説明

画像形成装置、および画像形成方法

【課題】潜像担持体上に形成されたトナー像を、電界を使わずに、または、電界を補助的に使い、主にトナーの粘着力によって転写する画像形成を行うもので、高い転写率で転写を行い、良好な画像形成を行うことができる画像形成装置、及び、画像形成方法を提供する。
【解決手段】プリンタ100は、キャリア液除去手段である、リバースローラ43、トナー圧縮用チャージャ46、接触キャリア液除去ローラ45、及び、乾燥装置50によるキャリア液除去後、且つ、記録媒体Pにトナー像を転写する前の感光体1上のトナー像の表面に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質である粘着性発現液を付与する粘着性発現物質供給手段である粘着性発現液供給装置60を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーと、トナーを分散させるキャリア液とからなる液体現像剤を用いて潜像担持体上にトナー像を形成して画像形成を行い、トナーの粘着力を用いてトナー像を記録媒体に転写するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置、並びに、液体現像剤を用いてトナー像を形成し、トナーの粘着力を用いてトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消費者のニーズが多様化している今日、印刷物の製造についても少量かつ多品種の製造が要求される傾向が顕著になってきている。このような要求に対応するための方法として、費用と時間がかかる製版工程を必要としない電子写真法が着目されている。
電子写真法におけるLED、レーザビーム等のデジタル的な潜像形成技術の発達により、例えば1200DPI等の高精細なドット像の書き込みが可能になっており、このような潜像形成技術を採用した高精細、高画質な画像を形成することができる画像形成方法及び装置が望まれている。このような高画質なプリントを得るためには、ドット面積の正確な再現性が必要で、トナー像を潜像担持体や中間転写体から、中間転写体や記録媒体に転写する際のトナー飛散や潰れ(加熱・加圧定着でも生じる)は特にカラープリントにおいて主要な課題となる。
使用するトナーの粒径を微細化すれば、高解像度トナー像を実現できる。また、微細な粒径のトナーを使用すれば、トナー像の厚さも薄くなり色重ねでカラープリントを得る場合の色表現性も向上する他、最終記録媒体である転写紙上に転写されたトナー像の厚みが粒径に応じて薄くなる分、転写紙のカールやトナー像のヒビわれの程度も改善される。トナーとしては、乾式現像方式における、粉体キャリア等と摩擦帯電させて用いられる粉体トナーと、液体現像方式における、液体キャリアである溶剤に分散して用いられるトナー(以下、液体トナーという)とがある。
【0003】
このうち粉体トナーでは粒径が5ミクロン〜サブミクロンのオーダの微粉トナーである場合、トナー飛散抑制や転写処理後の潜像担持体である感光体上の残留トナーの除去が困難になるという問題がある。一方、液体トナーは溶剤に分散して使用されるため、このような問題も生じないで微細化トナーとしての取扱いが容易である。そのため、粉体トナーを用いた乾式電子写真法と比較して、グラビア印刷方式やオフセット印刷方式などのような高精細な画像の印刷が可能な方式と同程度の高精細性を達成することができる。
また、トナーの溶融温度が低いほど消費電力や高速化に有利であるが、溶融温度が低い粉体トナーではブロッキングを起こすという問題がある。一方、液体トナーでは溶剤に分散して使用するので、このような問題も無く、低融点(低軟化点)のトナーを採用できる。
【0004】
従来の液体現像方式では、静電潜像を液体現像で現像してトナー像が形成された感光体表面に転写紙を接触させ、転写紙の裏面にコロナ放電器、転写ローラ等で転写電界を形成する。これにより、感光体上のトナー像を転写紙上に転写する静電的な転写方法を用いた場合には、電荷が付与されて帯電した転写紙が静電的に感光体に吸着される場合があった。また、転写ローラ等で加圧する結果、トナー像が潰れて例えば細線の幅や網点ドット面積の忠実な再現が困難な場合があった。
また、従来の液体現像画像形成装置においては、キャリア液を用いるがゆえに、像がつぶれて、高精細な画像を得られない場合があった。トナーとキャリア液とから成る液体現像剤により現像された潜像担持体の表面には、トナーだけではなくキャリア液も含む液体現像剤層から成るトナー像が形成されている。液体現像によって形成された潜像担持体上のトナー像を記録媒体等に電界を用いて転写するには、転写電界が形成された潜像担持体と記録媒体等の転写相手との間、すなわち転写ギャップには、適正な量のキャリア液は必要である。
しかし、キャリア液が過剰な場合、ドットやラインなどのトナー像がつぶれ、ライン幅が太くなったり、画像濃度にムラが出たりすることがあり、潜像担持体上に形成されたトナー像を忠実に記録媒体に転写するのは困難である。これは、潜像担持体の表面にキャリア液が過剰に存在すると、キャリア液が少ない場合と同じ転写電位差では電界不足となり、転写時に、潜像担持体の表面でトナー像を構成するトナーが、潜像に忠実に移動できないことが原因であると考えられる。多量のキャリア液に合わせて必要な電界を形成するためには、より高電圧を必要とする不具合が生じる。
【0005】
また、プリントに用いられる記録媒体についても多品種が要求されるようになってきている。普通紙に限らず、紙の表面に光沢を持たせたり、平滑性を良くしたりするためにその表面に「クレー」と呼ばれる泥のような物を塗るコート紙や、樹脂製のフィルム等を記録媒体として用いることが期待されている。コート紙や樹脂製のフィルムは、その表面の平滑性、材料の特徴から、キャリア液を全く吸収しないか吸収量が普通紙に比較して少ないので、上記転写ギャップのキャリア液が多い場合のような転写状態となり、画像がつぶれてしまうことがある。
【0006】
このような問題に対して、従来の液体現像画像形成装置においては、潜像担持体の表面から余剰な液体キャリアを除去するスクイズローラを備えたものがある。スクイズローラを備えた構成としては、潜像担持体表面に対して所定距離をとって対向配置し、対向位置における表面移動方向が潜像担持体の表面移動方向とは逆方向となるよう回転させる発明や、画像部のトナーを除去しないような電位差を設けたローラをトナー像に接触させ、キャリア液を付着させて除去する発明が提案されている。
そして、さらにつぶれを防ぐための発明として、電圧を印加したローラを、潜像担持体上のトナー像の表面に、空隙をもって対向させ、潜像担持体上に形成されたトナー像を硬化させた後にトナー像を記録媒体に転写する発明がある(例えば、特許文献1や特許文献2)。
また、特許文献3には、潜像担持体上や中間転写体上のトナー画像を乾燥させた後、転写時に記録媒体との間に非水溶媒を供給し、静電転写する発明が提案されている。乾燥させることにより、トナー画像を形成するトナー粒子の粒子間に存在する担体液が蒸発し、トナー粒子が凝集し、これによってトナー粒子間の相互作用が高まったところへ、非水溶媒を供給し電界転写するものである。転写材への転写時に、トナー粒子が個々に挙動しなくなりトナー粒子の凝集体として転写するので、トナ−画像のつぶれや、広がりを抑制し、高解像力のある、高画質な画像を得ることができる。
【0007】
しかしながら、このようなつぶれを防ぐための発明を用いても、液体現像方式で静電的に転写を行う場合、潜像担持体表面から記録媒体へのトナーの移動はトナーが液中を泳動するため、潜像担持体と記録媒体との間に液が必要である。そして、液があるために潰れたり、液が紙に入っていって紙が膨潤して画像が乱れたりといった不具合が生じる。
また、特許文献1及び2に記載された発明では、トナー粒子間キャリア液が押し出され、トナー層が圧縮されて硬化していると考えられている。それと同時に、トナー層は潜像担持体にも押し付けられ、記録媒体への転写が困難となる。トナー層が圧縮されているほど、転写のために高電界を必要となる。
また、特許文献3に記載の発明では、潜像担持体上の現像後のトナーを転写前に一度乾燥させるが、液体現像用トナーは、乾燥した状態では電荷保持は難しい。特に特許文献3のように、乾燥させるとフィルム状になるトナーの場合、キャリア液を再供給しても再帯電は困難である。特許文献3では、トナーの電荷を補うために、潜像担持体上のトナーに対して乾燥後で、且つ、電界転写の前に電荷を与えた後に、静電転写している。転写前にトナーに電荷を与える行程があるため行程が増えてしまう。
【0008】
そこで、液体現像方式で静電的な方法以外で転写を行うものとしては、特許文献4に記載の発明がある。特許文献4では、ガラス転移温度を調整することと、キャリア液の乾燥程度を調整することによりトナーの粘着性を高め、その粘着力で転写する、粘着転写、オフセット転写等と呼ばれる方法である。トナー像が自己定着することにより、速やかなフィルム形成を行い、フィルム状となり一体的に挙動するトナー像をその粘着力により転写する。このようにトナーの粘着力で転写を行うものであれば、転写前にトナー以外の液を極力無くしておくことができ、つぶれや転写残しがなく、良好に転写することができる。
【0009】
【特許文献1】第2990675号公報
【特許文献2】特開平9−204109号公報
【特許文献3】特開平2−272476号公報
【特許文献4】特表2001−501654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4に記載の発明は、乾燥などによってキャリア液を除去することでフィルム化するトナーを用いて現像し、余剰なキャリア液を除去後、潜像担持体上のトナー像を乾燥させ、適当な乾燥程度で転写するものである。しかしながら、乾燥程度が適当でないと、転写時にトナー像を構成するトナー粒子間で分かれてしまい、トナー像の一部しか転写しなかったり、厚み方向に分かれてしまったりして転写率が低くなる。また、トナー像はできるだけ乾燥した状態のほうが、トナー粒子間で分かれにくくなるが、乾燥しすぎると、トナー像表面の粘着性が無くなってトナーの粘着力による転写を行うことができなくなる。また、このように乾燥の途中でフィルム化程度が転写に適した状態となる場合もあるが、適度な乾燥状態となるタイミングで転写を行うのは困難である。
【0011】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、潜像担持体上に形成されたトナー像を、電界を使わずに、または、電界を補助的に使い、主にトナーの粘着力によって転写する画像形成を行うもので、高い転写率で転写を行い、良好な画像形成を行うことができる画像形成装置、及び、画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像担持体と、潜像形成前の該潜像担持体表面を一様に帯電させる帯電手段と、画像データに基づいて、該帯電手段により帯電された該潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、キャリア液とトナーとからなる液体現像剤中のトナーを静電的に該潜像担持体の表面上に付着させて現像する現像手段と、該潜像担持体上に形成されたトナー像を担持し、表面移動する像担持体上からキャリア液を除去するキャリア液除去手段とを備え、キャリア液除去手段がキャリア液を除去した後にトナーの粘着力によって記録媒体にトナー像を転写する画像形成装置において、上記キャリア液除去手段によるキャリア液除去後、且つ、記録媒体にトナー像を転写する前の上記像担持体上のトナー像の表面に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質を付与する粘着性発現物質供給手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記粘着性発現物質供給手段によって上記粘着性発現物質を付与された後のトナー像と記録媒体とが接触する位置で上記像担持体に対して記録媒体を加圧する加圧手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の画像形成装置において、上記現像手段が用いる上記液体現像剤中のトナーは、上記キャリア液を除去し、トナーの樹脂成分に親和性のある液を供給されることにより粘着性を示す樹脂を含み、上記粘着性発現物質供給手段は、トナーの樹脂成分に親和性のある樹脂親和液を供給する樹脂親和液供給手段であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記トナーが含む、上記樹脂親和液を供給されて粘着性を示す樹脂成分は、下記の化2の一般式で示す、アクリルエステルであることを特徴とするものである。
【化2】

(Rは、Hまたは、CH)(n=6〜16)
また、請求項5の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記トナーが含む、上記樹脂親和液を供給されて粘着性を示す樹脂成分は、アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3、4または5の画像形成装置において、上記樹脂親和液供給手段は、上記樹脂親和液を泡状にして上記像担持体上のトナー像に供給することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、上記キャリア液除去手段は、上記像担持体の表面移動方向上流側から順に、リバースローラと、電荷付与手段と、接触弾性ローラとを備えることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1、2、3、4、5、6または7の画像形成装置において、上記像担持体は上記潜像担持体であり、該潜像担持体上のトナー像を記録媒体に接触させて、該潜像担持体から記録媒体にトナー像を転写することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6または7の画像形成装置において、上記潜像担持体の表面上からトナー像を転写される中間転写体を有し、上記像担持体は該中間転写体であり、該中間転写体上のトナー像を記録媒体に接触させて、該中間転写体から記録媒体にトナー像を転写することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の画像形成装置において、上記潜像担持体として、a−Si感光体を用いることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、潜像担持体表面を一様に帯電した後に、該潜像担持体の表面に静電潜像を形成し、トナーをキャリア液に分散した液体現像剤を用いて潜像担持体上の潜像にトナーを供給してトナー像化し、潜像担持体上に形成されたトナー像を担持して表面移動する像担持体上からキャリア液を除去し、キャリア液を除去した後に、トナーの粘着力によって記録媒体にトナー像を転写する画像形成方法において、上記キャリア液の除去の後、且つ、記録媒体にトナー像を転写する前の像担持体上のトナー像の表面に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質を付与することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至11に係る発明では、キャリア液除去後トナー像に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質を付与するため、転写前にトナー像が乾燥し、その表面に転写できるほどの粘着性が無くなっていても粘着性を発現させ、トナーの粘着力による転写を行うことができる。そして、転写に必要な粘着性が無くなるほどにトナー像を乾燥させることによりトナー粒子間で分かれにくくなり、分かれにくくなった状態でトナー像の表面が粘着性を発現することによってトナー像が一体としてトナーの粘着力により記録媒体に転写することができる。よって、主にトナーの粘着力によって転写する画像形成を行うもので、転写時に画像が欠けることを防止することができ高い転写率で転写を行い、良好な画像形成を行うことができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、液体現像剤を用いた電子写真画像形成装置(以下、プリンタ100と呼ぶ)に適用した場合の実施形態について説明する。
図1はプリンタ100の概略構成図である。
図1に示すように、プリンタ100は像担持体としての、ドラム状の感光体1の回りに帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写ローラ8、クリーニング装置7、及び、除電ランプ6などを備える。また、図中の時計回り方向の感光体1の回転方向について、現像装置4の下流側で、且つ、転写ローラ8の上流側には、トナー圧縮用チャージャ46、接触キャリア液除去ローラ45、吹き付けノズル5、及びエア回収装置51が配置されている。また、図1に示すように、吹き付けノズル5及びエア回収装置51は、エアポンプ52につながっており、乾燥装置50を構成する。さらに、感光体1の回転方向について、乾燥装置50の下流側で、且つ、転写ローラの上流側には、詳細は後述する粘着性発現物質供給手段である粘着性発現液供給装置60の塗布ローラ61が配置されている。
【0015】
このような構成により、プリンタ100は、キャリア液に分散され、樹脂成分に親和性のある液を供給されて粘着性を示す樹脂と着色剤とから成るトナーを用いて現像装置4によって現像する工程と、現像したトナー層からキャリア液を除去してフィルム化する工程とを備える。さらに、フィルム化したトナー層表面にトナーの樹脂成分に親和性がある粘着性発現液を粘着性発現液供給装置60によって供給して粘着性を発現させる工程と、表面に粘着性を発現したトナー層に記録媒体Pを接触させ、転写ローラ8によって加圧して記録媒体Pにトナー層を転写する工程とを備えている。
【0016】
感光体1は、OPC、a−Si等からなる。感光体1の上方に帯電装置2が配置されており、この帯電装置2によって感光体1表面を帯電させる。一様帯電後の感光体1の表面は、露光装置3によって感光体1表面に画像データに基づいた露光がなされる。これによって、感光体1上には、静電潜像が形成される。感光体1の表面上に形成された静電潜像が現像装置4によって現像され、静電潜像はトナー像となる。現像装置4は、感光体1に対して間隔をもって設けられた第一現像ローラ41と第二現像ローラ42との二本の現像ローラ、及び、リバースローラ43を備えている。
二本の現像ローラはSUS製、リバースローラ43はアルミ製で表面をハードアルマイト加工したものが用いられている。これらのローラは感光体1に対して微小隙間を介して配置されており、リバースローラ43の感光体1に対する微小隙間(間隔)は二本の現像ローラの感光体1に対する隙間よりも狭い。現像剤タンク47には、液体現像剤Dが入っており、図1に示すように、ポンプ48によって、現像装置4とクリーニング装置7へと液体現像剤Dが運ばれる。現像装置4に送られてきた液体現像剤Dは、第一現像ローラ41と第二現像ローラ42の二本の現像ローラに対して注がれる。二本の現像ローラは、回転して感光体1の表面上の静電潜像に液体現像剤Dを供給する。感光体1の表面上に供給された液体現像剤D中のトナーが、電子写真方式の電気泳動法によって、感光体1の表面の静電潜像の画像部に付着する。
【0017】
次に、感光体1と現像ローラとの間隔よりも感光体1とリバースローラ43との間隔の方が狭いので、リバースローラ43は、感光体1表面に付着した液体現像剤Dから、余剰なキャリア液や未現像のトナーを取り除く。次に、トナー圧縮用チャージャ46によって感光体1の表面上のトナーに電荷を与える。その後の感光体1表面上の現像剤に接触するように配置された、キャリア液除去手段として二つの接触キャリア液除去ローラ45を圧接させてさらにキャリア液を除去する。さらに乾燥装置50は送風を吹き付けノズル5から感光体1表面上のキャリア液を含むトナー像に与え、キャリア液を揮発させてもよい。
接触キャリア液除去ローラ45を及び乾燥装置50によってキャリア液を除去されたトナー像は、トナー粒子間の凝集性を増し、フィルム様となり、ほぼトナー粒子のみのトナー像となる。その後、詳細は後述する給液装置を用いてキャリア液と同じ成分の液を含む粘着性発現液をトナー像に供給し、トナー像表面のみを膨潤させ、粘着性を発現させる。
【0018】
粘着性が発現した感光体1上のトナー像は、転写ローラ8等によって、記録媒体Pとしての紙や布等に圧接され、電界は用いずに転写される。給紙不良時など、転写されずに残留したトナー像は、クリーニング装置7内で液体現像剤Dが供給され、フォームローラ72により掻き乱され、吸い取られる。さらに、フォームローラ72により吸い取られた液体現像剤Dは絞りローラ73によって、フォームローラ72から絞り出されて、現像剤タンク47へ戻される。さらに感光体1上に残った液体現像剤Dは、感光体1表面をきれいに清掃するためのクリーニングブレード71によって掻き落され、掻き落とされた液体現像剤もフォームローラ72により吸われて現像剤タンク47に回収される。
図1に示すプリンタ100では、クリーニング装置7からの回収液、現像装置4からの回収液も同じ現像剤タンク47に回収しているが、場合によっては、クリーニング装置7と現像装置4との液循環は別系統としてもよい。
【0019】
次に、プリンタ100で用いる感光体1について説明する。
本実施形態では、トナーの粘着性を生かして記録媒体Pに転写するため、感光体1から直接記録媒体Pに転写する場合、また、感光体1から中間転写体へも粘着性を用いて転写する場合、感光体1にかかる負荷は大きい。感光体1は、現状OPCが主流であるが、OPC感光体は、表層がはがれやすく、傷つきやすい。そこで、a−Si感光体を用いた。a−Si感光体は、高硬度で耐久性が高い、安定性が高く特性の変化がほとんどない、無公害な材料であり、環境への影響がない、感光性が高いなどの優れた特徴を持つ。OPCに比べ、桁違いに長寿命で安定性が高い。
【0020】
次に、プリンタ100で用いる液体現像剤Dについて説明する。なお、「液体現像剤」は、主に、着色材と樹脂とから成るトナーと、現像の際、媒体として機能するキャリア液とから成る。
さらに、プリンタ100で使用する液体現像剤Dは、絶縁性の液体(キャリア液)を取り除いたときに粘着性を生じるような粘着樹脂を含有している。着色剤は一般の無機・有機顔料、染料を用いることができる。
着色剤としての例としては以下のものを挙げる事ができる。
プリンテックスV、プリンテックスU、プリンテックスG、スペシャルブラック15、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4−B(以上デグサ社製)、三菱#44、#30、MR−11、MA−100(以上三菱化成社製)、ラーベン1035、ラーベン1252、ニュースペクトII(以上コロンビアカーボン社製)、リーガル400、660、ブラックパール900、1100、1300、モーガルL(以上キャボット社製)などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ピーコックブルーレーキ、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY、ナフトールイエローS、ナフトールレッド、リソールファストイエロー2G、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3Bインジゴ、チオインジゴオイルピンクおよびボルド−10Bなどの有機顔料、ディスパースファストイエローG、ディスパースブルーFFR、ディスパースブルーグリーンB、ディスパースイエロー5G、ディスパースレッドFB、リアクティブオレンジ2R、リアクティブレッド3B、リアクティブブルー3G、リアクティブブリリアントブルーR、リアクティブブラックB等の染料があげられる。
これらの着色剤は純度が高いものが望ましく特に80[%]以上のものが望ましい。
【0021】
粘着性発現液を供給して粘着性を発現させるために、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させる。アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂としては、水溶性メラミン樹脂、水溶性ロジン変性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、コラーゲン、ゼラチン、デンプン、キトサン等がある。
商品としては、クラレ社製ポバール(PVA)、イソバン(イソブチレン/マレイン酸樹脂)、ハリマ化成製ネオトール、ハリディプ(アルキッド樹脂、アクリル樹脂)、日本合成化学社製エコアティ(PVA)、ナガセケムテックス社製デコナール(エポキシ樹脂)、日本純薬社製ジュリアー(アクリル樹脂)、カブセン(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂の酸価は0〜2000[mgKOH/g]であることが望ましく2000[mgKOH/g]より高いと現像特性が低下する。アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解率、水溶性樹脂の水に対する溶解率は20[%]以上あると、粘着転写に適している。50[%]以上であれば更に望ましい。
【0022】
これらの樹脂は、現像剤調整時に用いても良いが着色剤の極性や抵抗を制御し、トナー粒子の帯電性を制御するために、着色剤をフラッシング処理のための樹脂として用いるとよい。フラッシング処理とは、色素を水に溶かした含水液に、更に樹脂分散媒を加え、フラッシャーと呼ばれるニーダー中で良く混合し、顔料のまわりに存在する水を後から添加される樹脂分散媒によって置換する処理をいう。
この操作により取り出される水を排出し、樹脂溶液中に顔料が分散された状態とし乾燥させて、溶剤を除去し、得られた塊を粉砕することにより着色剤の粉末が得られる。
フラッシングする際の着色剤と樹脂の割合は、樹脂100[重量部]に対して着色剤10〜60[重量部]が適当である。フラッシング処理には、フミン酸、フミン酸塩(NA塩、NH4塩など)またはフミン酸誘導体の存在下に行なうのが特に有利である。これら添加されるフミン酸類の量は、着色剤含水液の0.1〜30[重量%]程度が適当である。
【0023】
樹脂親和液である粘着性発現液を供給して粘着性を発現させるために、トナーに含有させる粘着性を示す樹脂成分としては、スチレンブタジエン、イソブチレン、イソプレンなどもあるが、アクリル系樹脂を用いても良い。
アクリル系樹脂は、少なくとも、ポリマーが粘着性発現液と親和し粘着性を発現しやすいモノマーと、ポリマーのガラス転移点が常温以上を示し、凝集性が比較的高いモノマーとを共重合することによって得られる。粘着性はトナー像の転写に寄与し、凝集性はトナー像のフィルム化に寄与する。さらに架橋基点となる官能基含有モノマーを加えても良い。
重合して得られたアクリル系樹脂は、キャリア液等の粘着性発現液と親和して粘着性を発現するため、ガラス転移点を広い範囲から選択できる。その樹脂と親和性のある液を選択できるなら、ガラス転移点は−10〜−80[℃]程度であれば良い。ただし、粘着性発現液を除去して粘着性を発現する際には、ガラス転移点は低い方が、粘着性が高くなる。
粘着性を発現するモノマーとしてはエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(LMA)、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレートなどが選択できる。ここで図2に示すように、化2のRがHのアクリル系モノマーを用いてホモポリマーを合成したとき、n=8のときに最もTgが低くなる。RがCHのメタクリル系モノマーを用いてホモポリマーを合成したときn=12にときに最もTgが低くなる。Tgが低い方が、合成されたモノマーの粘着性は高くなるので、最適な粘着性を付与するにはアクリル系モノマーとメタクリル系モノマーではエステル部のCの数が異なるモノマーを用いると良い。そこで、オクチルアクリレートや2エチルヘキシルアクリレートやラウリルメタクリレートを用いるとより効率的に粘着性を発現させることができる。これらのモノマーを単独で用いてポリマーを合成しても良いし、あるいは複数種を重合しても良い。
凝集性が比較的高いモノマーとしては、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、メチルメタクリレート(MMA)、2エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、メタクリル酸グリシジル、スチレン(St)は、ガラス転移点が常温以上を示し凝集力を発揮する。これらのモノマーを単独で用いてポリマーを合成しても良いし、あるいは複数種を重合しても良い。
【0024】
さらに、粘着性を発現するモノマーを単独または複数種、または粘着性を発現するモノマーと凝集性が比較的高いモノマーとのそれぞれを単独または複数種を重合して得た粘着性樹脂を着色剤に吸着させて、着色剤と一緒に移動するようにするためには、キャリア液に親和性を持たないものを一部含んでいることが好ましい。上記粘着性樹脂はキャリア液にも親和する場合が多いためである。上記凝集性が比較的高いモノマーが、キャリア液に親和性を持たない場合は問題ないが、上記凝集性が比較的高いモノマーが、キャリア液に親和性を持つ場合、例えば2エチルヘキシルメタクリレートなどを用いる場合、さらにメチルメタクリレートなどを重合させるとよい。この際、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを使用してグラフトさせても良い。
比較的低分子量のポリマーは、粘着力は高いが凝集力が低く、高分子量のポリマーは、凝集力は高いが粘着力が低くなる傾向にある。粘着性と凝集性とを両立させるには、高分子量ポリマーでかつ分子量分布の広いものが適している。
上記粘着性を発現するモノマーを単独または複数種重合して得た粘着性樹脂や、粘着性モノマーと凝集性が比較的高いモノマーとを重合して得た樹脂などは、一般的には、重量平均分子量は数万〜数十万のポリマーであり、それ単独では凝集力が得られない場合もある。そこでそれらの樹脂の組成・分子量および分子量分布で基本的な設計を行い、さらに粘着力と凝集力との相反する物性を向上させるために、架橋剤を用いてポリマーを架橋させることもある。
上記アクリル系樹脂を用いる場合、着色剤は、上記アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂の場合同様、着色剤の極性や抵抗を制御し、トナー粒子の帯電性を制御するために、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂などを用いてフラッシングしてもよいが、上記アクリル系樹脂は、着色剤に吸着し、帯電性を制御する働きも持つため、フラッシングしなくても良い。
【0025】
本発明の液体現像剤に使用されるキャリア液としては、体積抵抗10〜1016[Ω・cm]と高抵抗で低誘電率のものが良く、イソパラフィン系炭化水素、シリコーン系オイル等が良好である。イソパラフィン系炭化水素は、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上エクソンモービル社製)(エクソン化学)などがあり、シリコーン系オイルとしては、KF96 1〜10000CST(信越シリコーン)、SH200、SH344(東レシリコン)、TSF451(東芝シリコーン)などがある。
【0026】
液体現像剤を構成するトナー粒子の平均粒径は0.1[μm]〜5[μm]が望ましく、0.1[μm]〜3[μm]がより望ましい。0.1[μm]以下では、十分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、5[μm]以上では、色彩、解像性が悪くなる場合がある。
液体現像剤は、上記着色剤、樹脂、キャリア液、その他分散剤、トナーの帯電を制御するための帯電制御剤(CCA)等、をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行い、濃縮現像剤を調製し、これをキャリア液中に分散させることにより得ることができる。
本実施形態のプリンタにより画像形成可能な記録媒体としては、普通紙、コート紙、布、木材、樹脂、ガラス、金属板等が挙げられる。
【0027】
次に、プリンタ100のキャリア液除去手段に付いて説明する。
プリンタ100では、感光体1の表面移動方向上流側から、リバースローラ43、電荷付与手段であるトナー圧縮用チャージャ46、接触キャリア液除去手段である接触キャリア液除去ローラ45、及び、送風手段である乾燥装置50の順で現像位置と転写位置との間に配置し、キャリア液除去手段を構成する。なお、乾燥装置50のよう送風手段はキャリア液が揮発性である場合に用いるキャリア液除去手段である。
【0028】
リバースローラ43は、感光体1に対して微小ギャップを介して、液体現像剤Dに接触して、設けられ、感光体1の回転方向と同方向に回転するものである。このため、リバースローラ43表面と感光体1表面との対向部では、それぞれの表面移動方向が逆になる。その表面速度によって、感光体1上のキャリア液の除去量が違うので、リバースローラ43は適正なローラ表面速度となるように設定すると良い。
また、リバースローラ43は感光体1の表面、現像後のトナー像(液体現像剤層)に対向する。感光体1上に現像された液体現像剤層の厚みよりも小さいギャップで感光体に対向しているので、感光体1表面に付着している液体現像剤Dが、リバースローラ43に付着し、感光体1表面の液体現像剤Dは一部除去される。感光体1表面上の現像後液体現像剤層は、現像電界により、トナーが感光体1側に圧縮されており、液体現像剤層の感光体1ではない側、すなわち、最表面側には、ほとんどがキャリア液となっている。
リバースローラ43は、圧縮されたトナー以外のキャリア液を除去する。リバースローラ43表面に付着したキャリア液は、ブレードなどのクリーニング手段を設け、除去する。このリバースローラ43表面のクリーニング具合が悪い、すなわち、リバースローラ43表面に付着しているキャリア液量が多いと、感光体1上のキャリア液の除去率が下がるので、リバースローラ43表面のキャリア液はできるだけ除去することが望ましい。リバースローラ43は微小ギャップで感光体1に対向するため、導電性異物がそのギャップに入った時など、簡単に潜像をリークさせることがないよう、また強度の点からも、アルミ製で表面をハードアルマイト加工したものを用いるとよい。現像後に非画像部にトナーが付着していることもあるので、非画像部に付着しているトナーを除去するために、リバースローラ43には、画像部のトナーを除去しないよう、非画像部のトナーを除去するように、画像部の電位と非画像部の電位との間に相当する電圧を印加するとよい。
【0029】
電荷付与手段であるトナー圧縮用チャージャ46は、リバースローラ43によって感光体1上の液体現像剤層のうち上澄みキャリア液を機械的に除去された後のトナー像にトナーと同極性の電荷を与える。これにより、トナー粒子群を圧縮させ、トナー粒子間のキャリア液を押し出す。電荷付与手段としては、チャージローラ、チャージャが挙げられる。電荷付与手段は、プリンタ100のトナー圧縮用チャージャ46のように帯電に用いるようなチャージワイヤとケースから成るチャージャを用いても良いし、チャージローラを用いても良い。電荷付与手段として、チャージローラを用いる場合、リバースローラ43によってキャリア液が除去された後の感光体1上トナー像に対して、その液体現像剤層の厚みよりも大きいギャップで感光体1に対向させ、液体現像剤層には接触させないように配置する。
このように、電荷付与手段では、トナーと同極性の電荷を与えるよう、チャージワイヤやチャージローラに電圧を印加する。また、ジャージローラを用いた場合、液体現像剤Dがチャージローラに付着してしまうこともあるので、チャージローラにはブレードなどのクリーニング手段を設け、付着した液体現像剤を除去する。また、チャージローラの場合は表面のクリーニングのために適当な速度で回転させると良い。速度はクリーニングに適した速度なら良く、回転方向はどちらでも良い。
【0030】
また、プリンタ100の接触キャリア液除去手段は、電荷付与手段によって、電荷を与えられてトナー粒子が圧縮され、押し出されたトナー粒子間のキャリア液を、感光体1上の液体現像剤層に接触する接触キャリア液除去ローラ45を用いて、さらに除去するものである。接触キャリア液除去ローラ45は、リバースローラ43と対向する以前の感光体1上に付着しているキャリア液より、より少ないキャリア液を除去するために、感光体1に対してギャップを設けず、感光体1上の液体現像剤層に接触させてキャリア液を除去する。このためプリンタ100のように感光体1がドラム状の場合には、弾性のあるローラが適している。なお、ドラム状感光体ならば必ずしも弾性体である必要はない。
また、接触キャリア液除去ローラ45には、トナーと同極性の電圧を印加して、トナーが付着しにくくすると良い。本実施形態のプリンタ100では、リバースローラ43によりキャリア液を除去され、電荷付与手段によりトナー粒子が圧縮されているため、トナー像は崩れにくくなっており、このようなトナー像に接触する接触キャリア液除去ローラ45を用いることができる。感光体1表面上のキャリア液を除去するには、感光体1上から接触キャリア液除去ローラ45に付着したキャリア液を除去するために、ブレードなどのクリーニング手段が必要である。接触キャリア液除去ローラ45の数を増やすとキャリア液除去量は増えるので、接触キャリア液除去ローラ45は複数設けると効果的である。特に不揮発性キャリア液を用いる場合は、接触キャリア液除去ローラ45を複数設けて、キャリア液をできるだけ除去すると良い。
【0031】
キャリア液として揮発性キャリア液を含有する液体現像剤Dを用いる場合は、プリンタ100の乾燥装置50のような送風手段を設けて、できるだけキャリア液を除去するとよい。プリンタ100では、乾燥装置50のエアポンプ52から送られた気体を、吹き付けノズル5などの送風手段によって感光体1上の表面上のキャリア液に対して吹き付け、トナー粒子が固化する程度にまでキャリア液を気化する。ここで使用される乾燥用気体は、少なくともキャリア液の蒸気を飽和量含んだものでなければ特に限定されること無く使用でき、例えば空気などを使用することができる。熱はエネルギー消費量や装置内の昇温の問題からできるだけ使用しない方が好ましいが、乾燥した室温よりも高温の気体を使用することでキャリア液の乾燥をより促進させることが可能になるので、併用しても良い。蒸発したキャリア液は、エアポンプ52によってエア回収装置51部分を負圧にし、吹き付けノズル5から送られた気体と共に回収し、乾燥装置50内で、公知の液化装置などを用い、収集して液化し、キャリア液として再利用することもできる。キャリア液が除去された気体は、再度エアポンプ52を用い、吹き付けノズル5に送られる。
【0032】
このように、リバースローラ43、電荷付与手段、接触キャリア液除去手段、キャリア液が揮発性の場合には送風手段と、複数の構成を用いてキャリア液の除去を行っている。これは、リバースローラ43のような物理的な処方のみでは、キャリア液を十分に除去することが困難であり、転写前に十分にキャリア液を除去することができていないと、転写時にトナー粒子間で分かれてしまい、トナー層全体を転写できなくなってしまうためである。また、送風手段のみで揮発性キャリア液を除去すると、キャリア液の除去に長時間が必要になってしまうためである。
【0033】
リバースローラ43は感光体1に対してギャップをもって回転するので、比較的多量の液を除去する場合に適している。また感光体1に対してバイアスを印加しているので、現像を補助する働きもあるため、リバースローラ43、電荷付与手段、接触キャリア液除去手段の中では、最初のプロセスとして用いることが適している。(現像を補助するには、現像は電気泳動なので、液が多い方がよい。)
液除去手段を設ける順番は、例えば電荷付与手段の後にリバースローラ43を設ける配置では、逆の場合に比べ液量が多いため電荷付与の効果が低く、液量が多いため電荷付与手段に液が付着してしまう場合もある。また、接触キャリア液除去手段を最初に設けると、キャリア液が多いため、キャリア液を含むトナー層がつぶされ、像が乱れてしまう場合がある。送風手段は、多量のキャリア液のある状態で用いるよりも、キャリア液がなるべく少量な状態で用いる方が、効率が良い。
また、トナーを構成する樹脂の特徴により、液除去程度が途中でフィルム化程度がよいところがある場合もあるが、適度な液除去程度で転写するのは、タイミングが難しい。できるだけ液除去してしまった後に液供給することにより、供給液量の調整により粘着程度を制御できるのでより制御しやすい。
【0034】
つぎに、粘着性発現液と粘着性発現液をトナー像の表面に付与する粘着性発現液供給手段について説明する。
キャリア液を除去され、凝集し、フィルム状になってトナー層を形成するトナー像に、粘着性を発現させるための粘着性発現液を供給する。粘着性発現液としては、液体現像剤Dのキャリア液が適している。トナー粒子中に含まれる樹脂はキャリア液と親和性があり、キャリア液に膨潤させられるものが選択されているためである。キャリア液以外にも、トナー粒子中に含まれる樹脂と親和性がある性質のものであれば、使用することができる。キャリア液と同等の性質のものは使用可能なことが多い。キャリア液としてアイソパーLを用いた現像剤の場合、粘着性発現液としてはアイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH等、より親和性の高い液も適している。他にも例えば、アルカリ可溶性樹脂を用いたトナーの場合は、3〜10[%]のアルカリ水溶液、水溶性樹脂を用いたトナーの場合は水を用いることができる。アクリル系樹脂の粘着性発現液としては、トルエン、ナフテン系溶剤、脂肪酸エステル等も使用可能である。
粘着性発現液供給手段としては、ローラ状塗布装置や、スプレー装置、ミスト発生装置、インクジェットノズル等の非接触の液滴を飛翔させる装置がある。本実施形態のプリンタ100が有する粘着性発現液供給手段としての粘着性発現液供給装置60は、塗布ローラ61を備えるローラ状塗布装置である。
【0035】
ローラによる液塗布は、液を均一に薄層で供給することが可能であり、塗布ムラが発生しにくい。図3は、プリンタ100が備えるローラ塗布を用いた粘着性発現液供給装置60の概略構成図である。図3に示すように、粘着性発現液は、粘着性発現液容器63に貯留されており、搬送パイプ64を通して粘着性発現液塗布パッド62に供給されている。つまり、粘着性発現液をキャリア液除去後のトナー像を構成するトナー層Tへ付着させる部材である塗布ローラ61に対して、粘着性発現液を含有した粘着性発現液塗布パッド62から微小量の粘着性発現液が塗布ローラ61に供給される。
そして、塗布ローラ61と感光体1との接触部で感光体1上のトナー層Tに粘着性発現液が付着させられる。なお、塗布ローラ61は、弾性層61aを備えており、弾性層61aがウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の耐溶剤性に優れた材料からなる部材であることが好ましい。
なお、本実施形態のプリンタ100は、記録媒体Pにトナー像を転写するトナー像担持体が感光体1である構成であるため、感光体1に対向する位置に粘着性発現液供給装置60を配置している。一方、潜像担持体から中間転写体を介して記録媒体Pにトナー像を転写する構成の場合は、トナー像担持体である中間転写体から記録媒体に転写する位置に対して中間転写体の表面移動方向上流側の中間転写体に対向する位置に粘着性発現液供給手段を配置する。
【0036】
キャリア液除去後のトナー層の表層だけに粘着性発現液を供給することが重要である。内層に粘着性を発現させないためには、粘着性発現液の供給量がポイントなる。供給する粘着性発現液は、より少ない方が、凝集したトナー層を転写時に崩壊させることなく、転写率や転写後の定着時間に優れている。転写前に、トナー層に供給した粘着性発現液が多いと、キャリア液除去によりフィルム化したトナー層が再度トナー粒子の集まりに戻ってしまい、トナー層の厚み方向についての途中でちぎれてしまう場合がある。また、転写後、トナー層に供給した粘着性発現液が多く残っていると、トナー層に粘着性が残ってしまい、記録媒体P上で像が擦られて壊れることがある。供給する粘着性発現液量は、トナー固形分量に対して、25〜100[%]程度の範囲が望ましい。
図3の粘着性発現液供給装置60のように、ローラ上に均一液膜を形成し、回転しながらトナー層Tに粘着性発現液を供給する方法は、塗布速度、塗布量の均一性等に有利である。しかし、ローラで粘着性発現液を供給する場合、塗布ローラ61上の液層が薄いと、転写前のトナー層が塗布ローラ61にオフセットする場合がある。液層を厚くすることはオフセット改善方法の一つである。塗布ローラ61で粘着性発現液を供給し、オフセットを防ぐために塗布ローラ61上液層を厚くし、かつ供給量を少なくするには、粘着性発現液をフォーム状にして供給すると良い。
【0037】
フォーム状とは、液体中に気泡が分散し、液体が圧縮性を帯びた状態を示す。また、気泡層からなるフォーム状の粘着性発現液とは、単層または複数の気泡層からなるフォーム状の粘着性発現液の意味で、必ずしも明確な層面がなくとも構わない。更に、粘着性発現液は、感光体や中間転写体等上の、転写前キャリア液除去後トナー層への塗布時にフォーム状となっていればよく、保存容器(図3の構成では粘着性発現液容器63)内でフォーム状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、トナー層へ塗布するまでの液搬送経路でフォーム状にする手段を設ける構成が望ましい。これは、保存容器では液体で、容器から液を取り出した後にフォーム状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
【0038】
つぎに、保存容器から液状の粘着性発現液を取り出した後に気泡を含有したフォーム状の粘着性発現液とする方法について説明する。
第1の方法としては、保存容器内では液状の粘着性発現液を、容器から取り出した後、液状の粘着性発現液にせん断力を加えて気泡を生成する気泡生成手段で多量の気泡を含有させる方法である。
図4は、液状の粘着性発現液にせん断力を加えて気泡を生成する気泡生成手段を備えた粘着性発現液供給装置60の一例の説明図である。図4に示す例では、せん断力を加える手段として撹拌ローラ66を用いる例である。フォーム状の粘着性発現液供給ローラ65は、矢印Aで示すように、塗布ローラ61に対して接離可能なように設ける。粘着性発現液供給ローラ65を一旦塗布ローラから離脱した状態で、粘着性発現液供給ローラ65と撹拌ローラ66とのニップ部に、粘着性発現液容器63から液搬送パイプ64を通して液状の粘着性発現液を溜め、そして撹拌ローラ66を回転させて撹拌することでフォーム状の粘着性発現液を形成する。その後、粘着性発現液供給ローラ65を塗布ローラ61に接触させて塗布ローラ61にフォーム状の粘着性発現液を供給する。更に、塗布ローラ61のローラ面にブレード61bによって、フォーム状の粘着性発現液の、気泡の大きさ及び加圧力から最適化した粘着性発現液層の膜厚の制御を行っても良い。
【0039】
第2の方法として、液化ガスや圧縮ガスを、液状の粘着性発現液とともに密封容器に入れて、密封容器に取り付けられたアクチュエータ及びノズルから噴出する際に液化ガスや圧縮ガスの膨張により多量の気泡を液中に含有させてフォーム状の粘着性発現液を作成し、液搬送パイプを通して、塗布ローラと接するブレードとのニップ部にフォーム状の粘着性発現液を供給する方法がある。ブレードと塗布ローラとの隙間を調整し、塗布ローラ上の、フォーム状の粘着性発現液層の膜厚を制御し、フォーム状の粘着性発現液の、気泡の大きさ及び加圧力から最適化した粘着性発現液層の膜厚の制御を行っている。
【0040】
第3の方法として、せん断力を加える手段として攪拌羽を用い、密封容器内で、軟化剤を含有する液状の粘着性発現液を攪拌しフォーム状の粘着性発現液を形成し、加圧ボンベから高圧空気を送ってフォーム状の粘着性発現液を密封容器から出し、粘着性発現液塗布パッドによって塗布ローラの塗布面にフォーム状の粘着性発現液を供給する方法もある。ワイヤーバーによって、塗布ローラ上の、フォーム状の粘着性発現液の厚みを制御し、フォーム状の粘着性発現液の、気泡の大きさ及び加圧力から最適化した粘着性発現液層の膜厚の制御を行なう方法もある。なお、長期保存中は気泡がなくなり、密閉容器内で液状であっても、使用直前に攪拌することでフォーム状の粘着性発現液にする構成である。
【0041】
図5は、スプレー装置を用いた粘着性発現液供給装置60の概略構成図である。粘着性発現液容器63から搬送パイプ64を通してスプレーガン67に粘着性発現液が供給される。スプレーガン67には不図示のエア供給源があり、エアにより霧化した粘着性発現液がトナー層Tに付着させられる。
なお、本実施形態では粘着性発現液を記録媒体Pと対向する前のトナー像担持体(プリンタ100では感光体1)上のトナー像の表面に粘着性発現液を付与する構成について説明したが、粘着性発現液は、トナー層Tを転写する前の記録媒体Pに供給しても良い。トナー層Tの転写の際、記録媒体Pとトナー層とを密着させ圧力をかけることで、記録媒体Pに供給された粘着性発現液はトナー層に転移し、トナー層に粘着性を発現させる。粘着性発現液を記録媒体Pに供給しておくことによって、トナー層表層のみに粘着性発現液を供給することが容易にできる。
【0042】
次に、キャリア液除去程度と凝集力について説明する。
どの程度キャリア液を除去すると、トナー層がフィルムとして転写できるかを評価したところ、トナー固形分率が80[%]以上でフィルム化し、抜けが無く、フィルムとして転写することができた。また、トナー固形分率が高い方がより、粘着性が高いことがわかった。しかし、完全に乾燥すると、急激に粘着性はなくなる。評価方法と結果を以下に示す。
厚さ50[μm]のPFAシートに液体現像剤を薄層で塗布する。塗膜装置BAKER APPLICATORの塗布膜厚設定値を4[μm]にセットし、シート上に必要量滴下した液体現像剤を塗布する。トナー固形分率測定用(A)と粘着性評価用(B)とのために2枚のシートに同様に塗布する。トナー固形分率測定用のシートは、塗布面積は所定量(今回は50[mm]×60[mm])となるようにゴムブレードで余分な液体現像剤を除去後、質量を測定する。
上記(A)の液体現像剤質量測定と同時に、上記(B)の粘着性評価用シート上に塗布したトナー層の粘着性の指標となる、タック力を測定した。質量測定と同じタイミングで、表面に直径6[mm]のPETシートを貼付したステンレス丸棒を、試料に5[N]にて押し付けた後、引き離す際のタック力をフォースゲージ(日本電産シンポ製デジタルフォースゲージ FGP−0.5)を用いて測定した。
結果を図6に示した。引き離し後のPETシートにトナーの付着がないものは、トナー層がフィルム化していると判断し、図中では黒丸マークで記載した。
【0043】
次に、感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、中間転写体上のトナー像を記録媒体に転写する構成で用いる中間転写体について説明する。
キャリア液除去によるフィルム化と粘着性発現液供給との手段は、トナー像を感光体から中間転写体上に転写後に行ってもよい。表面をフッ素コートする等は感光体でも可能ではあるが、感光体はその感光特性を生かすため、選択できる表面改質材の範囲が狭い。中間転写体は、表面材質選択の幅が感光体より広いので、トナーを記録媒体に転写する際、トナーがより離れやすい表面材質を選択可能である。
中間転写体を用いる場合、感光体から中間転写体へのトナー像の転写は、中間転写体の方がより低表面エネルギー表面を形成しやすく、粘着転写は困難なので、静電転写が望ましいが、先に述べた各種キャリア液除去手段の一つまたは複数を組み合わせてキャリア液をある程度除去し、粘着性を発現させ、粘着転写しても良い。
【0044】
次に、感光体や中間転写体といったトナー像担持体から記録媒体への転写について説明する。
キャリア液除去によりフィルム化し、粘着性発現液により表層が粘着性となったトナー像は、ほとんど電荷を持たないが、表層に粘着性を持つため、トナー像を記録媒体に圧接することで転写することができる。このため、電界転写は不要であり、転写のために高電界を設ける必要がない。先に述べた特許文献3では、乾燥したトナー層に電荷を与えた後、キャリア液を供給して電界転写しているが、一度乾燥したトナーは、キャリア液を供給するだけでは再帯電は困難である。
本実施形態のプリンタ100では、感光体1上で、表層が粘着性となったトナー像は、感光体1上と、転写ローラ8とによって形成される適当な転写圧をもった転写ニップにおいて、不図示の記録媒体搬送部材によって搬送された記録媒体Pとしての転写紙に、粘着性により転写される。また、トナー像担持体が中間転写体である場合も同様である。
【0045】
次に、各液体除去手段によるキャリア液除去後の感光体上のトナー像のトナー固形分率を測定した。
不揮発性キャリア液を用い、トナー固形分率(キャリア液を含む液体現像剤中の固形分の重量濃度)が5[wt%]の液体現像剤を用いて感光体上に作像したトナー像を、感光体上にて、リバースローラ1本、チャージローラ1本、接触キャリア液除去ローラ4本、を順に用いてキャリア液を除去し、各液除去手段後での、トナー固形分率を測定した。トナー固形分量は約0.30[mg/cm]であった。リバースローラとの対向部通過した後は35[wt%]であった。また、接触キャリア液除去ローラの1本目との対向部を通過した後は、50[wt%]、接触キャリア液除去ローラの2本目との対向部を通過した後は60[wt%]、接触キャリア液除去ローラの3本目との対向部を通過した後は、70[wt%]、接触キャリア液除去ローラの4本目との対向部を通過した後は、80[wt%]であった。なお、チャージローラは、トナー粒子とキャリア液とを分離するものの、キャリア液は除去しないので、チャージローラ後は測定していない。
また揮発性キャリア液を用い、トナー固形分率(キャリア液を含む液体現像剤中の固形分の重量濃度)が5[wt%]の液体現像剤を用いて感光体上に作像したトナー像を、感光体上にて、リバースローラ1本、チャージローラ1本、接触キャリア液除去ローラ2本、乾燥装置を順に用いてキャリア液を除去し、各液除去手段後での、トナー固形分率を測定した。リバースローラとの対向部を通過した後は35[wt%]であった。また、接触キャリア液除去ローラの1本目との対向部を通過した後は50[wt%]、接触キャリア液除去ローラの2本目との対向部を通過した後は60[wt%]であった。また、室温25[℃]において乾燥装置のエアポンプからの吹き付けノズル(感光体周方向開口幅10[mm]、風量30[L/min])に相当時間として1秒間送風した後は80[wt%]であった。
【0046】
また、図4に示したフォーム状の粘着性発現液を供給粘着性発現液供給ローラ65と撹拌ローラ66とを用いて、充分撹拌して粘着性発現液のフォームを作成し、塗布ローラ61に塗布し、ブレード61bで規制した後、塗布ローラ61から、上述したようにキャリア液を除去した感光体1上のトナー像に、塗布したところ、約50[μm]の厚さの粘着性発現液層が形成された。この時、フォーム状の粘着性発現液塗布量は0.15[mg/cm]であった。
そして、粘着性発現液を塗布した1秒後に、ローラ圧力0.14[MPa]にて感光体1に当接した転写ローラ8によって、記録媒体Pとしての転写紙をトナー像に圧接したところ、面方向に抜けがなく、厚み方向にも裂けることなく、フィルム状に、トナー像を転写紙に転写することができた。
【0047】
以上、本実施形態の画像形成装置であるプリンタ100では、潜像担持体である感光体1と、潜像形成前の感光体1表面を一様に帯電させる帯電手段である帯電装置2と、画像データに基づいて、帯電された感光体1の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段である露光装置3とを備える。また、キャリア液とトナーとからなる液体現像剤D中のトナーを静電的に感光体1の表面上に付着させて現像する現像手段である現像装置4を備える。さらに、感光体1上に形成されたトナー像を担持し、表面移動する像担持体としての感光体1上からキャリア液を除去するキャリア液除去手段として、リバースローラ43、トナー圧縮用チャージャ46、接触キャリア液除去ローラ45、及び、乾燥装置50を備る。また、プリンタ100は、キャリア液除去手段がキャリア液を除去した後にトナーの粘着力によって記録媒体Pにトナー像を転写する。そして、プリンタ100は、キャリア液除去手段によるキャリア液除去後、且つ、記録媒体Pにトナー像を転写する前の感光体1上のトナー像の表面に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質である粘着性発現液を付与する粘着性発現物質供給手段である粘着性発現液供給装置60を有する。プリンタ100では、キャリア液除去後トナー像に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現液を付与するため、転写前にトナー像が乾燥し、その表面に粘着性が無くなっていても粘着性を発現させ、トナーの粘着力による転写を行うことができる。そして、転写に必要な粘着性が無くなるほどにトナー像を乾燥させることによりトナー粒子間で分かれにくくなり、分かれにくくなった状態でトナー像の表面が粘着性を発現することによってトナー像が一体としてトナーの粘着力により記録媒体Pに転写することができる。よって、主にトナーの粘着力によって転写する画像形成を行うプリンタ100で、転写時に画像が欠けることを防止することができ高い転写率で転写を行い、良好な画像形成を行うことができる。
また、現像後のトナー像からキャリア液を除去し、フィルム化し、トナーの樹脂成分に親和性を持つ液を供給し、圧力で記録媒体Pに転写することで、定着での高エネルギーを要する熱と、転写での高電界とを使わずに、感光体1上のトナー像を記録媒体Pに、画像の抜けがなく、高効率に転写でき、高画像濃度で、階調性が良く、高画質な画像を得られる。また、記録媒体Pとして、転写紙以外の例えば布、木材、樹脂、ガラス、金属板なども最終記録媒体として用いることができる。よって、転写時に、ドット状やライン状ベタ状のトナーがつぶれずに、画像データにほぼ近い形状で、かつ厚み方向にほぼ全てのトナーが、記録媒体Pに転写され、画像濃度ムラや粒状性の良い画像を得られる。そのため画像濃度の高い,階調性の良い、高画質な画像を得られる。熱定着しないので、樹脂のガラス点移転の制限が少ない。
【0048】
また、粘着性発現液供給装置60によって粘着性発現液を付与された後のトナー像と記録媒体Pとが接触する位置で感光体1に対して記録媒体Pを加圧する加圧手段としての転写ローラ8を有する。加圧することによって、トナーの粘着性による転写をより確実に行うことができる。
【0049】
また、現像装置4が用いる液体現像剤D中のトナーは、キャリア液を除去し、トナーの樹脂成分に親和性のある液を供給されることにより粘着性を示す樹脂を含み、粘着性発現液供給装置60は、トナーの樹脂成分に親和性のある樹脂親和液を供給する樹脂親和液供給手段である。トナー像の表面に樹脂親和液を供給することによって、トナー像の表面を軟化させ、粘着性を発現させることが出来る。
【0050】
また、液体現像剤Dのトナーが含む、樹脂親和液を供給されて粘着性を示す樹脂成分としては、上述した化2の一般式で示す、アクリルエステルを用いることができる。トナーの樹脂成分に親和性のある液を供給されて粘着性を示す樹脂としてアクリルエステルを用いることで、トナーの帯電性も制御しながら、トナーに不要な樹脂を用いる必要がなく、トナー固形分中の着色剤の比率を高めることができるので、少ないトナー量で高発色させることができ、トナー層厚の薄い、高画質が画像を得ることができる。
【0051】
また、液体現像剤Dのトナーが含む、樹脂親和液を供給されて粘着性を示す樹脂成分は、アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂を用いることができる。トナーの樹脂成分に親和性のある液を供給されて粘着性を示す樹脂としてアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂を用いることで、比較的安全な水や希アルカリ水を用いてトナー像に粘着性を発現させることができ、高画質な転写画像を得ることができる。
【0052】
また、図4を用いて説明した粘着性発現液供給装置60のように、粘着性発現液である樹脂親和液を泡状にして感光体1上のトナー像に供給することにより、微量な液を均一にトナー像に供給することができ、トナー像を破壊することなく、表層のみに粘着性を発現させることができ、高画質な転写画像を得ることができる。
【0053】
また、キャリア液除去手段として、感光体1の表面移動方向上流側から順に、リバースローラ43、電荷付与手段であるトナー圧縮用チャージャ46、接触弾性ローラである接触キャリア液除去ローラ45とを配置することで、キャリア液を効率よく除去することができ、トナー像を効率よくフィルム化することができ、高画質な転写画像を得ることができる。
【0054】
また、プリンタ100のように、記録媒体Pにトナー像を転写する像担持体が感光体1であり、感光体1上のトナー像を記録媒体Pに接触させて、感光体1から記録媒体Pにトナー像を転写する構成であれば、簡易な構成となり、プリンタ100全体の装置の小型化を図ることができる。
【0055】
また、感光体1の表面上からトナー像を転写される中間転写体を有する構成の場合、記録媒体Pにトナー像を転写する像担持体は中間転写体であり、中間転写体上のトナー像を記録媒体Pに接触させて、中間転写体から記録媒体にトナー像を転写する。このような構成の場合、キャリア液除去、その後の粘着性発現液供給を、中間転写体上で行なうことにより、記録媒体Pへの転写がより低エネルギーで効率的に可能となる。中間転写体は感光体よりも表面エネルギー低減化のための材料選択が容易である。
【0056】
また、感光体1として、a−Si感光体を用いることにより、粘着性をもつトナーを感光体から紙に転写しても、感光体表面がはがれることなく転写でき、高画質な転写画像を得ることができる。
【0057】
従来の、液体現像剤を用いた画像形成装置では、特開平5−11566号公報のように加熱と加圧とにより、非静電的に転写する方法を用いたものがある。この方法では、熱を用いるために、装置内の昇温やエネルギー消費量の問題があり、また、加熱時の温度変化によって転写ムラが生じるおそれがある。さらに、トナー層全体が軟化するため、厚み方向、面方向にトナー層がちぎれ、一部しか記録媒体に転写しない不具合がある。一方、プリンタ100では、転写の方法としては、非加熱での粘着転写を行っているため、これらの問題を抑制することが出来る。
【0058】
また、アクリルエステル樹脂やアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂から成るトナーを用いて現像したトナー像を現像後、リバースローラやチャージスクイズや接触液除去ローラを用いてキャリア液をできるだけ除去し、フィルム化させた後、トナーを構成する樹脂に親和性のある液を泡状にして、微量塗布し、トナーフィルムの表面のみ膨潤させ、トナーフィルムの表面のみ粘着性を発現させ、電界を用いずに圧力転写することで、潜像担持体上のトナー像を、抜けやつぶれがなく、画像データにほぼ近い形状で、記録媒体に転写することができる。
このような本実施形態1のプリンタ100では、転写時に、ドット状やライン状ベタ状のトナーがつぶれずに、画像データにほぼ近い形状で、かつ厚み方向にほぼ全てのトナーが、記録媒体に転写され、画像濃度ムラや粒状性の良い画像を得られる。そのため画像濃度の高い,階調性の良い、高画質な画像を得られる。
また、定着に熱が不必要であり、熱定着しないので、樹脂のガラス点移転の制限が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態のプリンタの概略構成図。
【図2】化2で示すアクリルエステルのnを変化させたときのガラス転移点との関係を示すグラフ。
【図3】ローラ塗布を用いた粘着性発現液供給装置の概略構成図。
【図4】液状の粘着性発現液気泡状にする気泡生成手段を備えた粘着性発現液供給装置の一例の説明図。
【図5】スプレー装置を用いた粘着性発現液供給装置の概略構成図。
【図6】液体現像剤のトナー固形文率とタック応力との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0060】
1 感光体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 吹き付けノズル
6 除電ランプ
7 クリーニング装置
8 転写ローラ
43 リバースローラ
45 接触キャリア液除去ローラ
46 トナー圧縮用チャージャ
47 現像剤タンク
48 ポンプ
50 乾燥装置
60 粘着性発現液供給装置
61 塗布ローラ
67 スプレーガン
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、
潜像形成前の該潜像担持体表面を一様に帯電させる帯電手段と、
画像データに基づいて、該帯電手段により帯電された該潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
キャリア液とトナーとからなる液体現像剤中のトナーを静電的に該潜像担持体の表面上に付着させて現像する現像手段と、
該潜像担持体上に形成されたトナー像を担持し、表面移動する像担持体上からキャリア液を除去するキャリア液除去手段とを備え、
キャリア液除去手段がキャリア液を除去した後にトナーの粘着力によって記録媒体にトナー像を転写する画像形成装置において、
上記キャリア液除去手段によるキャリア液除去後、且つ、記録媒体にトナー像を転写する前の上記像担持体上のトナー像の表面に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質を付与する粘着性発現物質供給手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記粘着性発現物質供給手段によって上記粘着性発現物質を付与された後のトナー像と記録媒体とが接触する位置で上記像担持体に対して記録媒体を加圧する加圧手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
上記現像手段が用いる上記液体現像剤中のトナーは、上記キャリア液を除去し、トナーの樹脂成分に親和性のある液を供給されることにより粘着性を示す樹脂を含み、
上記粘着性発現物質供給手段は、トナーの樹脂成分に親和性のある樹脂親和液を供給する樹脂親和液供給手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
上記トナーが含む、上記樹脂親和液を供給されて粘着性を示す樹脂成分は、下記の化1の一般式で示す、アクリルエステルであることを特徴とする画像形成装置。
【化1】

(Rは、Hまたは、CH)(n=6〜16)
【請求項5】
請求項3の画像形成装置において、
上記トナーが含む、上記樹脂親和液を供給されて粘着性を示す樹脂成分は、アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3、4または5の画像形成装置において、
上記樹脂親和液供給手段は、上記樹脂親和液を泡状にして上記像担持体上のトナー像に供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、
上記キャリア液除去手段は、上記像担持体の表面移動方向上流側から順に、リバースローラと、電荷付与手段と、接触弾性ローラとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7の画像形成装置において、
上記像担持体は上記潜像担持体であり、該潜像担持体上のトナー像を記録媒体に接触させて、該潜像担持体から記録媒体にトナー像を転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6または7の画像形成装置において、
上記潜像担持体の表面上からトナー像を転写される中間転写体を有し、
上記像担持体は該中間転写体であり、該中間転写体上のトナー像を記録媒体に接触させて、該中間転写体から記録媒体にトナー像を転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の画像形成装置において、
上記潜像担持体として、a−Si感光体を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
潜像担持体表面を一様に帯電した後に、該潜像担持体の表面に静電潜像を形成し、トナーをキャリア液に分散した液体現像剤を用いて潜像担持体上の潜像にトナーを供給してトナー像化し、潜像担持体上に形成されたトナー像を担持して表面移動する像担持体上からキャリア液を除去し、キャリア液を除去した後に、トナーの粘着力によって記録媒体にトナー像を転写する画像形成方法において、
上記キャリア液の除去の後、且つ、記録媒体にトナー像を転写する前の像担持体上のトナー像の表面に、トナーの粘着性を発現させる粘着性発現物質を付与することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate