説明

画像処理装置

【課題】起動のタイミングの異なる複数の制御部を用いて効率的な制御を実行可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】第2CPUが起動して(S102:YES)、起動した第2CPUによりデバイスを制御されることでジョブを実行する(S106)。そのジョブが実行されている間に第1CPUが起動したことに応じて(S108:YES)、第1CPUがデバイスを制御してジョブを実行する(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特に処理部を複数備える画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スキャン、コピー、PCプリント、FAX送受信など、画像データに対する処理を伴うジョブを実行可能な画像処理装置において、複数の制御部を備える画像処理装置が知られている。例えば、特許文献1の画像処理装置は、高速のCPUを有するメイン制御部と、低速のCPUを有するサブ制御部とを備えており、通常時は、メイン制御部が印刷部等を制御し、サブ制御部が外部機器とのインターフェイスを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−101609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の制御部が起動する際に、異なるタイミングで各制御部が起動することがある。上記従来の技術では複数の制御部におけるそれぞれの起動のタイミングが異なることを想定していなかったため、この様な状況において必ずしも効率の良い制御が行われていなかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、起動のタイミングの異なる複数の制御部を用いて効率的な制御を実行可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、画像データに対する処理を伴うジョブを実行可能な画像処理装置であって、画像データに対する処理を行う処理部と、前記処理部を制御し、入力されたジョブを実行する複数の制御部と、を備え、前記複数の制御部の内の少なくとも一つの制御部である先行制御部が処理部を制御している間に、前記複数の制御部の内の少なくとも一つの制御部であり前記先行制御部とは異なる後続制御部が起動したことに応じて、当該後続制御部が前記処理部を制御する。
【0007】
上記の構成を採用すれば、処先行制御部が理部を制御している間に起動した後続制御部にて処理部を制御することにより、起動のタイミングの異なる複数の制御部を用いて処理部を効率よく制御することが可能となる。
【0008】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記先行制御部が処理部を制御しジョブを実行している間に、前記後続制御部が起動したことに応じて、当該後続制御部が前記処理部を制御することで実行中の当該ジョブを実行しても良い。
【0009】
上記の構成を採用すれば、先行制御部にてジョブが実行されている間に起動した後続制御部にて、実行中の当該ジョブを効率よく実行可能となる。
【0010】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記複数の制御部に電源を供給する電源部を備え、前記先行制御部は、前記電源部から電源が供給されてから起動するまでの起動時間が、前記後続制御部の起動時間に対して早く、前記電源部が前記先行制御部及び前記後続制御部
に電源を供給したことに応じて、前記先行制御部が起動したことに応じて、前記先行制御部にて先行して前記処理部を制御可能であっても良い。
【0011】
上記の構成を採用すれば、先行制御部及び後続制御部に電源部から電源が供給されたことに応じて、先に起動する制御部にて先行して処理部を制御可能であるため、処理部の制御を早く開始することが可能である。
【0012】
さらに、本発明の画像形成装置は、前記後続制御部が起動したことに応じて、前記先行制御部が処理部の制御を停止し、前記後続制御部が前記処理部を制御しても良い。
【0013】
上記の構成を採用すれば、後に起動した後続制御部に処理部の制御を受け渡すことで、先行制御部が処理部を制御しないため、複数の制御部にて処理部を制御する構成に比べて消費電力を低減することが出来る。
【0014】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記後続制御部が起動したことに応じて、前記先行制御部及び前記後続制御部が前記処理部を制御しても良い。
【0015】
上記の構成を採用すれば、先行して処理部を制御している先行制御部と後に起動した後続制御部とによって処理部を制御するため、処理部を制御する制御部の数が増えることで処理部を制御する処理能力が上がり処理部を高速で制御可能である。
【0016】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記ジョブの処理負荷を判断する判断部を備え、前記判断部にて前記ジョブの処理負荷が所定の閾値を超えないジョブであると判断したことに応じて、前記後続制御部が前記処理部を制御することを禁止しても良い。
【0017】
上記の構成を採用すれば、処理部により処理負荷が低いジョブを実行する場合、どのような制御部で処理部を処理してジョブを実行しても十分な処理能力を確保できるため、結果的にジョブが完了するまでの時間が変わらないことがある。この様な場合、後から起動する後続制御部が処理部を制御すると、後続制御部が処理部を制御する際の準備処理にて余計な時間がかかってしまう。従って、この様な場合は後続処理部が処理部を制御することを禁止することで、ジョブの処理時間を遅延しないようにすることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、起動のタイミングの異なる複数の制御部を用いて効率的な制御を実行可能な画像処理装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施形態1の起動処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、スキャン機能の設定と処理負荷との関係を示したテーブルである。
【図4】図4は、実施形態2の起動処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、ウォームアップ処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、機能と処理負荷との関係を示したテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図1から図3を参照して説明する。
【0021】
1.プリンタの構成
図1は、本実施形態の画像処理装置の一例であるプリンタ1の電気的構成を示すブロッ
ク図である。
【0022】
プリンタ1は、プリント機能、コピー機能、スキャン機能などの複数の機能を実行可能な複合機である。プリンタ1は、図1に示すように、第1CPU11(後続制御部の一例)と第2CPU12(先行制御部の一例)との2つのCPU(複数の制御部、判断部の一例)、ROM13、RAM14、NVRAM15を備えている。
【0023】
第1CPU11は、第2CPU12に比べて処理能力が高く、また消費電力が大きい。より具体的には、例えば、第1CPU11にはPLL回路(位相同期回路)が備えられており、基本クロック発生回路にて発生した基本クロック信号の周波数を上げることで、第2CPU12よりも高い動作クロックで駆動される。
【0024】
さらに、第1CPU11は、第2CPU12に比べ起動時間が遅い。より具体的には、例えば、第1CPU11にはPLL回路が備えられているため、第2CPU12に対して回路が複雑であるため、起動時間の差が生じる。
【0025】
尚、一般的にCPUの動作クロックが高いほど、上記の様にCPUの回路が複雑化する。更にCPUに備えられているメモリにOS等のプログラムが備えられることもあるので、動作クロックの高いCPUは、駆動可能になるまでの準備に必要な時間が長く、起動時間が遅くなる可能性が高い。
【0026】
ROM13には、後述する起動処理など、プリンタ1の動作を制御するためのプログラムが記録されており、第1CPU11及び第2CPU12は、それぞれROM13から読み出したプログラムに従ってプリンタ1の動作を制御する。
【0027】
また、プリンタ1は、HDD(ハードディスクドライブ)18、ネットワークインターフェイス19、ファクシミリインターフェイス20、操作部21、表示部22を備えている。ネットワークインターフェイス19は、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の通信回線30に接続されている。通信回線30には、複数台の外部のコンピュータ(図示せず)などが接続可能であり、プリンタ1は、ネットワークインターフェイス19を介して通信回線30に接続されたコンピュータ等と通信を行う。
【0028】
ファクシミリインターフェイス20は、電話回線31を介してファクシミリ装置等の外部機器(図示せず)に接続することができ、プリンタ1は、ファクシミリインターフェイス20を介して接続された外部機器との間でファクシミリデータの送受信が可能である。操作部21は、複数のボタンを有し、ユーザによってジョブの実行指示などの各種の入力操作が可能である。表示部22は、ディスプレイやランプ等を有し、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。
【0029】
さらに、プリンタ1は、スキャナ部23、画像処理部24、印刷部25などの各種のデバイス(それぞれ処理部の一例)を備えている。スキャナ部23は、原稿を読み取って読取データを取得する。画像処理部24は、スキャナ部23からの読取データやネットワークインターフェイス19で受信した印刷データなど、各種の画像データに対する画像処理(補正や色変換など)を行う。印刷部25は、例えば電子写真方式やインクジェット方式により、上記画像データに基づく画像をシート(用紙、OHPシート等)に印刷する。
【0030】
また、上記デバイスは単独又は協働して以下の機能を実行する。
【0031】
「プリント機能」は、ネットワークインターフェイス19が例えば外部のコンピュータから印刷データを受信し、画像処理部24がその印刷データに所定の画像処理(例えばビ
ットマップデータへの展開処理)をし、印刷部25が印刷対象画像をシートに印刷する。
【0032】
「コピー機能」は、操作部21がユーザによるコピー指示を受け付け、スキャナ部23が原稿の読取データを生成し、画像処理部24がその読取データに所定の画像処理をし、印刷部25が読取画像をシートに印刷する。
【0033】
「スキャン機能」は、操作部21がユーザによるスキャン指示を受け付け、スキャナ部23が原稿の読取データを生成する。
【0034】
「ファクシミリ通信機能」は、操作部21がユーザによるファクシミリ通信指示を受け付け、ファクシミリインターフェイス20が外部機器との間でファクシミリデータのやり取りを行う。
【0035】
尚、ユーザ等によって指示された一つ一つの実行される機能のことをジョブと呼ぶ。
【0036】
また、プリンタ1は、電源部26を備えている。電源部26は、電源ケーブル32を介して外部電源から電力が供給され、供給された電力によってプリンタ1の各デバイスが動作する。
【0037】
尚、上述したHDD18等の構成部やスキャナ部23等のデバイスは、上記した第1CPU11及び第2CPU12のどちらであっても制御可能である。しかしながら、上述したように第1CPU11と第2CPU12では処理能力が異なるため、制御するCPUに応じて各構成要素及びデバイスを処理する際の処理速度が異なる。
【0038】
2.本実施形態の起動処理
図2は、本実施形態におけるプリンタ1の起動処理を示すフローチャートである。プリンタ1の電源スイッチ(図示せず)がオンになったことに応じて、当該処理を実行する。
【0039】
起動処理では、電源スイッチがオンされたことで、S101にて電源部26が第1CPU11及び第2CPU12に電力の供給を開始し、S102にて第2CPU12が起動するまでプリンタ1の動作は待機する(S102:NO)。
【0040】
ここで、第2CPU12が起動すると(S102:YES)、プリンタ1は第2CPU12により各デバイスを制御可能な状態となる。尚、上述で説明した様に、第1CPU11は第2CPU12に対して起動時間が遅いため、S102にてYESの判断をした時点では第2CPU12が起動しているのみで、第1CPU11はまだ起動していない状態である。
【0041】
次に、第2CPU12は、S103にてジョブの実行指示が有ったか否かを判断する。具体的には、第2CPU12は、例えば起動された第2CPU12により制御されている操作部21にて上述した各機能に応じたジョブを実行する際の実行指示を行ったか否かを判断する。尚、この実行指示は外部のコンピュータからの実行指示(例えばPCプリントの指示等)であってもよい。
【0042】
ここで、ジョブの実行指示が無いと判断する場合は(S103:NO)、第2CPU12は、S104にて第1CPU11が起動したか否かを判断する。ここで第1CPU11が起動していないと判断する場合は(S104:NO)、処理がS103の処理に戻る。即ち、S103及びS104の判断により、第2CPU12が起動してから、第1CPU11が起動するまでの間、ジョブの実行指示があるか否かを判断する。
【0043】
一方、S104にて第1CPU11が起動したと判断する場合は(S104:YES)、S105にて第1CPU11が第2CPU12を停止し、当該起動処理を終了する。尚、具体的なS105の処理は、まず第2CPU12が必要なデータをRAM14に記憶する。そして、起動した第1CPU11は、当該データをRAM14から読み込んで各種の制御を引き継ぎ、第1CPU11は、第2CPU12を停止させる。
【0044】
また、S103でジョブ実行指示が有ると判断する場合は(S103:YES)、S106にて第2CPU12でジョブを実行する。即ち、第2CPU12はデバイスを制御し、上述した機能を実行する。尚、S106での処理の際には処理能力の低い第2CPU12がデバイスを制御しジョブを実行するため、全体的に処理速度が遅い。
【0045】
上記したジョブの実行中に、第2CPU12は、S107にてジョブが完了したか否かを判断する。この時、ジョブが完了していないと判断した場合は(S107:NO)、更にS108にて第1CPU11が起動したか否かを判断する。
【0046】
ここで、第1CPU11が起動していないと判断した場合は(S108:NO)、S107に処理が戻ることで、ジョブが完了するか第1CPU11が起動するまで第2CPU12がジョブの実行を継続する。
【0047】
一方、S107にて第2CPU12が各デバイスを制御することでジョブが完了した場合(S107:YES)、処理がS104に移行し、以降は上述したS104の処理の説明の通り動作する。
【0048】
また、ジョブの実行中にS108にて第1CPUが起動した場合(S108:YES)、第2CPU12は、S109にてジョブの処理負荷が閾値を超えているか否かを判断する。具体的には、既に起動している第2CPU12が、NVRAM15に記憶されている図3に示したテーブル等を参照して、実行しているジョブの処理負荷が閾値を超えているジョブであるか否かを判断する。
【0049】
ここで図3を説明する。図3はスキャン機能を実行する際の設定(解像度及びモノクロ・カラー設定)に基づき、実行されているジョブの処理負荷が高いジョブであるか低いジョブであるかを示している。
【0050】
具体的に図3に示すテーブルを説明すると、当該テーブルの縦軸には、ユーザが設定可能なスキャン解像度である300dpi,600dpi,1200dpiが示されており、当該テーブルの横軸には、ユーザが設定可能なスキャンモードであるモノクロスキャン又はカラースキャンが示されており、それらの組み合わせにより処理負荷の高い「高」、処理負荷の低い「低」が設定されている。
【0051】
例えば、第2CPU12は、S109の判断にて実行されるジョブが、解像度が600dpiに設定されたモノクロスキャンジョブの場合、図3を参照すると「低」と設定されているため、処理負荷が低いジョブであると判断する。また、解像度が1200dpiに設定されたカラースキャンジョブの場合、図3を参照すると「高」と設定されているため、処理負荷が高いジョブであると判断する。即ち、前者の判断では処理負荷が閾値を超えていないと判断され、後者の判断では処理負荷が閾値を超えていると判断される。
【0052】
尚、図3はスキャン機能を例にして示したテーブルであるが、NVRAM15には他の機能に対しても同様のテーブルが記憶されている。
【0053】
上述の様に、第2CPU12が、S109にて実行中のジョブの処理負荷が閾値を超え
ているか否かを判断し、超えていると判断する場合(S109:YES)、S110にて第1CPUにジョブを受け渡し、第2CPU12を停止する。具体的には、まず第2CPU12がジョブ実行に必要なデータをRAM14に記憶する。そして、起動した第1CPU11は、当該データをRAM14から読み込んで各種の制御を引き継ぎ、第1CPU11は、第2CPU12を停止させる。その後、第1CPU11がジョブの続きを実行する。
【0054】
その後、第2CPU12にてデバイスを制御し、S111でジョブが完了するまでジョブの実行を続行する(S111:NO)。そして、ジョブが完了すると(S111:YES)、当該起動処理を終了する。
【0055】
一方、第2CPU12が、S109にて実行中のジョブの処理負荷が閾値を超えていないと判断する場合(S109:NO)、S112にてジョブが完了するまで第2CPU12がデバイスを制御しジョブの実行を続行する(S112:NO)。そして、ジョブが完了すると、S113にて第1CPU11が第2CPU15を停止し、当該起動処理を終了する。尚、S113にて第2CPU12を停止する方法は、S105の処理と同様である。
【0056】
以上のように、S105,S113の処理が終了したこと、又はS111にてYESの判断をしたことに応じて、当該起動処理が終了する。尚、当該起動処理が終了した後、プリンタ1は基本的に第1CPU11のみで動作することとなるため、第2CPU12を起動しておくための電力を消費することなくプリンタ1を動作させることが可能である。
【0057】
尚、S109の処理は本発明の判断部に相当する。
【0058】
3.本実施形態の効果
本実施形態1によれば、上記起動処理により、第2CPU12にてデバイスが制御されている間に起動した第1CPU11にてデバイスを制御することで、起動のタイミングが異なる複数のCPUを用いてデバイスを効率よく制御することが可能となる。
【0059】
また、第2CPU12にてジョブが実行されている間に起動した第1CPU11にて、実行中のジョブを効率よく実行可能となる。
【0060】
更に、第1CPU11及び第2CPU12に電源部26から電源が供給されたことに応じて、先に起動する第2CPU12にて先行してデバイスを制御可能であるため、デバイスの制御を早く開始することが可能である。
【0061】
また、後に起動した第1CPU11にデバイスの制御を受け渡すことで、第2CPU12がデバイスを制御しないため、複数のCPUにてデバイスを制御する構成に比べて消費電力を低減することが出来る。
【0062】
更に、デバイスにより処理負荷が低いジョブを実行する場合、どちらのCPUでデバイスを処理してジョブを実行しても十分な処理能力を確保できるため、結果的にジョブが完了するまでの時間が変わらないことがある。
【0063】
即ち、本実施形態では、S109にてジョブの処理負荷が閾値を超えていないと判断した場合(S109:NO,実行中のジョブが「低」のジョブであった場合)、第1CPU11及び第2CPU12のどちらでデバイスを制御しジョブを処理しても、処理速度は変化しない。
【0064】
この様な場合、後から起動する第1CPU11がデバイスを制御すると、第1CPU11がデバイスを制御する際にジョブを受け渡す準備処理にて余計な時間がかかってしまう。従って、この様な場合は第1CPU11がデバイスを制御することを禁止することで、ジョブの処理時間を遅延しないようにすることが可能である。
【0065】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について図1,図3及び図4を参照して説明する。尚、上述した実施形態1のプリンタ1に対して本実施形態2におけるプリンタ1の構成の相違は特に無い。但し、本実施形態2では、ジョブを実行する際に、第1CPU11及び第2CPU12が並列制御にてデバイスを制御することが可能な構成となっている。その点を以下で説明する。
【0066】
4.本実施形態の起動処理
図4は、本実施形態におけるプリンタ1の起動処理を示すフローチャートである。プリンタ1の電源スイッチ(図示せず)がオンになったことに応じて、当該処理を実行する。尚、本実施形態2における起動処理では、実施形態1の起動処理と比べて、S105及びS113の処理が省略されている。更に、実施形態1の起動処理におけるS110の処理に換わってS201の処理が実行される。
【0067】
以下の説明では、実施形態1の起動処理と同等の処理を実行するステップに同じ符号を付し、実施形態1の起動処理と説明が重複する部分は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0068】
本実施形態の起動処理では、電力供給が開始され第2CPU12が起動した後(S101,S102:YES)、ジョブの実行指示がされずに第1CPU11が起動されると(S103:NO,S104:YES)、第2CPU12を停止することなく、当該起動処理を終了する。
【0069】
さらに、S103にてジョブの実行指示を判断し(S103:YES)、第2CPU12がジョブを実行している間に(S106,S107:NO)第1CPU11が起動すると(S108:YES)、S109にて実行中のジョブの処理負荷をNVRAM15に記憶されているテーブル(例えば図3のテーブル)から判断する。
【0070】
ここで実行中のジョブの処理負荷が閾値を超えている場合(S109:YES)、S201にて実行中のジョブを第1CPU11及び第2CPU12がデバイスを並列処理することでジョブを実行する。尚、具体的には、まず第2CPU12がジョブ実行に必要なデータをRAM14に記憶する。そして、起動した第1CPU11は、当該データをRAM14から読み込んで各種の制御を引き継ぎ、第1CPU11及び第2CPU12がそれぞれデバイスを制御することでジョブの続きを実行する。
【0071】
その後、第1CPU11及び第2CPU12にてデバイスを制御しジョブが完了すると(S111:YES)、当該起動処理を終了する。
【0072】
一方、S109で実行中のジョブの処理負荷が閾値を超えていない場合(S109:NO)、第2CPU12にてデバイスを制御しジョブが完了すると(S112:YES)、第2CPU12を停止することなく、当該起動処理を終了する。
【0073】
以上のように、S104,S111,S113にてYESの判断をしたことに応じて、当該起動処理が終了する。尚、当該起動処理が終了した後、プリンタ1は基本的に第1CPU11及び第2CPU12にて並列制御をすることで動作することとなるため、処理速
度を早くして各機能を実行することが可能である。
【0074】
尚、S109の処理は本発明の判断部に相当する。
【0075】
5.本実施形態の効果
本実施形態2によれば、上記起動処理により、第2CPU12にてデバイスが制御されている間に起動した第1CPU11にてデバイスを制御することで、起動のタイミングが異なる複数のCPUを用いてデバイスを効率よく制御することが可能となる。
【0076】
また、第2CPU12にてジョブが実行されている間に起動した第1CPU11にて、実行中のジョブを効率よく実行可能となる。
【0077】
更に、第1CPU11及び第2CPU12に電源部26から電源が供給されたことに応じて、先に起動する第2CPU12にて先行してデバイスを制御可能であるため、デバイスの制御を早く開始することが可能である。
【0078】
また、先行してデバイスを制御している第2CPU12と後に起動した第1CPU11とによってデバイスを制御するため、デバイスを制御するCPUの数が増えることでデバイスを制御する処理能力が上がりデバイスを高速で制御可能である。
【0079】
更に、デバイスにより処理負荷が低いジョブを実行する場合、どちらのCPUでデバイスを処理してジョブを実行しても十分な処理能力を確保できるため、結果的にジョブが完了するまでの時間が変わらないことがある。
【0080】
即ち、本実施形態では、S109にてジョブの処理負荷が閾値を超えていないと判断した場合(S109:NO,実行中のジョブが「低」のジョブであった場合)、第1CPU11及び第2CPU12のどちらでデバイスを制御しジョブを処理しても、処理速度は変化しない。
【0081】
この様な場合、後から起動する第1CPU11がデバイスを制御すると、第1CPU11がデバイスを制御する際にジョブを受け渡す準備処理にて余計な時間がかかってしまう。従って、この様な場合は第1CPU11がデバイスを制御することを禁止することで、ジョブの処理時間を遅延しないようにすることが可能である。
【0082】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
(1)上記実施形態では、複合機であるプリンタ1を例に挙げたが、本発明の「画像処理装置」はこれに限れない。例えばスキャナ機能やファクシミリ機能を有しないプリンタや、ファクシミリ装置単体、画像読取装置単体であってもよい。要するに、画像データに対する機能を実行可能な画像処理装置であればよい。
【0084】
(2)上記実施形態では、プリント機能、コピー機能、スキャン機能、ファクシミリ通信機能などを例に挙げたが、本発明はこれに限られない。例えば画像データをHDD18に蓄積する画像蓄積機能、スキャンデータなどから特定画像を抽出する特定画像抽出機能、メール機能や、端末装置10から画像データを受信し、その受信した画像データに基づくファクシミリデータを外部のファクシミリ装置に送信する、PCファックス機能などでもよい。要するに、画像データに対する機能であればよい。また、操作部21を操作自体を機能とみなしてもよく(操作機能)、操作機能の場合は、間接的に画像データに対する
処理を実行する。
【0085】
(3)上記実施形態では、2つのCPU11,12を備えるプリンタ1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られず、3つ以上のCPUを備える画像処理装置でもよい。
【0086】
(4)上記実施形態では、2つのCPU11,12は、処理能力が異なり消費電力が異なるCPUであることを前提としたが、各CPUの起動時間さえ異なれば、処理能力や消費電力は同じであってもよい。また、2つのCPUのうち起動時間が短いCPUが、処理能力が高く消費電力が低いCPUであってもよい。
【0087】
(5)上記実施形態では、図3のテーブルをプリンタ1に備えられたNVRAM15に記憶させているが、本発明はこれに限られない。例えばプリンタ1のHDD18や外部のコンピュータが備えるHDDなど、プリンタ1に対して外部を記憶装置に登録してもよい。
【0088】
(6)上記実施形態では、第1CPU11及び第2CPU12に同じタイミングで電力が供給される際の、起動処理における第1CPU11及び第2CPU12の動作を例に挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限られない。上記実施形態では
例えば、プリンタ1の状態として省電力モードと通常モードの二種類があり、省電力モードは第2CPU12のみが起動しユーザからのジョブの実行指示を待機するモード、通常モードは第1CPU11のみが起動しデバイスを制御することでジョブを実行するモードであったとする。
【0089】
以下、上記省電力モード中にジョブの実行指示があったことに応じて、プリンタ1の状態が通常モードに移行するウォーミングアップ処理を例に本発明を説明する。
【0090】
図5は、プリンタ1のウォーミングアップ処理を示すフローチャートである。プリンタが上記した省電力モードであるときに、プリンタ1は定期的に当該ウィーミングアップ処理を実行する。尚、本ウォーミングアップ処理では、実施形態1の起動処理のS101からS106までの処理が実行されず、代わりにS301からS304が実行される処理となっている。また、以下の説明では、実施形態1の起動処理と同等の処理を実行するステップに同じ符号を付し、実施形態1の起動処理と説明が重複する部分は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0091】
上述した様にプリンタ1において第2CPU12が起動している状態である省電力モードの状態でウォーミングアップ処理が開始すると、第2CPU12は、S301にてジョブの実行指示が有ったか否か判断する。尚、ここでの判断は、図2におけるS103と同様である。この時実行指示が無かった場合は(S301:NO)、当該ウォーミングアップ処理が終了する。
【0092】
一方、ジョブの実行指示が有った場合は(S301:YES)、電源部26がS302にて第1CPU11にに電力供給を開始する。その後、S106からS113の処理を実行する。
【0093】
尚、S107にて第2CPU12が実行していたジョブが完了した場合(S107:YES)、S303にてS301やS103と同様にジョブの実行指示が有ったか否かを判断し、無かった場合は(S303:NO)、S304にてS108と同様に第1CPU11が起動したか否かを判断する。ここで、第1CPU11が起動していない場合(S304:NO)、処理がS303に戻り、以降、ジョブの実行指示が有る、又は第1CPU11が起動するまで処理が待機する。
【0094】
一方、S303でジョブの実行指示が有った場合(S303:YES)、S106に処理が戻り、第2CPU12は、再度S106以降の処理を実行する。
【0095】
また、第1CPU11が起動した場合(S304:YES)、プリンタ1の状態が省電力モードから通常モードに移行したこととなり、当該ウォーミングアップ処理が終了する。
【0096】
尚、S111,S113,S304にてYESの判断をしたことに応じて、第1CPU11が起動するため、プリンタ1の状態が省電力モードから通常モードに移行したことなる。
【0097】
以上のように、当該ウォーミングアップ処理では、予め起動しているCPU(第2CPU12)が有る状態で、後から別のCPU(第1CPU11)が起動したとしても(S108:YES)、ジョブを受け渡すことが可能である(S111)。
【0098】
尚、本ウォーミングアップ処理では、2つのCPUの起動時間が同じものであってもよいし、さらに処理性能や消費電力なども同様のCPUを使用してもよい。また、本実施形態では省電力モードにおいて第2CPU12のみが起動し、通常モードにおいて第1CPU11のみが起動しているが、逆のCPUが起動していても良いし、通常モードにおいては、2つのCPUが起動していてもよい。
【0099】
(7)上記実施形態では、図3に示すようなスキャン機能の設定と処理負荷との関係を示したテーブルを用いてS109における実行中のジョブの処理負荷が閾値を超えているか判断しているが、本発明はこれに限られない。即ち、例えば図6に示すような機能と処理負荷との関係を示したテーブルを用いて判断してもよいし、各ジョブ毎の画像データの大きさから処理負荷を求め、求めた処理負荷と予め定めている閾値の処理負荷とを比較してもよいし、それらを組み合わせて判断してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 プリンタ
11 第1CPU
12 第2CPU
13 ROM
14 RAM
15 NVRAM
20 ファクシミリインターフェイス
21 操作部
22 表示部
23 スキャナ部
24 画像処理部
25 印刷部
26 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する処理を伴うジョブを実行可能な画像処理装置であって、
画像データに対する処理を行う処理部と、
前記処理部を制御し、入力されたジョブを実行する複数の制御部と、
を備え、
前記複数の制御部の内の少なくとも一つの制御部である先行制御部が処理部を制御している間に、前記複数の制御部の内の少なくとも一つの制御部であり前記先行制御部とは異なる後続制御部が起動したことに応じて、当該後続制御部が前記処理部を制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記先行制御部が処理部を制御しジョブを実行している間に、前記後続制御部が起動したことに応じて、当該後続制御部が前記処理部を制御することで実行中の当該ジョブを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の制御部に電源を供給する電源部を備え、
前記先行制御部は、前記電源部から電源が供給されてから起動するまでの起動時間が、前記後続制御部の起動時間に対して早く、
前記電源部が前記先行制御部及び前記後続制御部に電源を供給したことに応じて、前記先行制御部が起動したことに応じて、前記先行制御部にて先行して前記処理部を制御可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記後続制御部が起動したことに応じて、前記先行制御部が処理部の制御を停止し、前記後続制御部が前記処理部を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記後続制御部が起動したことに応じて、前記先行制御部及び前記後続制御部が前記処理部を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ジョブの処理負荷を判断する判断部を備え、
前記判断部にて前記ジョブの処理負荷が所定の閾値を超えないジョブであると判断したことに応じて、前記後続制御部が前記処理部を制御することを禁止することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−166564(P2011−166564A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28551(P2010−28551)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】