説明

画像処理装置

【課題】抽出色の指定が容易になる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置1は、カメラ2からカラー画像を取り込む画像取込部11と、予め指定された抽出色と同一の色とみなされる領域をカラー画像から抽出する色抽出部12と、抽出色を指定する色指定部13とを備えている。画像処理装置1は、色空間内に予め設定された複数の範囲を範囲ごとに個別に付加される色名称と対応付けて記憶した記憶部10を備えている。色指定部13は、記憶部10に記憶された複数の色名称の中から少なくとも1つの色名称を選択する選択部15と、記憶部10に記憶された範囲のうち選択された色名称に対応する範囲の色を抽出色として指定する範囲指定部16とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像から予め設定された抽出色の抽出を行う画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業製品の製造、組立、検査等の工程において、撮像された検査対象物の画像を検査員が目視で確認する方法では検査精度が悪く効率もよくないため、画像処理によって良品・不良品を自動的に判定する画像処理装置が用いられている。この種の画像処理装置としては、カラーカメラで撮像されたカラー画像を用いて検査対象物の良否判定を行う装置がある。
【0003】
この画像処理装置は、カラー画像から、ユーザ(作業者)が指定した抽出色の領域と、それ以外の領域とに分離された2値化画像を作成し、この2値化画像を用いて検査処理を行って検査対象物が良品か不良品かの判定を行う。この種の画像処理装置における抽出色の指定は以下のように行われる。
【0004】
すなわち、ユーザは、マウスなどを操作してモニタに表示されたカラー画像上で、抽出対象となる色を持つ領域の代表点を指示する。このように指示された代表点の色を基準として抽出色の範囲が指定される(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−128225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した構成の画像処理装置においては、抽出色の指定に当たってユーザが抽出対象となる色を持つ領域の代表点を指示する必要があるため、抽出すべき目的の色が画面上に一見して見当たらない場合には、抽出色の指定は困難である。また、目的の色の画素の近くに他の色の画素が存在する場合も、目的とする色の画素のみを選択することが難しく、抽出色の指定が困難となることがある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、抽出色の指定が容易になる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、カラー画像を取り込む画像取込部と、予め指定された抽出色と同一の色とみなされる領域を前記カラー画像から抽出する色抽出部と、前記抽出色を指定する色指定部と、色空間内に設定された複数の範囲と当該範囲毎に個別に付加される色名称とが対応付けて記憶されている記憶部とを備え、前記色指定部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記色名称の中から少なくとも1つの前記色名称を選択する選択部と、前記記憶部に記憶されている複数の前記範囲のうち前記選択部で選択された前記色名称に対応する前記範囲の色を前記抽出色として指定する範囲指定部とを有することを特徴とする。
【0009】
この画像処理装置において、前記記憶部は、前記色空間内において色相により定められる各範囲を前記色名称と対応付けて記憶していることが望ましい。
【0010】
この画像処理装置において、前記色空間内に複数の範囲を設定するとともに設定された範囲ごとに前記色名称を設定する設定部と、前記設定部で設定された前記範囲と前記色名称とを対応付けて前記記憶部に記憶する色登録部とを備えることがより望ましい。
【0011】
この画像処理装置において、前記設定部は、前記色空間を複数に分割することにより前記複数の前記範囲を設定することがより望ましい。
【0012】
この画像処理装置において、前記設定部は、前記色空間の分割位置を個別に調節することがより望ましい。
【0013】
この画像処理装置において、前記設定部は、前記色空間が複数に分割されてなる範囲の少なくとも1つを、いずれの前記色名称にも対応しない範囲とすることがより望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、抽出色の指定が容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同上に用いる色範囲の例を示す説明図である。
【図3】同上の登録画面の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の画像処理装置は、検査対象物のカラー画像を撮像するカメラに接続されており、検査対象物の良品・不良品の判定に用いられる。
【0017】
画像処理装置1は、図1に示すように、カメラ2からカラー画像を取り込む画像取込部11と、予め指定された抽出色と同一の色とみなされる領域をカラー画像から抽出する色抽出部12と、抽出色を指定する色指定部13とを前処理部20に備えている。さらに、画像処理部1は、色抽出部にて抽出された領域と、それ以外の領域とに分離された2値化画像を作成し、主処理部21に出力する画像生成部14を前処理部20に備えている。
【0018】
主処理部21は、たとえば画像生成部14で生成された2値化画像をモニタ4に表示させたり、2値化画像の大きさ、形状等から検査対象物の良否を自動的に判定したりする処理を行う。この画像処理装置1は、一例として、特定の色で文字が印字された工業製品の文字部分の検査などに用いられ、文字部分の色が抽出色として指定されることにより、文字部分のみからなる2値化画像を生成することができる。ここでは、画像処理装置1は、CPUやメモリを備えたコンピュータ装置からなり、キーボードやマウス等の操作装置3や、モニタ4などを接続可能に構成される。
【0019】
ところで、本実施形態では色指定部13は、予め色空間内に設定され個別の色名称が付加された複数の範囲(以下、「色範囲」という)の中から、少なくとも1つの色範囲を指定することによって抽出色を指定する。
【0020】
すなわち、画像処理装置1は、色空間内に予め設定された複数の色範囲を色範囲ごとに個別に付加される色名称と対応付けて記憶した記憶部10を前処理部20に備えている。ここで、色成分の属性には色相、彩度、明度などがあるが、本実施形態では、色空間内には図2に例示するように色相によって複数の色範囲が定められている。要するに、記憶部10には、それぞれHSV系のH(色相)値の上限値と下限値との組み合わせに色名称が付加された複数の色範囲が記憶されている。
【0021】
図2(a)の例では、色相をグラデーションとして表示するバー(以下、「色相バー」という)を、長手方向(左右方向)に複数の範囲に分割し、分割後の各範囲にそれぞれ色名称を付加することにより記憶部10に記憶される色範囲が設定されている。この例では、図の左側から「赤」、「橙」、「黄」、「黄緑」、「緑」、「水色」、「青」、「紺」、「紫」、「桃」(右端の「赤」は左端の「赤」と同一の色範囲)の各色名称が付加された計10個の色範囲が設定されている。
【0022】
また、図2(b)の例では、図の左側から「温かい色」、「冷たい色」(右端の「温かい色」は左端の「温かい色」と同一の色範囲)の各色名称が付加された計2個の色範囲が設定されている。なお、図2(b)中の「無効」で表される範囲は、「温かい色」と「冷たい色」とのいずれの色名称にも属さない範囲を示している。
【0023】
色指定部13は、記憶部10に記憶されている複数の色名称の中から1つの色名称を選択する選択部15と、記憶部10に記憶されている色範囲のうち選択された色名称に対応する色範囲の色を抽出色として指定する範囲指定部16とを有する。ここで、選択部15は、画像処理装置1を抽出色設定モードで動作させた状態で、モニタ4に一覧表示される全色名称の中から1つの色名称を、操作装置3の操作入力により選択する。したがって、ユーザは、操作装置3を操作して任意の色名称を指示することにより、この色名称に対応する色範囲の色を抽出色として指定することができる。
【0024】
つまり、上記図2(a)のように色範囲が設定されている場合、ユーザは、「赤」、「橙」、「黄」、「黄緑」、「緑」、「水色」、「青」、「紺」、「紫」、「桃」の中からいずれか1つの色名称を指定することにより抽出色を指定することができる。この場合、色名称が一般的な色名で表されているため、ユーザは簡単に目的の色を抽出色として指定することができる。
【0025】
また、上記図2(b)のように色範囲が設定されている場合、ユーザは、「温かい色」と「冷たい色」とのいずれかの色名称を指定することにより、抽出色を指定することができる。この場合、色名称が各色の持つイメージを表しているため、ユーザは直感的に目的の色を抽出色として指定することができる。
【0026】
ここにおいて、記憶部10に記憶される色範囲は色相によって分割されているので、色指定部13は、選択された色名称に対応する色範囲の色相を持つ色であれば、彩度、明度に関係なく抽出色として指定する。したがって、色抽出部12は、色指定部13にて指定された色範囲に該当する色相を持つ色の領域を、彩度、明度に関わらずカラー画像から抽出する。
【0027】
ところで、画像処理装置1は、ユーザによる操作装置3の操作入力に従って色空間内に複数の色範囲を設定するとともに色範囲ごとに色名称を設定する設定部17と、色範囲を色名称と共に記憶部10に登録する色登録部18とを前処理部20に備えている。これにより、ユーザは、色指定部13にて指定可能な色範囲および色名称を自由に設定・変更することができる。
【0028】
設定部17は、色成分の属性を表すデータを保持している色データ保持部22と、色空間を複数の色範囲に分割する分割部23と、各色範囲に色名称を付加する色名称付加部24とを有している。
【0029】
色データ保持部22は、カメラ2からのカラー画像に含まれ得る色成分についてHSV系のH(色相)値、S(彩度)値、V(明度)値と、これをRGB系のR値、G値、B値に変換するためのデータとを保持している。
【0030】
分割部23は、操作装置3を用いて指定される分割数(色範囲の数)および分割幅(各色範囲の幅)に従って、色データ保持部22に保持されているH値を複数の色範囲に分割する。つまり、分割部23は、各色範囲についてH値の上限値と下限値との組み合わせを決定する。
【0031】
色名称付加部24は、分割部23にて決められた各色範囲に対して、操作装置3を用いて指定される色名称を対応付ける。ここで、色名称の入力は、たとえば操作装置3のキーボードを用いて行われる。
【0032】
以下、本実施形態の画像処理装置1における色範囲の登録方法について、登録画面の一例を示す図3を参照して説明する。
【0033】
すなわち、画像処理装置1は、動作モードが色範囲設定モードに切り替えられると、図3に示すように色相バー41を含む登録画面40をモニタ4に表示する。この登録画面40では、色相バー41の下方にスライダ42が配置されており、色相バー41においてスライダ42にて分割された各範囲がそれぞれ各色範囲A1〜A6を示している。この状態で、ユーザは、操作装置3のマウスを操作して、各スライダ42を色相バー41の長手方向(左右方向)にそれぞれスライドさせることにより、各色範囲A1〜A6の幅(分割幅)を任意に調節する。
【0034】
また、登録画面40の下半分には、設定する色範囲の数(分割数)を指定する数指定セル43と、各色範囲A1〜A6の色名称をそれぞれ設定する名称設定セル51〜56とが配置されている。数指定セル43に入力された数は、スライダ42の個数や名称設定セルの個数に反映される。
【0035】
つまり、ユーザは、操作装置3を用いて数指定セル43内に数字(1〜nの整数)を入力することにより、設定する色範囲の数を指定することができる。図3の例では数指定セル43に「6」が入力されているので、色相バー41は色範囲A1〜A6の6個に分割されている。さらに、ユーザは、操作装置3を用いて名称設定セル51〜56内に任意の文字を入力することにより、各色範囲A1〜A6の色名称を設定することができる。このとき、ユーザは、名称設定セルを空白とすることによりいずれの色名称にも対応しない範囲を設定することも可能である。
【0036】
このようにして色名称が対応付けられた複数の色範囲は、色登録部18により記憶部10に記憶される。
【0037】
なお、名称設定セル51〜56に表示される色名称やスライダ42の位置は予めデフォルト値が決められていてもよく、この場合、数指定セル43に数字を入力するだけで、この数字に合わせたデフォルトの色名称およびスライダ42が表示される。この状態からユーザは色名称やスライダ42の位置を編集することによって、任意の色範囲を設定することができる。
【0038】
以上説明した構成の画像処理装置1によれば、ユーザは、予め登録されている色名称の中から任意の色名称を指定するだけで抽出色を指定できるので、画面上で抽出色が含まれる領域を指定するような構成に比べ、抽出色の指定が簡単になる。つまり、カラー画像上に抽出すべき目的の色が一見して見当たらない場合や、抽出すべき目的の色が画面上に一見して見当たらない場合であっても、ユーザは、色名称を指定することにより簡単に抽出色を指定することができる。
【0039】
また、上記構成の画像処理装置1によれば、ユーザは抽出色を指定するために実際にカラー画像を見る必要がないので、抽出色の指定時にモニタ4にカラー画像を表示する必要はないという利点がある。さらにまた、上記画像処理装置1によれば、ユーザが色弱であっても色名称から目的の抽出色を指定できる。
【0040】
しかも、記憶部10に記憶される色範囲は色空間内において色相により定められるので、色抽出部12は、色指定部13にて指定された色名称に対応する色範囲に属する色相の色であれば、彩度や明度が多少異なる色であっても全て抽出することができる。
【0041】
さらに、本実施形態の画像処理装置1は、設定部17および色登録部18を備えることにより、色指定部13にて指定可能な色範囲および色名称をユーザが自由に設定・変更することができるので、用途などに応じて最適な色範囲の設定を行うことが可能である。たとえば、カラー画像に含まれる複数種類の色をそれぞれ個別に抽出する場合には、色範囲は図2(a)に示したように一般的な色名ごとに細かく(ここでは10個)設定されていることが望ましい。一方、カラー画像から比較的広範囲の色を抽出する場合には、色範囲は図2(b)に示したように大まかに(ここでは2個)設定されていることが望ましい。
【0042】
特に、スライド42にて色空間の分割位置を個別に調節可能としたことにより、色範囲の設定の自由度が高くなるという利点がある。また、設定部17は、色空間が複数に分割されてなる範囲の少なくとも1つを、いずれの色名称にも対応しない範囲とすることができるので、必要な色範囲にのみ色名称を設定することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、記憶部10に記憶される色範囲は色空間内に連続して設定されるので、全ての色をいずれかの色名称に該当するとして扱うことができ、より細かい抽出色の指定が可能となる。ただし、他の例としては、色範囲は色空間に不連続に設定されるようにしてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態では、色範囲は色空間内に色相により定められている例を示したが、この例に限らず、色範囲はたとえば彩度や明度等の色相以外の属性によって定められていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 画像処理装置
2 カメラ
10 記憶部
11 画像取込部
12 色抽出部
13 色指定部
15 選択部
16 範囲指定部
17 設定部
18 色登録部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を取り込む画像取込部と、予め指定された抽出色と同一の色とみなされる領域を前記カラー画像から抽出する色抽出部と、前記抽出色を指定する色指定部と、色空間内に設定された複数の範囲と当該範囲毎に個別に付加される色名称とが対応付けて記憶されている記憶部とを備え、前記色指定部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記色名称の中から少なくとも1つの前記色名称を選択する選択部と、前記記憶部に記憶されている複数の前記範囲のうち前記選択部で選択された前記色名称に対応する前記範囲の色を前記抽出色として指定する範囲指定部とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記色空間内において色相により定められる各範囲を前記色名称と対応付けて記憶していることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色空間内に複数の範囲を設定するとともに設定された範囲ごとに前記色名称を設定する設定部と、前記設定部で設定された前記範囲と前記色名称とを対応付けて前記記憶部に記憶する色登録部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記色空間を複数に分割することにより前記複数の前記範囲を設定することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記色空間の分割位置を個別に調節することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記色空間が複数に分割されてなる範囲の少なくとも1つを、いずれの前記色名称にも対応しない範囲とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−242876(P2011−242876A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112344(P2010−112344)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】