説明

画像形成体

【課題】本発明は、エンボス加工による、高度の偽造防止効果とデザイン性や美粧性にも優れ、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】紙基材等の基材にエンボス加工による凹凸からなるパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による凹凸からなる他のパターンが形成されてあることを特徴とする画像形成体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、株券、商品券、金券、債券あるいはクレジットカード等有価証券等の媒体に用いられる画像形成体に係わり、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、高度のの偽造防止効果とデザイン性や美粧性に優れる、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、株券、商品券さらにはクレジットカード等有価証券類の他、商品用の封印シールやタグ類に至るまで偽造・複製による不正使用を防止するため、精巧な印刷技術による印刷等が施されているのが一般的であったが、近年の偽造・複製による不正使用の頻発に鑑み、これら精巧な印刷等に加え特殊な偽造防止策が施されるようになってきた。
【0003】
この特殊な偽造防止策として、例えば、ホログラムを貼付けるたり、紫外線で発色する材料や画像を施して紫外線照射で真偽判定をする方法などがあり、あるいは、金属箔層に万線方向が異なる万線状凹凸パターン群が複数集合したエンボスパターンを形成したもので、見る角度を変化させると万線状凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂オパール効果を有する画像体として有価証券類等に貼付けたりする方法や、さらには上記精巧な印刷技術を利用した技術の一つとして、有価証券等に微細なピッチの万線状凸部でなる潜像パターンが施されていて、真上等から見ると単なる細紋のように見えるが、有価証券を傾けたり視点を変えて観察すると潜像パターンが現れるという偽造防止技術(凹版印刷物)が公知である。
【0004】
以上いずれの方法も開発当時は、カラーコピー機やスキャナー等を駆使して複写物を作製しても、その複製は困難で偽造防止策として有効な技術であった。
【0005】
上記の偽造防止技術を駆使した印刷物に、さらにエンボス加工を施した偽造防止印刷物が、例えば、特許文献1で提案されている。この偽造防止印刷物は、○、△、□等の所定の形状からなる複数のエンボスが形成されており、また、通常の状態では顕在化せず、紫外線を照射した場合においてのみ顕在化する隠し印刷部が施されているものである。
【0006】
しかしながら、従来のエンボス加工による偽造防止技術は、エンボス版が1版(1回通し)でX−Y平面のみに形成されるものであって、エンボスパターンは拡大写真等により分析可能であって、偽造・複製が容易に行えるという問題点があった。
【特許文献1】実開平7−18876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであって、エンボス加工による、高度の偽造防止効果とデザイン性や美粧性にも優れ、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、即ち、
請求項1に係る発明は、
紙基材等の基材にエンボス加工による凹凸からなるパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による凹凸からなる他のパターンが形成されてあることを特徴とする画
像形成体である。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、
前記紙基材等の基材が、アルミニウム箔貼合紙、アルミニウム蒸着紙、または、アルミニウムペースト印刷紙等の金属光沢紙であって、その金属光沢表面に前記パターンを形成することを特徴とする請求項1記載の画像形成体である。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、
前記複数回のエンボス加工による凹凸からなる複数の異なるパターンが、1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンに対して、2回目のエンボス加工による第2のパターンを施し、この第2のパターンの凸部上部および側部に、前記第1のパターンの凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成体である。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、
前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凹凸パターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成体である。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、
前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凹凸パターンからなる線部と非線部の万線比率が1:1の同一万線ピッチによる万線状凸部でなる複数種の万線パターンが形成され、その万線パータンのうち1ないし複数種の万線パータン領域内にその万線パターンに対して万線位相を半ピッチ分だけずらして形成した潜像万線パターンを有する画像形成体であって、
2回目のエンボス加工による第2のパターンを施した後、前記1回目の画像形成体の万線状凸部でなる万線パターンに、その万線パータンと同じ万線比率と同じ万線ピッチの顕像化用万線パターンが透明フィルムに形成された顕像化万線シートを、互に整合するように重ね合わせて、各々万線に対応する万線パターン領域内に形成された潜像万線パターンが顕像化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成体である。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、
前記前記1回目のエンボス加工を施してなる万線状凹凸パターンからなる第1のパターンが、万線状凸部でなる潜像パターンを有する複数種の画像が合成されている潜像パターンを有する画像形成体であって、
この画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成体である。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、
前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群が複数組集合してなる画像形成体であって、
この画像形成体の見る角度を変化させると濃淡や輝きが変化することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成体である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明により、紙基材にエンボス加工による凹凸からなるパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による凹凸からなる他のパターンが形成されてあり、拡大写真等によるエンボスパターンの分析・解析が困難である画像形成体が得られる。
【0016】
請求項2に係る発明により、紙基材として金属光沢紙を用いることで、デザイン性や美粧性に優れる画像形成体が得られる。
【0017】
請求項3に係る発明により、第2のパターンの凸部の上部および両側部に、前記第1のパターンの凸部が形成されることで、第1のパターンの1版目と第2のパターンの2版目の分版が非常に困難であるために偽造・複製が不可能である
請求項4に係る発明により、1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凹凸パターンであるため、エンボス版が簡単に作製できる。
【0018】
請求項5に係る発明により、この画像形成体上に、所定の万線シートを重ね合わせると、潜像パターンが浮かび上がるという「万線モアレ」偽造防止技術を応用してあるので偽造防止効果が一層向上する。
【0019】
請求項6に係る発明により、この画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化されるので、デザイン性や美粧性が一層向上する。
【0020】
請求項7に係る発明により、この画像形成体を見る角度を変化させて観察すると、万線状凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂「オパール効果」を有するので、デザイン性や美粧性が一層向上する。
【0021】
したがって、本発明により、株券、商品券、金券、債券あるいはクレジットカード等有価証券等の媒体に用いられる、高度の偽造防止効果とデザイン性や美粧性に優れる、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施形態の一例について図面を参照して説明する。図1は、本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1の万線状凹凸パターンからなる第1のパターンの一例の一部を示す模式斜視図である。図2は、本発明における2回目のエンボス加工用の凸状「T」字形状パターンを1つ以上を有するエンボス版のその1つの凸状「T」字形状パターンを示す模式斜視図である。図3は、1回目のエンボス加工を施してなる第1の万線状凹凸パターンの領域の一部に、凸状「T」字形状パターンを1つ以上を有するエンボス版を用いて2回目のエンボスを施した状態(ここでは、1の凸状「T」字形状パターン部のみを示す)の模式斜視図である。図4は、図3における視点Aから見た凸状「T」字形状パターン部の一部拡大図であって、第2のパターンの凸状「T」字形状パターン上部および側部に第1のパターンの万線状凸部パターンの凸部が形成されている状態を示す模式斜視図である。図5は、図4におけるA面における模式断面図である。図6および図7は、本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが潜像万線凸部パターンを有する画像形成体に、透明フィルムに形成された顕像化万線シートを用いて潜像万線パターンが顕像化される仕組みを説明する模式平面図である。図8は、本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凸部でなる潜像パターンを有する複数種の画像が合成されている潜像パターンを有する画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化される仕組みを説明する模式平面図である。図9は、本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群が複数組集合してなるパターンからなるオパール像を有する画像形成体を見る角度を変化させて観察すると、万線状波形凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂「オパール効果」の仕組みを説明する模式平面図である。図10は、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凸部パターン群が2組集合してなるオパール像の一例を示す模式平面図である。図11および図12は、本発明の画像形成体をエンボス1版(1回通し)で形成することが不可能であることを説明するためのエンボス版の模式断面図である。
【0023】
本発明の画像形成体は、紙基材にエンボス加工による凹凸からなる第1のパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による凹凸からなる他の第2のパターンが形成されてあることを特徴とするものである。例えば、図1で示す、凸部1aと凹部1bからなる第1の万線状凹凸パターン1を紙基材にエンボス加工によって形成したその第1のパターン領域に、第2回目のエンボス加工に用いるエンボス版の一例として、図2で示す、1つ以上の凸状「T」字形状パターン2を有するエンボス版(ここでは、第2のパターンである1つの凸状「T」字形状パターンのみを示す)を用いて、2回目のエンボスを施し、凸状に浮かび上がる「T」字形状パターンからなる第2のパターン2を形成してなる画像形成体である。この画像形成体は、図3で示すように、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターン2の凸部の上部に万線状凹凸パターンからなる第1のパターン1の凸部パターン1a(2)、および、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターン2の凸部の両側部に万線状凹凸パターンからなる第1のパターン1の凸部パターン1a(1)、1a(1′)(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0024】
そして、図3で示す視点Aからの、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターン2の凸部の上部に万線状凹凸パターンからなる第1のパターン1の凸部パターン1a(2)、および、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターンの凸部の両側部に万線状凹凸パターンからなる第1のパターン1の凸部パターン1a(1),1a(1′)(図示されず)が形成されている状態の一部拡大斜視図を図4に示した。
【0025】
上記の図4で示すA面における断面図を図5に示した。図5で示すように、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターン2の凸部の上部および両側部にそれぞれ万線状凹凸パターン1からなる第1のパターン1の凸部パターン1a(2)、および、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターンの凸部2の両側部に万線状凹凸パターン1の凸部パターン1a(1),1a(1′)が形成された1つ以上の第2のパターン2を有するパターンからなる画像形成体が得られる。(ここでは、第2のパターンである1つの凸状「T」字形状パターン部のみを例示してある。)
上記で得られる本発明の画像形成体は、紙基材にエンボス加工による凹凸からなる第1のパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による凹凸からなる他の第2のパターンが形成されて、第2のパターン凸部の上部および両側面に第1のパターン凸部が形成されているので、拡大写真等によりエンボスパターンの分析・解析が困難である画像形成体が得られる。したがって、本発明により、株券、商品券、金券、債券あるいはクレジットカード等有価証券等の媒体に用いられる、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、高度の偽造防止効果を有する、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することができる。
【0026】
また、本発明の画像形成体において、第1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凹凸パターンからなる線部と非線部の万線比率が1:1の同一万線ピッチによる万線状凸部でなる複数種の万線パターンが形成され、その万線パータンのうち1ないし複数種の万線パータン領域内に、その万線パターンに対して万線位相を半ピッチ分だけずらして形成した潜像万線パターンを備えている画像形成体であって、2回目のエンボス加工による第2のパターンを施した後、前記1回目の画像形成体の万線状凸部でなる万線パターンに、その万線パータンと同じ万線比率と同じ万線ピッチの顕像化用万線パターンが透明フィルムに形成された顕像化万線シートを、互に整合するように重ね合わせて、各々万線に対応する万線パターン領域内に形成された潜像万線パターンが顕像化される画像形成体を提供できる。
【0027】
上記の本発明の画像形成体は、この画像形成体上に、所定の万線シートを重ね合わせると、潜像パターンが浮かび上がるという「万線モアレ」偽造防止技術を応用してあるので偽造防止が一層向上するものである。
【0028】
この「万線モアレ」偽造防止技術についての仕組みを説明する。この第1の潜像万線凸部パターンを備えている画像形成体は、万線シートを画像形成体上に重ね合わせると、潜像パターンが浮かび上がるという「万線モアレ」を応用した画像形成体であり、これは図6(a)、(b)、および、図7に示すような仕組みとなっており、特開2001−213042号公報に開示されている技術を本発明に適用することが可能である。
【0029】
図6(a)は、紙基材3にエンボス形成された同一線幅の多数本の平行な直線をその線幅と同一ピッチ(等間隔)で配置した平行直線により構成された万線凸部パターンを平面図で表したものである。
【0030】
図6(a)に示す万線凸部パターン4には、潜像万線凸部パターン4a(例えば、図示するようにハート形パターン部分)を備え、この万線凸部パターン4における潜像万線パターン4aは、図6(b)のB部分拡大図に示すように、潜像万線凸部パターン4aの内側領域と外側領域のそれぞれ平行直線(万線)のピッチ位相を両領域の境界相当部分(潜像万線凸部パターン4aの輪郭線)に沿って半ピッチ分ずらすことにより形成されている。
【0031】
図7に示すように、この画像形成体(図6(a))上に、透明フィルム5面に画像形成体の万線パターン4と同じ線幅とピッチの万線パターン6を形成した万線シートCを平行に重ね合わせると、画像形成体に形成されている万線凸部パターン4の潜像パターン部4aの内側領域と外側領域のそれぞれ万線は半ピッチ分ずれているために、万線パターン6の万線と、画像形成体に形成されている万線凸部パターン4の潜像万線パターン4aの内側領域と外側領域の半ピッチ分ずれているそれぞれ万線とに、互いに重なり合う(万線凸部パターン4の万線が隠れる)部分と、重なり合わない(万線凸部パターン4の万線が隠れない)部分が発生する。
【0032】
その結果、例えば、万線パターン6の万線と重なり合わない万線凸部パターン4の万線が、潜像万線凸部パターン4a(例えば、図示するようにハート形パターン部)領域内の万線凸部パターン4を構成する万線であれば、その万線が万線パターン6の各万線(不透明線;黒線)の間の透明部分(透明線;白線)を透して目視にて観察されて潜像万線凸部パターン4aが顕像化して、ポジティブ画像の顕像画像として観察される。
【0033】
他方、例えば、万線パターン6の万線と重なり合わない万線凸部パターン4の万線が、潜像万線凸部パターン4a(例えば、図示するようにハート形パターン部)領域外の万線凸部パターン4を構成する万線であれば、その万線が万線パターン6の各万線(不透明線;黒線)の間の透明部分(透明線;白線)を透して目視にて観察されて潜像万線凸部パターン3aは顕像化して、ネガティブ画像の顕像画像として観察される。
【0034】
なお、上記の潜像万線凸部パターンを複数種を組み合わせ、この画像形成体の万線凸部パターン上に万線シートを重ね合わせて、その各々万線角度に整合する(平行となる)角度にて重合した際に、その角度に対応する潜像万線凸部パターンによる潜像パターンを顕像化させることもできる。
【0035】
さらに、本発明の画像形成体において、1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凸部でなる潜像パターンを有する複数種の画像が合成されている潜像パターンを有する画像形成体であって、この画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化される画像形成体を提供できる。
【0036】
上記の本発明の画像形成体は、この画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数
種の画像の潜像パターンが顕像化されるので、デザイン性や美粧性が向上するものである。したがって、本発明により、株券、商品券、金券、債券あるいはクレジットカード等有価証券等の媒体に用いられる、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、デザイイン性、美粧性に優れる、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することができる。
【0037】
上記の画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化される技術については、特開2005−335153号公報に開示されている技術を本発明に適用することができる。この画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化される仕組みについて説明する。例えば、図8(a)に示すように、文字「凸」のパターンの領域内は、横(水平)方向に延びる万線状凸部7でなる潜像部9とし、この潜像部9以外の領域は、縦(垂直)方向に延びる万線状凸部8でなる背景部10とした画像形成体であり、この画像形成体を手前斜め上(視点D)から観察すると、図8(b)に示すように、潜像部9である「凸」の文字が背景部10上に顕像化される(浮かび上がって見える)。また、この画像形成体を後方斜め上(視点E)から観察すると、図8(c)に示すように、潜像部9である「凸」の上下逆文字が、背景部10上に顕像化され(浮かび上がって見え)るものであり、さらに、図8(d)および図8(e)に示すように、右側斜め上(視点F)および左側斜め上(視点G)から観察すると潜像部9である「凸」の文字が背景部10上に白く(ネガ状に)顕像化される(浮かび上がって見える)ようにもなる
さらに、本発明の画像形成体において、前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群が複数組集合してなる画像形成体であって、このパターンの見る角度を変化させると濃淡や輝きが変化する画像形成体を提供できる。
【0038】
上記の画像形成体により、この画像形成体を見る角度を変化させて観察すると、万線状凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂「オパール効果」を有するので、デザイン性や美粧性が向上するものである。したがって、本発明により、株券、商品券、金券、債券あるいはクレジットカード等有価証券等の媒体に用いられる、使用後に機械的(光学的)読み取りを可能とし、デザイン性、美粧性に優れる、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することができる。
【0039】
上記のオパール像は、特開2003−72219号公報に開示されている技術を本発明に適用することができる。例えば、図9の斜視図に示すように、オパール像とは、紙基材12上に、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群13(1),13(2),13(3)が3組集合していて、それぞれの万線状波形凹凸パターン群における万線方向を3方向に変化する(オパール効果という)エンボスパターンでなる像11のことで、このオパール像11を見る角度を変化させると万線状凹凸パターン群13(1),13(2),13(3)の濃淡や輝きが変化する所謂オパール効果を有する画像形成体である。図10に、比較的小さいピッチの万線状波形凹凸パターン群14(1)、14(2)からなる2方向の万線状凸部パターンがエンボスされているオパール像14を例示してある。
【0040】
上記で得られる本発明の画像形成体は、いずれも、図5で示すように、紙基材にエンボス加工による、例えば、万線状凹凸パターンからなる第1のパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による、例えば、凸状「T」字形状パターンからなる他の第2のパターンが形成されて、第2のパターン2の凸部の上部および両側部に、それぞれ第1のパターンの凸部1a(2)および1a(1),1a(1′)が形成された構造のパターンが1つ以上からなることで、第1のパターンの1版目と第2のパターンの2版目の分版が非常に困難であるために偽造・複製が不可能である。
【0041】
即ち、図5で示す本発明の画像形成体を1版(1回通し)でエンボスを施して得るためには、図11で示す、凸状「T」字形状パターンからなる第2のパターン2の凸部の上部および両側部に、それぞれ万線状凹凸パターンからなる第1のパターンの凸部1a(2)および1a(1),1a(1′)が形成されたエンボス版15を必要とする。しかしながら、このエンボス版においては、上部のに形成される凸部パターンの製版に関してはレーザー彫刻により可能であるが、両側面凸部パターンに関しては側面に角度を付けて形成することは現行の技術では不可能である。仮に、上記のエンボス版15の製版が可能であったとしても、通常のエンボス加工法では第2のパターン2の両側部の凸部1a(1),1a(1′)の角度の付いたパターンを形成することは不可能である。
【0042】
また、上記の画像形成体を得るためには、図12で示す、上記のエンボス版15を雌型エンボス版として、この雌型エンボス版に対応する雄型エンボス版16による雄雌型エンボス版を必要とするが、このエンボス方法においては、側面凸部パターンを有する雄版が雌版に嵌合できず、側面凸部パターンの再現は不可能であり、偽造・複製が不可能となるものである。
【0043】
そして、本発明の画像形成体の一回目のエンボスで施す第1のパターンに、万線シートを印刷物上に重ね合わせると、潜像パターンが浮かび上がるという「万線モアレ」を応用した偽造防止技術、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化される偽造防止技術、または、見る角度を変化させると万線状凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂「オパール効果」を付与する技術を適用することにより、偽造防止を一層向上するとともに、デザイン性、美粧性にも優れる、カラーコピーやスキャナー等による偽造・複製の防止用として施す画像形成体を提供することができる。
【0044】
本発明において用いられる紙基材等の基材において、紙基材としては、シート状基材として用いられる紙としては特に制限はないが、有価証券用紙等を構成する従来公知の一般の紙基材が用いることができる。例えば、坪量20g/m2〜300g/m2位のもの、好ましくは、坪量60g/m2〜250g/m2位のものを使用することができる。さらに、紙基材として、アルミニウム箔貼合紙、アルミニウム蒸着紙、または、アルミニウムペースト印刷紙等の金属光沢紙を用い、その金属光沢表面にパターンを形成するのが好ましい。また、本発明において用いられるシート状基材は、紙基材に限定されるものではない。
【0045】
また、本発明におけるエンボス加工については、特に限定されるものではなく、公知のエンボス加工技術を適用できる。例えば、表面に凹凸パターンが形成された金属製彫刻ロール(エンボスロール)およびそれと対になる受けロールにより、紙基材等の基材の表面に凹凸パターンを付けるものである。金属製彫刻ロールと対になるロールは、その材質によって金属ロールやゴム、樹脂等からなる弾性ロール、ペーパーロール等を使用することができる。また、受けロールに金属ロールを用いた場合、両ロールとも金属製であるため、両ロールの間にクリアランス調整可能な2本の金属ロール間を紙基材等の基材を走行させてエンボス加工を施す。
【0046】
彫刻ロールの凹凸パターンは、レーザー加工法により彫刻することが最も好ましい。レーザー加工法は、ロール外周に直接レーザー光線を照射してパターンを彫刻する方法であり、レーザー加工法により彫刻されたパターンは、機械加工法により彫刻されたパターンと比較して繊細である。パターンが繊細になる程、ロールの彫刻部の寸法精度、耐圧縮永久ひずみ、反発弾性等の性能が要求される。
【0047】
レーザー加工法を用いる場合、コンピュータによる画像処理を併用することが好ましい。コンピュータによる画像処理を用いてパターンを電子的に設計し、それを装置によって
物理的に実現することが可能である。コンピュータによる画像処理を用いてパターンを電子的に設計すると、拡大、縮小、凹凸反転等の処理が可能なので、意匠性に優れるパターンを容易に作製することができるので好ましい。また、つなぎ目が無いパターンの作製ができる点も好ましい。
【0048】
本発明において、基材である紙にエンボス加工を行なう際、パターンの深さの調整は、彫刻ロールの彫刻深度やエンボス加工時の線圧等によって行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1の万線状凹凸パターンからなる第1のパターンの一例の一部を示す模式斜視図である。
【図2】本発明における2回目のエンボス加工用の凸状「T」字形状パターンを1つ以上を有するエンボス版のその1つの凸状「T」字形状パターンを示す模式斜視図である。
【図3】1回目のエンボス加工を施してなる第1の万線状凹凸パターンの領域の一部に、凸状「T」字形状パターンを1つ以上を有するエンボス版を用いて2回目のエンボスを施した状態(ここでは、1の凸状「T」字形状パターン部のみを示す)の模式斜視図である。
【図4】図3における視点Aから見た凸状「T」字形状パターン部の一部拡大図であって、第2のパターンの凸状「T」字形状パターン上部および側部に第1のパターンの万線状凸部パターンの凸部が形成されている状態を示す模式斜視図である。
【図5】図4におけるA面における模式断面図である。
【図6】本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが潜像万線凸部パターンを有する画像形成体に、透明フィルムに形成された顕像化万線シートを用いて潜像万線パターンが顕像化される仕組みを説明する模式平面図である。
【図7】本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが潜像万線凸部パターンを有する画像形成体に、透明フィルムに形成された顕像化万線シートを用いて潜像万線パターンが顕像化される仕組みを説明する模式平面図である。
【図8】本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凸部でなる潜像パターンを有する複数種の画像が合成されている潜像パターンを有する画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化される仕組みを説明する模式平面図である。
【図9】本発明における1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群が複数組集合してなるパターンからなるオパール像を有する画像形成体を見る角度を変化させて観察すると、万線状波形凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂「オパール効果」の仕組みを説明する模式平面図である。
【図10】波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群が2組集合してなるオパール像の一例を示す模式平面図である。
【図11】本発明の画像形成体をエンボス1版(1回通し)で形成することが不可能であることを説明するためのエンボス版の模式断面図である。
【図12】本発明の画像形成体をエンボス1版(1回通し)で形成することが不可能であることを説明するためのエンボス版の模式断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・万線状凹凸パターン(第1のパターン)
1a・・・万線状凸部
1b・・・万線状凹部
1a(1)、1a(1′)・・・凸状「T」字形状パターン側部に形成された万線状凸部1a(2)・・・凸状「T」字形状パターン上部に形成された万線状凸部
2・・・凸状「T」字形状パターン(第2のパターン)
3・・・紙基材等の基材
4、6・・・万線パターン
4a・・・潜像万線パターン
5・・・透明フィルム
C・・・顕像化万線シート
7・・・「凸」画像の潜像パターンの万線状凸部
8・・・「凸」画像の背景部の万線状凸部
9・・・「凸」画像の潜像パターン
10・・・「凸」画像の背景部
11、14・・・オパール像
12、16・・・紙基材
13(1)、13(2)、13(3)・・・オパール像の万線状波形凹凸パターン群
14(1)、14(2)・・・オパール像の万線状波形凸部パターン群
15・・・エンボス版(雌型エンボス版)
16・・・雄型エンボス版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材等の基材にエンボス加工による凹凸からなるパターンが形成された領域に、更に他のエンボス加工による凹凸からなる他のパターンが形成されてあることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記紙基材等の基材が、アルミニウム箔貼合紙、アルミニウム蒸着紙、または、アルミニウムペースト印刷紙等の金属光沢紙であって、その金属光沢表面に前記パターンを形成することを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【請求項3】
前記複数回のエンボス加工による凹凸からなる複数の異なるパターンが、1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンに対して、2回目のエンボス加工による第2のパターンを施し、この第2のパターンの凸部上部および側部に、前記第1のパターンの凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成体。
【請求項4】
前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凹凸パターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成体。
【請求項5】
前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凹凸パターンからなる線部と非線部の万線比率が1:1の同一万線ピッチによる万線状凸部でなる複数種の万線パターンが形成され、その万線パータンのうち1ないし複数種の万線パータン領域内にその万線パターンに対して万線位相を半ピッチ分だけずらして形成した潜像万線パターンを備えている画像形成体であって、
2回目のエンボス加工による第2のパターンを施した後、前記1回目の画像形成体の万線状凸部でなる万線パターンに、その万線パータンと同じ万線比率と同じ万線ピッチの顕像化用万線パターンが透明フィルムに形成された顕像化万線シートを、互に整合するように重ね合わせて、各々万線に対応する万線パターン領域内に形成された潜像万線パターンが顕像化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成体。
【請求項6】
前記前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、万線状凸部でなる潜像パターンを有する複数種の画像が合成されている潜像パターンを有する画像形成体であって、
この画像形成体を観察すると、観察視点に対応して複数種の画像の潜像パターンが顕像化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成体。
【請求項7】
前記1回目のエンボス加工を施してなる第1のパターンが、波形凹凸を万線状に配列した万線状波形凹凸パターン群が複数組集合してなる画像形成体であって、
この画像形成体の見る角度を変化させると濃淡や輝きが変化することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成体。

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−49517(P2008−49517A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226304(P2006−226304)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】