説明

画像処理装置、電子カメラ及び画像処理プログラム

【課題】 パイプライン方式を用いた複数回のノイズ除去処理に用いられるラインメモリを節約することで、コストダウンを図る。
【解決手段】 画像を取り込む画像取込部と、画像の所定範囲に含まれる複数の画素の画素値を記憶する記憶部と、記憶部に記憶される複数の画素の画素値を参照して、ノイズ除去の対象となる対象画素の画素値に対する第1のノイズ除去処理を実行する第1ノイズ除去処理部と、記憶部に記憶され、第1のノイズ除去処理において参照された複数の画素の画素値を参照して、第1のノイズ除去処理が施された対象画素の画素値に対する第2のノイズ除去処理を実行する第2ノイズ除去処理部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、電子カメラ及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像に対するノイズ除去処理として、突出除去フィルタや平滑化フィルタなどの種々のフィルタを用いた処理が施される。例えば突出除去フィルタは、画像に発生する突出ノイズを除去する際に用いられるフィルタであり、例えばMAX・MINフィルタが挙げられる。このMAX・MINフィルタは、注目画素の周囲に位置する画素の最大画素値と最小画素値とを求め、注目画素の画素値を最大画素値と最小画素値との間にクリップするものである。また、平滑化フィルタは、画像に発生するショットノイズを除去する際に用いられるフィルタであり、例えばεフィルタが挙げられる。このεフィルタは、例えば注目画素の周囲に位置する画素のうち、注目画素との画素値の差が閾値以下となる画素の画素値を用いて平滑化を行うものである。最近では、デジタルカメラに代表される電子カメラにおいて、上述した突出除去フィルタ及び平滑化フィルタを用いて複数回のノイズ除去処理をパイプライン方式にて実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−7399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したパイプライン方式を用いて複数回のノイズ除去処理を実行する場合、まず、第1のラインメモリに記憶された画素の画素値を参照して突出除去フィルタによるノイズ除去処理を行い、第2のラインメモリにノイズ除去処理された画素の画素値を記憶する。その後、第2のラインメモリに記憶された画素の画素値を参照して平滑化フィルタによるノイズ除去処理を実行する。したがって、各ノイズ除去処理に対して、画像サイズに合わせたラインメモリが必要となり、コストアップにつながるという欠点がある。
【0005】
本発明は、パイプライン方式を用いた複数回のノイズ除去処理に用いられるラインメモリを節約することで、コストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の電子カメラは、画像を取り込む画像取込部と、前記画像の所定範囲に含まれる複数の画素の画素値を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記複数の画素の画素値を参照して、ノイズ除去の対象となる対象画素の画素値に対する第1のノイズ除去処理を実行する第1ノイズ除去処理部と、前記記憶部に記憶され、前記第1のノイズ除去処理において参照された前記複数の画素の画素値を参照して、前記第1のノイズ除去処理が施された前記対象画素の画素値に対する第2のノイズ除去処理を実行する第2ノイズ除去処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記記憶部に記憶される前記複数の画素の画素値を参照して、前記第2のノイズ除去処理が施された前記対象画素の画素値に対する第3のノイズ除去処理を実行する第3ノイズ除去処理部を、さらに備えているものである。
【0008】
また、前記第1のノイズ除去処理は、画像に含まれる突出ノイズを除去する処理であることが好ましい。
【0009】
また、前記第1のノイズ除去処理は、特定方向に依存した異方的な平滑化を行う処理であり、前記第2のノイズ除去処理は、前記特定方向に依存しない等方的な平滑化を行う処理であることが好ましい。
【0010】
また、第3のノイズ除去処理部を備えている場合には、前記第1のノイズ除去処理は、前記画像に含まれる突出ノイズを除去する処理であり、前記第2のノイズ除去処理は、特定方向に依存した異方的な平滑化を行う処理であり、前記第3のノイズ除去処理は、前記特定方向に依存しない等方的な平滑化を行う処理であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の電子カメラは、光電変換を行う撮像素子と、本発明の画像処理装置と、を備え、前記画像処理装置は、前記撮像素子により取り込まれる画像に対するノイズ除去処理を実行することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の画像処理プログラムは、画像を取り込む画像取込工程と、前記画像の所定範囲に含まれる複数の画素の画素値を記憶する記憶工程と、前記記憶工程により記憶される前記複数の画素の画素値を参照して、ノイズ除去の対象となる対象画素の画素値に対する第1のノイズ除去処理を実行する第1ノイズ除去工程と、前記記憶工程により記憶され、前記第1のノイズ除去処理において参照された前記複数の画素の画素値を参照して、前記第1のノイズ除去処理が施された前記対象画素の画素値に対する第2のノイズ除去処理を実行する実行する第2ノイズ除去工程と、をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パイプライン方式を用いた複数回のノイズ除去処理に用いられるラインメモリを節約することで、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施した画像処理装置の構成の概略を示す図である。
【図2】第1実施形態のノイズ除去部の構成を示す図である。
【図3】画像とラインメモリに記憶される画素の範囲との関係を示す図である。
【図4】突出ノイズ除去処理時に参照する画素の範囲を示す図である。
【図5】平滑化処理時に参照する画素の範囲を示す図である。
【図6】第2実施形態のノイズ除去部の構成を示す図である。
【図7】異方的な平滑化処理を行う際に参照する画素を示す図である。
【図8】(a)〜(d)は、画素値の分散を求める際に参照する画素を示す図である。
【図9】本発明の画像処理装置を備えた電子カメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施した画像処理装置について、図1に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、画像処理装置10は、色補間部15、ノイズ除去部16、輪郭強調部17、階調補正部18、彩度強調部19及び圧縮処理部20を備えている。この画像処理装置10には、各画素の画素値がR,G,Bのいずれかの色成分の値からなる画像データが入力される。色補間部15は、入力される画像データに対して色補間処理を行い、各画素の画素値がR,G,Bの色成分からなる画像データを生成する。この色補間部15における色補間処理の後、画像データに対してRGB→YCbCr変換処理(図示省略)が実行され、各画素の画素値が輝度(Y)及び色差(Cb・Cr)からなる画像データが生成される。この画像データはノイズ除去部16に入力される。ノイズ除去部16は、入力される画像データに対して、ノイズ除去処理を実行する。このノイズ除去部16の詳細については後述する。ノイズ除去部16によるノイズ除去処理が施された画像データは、輪郭強調部17における輪郭強調処理、階調補正部18における階調補正処理、彩度強調部19による彩度強調処理が施される。なお、輪郭強調処理、階調補正処理、彩度強調処理の各処理については周知であることから、その詳細は省略する。最後に、各処理が施された画像データは、圧縮処理部20により圧縮符号化処理され、符号化データとして画像処理装置10から出力される。なお、彩度強調部19から出力される画像データは、直接、圧縮処理部20に入力されてもよいし、YCbCr→RGB変換処理を行った後に圧縮処理部20に入力されてもよい。
【0017】
ここで、画像処理装置10に入力される画像データとして、各画素の画素値がR,G,Bのいずれかの色成分の値からなる画像データを挙げているが、これに限定される必要はなく、各画素の画素値がR,G,Bの各色成分からなる画像データであってもよい。この場合、上述した色補間部15における色補間処理を省略し、RGB→YCbCr変換処理を行った後、ノイズ除去部16に入力させればよい。
【0018】
また、図1に示す画像処理装置においては、色補間部15、圧縮処理部20の双方を設けた場合について説明しているが、これに限定される必要はなく、色補間部15、圧縮処理部20のいずれか一方を備えていない画像処理装置であってもよい。
【0019】
以下、ノイズ除去処理として、突出ノイズを除去する処理(以下、突出ノイズ除去処理)と平滑化処理とをパイプライン方式を用いて行う場合の実施形態を第1実施形態として説明する。
<第1実施形態>
図2に示すように、ノイズ除去部16は、ラインメモリ25、突出除去部26、平滑化部27を備えている。図2においては、ラインメモリ25、突出除去部26、平滑化部27の各部を1つ備えた形態としているが、ノイズ除去部16の各部は色成分に合わせた数設けられていることが望ましい。
【0020】
ラインメモリ25は、ノイズ除去部16に入力される画像データの各画素の画素値を記憶する。ここで、ラインメモリ25に記憶される画素の数は、例えば5ライン分の水平ラインに配置される画素と、例えば5画素とを加算した数である。図3においては、画像Iのうち、ハッチングで囲まれる画素の範囲(符号31で示す範囲)が、例えばラインメモリ25に記憶される画素の範囲となる。このラインメモリ25には、画像Iの各画素の画素値が1画素ごとに入力され、上述した数の画素の画素値が記憶されたときに、突出除去部26による突出ノイズ除去処理が実行される。そして、平滑化部27による平滑化処理が終了すると、時間的に最も古い画素の画素値がラインメモリ25から削除され、新たに入力された画素の画素値がラインメモリ25に記憶される。なお、ラインメモリ25に記憶される画素の数は一例であり、突出除去部26や平滑化部27にて参照する画素の範囲に応じて適宜設定されるものである。
【0021】
突出除去部26は、ラインメモリ25に記憶される画素の画素値を参照して、ノイズ除去の対象となる画素(以下、対象画素)に対する突出ノイズ除去処理を実行する。この突出除去部26における突出ノイズ除去処理は、例えばMAX・MINフィルタを用いて実行される。以下、対象画素の座標を(x,y)、その画素値をP(x,y)として説明する。MAX・MINフィルタは、対象画素の周囲の画素の画素値の最大値(最大画素値)と最小値(最小画素値)とを求め、対象画素の画素値を最小画素値と最大画素値との間の値にクランプするフィルタである。
【0022】
突出除去部26は、まず、ラインメモリ25に記憶される画素の画素値のうち、対象画素を中心にした3×3の計9画素の画素値を参照画素の画素値として読み出す。図4においては、例えば座標(x,y)の画素32を対象画素とした場合であり、図4中ハッチングで示される範囲33に含まれる9個の画素の画素値を参照画素の画素値として読み出す。
【0023】
次に、突出除去部26は、読み出した参照画素のうち、対象画素を除く参照画素、つまり対象画素の周囲の画素(図4においては、座標(x−1,y−1),座標(x,y−1),座標(x+1,y−1),座標(x−1,y),座標(x+1,y),座標(x−1,y+1),座標(x,y+1),座標(x+1,y+1)の計8画素)の画素値から、最大画素値及び最小画素値を求める。
【0024】
最後に、突出除去部26は、求めた最大画素値及び最小画素値と、対象画素の画素値とを、以下の(1)式に適用する。これにより、対象画素に対する突出ノイズ除去処理が実行される。
【0025】
【数1】

【0026】
上述した(1)式において、Q(x,y)は突出ノイズ除去処理後の対象画素の画素値、MAXは対象画素の周囲の画素における最大画素値、MINは対象画素の周囲の画素における最小画素値をそれぞれ示す。
【0027】
平滑化部27は、突出除去部26によって突出ノイズが除去された対象画素の画素値に対して、ラインメモリ25に記憶された画素を参照した平滑化処理を実行する。この平滑化部27においては、方向に依存しない、いわゆる等方的なεフィルタを用いた処理が実行される。ここで、εフィルタは、対象画素の周囲の画素の画素値と突出ノイズが除去された対象画素の画素値とを用いて平滑化を行うフィルタである。この平滑化部27において参照する画素の範囲は、対象画素を中心にした、5×5の計25画素の範囲を参照画素の画素値として読み出す。なお、図5においては、図4と同様に、座標(x,y)の画素32を対象画素とし、図5中ハッチングで示される範囲34に含まれる画素の画素値を参照画素の画素値として読み出す場合について記載している。この平滑化部27は、以下の(2)式に基づいて、対象画素に対する平滑化処理を実行する。以下の(2)式において、R(x,y)は平滑化処理後の対象画素の画素値を示す。
【0028】
【数2】

【0029】
ここで、上述した(2)式で示される関数EPS(d、th)は、以下の(3)式で定義される。なお、(3)式における係数thは平滑化する(ノイズを除去する)際の閾値である。
【0030】
【数3】

【0031】
上述した(2)式における係数th1は入力される画像に発生するノイズの標準偏差の例えば3倍に設定される。なお、係数th1として、入力される画像に発生するノイズの標準偏差の3倍に設定するとしているが、これに限定される必要はなく、例えば画像を取得したときの撮像条件(シャッタ速度等)に基づいて設定することも可能である。
【0032】
以下、ノイズ除去部16におけるノイズ除去処理の流れを説明する。色補間部15により色補間処理が施された画像データは、RGB→YCbCr変換処理が施された後、ノイズ除去部16に入力される。なお、ノイズ除去部16には1画素毎に各画素の画素値が入力される。このノイズ除去部16に入力される各画素の画素値は、ラインメモリ25に記憶されていく。そして、ラインメモリ25に記憶された画素の画素値の数が、予め設定された数となると、ノイズ除去部16への画素の画素値の入力が停止される。ノイズ除去部16への画素の画素値の入力が停止されると、突出除去部26は、対象画素となる座標(x,y)の画素を中心とした3×3の計9画素の画素値を読み出し、上述した突出ノイズ除去処理を実行する。なお、突出ノイズ除去処理が施された対象画素の画素値は、突出除去部26から平滑化部27に出力される。平滑化部27は、ラインメモリ25から、対象画素を中心とした5×5の計25画素の画素値を読み出す。そして、突出除去部26から出力された突出ノイズ除去処理が施された対象画素の画素値と、ラインメモリ25から読み出した画素の画素値とを参照し、上述した平滑化処理を実行する。この平滑化部27における平滑化処理が施された対象画素の画素値は、ノイズ除去部16から輪郭強調部17に出力される。
【0033】
平滑化部27により平滑化処理が施された対象画素の画素値がノイズ除去部16から出力されると、ノイズ除去部16には、新たな画素の画素値が入力される。この入力に合わせて、ラインメモリ25に記憶された画素の画素値のうち、時間的に最も古い画素(例えば座標(x−2,Y−2)の画素)の画素値がラインメモリ25から削除され、新たに入力された画素(例えば座標(x+3,y+2)の画素)の画素値がラインメモリ25に記憶される。この場合、対象画素として、座標(x,y)の画素からX方向に1画素ずれた座標(x+1,y)の画素が設定され、上述した突出ノイズ除去処理や平滑化処理が実行される。
【0034】
このようにして、ラインメモリ25に画像の所定範囲に含まれる全画素が記憶される、或いはラインメモリ25に記憶される画素の画素値が更新される毎に、上述した突出ノイズ除去処理や平滑化処理が実行される。この処理は、画像に含まれる全画素に対して実行される。なお、画像の左右端部、及び上下端部に位置する画素を対象画素とする場合、参照する対象画素の周囲の画素がないときもある。このような場合には、対象画素の周囲の画素を重複して用いる、或いは、対象画素の周囲に存在する画素のみを用いればよい。
【0035】
この第1実施形態では、ラインメモリ25に記憶した画素の画素値を用いて、突出ノイズ除去処理と平滑化処理との双方の処理を行っている。また、画像全体ではなく、突出ノイズ除去処理と、平滑化処理との双方の処理で必要となる画素を含む所定範囲の画素の画素値を、ラインメモリ25に記憶している。つまり、本発明を実施することで、ノイズ除去処理に係るラインメモリ25の容量を最小限にすることができ、結果的にコストを抑制することができる。
【0036】
なお、突出ノイズ除去処理の後に実行される平滑化処理においては、ラインメモリ25に記憶された画素、言い換えれば突出ノイズ除去処理を施していない画素を用いている。このため、突出ノイズが発生している画素の画素値を用いた平滑化処理が実行されてしまうが、突出ノイズは画像中にまばらにしか発生しないことから、突出ノイズ除去処理が実行されていない画素を用いたとしても、平滑化処理の効果を減少させるものではない。
【0037】
次に、ノイズ除去処理として、突出ノイズ除去処理と、複数回の平滑化処理とを行う場合について、第2実施形態として説明する。なお、ノイズ除去部については、第1実施形態と同様に符号16を付して説明する。
<第2実施形態>
図6に示すように、ノイズ除去部16は、ラインメモリ41、突出除去部42、第1平滑化部43及び第2平滑化部44を備えている。なお、第1実施形態と同様に、図6に示すノイズ除去16の構成は、1つの色成分に対してノイズ除去処理を実行することを前提にしているが、色成分毎にノイズ除去処理を行う場合には、ラインメモリ41、突出除去部42、第1平滑化部43及び第2平滑化部44の構成を、各色成分に対応した数分設けることが望ましい。なお、ラインメモリ41及び突出除去部42は、第1実施形態と同一の機能を有していることから、ここではその詳細を省略する。
【0038】
第1平滑化部43は、突出除去部42によって突出ノイズが除去された対象画素の画素値に対して、ラインメモリ41に記憶された画素を参照した、方向に依存した、いわゆる異方的な平滑化処理を実行する。この第1平滑化部43は、異方的なεフィルタを用いた平滑化処理を実行する。
【0039】
まず、第1平滑化部43は、対象画素(図7中符号45)を中心にした5×5の計25画素のうち、対象画素を含むX方向、Y方向、右斜め方向、左斜め方向にそれぞれ配列される計17画素(図7中、ハッチングで示す画素)の画素値を参照する。そして、第1平滑化部43は、参照する画素のうち、X方向に配列される5画素(図8(a)中、ハッチングで示す画素)、Y方向に配列される5画素(図8(b)中、ハッチングで示す画素)、右斜め方向の5画素(図8(c)中、ハッチングで示す画素)及び左斜め方向の5画素(図8(d)中、ハッチングで示す画素)の全4方向に配列される画素の画素値の分散を方向毎に算出する。
【0040】
これら4方向に配列される画素の画素値の分散を方向毎に求めた後、第1平滑化部43は、算出した計4方向の画素の画素値の分散のうち、最小となる画素値の分散に対応する方向を特定する。最後に、第1平滑化部43は、画素値の分散が最小となる分散の方向に配列される画素の画素値を、それぞれP(1)〜P(5)として、以下の(4)式を用いた平滑化処理を実行する。なお、(4)式において、Q(x,y)は第1平滑化部43により異方的な平滑化処理を行う前、言い換えれば突出ノイズ除去処理が施された対象画素の画素値、S(x、y)は第1平滑化部43により異方的な平滑化処理が施された対象画素の画素値をそれぞれ示す。
【0041】
【数4】

【0042】
なお、関数EPS(d,th)は、上述した(3)式で示されるものである。ここで、係数th2は、入力される画像に発生するノイズの標準偏差の約3倍の値に設定される。
【0043】
第2平滑化部44は、第1平滑化部43によって異方的な平滑化処理が施された対象画素の画素値に対して、ラインメモリ41に記憶された画素を参照した、等方的な平滑化処理を実行する。この第2平滑化部44は、等方的なεフィルタを用いた平滑化処理を実行する。なお、この第2平滑化部44の機能は、第1実施形態の平滑化部と同一の機能を有している。この第2平滑化部44は、ラインメモリ41に記憶された画素の画素値のうち、対象画素を中心にした5×5画素の計25画素の画素値を参照画素値とし、以下の(5)式を用いた平滑化処理を実行する。
【0044】
【数5】

【0045】
なお、(5)式において、T(x、y)は第2平滑化部44により当方的な平滑化処理が施された対象画素の画素値を示す。また、(5)式において、係数th3は、例えば、画像に発生するノイズの標準偏差の1.5倍の値に設定される。なお、第1平滑化部43において異方的な平滑化処理を行っていることから、係数th3の値は、係数th2の値よりも小さい値に設定される。
【0046】

以下、ノイズ除去部16におけるノイズ除去処理の流れを説明する。色補間部15により色補間処理が施された画像データは、RGB→YCbCr変換処理が施された後、ノイズ除去部16に入力される。なお、ノイズ除去部16には1画素毎に各画素の画素値が入力される。このノイズ除去部16に入力される各画素の画素値は、ラインメモリ41に記憶されていく。そして、ラインメモリ41に記憶された画素の画素値の数が、予め設定された数となると、ノイズ除去部16への画素の画素値の入力が停止される。
【0047】
ノイズ除去部16への画素の画素値の入力が停止されると、突出除去部42は、対象画素となる座標(x,y)の画素を中心とした3×3の計9画素の画素値を読み出し、上述した突出ノイズ除去処理を実行する。なお、突出ノイズ除去処理が施された対象画素の画素値は、突出除去部42から第1平滑化部43に出力される。第1平滑化部43は、座標(x,y)の画素を対象画素とし、対象画素を含むX方向に配列された5画素(図8(a)に示す画素)、Y方向に配列される5画素(図8(b)に示す画素)、右斜め方向の5画素(図8(c)に示す画素)及び左斜め方向の5画素(図8(d)に示す画素)の計17画素の画素値を読み出す。そして、第1平滑化部43は、読み出した画素の画素値を用いて、X方向、Y方向、右斜め方向、左斜め方向の4方向における画素の画素値の分散を算出する。この画素値の分散を算出した後、第1平滑化部43は、画素値の分散が最小となる方向に配列された画素の画素値と、突出除去部42から出力された突出ノイズ除去処理が施された対象画素の画素値とを用いて、異方的な平滑化処理を実行する。この異方的な平滑化処理が行われた対象画素の画素値は、第2平滑化部44に出力される。
【0048】
第2平滑化部44は、ラインメモリ41から、対象画素を中心とした5×5の計25画素の画素値を読み出す。そして、第2平滑部は、第1平滑化部43から出力された異方的な平滑化処理が施された対象画素の画素値と、ラインメモリ41から読み出した画素の画素値とを参照し、等方的な平滑化処理を実行する。この第2平滑化部44において等方的な平滑化処理が施された対象画素の画素値は、ノイズ除去部16から輪郭強調部17に出力される。
【0049】
第2平滑化部44により等方的な平滑化処理が施された対象画素の画素値がノイズ除去部から出力されると、ノイズ除去部16には、新たな画素の画素値が入力される。この入力に合わせて、ラインメモリ41に記憶された画素の画素値のうち、時間的に最も古い画素(例えば座標(x−2,Y−2)の画素)の画素値がラインメモリ41から削除され、新たに入力された画素(例えば座標(x+3,y+2)の画素)の画素値がラインメモリ41に記憶される。
【0050】
この場合も、第1実施形態と同様にして、対象画素として、座標(x,y)の画素からX方向に1画素ずれた座標(x+1,y)の画素が設定され、上述した突出ノイズ除去処理や、上述した複数回の平滑化処理が実行される。このようにして、ラインメモリ41に画像の所定範囲に含まれる全画素が記憶される、或いはラインメモリ41に記憶される画素の画素値が更新される毎に、上述した突出ノイズ除去処理や平滑化処理が実行される。この処理は、画像に含まれる全画素に対して実行される。なお、画像の左右端部、及び上下端部に位置する画素を対象画素とする場合、参照する対象画素の周囲の画素がないときもある。このような場合には、対象画素の周囲の画素を重複して用いる、或いは、対象画素の周囲に存在する画素のみを用いればよい。
【0051】
この第2実施形態では、ラインメモリ41に記憶した画素の画素値を用いて、突出ノイズ除去処理、異方的な平滑化処理及び等方的な平滑化処理の各処理を行っている。また、画像全体ではなく、突出ノイズ除去処理と、複数回の平滑化処理とで必要となる画素を含む所定範囲の画素の画素値を、ラインメモリ41に記憶している。つまり、本発明を実施することで、ノイズ除去処理に関わるラインメモリ41の数やラインメモリ41の容量を最小限にすることができ、結果的にコストを抑制することができる。
【0052】
この第2実施形態では、異方性に依存するεフィルタを用いた第1平滑化処理では、4方向における画素の画素値の分散を算出したときには、輪郭線の方向に配列された画素の画素値の分散が最小となる。つまり、この第1平滑化処理においては、輪郭線の方向に配列された画素を参照した平滑化処理が実行されるので、画像の輪郭線の先鋭さを失うことなく、対象画素に発生するノイズを軽減することができる。なお、第1平滑化部43における異方的な依存した平滑化処理においては、参照する画素の数が少ないことから、この平滑化処理だけではノイズの軽減効果が低い。このため、第1平滑化部43における平滑化処理の後に、第2平滑化部44による等方的な平滑化処理をさらに実行することで、画素に発生するノイズを充分に軽減することが可能となる。この際、第2平滑化部44による等方的な平滑化処理を実行する際に、閾値である係数th3を、第1実施形態における等方的な平滑化処理で用いる係数th1よりも小さく設定することで、画像の先鋭さを失わずにノイズを除去することができる。
【0053】
第1実施形態及び第2実施形態では、突出除去処理に用いるMAX・MINフィルタや、平滑化処理に用いるεフィルタは一例であり、これら処理を行うのに適した他のフィルタを用いることも可能である。
【0054】
また、突出ノイズ除去処理に参照する画素の範囲を3×3の計9個の画素の範囲とし、平滑化処理に参照する画素の範囲を5×5の計25個の画素の範囲としているが、これら処理を行う際に参照する画素の範囲は、これら範囲に限定されるものではなく、適宜設定されるものである。
【0055】
上述した第2実施形態では、突出ノイズ除去処理の後に、異方的な平滑化処理、等方的な平滑化処理を行っているが、これに限定する必要はなく、例えば突出ノイズが少ない画像データに対するノイズ除去処理を行う場合には、突出ノイズ除去処理を省略し、異方的な平滑化処理、等方的な平滑化処理を行うようにしてもよい。
【0056】
上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、画像処理装置を例に取り上げているが、これに限定される必要はなく、図9に示す電子カメラ50に用いる画像処理装置に本発明の画像処理装置を搭載することも可能である。
【0057】
図9に示すように、電子カメラ50は、撮像光学系51、撮像素子52、A/D変換部53、タイミングジェネレータ(TG)54、バッファメモリ55、画像処理装置56、表示制御回路57、表示装置58、接続用I/F59、CPU60、内蔵メモリ61、レリーズボタン62及び設定操作部63を備えている。なお、A/D変換部53、バッファメモリ55、画像処理装置56、表示制御回路57、接続用I/F59、CPU60及び内蔵メモリ61は、それぞれバス64によって接続される。また、接続用I/F59には、メモリカード、光学ディスク及びハードディスクドライブなどの記憶媒体65が接続される。なお、この電子カメラ50に用いられる画像処理装置56は、第1実施形態、又は第2実施形態のいずれかの構成からなるノイズ除去部16を備えた画像処理装置が用いられる。
【0058】
この電子カメラ50の場合には、レリーズボタン62の操作によって撮像が実行されると、予め設定された撮像条件に基づいた撮像処理が実行される。この撮像処理時に、予め設定されたシャッタ速度に合わせた光電変換が撮像素子52の各画素にて実行され、各画素に蓄積される信号電荷が、画素信号として撮像素子52から出力される。撮像素子52から出力される画素信号は、A/D変換部53によりアナログの信号からデジタルの信号に変換される。デジタルの信号に変換された全画素信号は、1つのデータ(画像データ)としてバッファメモリ55に記憶される。なお、画像処理装置56は、バッファメモリ55に記憶される画像データを読み出し、上述した各処理を実行する。この場合も、第1の実施形態、又は第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、画像処理装置について説明しているが、図1及び図2に示す各部の機能、或いは図1及び図6に示す各部の機能のいずれかをコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであってもよい。この場合、画像処理プログラムは、メモリカード、光学ディスク或いは磁気ディスクなどの、コンピュータにて読み取ることができる記憶媒体に記憶されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
10,56…画像処理装置、16…ノイズ除去部、25,41…ラインメモリ、26,42…突出除去部、27…平滑化部、43…第1平滑化部、44…第2平滑化部、50…電子カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を取り込む画像取込部と、
前記画像の所定範囲に含まれる複数の画素の画素値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記複数の画素の画素値を参照して、ノイズ除去の対象となる対象画素の画素値に対する第1のノイズ除去処理を実行する第1ノイズ除去処理部と、
前記記憶部に記憶され、前記第1のノイズ除去処理において参照された前記複数の画素の画素値を参照して、前記第1のノイズ除去処理が施された前記対象画素の画素値に対する第2のノイズ除去処理を実行する第2ノイズ除去処理部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記記憶部に記憶される前記複数の画素の画素値を参照して、前記第2のノイズ除去処理が施された前記対象画素の画素値に対する第3のノイズ除去処理を実行する第3ノイズ除去処理部を、さらに備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置において、
前記第1のノイズ除去処理は、画像に含まれる突出ノイズを除去する処理であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第1のノイズ除去処理は、方向に依存した異方的な平滑化を行う処理であり、
前記第2のノイズ除去処理は、前記方向に依存しない等方的な平滑化を行う処理であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記第1のノイズ除去処理は、前記画像に含まれる突出ノイズを除去する処理であり、
前記第2のノイズ除去処理は、方向に依存した異方的な平滑化を行う処理であり、
前記第3のノイズ除去処理は、前記方向に依存しない等方的な平滑化を行う処理であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
光電変換を行う撮像素子と、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置と、を備え、
前記画像処理装置は、前記撮像素子により取り込まれる画像に対するノイズ除去処理を実行する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項7】
画像を取り込む画像取込工程と、
前記画像の所定範囲に含まれる複数の画素の画素値を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程により記憶される前記複数の画素の画素値を参照して、ノイズ除去の対象となる対象画素の画素値に対する第1のノイズ除去処理を実行する第1ノイズ除去工程と、
前記記憶工程により記憶され、前記第1のノイズ除去処理において参照された前記複数の画素の画素値を参照して、前記第1のノイズ除去処理が施された前記対象画素の画素値に対する第2のノイズ除去処理を実行する第2ノイズ除去工程と、
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−165224(P2012−165224A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24599(P2011−24599)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】