説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび撮像装置

【課題】ノイズが低減された画像による狭帯域画像観察を可能とする。
【解決手段】画像処理装置100は、青の狭帯域光により異なるタイミングで撮像された狭帯域画像b1と狭帯域画像b2とから、いずれか一方を基準画像として狭帯域画像b1と狭帯域画像b2との位置合わせをおこなう。画像処理装置100は、位置合わせをした狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を加算平均処理した合成画像を生成する。画像処理装置100は、生成した合成画像と、青の狭帯域光より波長が長い緑の狭帯域光により撮像された狭帯域画像gとから出力画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光特性の異なる複数の画像から出力画像を生成する画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、照明光を体腔内の組織に対して照射し、体腔内の内視鏡画像を得る内視鏡システムが広く使用されている。面順次式として知られている内視鏡システムでは、回転フィルタに白色光の光源を透過させることで、R1、G1、B1の3色の照明光を体腔内の組織に対して順次照射する。そして、R1、G1、B1の3色の照明光に対応する反射光画像を取得して、各反射光画像から通常光観察をおこなうためのカラー画像を生成する。
【0003】
また、回転フィルタを切り替えることで、体腔内の組織に対して前述の3色の照明光とは分光特性が異なる2種類の狭帯域光G2とB2を順次照射可能とした内視鏡システムの提案がある。この内視鏡システムでは、狭帯域光G2とB2に対応する反射光画像(狭帯域画像)から作成した画像を用いて狭帯域光観察(狭帯域画像観察)をおこなうことができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−68113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように狭帯域光を用いて狭帯域画像を取得する内視鏡システムにおいては、通常光観察に使用される照明光と比べて狭帯域光の光量を十分にとることができない場合がある。たとえば、上記狭帯域光B2は、上記狭帯域光G2と比較して光量が少ない場合がある。光量が十分でない照明光は、得られる画像のノイズを増加させ、良好な狭帯域画像観察の障害となる。また、たとえ照明光の光量が適当であったとしても、よりノイズが少ない画像を取得することができれば、鮮明な画像から小さな病変をより観察しやすくすることができる。
【0006】
そこで、本発明は、複数の画像を基に高画質な出力画像が得られる画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の分光特性を有する照明光により異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなう位置合わせ処理部と、前記位置合わせをされた前記複数の第1の分光画像の合成画像を生成する合成画像生成部と、前記合成画像と、第2の分光特性を有する照明光により撮像された第2の分光画像とから出力画像を生成する出力画像生成部と、を備えることを特徴とする画像処理装置が提供される。
【0008】
このように構成することで、異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像は、位置合わせにより、位置合わせされた画像、たとえば、撮像されたタイミングを揃えた画像として取り扱うことができる。そして、位置合わせされた複数の第1の分光画像の合成により、異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像に基づく合成画像を得ることができる。そして、合成画像と第2の分光画像とから出力画像を生成することで、異なる分光特性を有する画像から生成する出力画像を高画質とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
上記の画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび撮像装置によれば、複数の画像を基に高画質な出力画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態の撮像装置の機能構成を示す図である。
【図2】実施の形態の回転フィルタの概観を示す図である。
【図3】実施の形態の光源装置からの出射光の分光特性を示す図である。
【図4】実施の形態の体腔内組織の狭帯域光吸収体の分布構造を示す図である。
【図5】実施の形態の狭帯域画像のイメージ図である。
【図6】実施の形態の画像処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図7】実施の形態の画像処理装置における画像処理のメインフローチャートである。
【図8】画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【図9】実施の形態の動きベクトル演算部の機能ブロック図である。
【図10】実施の形態の基準画像選択処理のフローチャートである。
【図11】実施の形態の動きベクトル測定ブロックの設定を示す図である。
【図12】実施の形態の動きベクトルを示す図である。
【図13】実施の形態の画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【図14】実施の形態の出力画像のイメージを示す図である。
【図15】第二の実施形態の基準画像選択処理のフローチャートである。
【図16】第二の実施形態の動きベクトルを示す図である。
【図17】第二の実施形態の画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【図18】第三の実施形態の動きベクトルを示す図である。
【図19】第三の実施形態の画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態の撮像装置の機能構成を示す図である。撮像装置(内視鏡システム)10は、画像処理装置100と、光源装置200と、挿入部300と、画像表示装置400とを備える。撮像装置10は、光源装置200が発生させる照明光を体腔内の組織に対して照射し、挿入部300から体腔内の入力画像(内視鏡入力画像)を得て、画像処理装置100で画像処理した出力画像(内視鏡出力画像)を画像表示装置400に表示する。
【0012】
光源装置200は、白色光源210と、回転フィルタ220と、フィルタ制御部230と、モータ240とを備える。白色光源210は、白色光を発生する光源(たとえば、キセノン照明)である。回転フィルタ220は、第1フィルタ221と第2フィルタ222を備え、モータ240の駆動力で回転することにより、白色光源210からの出射光が透過するフィルタを切替可能にしている。フィルタ制御部230は、モータ240を駆動制御するとともに、フィルタ制御情報(白色光源210からの出射光が透過するフィルタを特定可能な情報)を出力する。なお、光源装置200は、通常光観察のためのR、G、Bの3色フィルタ、赤外光観察のための赤外光フィルタ、蛍光観察のための蛍光用フィルタを備えることもできる。
【0013】
挿入部300は、体腔への挿入を可能にするため細長くかつ湾曲可能に形成された管状の装置であり、図示しない操作部、接続部とともにビデオスコープを構成する。挿入部300は、ライトガイドファイバ310と、レンズ320と、対物レンズ330と、撮像素子340とを備える。ライトガイドファイバ310は、光源装置200からの出射光を体腔内に導く。レンズ320は、ライトガイドファイバ310により挿入部300の先端部まで導かれた出射光を拡散させて体腔内組織500に照射する。対物レンズ330は、観察対象部位となる体腔内組織500から戻る反射光を撮像素子340に集光する。撮像素子340は、反射光を検出する。なお、撮像素子340にモノクロの撮像素子を用いることで、照明光ごとの画像を合成して高解像度の出力画像を得ることができる。
【0014】
画像処理装置100は、制御部110と、画像記憶部120と、動きベクトル演算部130と、位置合わせ処理部140と、合成画像生成部150と、出力画像生成部160とを備える。画像処理装置100は、撮像素子340から出力された画像情報に基づいて画像表示装置400に表示させるための出力画像を生成する。
【0015】
制御部110は、フィルタ制御部230からフィルタ制御情報を入力し、フィルタ制御情報に基づいて画像記憶部120、動きベクトル演算部130、位置合わせ処理部140、合成画像生成部150、出力画像生成部160を統括的に制御する。
【0016】
画像記憶部120は、撮像素子340から出力される画像情報と画像情報に対応するフィルタ制御情報を記憶する。画像記憶部120は、予め設定したフィルタ制御情報に対応する記憶領域に画像情報を記憶させる。なお、画像記憶部120は、少なくとも出力画像の生成に必要な画像情報として、撮像素子340により連続して撮像された少なくとも3枚の画像に対応する画像情報(青の狭帯域画像B1、緑の狭帯域画像G、青の狭帯域画像B2に相当する画像に対応する画像情報)を記憶する。また、記憶する画像情報に対応する撮像タイミングの情報を含めて記憶するようにしてもよい。
【0017】
動きベクトル演算部130は、画像記憶部120に記憶された複数の画像を位置合わせするための動きベクトルを算出する。位置合わせ処理部140は、動きベクトル演算部130により算出された動きベクトルに基づいて画像の位置合わせをおこなう。
【0018】
合成画像生成部150は、位置合わせをした複数の画像の合成画像を生成する。合成画像生成部150は、画像に含まれるノイズの除去を目的として、たとえば、複数画像を加算平均して合成画像を生成する。また、差分信号をノイズとして検出して除去することもできる。このように、撮像タイミングの異なる複数の画像情報に基づく画像の合成には、既知の方法を適宜用いることができる。
【0019】
出力画像生成部160は、合成画像生成部150が生成した合成画像と、画像記憶部120が記憶する画像とを用いて、画像表示装置400に表示させるための出力画像を生成する。
【0020】
なお、光源装置200は、白色光源210からの出射光が透過するフィルタの選択により出射光の特性を切り替えたが、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)照明を用いるなどして予め所望の特性に対応する光源を備えるようにしてもよい。その場合、制御部110は、フィルタ制御部230からのフィルタ制御情報の入力に代えて、光源の種類を特定可能な光源制御情報を入力とすることができる。
【0021】
次に、光源装置200が備える回転フィルタ220について詳細に説明する。図2は、実施の形態の回転フィルタの概観を示す図である。図3は、実施の形態の光源装置からの出射光の分光特性を示す図である。
【0022】
回転フィルタ220は、円盤上のプレートに3つの窓を備え、各々の窓は、同一または、略同一の分光特性を有する第1フィルタ221a、221bと、第1フィルタ221a、221bとは異なる分光特性を有する第2フィルタ222を有する。第1フィルタ221a、221bは、青の狭帯域光(たとえば、波長390nmから445nm)を出射するためのフィルタであり、分光特性224を有する。第2フィルタ222は、青の狭帯域光よりも波長の長い緑の狭帯域光(たとえば、波長530nmから550nm)を出射するためのフィルタであり、分光特性225を有する。第1フィルタ221a、221bと、第2フィルタ222とは、同じような分光透過率であるが、たとえば、キセノン照明を用いた白色光源210の周波数成分ごとの分光放射照度223が一定にならないため、青の狭帯域光226は、緑の狭帯域光227と比較して光量が少ない。
【0023】
また、回転フィルタ220は、モータ240に駆動されて、1枚の出力画像の生成に要する3枚の入力画像の撮像周期時間で1回転する。したがって、3枚の入力画像の撮像周期時間の間に光路中に位置するフィルタが周期的に切り替わるため、出射光は、第1フィルタ221aを透過した出射光、第1フィルタ221bを透過した出射光、第2フィルタ222を透過した出射光と周期的に切り替わる。そして、3枚の入力画像の撮像周期時間の間に、撮像素子340により、第1フィルタ221aを透過した出射光の反射光による画像、第1フィルタ221bを透過した出射光の反射光による画像、第2フィルタ222を透過した出射光の反射光による画像が撮像される。このようにして、撮像された画像は、画像情報として画像記憶部120に記憶される。
【0024】
次に、狭帯域画像(狭帯域光により撮像された画像)について、詳細に説明する。図4は、実施の形態の体腔内組織の狭帯域光吸収体の分布構造を示す図である。図5は、実施の形態の狭帯域画像のイメージ図である。
【0025】
体腔内組織500は、たとえば、異なった狭帯域光吸収体の分布構造を深さ方向に持つ場合が多い。体腔内組織500は、粘膜表面501から深さ方向に、粘膜表層部502、粘膜深部503の構造を持つ。粘膜表層部502付近には主に毛細血管510が多く分布し、また粘膜表層部502より深い粘膜深部503中層には、毛細血管510のほかに毛細血管510より太い深部血管520が分布し、さらに深い粘膜深部503深層には、さらに太い深部血管530が分布する。
【0026】
一方、体腔内組織500に対する照射光の深さ方向の深達度は照射光の波長に依存している。青の狭帯域光226のように波長が短い光の場合、照射光は、体腔内組織500での光の吸収特性および散乱特性により粘膜表面501付近までしか深達せず、粘膜表面501付近で吸収・散乱され、表面から出た反射光が観測される。また、青の狭帯域光226より波長が長い緑の狭帯域光227の場合、照射光は、青の狭帯域光226が深達する粘膜表面501付近よりさらに深い範囲まで深達し、深い範囲で吸収・散乱され、再度粘膜表面501から出た反射光が観測される。
【0027】
したがって、第1フィルタ221a、221bが光路中に位置する場合には、粘膜表層部502付近での組織情報を有する狭帯域画像601、602が撮像され、画像記憶部120に記憶される。そして、第2フィルタ222が光路中に位置する場合には、より深い粘膜深部503での組織情報を有する狭帯域画像603が撮像され、画像記憶部120に記憶される。また、狭帯域画像601と狭帯域画像602とは、異なるタイミングで撮像されるため、撮像タイミングの異なる画像となる。また、狭帯域画像601と狭帯域画像602とは、被写体である体腔内組織500や挿入部300が動いている場合には、撮像位置がずれた画像となる。
【0028】
次に、本実施の形態の画像処理装置100のハードウェア構成例を説明する。図6は、実施の形態の画像処理装置のハードウェア構成例を示す図である。画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス107を介してRAM(Random Access Memory)102、ハードディスクドライブ(HDD)103、通信インタフェース104、グラフィック処理装置105、および入出力インタフェース106が接続されている。
【0029】
RAM102には、本実施の形態に係る発明の実施に必要な各種プログラムが一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。HDD103には、本実施の形態に係る発明の実施に必要な各種プログラムが恒常的に格納される。
【0030】
通信インタフェース104は、ネットワーク113に接続されている。通信インタフェース104は、ネットワーク113を介して、他の外部装置との間でデータの送受信をおこなう。
【0031】
グラフィック処理装置105には、画像表示装置400が接続されている。グラフィック処理装置105は、CPU101からの命令に従って、画像を画像表示装置400の画面に表示させる。画像表示装置400は、たとえば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどである。
【0032】
入出力インタフェース106には、光源装置200と、挿入部300と、キーボード111と、マウス112とが接続されている。入出力インタフェース106は、光源装置200から入力されるフィルタ制御情報と、挿入部300から入力される画像情報とをバス107を介してCPU101に送信する。また、入出力インタフェース106は、キーボード111やマウス112から送られてくる信号を、バス107を介してCPU101に送信する。
【0033】
以上のようなハードウェア構成によって、本実施の形態の処理機能を実現することができる。
次に、実施の形態の画像処理装置100における画像処理の流れについて説明する。図7は、実施の形態の画像処理装置における画像処理のメインフローチャートである。図8は、画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【0034】
画像処理装置100は、挿入部300から入力される画像情報を画像処理して、画像表示装置400に出力する。画像処理は、画像処理装置100の制御部110が画像記憶部120、動きベクトル演算部130、位置合わせ処理部140、合成画像生成部150、出力画像生成部160を統括的に制御しておこなう。画像処理は、多くの場合、医師による内視鏡での体腔内の観察(撮像)と同時に実行されるが、たとえば、カプセル内視鏡での体腔内の観察の場合のように、撮像した画像群を画像記録装置から入力して、体腔内の観察と異なるタイミングで実行される場合もある。
【0035】
画像処理の実行に先立ち、あるいは画像処理と並行して、まず、画像処理装置100の制御部110は、画像処理の対象となる撮像素子340で撮像された画像を入力する。そして、制御部110は、フィルタ制御部230から入力したフィルタ制御情報に基づいて、取り込んだ画像が、第1フィルタ221a、221b、または第2フィルタ222のいずれが光路中にあったタイミングに撮像された画像であるかを判断する。制御部110は、取り込んだ画像情報を予め設定したフィルタ制御情報に対応する画像記憶部120に記憶させる。たとえば、第1フィルタ221aが光路中にあるタイミングT1で撮像された狭帯域画像b1は、第1フィルタ221aに対応する記憶領域に記憶される。同様にして、第1フィルタ221bが光路中にあるタイミングT2で撮像された狭帯域画像b2は、第1フィルタ221bに対応する記憶領域に、第2フィルタ222が光路中にあるタイミングT3で撮像された狭帯域画像gは、第2フィルタ222に対応する記憶領域に記憶される。そして、次のタイミングT4では、また、第1フィルタ221bが光路中にあり、撮像された狭帯域画像b1は、第1フィルタ221aに対応する記憶領域に記憶される。
【0036】
なお、出力画像P1は、タイミングT1、T2、T3の入力画像(狭帯域画像b1、b2、g)に基づいて生成される。以下、同様にして、出力画像P2は、タイミングT2、T3、T4の入力画像(狭帯域画像b2、g、b1)に基づいて生成される。出力画像P3は、タイミングT3、T4、T5の入力画像(狭帯域画像g、b1、b2)に基づいて生成される。出力画像P4は、タイミングT4、T5、T6の入力画像(狭帯域画像b1、b2、g)に基づいて生成される。
【0037】
このようにして、出力画像の生成に必要な画像情報が画像記憶部120に記憶された状態(少なくとも、出力画像の生成に必要な画像情報を取得可能な状態)で画像処理が実行される。
【0038】
画像処理について、図7のメインフローチャートを用いて説明する。
[ステップS11]動きベクトル演算部130は、画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を取り込む。
【0039】
[ステップS12]動きベクトル演算部130は、取り込んだ狭帯域画像b1と狭帯域画像b2のうち、一方を位置合わせの基準とする基準画像、他方を基準画像に対して位置合わせする対象画像として設定する。詳細については、後述する。
【0040】
[ステップS13]動きベクトル演算部130は、基準画像133上に複数の動きベクトル測定ブロック134を設定する(図11で説明する)。
[ステップS14]動きベクトル演算部130は、基準画像133上に設定した動きベクトル測定ブロック134と対象画像との相関関係を評価して、動きベクトルを算出する。
【0041】
[ステップS15]位置合わせ処理部140は、画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を再度取り込み、動きベクトル演算部130から出力される動きベクトル(動きベクトル情報)を取り込む。なお、位置合わせ処理部140は、動きベクトル演算部130が狭帯域画像b1と狭帯域画像b2に設定した基準画像および対象画像の情報を併せて取り込むが、あらためて設定するようにしてもよい。
【0042】
[ステップS16]位置合わせ処理部140は、動きベクトル情報を用いて対象画像を基準画像に位置合わせする。
[ステップS17]合成画像生成部150は、位置合わせ処理部140が位置合わせをした狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を合成する処理をおこなう。ここでは、合成処理として、加算平均処理をおこなう場合について説明する。
【0043】
狭帯域画像b1の座標(x、y)での信号値をS1(x、y)、狭帯域画像b2の座標(x、y)での信号値をS2(x、y)とすると、加算平均処理後の画像における座標(x、y)での信号値S(x、y)は、すべての座標に対して(1)式で算出される。
S(x、y)=(S1(x、y)+S2(x、y))/2・・・・・・・・・・・(1)
合成画像生成部150は、位置合わせをした狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を入力として、算出した合成画像を出力する。このようにして得た合成画像は、狭帯域画像b1、b2と比較して、ランダムノイズを減少させることができる。
【0044】
[ステップS18]出力画像生成部160は、合成画像生成部150から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2の合成画像の画像情報を、画像記憶部120から狭帯域画像gの画像情報を取り込む。
【0045】
[ステップS19]出力画像生成部160は、取り込んだ画像情報から1フレームの出力画像を生成する。ここでは、たとえば、R(赤)チャネル、G(緑)チャネル、B(青)チャネルの3チャネルのうち、狭帯域画像gの画像情報を出力画像のRチャネルへ、合成画像の画像情報を出力画像のGチャネルとBチャネルとへ取り込む。そして、出力画像生成部160は、3枚の狭帯域画像(狭帯域画像b1と狭帯域画像b2から生成した2枚の合成画像と、1枚の狭帯域画像g)から1フレームの疑似カラー画像604(図14で説明する)を生成する。この疑似カラー画像604は、粘膜表層部502および粘膜深部503の組織情報を持つ画像である。さらに、出力画像生成部160は、疑似カラー画像604に対して任意のガンマ変換、エッジ強調、拡大・縮小処理等の後処理をおこない、画像表示装置400に対して出力画像(出力画像情報)を出力する。
【0046】
[ステップS20]制御部110は、狭帯域画像の観察が終了したと判断すれば、画像処理を終了し、狭帯域画像の観察が継続していると判断すれば、ステップS11にすすむ。なお、狭帯域画像の観察終了の判断は、挿入部300から入力される画像情報や、フィルタ制御部230から入力されるフィルタ制御情報のほか、図示しない操作部からの操作情報に基づいて判断することができる。
【0047】
なお、出力画像の出力先として、画像表示装置400に限らず、画像記録装置や画像サーバ、解析用コンピュータなどの機器に設定してもよい。
次に、動きベクトル演算部130の機能および動きベクトル演算部130がおこなう処理について詳細に説明する。図9は、実施の形態の動きベクトル演算部の機能ブロック図である。図10は、実施の形態の基準画像選択処理のフローチャートである。図11は、実施の形態の動きベクトル測定ブロックの設定を示す図である。
【0048】
動きベクトル演算部130は、狭帯域画像b1と狭帯域画像b2とフィルタ制御情報を入力して、動きベクトル情報を出力する。動きベクトル演算部130は、動きベクトル測定ブロック設定部131と動きベクトル算出部132を備える。動きベクトル測定ブロック設定部131は、図7のステップS11の処理で画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2とフィルタ制御情報を取り込み、ステップS12の処理で取り込んだ狭帯域画像b1と狭帯域画像b2のうち、一方を基準画像、他方を対象画像として設定する。
【0049】
ここで、実施の形態の基準画像の設定について、図10の基準画像選択処理のフローチャートを用いて説明する。基準画像選択処理は、動きベクトル測定ブロック設定部131に狭帯域画像b1と狭帯域画像b2が入力されることで実行される。
【0050】
[ステップS121]動きベクトル測定ブロック設定部131は、フィルタ制御情報からフィルタの制御タイミングを取得する。フィルタの制御タイミングは、フィルタの制御タイミング3つで1周期のため、動きベクトル測定ブロック設定部131は、フィルタの制御タイミングを特定する情報を3で除したときの余により狭帯域画像b1と狭帯域画像b2のいずれを基準画像とするかを決定することができる。ここでは、余が「0」のとき(たとえば、後述する図13のタイミングT3)、狭帯域画像b2を基準画像とし(ステップS123)、余が「1」(たとえば、後述する図13のタイミングT1、T4)、または「2」(たとえば、後述する図13のタイミングT2、T5)のとき、狭帯域画像b1を基準画像とする(ステップS122)。
【0051】
このように基準画像を設定することで、狭帯域画像gと合成画像との撮像タイミングの比較において、時間差を小さくすることができ、狭帯域画像gと合成画像との間の位置ずれを小さく抑えることができる。そのため、狭帯域画像gと合成画像とから生成される出力画像を、ボケの少ない、より自然な画像として観察者に提供できる。
【0052】
なお、フィルタの制御タイミングの入力に代えて、狭帯域画像gの入力として、3つの狭帯域画像b1、b2、gの撮像タイミングの比較において基準画像の設定をすることもできる。その場合、たとえば、狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差と、狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差を比較して狭帯域画像gとの撮像タイミングの時間差の小さい方を基準画像とする。そして、狭帯域画像gとの撮像タイミングの時間差が、同じであれば狭帯域画像b1、b2のうちの任意の画像、または最新の画像を選択することができる。
【0053】
このようにして設定された基準画像133について、図11に示すように、動きベクトル測定ブロック設定部131は、矩形の動きベクトル測定ブロック134を格子状に複数設定する。なお、動きベクトル測定ブロックの数、配置、大きさは、任意に設定できる。また、動きベクトル測定ブロックの数、配置、大きさは、予め設定した数、配置、大きさとしてもよいし、画像情報に基づいて、たとえば、特徴領域の抽出により動的に設定してもよい。
【0054】
次に、動きベクトル演算部130は、基準画像133上に設定した動きベクトル測定ブロック134と同じ大きさのブロックを対象画像に設定し、動きベクトル測定ブロック134に対して相関が高い動きベクトル測定ブロック134の位置を対象画像内で探索する。ブロックマッチングで相関の高いブロックを探索する方法としては、たとえば、二乗誤差SSD(Sum of Squared Difference)を利用する。動きベクトル演算部130は、基準画像におけるブロック領域をI、対象画像におけるブロック領域をI’としたときの、Iと相関が高いI’の位置を求める。各ブロック領域での画素位置をp∈Iおよびq∈I’として、各画素の画素レベルをLp、Lqとすると、二乗誤差SSDは、(2)式で定義され、SSD(I、I’)が小さいほど相関が高いと評価する。なお、ここでp、qは、2次元の値を持つ量で、I、I’は、2次元の領域、p∈Iは、座標pが領域Iに含まれていることを示すものとする。そして、動きベクトル演算部130は、各ブロックの動きベクトルの平均値を算出して、動きベクトルを統合し、統合した動きベクトルを画像間の代表的な動きベクトルとする。そして、動きベクトル演算部130は、統合した動きベクトルを動きベクトル情報として出力する。
【0055】
【数1】

【0056】
なお、二乗誤差SSDに代えて、(3)式で定義される誤差の絶対値SAD(Sum of Absolute Difference)を用いることもできる。
【0057】
【数2】

【0058】
なお、ブロックマッチング法を用いて、動きベクトルを算出する手法について説明したが、既知の手法を適宜使用してもよい。
次に、位置合わせ処理部140がおこなう処理について説明する。図12は、実施の形態の動きベクトルを示す図である。
【0059】
位置合わせ処理部140は、画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を再度取り込み、動きベクトル演算部130から出力される動きベクトル(動きベクトル情報)612を取り込む。そして、位置合わせ処理部140は、動きベクトル612を用いて対象画像611を基準画像610に位置合わせし、基準画像610と位置合わせされた対象画像611とを合成画像生成部150に出力する。基準画像610と対象画像611との位置合わせは、たとえば、対象画像611の読出しアドレスを動きベクトル612の分だけシフトすることでおこなわれる。
【0060】
なお、動きベクトル612を1つの動きベクトルで代表する例について説明したが、これに限らず複数の動きベクトルを用いてもよい。また、位置合わせ処理部140は、対象画像の回転、変形、拡大や縮小をして位置合わせをするようにしてもよい。
【0061】
次に、位置合わせ処理部140が位置合わせをした狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を合成する処理について具体的に説明する。図13は、実施の形態の画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【0062】
出力画像P1の合成タイミングでは、タイミングT1で撮像された狭帯域画像b1は、対象画像に設定され、タイミングT2で撮像された狭帯域画像b2は、基準画像に設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT2の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。このとき、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとは、タイミングが1フレーム周期だけしかずれていない。
【0063】
そして、出力画像P2の合成タイミングでは、タイミングT2で撮像された狭帯域画像b2は、対象画像に設定され、タイミングT4で撮像された狭帯域画像b1は、基準画像に設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT4の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。このとき、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとは、タイミングが1フレーム周期だけしかずれていない。
【0064】
そして、出力画像P3の合成タイミングでは、タイミングT5で撮像された狭帯域画像b2は、対象画像に設定され、タイミングT4で撮像された狭帯域画像b1は、基準画像に設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT4の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。このとき、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとは、タイミングが1フレーム周期だけしかずれていない。
【0065】
そして、出力画像P4の合成タイミングでも同様に、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとは、タイミングが1フレーム周期だけしかずれていない。以下、周期的に繰り返される出力画像の合成タイミングでも同様である。
【0066】
このようにして、1枚の狭帯域画像の入力があるたびに、新たな出力画像を生成することが可能となり、出力画像のフレームレートを向上させることができる。また、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとのタイミング差を最小とする基準画像の選択によって、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとの位置ずれが過大となるのを抑えた自然な画像として出力画像を観察者に提供できる。
【0067】
次に、狭帯域画像b3と狭帯域画像gとにより生成される出力画像について説明する。図14は、実施の形態の出力画像のイメージを示す図である。画像表示装置400は、出力画像の入力を受けて、出力画像のイメージである疑似カラー画像604を表示する。疑似カラー画像604は、出力画像生成部160により、3枚の狭帯域画像(狭帯域画像b1と狭帯域画像b2から生成した2枚の合成画像と、1枚の狭帯域画像g)から1フレームの画像として生成される。図7のステップS19の方法で生成された疑似カラー画像604は、粘膜表層部502付近での組織情報と、より深い粘膜深部503での組織情報とが異なる色彩で表示されるので、これらを好適に観察者に提示することができる。
【0068】
次に、第二の実施形態について、図15から図17を用いて説明する。第二の実施形態は、基準画像選択処理と動きベクトルの算出の仕方において、上述した実施の形態と異なる。図15は、第二の実施形態の基準画像選択処理のフローチャートである。
【0069】
ここで、基準画像選択処理は、動きベクトル測定ブロック設定部131に狭帯域画像b1と狭帯域画像b2が入力されることで、動きベクトル演算部130により実行される。
[ステップS121a]動きベクトル測定ブロック設定部131は、取得したフィルタ制御情報から狭帯域画像b1、b2と、狭帯域画像gの撮像タイミングを特定する。そして、動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差と、狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差を比較する。狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差が狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差よりも小さい場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS125aにすすみ、狭帯域画像b2を基準画像に設定して基準画像選択処理を終了する。狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差が狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差よりも小さくない場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS122aにすすむ。
【0070】
[ステップS122a]動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差と、狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差を比較する。狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差が狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差よりも大きい場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS124aにすすみ、狭帯域画像b1を基準画像に設定して基準画像選択処理を終了する。狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差が狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差よりも大きくない場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS123aにすすむ。
【0071】
なお、ステップS121a、S122aでは、たとえば、次のような判定処理がおこなわれてもよい。動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS121aでは、フィルタ制御情報に基づき、撮像された最新の画像が狭帯域画像gであるか否かを判定する。撮像された最新の画像が狭帯域画像gである場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS125aにすすむ。撮像された最新の画像が狭帯域画像gでない場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS122aにすすむ。動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS122aでは、フィルタ制御情報に基づき、撮像された最新の画像が狭帯域画像b2であるか否かを判定する。撮像された最新の画像が狭帯域画像b2である場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS124aにすすむ。撮像された最新の画像が狭帯域画像b2でない(狭帯域画像b1である)場合、動きベクトル測定ブロック設定部131は、ステップS123aにすすむ。
【0072】
[ステップS123a]動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像b1の撮像タイミングと、狭帯域画像b2の撮像タイミングとの間のタイミングに、仮想的な基準画像(位置合わせの基準となる画像)の撮像タイミングがあったと仮定する。そして、動きベクトル測定ブロック設定部131は、仮想画像であるという情報を付して、狭帯域画像b1、b2のいずれか一方を仮の基準画像(動きベクトル算出の基準となる画像)に設定する。そして、動きベクトル測定ブロック設定部131は、基準画像選択処理を終了する。
【0073】
次に、動きベクトル演算部130による動きベクトルの算出を図16を用いて説明する。図16は、第二の実施形態の動きベクトルを示す図である。動きベクトル演算部130は、仮想画像であるという情報が付されている場合には、仮の基準画像620と対象画像621とから動きベクトル623を算出する。ここで、狭帯域画像b1の撮像タイミングと、狭帯域画像b2の撮像タイミングとの中間のタイミング(平均撮像タイミング)で撮像された狭帯域画像が、仮想的な基準画像622であるとする。これにより、仮の基準画像620と仮想的な基準画像622との間の動きベクトル625は、動きベクトル623の反対方向に半分の大きさであるとすることができる。また、対象画像621と仮想的な基準画像622との間の動きベクトル624は、動きベクトル623と同じ方向に半分の大きさであるとすることができる。
【0074】
このようにして、動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像b1の撮像タイミングと、狭帯域画像b2の撮像タイミングとの中間のタイミングに、合成画像を生成するための動きベクトル624、625を設定することができる。そして、位置合わせ処理部140は、画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を再度取り込み、動きベクトル演算部130から出力される動きベクトル624、625を取り込む。そして、位置合わせ処理部140は、動きベクトル625を用いて仮の基準画像620を仮想的な基準画像622に位置合わせし、動きベクトル624を用いて対象画像621を仮想的な基準画像622に位置合わせする。これにより、狭帯域画像b1の撮像タイミングと、狭帯域画像b2の撮像タイミングとの中間のタイミングに、仮の基準画像620と対象画像621を位置合わせした画像を得ることができる。なお、仮の基準画像620と仮想的な基準画像622との位置合わせ、および対象画像621と仮想的な基準画像622との位置合わせは、たとえば、仮の基準画像620の読出しアドレスを動きベクトル625の分だけシフトすることでおこなわれる。また、対象画像621の読出しアドレスを動きベクトル624の分だけシフトすることでおこなわれる。
【0075】
なお、仮想画像であるという情報が付されていない場合には、動きベクトル演算部130は、図12で説明したのと同様にして動きベクトルを算出する。この場合、位置合わせ処理部140は、動きベクトル演算部130により算出された1つの動きベクトルを基に、基準画像に位置合わせをする。
【0076】
次に、位置合わせ処理部140が位置合わせをした狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を合成する処理について具体的に説明する。図17は、第二の実施形態の画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【0077】
出力画像P1の合成タイミングでは、タイミングT1で撮像された狭帯域画像b1は、対象画像に設定され、タイミングT2で撮像された狭帯域画像b2は、基準画像に設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT2の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。
【0078】
そして、出力画像P2の合成タイミングでは、タイミングT2で撮像された狭帯域画像b2と、タイミングT4で撮像された狭帯域画像b1との間のタイミングT3に仮想的な基準画像が設定され、狭帯域画像b1と狭帯域画像b2とがタイミングT3の仮想的な基準画像に位置合わせされる。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT3の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。
【0079】
そして、出力画像P3の合成タイミングでは、タイミングT5で撮像された狭帯域画像b2は、対象画像に設定され、タイミングT4で撮像された狭帯域画像b1は、基準画像に設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT4の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。
【0080】
そして、出力画像P4の合成タイミング以下、周期的に繰り返される出力画像の合成タイミングでも同様である。
このようにして、1枚の狭帯域画像の入力があるたびに、新たな出力画像を生成することが可能となり、出力画像のフレームレートを向上させることができる。また、狭帯域画像b1と狭帯域画像b2との撮像間隔が大きくなる出力画像P2の生成時には、仮想的な撮像タイミングが狭帯域画像b1と狭帯域画像b2の中間のタイミングとなる狭帯域画像b3が生成されるので、過大な位置ずれによる画質劣化を防止できる。また、連続するタイミングでの出力画像間で狭帯域画像b3の仮想的な撮像タイミングは、一定間隔となるため、出力画像を動画として再生した際に自然でなめらかとなる出力画像を観察者に提供できる。
【0081】
次に、第三の実施形態について、図18および図19を用いて説明する。第三の実施形態は、動きベクトルの算出の仕方において、上述した実施の形態と異なる。図18は、第三の実施形態の動きベクトルを示す図である。
【0082】
動きベクトル演算部130は、狭帯域画像gと狭帯域画像b1、b2の撮像タイミングが仮想的に一致するように、常に狭帯域画像b1、b2の撮像タイミングを狭帯域画像gの撮像タイミングに補正する。
【0083】
動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像gと狭帯域画像b1の撮像タイミングの時間差と、狭帯域画像gと狭帯域画像b2の撮像タイミングの時間差が等しくないとき、すなわち、出力画像P1および出力画像P3の出力のための動きベクトルの算出時に、動きベクトルの大きさを2倍にして算出する。たとえば、動きベクトル測定ブロック設定部131は、仮の基準画像631、対象画像632から算出した動きベクトル633の大きさを2倍にして、動きベクトル634を得る。このようにして、動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像gのタイミングに、合成画像を生成するための動きベクトル633、634を設定することができる。そして、位置合わせ処理部140は、画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を再度取り込み、動きベクトル演算部130から出力される動きベクトル633、634を取り込む。そして、位置合わせ処理部140は、動きベクトル633を用いて仮の基準画像631を仮想的な基準画像630に位置合わせし、動きベクトル634を用いて対象画像632を仮想的な基準画像630に位置合わせする。なお、仮の基準画像631と仮想的な基準画像630との位置合わせ、および対象画像632と仮想的な基準画像630との位置合わせは、たとえば、仮の基準画像631の読出しアドレスを動きベクトル633の分だけシフトすることでおこなわれる。また、対象画像632の読出しアドレスを動きベクトル634の分だけシフトすることでおこなわれる。これにより、仮想の基準画像630は、狭帯域画像gの撮像タイミングに一致することが期待できる(図18(A))。また、動きベクトル測定ブロック設定部131は、仮の基準画像641、対象画像642から算出した動きベクトル643の大きさを2倍にして、動きベクトル644を得る。このようにして、動きベクトル測定ブロック設定部131は、狭帯域画像gのタイミングに、合成画像を生成するための動きベクトル643、644を設定することができる。そして、位置合わせ処理部140は、画像記憶部120から狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を再度取り込み、動きベクトル演算部130から出力される動きベクトル643、644を取り込む。そして、位置合わせ処理部140は、動きベクトル643を用いて仮の基準画像641を仮想的な基準画像640に位置合わせし、動きベクトル644を用いて対象画像642を仮想的な基準画像640に位置合わせする。なお、仮の基準画像641と仮想的な基準画像640との位置合わせ、および対象画像642と仮想的な基準画像640との位置合わせは、たとえば、仮の基準画像641の読出しアドレスを動きベクトル643の分だけシフトすることでおこなわれる。また、対象画像642の読出しアドレスを動きベクトル644の分だけシフトすることでおこなわれる。これにより、仮想の基準画像640は、狭帯域画像gの撮像タイミングに一致することが期待できる。
【0084】
次に、位置合わせ処理部140が位置合わせをした狭帯域画像b1と狭帯域画像b2を合成する処理について具体的に説明する。図19は、第三の実施形態の画像記憶部に記憶されている入力画像と出力画像生成部が出力する出力画像の関係を示す図である。
【0085】
出力画像P1の合成タイミングでは、タイミングT1で撮像された狭帯域画像b1と、タイミングT2で撮像された狭帯域画像b2より後のタイミングT3に仮想的な基準画像が設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT3の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。
【0086】
そして、出力画像P2の合成タイミングでは、タイミングT2で撮像された狭帯域画像b2と、タイミングT4で撮像された狭帯域画像b1との間のタイミングT3に仮想的な基準画像が設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT3の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。
【0087】
そして、出力画像P3の合成タイミングでは、タイミングT4で撮像された狭帯域画像b1と、タイミングT5で撮像された狭帯域画像b2より前のタイミングT3に仮想的な基準画像が設定される。したがって、合成画像生成部150は、タイミングT3の合成画像である狭帯域画像b3を生成する。
【0088】
そして、出力画像P4の合成タイミング以下、周期的に繰り返される出力画像の合成タイミングでも同様である。
このようにして、狭帯域画像b3を生成することで、狭帯域画像b3と狭帯域画像gの撮像タイミングは、一致する。これにより、粘膜表層部502付近での組織情報と、より深い粘膜深部503での組織情報との相互の位置関係の把握を容易にして疑似カラー画像604を観察者に提示することができる。
【0089】
なお、基準画像を1枚の狭帯域画像、対象画像を1枚の狭帯域画像として説明したが、これに限らず、基準画像を1枚の狭帯域画像、対象画像を2枚以上の狭帯域画像としてもよい。また、対象画像の数を可変としてもよく、たとえば、ノイズをどの程度低減させるかという設定に基づいて、ノイズ低減効果を大きくしたいときは、対象画像を多くするようにしてもよい。また、動きベクトルの大きさの評価に基づいて、対象画像を多くするようにしてもよい。たとえば、動きベクトルの大きさが小さいときには、対象画像を多くするようにしてもよい。
【0090】
なお、回転フィルタ220は、モータ240に駆動されて、1枚の出力画像の生成に要する3枚の入力画像の撮像周期時間で1回転するようにしたが、たとえば、モータ240にステッピングモータを用いて駆動位置を制御することにより、光路中に位置するフィルタを選択的に切り替えるようにしてもよい。
【0091】
なお、合成する狭帯域画像を青の狭帯域画像として説明したが、緑、または赤、あるいは、赤外光など、任意の狭帯域画像について適用してもよい。また、観察者の選択操作により合成画像の生成対象となる狭帯域画像を選択できるようにしてもよい。その場合は、選択入力に基づいて、光源装置からの出射光を選択制御することにより実現できる。
【0092】
なお、画像処理装置100は、たとえば、カプセル内視鏡が撮像した画像にも適用できる。カプセル内視鏡は、照明光を体腔内の組織に照射する光源部と、体腔内の反射光を撮像する撮像部と、撮像により得られた画像情報(撮像に用いた光源を特定する光源制御情報を含めてもよい)とを外部に送信する送信部とを備える。そして、カプセル内視鏡の光源部が分光特性の異なる複数の照明光(たとえば、LED照明)を備え、照明光を切り替えることで、撮像部は、分光特性の異なる内視鏡画像を撮像可能である。そして、画像処理装置100は、画像記録装置がカプセル内視鏡から受信した画像群を一旦記録した画像情報を、入力することができる。
【0093】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、画像処理装置および撮像装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)などがある。
【0094】
プログラムを流通させる場合には、たとえば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0095】
プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムにしたがった処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムにしたがった処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムにしたがった処理を実行することもできる。
【0096】
なお、上述の実施の形態は、実施の形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
さらに、上述の実施の形態は、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
10 撮像装置
100 画像処理装置
110 制御部
120 画像記憶部
130 動きベクトル演算部
140 位置合わせ処理部
150 合成画像生成部
160 出力画像生成部
200 光源装置
210 白色光源
220 回転フィルタ
221 第1フィルタ
222 第2フィルタ
230 フィルタ制御部
240 モータ
300 挿入部
310 ライトガイドファイバ
320 レンズ
330 対物レンズ
340 撮像素子
400 画像表示装置
500 体腔内組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分光特性を有する照明光により異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなう位置合わせ処理部と、
前記位置合わせをされた前記複数の第1の分光画像の合成画像を生成する合成画像生成部と、
前記合成画像と、第2の分光特性を有する照明光により撮像された第2の分光画像とから出力画像を生成する出力画像生成部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の分光画像は、白色照明光を第1のフィルタに透過させて生成された照明光により撮像され、
前記第2の分光画像は、前記白色照明光を第2のフィルタに透過させて生成された照明光により撮像されたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の分光特性を有する照明光は、前記第2の分光特性を有する照明光と比較して分光放射照度が小さいことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の分光特性を有する照明光は、おおむね青の分光特性を持ち、
前記第2の分光特性を有する照明光は、おおむね緑の分光特性を持つことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記出力画像は、R、G、Bの3チャネルの信号値を持つカラー画像であり、
Rチャネルは、前記第2の分光画像の画像情報を保持し、
GチャネルおよびBチャネルは、前記合成画像の画像情報を保持することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記合成画像生成部は、前記位置合わせをした前記複数の第1の分光画像を加算平均処理した加算平均画像を前記合成画像として生成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の分光画像と前記第2の分光画像とは、二つの前記第1の分光画像と一つの前記第2の分光画像とを1周期として順次撮像された画像であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記位置合わせ処理部は、
複数の前記第1の分光画像のうち、前記第2の分光画像との撮像タイミングの時間差が最小の画像の位置に、その余の画像の位置を合わせて、前記複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなうことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記位置合わせ処理部は、
前記第2の分光画像の撮像タイミングの画像の位置に、前記複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなうことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記位置合わせ処理部は、
複数の前記第1の分光画像の平均撮像タイミングの仮想画像の位置に、前記複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなうことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記位置合わせ処理部は、
前記複数の第1の分光画像のうちの平均撮像タイミングの画像の位置に、その余の画像の位置を合わせて、前記複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなうことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項12】
二つの前記第1の分光画像と一つの前記第2の分光画像とを1周期として順次撮像された画像として記憶する画像記憶部を備え、
前記位置合わせ処理部は、
1の前記第1の分光画像と前記第2の分光画像の時間差と、他の前記第1の分光画像と前記第2の分光画像の時間差とが異なる場合は、前記第1の分光画像のうち、前記第2の分光画像との撮像タイミングの時間差が最小の画像の位置に、その余の画像の位置を合わせて、二つの前記第1の分光画像の位置合わせをおこない、
1の前記第1の分光画像と前記第2の分光画像の時間差と、他の前記第1の分光画像と前記第2の分光画像の時間差とが等しい場合は、前記第2の分光画像の撮像タイミングの画像の位置に、二つの前記第1の分光画像の位置合わせをおこなうことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項13】
位置合わせ処理部が、第1の分光特性を有する照明光により異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像の位置合わせをおこない、
合成画像生成部が、前記位置合わせをした前記複数の第1の分光画像の合成画像を生成し、
出力画像生成部が、前記合成画像と、第2の分光特性を有する照明光により撮像された第2の分光画像とから出力画像を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
第1の分光特性を有する照明光により異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなう位置合わせ処理部、
前記位置合わせをした前記複数の第1の分光画像の合成画像を生成する合成画像生成部、
前記合成画像と、第2の分光特性を有する照明光により撮像された第2の分光画像とから出力画像を生成する出力画像生成部、
として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
第1の分光特性を有する照明光と、第2の分光特性を有する照明光とを選択的に出射する照明部と、
前記照明光による被写体からの反射光を撮像する撮像部と、
前記第1の分光特性を有する照明光により異なるタイミングで撮像された複数の第1の分光画像の位置合わせをおこなう位置合わせ処理部と、
前記位置合わせをした前記複数の第1の分光画像の合成画像を生成する合成画像生成部と、
前記合成画像と、前記第2の分光特性を有する照明光により撮像された第2の分光画像とから出力画像を生成する出力画像生成部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−279454(P2010−279454A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133612(P2009−133612)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】