説明

画像印刷転写シートの製造方法、画像印刷転写シート及び画像転写方法

【課題】色彩に濃淡のある画像を転写する場合にも、転写を行う画像上に確実に接着層を形成することができ、確実且つ簡易な画像転写を可能とする転写方法に係る転写シートのプリント方法、画像プリント転写シート及びこれらを用いた転写方法を提供する点にある。
【解決手段】転写シート1に有色トナー4を印刷して有色トナー層を形成する有色トナー印刷工程と、前記有色トナー層における前記有色トナー4の印刷量の少ない領域及び印刷画像内の白色領域に無色トナー5を印刷して無色トナー層を形成する無色トナー印刷工程と、前記転写シート1の最表面と、接着層10を形成してなる接着層形成シート2の前記接着層10とを合わせた状態で熱プレスする接着層プレス工程と、前記転写シート1と前記接着層形成シート2とを剥離する接着層形成工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートに印刷した画像を被転写物に転写する技術に関わり、更に詳しくは、転写画像に対する制約が少なく転写作業を容易に行うことができる、転写画像が印刷された画像印刷転写シートの製造方法、転写画像が印刷された画像印刷転写シート、及び、前記画像印刷転写シートを用いて被転写物に画像を転写する画像転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写シートに所定の模様や文字等の転写画像を印刷(プリント)し、転写画像が印刷された画像印刷転写シートを用いてTシャツ等の被転写物に画像を転写する画像転写方法として、基材、離型層及び樹脂層(ポリビニールアセテート層又はポリエステル樹脂層)から成るAシートと、基材、離型層、接着層及び色彩層から成るBシートの2枚のシートを用いるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
この画像転写方法では、Aシートの樹脂層表面にコピーをして所定の模様や文字などをトナー層として形成する。次に、トナー層を間にしてAシート及びBシートを重ね合わせると共に所定の温度で加熱・プレスし、その後両シートを剥がすことによって、Aシートのトナー層の上に剥離したBシートの色彩層及び接着層を付着させる。次に、Bシートの色彩層及び接着層が付着したAシートを被転写物に貼り合わせ、Aシートの基材を離型層とともに剥がし取る。更に、残った樹脂層、トナー層、色彩層及び接着層を所定の温度で加熱・プレスした後に表面の樹脂層を剥ぎ取ることにより、トナー層である画像が表面化するため、画像が被転写物に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−087980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1の画像転写方法は、トナーを付着したAシートとBシートとを130℃〜140℃で熱プレスすることで、当該トナーが軟化して両シートに接着させた後、AシートからBシートを剥がすとAシートのトナー層に接着されたBシートの接着層と色彩層のみがAシートに付着するものである。これにより、転写されたトナー層と被転写物との間には色彩層が介在することとなり、布地等の被転写物の色彩に左右されることなくトナー本来の色彩が鮮明に表われる。
つまり、特許文献1の画像転写方法は、Aシートに印刷されたトナーの接着力を利用してトナー上に接着層を形成することにより、Aシートへの画像のプリントを容易に行うものものであって、画像印刷領域内におけるトナーが、Bシートから接着層を剥がすだけの接着力を発揮しうる厚みを有することが必要となる。
しかし、電子画像形成装置を用いて行うトナーの印刷は、印刷する電子画像がグラデーションや色彩の濃淡を含むことによりトナーの印刷量が異なる。トナーの印刷量が少ない領域は当然に接着層を形成するための十分な接着力を有さず、画像印刷領域内であっても接着層が形成されず、又は明確な境界を形成することができない。その結果、被転写物への転写を確実に行うためには、転写画像に色彩の濃淡の差が少ないものとする制約が生ずる。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み解決しようとするところは、色彩に濃淡のある画像を転写する場合にも、転写を行う画像上に確実に接着層を形成することができ、且つ簡易な転写を可能とする、画像印刷転写シートの製造方法、画像印刷転写シート及び画像転写方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像印刷転写シートの製造方法は、前記課題解決のために、転写シートの離型面側の最表面に有色トナーを印刷して有色トナー層を形成する有色トナー印刷工程と、前記有色トナー印刷工程の同期工程、後工程又は前工程として、前記有色トナー層における前記有色トナーの印刷量の少ない領域及び印刷画像内の白色領域に無色トナーを印刷して無色トナー層を形成する無色トナー印刷工程と、前記有色トナー層及び無色トナー層が形成された前記転写シートの最表面と、シート基材の一方の面に離型層を介して接着層を形成してなる接着層形成シートの前記接着層とを合わせた状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを熱プレスする接着層プレス工程と、前記有色トナー層及び無色トナー層と前記接着層との間の接着力が、前記離型層と前記接着層との間の接着力よりも大きい状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを剥離する接着層形成工程とを含むものである。
【0007】
ここで、前記無色トナー印刷工程が、前記有色トナーの画像印刷用信号を合わせた合成信号により印刷画像領域内の前記有色トナーの全印刷量を算出し、該有色トナーの全印刷量の少ない印刷画像領域及び印刷画像内の白色領域に、前記無色トナーを付着してなると好ましい。
【0008】
又、前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程が、三色の有色トナーと無色トナーとのみを有すると共に前記三色の有色トナーにより黒色を出力可能な印刷機を用いて印刷してなるとより好ましい。
【0009】
更に、前記無色トナーが透明であってもよく、前記接着層が白色であってもよい。
【0010】
更に又、転写シートの離型面側の最表面に有色トナーを印刷して有色トナー層を形成する有色トナー印刷工程と、前記有色トナー印刷工程の同期工程、後工程又は前工程として、前記有色トナー層における前記有色トナーの印刷量の少ない領域に無色トナーを印刷して無色トナー層を形成する無色トナー印刷工程と、前記有色トナー層及び無色トナー層が形成された前記転写シートの最表面と、シート基材の一方の面に離型層を介して接着層を形成してなる接着層形成シートの前記接着層とを合わせた状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを熱プレスする接着層プレス工程と、前記有色トナー層及び無色トナー層と前記接着層との間の接着力が、前記離型層と前記接着層との間の接着力よりも大きい状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを剥離する接着層形成工程とを含み、前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程が、三色の有色トナーと無色トナーとのみを有すると共に前記三色の有色トナーにより黒色を出力可能な印刷機を用いて印刷してなり、前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程により印刷画像領域内の印刷量が略均等となるようにするとより好ましい。
【0011】
本発明に係る画像印刷転写シートは、少なくとも片面に離型面を有する転写シートと、該転写シートの離型面側の最表面に付着された有色トナー層と該有色トナー層の有色トナーの印刷量の少ない領域に付着された無色トナー層とよりなるトナー層と、該トナー層の表面のみに形成された接着層とよりなるものである。
【0012】
ここで、前記転写シートに形成したトナー保護層に前記トナー層を付着してなると好ましい。
【0013】
又、前記有色トナー層が、三色のトナーのみで印刷されてなるとより好ましい。
【0014】
更に、前記無色トナー層が透明、且つ前記接着層が白色であってもよい。
【0015】
本発明に係る画像転写方法は、上記転写シートのプリント方法によりプリントされた転写シート又は上記画像印刷転写シートを用いて被転写物に印刷画像を転写するものである。
【0016】
ここで、前記被転写物に印刷画像を転写した後に、熱膨張性を有する仕上げシートを前記被転写物の上に載せて熱プレスすると好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る画像印刷転写シートの製造方法によれば、有色トナーの印刷量の少ない領域を含む転写画像であっても、当該有色トナーの印刷量の少ない領域に無色トナーを印刷して有色トナーの印刷量を無色トナーの印刷量で補うことにより、印刷画像の全領域内に一定以上の厚さを有するトナー層を形成するため、接着層形成工程の際に必要となるトナーの接着力を印刷画像の全領域内で発揮し、接着層を適切に形成することにより画像転写を確実に行うことができる。
【0018】
前記無色トナー印刷工程が、前記有色トナーの画像印刷用信号を合わせた合成信号により印刷画像の領域内の前記有色トナーの全印刷量を算出し、該有色トナーの全印刷量の少ない印刷画像の領域及び印刷画像内の白色領域に、前記無色トナーを付着してなるものによれば、的確且つ迅速に無色トナーの印刷量を算出ことができ、又、必要に応じて無色トナーの印刷量の調整を簡易に行うことも可能となる。
【0019】
又、前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程が、三色の有色トナーと無色トナーとのみを有すると共に前記三色の有色トナーにより黒色を出力可能な印刷機を用いて印刷してなると、印刷機に無色トナーカートリッジを装填するための専用トナーカートリッジ装填部及びドラムを必要とせず、三色の有色トナー及び黒色トナーを有する汎用の印刷機に有色トナーによる黒色出力を行う機能を付加すると共に、黒色トナーカートリッジ装填部に無色トナーカートリッジを装填して無色トナーの印刷を可能とすることで、三色の有色トナーによりフルカラーを表現して転写シートへのプリントを行うことができる、
【0020】
さらに、前記無色トナーが透明であるものによれば、白色トナー及び有色トナーに比べて安価な透明トナーを用いることで転写に係るコストを低廉化することができる。
前記無色トナーが透明であると、転写後の前記無色トナーが前記有色トナーの上側に位置するとしても画像を鮮明に表すことができる。
【0021】
前記接着層が白色であると、転写後に被転写物とトナー層との間に介在する接着層が、被転写物の色彩を遮断することにより被転写物の色彩の影響が転写画像に表われない。このため、被転写物が白色であるか否かに関わらず転写画像をイメージ通りに転写することができる。これは無色トナー層が透明である場合に特に有効であり、又、無色トナー層が白色であっても印刷されない領域若しくは印刷されるがその印刷量が少ない領域においても有効である。
【0022】
前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程により印刷画像領域内の印刷量を略均一とすると、トナー層による接着力がより強固となるため、転写画像の定着性も向上する。又、転写後の転写画像の表面上の凹凸を少なくすることにより、画像をより鮮明に表すことができる。
【0023】
ここで、少なくとも片面に離型面を有する転写シートと、該転写シートの離型面側の最表面に付着された有色トナー層と該有色トナー層の有色トナーの印刷量の少ない領域に付着された無色トナー層とよりなるトナー層と、該トナー層の表面のみに形成された接着層とよりなる画像印刷転写シートを用いると、印刷画像領域内のトナー層がその画像の色彩の濃淡等に関係なく一定以上の厚みを有しているため、当該トナー層の接着力が画像印刷の全領域内で安定し、被転写物への画像転写を確実に行い得る。
【0024】
又、前記転写シートに形成したトナー保護層に前記トナー層を付着してなると、画像転写後の転写画像の表面上にトナー保護層が位置することとなり、トナー層の劣化を防止し得ると共に、表面凹凸が低減されることで転写画像の表面が綺麗に仕上がる。
【0025】
更に、前記有色トナー層が三色のトナーのみで印刷されてなるものは、その製造に、三色の有色トナー及び黒色トナーを有する一般的な家庭用プリンタに有色トナーによる黒色出力を行う機能を付加したものであって、黒色トナーカートリッジ装填部に無色トナーカートリッジを装填したものを用いることができ、製造するために必要な印刷機に要する費用を抑えることで製造に要する費用を低廉化することができる。
【0026】
前記無色トナー層が透明、且つ前記接着層が白色であると、無色トナー層については白色トナー及び有色トナーに比べて安価な透明トナーを用いることで、転写に係る費用をさらに低廉化しつつ、接着層を白色として転写後の転写画像に被転写物の色彩の影響が出ない。
【0027】
上記画像印刷転写シートの製造方法により製造された画像印刷転写シート又は上記画像印刷転写シートを用いて被転写物に印刷画像を転写する画像転写方法によれば、印刷された転写画像上にのみ接着層が形成されており、簡易且つ鮮明に転写画像を被転写物にプリントすることが可能となる。
【0028】
又、前記画像転写方法により前記被転写物に印刷画像を転写した後に、熱膨張性を有する仕上げシートを前記被転写物の上に載せて熱プレスする画像転写方法とすると、被転写物の表面における凹凸に対応するように有色トナー層及び無色トナー層が被転写物の凹部奥まで押し込まれ、トナー層の付着がより確実なものとなり、例えば、被転写物が伸縮性のある繊維等である場合にもその伸縮に耐えうる画像転写と行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像転写方法の説明図であり、(a)は画像印刷転写シートを用いて画像をTシャツに転写する方法を示す斜視図、(b)は画像が転写されたTシャツを示す斜視図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態に係る転写シートの構成を示す縦断面図、(b)は本発明の実施の形態に係る接着層形成シートの構成を示す縦断面図であり、説明の都合上、厚みを拡大して示している。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像印刷転写シートの製造方法及び画像転写方法を示す縦断面図であり、(a)は転写シートを、(b)は転写シートに有色トナー及び無色トナーを印刷する有色トナー印刷工程及び無色トナー印刷工程を、(c)は接着層形成シートを転写シートに熱プレスする接着層プレス工程を、(d)は転写シートと接着層形成シートとを剥離する接着層形成工程を、(e)は(d)を経て得られた画像印刷転写シートをTシャツに熱プレスする前の状態を、(f)は熱プレス後に画像印刷転写シートを剥離してTシャツに画像を転写した状態を、それぞれ説明の都合上、厚みを拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
【0031】
本明細書において、無色とは透明及び白色とし、有色とは黒色やメタリック色を含む無色以外の色とする。
又、転写シートとは少なくとも片面に離型面を有する転写用シートであって転写画像が印刷されていないもの、又、画像印刷転写シートとは前記転写シートの離型面側の最表面に転写画像が印刷されると共に当該転写画像上にのみ接着層が形成されたものとする。
【0032】
本実施形態に係る画像転写方法は、図1(a)に示すように、文字、絵又は模様等の転写画像が印刷された画像印刷転写シート3を、被転写物であるTシャツSに熱プレスすることにより、図1(b)に示すように、TシャツSに画像を表したトナーが付着し、TシャツSに画像を転写することができるものである。
【0033】
本実施形態に係る転写シート1は、図2(a)に示すようにシート基材8の上面(上側)に、離型層7、トナー保護層6を下から順に積層したものであり、本実施形態に係る接着層形成シート2は、図2(b)に示すようにシート基材8aの上面(上側)に、離型層9、接着層10を下から順に積層したものである。
ここで、転写シート1の離型面側の最表面は、トナー保護層6の表面であり、以下において印刷面という。又、転写シート1に離型層7を設けることにより、離型層7に接触するトナー保護層6及び印刷面に形成された画像(トナー像)を被転写物の表面に転写しやすくなる。シート基材8、8aを構成する材料としては特に限定されないが、各種の紙類、樹脂類などを使用できる。
【0034】
本実施の形態における画像印刷転写シート3は、転写シート1及び接着層形成シート2を用いて、転写シート1にトナー層11及び接着層10を形成してなるものであり、上述のとおり、本実施形態に係る画像転写方法は、画像印刷転写シート3を用いて被転写物に画像を転写する方法である。
次に図3(a)乃至(f)に沿って、本実施形態に係る画像印刷転写シート3の製造方法及び画像印刷転写シート3を用いて被転写物(TシャツS)に画像を転写する画像転写方法について詳細に説明する。
【0035】
本実施形態に係る画像印刷転写シート3の製造方法は、有色トナー印刷工程、無色トナー印刷工程、接着層プレス工程、及び、接着層形成工程を含むものであり、先ず、有色トナー印刷工程及び無色トナー印刷工程を行う。
有色トナー印刷工程は、転写する電子画像を鏡像にてトナー式プリンタの有色トナーにより転写シート1の印刷面に印刷することにより、図3(b)に示すように有色トナー層4を形成する。有色トナーとしてはイエロー、マゼンタ、シアンの三色を用い、これらを順に転写シート1に印刷する。この工程により、に転写シート1に転写画像が印刷される。又、一般的に用いられることが多い黒色トナーは用いず、上記三色の有色トナーを調整して黒色を出力する。
【0036】
また、前記有色トナー印刷工程と同期工程として、無色トナー印刷工程を行う。
無色トナー印刷工程は、転写画像内であって有色トナーの印刷量の少ない領域及び印刷画像内の白色領域に、無色トナーである透明トナーを印刷することにより、図3(b)に示すように色彩の淡い領域や白色領域にも一定以上の厚さを有する有色トナー層4及び無色トナー層5である透明トナー層5A(以下、「トナー層11」という。)を形成する。当該無色トナー印刷工程は、印刷画像内に白色が存在しない場合は当然に有色トナーの印刷量の少ない領域のみに無色トナーを印刷することとなる。
前記有色トナー印刷工程及び無色トナー工程は、各印刷信号をプリンタに送信し、一回の印刷処理として一括して行うため、有色トナー4及び透明トナー5Aを別工程として印刷するよりも両トナー間の接着が強固になる。
【0037】
無色トナー5としては、透明トナー5Aの他に白色トナーを用いることができるが、透明トナー5Aを用いると、転写後の有色トナーとの上下位置に拘わらず有色トナーの色彩を表現することができる。
本実施形態では、無色トナー印刷工程を、有色トナー印刷工程の同期工程として実施しているが、これに限定されず、有色トナー印刷工程の直前に行われる前工程又は直後に行われる後工程として実施してもよい。無色トナーを有色トナーよりも先に印刷する場合であっても、プリンタに送信する前記有色トナーの印刷信号により前記有色トナーの印刷量の少ない領域を把握することができるため、この領域内に無色トナーを印刷することで有色トナーの印刷量を補うように無色トナーを印刷することができる。
【0038】
次に、接着層プレス工程及び接着層形成工程を行う。
接着層プレス工程は、図3(c)に示すように、前記有色トナー印刷工程及び無色トナー印刷工程によりトナー層11が形成された転写シート1の印刷面と、接着層形成シート2の接着層10とを合わせるように、転写シート1に接着層形成シートを載せた状態で130度の熱プレスを行う。熱プレスにおける加熱温度は、接着層10に含まれる接着剤の溶融温度、有色トナー及び無色トナーの溶融温度等に応じて適宜選択されるが、本実施形態では130℃である。
上記接着層プレス工程後に、接着層形成シート2を転写シート1から剥ぎ取る接着層形成工程を行うことで、図3(d)に示すように、トナー層11が形成されている領域即ち転写画像上にのみ接着層10が形成され、画像印刷転写シート3を簡易に得ることができる。
なお、接着層10の色は特に限定しなくてもよいが、白色であれば転写後の被転写物の色彩を遮断することができる。
【0039】
ここで、接着層10とトナー層11との接着力の関係については以下の通りである。
つまり、接着層10に用いる接着剤等は一般的に温度による粘度変化が緩やかなものであるため、熱プレスによって高い温度となった接着剤が再び硬化するまでには相当に時間を要する。一方、トナー層11はそのトナーの温度による粘度変化が急激なものであり、熱プレスによって高い温度となっても、熱プレス終了後からすぐに硬化し始める。この結果、熱プレス後の接着力は、接着層10よりもトナー層11の方が強固なものとなる。
すなわち、熱プレス直後から所定の時間内であれば、トナー層11と接着層10との間の接着力が、接着層10と離型層9との間の接着力よりも大きくなる。したがって、前記の所定時間内に転写シート1から接着層形成シート2を剥ぎ取ることにより、トナー層11の表面に接着層10を選択的に付着させることができる。
【0040】
最後に、上記より得られた画像印刷転写シート3を用いて被転写物であるTシャツSに画像を転写する。図3(e)に示すように、画像印刷転写シート3の画像印刷面をTシャツSの転写面に合わせて熱プレスを行い、この熱プレス後に画像印刷転写シート3を剥ぎ取ることで、図3(f)に示すようにTシャツSに画像を転写することができる。
【0041】
画像転写後に、熱膨張性を有する仕上げシートを画像転写部に当てて熱プレスする仕上げプレス工程を行うと、転写画像がより綺麗に仕上がるが、この仕上げプレス工程は被転写物や転写画像、予算に応じて省いてもよい。
【0042】
以下、本実施形態に係る画像印刷転写シート3の構成について詳細に説明する。
画像印刷転写シート3は、シート基材8の上面に、離型層7とトナー保護層6とが下から順に積層され、このトナー保護層6の上面の転写画像領域内に有色トナー4及び透明トナー5Aによってトナー層11が形成されると共に当該トナー層11の上面にのみ接着層10が形成されてなる。
有色トナー4は、イエロー、マゼンタ、シアンの各有色トナーにより印刷されたものであり、印刷画像の黒色部分はこれらの三色により表現される。つまり、印刷画像は三色のトナーによってのみ表されており、透明トナー5Aはこれらの有色トナーの厚みを補うために印刷されている。
接着層10は白色であって、転写後にTシャツSとトナー層11との間に位置するため、TシャツSの色を遮断することにより転写画像を被転写物の色彩に関わらず鮮明に表現することができると共に、白色以外の被転写物にも白色を表現することもできる。
なお、転写シート1は上面に離型層7を有するが、該離型層7は層として形成されているものに限らず、転写シート1の上面に離型性があればよい。
【0043】
以上の説明においては、無色トナーが透明である場合を示したが、無色トナーはこのような透明のものに限定されるものではなく、白色を使用してもよいが、透明トナーを用いることで有色トナー印刷工程と無色トナー印刷工程とをどちらが先に行われても適切な転写が可能となる。
又、無色トナーは、有色トナーの印刷量を補うように、有色トナーの印刷量の少ない領域に印刷すればよいが、有色トナーの印刷量が最大量の一定以下、例えば6割以下となる領域に印刷するものであってもよく、又、トナー層の全領域内のトナーの印刷量が略均等となるように印刷するものであってもよい。この場合、有色トナーの印刷信号を反転させたものを、無色トナーの印刷信号とすることもできる。
なお、無色トナー及び有色トナーは、粉砕型のトナーとすることで熱転写時の高温にも耐え得るものとなっているが、重合型のトナーであってもよく、又、一般にトナーと称するものでなくとも例えば一定の粘性を有するインク等の上記転写方法に適合する他の色材であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 転写シート
2 接着層形成シート
3 画像印刷転写シート
4 有色トナー層
5 無色トナー層
5A 透明トナー層
6 トナー保護層
7 離型層
8 シート基材
8a シート基材
9 離型層
10 接着層
11 トナー層
S Tシャツ(被転写物)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写シートの離型面側の最表面に有色トナーを印刷して有色トナー層を形成する有色トナー印刷工程と、
前記有色トナー印刷工程の同期工程、後工程又は前工程として、前記有色トナー層における前記有色トナーの印刷量の少ない領域及び印刷画像内の白色領域に無色トナーを印刷して無色トナー層を形成する無色トナー印刷工程と、
前記有色トナー層及び無色トナー層が形成された前記転写シートの最表面と、シート基材の一方の面に離型層を介して接着層を形成してなる接着層形成シートの前記接着層とを合わせた状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを熱プレスする接着層プレス工程と、
前記有色トナー層及び無色トナー層と前記接着層との間の接着力が、前記離型層と前記接着層との間の接着力よりも大きい状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを剥離する接着層形成工程と、
を含むことを特徴とする画像印刷転写シートの製造方法。
【請求項2】
前記無色トナー印刷工程が、前記有色トナーの画像印刷用信号を合わせた合成信号により印刷画像領域内の前記有色トナーの全印刷量を算出し、該有色トナーの全印刷量の少ない印刷画像領域及び印刷画像内の白色領域に、前記無色トナーを付着してなる請求項1記載の画像印刷転写シートの製造方法。
【請求項3】
前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程が、三色の有色トナーと無色トナーとのみを有すると共に前記三色の有色トナーにより黒色を出力可能な印刷機を用いて印刷してなる請求項1又は2記載の画像印刷転写シートの製造方法。
【請求項4】
前記無色トナーが透明である請求項1〜3記載の何れか1項記載の画像印刷転写シートの製造方法。
【請求項5】
前記接着層が白色である請求項1〜4の何れか1項記載の画像印刷転写シートの製造方法。
【請求項6】
転写シートの離型面側の最表面に有色トナーを印刷して有色トナー層を形成する有色トナー印刷工程と、
前記有色トナー印刷工程の同期工程、後工程又は前工程として、前記有色トナー層における前記有色トナーの印刷量の少ない領域に無色トナーを印刷して無色トナー層を形成する無色トナー印刷工程と、
前記有色トナー層及び無色トナー層が形成された前記転写シートの最表面と、シート基材の一方の面に離型層を介して接着層を形成してなる接着層形成シートの前記接着層とを合わせた状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを熱プレスする接着層プレス工程と、
前記有色トナー層及び無色トナー層と前記接着層との間の接着力が、前記離型層と前記接着層との間の接着力よりも大きい状態で、前記転写シートと前記接着層形成シートとを剥離する接着層形成工程と、
を含み、
前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程が、三色の有色トナーと無色トナーとのみを有すると共に前記三色の有色トナーにより黒色を出力可能な印刷機を用いて印刷してなり、
前記有色トナー印刷工程及び前記無色トナー印刷工程により印刷画像領域内の印刷量が略均等となることを特徴とする画像印刷転写シートの製造方法。
【請求項7】
少なくとも片面に離型面を有する転写シートと、
該転写シートの離型面側の最表面に付着された有色トナー層と該有色トナー層の有色トナーの印刷量の少ない領域に付着された無色トナー層とよりなるトナー層と、
該トナー層の表面のみに形成された接着層と、
よりなることを特徴とする画像印刷転写シート。
【請求項8】
前記転写シートに形成したトナー保護層に前記トナー層を付着してなる請求項7記載の画像印刷転写シート。
【請求項9】
前記有色トナー層が、三色のトナーのみで印刷されてなる請求項7記載の画像印刷転写シート。
【請求項10】
前記無色トナー層が透明、且つ前記接着層が白色である請求項7記載の画像印刷転写シート。
【請求項11】
請求項1〜6の何れか1項記載の画像印刷転写シートの製造方法により製造された画像印刷転写シート又は請求項7〜10記載の何れか1項記載の画像印刷転写シートを用いて被転写物に印刷画像を転写する画像転写方法。
【請求項12】
前記被転写物に印刷画像を転写した後に、熱膨張性を有する仕上げシートを前記被転写物の上に載せて熱プレスする請求項11記載の画像転写方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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