説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】絶縁層を介して対峙する放電電極と発熱用電極との間に生じる電界の強度を微弱化させることによって、絶縁層の絶縁破壊を防止し得る画像形成方法及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】絶縁層15の表面側に配設された放電電極5aと、前記絶縁層15の裏面側に配設された加熱手段13とを備えたイオン発生装置1の、その放電電極5aを接地する一方、静電潜像方式の記録媒体20の裏面側に配設されて、前記イオン発生装置1の放電電極5aに対向配置される対向電極21に放電制御電圧Eを印加するようにした。これにより、絶縁層15を介して対峙する放電電極5aと加熱手段13を構成する発熱用電極3との間には、該加熱手段13に印加される低電圧の電圧によって極めて微弱な電界が生じるだけであるため、絶縁層15の絶縁破壊を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱放電型のイオン発生装置を用いた画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電電極に所定の放電制御電圧(印加しただけでは放電が起こらないが、放電電極を加熱することにより放電が起こる電圧域の電圧)を印加した状態で、放電電極の各被加熱部位への加熱の有無を制御することにより、放電によるイオンの発生制御を行う加熱放電型のイオン発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる加熱放電型のイオン発生装置は、放電電極に印加する電圧の制御が不要であり、発熱素子による放電電極の加熱制御に使用する5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICでイオンの発生を制御することができるため、低価格化及び小型化し得る利点がある。
【0003】
このような加熱放電型のイオン発生装置aにあっては、図4(A),(B)に示すように、誘電体bの表面側に放電電極cが配設され、誘電体bの裏面側に誘導電極dが配設されるとともに、該誘電体bの裏面側に絶縁体eを介して放電電極cの各被加熱部位fに対応させて発熱素子gが夫々配設されており、さらに各発熱素子gには共通電極hと個別電極jとが接続されている。そして、前記放電電極cには、2.0〜2.5kV程度の高電圧の交流電圧に直流バイアス電圧を重畳して生成される放電制御電圧(印加しただけでは放電が起こらないが、放電電極を加熱することにより放電が起こる電圧域の電圧)を印加し、前記共通電極hには24V程度の低電圧の直流電圧を印加した状態で、各個別電極jを画像データに従って共通電極hと導通させ、放電電極cの各被加熱部位fに対応する所定の発熱素子gを発熱させて、放電電極cの任意の被加熱部位fを選択的に加熱することにより、この任意の被加熱部位fと、接地された誘導電極dとの間で放電を発生させ、この放電により生じる電離によってイオンを生成するようにしている。
【特許文献1】特開2003−326756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような加熱放電型のイオン発生装置aにあっては、放電電極cに高電圧の放電制御電圧が印加されるため、該放電電極cと、絶縁層(誘電体b及び絶縁体e)を介して対峙している発熱用電極(共通電極h及び個別電極j)との間に強い電界が発生し、この強い電界によって絶縁層の絶縁破壊が生じ易く、この絶縁破壊に起因してイオン発生装置aが故障するという問題点があった。また、このような絶縁層の絶縁破壊を防止するために、絶縁層を厚くしたり、絶縁層を高耐電圧性の素材で形成したりする絶縁破壊の防止手段を講じなければならないという問題点があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、絶縁層を介して対峙する放電電極と発熱用電極との間に形成される電界の強度を微弱化させることによって、絶縁層の絶縁破壊を防止し得る画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加熱放電型のイオン発生装置の放電電極と、静電潜像方式の記録媒体の裏面側で前記放電電極に対向する対向電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を設定して電界を形成し、前記放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱して前記対向電極との間で放電を発生させ、この放電により生成されるイオンを前記電界によって前記記録媒体の記録面に移動させることにより、静電潜像を構成する電荷を付与して画像の形成を行う画像形成方法において、前記放電電極を接地し、かつ前記対向電極に放電制御電圧を印加することを特徴とする画像形成方法である。
【0007】
ここで、加熱放電型のイオン発生装置は、絶縁層の表面側に放電電極が配設され、該絶縁層の裏面側に加熱手段が配設されている。この加熱手段は、通電により発熱する発熱素子と、該発熱素子に通電するための発熱用共通電極及び発熱用個別電極からなる発熱用電極とによって構成され得る。従って、放電電極と発熱用電極は絶縁層を介して対峙している。そして、記録媒体の裏面側で放電電極に対向する対向電極に高電圧の放電制御電圧を印加すると、対向電極と放電電極との間に電界が形成され、この状態で加熱手段の発熱用電極に通電して発熱素子を発熱させて放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱することにより、前記対向電極との間で放電が発生することとなる。
【0008】
また、本発明は、絶縁層の表面側に配設された放電電極と、前記絶縁層の裏面側に配設された加熱手段とを備えた加熱放電型のイオン発生装置と、静電潜像方式の記録媒体の裏面側に配設されて、前記イオン発生装置の放電電極に対向配置される対向電極とを備えてなり、前記放電電極と前記対向電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を設定して電界を形成し、前記加熱手段により前記放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱して前記対向電極との間で放電を発生させ、この放電により生成されるイオンを前記電界によって前記記録媒体の記録面に移動させることにより、静電潜像を構成する電荷を付与して画像の形成を行う画像形成装置において、前記放電電極を接地し、かつ前記対向電極に放電制御電圧を印加するようにしたことを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
ここで、絶縁層の裏面側に配設されている加熱手段は、上記と同様に、通電により発熱する発熱素子と、該発熱素子に通電するための発熱用共通電極及び発熱用個別電極からなる発熱用電極とによって構成され得る。従って、放電電極と発熱用電極は絶縁層を介して対峙している。そして、記録媒体の裏面側で放電電極に対向する対向電極に高電圧の放電制御電圧を印加すると、対向電極と放電電極との間に電界が形成され、この状態で加熱手段の発熱用電極に通電して発熱素子を発熱させて放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱することにより、前記対向電極との間で放電が発生することとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる画像形成方法によれば、対向電極に高電圧の放電制御電圧を印加することにより、対向電極と放電電極との間に電界を形成し、この状態で加熱手段の発熱用電極に対する通電によって発熱素子を発熱させて、放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱することにより、前記対向電極との間で放電を発生させることができる。そして、放電電極が接地されていることにより、絶縁層を介して対峙する放電電極と発熱用電極との間には、発熱用電極に印加される低電圧(24V程度)の電圧によって極めて微弱な電界が生じるだけであるため、絶縁層の絶縁破壊を防止することができる。
【0011】
また、本発明にかかる画像形成装置によれば、対向電極に高電圧の放電制御電圧を印加することにより、対向電極と放電電極との間に電界が形成され、この状態で加熱手段の発熱用電極に対する通電によって発熱素子を発熱させて、放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱することにより、前記対向電極との間で放電を発生させることができる。そして、放電電極が接地されていることにより、絶縁層を介して対峙する放電電極と発熱用電極との間には、発熱用電極に印加される低電圧(24V程度)の電圧によって極めて微弱な電界が生じるだけであるため、絶縁層の絶縁破壊を防止することができる。また、このように、放電電極と発熱用電極との間に強い電界が生じないため、イオン発生装置の耐久性を向上させることができ、さらに絶縁層を薄くすることが可能であり、発熱素子による放電電極の加熱時の熱効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
先ず、本発明が適用可能な加熱放電型のイオン発生装置について説明する。
イオン発生装置1は、図1,図2に示すように、薄板状の担持基板10を備えている。この担持基板10は、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂で形成されている。
【0013】
前記担持基板10の上面には、一定間隔で並列する複数の狭幅の発熱用櫛歯電極11aと、各発熱用櫛歯電極11aの基端が接続された広幅のコ字形電極11bとを備えた発熱用共通電極11が配設されており、さらに、各発熱用櫛歯電極11aの間には、細帯状の発熱用個別電極12が各発熱用櫛歯電極11aと平行でかつ互い違い状となるようにして配設されている。そして、この発熱用個別電極12と、前記発熱用櫛歯電極11a及びコ字形電極11bからなる発熱用共通電極11とによって発熱用電極3(図2(B)参照)が構成されている。尚、隣接する各発熱用櫛歯電極11a間のピッチ幅が、一画素(1ドット)を構成する領域となっている。この発熱用櫛歯電極11a,コ字形電極11b,及び発熱用個別電極12は、平面状に形成された担持基板10の表面に金ペースト等の導体を印刷した後、エッチングすることにより形成され得る。
【0014】
前記発熱用櫛歯電極11a及び発熱用個別電極12上には、該発熱用櫛歯電極11a及び発熱用個別電極12と電気的に接続された帯状の発熱素子14が配設されている。そして、該発熱素子14と、前記発熱用電極3とにより加熱手段13が構成されている。発熱素子14は、発熱用櫛歯電極11a及び発熱用個別電極12の上部にTaSiO、RuO等を印刷する等して形成され得る。
【0015】
また、担持基板10上には、前記コ字形電極11b及び発熱用個別電極12の端部を除いて絶縁層15が覆設されている。該絶縁層15は、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂を印刷する等して形成され得る。
【0016】
前記絶縁層15上には放電体5が配設されており、該放電体5は絶縁層15により前記加熱手段13と絶縁されている。該放電体5は、図1に示すように、担持基板10の横幅方向に沿って並列する細幅帯状の複数の放電電極5aと、各放電電極5aの両端部に連成された広幅帯状の共通電極5b,5bとで構成されている。この放電体5の各放電電極5aは、前記各発熱用個別電極12と上下方向で夫々一致する位置に配設されている。従って、各放電電極5aと前記発熱用電極3は絶縁層15を介して上下位置で対峙することとなる。また、前記発熱素子14に対応する各放電電極5aの部位が各放電電極5aの被加熱部位16となっている。この放電電極5a及び共通電極5b,5bは、金,銀,銅,アルミニウム等の金属層を、蒸着,スパッタ,印刷,又はメッキで形成した後、エッチングすることにより形成され得る。尚、後述するように、各放電電極5aの被加熱部位16からは、所定条件下でそれぞれイオンが照射されることとなる。
【0017】
また、担持基板10上には、前記発熱素子14の発熱を制御するドライバIC6が実装されている。このドライバIC6は、コ字形電極11b及び発熱用個別電極12から伸びるリードパターンに金線でワイヤボンディングされた状態で、エポキシ樹脂等のIC保護用の樹脂で封止されている。
【0018】
前記発熱素子14は、ドライバIC6がストローブ信号を発信して発熱用櫛歯電極11aと発熱用個別電極12とに対してストローブ電圧を印加して通電することにより発熱する。即ち、交互に配設された発熱用櫛歯電極11a及び発熱用個別電極12にあって、一本の発熱用個別電極12とその両側の発熱用櫛歯電極11a,11aとの間にストローブ電圧を印加して通電することにより、放電電極5aの各被加熱部位16に対応する発熱素子14の任意の部位を発熱させて、任意の被加熱部位16を加熱する。尚、加熱手段13は、このような方式に限定されるものではなく、夫々の被加熱部位16を選択的に加熱できるものであればよい。
【0019】
次に、本発明の要部である画像形成装置について説明する。
図3に示すように、画像形成装置は、電荷の作用により繰返し画像の印字や消去が可能な静電潜像方式のリライタブルペーパーからなる記録媒体20の裏面側に配設される電極ローラからなる対向電極21と、記録媒体20の上面側に所定間隔を置いて配置されるイオン発生装置1とを備えており、該イオン発生装置1の放電電極5aに、前記記録媒体20の裏面側の対向電極21が対向配置されている。そして、該対向電極21には、放電制御電圧Eの高電位側の電極が接続されており、該放電制御電圧Eの低電位側の電極及び放電電極5aは接地されている。尚、図示した例では、放電制御電圧Eの低電位側の電極及び放電電極5aが共通する導線により接地されているが、両者の接地は個別に行ってもよい。
【0020】
前記記録媒体20は、ツイストボール方式やマイクロカプセル電気泳動方式等のシート状のリライタブルペーパーが適用され、図示しない搬送ローラによって矢印Fの方向に搬送される。
【0021】
前記放電制御電圧Eは、1kVの高電圧の交流電圧に直流バイアス電圧を重畳して生成されるが、交流電圧に正の直流バイアス電圧を重畳して対向電極21に印加することにより、放電電極5aの加熱時にマイナスイオンを発生させることができる。
【0022】
次に、図3に示す画像形成装置の作動態様を説明する。
図示しない搬送ローラによって記録媒体20を搬送し、イオン発生装置1に所定間隔を置いて記録媒体20の記録面(表面)を対向させ、かつ該記録媒体20の裏面に対向電極21を接触させた状態において、該対向電極21に放電制御電圧Eを印加すると、該対向電極21とイオン発生装置1の放電体5との間に電界が形成される。ここで、放電制御電圧Eは、対向電極21に対して印加しただけでは放電体5との間で放電の発生はないが、放電体5が加熱されることにより放電が発生する電圧域の電圧となっている。
【0023】
次に、前記放電制御電圧Eを対向電極21に印加した状態で、加熱手段13をドライバIC6で制御する。即ち、任意の発熱用個別電極12(図1,図2(B)参照)とその両側の発熱用櫛歯電極11a,11aとに24Vのストローブ電圧を印加して通電し、各放電電極5aの被加熱部位16に対応する発熱素子14の任意の部位を発熱させて、任意の放電電極5aの被加熱部位16を選択的に所定温度(200〜300℃)に加熱することにより、任意の放電電極5aの被加熱部位16と対向電極21との間で放電を発生させる。そして、この放電により生じる電離によって生成されるイオンを、放電体5と対向電極21との間に形成された電界によって記録媒体20の記録面(表面)に移動させ、該記録媒体20に画像データに基づく所定パターンの電荷を付与する。これにより記録媒体20の記録面(表面)に所定パターンの静電潜像が形成され、画像の印字を行うことができる。
【0024】
尚、本発明にかかる画像形成方法は、上述した画像形成装置に基づいて構成される。
【0025】
このように、本発明にあっては、放電電極5aを接地し、かつ対向電極21に高電圧の放電制御電圧Eを印加するようにしたので、対向電極21への放電制御電圧Eの印加により、対向電極21と放電電極5aとの間に電界が形成され、この状態で加熱手段13の発熱用電極3に対する通電によって発熱素子14を発熱させて、放電電極5aの被加熱部位16を選択的に加熱することにより、前記対向電極21との間で放電を発生させることができる。そして、放電電極5aが接地されていることにより、絶縁層15を介して対峙する放電電極5aと発熱用電極3との間には、発熱用電極3に印加される低電圧(24V程度)の電圧によって極めて微弱な電界が生じるだけであるため、絶縁層15の絶縁破壊を防止することができる。また、このように、放電電極5aと発熱用電極3との間に強い電界が生じないため、イオン発生装置1の耐久性を向上させることができ、さらに絶縁層15を薄くすることが可能であり、発熱素子14による放電電極5aの加熱時の熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】イオン発生装置1の平面図である。
【図2】(A)は図1のA−A線断面図、(B)は図1のB−B線断面図である。
【図3】画像形成装置を示す模式側面図である。
【図4】(A)は従来構成のイオン発生装置aの平面図、(B)は(A)図におけるC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
2 イオン発生装置
5a 放電電極
13 加熱手段
14 発熱素子
15 絶縁層
16 被加熱部位
20 記録媒体
21 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱放電型のイオン発生装置の放電電極と、静電潜像方式の記録媒体の裏面側で前記放電電極に対向する対向電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を設定して電界を形成し、前記放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱して前記対向電極との間で放電を発生させ、この放電により生成されるイオンを前記電界によって前記記録媒体の記録面に移動させることにより、静電潜像を構成する電荷を付与して画像の形成を行う画像形成方法において、
前記放電電極を接地し、かつ前記対向電極に放電制御電圧を印加することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
絶縁層の表面側に配設された放電電極と、前記絶縁層の裏面側に配設された加熱手段とを備えた加熱放電型のイオン発生装置と、
静電潜像方式の記録媒体の裏面側に配設されて、前記イオン発生装置の放電電極に対向配置される対向電極とを備えてなり、
前記放電電極と前記対向電極との間に放電制御電圧に相当する電位差を設定して電界を形成し、前記加熱手段により前記放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱して前記対向電極との間で放電を発生させ、この放電により生成されるイオンを前記電界によって前記記録媒体の記録面に移動させることにより、静電潜像を構成する電荷を付与して画像の形成を行う画像形成装置において、
前記放電電極を接地し、かつ前記対向電極に放電制御電圧を印加するようにしたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−128631(P2009−128631A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303426(P2007−303426)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】