説明

画像及び治療におけるシュタウディンガー反応並びに画像及び治療に使用するキット

シュタウディンガー反応を、プロドラッグ又はプロイメージングプローブ(pro−imaging probe)の活性化に使用することができる。本発明は、シュタウディンガー反応を使用することにより、プロドラッグ又はプロイメージングプローブを調製及び活性化する方法、並びに、少なくとも1個のプロドラッグ及び/又はプロイメージングプローブを含む、医用画像及び/又は治療のためのキットに関する。前記プロドラッグ及び/又はプロイメージングプローブは、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像(imaging)及び治療に使用する新規の方法、キット、並びに化合物に関する。本発明は、予め局在化された画像及び/又は治療のための新規の化合物及びキット、並びに、その化合物及びキットを作製及び使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、ヒト又は動物の体内における特定の部位で活性化される不活化されたイメージングプローブ及びプロドラッグ等の不活性な化合物の使用は周知である。プロドラッグ及び画像剤等の活性分子の標的された送達も、広く研究されてきた。標的部位で及び/又は所望の時に薬物放出選択性をもたらす薬物送達システムに対して多大な努力がささげられてきた。一つの方法は、局所性で特異的な酵素活性により、特異的に(全身性の)プロドラッグを選択的に活性化することである。
【0003】
しかし、多くの場合、関心の標的部位には、適切な過剰発現された酵素が欠乏している。当分野において提案されている有望な解決策は、抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)と呼ばれる技術により酵素を標的組織へ移送することである。この方法において、酵素は、腫瘍関連抗原に結合する抗体への共役により、腫瘍部位に向けられる。共役の全身投与、標的での局在化、及び非結合の共役のクリアランス後、所望のプロドラッグは、全身的に投与され、局所的に活性化される。同様の技術は、ポリマー指向酵素プロドラッグ治療(PDEPT)、高分子指向酵素プロドラッグ治療(MDEPT)、ウイルス指向酵素プロドラッグ治療(VDEPT)、及び、遺伝子指向酵素プロドラッグ治療(GDEPT)と呼ばれている。全ての場合において、(全身性若しくは標的された)プロドラッグを局所的に活性化するために、外来性の酵素が標的組織に送達される、又は、標的組織において発現される。
【0004】
酵素的に活性化されたプロドラッグの既知の技術には種々の欠点がある。酵素が標的部位に送達される方法では、内在性の酵素では実現されてはならない反応の触媒作用が必要とされる。これらのニーズに合う哺乳動物起源以外の酵素は、おそらく非常に免疫原性であり、それは、繰返しの投与を不可能にするという現実である。酵素−抗体共役に対する抗体応答を抑制するために、免疫抑制薬シクロスポリンが使用されている。しかし、癌における免疫抑制の使用は望ましくなく、限定された免疫応答の緩和のみを提供している。
【0005】
さらに、酵素は、その作用が細胞内空間で起こることが望まれている場合に、そこまで到達することができない可能性がある。不十分に血管新生化された及び/又は密集した腫瘍において、大きな酵素−抗体共役の送達は限定され、全ての細胞に到達されるわけではない。さらに、これらの大きな共役は、遅い速度論/標的指向化速度を有し、標的以外の組織からのクリアランスが不十分である。
【0006】
同様の問題は、選択的に活性化可能なプローブを用いる分子画像の分野において存在しうる。適切な過剰発現した酵素の欠乏は、プロイメージングプローブ(pro−imaging probe)の局所的な活性化のために、標的された内在性酵素の使用を引き起こす。しかし、分子画像へのADEPT概念の拡張は、上記と同じニーズ及び欠点により妨害されるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1又は複数の上記で概略を述べられた欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プロドラッグ及びプロイメージングプローブ、そのキット、そのようなプローブ及びプロドラッグを作製及び活性化する方法、並びに、プローブ及びプロドラッグを医用画像及び治療の状況に応用する方法を提供する。
【0009】
その広い態様において、本発明は、薬物及び/若しくは画像剤の放出又は活性化を引き起こすためにお互いに相互作用する2つの成分に関する。これらの成分は、医用画像及び治療において有益であり、特に、標的された画像及び治療、並びに、予め局在化されたプロドラッグ/プロイメージングプローブ又は活性化因子が使用される方法において有用である。
【0010】
本発明によると、そのトリガーはシュタウディンガー反応により得られ、本発明の各成分は、シュタウディンガー反応のための反応パートナー、すなわち、ホスフィン基又はアジド基をそれぞれ含む。
【0011】
第一の態様において、本発明は、プロドラッグ又はプロイメージングプローブを調製及び活性化する方法に関し、当該方法は:
(a)薬物(x)又はイメージングプローブ(y)を少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基で官能性を持たせ、プロドラッグ又はプロイメージングプローブを作製するステップ;
(b)プロドラッグ又はプロイメージングプローブを、シュタウディンガー反応により、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基をシュタウディンガー反応における反応パートナーとして含む組成物(z)と反応させ、薬物又はイメージングプローブを活性化させるステップ;
を含む。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、医用画像又は治療における使用に適切なキットに関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、アジド基及び/若しくはホスフィン基を含むプロドラッグ又はプロイメージングプローブの、標的された医用画像における道具として、又は、医用画像用の道具の製造における使用に関し、前記ホスフィン基及び/又は前記アジド基はシュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである。
【0014】
さらに、本発明は、薬物の調製に使用する本発明によるプロドラッグ又はプロイメージングプローブに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、シュタウディンガー反応が使用されている(Gololobov et al,Tetrahedron 1981,vol37,page437−472)。
【0016】
いかなる可能な混乱も避けるために、本発明の状況において、シュタウディンガー反応は、シュタウディンガー連結と同じではない。シュタウディンガー反応は、ホスフィンとアジドの間で起こり、アザ−イリドを生成する。水の存在下で、この中間体は自発的に加水分解し、一級アミン及び対応する酸化ホスフィンを生じる。シュタウディンガー連結では、アザ−イリドの加水分解は、ホスフィン上の求電子性トラップの導入により防止され、2つの反応パートナー間に安定した共有結合が生じる。この連結に反して、本発明は、加水分解が活性な薬物又は活性なイメージングプローブを形成するシュタウディンガー反応に関する。例えば、シュタウディンガー連結は、Lumiex et al,J.Am.Chem.Soc.2003,125,4708−4709、及び、Prescher et al,Nature vol430,19 August 2004,783−877に記載されている。シュタウディンガー連結とシュタウディンガー反応との違いは、図1に示されている。本発明の状況において、全般的に、シュタウディンガー反応が発生する前に、薬物又はプローブは、(部分的に)不活化されたプロドラッグ又は(部分的に)不活化されたプロイメージングプローブの形状である。薬物又はイメージングプローブの(部分的な)不活化は、薬物又はプローブの「マスキング」とも呼ばれている。
【0017】
本発明の実施形態は、関与している2個の官能基が酵素よりもはるかに小さい化学反応を提供する。本発明の方法を用いて、酵素−基質相互関係等多くの生物学的過程で起こる非共有結合的認識事象の強力な選択性に等しい、例えばアジド及びホスフィン等の、関与している2個の官能基が使用される。本発明の態様によると、細かく調整された反応性を有する2個の関与している官能基が選択され、共存する官能性に対する妨害が避けられている。本発明のさらなる態様によると、非生物的でお互いのみを認識し、その細胞性/生理的な環境、すなわち、バイオ直交性であるということを無視している反応性パートナーが選択される。生物学的環境により課された選択性に対する要求により、他の大部分の従来の反応の使用が防止される。
【0018】
本発明のキット及び方法は、薬物及び/又はイメージングプローブの標的された送達における使用に非常に適している。
【0019】
さらに、本発明は、多様式の画像における使用に特に適しており、種々の画像剤を任意選択で使用して同じ標的を可視化する。
【0020】
本発明で使用されている「一次標的」は、画像により検出されることになる標的又は治療のための標的に関する。例えば、一次標的は、生物、組織、又は細胞に存在するいかなる分子にもなりうる。画像用標的には、例えば受容体、糖蛋白質等の細胞表面標的;例えばアミロイド斑等の構造蛋白質;例えばゴルジ体表面、ミトコンドリア表面、RNA、DNA、酵素、細胞シグナル経路の成分等の細胞内標的;及び/又は、ウイルス、バクテリア、真菌、酵母、若しくはその一部等の例えば病原体の異物が挙げられる。一次標的の例には、存在若しくは発現レベルが特定の組織若しくは細胞型に関連する蛋白質、又は、特定の疾患において発現レベルが上方調節若しくは下方調節されている蛋白質等の化合物が挙げられる。本発明の特定の実施形態によると、一次標的は受容体等の蛋白質である。あるいは、一次標的は、DNA合成、蛋白質合成、膜合成、及び糖類の取込み等の代謝経路でもよく、その代謝経路は、例えば感染又は癌等の疾患中に上方調節される。病的な組織において、上記のマーカーは、健康的な組織とは異なり、早期発見、特異的診断、及び治療、特に標的された治療の独特の可能性を提供することができる。
【0021】
本明細書で使用されている「標的プローブ」は、一次標的に結合するプローブを意味している。標的プローブは、「一次標的部分」及び「シュタウディンガー反応パートナー」を含む。
【0022】
「シュタウディンガー反応パートナー」は、アジド及びホスフィンを含む群から選択された部分であり、そのアジド及びホスフィンは別のシュタウディンガー反応パートナーとシュタウディンガー反応で反応することができる。特定の実施形態において、シュタウディンガー反応パートナーは、1または複数のアジド基である。しかし、他の特定の実施形態においては、シュタウディンガー反応パートナーは1又は複数のホスフィン基であるという応用が認識されている。
【0023】
本発明で使用されている「一次標的部分」は、標的プローブ、プロドラッグ、又はプロイメージングプローブの一部に関し、その部分は一次標的に結合する。一次標的部分の特定の例は、受容体に結合するペプチド又は蛋白質である。一次標的部分の他の例は、細胞化合物と反応する抗体又はその断片である。抗体を、蛋白質又はペプチド並びに非蛋白質性の化合物に対して産生することができる。他の一次標的部分は、アプタマー、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、並びに、ペプトイド及び有機薬化合物から構成することができる。一次標的部分は、高い特異性、高い親和性で結合することが好ましく、一次標的とのその結合は体内で安定していることが好ましい。
【0024】
「ビルディングブロック」は、代謝経路等の細胞内の経路に関与する分子として定義される。ビルディングブロックは、糖、DNA、RNA、ペプチド、蛋白質等の細胞内に存在する分子の部分を形成することができる。代謝トレーサー及び前駆体もビルディングブロックと呼ばれている。ビルディングブロックの例として、グルコース、核酸塩基、アミノ酸、脂肪酸、酢酸、及びコリンが挙げられる。
【0025】
核酸塩基は、対に関与するRNA及びDNAの一部である。リボース又はデオキシリボースの1’炭素に共有結合する核酸塩基はヌクレオシドと呼ばれ、1又は複数のリン酸基が5’炭素に結合しているヌクレオシドはヌクレオチドと呼ばれている。核酸塩基の例として、チミン、ウラシル、グアニン、シトシンが挙げられる。
【0026】
「イメージングプローブ」は、例えば造影提供ユニット等の検知可能なラベルを含む。
【0027】
「プロイメージングプローブ」という用語は、画像における使用に適切な検知可能なラベルを含み、アジド基及び/又はホスフィン基で官能性を持った組成物に関する。この官能化により、ラベルを部分的に又は全体的に不活化できる。
【0028】
「活性化因子」は、プロイメージングプローブ又はプロドラッグのうち、シュタウディンガー反応の反応パートナーを含む部分と反応する化合物(z)を意味している。特定の実施形態において、活性化因子は1又は複数のホスフィン基を含む。
【0029】
本明細書に使用される「検知可能なラベル」は、例えば細胞、組織、又は生物に存在する場合、イメージングプローブのうち、プローブの検知を可能にする部分に関する。本発明の状況で認識される検知可能なラベルの一種は、造影提供剤である。検知可能なラベルの別種は、本発明の状況内で認識され、本明細書に記述されている。
【0030】
本明細書に使用される「治療プローブ」は、それだけに限らないが、治療化合物等の薬剤的に活性な化合物を含むプローブを意味する。薬剤的に活性な化合物の例が本明細書において提供されている。治療プローブは、検知可能なラベルも任意選択で含むことができる。
【0031】
「プロドラッグ」という用語は、アジド基及び/若しくはホスフィン基で官能性を持った治療部分又は薬理学的に活性な部分を含む組成物に関する。この官能化により、薬物を部分的に又は全体的に不活化することができる。
【0032】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、体外、又は、細胞外若しくは例えば細胞可溶化物等の細胞の画分外に存在する化合物を意味する。例えば、一次標的プローブ、イメージングプローブ、治療プローブ、若しくはその組合せ等、単離されたプローブ又は組み合わされたプローブにあるとする特定の特徴に関しては、本発明の状況において、これは、ヒト又は動物の体、組織、若しくは細胞の外に存在するプローブを意味する。体、組織、又は細胞に対する共役の成分組成物の継続的な追加の後に、前記体、組織、又は細胞の内側で形成される共役を意味しない。
【0033】
本発明の特定の態様は、局在化された画像又は治療方法に関する。この態様は、本発明の2種類の成分を別々に使用することを必要とし、患者に対する成分の投与の時間を分けることに関する。その成分は、標的部分を含む、又は、特定の反応の基質になることにより標的を確実にする。さらに、その成分は、画像又は治療効果を確実にする。2種類の成分を投与する間の時間は変更可能だが、一般的に、約10分から数時間、又、さらには何日間という範囲である。
【0034】
本発明は、特定の実施形態に関して、及び、特定の図面を参考にして記述されているが、本発明は、それには限定されず、特許請求の範囲にのみ限定される。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も範囲を限定するとして解釈されない。記載されている図面は、ただ概略であり、限定しないものである。図面において、いくつかの要素のサイズは、例証の目的で拡大されており、縮小比で描かれていない可能性がある。「含む」という用語が本明細書及び特許請求の範囲において使用されている場合は、他の要素又はステップを除外しない。単数名詞を言及する際に不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合は、何か他に明確に述べられていない限りその名詞の複数形を含む。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「含む」という用語は、その後に記載されている手段に限定されるとして解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを除外しないことにさらに注目されたい。従って、「装置は手段A及びBを含む」という表現の範囲は、A及びBという成分のみからなる装置に限定されるべきではない。本発明に関しては、該表現は、前記装置の成分のうち本発明に関連する成分はA及びBであるという意味である。
【0036】
第一の態様における本発明は、プロドラッグ又はプロイメージングプローブを調製及び活性化する方法に関する。
【0037】
本発明による前記方法のステップ(a)において、薬物(x)又はイメージングプローブ(y)は、少なくとも1個のアジド基及び/若しくはホスフィン基で官能性を持ち、プロドラッグ又はプロイメージングプローブを作製する。
【0038】
一般的に、プロドラッグ又はプロイメージングプローブは、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含むが、少なくとも2個以上、少なくとも3個以上、少なくとも4個以上、又は少なくとも5個以上のこれらの置換基を任意選択で含むことができる。プロドラッグ又はプロイメージングプローブ分子1個あたりアジド及び/又はホスフィン置換基の量は、好ましくは1から50個であり、より好ましくは1から30個、さらに好ましくは2から10個である。
【0039】
一実施例によると、活性な薬物又はイメージングプローブのアミン基は、アジドに転換される。この改変により、薬物又はイメージングプローブの官能性が(部分的に)不活化される。
【0040】
例えば、薬物又はイメージングプローブが、アジドに転換することができる適切なアミン基を含まない別の実施形態によると、これらの分子は、アジドにより官能性を持つトリガー−リンカーシステムで改変される[Papot et al.,Curr.Med.Chem.−Anti−cancer agents 2002,2,155−185]。アジド基を導入する方法は、例えば、WO−A−03/003806において開示されている。
【0041】
ヒドロキシル部分を含有する薬物及びプローブも、リンカーシステムを用いて改変してアジド−トリガーを収容できる。
【0042】
アジド基又はホスフィン基は、シュタウディンガー反応において、そのシュタウディンガー対応物と組むパートナーになることができる。従って、第二のステップ(b)において、プロドラッグ又はプロイメージングプローブは、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基をシュタウディンガー反応における反応パートナーとして含む組成物(z)とのシュタウディンガー反応により活性化され、薬物又はイメージングプローブを活性化する。
【0043】
プロドラッグ又はプロイメージングプローブが少なくとも1個のアジド基及び少なくとも1個のホスフィン基を含む実施形態では、これらそれぞれの反応基が、分子内又は分子間で早まって反応しないように位置決め又はマスキングされることが好ましいと理解される。
【0044】
一実施例において、プロドラッグ又はプロイメージングプローブが芳香族アジド部分を含む場合、トリフェニルホスフィンとのシュタウディンガー反応によりアニリン誘導体が産出され、そのアニリン誘導体により薬物又はイメージングプローブを放出する離脱カスケードが開始され、結果として薬物又はイメージングプローブを活性化する。
【0045】
好ましい実施形態において、プロドラッグ又はプロイメージングプローブは、ステップ(a)における改変のため、本質的に不活化される。ステップ(b)の後のシュタウディンガー反応により、薬物又はイメージングプローブが活性化されることが好ましい。従って、組成物(z)は、本明細書において、活性因子とも呼ばれる。
【0046】
本発明の状況において、ステップ(b)における活性化は、技術者により広く解釈されることになる。活量における僅かな改善でさえ、本状況においては活性化と考慮される。本状況において、「活性化」という用語は、活量がある量で増加する実施例だけでなく、単なる薬物又はイメージングプローブの放出も含み、薬物又はイメージングプローブはその放出の前に活性になる可能性がある。本状況における活性化に対する適切な同義語は、「アンマスキング」である。アンマスキングの例では、活性化により、以前に無毒な組成物が(局所的に)有毒な組成物へと転換される。従って、シュタウディンガー反応においてパートナーである部分で官能性を持つラベル又は薬物は、活性化の前にそれぞれ検知可能な活性状態でありうるけれども、活性化可能なラベル又は薬物とも呼ばれることが理解される。
【0047】
任意選択で、シュタウディンガー反応の使用を介した上記活性化はカスケード放出デンドリマーと結合し、複数の薬物又はプローブを放出及び活性化できる。
【0048】
いかなる理論により結びつけられることを望むことなく、少なくとも1個がプロドラッグ又はプロイメージングプローブ上に位置しているアジド及びホスフィン間のシュタウディンガー反応は、活性な薬物又は検知可能なラベルの放出のトリガーになると信じられている。このトリガーにより、その放出を所望の瞬間及び/又は所望の場所で起こるように調整することができる。
【0049】
プロドラッグ又はプロイメージングプローブ上のアジド及び/若しくはホスフィン官能性と反応する組成物(z)は、シュタウディンガー反応に関与し、薬物及び/又はイメージングプローブを活性化することができるアジド基又はホスフィン基を有するいかなる適切な化合物であってもよい。好ましい実施形態において、組成物(z)は、一次標的部分及びシュタウディンガー反応パートナーを含む標的プローブである。
【0050】
組成物(z)は、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含むことが好ましいが、少なくとも2個以上、少なくとも3個以上、少なくとも4個以上、又は少なくとも5個以上のこれらの置換基を任意選択で含むことができる。組成物(z)分子1個あたりアジド及び/又はホスフィン置換基の量は、好ましくは1から50個であり、より好ましくは1から30個、さらに好ましくは2から10個である。
【0051】
組成物(z)が少なくとも2個以上のアジド基及び/又はホスフィン基を含んでいることが非常に好ましい。
【0052】
プロドラッグ(x)、プロイメージングプローブ(y)、又は組成物(z)に連結されたホスフィン部分、好ましくはトリフェニルホスフィン部分の性質は、当分野では周知の方法で調整することができる。例えば、溶解性及び分布、又は反応性は、トリフェニルホスフィン部分の芳香環上への適切な官能基(例えばSO3)の導入により影響されうる。
【0053】
本発明の一実施例によると、ホスフィンは、P(R1、R2、R3)により表され、R1、R2、及びR3のそれぞれはPに連結される。好ましい実施形態においては、R1、R2、及びR3はアリール基であり、置換されたアリール基、又は、例えばシクロヘキシル基等のシクロアルキル基を含む。
【0054】
R1、R2、及びR3は、同じでも異なっていてもよい。
【0055】
任意選択で、R1、R2、及び/又はR3を、薬物若しくはイメージングプローブに対するリンカー、又は組成物(z)、又は一次標的部分として使用し、本発明によるプロドラッグ若しくはプロイメージングプローブ、又は組成物(z)を形成する。
【0056】
さらに好ましい実施形態において、プロドラッグ及び(プロ)イメージングプローブの組合せが使用される。この実施形態において、薬物の投与及び存在/活性化を、イメージングプローブによりモニターすることができる。
【0057】
従って、任意選択で、プロドラッグはラベルを含んだイメージングプローブに連結され、プロドラッグ及びイメージングプローブユニットのうち少なくとも1つがホスフィン基及び/又はアジド基を含む。
【0058】
別の実施形態において、プロドラッグはアジド基及び/又はホスフィン基を含み、イメージングプローブはその他のシュタウディンガー反応パートナー、すなわち、少なくともアジド基及び/又はホスフィン基を含む。この実施形態において、組成物(z)は任意選択である。
【0059】
この実施形態において、本発明は、プロドラッグ及び/又はプロイメージングプローブを調製及び活性化する方法に関し:
(a)薬物(x)を少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基で官能性を持たせ、プロドラッグを作製するステップ;
(b)ステップ(a)のプロドラッグのアジド基及び/又はホスフィン基に対してシュタウディンガー反応においてパートナーである少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基でイメージングプローブ(y)に官能性を持たせ、プロイメージングプローブを作製するステップ;
(c)前記プロドラッグ及びプロイメージングプローブをシュタウディンガー反応により反応させ、前記薬物及び/又はイメージングプローブを活性化させるステップ;
を含む方法である。
【0060】
さらなる態様において、本発明は、イメージングプローブ又は薬物を用いた医用画像又は治療のためのキットに関し:
少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む、少なくとも1個のプロドラッグ(x)及び/又はプロイメージングプローブ(y);
シュタウディンガー反応においてプロドラッグ又はプロイメージングプローブと反応し、薬物又はイメージングプローブを形成する能力がある少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む組成物(z);
を含むキットである。
【0061】
プロドラッグ、プロイメージングプローブ、組成物(z)、及びその応用のための上記の好ましい実施形態は、同様にこのキットの成分に適用する。
【0062】
前記キットは、少なくとも1個のプロドラッグを含んでいることが好ましい。
【0063】
さらに好ましい実施形態において、前記キットはプロドラッグ及びプロイメージングプローブを含んでいる。これにより、薬物放出/活性化及び薬物の蓄積をモニターすることが可能になり、それとともに、薬物分布及び活性に対する有用な情報が提供される。
【0064】
前記プロドラッグ及びプロイメージングプローブは、ホスフィン基を含んでいることが好ましい。この実施形態において組成物(z)は、シュタウディンガー反応において前記ホスフィン基と反応することができるアジド基を含む。
【0065】
あるいは、前記プロドラッグ及びプロイメージングプローブは、ホスフィン及びアジドから選択された異なる反応基をそれぞれ含む。このように、この実施形態によると、プロドラッグ及びプロイメージングプローブは、シュタウディンガー反応においてパートナーである。この実施形態において、キットは、プロドラッグ及びプロイメージングプローブの逐次投与についての指示をさらに含んでいることが好ましい。この実施形態において、組成物(z)の存在は任意選択である。
【0066】
従って、別の態様においては、本発明は標的された医用画像及び/又は治療のためのキットに関し:
少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む、少なくとも1個のプロドラッグ(x);
シュタウディンガー反応において前記プロドラッグと反応し、薬物及びイメージングプローブを形成する能力がある少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む、少なくとも1個のプロイメージングプローブ(y);
を含むキットである。
【0067】
本発明の、アジド又はホスフィンを含んだ、標的、イメージング、及び治療プローブは、生体適合性であり、医用画像又は治療において現在使用されている従来の分子と同様又は類似の方法で投与することができる。さらに、イメージングプローブの検知可能なラベルは、技術者には既知であり、従来の方法及びキットを必要とする。
【0068】
薬物、イメージングプローブ、又は組成物(z)の標的を可能にするために、プロドラッグ(x)、プロイメージングプローブ(y)、又は組成物(z)は、「一次標的部分」と呼ばれる標的部分を含んでいることが好ましい。この部分は、治療により処置される又は画像により検知されることになる標的である一次標的と適切に結合する。任意選択で、x、y、zのうち少なくとも2つ、又は、x、y、zのうち一つが標的部分を含んでいる。
【0069】
一実施例によると、本発明は、標的された画像又は標的された治療に使用される。この実施形態によると、特異的一次標的の画像は、一次標的部分の特異的結合、及び、シュタウディンガー反応により活性化される検知可能なラベルを用いたこの結合の検知により得られる。
【0070】
本発明によると、一次標的は、ヒト若しくは動物の体内、又は、病原体若しくは寄生虫上にある、いかなる適切な標的からも選択されうる。適切な標的は、例えば、細胞膜及び細胞壁等の細胞、細胞膜受容体等の受容体、ゴルジ体又はミトコンドリア等の細胞内部の構造体、酵素、受容体、DNA、RNA、ウイルス又はウイルス粒子、抗体、蛋白質、炭水化物、単糖、多糖、サイトカイン、ホルモン、ステロイド、ソマトスタチン受容体、モノアミン酸化酵素、ムスカリン受容体、心筋の交感神経系、例えば白血球上のロイコトリエン受容体、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性因子受容体(uPAR)、葉酸受容体、アポトーシスマーカー、(抗)血管新生マーカー、ガストリン受容体、ドーパミン作動性システム、セロトニン作動性システム、GABA作動性システム、アドレナリン作動性システム、コリン作動性システム、オピオイド受容体、GPIIb/IIIa受容体及び他の血栓関連受容体、フィブリン、カルシトシン受容体、タフトシン受容体、インテグリン受容体、VEGF/EGF受容体、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、P/E/L−セレクチン受容体、LDL受容体、P−糖蛋白質、ニューロテンシン受容体、ニューロペプチド受容体、サブスタンスP受容体、NK受容体、CCK受容体、シグマ受容体、インターロイキン受容体、単純ヘルペスウイルスチロシンキナーゼ、ヒトチロシンキナーゼを含む群である。
【0071】
上記の一次標的の特異的標的を可能にするために、標的部分は化合物を含むことができる。該化合物は、それだけに限らないが、抗体、例えばFab2、Fab、scFV、VHH等の抗体断片、蛋白質、例えばオクトレオチド及び誘導体等のペプチド、VIP、MSH、LHRH、走化性ペプチド、ボンベシン、エラスチン、ペプチド擬態、炭水化物、単糖、多糖、ウイルス、薬物、ポリマー、化学療法剤、受容体刺激薬及び拮抗薬、サイトカイン、ホルモン、ステロイドを含む。本発明の状況内で認識される有機化合物の例は、例えばエストラジオール等のエストロゲン、アンドロゲン、プロゲスチン、副腎皮質ステロイド、メトトレキサート、葉酸、及びコレステロールであり、又は由来である。好ましい実施形態において、一次標的部分は抗体である。
【0072】
本発明の特定の実施形態によると、一次標的は受容体であり、適切な一次標的部分は、それだけに限らないが、そのような受容体のリガンド又はその一部を含む。例えば受容体結合蛋白質リガンドの場合、受容体結合ペプチド等の一部でも受容体に結合する。
【0073】
蛋白質性質の一次標的部分の他の例として、例えばアルファ、ベータ、及びガンマインターフェロン等のインターフェロン、インターロイキン、並びに、例えばアルファ、ベータ腫瘍増殖因子等のタンパク質増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、uPAR標的蛋白質、アポリポ蛋白質、LDL、アネキシンV、エンドスタチン、及びアンジオスタチンが挙げられる。
【0074】
一次標的部分の別の例として、例えば一次標的に相補性であるDNA、RNA、PNA、及びLNAが挙げられる。
【0075】
本発明の特定の実施例によると、細胞内の一次標的に結合できる小さな親油性一次標的部分が使用される。
【0076】
本発明のさらに特定の実施例によると、一次標的及び一次標的部分は、組織又は癌等の疾患、炎症、感染、例えば血栓等の循環器疾患、動脈硬化病変、例えば脳卒中等の低酸素部位、腫瘍、心血管障害、脳障害、アポトーシス、血管新生、器官、及びレポーター遺伝子/酵素の標的が特異的になる又は増加するように選択される。これは、組織、細胞、又は疾患特異的発現で一次標的を選択することにより成し遂げることができる。例えば、膜葉酸受容体は、葉酸塩、及び、メトトレキサート等その類似体の細胞内部での蓄積を媒介する。発現は正常組織内で限定されているが、受容体は種々の腫瘍細胞型で過剰発現されている。
【0077】
一実施例によると、一次標的部分、並びに、イメージングプローブ及び/若しくは治療プローブ、又は組成物(z)は、多量体化合物であり、複数の一次標的部分及び/又はシュタウディンガー反応パートナー及び/又は薬物/イメージングプローブを含み、好ましくは複数の一次標的部分を含むことができる。これらの多量体化合物は、ポリマー、デンドリマー、リポソーム、ポリマー粒子、又は他の重合体の構築物でありうる。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、アジド基及び/若しくはホスフィン基を含むプロドラッグ又はプロイメージングプローブの医用画像における道具、好ましくは標的された医用画像における道具としての使用に関する。前記ホスフィン基及び/又は前記アジド基は、シュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである。
【0079】
本発明は、さらに、アジド基及び/又はホスフィン基を含むプロイメージングプローブの医用画像用道具の製造における使用に関する。前記ホスフィン基及び/又は前記アジド基は、シュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである。
【0080】
本発明は、さらに、アジド基及び/又はホスフィン基、並びに、検知可能なラベルを含むプロドラッグの医用画像用道具の製造における使用に関する。前記ホスフィン基及び/又はアジド基は、シュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである。
【0081】
本発明の特定の実施例によると、本発明の化合物及び方法は、画像、特に医用画像に使用される。1又は複数の検知可能なラベルを含んだイメージングプローブが使用される。イメージングプローブの検知可能なラベルの特定の例は、MRIイメージ剤、スピンラベル、光ラベル、超音波反応剤、X線反応剤、放射性核種、(生物)発光及びFRET型色素等の伝統的な画像システムに使用されている造影剤である。本発明の状況内で認識される具体例としての検知可能なラベルは、必ずしもそれに限定されることはなく、例えば試薬との接触後蛍光を発する分子、自己蛍光分子等の蛍光分子、放射性ラベル、常磁性の金属を含むMRI用画像剤、画像試薬等、米国特許番号第4741900及び5326856に記載されているもの等を含む。
【0082】
MRIイメージ剤は、常磁性のイオン又は超常磁性の粒子でありうる。常磁性のイオンは、Gd、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Yb、Tb、Dy、Ho、Er、Sm、Eu、Ti、Pa、La、Sc、V、Mo、Ru、Ce、Dy、Tlからなる群から選択された要素でありうる。本発明の特定の実施形態は、これ以降より詳しく記述される、「洗練された」又は「反応性の」MRI造影剤の使用に関する。
【0083】
超音波反応剤は微小気泡を含むことができ、その殻は、リン脂質、及び/又は(生分解性)ポリマー、及び/又はヒト血清アルブミンを含む。微小気泡は、フッ素化した気体又は液体で満たすことができる。
【0084】
X線反応剤は、それだけに限らないが、ヨウ素、バリウム、硫酸バリウム、ガストログラフィンを含み、又は、ヨウ素化合物及び/若しくは硫酸バリウムで満たされた、小胞、リポソーム、又はポリマーカプセルを含むことができる。
【0085】
さらに、本発明の状況内で認識される検知可能なラベルは、例えば、検知可能にラベルされた抗体の結合、又は、サンドイッチ型アッセイを介しての結合された抗体の検知による等、抗体結合により検知できるペプチド又はポリペプチドも含む。
【0086】
一実施例において、検知可能なラベルは、18F、11C又は123I等の小さいサイズの有機PET及びSPETラベルである。有機PET又はSPECTラベルは、その小さいサイズのため、一般に標的とする装置、特にその膜輸送の性質に対し大きく影響しないので、細胞内部の事象をモニターするのに適している。同様に、アジド部分は小さく、細胞内部の画像及び治療用活性因子として使用できる。さらに、シュタウディンガー反応のどちらの成分も、血液脳関門の横断を妨げず、従って、脳の部分の画像又は治療を可能にする。
【0087】
別の実施例によると、本発明の化合物及び方法は、標的された治療に使用される。これは、アジド及び/又はホスフィン部分、並びに、1若しくは複数の薬剤的に活性な薬剤(例えば薬物)を含むプロドラッグを使用することにより実現される。標的された薬物送達の状況で使用される適切な薬物は、当分野において既知である。
【0088】
本発明のさらに別の実施形態において、標的部分の使用は、シュタウディンガー反応においてパートナーであるアジド基又はホスフィン基を標的細胞又は組織内に選択的に取り込むことにより置き換えられる。これは、代謝前駆分子等のビルディングブロック分子を使用することにより実現され、その分子は、例えばアジド反応パートナー等の、細胞の代謝によりトラップされる、又は生体分子内に取り込まれる分子を含む。この方法で標的された経路は、DNA、蛋白質、及び膜合成等、全細胞に共通である経路でありうる。任意選択で、これらの経路は、癌又は炎症/感染等の疾患状況において上方調節される代謝経路である。あるいは、標的された代謝経路は、特定タイプの細胞又は組織に特異的である。本発明の状況において使用できるビルディングブロックは、それだけに限らないが、アミノ酸及び核酸、糖、アミノ糖、脂質、脂肪酸、並びにコリン等の代謝前駆分子を含む。アミノ酸等、これらの化合物の画像は、アミノ酸の取込み及び/又は蛋白質合成における違いを反映できる。種々の糖は、炭水化物の構造をラベルするのに使用できる。脂肪酸は、例えば細胞膜等における脂質をラベルするのに使用できる。
【0089】
さらに、本発明の状況において使用する特定の利点を提供できるいくつかの代謝前駆物質の類似体が、当分野において既知である。非限定でリストされた代謝経路の例、及び、アジド又はホスフィンでラベルすることができる、対応する代謝前駆物質が以下に提供される。これらのうち幾つかは細胞内へ一時的に蓄積され、その他は生物高分子内に取り込まれる。
【0090】
本発明のこの態様における特定の実施例において、感染/炎症又は癌のような疾患中に上方調節される代謝経路が標的される。疾患状態において上方調節できる成分は、例えば、DNA、蛋白質、膜合成、及び糖類の取込みを含む。これらの要素をラベルするために適切なビルディングブロックは、アジドでラベルされたアミノ酸、糖、核酸塩基及びコリン、並びに、酢酸を含む。高い代謝又は増殖能力を有する細胞は、これらのビルディングブロックをより多く取り込んでいる。アジド誘導体は、これらの経路に入り、細胞内及び/又は細胞上で蓄積することができる。
【0091】
従って、本発明はさらに、薬物又はイメージングプローブを使用した標的された医用画像及び/又は治療のためのキットに関し、当該キットは:
シュタウディンガー反応パートナーを含む、少なくとも1個のビルディングブロック;及び、
少なくとも1個のプローブ;
を含み、
該プローブは:
シュタウディンガー反応パートナー及びラベルを含むイメージングプローブ;又は
シュタウディンガー反応パートナー及び薬剤的に活性な化合物を含む治療プローブ;
から選択され、
前記ビルディングブロック又は前記イメージング若しくは治療プローブのうち1つは、シュタウディンガー反応パートナーとして、少なくとも1個のアジド基を含み、さらに、前記ビルディングブロック、イメージングプローブ若しくは治療プローブのうちもう1つは、少なくとも1個のホスフィン基を含み、該ホスフィン基及び前記アジド基は、シュタウディンガー反応の反応パートナーである。
【0092】
本発明の特定の実施形態は、レポータープローブ、すなわち、その細胞プロセスに関与することにより、プロセス又は細胞型の可視化を可能にする分子の使用に関する。そのようなプローブにより、例えば、基質が提供された内在性酵素等の細胞の内在性の機構を使用できる。あるいは、そのようなプローブは、レポーター遺伝子と呼ばれる外来性遺伝子の長所により機能する。レポーター遺伝子産物は、選択的に細胞内でトラップされる代謝産物にレポータープローブを転換する酵素でありうる。あるいは、レポーター遺伝子は、細胞内へプローブを蓄積する受容体又は輸送体又はポンプをコードすることができる。
【0093】
フルオロチミジンは、チミジンキナーゼ1(TK1)によりリン酸化されたチミジン類似体であり、細胞トラップを生じるレポーター遺伝子として使用できる。細胞培養において、取込みはTK1活性及び細胞増殖と相関する。
【0094】
本発明のさらなる実施形態によると、レポータープローブは、細胞又は組織内の特定の環境に応答する分子である。組織低酸素は、脳血管疾患、虚血性心疾患、末梢血管疾患及び炎症性関節炎の病原の中枢をなしている。また、組織低酸素は、悪性固形腫瘍の増殖における偏在性の特徴でもあり、腫瘍の病原力に対して正の関係を生じ、化学療法又は放射線治療に対する応答の可能性と負に相関する。最近の研究によると、これらの設定のそれぞれにおいて、低酸素に対する応答の共通の経路があると示唆されている。2−ニトロイミダゾール化合物は低酸素の細胞内で還元及びトラップされ、虚血心筋及び腫瘍において酸素分圧のセンサーとして使用することができる。例として、フルオロミソニダゾール、フルオロエリスロニトロイミダゾール、アゾマイシン−アラビノシド、ビニルミソニダゾールRP−170(1−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−エトキシ]メチル−2−ニトロイミダゾール)及びSR4554(N−(2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピル)−2−(2−ニトロ−1−イミダゾリル)アセトアミド)が挙げられる。HL91は、腫瘤を取り込む非ニトロイミダゾール化合物である。別の適切な化合物は、ジアセチル−ビス(N4−メチルチオセミカルバゾン)−銅(II)(ATSM)である。
【0095】
従って、さらなる態様において、本発明は標的された医用画像及び/又は治療用キットに関し、当該キットは:
シュタウディンガー反応パートナーを含む、少なくとも1個のレポータープローブ;及び、
少なくとも1個のプローブ;
を含み、
該プローブは:
シュタウディンガー反応パートナー及びラベルを含むイメージングプローブ;又は
シュタウディンガー反応パートナー及び薬剤的に活性な化合物を含む治療プローブ;
から選択され、
前記レポーター又は前記イメージング若しくは治療プローブのうち1つは、シュタウディンガー反応パートナーとして、少なくとも1個のアジド基を含み、さらに、もう1つの前記プローブは、少なくとも1個のホスフィン基を含み、該ホスフィン基及び前記アジド基は、シュタウディンガー反応の反応パートナーである。
【0096】
任意選択で、一次標的部分又はビルディングブロックは、検知可能なラベルをすでに含んでいる。このラベルは、シュタウディンガー反応における次のステップで導入されるラベルとは異なっていることが好ましい。アジドで官能性を持たせたFDG等のラベルを有するビルディングブロック又は一次標的部分の投与により、FDG様の画像が生じる。該FDG様の画像は、第2のステップにおいて、ラベルされたホスフィンとの活性化ステップから得られた画像で覆うことができる。1つはビルディングブロック、レポータープローブ、又は一次標的部分に存在し、もう1つはその後投与されるホスフィンに存在するという、2種類の画像ラベルのこの組合せは、より良い標的局在化、アーチファクト除去、非該当のクリアランスの描写、及び他の薬物動態学的な経路という可能な利点を有している。
【0097】
本発明の特定の実施形態によると、本明細書に記述されている化合物及び方法は、動物又はヒトの体内における組織若しくは細胞型の検知用又は画像用にin vivoで使用される。あるいは、生検用若しくは他の身体サンプルの検査用、又は、術後に除去された組織の検査用にin vitroで同様に使用することができる。
【0098】
本明細書に記述されているように、本発明の特定の実施形態によると、組成物(z)及びプロドラッグ又はプロイメージングプローブは順次提供され、ラベル/イメージング又はプロドラッグ化合物を供給する前に、任意選択で組成物(z)の標的部分の結合により局在化を可能にし、任意選択で過剰の組成物(z)の除去を可能にしている。これは、画像においてより高い信号雑音比、及び/又は、治療のより良い能率を確保し、一般的に「プレターゲティング」又は「2ステップ」ターゲティングと呼ばれている。さらなる実施形態によると、本発明の方法及び化合物は、標的されたシグナル増幅及び/又は多価インスタレーションに使用される。本明細書において、組成物(z)は、複数のトリフェニルホスフィン部分を含むデンドリマー、ポリマー、又はリポソームと共役していることが好ましい。好ましくは一次標的部分を介する組成物(z)による受容体結合の後、例えばGdキレート等の、1若しくは複数のMRI造影剤と共役したアジドを含むプロイメージングプローブ又はプロドラッグが注入される。後のシュタウディンガー反応により、高濃度の活性化されたMRI造影剤が標的組織において生じる。さらに、標的部位での多価が、アジド受容体共役(イメージングプローブ)との反応速度論を上げ、能率のよいMRI造影剤の標的活性化を産出する。あるいは、上記のようにアジドを組成物(z)内、及び、プロイメージング又はプロドラッグに共役されたトリフェニルホスフィン内に含ませることもできる。
【0099】
本発明のプローブ及びキットは、医用画像及び治療、特に「標的された」画像及び治療において有用である。「標的された」という用語は、患者への投薬後、プロイメージングプローブ若しくは薬剤的に活性な化合物(プロドラッグ)が、標的分子と特異的に反応する、又は、標的分子に導入されるという事実に関する。これは、標的部分の使用により、又は、標的代謝基質の使用により、本発明に従って成し遂げることができる。あるいは、これは、組み合わされた標的プローブ及びイメージング又は治療プローブ(すなわち、組み合わされたプローブとしてのこれら2種類の成分の投与)を提供することにより得ることができる。この標的分子は、特定タイプの細胞若しくは組織に特異的でありうる、又は、体内における全細胞若しくは組織に共通でありうる。
【0100】
本発明の組成物は、静脈内注射、経口投与、直腸内投与、及び吸入を含む種々の経路により投与することができる。これらの異なるタイプの投与方法に適した製剤形態は、技術者には既知である。
【0101】
本発明によるプロドラッグ又はプロイメージングプローブは、薬剤的に許容可能なキャリアと共に投与できる。本明細書において使用される適切な薬剤のキャリアは、医用又は獣医用目的に適切なキャリアに関し、有毒でなく、さもなければ容認できない。そのようなキャリアは当分野において周知であり、生理食塩水、緩衝された生理食塩水、ブドウ糖、常水、グリセロール、エタノール、及びその組合せを含む。製剤形態は、投与方法に適しているべきである。
【0102】
従って、さたなる態様において、本発明は、薬物の調製に使用する少なくともアジド基及び/又はホスフィン基を含むプロドラッグ又はプロイメージングプローブに関する。
【0103】
本発明は、以下の限定しない実施例により説明される。
実施例1
トリフェニルホスフィン共役を疾患部位に向ける。標的結合及び標的でない組織からのクリアランス後、複数のFRET色素を含むアジドトリガーにより官能性を持ったカスケード放出デンドリマーを投与する。シュタウディンガー反応における標的されたホスフィン分子による局所的な活性化の後、デンドリマーは複数の活性化されたFRET色素分子を分解及び放出する。この実施例を示した図2を参照。
実施例2
複数のFRET色素を含むアジドトリガーにより官能性を持ったカスケード放出デンドリマーを疾患部位に向ける。標的結合及び標的でない組織からのクリアランス後、トリフェニルホスフィンを全身的に投与する。ホスフィン分子による局所的な活性化の後、デンドリマーは複数の活性化されたFRET色素分子を分解及び放出する。この実施例を示した図3を参照。
実施例3
実施例2のもう1つの方法として、デンドリマーの末端の1つを介してFRET色素1個の代わりに、標的部分をデンドリマーに共役させることができる。この実施例を示した図4を参照。
実施例4
活性化可能なMRI造影剤。2個の強調されたカルボン酸が、Gdキレート複合体の内側の球における2個の水配位部位をふさぎ、その構成物の緩和率を減少(従って、MRIにおけるシグナル強度を減少)する。標的されたトリフェニルホスフィン部分(A)とアジド基が反応する場合、結果として生じるアミンにより開始される脱離カスケードによって、付加されたカルボン酸は除去される。このように、シュタウディンガー反応は、水が2箇所の配位部位を利用できるようにし、局所的なシグナル増加を生じる。Bでは、イメージング化合物を、活性化する化合物の代わりに向ける。付加された不活性なGdキレートを有する標的されたリポソームを、Aのために記述された機構による全身的なトリフェニルホスフィンとの反応の後、活性化する。これにより、活性化された複合体が放出される。しかし、活性化後にGd複合体を関心のある標的上に固定化したまま保持することは有利である。Cでは、これが、アジドトリガーにより放出されない位置に脂質テイルを結合させることにより、実現されている。単に、Aの基本構造を実施例2及び3における構造物の末端にFRET色素の代わりに置くことにより、活性化可能なプローブの概念を(標的された)カスケードデンドリマーとの組合せで簡単に応用することができる。この実施例を示した図5を参照。さらに、多数のこれらの構造物を、プロイメージングプローブのEPR標的のためのポリマーに付加することができる。この点で、さらに、多数の活性化分子(/シュタウディンガー反応パートナー)をEPR標的のためのポリマー等に付加することができ、後に全身的に投与された活性化可能なMRI造影剤と反応することができる。
実施例5
実施例1〜3において、放出された物質は、活性化された色素である。しかし、放出された成分が、(FRET色素のような)活性化可能なイメージングプローブと1又は複数のタイプの薬物との混合物を含み、薬物活性化の画像を可能にする実施例が可能である。さらに、標的部分自体、及び/又はイメージング/治療プローブ、及び/又は組成物(z)は、画像剤(例えば、放射性核種又は異なる波長の色素等)でラベルすることもでき、薬物送達及び活性化の同時の画像を可能にする。
実施例6
実施例5に記述された応用は、(FRETのような)他の活性化可能なイメージングプローブの代わりに、又は、他のイメージングプローブと組合せで、実施例4に記述された活性化可能なMRI造影剤を用いて行うこともできる。
実施例7
薬物活性化の画像に関する別の実施形態は、シュタウディンガー反応により活性化されるプロフルオレセント(profluorescent)トリフェニルホスフィン色素を使用する。この色素を疾患部位へ向けた後、アジドプロドラッグを投与する(実施例A)。次に、このプロドラッグを前記疾患部位にて選択的に活性化し、活性な薬物分子を放出し、並びに、局在化された蛍光プローブを活性化する。
【0104】
実施例Bでは、アジドプロドラッグを疾患部位に向ける。後のプロフルオレセント色素投与により、活性な薬物分子の局所的な放出及び色素の活性化が生じる。
【0105】
この実施例を示した図6を参照。
実施例8
モデルアジド−プロドラッグ4−アジドベンジルN−ベンジルカルバミン酸塩(4)の合成が説明される。
4−アジドベンジルアルコール(2):
5M塩化水素60mlに4−アミノベンジルアルコール(4.0g、32.5mmol)を混ぜ合わせた溶液を4℃まで冷却し、亜硝酸ナトリウム(2.48g、35.9mmol)の水20ml溶液を30分以内に液滴で添加した。アジ化ナトリウム(8.50g、130.7mmol)を勢いよく撹拌しながら30分かけて小部分で添加した。反応温度は5℃以下に保った。4℃で1.5時間撹拌した後、反応混合物を氷水に注ぎ、pH8まで塩基性化(NaHCO)した(酸塩基反応を認識)。水層をEtOAcで抽出し、水(2x)で洗浄した。EtOAc層を乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。石油エーテルベンジンを残留物上に注いだ後30分間撹拌し、一晩0℃で保ってクリーム色の懸濁液を産出した。濾過後、残留物を5mlの石油エーテルベンジンで洗浄し、2(3.93g、26.3mmol、81%)をクリーム色の粉末(感光性)として生じた。HNMR、δ(CDCl)1.72(1H、s、OH)、4.67(2H、s、CH)、7.02(2H、d、J=8.48、芳香族)、7.35(2H、d、J=8.67、芳香族)。
4−アジドベンジル4−ニトロフェニル炭酸塩(3):
4−ニトロフェニルクロロギ酸(5.32g、26.4mmol)及びピリジン(4.38g、55.4mmol)のTHF150ml溶液を0〜4℃で撹拌し、4−アジドベンジルアルコール2(3.93g、26.4mmol)のTHF50ml溶液を30分以内に液滴で添加した。反応混合物を25℃の暗い場所で70時間撹拌した。THFを蒸発させ、30mlのEtOAcを添加した。EtOAc層を水(2x)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。蒸留物を石油エーテルベンジン/EtOAcから再結晶し、3(6.26g、19.9mmol、75%)を黄色の粉末として生じた。HNMR、δ(CDCl)5.19(2H、s、CH)、7.00(2H、d、J=8.48、アジドベンジル香料)、7.31(2H、d、J=9.23、ニトロフェニル香料)、7.37(2H、d、J=8.67、アジドベンジル香料)、8.21(2H、d、J=9.23、ニトロフェニル香料)。
4−アジドベンジルN−ベンジルカルバミン酸塩(4):
4−アジドベンジル4−ニトロフェニル炭酸塩3(465mg、1.48mmol)のTHF5.5ml溶液を0℃まで冷却し、ベンジルアミン(267mg、2.49mmol)及びピリジン(50mg、0.63mmol)を撹拌した溶液に添加した後、その溶液をrtまで戻し、18時間撹拌した。THFを蒸発させ、DCM30mlを添加した。有機層を水(1x)、0.1MHCl(1x)、水(1x)、0.1MNaOH(1x)及び水(1x)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。DCMを溶離液として、精製をクロマトグラフィーによりシリカゲル上で行い、4−アジドベンジルN−ベンジルカルバミン酸塩4(347mg、0.123mmol、83%)をわずかに黄色の個体として生じた。HNMR、δ(CDCl)4.36(2H、d、J=6.03、CHベンジル)、5.08(2H、s、CHアジドベンジル)、6.99(2H、d、J=8.28、アジドベンジル香料)、7.25〜7.35(7H、m、芳香族)。13CNMR、δ(CDCl)、45.59、66.64、119.53、127.98、129.12、130.26。
【0106】
この実施例を示した図7を参照。
実施例9
2種類の異なる培地における3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(5)によるモデルアジド−プロドラッグ4−アジドベンジルN−ベンジルカルバミン酸塩(4)の活性化
DMF/HO(3.5/1)において:プロドラッグ4(5.3mg、18.8μmol)を952μlのDMF−d7及び275μlのDOに溶解した。ホスフィン5(12.1mg、33.2μmol)を添加した後、HNMRと反応させた。反応を、4.83ppmでのCHアジドベンジルシグナルの消失、及び、4.64ppmでの対応するアミノベンジルアルコール(7)のCHシグナルの出現から判断できる完了まで14時間以内で実行した。
【0107】
THF/HO(1/1)において:プロドラッグ4(4.8mg、17.0μmol)を275μlのTHF−d8及び275μlのDOに溶解した。ホスフィン5(11.3mg、31.0μmol)をわずかに黄色の溶液に添加した後、気体発生が観察された。HNMRとの反応を続けて行い、反応を、4.38ppmでのCHベンジルシグナルの消失、及び、3.99ppmでの対応する遊離のベンジルアミン(6)のCHシグナルの出現から判断できる50%まで7時間後に実行した。
【0108】
この実施例を示した図8を参照。
実施例10
ドキソルビシンプロドラッグ9の合成
アジドベンジルカルバミン酸塩ドキソルビシン9。4−アジドベンジル4−ニトロフェニル炭酸塩3(20.6mg、65.6μmol)、ETN(9.6μl、69μmol)、ドキソルビシン(40mg、69μmol)のDMF(4.8ml)溶液を、RTの暗い場所において、窒素ガス下で20時間撹拌した。ETN(9.6μl、69μmol)をさらに添加した後、溶液をさらに24時間撹拌した。
【0109】
有機層EtOAcに、イソプロパノール10%(10ml)を添加し、有機層を水(1x)で洗浄した。赤い有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で蒸発させた(水浴は30℃以下であった)。赤い固体を収集し(77mg)、調製用のTLC(DCM/MeOH9/1)で精製した。Rf0.72で収集した画分をEtOAcで抽出した。有機層を減圧下で蒸発させ、ACN/水1/1を凍結乾燥のために添加した。凍結乾燥後、赤い固体(31.8mg、67%)を収集した。HNMRδ(CDCl)1.29(3H、d、J=6.6、C−CH)1.80〜1.90(2H、m、CH炭水化物)、2.17(1H、dd、J=14.8、J=4.0、CH)、2.33(1H、brdt、J=14.7、J=1.7、CH)、3.02(1H、d、J=19、CH)、3.28(1H、d、J=19、CH)、3.66(1H、brs、CH炭水化物)、3.86(1H、m、CH炭水化物)、4.09(3H、s、O−CH)、4.14(1H、q、J=6.4、CH−CH)4.76(2H、s、CH−OH)、4.99(2H、s、CHリンカー)、5.13(1H、d、J=8.6、アミドNH)、5.29(1H、brm、CH)、5.50(1H、d、J=3.5、CH炭水化物)、6.97(2H、d、J=8.3、芳香族のアジド)、7.29(2H、d、J=8.3、芳香族のアジド)、7.40(1H、dd、J=8.5、J=0.75、芳香族のdox)、7.80(1H、dd、J=8.5、J=7.7、芳香族のdox)、8.05(1H、dd、J=0.75、J=7.7、芳香族のdox)。MALDI TOF MS:m/z:742[M+Na]
【0110】
この実施例を示した図9を参照。
実施例11
HPLC及びLC−MSで求められたドキソルビシンプロドラッグ(9)の活性化
以下の方法で活性化を実行した:プロドラッグの水又は増殖培地溶液を、トリフェニルホスフィン−3、3’、3’’−トリスルホン酸三ナトリウム塩の水又は増殖培地溶液と混合した。サンプルを2時間ごとに反応混合液(37Cにて)から採取し、HPLC又はLCMSにおいて測定した。いくつかの異なる濃度及び比率のプロドラッグ/トリフェニルホスフィンを使用した。第1の活性化実験を、100μM濃度のプロドラッグ及び200μM濃度のホスフィンを有する水において行い、HPLCでモニターした。8時間後、15%ドキソルビシンが形成され、反応は20時間後に完了した(図10)。
【0111】
第2の活性化を、10分の1の濃度、10μM濃度のプロドラッグ及び20μM濃度のホスフィンで行い、LCMSでモニターした。24時間後、反応を約30%まで実行した(図11)。
【0112】
第3及び最後の活性化を、10μMプロドラッグで細胞増殖培地において行った。トリフェニルホスフィンは細胞増殖培地において緩徐に酸化されるため、手順を調整した。この実験の間、1日に2回、混合液に新たに一部(60μM)トリフェニルホスフィンを追加した。8時間後、反応を85%まで実行した(図12)。
【0113】
この実施例を示した図10〜12を参照。
実施例12
トリフェニルホスフィンによりインサイツで活性化されたプロドラッグ9(pro−dox)を有するA431細胞を用いた細胞増殖アッセイ
プロドラッグ9(pro−dox)のin vitro抗癌活性を、細胞毒性試験により評価した。これらの細胞実験には、A431細胞株を使用した。この細胞株は、ヒト外陰部皮膚扁平上皮癌(SCC)由来である。ホスフィンと組み合わせたプロドラッグの添加は、シュタウディンガー反応によるドキソルビシンの放出のため、ホスフィン無しのpro−doxの添加に比べ、増殖は減少するはずである。
細胞及び試薬
ペニシリン及びストレプトマイシンの存在下で熱失活した10%ウシ胎児血清及び0.05%グルタマックス(InVitrogen)で補ったDMEM(InVitrogen社)において、細胞を37℃で維持した。
【0114】
ドキソルビシン(Toronto Research Chemicals)及びpro−dox(9)を、各実験の前に、DMFにおいて10mMで新たに溶解し、その後、予め温められた培地において段階希釈した。トリフェニルホスフィン−3、3’、3’’−トリスルホン酸三ナトリウム塩(Sigma社)をPBSにおいて10mMで溶解し、予め温められた培地において段階希釈した。メチルチアゾリルジフェニル−テトラゾリウムブロマイド、MTT(Sigma社)を製造者により記述されているように使用した。
増殖アッセイ
96穴プレート(Nunc社)において、7500細胞/穴という密度で細胞を培養し、翌日、試薬を添加した。72時間の培養後、細胞増殖をMTTアッセイにより評価した。手短に、MTTを予め温めた培地において5mg/mlで溶解し、0.22μmの濾過器に通し、50μlを各穴に添加した。120分間の培養後、培地を穏やかに吸引した。形成されたホルマザン結晶を100μlのDMSOにおいて溶解し、吸光度(O.D.)をプレートリーダーで560nmにて測定した。処置群(T)のO.D.を適切な対照群(C)のO.D.と共に記録することにより、増殖の阻害を決定し、[(1−T/C)×100%]で表現した。
【0115】
実施例11で記述されているように、ホスフィンを細胞増殖培地において緩徐に酸化する。従って、2日目に1回トリフェニルホスフィンと共にプロドラッグを細胞培地に添加する代わりに、ホスフィンを2日目から4日目まで定時で添加した。3回のホスフィン投与計画:5×10μM、5×30μM、及び5×60μMを調査した。ドキソルビシン薬物に使用される濃度の範囲は、0−0.01−0.1−0.3−1.0−10μMであった。図13及び14における結果により、pro−doxの最小の抗増殖性活性が示され、10、30、及び60μMのホスフィン反復投与により活性化されたpro−doxによる活性の増加が順に示されている。ドキソルビシン自体が最大の活性を有しており、マスクされた不活性なpro−dox類似体よりも2桁大きいことを見出した。pro−dox/ホスフィンの組合せは、活性においてその親薬物と同等ではないが、60μMホスフィン反復投与を用いたpro−doxで細胞を処理することにより、活性はpro−doxのみに比べてそれでも33倍増加する。
【0116】
同じ量のホスフィンにおいて、上記のホスフィン投与計画を単回投与計画と比べた。この実験の結果は、図15において示されている。図から、同一のホスフィン量において、ホスフィンの単回投与は、連続的なホスフィンの追加よりも、ドキソルビシンプロドラッグの活性化においてほとんど効果的ではないことが明らかである。
【0117】
この実施例を示した図13〜15を参照。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】シュタウディンガー反応(A)、及び、2つの実施形態におけるシュタウディンガー連結(B、C)を示している。
【図2】トリフェニルホスフィン共役が疾患部位に向けられ、複数のFRET色素を含有するアジドトリガーにより官能性を持ったカスケード放出デンドリマーと反応し、その色素を活性化及び放出する、実施例1を示している。
【図3】複数のFRET色素を含有するアジドトリガーにより官能性を持ったカスケード放出デンドリマーが、疾患部位に向けられている、実施例2を示している。後のトリフェニルホスフィン投与により、色素は活性化される。
【図4】実施例2に代わるものとして、標的部分が、デンドリマーの末端の1つを介して1個のFRET色素の代わりに共役されている、実施例3を示している。
【図5】実施例4を示している。図5(a)では、MRI−不活性Gdキレートが、アジドで官能性を持ち、予め局在化されたトリフェニルホスフィンとシュタウディンガー反応で反応し、活性なGdキレートを放出している。図5(b)では、付加されたMRI−不活性Gdキレートを有する、標的され予め局在化されたリポソームが、シュタウディンガー反応においてキレート上のアジド基が全身性のトリフェニルホスフィンと反応した後に、活性化されている。図5(c)では、脂質テイルが、シュタウディンガー反応後にMRIプローブを活性化するが放出はしない位置に、結合している。
【図6】実施例7を示している。図6(a)は、予め局在化されたプロフルオレセントトリフェニルホスフィン色素を使用している。その色素は、アジドプロドラッグとのシュタウディンガー反応により活性化され、活性な薬物分子を生じ、蛍光プローブを活性化する。図6(b)では、アジドプロドラッグは疾患部位に向けられ、プロフルオレセントトリフェニルホスフィン色素により活性化され、同時に、色素の活性化をもたらしている。
【図7】モデルアジドプロドラッグ4−アジドベンジルN−ベンジルカルバミン酸塩(4)が3つのステップで合成される、実施例8を示している。
【図8】モデルアジドプロドラッグ4−アジドベンジルN−ベンジルカルバミン酸塩(4)が3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸により活性化される、実施例9を示している。
【図9】実施例10に記述されているように、ドキソルビシンプロドラッグの合成を示している。
【図10−I】実施例11でより詳しく記述されているように、HPLC及びLC−MSで求められたドキソルビシンプロドラッグ(9)の活性化を示している。
【図10−II】実施例11でより詳しく記述されているように、HPLC及びLC−MSで求められたドキソルビシンプロドラッグ(9)の活性化を示している。
【図10−III】実施例11でより詳しく記述されているように、HPLC及びLC−MSで求められたドキソルビシンプロドラッグ(9)の活性化を示している。
【図11】実施例11でより詳しく記述されているように、HPLC及びLC−MSで求められたドキソルビシンプロドラッグ(9)の活性化を示している。
【図12】実施例11でより詳しく記述されているように、HPLC及びLC−MSで求められたドキソルビシンプロドラッグ(9)の活性化を示している。
【図13】実施例12に記述されているように、インサイツでトリフェニルホスフィンにより活性化されたプロドラッグ9(pro−dox)を有するA431細胞を用いた細胞増殖アッセイを示している。
【図14】実施例12に記述されているように、インサイツでトリフェニルホスフィンにより活性化されたプロドラッグ9(pro−dox)を有するA431細胞を用いた細胞増殖アッセイを示している。
【図15】実施例12に記述されているように、インサイツでトリフェニルホスフィンにより活性化されたプロドラッグ9(pro−dox)を有するA431細胞を用いた細胞増殖アッセイを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロドラッグ又はプロイメージングプローブを調製及び活性化する方法であって:
(a)薬物(x)又はイメージングプローブ(y)に少なくとも1個のアジド基及び/若しくはホスフィン基で官能性を持たせ、プロドラッグ又はプロイメージングプローブを作製するステップ;
(b)前記プロドラッグ又はプロイメージングプローブを、シュタウディンガー反応により、少なくとも1個のアジド基及び/若しくはホスフィン基を前記シュタウディンガー反応における反応パートナーとして含む組成物(z)と反応させ、前記薬物又はイメージングプローブを活性化するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
プロドラッグ又はプロイメージングプローブを調製及び活性化する方法であって:
(a)薬物(x)に少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基で官能性を持たせ、プロドラッグを作製するステップ;
(b)前記シュタウディンガー反応において、ステップ(a)の前記プロドラッグの前記アジド基及び/又はホスフィン基のパートナーである、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基でイメージングプローブ(y)に官能性を持たせ、プロイメージングプローブを作製するステップ;
(c)前記プロドラッグとプロイメージングプローブをシュタウディンガー反応により反応させ、前記薬物及び/又はイメージングプローブを活性化するステップ;
を含む方法。
【請求項3】
医用画像及び/又は治療のためのキットであって:
少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む、少なくとも1個のプロドラッグ(x)及び/又はプロイメージングプローブ(y);
シュタウディンガー反応において前記プロドラッグ又はプロイメージングプローブと反応し、薬物又はイメージングプローブを形成する能力を持つ、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む組成物(z);
を含むキット。
【請求項4】
少なくとも1個のプロドラッグを含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
プロドラッグ及びプロイメージングプローブを含む、請求項3に記載のキット。
【請求項6】
前記プロドラッグ及び前記プロイメージングプローブがホスフィン基を含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記プロドラッグ(x)、プロイメージングプローブ、又は組成物(z)のうち少なくとも1つが一次標的部分を含む、請求項3若しくは4に記載のキット、又は、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的部分が受容体に結合する、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記標的部分が抗体に結合する、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
アジド基及び/又はホスフィン基を含むプロドラッグ又はプロイメージングプローブの使用であって、前記ホスフィン基及び/又は前記アジド基が前記シュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである、医用画像における道具としての使用。
【請求項11】
アジド基及び/又はホスフィン基を含むプロイメージングプローブの使用であって、前記ホスフィン基及び/又は前記アジド基が前記シュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである、医用画像用道具の製造における使用。
【請求項12】
アジド基及び/又はホスフィン基、並びに、検知可能なラベルを含むプロドラッグの使用であって、前記ホスフィン基及び/又はアジド基が前記シュタウディンガー反応の適切な反応パートナーである、医用画像用道具の製造における使用。
【請求項13】
標的された医用画像及び/又は標的された治療のためのキットであって:
シュタウディンガー反応パートナーを含む少なくとも1個のビルディングブロック;及び
少なくとも1個のプローブ;
を含み、
該プローブが:
シュタウディンガー反応パートナー及びラベルを含むイメージングプローブ;又は
シュタウディンガー反応パートナー及び薬剤的に活性な化合物を含む治療プローブ;
から選択され、
前記ビルディングブロック又は前記イメージング若しくは治療プローブのうち1つが、それぞれシュタウディンガー反応パートナー及び活性化因子として、少なくとも1個のアジド基を含み、さらに、前記ビルディングブロック、イメージングプローブ又は治療プローブのうちのもう1つが、少なくとも1個のホスフィン基を含み、該ホスフィン基及び前記アジド基が前記シュタウディンガー反応の反応パートナーであることを特徴とする、キット。
【請求項14】
標的された医用画像及び/又は標的された治療のためのキットであって:
シュタウディンガー反応パートナーを含む少なくとも1個のレポータープローブ;及び
少なくとも1個のプローブ;
を含み、
該プローブが:
シュタウディンガー反応パートナー及びラベルを含むイメージングプローブ;又は
シュタウディンガー反応パートナー及び薬剤的に活性な化合物を含む治療プローブ;
から選択され、
前記レポーター又は前記イメージング若しくは治療プローブのうち1つが、シュタウディンガー反応パートナーとして、少なくとも1個のアジド基を含み、さらに、もう1つの前記プローブが、少なくとも1個のホスフィン基を含み、該ホスフィン基及び前記アジド基が前記シュタウディンガー反応の反応パートナーであることを特徴とする、キット。
【請求項15】
標的された医用画像及び/又は標的された治療のためのキットであって:
少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む、少なくとも1個のプロドラッグ(x);
シュタウディンガー反応において前記プロドラッグと反応し、薬物及びイメージングプローブを形成する能力を持つ、少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含む、少なくとも1個のプロイメージングプローブ(y);
を含むキット。
【請求項16】
薬物の調製に使用する少なくとも1個のホスフィン基を含むプロドラッグ。
【請求項17】
薬物の調製に使用する少なくとも1個のアジド基及び/又はホスフィン基を含むプロイメージングプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−I】
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【図10−II】
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【図10−III】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−512642(P2009−512642A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534126(P2008−534126)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053584
【国際公開番号】WO2007/039864
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】