説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】非加熱の定着方式を用いた画像形成方法において、安定して高彩度なカラー画像を形成することが可能な画像形成方法を提供する。
【解決手段】7つの画像形成ユニット5Bk〜5Bにより、7色のトナーそれぞれを用いた色ごとの複数の版を該7色のトナーが互いに重なり合わないように重ねて、記録媒体12上に単層のトナー像を形成する画像形成工程と、前記トナーを軟化させる軟化剤を含んだ定着液を前記記録媒体12上の前記トナー像に付与して該トナー像を定着させる定着工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非加熱の定着工程を含む画像形成方法、及び該画像形成方法を用いた複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、定着速度、定着画像品質等の点から、記録媒体上のトナーを加熱溶融し、加圧することで定着させる熱定着方式が広く普及している。しかしながら、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、トナーの加熱のために消費されており、環境問題の観点から低消費電力(省エネ)の定着装置が望まれている。
【0003】
そこで、特許文献1では、このような定着装置として、定着液でトナーを溶解又は膨潤させ、乾燥させることでトナーを定着させる方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、トナーの樹脂を溶解または膨潤させる軟化剤を含有した泡状定着液を調合し、泡状定着液を均一塗布することでトナー画像を乱すことなく非加熱定着させる方法が提案されている。
【0005】
これらの定着方式では、熱定着方式のように、トナーを溶融させるための加熱処理が不要であることから、消費電力が低く、省エネ対策として優れた定着方式である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この様な加熱処理を必要とせず画像を定着する定着方式を用いた画像形成方法は環境問題の観点から低消費電力(省エネ)として非常に優れているが、フルカラー画像を出力する際は特にプロセスカラーの2次色であるRGBの彩度が低くなり、高彩度なフルカラー画像を得ることはできなかった。
【0007】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、非加熱の定着方式を用いた画像形成方法において、安定して高彩度なカラー画像を形成することが可能な画像形成方法、及び該画像形成方法を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために提供する本発明は、複数色のトナーそれぞれを用いた色ごとの複数の版を該複数色のトナーが互いに重なり合わないように重ねて、記録媒体上に単層のトナー像を形成する画像形成工程と、前記トナーを軟化させる軟化剤を含んだ定着液を前記記録媒体上の前記トナー像に付与して該トナー像を定着させる定着工程と、を有することを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定着液を用いた非加熱の定着工程を含む画像形成方法においても、画像形成工程において、数色のトナーそれぞれが色重ねすることなく記録媒体上に単層のトナー像が形成されるので、加熱定着工程を含む画像形成方法と同等の高彩度のカラー画像を形成することができる。すなわち、非加熱の定着工程ではトナーには十分な圧力がかからず、トナーの形状はほぼ原形をとどめ融着し平滑な膜にはならない特徴があるが、そのような画像状態では色を重ねて2次色を表現しようとしても散乱成分多く、トナー層中を通過する光の量も不均一な為、低彩度の色しか表現できない。そこで、本発明では、複数色のトナーを互いに重ならないように単層の状態で記録媒体に作像し、その状態で定着することにより、トナー層にある空隙量が低減されるようになり、その結果、安定した高彩度のカラー画像を形成することが可能となる。なお、トナーを色重ねすることなく単層でフルカラー画像を作成するには少なくとも赤色、緑色、青色、藍色、紅色、黄色、黒色の7色トナーが必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【図2】図1の画像形成装置における画像形成ユニットの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の定着液をトナーに付与する方法を示す図である。
【図4】本発明のトナーの顔料分散状態のTEM観察結果を示す図である。
【図5】実施例及び比較例のa*b*カラーガマットグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
まず、本発明で使用するトナー及び定着液について説明する。
<トナー>
本発明において複数色のトナーセットに用いられるトナーを構成する材料としては、以下の結着樹脂、その他の成分が好適に用いられる。
【0012】
(結着樹脂)
トナーに含まれる結着樹脂としては、軟化剤と充分な相溶性を有するものであれば、特に限定されず、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等汎用の樹脂の中から適宜必要に応じて任意に選択することができる。
【0013】
なかでも、ポリエステル樹脂が、主たる記録媒体である紙との親和性が高く、定着性が良好であることから好ましい。またポリエステル樹脂は軟化剤として用いられる脂肪族エステル化合物と、類似した分子構造を有するため、相溶性が高く、その点に関しても好適に用いられる。
【0014】
ポリエステル樹脂を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。
【0015】
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
【0016】
前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0017】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。
【0018】
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0019】
(その他の成分)
トナーに含まれるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤(色材ともいう)、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0020】
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、従来公知の有彩色又は黒色のアゾ系、アゾメチン基を含むアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレ系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソトインドリノン系、アニリンブラック系の色素及び酸化鉄系、スピネル型構造系、カーボンブラック系顔料などであり、白色の酸化チタン系顔料である。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明では、着色剤は、定着液に不溶な有機顔料であることが好ましい。これにより、定着時に色流れが発生せず、良好な画像が得られる。
【0021】
また、本発明では、トナーを色重ねすることなく単層で画像を形成することから、フルカラー画像を作成するには少なくとも赤色(レッド)、緑色(グリーン)、青色(ブルー)、藍色(シアン)、紅色(紅紫色ともいう。マゼンタ)、黄色(イエロー)、黒色(ブラック)の7色トナーが必要であり、それに対応した着色剤を選択する。
【0022】
中でも着色度や耐薬品性、耐候性などの堅牢性などから、
藍(シアン)トナーとして好ましい着色剤は、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、亜鉛フタロシアニン、アルミフタロシアニン、無金属フタロシアニンなどが挙げられる。
【0023】
紅(マゼンタ)トナーとして好ましい着色剤は、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド150、C.I.バイオレット19などが挙げられる。
【0024】
黄(イエロー)トナーとして好ましい着色剤は、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー180などがあげられる。
【0025】
また、赤(レッド)トナーとして好ましい着色剤は、単独ではC.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントオレンジ38などが挙げられ、その他前記黄トナー用着色剤と紅トナー用着色剤の混合、赤色着色剤と橙着色剤との混合などが可能である。
【0026】
青(ブルー)トナーとして好ましい着色剤は、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.バイオレット23などが挙げられる。
【0027】
緑(グリーン)トナーとして好ましい着色剤は、単独ではC.I.ピグメントグリーン7、混合系としてはC.I.ピグメントイエロー155又はC.I.ピグメントイエロー185と亜鉛フタロシアニン又はアルミフタロシアニンの混合により高彩度の緑色が得られる。
【0028】
黒(ブラック)トナーとして好ましい着色剤は、カーボンブラックが挙げられる。また、白トナーとしてはルチル型酸化チタンや中空粒子などが挙げられる。
【0029】
本発明で用いるトナーでは、着色剤がトナー表面近傍に偏在していることが好ましい。
本発明で採用する非加熱の定着方式のように、圧力がかからずトナーを膜にできない状態では、着色剤がトナー中に内部分散している状態よりトナー表面近傍に偏在している状態のほうがトナーの溶融状態に影響を受けにくく彩度のバラつきが小さくなる。
【0030】
着色剤をトナー表面近傍に偏在させるには、機械的にバイブリタイザー(奈良機械工業社製)などを用いトナー用樹脂を用いて作成した粉体表面に着色剤をコーティングするなどの手段が挙げられるが、公知の「少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤、および無機微粒子を前記有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成するトナー工法」においては、結着樹脂及び着色剤の組み合わせにより容易に作成することが可能である。
【0031】
特に「少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤、および無機微粒子を前記有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成するトナー工法」にて、ポリ乳酸を用いた植物由来非結晶性ポリエステルであるBE410(東洋紡社製)を結着樹脂の一部に用いると前例に挙げた着色剤の殆どを表面に偏在させることが容易である。
【0032】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、明度の低下が顕著となり濁った色調になる。
【0033】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。
該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。
【0035】
前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
【0036】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練させて製造することができる。
この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。
【0037】
また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。
このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。
【0038】
前記混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
【0039】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
【0041】
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。該含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0042】
前記無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用することができる。
【0043】
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。
【0045】
また、前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、20〜500m/gが好ましい。
【0046】
前記無機微粒子の前記トナーにおける含有量としては、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.01〜2.0質量%がより好ましい。
【0047】
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。
【0048】
前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0049】
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。
【0050】
該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
【0051】
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。
【0052】
<定着液>
本発明の定着液としては以下の溶媒、軟化剤が好適に用いられる。
【0053】
(溶媒)
本発明において、定着液の溶媒としては、主成分として水を含有することが好ましい。これにより、臭気を減少させることができる。
水は、揮発性有機化合物(VOC)に非該当であり、オフィス環境に対して極めて有利である。しかし、軟化剤の水に対する溶解度は、一般に低いため水中で可溶な状態で保持する必要がある。このような方法としては、HLB値が5〜16程度の界面活性剤を水に添加し、軟化剤を添加した後、加熱しながら長時間攪拌する方法が挙げられる。
【0054】
HLB値が5〜16程度の界面活性剤としては、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0055】
また、溶媒として、水と水溶性の溶媒との混合溶媒を用いることもできる。この場合も、両親媒性有機化合物、水溶性ポリマー、シリカゲルのような親水性材料に軟化剤を一旦取り込んだ後に、軟化剤を可溶な状態に保持することが好ましい。水溶性の溶媒としては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0056】
本発明において、軟化剤の良溶媒としては、一般的に疎水性溶媒が挙げられる。このような溶媒としては、シリコーンオイル類、オレフィン系溶剤、パラフィン系溶剤、フッ素系溶剤等が挙げられる。シリコーンオイル類としては、粘度が1〜10mPa・s程度のポリジメチルシロキサン、メチルシクロシロキサンの4量体、5量体等が適する。パラフィン系としては、n−デカン、n−ドデカン、n−ウンデカン等が適する。フッ素系溶剤としては、ハイドロフルオロエーテル等が適する。また、溶媒は、適度な揮発性を有することが望ましく、沸点が50℃以上150℃以下であることが望ましい。
【0057】
溶媒中の軟化剤の含有量は、0.5重量%以上50重量%以下程度であることが好ましく、1重量%以上10重量%以下がさらに好ましい。軟化剤の含有量が0.5重量%より小さいと、トナーを溶解又は膨潤させる効果が不十分となり、50重量%より大きいと、長時間に亘り、トナーの流動性を低下させることができず、定着トナー層が粘着性を有する可能性がある。
【0058】
本発明において、軟化剤の臭気指数は、10以下であることが好ましい。これにより、通常のオフィス環境では不快感が無くなる。脂肪族エステル及び溶媒が不快臭や刺激臭を有していると、オフィス環境等での使用に適さない。特に、脂肪族エステルは、トナーが定着した後もトナー中に残留しているため、不快臭や刺激臭を有することは使用上好ましくない。なお、精度が高く、オフィス環境等における実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10log(臭わなくなるまでの希釈倍率))を臭気の指標として用いている。
【0059】
また、溶媒が不快臭や刺激臭を帯びていると、定着時に装置から臭気が発生する。溶媒は、定着液中の含有量が多いため、臭気指数は、7以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
【0060】
(軟化剤)
本発明において、定着液中に含まれる軟化剤はトナーに対して先に述べた充分な相溶性を有するものであれば、特に限定されず任意のものを用いることができる。中でも脂肪族エステルが多くのトナーに対して充分な相溶性を有することから好ましい。
脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。
【0061】
また、本発明において、軟化剤としては、流動性を有する液体の他に、ゲル状の液体やワックスのような半固体でも構わない。
【0062】
<画像形成方法及び画像形成装置>
本発明の画像形成方法は、複数色のトナーそれぞれを用いた色ごとの複数の版を該複数色のトナーが互いに重なり合わないように重ねて、記録媒体上に単層のトナー像を形成する画像形成工程と、前記トナーを軟化させる軟化剤を含んだ定着液を前記記録媒体上の前記トナー像に付与して該トナー像を定着させる定着工程と、を有することを特徴とするものである。
【0063】
ここで、複数色のトナーが互いに重なり合わないとは、従来の電子写真方式においてカラー画像を表現するために行っているプロセスカラー(CMY)のトナーの重ね合わせを行わないということであり、そのトナーの色そのままでカラー画像を表現するものである。なお、微視的に複数色のトナーの境界部分で互いにわずかに重なり合うことは許容される。
【0064】
また、画像形成工程で行う転写方式は、中間転写体に各色のトナーの版を重ねた後にまとめて記録媒体に転写する中間転写方式、記録媒体に各色のトナーの版を順に転写する直接転写方式のいずれの方式でもよい。
【0065】
また、本発明の画像形成装置は、本発明の画像形成方法を実施する装置であり、少なくとも感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置及び除電装置を有する複数の作像ユニットと、少なくとも定着液塗布ユニットを有する定着装置と、を備え、本発明の画像形成方法を用いて、記録媒体上に複数色のトナーからなるカラーの画像形成を行うことを特徴とするものである。
以下、本発明の画像形成方法及び画像形成装置の具体的な実施形態の例について説明する。
【0066】
図1は、本発明に係る画像形成装置の構成例を示す概略図であり、複写機やプリンターとして利用されるカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置を示す。
また、図2は、図1の画像形成装置の一部として画像形成ユニット(作像ユニットともいう)を示す。
【0067】
図1に示すように、画像形成部には、トナー像担持体として中間転写ベルト1が設けられている。この中間転写ベルト1は、3つの支持ローラ2、3及び4に張架されており、時計方向に回転するよう構成されている。この中間転写ベルト1の搬送方向には、ブラック(黒)、イエロー(黄)、マゼンタ(紅)、シアン(藍)、レッド(赤)、グリーン(緑)及びブルー(青)の7色のトナーに対応する画像形成ユニット5BK、5Y、5M、5C、5R、5G、5Bが配列されている。なお、図1の例では画像形成ユニットは記録媒体搬送方向上流側から下流側に向けて、Bk(ブラック)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、R(レッド)、グリーン(G)、ブルー(B)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。
【0068】
これら画像形成ユニットの上方には不図示の露光装置が配置されている。例えば、複写機の場合、スキャナーで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、感光体ドラム6上に静電潜像を書き込むための光Lが露光装置により照射される(図2参照)。
【0069】
中間転写ベルト1の支持ローラ4に対向する位置には、二次転写装置7が設けられている。二次転写装置7は、二つの支持ローラ8及び9の間に張架された二次転写ベルト10で構成されている。なお、二次転写装置7としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いた構成としてもよい。また、中間転写ベルト1の支持ローラ2に対向する位置には、ベルトクリーニング装置11が配置されている。ベルトクリーニング装置11は、中間転写ベルト1上に残留するトナーを除去するために配置されている。
【0070】
記録媒体(記録紙)12は、一対の給紙ローラ13で二次転写部へ導かれ、トナー像を記録基体12に転写する際には、二次転写ベルト10を中間転写ベルト1に押し当てて転写を行う。
【0071】
次に、画像形成ユニットについて説明する。
図2に示すように、画像形成ユニットには、感光体ドラム6の周辺に、帯電装置14、現像装置15、クリーニング装置16及び除電装置17が配置されている。また、感光体6に対して、中間転写ベルト1を介して対向する位置に、一次転写装置18が設けられている。
【0072】
帯電装置14は、帯電ローラを採用した接触帯電方式であり、感光体ドラム6に接触して電圧を印加することにより、感光体ドラム6の表面を一様に帯電する。この帯電装置14としては、非接触のスコロトロン帯電等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。
【0073】
現像装置15は、現像剤中のトナーを感光体ドラム6上の潜像に付着させ、可視像化させる。ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、後工程で付与される定着液により溶解又は膨潤するように形成されている。なお、現像装置15には、不図示の攪拌部と現像部が構成されており、現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部のトナー濃度は、トナー濃度センサーで検出され、濃度が一定になるように制御されている。
【0074】
一次転写装置18は、感光体ドラム6上で可視像化されたトナーを中間転写ベルト1に転写する。ここでは、一次転写装置18としては、転写ローラ方式を採用しており、中間転写ベルト1を挟んで感光体ドラム6に押し当てるように配置されている。一次転写装置18としては、この他に導電性ブラシ形状のもの、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。
【0075】
クリーニング装置16は、感光体ドラム6上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置16としては、先端が感光体ドラム6に押し当てられるように構成されたブレードを用いることができる。ここで、回収されたトナーは、不図示の回収スクリューやトナーリサイクル装置で現像装置15に回収され、再利用することができる。
【0076】
除電装置17は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム6の表面電位を初期化する。
【0077】
次に、図1の画像形成装置に付属し、定着液をトナーに付与する定着液塗布ユニットについて説明する。
図3に示すように、定着液26は、定着液溜めタンク27に貯留され、定着液付与手段である塗布ローラ24及び汲み上げワイヤーバーローラ25により、定着液26が汲み上げられて、ローラ上の凹凸の凹部に定着液26がほぼ瞬時に入り込み、拡散することで薄層化した状態を作り出し、押さえ加圧ローラ23が加圧することにより、記録媒体12上のトナーに供給される。ここで、紙等の記録媒体12は、上述の画像形成プロセスでトナーが付着されたものである。なお、塗布ローラ24は、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の耐溶剤性に優れる部材が好ましい。なお、塗布ローラの他に、エアースプレー、インクジェットノズル等の液滴飛翔手段により、定着液をトナーに付与しても構わない。
【0078】
また、塗布工程後に、一対の加圧ローラ(ハードローラ)22を付設することで、トナーの表面の平滑化による光沢付与や記録媒体12の繊維内への押し込みによる定着性向上を図ることができる。
【0079】
なお、本発明は前記に挙げた構成以外にも例えば1つの中間転写ベルトに画像形成ユニットを複数設置したユニットを複数設置するなど7色以上の色のトナーを色重ねすることなく記録媒体上に作像し、定着液にて非加熱で定着可能であれば前記構成には限ったのもではない。
【0080】
以上の構成のフルカラーの画像形成装置において、画像形成工程、定着工程は次のようにして行なわれる。図1〜図3を参照しながら説明する。
まず、各画像形成ユニット5Bk,5Y,5M,5C,5R,5G,5Bにおいて、感光体ドラム6が感光体ドラム6と連れ周り方向に回転する帯電装置14の帯電ローラにより帯電され、次に感光体ドラム6の外側に配置された露光装置(図示しない)からの光Lにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。このとき、7色のトナーの版を重ね合わせたときに、7色のトナーが互いに重なり合わないような静電潜像とされている。
次に現像装置15により静電潜像を現像してトナー像が形成される。各色の現像装置15は、それぞれBk(ブラック)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、R(レッド)、グリーン(G)、ブルー(B)のトナーで現像を行う現像手段で、7つの感光体ドラム6上で作られた各色のトナー像(版)は中間転写ベルト1上で重ねられる。このとき、7色のトナーが互いに重なり合わないように7つの版が重ねられ、単層のトナー像となる。
【0081】
記録媒体12は給紙ローラ13で一旦停止し、前記中間転写ベルト1へのトナー像形成とタイミングを合わせて二次転写部に送られる。搬送された記録媒体12は、二次転写ベルト10により中間転写ベルト1に押し当てられ、中間転写ベルト1との当接位置(転写部)でトナー像の転写が行なわれる。なお、二次転写部で転写されずに中間転写ベルト1上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング装置11で除去、回収される。
【0082】
ついで、7色のトナー像が転写された記録媒体12は定着手段である定着液塗布ユニット(図3)に搬送され、トナー像への定着液26の塗布により非加熱方式の定着が行われ、図示しない排紙部に排紙される。
【0083】
本発明の画像形成方法によれば、画像形成工程において、数色のトナーそれぞれが色重ねすることなく記録媒体上に単層のトナー像が形成されるので、定着液を用いた非加熱の定着工程によっても、加熱定着工程を含む画像形成方法と同等の高彩度のカラー画像を形成することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本実施例は、本発明を例示したものに過ぎず、これら実施例により本発明は限定されない。
【0085】
<トナーセットAの作成>
(マスターバッチAの作成)
水100部、およびC.I.ピグメントイエロー185(D1155:BASF社製)400部、およびポリエステルCT−1101(Tg63℃、Tm107℃ DIC社製)600部を混合攪拌した。該混合物をオープンロール混練機(ニーデックス 日本コークス工業社製)でフロントロール供給側100℃、排出側80℃、バックロール供給側40℃、排出側30℃、フロントロール回転数35rpm、バックロール回転数31rpm、ギャップ0.25mmにて2回通しで混練した後、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、黄マスターバッチAを調製した。
【0086】
また、黄マスターバッチAにおいて、着色剤をC.I.ピグメントイエロー185から下記の着色剤に変更した以外は黄マスターバッチAと同様の条件で調製し、黄、紅、藍、赤、青、緑、黒のマスターバッチAを得た。
(着色剤)
紅:C.I.ピグメントレッド122(RTS:DIC社製)400部
藍:C.I.ピグメントブルー15:3(FG7531:東洋インキ社製)400部
赤:C.I.ピグメントレッド149(K3580:BASF)400部
青:C.I.ピグメントヴァイオレット23(RXS:DIC社製)400部
緑:C.I.ピグメントイエロー155(TONER YELLOW 3GP:クラリアント社製) 200部、アルミフタロシアニン(A−13Y山陽色素社製)200部
黒:カーボンブラック(E400R:CABOT社製)400部
【0087】
(トナーセットAの作成)
次に、表1に示す処方比で混合した後、該混合物をオープンロール混練機(ニーデックス 日本コークス工業社製)でフロントロール供給側100℃、排出側80℃、バックロール供給側40℃、排出側30℃、フロントロール回転数35rpm、バックロール回転数31rpm、ギャップ0.25mmにて2回通しで混練した後、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し、更にジェットミルにて粉砕し、分級することにより体積平均粒径Dv6.0μm、体積平均粒径/個数平均粒径が1.20となる各色のトナー母体粒子Aを作成した。
更に該母体粒子A100部に対し、疎水化シリカ(HDK H2000 粒径10nm:Wacker Chemie GmbH社製)1.5部、疎水化酸化チタニア(MT−150AI 粒径15μm テイカ社製)1.0部を添加しヘンシェルミキサーにて外添し、7色(赤色、青色、緑色、藍色、紅色、黄色、黒色)のトナーセットAを得た。
【0088】
【表1】

【0089】
<トナーセットBの作成>
(トナー組成液Bの作成)
酢酸エチル200部、およびC.I.ピグメントイエロー185(D1155:BASF社製)8部、および植物由来ポリエステルBE410(東洋紡社製)100部をクレアミックスCLM−0.8Sにて10000rpmにて10分混合溶解攪拌した液を湿式分散機ナノマイザー(吉田機械興業社製)にて、200MPaを5パスさせ、黄トナー組成分散液Bを作成した。
【0090】
また、黄トナー組成分散液Bにおいて、着色剤をC.I.ピグメントイエロー185から下記の着色剤に変更した以外は黄トナー組成液Bと同様の条件で調整し、黄、紅、藍、赤、青、緑、黒のトナー組成液Bを得た。
(着色剤)
紅:C.I.ピグメントレッド122(RTS:DIC社製)10部
藍:C.I.ピグメントブルー15:3(FG7531:東洋インキ社製)4部
赤:C.I.ピグメントレッド149(K3580:BASF)10部
青:C.I.ピグメントヴァイオレット23(RXS:DIC社製)6部
緑:C.I.ピグメントイエロー155(TONER YELLOW 3GP:クラリアント社製) 6部、アルミフタロシアニン(A−13Y山陽色素社製)6部
黒:カーボンブラック(E400R:CABOT社製)8部
【0091】
(トナーセットBの作成)
[樹脂微粒子エマルションの調製]
撹拌棒、および温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業株式会社製)11質量部、スチレン79質量部、メタクリル酸79質量部、アクリル酸ブチル105質量部、ジビニルベンゼン13質量部、および過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]を得た。
得られた[微粒子分散液]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、体積平均粒径が105nmであった。[微粒子分散液]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のガラス転移温度(Tg)は95℃、数平均分子量140,000、質量平均分子量980,000であった。
【0092】
[水系媒体相の調製]
イオン交換水306質量部、樹脂微粒子分散液60質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4質量部を混合撹拌し、均一に溶解させて水系媒体相(水系媒体)を調製した。
【0093】
[乳化乃至分散液の調製]
前記水系媒体200質量部を容器内に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用い、回転数10,500rpmで攪拌し、これに前記各色トナー組成液B100質量部を添加し、2分間乳化した後体積平均粒径Dv6.0μm、体積平均粒径/個数平均粒径が1.15±0.2となるよう回転数4500rpmにて任意の時間収斂させて、各色の乳化乃至分散液(乳化・分散液:乳化スラリー)を調製した。
【0094】
[有機溶剤の除去]
攪拌機、および温度計をセットしたコルベン内に、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した(各色の分散スラリー)。
【0095】
[洗浄および乾燥]
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子Bを得た。
【0096】
各色トナー母体粒子B100部に対し、疎水化シリカ(HDK H2000 粒径10nm:Wacker Chemie GmbH社製)1.5部、疎水化酸化チタニア(MT−150AI 粒径15μm テイカ社製)1.0部を添加しヘンシェルミキサーにて外添処理してトナーセットBを得た。
【0097】
なお、各色のトナー母体粒子A、Bの断面をTEMにて観察してトナー母体粒子中の顔料分散状態を確認したところ、図4に例を示したとおり、トナーセットA(図4(A))は均一に内部分散されており、トナーセットB(図4(B))はトナー表面付近に偏在し分布していることが確認された。
【0098】
<キャリアの作製>
芯材として体積平均粒径35μmの球形フェライト粒子に、コート材としてのシリコーン樹脂とメラミン樹脂の混合物を被覆してキャリアを作製した。
【0099】
<現像剤の製造>
前記トナーセットA,Bの各色のトナー10質量部と前記キャリア90質量部とをターブラミキサーで混合し、二成分現像剤セットA、Bを製造した。
【0100】
<定着液の作成>
下記成分比にて、先ずは、液温120℃にて軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて軟化剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
【0101】
(定着液作成用成分)
・希釈溶媒:イオン交換水 53質量%
・軟化剤:コハク酸ジエトキシエトキシエチル(高級アルコール工業株式会社製)
10質量%
炭酸プロピレン 20質量%
・増粘剤:プロピレングリコール 10質量%
・増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂製 マーポンMM)
0.5質量%
・起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5質量%
ミリスチン酸アミン 1.5質量%
ステアリン酸アミン 0.5質量%
・分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン(花王製 レオドールTW−S120V)
1質量%
ポリエチレングリコールモノステアレート(花王製 エマノーン3199)
1質量%
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。また、脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンを合成したものを用いた。
【0102】
<カラー画像形成及び評価>
(実施例1)
黄色、紅色、藍色、赤色、青色、緑色、黒色の7色のトナーからなる現像剤セットAを用いて、図1及び図3の構成の画像形成装置の試作機にて、ジャパンカラー基準紙である特菱アート紙へカラーチャート作像を行った。
本実施例では、カラーチャートを色重ねすることなく単色のベタ付着量0.5mg/cmにて作像し、前述のように作成した定着液を用いて定着を行いカラーチャートの画像を形成した。得られたカラーチャートの画像について、藍色(C)、緑色(G)、黄色(Y)、赤色(R)、紅色(M)、青色(B)の各色についてL*a*b*表色系におけるa*、b*を測定して、色再現範囲を評価した。
なお、測色条件は、分光濃度計(型名:X−rite938、X−rite社製)を用い、0/45、D50、2度視野、ブラックバッキング(ISO 13655)とした(以降の実施例、比較例で同じ)。
【0103】
(比較例1)
次に、現像剤セットAの黄色、紅色、藍色、黒色のプロセスカラーのトナーのみを用いて、画像における赤色、青色、緑色は通常の色重ね、つまり赤色を黄色と紅色のトナーの色重ねにて表現し、青色を紅色と藍色のトナーの色重ねにて表現し、緑色を黄色と藍色のトナーの色重ねにて表現したカラーチャートを単色のベタ付着量0.5mg/cmにて作像し、実施例1と同じ定着液を用いて定着を行いカラーチャートの画像を形成した。得られたカラーチャートの画像について、藍色(C)、緑色(G)、黄色(Y)、赤色(R)、紅色(M)、青色(B)の各色についてL*a*b*表色系におけるa*、b*を測定して、色再現範囲を評価した。
【0104】
(実施例2)
黄色、紅色、藍色、赤色、青色、緑色、黒色の7色のトナーからなる現像剤セットBを用いて、図1及び図3の構成の画像形成装置の試作機にて、ジャパンカラー基準紙である特菱アート紙へカラーチャート作像を行った。
本実施例では、カラーチャートを色重ねすることなく単色のベタ付着量0.5mg/cmにて作像し、実施例1と同じ定着液を用いて定着を行いカラーチャートの画像を形成した。得られたカラーチャートの画像について、藍色(C)、緑色(G)、黄色(Y)、赤色(R)、紅色(M)、青色(B)の各色についてL*a*b*表色系におけるa*、b*を測定して、色再現範囲を評価した。
【0105】
(比較例2)
次に、現像剤セットBの黄色、紅色、藍色、黒色のプロセスカラーのトナーのみを用いて、画像における赤色、青色、緑色は通常の色重ね、つまり赤色を黄色と紅色のトナーの色重ねにて表現し、青色を紅色と藍色のトナーの色重ねにて表現し、緑色を黄色と藍色のトナーの色重ねにて表現したカラーチャートを単色のベタ付着量0.5mg/cm2にて作像し、実施例1と同じ定着液を用いて定着を行いカラーチャートの画像を形成した。得られたカラーチャートの画像について、藍色(C)、緑色(G)、黄色(Y)、赤色(R)、紅色(M)、青色(B)の各色についてL*a*b*表色系におけるa*、b*を測定して、色再現範囲を評価した。
【0106】
実施例1,2及び比較例1,2の評価結果として、表2及び図5にa*b*面のカラーガマットを示す。
実施例1では、ジャパンカラーとほぼ同等のガマット面積を示しているが、比較例1では2次色である赤、青、緑の彩度が大きく低下しておりフルカラー画像として十分な色再現範囲を得ることができていなかった。
また実施例2では、ジャパンカラーよりもやや広いガマット面積を示したが、比較例2では比較例1同様の結果となった。
【0107】
【表2】

【0108】
以上の結果、本発明の画像形成方法及び画像形成装置により、非加熱方式の定着工程によっても十分な色再現範囲を持つ高彩度な画像を形成することができた。
【0109】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
1 中間転写ベルト
2、3、4、8、9 支持ローラ
5BK、5Y、5M、5C、5R、5G、5B 画像形成ユニット
6 感光体ドラム
7 二次転写装置
10 二次転写ベルト
11 ベルトクリーニング装置
12 記録媒体(記録紙)
13 給紙ローラ
14 帯電装置
15 現像装置
16 クリーニング装置
17 除電装置
18 一次転写装置
22 加圧ローラ
23 押さえ加圧ローラ
24 塗布ローラ
25 汲み上げワイヤーバーローラ
26 定着液
27 定着液溜めタンク
L 光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開2006−133306号公報
【特許文献2】特開2009−008967号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のトナーそれぞれを用いた色ごとの複数の版を該複数色のトナーが互いに重なり合わないように重ねて、記録媒体上に単層のトナー像を形成する画像形成工程と、
前記トナーを軟化させる軟化剤を含んだ定着液を前記記録媒体上の前記トナー像に付与して該トナー像を定着させる定着工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記複数色のトナーは、少なくとも赤色、緑色、青色、藍色、紅色、黄色、黒色の7色のトナーを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記複数色のトナーは、それぞれ着色剤がトナーの表面近傍に偏在してなることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記複数色のトナーにおける着色剤は、前記定着液に不溶な有機顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
少なくとも感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置及び除電装置を有する複数の作像ユニットと、少なくとも定着液塗布ユニットを有する定着装置と、を備え、
請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成方法を用いて、記録媒体上に複数色のトナーからなるカラーの画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15708(P2013−15708A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149014(P2011−149014)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】