説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像が持つ3次元情報を有効活用し、十分な立体感を持つ画像の表示を可能とする。
【解決手段】奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像を処理して左眼画像および右眼画像を生成する。複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成する。さらに、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、左眼画像および右眼画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、画像処理装置および画像処理方法に関する。特に、この発明は、奥行き方向の位置を変えて撮像された複数の画像を処理して立体画像表示用の左眼画像および右眼画像を生成する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、両眼視差を利用した立体画像表示についての記載がある。図8は、両眼視差を利用した立体画像表示において、スクリーン上におけるオブジェクト(物体)の左右像の表示位置と、その立体像の再生位置との関係を示している。例えば、スクリーン上に図示のように左像Laが右側に右像Raが左側にずれて表示されているオブジェクトAに関しては、左右の視線がスクリーン面より手前で交差するため、その立体像の再生位置はスクリーン面より手前となる。DPaは、オブジェクトAに関する水平方向の視差ベクトルを表している。
【0003】
また、例えば、スクリーン上に図示のように左像Lbおよび右像Rbが同一位置に表示されているオブジェクトBに関しては、左右の視線がスクリーン面で交差するため、その立体像の再生位置はスクリーン面上となる。さらに、例えば、スクリーン上に図示のように左像Lcが左側に右像Rcが右側にずれて表示されているオブジェクトCに関しては、左右の視線がスクリーン面より奥で交差するため、その立体像の再生位置はスクリーン面より奥となる。DPcは、オブジェクトCに関する水平方向の視差ベクトルを表している。
【0004】
従来、例えば、蛍光顕微鏡を用いて、人間の細胞などの生体を、奥行き方向の位置を変えて撮像することが行われている。蛍光顕微鏡は、手前にある物体に遮られることなく、各奥行き位置の画像を撮像できる。
【0005】
蛍光顕微鏡は、観察したい細胞などに蛍光体を付着させ、レーザー光などを照射して励起させ、励起状態から基底状態に戻るときに放射される光を観察する顕微鏡である。詳細説明は省略するが、蛍光顕微鏡としては、共焦点顕微鏡、2光子励起顕微鏡などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−6114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、上述したように奥行き(深さ)方向の位置を変えて撮像した複数枚の画像を画素毎に加算平均の処理を行って1枚の2次元画像を生成して評価することが多かった。図9は、20枚の画像に対して加算平均の処理を行って、1枚の2次元画像を生成する例を示している。「#1」−「#20」は撮像画像を示し、「#1−#20」は生成された2次元画像を示している。この場合、複数枚の画像は奥行き位置を変えて撮像されたものであって3次元の情報を持つが、縮退して2次元の状態で評価するものであり、3次元の情報が有効活用されていない。
【0008】
なお、従来、立体感を出すために、視点を変化させて動かすこと、あるいは、上下関係を強調する影をつけること、等を行っている。しかし、視点を変化させて動かす場合には、ユーザがどこから見るかを操作する必要があり、評価に集中できないという不都合がある。また、上下関係を強調する影をつけるものにあっては、立体感としては不十分である。
【0009】
本技術の目的は、奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像が持つ3次元情報を有効活用し、十分な立体感を持つ画像の表示を可能とする、ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術の概念は、
奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像を処理して左眼画像および右眼画像を生成する画像生成部を備え、
上記画像生成部は、
上記複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成し、
上記各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、上記左眼画像および上記右眼画像を生成する
画像処理装置にある。
【0011】
本技術において、画像生成部により、奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像が処理されて左眼画像および右眼画像が生成される。例えば、複数枚の画像は、蛍光顕微鏡画像である。画像生成部では、複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理が行われて、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群が生成される。そして、さらに、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理が行われて、左眼画像および右眼画像が生成される。このように生成された左眼画像および右眼画像により、両眼視差を利用した立体画像表示が可能となる。
【0012】
この場合、例えば、画像生成部は、複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心として、この基準位置より前側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の一の方向に順次ずらすと共に、この基準位置より奥側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の他の方向にずらす処理を行って左眼画像群を構成する複数枚の画像を生成し、この複数枚の画像に対し画素位置毎に画素の加算平均の処理を行って上記左眼画像を生成し、複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心として、この基準位置より前側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の他の方向に順次ずらすと共に、この基準位置より奥側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の一の方向にずらす処理を行って右眼画像群を構成する複数枚の画像を生成し、この複数枚の画像に対し画素位置毎に画素の加算平均の処理を行って右眼画像を生成する、ようにされる。
【0013】
このように本技術においては、奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理が行われて、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群が生成される。また、本技術においては、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理が行われて左眼画像および右眼画像が生成される。そのため、奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像が持つ3次元情報が有効活用され、十分な立体感を持つ画像の表示が可能となる。
【0014】
本技術において、例えば、画像の奥行き位置とずらし量との関係は非線形に設定されてもよい。視差と奥行きの関係は非線形である。そのため、画像の奥行き位置とずらし量との関係が非線形に設定されることで、厳密に奥行きを再現することが可能となる。
【0015】
また、本技術において、例えば、画像生成部は、各画像群に対して加算平均の処理を行う際に陰面処理を行う、ようにされてもよい。各奥行き位置の画像にその手前にある物体が写り込む場合、この陰面処理を施すことで、各画像が持つ誤った3次元情報を用いることなく、左眼画像および右眼画像を生成することが可能となる。
【0016】
また、本技術において、例えば、画像生成部で生成された各画像の少なくともコントラスト調整を行う画質調整部をさらに備える、ようにされてもよい。この場合、例えば、画像生成部で生成された各画像のダイナミックレンジを広げることで、暗い画像を明るく調整し見やすくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像が持つ3次元情報を有効活用し、十分な立体感を持つ画像の表示が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本技術の第1の実施の形態としての画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】画像生成部における画像のずら処理および加算平均処理を説明するための図である。
【図3】実空間の撮像画像における水平サイズ、垂直サイズおよび奥行きの広がりと、3Dモニター表示上における水平サイズ、垂直サイズおよび奥行きの一例を示す図である。
【図4】画像の奥行き位置とずらし量との関係(線形、非線形)を説明するための図である。
【図5】本技術の第2の実施の形態としての画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】画像生成部における陰面処理を説明するための図である。
【図7】最も前側の画像(#1の画像)にのみ有効領域がある場合の陰面処理を説明するための図である。
【図8】両眼視差を利用した立体画像表示において、スクリーン上におけるオブジェクトの左右像の表示位置と、その立体像の再生位置との関係を説明するための図である。
【図9】従来の奥行き(深さ)方向の位置を変えて撮像した複数枚の画像を画素毎に加算平均の処理を行って1枚の2次元画像を生成する処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.変形例
【0020】
<1.第1の実施の形態>
[画像処理装置の構成]
図1は、本技術の第1の実施の形態としての画像処理装置100の構成例を示している。この画像処理装置100は、画像生成部101と、シフト量決定部102と、画質調整部103を有している。この画像処理装置100は、奥行き位置を変えて撮像された複数枚(N枚)の画像(蛍光顕微鏡画像)に基づいて、ステレオ立体画像を表示するための左眼画像および右眼画像を生成する。
【0021】
画像生成部101は、複数枚の画像(画像データ)に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成する。そして、画像生成部101は、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、左眼画像SLおよび右眼画像SRを生成する。
【0022】
図2は、画像生成部101の処理例を示している。この処理例では、奥行き方向に等間隔をもって順次位置を変えて撮像された#1〜#8の8枚の画像を取り扱う例であり、#4の画像を基準位置の画像としている。
【0023】
画像生成部101は、8枚の画像に対し、基準位置の画像(#4の画像)を中心として、奥行き位置に応じた水平方向へのずらし処理を行って、左眼画像群を構成する複数枚の画像を生成する。すなわち、画像生成部101は、基準位置の画像より前側の画像(#3〜#1の画像)を奥行き位置に応じて水平方向の一の方向に順次ずらすと共に、基準位置の画像より奥側の画像(#5〜#8の画像)を奥行き位置に応じて水平方向の他の方向にずらす。
【0024】
この場合、画像生成部101は、基準位置の画像(#4の画像)より前側の画像を、順次、水平方向に、“+d′”だけずらしていく。これにより、基準位置の画像(#4の画像)に対して、最も手前の画像(#1)の画像は、水平方向に“+3d′”だけずれた状態となる。また、この場合、画像生成部101は、基準位置の画像(#4の画像)より奥側の画像を、順次、水平方向に、“−d′”だけずらしていく。これにより、基準位置の画像(#4の画像)に対して、最も奥の画像(#8)の画像は、水平方向に“−4d′”だけずれた状態となる。ここで、「d′」は、後述するように、シフト量決定部102において、撮像条件および表示条件に基づいて決定されるシフト量を示している。
【0025】
そして、画像生成部101は、ずらし処理が行われた左眼画像群を構成する複数枚の画像(#1〜#8の画像)に対して、画素位置毎に画素(画素データ)の加算平均処理を行って、左眼画像SL(#1−#8)を生成する。この場合、ずらし処理が行われていることから、画素位置によって、加算平均処理の対象となる画素の個数は1個〜8個のいずれかとなる。
【0026】
また、画像生成部101は、8枚の画像に対し、基準位置の画像(#4の画像)を中心として、奥行き位置に応じた水平方向へのずらし処理を行って、右眼画像群を構成する複数枚の画像を生成する。すなわち、画像生成部101は、基準位置の画像より前側の画像(#3〜#1の画像)を奥行き位置に応じて水平方向の他の方向に順次ずらすと共に、基準位置の画像より奥側の画像(#5〜#8の画像)を奥行き位置に応じて水平方向の一の方向にずらす。このずらし処理は、上述の左眼画像群を構成する複数枚の画像を生成する場合とは逆の方向への対称的なずらしを行う処理となる。
【0027】
この場合、画像生成部101は、基準位置の画像(#4の画像)より前側の画像を、順次、水平方向に、“−d′”だけずらしていく。これにより、基準位置の画像(#4の画像)に対して、最も手前の画像(#1)の画像は、水平方向に“−3d′”だけずれた状態となる。また、この場合、画像生成部101は、基準位置の画像(#4の画像)より奥側の画像を、順次、水平方向に、“+d′”だけずらしていく。これにより、基準位置の画像(#4の画像)に対して、最も奥の画像(#8)の画像は、水平方向に“+4d′”だけずれた状態となる。
【0028】
そして、画像生成部101は、ずらし処理が行われた右眼画像群を構成する複数枚の画像(#1〜#8の画像)に対して、画素位置毎に画素(画素データ)の加算平均処理を行って、右眼画像SR(#1−#8)を生成する。この場合、ずらし処理が行われていることから、画素位置によって、加算平均処理の対象となる画素の個数は1個〜8個のいずれかとなる。
【0029】
図1に戻って、シフト量決定部102は、撮像条件および表示条件に基づいて、シフト量dを決定する。以下、シフト量決定部102におけるシフト量d′の決定方法の詳細を説明する。なお、図3は、実空間の撮像画像における水平サイズ、垂直サイズおよび奥行きの広がりと、3Dモニター表示上における水平サイズ、垂直サイズおよび奥行きの一例を示している。
【0030】
撮像画像のドットピッチをdps[m]とすると、撮像画像上での奥行きの広がりは、Zs[pixel]=Zs[m]/dpsである。一方で、立体表示時に再現される奥行きLd[m]は、Ld=Ls・de/(de+d)となる。ここで、Lsは視聴距離、deは両眼間隔、dは視差(手前側が正となる定義)を表す。撮像画像を表示したときの画角に合わせて、ステレオ画像を作成するためには、Zsと同等となるdを設定すればよい。
【0031】
ここで、一番手前の対象画像の視差をdmax、最奥の対象画像の視差をdminとすると、以下の(1)式が成り立つ。
【数1】

【0032】
なお、dpdは、表示ディスプレイのドットピッチを表している。(1)式から、dmaxとdminの差であるΔdは以下の(2)式で表され、Δdをピクセル値で表すと、(3)式となる。
【数2】

【数3】

【0033】
この(3)式から、シフト量d′[pixel]は、(4)式で表される。ここで、Nは、撮像画像の枚数を示している。
【数4】

【0034】
なお、(5)式は、(4)式に(3)式を代入し、さらに、スケーリングパラメータs(通常は1)を加えたものである。
【数5】

【0035】
なお、全てのパラメータが得られない場合、予め次のように設定してもよい。
(1)ディスプレイは46Vサイズの1920×1080のパネルで、ドットピッチdpdは0.053[m]
(2)視聴距離Lsは3H(ディスプレイの高さの3倍)
(3)両眼間隔deは6.5cm
【0036】
また、d′は、適宜、定数倍してもよい。この場合、スケーリングパラメータsを調整する。また、Δdが、快適な視差レンジを超える場合、d′を縮小して、快適な視差範囲に収める。この場合、スケーリングパラメータsを調整する。詳細説明は省略するが、快適な視差範囲は、想定視聴距離、画面サイズなどから求めることができる。例えば、46V型TVで快適に視聴できる範囲は、視聴距離1.7mでは、奥行きが0.5m(手前)〜1.5m(奥)であり、視差に置き換えると−56画素(手前)〜55画素(奥)である。
【0037】
なお、上述では画像の奥行き位置とずらし量との関係を、図4(a)に示すように、線形に設定したものである。そのため、奥行き方向に等間隔をもって順次位置を変えて撮像された#1〜#8の8枚の画像に対してシフト量d′だけ順次ずらす処理を行っている。この場合、各画像に付与する視差はΔdを等分したものとなる。
【0038】
しかし、画像の奥行き位置とずらし量との関係を、図4(b)に示すように、非線形に設定してもよい。この場合、各画像に付与する視差はΔdを非線形に分けたものとされる。本来、視差と奥行きの関係は非線形であるため、このように画像の奥行き位置とずらし量との関係が非線形に設定されることで、厳密に奥行きを再現可能となる。
【0039】
図1に戻って、画質調整部103は、画像生成部101で生成された左眼画像SLおよび右眼画像SRに対して、コントラスト調整などの画質調整を行って、画質調整された左眼画像SL′および右眼画像SR′を出力する。この場合、例えば、画像生成部101で生成された各画像のダイナミックレンジを広げることで、暗い画像を明るく調整し、見やすくすることが可能となる。
【0040】
図1に示す画像処理装置100の動作を説明する。奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像(画像データ)は画像生成部101に供給される。また、シフト量決定部102に、撮像画像のドットピッチ、撮像画像の奥行きの広がり等の撮像条件、および視聴距離、両眼間隔等の表示条件を示すパラメータが供給される。そして、シフト量決定部102では、例えば、(5)式に基づいて、シフト量d′が決定される。このシフト量d′は、画像生成部101における各画像のずらし処理に用いられる。
【0041】
画像生成部101では、複数枚(N枚)の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理が行われて、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群が生成される。そして、画像生成部101では、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理が行われて、左眼画像SLおよび右眼画像SRが生成される(図2参照)。
【0042】
画像生成部101で生成された左眼画像SLおよび右眼画像SRは画質調整部103に供給される。画質調整部103では、左眼画像SLおよび右眼画像SRに対して、コントラスト調整などの画質調整が行われる。例えば、画像生成部101で生成された各画像のダイナミックレンジが広げられ、暗い画像が明るく調整される。そして、画質調整部103から画質調整された左眼画像SL′および右眼画像SR′が出力される。
【0043】
上述したように、図1に示す画像処理装置100において、画像生成部101では、奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像に基づいて、視差が付与された左眼画像SLおよび右眼画像SRが生成される。すなわち、画像生成部101では、奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理が行われ、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群が生成される。
【0044】
そして、この画像生成部101では、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理が行われて左眼画像SLおよび右眼画像SRが生成される。そのため、奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像が持つ3次元情報が有効活用されて、視差が付与された左眼画像SLおよび右眼画像SRが生成されるものであり、十分な立体感を持つ画像の表示が可能となる。
【0045】
また、図1に示す画像処理装置100において、画像生成部101で生成された左眼画像SLおよび右眼画像SRは画質調整部103に供給され、コントラスト調整などの画質調整が行われる。そのため、例えば、画像生成部101で生成された各画像SL,SRのダイナミックレンジが広げられ、暗い画像が明るく調整され、立体画像を見やすくすることができる。
【0046】
<第2の実施の形態>
[画像処理装置の構成例]
図5は、本技術の第2の実施の形態としての画像処理装置100Aの構成例を示している。この画像処理装置100Aは、画像生成部101Aと、シフト量決定部102と、画質調整部103を有している。この図5において、図1と対応する部分には同一符号を付し、適宜、その詳細説明を省略する。
【0047】
この画像処理装置100Aは、図1に示す画像処理装置100と同様に、奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像に基づいて、ステレオ立体画像を表示するための左眼画像および右眼画像を生成する。ただし、この画像処理装置100Aでは、画像生成部101Aで陰面処理が行われることから、複数枚(N枚)の画像として、例えば、蛍光顕微鏡画像でない、各奥行き位置の画像にその手前にある物体が写り込んでいるような画像の処理が可能となる。
【0048】
画像生成部101Aは、複数枚(N枚)の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成する。そして、画像生成部101は、各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、左眼画像SLおよび右眼画像SRを生成する。この処理は、図1に示す画像処理装置100における画像生成部101の処理と同じである。
【0049】
画像生成部101Aは、画像生成部101とは異なり、有効領域の情報に基づいて、各画像群に対して加算平均の処理を行う際に、陰面処理を行う。ここで、有効領域は、各画像の撮像位置に実際に存在する物体の領域を示す。例えば、有効領域の情報は、ユーザにより手動で与えられる。また、例えば、有効領域の情報は、例えば、画像生成部101Aにおいて、空間周波数が高い部分、あるいは低い部分を抽出して有効領域としてもよい。なお、図5においては、有効領域情報が画像生成部101Aの外部から与えられるように示している。
【0050】
陰面処理について説明する。図6(a)は、陰面処理を行わない場合を示している。この場合には、各画素位置においては、蓄積重みは、「1/画像数」とされる。例えば、8枚の画像が重なる画素位置においては、その蓄積重みは1/8とされる。これに対して、図6(b)は、陰面処理を行う場合を示している。この場合、有効領域がない各画素位置においては、蓄積重みは、「1/画像数」とされる。しかし、有効領域内の蓄積重みは1とされ、手前側の画像の有効領域の陰面に当たる部分で、奥側の画像の蓄積重みは0とされる。なお、陰面処理は、この図6(b)に示す方法に限定されるものではない。
【0051】
図7は、最も前側の画像(#1の画像)にのみ有効領域がある場合の陰面処理を示している。なお、図7には、図面の簡単化のために、左眼画像SLの処理についてだけ示している。この場合、#1の画像の有効領域内の各画素位置においては、この#1の画像の画素がそのまま左眼画像SL(#1−#8)の画素とされる。そして、#1の画像の有効領域外の各画素位置においては、各画像の画素が加算平均されて左眼画像SL(#1−#8)の画素とされる。
【0052】
図5に示す画像処理装置100Aのその他は、図1に示す画像処理装置100の構成と同様であり、同様の動作をする。
【0053】
図5に示す画像処理装置100Aにおいては、図1に示す画像処理装置100と同様の効果を得ることができる。さらに、図5に示す画像処理装置100Aにおいては、画像生成部101Aにおいて、左眼画像群および右眼画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って左眼画像SLおよび右眼画像SRを生成する際に、陰面処理が行われる(図6(b)参照)。そのため、複数枚(N枚)の画像として、例えば、蛍光顕微鏡画像でない、各奥行き位置の画像にその手前にある物体が写り込んでいるような画像の処理が可能となる。つまり、この陰面処理を施すことで、各画像が持つ誤った3次元情報を用いることなく左眼画像SLおよび右眼画像SRを生成することが可能となる。
【0054】
<3.変形例>
なお、上述実施の形態においては、奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像が蛍光顕微鏡などの顕微鏡画像であるものを示した。しかし、本技術は、その他の奥行き位置を変えて撮像された複数枚の画像を処理して、ステレオ立体画像用の左眼画像および右眼画像を生成する際にも、同様に適用できる。
【0055】
また、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像を処理して左眼画像および右眼画像を生成する画像生成部を備え、
上記画像生成部は、
上記複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成し、
上記各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、上記左眼画像および上記右眼画像を生成する
画像処理装置。
(2)上記画像生成部は、
上記複数枚の画像に対し、上記基準位置の画像を中心として、該基準位置より前側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の一の方向に順次ずらすと共に、該基準位置より奥側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の他の方向にずらす処理を行って左眼画像群を構成する複数枚の画像を生成し、該複数枚の画像に対し画素位置毎に画素の加算平均の処理を行って上記左眼画像を生成し、
上記複数枚の画像に対し、上記基準位置の画像を中心として、該基準位置より前側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の上記他の方向に順次ずらすと共に、該基準位置より奥側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の上記一の方向にずらす処理を行って右眼画像群を構成する複数枚の画像を生成し、該複数枚の画像に対し画素位置毎に画素の加算平均の処理を行って上記右眼画像を生成する
前記(1)に記載の画像処理装置。
(3)上記画像の奥行き位置とずらし量との関係は非線形に設定される
前記(1)または(2)に記載の画像処理装置。
(4)上記画像生成部は、
上記各画像群に対して上記加算平均の処理を行う際に陰面処理を行う
前記(1)から(3)のいずれかに記載の画像処理装置。
(5)上記画像生成部で生成された上記各画像の少なくともコントラスト調整を行う画質調整部をさらに備える
前記(1)から(4)のいずれかに記載の画像処理装置。
(6)上記奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像は、蛍光顕微鏡画像である
前記(1)から(5)のいずれかに記載の画像処理装置。
【符号の説明】
【0056】
100,100A・・・画像処理装置
101,101A・・・画像生成部
102・・・シフト量決定部
103・・・画質調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像を処理して左眼画像および右眼画像を生成する画像生成部を備え、
上記画像生成部は、
上記複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成し、
上記各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、上記左眼画像および上記右眼画像を生成する
画像処理装置。
【請求項2】
上記画像生成部は、
上記複数枚の画像に対し、上記基準位置の画像を中心として、該基準位置より前側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の一の方向に順次ずらすと共に、該基準位置より奥側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の他の方向にずらす処理を行って左眼画像群を構成する複数枚の画像を生成し、該複数枚の画像に対し画素位置毎に画素の加算平均の処理を行って上記左眼画像を生成し、
上記複数枚の画像に対し、上記基準位置の画像を中心として、該基準位置より前側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の上記他の方向に順次ずらすと共に、該基準位置より奥側の画像を奥行き位置に応じて水平方向の上記一の方向にずらす処理を行って右眼画像群を構成する複数枚の画像を生成し、該複数枚の画像に対し画素位置毎に画素の加算平均の処理を行って上記右眼画像を生成する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記画像の奥行き位置とずらし量との関係は非線形に設定される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記画像生成部は、
上記各画像群に対して上記加算平均の処理を行う際に陰面処理を行う
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記画像生成部で生成された上記各画像の少なくともコントラスト調整を行う画質調整部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像は、蛍光顕微鏡画像である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
奥行き方向の位置を変えて撮像された複数枚の画像に対し、基準位置の画像を中心とし、奥行き位置に応じて、互いに逆方向にずらす処理を行って、視差が付与された左眼画像群および右眼画像群を生成する第1のステップと、
上記第1のステップで生成された上記各画像群に対して画素位置毎に画素の加算平均処理を行って、上記左眼画像および上記右眼画像を生成する第2のステップと
を有する画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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