説明

画像形成システム

【課題】画像形成装置に画像データを記憶させ、いずれの画像形成装置を使用してもこの画像データに応じた画像を形成することができる画像形成システムにおいて、利用者情報と、この利用者情報に対応する画像データが記憶される画像形成装置を示す装置情報とを関連付ける作業の手間を省く。
【解決手段】配信サーバ装置10は、予め決められたユーザIDに対して、このユーザIDに対応する画像データが記憶される画像形成装置を決定し、このユーザIDと決定された画像形成装置を示すスプーラ情報とを関連付けて記憶する。クライアント装置20は、予め設定されたユーザIDに対応する画像データを、このユーザIDに対して決定された画像形成装置に送信する。画像形成装置は、配信サーバ装置10に記憶されたスプーラ情報に基づいて、入力されたユーザIDに対応する画像データを取得し、この画像データに応じた画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者によって指定された画像データをプリントサーバ装置に格納して、この画像データに対して複数の画像形成装置からアクセスできるようにする技術が知られている。例えば、特許文献1には、ユーザ端末から送信された印刷ジョブをプリントサーバに一時保留しておき、ユーザがプリンタに指紋等の認証情報を入力して認証に成功すると、プリンタが、入力された認証情報に対応する印刷ジョブをプリントサーバから取得し、印刷を実行する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−242851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像形成装置に画像データを記憶させ、いずれの画像形成装置を使用してもこの画像データに応じた画像を形成することができる画像形成システムにおいて、利用者情報と、この利用者情報に対応する画像データが記憶される画像形成装置を示す装置情報とを関連付ける作業の手間を省くことを目的とする。
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る画像形成システムは、複数の画像形成装置と、予め決められた利用者を識別する利用者情報に対して、前記複数の画像形成装置の中から当該利用者情報に対応する画像データが記憶される画像形成装置を決定する決定部と、前記利用者情報と、前記決定部により決定された前記画像形成装置を示す装置情報とを関連付けて記憶する第1の記憶部と、前記利用者情報が予め設定された送信装置と、前記送信装置に備えられ、前記予め設定された利用者情報に対応する画像データを、当該利用者情報に対して前記決定部により決定された画像形成装置に送信する送信部と、各々の前記画像形成装置に備えられ、前記送信部により送信された前記画像データを記憶する第2の記憶部と、各々の前記画像形成装置に備えられ、前記利用者情報の入力を受け付ける受付部と、各々の前記画像形成装置に備えられ、前記入力された利用者情報と対応付けて前記第1の記憶部に記憶された前記装置情報が示す画像形成装置から、当該利用者情報に対応する画像データを取得する第1の取得部と、各々の前記画像形成装置に備えられ、前記第1の取得部により取得された前記画像データに応じた画像を形成する画像形成部とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る画像形成システムは、請求項1に記載の構成において、前記決定部は、複数の画像形成装置を決定し、当該複数の画像形成装置には、電源が切られにくい画像形成装置として予め決められた画像形成装置が含まれることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る画像形成システムは、請求項2に記載の構成において、前記複数の画像形成装置は、ファクシミリ機能を有する画像形成装置を含み、前記ファクシミリ機能を有する画像形成装置を特定する特定部を備え、前記決定部は、前記複数の画像形成装置を決定するときに、前記特定部により特定された前記画像形成装置を当該複数の画像形成装置に含めることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る画像形成システムは、請求項2に記載の構成において、各々の前記画像形成装置に備えられ、自装置の通電時間を計測する計測部と、前記複数の画像形成装置のうち前記計測部により計測された通電時間が最も長い画像形成装置を特定する特定部とを備え、前記決定部は、前記複数の画像形成装置を決定するときに、前記特定部により特定された前記画像形成装置を当該複数の画像形成装置に含めることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る画像形成システムは、請求項1に記載の構成において、前記送信装置と前記複数の画像形成装置とは、通信回線を介して接続されており、前記通信回線は、複数のサブネットに分割されており、前記決定部は、前記送信装置が1の前記サブネットに接続されている場合、当該1のサブネットに接続されている画像形成装置を決定することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る画像形成システムは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成において、前記第1の記憶部に記憶された前記装置情報を更新する更新部と、前記送信装置に備えられ、予め決められたタイミングで、前記予め設定された利用者情報と関連付けて前記第1の記憶部に記憶された装置情報を取得する第2の取得部とを備え、前記送信部は、前記第2の取得部により前記装置情報が取得されると、前記予め設定された利用者情報に対応する画像データを、当該装置情報が示す画像形成装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、画像形成装置に画像データを記憶させ、いずれの画像形成装置を使用してもこの画像データに応じた画像を形成することができる画像形成システムにおいて、利用者情報と、この利用者情報に対応する画像データが記憶される画像形成装置を示す装置情報とを関連付ける作業の手間を省くことができる。
請求項2に係る発明によれば、いずれの画像形成装置にも画像データを記憶させることができないという状況の発生を抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、画像データを記憶させる画像形成装置の中に、ファクシミリ機能を有する画像形成装置を含めることができる。
請求項4に係る発明によれば、画像データを記憶させる画像形成装置の中に、通電時間が長い画像形成装置を含めることができる。
請求項5に係る発明によれば、送信装置と同一のサブ通信回線に接続された画像形成装置に画像データを記憶させることができる。
請求項6に係る発明によれば、更新後の装置情報に応じた画像形成装置に画像データを記憶させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成システムの構成を示す模式図
【図2】配信サーバ装置のハードウェア構成を示す図
【図3】配信サーバ装置に記憶されたユーザ情報の一例を示す図
【図4】クライアント装置のハードウェア構成を示す図
【図5】プリンタドライバに設定された情報の一例を示す図
【図6】実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示す図
【図7】画像形成装置に記憶されたユーザ情報の一例を示す図
【図8】画像形成システムの機能構成を示す図
【図9】ファクス機リストの一例を示す図
【図10】初回設定動作1を示すシーケンスチャート
【図11】初回設定動作2を示すシーケンスチャート
【図12】プリント動作を示すシーケンスチャート
【図13】ユーザ認証処理を示すフローチャート
【図14】画像データリストの一例を示す図
【図15】実施形態に係るユーザ情報の更新動作を示すシーケンスチャート
【図16】ログ情報の一例を示す図
【図17】ユーザ情報の更新処理を示すフローチャート
【図18】集計情報の一例を示す図
【図19】更新後のユーザ情報の一例を示す図
【図20】プル型の更新動作を示すシーケンスチャート
【図21】プッシュ型の更新動作を示すシーケンスチャート
【図22】変形例2に係る画像形成装置のハードウェア構成を示す図
【図23】変形例7に係るユーザ情報の更新動作を示すシーケンスチャート
【図24】記録情報の一例を示す図
【図25】変形例8に係るユーザ情報の更新動作を示すシーケンスチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.画像形成システムの構成
図1は、実施形態に係る画像形成システム1の構成を示す模式図である。画像形成システム1は、配信サーバ装置10と、クライアント装置20と、画像形成装置30A、30B及び30Cとを備えている。この配信サーバ装置10、クライアント装置20及び画像形成装置30A、30B、30Cは、通信回線2を介して互いに接続されている。この画像形成システム1は、画像形成装置30に画像データを記憶させ、いずれの画像形成装置30を使用してもこの画像データに応じた画像を形成することができる仕組みを有する。なお、以下の説明では、画像形成装置30A、30B及び30Cを区別する必要がない場合には、総称して「画像形成装置30」という。
【0014】
図2は、配信サーバ装置10のハードウェア構成を示す図である。配信サーバ装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、通信部13と、記憶部14と、操作部15と、表示部16とを備えている。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、配信サーバ装置10の各部を制御する。通信部13は、通信回線2に接続される通信インターフェースである。配信サーバ装置10は、通信部13を用いてクライアント装置20又は画像形成装置30と通信を行う。記憶部14は、ハードディスクなどの記憶装置である。記憶部14には、ユーザ情報41が記憶されている。操作部15は、例えばキーボードとマウスを備えている。操作部15は、配信サーバ装置10を操作するのに用いられる。表示部16は、液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0015】
図3は、ユーザ情報41の一例を示す図である。このユーザ情報41においては、ユーザIDと複数のスプーラ情報とが関連付けられている。ユーザIDは、利用者を識別する情報である。スプーラ情報は、画像データを格納する画像形成装置30を示す情報である。このスプーラ情報としては、例えば画像形成装置に割り当てられたIP(Internet Protocol)アドレスや識別番号が用いられる。図3に示すスプーラ情報「spoolerA」、「spoolerB」、「spoolerC」は、それぞれ画像形成装置30A、30B、30Cを示す。また、スプーラ情報には、優先順位が割り当てられている。図3に示す「1」、「2」、「3」は、それぞれスプーラ情報に割り当てられた優先順位を示す。以下の説明では、優先順位「1」が割り当てられたスプーラ情報を「プライマリスプーラ情報」といい、優先順位「2」が割り当てられたスプーラ情報を「セカンダリスプーラ情報」という。
【0016】
図3に示すユーザ情報41では、ユーザID「user001」に対して、プライマリスプーラ情報「spoolerA」と、セカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが関連付けられている。これは、ユーザID「user001」に対応する画像データが、画像形成装置30A又は画像形成装置30Cに格納されることを意味する。このとき、画像形成装置30Aの方が、画像形成装置30Cに優先して使用される。
【0017】
図4は、クライアント装置20のハードウェア構成を示す図である。クライアント装置20は、CPU21と、メモリ22と、通信部23と、記憶部24と、操作部25と、表示部26とを備えている。CPU21は、メモリ22に記憶されたプログラムを実行することにより、クライアント装置20の各部を制御する。通信部23は、通信回線2に接続される通信インターフェースである。クライアント装置20は、通信部23を用いて配信サーバ装置10又は画像形成装置30と通信を行う。記憶部24は、ハードディスクなどの記憶装置である。この記憶部24には、プリンタドライバ42が記憶されている。プリンタドライバ42は、画像形成装置30を制御する機能を有するプログラムである。操作部25は、例えばキーボードとマウスを備えている。操作部25は、クライアント装置20を操作するのに用いられる。表示部26は、液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0018】
プリンタドライバ42には、画像形成装置30に画像データを送信するときに必要な情報が設定されている。図5は、プリンタドライバ42に設定された情報の一例を示す図である。このプリンタドライバ42には、図3に示すユーザ情報41に含まれるユーザID「user001」と、プライマリスプーラ情報「spoolerA」及びセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが設定されている。なお、プリンタドライバ42には、プライマリスプーラ情報とセカンダリスプーラ情報だけが設定されており、優先順位「3」が割り当てられたスプーラ情報は設定されないようになっている。
【0019】
図6は、画像形成装置30のハードウェア構成を示す図である。画像形成装置30は、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、UI(User Interface)部34と、画像形成部35と、カード読取部36とを備えている。制御部31は、画像形成装置30の各部を制御する。制御部31は、例えばCPUとメモリとを備えている。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、制御部31の機能を実現する。通信部32は、通信回線2に接続される通信インターフェースである。画像形成装置30は、通信部32を用いて、配信サーバ装置10、クライアント装置20又は他の画像形成装置30と通信を行う。記憶部33は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶装置である。記憶部33は、画像データが記憶される格納領域37を有している。また、記憶部33には、上述したユーザ情報41に対応するユーザ情報41aが記憶されている。
【0020】
UI部34は、例えばタッチスクリーンと操作ボタンとを備えている。UI部34は、画像形成装置30を操作するのに用いられる。画像形成部35は、例えば電子写真方式のプリンタである。画像形成部35は、画像データに応じた画像を用紙等の媒体に形成(プリント)する。カード読取部36は、IC(integrated circuit)カードに記憶された情報を非接触で読み取る。ICカードは、利用者の認証を行うために予めその利用者に渡されている。ICカードには、上述したユーザ情報41に含まれるユーザIDが記憶されている。なお、画像形成装置30は、上述した構成の他に、スキャナやファクシミリなどの機能を実現する構成を備えていてもよい。また、以下の説明において、画像形成装置30A、30B、30Cの構成を区別する必要がある場合には、それぞれ符号に「A」、「B」、「C」という文字を付して説明する。
【0021】
図7は、ユーザ情報41aの一例を示す図である。このユーザ情報41aは、図3に示すユーザ情報41と同一のユーザID及びスプーラ情報が含まれている。ただし、このユーザ情報41aには、プライマリスプーラ情報とセカンダリスプーラ情報だけが含まれており、優先順位「3」が割り当てられたスプーラ情報は含まれないようになっている。
【0022】
図8は、画像形成システム1の機能構成を示す図である。各画像形成装置30は、同様の機能構成を有している。ただし、図8では、一方の画像形成装置30が有する機能構成については、他方の画像形成装置30において図示を省略している。この実施形態では、クライアント装置20は送信装置として機能する。特定部101、決定部102及び更新部103は、CPU11がプログラムを実行することにより実現される。決定部201、送信部202及び第2の取得部203は、CPU21がプログラムを実行することにより実現される。受付部301は、カード読取部36により実現される。第1の取得部302は、制御部31において例えばCPUがプログラムを実行することにより実現される。配信サーバ装置10、クライアント装置20又は画像形成装置30の機能構成は、単一のプログラムにより実現されてもよいし、複数のプログラムにより実現されてもよい。
【0023】
特定部101は、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30を特定する。決定部102は、予め決められたユーザIDに対して、画像形成装置30A、30B及び30Cの中からこのユーザIDに対応する画像データが記憶される複数の画像形成装置30を決定する。このユーザIDは、利用者を識別する利用者情報の一例である。決定部102により決定される複数の画像形成装置には、電源が切られにくい画像形成装置が含まれる。この電源が切られにくい画像形成装置30とは、画像形成装置30の状態または属性が電源の切られにくい画像形成装置30の状態または属性として予め決められた条件に合致するような画像形成装置30のことである。この実施形態では、複数の画像形成装置30には、特定部101により特定された画像形成装置30が含まれる。記憶部14は、予め決められたユーザIDと、決定部102により決定された画像形成装置30を示すスプーラ情報とを関連付けて記憶する。このスプーラ情報は、画像形成装置30を示す装置情報の一例である。つまり、この実施形態では、記憶部14は第1の記憶部として用いられる。更新部103は、記憶部14に記憶されたスプーラ情報を更新する。
【0024】
通信回線2は、複数のサブネットに分割されている。決定部201は、クライアント装置20が1のサブネットに接続されている場合、この1のサブネットに接続されている画像形成装置30を決定する。クライアント装置20には、予めユーザIDが設定されている。送信部202は、この予め設定されたユーザIDに対応する画像データを、このユーザIDに対して決定部102又は決定部201により決定された画像形成装置30に送信する。第2の取得部203は、予め決められたタイミングで、予め設定されたユーザIDと関連付けて記憶部14に記憶されたスプーラ情報を取得する。第2の取得部203によりスプーラ情報が取得されると、送信部202は、予め設定されたユーザIDに対応する画像データを、このスプーラ情報が示す画像形成装置30に送信する。
【0025】
記憶部33は、送信部202により送信された画像データを記憶する。つまり、この実施形態では、記憶部33は第2の記憶部として用いられる。受付部301は、ユーザIDの入力を受け付ける。第1の取得部302は、入力されたユーザIDと対応付けて記憶部14に記憶されたスプーラ情報が示す画像形成装置30から、このユーザIDに対応する画像データを取得する。なお、第1の取得部302は、実際には記憶部33に記憶されたユーザ情報41aに基づいて、画像データの取得を行っている。しかし、上述したように、このユーザ情報41aには、配信サーバ装置10に記憶されたユーザ情報41と同一のユーザID及びスプーラ情報が含まれている。したがって、第1の取得部302は、配信サーバ装置10に記憶されたスプーラ情報に基づいて、画像データを取得しているといえる。画像形成部35は、第1の取得部302により取得された画像データに応じた画像を形成する。
【0026】
2.画像形成システムの動作
(1)初回設定動作
初回利用時、配信サーバ装置10に記憶されたユーザ情報41には、予め決められたユーザIDだけが含まれており、スプーラ情報は含まれていない。また、クライアント装置20のプリンタドライバ42には、ユーザIDだけが設定されており、スプーラ情報は設定されていない。そこで、初回利用時には、ユーザIDにスプーラ情報を設定する処理が行われる。スプーラ情報を設定する方法としては、配信サーバ装置10側でユーザIDとスプーラ情報との関連付けを行う方法(以下、「初回設定動作1」という)と、クライアント装置20側でこの関連付けを行う方法(以下、「初回設定動作2」という)とがある。以下、それぞれの方法について説明する。
【0027】
(i)初回設定動作1
初期設定動作1を採用する場合、クライアント装置20は、図8に示す機能構成のうち、決定部201を備える必要はない。配信サーバ装置10の記憶部14には、上述したユーザ情報41に加えてファクス機リスト46が記憶される。図9は、ファクス機リスト46の一例を示す図である。このファクス機リスト46には、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30を示すスプーラ情報が記述されている。図9に示すファクス機リスト46には、画像形成装置30Cを示すスプーラ情報「spoolerC」が記述されている。これは、画像形成装置30Cがファクシミリ機能を有していることを示す。なお、画像形成装置30A及び30Bはファクシミリ機能を有していないため、ファクス機リスト46には、これらの画像形成装置30を示すスプーラ情報は記述されていない。
【0028】
図10は、初回設定動作1を示すシーケンスチャートである。配信サーバ装置10は、ユーザ情報41に含まれる各ユーザIDに対して、プライマリスプーラを決定する(ステップSa1)。このプライマリスプーラとは、ユーザIDに対応する画像データの格納先となる優先順位が最も高い画像形成装置30をいう。具体的には、CPU11は、ユーザ情報41に含まれる各ユーザIDに対して、画像形成装置30A、30B及び30Cの中からランダムに選択した画像形成装置30を決定する。ここでは、ユーザID「user001」に対して画像形成装置30Aが決定された場合を想定する。この場合、CPU11は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41に、ユーザID「user001」に対応するプライマリスプーラ情報として画像形成装置30Aを示す「spoolerA」を追加する。これにより、図3に示すように、ユーザID「user001」とプライマリスプーラ情報「spoolerA」とが関連付けて記憶される。
【0029】
次に、配信サーバ装置10は、ユーザ情報41に含まれる各ユーザIDに対して、セカンダリスプーラを決定する(ステップSa2)。このセカンダリスプーラとは、ユーザIDに対応する画像データの格納先となる優先順位が2番目に高い画像形成装置30をいう。このセカンダリスプーラには、利用者に電源が切られにくい画像形成装置30が決定される。具体的には、CPU11は、記憶部14に記憶されたファクス機リスト46に基づいて、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30を特定する。図9に示すファクス機リスト46には、画像形成装置30Cを示すスプーラ情報「spoolerC」が記述されている。この場合、CPU11は、画像形成装置30Cを特定する。CPU11は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41に、各ユーザIDに対応するセカンダリスプーラ情報として画像形成装置30Cを示す「spoolerC」を追加する。これにより、図3に示すように、各ユーザIDとセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが関連付けて記憶される。
【0030】
クライアント装置20は、最初にプリント指示が行われたときに、配信サーバ装置10からスプーラ情報を取得する。図5に示すように、プリンタドライバ42には、ユーザID「user001」が設定されている。この場合、CPU21は、通信部23を制御して、このユーザIDに対応するスプーラ情報を配信サーバ装置10に要求する(ステップSa3)。配信サーバ装置10は、クライアント装置20から要求されたスプーラ情報を記憶部14から読み出して、クライアント装置20に送信する(ステップSa4)。図3に示すユーザ情報41には、ユーザID「user001」に対して、プライマリスプーラ情報「spoolerA」とセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが関連付けられている。この場合、CPU11は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41からこれらのスプーラ情報を抽出し、通信部13を制御してクライアント装置20に送信する。クライアント装置20は、配信サーバ装置10からスプーラ情報を受信すると、受信したスプーラ情報をプリンタドライバ42に設定する(ステップSa5)。これにより、プリンタドライバ42には、図5に示すように、プライマリスプーラ情報「spoolerA」とセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが設定される。
【0031】
初回設定動作1によれば、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30がセカンダリスプーラに決定される。ファクシミリ機能を有する画像形成装置30は、例えば夜間であっても利用者により電源が切断されない可能性が高い。従って、いずれの画像形成装置30にも画像データを格納することができないという状況の発生が抑制される。
【0032】
(ii)初回設定動作2
初回設定動作2を採用する場合、配信サーバ装置10は、図8に示す機能構成のうち、特定部101及び決定部102を備える必要はない。図11は、初回設定動作2を示すシーケンスチャートである。上述した通信回線2は、複数のサブネットに分割されている。クライアント装置20は、プリンタドライバ42がインストールされたときに、自装置と同一のサブネットに接続された画像形成装置30から、その画像形成装置30を示すスプーラ情報を取得する。例えば、クライアント装置20と画像形成装置30A、30B及び30Cとが同一のサブネットに接続されている場合を想定する。この場合、CPU21は、通信部23を制御して、画像形成装置30A、30B及び30Cにその画像形成装置30を示すスプーラ情報を要求する(ステップSB1)。なお、クライアント装置20は、自装置と同一のサブネットに接続された画像形成装置30を、例えば画像形成装置30に割り当てられたIPアドレスに基づいて特定する。画像形成装置30A、30B及び30Cは、この要求に応じて、それぞれ自装置を示すスプーラ情報「spoolerA」、「spoolerB」及び「spoolerC」をクライアント装置20に送信する(ステップSB2)。
【0033】
クライアント装置20は、画像形成装置30A、30B及び30Cからスプーラ情報を受信すると、受信したスプーラ情報に基づいて、プリンタドライバ42にスプーラ情報を設定する(ステップSB3)。具体的には、CPU21は、プリンタドライバ42に設定されたユーザID「user001」に対して、受信したスプーラ情報「spoolerA」、「spoolerB」及び「spoolerC」が示す画像形成装置30A、30B及び30Cの中からランダムに選択した2つの画像形成装置30を決定する。ここでは、ユーザID「user001」に対して画像形成装置30A及び30Cが決定された場合を想定する。この場合、CPU11は、プリンタドライバ42に、画像形成装置30Aを示すスプーラ情報「spoolerA」と、画像形成装置30Cを示すスプーラ情報「spoolerC」とを設定する。このとき、CPU11は、一方の画像形成装置30を示すスプーラ情報をプライマリスプーラ情報に設定し、他方の画像形成装置30を示すスプーラ情報をセカンダリスプーラ情報に設定する。ここでは、画像形成装置30Aを示すスプーラ情報「spoolerA」がプライマリスプーラ情報に設定され、画像形成装置30Cを示すスプーラ情報「spoolerC」がセカンダリスプーラ情報に設定された場合を想定する。これにより、図5に示すように、プリンタドライバ42に、プライマリスプーラ情報「spoolerA」とセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが設定される。
【0034】
クライアント装置20は、プリンタドライバ42に設定されたユーザIDとスプーラ情報とを配信サーバ装置10に送信する(ステップSB4)。具体的には、CPU21は、通信部23を制御して、ユーザID「user001」とプライマリスプーラ情報「spoolerA」及びセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とを配信サーバ装置10に送信する。
【0035】
配信サーバ装置10は、クライアント装置20からユーザIDとスプーラ情報とを受信すると、受信したユーザIDとスプーラ情報に基づいて、ユーザ情報41にスプーラ情報を追加する(ステップSB5)。具体的には、CPU11は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41に、ユーザID「user001」に対応するプライマリスプーラ情報、セカンダリスプーラ情報として、それぞれ「spoolerA」、「spoolerC」を追加する。これにより、図3に示すように、ユーザID「user001」と、プライマリスプーラ情報「spoolerA」及びセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが関連付けて記憶される。なお、図1にはクライアント装置20が1台しか示されていないが、クライアント装置20が複数ある場合には、配信サーバ装置10は、これらのクライアント装置20からユーザIDとスプーラ情報とを受信する度にこのステップSB5の処理を行う。これにより、図3に示すようなユーザ情報41が作成される。
【0036】
初回設定動作2によれば、クライアント装置20と同一のサブネットに接続された画像形成装置30を示すスプーラ情報がプリンタドライバ42に設定される。これにより、クライアント装置20と同一のサブネットに接続された画像形成装置30に画像データが記憶される。一般的に、同一サブネット内に接続された装置同士は、近くに配置されていることが多い。この場合、クライアント装置20から送信された画像データは、クライアント装置20の近くに配置された画像形成装置30に記憶される。
【0037】
(2)プリント動作
図12は、プリント動作を示すシーケンスチャートである。利用者は、クライアント装置20を操作して、プリント指示を行う。具体的には、利用者は、操作部25を用いて、画像データを指定し、プリントを指示する。ここでは、利用者により、画像データD1が指定され、プリントが指示された場合を想定する。
【0038】
プリント指示が行われると、クライアント装置20は、プリンタドライバ42に設定された情報に基づいて、画像データD1を画像形成装置30に送信する(ステップS11)。具体的には、プリンタドライバ42には、図5に示すようにユーザID「user001」と、プライマリスプーラ情報「spoolerA」及びセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが設定されている。この場合、CPU21は、まず画像データD1にこのユーザID「user001」を含む属性情報を付加する。これにより、画像データD1は、ユーザID「user001」に対応する画像データとして用いられる。また、属性情報には、このユーザIDの他に、画像データD1を識別するファイル名等の情報が含まれる。
【0039】
属性情報を付加した後、CPU21は、通信部23を制御して、プライマリスプーラ情報「spoolerA」が示す画像形成装置30Aに画像データD1を送信する。ただし、画像形成装置30Aに障害が発生していたり、クライアント装置20と画像形成装置30Aとの間の通信回線2に障害が発生したりしている場合には、画像形成装置30Aに画像データD1を送信することができない。このように、画像形成装置30Aが利用できない状況である場合、CPU21は、通信部23を制御して、セカンダリスプーラ情報「spoolerC」が示す画像形成装置30Cに画像データD1を送信する。
【0040】
すなわち、クライアント装置20は、ユーザIDに対応する画像データを、プリンタドライバ42に設定されたスプーラ情報が示す画像形成装置30のうち、利用可能であって、割り当てられた優先順位が最も高いスプーラ情報が示す画像形成装置30に送信する。この利用可能とは、画像形成装置30に画像データを格納できることをいう。画像形成装置30が利用可能か否かは、例えば画像形成装置30にエコー要求を送信し、この画像形成装置30からエコー応答が返されるか否かにより判断される。画像形成装置30及び通信回線2が正常に動作している場合には、画像形成装置30からエコー応答が返される。一方、画像形成装置30に障害が発生していたり、クライアント装置20と画像形成装置30との間の通信回線2に障害が発生したりしている場合には、画像形成装置30からエコー応答が返ってこない。指定期間内にエコー応答が返ってこない場合、クライアント装置20は、画像形成装置30が利用できない状況であると判断する。
【0041】
ここでは、画像形成装置30Aが利用可能である場合を想定する。この場合、画像データD1は、クライアント装置20から画像形成装置30Aに送信される。画像形成装置30Aは、クライアント装置20から画像データD1を受信すると、この画像データD1を記憶部33Aの格納領域37Aに記憶させる。これにより、画像形成装置30Aに画像データD1が格納される(ステップS12)。
【0042】
利用者は、プリント指示を行った後、画像形成装置30A、30B及び30Cのいずれかがある場所に移動する。例えば、利用者は、自分が普段使っている画像形成装置30がある場所に移動してもよいし、普段使っている画像形成装置30が他の利用者によって使用中である場合には、その近くにある画像形成装置30がある場所に移動してもよい。また、利用者は、自分が今いる場所から最も近い画像形成装置30がある場所に移動してもよい。つまり、利用者は、画像形成装置30A、30B及び30Cのうちいずれか1つを使用するべく、その画像形成装置30がある場所へと移動する。ここでは、利用者が、画像形成装置30Bがある場所に移動した場合を想定する。
【0043】
画像形成装置30のUI部34には認証画面が表示されており、認証を行わないと、画像形成装置30の操作を受け付けないようになっている。利用者は、画像形成装置30Bを使用すべく、自分のICカードをカード読取部36Bにかざして認証を行う。画像形成装置30Bは、カード読取部36Bを介してユーザIDが入力されると、このユーザIDを用いてユーザ認証処理を行う(ステップS13)。
【0044】
図13は、ユーザ認証処理を示すフローチャートである。ここでは、ICカードにユーザID「user001」が記憶されている場合を想定する。この場合、カード読取部36Bは、ICカードからユーザID「user001」を読み取る(ステップS131)。制御部31Bは、このユーザID「user001」が記憶部33Bに記憶されたユーザ情報41aに含まれるか否かを判断する(ステップS132)。例えば、ユーザID「user001」がユーザ情報41aに含まれていない場合(ステップS132:NO)、制御部31Bは、認証に失敗したことを示すメッセージをUI部34Bに表示させて(ステップS133)、この処理を終了する。この場合、利用者は、画像形成装置30Bを使用することはできない。一方、図7に示すように、ユーザID「user001」がユーザ情報41aに含まれている場合(ステップS132:YES)、制御部31Bは、利用者を正当な利用者として認証し(ステップS134)、次のステップS14に進む。
【0045】
画像形成装置30Bは、記憶部33Bに記憶されたユーザ情報41aに基づいて、ユーザID「user001」に対応する画像データの属性情報を取得する。具体的には、図7に示すユーザ情報41aには、ユーザID「user001」に対して、プライマリスプーラ情報「spoolerA」とセカンダリスプーラ情報「spoolerC」とが関連付けられている。この場合、制御部31Bは、通信部32Bを制御して、このプライマリスプーラ情報「spoolerA」が示す画像形成装置30Aと、セカンダリスプーラ情報「spoolerC」が示す画像形成装置30Cとに、ユーザID「user001」に対応する画像データの属性情報を要求する(ステップS14)。
【0046】
画像形成装置30A,30Cは、画像形成装置30Bから要求された属性情報を有している場合には、この属性情報を画像形成装置30Bに送信する(ステップS15)。上述したように、画像形成装置30Aの記憶部33Aには、画像データD1が格納されている。この画像データD1には、ユーザID「user001」を含む属性情報が付加されている。この場合、制御部31Aは、記憶部33Aからこの属性情報を読み出し、通信部32Aを制御して画像形成装置30Bに送信する。また、画像形成装置30Cの記憶部33Cには、ユーザID「user001」に対応する画像データD2が格納されているものとする。この画像データD2には、画像データD1と同様に、ユーザID「user001」を含む属性情報が付加されている。この場合、制御部31Cは、記憶部33Cからこの属性情報を読み出し、通信部32Cを制御して画像形成装置30Bに送信する。画像形成装置30Bは、画像形成装置30A及び30Cからこれらの属性情報を受信する。
【0047】
属性情報を取得すると、画像形成装置30Bは、この属性情報を用いて画像データリスト50を作成し、UI部34Bに表示させる(ステップS16)。図14は、画像データリスト50の一例を示す図である。この画像データリスト50には、画像形成装置30Aから取得した画像データD1の属性情報と、画像形成装置30Cから取得した画像データD2の属性情報とが並べて配置されている。また、UI部34Bには、画像データリスト50とともに、プリントの指示を受け付ける「プリント」ボタン51が表示されている。利用者は、UI部34に表示された画像データリスト50に基づいて所望の画像データを選択し、「プリント」ボタン51を押す。ここでは、画像データD1が選択され、「プリント」ボタン51が押された場合を想定する。
【0048】
「プリント」ボタン51が押されると、画像形成装置30Bは、利用者により選択された画像データD1が格納された画像形成装置30からこの画像データD1を取得する。具体的には、制御部31Bは、通信部32Bを制御して、画像データD1の属性情報の送信元である画像形成装置30Aに画像データD1を要求する(ステップS17)。画像形成装置30Aは、要求された画像データD1を記憶部33Aから読み出し、画像形成装置30Bに送信する(ステップS18)。画像形成装置30Bは、画像形成装置30Aからこの画像データD1を受信する。
【0049】
画像データD1を取得すると、画像形成装置30Bは、この画像データD1に応じたプリント処理を行う(ステップS19)。具体的には、制御部31Bは、画像データD1を画像形成部35Bに供給し、画像データD1に応じた画像を形成させる。画像形成部35Bは、制御部31Bの制御の下、画像データD1に応じた画像を媒体に形成する。
【0050】
(3)ユーザ情報の更新動作
配信サーバ装置10は、例えば利用者がどの画像形成装置30をよく使っているかに応じて、記憶部14に記憶されているユーザ情報41を更新する。図15は、ユーザ情報41の更新動作を示すシーケンスチャートである。画像形成装置30は、ユーザID毎にログ情報44を記録している。このログ情報44は、画像形成装置30における処理の履歴を示す情報である。この処理の履歴には、プリント処理の履歴だけではなく、スキャンやファクシミリなどの処理の履歴も含まれる。ログ情報44は、記憶部33に記憶される。
【0051】
図16は、ログ情報44の一例を示す図である。このログ情報44においては、処理日時と、ユーザIDと、処理種別とが関連付けられている。処理日時は、処理が行われた日時である。ユーザIDは、利用者によって入力されたものである。処理種別は、処理の種別を示す情報である。ユーザID「user001」が入力されたときに、プリント処理が行われた場合、制御部31は、このプリント処理が行われた日時「2011/9/9/10:30」と、このユーザID「user001」と、処理種別「プリント」とを関連付けてログ情報44に記録する。なお、以下の説明では、処理種別「プリント」を含む処理の履歴を「プリントログ」という。
【0052】
配信サーバ装置10は、予め決められたタイミングで、各画像形成装置30からログ情報44を取得する。具体的には、CPU11は、予め決められたタイミングになると、通信部13を制御して、画像形成装置30A、30B及び30Cにログ情報44を要求する(ステップS41)。画像形成装置30A、30B及び30Cは、この要求に応じて、それぞれ記憶部33A、33B、33Cからログ情報44を読み出し、配信サーバ装置10に送信する(ステップS42)。配信サーバ装置10は、画像形成装置30A、30B及び30Cからログ情報44を受信すると、受信したログ情報44に基づいて、記憶部14に記憶されたユーザ情報41の更新処理を行う(ステップS43)。
【0053】
図17は、ユーザ情報41の更新処理を示すフローチャートである。CPU11は、画像形成装置30A、30B及び30Cから受信したログ情報44をユーザID毎に集計して、集計情報45を作成する(ステップS431)。図18は、集計情報45の一例を示す図である。この集計情報45においては、ユーザIDと、画像形成装置30A、30B及び30Cのプリント回数とが関連付けられている。ユーザIDは、ログ情報44に含まれるものである。プリント回数は、ログ情報44に含まれるプリントログの数を算出したものである。例えば、画像形成装置30Aから図16に示すログ情報44を受信した場合を想定する。このログ情報44は、ユーザID「user001」に対応するプリントログが1個含まれている。これは、画像形成装置30Aにおいて、ユーザID「user001」に対応するプリント処理が1回行われたことを示す。この場合、CPU11は、集計情報45に、ユーザID「user001」に対応する画像形成装置30Aのプリント回数として「1回」を追加する。また、CPU11は、画像形成装置30B、30Cのプリント回数についても同様の方法で算出し、集計情報45に追加する。
【0054】
CPU11は、作成した集計情報45に基づいて、この集計情報45に含まれるユーザIDと、画像形成装置30A、30B及び30Cのうち、このユーザIDに対応するプリント回数が最も多い画像形成装置30とを特定する(ステップS432)。図18に示す集計情報45では、ユーザID「user001」に対して、画像形成装置30Aのプリント回数「1回」と、画像形成装置30Bのプリント回数「5回」と、画像形成装置30Cのプリント回数「0回」とが関連付けられている。そうすると、画像形成装置30A、30B及び30Cのうち、ユーザID「user001」に対応するプリント回数が最も多いのは、画像形成装置30Bである。この場合、CPU11は、ユーザID「user001」と画像形成装置30Bとを特定する。CPU11は、集計情報45に含まれる全てのユーザIDについて、この処理を行う。
【0055】
CPU11は、特定された画像形成装置30を示すスプーラ情報と特定されたユーザIDとが関連付けて記憶されるように、記憶部14に記憶されたユーザ情報41を更新する(ステップS433)。図19は、更新後のユーザ情報41の一例を示す図である。具体的には、配信サーバ装置10は、図3に示すユーザ情報41において、ユーザID「user001」に関連付けられたプライマリスプーラ情報「splooerA」とセカンダリスプーラ情報「splooerC」の優先順位を一つずつ下げる。これにより、図19に示すように、プライマリ情報「splooerA」の優先順位が「1」から「2」に変更され、セカンダリスプーラ情報「splooerC」の優先順位が「2」から「3」に変更される。また、CPU11は、特定した画像形成装置30Bを示すスプーラ情報「spoolerB」を、ユーザID「user001」のプライマリスプーラ情報として記憶させる。これにより、図19に示すように、ユーザID「user001」とプライマリスプーラ情報「spoolerB」とが関連付けて記憶される。
【0056】
(4)ユーザ情報の配信動作
配信サーバ装置10は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41と、画像形成装置30に記憶されたユーザ情報41aとを同期させるために、最新のユーザ情報41に対応するユーザ情報41aを画像形成装置30に配信する。具体的には、CPU11は、予め決められたタイミング(例えば、毎日深夜に1回)になると、記憶部14からユーザ情報41を読み出す。CPU11は、このユーザ情報41からユーザIDと、プライマリスプーラ情報及びセカンダリスプーラ情報とを抽出して、ユーザ情報41aを作成する。なお、優先順位「3」が割り当てられたスプーラ情報は、ユーザ情報41aには含まれない。CPU11は、通信部13を制御して、作成したユーザ情報41aを画像形成装置30A、30B及び30Cに送信する。画像形成装置30A、30B及び30Cは、配信サーバ装置10からユーザ情報41aを受信すると、このユーザ情報41aをそれぞれ記憶部33A、33B及び33Cに記憶させる。これにより、画像形成装置30A、30B及び30Cに記憶されたユーザ情報41aが更新される。
【0057】
(5)プリンタドライバの更新動作
プリンタドライバ42に設定されたスプーラ情報は、配信サーバ装置10に記憶されたユーザ情報41と同期させるために定期的に更新される。この更新には、大きく分けてプル型の方法と、プッシュ型の方法とがある。以下、それぞれの方法について説明する。
【0058】
(i)プル型
図20は、プル型の更新動作を示すシーケンスチャートである。プリンタドライバ42には、予め更新タイミングが設定されている。この更新タイミングは、例えば毎日最初にプリント指示が行われたときである。クライアント装置20は、この更新タイミングになると、配信サーバ装置10から最新のスプーラ情報を取得する。具体的には、CPU21は、通信部23を制御して、プリンタドライバ42に設定されたユーザIDに対応するスプーラ情報を配信サーバ装置10に要求する(ステップSA51)。配信サーバ装置10は、クライアント装置20から要求されたスプーラ情報を記憶部14から読み出し、クライアント装置20に送信する(ステップSA52)。図19に示すユーザ情報41では、ユーザID「user001」に対して、プライマリスプーラ情報「splooerB」とセカンダリスプーラ情報「splooerA」とが関連付けられている。この場合、CPU11は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41からこれらのスプーラ情報を抽出し、通信部13を制御してクライアント装置20に送信する。なお、優先順位「3」が割り当てられたスプーラ情報「spoolerC」はクライアント装置20には送信されない。
【0059】
クライアント装置20は、配信サーバ装置10からプライマリスプーラ情報「splooerB」及びセカンダリスプーラ情報「splooerA」を受信すると、受信したスプーラ情報に基づいて、プリンタドライバ42に設定されたスプーラ情報を更新する(ステップSA53)。これにより、プリンタドライバ42には、図5に示すプライマリスプーラ情報「splooerA」とセカンダリスプーラ情報「splooerC」とに代えて、プライマリスプーラ情報「splooerB」とセカンダリスプーラ情報「splooerA」とが設定される。
【0060】
(ii)プッシュ型
図21は、プッシュ型の更新動作を示すシーケンスチャートである。配信サーバ装置10には、予め更新タイミングが設定されている。この更新タイミングは、例えば15分に1回である。配信サーバ装置10は、更新タイミングになると、クライアント装置20に対し、プリンタドライバ42に設定されているユーザIDを問い合わせる(ステップSB51)。図5に示すように、プリンタドライバ42には、ユーザID「user001」が設定されている。この場合、クライアント装置20は、このユーザIDをサーバ装置に返す(ステップSB52)。
【0061】
配信サーバ装置10は、クライアント装置20からユーザIDを受信すると、このユーザIDに対応するスプーラ情報を記憶部14から読み出して、クライアント装置20に送信する(ステップSB53)。図19に示すユーザ情報41では、ユーザID「user001」に対して、プライマリスプーラ情報「splooerB」とセカンダリスプーラ情報「splooerA」とが関連付けられている。この場合、CPU11は、記憶部14に記憶されたユーザ情報41からこれらのスプーラ情報を抽出し、通信部13を制御してクライアント装置20に送信する。なお、優先順位「3」が割り当てられたスプーラ情報「spoolerC」はクライアント装置20には送信されない。
【0062】
クライアント装置20は、配信サーバ装置10からプライマリスプーラ情報「splooerB」及びセカンダリスプーラ情報「splooerA」を受信すると、受信したスプーラ情報に基づいて、プリンタドライバ42に設定されたスプーラ情報を更新する(ステップSB54)。これにより、プリンタドライバ42には、図5に示すプライマリスプーラ情報「splooerA」とセカンダリスプーラ情報「splooerC」とに代えて、プライマリスプーラ情報「splooerB」とセカンダリスプーラ情報「splooerA」とが設定される。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、ユーザIDと、このユーザIDに対応する画像データが記憶される画像形成装置30を示すスプーラ情報とを関連付ける作業の手間が省かれる。また、配信サーバ装置10に記憶されたユーザ情報41の更新に応じて、クライアント装置20のプリンタドライバ42に設定されたスプーラ情報が更新される。従って、更新後のユーザ情報41に応じた画像形成装置30に画像データが記憶される。
【0064】
3.変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されず、以下のように変形してもよい。また、以下の変形例を相互に組み合わせてもよい。
【0065】
(1)変形例1
上述した初回設定動作1において、配信サーバ装置10は、ファクス機リスト46を用いてファクシミリ機能を有する画像形成装置30を特定していた。しかし、配信サーバ装置10は、このファクス機リスト46を用いずに、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30を特定してもよい。ファクス機リスト46を用いない方法としては、例えば以下のような方法がある。
【0066】
(i)方法1
各画像形成装置30の記憶部33には、その画像形成装置30の有する機能を示す機能情報が記憶されている。この機能情報には、画像形成装置30がファクシミリ機能を有しているか否かを示す情報が含まれている。クライアント装置20は、画像形成装置30A、30B及び30Cから、その画像形成装置30の記憶部33に記憶されている機能情報を取得する。配信サーバ装置10は、画像形成装置30から受信した機能情報に基づいて、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30を特定する。
【0067】
(ii)方法2
各画像形成装置30の記憶部33には、その画像形成装置30が行った処理の履歴を示すログ情報44が記憶されている。このログ情報には、画像形成装置30がファクス処理を行った履歴を示す情報(以下、「ファクスログ」という)が含まれている。配信サーバ装置10は、画像形成装置30A、30B及び30Cから、その画像形成装置30の記憶部33に記憶されているログ情報44を取得する。配信サーバ装置10は、これらの画像形成装置30から取得したログ情報44に基づいて、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30を特定する。具体的には、CPU21は、画像形成装置30から受信したログ情報44にファクスログが含まれている場合には、その画像形成装置30をファクシミリ機能を有する画像形成装置30として特定する。
【0068】
(2)変形例2
上述した初回設定動作1では、利用者に電源が切られにくい画像形成装置30として、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30が特定されていた。しかし、利用者に電源が切られにくい画像形成装置30は、ファクシミリ機能を有する画像形成装置30に限定されない。例えば、通電時間が長い画像形成装置30が、利用者に電源が切られにくい画像形成装置30として特定されてもよい。
【0069】
図22は、変形例2に係る画像形成装置30のハードウェア構成を示す図である。この画像形成装置30は、図6に示す画像形成装置30のハードウェア構成に加えて、タイマー38を備えている。タイマー38は、画像形成装置30の通電時間を計測する。この通電時間とは、画像形成装置30の電源が投入されてから経過した時間である。つまり、変形例2では、タイマー38は計測部として用いられる。配信サーバ装置10は、画像形成装置30A、30B及び30Cから、タイマー38A、38B及び38Cによって計測された通電時間を取得する。配信サーバ装置10は、これらの画像形成装置30から取得した通電時間に基づいて、画像形成装置30A、30B及び30Cのうち、通電時間が最も長い画像形成装置30を特定する。配信サーバ装置10は、特定した画像形成装置30をセカンダリスプーラに決定する。
【0070】
(3)変形例3
上述した初回設定動作2において、クライアント装置20は、自装置と同一のサブネットに接続された画像形成装置30の中から、利用者によって選択された画像形成装置30を決定してもよい。具体的には、CPU21は、自装置と同一のサブネットに接続された画像形成装置30A、30B及び30Cからスプーラ情報を取得すると、取得したスプーラ情報を表示部26に表示させる。このスプーラ情報には、画像形成装置30A、30B及び30Cの装置名や機種名など、利用者が画像形成装置30を識別し得るような情報が含まれていてもよい。利用者は、操作部25を用いて、表示部26に表示されたスプーラ情報に基づいて、所望のプライマリスプーラ及びセカンダリスプーラを選択する。ここでは、利用者が、プライマリスプーラとして画像形成装置30Aを選択し、セカンダリスプーラとして画像形成装置30Cを選択した場合を想定する。この場合、CPU21は、画像形成装置30Aを示すスプーラ情報「spoolerA」をプライマリスプーラ情報に設定し、画像形成装置30Cを示すスプーラ情報「spoolerC」をセカンダリスプーラ情報に設定する。
【0071】
(4)変形例4
上述した初回設定動作2において、クライアント装置20は、プライマリスプーラ情報だけを設定してもよい。この場合、配信サーバ装置10は、利用者に電源が切られにくい画像形成装置30を特定し、特定した画像形成装置30を示すスプーラ情報をセカンダリスプーラ情報に設定する。この利用者に電源が切られにくい画像形成装置30を特定する方法は、実施形態で説明した方法であってもよいし、変形例1又は2で説明した方法であってもよい。
【0072】
(5)変形例5
上述した初回設定動作が行われるタイミングは、実施形態で説明したものに限らない。例えば、初回設定動作1において、クライアント装置20は、プリンタドライバ42がインストールされたときに、上述したステップSa1の処理を開始してもよい。また、初回設定動作2において、クライアント装置20は、最初にプリント指示が行われたときに、上述したステップSB1の処理を開始してもよい。
【0073】
(6)変形例6
プリンタドライバ42に設定される更新タイミングは、毎日最初にプリント指示が行われたときに限らない。例えば、前回更新が行われた時(又は、初回設定動作が行われた時)から指定期間経過した後にプリント指示が行われたときであってもよい。あるいは、更新タイミングは、プリント指示が行われたときであってもよい。この場合、プリント指示が行われる度に、プリンタドライバ42の更新動作が行われることになる。
【0074】
(7)変形例7
ユーザ情報41の更新動作は、実施形態で説明したものに限定されない。例えば、利用者がどの画像形成装置30をよく使っているかを画像形成装置30側で判断してもよい。また、ログ情報44に代えて認証回数を用いて、利用者がよく使っている画像形成装置30を特定してもよい。図23は、変形例7に係るユーザ情報41の更新動作を示すシーケンスチャートである。画像形成装置30は、ユーザID毎に認証回数を記録している。具体的には、制御部31は、ユーザID毎に、このユーザIDを用いてユーザ認証処理が行われた認証回数をカウントする。ただし、制御部31は、記憶部33に記憶されたユーザ情報41aにおいて、自装置を示すスプーラ情報と関連付けられたユーザIDについては、認証回数をカウントしない。
【0075】
例えば、画像形成装置30BにおいてユーザID「user001」を用いてユーザ認証処理が行われた場合、制御部31Bは、このユーザID「user001」に対応する認証回数を1増やす。制御部31は、カウントした認証回数を記録情報43に記録する。この記録情報43は、記憶部33に記憶される。図24は、画像形成装置30Bに記憶された記録情報43の一例を示す図である。この記録情報43では、ユーザID「user001」に対応する認証回数として「5回」が記録されている。これは、画像形成装置30Bにおいて、ユーザID「user001」を用いてユーザ認証処理が「5回」行われたことを示している。この認証回数は、例えば1日1回リセットされる。あるいは、認証回数は、何日かに1回リセットされてもよい。この場合、認証回数は、日をまたいでカウントされることになる。
【0076】
画像形成装置30は、記録情報43に記録された認証回数が閾値に達した場合には、この認証回数に対応するユーザIDと自装置とを特定し、このユーザIDと自装置を示すスプーラ情報とを配信サーバ装置10に通知する。具体的には、制御部31は、記録情報43に含まれる認証回数が閾値に達したか否かを判断する(ステップS21)。ここでは、閾値として「5回」が定められている場合を想定する。
【0077】
記録情報43に含まれる認証回数がいずれも閾値に達していない場合(ステップS21:NO)、制御部31BはステップS21に戻る。一方、図24に示す記録情報43では、ユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値の「5回」に達している(ステップS21:YES)。この場合、制御部31Bは、このユーザID「user001」と画像形成装置30Bとを特定する(ステップS22)。制御部31Bは、通信部32Bを制御して、このユーザID「user001」と自装置を示すスプーラ情報「spoolerB」とを含む更新情報を配信サーバ装置10に送信する(ステップS23)。これにより、画像形成装置30Bにおいて特定されたユーザIDと画像形成装置30Bを示すスプーラ情報とが配信サーバ装置10に通知される。
【0078】
配信サーバ装置10は、画像形成装置30から更新情報を受信すると、予め決められたタイミング(例えば、毎日深夜に1回)で、記憶部14に記憶されたユーザ情報41を更新する(ステップS24)。具体的には、CPU11は、図19に示すように、ユーザID「user001」に関連付けられたプライマリスプーラ情報「splooerA」とセカンダリスプーラ情報「splooerC」の優先順位を一つずつ下げる。また、CPU11は、画像形成装置30Bから受信したスプーラ情報「spoolerB」を、ユーザID「user001」のプライマリスプーラ情報として記憶させる。なお、画像形成装置30から同一のユーザIDを含む複数の更新情報を受信した場合、配信サーバ装置10は、最後に受信した更新情報に基づいて、このステップS24の処理を行う。
【0079】
(8)変形例8
ユーザ情報41の更新動作は、実施形態及び変形例7で説明したものに限定されない。上述した変形例7では、例えば画像形成装置30Bにおいて、ユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値に達すると、配信サーバ装置10に記憶されたユーザ情報41が更新され、図19に示すように画像形成装置30Bを示すスプーラ情報「spoolerB」が、ユーザID「user001」のプライマリスプーラ情報として記憶される。ところで、利用者は、画像形成装置30Bの他に、図3に示す更新前のユーザ情報41においてユーザID「user001」に関連付けられたプライマリスプーラ情報「spoolerA」が示す画像形成装置30Aもよく使用している場合がある。この場合、ユーザ情報41の更新が行われると、却って不便になることがある。そこで、画像形成システム1は、このような場合にユーザ情報41の更新が行われないようにする仕組みを有していてもよい。
【0080】
図25は、変形例8に係るユーザ情報41の更新動作を示すシーケンスチャートである。画像形成装置30は、上述した変形例7と同様に、ユーザID毎に認証回数を記録している。ただし、この変形例8では、画像形成装置30は、ユーザ情報41aにおいて自装置を示すスプーラ情報と関連付けられたユーザIDについても、認証回数のカウントを行う。画像形成装置30は、上述したステップS21及び22と同様に、記録情報43に記録された認証回数が閾値に達した場合には、この認証回数に対応するユーザIDと自装置とを特定する(ステップS31,32)。ここでは、画像形成装置30Bにおいて、ユーザID「user001」と画像形成装置30Bとが特定された場合を想定する。
【0081】
この場合、画像形成装置30Bは、記憶部33Bに記憶されたユーザ情報41aにおいて、ユーザID「user001」に関連付けられたスプーラ情報が示す他の画像形成装置30に、他の画像形成装置30におけるこのユーザIDに対応する認証回数が閾値に達しているか否かを問い合わせる(ステップS33)。具体的には、図7に示すユーザ情報41aには、ユーザID「user001」に対してプライマリスプーラ情報「spoolerA」が関連付けられている。この場合、制御部31Bは、通信部32Bを制御して、このプライマリスプーラ情報が示す画像形成装置30Aに、画像形成装置30AにおけるユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値に達しているか否かを問い合わせる。
【0082】
画像形成装置30Aは、記録情報43に記録された認証回数に基づき、画像形成装置30Bから問い合わせられた認証回数が閾値以上であるか否かを応答する(ステップS34)。具体的には、制御部31Aは、記憶部33Aに記憶された記録情報43において、ユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値以上であるか否かを判断する。ユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値以上である場合、制御部31Aは、通信部32Aを制御して、認証回数が閾値以上であることを示す応答情報を画像形成装置30Bに送信する。一方、ユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値未満である場合、制御部31Aは、通信部32Aを制御して、認証回数が閾値未満であることを示す応答情報を画像形成装置30Bに送信する。
【0083】
画像形成装置30Bは、画像形成装置30AからユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値未満であることを示す応答があった場合には(ステップS35:閾値未満)、上述したステップS23と同様に、このユーザID「user001」と自装置のスプーラ情報「spoolerB」とを含む更新情報を配信サーバ装置10に送信する(ステップS36)。これにより、画像形成装置30Bを示すスプーラ情報「spoolerB」とユーザID「user001」とが配信サーバ装置10に通知される。配信サーバ装置10は、画像形成装置30Bから更新情報を受信すると、上述したステップS24と同様に、記憶部14に記憶されたユーザ情報41を更新する(ステップS37)。
【0084】
一方、画像形成装置30Bは、画像形成装置30AからユーザID「user001」に対応する認証回数が閾値以上であることを示す応答があった場合には(ステップS35:閾値以上)、更新情報を送信せずにこの処理を終了する。つまり、画像形成装置30Bは、画像形成装置30Aから認証回数が閾値以上であることを示す応答があった場合には、スプーラ情報とユーザIDの通知を行わない。この場合、配信サーバ装置10においてユーザ情報41の更新は行われない。
【0085】
(9)変形例9
上述した変形例7又は変形例8において、画像形成装置30は、認証回数に代えてプリントログを用いて、ユーザIDに対応するプリント回数が閾値に達したか否かを判断してもよい。この場合、画像形成装置30は、実施形態で説明したように、ユーザID毎にログ情報44を記録する。画像形成装置30は、上述したステップS431と同様に、このログ情報44をユーザID毎に集計して、集計情報45を作成する。画像形成装置30は、作成した集計情報45に含まれるプリント回数が閾値に達した場合、上述したステップS22又はS32に進む。
【0086】
画像形成装置30は、プリント機能の他に、スキャナやファクシミリなどの複数の機能を有している。この場合、利用者は、プリント処理以外の処理を行うために、画像形成装置30を使用する場合がある。そうすると、認証回数が多い画像形成装置30が、必ずしも利用者がプリント処理をする際に使用する頻度が高い画像形成装置30であるとは限らない。この変形例9では、認証回数に代えて、プリントログが用いられている。従って、変形例9によれば、ユーザIDに対応するプリント処理が行われた頻度が高い画像形成装置30に、そのユーザIDに対応する画像データが格納されるようになる。
【0087】
(10)変形例10
上述した実施形態において、配信サーバ装置10は、プリントログに代えて認証回数を用いて、認証回数が最も多い画像形成装置30を特定してもよい。この場合、画像形成装置30は、上述した変形例8で説明したように、ユーザID毎に認証履歴を記録する。配信サーバ装置10は、上述したステップS41及びS42において、画像形成装置30A、30B及び30Cから認証履歴を取得する。配信サーバ装置10は、上述したステップS43において、画像形成装置30A、30B及び30Cから取得した認証履歴に基づいて、各画像形成装置30においてユーザIDを用いて行われた認証回数を算出し、ユーザIDと、画像形成装置30A、30B及び30CのうちこのユーザIDに対応する認証回数が最も多い画像形成装置30を特定する。そして、配信サーバ装置10は、上述したステップS433と同様に、特定した画像形成装置30とユーザIDとに基づいて、記憶部14に記憶されたユーザ情報41を更新する。この変形例10では、ログ情報44を用いていないため、画像形成装置30においてログ情報44を記録する必要がない。
【0088】
(11)変形例11
上述した配信サーバ装置10に代えて、画像形成装置30のいずれかがこの配信サーバ装置10の役割を担ってもよい。配信サーバ装置10の役割を担う画像形成装置30は、予め決められている。以下の説明では、この画像形成装置30を「マスタ装置」という。この場合、マスタ装置の記憶部33には、配信サーバ装置10と同様に、ユーザ情報41が記憶されている。マスタ装置は、配信サーバ装置10と同様に、上述した初回設定動作、ユーザ情報の更新動作、ユーザ情報の配信動作、プリンタドライバの更新動作を行う。例えば、実施形態に係るユーザ情報41の更新動作を行う場合、マスタ装置は、他の画像形成装置30からログ情報44を取得する。そして、マスタ装置は、記憶部33に記憶されているログ情報44と、他の画像形成装置30から取得したログ情報44とに基づいて、画像形成装置30A、30B及び30Cのうちプリント回数が最も多い画像形成装置30を特定する。
【0089】
マスタ装置は、サブネット毎に設けられていてもよい。この場合、マスタ装置は、他の画像形成装置30にユーザ情報41aを配信するときに、同一サブネット内に設けられた他の画像形成装置30だけにユーザ情報41aを配信してもよい。また、マスタ装置は、動的に変更されてもよい。例えば、各画像形成装置30には、マスタ装置に関する優先順位が設定されている。通常は、この優先順位が最も高い画像形成装置30がマスタ装置となる。ただし、例えば電源が切られた場合など、優先順位が高い画像形成装置30が利用できない状況になった場合には、次に優先順位が高い画像形成装置30がマスタ装置となる。画像形成装置30の状況は、例えば上述したエコー要求を定期的に互いに送信することにより確認する。
【0090】
(12)変形例12
上述したユーザ認証処理は、画像形成装置30において行われていた。しかし、ユーザ認証処理は、配信サーバ装置10側で行われてもよい。この場合、画像形成装置30は、配信サーバ装置10にユーザ認証処理を依頼する。具体的には、制御部31は、通信部32を制御して、利用者によって入力されたユーザIDを配信サーバ装置10に送信する。配信サーバ装置10は、画像形成装置30からの依頼に応じて、上述したステップS132と同様の処理を行い、認証に成功したか否かを応答する。画像形成装置30は、配信サーバ装置10から認証に失敗したことを示す応答があった場合には、上述したステップS133に進む。一方、画像形成装置30は、配信サーバ装置10から認証に成功したことを示す応答があった場合には、上述したステップS14に進む。
【0091】
上述した変形例11のように、マスタ装置が配信サーバ装置10の役割を担う場合には、ユーザ認証処理がマスタ装置側で行われてもよい。この場合、マスタ装置以外の画像形成装置30が、マスタ装置にユーザ認証処理を依頼する。マスタ装置は、この依頼に応じてユーザ認証処理を行い、認証に成功したか否かを応答する。
【0092】
(13)変形例13
クライアント装置20から画像データを送信するときに、プライマリスプーラ情報が示す画像形成装置30もセカンダリスプーラ情報が示す画像形成装置30も利用できない場合がある。この場合、クライアント装置20は、プリンタドライバ42に設定されたユーザIDに対応するプライマリスプーラ情報及びセカンダリスプーラ情報以外のスプーラ情報を配信サーバ装置10から取得し、このスプーラ情報が示す画像形成装置30に画像データを送信してもよい。
【0093】
(14)変形例14
画像形成装置30に記憶されるユーザ情報41aには、プライマリスプーラ情報とセカンダリスプーラ情報とが含まれていた。しかし、ユーザ情報41aに含まれるスプーラ情報の数は、2個に限定されない。例えば、1個のスプーラ情報だけが含まれていてもよいし、3個以上のスプーラ情報が含まれていてもよい。ユーザ情報41aに含まれるスプーラ情報の数は、予め定められている。つまり、ユーザ情報41aには、優先順位に従って選択される予め定められた数のスプーラ情報が含まれる。あるいは、ユーザ情報41aには、配信サーバ装置10に記憶されたユーザ情報41において、ユーザIDに関連付けられた全てのスプーラ情報が含まれていてもよい。
【0094】
(15)変形例15
上述したユーザ情報の配信動作では、前回配信されたユーザ情報41aとの差分だけが配信されてもよい。この場合、画像形成装置30は、配信サーバ装置10から受信した差分のユーザ情報41aのみ更新する。
【0095】
(16)変形例16
上述したユーザIDは、利用者を識別する利用者情報の一例である。この利用者情報は、ユーザIDに限定されない。例えば、利用者情報は、利用者に渡されるICカードに割り当てられたカードIDであってもよいし、利用者に割り当てられたメールアドレスであってもよい。また、上述したように、ICカードは利用者一人ひとりに渡されるようになっているため、ICカードに割り当てられたカードIDが利用者情報として用いられてもよい。
【0096】
(17)変形例17
ユーザ認証処理は、ICカードを使用せずに行われてもよい。例えば、利用者が、画像形成装置30のUI部34を用いて、自分のユーザIDを入力してもよい。この場合、UI部34が、利用者により入力された利用者情報を受け付ける受付部として用いられる。また、ユーザIDに代えて、指紋などの生体情報が用いられてもよい。この場合、画像形成装置30には、この生体情報を読み取る装置が設けられる。この場合、この装置が、利用者により入力された利用者情報を受け付ける受付部として用いられる。
【0097】
(18)変形例18
ユーザ認証処理は、ユーザIDとパスワードとを用いて行われてもよい。この場合、ユーザ情報41では、ユーザIDとパスワードとが関連付けられる。利用者は、ユーザ認証処理を行うときに、例えばUI部34を用いてパスワードを入力する。
【0098】
(19)変形例19
上述したプリント動作では、画像データリスト50を表示した後に、利用者により選択された画像データを取得していた。しかし、この画像データリスト50の表示は必ずしも行われなくてもよい。例えば、上述したステップS13のユーザ認証処理の後、属性情報の取得を行わずに、画像データの取得を行ってもよい。この場合、画像形成装置30は、ユーザ情報41aにおいて、入力されたユーザIDに関連付けられたプライマリスプーラ情報が示す画像形成装置30と、セカンダリスプーラ情報が示す画像形成装置30の両方に、そのユーザIDに対応する画像データを要求する。この場合、利用者は、画像データを選択する必要はない。
【0099】
(20)変形例20
画像形成システム1の構成は、図1に示す構成に限らない。例えば、利用者の人数に応じて、画像形成装置30の数を増やしてもよい。また、クライアント装置20は、利用者の人数分設けられてもよい。
【0100】
(21)変形例21
画像形成部35は、電子写真方式以外の方式で画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成部35は、白黒の画像を形成するものであってもよいし、カラーの画像を形成するものであってもよい。UI部34は、表示部として用いられるタッチパネルを備えていたが、タッチパネルに代えて液晶ディスプレイなどの表示装置を備えていてもよい。
【0101】
(22)変形例22
CPU11、CPU21又は制御部31のCPUにおいて実行されるプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、メモリなどの記録媒体に記録した状態で提供され、配信サーバ装置10、クライアント装置20又は画像形成装置30にインストールされてもよい。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線を介して配信サーバ装置10、クライアント装置20又は画像形成装置30にダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…画像形成システム、2…通信回線、10…配信サーバ装置、11…CPU、12…メモリ、13…通信部、14…記憶部、20…クライアント装置、21…CPU、22…メモリ、23…通信部、24…記憶部、30…画像形成装置、31…制御部、32…通信部、33…記憶部、34…UI部、35…画像形成部、36…カード読取部、101…特定部、102…決定部、103…更新部、201…決定部、202…送信部、203…第2の取得部、301…受付部、302…第1の取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像形成装置と、
予め決められた利用者を識別する利用者情報に対して、前記複数の画像形成装置の中から当該利用者情報に対応する画像データが記憶される画像形成装置を決定する決定部と、
前記利用者情報と、前記決定部により決定された前記画像形成装置を示す装置情報とを関連付けて記憶する第1の記憶部と、
前記利用者情報が予め設定された送信装置と、
前記送信装置に備えられ、前記予め設定された利用者情報に対応する画像データを、当該利用者情報に対して前記決定部により決定された画像形成装置に送信する送信部と、
各々の前記画像形成装置に備えられ、前記送信部により送信された前記画像データを記憶する第2の記憶部と、
各々の前記画像形成装置に備えられ、前記利用者情報の入力を受け付ける受付部と、
各々の前記画像形成装置に備えられ、前記入力された利用者情報と対応付けて前記第1の記憶部に記憶された前記装置情報が示す画像形成装置から、当該利用者情報に対応する画像データを取得する第1の取得部と、
各々の前記画像形成装置に備えられ、前記第1の取得部により取得された前記画像データに応じた画像を形成する画像形成部と
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記決定部は、複数の画像形成装置を決定し、当該複数の画像形成装置には、電源が切られにくい画像形成装置として予め決められた画像形成装置が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記複数の画像形成装置は、ファクシミリ機能を有する画像形成装置を含み、
前記ファクシミリ機能を有する画像形成装置を特定する特定部を備え、
前記決定部は、前記複数の画像形成装置を決定するときに、前記特定部により特定された前記画像形成装置を当該複数の画像形成装置に含める
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
各々の前記画像形成装置に備えられ、自装置の通電時間を計測する計測部と、
前記複数の画像形成装置のうち前記計測部により計測された通電時間が最も長い画像形成装置を特定する特定部とを備え、
前記決定部は、前記複数の画像形成装置を決定するときに、前記特定部により特定された前記画像形成装置を当該複数の画像形成装置に含める
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記送信装置と前記複数の画像形成装置とは、通信回線を介して接続されており、
前記通信回線は、複数のサブネットに分割されており、
前記決定部は、前記送信装置が1の前記サブネットに接続されている場合、当該1のサブネットに接続されている画像形成装置を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記第1の記憶部に記憶された前記装置情報を更新する更新部と、
前記送信装置に備えられ、予め決められたタイミングで、前記予め設定された利用者情報と関連付けて前記第1の記憶部に記憶された装置情報を取得する第2の取得部とを備え、
前記送信部は、前記第2の取得部により前記装置情報が取得されると、前記予め設定された利用者情報に対応する画像データを、当該装置情報が示す画像形成装置に送信する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−97768(P2013−97768A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243318(P2011−243318)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】