画像形成方法、該方法を実行可能な画像形成装置
【課題】オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電工程を省略可能な画像形成方法、電位コントラストの大きい静電潜像形成を行うことのできる画像形成装置を提供。
【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記潜像形成部は、潜像形成光照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより、潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部は、トナーを前記像担持体表面へ供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナーを被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去する。
【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記潜像形成部は、潜像形成光照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより、潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部は、トナーを前記像担持体表面へ供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナーを被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを用いた複写機などの画像形成装置を用いた画像形成方法に関し、また、このような画像形成方法を実行可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機などにおける電子写真プロセスは、次のような工程(1)〜(5)により画像形成が行われてきた。
(1)帯電、(2)露光(書き込み)、(3)トナー現像、(4)トナー転写、(5)トナー定着
このような発明として特許文献1〜5の発明などが知られている。
一方、特許文献6には、上記した電子写真プロセスの工程(1)〜(5)において、(1)の帯電工程を省く発明が開示されている。これは、導電性支持体上に、少なくとも正孔輸送物質を含有する正孔輸送層、電荷発生層を順次積層した構成を有する像担持体を用いて、光照射と同時にプラスバイアス印加により潜像形成を行なうことを特徴とするものである。このことにより、オゾン、NOx生成物を発生する放電を伴う帯電工程をなくすことが出来る。
【0003】
しかし、この公報に開示された方法では、バイアス印加と同時に光書き込み機構が複雑であり、且つ電子写真プロセス周りが大型化する可能性がある。また外部バイアス印加のときに、像担持体と外部バイアス印加部材の間に、トナー、現像剤、紙粉などの異物が介在した場合、像担持体へのバイアス印加が不均一となり、濃度ムラなどの問題が発生する惧れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電工程を省略可能な画像形成方法を提供し、また電位コントラストの大きい静電潜像形成を行うことのできる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の(1)〜(5)に示す課題を解決する手段により、前記目的が達成できることを発見して本発明を成すに至った。
(1)導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記潜像形成部は、潜像形成光の照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部はトナーを前記像担持体の表面に供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナー像を被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去することを特徴とする。
(2)(1)に記載の画像形成方法において、前記上部電極に直流バイアスを印加することにより、トナーを除去することを特徴とする。
(3)(1)に記載の画像形成方法において、前記像担持体の上部電極に交流バイアスを印加することにより、トナーを除去することを特徴とする。
(4)(1)に記載の画像形成方法において、前記像担持体の上部電極に直流バイアスに交流バイアスを重畳して印加することにより、トナーを除去することを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像形成方法を実行可能な画像形成装置であって、像担持体と、潜像形成部、トナー現像部、転写部、クリーニング部、除電部とを備え、前記像担持体が、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電工程をなくし、小型で、長期的使用においても電位ムラが少ない、クリーニング性が向上した直接潜像形成を行う画像形成方法、これを実行可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の像担持体の構成の1例を示す説明断面図である。
【図2】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図3】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図4】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図5】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図6】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図7】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図8】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図9】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図10】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図11】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図12】本発明の静電潜像形成のメカニズムを示す図である。
【図13】本発明の画像形成装置を説明する概略図である。
【図14】ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造よりなる保護層を形成する際に用いるプラズマCVD装置の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記潜像形成部は、潜像形成光の照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部は、トナーを前記像担持体表面に供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナーを被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去する画像形成方法を特徴とする。
このような感光体である像担持体及び画像形成プロセスを用いることにより、オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電行程をなくし、トナークリーニング特性を向上させた静電潜像形成するための像担持体周りのプロセスを簡略化した画像形成方法を提供することができる。
【0009】
先ず本発明の画像形成方法に用いられる像担持体の構成例について説明する。
図1は、本発明の画像形成方法に用いられる像担持体の基本的な構成例を示す図である。1は導電性支持体であり、2は感光層であり、3は電極を示す。図1(A)は像担持体である感光体を上から見た図であり、(B)は、その側面の断面図である。図1(B)に示すように、本発明の画像形成方法に用いられる像担持体は導電性支持体1上に感光層2、電極3、を順次積層した構造を有している。図2は、本発明に用いられる別の像担持体の構成例を示す図であり、(A)は像担持体である感光体を上から見た図であり、(B)は、その側面の断面図である。図2(B)に示す像担持体の構成例では導電性支持体1上に感光層2、電荷保持層4および電極3を順次積層した構造を有する。図3は、本発明のまた別の像担持体の構成例を示す図であり、(A)は像担持体である感光体を上から見た図であり、(B)は、その側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電極(縞状電極)3を順次積層した構造を有する。図4は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電荷保持層4、電極(縞状電極)3を順次積層した構造を有する。図5は、本発明に用いられるさらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電極(格子状電極)3を順次積層した構造を有する。図6は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電極(格子状電極)3、保護層5を順次積層した構造を有する。図7は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電荷保持層4、電極3、保護層5を順次積層した構造を有する。図8は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に電荷輸送層2a、電荷発生層2b、電極3、保護層5を順次積層した構造を有する。図9は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示す図である。この図では導電性支持体1上に電荷輸送層2a、電荷発生層2b、電荷保持層4、電極3を順次積層した構造を有する。図10は、本発明に用いられるさらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に電荷発生層2b、電荷輸送層2a、電極3を順次積層した構造を有する。図11は、本発明に用いられるさらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に電荷発生層2b、電荷輸送層2a、電荷保持層4、電極3を順次積層した構造を有する。
【0010】
図12は、画像形成方法における画像形成のメカニズムを示した図である。
図12(A)に示すように、本発明では像担持体の上部電極にプラスバイアスを印加しながら、像担持体表面から光書き込みを行う。図12(B)に示すように、露光により生成された光キャリアは、正孔及び電子に分離し、上部電極により形成された電界に従い、電子が像担持体表面側に、また正孔が導電性支持体側に移動する。その後、図12(C)で示すように、上部電極へのバイアス印加を停止し、フロート状態もしくは接地状態とすると、上部電極に被覆されていない部分に電子が残存し、静電潜像が形成される。
【0011】
次に図面を用いて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
図13は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図の一例である。
(I)像担持体6の上部電極にバイアスを印加し、露光部7により、光書き込みを行う。光書き込み後も像担持体6へバイアスを印加し、静電潜像を形成する。
(II)像担持体6へのバイアス印加を停止し、現像部(トナー現像部)8においてトナーにより現像する。
(III)像担持体6上に現像されたトナー像を転写部9で被転写材Pに転写する。
(IV)像担持体6表面に残存するトナーをクリーニング部10で像担持体6の上部電極にバイアスを印加し、クリーニングブレード及びブラシを当接させ、残存トナーを除去し、像担持体6表面の残存電位を除電部11で除電する。
このときに上部電極に印加するバイアスは、トナーと同極性の直流バイアスを印加することができる。このバイアス印加により、像担持体表面に静電的な力で保持されていたトナーが像担持体表面から脱離しやすくなり、トナークリーニング性が向上する。
【0012】
この直流バイアスは、通常、極性トナー(現像部で印加された極性)と同極性の5V以上100V以下の電位のバイアスが好ましい。
さらに、上部電極に交流バイアスを印加することが好ましい。この場合、像担持体表面に残存している通常の極性トナーだけでなく、わずかに残存している逆極性トナーも同時クリーニングしやすくなる。この場合の交流バイアスとしては、Vppが100V〜500V、周波数が0.5〜2.0kHzが好ましい。
さらに直流バイアスと交流バイアスを重畳して印加することが好ましい。この場合の直流バイアス成分は、通常極性トナーと同極性の5V以上100V以下のバイアスであり、交流バイアス成分は、Vppが100V〜500V、周波数が0.5〜2.0kHzが好ましい。
【0013】
以下、本発明に用いられる像担持体について詳細に説明する。
本発明に用いられる像担持体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層、該感光層を被覆している部分と被覆されていない部分を有する上部電極、表面保護層が順次積層された構成のものであればよく、その他の層等が任意に組み合わされていても構わない。
【0014】
<導電性支持体について>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
【0015】
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0016】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0017】
<感光層について>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
【0018】
<感光層が単層のもの>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質とバインダー樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤等を添加することもできる。
【0019】
電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0020】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる
【0021】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0022】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、必要により酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0024】
感光層の作製方法としては、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などがあげられる。これらに用いられる塗工液は、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を、必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗工液を調製し、この塗工液を塗布し乾燥することにより、形成できる。
感光層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは10〜35μm程度が適当である。
感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層に含有されるバインダー樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量%が良好に用いられる。
【0025】
<感光層が積層構成のもの>
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じて前述のバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、前述した無機系材料と有機系材料を用いることができる。また、必要により前述の可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からの浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などが使用できる。
真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0026】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質、バインダー樹脂を主成分とする層である。電荷輸送物質としては、前述の正孔輸送物質及び電子輸送物質を用いることが出来、バインダー樹脂をしては、前述のバインダー樹脂が使用できる。また、必要により前述の酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層は、好ましくは両極性の電荷を輸送できることが好ましく、この場合は、バインダー樹脂中に正孔輸送物質、電子輸送物質を両方とも含有する。
電荷輸送層を形成する方法には、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法など方法が使用できる。
電荷輸送層の膜厚としては、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは10〜35μm程度が適当である。
電荷発生層及び電荷輸送層は、導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層の順で積層されていても、電荷輸送層及び電荷発生層の順に積層されていてもよい。
【0027】
<上部電極>
本発明に用いられる上部電極は、バイアス印加により、感光層に対して、電界を形成する層である。上部電極の材料としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
【0028】
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0029】
本発明に用いられる上部電極は、感光層表面を完全に覆うものでなく、被覆されている部分と被覆されていない部分を有する。全体の表面積に対して被覆されている部分の被覆率は、5〜80%程度であり、好ましくは10〜50%程度である。被覆されている電極形状は、不規則な形状でもかまわないが、好ましくは縞状、さらに好ましくは格子状である。縞状電極の場合、電極間距離は、5μm〜100μmであり、好ましくは5〜20μmである。格子状電極の場合も同様で、平行する電極の電極間距離は、5μm〜100μmであり、好ましくは5〜20μmである。またこれらの電極の膜厚は、0.01μm〜5.00μmであり、好ましくは0.02〜0.50μmである。
上部電極へのバイアス印加は、像担持体端部で行うことができ、導電性ローラや導電性ブラシを押し当てることにより、バイアスを供給する。
【0030】
<電荷保持層>
感光層上に設けられる電荷保持層は、静電潜像形成時に効率的に電荷を保持することを目的として設けられる。ここで言う電荷保持層は、電荷輸送能がないことが好ましいが、前述した感光層、電荷輸送層よりも電荷輸送能が低ければかまわない。
電荷保持層は、前述した感光層のバインダー樹脂材料を用いることが出来る。また必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷保持層の膜厚は、0.2〜5.0μm程度が適当であり、好ましくは0.5〜2.5μm程度が適当である。
【0031】
<保護層>
上部電極上に設けられる保護層は、上部電極を保護する目的で設けられる。保護層は静電潜像形成に対して、直接、影響を与えるものではない。しかし本像担持体は、上部電極が現像部、転写部、クリーニング部などの機械的なハザードにより消失した場合、基本的な静電潜像を形成が出来なくなる。現状の感光層上の上部電極は、これらの機械的ハザードに対して弱く、実質的に使用するためには保護層を設ける必要がある。
【0032】
保護層としては、電荷保持層と同じバインダー樹脂材料を用いることが出来る。また好ましくは、ウレタン樹脂やアクリル樹脂などの3次元架橋樹脂を用いた膜、樹脂中にフィラーを分散させた膜、ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造である膜が用いられる。
【0033】
特にダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層が好ましい。ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層は、好ましくはSP3軌道を有するダイヤモンドと類似のC−C結合を有する方が望ましい。なお、SP2軌道を有するグラファイトと類似の構造を持つ膜でも構わないし、更に非晶質性のものでも構わない。
ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層は、抵抗制御、光透過性制御、機械物性制御などを行うために、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素などの添加物元素が含有されていても構わない。
【0034】
ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層を作製するときには、炭化水素ガス(メタン、エタン、エチレン、アセチレン等)を主材料として、H2、Ar等のキャリアガスを用いる。更に、添加物元素を供給するガスとしては、減圧下で気化できるもの、加熱することにより気化できるものであれば構わない。例えば窒素を供給するガスとしてNH3、N2等を用い、フッ素を供給するガスとしてC2F6、CH3F等を用い、硼素を供給するガスとしてはB2H6等を用い、リンを供給するガスとしてはPH3等を用い、塩素を供給するガスとしてはCH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4等を用い、臭素を供給するガスとしてはCH3Br等を用い、沃素を供給するガスとしては、CH3I等を用いることができる。また、添加物元素を複数供給するガスとしては、NF3、BCl3、BBr、BF3、PF3、PCl3等を用いる。上記のようなガスを用い、プラズマCVD法、グロー放電分解法、光CVD法などやグラファイト等をターゲットとしたスパッタリング法等により形成される。特にその製膜法は限定されるものではないが、保護層として良好な特性を有する炭素を主成分とする膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法(特開昭58−49609号公報)等が知られている。
【0035】
プラズマCVD法を利用した炭素を主成分とする保護層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に保護層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。
【0036】
ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下であることが望ましい。
【0037】
また特に樹脂中にフィラーを分散させた保護層は好ましい。保護層に添加されるフィラーは、有機系及び無機系のフィラーがある。
【0038】
有機系フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂フィラー、シリコーン樹脂フィラー、炭素を主成分とするフィラー等が挙げられ、無機系フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、この中でも無機材料もしくは炭素を主成分とするフィラー材料を用いることが有利である。特に無機材料では金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が有効に使用できる。さらに炭素を主成分とするフィラーでは、ダイヤモンドフィラーが有効に使用できる。
【0039】
保護層のフィラー濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。その下限値は、通常、5重量%である。
【0040】
樹脂中にフィラーを分散させた保護層の膜厚は、0.5μm以上10μm以下が適当であり、好ましくは1.0μm以上6.0μm以下である。
【0041】
<下引き層>
本発明の像担持体においては、感光層との接着性、モアレ防止を目的として、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物フィラーを加えてもよい。
【0042】
この下引き層は前述の各層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明では、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0.1〜5.0μmが適当である。
【0043】
以上のような画像形成方法とすることにより、従来の電子写真プロセスの帯電工程で発生していたNOx、オゾンなどの放電生成物がなくなり、また帯電工程の帯電部材がないことから、小型化が可能であり、長期的画像安定性に優れた画像形成方法を提供できる。
【0044】
このような画像形成方法は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、像担持体を内蔵し、他に潜像形成手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
【0045】
このような画像形成方法を用いることにより、オゾン、NOx生成物を発生する放電を伴う帯電工程をなくし、潜像形成工程を簡略化できる。特許文献6と比較して、バイアス印加同時バイアス供給機構の小型が可能となる。さらに外部よりバイアス印加を行う場合は、像担持体と外部バイアス印加部材との間に、トナー、現像剤、紙粉などなどの異物の介在により、バイアス印加が不均一となり、濃度ムラが発生する可能性があるが、本発明では前記した像担持体を用いることにより、このような電極及びそれ以下の層との間の異物付着は起こらず、常に均一なバイアス印加が行えることから、濃度ムラなどの悪影響を及ぼすことはない。さらにクリーニング部で、像担持体にバイアスを印加することにより、像担持体からの残存トナーのクリーニング性を向上させ、異常画像が減少する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明はこれら実施例、比較例などにより限定されて解釈されるものではない。なお以下に記す部は重量部を意味する。
《像担持体(感光体)の製造例1:製造例1》
[基体]
φ100mm、長さ360mmのアルミニウムドラム
[感光層]
上記基体上に以下に示す塗工液を塗工して感光層を製膜した。
(塗工液)
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(パンライトTS2050:帝人化成社製) 10部
【0047】
【化1】
【0048】
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 1部
テトラヒドロフラン 80部
(製膜条件)
塗工方法 : ディッピング
膜厚:30μm
乾燥条件 : 加熱乾燥(130℃、20分)
【0049】
[電荷保持層]
感光層を設けたドラム上に以下に示す塗工液を塗工して、電荷保持層を製膜した。
(塗工液)
共重合ナイロン樹脂(CM8000:東レ(株)製) 4.5部
メチルアルコール 80部
イソブチルアルコール 15.5部
(製膜条件)
塗工方法 : ディッピング
膜厚:2.0μm
乾燥条件 : 加熱乾燥(100℃、20分)
[電極]
電荷保持層を設けたドラムの上に以下に示す電極を製膜した。
製膜法 : 真空蒸着法(蒸着後、エキシマレーザーによる加工)
蒸着源 : アルミニウム
電極パターン : 格子状電極(電極間距離25μm、電極幅20μm)
【0050】
[保護層:保護層1]
感光層、電荷保持層、電極を設けたドラム上に以下に示す塗工液材料を用いて塗工して電荷保持層を製膜した。
(塗工液材料)
イソシアネート(タケネートD140N:三井武田ケミカル社製)
ポリオール(LZR170:藤倉化成社製)
NCO/OHの当量比を1.0になるように、上記イソシアネートとポリオールを混合したもの 10部
アセトン 40部
セロソルブアセテート 40部
メチルイソブチルケトン 10部
(製膜条件)
塗工方法 : スプレー
膜厚:2.0μm
乾燥条件 : 加熱乾燥(100℃、20分)
【0051】
《像担持体(感光体)製造例2:製造例2》
像担持体の保護層の製膜条件を下記に示す製膜条件に変えた以外は全て感光体製造例1(製造例1)と同じにして、像担持体を作製した。
(保護層2の製膜条件)
基体を図14に示すプラズマCVD装置にセットし、保護層を形成した。ここで図14中、107はプラズマCVD装置の真空槽であり、ゲート弁109によりロード/アンロード用予備室117と仕切られている。真空槽107内は排気系120(圧力調整バルブ121、ターボ分子ポンプ122、ロータリーポンプ123よりなる)により真空排気され、また一定圧力に保たれるようになっている。
真空槽107内には反応槽が設けられている。130は反応槽150内へ導入するガスラインを示しており、各種材料ガス容器が接続されている。それぞれ、流量計129を経てノズル125より反応槽150の中へ導入される。
枠状構造体102中には、前記感光層を形成した基体101(101−1、101−2、・・・、101−n、・・・)を配置する。なおこのそれぞれの支持体は、後述するように第三の電極として配置される。電極103、113には、それぞれ第一の交番電圧を印加するための一対の電源115(115−1、115−2)が用意されている。第一の交番電圧の周波数は、1〜100MHzである。これらの電源は、それぞれマッチングトランス116−1、116−2とつながる。このマッチングトランスでの位相は位相調整器126により調整し、互いに180°又は0°ずれて供給できる。即ち、対称型又は同相型の出力を有している。マッチンズトランスの一端104及び他端114は、それぞれ第一及び第二の電極103、113に連結されている。また、トランスの出力側中点105は接地レベルに保持されている。更に、この中点105と第三の電極、即ち基体101(101−1、101−2、・・・、101−n)又はそれらに電気的に連結するホルダ102の間に第二の交番電圧を印加するための電源119が配設されている。この第二の交番電圧の周波数は、1〜500KHzである。この第一及び第二の電極に印加する第一の交番電圧の出力は、13.56MHzの周波数の場合0.1〜1KWであり、第三の電極即ち支持体に印加する第二の交番電圧の出力は、150KHzの周波数の場合約100Wである。
【0052】
以下の条件で、保護層を製膜した。
C2H4流量 : 90sccm
H2流量 : 150sccm
NF3流量 : 45sccm
反応圧力 : 0.02torr
第一の交番電圧出力 : 200W 13.56MHz
バイアス電圧(直流分) : −100V
膜厚 : 2.0μm
【0053】
《評価装置及び条件》
(マシン):
(株)リコー製イマジオMF7070改造機
(潜像形成部)
書き込み光 : 780nmLD
像担持体上部電極印加バイアス : +600V
バイアス印加時間 : 60ms
(現像部)
現像バイアス : プラス250V
トナー : ポリエステル製プラス極性トナー
(転写部)
マシン標準条件と逆極性のバイアス印加
(クリーニング部)
方式 : 像担持体バイアス印加ブレード当接クリーニング
ブレード当接圧 : 20g/cm
角度 : 78度
(クリーニング部像担持体上部電極バイアス印加条件)
バイアス条件1: 直流バイアス +50V
バイアス条件2: 交流バイアス Vpp 200V、周波数1.5kHz
バイアス条件3(直流と交流の重畳): 直流バイアス +70V
重畳交流バイアスVpp 150V、周波数1.5kHz
バイアス条件4 : バイアス印加無し
(評価環境)
環境条件1 : 温度20℃、湿度65%RH
環境条件2 : 温度10℃、湿度15%RH
(通紙条件)
画像 : 日本画像学会発行テストチャートNO.3
通紙パターン : 5プリント(A3)/ジョブ
【0054】
(クリーニング不良評価)
上記したバイアス条件1〜4および環境条件1〜2の各評価環境下での像担持体の違いにおける5K枚(5千枚)、及び10K枚(1万枚)通紙を行った。その通紙終了後の、クリーニング不良の発生の有無を、白画像を出力しこれを目視で観察して、以下の○、△、×、××の4段階で評価した。
○: 良好
△: スジ状クリーング不良
× : 帯状クリーニング不良
×× : 全面クリーニング不良
評価結果を表1に示す。なお表1にあるように、実施例1〜3および比較例1は像担持体として製造例1のもの、実施例4〜6および比較例2は像担持体として製造例2のものを用い、バイアス条件を変えたものである。
【0055】
【表1】
【符号の説明】
【0056】
1 導電性支持体
2 感光層
2a 電荷輸送層
2b 電荷発生層
3 上部電極
3a 縞状電極
3b 格子状電極
4 電荷保持層
5 保護層
6 像担持体
7 露光部
8 現像部
9 転写部
10 クリーニング部
11 除電部
101−1〜101−n 支持体
102 枠状構造体
103、113 電極
104、114 マッチングトランスの端部
105 トランス出力側中点
107 真空槽
108、118 フード
109 ゲート弁
115 電源
116−1、116−2 マッチングトランス
117 ロード/アンロード用予備室
119 電源
120 排気系統
121 調整バルブ
122 ターボ分子ポンプ
123 ロータリーポンプ
125 ガス導入ノズル
126 位相調整器
129 流量計
130 ガスライン
140 交番電源系
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開平06−003921号公報
【特許文献2】特開平8−76559号公報
【特許文献3】特開平9−26681号公報
【特許文献4】特開2001−183853号公報
【特許文献5】特許第3566275号公報
【特許文献6】特開2007−178816号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを用いた複写機などの画像形成装置を用いた画像形成方法に関し、また、このような画像形成方法を実行可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機などにおける電子写真プロセスは、次のような工程(1)〜(5)により画像形成が行われてきた。
(1)帯電、(2)露光(書き込み)、(3)トナー現像、(4)トナー転写、(5)トナー定着
このような発明として特許文献1〜5の発明などが知られている。
一方、特許文献6には、上記した電子写真プロセスの工程(1)〜(5)において、(1)の帯電工程を省く発明が開示されている。これは、導電性支持体上に、少なくとも正孔輸送物質を含有する正孔輸送層、電荷発生層を順次積層した構成を有する像担持体を用いて、光照射と同時にプラスバイアス印加により潜像形成を行なうことを特徴とするものである。このことにより、オゾン、NOx生成物を発生する放電を伴う帯電工程をなくすことが出来る。
【0003】
しかし、この公報に開示された方法では、バイアス印加と同時に光書き込み機構が複雑であり、且つ電子写真プロセス周りが大型化する可能性がある。また外部バイアス印加のときに、像担持体と外部バイアス印加部材の間に、トナー、現像剤、紙粉などの異物が介在した場合、像担持体へのバイアス印加が不均一となり、濃度ムラなどの問題が発生する惧れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電工程を省略可能な画像形成方法を提供し、また電位コントラストの大きい静電潜像形成を行うことのできる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の(1)〜(5)に示す課題を解決する手段により、前記目的が達成できることを発見して本発明を成すに至った。
(1)導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記潜像形成部は、潜像形成光の照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部はトナーを前記像担持体の表面に供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナー像を被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去することを特徴とする。
(2)(1)に記載の画像形成方法において、前記上部電極に直流バイアスを印加することにより、トナーを除去することを特徴とする。
(3)(1)に記載の画像形成方法において、前記像担持体の上部電極に交流バイアスを印加することにより、トナーを除去することを特徴とする。
(4)(1)に記載の画像形成方法において、前記像担持体の上部電極に直流バイアスに交流バイアスを重畳して印加することにより、トナーを除去することを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像形成方法を実行可能な画像形成装置であって、像担持体と、潜像形成部、トナー現像部、転写部、クリーニング部、除電部とを備え、前記像担持体が、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電工程をなくし、小型で、長期的使用においても電位ムラが少ない、クリーニング性が向上した直接潜像形成を行う画像形成方法、これを実行可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の像担持体の構成の1例を示す説明断面図である。
【図2】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図3】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図4】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図5】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図6】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図7】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図8】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図9】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図10】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図11】本発明の像担持体の構成の別の1例を示す説明断面図である。
【図12】本発明の静電潜像形成のメカニズムを示す図である。
【図13】本発明の画像形成装置を説明する概略図である。
【図14】ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造よりなる保護層を形成する際に用いるプラズマCVD装置の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記潜像形成部は、潜像形成光の照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部は、トナーを前記像担持体表面に供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナーを被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去する画像形成方法を特徴とする。
このような感光体である像担持体及び画像形成プロセスを用いることにより、オゾン、窒素酸化物などの発生を引き起こす帯電行程をなくし、トナークリーニング特性を向上させた静電潜像形成するための像担持体周りのプロセスを簡略化した画像形成方法を提供することができる。
【0009】
先ず本発明の画像形成方法に用いられる像担持体の構成例について説明する。
図1は、本発明の画像形成方法に用いられる像担持体の基本的な構成例を示す図である。1は導電性支持体であり、2は感光層であり、3は電極を示す。図1(A)は像担持体である感光体を上から見た図であり、(B)は、その側面の断面図である。図1(B)に示すように、本発明の画像形成方法に用いられる像担持体は導電性支持体1上に感光層2、電極3、を順次積層した構造を有している。図2は、本発明に用いられる別の像担持体の構成例を示す図であり、(A)は像担持体である感光体を上から見た図であり、(B)は、その側面の断面図である。図2(B)に示す像担持体の構成例では導電性支持体1上に感光層2、電荷保持層4および電極3を順次積層した構造を有する。図3は、本発明のまた別の像担持体の構成例を示す図であり、(A)は像担持体である感光体を上から見た図であり、(B)は、その側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電極(縞状電極)3を順次積層した構造を有する。図4は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電荷保持層4、電極(縞状電極)3を順次積層した構造を有する。図5は、本発明に用いられるさらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電極(格子状電極)3を順次積層した構造を有する。図6は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電極(格子状電極)3、保護層5を順次積層した構造を有する。図7は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に感光層2、電荷保持層4、電極3、保護層5を順次積層した構造を有する。図8は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に電荷輸送層2a、電荷発生層2b、電極3、保護層5を順次積層した構造を有する。図9は、本発明に用いられる、さらに別の像担持体の構成例を示す図である。この図では導電性支持体1上に電荷輸送層2a、電荷発生層2b、電荷保持層4、電極3を順次積層した構造を有する。図10は、本発明に用いられるさらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に電荷発生層2b、電荷輸送層2a、電極3を順次積層した構造を有する。図11は、本発明に用いられるさらに別の像担持体の構成例を示すその側面の断面図である。この図では導電性支持体1上に電荷発生層2b、電荷輸送層2a、電荷保持層4、電極3を順次積層した構造を有する。
【0010】
図12は、画像形成方法における画像形成のメカニズムを示した図である。
図12(A)に示すように、本発明では像担持体の上部電極にプラスバイアスを印加しながら、像担持体表面から光書き込みを行う。図12(B)に示すように、露光により生成された光キャリアは、正孔及び電子に分離し、上部電極により形成された電界に従い、電子が像担持体表面側に、また正孔が導電性支持体側に移動する。その後、図12(C)で示すように、上部電極へのバイアス印加を停止し、フロート状態もしくは接地状態とすると、上部電極に被覆されていない部分に電子が残存し、静電潜像が形成される。
【0011】
次に図面を用いて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
図13は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図の一例である。
(I)像担持体6の上部電極にバイアスを印加し、露光部7により、光書き込みを行う。光書き込み後も像担持体6へバイアスを印加し、静電潜像を形成する。
(II)像担持体6へのバイアス印加を停止し、現像部(トナー現像部)8においてトナーにより現像する。
(III)像担持体6上に現像されたトナー像を転写部9で被転写材Pに転写する。
(IV)像担持体6表面に残存するトナーをクリーニング部10で像担持体6の上部電極にバイアスを印加し、クリーニングブレード及びブラシを当接させ、残存トナーを除去し、像担持体6表面の残存電位を除電部11で除電する。
このときに上部電極に印加するバイアスは、トナーと同極性の直流バイアスを印加することができる。このバイアス印加により、像担持体表面に静電的な力で保持されていたトナーが像担持体表面から脱離しやすくなり、トナークリーニング性が向上する。
【0012】
この直流バイアスは、通常、極性トナー(現像部で印加された極性)と同極性の5V以上100V以下の電位のバイアスが好ましい。
さらに、上部電極に交流バイアスを印加することが好ましい。この場合、像担持体表面に残存している通常の極性トナーだけでなく、わずかに残存している逆極性トナーも同時クリーニングしやすくなる。この場合の交流バイアスとしては、Vppが100V〜500V、周波数が0.5〜2.0kHzが好ましい。
さらに直流バイアスと交流バイアスを重畳して印加することが好ましい。この場合の直流バイアス成分は、通常極性トナーと同極性の5V以上100V以下のバイアスであり、交流バイアス成分は、Vppが100V〜500V、周波数が0.5〜2.0kHzが好ましい。
【0013】
以下、本発明に用いられる像担持体について詳細に説明する。
本発明に用いられる像担持体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層、該感光層を被覆している部分と被覆されていない部分を有する上部電極、表面保護層が順次積層された構成のものであればよく、その他の層等が任意に組み合わされていても構わない。
【0014】
<導電性支持体について>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
【0015】
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0016】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0017】
<感光層について>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
【0018】
<感光層が単層のもの>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質とバインダー樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤等を添加することもできる。
【0019】
電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0020】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる
【0021】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0022】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、必要により酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0024】
感光層の作製方法としては、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などがあげられる。これらに用いられる塗工液は、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を、必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗工液を調製し、この塗工液を塗布し乾燥することにより、形成できる。
感光層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは10〜35μm程度が適当である。
感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層に含有されるバインダー樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量%が良好に用いられる。
【0025】
<感光層が積層構成のもの>
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じて前述のバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、前述した無機系材料と有機系材料を用いることができる。また、必要により前述の可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からの浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などが使用できる。
真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0026】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質、バインダー樹脂を主成分とする層である。電荷輸送物質としては、前述の正孔輸送物質及び電子輸送物質を用いることが出来、バインダー樹脂をしては、前述のバインダー樹脂が使用できる。また、必要により前述の酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層は、好ましくは両極性の電荷を輸送できることが好ましく、この場合は、バインダー樹脂中に正孔輸送物質、電子輸送物質を両方とも含有する。
電荷輸送層を形成する方法には、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法など方法が使用できる。
電荷輸送層の膜厚としては、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは10〜35μm程度が適当である。
電荷発生層及び電荷輸送層は、導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層の順で積層されていても、電荷輸送層及び電荷発生層の順に積層されていてもよい。
【0027】
<上部電極>
本発明に用いられる上部電極は、バイアス印加により、感光層に対して、電界を形成する層である。上部電極の材料としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
【0028】
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0029】
本発明に用いられる上部電極は、感光層表面を完全に覆うものでなく、被覆されている部分と被覆されていない部分を有する。全体の表面積に対して被覆されている部分の被覆率は、5〜80%程度であり、好ましくは10〜50%程度である。被覆されている電極形状は、不規則な形状でもかまわないが、好ましくは縞状、さらに好ましくは格子状である。縞状電極の場合、電極間距離は、5μm〜100μmであり、好ましくは5〜20μmである。格子状電極の場合も同様で、平行する電極の電極間距離は、5μm〜100μmであり、好ましくは5〜20μmである。またこれらの電極の膜厚は、0.01μm〜5.00μmであり、好ましくは0.02〜0.50μmである。
上部電極へのバイアス印加は、像担持体端部で行うことができ、導電性ローラや導電性ブラシを押し当てることにより、バイアスを供給する。
【0030】
<電荷保持層>
感光層上に設けられる電荷保持層は、静電潜像形成時に効率的に電荷を保持することを目的として設けられる。ここで言う電荷保持層は、電荷輸送能がないことが好ましいが、前述した感光層、電荷輸送層よりも電荷輸送能が低ければかまわない。
電荷保持層は、前述した感光層のバインダー樹脂材料を用いることが出来る。また必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷保持層の膜厚は、0.2〜5.0μm程度が適当であり、好ましくは0.5〜2.5μm程度が適当である。
【0031】
<保護層>
上部電極上に設けられる保護層は、上部電極を保護する目的で設けられる。保護層は静電潜像形成に対して、直接、影響を与えるものではない。しかし本像担持体は、上部電極が現像部、転写部、クリーニング部などの機械的なハザードにより消失した場合、基本的な静電潜像を形成が出来なくなる。現状の感光層上の上部電極は、これらの機械的ハザードに対して弱く、実質的に使用するためには保護層を設ける必要がある。
【0032】
保護層としては、電荷保持層と同じバインダー樹脂材料を用いることが出来る。また好ましくは、ウレタン樹脂やアクリル樹脂などの3次元架橋樹脂を用いた膜、樹脂中にフィラーを分散させた膜、ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造である膜が用いられる。
【0033】
特にダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層が好ましい。ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層は、好ましくはSP3軌道を有するダイヤモンドと類似のC−C結合を有する方が望ましい。なお、SP2軌道を有するグラファイトと類似の構造を持つ膜でも構わないし、更に非晶質性のものでも構わない。
ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層は、抵抗制御、光透過性制御、機械物性制御などを行うために、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素などの添加物元素が含有されていても構わない。
【0034】
ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層を作製するときには、炭化水素ガス(メタン、エタン、エチレン、アセチレン等)を主材料として、H2、Ar等のキャリアガスを用いる。更に、添加物元素を供給するガスとしては、減圧下で気化できるもの、加熱することにより気化できるものであれば構わない。例えば窒素を供給するガスとしてNH3、N2等を用い、フッ素を供給するガスとしてC2F6、CH3F等を用い、硼素を供給するガスとしてはB2H6等を用い、リンを供給するガスとしてはPH3等を用い、塩素を供給するガスとしてはCH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4等を用い、臭素を供給するガスとしてはCH3Br等を用い、沃素を供給するガスとしては、CH3I等を用いることができる。また、添加物元素を複数供給するガスとしては、NF3、BCl3、BBr、BF3、PF3、PCl3等を用いる。上記のようなガスを用い、プラズマCVD法、グロー放電分解法、光CVD法などやグラファイト等をターゲットとしたスパッタリング法等により形成される。特にその製膜法は限定されるものではないが、保護層として良好な特性を有する炭素を主成分とする膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法(特開昭58−49609号公報)等が知られている。
【0035】
プラズマCVD法を利用した炭素を主成分とする保護層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に保護層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。
【0036】
ダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下であることが望ましい。
【0037】
また特に樹脂中にフィラーを分散させた保護層は好ましい。保護層に添加されるフィラーは、有機系及び無機系のフィラーがある。
【0038】
有機系フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂フィラー、シリコーン樹脂フィラー、炭素を主成分とするフィラー等が挙げられ、無機系フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、この中でも無機材料もしくは炭素を主成分とするフィラー材料を用いることが有利である。特に無機材料では金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が有効に使用できる。さらに炭素を主成分とするフィラーでは、ダイヤモンドフィラーが有効に使用できる。
【0039】
保護層のフィラー濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。その下限値は、通常、5重量%である。
【0040】
樹脂中にフィラーを分散させた保護層の膜厚は、0.5μm以上10μm以下が適当であり、好ましくは1.0μm以上6.0μm以下である。
【0041】
<下引き層>
本発明の像担持体においては、感光層との接着性、モアレ防止を目的として、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物フィラーを加えてもよい。
【0042】
この下引き層は前述の各層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明では、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0.1〜5.0μmが適当である。
【0043】
以上のような画像形成方法とすることにより、従来の電子写真プロセスの帯電工程で発生していたNOx、オゾンなどの放電生成物がなくなり、また帯電工程の帯電部材がないことから、小型化が可能であり、長期的画像安定性に優れた画像形成方法を提供できる。
【0044】
このような画像形成方法は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、像担持体を内蔵し、他に潜像形成手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
【0045】
このような画像形成方法を用いることにより、オゾン、NOx生成物を発生する放電を伴う帯電工程をなくし、潜像形成工程を簡略化できる。特許文献6と比較して、バイアス印加同時バイアス供給機構の小型が可能となる。さらに外部よりバイアス印加を行う場合は、像担持体と外部バイアス印加部材との間に、トナー、現像剤、紙粉などなどの異物の介在により、バイアス印加が不均一となり、濃度ムラが発生する可能性があるが、本発明では前記した像担持体を用いることにより、このような電極及びそれ以下の層との間の異物付着は起こらず、常に均一なバイアス印加が行えることから、濃度ムラなどの悪影響を及ぼすことはない。さらにクリーニング部で、像担持体にバイアスを印加することにより、像担持体からの残存トナーのクリーニング性を向上させ、異常画像が減少する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明はこれら実施例、比較例などにより限定されて解釈されるものではない。なお以下に記す部は重量部を意味する。
《像担持体(感光体)の製造例1:製造例1》
[基体]
φ100mm、長さ360mmのアルミニウムドラム
[感光層]
上記基体上に以下に示す塗工液を塗工して感光層を製膜した。
(塗工液)
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(パンライトTS2050:帝人化成社製) 10部
【0047】
【化1】
【0048】
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 1部
テトラヒドロフラン 80部
(製膜条件)
塗工方法 : ディッピング
膜厚:30μm
乾燥条件 : 加熱乾燥(130℃、20分)
【0049】
[電荷保持層]
感光層を設けたドラム上に以下に示す塗工液を塗工して、電荷保持層を製膜した。
(塗工液)
共重合ナイロン樹脂(CM8000:東レ(株)製) 4.5部
メチルアルコール 80部
イソブチルアルコール 15.5部
(製膜条件)
塗工方法 : ディッピング
膜厚:2.0μm
乾燥条件 : 加熱乾燥(100℃、20分)
[電極]
電荷保持層を設けたドラムの上に以下に示す電極を製膜した。
製膜法 : 真空蒸着法(蒸着後、エキシマレーザーによる加工)
蒸着源 : アルミニウム
電極パターン : 格子状電極(電極間距離25μm、電極幅20μm)
【0050】
[保護層:保護層1]
感光層、電荷保持層、電極を設けたドラム上に以下に示す塗工液材料を用いて塗工して電荷保持層を製膜した。
(塗工液材料)
イソシアネート(タケネートD140N:三井武田ケミカル社製)
ポリオール(LZR170:藤倉化成社製)
NCO/OHの当量比を1.0になるように、上記イソシアネートとポリオールを混合したもの 10部
アセトン 40部
セロソルブアセテート 40部
メチルイソブチルケトン 10部
(製膜条件)
塗工方法 : スプレー
膜厚:2.0μm
乾燥条件 : 加熱乾燥(100℃、20分)
【0051】
《像担持体(感光体)製造例2:製造例2》
像担持体の保護層の製膜条件を下記に示す製膜条件に変えた以外は全て感光体製造例1(製造例1)と同じにして、像担持体を作製した。
(保護層2の製膜条件)
基体を図14に示すプラズマCVD装置にセットし、保護層を形成した。ここで図14中、107はプラズマCVD装置の真空槽であり、ゲート弁109によりロード/アンロード用予備室117と仕切られている。真空槽107内は排気系120(圧力調整バルブ121、ターボ分子ポンプ122、ロータリーポンプ123よりなる)により真空排気され、また一定圧力に保たれるようになっている。
真空槽107内には反応槽が設けられている。130は反応槽150内へ導入するガスラインを示しており、各種材料ガス容器が接続されている。それぞれ、流量計129を経てノズル125より反応槽150の中へ導入される。
枠状構造体102中には、前記感光層を形成した基体101(101−1、101−2、・・・、101−n、・・・)を配置する。なおこのそれぞれの支持体は、後述するように第三の電極として配置される。電極103、113には、それぞれ第一の交番電圧を印加するための一対の電源115(115−1、115−2)が用意されている。第一の交番電圧の周波数は、1〜100MHzである。これらの電源は、それぞれマッチングトランス116−1、116−2とつながる。このマッチングトランスでの位相は位相調整器126により調整し、互いに180°又は0°ずれて供給できる。即ち、対称型又は同相型の出力を有している。マッチンズトランスの一端104及び他端114は、それぞれ第一及び第二の電極103、113に連結されている。また、トランスの出力側中点105は接地レベルに保持されている。更に、この中点105と第三の電極、即ち基体101(101−1、101−2、・・・、101−n)又はそれらに電気的に連結するホルダ102の間に第二の交番電圧を印加するための電源119が配設されている。この第二の交番電圧の周波数は、1〜500KHzである。この第一及び第二の電極に印加する第一の交番電圧の出力は、13.56MHzの周波数の場合0.1〜1KWであり、第三の電極即ち支持体に印加する第二の交番電圧の出力は、150KHzの周波数の場合約100Wである。
【0052】
以下の条件で、保護層を製膜した。
C2H4流量 : 90sccm
H2流量 : 150sccm
NF3流量 : 45sccm
反応圧力 : 0.02torr
第一の交番電圧出力 : 200W 13.56MHz
バイアス電圧(直流分) : −100V
膜厚 : 2.0μm
【0053】
《評価装置及び条件》
(マシン):
(株)リコー製イマジオMF7070改造機
(潜像形成部)
書き込み光 : 780nmLD
像担持体上部電極印加バイアス : +600V
バイアス印加時間 : 60ms
(現像部)
現像バイアス : プラス250V
トナー : ポリエステル製プラス極性トナー
(転写部)
マシン標準条件と逆極性のバイアス印加
(クリーニング部)
方式 : 像担持体バイアス印加ブレード当接クリーニング
ブレード当接圧 : 20g/cm
角度 : 78度
(クリーニング部像担持体上部電極バイアス印加条件)
バイアス条件1: 直流バイアス +50V
バイアス条件2: 交流バイアス Vpp 200V、周波数1.5kHz
バイアス条件3(直流と交流の重畳): 直流バイアス +70V
重畳交流バイアスVpp 150V、周波数1.5kHz
バイアス条件4 : バイアス印加無し
(評価環境)
環境条件1 : 温度20℃、湿度65%RH
環境条件2 : 温度10℃、湿度15%RH
(通紙条件)
画像 : 日本画像学会発行テストチャートNO.3
通紙パターン : 5プリント(A3)/ジョブ
【0054】
(クリーニング不良評価)
上記したバイアス条件1〜4および環境条件1〜2の各評価環境下での像担持体の違いにおける5K枚(5千枚)、及び10K枚(1万枚)通紙を行った。その通紙終了後の、クリーニング不良の発生の有無を、白画像を出力しこれを目視で観察して、以下の○、△、×、××の4段階で評価した。
○: 良好
△: スジ状クリーング不良
× : 帯状クリーニング不良
×× : 全面クリーニング不良
評価結果を表1に示す。なお表1にあるように、実施例1〜3および比較例1は像担持体として製造例1のもの、実施例4〜6および比較例2は像担持体として製造例2のものを用い、バイアス条件を変えたものである。
【0055】
【表1】
【符号の説明】
【0056】
1 導電性支持体
2 感光層
2a 電荷輸送層
2b 電荷発生層
3 上部電極
3a 縞状電極
3b 格子状電極
4 電荷保持層
5 保護層
6 像担持体
7 露光部
8 現像部
9 転写部
10 クリーニング部
11 除電部
101−1〜101−n 支持体
102 枠状構造体
103、113 電極
104、114 マッチングトランスの端部
105 トランス出力側中点
107 真空槽
108、118 フード
109 ゲート弁
115 電源
116−1、116−2 マッチングトランス
117 ロード/アンロード用予備室
119 電源
120 排気系統
121 調整バルブ
122 ターボ分子ポンプ
123 ロータリーポンプ
125 ガス導入ノズル
126 位相調整器
129 流量計
130 ガスライン
140 交番電源系
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開平06−003921号公報
【特許文献2】特開平8−76559号公報
【特許文献3】特開平9−26681号公報
【特許文献4】特開2001−183853号公報
【特許文献5】特許第3566275号公報
【特許文献6】特開2007−178816号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、
前記潜像形成部は、潜像形成光照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより、潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部は、トナーを前記像担持体表面へ供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナーを被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記像担持体の上部電極に印加するバイアスが直流バイアスである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
像担持体の上部電極に印加するバイアスが交流バイアスである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
像担持体の上部電極に印加するバイアスが直流バイアスに交流バイアスが重畳されたものである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法を実行可能な画像形成装置であって、像担持体と、潜像形成部、トナー現像部、転写部、クリーニング部、除電部とを備え、
前記像担持体が、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有した像担持体と、少なくとも潜像形成部と、トナー現像部と、転写部と、クリーニング部とを有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、
前記潜像形成部は、潜像形成光照射時に、前記上部電極にバイアスが印加されることにより、潜像形成を行い、潜像形成後、前記トナー現像部は、トナーを前記像担持体表面へ供給して現像し、前記転写部は、その現像されたトナーを被転写材に転写し、前記クリーニング部は、前記像担持体の上部電極にバイアスを印加して転写後の像担持体に残存するトナーを除去することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記像担持体の上部電極に印加するバイアスが直流バイアスである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
像担持体の上部電極に印加するバイアスが交流バイアスである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
像担持体の上部電極に印加するバイアスが直流バイアスに交流バイアスが重畳されたものである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法を実行可能な画像形成装置であって、像担持体と、潜像形成部、トナー現像部、転写部、クリーニング部、除電部とを備え、
前記像担持体が、少なくとも、感光層と、該感光層を被覆する部分と被覆しない部分を有する上部電極を順次積層した構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−180560(P2011−180560A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47616(P2010−47616)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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