説明

画像合成方法および表面観察装置

【課題】迅速に合成画像を作成可能な画像合成方法および表面観察装置を提供する。
【解決手段】画像合成方法は、撮影部2の焦点をパンチ3の基準位置P01、P02に合わせる合焦ステップ(ステップS4)と、パンチ3の三次元形状を表す座標データ22に基づいて、撮影部2の焦点を撮影部2の焦点深度以下の距離だけ移動させた移動位置P11、P12に移す移動ステップ(ステップS7)と、基準位置P01、P02および移動位置P11、P12におけるパンチ3の表面を撮影部2によってそれぞれ撮影する撮影ステップ(ステップS5)と、撮影ステップで撮影した画像21の焦点の合っている画像領域G01〜G12を表す領域データ23に基づいて、画像領域G01〜G12を選択して切り取る切取ステップ(ステップS8)と、画像領域G01〜G12を繋ぎ合わせて合成画像50を作成する合成ステップ(ステップS9)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像合成方法および画像合成方法を用いた表面観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部分的に異なる奥行きを有する被写体(被観察物)を撮影するために、全フォーカス法を用いることが知られている。全フォーカス法によれば、撮影部を被写体の奥行き方向に微小距離ずつ移動させながら撮影位置を変え、撮影位置毎に撮影した被写体の画像を取得する。そして、取得したそれぞれの画像の中から焦点の合っている部分を切り出して合成することにより、奥行きの異なる被写体のいずれの部分をも、鮮明に表示した合成画像が得られる(たとえば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−276121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、被写体の焦点の合った部分を抽出するために、各種のフィルタリング手法を用いて複雑で膨大な画像処理を行う必要があった。そのため、画像処理部が肥大化し、さらに、合成画像を得るまでの時間がかかるという課題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、迅速に合成画像を作成可能な画像合成方法および表面観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像合成方法は、撮影部の焦点を被観察物の基準位置に合わせる合焦ステップと、被観察物の三次元形状を表す座標データに基づいて、撮影部の焦点を撮影部の焦点深度以下の距離だけ移動させた移動位置に移す移動ステップと、基準位置および移動位置における被観察物の表面を撮影部によってそれぞれ撮影する撮影ステップと、撮影ステップで撮影した画像の焦点の合っている画像領域を表す領域データに基づいて、前記画像領域を選択して切り取る切取ステップと、画像領域を繋ぎ合わせて合成画像を作成する合成ステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
この画像合成方法によれば、三次元形状を有する被観察物のいずれの部分にも焦点のあった合成画像を作成するために、まず、被観察物の焦点の合わせやすい部分である基準位置に撮影部の焦点を合わせる(合焦ステップ)。そして、基準位置における被観察物の表面を撮影する(撮影ステップ)。撮影した画像は、撮影部の焦点深度内に位置する被観察物の表面部を撮影した部分が、焦点の合っている、いわゆるピントの合った、鮮明な状態の画像領域であり、撮影部の焦点深度外に位置する他の表面部が、いわゆるピントの外れたボケた状態である。次に、撮影部を撮影部の焦点深度以下の距離だけ移動させ(移動ステップ)、移動した移動位置における被観察物の表面を撮影する(撮影ステップ)。移動位置で撮影した画像は、基準位置での画像と同様、撮影部の焦点深度内に位置する被観察物の表面部を撮影した部分が、鮮明な状態の画像領域である。撮影後、基準位置および移動位置のそれぞれの画像から鮮明な画像領域のみを選択して切り取る(切取ステップ)。この時、画像領域は、事前に取得してある被観察物の座標データおよび領域データに基づいて特定されている。従って、切取ステップでは、特定されている領域を選択して切り取れば良く、画像領域と画像領域以外の領域をフィルタリング等で処理して選択する必要が無い。次に、切り取った画像領域を順に繋ぎ合わせて合成画像を作成する(合成ステップ)。合成画像の作成により、撮影部の焦点深度内に収まらない三次元形状をなしている被観察物であっても、被観察物の撮影可能な部分がいずれも鮮明な状態で得られる。この方法によれば、形状が既知である被観察物の表面状態を表す合成画像を、迅速に、作成可能である。
【0008】
この場合、合成画像を表示部に表示する表示ステップをさらに有することが好ましい。
【0009】
この方法によれば、表示ステップをさらに有し、合成画像を表示部に表示することにより、迅速に作成した合成画像の確認がリアルタイムに行える。従って、多量の被観察物の表面を観察してチェックする場合などにおいて、短時間に、且つ、容易にチェックを行うことが可能である。
【0010】
この場合、被観察物を回転させる回転ステップをさらに有することが好ましい。
【0011】
この方法によれば、回転ステップをさらに有し、被観察物を回転させることにより、被観察物の撮影部と対極側にある表面部の撮影が、連続して行える。これにより、撮影部に対して、被観察物の位置を変えて再度取り付け直す必要が無くなり、被観察物の全周撮影が容易に行える。
【0012】
この場合、移動ステップは、複数回実行されることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、移動ステップを複数回実行することにより、移動ステップでの移動方向の長さが、撮影部の焦点深度より複数倍長い被観察物であっても、複数回の撮影によって、合成画像に必要な画像領域を、容易に、取得可能である。
【0014】
本発明の表面観察装置は、被観察物を載置するための載置部と、被観察物の表面を撮影する撮影部と、被観察物の三次元形状を表す座標データを記憶している記憶部と、座標データを基に撮影部を撮影部の焦点深度以下の距離ずつ移動させる移動部と、撮影部が撮影した画像の焦点の合っている画像領域を表す領域データに基づいて、前記画像領域を選択して切り取る切取部と、画像領域のそれぞれを繋ぎ合わせて合成画像を作成する合成部と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
この表面観察装置によれば、三次元形状を有する被観察物のいずれの部分にも焦点のあった合成画像を作成するための載置部、撮影部、記憶部、移動部、切取部および合成部を有している。まず、載置部に被観察物が載置されると、撮影部が被観察物の表面を撮影する。この時、撮影した画像は、撮影部の焦点深度内に位置する被観察物の表面部を撮影した部分が、焦点の合っている、いわゆるピントの合った、鮮明な状態の画像領域であり、撮影部の焦点深度外に位置する他の表面部が、いわゆるピントの外れたボケた状態である。次に、移動部が撮影部を撮影部の焦点深度以下の距離ずつ移動させる。そして、撮影部は、移動した位置における被観察物の表面を撮影する。移動した位置で撮影した画像も、撮影部の焦点深度内に位置する被観察物の表面部を撮影した部分が、鮮明な状態の画像領域である。撮影後、切取部は、それぞれの画像から鮮明な画像領域のみを選択して切り取る。この時、画像領域は、事前に取得してある被観察物の座標データおよび領域データに基づいて特定されており、切取部は、特定されている領域を選択すれば良い。従って、切取ステップにおいて、画像領域と画像領域以外の領域をフィルタリング等で処理して、処理結果に基づいて選択する等の必要が無い。次に、合成部が切り取った画像領域を順に繋ぎ合わせて合成画像を作成する。合成画像の作成により、撮影部の焦点深度内に収まらない三次元形状をなしている被観察物であっても、被観察物の撮影可能な部分がいずれも鮮明な状態で得られる。この表面観察装置によれば、形状が既知である被観察物の表面状態を表す合成画像を、迅速に、作成することが可能である。
【0016】
この場合、合成画像を表示する表示部をさらに備えていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、表面観察装置は、表示部をさらに有し、合成画像を表示部に表示することにより、迅速に作成した合成画像の確認がリアルタイムに行える。従って、多量の被観察物を観察してチェックする場合などにおいて、短時間に、且つ、容易にチェックを行うことが可能である。
【0018】
この場合、被観察物は、載置部に載置された固定治具の回転部に取り付けられていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、表面観察装置は、被観察物を回転させることが可能であり、被観察物の撮影部と対極側にある表面部の撮影が可能である。これにより、撮影部に対して被観察物の位置を変えるために、再度取り付け直す必要が無くなり、被観察物の全周撮影が、容易に、行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。実施形態では、表面観察装置によって、プレス抜き加工用のパンチの表面状態を撮影し、キズ等の有無を観察チェックする場合を例にして説明する。表面状態の確認は、撮影した画像を基に作成した合成画像によって行われる。
(実施形態)
【0021】
図1は、本発明の表面観察装置の構成を示す模式図である。表面観察装置1は、撮影部2と、被観察物であるパンチ3を固定治具4を介して載置しX軸方向に移動可能なX軸ステージ(載置部)5と、Y軸方向に移動可能なY軸ステージ6と、撮影部2をZ軸方向に移動させるZ軸ステージ(移動部)7と、を備えている。また、撮影部2は、パンチ3を撮影するためのCCDカメラ2aと、カメラレンズ2bと、を有し、固定治具4は、パンチ3を回転させる回転部4aを有する。そして、表面観察装置1は、さらに、制御部10を備えており、制御部10は、撮影部2、X軸ステージ5、Y軸ステージ6およびZ軸ステージ7を制御すると共に、各種データや指示の入力を行うための入力部20と、撮影したパンチ3の合成画像などを表示するための表示部25と、を制御する。
【0022】
次に、図2は、表面観察装置の制御部の構成を示すブロック図である。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、を有する。ROM12は、合成画像を作成するための画像合成プログラム18を有する読み書き自在な不揮発性メモリであり、RAM13は、撮影部2が撮影したパンチ3の画像21と、入力部20から入力されるデータであってパンチ3の三次元データを表す座標データ22と、パンチ3の画像21において焦点が合っている画像領域を予め演算した領域データ23と、画像領域を合成した合成画像50と、を一時的に記憶する記憶部としてのメモリである。さらに、制御部10は、撮影部2を制御する撮影制御部14と、X軸ステージ5、Y軸ステージ6およびZ軸ステージ7をそれぞれ制御する駆動制御部15と、表示部25を制御する表示制御部16と、入力部20を制御する入力制御部17と、を有する。
【0023】
このような構成の制御部10において、CPU11は、ROM12の画像合成プログラム18に基づいて、領域データ23を参照して画像21から画像領域を切り取る切取部および切り取った画像領域を繋ぎ合わせて合成する合成部として機能すると共に、ROM12の図示していないファームウエアに基づいて制御部10の全体を制御する。そして、パンチ3の座標データ22は、撮影部2の焦点深度に合わせて、パンチ3に対して焦点位置を変えて複数回撮影することにより、得られた複数の画像21の中に三次元形状のパンチ3の表面の鮮明な画像領域を漏れなく得るためのものである。また、領域データ23は、各画像21の中の焦点の合っている鮮明な部分である画像領域を、予め演算して特定したものである。座標データ22および領域データ23の詳細については、図4に基づいて後述する。
【0024】
ここで、被観察物のパンチ3について、簡単に説明する。図3(a)は、パンチの外観を示す平面図、(b)は、ノズルプレートへのノズルのプレス加工を示す断面図、(c)は、ノズルからの液滴の吐出を示す断面図である。パンチ3は、インクジェット装置において、各種の材料液を液滴状態で吐出するためのノズルを加工する工具であって、図3(a)に示すように、直径がdで、長さがeの円柱状をなしている打抜部3aと、パンチ3をプレス機にとりつけるための直径がdより大きな保持部3cと、打抜部3aと保持部3cとの間に設けられている略円錐状の鍛造部3bと、を有する。この場合、直径dが20μm、長さeが80μmである。
【0025】
このパンチ3をプレス機に取り付け、図3(b)に示すように、厚さ80μmのノズルプレート30にノズル31を加工する。まず、パンチ3に対して、ノズルプレート30のノズル31を加工する位置を合わせる。そして、プレス機を作動させて、パンチ3の打抜部3aによってノズルプレート30を円形に打抜く。打抜部3aに続いて、さらに、パンチ3の鍛造部3bによって、円錐状部を形成する。これにより、ノズル31は、断面形状が漏斗状の形状に加工される。打抜部3aの加工によって生じたカエリ等は、研削加工で除去する。
【0026】
このように加工されたノズルプレート30は、インクジェット装置に装着され、図3(c)に示すように、ノズルプレート30に形成されたノズル31の漏斗状に開いた側に材料液40が貯留されている。材料液40に圧力Wが加えられると、材料液40は、ノズル31から押し出され、液滴41となって吐出される。この時、規定量の液滴41を所定の方向へ吐出させるためには、ノズル31の寸法精度の確保および表面にキズ等のない面精度が要求される。そのためには、ノズル31を加工するパンチ3の寸法精度およびパンチ表面の面精度を確保する必要がある。表面観察装置1は、パンチ3の表面にキズ、割れ、異物、歪みなどがないかを観察し、面精度を保証するためのチェックに用いられるものである。
【0027】
次に、表面観察装置1によってパンチ3の表面を撮影した画像から、焦点の合っている画像領域を切り取り、合成画像を作成してパンチ3の面精度を観察チェックする方法について説明する。図4は、撮影部により撮影したパンチ表面各部の画像領域を示す模式図である。また、図5(a)は、撮影部から最遠部の画像領域を示す平面図、(b)は、撮影部から最遠部の画像領域に隣接する画像領域を示す平面図である。そして、図6(c)は、撮影部から最近部の画像領域に隣接する画像領域を示す平面図、(d)は、撮影部から最近部の画像領域を示す平面図である。図4は、図1に示す撮影部2およびパンチ3の打抜部3aの円形面をY軸方向に沿って見た図であり、図中の撮影部2内には、撮影部2が捉える画像領域G01〜G31を模式的に表してある。この場合、撮影部2は、パンチ3の撮影部2の側の半周面を画像21として撮影可能である。また、図5および図6は、図4の画像領域G01〜G31個々の詳細を示している。
【0028】
図4に示すように、表面観察装置1は、打抜部3aの半周面を漏れなく鮮明に撮影するために、移動距離hの間隔で位置する撮影位置Z0〜Z3の各々で合計4回の撮影を行う。この場合、移動距離hは、撮影部2の焦点深度と同じ値に設定する。最初に、撮影位置Z0において、パンチ3を撮影するため、まず、オートフォーカス機能に連動するZ軸ステージ7によって撮影部2を移動させ、焦点の合わせ易いパンチ3のエッジ(外周位置)である基準位置P01およびP02に撮影部2の焦点を合わせる。さらに、撮影部2の焦点深度を考慮して、焦点深度の撮影部2から最遠部が、基準位置P01およびP02に合致するように撮影部2を移動させる。つまり、撮影部2をh/2だけパンチ3から離反させることにより、基準位置P01およびP02において、撮影部2の焦点深度内にあって鮮明に撮影可能なパンチ3の半周面の領域を増やすことが可能である。
【0029】
この鮮明に撮影可能なパンチ3の半周面の領域が、基準位置P01と基準位置P01からZ軸方向に移動距離hだけ離れた移動位置P11との間の撮影面F01、および、基準位置P02と基準位置P02からZ軸方向に移動距離hだけ離れた移動位置P12との間の撮影面F02である。基準位置P01と移動位置P11との間、および、基準位置P02と移動位置P12との間が撮影部2の焦点深度である。焦点深度内の撮影面F01は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L01を有する鮮明な画像領域G01である。同様に、焦点深度内の撮影面F02は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L02を有する鮮明な画像領域G02である。撮影位置Z0で撮影した画像21は、画像領域G01およびG02に該当する部分が鮮明に撮影されており、他の撮影面の部分は不鮮明な、いわゆるピンボケである。
【0030】
撮影位置Z0において撮影部2が撮影したパンチ3は、図5(a)に示すように、打抜部3aの撮影面F01が画像領域幅L01および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G01であって、他の撮影面を含んだ画像21としてRAM13に記憶される。同時に、打抜部3aの撮影面F02も、画像領域幅L02および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G02としてRAM13に記憶される。
【0031】
撮影位置Z0での撮影終了後、Z軸ステージによって、撮影部2を撮影位置Z1方向へ移動距離hだけ移動させる。撮影位置Z1では、移動位置P11と移動位置P11からZ軸方向に移動距離hだけ離れた移動位置P21との間の撮影面F11、および、移動位置P12と移動位置P12からZ軸方向に移動距離hだけ離れた移動位置P22との間の撮影面F12が、撮影部2の焦点深度内である。従って、撮影面F11は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L11を有する鮮明な画像領域G11であり、同様に、焦点深度内の撮影面F12は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L12を有する鮮明な画像領域G12である。撮影位置Z1で撮影した画像21は、画像領域G11およびG12に該当する部分が鮮明であって、他の撮影面の部分は不鮮明である。
【0032】
撮影位置Z1おいて撮影部2が撮影したパンチ3は、図5(b)に示すように、打抜部3aの撮影面F11が、画像領域幅L11および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G11としてRAM13に記憶される。同時に、打抜部3aの撮影面F12も、画像領域幅L12および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G12としてRAM13に記憶される。
【0033】
撮影位置Z1での撮影終了後、Z軸ステージによって、撮影部2を撮影位置Z2方向へ移動距離hだけ移動させる。撮影位置Z2では、移動位置P21と移動位置P21からZ軸方向に移動距離hだけ離れた移動位置P31との間の撮影面F21、および、移動位置P22と移動位置P22からZ軸方向に移動距離hだけ離れた移動位置P32との間の撮影面F22が、撮影部2の焦点深度内である。従って、撮影面F21は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L21を有する鮮明な画像領域G21であり、同様に、焦点深度内の撮影面F22は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L22を有する鮮明な画像領域G22である。撮影位置Z2で撮影した画像21は、画像領域G21およびG22に該当する部分が鮮明であって、他の撮影面の部分は不鮮明である。
【0034】
撮影位置Z2おいて撮影部2が撮影したパンチ3は、図6(c)に示すように、打抜部3aの撮影面F21が、画像領域幅L21および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G21としてRAM13に記憶される。同時に、打抜部3aの撮影面F22も、画像領域幅L22および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G22としてRAM13に記憶される。
【0035】
そして、撮影位置Z2での撮影終了後、Z軸ステージによって、撮影部2を撮影位置Z3方向へ移動距離hだけ移動させる。この場合、撮影位置Z3では、移動位置P31と移動位置P32の間のパンチ3の半周部の領域が撮影部2の焦点深度内であり、このパンチ3の半周部の領域が、移動位置P31と移動位置P32との間の撮影面F31である。従って、撮影面F31は、撮影部2で撮影された画像21において、画像領域幅L31を有する鮮明な画像領域G31であり、他の撮影面の部分は不鮮明である。
【0036】
撮影位置Z3おいて撮影部2が撮影したパンチ3は、図6(d)に示すように、打抜部3aの撮影面F31が、画像領域幅L31および長さeの長方形をなす鮮明な画像領域G31としてRAM13に記憶される。以上説明したように、4回の撮影により得られた4つの画像21には、パンチ3の半周面を鮮明に捉えた画像領域G01〜G31が含まれている。
【0037】
ここで、パンチ3を撮影する撮影位置Z0〜Z3の設定について説明する。表面観察装置1は、パンチ3を撮影部2で撮影するために、入力部から座標データ22および領域データ23をRAM13に取り込んで記憶している。この場合、パンチ3の直径dが20μmであり、撮影部2の焦点深度が3μmであるので、図4に示す半径rが10μmのパンチ3の半周面を漏れなく撮影するためには、撮影部2の移動距離hを3μmとすると、撮影位置Z0〜Z3において4回の撮影が必要であり、パンチ3の直径dと撮影部2の焦点深度とから撮影位置および撮影回数が設定可能である。被観察物のパンチ3は、形状が既知であるため、座標データ22は、打抜部3aの半周面の撮影位置Z0〜Z3にそれぞれ位置する基準位置P01および基準位置P02と、移動位置P11〜移動位置P32の座標値を有し、パンチ3の三次元形状を表している。
【0038】
また、領域データ23は、座標データ22に基づき、撮影位置Z0〜Z3のそれぞれで撮影した画像21において、撮影部2の焦点深度内に位置する打抜部3aの半周面を撮影した画像領域G01〜G31を予め演算して特定したものである。領域データ23を参照すれば、画像21のどの領域が画像領域G01〜G31であるかの判断が容易である。
【0039】
なお、撮影部2の焦点深度を深くすれば、鮮明に撮影可能な範囲は、撮影位置Z0とZ1との距離3μmより広くなり、撮影回数の削減が図れるが、画像21の劣化が生じて面精度の観察チェックがし難くなる。従って、パンチ3の面精度を観察チェックするためには、撮影回数が増えるが、焦点深度を例えば1μm程度に浅くして、より緻密な画像を得ることが望ましい。
【0040】
次に、合成画像50の作成について簡単に説明する。図7は、合成画像を示す平面図である。合成画像50は、パンチ3の半周面のいずれの部分をも、鮮明に、一つの画像として表したものである。合成画像50の作成は、撮影位置Z0〜Z3において撮影し、RAM13に記憶している各画像21を基に、CPU11がROM12の画像合成プログラムに従って行う。まず、画像21から画像領域G01〜G31を切り取り、次に、切り取った画像領域G01〜G31を順に繋ぎ合わせて、図7に示すような合成画像50を作成する。この合成画像50により、三次元形状のパンチ3の表面状態を精密に観察チェックすることが可能である。
【0041】
以下に、表面観察装置1によって合成画像50を作成する画像合成方法について、フローチャート図を参照して説明する。図8は、合成画像を作成するためのフローチャート図である。フローチャート図は、表面観察装置1の制御部10が実行するステップを示している。
【0042】
まず、ステップS1において、パンチ3が固定治具4にセットされ、観察開始の指示を受信したか否かを判断する。観察開始の指示は、入力部20から入力される。指示を受信していなければ、ステップS1において指示を待ち、一方、受信していれば、ステップS2へ進む。
【0043】
ステップS2において、パンチ3の座標データ22を基に、X軸ステージ5およびY軸ステージ6の移動を指示して、パンチ3を撮影可能な位置へ移動させる。移動指示後、ステップS3へ進む。
【0044】
ステップS3において、パンチ3がCCDカメラ2aの視野内に入ったか否かを判断する。判断は、撮影制御部14が撮影部2からの画像を確認して行う。パンチ3が視野外であれば、ステップS2へ戻り、一方、視野内であれば、ステップS4へ進む。
【0045】
ステップS4において、Z軸ステージ7を移動させて、パンチ3のエッジにCCDカメラ2aの焦点があっているか否かを判断する。この判断は、撮影制御部14が撮影部2からの画像を確認して行う。この場合、既述したように、パンチ3のエッジには、焦点深度内のCCDカメラ2aから最遠部が合致している。ステップS4は、合焦ステップに該当する。焦点が合っていなければ、ステップS4においてZ軸ステージ7を移動させて調整を続け、一方、焦点が合えば、ステップS5へ進む。
【0046】
ステップS5において、CCDカメラ2aでパンチ3の表面を撮影し、撮影した画像21をRAM13へ記憶する。ステップS5は、撮影ステップに該当する。撮影後、ステップS6へ進む。
【0047】
ステップS6において、4回の撮影を実行したか否かを判断する。判断は、撮影制御部14が撮影部2へ指示した撮影命令の回数をCPU11がカウントすることによって行う。4回未満であれば、ステップS7へ進み、一方、4回に到達していれば、ステップS8へ進む。
【0048】
4回未満の場合、ステップS7において、Z軸ステージ7を移動距離hだけ移動させる。ステップS7は、移動ステップに該当する。移動後、ステップS5へ戻る。
【0049】
4回に達していれば、ステップS8において、撮影した各画像21を領域データ23に基づいて切り取る。切り取る部分は、各画像21の画像領域G01〜G31である。この場合、領域データ23によって、画像領域G01〜G31のそれぞれが座標値で特定されているため、フィルタ処理等の演算が不要で、容易に切り取ることが可能である。この処理は、CPU11がROM12の画像合成プログラム18に従って切取部として機能することにより実行される。ステップS8は、切取ステップに該当する。切取後、ステップS9へ進む。
【0050】
ステップS9において、切り取った画像領域G01〜G31を図7に示すように、順に繋ぎ合わせて、合成画像50を作成する。この処理は、CPU11がROM12の画像合成プログラム18に従って合成部として機能することにより実行される。ステップS9は、合成ステップに該当する。作成後、ステップS10へ進む。
【0051】
ステップS10において、表示部25へ合成画像50を表示する。表示部25への表示により、パンチ3の面精度をリアルタイムで観察チェックすることが可能である。ステップS10は、表示ステップに該当する。以上のような各ステップにより、合成画像50が作成される。
【0052】
なお、ステップS10の終了後に、固定治具4の回転部4aを操作し、回転ステップとして、パンチ3を180度回転させれば、再度、ステップS1からS10のステップの実行により、パンチ3の反対側の半周面を引き続いて撮影することが可能である。これにより、最少のパンチ3の回転移動だけで、パンチ3の打抜部3aの全周を漏れなく撮影可能である。
【0053】
以上、表面観察装置1による画像合成方法に関する具体的な実施形態について説明した。以下に実施形態の効果をまとめて記載する。
【0054】
(1)被観察物のパンチ3の形状を座標データ22および領域データ23により、予め特定する画像合成方法により、撮影部2の焦点深度から外れるような三次元形状をなしているパンチ3であっても、パンチ3の撮影可能な部分がいずれも鮮明な状態の一つの合成画像50として得られる。この方法によれば、パンチ3の表面状態を表示する合成画像50を、迅速に作成することが可能である。
【0055】
(2)合成画像50を作成して、一つの合成画像によってパンチ3の表面状態をチェック可能であるため、撮影位置Z0〜Z3において撮影した各画像21を、個々にチェックする必要がなく、効率的なチェックが行える。
【0056】
(3)合成画像50の作成に当たって、通常行われている複雑なフィルタリング処理等が不必要であるため、フィルタリング処理等を行うには処理速度の遅い制御部10であっても、実用上支障なく画像合成処理を実行可能である。
【0057】
(4)表示部25によって、合成画像50を表示することにより、迅速に作成した合成画像50の確認がリアルタイムに行える。従って、多量のパンチ3の表面を観察してチェックする場合などにおいて、短時間に、且つ、容易に行うことが可能である。
【0058】
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0059】
(変形例1)基準位置P01と移動位置P11との距離、移動位置P11と移動位置P21との距離、および、移動位置P21と移動位置P31との距離は、焦点深度と同じである移動距離hではなく、移動距離h以下であっても良い。また、それぞれが移動距離h以下の異なった距離であっても良い、画像領域G01〜G31の重なる部分があり、領域データ23の演算が煩雑化するが、実施形態と同様に合成画像50が作成可能である。
【0060】
(変形例2)ステップS4において、CCDカメラ2aの焦点は、基準位置P01およびP02に合わせたままで、焦点深度に対応した調整を行わなくても良い。画像領域G01およびG02の画像領域幅L01およびL02が小さくなるが、合成画像の作成は可能である。
【0061】
(変形例3)座標データ22および領域データ23は、RAM13ではなくROM12に記憶させても良い。ROM12は、不揮発性メモリであり、パンチ3の観察の都度、入力部から読み込む操作が不要になる。
【0062】
(変形例4)Z軸ステージ7は、撮影部2を移動させる構成ではなく、載置部であるX軸ステージ5を移動させても良い。撮影部2が固定されて、より安定した撮影状態を保持可能である。
【0063】
(変形例5)固定治具4を介してパンチ3を載置するステージは、X軸ステージ5に限定されず、Y軸ステージ6が載置部であっても良い。表面観察装置1の載置部構成の自由度を増すことが可能である。
【0064】
(変形例6)固定治具4の回転部4aは、制御部10の制御により回転する構成であっても良い。多量のパンチ3を連続して観察する場合などに、操作が効率的である。
【0065】
(変形例7)ステップS10において、合成画像50を表示部25に表示するだけではなく、プリンタで出力しても良い。パンチ3の観察チェック記録として残しておくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の表面観察装置の構成を示す模式図。
【図2】表面観察装置の制御部の構成を示すブロック図。
【図3】(a)パンチの外観を示す平面図、(b)ノズルプレートへのノズルのプレス加工を示す断面図、(c)ノズルからの液滴の吐出を示す断面図。
【図4】撮影部により撮影したパンチ表面各部の画像領域を示す模式図。
【図5】(a)撮影部から最遠部の画像領域を示す平面図、(b)撮影部から最遠部の画像領域に隣接する画像領域を示す平面図。
【図6】(c)撮影部から最近部の画像領域に隣接する画像領域を示す平面図、(d)撮影部から最近部の画像領域を示す平面図。
【図7】合成画像を示す平面図。
【図8】合成画像を作成するためのフローチャート図。
【符号の説明】
【0067】
1…表面観察装置、2…撮影部、2a…CCDカメラ、2b…カメラレンズ、3…被観察物としてのパンチ、4…固定治具、5…載置部としてのX軸ステージ、6…Y軸ステージ、7…移動部としてのZ軸ステージ、10…制御部、11…切取部および合成部としてのCPU、12…ROM、13…記憶部としてのRAM、14…撮影制御部、15…駆動制御部、18…画像合成プログラム、21…画像、22…座標データ、23…領域データ、30…ノズルプレート、31…ノズル、50…合成画像、h…移動距離、P01、P02…基準位置、P03〜P32…移動位置、F01〜F31…撮影面、G01〜G31…画像領域、L01〜L31…画像領域幅、Z0〜Z3…撮影位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影部の焦点を被観察物の基準位置に合わせる合焦ステップと、
前記被観察物の三次元形状を表す座標データに基づいて、前記撮影部の焦点を前記撮影部の焦点深度以下の距離だけ移動させた移動位置に移す移動ステップと、
前記基準位置および前記移動位置における前記被観察物の表面を前記撮影部によってそれぞれ撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで撮影した画像の焦点の合っている画像領域を表す領域データに基づいて、前記画像領域を選択して切り取る切取ステップと、
前記画像領域を繋ぎ合わせて合成画像を作成する合成ステップと、を有することを特徴とする画像合成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像合成方法において、
前記合成画像を表示部に表示する表示ステップをさらに有することを特徴とする画像合成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像合成方法において
前記被観察物を回転させる回転ステップをさらに有することを特徴とする画像合成方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像合成方法において、
前記移動ステップは、複数回実行されることを特徴とする画像合成方法。
【請求項5】
被観察物を載置するための載置部と、
前記被観察物の表面を撮影する撮影部と、
前記被観察物の三次元形状を表す座標データを記憶している記憶部と、
前記座標データを基に前記撮影部を前記撮影部の焦点深度以下の距離ずつ移動させる移動部と、
前記撮影部が撮影した画像の焦点の合っている画像領域を表す領域データに基づいて、前記画像領域を選択して切り取る切取部と、
前記画像領域のそれぞれを繋ぎ合わせて合成画像を作成する合成部と、を備えていることを特徴とする表面観察装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表面観察装置において、
前記合成画像を表示する表示部をさらに備えていることを特徴とする表面観察装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の表面観察装置において、
前記被観察物は、前記載置部に載置された固定治具の回転部に取り付けられていることを特徴とする表面観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−46952(P2008−46952A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223024(P2006−223024)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】