画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラム
【課題】 複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能な画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムを提供する。
【解決手段】 複数の試料Sのそれぞれについてマクロ画像を取得するためのマクロ画像取得部20と、マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御部、及びマクロ画像を参照して試料Sのミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定部を有する制御部60とによって画像取得装置を構成する。また、制御部60は、複数の試料Sの試料グループに対応してセッションを定義し、マクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理部を有する。
【解決手段】 複数の試料Sのそれぞれについてマクロ画像を取得するためのマクロ画像取得部20と、マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御部、及びマクロ画像を参照して試料Sのミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定部を有する制御部60とによって画像取得装置を構成する。また、制御部60は、複数の試料Sの試料グループに対応してセッションを定義し、マクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の画像を取得するための画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病理学の分野などにおいて、パーソナルコンピュータ等の仮想空間上であたかも実際の顕微鏡で試料を見ているかのように操作可能なバーチャル顕微鏡が知られている。このバーチャル顕微鏡で扱われる試料データは、予め実際の顕微鏡を利用して高解像度で取得された試料の画像データに基づいている。
【0003】
このようにバーチャル顕微鏡で利用される試料の画像データを取得する画像取得装置では、バーチャル顕微鏡での画像操作を実現するために、充分に高解像度で試料の画像を取得することが要求される。例えば、特許文献1:米国特許第6816606号公報には、高解像度の画像を効率的に取得するため、マクロ画像取得用のカメラと、高解像度のミクロ画像取得用のカメラとを用いて試料の画像を取得する構成が記載されている。
【特許文献1】米国特許第6816606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バーチャル顕微鏡で利用される試料の画像データの取得においては、スライドガラスに生体サンプル等が密封されたスライドを試料として多数用意し、それらの複数のスライドに対して連続的に画像取得が行われる場合がある。このような複数のスライドを対象とする画像取得では、その画像取得処理を適切に管理することが必要となる。
【0005】
例えば、試料の画像を高解像度で取得しようとすると、複数の試料のすべてについての画像取得を完了するには、多くの時間を要する。このため、いったん試料を画像取得装置にセットすると、長時間にわたって画像取得装置がそれらの複数の試料に対する画像取得処理に占有されてしまうこととなり、操作者による作業の自由度が大きく制限されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能な画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明による画像取得装置は、(1)複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段と、(2)マクロ画像取得手段によるマクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御手段、及びマクロ画像を参照して試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定手段を有する制御手段とを備え、(3)制御手段は、複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による画像取得方法は、(1)複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得ステップと、(2)マクロ画像取得ステップによるマクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御ステップ、及びマクロ画像を参照して試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定ステップを有する制御ステップとを備え、(3)制御ステップは、複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理ステップを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による画像取得プログラムは、(1)複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段を備える画像取得装置に適用され、(2)マクロ画像取得手段によるマクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御処理、及びマクロ画像を参照して試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定処理を有する制御処理を含み、(3)制御処理として、複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理処理を有する制御処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0010】
上記した画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムでは、複数の試料からなる試料グループを対象として行われる画像取得処理の制御において、試料グループに対応させてセッションの概念を導入する。そして、画像取得の対象である試料グループと、取得されたマクロ画像の画像データ等を含むデータグループであるセッションデータとをセッション毎に関連付けながら、画像取得処理の管理を行っている。このような構成によれば、複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能となる。また、このようなセッション管理を行うことにより、操作者による作業の自由度が大幅に向上される。なお、複数の試料については、例えば、複数の試料を格納する試料格納手段を設ける構成とすることが好ましい。あるいは、試料に付されたバーコード情報等によって複数の試料を管理する構成としても良い。
【0011】
ここで、画像取得装置は、試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、制御手段は、ミクロ画像取得手段によるミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御手段を有し、セッション管理手段は、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理することが好ましい。
【0012】
同様に、画像取得方法は、試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得ステップを備え、制御ステップは、ミクロ画像取得ステップによるミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御ステップを有し、セッション管理ステップは、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理することが好ましい。
【0013】
同様に画像取得プログラムは、画像取得装置が、試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、制御処理は、ミクロ画像取得手段によるマクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御処理を有し、セッション管理処理は、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理することが好ましい。
【0014】
このように、複数の試料に対してマクロ画像取得手段とミクロ画像取得手段とを設け、試料の全体像を示すマクロ画像を参照して撮像条件を設定した上で高解像度のミクロ画像の取得を行う構成とすることにより、例えばバーチャル顕微鏡で用いられる試料の画像データとなるような高解像度の試料のミクロ画像を効率良く取得することができる。また、このような構成において、複数の試料からなる試料グループに対応して、それらのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータをひとまとめにしてセッションデータとして管理することにより、その画像取得処理、条件設定処理等を好適に管理することが可能となる。
【0015】
また、画像取得装置は、制御手段が、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換手段を有することが好ましい。同様に、画像取得方法は、制御ステップが、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換ステップを有することが好ましい。同様に、画像取得プログラムは、制御処理が、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換処理を有することが好ましい。
【0016】
このような構成では、セッションデータをセッション毎に管理するとともに、試料グループの交換等に伴ってセッションの切換が必要となった場合に、試料グループと、セッションデータとを関連付けながら切換を行っている。これにより、例えば画像取得の対象として複数の試料グループが用意されている場合に、それぞれの試料グループに対する画像取得処理を好適に実行、管理することが可能となる。また、このようなセッションの切換が可能となることにより、画像取得作業の自由度が大きく向上される。
【0017】
また、画像取得装置は、セッション切換手段が、セッションが中断または終了したときに、セッション管理手段に対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示することが好ましい。
【0018】
同様に、画像取得方法は、セッション切換ステップにおいて、セッションが中断または終了したときに、セッション管理ステップに対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示することが好ましい。
【0019】
同様に、画像取得プログラムは、セッション切換処理が、セッションが中断または終了したときに、セッション管理処理に対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示することが好ましい。
【0020】
このように、中断または終了したセッションでのセッションデータをデータ記憶手段等で保持しておくことにより、例えば、中断したセッションでの画像取得処理を途中から再開したり、あるいは、既に終了したセッションで取得された画像データの一部を取得し直すなど、様々な手順での画像取得作業の実行が可能となる。
【0021】
また、画像取得装置は、セッション切換手段が、試料グループがセットされたときに、セッション管理手段に対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することが好ましい。
【0022】
同様に、画像取得方法は、セッション切換ステップにおいて、試料グループがセットされたときに、セッション管理ステップに対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することが好ましい。
【0023】
同様に、画像取得プログラムは、セッション切換処理が、試料グループがセットされたときに、セッション管理処理に対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することが好ましい。
【0024】
これにより、セットする試料グループが、途中でセッションを中断した試料グループ、あるいは新規の試料グループである場合のいずれにおいても、セッションデータとの関連付けを適切に行って、操作者による画像取得作業の効率を向上することができる。また、この場合の既存のセッションまたは新規のセッションへの切換については、操作者による指示にしたがって実行されることが好ましい。
【0025】
また、画像取得装置は、複数の試料を格納する試料格納手段には、セッションの実行中に試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、セッション切換手段は、セッションが中断または終了したときに、試料格納手段に対して、インターロック機構によるインターロックの解除を指示することが好ましい。
【0026】
同様に、画像取得方法は、複数の試料を格納する試料格納手段には、セッションの実行中に試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、セッション切換ステップにおいて、セッションが中断または終了したときに、試料格納手段に対して、インターロック機構によるインターロックの解除を指示することが好ましい。
【0027】
同様に、画像取得プログラムは、画像取得装置の試料格納手段には、セッションの実行中に試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、セッション切換処理は、セッションが中断または終了したときに、試料格納手段に対して、インターロック機構によるインターロックの解除を指示することが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、試料グループに対するセッションの実行中には試料格納手段でのインターロックをON状態とし、セッションを中断または終了したときにはインターロックを解除してOFF状態とすることができる。これにより、画像取得処理のセッションの開始/終了と、試料格納手段でのインターロックのON/OFFとを連動させて、試料格納手段に格納される試料グループと、セッションデータとを関連付けたセッションの管理を確実に実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムによれば、複数の試料からなる試料グループに対する画像取得処理の制御において、セッションの概念を導入するとともに、画像取得の対象である試料グループと、取得された画像データ等を含むデータグループであるセッションデータとをセッション毎に関連付けることにより、その画像取得処理を好適に管理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面とともに本発明による画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0031】
まず、画像取得装置の全体構成について説明する。図1は、本発明による画像取得装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による画像取得装置は、試料Sの画像を高解像度で取得するために用いられる顕微鏡システムであり、試料Sの画像取得を行う顕微鏡部10と、顕微鏡部10における画像取得の制御等を行う制御部60とを備える。画像取得の対象となる試料Sとしては、バーチャル顕微鏡で利用される画像データを取得する場合における、スライドガラスに組織切片等の生体サンプルが密封されたスライド(プレパラート)が例として挙げられる。
【0032】
顕微鏡部10は、試料格納部11と、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とを有している。試料格納部11は、それぞれ画像取得の対象となる複数の試料(例えばそれぞれ生体サンプルが密封された複数のスライド)Sからなる試料グループを格納可能に構成された格納手段である。この試料格納部11には、操作者による試料Sの格納、及び取り出し等に用いられる扉12が設けられている。また、本実施形態においては、試料格納部11において、画像取得処理中に誤って扉12が開放されることを防止するためのインターロック機構13が設けられている。
【0033】
マクロ画像取得部20は、試料Sの低倍率画像としてマクロ画像を取得するための第1の画像取得手段である。この画像取得部20では、試料Sの全体像に相当する低解像度でのマクロ画像が取得される。また、マクロ画像取得部20に対して、マクロ画像取得時に試料Sの光像を生成するための光を供給するマクロ用光源25が設置されている。これらのマクロ画像取得部20及びマクロ用光源25は、必要に応じて設けられる。
【0034】
一方、ミクロ画像取得部30は、試料Sの高倍率画像としてミクロ画像を取得するための第2の画像取得手段である。この画像取得部30では、目的とする試料Sの高解像度でのミクロ画像が取得される。また、ミクロ画像取得部30に対して、ミクロ画像取得時に試料Sの光像を生成するための光を供給するミクロ用光源35が設置されている。また、図1においては、画像取得部30で取得されるミクロ画像について、画像データに必要な補正を行うための画像補正部38が設けられている。この画像補正部38で行われる補正としては、ダーク補正、シェーディング補正などが挙げられる。例えば、シェーディング補正を行う場合、あらかじめ生体サンプルがのっていないスライドなどの参照用試料を撮像したブランク画像を取得しておき、このブランク画像を参照してシェーディング補正を行う方法を用いることができる。また、これらの画像補正については、マクロ画像についても同様に行う構成としても良い。
【0035】
また、顕微鏡部10内での各位置の間で試料Sを移動させる試料移動手段として、試料搬送部14及び試料ステージ15が設けられている。試料搬送部14は、試料格納部11での格納位置と、マクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30のそれぞれでの画像取得位置との間で試料Sを搬送する搬送手段である。また、試料ステージ15は、マクロ画像またはミクロ画像の画像取得時に試料Sが載置されるとともに、試料Sの画像取得位置の設定、調整等に用いられる。また、顕微鏡部10には、これらの顕微鏡部10の各部を駆動制御するための駆動制御部40が設けられている。
【0036】
制御部60は、データ処理部70と、データ記憶部75と、画像取得制御部80とを有している。データ処理部70には、マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像の画像データ、及びミクロ画像取得部30で取得されたミクロ画像の画像データが入力されており、これらの画像データについて必要なデータ処理が行われる。
【0037】
画像取得制御部80は、駆動制御部40を介して、顕微鏡部10における試料Sの画像取得動作を制御する。また、データ処理部70に入力された画像データ、画像データを処理して得られた各種のデータや情報、あるいは画像取得制御部80で用いられる制御情報等は、必要に応じてデータ記憶部75に記憶、保持される。
【0038】
また、本実施形態による画像取得装置では、この制御部60において、試料格納部11にセットされる複数の試料Sの試料グループに対応して定義されたセッションを用いて、顕微鏡部10における画像取得動作、及び取得された画像データ等の管理を行っている。このセッションを用いた画像取得処理の管理については、具体的には後述する。
【0039】
この制御部60は、例えばCPU及び必要なメモリ、ハードディスクなどの記憶装置を含むコンピュータによって構成される。また、この制御部60に対して、表示装置61、及び入力装置62が接続されている。表示装置61は、例えばCRTディスプレイまたは液晶ディスプレイであり、本画像取得装置の動作に必要な操作画面の表示、あるいは取得された試料Sの画像の表示等に用いられる。また、入力装置62は、例えばキーボードまたはマウスであり、画像取得に必要な情報の入力、画像取得動作についての指示の入力、上記したセッションの管理、切換についての指示の入力等に用いられる。
【0040】
次に、図1に示した画像取得装置における顕微鏡部10の構成について説明する。図2は、顕微鏡部10の構成を概略的に示す図である。図2に示すように、本実施形態による顕微鏡部10は、試料Sの光像の取得に利用される透過型の顕微鏡システムとして構成されている。ここで、図中に示すように、水平方向で互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向とし、水平方向に直交する垂直方向をZ軸方向とする。これらのうち、垂直方向であるZ軸方向が本顕微鏡システムにおける画像取得の光軸の方向となっている。また、図2においては、主にマクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30の構成を示し、試料格納部11及び試料搬送部14等については図示を省略している。
【0041】
試料Sは、画像取得部20、30における画像取得時には、試料ステージ15上に載置される。この試料ステージ15は、ステッピングモータ、DCモータ、またはサーボモータ等を用い、X軸方向及びY軸方向に移動可能なXYステージとして構成されている。このような構成において、試料ステージ15をXY面内で駆動することにより、画像取得部20、30での試料Sに対する画像取得位置の設定、調整が行われる。また、本実施形態においては、この試料ステージ15は、マクロ画像取得部20での画像取得位置、及びミクロ画像取得部30での画像取得位置の間で移動可能となっている。
【0042】
試料Sのマクロ画像を取得するためのマクロ画像取得位置に対し、光軸20a上の所定位置にそれぞれマクロ画像取得部20、及びマクロ用光源25が設置されている。マクロ用光源25は、試料Sに対してマクロ画像取得用の光像を生成するための光を照射する光源であり、試料ステージ15の下方に設置されている。
【0043】
また、マクロ画像取得部20は、試料Sの光像による2次元画像の取得が可能な2次元CCDセンサなどの撮像装置21を用いて構成されている。また、試料Sが配置されるマクロ画像取得位置と、撮像装置21との間には、試料Sの光像を導く光学系として撮像光学系22が設けられている。
【0044】
一方、試料Sのミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得位置に対し、光軸30a上の所定位置にそれぞれミクロ画像取得部30、及びミクロ用光源35が設置されている。ミクロ用光源35は、試料Sに対してミクロ画像取得用の光像を生成するための光を照射する光源であり、集光レンズ36とともに試料ステージ15の下方に設置されている。
【0045】
また、ミクロ画像取得部30は、試料Sの光像による1次元画像の取得が可能な1次元CCDセンサなどの撮像装置31を用いて構成されている。また、試料Sが配置されるミクロ画像取得位置と、撮像装置31との間には、試料Sの光像を導く光学系として対物レンズ32、及び導光光学系34が設けられている。対物レンズ32は、試料Sを透過した光を入射して試料Sの光像を生成する。また、導光光学系34は、例えばチューブレンズから構成され、試料Sの光像を撮像装置31へと導く。
【0046】
また、対物レンズ32に対して、ステッピングモータまたはピエゾアクチュエータ等を用いたZステージ33が設けられており、このZステージ33で対物レンズ32をZ軸方向に駆動することで、試料Sに対する焦点合わせ等が可能となっている。なお、このミクロ画像取得部30での撮像装置31としては、1次元画像の取得が可能な撮像装置に限らず、2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な撮像装置を用いることも可能である。
【0047】
また、このミクロ画像取得用の撮像装置31としては、例えば3板式CCDカメラなどのカラー画像が取得可能な撮像装置を用いることが好ましい。なお、マクロ画像取得用の撮像装置21については、必要に応じて、白黒画像取得用の撮像装置、またはカラー画像が取得可能な撮像装置のいずれを用いても良い。また、撮像装置31についても、カラー画像を取得する必要がない場合には、白黒画像取得用の撮像装置を用いても良い。
【0048】
これらの試料ステージ15、マクロ画像取得部20、ミクロ画像取得部30、及び光源25、35に対して、駆動制御部40には、ステージ制御部41、撮像装置制御部42、及び光源制御部43が設けられている。ステージ制御部41は、XYステージである試料ステージ15、及びZステージ33を駆動制御することにより、試料Sに対する撮像条件の設定、調整等を行う。また、撮像装置制御部42は、撮像装置21、31を駆動制御することにより、試料Sの画像取得を制御する。また、光源制御部43は、光源25、35を駆動制御することにより、試料Sに対する画像取得用の光の照射を制御する。なお、顕微鏡部10の各部の制御については、駆動制御部40を介さずに制御部60の画像取得制御部80によって直接に制御する構成など、他の構成を用いても良い。
【0049】
ここで、画像取得部20、30における試料Sのマクロ画像及びミクロ画像の取得について説明しておく。マクロ画像取得部20では、ミクロ画像の撮像条件の設定に用いられる試料Sの全体像であるマクロ画像が取得される。例えば、上記したスライドガラスに生体サンプル等が密封されたスライドを試料Sとした場合、マクロ画像としては、スライド全体、または生体サンプルを含む所定範囲の画像が取得される。
【0050】
また、ミクロ画像取得部30では、設定された撮像条件を参照して、目的とする解像度での試料Sのミクロ画像が取得される。このミクロ画像の取得は、図3(a)に模式的に示すように、マクロ画像よりも高い所定の解像度で試料Sを2次元に走査することによって行われる。ここで、1次元CCDカメラなどの撮像装置31を用いたミクロ画像の取得では、試料Sに対して平行なXY面内において、撮像装置31での撮像面の長手方向をX軸方向、この長手方向に直交する方向をY軸方向とする。このとき、ミクロ画像の取得においては、撮像装置31での撮像面の長手方向に直交する方向、図3(a)においてはY軸の負の方向が、試料Sに対する走査方向となる。
【0051】
1次元CCDカメラなどの撮像装置31を用いたミクロ画像の取得では、まず、撮像装置31によって試料ステージ15上の試料Sを走査方向(Y軸の負の方向)に走査して、所望の解像度を有するストリップ状の部分画像Aを取得する。さらに、図3(a)に示すように、このような部分画像の取得を撮像面の長手方向(X軸の正の方向)に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して、複数の部分画像A、B、…、Iを取得する。
【0052】
このようにして得られた部分画像A〜IをX軸方向に並べて合成することで、試料Sの全体のミクロ画像を生成することができる。このようなミクロ画像の取得方法によれば、試料Sの画像データを充分に高い解像度で好適に取得することが可能である。なお、図3(a)中において、部分画像A内に斜線で示したX軸方向を長手方向とする領域は、撮像装置31での撮像面に対応する撮像領域を示している。
【0053】
また、ミクロ画像の撮像条件の設定については、マクロ画像取得部20の撮像装置21で取得されたマクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として画像取得範囲、及び焦点計測位置を設定することが好ましい。これにより、試料Sの全体像であるマクロ画像で得られる情報から、ミクロ画像取得に用いられるパラメータを好適に設定して、高解像度で良好な状態の試料の画像データを取得することが可能となる。
【0054】
具体的には、上記と同様にスライドを試料Sとした場合、図3(b)に示すように、試料Sに対する画像取得範囲は、画像取得の対象であるスライド中の生体サンプルLを含む矩形状の範囲Rによって設定することができる。ミクロ画像取得部30における試料Sの2次元の走査(図3(a)参照)は、このように設定された画像取得範囲R内について行われる。また、このような画像取得範囲Rの設定を自動で行う場合には、例えば、マクロ画像での輝度パターンに対して設定された閾値を参照して画像を二値化することで画像取得の対象物(例えば生体サンプルL)が存在する範囲を判別し、その判別結果に基づいて画像取得範囲Rを設定する方法を用いることができる。
【0055】
図4は、マクロ画像を二値化するための閾値の設定方法を示すグラフである。図4のグラフにおいて、横軸はマクロ画像の各画素での輝度値を示している。ここで、本実施形態で取得されるマクロ画像では、マクロ画像取得部20の透過型の構成により、生体サンプルLが存在しないスライドガラスのみの領域で最も輝度が高くなる。
【0056】
マクロ画像に対する閾値の設定においては、例えば、図4に示すように、その輝度分布において2つのピークP1、P2を求め、その中心の輝度値を閾値Tとして設定する方法を用いることができる。そして、この閾値によって画像を二値化することによって、画像中で対象物Lが存在する範囲を容易に判別することができる。さらに、判別された範囲のうち、指定された面積以上の連続した範囲を1つの対象物Lの範囲とし、すべての対象物Lを包含する最小の矩形の領域を画像取得範囲Rとして設定する。なお、閾値の設定については、上記した方法以外にも、例えばピークの輝度値に対してあらかじめ固定に決められた割合で閾値を設定する方法など、様々な方法を用いることができる。
【0057】
また、二値化されたマクロ画像での対象物Lが存在する範囲の判別においては、二値化された画像に対してn回の収縮処理(erosion処理:絵の塊を小さくする処理)を行い、続いて、n回の膨張処理(dilation処理:絵の塊を大きくする処理)を行うことが好ましい。これにより、画像中の小さいノイズ等を取り除くことができる。また、スライドのカバーグラスのエッジやスライド内のゴミを取り除くためのフィルタリング処理をさらに行っても良い。
【0058】
また、焦点計測位置は、ミクロ画像取得部30において、試料Sのミクロ画像の取得に先立って試料Sに対する焦点情報を取得する際に用いられるものである。ミクロ画像取得部30では、設定された焦点計測位置について撮像装置31を用いて焦点計測を行って、試料Sのミクロ画像を取得する際の焦点情報としての焦点位置を決定する。この焦点計測位置は、例えば試料Sの水平面内での傾き、すなわち水平面内での焦点位置のずれが問題にならない場合には、試料Sに対して1点の焦点計測位置を設定すれば良い。
【0059】
また、水平面内での焦点位置のずれを考慮する必要がある場合には、試料Sに対して3点以上の焦点計測位置を設定することが好ましい。このように、3点もしくはそれ以上の焦点計測位置を設定して焦点計測を行うことにより、試料Sの画像取得範囲Rに対する2次元の焦点マップを求めることができる。例えば、焦点位置についての焦点マップを平面状の焦点面として決定する場合、3点の焦点計測位置での計測結果点を含む平面から焦点面を求めることができる。また、4点以上の焦点計測位置を用いた場合、その計測結果点から最小二乗法等のフィッティング手法を用いて焦点面を求めることができる。
【0060】
図3(b)においては、マクロ画像を用いた焦点計測位置の設定について、9点の焦点計測位置を自動で設定する場合の例を示している。ここでは、試料Sに対して先に設定された画像取得範囲Rを3×3で9等分し、そのそれぞれの領域の中心点によって、9点の焦点計測位置Pを設定している。
【0061】
また、ここでは、9点の焦点計測位置のうち8点については初期設定された位置が画像取得の対象物である生体サンプルLの範囲内に含まれているため、そのまま焦点計測位置として設定される。一方、左下の1点については生体サンプルLの範囲外にあり、そのままでは焦点計測位置とすることができない。このため、この左下の焦点計測位置については、例えば画像取得範囲R内で中心に向けて移動するなどの方法で求められる位置Qを焦点計測位置として設定しても良い。あるいは、このような位置については焦点計測位置から除外しても良い。
【0062】
なお、4点以上の焦点計測位置から最小二乗法を用いて焦点面を求める場合、焦点計測位置の中で求められた焦点面から離れすぎている計測位置があれば、それを除いて再度、焦点面を求め直すことが好ましい。また、焦点面を正常に求めることができなかった場合には、その対象物はゴミであるとして除外することが好ましい。
【0063】
以上説明した例のように、試料Sをスライドとした場合、ミクロ画像を取得するための撮像条件については、好ましくは、まず、マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として生体サンプルLを含む画像取得範囲R、及び所定の点数の焦点計測位置Pを設定する。そして、ミクロ画像取得部30において焦点計測位置Pに基づいて試料Sに対する焦点位置または焦点面などについての焦点情報を取得するとともに、得られた焦点情報、及び設定された画像取得範囲Rに基づいて、試料Sのミクロ画像の取得が行われる。
【0064】
なお、試料Sのマクロ画像を用いた画像取得範囲R、及び焦点計測位置Pの設定については、図3(b)に示した例に限らず、具体的には様々な方法を用いて良い。例えば、図3(b)においては、焦点計測位置Pの設定については所定の設定アルゴリズムを用いて自動で設定する例を示したが、手動で焦点計測位置を設定する場合には、操作者がマクロ画像を確認した上で、適当な点数、配置となるように焦点計測位置を設定すれば良い。
【0065】
続いて、図1に示した画像取得装置における制御部60の構成について説明する。図5は、制御部60の構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態による制御部60は、データ処理部70と、データ記憶部75と、画像取得制御部80とを有して構成されている。
【0066】
データ処理部70は、撮像条件設定部71と、試料データ作成部72と、セッション管理部73とを有する。撮像条件設定部71は、顕微鏡部10のマクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定する設定手段である。また、試料データ作成部72は、ミクロ画像取得部30で取得されたミクロ画像を用い、試料Sの画像データである試料データを作成する。また、セッション管理部73は、試料格納部11にセットされる試料グループに対応して定義されたセッションを用いた画像データ等の管理を行う。
【0067】
図6は、ミクロ画像を用いた試料データの作成について模式的に示す図である。ここでは、顕微鏡部10のミクロ画像取得部30で取得されたミクロ画像の画像データとして、ストリップ状の部分画像A、B、C、…の画像データ群が制御部60に入力される(図3(a)参照)。試料データ作成部72は、これらの複数の部分画像を並べて合成し、試料Sの全体に対するミクロ画像となる画像データを生成して試料データとする。この試料データは、例えば、バーチャル顕微鏡での画像データとして利用することができる。なお、試料Sの画像データについては、必要に応じて、データ圧縮を行っても良い。また、顕微鏡部10から入力された画像データ、及び試料データ作成部72で作成された試料データは、必要に応じてデータ記憶部75に記憶される。
【0068】
画像取得制御部80は、マクロ画像取得制御部81と、ミクロ画像取得制御部82と、セッション切換部83とを有する。マクロ画像取得制御部81は、マクロ画像取得部20による試料Sのマクロ画像の取得動作を制御する。また、ミクロ画像取得制御部82は、ミクロ画像取得部30によるミクロ画像の取得動作を制御する。また、セッション切換部83は、試料グループに対応したセッションの切換を制御する。
【0069】
上記した画像取得制御部81、82による試料Sのマクロ画像及びミクロ画像の取得動作の制御、及び撮像条件設定部71による撮像条件の設定は、画像取得処理について選択された制御モードにしたがって行われる。本実施形態においては、制御部60は、その制御モードとして、全自動モード、手動モード、及び半自動モードの3つの制御モードを有している。
【0070】
図7は、全自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。全自動モードにおいては、制御部60のマクロ画像取得制御部81は、試料格納部11で格納位置にある試料Sをマクロ画像取得部20での画像取得位置に配置してマクロ画像を取得させる制御を行う(マクロ画像取得制御ステップ)。また、撮像条件設定部71は、マクロ画像が取得された試料Sについて、マクロ画像に対応するミクロ画像の撮像条件を自動で設定する(撮像条件設定ステップ)。また、ミクロ画像取得制御部82は、撮像条件が設定された試料Sをミクロ画像取得部30での画像取得位置に配置し、撮像条件を参照してミクロ画像を取得させる制御を行う(ミクロ画像取得制御ステップ)。
【0071】
図7に示す例では、まず、操作者が、画像取得の対象となる複数のスライドSを顕微鏡部10の試料格納部11にセットし、扉12を閉める(ステップS101)。試料格納部11に格納可能なスライド数は具体的な装置構成によって異なるが、例えば数百枚程度である。
【0072】
次に、複数のスライドSのうちで、画像取得を実行するスライドSを試料格納部11から取り出し、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上に載置させて、マクロ画像取得部20での画像取得位置(図1及び図2参照)にセットする(S102)。そして、画像取得部20の撮像装置21により、生体サンプルLを含むスライドSのマクロ画像を取得する(S103、マクロ画像取得ステップ)。制御部60の撮像条件設定部71では、取得されたマクロ画像を参照して、そのスライドSに対する撮像条件である画像取得範囲R、及び複数の焦点計測位置Pが、所定のアルゴリズムを用いて自動で設定される(S104、撮像条件設定ステップ)。
【0073】
マクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14または試料ステージ15により、マクロ画像取得部20での画像取得位置から移動され、ミクロ画像取得部30での画像取得位置にセットされる(S105)。そして、撮像条件設定部71で設定された撮像条件を参照し、画像取得部30の撮像装置31により、スライドSのミクロ画像を取得する(S106、ミクロ画像取得ステップ)。
【0074】
具体的には、まず、スライドSに対して設定された複数の焦点計測位置Pのそれぞれについて、ミクロ画像取得部30において焦点計測を行い、得られた焦点位置から生体サンプルLの画像取得に最適な焦点情報として焦点面を求める。そして、求められた焦点面に基づいて焦点制御を行いつつ、画像取得範囲Rについて撮像装置31によってスライドSを2次元に走査し、複数のストリップ状の部分画像を取得する。この複数の部分画像は、制御部60の試料データ作成部72で所定のデータ合成処理が行われることにより、スライドSの高解像度のミクロ画像(バーチャル顕微鏡でのデジタルスライド)となる。
【0075】
続いて、ミクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14によりミクロ画像取得部30での画像取得位置から試料格納部11での格納位置に戻される(S107)。そして、画像取得制御部80において、複数のスライドSのうちで画像取得処理が完了していないスライドSがあるかどうかが確認される(S108)。ここで、さらに画像取得処理を行うべきスライドSがあれば、上記したステップS102〜S107を繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについての画像取得処理が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対する画像取得を終了する。
【0076】
なお、手動モードについては、各ステップを操作者からの指示によって手動で行う以外は、基本的には全自動モードでの画像取得手順と同様である。ただし、手動モードにおいても、例えばマクロ画像の取得が完了したスライドSのミクロ画像取得部30での画像取得位置への移動など、操作者からの指示が不要なステップについては、自動で行うこととしても良い。また、スライドSのミクロ画像の取得については、取得されたミクロ画像を操作者が確認し、問題があれば撮像条件の再設定、あるいはミクロ画像の再取得等を実行することが可能な構成であっても良い。
【0077】
図8及び図9は、半自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。半自動モードにおいては、制御部60のマクロ画像取得制御部81は、複数の試料Sのそれぞれについて、試料格納部11で格納位置にある試料Sをマクロ画像取得部20での画像取得位置に配置してマクロ画像を取得させ、さらに試料Sを待機位置に配置させる制御を行う(マクロ画像取得制御ステップ)。また、撮像条件設定部71は、マクロ画像が取得された試料Sについて、マクロ画像、及びそれに対応する撮像条件を操作者に確認させてミクロ画像の撮像条件を設定する(撮像条件設定ステップ)。また、ミクロ画像取得制御部82は、待機位置にあって撮像条件が設定された試料Sをミクロ画像取得部30での画像取得位置に配置し、撮像条件を参照してミクロ画像を取得させる制御を行う(ミクロ画像取得制御ステップ)。なお、本実施形態においては、試料Sの待機位置は、試料格納部11での格納位置に設定されている。
【0078】
図8及び図9に示す例では、まず、全自動モードの場合と同様に、操作者が、画像取得の対象となる複数のスライドSを顕微鏡部10の試料格納部11にセットし、扉12を閉める(ステップS201)。
【0079】
次に、マクロ画像取得制御部81により、複数のスライドSのそれぞれについて、そのマクロ画像の取得が行われる(S202、マクロ画像取得ステップ)。具体的には、図8に示すように、複数のスライドSのうちで、画像取得を実行するスライドSを試料格納部11での格納位置から取り出し、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上に載置させて、マクロ画像取得部20での画像取得位置にセットする(S301)。そして、画像取得部20の撮像装置21により、生体サンプルLを含むスライドSのマクロ画像を取得する(S302)。
【0080】
マクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14によりマクロ画像取得部20での画像取得位置から、その待機位置となっている試料格納部11での格納位置に戻される(S303)。そして、マクロ画像取得制御部81において、複数のスライドSのうちでマクロ画像取得処理が完了していないスライドSがあるかどうかが確認される(S304)。そして、さらにマクロ画像取得処理を行うべきスライドSがあれば、上記したステップS301〜S303を繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについてのマクロ画像取得処理が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対するマクロ画像取得を終了する。
【0081】
また、本モードでは、最初のスライドSのマクロ画像が取得された後は、マクロ画像取得処理と並行して、ミクロ画像の撮像条件の設定が行われる(S203、撮像条件設定ステップ)。制御部60の撮像条件設定部71では、撮像条件の設定対象となるスライドSについて、取得されたマクロ画像、及びそれに対応する撮像条件を操作者に確認させて、ミクロ画像を取得するための撮像条件である画像取得範囲R、及び複数の焦点計測位置Pが設定される。このような撮像条件の確認及び設定は、例えば図1に示した構成において表示装置61に表示される操作画面を用いて行われる。
【0082】
撮像条件の設定方法の一例を説明すると、まず、マクロ画像が取得されたスライドSのリストがサムネイル画像とともに表示され、そのスライドリストから撮像条件を設定するスライドSが選択される。続いて、選択されたスライドSのマクロ画像が表示され、操作者は、このマクロ画像を確認し、撮像条件の設定を自動/手動のどちらで行うかを選択する。そして、自動設定が選択されていれば、撮像条件を自動で設定するとともにそのスライドに対する撮像条件の設定を終了して、次のスライドの選択、及び撮像条件の設定作業に移行する。
【0083】
また、手動設定が選択されていれば、操作者は、そのスライドのマクロ画像に対して、生体サンプルLが存在する範囲及び形状等を考慮して、画像取得範囲R、及び焦点計測位置Pを手動で設定する。そして、撮像条件の設定が終了したら、さらに撮像条件の設定を行うべきスライドSがあれば、上記したステップを繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについての撮像条件の設定が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対する撮像条件の設定を終了する。
【0084】
すべてのスライドSについてのマクロ画像取得処理が完了したら、続いて、撮像条件の設定処理とも並行して、ミクロ画像取得制御部82により、複数のスライドSのそれぞれについて、そのミクロ画像の取得が行われる(S204、ミクロ画像取得ステップ)。具体的には、図9に示すように、複数のスライドSのうちで、既に撮像条件が設定されているスライドSを選択して画像取得を実行するスライドSとする。選択したスライドSを待機位置である試料格納部11での格納位置から取り出し、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上に載置させて、ミクロ画像取得部30での画像取得位置にセットする(S401)。そして、撮像条件設定部71で設定された撮像条件を参照し、画像取得部30の撮像装置31により、スライドSのミクロ画像を取得する(S402)。なお、ミクロ画像の取得方法については、基本的には全自動モードの場合と同様である。
【0085】
続いて、ミクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14によりミクロ画像取得部30での画像取得位置から試料格納部11での格納位置に戻される(S403)。そして、ミクロ画像取得制御部82において、複数のスライドSのうちで撮像条件が設定されている他のスライドSがあるかどうかが確認される(S404)。ここで、さらに撮像条件が設定されて画像取得処理が可能なスライドSがあれば、上記したステップS401〜S403を繰り返して実行する。
【0086】
また、撮像条件が設定されているスライドSがない場合には、さらにミクロ画像取得制御部82において、複数のスライドSのうちで画像取得処理が完了していないスライドSがあるかどうかが確認される(S405)。ここで、さらに画像取得処理を行うべきスライドSがあれば、撮像条件が設定されるのを待って上記したステップS401〜S403を繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについての画像取得処理が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対する画像取得を終了する。
【0087】
次に、画像取得装置の制御部60におけるセッションを用いた画像取得処理の管理について説明する。本実施形態の画像取得装置においては、上述したように、試料格納部11にセットされる複数の試料Sの試料グループに対応してセッションが定義されている。そして、制御部60のセッション管理部73において、複数の試料Sのそれぞれについてのマクロ画像のデータ、及び撮像条件を含むデータグループが、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理される。
【0088】
また、図1に示した画像取得装置では、試料Sに対する画像取得部として、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とが設けられている。このような構成に対応して、セッション管理部73では、複数の試料Sのそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループがセッションデータとして管理される。また、上記した各データ以外にも、例えば撮像条件である焦点計測位置に基づいて取得された焦点情報など他のデータがあれば、それらのデータも合わせてセッションデータとして管理することが好ましい。
【0089】
また、このようなセッションデータは、必要に応じてデータ記憶部75に記憶することで保持される。図5のデータ記憶部75においては、そのようなデータ管理の例として、セッション1、セッション2、…の複数のセッションに対応するセッションデータが記憶されている場合を示している。試料グループとデータグループとを関連付けたセッションの概念を導入することにより、このように複数のセッションを同時に管理することが可能となる。
【0090】
また、図5に示した制御部60においては、セッション管理部73に加えてセッション切換部83が設けられている。このセッション切換部83は、試料格納部11にセットされた試料グループと、セッション管理部73によって管理されたセッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態で、セッションの切換を制御する。このようなセッションの切換は、操作者による指示によって手動で、または必要があれば自動で行われる。
【0091】
また、図1に示した画像取得装置では、試料格納部11に対し、セッションの実行中に試料格納部11の扉12が開放されることを防止するためのインターロック機構13が設けられている。このような構成に対応して、制御部60のセッション切換部83は、セッションの切換の制御と合わせて試料格納部11でのインターロックのON/OFFの制御を行う構成となっている。なお、インターロック機構13は、例えばソレノイドを用いたロック機構によって構成される。
【0092】
図10は、セッション切換部83による試料格納部11でのインターロックの制御の一例を示す図である。画像取得装置の電源を投入した状態では、実線で示すように、試料格納部11のインターロック機構13は通常、OFFの状態になっている。ただし、前回の使用時に異常終了等している場合には、破線で示すようにインターロックがONの状態となっている場合もある。このため、電源投入後に自動で、または必要に応じて手動で扉開放処理を実行し、試料格納部11に対するインターロックを確実にOFF状態とする。
【0093】
続いて、操作者によって画像取得モードが選択される。また、操作者は試料格納部11の扉12を開け、画像取得の対象となる複数の試料Sからなる試料グループを試料格納部11内にセットした後、扉12を閉める。この状態で、操作者が制御部60に対して画像取得の開始を指示すると、セッション切換部83は、試料グループに対応するセッションを開始するとともに、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの作動を指示する。これにより、試料格納部11でのインターロックがON状態に移行し、画像取得中はこのままインターロックのON状態が保持される。
【0094】
試料格納部11に格納された試料グループに対する画像取得が完了し、操作者が制御部60に対して画像取得の終了を指示すると、セッション切換部83は、そのセッションを終了するとともに、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの解除を指示する。これにより、試料格納部11でのインターロックがOFF状態に移行し、扉12の開放、及び操作者による試料グループの交換等が可能な状態となる。
【0095】
制御部60におけるセッションの管理及び切換の具体例について説明する。図11〜図15は、それぞれセッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。なお、これらの操作画面は、図1に示した構成において表示装置61に表示される。
【0096】
画像取得装置の電源が投入され、扉開放処理等の装置の初期化処理が終了すると、表示装置61に図11に示すモード選択画面200が表示される。このモード選択画面200には、新規セッション開始部201、セッション選択部202、及び設定部203が表示されている。また、この画面200には、実行中のセッションを終了するためのセッション終了ボタン204、及び画像取得処理用のアプリケーションそのものを終了するための終了ボタン205が表示されている。ただし、この時点ではセッションの実行中ではないため、セッション終了ボタン204は操作不可能(以下、操作不可能な状態を図中、破線で示す)となっている。
【0097】
新規セッション開始部201には、単一スライドモード選択ボタン201aと、複数スライドモード選択ボタン201bとが設けられている。複数のスライドSからなる試料グループについて画像取得を行う場合には、選択ボタン201bをクリックして複数スライドモードを選択する。また、本構成例においては、単一のスライドSのみについて画像取得を行う場合には、選択ボタン201aをクリックすることで単一スライドモードを選択することが可能となっている。このような単一スライドモードは、例えば複数のスライドSについてのセッションを中断して割り込みで単一のスライドSの画像取得を行うなどの場合に有用である。
【0098】
セッション選択部202には、現在のセッション選択ボタン202aと、前回のセッション選択ボタン202bとが設けられている。新規のセッションではなく、制御部60のデータ記憶部75にセッションデータが保持されている既存のセッションを選択する場合には、このセッション選択部202が操作される。この時点では、装置を初期化した段階で現在のセッションがないために現在のセッション選択ボタン202aは操作不可能となっており、選択ボタン202bによって前回のセッションのみが選択可能となっている。
【0099】
また、設定部203には、セッティングボタン203aと、較正ボタン203bとが設けられている。この設定部203は、画像取得装置における各種設定を確認、変更等する必要がある場合に操作される。
【0100】
モード選択画面200によって新規のセッションの開始、または既存のセッションの再開が指示されると、セッション切換部83は、試料格納部11のインターロックをON状態として試料グループに対するセッションを開始する。また、セッション切換部83は、セッション管理部73に対し、試料格納部11にセットされている試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示する。既存のセッション、または新規のセッションの選択については、モード選択画面200での操作者からの指示内容にしたがって行われる。
【0101】
図12は、複数スライドモードを実行中の状態での操作画面の一例を示す図である。この処理実行画面210では、処理状況表示部211において試料グループに対する画像取得処理の進行状況(セッションの実行状況)が表示される。図12においては、複数のスライドSのうちでスライド1に対するミクロ画像取得処理を実行中の状態を示している。
【0102】
また、図12の画面210では、画像取得処理が実行中であることに対応して、実行中の画像取得処理を中断(Pause)するための処理中断ボタン212、及び画像取得処理を終了(Abort)するための処理終了ボタン213が操作可能となっている。処理中断ボタン212がクリックされると、現在実行中のミクロ画像取得処理が終わった時点で処理が中断される。また、処理終了ボタン213がクリックされると、その時点ですぐさま処理が中断される。また、この画面210には、図11に示した画面200と同様にセッション終了ボタン214、及び終了ボタン215が表示されている。ただし、ミクロ画像取得処理を実行中のため、これらのボタン214、215は操作不可能となっている。
【0103】
図13は、複数スライドモードを実行中の状態での操作画面の他の例を示す図である。この処理実行画面220では、図12の画面210と同様に処理状況表示部221において画像取得処理の進行状況が表示される。図13においては、複数のスライドSのうちでスライド1〜3に対するミクロ画像取得処理が完了した状態を示している。
【0104】
また、図13の画面220では、次の処理を開始するための処理開始ボタン222が操作可能となっている。また、この画面220には、図11に示した画面200と同様にセッション終了ボタン224、及び終了ボタン225が表示されている。また、この時点では実行中の画像取得処理がないため、これらのボタン224、225はいずれも操作可能となっている。
【0105】
例えば、処理状況表示部221に表示されているスライド1〜3が試料グループのすべてのスライドである場合、セッション終了ボタン224をクリックすることで、画像取得処理が完了したセッションを終了することができる。また、スライド1〜3以外で他のスライドが試料グループにある場合、セッション終了ボタン224をクリックすることで、このセッションを途中で中断することができる。
【0106】
セッション切換部83は、このようにセッションが中断または終了したときには、セッション管理部73に対し、そのセッションで取得または設定されたセッションデータ(マクロ画像、撮像条件、ミクロ画像等のデータ)をデータ記憶部75に保持しておくように指示する。また、セッション切換部83は、セッションデータの保持の指示と同時に、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの解除を指示し、試料格納部11のインターロックをOFF状態として試料グループに対するセッションを中断または終了する。このとき、表示装置61には、例えば図14に示すようなセッション終了画面230が表示される。
【0107】
セッション終了処理が完了すると、表示装置61に表示される画面は、図15に示すモード選択画面240へと戻る。この状態では、試料格納部11の扉12を開けて、画像取得の対象となる試料グループを交換することが可能である。また、このモード選択画面240は、基本的には図11に示した画面200と同様であるが、現在のセッション選択ボタン242aが操作可能となっている点で画面200とは異なっている。このように、今まで実行していてそのセッションデータが保持されているセッション、あるいはそれ以前のセッションをセッション選択部242で選択可能な構成とすることにより、操作者による画像取得作業の自由度が向上する。
【0108】
例えば、ある試料グループに対する画像取得処理を実行中で図13の画面220が表示されているときに、特定のスライドについて割り込みで画像取得を行いたい場合、セッション終了ボタン224をクリックすることで実行中のセッションを中断し、図15のモード選択画面240へと戻る。そして、新規セッション開始部241において単一スライドモード選択ボタン241a、または複数スライドモード選択ボタン241bをクリックして、そのスライドについての割り込みでの画像取得を実行した後、再び、モード選択画面240へと戻る。
【0109】
このとき、セッション選択部242においては、割り込みで画像取得を行ったセッションが「現在のセッション」に、また、先に中断したセッションが「前回のセッション」にそれぞれ割り当てられている。したがって、この状態で、処理途中だった試料グループを試料格納部11にあらためてセットし、前回のセッション選択ボタン242bをクリックすることにより、中断していたセッションでの画像取得処理を再開することができる。また、処理中のセッションが異常終了したような場合でも、同様にして画像取得処理を途中から再開することが可能である。
【0110】
また、既に画像取得処理を完了した試料グループについて、あらためて画像データ等の確認を行うことも可能である。この場合、確認したい試料グループを試料格納部11にセットし、セッション選択部242において対応するセッションのボタンをクリックして、図13に示す処理実行画面220を表示させることで、取得された画像データ等を確認することが可能となる。
【0111】
また、画像データに問題があるスライドがあれば、画面220上で画像再取得ボタン226をクリックすることで、再度、そのスライドについて画像取得処理を実行することができる。この場合、再実行する画像取得処理については、ミクロ画像取得のみでも良く、あるいは、マクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得の全体の処理を再実行しても良い。
【0112】
なお、図1に示した画像取得装置において実行される画像取得方法に対応する処理は、画像取得処理をコンピュータに実行させるための画像取得プログラムによって実現可能である。例えば、画像取得装置の制御部60は、画像取得処理に必要な各ソフトウェアプログラムを動作させるCPUと、上記ソフトウェアプログラムなどが記憶されるROMと、プログラムの実行中に一時的にデータが記憶されるRAMとによって構成することができる。このような構成において、CPUによって所定の画像取得プログラムを実行することにより、上記した画像取得装置、及び画像取得方法を実現することができる。
【0113】
また、試料の画像取得のための各処理をCPUによって実行させるための上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録して頒布することが可能である。このような記録媒体には、例えば、ハードディスク及びフレキシブルディスクなどの磁気媒体、CD−ROM及びDVD−ROMなどの光学媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光学媒体、あるいはプログラム命令を実行または格納するように特別に配置された、例えばRAM、ROM、及び半導体不揮発性メモリなどのハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0114】
本実施形態による画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムの効果について説明する。
【0115】
上記した画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムにおいては、試料格納部11に複数の試料Sからなる試料グループをセットして行われる画像取得処理の制御において、試料グループに対応させてセッションの概念を導入する。そして、セッション管理部73において、画像取得の対象である試料グループと、取得されたマクロ画像の画像データ等を含むデータグループであるセッションデータとをセッション毎に関連付けながら、画像取得処理の管理を行っている。このような構成によれば、複数の試料Sを対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能となる。また、このようなセッション管理を行うことにより、操作者による作業の自由度が向上される。
【0116】
また、図1に示した画像取得装置では、複数の試料Sに対してマクロ画像取得部20とミクロ画像取得部30とを設け、撮像条件設定部71においてマクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定するとともに、セッション管理部73において、複数の試料Sのそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理している。これにより、例えばバーチャル顕微鏡で用いられる試料の画像データとなるような高解像度の試料Sのミクロ画像を効率良く取得することができる。また、このような構成において、試料グループに対応するマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータをひとまとめにし、それらのデータをセッションデータとして管理することにより、その画像取得処理、条件設定処理等を好適に管理することが可能となる。
【0117】
なお、例えば、マクロ画像を取得するための画像取得装置に対して、ミクロ画像取得装置を別に設けるような場合には、マクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループをセッションデータとすれば良い。この場合、セッションデータとして管理されたデータグループを記録媒体等によって移動させるなどの方法により、ミクロ画像のデータとの関連付けが可能である。
【0118】
また、上記した画像取得装置では、制御部60において、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換部83が設けられている。これにより、例えば画像取得の対象としてそれぞれ複数の試料Sを含む試料グループが複数用意されている場合に、それぞれの試料グループに対する画像取得処理を好適に実行、管理することが可能となる。また、このようなセッションの切換が可能となることにより、画像取得作業の自由度が大きく向上される。
【0119】
また、セッション切換部83は、操作者の指示等によってセッションが中断または終了したときに、セッション管理部73に対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示している。このように、中断または終了したセッションでのセッションデータをデータ記憶部75等で保持しておくことにより、例えば、上述したように、中断したセッションでの画像取得処理を途中から再開したり、あるいは、既に終了したセッションで取得された画像データを確認して、必要に応じてその一部を取得し直すなど、様々な手順での画像取得作業の実行が可能となる。
【0120】
さらに、セッション切換部83は、試料格納部11に試料グループがセットされたときに、操作者の指示等に応じて、セッション管理部73に対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、またな新規のセッションへの切換を指示することとしている。これにより、セットする試料グループが、途中でセッションを中断した試料グループ、あるいは新規の試料グループである場合のいずれにおいても、セッションデータとの関連付けを適切に行って、操作者による画像取得作業の効率を向上することができる。
【0121】
また、上記した画像取得装置では、試料格納部11にインターロック機構13が設けられていることに対応して、セッション切換部83は、セッションが中断または終了したときに、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの解除を指示している。
【0122】
このような構成によれば、試料グループに対するセッションの実行中においては試料格納部11でのインターロックをON状態とし、セッションを中断または終了したときにはインターロックを解除してOFF状態とすることができる。これにより、画像取得処理のセッションの開始/終了と、試料格納部11でのインターロックのON/OFFとを連動させて、試料格納部11に格納される試料グループと、セッションデータとを関連付けたセッションの管理を確実に実行することが可能となる。
【0123】
また、本実施形態では、制御部60において、各試料Sに対するマクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得を制御する制御モードとして、マクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定する際に操作者が必要な確認を行う半自動モードを設けている。これにより、例えば試料Sとなるスライド内に余分な対象物があった場合でも、その影響を確実に除外して試料に対する撮像条件を正しく設定することが可能となる。
【0124】
また、上記した半自動モードにおいて、マクロ画像取得部20でマクロ画像が取得された試料Sを待機位置に配置することとしている。このような構成では、試料Sのマクロ画像の取得、及びマクロ画像を用いた撮像条件の設定を、ミクロ画像の取得とは独立に行うことが可能となる。これにより、操作者は、複数の試料Sに対するマクロ画像の取得、及び撮像条件の設定を終了した後は、ミクロ画像の取得が完了するまで画像取得装置に付いている必要がなくなる。これにより、操作者の作業負担が大幅に軽減される。
【0125】
なお、マクロ画像取得後の試料Sの待機位置については、上記実施形態においては、試料格納部11での格納位置を待機位置とし、マクロ画像が取得された試料Sを再び格納位置に戻す構成としている。これにより、顕微鏡部10の構成を簡素化することができる。あるいは、試料格納部11とは別に、複数の試料Sを待機させることが可能な試料待機部を設ける構成としても良い。
【0126】
また、上記した画像取得装置は、複数の試料Sのそれぞれを、試料格納部11での格納位置と、待機位置(上記構成では格納位置と一致)と、マクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30のそれぞれでの画像取得位置との間で移動させる試料移動手段として、試料搬送部14、及びXYステージである試料ステージ15を設けている。このような構成では、試料Sを各位置の間で移動させつつ行われるマクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得を好適に実現することができる。
【0127】
また、ミクロ画像取得部30は、1次元センサまたはTDI駆動2次元センサからなる撮像装置31を有するとともに、撮像装置31での撮像面の長手方向に直交する方向を、ミクロ画像を取得する際の走査方向として構成されている。さらに、ミクロ画像取得制御部82は、撮像装置31によって試料Sを走査方向に走査して部分画像を取得し、この部分画像の取得を撮像面の長手方向に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰返して、ミクロ画像となる複数の部分画像を取得させる制御を行っている。このような構成によれば、試料Sを一方向に走査したストリップ状の部分画像を高解像度で取得するとともに、他方向について複数の部分画像を合成して試料の全体のミクロ画像とすることで、試料Sの画像データを充分に高い解像度で好適に取得することができる。
【0128】
また、上記した画像取得装置では、半自動モードにおいては、撮像条件設定部71が、マクロ画像に対応して自動で求められた撮像条件を、撮像条件の初期設定として表示装置61に表示し、その撮像条件を用いるか、あるいは手動で撮像条件を設定し直すかを操作者に選択させることとしている。このような構成によれば、例えば試料Sに余分な対象物があるなど問題がある場合には、操作者が手動で撮像条件を修正または新たに設定し、それ以外の場合には、自動で設定された撮像条件をそのまま利用する方法を用いることができる。このように、必要な場合のみ撮像条件を手動で設定することにより、撮像条件の設定を含む複数の試料Sの画像取得作業を効率的に行うことが可能となる。
【0129】
また、上記した画像取得装置では、撮像条件設定部71が、マクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として画像取得範囲R及び焦点計測位置Pを設定し、ミクロ画像取得制御部82は、焦点計測位置Pに基づいて試料Sに対する焦点情報を取得するとともに、得られた焦点情報及び画像取得範囲Rに基づいてミクロ画像を取得させる制御を行っている。これにより、マクロ画像で得られる試料Sについての情報から、ミクロ画像取得に用いられるパラメータを好適に設定して、高解像度で良好な状態の試料の画像データを取得することが可能となる。
【0130】
また、制御部60による画像取得動作の制御モードとしては、半自動モードに加えて、全自動モードを用意している。このような構成では、各試料に対するマクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得を制御する制御モードとして、半自動モードによる画像取得と、全自動モードによる画像取得とのいずれかを操作者が適宜選択することにより、画像取得の対象となる複数の試料Sの状態、例えば各試料Sにゴミが多いか少ないか等に応じて、好適な方法で画像取得を実行することが可能となる。なお、これらの制御モードについては、例えば半自動モードの実行中での全自動モードへの切換えなど、制御モードの切換えを可能に構成しても良い。また、全自動モード及び半自動モードのいずれにおいても、画像取得処理が完了した後に、取得されたミクロ画像に問題があれば、セッションの切換に関して上記したように、その試料Sについて再度、画像取得をやり直すことが可能となっていることが好ましい。
【0131】
本発明による画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムは、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態にでは、図11及び図15に示すモード選択画面において、新規セッションの他に、現在のセッション、及び前回のセッションが選択可能となっているが、このような場合の選択可能なセッション数については、必要に応じてさらに多くすることが可能である。また、試料格納部11でのインターロック機構13については、不要であれば設けない構成としても良い。また、複数の試料については、上記実施形態では複数の試料を格納する試料格納手段を設ける構成としているが、このような試料格納手段を設けずに試料に付されたバーコード情報等によって複数の試料を管理する構成としても良い。
【0132】
また、上記実施形態の画像取得装置では、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とを別個に備える構成としたが、マクロ画像またはミクロ画像の取得に応じて切換可能な画像取得用光学系を設けることにより、光源、画像取得手段を単一の光源、単一の画像取得手段として構成しても良い。この場合、切換可能な画像取得用光学系としては、マクロ画像取得用対物レンズと、ミクロ画像取得用対物レンズとを含むレボルバを備える光学系が例として挙げられる。
【0133】
また、上記実施形態においては、ミクロ画像取得部30での撮像装置31として、1次元画像の取得が可能な撮像装置や、2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な撮像装置を例示したが、これらに限定されるものではなく、例えば2次元CCDカメラ(エリアセンサ)などの撮像装置を用いても良い。この場合、米国特許第6816606号公報に開示されているように、高解像度のタイル画像を複数取得して合成することにより、試料Sの全体のミクロ画像を生成することができる。
【0134】
また、上記実施形態においては、透過型の顕微鏡システムを用いて画像取得装置を構成したが、これに限定されない。例えば、蛍光観察の場合にあっては、光源を透過照明に代えて落射照明とし、反射型の顕微鏡システムとして構成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能な画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】画像取得装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】画像取得装置における顕微鏡部の構成を概略的に示す図である。
【図3】試料の画像の取得方法を模式的に示す図である。
【図4】マクロ画像を二値化するための閾値の設定方法を示すグラフである。
【図5】画像取得装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】ミクロ画像を用いた試料データの作成について模式的に示す図である。
【図7】全自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。
【図8】半自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。
【図9】半自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。
【図10】試料格納部でのインターロックの制御の一例を示す図である。
【図11】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図12】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図13】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図14】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図15】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0137】
10…顕微鏡部、11…試料格納部、12…扉、13…インターロック機構、14…試料搬送部、15…試料ステージ、20…マクロ画像取得部、21…マクロ用撮像装置、22…撮像光学系、25…マクロ用光源、30…ミクロ画像取得部、31…ミクロ用撮像装置、32…対物レンズ、33…Zステージ、34…導光光学系、35…ミクロ用光源、36…集光レンズ、38…画像補正部、40…駆動制御部、41…ステージ制御部、42…撮像装置制御部、43…光源制御部、
60…制御部、61…表示装置、62…入力装置、70…データ処理部、71…撮像条件設定部、72…試料データ作成部、73…セッション管理部、75…データ記憶部、80…画像取得制御部、81…マクロ画像取得制御部、82…ミクロ画像取得制御部、83…セッション切換部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の画像を取得するための画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病理学の分野などにおいて、パーソナルコンピュータ等の仮想空間上であたかも実際の顕微鏡で試料を見ているかのように操作可能なバーチャル顕微鏡が知られている。このバーチャル顕微鏡で扱われる試料データは、予め実際の顕微鏡を利用して高解像度で取得された試料の画像データに基づいている。
【0003】
このようにバーチャル顕微鏡で利用される試料の画像データを取得する画像取得装置では、バーチャル顕微鏡での画像操作を実現するために、充分に高解像度で試料の画像を取得することが要求される。例えば、特許文献1:米国特許第6816606号公報には、高解像度の画像を効率的に取得するため、マクロ画像取得用のカメラと、高解像度のミクロ画像取得用のカメラとを用いて試料の画像を取得する構成が記載されている。
【特許文献1】米国特許第6816606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バーチャル顕微鏡で利用される試料の画像データの取得においては、スライドガラスに生体サンプル等が密封されたスライドを試料として多数用意し、それらの複数のスライドに対して連続的に画像取得が行われる場合がある。このような複数のスライドを対象とする画像取得では、その画像取得処理を適切に管理することが必要となる。
【0005】
例えば、試料の画像を高解像度で取得しようとすると、複数の試料のすべてについての画像取得を完了するには、多くの時間を要する。このため、いったん試料を画像取得装置にセットすると、長時間にわたって画像取得装置がそれらの複数の試料に対する画像取得処理に占有されてしまうこととなり、操作者による作業の自由度が大きく制限されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能な画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明による画像取得装置は、(1)複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段と、(2)マクロ画像取得手段によるマクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御手段、及びマクロ画像を参照して試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定手段を有する制御手段とを備え、(3)制御手段は、複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による画像取得方法は、(1)複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得ステップと、(2)マクロ画像取得ステップによるマクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御ステップ、及びマクロ画像を参照して試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定ステップを有する制御ステップとを備え、(3)制御ステップは、複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理ステップを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による画像取得プログラムは、(1)複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段を備える画像取得装置に適用され、(2)マクロ画像取得手段によるマクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御処理、及びマクロ画像を参照して試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定処理を有する制御処理を含み、(3)制御処理として、複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループを、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理するセッション管理処理を有する制御処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0010】
上記した画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムでは、複数の試料からなる試料グループを対象として行われる画像取得処理の制御において、試料グループに対応させてセッションの概念を導入する。そして、画像取得の対象である試料グループと、取得されたマクロ画像の画像データ等を含むデータグループであるセッションデータとをセッション毎に関連付けながら、画像取得処理の管理を行っている。このような構成によれば、複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能となる。また、このようなセッション管理を行うことにより、操作者による作業の自由度が大幅に向上される。なお、複数の試料については、例えば、複数の試料を格納する試料格納手段を設ける構成とすることが好ましい。あるいは、試料に付されたバーコード情報等によって複数の試料を管理する構成としても良い。
【0011】
ここで、画像取得装置は、試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、制御手段は、ミクロ画像取得手段によるミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御手段を有し、セッション管理手段は、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理することが好ましい。
【0012】
同様に、画像取得方法は、試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得ステップを備え、制御ステップは、ミクロ画像取得ステップによるミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御ステップを有し、セッション管理ステップは、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理することが好ましい。
【0013】
同様に画像取得プログラムは、画像取得装置が、試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、制御処理は、ミクロ画像取得手段によるマクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御処理を有し、セッション管理処理は、複数の試料のそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理することが好ましい。
【0014】
このように、複数の試料に対してマクロ画像取得手段とミクロ画像取得手段とを設け、試料の全体像を示すマクロ画像を参照して撮像条件を設定した上で高解像度のミクロ画像の取得を行う構成とすることにより、例えばバーチャル顕微鏡で用いられる試料の画像データとなるような高解像度の試料のミクロ画像を効率良く取得することができる。また、このような構成において、複数の試料からなる試料グループに対応して、それらのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータをひとまとめにしてセッションデータとして管理することにより、その画像取得処理、条件設定処理等を好適に管理することが可能となる。
【0015】
また、画像取得装置は、制御手段が、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換手段を有することが好ましい。同様に、画像取得方法は、制御ステップが、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換ステップを有することが好ましい。同様に、画像取得プログラムは、制御処理が、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換処理を有することが好ましい。
【0016】
このような構成では、セッションデータをセッション毎に管理するとともに、試料グループの交換等に伴ってセッションの切換が必要となった場合に、試料グループと、セッションデータとを関連付けながら切換を行っている。これにより、例えば画像取得の対象として複数の試料グループが用意されている場合に、それぞれの試料グループに対する画像取得処理を好適に実行、管理することが可能となる。また、このようなセッションの切換が可能となることにより、画像取得作業の自由度が大きく向上される。
【0017】
また、画像取得装置は、セッション切換手段が、セッションが中断または終了したときに、セッション管理手段に対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示することが好ましい。
【0018】
同様に、画像取得方法は、セッション切換ステップにおいて、セッションが中断または終了したときに、セッション管理ステップに対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示することが好ましい。
【0019】
同様に、画像取得プログラムは、セッション切換処理が、セッションが中断または終了したときに、セッション管理処理に対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示することが好ましい。
【0020】
このように、中断または終了したセッションでのセッションデータをデータ記憶手段等で保持しておくことにより、例えば、中断したセッションでの画像取得処理を途中から再開したり、あるいは、既に終了したセッションで取得された画像データの一部を取得し直すなど、様々な手順での画像取得作業の実行が可能となる。
【0021】
また、画像取得装置は、セッション切換手段が、試料グループがセットされたときに、セッション管理手段に対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することが好ましい。
【0022】
同様に、画像取得方法は、セッション切換ステップにおいて、試料グループがセットされたときに、セッション管理ステップに対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することが好ましい。
【0023】
同様に、画像取得プログラムは、セッション切換処理が、試料グループがセットされたときに、セッション管理処理に対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することが好ましい。
【0024】
これにより、セットする試料グループが、途中でセッションを中断した試料グループ、あるいは新規の試料グループである場合のいずれにおいても、セッションデータとの関連付けを適切に行って、操作者による画像取得作業の効率を向上することができる。また、この場合の既存のセッションまたは新規のセッションへの切換については、操作者による指示にしたがって実行されることが好ましい。
【0025】
また、画像取得装置は、複数の試料を格納する試料格納手段には、セッションの実行中に試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、セッション切換手段は、セッションが中断または終了したときに、試料格納手段に対して、インターロック機構によるインターロックの解除を指示することが好ましい。
【0026】
同様に、画像取得方法は、複数の試料を格納する試料格納手段には、セッションの実行中に試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、セッション切換ステップにおいて、セッションが中断または終了したときに、試料格納手段に対して、インターロック機構によるインターロックの解除を指示することが好ましい。
【0027】
同様に、画像取得プログラムは、画像取得装置の試料格納手段には、セッションの実行中に試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、セッション切換処理は、セッションが中断または終了したときに、試料格納手段に対して、インターロック機構によるインターロックの解除を指示することが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、試料グループに対するセッションの実行中には試料格納手段でのインターロックをON状態とし、セッションを中断または終了したときにはインターロックを解除してOFF状態とすることができる。これにより、画像取得処理のセッションの開始/終了と、試料格納手段でのインターロックのON/OFFとを連動させて、試料格納手段に格納される試料グループと、セッションデータとを関連付けたセッションの管理を確実に実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムによれば、複数の試料からなる試料グループに対する画像取得処理の制御において、セッションの概念を導入するとともに、画像取得の対象である試料グループと、取得された画像データ等を含むデータグループであるセッションデータとをセッション毎に関連付けることにより、その画像取得処理を好適に管理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面とともに本発明による画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0031】
まず、画像取得装置の全体構成について説明する。図1は、本発明による画像取得装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による画像取得装置は、試料Sの画像を高解像度で取得するために用いられる顕微鏡システムであり、試料Sの画像取得を行う顕微鏡部10と、顕微鏡部10における画像取得の制御等を行う制御部60とを備える。画像取得の対象となる試料Sとしては、バーチャル顕微鏡で利用される画像データを取得する場合における、スライドガラスに組織切片等の生体サンプルが密封されたスライド(プレパラート)が例として挙げられる。
【0032】
顕微鏡部10は、試料格納部11と、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とを有している。試料格納部11は、それぞれ画像取得の対象となる複数の試料(例えばそれぞれ生体サンプルが密封された複数のスライド)Sからなる試料グループを格納可能に構成された格納手段である。この試料格納部11には、操作者による試料Sの格納、及び取り出し等に用いられる扉12が設けられている。また、本実施形態においては、試料格納部11において、画像取得処理中に誤って扉12が開放されることを防止するためのインターロック機構13が設けられている。
【0033】
マクロ画像取得部20は、試料Sの低倍率画像としてマクロ画像を取得するための第1の画像取得手段である。この画像取得部20では、試料Sの全体像に相当する低解像度でのマクロ画像が取得される。また、マクロ画像取得部20に対して、マクロ画像取得時に試料Sの光像を生成するための光を供給するマクロ用光源25が設置されている。これらのマクロ画像取得部20及びマクロ用光源25は、必要に応じて設けられる。
【0034】
一方、ミクロ画像取得部30は、試料Sの高倍率画像としてミクロ画像を取得するための第2の画像取得手段である。この画像取得部30では、目的とする試料Sの高解像度でのミクロ画像が取得される。また、ミクロ画像取得部30に対して、ミクロ画像取得時に試料Sの光像を生成するための光を供給するミクロ用光源35が設置されている。また、図1においては、画像取得部30で取得されるミクロ画像について、画像データに必要な補正を行うための画像補正部38が設けられている。この画像補正部38で行われる補正としては、ダーク補正、シェーディング補正などが挙げられる。例えば、シェーディング補正を行う場合、あらかじめ生体サンプルがのっていないスライドなどの参照用試料を撮像したブランク画像を取得しておき、このブランク画像を参照してシェーディング補正を行う方法を用いることができる。また、これらの画像補正については、マクロ画像についても同様に行う構成としても良い。
【0035】
また、顕微鏡部10内での各位置の間で試料Sを移動させる試料移動手段として、試料搬送部14及び試料ステージ15が設けられている。試料搬送部14は、試料格納部11での格納位置と、マクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30のそれぞれでの画像取得位置との間で試料Sを搬送する搬送手段である。また、試料ステージ15は、マクロ画像またはミクロ画像の画像取得時に試料Sが載置されるとともに、試料Sの画像取得位置の設定、調整等に用いられる。また、顕微鏡部10には、これらの顕微鏡部10の各部を駆動制御するための駆動制御部40が設けられている。
【0036】
制御部60は、データ処理部70と、データ記憶部75と、画像取得制御部80とを有している。データ処理部70には、マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像の画像データ、及びミクロ画像取得部30で取得されたミクロ画像の画像データが入力されており、これらの画像データについて必要なデータ処理が行われる。
【0037】
画像取得制御部80は、駆動制御部40を介して、顕微鏡部10における試料Sの画像取得動作を制御する。また、データ処理部70に入力された画像データ、画像データを処理して得られた各種のデータや情報、あるいは画像取得制御部80で用いられる制御情報等は、必要に応じてデータ記憶部75に記憶、保持される。
【0038】
また、本実施形態による画像取得装置では、この制御部60において、試料格納部11にセットされる複数の試料Sの試料グループに対応して定義されたセッションを用いて、顕微鏡部10における画像取得動作、及び取得された画像データ等の管理を行っている。このセッションを用いた画像取得処理の管理については、具体的には後述する。
【0039】
この制御部60は、例えばCPU及び必要なメモリ、ハードディスクなどの記憶装置を含むコンピュータによって構成される。また、この制御部60に対して、表示装置61、及び入力装置62が接続されている。表示装置61は、例えばCRTディスプレイまたは液晶ディスプレイであり、本画像取得装置の動作に必要な操作画面の表示、あるいは取得された試料Sの画像の表示等に用いられる。また、入力装置62は、例えばキーボードまたはマウスであり、画像取得に必要な情報の入力、画像取得動作についての指示の入力、上記したセッションの管理、切換についての指示の入力等に用いられる。
【0040】
次に、図1に示した画像取得装置における顕微鏡部10の構成について説明する。図2は、顕微鏡部10の構成を概略的に示す図である。図2に示すように、本実施形態による顕微鏡部10は、試料Sの光像の取得に利用される透過型の顕微鏡システムとして構成されている。ここで、図中に示すように、水平方向で互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向とし、水平方向に直交する垂直方向をZ軸方向とする。これらのうち、垂直方向であるZ軸方向が本顕微鏡システムにおける画像取得の光軸の方向となっている。また、図2においては、主にマクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30の構成を示し、試料格納部11及び試料搬送部14等については図示を省略している。
【0041】
試料Sは、画像取得部20、30における画像取得時には、試料ステージ15上に載置される。この試料ステージ15は、ステッピングモータ、DCモータ、またはサーボモータ等を用い、X軸方向及びY軸方向に移動可能なXYステージとして構成されている。このような構成において、試料ステージ15をXY面内で駆動することにより、画像取得部20、30での試料Sに対する画像取得位置の設定、調整が行われる。また、本実施形態においては、この試料ステージ15は、マクロ画像取得部20での画像取得位置、及びミクロ画像取得部30での画像取得位置の間で移動可能となっている。
【0042】
試料Sのマクロ画像を取得するためのマクロ画像取得位置に対し、光軸20a上の所定位置にそれぞれマクロ画像取得部20、及びマクロ用光源25が設置されている。マクロ用光源25は、試料Sに対してマクロ画像取得用の光像を生成するための光を照射する光源であり、試料ステージ15の下方に設置されている。
【0043】
また、マクロ画像取得部20は、試料Sの光像による2次元画像の取得が可能な2次元CCDセンサなどの撮像装置21を用いて構成されている。また、試料Sが配置されるマクロ画像取得位置と、撮像装置21との間には、試料Sの光像を導く光学系として撮像光学系22が設けられている。
【0044】
一方、試料Sのミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得位置に対し、光軸30a上の所定位置にそれぞれミクロ画像取得部30、及びミクロ用光源35が設置されている。ミクロ用光源35は、試料Sに対してミクロ画像取得用の光像を生成するための光を照射する光源であり、集光レンズ36とともに試料ステージ15の下方に設置されている。
【0045】
また、ミクロ画像取得部30は、試料Sの光像による1次元画像の取得が可能な1次元CCDセンサなどの撮像装置31を用いて構成されている。また、試料Sが配置されるミクロ画像取得位置と、撮像装置31との間には、試料Sの光像を導く光学系として対物レンズ32、及び導光光学系34が設けられている。対物レンズ32は、試料Sを透過した光を入射して試料Sの光像を生成する。また、導光光学系34は、例えばチューブレンズから構成され、試料Sの光像を撮像装置31へと導く。
【0046】
また、対物レンズ32に対して、ステッピングモータまたはピエゾアクチュエータ等を用いたZステージ33が設けられており、このZステージ33で対物レンズ32をZ軸方向に駆動することで、試料Sに対する焦点合わせ等が可能となっている。なお、このミクロ画像取得部30での撮像装置31としては、1次元画像の取得が可能な撮像装置に限らず、2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な撮像装置を用いることも可能である。
【0047】
また、このミクロ画像取得用の撮像装置31としては、例えば3板式CCDカメラなどのカラー画像が取得可能な撮像装置を用いることが好ましい。なお、マクロ画像取得用の撮像装置21については、必要に応じて、白黒画像取得用の撮像装置、またはカラー画像が取得可能な撮像装置のいずれを用いても良い。また、撮像装置31についても、カラー画像を取得する必要がない場合には、白黒画像取得用の撮像装置を用いても良い。
【0048】
これらの試料ステージ15、マクロ画像取得部20、ミクロ画像取得部30、及び光源25、35に対して、駆動制御部40には、ステージ制御部41、撮像装置制御部42、及び光源制御部43が設けられている。ステージ制御部41は、XYステージである試料ステージ15、及びZステージ33を駆動制御することにより、試料Sに対する撮像条件の設定、調整等を行う。また、撮像装置制御部42は、撮像装置21、31を駆動制御することにより、試料Sの画像取得を制御する。また、光源制御部43は、光源25、35を駆動制御することにより、試料Sに対する画像取得用の光の照射を制御する。なお、顕微鏡部10の各部の制御については、駆動制御部40を介さずに制御部60の画像取得制御部80によって直接に制御する構成など、他の構成を用いても良い。
【0049】
ここで、画像取得部20、30における試料Sのマクロ画像及びミクロ画像の取得について説明しておく。マクロ画像取得部20では、ミクロ画像の撮像条件の設定に用いられる試料Sの全体像であるマクロ画像が取得される。例えば、上記したスライドガラスに生体サンプル等が密封されたスライドを試料Sとした場合、マクロ画像としては、スライド全体、または生体サンプルを含む所定範囲の画像が取得される。
【0050】
また、ミクロ画像取得部30では、設定された撮像条件を参照して、目的とする解像度での試料Sのミクロ画像が取得される。このミクロ画像の取得は、図3(a)に模式的に示すように、マクロ画像よりも高い所定の解像度で試料Sを2次元に走査することによって行われる。ここで、1次元CCDカメラなどの撮像装置31を用いたミクロ画像の取得では、試料Sに対して平行なXY面内において、撮像装置31での撮像面の長手方向をX軸方向、この長手方向に直交する方向をY軸方向とする。このとき、ミクロ画像の取得においては、撮像装置31での撮像面の長手方向に直交する方向、図3(a)においてはY軸の負の方向が、試料Sに対する走査方向となる。
【0051】
1次元CCDカメラなどの撮像装置31を用いたミクロ画像の取得では、まず、撮像装置31によって試料ステージ15上の試料Sを走査方向(Y軸の負の方向)に走査して、所望の解像度を有するストリップ状の部分画像Aを取得する。さらに、図3(a)に示すように、このような部分画像の取得を撮像面の長手方向(X軸の正の方向)に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して、複数の部分画像A、B、…、Iを取得する。
【0052】
このようにして得られた部分画像A〜IをX軸方向に並べて合成することで、試料Sの全体のミクロ画像を生成することができる。このようなミクロ画像の取得方法によれば、試料Sの画像データを充分に高い解像度で好適に取得することが可能である。なお、図3(a)中において、部分画像A内に斜線で示したX軸方向を長手方向とする領域は、撮像装置31での撮像面に対応する撮像領域を示している。
【0053】
また、ミクロ画像の撮像条件の設定については、マクロ画像取得部20の撮像装置21で取得されたマクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として画像取得範囲、及び焦点計測位置を設定することが好ましい。これにより、試料Sの全体像であるマクロ画像で得られる情報から、ミクロ画像取得に用いられるパラメータを好適に設定して、高解像度で良好な状態の試料の画像データを取得することが可能となる。
【0054】
具体的には、上記と同様にスライドを試料Sとした場合、図3(b)に示すように、試料Sに対する画像取得範囲は、画像取得の対象であるスライド中の生体サンプルLを含む矩形状の範囲Rによって設定することができる。ミクロ画像取得部30における試料Sの2次元の走査(図3(a)参照)は、このように設定された画像取得範囲R内について行われる。また、このような画像取得範囲Rの設定を自動で行う場合には、例えば、マクロ画像での輝度パターンに対して設定された閾値を参照して画像を二値化することで画像取得の対象物(例えば生体サンプルL)が存在する範囲を判別し、その判別結果に基づいて画像取得範囲Rを設定する方法を用いることができる。
【0055】
図4は、マクロ画像を二値化するための閾値の設定方法を示すグラフである。図4のグラフにおいて、横軸はマクロ画像の各画素での輝度値を示している。ここで、本実施形態で取得されるマクロ画像では、マクロ画像取得部20の透過型の構成により、生体サンプルLが存在しないスライドガラスのみの領域で最も輝度が高くなる。
【0056】
マクロ画像に対する閾値の設定においては、例えば、図4に示すように、その輝度分布において2つのピークP1、P2を求め、その中心の輝度値を閾値Tとして設定する方法を用いることができる。そして、この閾値によって画像を二値化することによって、画像中で対象物Lが存在する範囲を容易に判別することができる。さらに、判別された範囲のうち、指定された面積以上の連続した範囲を1つの対象物Lの範囲とし、すべての対象物Lを包含する最小の矩形の領域を画像取得範囲Rとして設定する。なお、閾値の設定については、上記した方法以外にも、例えばピークの輝度値に対してあらかじめ固定に決められた割合で閾値を設定する方法など、様々な方法を用いることができる。
【0057】
また、二値化されたマクロ画像での対象物Lが存在する範囲の判別においては、二値化された画像に対してn回の収縮処理(erosion処理:絵の塊を小さくする処理)を行い、続いて、n回の膨張処理(dilation処理:絵の塊を大きくする処理)を行うことが好ましい。これにより、画像中の小さいノイズ等を取り除くことができる。また、スライドのカバーグラスのエッジやスライド内のゴミを取り除くためのフィルタリング処理をさらに行っても良い。
【0058】
また、焦点計測位置は、ミクロ画像取得部30において、試料Sのミクロ画像の取得に先立って試料Sに対する焦点情報を取得する際に用いられるものである。ミクロ画像取得部30では、設定された焦点計測位置について撮像装置31を用いて焦点計測を行って、試料Sのミクロ画像を取得する際の焦点情報としての焦点位置を決定する。この焦点計測位置は、例えば試料Sの水平面内での傾き、すなわち水平面内での焦点位置のずれが問題にならない場合には、試料Sに対して1点の焦点計測位置を設定すれば良い。
【0059】
また、水平面内での焦点位置のずれを考慮する必要がある場合には、試料Sに対して3点以上の焦点計測位置を設定することが好ましい。このように、3点もしくはそれ以上の焦点計測位置を設定して焦点計測を行うことにより、試料Sの画像取得範囲Rに対する2次元の焦点マップを求めることができる。例えば、焦点位置についての焦点マップを平面状の焦点面として決定する場合、3点の焦点計測位置での計測結果点を含む平面から焦点面を求めることができる。また、4点以上の焦点計測位置を用いた場合、その計測結果点から最小二乗法等のフィッティング手法を用いて焦点面を求めることができる。
【0060】
図3(b)においては、マクロ画像を用いた焦点計測位置の設定について、9点の焦点計測位置を自動で設定する場合の例を示している。ここでは、試料Sに対して先に設定された画像取得範囲Rを3×3で9等分し、そのそれぞれの領域の中心点によって、9点の焦点計測位置Pを設定している。
【0061】
また、ここでは、9点の焦点計測位置のうち8点については初期設定された位置が画像取得の対象物である生体サンプルLの範囲内に含まれているため、そのまま焦点計測位置として設定される。一方、左下の1点については生体サンプルLの範囲外にあり、そのままでは焦点計測位置とすることができない。このため、この左下の焦点計測位置については、例えば画像取得範囲R内で中心に向けて移動するなどの方法で求められる位置Qを焦点計測位置として設定しても良い。あるいは、このような位置については焦点計測位置から除外しても良い。
【0062】
なお、4点以上の焦点計測位置から最小二乗法を用いて焦点面を求める場合、焦点計測位置の中で求められた焦点面から離れすぎている計測位置があれば、それを除いて再度、焦点面を求め直すことが好ましい。また、焦点面を正常に求めることができなかった場合には、その対象物はゴミであるとして除外することが好ましい。
【0063】
以上説明した例のように、試料Sをスライドとした場合、ミクロ画像を取得するための撮像条件については、好ましくは、まず、マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として生体サンプルLを含む画像取得範囲R、及び所定の点数の焦点計測位置Pを設定する。そして、ミクロ画像取得部30において焦点計測位置Pに基づいて試料Sに対する焦点位置または焦点面などについての焦点情報を取得するとともに、得られた焦点情報、及び設定された画像取得範囲Rに基づいて、試料Sのミクロ画像の取得が行われる。
【0064】
なお、試料Sのマクロ画像を用いた画像取得範囲R、及び焦点計測位置Pの設定については、図3(b)に示した例に限らず、具体的には様々な方法を用いて良い。例えば、図3(b)においては、焦点計測位置Pの設定については所定の設定アルゴリズムを用いて自動で設定する例を示したが、手動で焦点計測位置を設定する場合には、操作者がマクロ画像を確認した上で、適当な点数、配置となるように焦点計測位置を設定すれば良い。
【0065】
続いて、図1に示した画像取得装置における制御部60の構成について説明する。図5は、制御部60の構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態による制御部60は、データ処理部70と、データ記憶部75と、画像取得制御部80とを有して構成されている。
【0066】
データ処理部70は、撮像条件設定部71と、試料データ作成部72と、セッション管理部73とを有する。撮像条件設定部71は、顕微鏡部10のマクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定する設定手段である。また、試料データ作成部72は、ミクロ画像取得部30で取得されたミクロ画像を用い、試料Sの画像データである試料データを作成する。また、セッション管理部73は、試料格納部11にセットされる試料グループに対応して定義されたセッションを用いた画像データ等の管理を行う。
【0067】
図6は、ミクロ画像を用いた試料データの作成について模式的に示す図である。ここでは、顕微鏡部10のミクロ画像取得部30で取得されたミクロ画像の画像データとして、ストリップ状の部分画像A、B、C、…の画像データ群が制御部60に入力される(図3(a)参照)。試料データ作成部72は、これらの複数の部分画像を並べて合成し、試料Sの全体に対するミクロ画像となる画像データを生成して試料データとする。この試料データは、例えば、バーチャル顕微鏡での画像データとして利用することができる。なお、試料Sの画像データについては、必要に応じて、データ圧縮を行っても良い。また、顕微鏡部10から入力された画像データ、及び試料データ作成部72で作成された試料データは、必要に応じてデータ記憶部75に記憶される。
【0068】
画像取得制御部80は、マクロ画像取得制御部81と、ミクロ画像取得制御部82と、セッション切換部83とを有する。マクロ画像取得制御部81は、マクロ画像取得部20による試料Sのマクロ画像の取得動作を制御する。また、ミクロ画像取得制御部82は、ミクロ画像取得部30によるミクロ画像の取得動作を制御する。また、セッション切換部83は、試料グループに対応したセッションの切換を制御する。
【0069】
上記した画像取得制御部81、82による試料Sのマクロ画像及びミクロ画像の取得動作の制御、及び撮像条件設定部71による撮像条件の設定は、画像取得処理について選択された制御モードにしたがって行われる。本実施形態においては、制御部60は、その制御モードとして、全自動モード、手動モード、及び半自動モードの3つの制御モードを有している。
【0070】
図7は、全自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。全自動モードにおいては、制御部60のマクロ画像取得制御部81は、試料格納部11で格納位置にある試料Sをマクロ画像取得部20での画像取得位置に配置してマクロ画像を取得させる制御を行う(マクロ画像取得制御ステップ)。また、撮像条件設定部71は、マクロ画像が取得された試料Sについて、マクロ画像に対応するミクロ画像の撮像条件を自動で設定する(撮像条件設定ステップ)。また、ミクロ画像取得制御部82は、撮像条件が設定された試料Sをミクロ画像取得部30での画像取得位置に配置し、撮像条件を参照してミクロ画像を取得させる制御を行う(ミクロ画像取得制御ステップ)。
【0071】
図7に示す例では、まず、操作者が、画像取得の対象となる複数のスライドSを顕微鏡部10の試料格納部11にセットし、扉12を閉める(ステップS101)。試料格納部11に格納可能なスライド数は具体的な装置構成によって異なるが、例えば数百枚程度である。
【0072】
次に、複数のスライドSのうちで、画像取得を実行するスライドSを試料格納部11から取り出し、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上に載置させて、マクロ画像取得部20での画像取得位置(図1及び図2参照)にセットする(S102)。そして、画像取得部20の撮像装置21により、生体サンプルLを含むスライドSのマクロ画像を取得する(S103、マクロ画像取得ステップ)。制御部60の撮像条件設定部71では、取得されたマクロ画像を参照して、そのスライドSに対する撮像条件である画像取得範囲R、及び複数の焦点計測位置Pが、所定のアルゴリズムを用いて自動で設定される(S104、撮像条件設定ステップ)。
【0073】
マクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14または試料ステージ15により、マクロ画像取得部20での画像取得位置から移動され、ミクロ画像取得部30での画像取得位置にセットされる(S105)。そして、撮像条件設定部71で設定された撮像条件を参照し、画像取得部30の撮像装置31により、スライドSのミクロ画像を取得する(S106、ミクロ画像取得ステップ)。
【0074】
具体的には、まず、スライドSに対して設定された複数の焦点計測位置Pのそれぞれについて、ミクロ画像取得部30において焦点計測を行い、得られた焦点位置から生体サンプルLの画像取得に最適な焦点情報として焦点面を求める。そして、求められた焦点面に基づいて焦点制御を行いつつ、画像取得範囲Rについて撮像装置31によってスライドSを2次元に走査し、複数のストリップ状の部分画像を取得する。この複数の部分画像は、制御部60の試料データ作成部72で所定のデータ合成処理が行われることにより、スライドSの高解像度のミクロ画像(バーチャル顕微鏡でのデジタルスライド)となる。
【0075】
続いて、ミクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14によりミクロ画像取得部30での画像取得位置から試料格納部11での格納位置に戻される(S107)。そして、画像取得制御部80において、複数のスライドSのうちで画像取得処理が完了していないスライドSがあるかどうかが確認される(S108)。ここで、さらに画像取得処理を行うべきスライドSがあれば、上記したステップS102〜S107を繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについての画像取得処理が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対する画像取得を終了する。
【0076】
なお、手動モードについては、各ステップを操作者からの指示によって手動で行う以外は、基本的には全自動モードでの画像取得手順と同様である。ただし、手動モードにおいても、例えばマクロ画像の取得が完了したスライドSのミクロ画像取得部30での画像取得位置への移動など、操作者からの指示が不要なステップについては、自動で行うこととしても良い。また、スライドSのミクロ画像の取得については、取得されたミクロ画像を操作者が確認し、問題があれば撮像条件の再設定、あるいはミクロ画像の再取得等を実行することが可能な構成であっても良い。
【0077】
図8及び図9は、半自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。半自動モードにおいては、制御部60のマクロ画像取得制御部81は、複数の試料Sのそれぞれについて、試料格納部11で格納位置にある試料Sをマクロ画像取得部20での画像取得位置に配置してマクロ画像を取得させ、さらに試料Sを待機位置に配置させる制御を行う(マクロ画像取得制御ステップ)。また、撮像条件設定部71は、マクロ画像が取得された試料Sについて、マクロ画像、及びそれに対応する撮像条件を操作者に確認させてミクロ画像の撮像条件を設定する(撮像条件設定ステップ)。また、ミクロ画像取得制御部82は、待機位置にあって撮像条件が設定された試料Sをミクロ画像取得部30での画像取得位置に配置し、撮像条件を参照してミクロ画像を取得させる制御を行う(ミクロ画像取得制御ステップ)。なお、本実施形態においては、試料Sの待機位置は、試料格納部11での格納位置に設定されている。
【0078】
図8及び図9に示す例では、まず、全自動モードの場合と同様に、操作者が、画像取得の対象となる複数のスライドSを顕微鏡部10の試料格納部11にセットし、扉12を閉める(ステップS201)。
【0079】
次に、マクロ画像取得制御部81により、複数のスライドSのそれぞれについて、そのマクロ画像の取得が行われる(S202、マクロ画像取得ステップ)。具体的には、図8に示すように、複数のスライドSのうちで、画像取得を実行するスライドSを試料格納部11での格納位置から取り出し、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上に載置させて、マクロ画像取得部20での画像取得位置にセットする(S301)。そして、画像取得部20の撮像装置21により、生体サンプルLを含むスライドSのマクロ画像を取得する(S302)。
【0080】
マクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14によりマクロ画像取得部20での画像取得位置から、その待機位置となっている試料格納部11での格納位置に戻される(S303)。そして、マクロ画像取得制御部81において、複数のスライドSのうちでマクロ画像取得処理が完了していないスライドSがあるかどうかが確認される(S304)。そして、さらにマクロ画像取得処理を行うべきスライドSがあれば、上記したステップS301〜S303を繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについてのマクロ画像取得処理が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対するマクロ画像取得を終了する。
【0081】
また、本モードでは、最初のスライドSのマクロ画像が取得された後は、マクロ画像取得処理と並行して、ミクロ画像の撮像条件の設定が行われる(S203、撮像条件設定ステップ)。制御部60の撮像条件設定部71では、撮像条件の設定対象となるスライドSについて、取得されたマクロ画像、及びそれに対応する撮像条件を操作者に確認させて、ミクロ画像を取得するための撮像条件である画像取得範囲R、及び複数の焦点計測位置Pが設定される。このような撮像条件の確認及び設定は、例えば図1に示した構成において表示装置61に表示される操作画面を用いて行われる。
【0082】
撮像条件の設定方法の一例を説明すると、まず、マクロ画像が取得されたスライドSのリストがサムネイル画像とともに表示され、そのスライドリストから撮像条件を設定するスライドSが選択される。続いて、選択されたスライドSのマクロ画像が表示され、操作者は、このマクロ画像を確認し、撮像条件の設定を自動/手動のどちらで行うかを選択する。そして、自動設定が選択されていれば、撮像条件を自動で設定するとともにそのスライドに対する撮像条件の設定を終了して、次のスライドの選択、及び撮像条件の設定作業に移行する。
【0083】
また、手動設定が選択されていれば、操作者は、そのスライドのマクロ画像に対して、生体サンプルLが存在する範囲及び形状等を考慮して、画像取得範囲R、及び焦点計測位置Pを手動で設定する。そして、撮像条件の設定が終了したら、さらに撮像条件の設定を行うべきスライドSがあれば、上記したステップを繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについての撮像条件の設定が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対する撮像条件の設定を終了する。
【0084】
すべてのスライドSについてのマクロ画像取得処理が完了したら、続いて、撮像条件の設定処理とも並行して、ミクロ画像取得制御部82により、複数のスライドSのそれぞれについて、そのミクロ画像の取得が行われる(S204、ミクロ画像取得ステップ)。具体的には、図9に示すように、複数のスライドSのうちで、既に撮像条件が設定されているスライドSを選択して画像取得を実行するスライドSとする。選択したスライドSを待機位置である試料格納部11での格納位置から取り出し、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上に載置させて、ミクロ画像取得部30での画像取得位置にセットする(S401)。そして、撮像条件設定部71で設定された撮像条件を参照し、画像取得部30の撮像装置31により、スライドSのミクロ画像を取得する(S402)。なお、ミクロ画像の取得方法については、基本的には全自動モードの場合と同様である。
【0085】
続いて、ミクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14によりミクロ画像取得部30での画像取得位置から試料格納部11での格納位置に戻される(S403)。そして、ミクロ画像取得制御部82において、複数のスライドSのうちで撮像条件が設定されている他のスライドSがあるかどうかが確認される(S404)。ここで、さらに撮像条件が設定されて画像取得処理が可能なスライドSがあれば、上記したステップS401〜S403を繰り返して実行する。
【0086】
また、撮像条件が設定されているスライドSがない場合には、さらにミクロ画像取得制御部82において、複数のスライドSのうちで画像取得処理が完了していないスライドSがあるかどうかが確認される(S405)。ここで、さらに画像取得処理を行うべきスライドSがあれば、撮像条件が設定されるのを待って上記したステップS401〜S403を繰り返して実行する。また、すべてのスライドSについての画像取得処理が完了していれば、試料格納部11にセットされた複数のスライドSに対する画像取得を終了する。
【0087】
次に、画像取得装置の制御部60におけるセッションを用いた画像取得処理の管理について説明する。本実施形態の画像取得装置においては、上述したように、試料格納部11にセットされる複数の試料Sの試料グループに対応してセッションが定義されている。そして、制御部60のセッション管理部73において、複数の試料Sのそれぞれについてのマクロ画像のデータ、及び撮像条件を含むデータグループが、試料グループに関連付けられたセッションデータとしてセッション毎に管理される。
【0088】
また、図1に示した画像取得装置では、試料Sに対する画像取得部として、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とが設けられている。このような構成に対応して、セッション管理部73では、複数の試料Sのそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループがセッションデータとして管理される。また、上記した各データ以外にも、例えば撮像条件である焦点計測位置に基づいて取得された焦点情報など他のデータがあれば、それらのデータも合わせてセッションデータとして管理することが好ましい。
【0089】
また、このようなセッションデータは、必要に応じてデータ記憶部75に記憶することで保持される。図5のデータ記憶部75においては、そのようなデータ管理の例として、セッション1、セッション2、…の複数のセッションに対応するセッションデータが記憶されている場合を示している。試料グループとデータグループとを関連付けたセッションの概念を導入することにより、このように複数のセッションを同時に管理することが可能となる。
【0090】
また、図5に示した制御部60においては、セッション管理部73に加えてセッション切換部83が設けられている。このセッション切換部83は、試料格納部11にセットされた試料グループと、セッション管理部73によって管理されたセッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態で、セッションの切換を制御する。このようなセッションの切換は、操作者による指示によって手動で、または必要があれば自動で行われる。
【0091】
また、図1に示した画像取得装置では、試料格納部11に対し、セッションの実行中に試料格納部11の扉12が開放されることを防止するためのインターロック機構13が設けられている。このような構成に対応して、制御部60のセッション切換部83は、セッションの切換の制御と合わせて試料格納部11でのインターロックのON/OFFの制御を行う構成となっている。なお、インターロック機構13は、例えばソレノイドを用いたロック機構によって構成される。
【0092】
図10は、セッション切換部83による試料格納部11でのインターロックの制御の一例を示す図である。画像取得装置の電源を投入した状態では、実線で示すように、試料格納部11のインターロック機構13は通常、OFFの状態になっている。ただし、前回の使用時に異常終了等している場合には、破線で示すようにインターロックがONの状態となっている場合もある。このため、電源投入後に自動で、または必要に応じて手動で扉開放処理を実行し、試料格納部11に対するインターロックを確実にOFF状態とする。
【0093】
続いて、操作者によって画像取得モードが選択される。また、操作者は試料格納部11の扉12を開け、画像取得の対象となる複数の試料Sからなる試料グループを試料格納部11内にセットした後、扉12を閉める。この状態で、操作者が制御部60に対して画像取得の開始を指示すると、セッション切換部83は、試料グループに対応するセッションを開始するとともに、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの作動を指示する。これにより、試料格納部11でのインターロックがON状態に移行し、画像取得中はこのままインターロックのON状態が保持される。
【0094】
試料格納部11に格納された試料グループに対する画像取得が完了し、操作者が制御部60に対して画像取得の終了を指示すると、セッション切換部83は、そのセッションを終了するとともに、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの解除を指示する。これにより、試料格納部11でのインターロックがOFF状態に移行し、扉12の開放、及び操作者による試料グループの交換等が可能な状態となる。
【0095】
制御部60におけるセッションの管理及び切換の具体例について説明する。図11〜図15は、それぞれセッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。なお、これらの操作画面は、図1に示した構成において表示装置61に表示される。
【0096】
画像取得装置の電源が投入され、扉開放処理等の装置の初期化処理が終了すると、表示装置61に図11に示すモード選択画面200が表示される。このモード選択画面200には、新規セッション開始部201、セッション選択部202、及び設定部203が表示されている。また、この画面200には、実行中のセッションを終了するためのセッション終了ボタン204、及び画像取得処理用のアプリケーションそのものを終了するための終了ボタン205が表示されている。ただし、この時点ではセッションの実行中ではないため、セッション終了ボタン204は操作不可能(以下、操作不可能な状態を図中、破線で示す)となっている。
【0097】
新規セッション開始部201には、単一スライドモード選択ボタン201aと、複数スライドモード選択ボタン201bとが設けられている。複数のスライドSからなる試料グループについて画像取得を行う場合には、選択ボタン201bをクリックして複数スライドモードを選択する。また、本構成例においては、単一のスライドSのみについて画像取得を行う場合には、選択ボタン201aをクリックすることで単一スライドモードを選択することが可能となっている。このような単一スライドモードは、例えば複数のスライドSについてのセッションを中断して割り込みで単一のスライドSの画像取得を行うなどの場合に有用である。
【0098】
セッション選択部202には、現在のセッション選択ボタン202aと、前回のセッション選択ボタン202bとが設けられている。新規のセッションではなく、制御部60のデータ記憶部75にセッションデータが保持されている既存のセッションを選択する場合には、このセッション選択部202が操作される。この時点では、装置を初期化した段階で現在のセッションがないために現在のセッション選択ボタン202aは操作不可能となっており、選択ボタン202bによって前回のセッションのみが選択可能となっている。
【0099】
また、設定部203には、セッティングボタン203aと、較正ボタン203bとが設けられている。この設定部203は、画像取得装置における各種設定を確認、変更等する必要がある場合に操作される。
【0100】
モード選択画面200によって新規のセッションの開始、または既存のセッションの再開が指示されると、セッション切換部83は、試料格納部11のインターロックをON状態として試料グループに対するセッションを開始する。また、セッション切換部83は、セッション管理部73に対し、試料格納部11にセットされている試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示する。既存のセッション、または新規のセッションの選択については、モード選択画面200での操作者からの指示内容にしたがって行われる。
【0101】
図12は、複数スライドモードを実行中の状態での操作画面の一例を示す図である。この処理実行画面210では、処理状況表示部211において試料グループに対する画像取得処理の進行状況(セッションの実行状況)が表示される。図12においては、複数のスライドSのうちでスライド1に対するミクロ画像取得処理を実行中の状態を示している。
【0102】
また、図12の画面210では、画像取得処理が実行中であることに対応して、実行中の画像取得処理を中断(Pause)するための処理中断ボタン212、及び画像取得処理を終了(Abort)するための処理終了ボタン213が操作可能となっている。処理中断ボタン212がクリックされると、現在実行中のミクロ画像取得処理が終わった時点で処理が中断される。また、処理終了ボタン213がクリックされると、その時点ですぐさま処理が中断される。また、この画面210には、図11に示した画面200と同様にセッション終了ボタン214、及び終了ボタン215が表示されている。ただし、ミクロ画像取得処理を実行中のため、これらのボタン214、215は操作不可能となっている。
【0103】
図13は、複数スライドモードを実行中の状態での操作画面の他の例を示す図である。この処理実行画面220では、図12の画面210と同様に処理状況表示部221において画像取得処理の進行状況が表示される。図13においては、複数のスライドSのうちでスライド1〜3に対するミクロ画像取得処理が完了した状態を示している。
【0104】
また、図13の画面220では、次の処理を開始するための処理開始ボタン222が操作可能となっている。また、この画面220には、図11に示した画面200と同様にセッション終了ボタン224、及び終了ボタン225が表示されている。また、この時点では実行中の画像取得処理がないため、これらのボタン224、225はいずれも操作可能となっている。
【0105】
例えば、処理状況表示部221に表示されているスライド1〜3が試料グループのすべてのスライドである場合、セッション終了ボタン224をクリックすることで、画像取得処理が完了したセッションを終了することができる。また、スライド1〜3以外で他のスライドが試料グループにある場合、セッション終了ボタン224をクリックすることで、このセッションを途中で中断することができる。
【0106】
セッション切換部83は、このようにセッションが中断または終了したときには、セッション管理部73に対し、そのセッションで取得または設定されたセッションデータ(マクロ画像、撮像条件、ミクロ画像等のデータ)をデータ記憶部75に保持しておくように指示する。また、セッション切換部83は、セッションデータの保持の指示と同時に、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの解除を指示し、試料格納部11のインターロックをOFF状態として試料グループに対するセッションを中断または終了する。このとき、表示装置61には、例えば図14に示すようなセッション終了画面230が表示される。
【0107】
セッション終了処理が完了すると、表示装置61に表示される画面は、図15に示すモード選択画面240へと戻る。この状態では、試料格納部11の扉12を開けて、画像取得の対象となる試料グループを交換することが可能である。また、このモード選択画面240は、基本的には図11に示した画面200と同様であるが、現在のセッション選択ボタン242aが操作可能となっている点で画面200とは異なっている。このように、今まで実行していてそのセッションデータが保持されているセッション、あるいはそれ以前のセッションをセッション選択部242で選択可能な構成とすることにより、操作者による画像取得作業の自由度が向上する。
【0108】
例えば、ある試料グループに対する画像取得処理を実行中で図13の画面220が表示されているときに、特定のスライドについて割り込みで画像取得を行いたい場合、セッション終了ボタン224をクリックすることで実行中のセッションを中断し、図15のモード選択画面240へと戻る。そして、新規セッション開始部241において単一スライドモード選択ボタン241a、または複数スライドモード選択ボタン241bをクリックして、そのスライドについての割り込みでの画像取得を実行した後、再び、モード選択画面240へと戻る。
【0109】
このとき、セッション選択部242においては、割り込みで画像取得を行ったセッションが「現在のセッション」に、また、先に中断したセッションが「前回のセッション」にそれぞれ割り当てられている。したがって、この状態で、処理途中だった試料グループを試料格納部11にあらためてセットし、前回のセッション選択ボタン242bをクリックすることにより、中断していたセッションでの画像取得処理を再開することができる。また、処理中のセッションが異常終了したような場合でも、同様にして画像取得処理を途中から再開することが可能である。
【0110】
また、既に画像取得処理を完了した試料グループについて、あらためて画像データ等の確認を行うことも可能である。この場合、確認したい試料グループを試料格納部11にセットし、セッション選択部242において対応するセッションのボタンをクリックして、図13に示す処理実行画面220を表示させることで、取得された画像データ等を確認することが可能となる。
【0111】
また、画像データに問題があるスライドがあれば、画面220上で画像再取得ボタン226をクリックすることで、再度、そのスライドについて画像取得処理を実行することができる。この場合、再実行する画像取得処理については、ミクロ画像取得のみでも良く、あるいは、マクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得の全体の処理を再実行しても良い。
【0112】
なお、図1に示した画像取得装置において実行される画像取得方法に対応する処理は、画像取得処理をコンピュータに実行させるための画像取得プログラムによって実現可能である。例えば、画像取得装置の制御部60は、画像取得処理に必要な各ソフトウェアプログラムを動作させるCPUと、上記ソフトウェアプログラムなどが記憶されるROMと、プログラムの実行中に一時的にデータが記憶されるRAMとによって構成することができる。このような構成において、CPUによって所定の画像取得プログラムを実行することにより、上記した画像取得装置、及び画像取得方法を実現することができる。
【0113】
また、試料の画像取得のための各処理をCPUによって実行させるための上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録して頒布することが可能である。このような記録媒体には、例えば、ハードディスク及びフレキシブルディスクなどの磁気媒体、CD−ROM及びDVD−ROMなどの光学媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光学媒体、あるいはプログラム命令を実行または格納するように特別に配置された、例えばRAM、ROM、及び半導体不揮発性メモリなどのハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0114】
本実施形態による画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムの効果について説明する。
【0115】
上記した画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムにおいては、試料格納部11に複数の試料Sからなる試料グループをセットして行われる画像取得処理の制御において、試料グループに対応させてセッションの概念を導入する。そして、セッション管理部73において、画像取得の対象である試料グループと、取得されたマクロ画像の画像データ等を含むデータグループであるセッションデータとをセッション毎に関連付けながら、画像取得処理の管理を行っている。このような構成によれば、複数の試料Sを対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能となる。また、このようなセッション管理を行うことにより、操作者による作業の自由度が向上される。
【0116】
また、図1に示した画像取得装置では、複数の試料Sに対してマクロ画像取得部20とミクロ画像取得部30とを設け、撮像条件設定部71においてマクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定するとともに、セッション管理部73において、複数の試料Sのそれぞれについてのマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータを含むデータグループをセッションデータとして管理している。これにより、例えばバーチャル顕微鏡で用いられる試料の画像データとなるような高解像度の試料Sのミクロ画像を効率良く取得することができる。また、このような構成において、試料グループに対応するマクロ画像のデータ、撮像条件、及びミクロ画像のデータをひとまとめにし、それらのデータをセッションデータとして管理することにより、その画像取得処理、条件設定処理等を好適に管理することが可能となる。
【0117】
なお、例えば、マクロ画像を取得するための画像取得装置に対して、ミクロ画像取得装置を別に設けるような場合には、マクロ画像のデータ及び撮像条件を含むデータグループをセッションデータとすれば良い。この場合、セッションデータとして管理されたデータグループを記録媒体等によって移動させるなどの方法により、ミクロ画像のデータとの関連付けが可能である。
【0118】
また、上記した画像取得装置では、制御部60において、試料グループと、セッションデータとがセッション毎に関連付けられた状態でセッションの切換を制御するためのセッション切換部83が設けられている。これにより、例えば画像取得の対象としてそれぞれ複数の試料Sを含む試料グループが複数用意されている場合に、それぞれの試料グループに対する画像取得処理を好適に実行、管理することが可能となる。また、このようなセッションの切換が可能となることにより、画像取得作業の自由度が大きく向上される。
【0119】
また、セッション切換部83は、操作者の指示等によってセッションが中断または終了したときに、セッション管理部73に対し、そのセッションでのセッションデータの保持を指示している。このように、中断または終了したセッションでのセッションデータをデータ記憶部75等で保持しておくことにより、例えば、上述したように、中断したセッションでの画像取得処理を途中から再開したり、あるいは、既に終了したセッションで取得された画像データを確認して、必要に応じてその一部を取得し直すなど、様々な手順での画像取得作業の実行が可能となる。
【0120】
さらに、セッション切換部83は、試料格納部11に試料グループがセットされたときに、操作者の指示等に応じて、セッション管理部73に対し、その試料グループに対応するセッションとして、セッションデータが保持されている既存のセッション、またな新規のセッションへの切換を指示することとしている。これにより、セットする試料グループが、途中でセッションを中断した試料グループ、あるいは新規の試料グループである場合のいずれにおいても、セッションデータとの関連付けを適切に行って、操作者による画像取得作業の効率を向上することができる。
【0121】
また、上記した画像取得装置では、試料格納部11にインターロック機構13が設けられていることに対応して、セッション切換部83は、セッションが中断または終了したときに、試料格納部11に対して、インターロック機構13によるインターロックの解除を指示している。
【0122】
このような構成によれば、試料グループに対するセッションの実行中においては試料格納部11でのインターロックをON状態とし、セッションを中断または終了したときにはインターロックを解除してOFF状態とすることができる。これにより、画像取得処理のセッションの開始/終了と、試料格納部11でのインターロックのON/OFFとを連動させて、試料格納部11に格納される試料グループと、セッションデータとを関連付けたセッションの管理を確実に実行することが可能となる。
【0123】
また、本実施形態では、制御部60において、各試料Sに対するマクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得を制御する制御モードとして、マクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定する際に操作者が必要な確認を行う半自動モードを設けている。これにより、例えば試料Sとなるスライド内に余分な対象物があった場合でも、その影響を確実に除外して試料に対する撮像条件を正しく設定することが可能となる。
【0124】
また、上記した半自動モードにおいて、マクロ画像取得部20でマクロ画像が取得された試料Sを待機位置に配置することとしている。このような構成では、試料Sのマクロ画像の取得、及びマクロ画像を用いた撮像条件の設定を、ミクロ画像の取得とは独立に行うことが可能となる。これにより、操作者は、複数の試料Sに対するマクロ画像の取得、及び撮像条件の設定を終了した後は、ミクロ画像の取得が完了するまで画像取得装置に付いている必要がなくなる。これにより、操作者の作業負担が大幅に軽減される。
【0125】
なお、マクロ画像取得後の試料Sの待機位置については、上記実施形態においては、試料格納部11での格納位置を待機位置とし、マクロ画像が取得された試料Sを再び格納位置に戻す構成としている。これにより、顕微鏡部10の構成を簡素化することができる。あるいは、試料格納部11とは別に、複数の試料Sを待機させることが可能な試料待機部を設ける構成としても良い。
【0126】
また、上記した画像取得装置は、複数の試料Sのそれぞれを、試料格納部11での格納位置と、待機位置(上記構成では格納位置と一致)と、マクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30のそれぞれでの画像取得位置との間で移動させる試料移動手段として、試料搬送部14、及びXYステージである試料ステージ15を設けている。このような構成では、試料Sを各位置の間で移動させつつ行われるマクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得を好適に実現することができる。
【0127】
また、ミクロ画像取得部30は、1次元センサまたはTDI駆動2次元センサからなる撮像装置31を有するとともに、撮像装置31での撮像面の長手方向に直交する方向を、ミクロ画像を取得する際の走査方向として構成されている。さらに、ミクロ画像取得制御部82は、撮像装置31によって試料Sを走査方向に走査して部分画像を取得し、この部分画像の取得を撮像面の長手方向に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰返して、ミクロ画像となる複数の部分画像を取得させる制御を行っている。このような構成によれば、試料Sを一方向に走査したストリップ状の部分画像を高解像度で取得するとともに、他方向について複数の部分画像を合成して試料の全体のミクロ画像とすることで、試料Sの画像データを充分に高い解像度で好適に取得することができる。
【0128】
また、上記した画像取得装置では、半自動モードにおいては、撮像条件設定部71が、マクロ画像に対応して自動で求められた撮像条件を、撮像条件の初期設定として表示装置61に表示し、その撮像条件を用いるか、あるいは手動で撮像条件を設定し直すかを操作者に選択させることとしている。このような構成によれば、例えば試料Sに余分な対象物があるなど問題がある場合には、操作者が手動で撮像条件を修正または新たに設定し、それ以外の場合には、自動で設定された撮像条件をそのまま利用する方法を用いることができる。このように、必要な場合のみ撮像条件を手動で設定することにより、撮像条件の設定を含む複数の試料Sの画像取得作業を効率的に行うことが可能となる。
【0129】
また、上記した画像取得装置では、撮像条件設定部71が、マクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として画像取得範囲R及び焦点計測位置Pを設定し、ミクロ画像取得制御部82は、焦点計測位置Pに基づいて試料Sに対する焦点情報を取得するとともに、得られた焦点情報及び画像取得範囲Rに基づいてミクロ画像を取得させる制御を行っている。これにより、マクロ画像で得られる試料Sについての情報から、ミクロ画像取得に用いられるパラメータを好適に設定して、高解像度で良好な状態の試料の画像データを取得することが可能となる。
【0130】
また、制御部60による画像取得動作の制御モードとしては、半自動モードに加えて、全自動モードを用意している。このような構成では、各試料に対するマクロ画像の取得、撮像条件の設定、及びミクロ画像の取得を制御する制御モードとして、半自動モードによる画像取得と、全自動モードによる画像取得とのいずれかを操作者が適宜選択することにより、画像取得の対象となる複数の試料Sの状態、例えば各試料Sにゴミが多いか少ないか等に応じて、好適な方法で画像取得を実行することが可能となる。なお、これらの制御モードについては、例えば半自動モードの実行中での全自動モードへの切換えなど、制御モードの切換えを可能に構成しても良い。また、全自動モード及び半自動モードのいずれにおいても、画像取得処理が完了した後に、取得されたミクロ画像に問題があれば、セッションの切換に関して上記したように、その試料Sについて再度、画像取得をやり直すことが可能となっていることが好ましい。
【0131】
本発明による画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムは、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態にでは、図11及び図15に示すモード選択画面において、新規セッションの他に、現在のセッション、及び前回のセッションが選択可能となっているが、このような場合の選択可能なセッション数については、必要に応じてさらに多くすることが可能である。また、試料格納部11でのインターロック機構13については、不要であれば設けない構成としても良い。また、複数の試料については、上記実施形態では複数の試料を格納する試料格納手段を設ける構成としているが、このような試料格納手段を設けずに試料に付されたバーコード情報等によって複数の試料を管理する構成としても良い。
【0132】
また、上記実施形態の画像取得装置では、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とを別個に備える構成としたが、マクロ画像またはミクロ画像の取得に応じて切換可能な画像取得用光学系を設けることにより、光源、画像取得手段を単一の光源、単一の画像取得手段として構成しても良い。この場合、切換可能な画像取得用光学系としては、マクロ画像取得用対物レンズと、ミクロ画像取得用対物レンズとを含むレボルバを備える光学系が例として挙げられる。
【0133】
また、上記実施形態においては、ミクロ画像取得部30での撮像装置31として、1次元画像の取得が可能な撮像装置や、2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な撮像装置を例示したが、これらに限定されるものではなく、例えば2次元CCDカメラ(エリアセンサ)などの撮像装置を用いても良い。この場合、米国特許第6816606号公報に開示されているように、高解像度のタイル画像を複数取得して合成することにより、試料Sの全体のミクロ画像を生成することができる。
【0134】
また、上記実施形態においては、透過型の顕微鏡システムを用いて画像取得装置を構成したが、これに限定されない。例えば、蛍光観察の場合にあっては、光源を透過照明に代えて落射照明とし、反射型の顕微鏡システムとして構成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、複数の試料を対象とする画像取得において、その画像取得処理を好適に管理することが可能な画像取得装置、画像取得方法、及び画像取得プログラムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】画像取得装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】画像取得装置における顕微鏡部の構成を概略的に示す図である。
【図3】試料の画像の取得方法を模式的に示す図である。
【図4】マクロ画像を二値化するための閾値の設定方法を示すグラフである。
【図5】画像取得装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】ミクロ画像を用いた試料データの作成について模式的に示す図である。
【図7】全自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。
【図8】半自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。
【図9】半自動モードでの画像取得方法について示すフローチャートである。
【図10】試料格納部でのインターロックの制御の一例を示す図である。
【図11】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図12】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図13】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図14】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【図15】セッションの管理及び切換に用いられる操作画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0137】
10…顕微鏡部、11…試料格納部、12…扉、13…インターロック機構、14…試料搬送部、15…試料ステージ、20…マクロ画像取得部、21…マクロ用撮像装置、22…撮像光学系、25…マクロ用光源、30…ミクロ画像取得部、31…ミクロ用撮像装置、32…対物レンズ、33…Zステージ、34…導光光学系、35…ミクロ用光源、36…集光レンズ、38…画像補正部、40…駆動制御部、41…ステージ制御部、42…撮像装置制御部、43…光源制御部、
60…制御部、61…表示装置、62…入力装置、70…データ処理部、71…撮像条件設定部、72…試料データ作成部、73…セッション管理部、75…データ記憶部、80…画像取得制御部、81…マクロ画像取得制御部、82…ミクロ画像取得制御部、83…セッション切換部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段と、
前記マクロ画像取得手段による前記マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御手段、及び前記マクロ画像を参照して前記試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定手段を有する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ及び前記撮像条件を含むデータグループを、前記試料グループに関連付けられたセッションデータとして前記セッション毎に管理するセッション管理手段を有することを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
前記試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、
前記制御手段は、前記ミクロ画像取得手段による前記ミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御手段を有し、
前記セッション管理手段は、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ、前記撮像条件、及び前記ミクロ画像のデータを含むデータグループを前記セッションデータとして管理することを特徴とする請求項1記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記試料グループと、前記セッションデータとが前記セッション毎に関連付けられた状態で前記セッションの切換を制御するためのセッション切換手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記セッション切換手段は、前記セッションが中断または終了したときに、前記セッション管理手段に対し、そのセッションでの前記セッションデータの保持を指示することを特徴とする請求項3記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記セッション切換手段は、前記試料グループがセットされたときに、前記セッション管理手段に対し、その試料グループに対応する前記セッションとして、前記セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することを特徴とする請求項3または4記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記複数の試料を格納する試料格納手段には、前記セッションの実行中に前記試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、
前記セッション切換手段は、前記セッションが中断または終了したときに、前記試料格納手段に対して、前記インターロック機構によるインターロックの解除を指示することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の画像取得装置。
【請求項7】
複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得ステップと、
前記マクロ画像取得ステップによる前記マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御ステップ、及び前記マクロ画像を参照して前記試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定ステップを有する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ及び前記撮像条件を含むデータグループを、前記試料グループに関連付けられたセッションデータとして前記セッション毎に管理するセッション管理ステップを有することを特徴とする画像取得方法。
【請求項8】
前記試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得ステップを備え、
前記制御ステップは、前記ミクロ画像取得ステップによる前記ミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御ステップを有し、
前記セッション管理ステップは、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ、前記撮像条件、及び前記ミクロ画像のデータを含むデータグループを前記セッションデータとして管理することを特徴とする請求項7記載の画像取得方法。
【請求項9】
前記制御ステップは、前記試料グループと、前記セッションデータとが前記セッション毎に関連付けられた状態で前記セッションの切換を制御するためのセッション切換ステップを有することを特徴とする請求項7または8記載の画像取得方法。
【請求項10】
前記セッション切換ステップにおいて、前記セッションが中断または終了したときに、前記セッション管理ステップに対し、そのセッションでの前記セッションデータの保持を指示することを特徴とする請求項9記載の画像取得方法。
【請求項11】
前記セッション切換ステップにおいて、前記試料グループがセットされたときに、前記セッション管理ステップに対し、その試料グループに対応する前記セッションとして、前記セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することを特徴とする請求項9または10記載の画像取得方法。
【請求項12】
前記複数の試料を格納する試料格納手段には、前記セッションの実行中に前記試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、
前記セッション切換ステップにおいて、前記セッションが中断または終了したときに、前記試料格納手段に対して、前記インターロック機構によるインターロックの解除を指示することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の画像取得方法。
【請求項13】
複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段を備える画像取得装置に適用され、
前記マクロ画像取得手段による前記マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御処理、及び前記マクロ画像を参照して前記試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定処理を有する制御処理を含み、
前記制御処理として、
前記複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ及び前記撮像条件を含むデータグループを、前記試料グループに関連付けられたセッションデータとして前記セッション毎に管理するセッション管理処理を有する前記制御処理をコンピュータに実行させる画像取得プログラム。
【請求項14】
前記画像取得装置は、前記試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、
前記制御処理は、前記ミクロ画像取得手段による前記マクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御処理を有し、
前記セッション管理処理は、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ、前記撮像条件、及び前記ミクロ画像のデータを含むデータグループを前記セッションデータとして管理することを特徴とする請求項13記載の画像取得プログラム。
【請求項15】
前記制御処理は、前記試料グループと、前記セッションデータとが前記セッション毎に関連付けられた状態で前記セッションの切換を制御するためのセッション切換処理を有することを特徴とする請求項13または14記載の画像取得プログラム。
【請求項16】
前記セッション切換処理は、前記セッションが中断または終了したときに、前記セッション管理処理に対し、そのセッションでの前記セッションデータの保持を指示することを特徴とする請求項15記載の画像取得プログラム。
【請求項17】
前記セッション切換処理は、前記試料グループがセットされたときに、前記セッション管理処理に対し、その試料グループに対応する前記セッションとして、前記セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することを特徴とする請求項15または16記載の画像取得プログラム。
【請求項18】
前記画像取得装置の前記複数の試料を格納する試料格納手段には、前記セッションの実行中に前記試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、
前記セッション切換処理は、前記セッションが中断または終了したときに、前記試料格納手段に対して、前記インターロック機構によるインターロックの解除を指示することを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項記載の画像取得プログラム。
【請求項1】
複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段と、
前記マクロ画像取得手段による前記マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御手段、及び前記マクロ画像を参照して前記試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定手段を有する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ及び前記撮像条件を含むデータグループを、前記試料グループに関連付けられたセッションデータとして前記セッション毎に管理するセッション管理手段を有することを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
前記試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、
前記制御手段は、前記ミクロ画像取得手段による前記ミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御手段を有し、
前記セッション管理手段は、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ、前記撮像条件、及び前記ミクロ画像のデータを含むデータグループを前記セッションデータとして管理することを特徴とする請求項1記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記試料グループと、前記セッションデータとが前記セッション毎に関連付けられた状態で前記セッションの切換を制御するためのセッション切換手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記セッション切換手段は、前記セッションが中断または終了したときに、前記セッション管理手段に対し、そのセッションでの前記セッションデータの保持を指示することを特徴とする請求項3記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記セッション切換手段は、前記試料グループがセットされたときに、前記セッション管理手段に対し、その試料グループに対応する前記セッションとして、前記セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することを特徴とする請求項3または4記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記複数の試料を格納する試料格納手段には、前記セッションの実行中に前記試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、
前記セッション切換手段は、前記セッションが中断または終了したときに、前記試料格納手段に対して、前記インターロック機構によるインターロックの解除を指示することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の画像取得装置。
【請求項7】
複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得ステップと、
前記マクロ画像取得ステップによる前記マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御ステップ、及び前記マクロ画像を参照して前記試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定ステップを有する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、
前記複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ及び前記撮像条件を含むデータグループを、前記試料グループに関連付けられたセッションデータとして前記セッション毎に管理するセッション管理ステップを有することを特徴とする画像取得方法。
【請求項8】
前記試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得ステップを備え、
前記制御ステップは、前記ミクロ画像取得ステップによる前記ミクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御ステップを有し、
前記セッション管理ステップは、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ、前記撮像条件、及び前記ミクロ画像のデータを含むデータグループを前記セッションデータとして管理することを特徴とする請求項7記載の画像取得方法。
【請求項9】
前記制御ステップは、前記試料グループと、前記セッションデータとが前記セッション毎に関連付けられた状態で前記セッションの切換を制御するためのセッション切換ステップを有することを特徴とする請求項7または8記載の画像取得方法。
【請求項10】
前記セッション切換ステップにおいて、前記セッションが中断または終了したときに、前記セッション管理ステップに対し、そのセッションでの前記セッションデータの保持を指示することを特徴とする請求項9記載の画像取得方法。
【請求項11】
前記セッション切換ステップにおいて、前記試料グループがセットされたときに、前記セッション管理ステップに対し、その試料グループに対応する前記セッションとして、前記セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することを特徴とする請求項9または10記載の画像取得方法。
【請求項12】
前記複数の試料を格納する試料格納手段には、前記セッションの実行中に前記試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、
前記セッション切換ステップにおいて、前記セッションが中断または終了したときに、前記試料格納手段に対して、前記インターロック機構によるインターロックの解除を指示することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の画像取得方法。
【請求項13】
複数の試料のそれぞれについて、マクロ画像を取得するためのマクロ画像取得手段を備える画像取得装置に適用され、
前記マクロ画像取得手段による前記マクロ画像の取得動作を制御するマクロ画像取得制御処理、及び前記マクロ画像を参照して前記試料のミクロ画像の撮像条件を設定する撮像条件設定処理を有する制御処理を含み、
前記制御処理として、
前記複数の試料の試料グループに対応してセッションを定義し、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ及び前記撮像条件を含むデータグループを、前記試料グループに関連付けられたセッションデータとして前記セッション毎に管理するセッション管理処理を有する前記制御処理をコンピュータに実行させる画像取得プログラム。
【請求項14】
前記画像取得装置は、前記試料のミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得手段を備え、
前記制御処理は、前記ミクロ画像取得手段による前記マクロ画像の取得動作を制御するミクロ画像取得制御処理を有し、
前記セッション管理処理は、前記複数の試料のそれぞれについての前記マクロ画像のデータ、前記撮像条件、及び前記ミクロ画像のデータを含むデータグループを前記セッションデータとして管理することを特徴とする請求項13記載の画像取得プログラム。
【請求項15】
前記制御処理は、前記試料グループと、前記セッションデータとが前記セッション毎に関連付けられた状態で前記セッションの切換を制御するためのセッション切換処理を有することを特徴とする請求項13または14記載の画像取得プログラム。
【請求項16】
前記セッション切換処理は、前記セッションが中断または終了したときに、前記セッション管理処理に対し、そのセッションでの前記セッションデータの保持を指示することを特徴とする請求項15記載の画像取得プログラム。
【請求項17】
前記セッション切換処理は、前記試料グループがセットされたときに、前記セッション管理処理に対し、その試料グループに対応する前記セッションとして、前記セッションデータが保持されている既存のセッション、または新規のセッションへの切換を指示することを特徴とする請求項15または16記載の画像取得プログラム。
【請求項18】
前記画像取得装置の前記複数の試料を格納する試料格納手段には、前記セッションの実行中に前記試料格納手段が開放されることを防止するためのインターロック機構が設けられ、
前記セッション切換処理は、前記セッションが中断または終了したときに、前記試料格納手段に対して、前記インターロック機構によるインターロックの解除を指示することを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項記載の画像取得プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−233094(P2007−233094A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55515(P2006−55515)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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