶パネル32に表示させる。
【0021】
画像処理部113は、制御部103の制御のもと、I/F部101により受信され、表示制御部107が取得した画像データをフレームメモリー115に1フレームの画像として展開する。そして、画像処理部113は、フレームメモリー115に展開された画像データについて、90度単位で回転させる回転処理回路131、及び、縦方向及び横方向へのサイズ変換を行うサイズ変換回路133を備えている。回転処理回路131、及び、サイズ変換回路133は、いずれも専用の処理回路を有する半導体デバイス(ASIC)として構成される。なお、本実施形態では回転処理回路131とサイズ変換回路133とを独立したハードウェアとして説明するが、両機能部を統合した一つのハードウェアとして構成してもよい。
【0022】
回転処理回路131(回転処理手段)及びサイズ変換回路133(サイズ変換手段)は、制御部103の制御により、フレームメモリー115に展開された画像データの全部または一部を処理対象として読み出す。回転処理回路131及びサイズ変換回路133は、処理した画像データを相互に直接出力可能であり、例えば、回転処理回路131が回転させた画像データを直接サイズ変換回路133に入力してサイズ変換することも、その逆の処理も可能である。また、回転処理回路131が処理後の画像データをいったんフレームメモリー115に出力し、この画像データをサイズ変換回路133が読み出してサイズ変換処理をすることも可能であり、その逆の処理も可能である。
【0023】
回転処理回路131は入力された画像データを、サイズを変えずに90度単位で、90度、180度、270度、−90度、−180度、−270度回転させる機能を有する。
【0024】
一方、サイズ変換回路133は、入力された画像データのサイズを、互いに略直交する第1の方向及び第2の方向のそれぞれに拡大する拡大処理、及び、縮小する縮小処理が可能なサイズ変換機能を有する。本実施形態では、直交する横方向(第1の方向)と縦方向(第2の方向)に画像データを拡大または縮小する例について説明する。
なお、本実施形態では画像データを整数倍に拡大する場合および整数分の1に縮小する場合を例に挙げて説明するが、拡大・縮小するときの倍率は必ずしも整数倍あるいは整数分の1でなくても良く、例えば、640x480の画像を1024x768に拡大することも可能である。
【0025】
回転処理回路131及びサイズ変換回路133は、フレームメモリー115或いは内蔵する作業領域のメモリーのアドレスを指定するレジスターを内蔵しているが、このレジスターの仕様上の制限から、処理できるデータ単位に制限がある。
具体的には、回転処理回路131は、回転処理を行う場合、縦方向(第2の方向)または横方向(第1の方向)のいずれかについて、回転前後の出力画像データが、いずれも当該方向のサイズ(ここでは画素数)が8の整数倍でなければならない。また、サイズ変換回路133は、縦方向(第2の方向)または横方向(第1の方向)のいずれかについて、サイズ変換を行う場合に、変換前後の画像データの当該方向のサイズが8の整数倍であることが要求される。
本実施形態では横方向のサイズ変換に関して制限を有する例を説明する。すなわち、処理対象である入力画像データのサイズは縦方向に関して制限は無いが、回転処理、及び拡大縮小の前後において、横方向のサイズ(画素数)が、いずれも8の倍数となっている必要がある。
なお、本発明は上記の例に限定されず、処理前後の画像データの当該方向のサイズが4の整数倍であることが要求されることもあるし、画素単位ではなくデータ量(ビット単位またはバイト単位)が所定のデータ単位(例えば、8バイト)の整数倍となっていることが要求されることもある。また、第1の方向及び第2の方向は縦と横に限定されない。
【0026】
プロジェクター11は、リモコン(図示略)や操作パネル45の操作により、投射する画像の一部または全部を拡大して、或いは縮小して投射することがあり、この場合には画像処理部113によって拡大または縮小が行われ、サイズ変換後の画像データがフレームメモリー115に展開され、この画像データが表示制御部107により光変調装置駆動部119に出力される。ここで、拡大縮小する画像データのサイズは任意に指定可能であるため、必ずしもサイズ変換回路133の仕様上の制限に適合したサイズとは限らず、横方向の拡大縮小が行えない可能性がある。この問題はソフトウェア処理によりサイズ変換を行ったり、補間演算により処理対象の画像データのサイズをサイズ変換回路133に適したサイズに変換したりする方法が挙げられるが、ソフトウェア処理はサイズ変換回路133のような専用のハードウェアを用いる場合に比べて制御部103の負荷が重く高速化が難しい。また、補間演算を用いると画質の劣化が懸念される。プロジェクター11は、サイズ変換する画像データのサイズ(本実施形態では横方向の画素数)が制限に適合しない場合には、回転処理回路131による回転処理とサイズ変換回路133によるサイズ変換処理とを組み合わせることで、画質を劣化させることなく高速でサイズ変換を行う。
以下、制御部103の制御により回転処理回路131、サイズ変換回路133の機能を利用して画像データの拡大、縮小及び回転を行う動作について説明する。なお、本実施形態では回転処理回路131の回転処理の方向を、時計回りを正、反時計回りを負とする。
【0027】
図2は、サイズ変換処理の一例として、画像データを拡大する場合の処理手順を示す説明図である。図2には、処理対象の画像データとして、縦2画素×横2画素の画像データ201が入力され、この画像データ201を縦2倍、横2倍に拡大する処理の手順を示す。
図2には説明のために作業領域200を図示する。作業領域200は実際には回転処理回路131、サイズ変換回路133が内蔵するメモリーの一部である。作業領域200のサイズは特に制限されず、図2〜図6に示す例では縦2画素×横2画素の処理対象の画像データ201の処理に必要な範囲のみを図示する。従って実際には、縦方向および横方向に、より大きい作業領域200において、縦2画素×横2画素またはその他のサイズの画像データを展開して処理することも勿論可能である。
変換前の画像データ201の横方向のサイズは2画素であり、サイズ変換回路133の制限である8の倍数ではない。このため2に最も近く2より大きい8の倍数、すなわち8画素の作業領域200を図示する。図中に示す作業領域200は、左上が先頭アドレスとなっている。また、作業領域200の空白のマスで示す画素のデータは不定である。以下、図3から図6も同様である。
【0028】
制御部103は、画像処理部113を制御して、以下の手順で画像データ201を拡大する。
まず、制御部103の制御により、サイズ変換回路133によるサイズ変換が実行される。サイズ変換回路133のサイズの制限に適合させるため、制御部103は、サイズ変換回路133が処理する処理対象を、作業領域200において画像データ201に接する不定の画素を含めた、横8画素の拡張処理対象データ210とする。縦方向について制限は無いので、拡張処理対象データ210のサイズは縦2画素×横8画素とされる。
次いで、サイズ変換回路133は、図2(a)に示す拡張処理対象データ210のサイズを、縦方向に2倍にする。この処理により、拡張処理対象データ210は図2(b)に示すように縦4(画素)×横8(画素)となる。
次いで、制御部103の制御により、回転処理回路131が回転処理を実行する。この回転処理に先だって、回転処理回路131が処理対象とするデータは、回転の前後で横方向のサイズが8の倍数となっている必要がある。このため制御部103は、画像データ201の近傍に存在する不定の画素を含めた、縦8×横8の領域(図2(b)に示す作業領域200)を回転処理回路131の処理対象とする。回転処理回路131は、制御部103の制御に従って作業領域200の縦8×横8の画像データを90度回転し、処理後のデータは図2(c)に示す状態となる。
続いて、制御部103は、図2(d)に示すように、回転した画像データについて横方向が8画素となるように拡張処理対象データ210を定め、この拡張処理対象データ210を処理対象として、サイズ変換回路133による拡大処理を実行させる。サイズ変換回路133は、拡張処理対象データ210を縦方向に2倍する処理を実行する。拡大処理後の拡張処理対象データ210は、図2(e)に示すように縦方向に2倍となっている。次に、制御部103は、回転処理回路131の処理対象を、縦8×横8の領域(図2(d)に示す作業領域200)を回転処理回路131の処理対象とする。回転処理回路131は、制御部103の制御に従って作業領域200の縦8×横8の画像データを、最初に行った90度の回転を補償するように−90度回転させ、処理後のデータは図2(f)に示す状態となる。図2(f)に示す画像データ201は、図2(a)の処理前の状態から、縦2倍、横2倍に拡大されている。制御部103は、図2(f)の画像データ201をフレームメモリー115に出力させる。
この図2に示す処理では、90度の回転を組み合わせることで、横方向の拡大処理を縦方向における拡大処理と回転処理で実現しているので、回転処理回路131およびサイズ変換回路133の仕様上の制限を回避している。
【0029】
図3は、サイズ変換処理の一例として、画像データを縮小する場合の処理手順を示す説明図である。図3には、処理対象の画像データとして、縦4画素×横4画素の画像データ201が入力され、この画像データ201を縦1/2倍、横1/2倍に縮小する処理の手順を示す。
【0030】
制御部103は、画像処理部113を制御して、以下の手順で画像データ201を縮小する。まず、図3(a)に示す画像データ201を含み、回転処理回路131及びサイズ変換回路133の制限を満たす最小限の範囲として、縦4×横8の拡張処理対象データ210を設定する。次いで、制御部103の制御により、サイズ変換回路133は、拡張処理対象データ210を縦方向に1/2に縮小する。この処理により、拡張処理対象データ210は図3(b)に示すように縦2画素×横8画素となる。次いで、制御部103は、画像データ201の近傍に存在する不定の画素を含めた縦8×横8の範囲を処理対象とし、制御部103の制御により、回転処理回路131が、90度の回転処理を行い、図3(c)に示す状態となる。ここで、制御部103は、図3(d)に示すように回転後の画像データ201を含む縦4×横8の拡張処理対象データ210を設定する。制御部103の制御により、サイズ変換回路133は、拡張処理対象データ210を縦方向に1/2に縮小し、拡張処理対象データ210は図3(e)に示すように縦2×横8となる。その後、制御部103は画像データ201の近傍に存在する不定の画素を含めた縦8×横8の範囲を回転処理の対象とし、この処理対象のデータを回転処理回路131が90度回転させて、図3(f)に示す状態とする。この図3(f)に示す画像データ201は、図3(a)の処理前の状態から、縦1/2倍、横1/2倍に縮小されている。制御部103は、図3(f)の画像データ201をフレームメモリー115に出力させる。
この図3に示す処理では、90度の回転を組み合わせることで横方向の縮小処理を縦方向の処理で実現しているので、回転処理回路131及びサイズ変換回路133の仕様上の制限を回避している。
【0031】
図4は、サイズ変換処理の一例として、画像データを拡大する場合の処理手順を示す説明図である。図4には、処理対象の画像データとして、縦2画素×横2画素の画像データ201が入力され、この画像データ201を縦2倍、横2倍に拡大し、かつ90度回転させる処理の手順を示す。
【0032】
制御部103は、画像処理部113を制御して、以下の手順で画像データ201を拡大する。
まず、サイズ変換回路133は、図4(a)に示す画像データ201を含み、サイズ変換回路133のサイズ制限を満たす最小サイズの拡張処理対象データ210を設定する。この拡張処理対象データ210は、縦2×横8のサイズである。制御部103の制御により、サイズ変換回路133が拡張処理対象データ210を縦方向に2倍にする処理を行い、拡張処理対象データ210は図4(b)に示すように縦4×横8となる。次いで、制御部103は、画像データ201を下方にシフトさせる。これにより、図4(c)に示すように、画像データ201は、実データが下部に位置するデータとなる。
【0033】
制御部103は、回転処理回路131の制限を満たすように縦8×横8の範囲を処理対象とし、この処理対象を回転処理回路131が図4(d)に示すように画像データ201を90度回転させる。回転処理の前に画像データ201の実データをシフトさせたため、回転後の作業領域200における画像データ201は左に寄った位置にある。
制御部103は、サイズ変換回路133の制限を満たすように、図4(d)に示す拡張処理対象データ210を処理対象とし、サイズ変換回路133が拡張処理対象データ210を縦方向に2倍し、図4(e)に示すように縦4画素×横8画素とする。この状態で、画像データ201は図4(a)の状態から90度回転している。制御部103は、図4(e)の画像データ201をフレームメモリー115に出力させる。
この図4の処理では、横方向の拡大処理を縦方向の処理で実現するために90度回転させているので、逆回転させる必要がなく効率的である。また、回転処理の前に画像データ201をシフトさせているので、図4(e)に示す処理後の画像データ201は先頭アドレス側に寄っている。このため、フレームメモリー115への出力の際、作業領域200の先頭アドレスから出力を行えばよく、作業領域200から画像データ201を抽出する処理を省けるという利点がある。
【0034】
図5は、サイズ変換処理の一例として、画像データを拡大する場合の処理手順を示す説明図である。図5には、処理対象の画像データとして、縦2画素×横2画素の画像データ201が入力され、この画像データ201を縦2倍、横2倍に拡大し、かつ−90度回転させる処理の手順を示す。
【0035】
制御部103は、画像処理部113を制御して、以下の手順で画像データ201を拡大する。
まず、制御部103は、サイズ変換回路133の制限を満たすべく、図5(a)に示すように縦2×横8の拡張処理対象データ210を設定し、サイズ変換回路133は、拡張処理対象データ210のサイズを縦方向に2倍にする。この処理により、拡張処理対象データ210は図5(b)に示すように縦4×横8となる。ここで、制御部103は、画像データ201を図中右側、すなわち横方向のアドレスが下位になるようシフトさせる。これにより、図5(c)に示すように、画像データ201は、作業領域200においてアドレスが下位の側に位置するデータとなる。
【0036】
制御部103は、回転処理回路131の制限を満たすように縦8×横8の範囲を処理対象とし、制御部103の制御により回転処理回路131は、図5(d)に示すように画像データ201を−90度回転させる。回転処理の前に画像データ201をシフトさせたため、回転後の画像データ201は作業領域200の先頭アドレス側に寄った位置にある。
制御部103は、サイズ変換回路133の制限を満たすように、画像データ201に不定のデータを有する画素を加えた縦2×横8の拡張処理対象データ210を設定し、サイズ変換回路133は、拡張処理対象データ210全体を縦方向に2倍し、図5(e)に示すように縦4画素×横8画素とする。この状態で、画像データ201は図5(a)の状態から−90回転しているので、制御部103は、図5(e)の画像データ201をフレームメモリー115に出力させる。
この図5の処理では、横方向の拡大処理を縦方向の処理で実現するために−90度回転させているので、逆回転させる必要がなく効率的である。図4の例とは回転方向が逆であるが、画像データ201を作業領域200内でシフトさせる方向を、回転後に画像データ201の実データが先頭アドレス側になるよう設定することで、無駄のない処理を実現している。
【0037】
図6は、サイズ変換処理の一例として、画像データを拡大する場合の処理手順を示す説明図である。図6には、処理対象の画像データとして、縦2画素×横2画素の画像データ201が入力され、この画像データ201を縦2倍、横2倍に拡大し、かつ180度回転させる処理の手順を示す。
【0038】
制御部103は、画像処理部113を制御して、以下の手順で画像データ201を拡大する。
まず、制御部103は縦2×横8の拡張処理対象データ210を設定し、サイズ変換回路133が、図6(a)に示す拡張処理対象データ210のサイズを、縦方向に2倍にする。この処理により、拡張処理対象データ210は図6(b)に示すように縦4×横8となる。ここで、制御部103は、画像データ201を右下方にシフトさせる。このシフトは、この図6に示す全ての処理後の画像データ201を、作業領域200の先頭アドレス側に位置させるための処理である。これにより、図6(c)に示すように、画像データ201は、実データが右下のアドレス下位に位置するデータとなる。
【0039】
制御部103は、回転処理回路131の制限を満たすように、図6(c)に示す縦8×横8の領域を処理対象とし、回転処理回路131は処理対象の領域を90度回転させる。これにより画像データ201は、図6(d)に示すように左下に寄った位置に移動する。
制御部103は、図6(d)に示すように、画像データ201を含む縦2×横8の拡張処理対象データ210を設定し、サイズ変換回路133の機能は拡張処理対象データ210全体を縦方向に2倍し、図6(e)に示すように縦4画素×横8画素とする。
さらに、制御部103は縦8×横8の領域を処理対象とし、回転処理回路131が処理対象の領域を180度回転させる。回転後の画像データ201は、図6(f)に示すように作業領域200の左上に画像データ201が位置する状態となる。そして、制御部103の制御により、先に画像データ201を90度回転させた処理を補償するため、回転処理回路131が縦8×横8の領域を−90度回転させる。この結果、図6(g)に示すように、画像データ201は図6(a)の状態から180度回転している。制御部103は、図6(g)の画像データ201をフレームメモリー115に出力させる。
この図6の処理では、横方向の拡大処理を縦方向の処理で実現し、このために90度回転した分を−90度の回転で復元している。また、回転処理の前に画像データ201の実データをシフトさせているので、図6(g)に示す処理後の画像データ201では実データが先頭アドレス側に寄っている。このため、フレームメモリー115への出力の際、作業領域200の先頭アドレスから出力を行えばよく、作業領域200から画像データ201を抽出する処理を省けるという利点がある。
【0040】
図2〜図6に示した処理はあくまで一例を示すもので、その具体的なアルゴリズムや詳細な入出力の手順は適宜変更可能である。例えば、図2〜図6に示した処理において、画像データ201をシフトさせて回転する処理は、回転処理回路131により1段階でまとめて行ってもよい。つまり、回転処理を行って、回転後の画像データ201を作業領域200に書き込む前に、回転処理回路が画像データ201をシフトさせてもよい。
【0041】
図7は、プロジェクター11が制御部103の制御によって画像データのサイズを変換する動作を示すフローチャートである。
制御部103は、まず、処理対象の画像データを、回転処理回路131またはサイズ変換回路133によって、フレームメモリー115または表示制御部107から取得させ(ステップS11)、この画像データのサイズ(画素またはデータ量)、実行すべき拡大縮小処理の拡大縮小率、及び、実行すべき回転処理の回転角度を取得する(ステップS12)。処理対象の画像データ、拡大縮小率、及び回転角度は、リモコン(図示略)または操作パネル45の操作によって指示された内容に基づき、制御部103が決定したものである。
【0042】
続いて、制御部103は、処理対象の画像データの横方向のサイズが8の整数倍であるか否かを判別し(ステップS13)、8の整数倍でなければ(ステップS13;No)、ステップS12で取得した拡大縮小率により横方向のサイズ変換を行う必要があるか否かを判別する(ステップS14)。ここで、横方向のサイズ変換が指定されている場合(ステップS14;Yes)、制御部103は、図2〜図6で説明したように、横方向のサイズ変換を縦方向のサイズ変換で代替するための処理を開始する。
すなわち、制御部103は、回転処理が指定されているか否かを判別し(ステップS15)、回転処理が指定されていない場合は(ステップS15;No)、処理中に一時的に画像データを回転する回転方向を、予め設定された方向に決定する(ステップS16)。一方、回転処理が指定されている場合(ステップS15;Yes)、処理中に一時的に画像データを回転する回転方向を、指定された回転方向に合わせて決定する(ステップS17)。
【0043】
その後、制御部103は、ステップS12で取得した拡大縮小率に合わせて縦方向のサイズ変換を実行する(ステップS18)。制御部103は、回転処理に先立って処理対象を回転処理回路131の制限を満たす領域にし、必要に応じて、処理対象の画像データを作業領域200内でシフトさせる処理を行う(ステップS19)。次いで、制御部103は90度または−90度の回転処理を実行して(ステップS20)、ステップS12で取得した横方向の拡大縮小率で、縦方向のサイズ変換処理を実行する(ステップS21)。
その後、制御部103は、処理対象を回転処理回路131の制限を満たす領域を処理対象にして、ステップS12で指定された回転角度となるように、サイズ変換後の画像データを追加で回転させ、或いは逆回転させて(ステップS22)、処理後の画像データをフレームメモリー115に出力する(ステップS23)。
【0044】
また、処理対象の画像データの横方向のサイズが8の整数倍であり、サイズ変換回路133の制限に適合している場合(ステップS13;Yes)、制御部103は、サイズ変換回路133によって、ステップS12で取得した拡大縮小率に合わせて縦方向及び横方向のサイズ変換を実行する(ステップS24)。制御部103は、回転処理が指定されているか否かを判別し(ステップS25)、回転処理が指定されていない場合は(ステップS25;No)、ステップS23に移行して、処理後の画像データをフレームメモリー115に出力する。
一方、回転処理が指定されている場合(ステップS25;Yes)、制御部103は、回転処理回路131の制限を満たすように処理対象の領域を設定して(ステップS26)、回転処理回路131により回転処理を実行する(ステップS27)。ステップS26では、回転後の画像データが作業領域において先頭アドレス側に位置するように、必要に応じて画像データをシフトさせる。その後、制御部103は、ステップS23に移行して処理後の画像データを出力する。
また、処理対象の画像データについて横方向の拡大縮小を行わない場合(ステップS14;No)、制御部103は、ステップS24に移行して上記の処理を行う。
【0045】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクター11によれば、入力画像データの縦方向および横方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、縦方向または横方向のいずれか(本実施形態では縦方向)について、サイズ変換する画像データが当該方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換回路133と、入力画像データを90度単位で回転させる回転処理回路131とを備え、制御部103の制御により、処理対象の画像データをサイズ変換回路133によって制限された方向(本実施形態では横方向)でサイズ変換を行う際、処理対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、処理対象の画像データを回転処理回路131により回転させ、回転後の前記処理対象のデータの縦方向におけるサイズを拡張することで所定データ単位の整数倍とし、サイズ変換回路133により横方向のサイズ変換を実行させるので、処理対象の画像データを回転させることで、仕様上の制限を受けない方向のサイズ変換のみを行うことにより縦方向及び横方向の両方のサイズ変換を行うことができる。これにより、サイズ変換機能を有するハードウェアの制限の範囲内で、画像データの劣化を招くことなく、高い自由度で画像データのサイズ変換を行うことができる。
【0046】
また、回転処理回路131及びサイズ変換回路133は、メモリーの作業領域200に展開された画像データ201を処理するものであり、制御部103は、作業領域200において画像データ201に隣接する不定データを含めた範囲を新たに拡張処理対象データ210とすることで、横方向におけるサイズを拡張するので、作業領域200に展開された画像データ201を改変することなく処理対象のデータのサイズを容易に拡張できる。
【0047】
また、制御部103は、サイズ変換回路133により画像データ201または拡張処理対象データ210のサイズ変換をさせた後、回転処理回路131により逆回転させるので、処理対象の画像データ201を入力時と同じ向きの画像として出力できる。また、逆回転させることによって回転処理の影響を除去するので、処理対象の画像データの制限を有する横方向のサイズ変換処理を、回転処理を組み合わせることで縦方向のサイズ変換処理で実現することができる。
また、制御部103は、回転処理回路131及びサイズ変換回路133による処理後の画像データ201が作業領域200の先頭アドレス側に位置するように、回転処理回路131によって回転させる前に作業領域200において画像データ201を移動させるので、処理後の画像データをフレームメモリー115に出力する際の先頭のアドレスがずれないように処理できる。
【0048】
さらに、処理対象の画像データが、サイズ変換回路133の制限に適合するサイズのデータである場合、及び、サイズ変換回路133において制限された方向(ここでは、横方向)のサイズ変換処理を行う場合は、指定された拡大縮小率に従って拡大縮小の処理を行うので、不要な回転処理を行うことがなく、処理効率の低下を防止できる。
【0049】
なお、上述した各実施形態は本発明を適用した具体的態様の例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、上記実施形態とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態においては、図2〜図6に正方形の画像データ201を拡大、縮小、回転する例をあげて説明したが、縦方向のサイズ(画素数)と横方向のサイズ(画素数)が異なる画像データであっても勿論処理可能であるし、より大きいサイズの画像データの処理に適用することも可能である。
また、上記実施形態では、回転処理回路131及びサイズ変換回路133が、入出力するデータの横方向のサイズに関する制限を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、縦方向のサイズに関する制限を有する場合にも、本発明を適用できる。さらに、上述したように第1の方向及び第2の方向は略直交する方向であって、縦と横に限定されない。第1の方向及び第2の方向のいずれか一方についてサイズの制限がある場合は、他方の拡大縮小処理を行うように本発明を適用できる。
【0050】
また、上記実施形態では、光源が発した光を変調する光変調装置として、RGBの各色に対応した3枚の透過型または反射型の液晶パネル32を用いた構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。ここで、光変調装置として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
【0051】
また、図1に示したプロジェクター11の各機能部は、プロジェクター11の機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクター11及び表示システム10の他の各部の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
3…投射部(表示手段)、10…表示システム、11…プロジェクター(表示装置)、13…PC、103…制御部(制御手段)、105…記憶部、113…画像処理部、115…フレームメモリー、131…回転処理回路(回転処理手段)、133…サイズ変換回路(サイズ変換手段)、200…作業領域、201…画像データ、210…拡張処理対象データ、SC…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データの第1の方向および第2の方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、前記入力画像データが前記第1の方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換手段と、
前記入力画像データを回転させる回転処理手段と、
処理対象の画像データを前記第1の方向でサイズ変換を行う際、前記処理対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、前記処理対象の画像データを前記回転処理手段により回転させ、回転後の前記処理対象のデータの前記第1の方向におけるサイズを拡張することで前記所定データ単位の整数倍とし、前記サイズ変換手段により前記第2の方向のサイズ変換を実行させる制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記サイズ変換手段及び前記回転処理手段は、メモリーの作業領域に展開された前記処理対象のデータを処理するものであり、
前記制御手段は、前記作業領域において前記処理対象の画像データに隣接する不定データを含めた範囲を新たに処理対象の画像データとすることで、前記第1の方向におけるサイズを拡張することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記サイズ変換手段により前記処理対象の画像データのサイズ変換をさせた後、前記回転処理手段により逆方向に回転させることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記サイズ変換手段及び前記回転処理手段による処理後の画像データが前記作業領域の先頭アドレス側に位置するように、前記回転処理手段によって前記処理対象の画像データを回転させる前に前記作業領域内で前記処理対象の画像データを移動させることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記サイズ変換手段は、サイズ変換前後の画像データの前記第1の方向の画素数が所定画素数の整数倍となっていること、或いは、サイズ変換前後の前記第1の方向のデータが所定バイト数の整数倍となっていることが制限されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力画像データの第1の方向および第2の方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、前記入力画像データが前記第1の方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換手段と、前記入力画像データを回転させる回転処理手段とを用い、
処理対象の画像データを前記第1の方向でサイズ変換を行う際、前記処理対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、回転後の前記処理対象のデータの前記第1の方向におけるサイズを拡張することで前記所定データ単位の整数倍とし、前記サイズ変換手段により前記第2の方向のサイズ変換を実行させること、
を特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
入力画像データの第1の方向および第2の方向のサイズを変換して出力するサイズ変換機能を有し、縦方向または横方向のいずれかについて、サイズ変換する画像データが当該方向において所定データ単位の整数倍となっていることが制限されたサイズ変換手段と、
前記表示対象の画像データを回転させる回転処理手段と、
前記表示対象の画像データを前記サイズ変換手段によって制限された方向でサイズ変換を行う際、前記表示対象の画像データのサイズが制限に適合しない場合には、回転後の前記処理対象のデータの前記第1の方向におけるサイズを拡張することで前記所定データ単位の整数倍とし、前記サイズ変換手段により前記第2の方向のサイズ変換を実行させる制御手段と、
前記サイズ変換手段及び前記回転処理手段により処理された画像データを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198259(P2012−198259A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60475(P2011−60475)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】