画像形成体及びその作製方法
【課題】 本発明は、偽造防止、真偽判別及び複写防止が必要とされる貴重品に適用する画像形成体及びその作製方法に関するものである。
【解決手段】 基材に凹部の線により潜像画像が形成され、基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体において、潜像画像はN個(Nは3以上)の領域に区分けされ、N個に区分けされた各領域は、凹部の第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線(nは3以上)に振り分けられ、第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線は、万線ごとに万線の配列方向の相違、万線の線幅の相違、万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せから成ることを特徴とする画像形成体である。
【解決手段】 基材に凹部の線により潜像画像が形成され、基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体において、潜像画像はN個(Nは3以上)の領域に区分けされ、N個に区分けされた各領域は、凹部の第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線(nは3以上)に振り分けられ、第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線は、万線ごとに万線の配列方向の相違、万線の線幅の相違、万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せから成ることを特徴とする画像形成体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、商品タグ又はブランドプロテクション等の偽造防止、真偽判別及び複写防止が必要とされる貴重品に適用する画像形成体及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、商品タグ又はブランドプロテクション等の貴重品は、その性質上、偽造及び変造されにくいことが要求される。この防止策として、これらの貴重品を傾けて観察することにより潜像画像を認識できるようにして真偽判別を行う技術が知られている。例えば、凹部の線を利用する技術が挙げられる。
【0003】
この凹部の線を利用し、潜像画像を出現させる技術としては、基材の表面に、文字や数字等の潜像パターン及び/又はそのパターンの周囲部が、ピッチ幅0.2〜1mmの圧印加工による万線状凹凸で形成されていて、その潜像パターンの周囲部に、その潜像パターンを形成する万線状凹凸と略直角の万線状凹凸が施されている有価証券類が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、パスポート等のラミネートフィルムに、レーザを用いた万線状の凹部から成る潜像部及び背景部を形成し、潜像部と背景部の万線は位相がずれているか、又は異なる角度で形成されたラミネートフィルムで保護された貴重印刷物及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−154262公報(第1−4頁、第1、2図)
【特許文献2】特許第3514291号(第7頁、第4、5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2は、いずれにおいても出現する潜像画像が連続階調を有するものではく、潜像画像として複雑なデザインが採用しにくい問題があった。さらに凹部の線の配列構成が単純であったため偽造されるおそれがあった。また、基材に対して真上から観察した場合においても潜像が見えてしまう欠点があった。さらに、万線を縦方向と横方向とで構成しているため、偽造が容易にできるという課題があった。
【0007】
特許文献1は、基材にエンボスにより万線状の凹凸を施しているので、エンボス用の版面を作製するための装置とノウハウを要し、さらには基材にエンボス版面を押圧する装置が必要となることから、設備に多大な費用を要し、また、作製するに前準備を含め多くの時間が掛かった。
【0008】
特許文献2は、基材を紙ではなくフィルムに限定しているが、フィルムは光の反射性が高く、かつ、フィルム表面と万線状の溝との光反射性が異なることから、フィルムの真上から観察した場合でも潜像が視認しやすく、フィルムを剥がして再利用する改ざんに対しての効果は高いが、潜像としての効果は低かった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決することを目的としたもので、基材のみで得られる偽造防止技術であり、凹部の線の配列構成が単純ではなく、出現する潜像画像は連続階調を有し、複雑なデザインが採用可能な画像形成体及びその作製方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材に凹部の線により潜像画像が形成され、基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体において、潜像画像はN個(Nは3以上)の領域に区分けされ、N個に区分けされた各領域は、凹部の第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線(nは3以上)に振り分けられ、第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線は、万線ごとに万線の配列方向の相違、万線の線幅の相違、万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せから成ることを特徴とする画像形成体である。
【0011】
また、本発明の画像形成体は、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、基材に凹部の線により潜像画像が形成され、基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体の作製方法において、潜像画像の原画像となる濃度値が定義された画素の集合体である潜像画像データを取得する工程と、取得された潜像画像データを、各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブルを基に、潜像画像データの濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、さらに、線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データを生成する工程と、基材の表面に万線潜像画像データを基に凹部の線により潜像画像を形成する工程から成る画像形成体の作製方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成体は、出現する潜像画像が階調表現に優れるとともに精彩な画像として表現することができる。連続階調を有する複雑なデザインが採用可能であるためデザインの制限を受けることがない。
【0014】
本発明の画像形成体は、基材にレーザ加工機等の特殊な機械で、複雑な配列方向を有する凹部の線で潜像画像を形成するため、偽造防止効果に優れる。
【0015】
また、本発明の画像形成体は、垂直方向から水平方向に傾けて観察した場合に、潜像画像が確認でき、潜像画像は観察方向によってポジの潜像画像又はネガの潜像画像として確認できるため、潜像画像の出現の有無及びネガポジの変化の有無によって真偽判別が可能となる。よって、判別具及び特別な真偽判別装置等を用いることなく、誰でもその場で上記効果が得られるか否かによって真偽判別することができる。
【0016】
本発明の画像形成体を形成する凹部の線は、レーザで作製可能なため、貴重品に個々に異なった情報(可変情報)を形成することができる。
【0017】
以上のことから、本発明の画像形成体は、真偽判別効果が高く、微細な形状で形成するため複製防止効果を有し、銀行券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、商品タグ又はブランドプロテクション等に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0019】
(画像形成体)
本発明の構成である所定幅Wを有する凹部の線について図1を用いて説明する。図1に示すように、所定幅Wを有する凹部の線5は、基材1の表面のベースの高さより低く形成される。所定幅Wとは、基材1の表面に形成される幅のことであり、深さ方向の幅ではない。所定幅Wを有する凹部の線5の断面形状は、図1(a)に示すような三角形状、図1(b)に示すような台形状、図1(c)に示すような四角形状、図1(d)に示すような蒲鉾状、図1(e)に示すような直角三角形状等が挙げられる。ただし、本発明の構成である凹部の線5の断面形状は、図1(a)乃至図(e)に限定されることがなく、例えば、図1(a)乃至図1(e)を組み合わせ又はその他の断面形状で形成することもできる。
【0020】
図2はモチーフ(原画像)となる潜像画像2を形成するパーツごと及び/又は潜像画像2を形成する色彩の明度ごとに13個の領域3に分割された図である。本発明の画像形成体は、13個の領域3に分割された各領域に基材を非貫通である凹部の第1の万線、第2の万線、第3の万線又は第4の万線に振り分けられ、第1の万線、第2の万線、第3の万線及び第4の万線は、各万線ごとに万線の配列方向の相違、万線の線幅の相違、万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せによって形成される。
【0021】
この場合の凹部の線に対して、所定の角度から光を照射した際に、第1の万線、第2の万線、第3の万線及び第4の万線の反射光量は、第1の万線>第2の万線>第3の万線>第4の万線、又は第1の万線<第2の万線<第3の万線<第4の万線となり、各万線の領域ごとに濃度が異なる。つまり、第1の万線は高濃度領域となり、第2の万線は第1の中間領域となり、第3の万線は第2の中間領域となり、第4の万線は低濃度領域となるか、第4の万線は高濃度領域となり、第3の万線は第1の中間領域となり、第2の万線は第2の中間領域となり、第1の万線は低濃度領域となる。
【0022】
図2では潜像画像2は13個に区分けしているが、13個に限定されるものではなく、N個(Nは3以上の整数)に区分けすることができる。また、13個の領域を第1の万線、第2の万線、第3の万線及び第4の万線に振り分けているが、これに限定されるものではなく第nの万線(nは3以上の整数)に振り分けることができる。
【0023】
(画像形成体A1)
図2で示した13個の領域3に区分けされた潜像画像2を、図3で示すような13個の各領域に対して、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられる。図3で示す高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた各領域に対して、図4に示すように凹部の線5から成る万線4を施す。図4は画像形成体A1を示す図である。凹部の線5から成る万線4は、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cごとに異なる方向に配列される。また、図4に示すX−X’断面図によって、各凹部の線5は所定の深さDを有していることが分かる。この場合、高濃度領域3aの万線4aの配列方向を0°とした場合、第1の中間領域3b1の万線4b1の配列方向を30°及び/又は150°とし、第2の中間領域3b2の万線4b2の配列方向を60°及び/又は120°とし、低濃度領域3cの万線4cの配列方向を90°及び/又は270°としている。低濃度領域の万線の配列方向の角度を0°とした場合に、低濃度領域から高濃度領域に濃度が濃くなるに従い、徐々に万線の配列が90°及び/又は270°に近づいて配列する必要がある。また、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0024】
図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の原理を図5に示す。図5(a)に示すように、配列方向が0°である高濃度領域の万線4aの第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るく確認でき、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY2方向であるため、第1の傾斜面5aは観察ができず、第2の傾斜面5bが観察できるため万線4aは暗く視認できる。よって、高濃度領域は暗い状態で観察できる。
【0025】
次に、図5(b)に示すように、配列方向が30°及び/又は150°である第1の中間領域の万線4b1の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY2方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できるため、万線4b1は万線4aよりも明るく確認できる。よって、第1の中間領域は高濃度領域よりも明るく確認できる。
【0026】
次に、図5(c)に示すように、配列方向が60°及び/又は120°である第2の中間領域の万線4b2の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認される。この場合の観察方向はY2方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。また、図5(b)に示した万線4b1よりも視認できる影の領域が少ない状態にあるため、万線4b2は万線4b1よりも明るく確認できる。よって、第2の中間領域は第1の中間領域よりも明るく確認できる。
【0027】
次に、図5(d)に示すように、配列方向が90°及び/又は270°である低濃度領域の万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bは、スポット光による影が発生しにくいため、明るい状態で視認できる。この場合の観察方向はY2方向であるため、万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。影が発生しにくい万線4cは万線4b2よりも明るく確認できる。よって、低濃度領域は第2の中間領域よりも明るく確認できる。
【0028】
図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、照射光と同一の方向であるY1方向から肉眼で観察した場合の原理を図6に示す。図6(a)に示すように、配列方向が0°である高濃度領域の万線4aの第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るく確認でき、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY1方向であるため、第2の傾斜面5bは観察ができず、第1の傾斜面5aが観察できるため万線4aは明るく視認できる。よって、高濃度領域は明るい状態で観察できる。
【0029】
次に、図6(b)に示すように、配列方向が30°及び/又は150°である第1の中間領域の万線4b1の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY1方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できるため、万線4b1は万線4aよりも暗く確認できる。よって、第1の中間領域は高濃度領域よりも暗く確認できる。
【0030】
次に、図6(c)に示すように、配列方向が60°及び/又は120°である第2の中間領域の万線4b2の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認される。この場合の観察方向はY1方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。また、図6(b)に示した万線4b1よりも視認できる影の領域が多い状態にあるため、万線4b2は万線4b1よりも暗く確認できる。よって、第2の中間領域は第1の中間領域よりも暗く確認できる。
【0031】
次に、図6(d)に示すように、配列方向が90°及び/又は270°である低濃度領域の万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bは、スポット光による影が発生しにくいが、確認できる反射光量が他の領域に比べて少ないため暗い状態で視認できる。この場合の観察方向はY1方向であるため、万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。万線4cは万線4b2よりも暗く確認できる。よって、低濃度領域は第2の中間領域よりも暗く確認できる。
【0032】
図7(a)は、図4に示した画像形成体A1に対して垂直方向から観察した場合の図を示す。画像形成体を垂直方向から観察した場合に、潜像画像2を形成する13個の領域3は、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられ、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cごとに万線の配列方向の角度がそれぞれ異なっているが、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であり、微細な線幅で形成されているため、13個の領域3は区分けしにくい状態で視認される。
【0033】
図7(b)は、図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の図面である。図7(b)に示すように高濃度領域が最も暗く確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。よって、潜像画像2は高濃度領域3c、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認される。
【0034】
図7(c)は、図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合の図面である。図7(c)に示すように高濃度領域が最も明るく確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。よって、潜像画像2は高濃度領域3c、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認される。
【0035】
なお、図4に示した画像形成体A1に対してX1方向からスポット光を照射し、X2方向から肉眼で観察した場合は、高濃度領域が最も明るく確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。さらに、図4に示した画像形成体A1に対してX1方向からスポット光を照射し、X1方向から肉眼で観察した場合は、高濃度領域が最も暗く確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。
【0036】
(画像形成体A2)
図3で示した高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた各領域に対して、図8に示すような凹部の線5から成る万線4を施す。また、図8に示すX−X’断面図によって、各凹部の線5は所定の深さDを有していることがわかる。この場合、高濃度領域3aの万線4aの各線幅を50μm、ピッチ幅100μmとした場合、第1の中間領域3b1の万線4b1の各線幅を50μm、ピッチ幅150μmとし、第1の中間領域3b2の万線4b2の各線幅を50μm、ピッチ幅200μmとし、低濃度領域3cの万線4cの各線幅を50μm、ピッチ幅250μmとしている。つまり、図8では各領域を形成する万線のピッチ幅は、高濃度領域の万線のピッチ幅<第1の中間領域の万線のピッチ幅<第2の中間領域の万線のピッチ幅<低濃度領域の万線の各ピッチ幅が成り立つ。なお、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
図8に示した画像形成体A2に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合、又はY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合に、各領域は、異なった万線のピッチ幅を有するため影の発生する量が相違する。よって、画像形成体A1とほぼ同様な効果が得られる。なお、図8に示した画像形成体A2に対してX1方向からスポット光を照射し、X2方向から肉眼で観察した場合又はX1方向からスポット光を照射し、X1方向から肉眼で観察した場合は、潜像画像2が視認しにくい状態となる。
【0038】
(画像形成体A3)
図3で示した高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた各領域に対して、図9に示すような凹部の線5から成る万線4を施す。また、図9に示すX−X’断面図によって、各凹部の線5は所定の深さDを有していることが分かる。この場合、高濃度領域3aの万線4aの各線幅を300μmとした場合、第1の中間領域3b1の万線4b1の各線幅を200μmとし、第2の中間領域4b2の万線3b2の各線幅を100μmとし、低濃度領域3cの万線3cの各線幅を50μmとしている。つまり、図9では、各領域を形成する万線の線幅は、高濃度領域の万線の各線幅>第1の中間領域の万線の各線幅>第2の中間領域の万線の各線幅>低濃度領域の万線の各線幅が成り立つ。この場合、各線幅のピッチは一定としているが、それぞれのピッチ幅は異ならせても良い。なお、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
図9に示した画像形成体A3に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合又はY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合に、各領域は、異なった線幅を有するため観察角度のよって影が視認できる領域が相違する。よって、画像形成体A1とほぼ同様な効果が得られる。なお、図9に示した画像形成体A3に対してX1方向からスポット光を照射し、X2方向から肉眼で観察した場合又はX1方向からスポット光を照射し、X1方向から肉眼で観察した場合は、潜像画像2が視認しにくい状態となる。
【0040】
画像形成体A1は万線の配列方向が相違によって低濃度領域から高濃度領域を表し、画像形成体A2は万線の間隔の相違によって低濃度領域から高濃度領域を表し、画像形成体A3は万線の線幅の相違によって低濃度領域から高濃度領域を表しているが、これらを組み合わせた低濃度領域から高濃度領域を表現しても良い。図10に、これらを組み合わせから成る画像形成体A4を示す。
【0041】
図4、図8、図9及び図10の画像形成体は、各領域に凹部の線5から成る外郭形状6を有しているが、図11に示すように、外郭形状6を形成しなくても良い。
【0042】
本発明の画像形成体を垂直方向から観察した場合に、各領域3は区分けしにくい状態で視認されるために、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内で作製することが好ましい。線幅が30μmより小さいと作製上困難となり、500μmより大きいと本発明の効果が得られにくくなる。また、それぞれの線幅と各非線幅の割合は1:1乃至1:3程度が好ましい。
【0043】
図4、図8、図9及び図10の画像形成体に対して垂直方向から徐々に水平方向に観察すると、明暗が連続的に徐々に変化するため、階調を有して潜像画像が視認できる。さらに、画像形成体を傾けなくとも、スポット光等の入射光の角度を連続的に変化させることによって本発明の効果を奏することができる。また、本発明の画像形成体は、例えば、室内照明等の室内全体に略均等に光が拡散するような一般的な環境下では、スポット光を照射した場合と比べて、影が発生しにくいため、階調を有する潜像画像の視認性が劣る。
【0044】
紙基材に形成する場合は、前述の潜像画像2の他に、第2の潜像画像として透過光による画像を形成しても良く、この場合は潜像画像2よりも第2の潜像画像の深度を深く形成し、第2の潜像画像の凹部の線の深度を透過光で観察した場合に確認できる深度で形成することで、透過光で観察した場合に第2の潜像画像が画像として視認できる。
【0045】
本発明の万線の形状は、直万線パターン及び曲万線パターン等で形成することができ、特に限定されるものではない。さらに、万線の各線は、実線を用いることが好ましいが、点線及び破線等を用いても良い。また、実線、破線及び点線等を微小文字で形成しても良い。
【0046】
本発明の基材は紙葉類、プラスチックフィルム及び金属等を用いることができる。紙葉類の場合は、表面光沢のあるコート紙又はアート紙が好ましい。また、本発明の画像形成体は、基材を透明プラスチック等の光透過性基材とした場合に、垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に、潜像画像が出現する。基材の厚さは、特に限定されるものでなく60μm程度の薄い基材から、760μm程度のカード基材等でも有効である。
【0047】
本発明の画像形成体を形成するレーザ加工手段のレーザの種類は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスレーザが好ましい。特に問題とはならないが、本発明の基材が紙葉類の場合は、レーザの熱によって、凹部の線のエッジ部に焦げが生じる場合がある。本発明の基材がプラスチックフィルムの場合は、レーザの熱によって、凹部の線のエッジ部に光透過性基材の表面よりも隆起した隆起部が形成される場合がある。
【0048】
(画像形成体の作製装置)
画像形成体の作製装置について以下に説明する。図12に示すように、画像形成体の作製装置11は、画像取得手段12、万線潜像画像データ生成手段13、変換テーブル記憶手段14及びレーザ加工手段15から成る。画像取得手段12、万線潜像画像データ生成手段13及び変換テーブル記憶手段14は、コンピュータ又はワークステーション等で行われる。
【0049】
画像取得手段12は、画像形成体の潜像画像2のモチーフ(原画像)となる、例えば、濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7を取得する。濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データでない場合は、取得した画像に対して画像処理を行い、例えば、濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7に変換する。画像の取得は、イメージスキャナ、ディジタルカメラ、ハンディータイプリーダ又はカメラ付き携帯電話等で行われる。
【0050】
万線潜像画像データ生成手段13は、取得された潜像画像データ7を、各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブル記憶手段14に記憶された変換テーブル8を読み出し、変換テーブル8を基に、潜像画像データ7の濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、更に線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データ9を生成する。
【0051】
変換テーブル8の一例を図13に示す。例えば、濃度レベルが0〜9の10段階に分割している場合、万線の配列方向は、0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°となっている。360°で換算した場合、濃度レベルが0の場合は、0°、180°又は360°となり、濃度レベルが1の場合は、10°、170°、190°又は350°となり、濃度レベルが2の場合は、20°、160°、200°又は340°となり、濃度レベルが3の場合は、30°、150°、210°又は330°となり、濃度レベルが4の場合は、40°、140°、220°又は320°となり、濃度レベルが5の場合は、50°、130°、230°又は310°となり、濃度レベルが6の場合は、60°、120°、240°又は300°となり、濃度レベルが7の場合は、70°、110°、250°又は290°となり、濃度レベルが8の場合は、80°、100°、260°又は280°となり、濃度レベルが9の場合は、90°又は270°となる。濃度レベルは256階調を0〜9に区分けしている。変換テーブル8のデータは一例であり、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0052】
レーザ加工手段15は、基材の表面に万線潜像画像データを基に凹部の線から成る潜像画像を形成する。レーザ加工手段のレーザの種類は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスレーザが好ましい。
【0053】
(画像形成体の作製方法)
画像形成体の作製方法について以下に説明する。図14に示すように、第1の工程は、潜像画像のモチーフ(原画像)となる、例えば、濃度値0〜255のいずれかがが定義された画素の集合体である潜像画像データ7を画像取得手段によって取得する。
【0054】
濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7でない場合は、取得した画像を画像処理し、濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7に変換する。画像の取得は、イメージスキャナ、ディジタルカメラ、ハンディータイプリーダ又はカメラ付き携帯電話等で行われる。
【0055】
第2の工程は、第1の工程で取得された潜像画像データ7を、万線潜像画像データ生成手段によって各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブル記憶手段に記憶された変換テーブル8を基に、潜像画像データ7の濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、さらに、線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データ9を生成する。
【0056】
第3の工程は、第2の工程で生成した万線潜像画像データ9を基に、レーザ加工手段によって基材の表面に凹部の線から成る潜像画像を形成し画像形成体を得る。レーザ加工手段のレーザの種類は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスレーザが好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0058】
潜像画像のモチーフ(原画像)となる濃度値0〜255のいずれかがが定義された画素の集合体である潜像画像データを画像取得手段によって取得した。次に、潜像画像データを、万線潜像画像データ生成手段によって各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブルを基に、潜像画像データの濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、更に、凹部の線幅100μm、ピッチ幅200μmを定義して万線潜像画像データを生成した。
【0059】
万線潜像画像データは、潜像画像をパーツ及び濃度ごとに20個の領域に区分けし、区分けされた20個の領域を、更に低濃度領域、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域及び高濃度領域の5段階に区分けし、高濃度領域の万線の配列方向を0°にしたときに、第1の中間領域を25°、第2の中間領域を50°、第3の中間領域を75°及び低濃度領域4を90°とした。
【0060】
万線潜像画像データを基に、レーザ加工機によって基材1の表面に深度50μmで凹部の線から成る潜像画像を形成して画像形成体B1を得た。図15に画像形成体B1を示す。画像形成体B1の潜像画像2は、20個の領域3から成り、各領域は万線の配列方向が0°である高濃度領域3a、万線の配列方向が25°である第1の中間領域3b1、万線の配列方向が50°である第2の中間領域3b2、万線の配列方向が75°である第3の中間領域3b3及び万線の配列方向が90°である低濃度領域3cの5段階のいずれかが選択されて形成されている。また、凹部の線幅は100μm、ピッチ幅は200μm、深度50μmで形成されている。
【0061】
図16(a)に示すように、実施例1の画像形成体B1を垂直方向から観察すると、潜像画像2を形成する20個の領域3は、低濃度領域、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び高濃度領域に振り分けられ、低濃度領域、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び高濃度領域ごとに万線の配列方向の角度がそれぞれ異なっているが、万線の凹部の線幅が100μmで、ピッチ幅が200μmの範囲内であり、微細な線幅で形成されているため、20個の領域は区分けしにくい状態であった。
【0062】
図16(b)は、画像形成体B1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の図面である。図16(b)に示すように、高濃度領域が最も暗く確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び低濃度領域となり、各領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認された。
【0063】
図16(c)は、画像形成体B1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合の図面である。図16(c)に示すように、高濃度領域が最も明るく確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び低濃度領域となり、各領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認された。
【0064】
以上、本発明の実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の画像形成体に形成される所定幅Wを有する凹部の線5の説明図である。
【図2】モチーフ(原画像)となる潜像画像2を形成するパーツごと及び/又は潜像画像2を形成する色彩の明度ごとに13個の領域3に分割された図である。
【図3】13個の各領域に対して、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けた図である。
【図4】画像形成体A1を示す図である。
【図5】図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の原理を示す図である。
【図6】図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合の原理を示す図である。
【図7】図4に示した画像形成体A1に対して所定の状態で観察した場合を示す図である。
【図8】画像形成体A2を示す図である。
【図9】画像形成体A3を示す図である。
【図10】画像形成体A4を示す図である。
【図11】外郭形状6は凹部の線で形成しない例を示す図である。
【図12】画像形成体の作製装置11を示す図である。
【図13】変換テーブル8を示す図である。
【図14】画像形成体の作製方法を示すフロー図である。
【図15】画像形成体B1を示す図である。
【図16】画像形成体B1に対して所定の状態で観察した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 基材
2 潜像画像
3 領域
3a 高濃度領域
3b1 第1の中間領域
3b2 第2の中間領域
3c 低濃度領域
4、4a、4b1、4b2,4c 万線
5 凹部の線
5a 第1の傾斜面
5b 第2の傾斜面
6 外郭形状
7 潜像画像データ
8 変換テーブル
9 万線潜像画像データ
11 作製装置
12 画像取得手段
13 万線潜像画像データ生成手段
14 変換テーブル記憶手段
15 レーザ加工手段
A1、A2、A3、A4、B1 画像形成体
D 所定の深さ
W 所定幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、商品タグ又はブランドプロテクション等の偽造防止、真偽判別及び複写防止が必要とされる貴重品に適用する画像形成体及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、商品タグ又はブランドプロテクション等の貴重品は、その性質上、偽造及び変造されにくいことが要求される。この防止策として、これらの貴重品を傾けて観察することにより潜像画像を認識できるようにして真偽判別を行う技術が知られている。例えば、凹部の線を利用する技術が挙げられる。
【0003】
この凹部の線を利用し、潜像画像を出現させる技術としては、基材の表面に、文字や数字等の潜像パターン及び/又はそのパターンの周囲部が、ピッチ幅0.2〜1mmの圧印加工による万線状凹凸で形成されていて、その潜像パターンの周囲部に、その潜像パターンを形成する万線状凹凸と略直角の万線状凹凸が施されている有価証券類が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、パスポート等のラミネートフィルムに、レーザを用いた万線状の凹部から成る潜像部及び背景部を形成し、潜像部と背景部の万線は位相がずれているか、又は異なる角度で形成されたラミネートフィルムで保護された貴重印刷物及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−154262公報(第1−4頁、第1、2図)
【特許文献2】特許第3514291号(第7頁、第4、5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2は、いずれにおいても出現する潜像画像が連続階調を有するものではく、潜像画像として複雑なデザインが採用しにくい問題があった。さらに凹部の線の配列構成が単純であったため偽造されるおそれがあった。また、基材に対して真上から観察した場合においても潜像が見えてしまう欠点があった。さらに、万線を縦方向と横方向とで構成しているため、偽造が容易にできるという課題があった。
【0007】
特許文献1は、基材にエンボスにより万線状の凹凸を施しているので、エンボス用の版面を作製するための装置とノウハウを要し、さらには基材にエンボス版面を押圧する装置が必要となることから、設備に多大な費用を要し、また、作製するに前準備を含め多くの時間が掛かった。
【0008】
特許文献2は、基材を紙ではなくフィルムに限定しているが、フィルムは光の反射性が高く、かつ、フィルム表面と万線状の溝との光反射性が異なることから、フィルムの真上から観察した場合でも潜像が視認しやすく、フィルムを剥がして再利用する改ざんに対しての効果は高いが、潜像としての効果は低かった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決することを目的としたもので、基材のみで得られる偽造防止技術であり、凹部の線の配列構成が単純ではなく、出現する潜像画像は連続階調を有し、複雑なデザインが採用可能な画像形成体及びその作製方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材に凹部の線により潜像画像が形成され、基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体において、潜像画像はN個(Nは3以上)の領域に区分けされ、N個に区分けされた各領域は、凹部の第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線(nは3以上)に振り分けられ、第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線は、万線ごとに万線の配列方向の相違、万線の線幅の相違、万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せから成ることを特徴とする画像形成体である。
【0011】
また、本発明の画像形成体は、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、基材に凹部の線により潜像画像が形成され、基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体の作製方法において、潜像画像の原画像となる濃度値が定義された画素の集合体である潜像画像データを取得する工程と、取得された潜像画像データを、各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブルを基に、潜像画像データの濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、さらに、線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データを生成する工程と、基材の表面に万線潜像画像データを基に凹部の線により潜像画像を形成する工程から成る画像形成体の作製方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成体は、出現する潜像画像が階調表現に優れるとともに精彩な画像として表現することができる。連続階調を有する複雑なデザインが採用可能であるためデザインの制限を受けることがない。
【0014】
本発明の画像形成体は、基材にレーザ加工機等の特殊な機械で、複雑な配列方向を有する凹部の線で潜像画像を形成するため、偽造防止効果に優れる。
【0015】
また、本発明の画像形成体は、垂直方向から水平方向に傾けて観察した場合に、潜像画像が確認でき、潜像画像は観察方向によってポジの潜像画像又はネガの潜像画像として確認できるため、潜像画像の出現の有無及びネガポジの変化の有無によって真偽判別が可能となる。よって、判別具及び特別な真偽判別装置等を用いることなく、誰でもその場で上記効果が得られるか否かによって真偽判別することができる。
【0016】
本発明の画像形成体を形成する凹部の線は、レーザで作製可能なため、貴重品に個々に異なった情報(可変情報)を形成することができる。
【0017】
以上のことから、本発明の画像形成体は、真偽判別効果が高く、微細な形状で形成するため複製防止効果を有し、銀行券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、商品タグ又はブランドプロテクション等に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0019】
(画像形成体)
本発明の構成である所定幅Wを有する凹部の線について図1を用いて説明する。図1に示すように、所定幅Wを有する凹部の線5は、基材1の表面のベースの高さより低く形成される。所定幅Wとは、基材1の表面に形成される幅のことであり、深さ方向の幅ではない。所定幅Wを有する凹部の線5の断面形状は、図1(a)に示すような三角形状、図1(b)に示すような台形状、図1(c)に示すような四角形状、図1(d)に示すような蒲鉾状、図1(e)に示すような直角三角形状等が挙げられる。ただし、本発明の構成である凹部の線5の断面形状は、図1(a)乃至図(e)に限定されることがなく、例えば、図1(a)乃至図1(e)を組み合わせ又はその他の断面形状で形成することもできる。
【0020】
図2はモチーフ(原画像)となる潜像画像2を形成するパーツごと及び/又は潜像画像2を形成する色彩の明度ごとに13個の領域3に分割された図である。本発明の画像形成体は、13個の領域3に分割された各領域に基材を非貫通である凹部の第1の万線、第2の万線、第3の万線又は第4の万線に振り分けられ、第1の万線、第2の万線、第3の万線及び第4の万線は、各万線ごとに万線の配列方向の相違、万線の線幅の相違、万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せによって形成される。
【0021】
この場合の凹部の線に対して、所定の角度から光を照射した際に、第1の万線、第2の万線、第3の万線及び第4の万線の反射光量は、第1の万線>第2の万線>第3の万線>第4の万線、又は第1の万線<第2の万線<第3の万線<第4の万線となり、各万線の領域ごとに濃度が異なる。つまり、第1の万線は高濃度領域となり、第2の万線は第1の中間領域となり、第3の万線は第2の中間領域となり、第4の万線は低濃度領域となるか、第4の万線は高濃度領域となり、第3の万線は第1の中間領域となり、第2の万線は第2の中間領域となり、第1の万線は低濃度領域となる。
【0022】
図2では潜像画像2は13個に区分けしているが、13個に限定されるものではなく、N個(Nは3以上の整数)に区分けすることができる。また、13個の領域を第1の万線、第2の万線、第3の万線及び第4の万線に振り分けているが、これに限定されるものではなく第nの万線(nは3以上の整数)に振り分けることができる。
【0023】
(画像形成体A1)
図2で示した13個の領域3に区分けされた潜像画像2を、図3で示すような13個の各領域に対して、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられる。図3で示す高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた各領域に対して、図4に示すように凹部の線5から成る万線4を施す。図4は画像形成体A1を示す図である。凹部の線5から成る万線4は、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cごとに異なる方向に配列される。また、図4に示すX−X’断面図によって、各凹部の線5は所定の深さDを有していることが分かる。この場合、高濃度領域3aの万線4aの配列方向を0°とした場合、第1の中間領域3b1の万線4b1の配列方向を30°及び/又は150°とし、第2の中間領域3b2の万線4b2の配列方向を60°及び/又は120°とし、低濃度領域3cの万線4cの配列方向を90°及び/又は270°としている。低濃度領域の万線の配列方向の角度を0°とした場合に、低濃度領域から高濃度領域に濃度が濃くなるに従い、徐々に万線の配列が90°及び/又は270°に近づいて配列する必要がある。また、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0024】
図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の原理を図5に示す。図5(a)に示すように、配列方向が0°である高濃度領域の万線4aの第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るく確認でき、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY2方向であるため、第1の傾斜面5aは観察ができず、第2の傾斜面5bが観察できるため万線4aは暗く視認できる。よって、高濃度領域は暗い状態で観察できる。
【0025】
次に、図5(b)に示すように、配列方向が30°及び/又は150°である第1の中間領域の万線4b1の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY2方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できるため、万線4b1は万線4aよりも明るく確認できる。よって、第1の中間領域は高濃度領域よりも明るく確認できる。
【0026】
次に、図5(c)に示すように、配列方向が60°及び/又は120°である第2の中間領域の万線4b2の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認される。この場合の観察方向はY2方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。また、図5(b)に示した万線4b1よりも視認できる影の領域が少ない状態にあるため、万線4b2は万線4b1よりも明るく確認できる。よって、第2の中間領域は第1の中間領域よりも明るく確認できる。
【0027】
次に、図5(d)に示すように、配列方向が90°及び/又は270°である低濃度領域の万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bは、スポット光による影が発生しにくいため、明るい状態で視認できる。この場合の観察方向はY2方向であるため、万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。影が発生しにくい万線4cは万線4b2よりも明るく確認できる。よって、低濃度領域は第2の中間領域よりも明るく確認できる。
【0028】
図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、照射光と同一の方向であるY1方向から肉眼で観察した場合の原理を図6に示す。図6(a)に示すように、配列方向が0°である高濃度領域の万線4aの第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るく確認でき、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY1方向であるため、第2の傾斜面5bは観察ができず、第1の傾斜面5aが観察できるため万線4aは明るく視認できる。よって、高濃度領域は明るい状態で観察できる。
【0029】
次に、図6(b)に示すように、配列方向が30°及び/又は150°である第1の中間領域の万線4b1の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影によって暗く確認できる。この場合の観察方向はY1方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できるため、万線4b1は万線4aよりも暗く確認できる。よって、第1の中間領域は高濃度領域よりも暗く確認できる。
【0030】
次に、図6(c)に示すように、配列方向が60°及び/又は120°である第2の中間領域の万線4b2の第1の傾斜面5aは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認され、第2の傾斜面5bは、スポット光の影響を受けて明るい領域から徐々にスポット光の影によって暗い領域となって確認される。この場合の観察方向はY1方向であるため、万線4b1の第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。また、図6(b)に示した万線4b1よりも視認できる影の領域が多い状態にあるため、万線4b2は万線4b1よりも暗く確認できる。よって、第2の中間領域は第1の中間領域よりも暗く確認できる。
【0031】
次に、図6(d)に示すように、配列方向が90°及び/又は270°である低濃度領域の万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bは、スポット光による影が発生しにくいが、確認できる反射光量が他の領域に比べて少ないため暗い状態で視認できる。この場合の観察方向はY1方向であるため、万線4cの第1の傾斜面5a及び第2の傾斜面5bが視認できる。万線4cは万線4b2よりも暗く確認できる。よって、低濃度領域は第2の中間領域よりも暗く確認できる。
【0032】
図7(a)は、図4に示した画像形成体A1に対して垂直方向から観察した場合の図を示す。画像形成体を垂直方向から観察した場合に、潜像画像2を形成する13個の領域3は、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられ、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cごとに万線の配列方向の角度がそれぞれ異なっているが、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であり、微細な線幅で形成されているため、13個の領域3は区分けしにくい状態で視認される。
【0033】
図7(b)は、図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の図面である。図7(b)に示すように高濃度領域が最も暗く確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。よって、潜像画像2は高濃度領域3c、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認される。
【0034】
図7(c)は、図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合の図面である。図7(c)に示すように高濃度領域が最も明るく確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。よって、潜像画像2は高濃度領域3c、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認される。
【0035】
なお、図4に示した画像形成体A1に対してX1方向からスポット光を照射し、X2方向から肉眼で観察した場合は、高濃度領域が最も明るく確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。さらに、図4に示した画像形成体A1に対してX1方向からスポット光を照射し、X1方向から肉眼で観察した場合は、高濃度領域が最も暗く確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、低濃度領域となる。
【0036】
(画像形成体A2)
図3で示した高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた各領域に対して、図8に示すような凹部の線5から成る万線4を施す。また、図8に示すX−X’断面図によって、各凹部の線5は所定の深さDを有していることがわかる。この場合、高濃度領域3aの万線4aの各線幅を50μm、ピッチ幅100μmとした場合、第1の中間領域3b1の万線4b1の各線幅を50μm、ピッチ幅150μmとし、第1の中間領域3b2の万線4b2の各線幅を50μm、ピッチ幅200μmとし、低濃度領域3cの万線4cの各線幅を50μm、ピッチ幅250μmとしている。つまり、図8では各領域を形成する万線のピッチ幅は、高濃度領域の万線のピッチ幅<第1の中間領域の万線のピッチ幅<第2の中間領域の万線のピッチ幅<低濃度領域の万線の各ピッチ幅が成り立つ。なお、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
図8に示した画像形成体A2に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合、又はY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合に、各領域は、異なった万線のピッチ幅を有するため影の発生する量が相違する。よって、画像形成体A1とほぼ同様な効果が得られる。なお、図8に示した画像形成体A2に対してX1方向からスポット光を照射し、X2方向から肉眼で観察した場合又はX1方向からスポット光を照射し、X1方向から肉眼で観察した場合は、潜像画像2が視認しにくい状態となる。
【0038】
(画像形成体A3)
図3で示した高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けられた各領域に対して、図9に示すような凹部の線5から成る万線4を施す。また、図9に示すX−X’断面図によって、各凹部の線5は所定の深さDを有していることが分かる。この場合、高濃度領域3aの万線4aの各線幅を300μmとした場合、第1の中間領域3b1の万線4b1の各線幅を200μmとし、第2の中間領域4b2の万線3b2の各線幅を100μmとし、低濃度領域3cの万線3cの各線幅を50μmとしている。つまり、図9では、各領域を形成する万線の線幅は、高濃度領域の万線の各線幅>第1の中間領域の万線の各線幅>第2の中間領域の万線の各線幅>低濃度領域の万線の各線幅が成り立つ。この場合、各線幅のピッチは一定としているが、それぞれのピッチ幅は異ならせても良い。なお、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
図9に示した画像形成体A3に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合又はY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合に、各領域は、異なった線幅を有するため観察角度のよって影が視認できる領域が相違する。よって、画像形成体A1とほぼ同様な効果が得られる。なお、図9に示した画像形成体A3に対してX1方向からスポット光を照射し、X2方向から肉眼で観察した場合又はX1方向からスポット光を照射し、X1方向から肉眼で観察した場合は、潜像画像2が視認しにくい状態となる。
【0040】
画像形成体A1は万線の配列方向が相違によって低濃度領域から高濃度領域を表し、画像形成体A2は万線の間隔の相違によって低濃度領域から高濃度領域を表し、画像形成体A3は万線の線幅の相違によって低濃度領域から高濃度領域を表しているが、これらを組み合わせた低濃度領域から高濃度領域を表現しても良い。図10に、これらを組み合わせから成る画像形成体A4を示す。
【0041】
図4、図8、図9及び図10の画像形成体は、各領域に凹部の線5から成る外郭形状6を有しているが、図11に示すように、外郭形状6を形成しなくても良い。
【0042】
本発明の画像形成体を垂直方向から観察した場合に、各領域3は区分けしにくい状態で視認されるために、万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内で作製することが好ましい。線幅が30μmより小さいと作製上困難となり、500μmより大きいと本発明の効果が得られにくくなる。また、それぞれの線幅と各非線幅の割合は1:1乃至1:3程度が好ましい。
【0043】
図4、図8、図9及び図10の画像形成体に対して垂直方向から徐々に水平方向に観察すると、明暗が連続的に徐々に変化するため、階調を有して潜像画像が視認できる。さらに、画像形成体を傾けなくとも、スポット光等の入射光の角度を連続的に変化させることによって本発明の効果を奏することができる。また、本発明の画像形成体は、例えば、室内照明等の室内全体に略均等に光が拡散するような一般的な環境下では、スポット光を照射した場合と比べて、影が発生しにくいため、階調を有する潜像画像の視認性が劣る。
【0044】
紙基材に形成する場合は、前述の潜像画像2の他に、第2の潜像画像として透過光による画像を形成しても良く、この場合は潜像画像2よりも第2の潜像画像の深度を深く形成し、第2の潜像画像の凹部の線の深度を透過光で観察した場合に確認できる深度で形成することで、透過光で観察した場合に第2の潜像画像が画像として視認できる。
【0045】
本発明の万線の形状は、直万線パターン及び曲万線パターン等で形成することができ、特に限定されるものではない。さらに、万線の各線は、実線を用いることが好ましいが、点線及び破線等を用いても良い。また、実線、破線及び点線等を微小文字で形成しても良い。
【0046】
本発明の基材は紙葉類、プラスチックフィルム及び金属等を用いることができる。紙葉類の場合は、表面光沢のあるコート紙又はアート紙が好ましい。また、本発明の画像形成体は、基材を透明プラスチック等の光透過性基材とした場合に、垂直方向から水平方向に徐々に傾けて観察した場合に、潜像画像が出現する。基材の厚さは、特に限定されるものでなく60μm程度の薄い基材から、760μm程度のカード基材等でも有効である。
【0047】
本発明の画像形成体を形成するレーザ加工手段のレーザの種類は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスレーザが好ましい。特に問題とはならないが、本発明の基材が紙葉類の場合は、レーザの熱によって、凹部の線のエッジ部に焦げが生じる場合がある。本発明の基材がプラスチックフィルムの場合は、レーザの熱によって、凹部の線のエッジ部に光透過性基材の表面よりも隆起した隆起部が形成される場合がある。
【0048】
(画像形成体の作製装置)
画像形成体の作製装置について以下に説明する。図12に示すように、画像形成体の作製装置11は、画像取得手段12、万線潜像画像データ生成手段13、変換テーブル記憶手段14及びレーザ加工手段15から成る。画像取得手段12、万線潜像画像データ生成手段13及び変換テーブル記憶手段14は、コンピュータ又はワークステーション等で行われる。
【0049】
画像取得手段12は、画像形成体の潜像画像2のモチーフ(原画像)となる、例えば、濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7を取得する。濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データでない場合は、取得した画像に対して画像処理を行い、例えば、濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7に変換する。画像の取得は、イメージスキャナ、ディジタルカメラ、ハンディータイプリーダ又はカメラ付き携帯電話等で行われる。
【0050】
万線潜像画像データ生成手段13は、取得された潜像画像データ7を、各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブル記憶手段14に記憶された変換テーブル8を読み出し、変換テーブル8を基に、潜像画像データ7の濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、更に線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データ9を生成する。
【0051】
変換テーブル8の一例を図13に示す。例えば、濃度レベルが0〜9の10段階に分割している場合、万線の配列方向は、0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°となっている。360°で換算した場合、濃度レベルが0の場合は、0°、180°又は360°となり、濃度レベルが1の場合は、10°、170°、190°又は350°となり、濃度レベルが2の場合は、20°、160°、200°又は340°となり、濃度レベルが3の場合は、30°、150°、210°又は330°となり、濃度レベルが4の場合は、40°、140°、220°又は320°となり、濃度レベルが5の場合は、50°、130°、230°又は310°となり、濃度レベルが6の場合は、60°、120°、240°又は300°となり、濃度レベルが7の場合は、70°、110°、250°又は290°となり、濃度レベルが8の場合は、80°、100°、260°又は280°となり、濃度レベルが9の場合は、90°又は270°となる。濃度レベルは256階調を0〜9に区分けしている。変換テーブル8のデータは一例であり、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0052】
レーザ加工手段15は、基材の表面に万線潜像画像データを基に凹部の線から成る潜像画像を形成する。レーザ加工手段のレーザの種類は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスレーザが好ましい。
【0053】
(画像形成体の作製方法)
画像形成体の作製方法について以下に説明する。図14に示すように、第1の工程は、潜像画像のモチーフ(原画像)となる、例えば、濃度値0〜255のいずれかがが定義された画素の集合体である潜像画像データ7を画像取得手段によって取得する。
【0054】
濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7でない場合は、取得した画像を画像処理し、濃度値0〜255のいずれかが定義された画素の集合体である潜像画像データ7に変換する。画像の取得は、イメージスキャナ、ディジタルカメラ、ハンディータイプリーダ又はカメラ付き携帯電話等で行われる。
【0055】
第2の工程は、第1の工程で取得された潜像画像データ7を、万線潜像画像データ生成手段によって各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブル記憶手段に記憶された変換テーブル8を基に、潜像画像データ7の濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、さらに、線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データ9を生成する。
【0056】
第3の工程は、第2の工程で生成した万線潜像画像データ9を基に、レーザ加工手段によって基材の表面に凹部の線から成る潜像画像を形成し画像形成体を得る。レーザ加工手段のレーザの種類は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスレーザが好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0058】
潜像画像のモチーフ(原画像)となる濃度値0〜255のいずれかがが定義された画素の集合体である潜像画像データを画像取得手段によって取得した。次に、潜像画像データを、万線潜像画像データ生成手段によって各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブルを基に、潜像画像データの濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、更に、凹部の線幅100μm、ピッチ幅200μmを定義して万線潜像画像データを生成した。
【0059】
万線潜像画像データは、潜像画像をパーツ及び濃度ごとに20個の領域に区分けし、区分けされた20個の領域を、更に低濃度領域、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域及び高濃度領域の5段階に区分けし、高濃度領域の万線の配列方向を0°にしたときに、第1の中間領域を25°、第2の中間領域を50°、第3の中間領域を75°及び低濃度領域4を90°とした。
【0060】
万線潜像画像データを基に、レーザ加工機によって基材1の表面に深度50μmで凹部の線から成る潜像画像を形成して画像形成体B1を得た。図15に画像形成体B1を示す。画像形成体B1の潜像画像2は、20個の領域3から成り、各領域は万線の配列方向が0°である高濃度領域3a、万線の配列方向が25°である第1の中間領域3b1、万線の配列方向が50°である第2の中間領域3b2、万線の配列方向が75°である第3の中間領域3b3及び万線の配列方向が90°である低濃度領域3cの5段階のいずれかが選択されて形成されている。また、凹部の線幅は100μm、ピッチ幅は200μm、深度50μmで形成されている。
【0061】
図16(a)に示すように、実施例1の画像形成体B1を垂直方向から観察すると、潜像画像2を形成する20個の領域3は、低濃度領域、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び高濃度領域に振り分けられ、低濃度領域、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び高濃度領域ごとに万線の配列方向の角度がそれぞれ異なっているが、万線の凹部の線幅が100μmで、ピッチ幅が200μmの範囲内であり、微細な線幅で形成されているため、20個の領域は区分けしにくい状態であった。
【0062】
図16(b)は、画像形成体B1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の図面である。図16(b)に示すように、高濃度領域が最も暗く確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び低濃度領域となり、各領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認された。
【0063】
図16(c)は、画像形成体B1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合の図面である。図16(c)に示すように、高濃度領域が最も明るく確認でき、続いて、第1の中間領域、第2の中間領域、第3の中間領域、第4の中間領域及び低濃度領域となり、各領域3ごとに明度差が生じ、階調を有して潜像画像2が視認された。
【0064】
以上、本発明の実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の画像形成体に形成される所定幅Wを有する凹部の線5の説明図である。
【図2】モチーフ(原画像)となる潜像画像2を形成するパーツごと及び/又は潜像画像2を形成する色彩の明度ごとに13個の領域3に分割された図である。
【図3】13個の各領域に対して、高濃度領域3a、第1の中間領域3b1、第2の中間領域3b2及び低濃度領域3cに振り分けた図である。
【図4】画像形成体A1を示す図である。
【図5】図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y2方向から肉眼で観察した場合の原理を示す図である。
【図6】図4に示した画像形成体A1に対してY1方向からスポット光を照射し、Y1方向から肉眼で観察した場合の原理を示す図である。
【図7】図4に示した画像形成体A1に対して所定の状態で観察した場合を示す図である。
【図8】画像形成体A2を示す図である。
【図9】画像形成体A3を示す図である。
【図10】画像形成体A4を示す図である。
【図11】外郭形状6は凹部の線で形成しない例を示す図である。
【図12】画像形成体の作製装置11を示す図である。
【図13】変換テーブル8を示す図である。
【図14】画像形成体の作製方法を示すフロー図である。
【図15】画像形成体B1を示す図である。
【図16】画像形成体B1に対して所定の状態で観察した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 基材
2 潜像画像
3 領域
3a 高濃度領域
3b1 第1の中間領域
3b2 第2の中間領域
3c 低濃度領域
4、4a、4b1、4b2,4c 万線
5 凹部の線
5a 第1の傾斜面
5b 第2の傾斜面
6 外郭形状
7 潜像画像データ
8 変換テーブル
9 万線潜像画像データ
11 作製装置
12 画像取得手段
13 万線潜像画像データ生成手段
14 変換テーブル記憶手段
15 レーザ加工手段
A1、A2、A3、A4、B1 画像形成体
D 所定の深さ
W 所定幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に凹部の線により潜像画像が形成され、前記基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体において、
前記潜像画像はN個(Nは3以上)の領域に区分けされ、
前記N個に区分けされた各領域は、凹部の第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線(nは3以上)に振り分けられ、
前記第1の万線、前記第2の万線、・・・前記第nの万線は、万線ごとに前記万線の配列方向の相違、前記万線の線幅の相違、前記万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せから成ることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【請求項3】
基材に凹部の線により潜像画像が形成され、前記基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体の作製方法において、
前記潜像画像の原画像となる濃度値が定義された画素の集合体である潜像画像データを取得する工程と、
前記取得された潜像画像データを、各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブルを基に、前記潜像画像データの濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、さらに、線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データを生成する工程と、
前記基材の表面に前記万線潜像画像データを基に凹部の線により潜像画像を形成する工程から成る画像形成体の作製方法。
【請求項1】
基材に凹部の線により潜像画像が形成され、前記基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体において、
前記潜像画像はN個(Nは3以上)の領域に区分けされ、
前記N個に区分けされた各領域は、凹部の第1の万線、第2の万線、・・・第nの万線(nは3以上)に振り分けられ、
前記第1の万線、前記第2の万線、・・・前記第nの万線は、万線ごとに前記万線の配列方向の相違、前記万線の線幅の相違、前記万線のピッチ幅の相違又はそれらの組合せから成ることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記万線の凹部の線幅が30〜500μmで、ピッチ幅が70〜2000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【請求項3】
基材に凹部の線により潜像画像が形成され、前記基材を傾けて観察した場合に、階調を有する潜像画像が確認できる画像形成体の作製方法において、
前記潜像画像の原画像となる濃度値が定義された画素の集合体である潜像画像データを取得する工程と、
前記取得された潜像画像データを、各濃度と各万線の配列方向が対応付けされた変換テーブルを基に、前記潜像画像データの濃度領域ごとに配列方向が異なった万線に変換し、さらに、線幅及びピッチを定義して万線潜像画像データを生成する工程と、
前記基材の表面に前記万線潜像画像データを基に凹部の線により潜像画像を形成する工程から成る画像形成体の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−83157(P2009−83157A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252788(P2007−252788)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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