説明

画像処理装置およびその制御方法

【課題】動画表示の際の空間的高周波成分のフリッカの発生を抑制しつつエッジ波形の再現を可能とする技術を提供する。
【解決手段】動画像を構成する各フレーム画像からM個のサブフレーム画像を生成することによりフレームレート変換を行なう画像処理装置において、注目フレーム画像と該注目フレーム画像に対し先行するまたは後続するフレーム画像との差分に基づいて、注目フレーム画像の各領域について画像の変化の程度を示す変化指標を導出する導出手段と、注目フレーム画像にローパスフィルタ処理を施し低周波フレーム画像を生成する低周波フレーム画像生成手段と、注目フレーム画像と低周波フレーム画像との差分により高周波フレーム画像を生成する高周波フレーム画像生成手段と、注目フレーム画像の各領域の変化指標に応じた重みで、高周波フレーム画像に含まれる画像成分をM個の低周波フレーム画像に分配し加算することによりM個のサブフレーム画像を生成する生成手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像のフレームレートを変換する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CFF(critical fusion frequency)未満のフレームレート(以下、低フレームレートと呼ぶ)で撮影された動画(例えば、24fpsや30fpsの動画)をそのまま表示する場合、視聴者によりちらつき(フリッカ)が認識される。そこで、フリッカを抑制するため、表示装置において各フレームを複数回繰り返して表示する方法が行われている。しかし、この手法ではコマの繰り返し表示に起因して映像の動きがガタガタして見える現象(ジャダー)が発生する。そこで、例えば特許文献1では、動き領域におけるエッジ波形を再現することによりジャダーを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−189260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空間的高周波成分の強調・抑制をCFF未満のフレームレートの動画に対し、上述のエッジ波形の再現処理を適用した場合、空間的高周波成分がフリッカして知覚されるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされたものであり、動画表示の際の空間的高周波成分のフリッカを抑制しつつエッジ波形の再現を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。すなわち、動画像を構成する各フレーム画像からM個のサブフレーム画像を生成することによりフレームレート変換を行なう画像処理装置において、注目フレーム画像と該注目フレーム画像に対し先行するまたは後続するフレーム画像との差分に基づいて、前記注目フレーム画像の各領域について画像の変化の程度を示す変化指標を導出する導出手段と、前記注目フレーム画像にローパスフィルタ処理を施し低周波フレーム画像を生成する低周波フレーム画像生成手段と、前記注目フレーム画像と前記低周波フレーム画像との差分により高周波フレーム画像を生成する高周波フレーム画像生成手段と、前記導出手段により導出された前記注目フレーム画像の各領域の変化指標に応じた重みで、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分をM個の前記低周波フレーム画像に分配し加算することにより前記M個のサブフレーム画像を生成する生成手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動画表示の際の空間的高周波成分のフリッカの発生を抑制しつつエッジ波形の再現を可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ディスプレイシステムにおける補正処理部のブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るフレームレート変換処理部のブロック図である。
【図3】第1実施形態に係るフレームレート変換処理部の全体動作フローチャートである。
【図4】動き度算出部の動作フローチャートである。
【図5】出力サブフレームを説明する概念図である。
【図6】制御閾値に基づいて加算高周波成分を補正するフローチャートである。
【図7】制御閾値関数に基づいて加算高周波成分を補正するフローチャートである。
【図8】動き度mおよび高周波成分hを説明する図である。
【図9】高周波制御部の制御閾値を説明する図である。
【図10】高周波制御部の制御閾値関数を説明する図である。
【図11】高周波成分を抑制・強調した領域の出力を示す図である。
【図12】高周波成分を抑制・強調しない領域の出力を示す図である。
【図13】第2実施形態に係るフレームレート変換処理部のブロック図である。
【図14】第2実施形態に係るフレームレート変換処理部の動作フローチャートである。
【図15】順応輝度算出部の動作フローチャートである。
【図16】第3実施形態に係るフレームレート変換処理部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る画像処理装置の第1実施形態として、ディスプレイシステムにおける補正回路内のフレームレート変換処理部を例に挙げて以下に説明する。特に、第1実施形態では、出力サブフレームの領域毎の高周波成分の分配量を制御するにあたり、動画像に含まれるフレーム画像の動きとエッジコントラストに基づいて制御する方法について説明する。
【0011】
<装置構成>
図1は、第1実施形態に係るディスプレイシステムにおける補正回路の内部ブロック図である。補正回路1000には、例えばセレクタを介して、外部の画像出力装置から所定のフレームレートの動画像が入力される。以下の説明では24p(24フレーム/秒のプログレッシブ画像)の動画像に対して処理する場合について述べるが、他のフレームレートの動画像であっても同様に適用可能である。
【0012】
なお、補正回路1000は、後述するフレームレート変換処理部100の他にも、各所の画像処理部を含み得る。例えば、ノイズリダクション、フィルムソース検出、インタレース/プログレッシブ(I/P)変換、解像度変換の他、各種の色補正処理を含み得る。例えば、フィルムソース検出処理部としては、特開2009−008733号公報に開示される技術を適用し得る。
【0013】
フレームレート変換処理部100は、n枚のフレーム画像に対してn’(>n)枚(請求項ではM個)のサブフレーム画像を生成して出力する処理部である。以下の説明では、24pの動画像に含まれる各フレーム画像に対して5枚のサブフレーム画像を生成する(つまり、n=1、n’=5)の場合について説明する。ただし、既存の2−3プルダウン(24fpsから60fpsへの変換)のようなフレームレート変換と組み合わせることにより(n=2、n’=5)あるいは(n=2、n’=10)のように構成してもよい。
【0014】
図2は、第1実施形態のフレームレート変換処理部のブロック図である。ローパスフィルタ(LPF)101(低周波フレーム画像生成手段)は、動画像に含まれる各フレーム画像finに対しローパスフィルタ処理を行い低周波フレーム画像を生成する処理部である。具体的には、LPF101は、入力フレーム画像finに対して、ガウシアンフィルターや平均値フィルターなど、入力画像よりも空間周波数分布が低くなる処理を行い、低周波フレーム画像fの信号を出力する。
【0015】
高周波成分抽出部103(高周波フレーム画像生成手段)は、入力したフレーム画像finと低周波フレーム画像fとに基づいて高周波成分(高周波フレーム画像)hを算出し出力する。具体的な算出方法としては、以下の式で示されるように、低周波フレーム画像と入力したフレーム画像との差分を用いることが出来る。
【0016】
h=abs(fin−f
なお、以下の式で示されるように、入力したフレーム画像に対しエッジ強調を行った画像と当該入力したフレーム画像との差分を用いて高周波成分hを算出しても良い。
【0017】
h=abs(sharpen(fin)−fin
ここで、abs()は絶対値関数、sharpen()はエッジ強調処理関数をそれぞれ示している。
【0018】
フレーム周波数変換部102は、1個の低周波フレーム画像fを複製することにより、5個の低周波フレーム画像fLn’(n’=1、...、5)を生成する。なお、5個の低周波フレーム画像は、最終的に出力される5個のサブフレーム画像のベース画像に相当する。
【0019】
動き度算出部105(導出手段)は、フレーム画像finと該注目フレーム画像に隣接(先行または後続)するフレーム画像とに基づいて、finの内部の各領域における動き度(変化指標)mとして導出する。動き度mはフレーム画像の内部の各領域の変化を多段階、例えば0〜255(8bit)や0〜4095(12bit)で表す行列である。なお、動き度の算出の詳細については後述する。
【0020】
高周波量制御部106は、動き度(変化指標)mを用いて、高周波フレーム画像に含まれる画像成分の5個の低周波フレーム画像への分配の重みをフレーム画像の領域毎に決定する。高周波成分加算部104は、高周波量制御部106によって決定された分配の重みに基づいて、5個の低周波フレーム画像に対し高周波フレーム画像に含まれる画像成分をフレーム画像の領域毎に分配して加算する。そして、高周波フレーム画像の画像成分が加算された5個の低周波フレーム画像を出力フレームfoutとして出力する。
【0021】
<装置の動作>
動き度算出部105の動作について説明する。図4は、動き度算出部における動き度mを推定し算出する動作フローチャートである。
【0022】
ステップf121では、注目フレーム画像finを含む、連続する複数のフレーム画像を入力する。ステップf122では、入力した複数のフレーム画像について、隣接するフレーム間の差分を算出する。ステップf123では、算出されたフレーム間差分に基づいて動き度mを算出する。ステップf124では、動き度mを出力し、処理を終了する。
【0023】
以上の処理は、最も計算コストの少ない方法を例示的に示したものである。なお、差分を算出する前に、複数のフレーム画像に対してあらかじめローパスフィルタ処理を行うことにより、動きが異なる領域の境界部における破綻をより少なくすることが可能である。また、動き度mとして動きベクトルを用いるよう構成しても良い。なお、動きベクトルの算出は、例えば特開2009−38620号公報に開示されているような方法を利用可能であるが、これに限定するものではない。
【0024】
次に、高周波量制御部106および高周波成分加算部104について説明する。上述したように、当該2つのブロックにより、出力サブフレームfLn’(n’=1、...、5)に含まれる高周波成分をサブフレーム毎かつサブフレーム画像の内部の領域毎に制御する。
【0025】
高周波量制御部106は、動き度mと高周波成分hに応じて低域通過画像fL3に加算する高周波成分hを算出する。以降では、hを加算高周波量と言う。高周波量制御部106の目的は、フレームレート変換処理部100の出力サブフレームにおいて高周波成分の時間周波数がCFF未満である場合に発生するフリッカを抑制することである。そこで、第1実施形態では、高周波成分hの加算量を入力画像に応じて抑制する。具体的には、高周波成分がある各領域において動き度が小さく、かつ、その面積が大きい場合に加算高周波量hを抑制する。
【0026】
図6は高周波量制御部の処理フローチャートであり、加算高周波成分の閾値判定を用いる場合の処理を示している。
【0027】
ステップf131では、動き度mと高周波成分hとを入力する。ステップf132では、加算高周波成分をh=m×|h|として算出する。ステップf133では、h(m)のm=0からm=m1までの積分値と所定の閾値hthとを比較する。積分値がhth以上であればステップf135に進み、そうでなければステップf136に進む。
【0028】
ステップf135では、補正加算高周波成分をh=h×r(0≦r<1)として算出する。一方、ステップf136では、補正加算高周波成分をh=hとして算出する。そして、ステップf137では、算出されたhを出力し、処理が終了する。
【0029】
高周波成分加算部104は、低周波フレーム画像fL3に対しては、高周波量制御部106から入力された高周波成分hを加算する。一方、残りの低周波フレーム画像fL1、fL2、fL4、fL5に対しては、高周波成分hの残成分(h−h)を加算する。
【0030】
低周波フレーム画像fL1、fL2、fL4、fL5に対して均等に加算するしても良い。また、低周波フレーム画像fL1とfL5とを均等に、fL2とfL4とを、均等に加算してもよい。
【0031】
図8(a)に示される動き度m、図8(b)に示される高周波成分hが入力される場合について、上述の処理を更に具体的に説明する。
【0032】
ステップf132では、加算高周波成分hが算出される。
【0033】
ステップf133では、加算高周波成分hの0からm1(m1:任意の設定値)までの積分値が、所定の閾値hth以上であるか否かを判定する。ここで、図9(a)は加算高周波成分hの積分値が閾値hth以上である場合の図を示している。一方、図9(c)は加算高周波成分hの積分値が閾値hth未満である場合の図を示している。
【0034】
積分値が閾値hth以上である場合、hはステップf135において補正される。図9(b)は、補正された加算高周波成分hの一例を示す図である。一方、積分値が閾値hth未満と判定される場合は、補正せず出力される。つまり、図9(c)では、加算高周波成分hがそのままhとして出力される。
【0035】
上述の説明では、加算高周波成分hの補正の有無を、加算高周波成分hの積分値が閾値hth以上であるか否かに基づいて決定した。しかし、加算高周波成分hを所定の閾値関数と比較し補正するよう構成しても良い。
【0036】
図7は高周波量制御部の処理フローチャートであり、加算高周波成分の閾値関数判定を用いる場合の処理を示している。なお、ステップf131、f132においては前述と同じであるため省略する。
【0037】
ステップf138では、r=min{hth(m)/h(m)}(hth(m):所定の閾値関数)としてrを算出する。ステップf139では、補正加算周波数成分としてh=h×rを算出する。そして、ステップf140では、hを出力し、処理が終了される。
【0038】
図8(a)に示される動き度m、図8(b)に示される高周波成分hが入力される場合について、上述の処理を更に具体的に説明する。
【0039】
ステップf132によって加算高周波成分hが図10(a)のように算出される。ステップf138においてh(m)とhth(m)が図10(a)のような関係である場合、補正されhとして算出される。具体的には、ステップf139によってhは図10(b)のようにhth(m)以下に補正される。つまり、閾値関数を用いて正規化することにより抑制制御を行う。
【0040】
なお、hが常に閾値関数未満と判定される場合は、補正せず出力しても良い。その場合には、加算高周波成分hがそのままhとして出力される。
【0041】
図3は、フレームレート変換処理部の全体動作フローチャートである。
【0042】
ステップf101では、フレームレート変換処理部100が、注目フレーム画像finを含む複数のフレーム画像を入力する。ステップf102では、LPF101が、注目フレーム画像finに対してローパスフィルタ処理を行い低周波フレーム画像fを生成する。ステップf103では、高周波成分抽出部103が、注目フレーム画像finと低周波フレーム画像fとの差分から高周波成分hを算出する。
【0043】
ステップf104では、動き度算出部105が、注目フレーム画像finと該注目フレーム画像と隣接するフレーム画像との差分から、フレーム画像内の各領域における動き度mを算出する。ステップf105では、高周波量制御部106が、高周波成分hと動き度mの積から加算高周波成分hを算出する。ステップf106では、高周波量制御部106が、フリッカが発生しないようにhの抑制処理を行い、hを算出する。
【0044】
ステップf107では、高周波成分加算部104が、低周波フレーム画像fと同じ画像fLn’(n’=1〜5)を生成する。ステップf108では、n’=3の場合はステップf109に、n’≠3の場合はステップf110に進む。ステップf109では、fL3にh×m(0≦m≦1)を加算しfout3を算出する。ステップf110では、fLn’にh×(1−m)/4を加算しfoutn’を算出する。ステップf111では、foutn’を出力し、処理が終了する。
【0045】
<効果>
図5は、出力されるサブフレーム画像の概念図である。高周波量制御部106は、5個の低周波フレーム画像fL1〜fL5に分配し加算する高周波成分hをフレーム画像内の領域毎に決定する。そして、高周波成分加算部104は、決定された高周波成分hを5個の低周波フレーム画像の各々に加算し、出力フレームfoutとして出力する。
【0046】
図5(a)は、動き度mが大きい領域に対する高周波成分hの分配を例示的に示したものである。図示されるように、高周波成分hは1つのサブフレーム画像fL3に集中するように制御される。一方、図5(b)は、動き度mが小さい領域に対する高周波成分hの分配を例示的に示したものである。図示されるように、高周波成分hは5つのサブフレーム画像fL1〜fL5に均等に分散するように制御される。なお、ここでは、動き度mが大きい領域に対しては1つのサブフレーム画像に集中して加算し、動き度mが小さい領域に対しては全サブフレーム画像に均等に分散して加算するよう説明した。しかし、動き度mが大きいほど少数のサブフレーム画像に集中させて加算するようにすればよい。
【0047】
図11および図12は、上述のように生成されたサブフレーム画像を表示した際の効果を例示的に説明する図である。
【0048】
図11は、高周波成分を抑制・強調した場合の図を示しており、動き度が大きい領域に対応している。図11(a)は、画像のエッジ部分の輝度を示している。ここで、S1は、高周波成分hが加算されたサブフレーム画像fL3に対応する輝度を示し、S2は残りのサブフレーム画像に対応する輝度を示している。
【0049】
一方、図11(b)は、画像の位置−輝度を時間順に沿って縦方向に並べた図である。ここでは、2つのフレーム画像に対して10個のサブフレーム画像を出力した例を示している。24fpsの入力信号に対し5倍のフレームレートである120fpsの出力信号を生成する場合、図に示されるように高周波成分がfpsIn=24fpsで変化することになる。しかし、動き度mの大きい領域(動領域)の高周波成分のフリッカは認識されにくい特性があるため、フリッカは検知されない。そのため、動領域において見た目のエッジ波形が維持されるとともに、ジャダーも抑制されることが分かる。
【0050】
図12は、高周波成分を抑制・強調しない場合の図を示しており、動き度が小さい領域に対応している。図12(a)は、画像のエッジ部分の輝度を示している。ここで、S1は、高周波成分hが加算されたサブフレーム画像fL3に対応する輝度を示し、S2は残りのサブフレーム画像に対応する輝度を示しているが、S1=S2となっている。そのため、高周波成分のフリッカは発生しない。
【0051】
一方、図12(b)は、画像の位置−輝度を時間順に沿って縦方向に並べた図である。ただし、動き度が小さい領域であるため、繰返し表示した場合であってもジャダーがもともと問題にならない。
【0052】
以上説明したとおり、第1実施形態によれば、フレームレート変換処理部100は、フリッカの発生を抑制しつつエッジ波形の再現を可能とするサブフレーム画像を生成することが出来る。
【0053】
なお、ここでは、入力フレームレートを5倍にする例を用いて説明したが、フレーム周波数変換部102の変換倍率を2,3,4、n倍とし、高周波成分加算部104の加算方法を2,3,4、n周期に変更するよう構成しても良い。特に24fps入力の場合、48、72、96fps出力が考えられる。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態で説明した制御に加え、入力したフレーム画像の絶対輝度および順応輝度から領域毎に加算する高周波量を制御する例について説明する。
【0055】
図13は、第2実施形態に係るフレームレート変換処理部100のブロック図である。なお、LPF101、高周波成分抽出部103、フレーム周波数変換部102、高周波成分加算部104、動き度算出部105、高周波量制御部106は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0056】
輝度算出部201は、入力したフレーム画像fin[n](n:入力フレーム番号)の絶対輝度lin[n]を算出する。フレーム画像fin[n]がRGBでの画素値で表現される場合、lin[n]=i×R+j×G+k×Bとするとよい。また、RGBのうちGのみを選択し、lin[n]=Gとしてもよい。また、追加処理としてブロック内前処理にfin[n]にローパスフィルタ処理を行って領域境界の制御値変動をゆるやかにしてもよい。
順応輝度算出部202は、加算高周波hを制御するための輝度を、ディスプレイの視聴者の視認輝度に補正する。ジャダーやフリッカ検知の程度は視認輝度によって変化するため、視認輝度に合わせて高周波成分を領域毎に制御することにより、より精度の高いフリッカ抑制制御をすることが出来る。
【0057】
図15は、順応輝度算出部の処理フローチャートである。なお、ここでは、1つ前のフレーム画像における補正輝度(前補正輝度)を用いた処理を示しているが、代わりに先行する1以上のフレーム画像におけるフレーム画像輝度を用いた処理としてもよい。
【0058】
ステップf211では、入力画像fin[n]の輝度lin[n]と、1つ前のフレームの補正輝度l[n−1]を入力する。ステップf212では、補正輝度をl[n]=a×l[n−1]+(1−a)×lin[n]として算出する。ここで、aは0≦a≦1を満たす数である。ステップf213では、補正輝度l[n]を出力して、処理が終了する。
【0059】
図14は、第2実施形態に係るフレームレート変換処理部の動作フローチャートである。ステップf101〜f104、f106〜f111は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0060】
ステップf101〜f106の処理が行われた後、ステップf201では、入力画像finの輝度lin[n]を算出する。ステップf202では、lin[n]から順応輝度lを算出する。ステップf203では、高周波量制御部106は、動き度mと順応輝度lとhとの積から加算高周波成分hを算出する。引き続いて、ステップf106〜f111を実行し処理を終了する。
【0061】
以上説明したとおり、第2実施形態によれば、ユーザの視認輝度を考慮した順応輝度を用いることにより、より好適な映像出力が得られる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態では、加算する高周波成分の時間方向の輝度変化の制御、および、加算した高周波成分の輝度値が表示レンジを超えた場合に加算量の制限について説明する。
【0063】
図16は、第3実施形態に係るフレームレート変換処理部100のブロック図である。図2に対し、時間変化抑制部301と飽和検出加算部302が追加されている。
【0064】
時間変化抑制部301は、隣接するフレーム画像に対する加算高周波量と現フレーム画像(注目フレーム画像)とにおける加算高周波量の輝度の変化量を所定の範囲内に抑える。それにより、高周波成分が時間的に急激に変化した際のフリッカの発生を抑制することが出来る。
【0065】
また、飽和検出加算部302は、高周波成分が加算されたサブフレームの輝度値が、ディスプレイシステムの表示レンジ以上もしくは以下で飽和した場合に、他のサブフレームに飽和分の値を分散して加算する。これにより、高周波成分の輝度クリッピングを抑制することが出来、解像度の低下を抑制することが可能となる。
【0066】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を構成する各フレーム画像からM個のサブフレーム画像を生成することによりフレームレート変換を行なう画像処理装置であって、
注目フレーム画像と該注目フレーム画像に対し先行するまたは後続するフレーム画像との差分に基づいて、前記注目フレーム画像の各領域について画像の変化の程度を示す変化指標を導出する導出手段と、
前記注目フレーム画像にローパスフィルタ処理を施し低周波フレーム画像を生成する低周波フレーム画像生成手段と、
前記注目フレーム画像と前記低周波フレーム画像との差分により高周波フレーム画像を生成する高周波フレーム画像生成手段と、
前記導出手段により導出された前記注目フレーム画像の各領域の変化指標に応じた重みで、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分をM個の前記低周波フレーム画像に分配し加算することにより前記M個のサブフレーム画像を生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記高周波フレーム画像の画像成分を1個の低周波フレーム画像に加算し、残りのM−1個の低周波フレーム画像には加算しないことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変化指標は動きベクトルであり、前記生成手段は、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分をM個の前記低周波フレーム画像に分配し加算する際に、動きベクトルが大きいほど少数の低周波フレーム画像に集中させて加算することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変化指標は順応輝度であり、前記生成手段は、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分をM個の前記低周波フレーム画像に分配し加算する際に、順応輝度が大きいほど少数の低周波フレーム画像に集中させて加算することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、所定の輝度値を超える画素を有するサブフレーム画像が生成されないように、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分のM個の前記低周波フレーム画像への加算量を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、さらに、前記動画像に含まれる各フレーム画像に対して生成される複数のサブフレーム画像における輝度変化が所定の範囲内に収まるように、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分のM個の前記低周波フレーム画像への加算量を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
動画像を構成する各フレーム画像からM個のサブフレーム画像を生成することによりフレームレート変換を行なう画像処理装置の制御方法であって、
注目フレーム画像と該注目フレーム画像に対し先行するまたは後続するフレーム画像との差分に基づいて、前記注目フレーム画像の各領域について画像の変化の程度を示す変化指標を導出する導出工程と、
前記注目フレーム画像にローパスフィルタ処理を施し低周波フレーム画像を生成する低周波フレーム画像生成工程と、
前記注目フレーム画像と前記低周波フレーム画像との差分により高周波フレーム画像を生成する高周波フレーム画像生成工程と、
前記導出手段により導出された前記注目フレーム画像の各領域の変化指標に応じた重みで、前記高周波フレーム画像に含まれる画像成分をM個の前記低周波フレーム画像に分配し加算することにより前記M個のサブフレーム画像を生成する生成工程と、
を備えることを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至6の何れか一項に記載の画像処理装置の各手段として動作させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−254404(P2011−254404A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128271(P2010−128271)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】