説明

画像形成方法、これを用いた個人認証媒体、その判定装置

【課題】偽変造防止性能に優れ、真偽判定が容易な画像を有する個人認証媒体を得る。
【解決手段】基材と、パール顔料を含有する溶融型熱転写インクを用いて、基材上に形成されたパール顔料インク画像層とを具備し、パール顔料インク画像層を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍であり、溶融型熱転写インクは、光の3原色に応じた干渉光の色を持つパール顔料を各々使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽変造防止及び真偽判定のための特殊画像が形成された個人認証媒体及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、従業員証や会員証等のように、所有者本人の証明を目的とする顔画像入り証明書を染料熱拡散記録方式や感熱溶融記録方式を応用して作成するシステムが実用化されている。これらの証明書は不正使用を防止する必要があり、偽変造が困難で、且つ、真贋判定が容易なものの提供が求められている。
【0003】
これらの求めに対応できる公知技術として、キャッシュカード等に実用化されている証明書面内へのホログラム及びシール等の付加が挙げられる。しかしながら、ホログラム及びシール等は、個別の情報を付加することが困難で、偽変造が比較的容易、且つ大量に作成することが容易という不都合があった。
【0004】
真偽判定が容易であり、及び偽変造が困難であるという要求を同時に満たす技術として、干渉色をもつパール顔料を用いて、顔画像等の個人認証向け画像をフルカラーで形成する方法が提案されている(例えば、特許公報1参照)。
【0005】
しかしながら、この画像形成方法では、干渉色が視認しにくく、色再現性が悪かったり、画像の輪郭がぼやけるという問題があった。
【特許文献1】特願2001−376040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記事情を鑑みてなされたもので、偽変造防止性能に優れ、真偽判定が容易な画像を有する個人認証媒体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成方法は、パール顔料を含有する溶融型熱転写インクを用いて画像を熱転写記録する工程を含む画像形成方法であって、該画像を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍であり、該パール顔料を含有する溶融型熱転写インクとして、イエロー色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、マゼンタ色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及びシアン色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクの3種のインクの組合せのうち少なくとも2種、または赤色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、緑色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及び青色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクの3種のインクの組合せのうち少なくとも2種が使用できる。
【0008】
本発明の個人認証媒体は、基材と、パール顔料を含有する溶融型熱転写インクを用いて、該基材上に形成されたパール顔料インク画像層とを具備し、該パール顔料インク画像層を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍であり、該パール顔料を含有する溶融型熱転写インクとして、イエロー色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、マゼンタ色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及びシアン色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクの3種のインクの組合せのうち少なくとも2種、または赤色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、緑色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及び青色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクの3種のインクの組合せのうち少なくとも2種が使用できる。
【0009】
また、本発明の判定装置は、基材、及び赤色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、緑色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及び青色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクのうち少なくとも2種を用いて該基材上に形成されたパール顔料インク画像層とを具備し、該パール顔料インク画像層を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍である個人認証媒体の判定装置であって、
該パール顔料インク層に光を照射するための光源と、
該パール顔料インク層にて反射された反射光を受光するための受光部と、
該受光部にて受光した光の光量に応じて該パール顔料インク層に使用されているパール顔料の真偽を判定する判定部と、
これらを制御するための制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偽変造防止性能に優れ、真偽判定が容易な画像を有する個人認証媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にかかる画像形成方法は、干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクを用いて、画像を形成する工程を含む。
【0012】
また、本発明にかかる個人認証媒体は、基材と、基材上にパール顔料を含有する溶融型熱転写インクを用いて形成されたパール顔料インク画像層とを含む。
【0013】
本発明に使用されるパール顔料を含有する溶融型熱転写インクは、その干渉色が色の三原色である2つの組合せから選択される。一方は、イエロー、シアン、及びマゼンタ色の干渉色を有する組合せ、他方は、赤、青、及び緑色の干渉色を有する組合せである。
【0014】
上記溶融型熱転写インクを用いて形成されたパール顔料インク画像層を構成するドットまたはラインの中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍である。
【0015】
上記3原色のいずれかの組合せの干渉色を有する溶融型熱転写インクを使用し、例えば溶融型熱転写インクリボンを作成して、被転写材に直接あるいは溶融型熱転写インク用受容層等上に当接し、支持体側に熱転写記録部材例えばサーマルヘッドを適用して、ドットのサイズを変化させながら階調記録を行い、その干渉色がフルカラーとなる転写画像例えば写真画像等を形成することにより、個人認証媒体を容易に得ることができる。溶融型熱転写インク用受容層は、予め、被転写材の基材表面に形成することが出来る。あるいは、受像層を支持体上に形成し、この上に画像等を形成した後、これを被転写材上に転写することができる。
【0016】
本発明に用いられるパール顔料インク画像層は、見た目はパール顔料の干渉色と補色の関係にある色から構成され得る。この画像を傾けて、斜め方向から見たとき、その干渉色からなる自然な色調のフルカラー画像が視認できる角度がある。本発明によれば、パール顔料インク画像層を構成する単位となるドットまたはラインの中心間の距離を、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍とすることにより、この干渉光による画像がより鮮明であり、視認し易くなり、正確な真偽を素早く容易に判定することができる。
【0017】
本発明に用いられるパール顔料インク画像層は、パール顔料を含む溶融型熱転写インクリボンを用いて容易に形成可能であり、また、その真偽判定も単に画像を斜め方向から見るだけで特別な装置等を使用する必要がない。このため、本発明の個人認証媒体は、その形成も真偽判定も低コストであって、かつ偽変造防止性能に優れ、真偽判定が容易である。
【0018】
また、上記パール顔料は、2乃至150μmの平均粒径を有し得る。さらに、5乃至50μmの平均粒径を有するパール顔料を使用すると、ドットのサイズを比較的小さくすることができ、階調性をより豊かにすることができる。パール顔料の平均粒径が5μm未満であると、その干渉光の輝度が低下し易いことから、パール顔料はある程度の大きさが必要である。
【0019】
真偽判定は、パール顔料インク画像層の見た目の画像と、干渉色の画像とを比較しても良いし、あるいは溶融型熱転写インクまたは昇華型熱転写インクを用いて、パール顔料インク画像層に対応したパターンで形成されたもう1つの画像をさらに設け、パール顔料インク画像層の干渉色の画像と比較することもできる。
【0020】
以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る個人認証媒体の一例を示すIDカードの正面図である。
【0022】
また、図2は、図1の断面図である。
【0023】
図示するように、このIDカード5は、紙、あるいはプラスチック等を用いて形成された基材4と、その一表面上に例えば昇華型熱転写インクを用いて形成された昇華型熱転写インク顔画像2と、身分や、資格証明事項等を記載した文字情報画像1と、3色のパール顔料を含有するインクからなる感熱溶融型熱転写リボンで印刷したパール顔料インク顔画像3で構成される。なお、必要に応じて、上記昇華型熱転写インク顔画像2は省略し得る。
【0024】
このIDカード5を傾けたり、斜め方向から見ると、干渉色のみがはっきりと見える角度があり、この角度でのみ、パール顔料インク顔画像層3がフルカラーの自然な色で見える。このパール顔料インク顔画像3の干渉色の画像と、昇華型熱転写インク顔画像2とを比較することにより、IDカードの真偽を容易に判定することができる。
【0025】
また、図3に本発明に係る個人認証媒体の他の一例を表す断面図を示す。
【0026】
図に示すように、基材4上に、パール顔料インク顔画像3を介して被覆層6を設けることができる。
【0027】
被覆層6を設けることにより、パール顔料インク顔画像層3を平滑化することができるので、パール顔料インク顔画像層3表面における反射光の乱反射を抑制し、反射光をより効率良く透過し得る。
【0028】
反射光をより効率良く透過するためには、被覆層は、その屈折率が、パール顔料インク顔画像層の屈折率と同様であるか、またはその差が少ない方が良い。
【0029】
このため、被覆層に使用される材料は、パール顔料インク顔画像層に使用されるバインダー樹脂と同様のバインダー樹脂を使用することが出来る。
【0030】
被覆層は、例えば1.35ないし1.76の屈折率を有し、前記パール顔料インク画像層は例えば1.50ないし1.60の屈折率を有し得る。
【0031】
また、真偽判定は、パール顔料の真偽を見ることにより調べることが出来る。
【0032】
図4に、本発明に係る個人認証媒体の判定装置の一例の構成を表す概略図を示す。
【0033】
図示するように、この判定装置10は、判定装置10を主に制御する制御部20と、制御部20からの信号を受けて、光照射を制御する光照射制御部18と、光照射制御部18からの信号を受けてパール顔料インク画像層に、例えば白色光などの光を照射する光源11と、パール顔料インク画像層にて反射された反射光を受光する反射光受光部12と、反射光受光部12にて受光された受光データを処理して光量を求めるための受光データ処理部13と、受光データ処理部13からの光量情報に基づいて、個人認証媒体に使用されているパール顔料の真偽を判定する判定部14を有し、さらに、この判定部14に対し、各々、制御部20を介して接続された、例えば判定部14からの判定結果に基づく表示などを行う表示部15,その判定結果などの情報を必要に応じて蓄積する蓄積部16、及び利用者が判定装置10の操作を行うための操作部17が設けられている。
【0034】
この判定装置10では、まず、例えば基台19上に試料として、本発明に係る個人認証媒体を載置する。
【0035】
この個人認証媒体は、基材、及び赤色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、緑色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及び青色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクのうち少なくとも2種、またはイエロー色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、マゼンタ色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及びシアン色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクからなる群から選択される少なくとも2種を用いて該基材上に形成されたパール顔料インク画像層とを具備し、パール顔料インク画像層を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍である。
【0036】
判定しようとするパール顔料の干渉の角度が、パール顔料インク画像層表面に垂直な軸方向に対し、α°傾いた軸方向であるとき、パール顔料インク画像層表面に垂直な軸21に対し、α°傾いた軸上の位置に配置された光源11からパール顔料インク画像層に白色光を照射することができる。続いて、パール顔料インク画像層表面に垂直な軸方向に対し、光源11とは反対側にα°傾いた軸上の位置に配置された受光部12を用いて反射光を受光する。受光部12にて受光された光の受光データは、受光データ処理部13に送られて、光量情報に変換され、判定部14に送られる。判定部14では、例えば、光量情報のレベルが予め決められた閾値以上の場合に本物と判定し、閾値未満の場合には、偽物と判定することが出来る。
【0037】
干渉の角度は、例えば赤色パール顔料が0°、緑色パール顔料が5°、及び青色パール顔料が5°というように、使用するパール原料によって異なり得る。このため、光源11及び受光部12の配置は、測定しようとするパール顔料に応じて移動可能に設置するか、あるいは、図示するように、測定しようとするパール顔料の数及び干渉の角度に併せて、複数の光源11及び受光部12を、複数の固定位置に配置することが出来る。
【0038】
判定部14における判定結果は、主たる制御部20に送られ、ここでは、必要に応じて、判定結果を表示部15にて表示したり、判定結果を蓄積部16にて蓄積するなどの制御を行うことが出来る。また、この制御部20は、操作部17に接続されており、利用者は、この操作部17から例えば判定装置10のON/OFF、次の試料の判定等を指示することが出来る。
【0039】
各色のパール顔料を含有する溶融型熱転写インクは、例えばそれらを用いて形成した感熱溶融型熱転写リボンを使用して印刷することが出来る。
【0040】
パール顔料を含有するインクからなる感熱溶融型熱転写リボンは基材、背面層、インク層からなり、インク層は、パール顔料とバインダー樹脂から構成される。
【0041】
本発明に使用可能なイエロー色の干渉色を有するパール顔料としては、例えば日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカYD−100、YE−100、PEARL−GLAZE MY−2100R、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 205、249、Engelhard Corporation製Hi−Lite Suparkle Gold 9220J等があげられる。
【0042】
本発明に使用可能なマゼンタ色の干渉色を有するパール顔料としては、例えば日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカRBB−100、RBD−100、RBE−100、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 215、259、Engelhard Corporation製Hi−Lite Sparkle Orange 9320J、Hi−Lite Sparkle Red 9420J等 があげられる。
【0043】
本発明に使用可能なシアン色の干渉色を有するパール顔料としては、例えば日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカBB−100、BD−100、BE−100、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 225、289、Engelhard Corporation製Hi−Lite Suparkle Blue 9620J等 があげられる。
【0044】
本発明に使用可能な赤色の干渉色を有するパール顔料としては、例えば日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカRBD−100、RBE−100、PEARL−GLAZE MR−100R、MRB−100R、MRB−2100R、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 215、259、Engelhard Corporation製Hi−Lite Sparkle Orange 9320J、Hi−Lite Sparkle Red 9420J等を使用することができる。
【0045】
本発明に使用可能な緑色の干渉色を有するパール顔料としては、例えば日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカGB−100、GD−100、GE−100、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 231、235、299等 があげられる。
【0046】
干渉色が青色のものは、日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカBD−100、BE−100、PEARL−GLAZE MB−100R、MB−2100R、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 225、289、Engelhard Corporation製Hi−Lite Suparkle Blue 9620J等を使用することができる。
【0047】
上記のパール顔料は、2μmないし150μmの平均粒径を有し、比較的大きい粒子だが、より優れた階調特性を出すためには、5乃至50μmの平均粒径を有する比較的小さな粒子のパール顔料を使用し、ドットの大きさを小さくすることが好ましい。
【0048】
イエロー色の干渉色を有する比較的小さな粒子のパール顔料としては、日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカ YB−100、PEARL−GLAZE MY−100RF、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 201、Engelhard Corporation製Hi−Lite Super Gold 9230Z、Micro Gold 9260M、Dynacolor BY−B 9239ZB15AA、Dynacolor GY 9239ZG7A等があげられる。
【0049】
マゼンタ色の干渉色を有する比較的小さな粒子のパール顔料としては、例えば 日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカRBB−100、RBD−100、RBE−100、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 215、259、Engelhard Corporation製Hi−Lite Sparkle Orange 9320J、Hi−Lite Sparkle Red 9420J等 があげられる。
【0050】
シアン色の干渉色を有する比較的小さな粒子のパール顔料としては、例えば 日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカBB−100、BD−100、BE−100、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 225、289、Engelhard Corporation製Hi−Lite Suparkle Blue 9620J等 があげられる。
【0051】
赤色の干渉色を有する比較的小さな粒子のパール顔料としては、日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカRB−100、RBB−100、PEARL−GLAZE MRB−100RF、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 211、Engelhard Corporation製Hi−Lite Super Orange 9330Z、Hi−Lite Super Red 9430Z、Micro Orange 9360M、Micro Red 9460M、Hi−Lite Sparkle Red 9420J等を使用することができる。
【0052】
緑色の干渉色を有する比較的小さな粒子のパール顔料としては、例えば 日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカGB−100、GD−100、GE−100、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 231、235、299等 があげられる。
【0053】
青色の干渉色を有する比較的小さな粒子のパール顔料としては、日本光研工業(株)製 商品名 アルティミカBB−100、PEARL−GLAZE MB−100RF、メルク・ジャパン(株)製Iriodin/Afflair 221、Engelhard Corporation製Hi−Lite Super Blue 9630Z、Micro Blue 9660M、Dynacolor GB 9639ZG7A、Dynacolor RB 9639ZV19A等を使用することができる。
【0054】
パール顔料含有転写型熱溶融性インク及び被覆層に使用されるバインダー樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの各樹脂の混合物等があげられる。パール顔料含有転写型熱溶融性インクと被覆層に使用されるバインダー樹脂は、互いに、同等の屈折率を有するか、または屈折率の差が出来るだけ少ないバインダー樹脂を選択して使用し得る。互いに同等の屈折率を有するバインダー樹脂としては、同様の繰り返し単位を有する樹脂、さらには分子量が同様であるバインダー樹脂を選択して使用し得る。
【0055】
酢酸ビニル樹脂としては、例えば、電気化学工業(株)サクノールSN−04、サクノールSN−04S、サクノールSN−04D、サクノールSN−09A、サクノールSN−09T、サクノールSN−10、サクノールSN−10N、サクノールSN−17A、ASR CH−09、ASR CL−13、クラリアントポリマー(株)製モビニールDC、ダイセル化成品(株)製セビアンA530、セビアンA700、セビアンA707、セビアンA710、セビアンA712、セビアンA800等があげられる。
【0056】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂としては、例えば、三井デュポンポリケミカル(株)製エバフレックス45X、エバフレックス40、エバフレックス150、エバフレックス210、エバフレックス220、エバフレックス250、エバフレックス260、エバフレックス310、エバフレックス360、エバフレックス410、エバフレックス420、エバフレックス450、エバフレックス460、エバフレックス550、エバフレックス560、クラリアントポリマー(株)製モビニール081F、住友化学工業(株)製エバテートD3022、D3012、D4032、CV8030、ヒロダイン工業(株)製ヒロダイン1800−5、ヒロダイン1800−6、ヒロダイン1800−8、ヒロダイン3706、ヒロダイン4309、コニシ(株)製ボンドCZ250、ボンドCV3105等があげられる。
【0057】
アクリル樹脂としては、例えば、ダイセル化成品(株)製セビアンA45000、セビアンA45610、セビアンA46777、セビアンA4635、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−53、ダイヤナールBR−64、ダイヤナールBR−79、ダイヤナールBR−80、ダイヤナールBR−83、ダイヤナールBR−85、ダイヤナールBR−87、ダイヤナールBR−90、ダイヤナールBR−93、ダイヤナールBR−101、ダイヤナールBR−102、ダイヤナールBR−105、ダイヤナールBR−106、ダイヤナールBR−107、ダイヤナールBR−112、ダイヤナールBR−115、ダイヤナールBR−116、ダイヤナールBR−117、ダイヤナールBR−118等があげられる。
【0058】
ポリエステル樹脂としては、例えば、東洋紡績(株)製バイロン103、バイロン200、バイロン220、バイロン240、バイロン245、バイロン270、バイロン280、バイロン296、バイロン300、バイロン500、バイロン530、バイロン550、バイロン560、バイロン600、バイロン630、バイロン650、バイロナールMD1100、バイロナールMD1200、バイロナールMD1245、バイロナールMD1400、バイロナールGX−W27、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3200、エリーテルUE−3300、エリーテルUE−3320、エリーテルUE−3350、エリーテルUE−3370、エリーテルUE−3380等があげられる。
【0059】
また、インク層には、ワックスを添加することができる。このようなワックスとしては、例えばポリエチレンワックスやカルナバワックス等が好ましく使用できる。例えば、日本精蝋(株)製Hi−Mic−2065、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−2045、PALVAX−1230、PALVAX−1330、PALVAX−1335、PALVAX−1430、BONTEX−0011、BONTEX−0100、BONTEX−2266等があげられる。
【0060】
これらのパール顔料とバインダー樹脂を用いて作成するインクリボンのインク層の厚みは0.3〜3μmが望ましい。0.3μm未満であると、十分な画像濃度が得難く、このため、コントラストのはっきりしない画像となり、厚すぎると小さなドットを印刷するのが困難となり、階調特性に影響が出る。
【0061】
実施例
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0062】
支持体として、厚さが6μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品型番:ルミラーF531)を用意し、その片面に、下記組成のインク層塗布液を、グラビアコーターを用いて、乾燥後の塗膜厚みが1μmになるように塗布し、120℃で2分間、加熱、乾燥して、パール顔料を含有するインクからなる各色の感熱溶融型熱転写リボンを得た。
【0063】
メチルエチルケトン 40重量部
トルエン 40重量部
東洋紡(株)製バイロン220 14重量部
表1〜4に記載のパール顔料 6重量部
以上のようにして得たパール顔料を含有するインクからなる感熱溶融型熱転写リボンを用いて、市販のカード上に、600dpiのサーマルヘッドで、各色のインク画像のドット間距離が表1〜4の数値になるように調整し、干渉色がフルカラー画像になるように記録し、パール顔料インク画像層を得た。
【0064】
得られたパール顔料インク画像層の干渉色画像の視認性を目視で観察した。
【0065】
その結果、干渉色が視認しやすく、色再現性が良好で、画像の輪郭が鮮明であるものを○、干渉色の視認性、色再現性、画像の輪郭の鮮明さのいずれかが良好であるものを△、干渉色の視認性、色再現性、画像の輪郭の鮮明さのいずれも良好でないものを×とそれぞれ評価した。
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
上記表1ないし4から、例えば実施例1ないし16に示すように、ドット間距離/平均粒径の比が0.5ないし100の範囲内であると、干渉光画像の視認性が非常に良好となるが、例えば比較例1,2,5,6,9,10,13,及び14のように、上記範囲を少しはずれると、干渉光画像の視認性が若干悪くなり、さらに、比較例3,4,7,8,11,12,15,及び16のように、上記範囲を大幅にはずれたり、ドットが重なって、ドット間距離が0になったりすると、干渉光画像の視認性が悪化することがわかる。
【0070】
また、実施例9ないし12に示すように、パール顔料の体積平均粒径が50μmより大きいと、干渉色視認性が、多少低下する傾向があった。
【0071】
このように、本発明によれば、偽変造防止性能に優れ、干渉光画像の視認性が良好で真偽判定が容易な画像を有する個人認証媒体が得られる。
【0072】
また、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 商品名:ルミラー)の表面に、グラビアコーターを用いて、乾燥後の塗膜厚みが1ないし5μmになるように、被覆層塗布液1を塗布して乾燥した後、乾燥後の塗膜厚みが10ないし20μmになるように、被覆層塗布液2を、塗布、乾燥して、被覆層熱転写シートを形成した。
【0073】
被覆層塗布液1組成
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製 商品名:ダイヤナールBR−83)20重量部
メチルエチルケトン 40重量部
トルエン 40重量部
被覆層塗布液2組成
ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 商品名:バイロン220) 20重量部
メチルエチルケトン 40重量部
トルエン 40重量部
得られた被覆層熱転写シートを使用して、パール顔料インク画像層上に、熱転写により被覆層を形成した。
【0074】
被覆層を形成したパール顔料インク画像層と、被覆層を形成していないパール顔料インク画像層との干渉色画像の視認性を目視で観察したところ、比較例1ないし16については、大きな違いは見られなかったが、実施例1ないし16については、その視認性がより良好になった。
【0075】
また、パール顔料インク画像層の屈折率は、1.55ないし1.56、被覆層の屈折率は1.48ないし1.50であった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明にかかる個人認証媒体の一例を表す正面図
【図2】図1の断面図
【図3】本発明に係る個人認証媒体の他の一例を表す断面図
【図4】本発明に係る個人認証媒体の判定装置の一例の構成を表す概略図
【符号の説明】
【0077】
1…文字情報画像、2…昇華型熱転写インク顔画像、3…パール顔料インク顔画像層、4…基材、5…IDカード、6…被覆層、10…、11…、12…、13…受光データ処理部、14…判定部、15…、16…蓄積部、17…操作部、18…光照射制御部、19…基台、20…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエロー色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、マゼンタ色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及びシアン色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクからなる群、または赤色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、緑色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及び青色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクからなる群から選択される少なくとも2種を用いて、基材上に、パール顔料インク画像層を形成する工程を含む画像形成方法において、該パール顔料インク画像層を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍である画像形成方法。
【請求項2】
前記パール顔料は、各々、2ないし150μmの粒径を有する請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記画像形成後、該パール顔料インク画像層を介して基材上に被覆層を形成する工程をさらに具備し、前記パール顔料を含有する溶融型熱転写インク及び前記被覆層は、各々、同様のバインダー樹脂を含有する請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記被覆層の屈折率は、前記パール顔料インク画像層の屈折率の10%以内である請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
基材と、
イエロー色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、マゼンタ色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及びシアン色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクからなる群、または赤色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、緑色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インク、及び青色の干渉色を有するパール顔料を含有する溶融型熱転写インクからなる群から選択される少なくとも2種を用いて該基材上に形成されたパール顔料インク画像層とを具備し、
該パール顔料インク画像層を構成する点または線の中心間の距離は、使用されるパール顔料の平均粒径の中で一番大きい平均粒径に対し、0.5ないし100倍である個人認証媒体。
【請求項6】
前記パール顔料は、各々、2ないし150μmの粒径を有する請求項5に記載の個人認証媒体。
【請求項7】
前記基材上に該パール顔料インク画像層を介して設けられた被覆層をさらに具備し、前記パール顔料を含有する溶融型熱転写インク及び前記被覆層は、各々、同様のバインダー樹脂を含有する請求項5に記載の個人認証媒体。
【請求項8】
前記被覆層の屈折率は、前記パール顔料インク画像層の屈折率の10%以内である請求項7に記載の個人認証媒体。
【請求項9】
溶融型熱転写インクまたは昇華型熱転写インクを用いて、前記パール顔料インク画像層に対応したパターンで形成されたもう1つの画像を具備する請求項5に記載の個人認証媒体。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の個人認証媒体の判定装置であって、
前記パール顔料インク画像層に、光を照射するための光源と、
該パール顔料インク画像層にて反射された反射光を受光するための受光部と、
該受光部にて受光した光の光量に応じて該個人認証媒体に使用されているパール顔料の真偽を判定する判定部と、
これらを制御するための制御部とを具備する判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−45931(P2009−45931A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193925(P2008−193925)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】