画像形成装置、及びプログラム
【課題】印刷速度の向上と色調の変化の抑止とを行う。
【解決手段】画像形成装置は、吐出可能な複数種類の色材のうちブラックの色材が往路及び復路でシアン、マゼンタ、イエロー(CMY)の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドと、入力された画像データをCMY表色系の画像データに変換した後、黒生成及び下色除去を行うことで、CMYK表色系の画像データに変換する第1の色変換処理部と、CMYK表色系で構成された画像データのうち、ブラックを除いたCMY表色系の画像データに対して、復路方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換処理部と、印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、第1の色変換処理部で変換したCMY表色系の画像データに対して、第2の色変換処理部による変換を行うか否かを切り替えるON/OFF切替部と、を備えた。
【解決手段】画像形成装置は、吐出可能な複数種類の色材のうちブラックの色材が往路及び復路でシアン、マゼンタ、イエロー(CMY)の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドと、入力された画像データをCMY表色系の画像データに変換した後、黒生成及び下色除去を行うことで、CMYK表色系の画像データに変換する第1の色変換処理部と、CMYK表色系で構成された画像データのうち、ブラックを除いたCMY表色系の画像データに対して、復路方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換処理部と、印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、第1の色変換処理部で変換したCMY表色系の画像データに対して、第2の色変換処理部による変換を行うか否かを切り替えるON/OFF切替部と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、廉価な価格設定と専用紙を用いた場合の高画質特性を有することから、パーソナル用途で普及した。そして、オフィスでも、カラー出力が可能な記録装置として確実に地歩を築いている傾向にある。
【0003】
インクジェット記録装置がオフィス用途で普及するにあたり、記録速度の向上が求められていた。つまり、一般的なインクジェット記録装置は、記録用紙よりもかなり小さい印字ヘッドで、何度も記録用紙上を走査してインクを吐出することで記録を行う。これは、いわば「線」で記録する方式と言え、ページ単位、すなわち「面」で記録を行うレーザープリンタ等と比べると、記録速度の点で不利と考えられている。
【0004】
そこで、近年、インクジェット記録装置では、速度面の不利を解消するために、インクを噴射する周期を高めて走査速度の向上を図られたものが提案されたり、記録ヘッドの大型化や双方向記録により走査回数が削減されたり、画像データを記録する部位にのみ走査を行う最短制御といった走査シーケンスの効率化される、といった改善がなされている。
【0005】
しかしながら、インクジェット記録装置は、色剤が用紙表面で定着するレーザープリンタやオフセット印刷等と異なり、色剤が用紙中へ浸透してから定着する。このため、浸透プロセスに伴う問題や制約が常につきまとう。
【0006】
例えば、インクジェット記録装置では、先に用紙に付着したインクの色が、後から同一箇所に付着したインクよりも強く発色する傾向から生じる問題がある。つまり、印字速度を向上させる双方向印字モードでインクの付着順を逆転させると、往路と復路との走査バンド毎に発色が異なるため、薄い横縞模様が乗ったように見えることになり、画像品質を低下させるという問題が生じる。
【0007】
そこで、双方向記録時の色差(以下、双方向色差という)をはじめとした、インクの着弾順が異なることから生じる色差の対策としては、特許文献1に記載されている技術などが提案されている。特許文献1では、往路と復路のスキャンで色変換処理を異ならせることで、往路と復路とで色味が異なることを抑止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように単純に往路と復路のスキャンで色変換処理を切替える技術だけでは、印字するまでの間に画像処理したデータを保持する必要がある場合、バッファメモリーの容量を大きくするなどコストアップが必要という問題がある。この問題は、特に、ワイドフォーマットのインクジェット記録装置(広幅機)で、より顕著である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印字速度を低下させず適切な色味で出力すると共にコストアップを抑止する画像形成装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像形成装置は、搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドと、入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換手段と、前記第1の色変換手段により変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換手段と、前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換手段で変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換手段による変換を行うか否かを切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるプログラムは、搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドを備えた画像形成装置に対して画像データを送信するコンピュータに対して、入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換ステップと、前記第1の色変換ステップにより変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換ステップと、前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換ステップで変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換ステップによる変換を行うか否かを切り替える切替ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、印字速度を低下させず適切な色味で出力すると共にコストアップを抑止するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置の機構部の概略を説明する図である。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置に搭載されるヘッドユニットの概略構成例を示した図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置に搭載されるヘッドユニットから噴射した滴を示した概念図である。
【図4】図4は、記録用紙への双方向記録時におけるヘッドユニットの動作例を説明する図である。
【図5】図5は、染料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙内部の色剤分布例を示した断面図である。
【図6】図6は、顔料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙内部の色剤分布例を示した断面図である。
【図7】図7は、従来の双方向記録時の各色ヘッドの並び、支配色/被支配色の一例について示した図である。
【図8】図8は、従来の双方向記録時の印字順序による色相の変化の一例を示した色度図である。
【図9】図9は、色毎の明度再現範囲を表すグラフの一例を示した図である。
【図10】図10は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置におけるハードウェアコントローラ構成を示した図である。
【図11】図11は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置における画像データの流れを示した図である。
【図12】図12は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置のヘッドユニットで行われる印字の手順を示した図である。
【図13】図13は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置における、印字の手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置と、PCと、による構成を示した図である。
【図15】図15は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置と、PCと、による構成を示した図である。
【図16】図16は、変形例1にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニットの例である。
【図17】図17は、変形例2にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニットの例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置、及びプログラムの一実施形態を詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態にかかるインクジェット記録装置1の機構部の概略を説明する図である。図1は、インクジェット記録装置1の上面図である。
【0016】
インクジェット記録装置1は、記録用紙15に画像を形成して出力する。記録用紙15は、図1の上方から下方に向かって搬送される。この方向を副走査方向Bとする。また、副走査方向に直交する方向を主走査方向Aとする。本実施形態にかかるインクジェット記録装置1は、双方向印字モードを搭載している。すなわち、キャリッジ100は、図1の右方から左方への往路方向に対して主走査を行ったあと、左方から右方への復路方向に対して主走査を行う。
【0017】
インクジェット記録装置1は、キャリッジ100、用紙検出センサ111、搬送ベルト101、タイミングベルト102、エンコーダスケール103、ガイドロット104、主走査モータ105、駆動プーリ106、従動プーリ107、搬送ローラ109、及び、テンションローラ110を有する。
【0018】
キャリッジ100は、図示しない左右の側板に横架したガイドロット104により保持され、主走査モータ105により、駆動プーリ106と従動プーリ107間に渡したタイミングベルト102を介して、主走査方向Aに移動走査する。
【0019】
キャリッジ100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するヘッドユニット10を有する。
【0020】
インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において、インク滴を吐出するための圧力を発生する手段として、例えば、圧電アクチュエータ、サーマルアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、及び、静電アクチュエータ等を用いる。
【0021】
エンコーダスケール103は、スリットを有し、主走査方向に向かって設けられている。キャリッジ100に、エンコーダスケール103のスリットを検出するフォトセンサ(エンコーダセンサ)を設けることにより、リニアエンコーダとして、主走査方向Aの位置を検知する。
【0022】
用紙検出センサ111は、キャリッジ100に設けられ、キャリッジ100の走査時に、用紙の左右端を検出する。これにより、用紙の幅を取得することができる。用紙検出センサ111は、また、用紙の先端を検出する。これにより、画像を形成する際に、キャリッジ100の画像形成を開始する位置を精度よく定めることができる。
【0023】
搬送ベルト101は、記録用紙15を静電吸着し、キャリッジ100が有する記録ヘッドに対向する位置で搬送させる。搬送ベルト101は、無端状ベルトであり、搬送ローラ109及びテンションローラ110との間に掛け渡される。これにより、副走査方向Bに周回し、(図示しない)帯電ローラにより帯電される。
【0024】
搬送ベルト101は、1層構造、又は、複層構造のベルトである。搬送ベルト101が1層構造の場合には、記録用紙15や帯電ローラ113に接触するため、層全体を絶縁材料で構成する。搬送ベルト101が複層構造の場合には、記録用紙15や帯電ローラ113に接する側を絶縁層とし、記録用紙15や帯電ローラ113に接しない場合には、導電層で形成するとよい。
【0025】
このように、インクジェット記録装置1では、ヘッドユニット10を主走査方向Aの往路及び復路で移動走査させながら、記録用紙15を副走査方向Bに搬送して、ヘッドユニット10からインク滴を噴射させて記録用紙15に画像を印字している。
【0026】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置1に搭載されるヘッドユニット10の概略構成例を示した図である。図2に示すように、ヘッドユニット10は、印字ヘッド11、12、13、14により構成されている。そして、インクジェット記録装置1は、印字ヘッド11、12、13、14が一体となったヘッドユニット10から、記録用紙15の表面にインク滴を吐出して記録する。
【0027】
ヘッドユニット10は、搬送ベルト101により搬送される記録用紙15に対してノズルからインク滴を吐出する。ヘッドユニット10は、4種類の色材(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を吐出可能とする。また、ヘッドユニット10では、ブラックの色材の印字ヘッド14が、走査する際に往路及び復路で他の色材(シアン、マゼンタ、イエロー)より後で吐出されるよう配置されている。さらに、他の色材(シアン、マゼンタ、イエロー)を吐出可能な印字ヘッド12,13、及びブラックの色材を噴射可能な印字ヘッド11が、主走査方向Aに直列に配置されている。
【0028】
本実施形態にかかるヘッドユニット10は、ブラックの色材の印字ヘッドを複数備えている。複数の印字ヘッドのうち、一方の印字ヘッド11は、他の色材(CMY)の印字ヘッド12、13と共に主走査方向Aに直列に配置されている。他方の印字ヘッド14は、他の色材の印字ヘッド12、13より後で吐出されるよう、副走査方向Bに一印字ライン分にずらして配置されている。このように、2個の印字ヘッド11、14にブラックの色材を割り当てることで、他の色材(シアン、マゼンタ、イエロー)が吐出される領域の2倍の領域を一度に印字できる。これにより、モノクロ印刷を行う場合に速度を向上させることができる。
【0029】
各印字ヘッド11、12、13、14は、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向Aと直交する副走査方向Bに配列し、インク吐出口を下方に向けている。なお、印字ヘッドは、色毎に独立していてもよい。そして、印字ヘッド11、12、13、14は、それぞれインク吐出口(ノズル)を2列備えている。そして、インク吐出口(ノズル)が、ノズル間ピッチの半分の位置に、交互にノズルを並べた千鳥配列で設けられている。これにより、ブラックの色材が2列設けられた印字ヘッド11、14は、他の色材と比べて、2倍のドット密度で印字できる。そして、多色印字を行う際に、印字ヘッド11の利用を抑止し、ブラックの色材の印字ヘッド14のみ利用することで、ブラックの色材を、他の色の色材より後で記録用紙15に対して吐出できる。
【0030】
図3は、ヘッドユニット10から噴射した滴を示した概念図である。図3に示すように、ヘッドユニット10の各印字ヘッド11、12、13、14は、記録用紙15に対して、インクを吐出し、画像が記録された状態を作り出す。
【0031】
図4は、記録用紙15への双方向記録時におけるヘッドユニット10の動作例を説明する図である。主走査の順記録方向に対して、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー(以下、K、C、M、Yと表記する)の順でインクの吐出ノズルが構成され、副走査方向の逆方向にずれた位置に、さらにブラックのインク吐出ノズルが構成されている。本実施形態は、ヘッドユニット10から吐出されるインクをこのような並び順や色数に限定するものではなく、インクの特性や設計思想により、異なった並び順や、より多くの色が加わったユニットであってもよい。
【0032】
本実施形態にかかるヘッドユニット10では、双方向印字を行う場合、CMYの印字ヘッド12、13と直列に配置されているブラックの印字ヘッド11を用いず、副走査方向の逆方向にずれた位置に配置されたブラックの印字ヘッド14を用いる。この場合、順方向の記録時に同一箇所に対して、C→M→Yの順でインクを噴射した後、ブラックのインクを噴射する。また、逆方向の記録では、逆順のY→M→Cの順でインクを噴出した後、ブラックのインクを噴出する。このように噴出する理由を、以下に説明する。
【0033】
まず、インクジェットの色剤定着特性として、異なる色のインク滴が同一箇所に打ち込まれた場合、先に用紙表面に着弾したインクの色の方が支配的になるという特性がある。
【0034】
図5は、染料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙15内部の色剤分布例を示した断面図である。先に打ち込んだインク(本例の場合、A色の滴)の方が後に打ち込んだインク(本例の場合、B色の滴)よりも広い範囲に拡がり、色剤の定着範囲に差が生じることで、2次色(例えば、C+Mや、M+Y等)において、A色がより支配的な色成分となる。
【0035】
また、図6は、顔料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙15内部の色剤分布例を示した断面図である。先に打ち込んだインク(本例の場合、A色の滴)に含まれる色剤は用紙表面に留まり、後から打ち込まれた方の色剤(本例の場合、B色の滴)は用紙内部に沈んでしまっている。結果として、記録用紙15の記録面における色剤の特性が強くなり、A色がより支配的な色成分となる。上述した色剤定着特性は、本例に示す顔料系インクの方が、染料系インクよりもより強くでる傾向がある。
【0036】
印刷速度を向上させるために、双方向記録を採用する場合、この特性に起因する2次色(例えば、C+Mや、M+Y等)や、3次色(C+M+Y等)の色調変化を考慮する必要がある。特に、往路と復路の両方の主走査移動毎に大きく用紙をフィードする場合は、色調の変化が横縞となって現れる恐れがある。
【0037】
図7は、従来の双方向記録時の各色ヘッドの並び、支配色/被支配色の一例について示した図である。図7に示すヘッドユニット700では、色毎に印字ヘッドを備えているものとする。図7に示すように右側から順に黄色(Y)の印字ヘッド701、マゼンダ(M)の印字ヘッド702、シアン(C)の印字ヘッド703、ブラック(K)の印字ヘッド704を備えている。この図7に示す例では、前述した2次色における色成分毎の優劣を示したものであるが、往路と復路とにおいて色成分毎に優劣が逆転する。当然のことながら、記録用紙やインクの組成によってこの優劣の度合いは異なってくる。往路記録時及び復路記録時において予想される色調支配強度について以下に示す。尚、以下に示す関係式は、あくまでも説明のために簡略化したものである。
往路記録時に予想される色調支配強度:K>C>M>Y・・・式(1)
復路記録時に予想される色調支配強度:Y>M>C>K・・・式(2)
【0038】
図8は、従来の双方向記録時の印字順序による色相の変化の一例を示した色度図である。図8に示された特性曲線21〜26は、色相を表す特性曲線を表している。具体的には、特性曲線21は、R(レッド)の順方向、特性曲線22はRの逆方向を示している。特性曲線23は、G(グリーン)の順方向、特性曲線24は、Gの逆方向を示している。特性曲線25は、B(ブルー)の順方向、特性曲線26は、Bの逆方向を示している。図8に示すように、例えばレッドならば往路で記録されたレッド(特性曲線21)と、復路で記録されたレッド(特性曲線22)では支配色が逆転し、復路の方ではイエローがかった発色となる。グリーンなら、復路で記録された方(特性曲線24)は、やはりイエローがかった発色となり、ブルーならば、復路で記録された方(特性曲線26)はマゼンタ寄りとなる。このように、式(1)、(2)で予想した結果が導き出される。
【0039】
図9は、色毎の明度再現範囲を表すグラフの一例を示した図である。本例において、特にレッドとグリーンについては、色相方向のズレだけでなく、支配色がイエローに変わることにより、明度が高い方へシフトしてくる。逆にブルーについては、混じり合うシアンとマゼンタに元々明度差が余りなく、支配色が入れ替わっても明度の変化が少ないので、レッドやグリーン程の色差は感じない。このような傾向は、当然、各色の配置順によって決定される。前述の図7に示した例では、往方向に対して「K→C→M→Y」の順でユニットが配置された場合の例を示したが、仮に「K→Y→M→C」の順であれば、イエローの部分がシアンに置き換わることになる。このように、明度が高い色ほど往路と復路とで、色相がずれる傾向にある。
【0040】
そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1のヘッドユニット10では、往路及び復路共に、CMYのインクを吐出した後に、もっとも明度が低いブラックが吐出されるようにした。
【0041】
上述した理由により、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、以下に示す構成を備えることとした。
【0042】
図10は、インクジェット記録装置1におけるハードウェアコントローラ構成を示した図である。図10に示すように、インクジェット記録装置1は、第1のコントローラ1001と、第2のコントローラ1002と、ヘッドIC1003と、ヘッドユニット10と、を備える。
【0043】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、往路方向記録時と往路方向記録時とで適用する色変換処理の適用を切り替えて色調変化に対処する。ただし、双方向記録は印刷速度を稼ぐための特別に設けられた印刷モードであり、通常は往方向だけの片方向記録が中心となる。従って、双方向記録が設定された場合、往路方向記録に用いる色補正パラメータを基準として、復路方向記録時に限り、当該往路方向記録時の色補正パラメータを基準として調整した復路方向専用の色補正パラメータを適用するよう構成することとした。つまり、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第1のコントローラ1001を用いて画像データの色変換を行った後、復路方向記録時に限って第2のコントローラ1002を用いて再び色変換を行うこととした。
【0044】
第1のコントローラ1001は、CPU1011と、メインメモリ1012と、DSP1013と、を備える。
【0045】
CPU1011は、第1のコントローラ1001全体を制御する。メインメモリ1012は、CPU1011やDSP1013の作業領域や、データ格納領域として用いられる。また、インクジェット記録装置1の起動時に、(図示しない)記憶手段に格納されていた往路用変換テーブル1018(復路用変換テーブルでも良い)をCPU1011が読み出して、メインメモリ1012上に展開される。
【0046】
往路用変換テーブル1018は、RGB表色系の画像データを、往路用のCMY表色系の画像データに変換するために利用される、17×17×17からなる3次元ルックアップテーブルとする。
【0047】
DSP1013は、内部メモリ1014と、第1の色変換処理部1015と、BG/UCR処理部1016と、総量規制処理部1017と、を備える。
【0048】
内部メモリ1014は、DSP1013内の各構成の作業領域として用いられる。例えば、内部メモリ1014は、第1の色変換処理部1015が色変換する場合に、画像データを一時的に格納する格納領域として用いられる。
【0049】
第1の色変換処理部1015は、RGB表色系の入力画像データに対して、ヘッドユニット10で往路方向の印字に用いる、CMY表色系の色で構成された画像データに変換する。なお、本実施形態では、第1の色変換処理部1015で往路方向のための色変換を行う例について説明したが、復路方向のための色変換を行うことにしても良い。
【0050】
BG/UCR処理部1016は、変換された後のCMY表色系の画像データから、黒生成及び下色除去を行うことで、CMYK表色系の画像データを生成する。
【0051】
本実施形態では、往路方向用の画像データを作成するための第1の色変換の手段として、第1の色変換処理部1015とBG/UCR処理部1016とを用いる例とするがこのような構成に制限するものではない。
【0052】
総量規制処理部1017は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、生成されたCMYK表色系の画像データの各色に対してフィルタリングを行う。
【0053】
ところで、第1のコントローラ1001が備える上述した構成は、インクジェット記録装置のみに用いられるものではなく、CMYK表色系の画像データの印字する画像形成装置であれば利用できる。つまり、上述した第1のコントローラ1001は、インクジェット記録装置のほかに、レーザープリンタなど、CMYK表色系で印字する様々な画像処理装置に適用できるので、量産効果によりコストの削減を行うことができる。そして、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第2のコントローラ1002で、インクジェットによる印字に特有の処理を行う。
【0054】
第2のコントローラ1002は、CPU1021と、メインメモリ1022と、DSP1023と、を備える。
【0055】
CPU1021は、第2のコントローラ1002全体を制御する。メインメモリ1022は、CPU1021やDSP1023の作業領域や、データ格納領域として用いられる。また、インクジェット記録装置1の起動時に、(図示しない)記憶手段に格納されていた復路用変換テーブル1031(第1のコントローラ1001が復路用変換テーブルを読み出した場合には、往路用変換テーブルとする)をCPU1021が読み出して、メインメモリ1022上に展開される。
【0056】
復路用変換テーブル1031は、往路用のCMY表色系の画像データを、復路用のCMY表色系に変換するために利用される、16×16×16からなる3次元ルックアップテーブルとする。このように本実施形態では、復路用に変換する際に、Kを除いたCMYに限って色変換を行うこととした。
【0057】
DSP1023は、内部メモリ1024と、第2の色変換処理部1025と、ON/OFF切替部1026と、印字方向決定部1027と、総量規制処理部1028と、γ補正部1029と、中間調処理部1030と、を備える。
【0058】
内部メモリ1024は、DSP1023内の各構成の作業領域として用いられる。例えば、内部メモリ1024は、第2の色変換処理部1025が色変換する場合に、画像データを一時的に格納する格納領域として用いられる。
【0059】
第2の色変換処理部1025は、第1の色変換処理部1015により変換されたCMYK表色系の画像データのうち、ブラック(K)を除いた、CMY表色系の画像データに対して、復路方向(往路方向の逆方向)の印字に用いる画像データに変換する。
【0060】
ところで、本実施形態では、第1のコントローラ1001で画像データに対して往路方向用のCMYK表色系の画像データを生成した。そして、第2のコントローラ1002において、復路の印字ラインに限って、復路用の色変換を行うこととした。しかしながら、第1のコントローラ1001で生成された4色(CMYK)の画像データに対する色変換では、必要な記憶領域が膨大になる。
【0061】
そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、4色(CMYK)のうちブラック(K)に限っては、往路及び復路共に、他の3色(CMY)が吐出された後に、吐出されるようにした。これにより、ブラック(K)に限って往路及び復路の違いによる色調の変化を抑止できる。
【0062】
その上で、第2の色変換処理部1025が、復路用変換テーブル1031を用いて、往路用のCMY表色系の画像データを、復路用のCMY表色系の画像データに変換することとした。当該色変換では、3色の色変換のため、利用される記憶容量を抑止できる。これにより記憶容量の抑止と、色味の変化の抑止と、を両立可能とした。
【0063】
印字方向決定部1027は、ヘッドユニット10が次に印字する印字ラインの印字方向が、往路方向又は復路方向であるかを決定する。
【0064】
ON/OFF切替部1026は、印字方向決定部1027による決定が往路又は復路であるかに従って、第1の色変換処理部1015で変換したCMYK表色系の画像データに対して、第2の色変換処理部1025による第2の色変換処理を行うか否かを切り替える。
【0065】
総量規制処理部1028は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、生成されたCMYK表色系の画像データの各色に対して、再びフィルタリングを行う。
【0066】
γ補正部1029は、画像データに対して、インクジェット記録装置1の特性やユーザの嗜好を反映した入出力補正を行う。当該補正をγ補正と称す。γ補正を行うためのγ補正パラメータは、図示しない記憶手段に予め格納されているものとする。
【0067】
中間調処理部1030は、画像データをインクジェット記録装置1から噴射するドットのパターン配置に置き換える中間調処理を行う。
【0068】
ヘッドIC1003は、ヘッドユニット10を制御する。
【0069】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、上述した構成を備えることで、双方向記録を行う際に、往路方向と復路方向との色調の差異を修正できる。
【0070】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、色補正パラメータに着目して色調を修正することとした。これは、コストがかからないのもさることながら、パラメータとして作成や修正が容易なことに基づいている。画像処理的には、例えばγ補正テーブルでも同様の対処が可能であるが、補正可能範囲は1次色に留まるため、2次色以上の多次色で補正効果が低いという課題がある。また、BG/UCRでは、多次色の取り扱いが可能であるが、一律の補正しかできず、全色域に渡る正確な色補正が困難である。そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第1の色変換処理部1015で往路用の色変換した後、第2の色変換処理部1025で復路用の色変換を行うこととした。
【0071】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、双方向色差の補正を、補正パラメータの切り替えを行うことにより、色差補正処理の簡略化を図ることができる。また、往路記録時の色調を通常の片方向記録時の色調と統一し、復路記録時のパラメータを往路の色調と同一になるよう調整することで、双方向記録時の色調と標準的な記録モードである片方向記録時の色調とのズレを抑えることができる。
【0072】
次に、画像データの流れについて説明する。図11は、インクジェット記録装置1における画像データの流れを示した図である。図11に示すように、PDL解釈部1101が、入力されたPDL中間データを、RGB表色系による画像データに変換し、第1のコントローラ1001に出力する(ステップS1101)。
【0073】
そして、第1の色変換処理部1015が、入力されたRGB表色系の画像データを、往路方向印字用のCMY表色系の画像データに変換する、第1の色変換処理を行う(ステップS1102)。その後、BG/UCR処理部1016が、CMY表色系の画像データに対して、黒生成及び下色除去を行うことで、CMYK表色系の画像データを生成する(ステップS1103)。
【0074】
次に、総量規制処理部1017は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、生成されたCMYK表色系の画像データの各色に対して、フィルタリングを行う(ステップS1104)。
【0075】
その後、印字方向決定部1027が、双方向印字の場合、第2のコントローラ1002に入力されたCMYK表色系の画像データについて、ヘッドユニット10の印字ラインの幅毎に往路方向で印字される領域か、復路方向で印字される領域かを決定する(ステップS1105)。
【0076】
そして、ON/OFF切替部1026が、印字方向決定部1027の決定に従って、第2色変換処理部1025で第2の色変換を行うか否かを切り替える(ステップS1106)。そして、第2の色変換処理部1025は、ON/OFF切替部1026の切り替えでONの場合に限り、CMYK表色系の画像データのうち、ブラック(K)を除いた往路方向印字用の3色(CMY)の画像データに対して、復路方向印字用のCMY表色系の画像データに変換する、第2の色変換処理を行う(ステップS1107)。
【0077】
次に、総量規制処理部1028が、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、CMYK表色系の画像データの各色に対して、フィルタリングを行う(ステップS1108)。
【0078】
その後、γ補正部1029は、入力されたCMYK表色系の画像データに対して、γ補正を行う(ステップS1109)。最後に、中間調処理部1030は、CMYK表色系の画像データに対して、中間調処理を行う(ステップS1110)。
【0079】
上述した画像データの流れにより、往路方向用及び復路方向用に変換された画像データが、ヘッドユニット10に出力されることになる。
【0080】
次に、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10で行われる印字について説明する。図12は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10で行われる印字の手順を示した図である。図12では、副走査方向Bに記録用紙が搬送される。そして、図12の(1)では、往路方向の印字が行われる。ヘッドユニット10が、往路方向において、CMYの色材が格納されている印字ヘッド12、13を用いて、記録用紙の印字ラインnに対して印字を行う。この場合、ブラック(K)が格納されている印字ヘッド11は使用しない。
【0081】
そして、印字ヘッド12、13による印字ラインnの印字が終了した後、図12の(2)で示されるように、用紙送りにより、記録用紙が副走査方向Bに搬送される。これにより、ヘッドユニット10の印字ヘッド14の印字対象が、印字ラインnとなり、印字ヘッド12、13の印字対象が、印字ラインn+1となる。
【0082】
その後、図12の(3)に示すように、復路方向の印字が行われる。(3−1)で示されるように、CMYの色材が格納されている印字ヘッド12、13で印字された後の印字ラインnに対して、ヘッドユニット10が、印字ヘッド14を用いて印字を行う。このように、ブラック(K)については、印字ヘッド14を用いて後打ちすることで、往路及び復路で、ブラック(K)が最後に印字されることとなる。これにより、ブラック(K)に関して、往路及び復路の違いによる色調の変化を抑止できる。
【0083】
この(3−1)によるブラックの印字と同時に、(3−2)に示されるように、ヘッドユニット10が、CMYの色材が格納されている印字ヘッド12、13を用いて、記録用紙の印字ラインn+1に対して印字を行う。この場合に、既に第2の色変換処理により、復路用に色が調整されている。
【0084】
このように、CMYKのうち、CMYについては復路用に第2の色変換を行い、Kについては最後に印字することで、往路と復路とで色調変化が生じることを抑止できる。
【0085】
次に、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1における、印字処理について説明する。図13は、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0086】
まず、第1のコントローラ1001が、RGB表色系の画像データと印字するための設定との入力を受け付ける(ステップS1301)。次に、第1のコントローラ1001のCPU1011が、入力された設定に基づいて、双方向印字であるか否かを判定する(ステップS1302)。
【0087】
CPU1011が、双方向印字ではないと判定した場合(ステップS1302:No)、第1の色変換処理部1015が、RGB表色系の画像データを、CMY表色系の画像データに変換する第1の色変換処理を行う(ステップS1303)。
【0088】
次に、総量規制処理部1017が、第1の色変換処理が行われた後のCMYK表色系の画像データの各色に対して、総量規制処理を行う(ステップS1304)。
【0089】
そして、第2のコントローラ1002に入力された段階で、第2のコントローラ1002の総量規制処理部1028が、CMYK表色系の画像データの各色に対して、総量規制処理を行う(ステップS1305)。
【0090】
その後、γ補正部1029が、CMYK表色系の画像データに対して、γ補正処理を行う(ステップS1306)。次に、中間調処理部1030が、γ補正処理後のCMYK表色系の画像データに対して、中間調処理を行う(ステップS1307)。
【0091】
そして、ヘッドユニット10が、印字ヘッド11〜13を用いて、CMYK表色系の画像データを印字する(ステップS1308)。
【0092】
そして、ステップS1302で、CPU1011が、双方向印字であると判定した場合(ステップS1302:Yes)、第1の色変換処理部1015が、RGB表色系の画像データを、CMY表色系の画像データに変換する第1の色変換処理を行う(ステップS1309)。その後、総量規制処理部1017が、第1の色変換処理が行われた後のCMYK表色系の画像データの各色に対して、総量規制処理を行う(ステップS1310)。
【0093】
そして、印字方向決定部1027が、印字方向が往路であるか否かを決定する(ステップS1311)。往路であると決定された場合(ステップS1311:Yes)、ON/OFF切替部1026による切り替えで第2の色変換処理部1025による処理は行われず、ステップS1305〜S1307と同様に、総量規制処理から中間調処理まで行われる(ステップS1312〜S1314)。その後、ヘッドユニット10が、ブラックの印字ヘッド11を用いず、CMYの印字ヘッド12〜13を用いて、CMY表色系の画像データを印字する(ステップS1315)。
【0094】
一方、印字方向決定部1027が、往路ではないと決定した場合(ステップS1311:No)、後で印字する色、換言すればブラックであるか否かにより処理が異なる(ステップS1316)。ブラック以外である場合(ステップS1316:No)、ON/OFF切替部1026による切り替えで、ブラックを除いたCMY表色系の画像データに対して、第2の色変換処理部1025が第2の色変換処理を行う(ステップS1317)。その後は、総量規制処理から、CMYの印字ヘッド12〜13を用いたCMY表色系の画像データの印字まで行われる(ステップS1312〜ステップS1315)。
【0095】
それに対し、ブラックである場合(ステップS1316:Yes)、色変換処理は行われず、ステップS1312〜S1314と同様に、総量規制処理から中間調処理まで行われる(ステップS1318〜S1320)。その後、ヘッドユニット10が、ブラックの印字ヘッド14を用いて、ブラックの画像データを印字する(ステップS1321)。
【0096】
上述した処理手順のステップS1303及びステップS1309に示されるように、入力された全ての画像データは、全領域について往路方向用の色処理として、往路方向用の色変換ルックアップテーブルを用いて色変換処理を行うこととした。
【0097】
そして、その後、復路方向で印字される領域については、ステップS1317で、第2の色変換処理部1025が、復路方向用の3次元ルックアップテーブルで色変換を行うことで、色調の変更を抑止できる。
【0098】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第1の色変換処理及び第2の色変換処理で予め格納されている3次元ルックアップテーブルを用いて色変換を行うこととした。この第1の色変換処理及び第2の色変換処理は、印字対象となる記録媒体の種類に応じて変更可能としてもよい。記録媒体に合わせた色変換を行うことで、画質の向上を図ることができる。
【0099】
また、第1の色変換処理と第2の色変換処理とに関係なく、ブラックについては同一の値を用いることとした。しかしながら、ブラックを必ず同一の値を用いることに制限するものではなく、ブラックを、CMYより後に印字するか否かの制御を、ユーザが選択可能としても良い。
【0100】
さらに上述したように、画像データの色変換時の作業領域を削減するために、第2の色変換処理部1025による色変換では、1色(本実施形態ではブラックとする)について色変換せずに、他の色(CMY)を印字した後に印字することとした。なお、ブラックを後に印字することとしたのは、上述した理由により、後に印字する色は明度が低い色が好ましいためである。このようにブラックを最後に印字することで色調の変化を抑止でき、画質の向上を図ることができる。
【0101】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、上述した構成を備えることで、コストアップや速度低下を伴うことなくインク色の着弾順が異なる時に発生する色差を簡易かつ効果的に補正することを可能とした。
【0102】
ところで、近年、インクジェット記録装置をオフィスに利用される傾向が高くなりつつあるが、オフィスではモノクロで印字する傾向が高い。そこで、モノクロ印字の印字速度及び画質の向上が重要となる。そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、ブラックの印字ヘッド11、14を備えることで、モノクロ印刷の場合の2倍の領域を同時に印刷することで、速度向上を図ることとした。その上で、印字ヘッド11、14では、千鳥配列に2列の噴射ノズルを備えることで2倍の密度で印刷できるため、画質の向上を図れる。
【0103】
その上で、多色印刷を行う際にも速度の向上が図れることが望ましい。そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、双方向印字を行うことで、速度の向上を図ることとした。そして、モノクロ印字の速度向上のために設けられた印字ヘッド14を、CMYより後に印字するために用いることとした。これにより、復路用の色変換がCMYのみで済むため、色変換用に必要な記憶領域の削減を図れると共に、色調の変化を抑止できる。
【0104】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、インクジェット記録装置1で色変換を行う場合について説明した。しかしながら、インクジェット記録装置1で色変換を行う場合に制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、インクジェット記録装置と接続されたPC側で色変換を行う場合について説明する。
【0105】
図14は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置1450と、PC1400と、による構成を示した図である。図14に示すように、PC1400では、第1の色変換処理部1411と、BG/UCR処理部1412と、総量規制処理部1413と、第2の色変換処理部1414と、γ補正部1415と、ズーミング部1416と、中間調処理部1417と、印字方向決定部1418と、ON/OFF切替部1419と、を有するプリンタドライバ1410が実行されている。
【0106】
インクジェット記録装置1450は、出力処理部1451を備える。また、インクジェット記録装置1450は、第1の実施形態のインクジェット記録装置1と同様のヘッドユニット10を備え、第1の実施形態と同様の印刷を可能としている。
【0107】
そして、出力処理部1451は、PC1400から入力された画像データについて、ヘッドユニット10を用いて印刷処理を行う。
【0108】
プリンタドライバ1410の各構成(第1の色変換処理部1411、BG/UCR処理部1412、総量規制処理部1413、第2の色変換処理部1414、γ補正部1415、中間調処理部1417、印字方向決定部1418、ON/OFF切替部1419)は、第1の実施形態の第1の色変換処理部1015、BG/UCR処理部1016、総量規制処理部1017、第2の色変換処理部1025、γ補正部1029、中間調処理部1030、印字方向決定部1027、及びON/OFF切替部1026と同様の処理を行うものとして説明を省略する。また、ズーミング部1416は、インクジェット記録装置145の解像度に合わせて拡大処理を行う。また、第2の実施形態のPC1400及びインクジェット記録装置1450で行われる処理手順も、図13とほぼ同様の手順で行われるため説明を省略する。
【0109】
そして、PC1400は、上述した構成で、インクジェット記録装置1450で双方向印字を行うために、印字ヘッド10の領域毎に、往路及び復路のそれぞれに適した色変換処理が行われた画像データを生成して、インクジェット記録装置1450に出力できる。
【0110】
このように、PC1400側で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令が、プリンタドライバ1410に送信される。これにより、PC1400にソフトウェアとして組み込まれたプリンタドライバ1410が、画像処理を行う。そして、当該画像処理で、記録ドットパターンのデータにラスタライズされた後、当該画像データがインクジェット記録装置1450に転送される。
【0111】
本実施形態のように、PC1400側のプリンタドライバ1410でγ補正を行う場合には、PC1400内の(図示しない)ハードディスクなどの記憶装置にγ補正用のパラメータが記憶される。さらに、本実施形態にかかるPC1400は、往路と復路とで異なる3次元ルックアップテーブルを、ハードディスクなどの記憶手段に記憶する。そして、プリンタドライバ1410は、ヘッドユニット10に送られる画像データを処理するために、往路又は復路に応じて、3次元ルックアップテーブルの使用を切り替える機能を有している。
【0112】
これにより、インクジェット記録装置1450は、PC1400から双方向印字に適した画像データが入力された場合に、当該画像データを双方向印字で印刷することで、印刷速度の向上と色調の変化の抑止とを実現できる。
【0113】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、インクジェット記録装置と接続されたPC側で色変換を行う一例について説明した。この第2の実施形態は、画像処理を全てPC1400側に任せる、いわゆる廉価機の場合について説明した。しかしながら、PCと連動する場合にPC側に全て任せることに制限するものではない。そこで第3の実施形態では、一部の処理実現可能なASIC1553を内蔵したインクジェット記録装置を用いた例について説明する。
【0114】
図15は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置1550と、PC1500と、による構成を示した図である。図15に示すように、PC1500では、第1の色変換処理部1511と、BG/UCR処理部1512と、総量規制処理部1513と、第2の色変換処理部1514と、γ補正部1515と、印字方向決定部1516と、ON/OFF切替部1517と、を有するプリンタドライバ1510が実行されている。
【0115】
インクジェット記録装置1550は、ズーミング部1551と、中間調処理部1552と、出力処理部1554と、を備える。ズーミング部1551と、中間調処理部1552と、が、インクジェット記録装置1550内のASIC1553により実現される。また、インクジェット記録装置1550は、第1の実施形態のインクジェット記録装置1と同様のヘッドユニット10を備え、第1の実施形態と同様の印刷を可能としている。
【0116】
第3の実施形態の各構成は、PC側に存在するか、インクジェット記録装置側に存在するか、という違いはあるが、第2の実施形態と同様の機能を備えているものとして、説明を省略する。また、第3の実施形態のPC1500及びインクジェット記録装置1550で行われる処理手順も、図13とほぼ同様の手順で行われるため説明を省略する。
【0117】
そして、PC1500は、上述した構成で、インクジェット記録装置1550で双方向印字を行うために、印字ヘッドの領域毎に、往路及び復路のそれぞれに適した色変換処理が行われた画像データを生成して、インクジェット記録装置1550に出力できる。
【0118】
これにより、インクジェット記録装置1550及びPC1500は、第2の実施形態と同様の効果を得られる。さらに、第3の実施形態では、拡大処理や中間調処理が可能なASIC1553を搭載したインクジェット記録装置1550を用いたことで、画像処理をPC1500側との間で分担して処理することができるため、画像処理にかかる時間を短縮すると共に、PC1500を画像処理から早く開放することができる。
【0119】
本技術の提供形態としては、画像処理装置として提供されてもよい。また画像記録装置に画像処理が搭載されてもよい。また、プログラム形態で提供されてもよい。
【0120】
(変形例1)
上述した実施形態では、インクジェット記録装置のヘッドユニットが、ブラック用の印字インクを2個備えている場合について説明した。しかしながら、このような構成に制限するものではない。そこで、変形例では、ヘッドユニットの変形例について説明する。
【0121】
図16は、変形例にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニット1600の例である。CMY印字用の印字ヘッド12、13は、上述した実施形態と同様とする。そして、本変形例のヘッドユニット1600は、ブラック用の印字インク1601を備えている。
【0122】
このように、副走査方向Bに長い印字ヘッド1601を用いることで、モノクロ印字の際、広い領域を印字できるので、高速印刷を実現できる。そして、多色印字では、印字ヘッド1601の一部1602のみ用いて、CMY印字用の印字ヘッド12,13で印字が終了した領域に対して印字することとした。これにより、上述した実施形態と同様の効果を得られる。
【0123】
(変形例2)
上述した実施形態及び変形例では、CMYで印字した後、ブラックで印字する例について説明した。しかしながら、後から印字する色を1色に制限するものではない。そこで、変形例2では、後から印字する色が2色の場合について説明する。なお、本変形例では後から印字する色を2色としたが、3色以上であっても良い。
【0124】
図17は、変形例にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニット1700の例である。印字ヘッド11、12、13、14は、上述した実施形態と同様とする。そして、本変形例のヘッドユニット1700では、さらにグレー用の印字インク1701を備えている。
【0125】
このようにグレーとブラックは明度のみが異なるため、主走査方向に直列に印字ヘッドを配置しても、往路と復路とで色調がずれることはない。このように、後から印字する色を1色に制限するものでなく2色以上であっても、上述した実施形態と同様の効果を得られる。
【0126】
第2及び第3の実施形態のPCで実行されるプリンタドライバは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0127】
また、第2及び第3の実施形態のPCで実行されるプリンタドライバを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のPCで実行されるプリンタドライバをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0128】
1 インクジェット記録装置
10、1600、1700 ヘッドユニット
11、12、13、14 印字ヘッド
15 記録用紙
1001 第1のコントローラ
1002 第2のコントローラ
1003 ヘッドIC
1011 CPU
1012 メインメモリ
1013 DSP
1014 内部メモリ
1015 第1の色変換処理部
1016 BG/UCR処理部
1017 総量規制処理部
1018 往路用変換テーブル
1019 往路用変換テーブル
1021 CPU
1022 メインメモリ
1023 DSP
1024 内部メモリ
1025 第2の色変換処理部
1026 ON/OFF切替部
1027 印字方向決定部
1028 総量規制処理部
1029 γ補正部
1030 中間調処理部
1031 復路用変換テーブル
1400、1500 PC
1410、1510 プリンタドライバ
1411、1511 第1の色変換処理部
1412、1512 BG/UCR処理部
1413、1513 総量規制処理部
1414、1514 第2の色変換処理部
1415、1515 γ補正部
1416 ズーミング部
1417 中間調処理部
1418、1516 印字方向決定部
1419、1517 ON/OFF切替部
1450、1550 インクジェット記録装置
1451、1554、 出力処理部
1551 ズーミング部
1552 中間調処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】特公平3−545082公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、廉価な価格設定と専用紙を用いた場合の高画質特性を有することから、パーソナル用途で普及した。そして、オフィスでも、カラー出力が可能な記録装置として確実に地歩を築いている傾向にある。
【0003】
インクジェット記録装置がオフィス用途で普及するにあたり、記録速度の向上が求められていた。つまり、一般的なインクジェット記録装置は、記録用紙よりもかなり小さい印字ヘッドで、何度も記録用紙上を走査してインクを吐出することで記録を行う。これは、いわば「線」で記録する方式と言え、ページ単位、すなわち「面」で記録を行うレーザープリンタ等と比べると、記録速度の点で不利と考えられている。
【0004】
そこで、近年、インクジェット記録装置では、速度面の不利を解消するために、インクを噴射する周期を高めて走査速度の向上を図られたものが提案されたり、記録ヘッドの大型化や双方向記録により走査回数が削減されたり、画像データを記録する部位にのみ走査を行う最短制御といった走査シーケンスの効率化される、といった改善がなされている。
【0005】
しかしながら、インクジェット記録装置は、色剤が用紙表面で定着するレーザープリンタやオフセット印刷等と異なり、色剤が用紙中へ浸透してから定着する。このため、浸透プロセスに伴う問題や制約が常につきまとう。
【0006】
例えば、インクジェット記録装置では、先に用紙に付着したインクの色が、後から同一箇所に付着したインクよりも強く発色する傾向から生じる問題がある。つまり、印字速度を向上させる双方向印字モードでインクの付着順を逆転させると、往路と復路との走査バンド毎に発色が異なるため、薄い横縞模様が乗ったように見えることになり、画像品質を低下させるという問題が生じる。
【0007】
そこで、双方向記録時の色差(以下、双方向色差という)をはじめとした、インクの着弾順が異なることから生じる色差の対策としては、特許文献1に記載されている技術などが提案されている。特許文献1では、往路と復路のスキャンで色変換処理を異ならせることで、往路と復路とで色味が異なることを抑止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように単純に往路と復路のスキャンで色変換処理を切替える技術だけでは、印字するまでの間に画像処理したデータを保持する必要がある場合、バッファメモリーの容量を大きくするなどコストアップが必要という問題がある。この問題は、特に、ワイドフォーマットのインクジェット記録装置(広幅機)で、より顕著である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印字速度を低下させず適切な色味で出力すると共にコストアップを抑止する画像形成装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像形成装置は、搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドと、入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換手段と、前記第1の色変換手段により変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換手段と、前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換手段で変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換手段による変換を行うか否かを切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるプログラムは、搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドを備えた画像形成装置に対して画像データを送信するコンピュータに対して、入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換ステップと、前記第1の色変換ステップにより変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換ステップと、前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換ステップで変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換ステップによる変換を行うか否かを切り替える切替ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、印字速度を低下させず適切な色味で出力すると共にコストアップを抑止するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置の機構部の概略を説明する図である。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置に搭載されるヘッドユニットの概略構成例を示した図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置に搭載されるヘッドユニットから噴射した滴を示した概念図である。
【図4】図4は、記録用紙への双方向記録時におけるヘッドユニットの動作例を説明する図である。
【図5】図5は、染料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙内部の色剤分布例を示した断面図である。
【図6】図6は、顔料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙内部の色剤分布例を示した断面図である。
【図7】図7は、従来の双方向記録時の各色ヘッドの並び、支配色/被支配色の一例について示した図である。
【図8】図8は、従来の双方向記録時の印字順序による色相の変化の一例を示した色度図である。
【図9】図9は、色毎の明度再現範囲を表すグラフの一例を示した図である。
【図10】図10は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置におけるハードウェアコントローラ構成を示した図である。
【図11】図11は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置における画像データの流れを示した図である。
【図12】図12は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置のヘッドユニットで行われる印字の手順を示した図である。
【図13】図13は、第1の実施形態にかかるインクジェット記録装置における、印字の手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置と、PCと、による構成を示した図である。
【図15】図15は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置と、PCと、による構成を示した図である。
【図16】図16は、変形例1にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニットの例である。
【図17】図17は、変形例2にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニットの例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置、及びプログラムの一実施形態を詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態にかかるインクジェット記録装置1の機構部の概略を説明する図である。図1は、インクジェット記録装置1の上面図である。
【0016】
インクジェット記録装置1は、記録用紙15に画像を形成して出力する。記録用紙15は、図1の上方から下方に向かって搬送される。この方向を副走査方向Bとする。また、副走査方向に直交する方向を主走査方向Aとする。本実施形態にかかるインクジェット記録装置1は、双方向印字モードを搭載している。すなわち、キャリッジ100は、図1の右方から左方への往路方向に対して主走査を行ったあと、左方から右方への復路方向に対して主走査を行う。
【0017】
インクジェット記録装置1は、キャリッジ100、用紙検出センサ111、搬送ベルト101、タイミングベルト102、エンコーダスケール103、ガイドロット104、主走査モータ105、駆動プーリ106、従動プーリ107、搬送ローラ109、及び、テンションローラ110を有する。
【0018】
キャリッジ100は、図示しない左右の側板に横架したガイドロット104により保持され、主走査モータ105により、駆動プーリ106と従動プーリ107間に渡したタイミングベルト102を介して、主走査方向Aに移動走査する。
【0019】
キャリッジ100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するヘッドユニット10を有する。
【0020】
インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において、インク滴を吐出するための圧力を発生する手段として、例えば、圧電アクチュエータ、サーマルアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、及び、静電アクチュエータ等を用いる。
【0021】
エンコーダスケール103は、スリットを有し、主走査方向に向かって設けられている。キャリッジ100に、エンコーダスケール103のスリットを検出するフォトセンサ(エンコーダセンサ)を設けることにより、リニアエンコーダとして、主走査方向Aの位置を検知する。
【0022】
用紙検出センサ111は、キャリッジ100に設けられ、キャリッジ100の走査時に、用紙の左右端を検出する。これにより、用紙の幅を取得することができる。用紙検出センサ111は、また、用紙の先端を検出する。これにより、画像を形成する際に、キャリッジ100の画像形成を開始する位置を精度よく定めることができる。
【0023】
搬送ベルト101は、記録用紙15を静電吸着し、キャリッジ100が有する記録ヘッドに対向する位置で搬送させる。搬送ベルト101は、無端状ベルトであり、搬送ローラ109及びテンションローラ110との間に掛け渡される。これにより、副走査方向Bに周回し、(図示しない)帯電ローラにより帯電される。
【0024】
搬送ベルト101は、1層構造、又は、複層構造のベルトである。搬送ベルト101が1層構造の場合には、記録用紙15や帯電ローラ113に接触するため、層全体を絶縁材料で構成する。搬送ベルト101が複層構造の場合には、記録用紙15や帯電ローラ113に接する側を絶縁層とし、記録用紙15や帯電ローラ113に接しない場合には、導電層で形成するとよい。
【0025】
このように、インクジェット記録装置1では、ヘッドユニット10を主走査方向Aの往路及び復路で移動走査させながら、記録用紙15を副走査方向Bに搬送して、ヘッドユニット10からインク滴を噴射させて記録用紙15に画像を印字している。
【0026】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置1に搭載されるヘッドユニット10の概略構成例を示した図である。図2に示すように、ヘッドユニット10は、印字ヘッド11、12、13、14により構成されている。そして、インクジェット記録装置1は、印字ヘッド11、12、13、14が一体となったヘッドユニット10から、記録用紙15の表面にインク滴を吐出して記録する。
【0027】
ヘッドユニット10は、搬送ベルト101により搬送される記録用紙15に対してノズルからインク滴を吐出する。ヘッドユニット10は、4種類の色材(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を吐出可能とする。また、ヘッドユニット10では、ブラックの色材の印字ヘッド14が、走査する際に往路及び復路で他の色材(シアン、マゼンタ、イエロー)より後で吐出されるよう配置されている。さらに、他の色材(シアン、マゼンタ、イエロー)を吐出可能な印字ヘッド12,13、及びブラックの色材を噴射可能な印字ヘッド11が、主走査方向Aに直列に配置されている。
【0028】
本実施形態にかかるヘッドユニット10は、ブラックの色材の印字ヘッドを複数備えている。複数の印字ヘッドのうち、一方の印字ヘッド11は、他の色材(CMY)の印字ヘッド12、13と共に主走査方向Aに直列に配置されている。他方の印字ヘッド14は、他の色材の印字ヘッド12、13より後で吐出されるよう、副走査方向Bに一印字ライン分にずらして配置されている。このように、2個の印字ヘッド11、14にブラックの色材を割り当てることで、他の色材(シアン、マゼンタ、イエロー)が吐出される領域の2倍の領域を一度に印字できる。これにより、モノクロ印刷を行う場合に速度を向上させることができる。
【0029】
各印字ヘッド11、12、13、14は、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向Aと直交する副走査方向Bに配列し、インク吐出口を下方に向けている。なお、印字ヘッドは、色毎に独立していてもよい。そして、印字ヘッド11、12、13、14は、それぞれインク吐出口(ノズル)を2列備えている。そして、インク吐出口(ノズル)が、ノズル間ピッチの半分の位置に、交互にノズルを並べた千鳥配列で設けられている。これにより、ブラックの色材が2列設けられた印字ヘッド11、14は、他の色材と比べて、2倍のドット密度で印字できる。そして、多色印字を行う際に、印字ヘッド11の利用を抑止し、ブラックの色材の印字ヘッド14のみ利用することで、ブラックの色材を、他の色の色材より後で記録用紙15に対して吐出できる。
【0030】
図3は、ヘッドユニット10から噴射した滴を示した概念図である。図3に示すように、ヘッドユニット10の各印字ヘッド11、12、13、14は、記録用紙15に対して、インクを吐出し、画像が記録された状態を作り出す。
【0031】
図4は、記録用紙15への双方向記録時におけるヘッドユニット10の動作例を説明する図である。主走査の順記録方向に対して、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー(以下、K、C、M、Yと表記する)の順でインクの吐出ノズルが構成され、副走査方向の逆方向にずれた位置に、さらにブラックのインク吐出ノズルが構成されている。本実施形態は、ヘッドユニット10から吐出されるインクをこのような並び順や色数に限定するものではなく、インクの特性や設計思想により、異なった並び順や、より多くの色が加わったユニットであってもよい。
【0032】
本実施形態にかかるヘッドユニット10では、双方向印字を行う場合、CMYの印字ヘッド12、13と直列に配置されているブラックの印字ヘッド11を用いず、副走査方向の逆方向にずれた位置に配置されたブラックの印字ヘッド14を用いる。この場合、順方向の記録時に同一箇所に対して、C→M→Yの順でインクを噴射した後、ブラックのインクを噴射する。また、逆方向の記録では、逆順のY→M→Cの順でインクを噴出した後、ブラックのインクを噴出する。このように噴出する理由を、以下に説明する。
【0033】
まず、インクジェットの色剤定着特性として、異なる色のインク滴が同一箇所に打ち込まれた場合、先に用紙表面に着弾したインクの色の方が支配的になるという特性がある。
【0034】
図5は、染料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙15内部の色剤分布例を示した断面図である。先に打ち込んだインク(本例の場合、A色の滴)の方が後に打ち込んだインク(本例の場合、B色の滴)よりも広い範囲に拡がり、色剤の定着範囲に差が生じることで、2次色(例えば、C+Mや、M+Y等)において、A色がより支配的な色成分となる。
【0035】
また、図6は、顔料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の記録用紙15内部の色剤分布例を示した断面図である。先に打ち込んだインク(本例の場合、A色の滴)に含まれる色剤は用紙表面に留まり、後から打ち込まれた方の色剤(本例の場合、B色の滴)は用紙内部に沈んでしまっている。結果として、記録用紙15の記録面における色剤の特性が強くなり、A色がより支配的な色成分となる。上述した色剤定着特性は、本例に示す顔料系インクの方が、染料系インクよりもより強くでる傾向がある。
【0036】
印刷速度を向上させるために、双方向記録を採用する場合、この特性に起因する2次色(例えば、C+Mや、M+Y等)や、3次色(C+M+Y等)の色調変化を考慮する必要がある。特に、往路と復路の両方の主走査移動毎に大きく用紙をフィードする場合は、色調の変化が横縞となって現れる恐れがある。
【0037】
図7は、従来の双方向記録時の各色ヘッドの並び、支配色/被支配色の一例について示した図である。図7に示すヘッドユニット700では、色毎に印字ヘッドを備えているものとする。図7に示すように右側から順に黄色(Y)の印字ヘッド701、マゼンダ(M)の印字ヘッド702、シアン(C)の印字ヘッド703、ブラック(K)の印字ヘッド704を備えている。この図7に示す例では、前述した2次色における色成分毎の優劣を示したものであるが、往路と復路とにおいて色成分毎に優劣が逆転する。当然のことながら、記録用紙やインクの組成によってこの優劣の度合いは異なってくる。往路記録時及び復路記録時において予想される色調支配強度について以下に示す。尚、以下に示す関係式は、あくまでも説明のために簡略化したものである。
往路記録時に予想される色調支配強度:K>C>M>Y・・・式(1)
復路記録時に予想される色調支配強度:Y>M>C>K・・・式(2)
【0038】
図8は、従来の双方向記録時の印字順序による色相の変化の一例を示した色度図である。図8に示された特性曲線21〜26は、色相を表す特性曲線を表している。具体的には、特性曲線21は、R(レッド)の順方向、特性曲線22はRの逆方向を示している。特性曲線23は、G(グリーン)の順方向、特性曲線24は、Gの逆方向を示している。特性曲線25は、B(ブルー)の順方向、特性曲線26は、Bの逆方向を示している。図8に示すように、例えばレッドならば往路で記録されたレッド(特性曲線21)と、復路で記録されたレッド(特性曲線22)では支配色が逆転し、復路の方ではイエローがかった発色となる。グリーンなら、復路で記録された方(特性曲線24)は、やはりイエローがかった発色となり、ブルーならば、復路で記録された方(特性曲線26)はマゼンタ寄りとなる。このように、式(1)、(2)で予想した結果が導き出される。
【0039】
図9は、色毎の明度再現範囲を表すグラフの一例を示した図である。本例において、特にレッドとグリーンについては、色相方向のズレだけでなく、支配色がイエローに変わることにより、明度が高い方へシフトしてくる。逆にブルーについては、混じり合うシアンとマゼンタに元々明度差が余りなく、支配色が入れ替わっても明度の変化が少ないので、レッドやグリーン程の色差は感じない。このような傾向は、当然、各色の配置順によって決定される。前述の図7に示した例では、往方向に対して「K→C→M→Y」の順でユニットが配置された場合の例を示したが、仮に「K→Y→M→C」の順であれば、イエローの部分がシアンに置き換わることになる。このように、明度が高い色ほど往路と復路とで、色相がずれる傾向にある。
【0040】
そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1のヘッドユニット10では、往路及び復路共に、CMYのインクを吐出した後に、もっとも明度が低いブラックが吐出されるようにした。
【0041】
上述した理由により、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、以下に示す構成を備えることとした。
【0042】
図10は、インクジェット記録装置1におけるハードウェアコントローラ構成を示した図である。図10に示すように、インクジェット記録装置1は、第1のコントローラ1001と、第2のコントローラ1002と、ヘッドIC1003と、ヘッドユニット10と、を備える。
【0043】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、往路方向記録時と往路方向記録時とで適用する色変換処理の適用を切り替えて色調変化に対処する。ただし、双方向記録は印刷速度を稼ぐための特別に設けられた印刷モードであり、通常は往方向だけの片方向記録が中心となる。従って、双方向記録が設定された場合、往路方向記録に用いる色補正パラメータを基準として、復路方向記録時に限り、当該往路方向記録時の色補正パラメータを基準として調整した復路方向専用の色補正パラメータを適用するよう構成することとした。つまり、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第1のコントローラ1001を用いて画像データの色変換を行った後、復路方向記録時に限って第2のコントローラ1002を用いて再び色変換を行うこととした。
【0044】
第1のコントローラ1001は、CPU1011と、メインメモリ1012と、DSP1013と、を備える。
【0045】
CPU1011は、第1のコントローラ1001全体を制御する。メインメモリ1012は、CPU1011やDSP1013の作業領域や、データ格納領域として用いられる。また、インクジェット記録装置1の起動時に、(図示しない)記憶手段に格納されていた往路用変換テーブル1018(復路用変換テーブルでも良い)をCPU1011が読み出して、メインメモリ1012上に展開される。
【0046】
往路用変換テーブル1018は、RGB表色系の画像データを、往路用のCMY表色系の画像データに変換するために利用される、17×17×17からなる3次元ルックアップテーブルとする。
【0047】
DSP1013は、内部メモリ1014と、第1の色変換処理部1015と、BG/UCR処理部1016と、総量規制処理部1017と、を備える。
【0048】
内部メモリ1014は、DSP1013内の各構成の作業領域として用いられる。例えば、内部メモリ1014は、第1の色変換処理部1015が色変換する場合に、画像データを一時的に格納する格納領域として用いられる。
【0049】
第1の色変換処理部1015は、RGB表色系の入力画像データに対して、ヘッドユニット10で往路方向の印字に用いる、CMY表色系の色で構成された画像データに変換する。なお、本実施形態では、第1の色変換処理部1015で往路方向のための色変換を行う例について説明したが、復路方向のための色変換を行うことにしても良い。
【0050】
BG/UCR処理部1016は、変換された後のCMY表色系の画像データから、黒生成及び下色除去を行うことで、CMYK表色系の画像データを生成する。
【0051】
本実施形態では、往路方向用の画像データを作成するための第1の色変換の手段として、第1の色変換処理部1015とBG/UCR処理部1016とを用いる例とするがこのような構成に制限するものではない。
【0052】
総量規制処理部1017は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、生成されたCMYK表色系の画像データの各色に対してフィルタリングを行う。
【0053】
ところで、第1のコントローラ1001が備える上述した構成は、インクジェット記録装置のみに用いられるものではなく、CMYK表色系の画像データの印字する画像形成装置であれば利用できる。つまり、上述した第1のコントローラ1001は、インクジェット記録装置のほかに、レーザープリンタなど、CMYK表色系で印字する様々な画像処理装置に適用できるので、量産効果によりコストの削減を行うことができる。そして、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第2のコントローラ1002で、インクジェットによる印字に特有の処理を行う。
【0054】
第2のコントローラ1002は、CPU1021と、メインメモリ1022と、DSP1023と、を備える。
【0055】
CPU1021は、第2のコントローラ1002全体を制御する。メインメモリ1022は、CPU1021やDSP1023の作業領域や、データ格納領域として用いられる。また、インクジェット記録装置1の起動時に、(図示しない)記憶手段に格納されていた復路用変換テーブル1031(第1のコントローラ1001が復路用変換テーブルを読み出した場合には、往路用変換テーブルとする)をCPU1021が読み出して、メインメモリ1022上に展開される。
【0056】
復路用変換テーブル1031は、往路用のCMY表色系の画像データを、復路用のCMY表色系に変換するために利用される、16×16×16からなる3次元ルックアップテーブルとする。このように本実施形態では、復路用に変換する際に、Kを除いたCMYに限って色変換を行うこととした。
【0057】
DSP1023は、内部メモリ1024と、第2の色変換処理部1025と、ON/OFF切替部1026と、印字方向決定部1027と、総量規制処理部1028と、γ補正部1029と、中間調処理部1030と、を備える。
【0058】
内部メモリ1024は、DSP1023内の各構成の作業領域として用いられる。例えば、内部メモリ1024は、第2の色変換処理部1025が色変換する場合に、画像データを一時的に格納する格納領域として用いられる。
【0059】
第2の色変換処理部1025は、第1の色変換処理部1015により変換されたCMYK表色系の画像データのうち、ブラック(K)を除いた、CMY表色系の画像データに対して、復路方向(往路方向の逆方向)の印字に用いる画像データに変換する。
【0060】
ところで、本実施形態では、第1のコントローラ1001で画像データに対して往路方向用のCMYK表色系の画像データを生成した。そして、第2のコントローラ1002において、復路の印字ラインに限って、復路用の色変換を行うこととした。しかしながら、第1のコントローラ1001で生成された4色(CMYK)の画像データに対する色変換では、必要な記憶領域が膨大になる。
【0061】
そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、4色(CMYK)のうちブラック(K)に限っては、往路及び復路共に、他の3色(CMY)が吐出された後に、吐出されるようにした。これにより、ブラック(K)に限って往路及び復路の違いによる色調の変化を抑止できる。
【0062】
その上で、第2の色変換処理部1025が、復路用変換テーブル1031を用いて、往路用のCMY表色系の画像データを、復路用のCMY表色系の画像データに変換することとした。当該色変換では、3色の色変換のため、利用される記憶容量を抑止できる。これにより記憶容量の抑止と、色味の変化の抑止と、を両立可能とした。
【0063】
印字方向決定部1027は、ヘッドユニット10が次に印字する印字ラインの印字方向が、往路方向又は復路方向であるかを決定する。
【0064】
ON/OFF切替部1026は、印字方向決定部1027による決定が往路又は復路であるかに従って、第1の色変換処理部1015で変換したCMYK表色系の画像データに対して、第2の色変換処理部1025による第2の色変換処理を行うか否かを切り替える。
【0065】
総量規制処理部1028は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、生成されたCMYK表色系の画像データの各色に対して、再びフィルタリングを行う。
【0066】
γ補正部1029は、画像データに対して、インクジェット記録装置1の特性やユーザの嗜好を反映した入出力補正を行う。当該補正をγ補正と称す。γ補正を行うためのγ補正パラメータは、図示しない記憶手段に予め格納されているものとする。
【0067】
中間調処理部1030は、画像データをインクジェット記録装置1から噴射するドットのパターン配置に置き換える中間調処理を行う。
【0068】
ヘッドIC1003は、ヘッドユニット10を制御する。
【0069】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、上述した構成を備えることで、双方向記録を行う際に、往路方向と復路方向との色調の差異を修正できる。
【0070】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、色補正パラメータに着目して色調を修正することとした。これは、コストがかからないのもさることながら、パラメータとして作成や修正が容易なことに基づいている。画像処理的には、例えばγ補正テーブルでも同様の対処が可能であるが、補正可能範囲は1次色に留まるため、2次色以上の多次色で補正効果が低いという課題がある。また、BG/UCRでは、多次色の取り扱いが可能であるが、一律の補正しかできず、全色域に渡る正確な色補正が困難である。そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第1の色変換処理部1015で往路用の色変換した後、第2の色変換処理部1025で復路用の色変換を行うこととした。
【0071】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、双方向色差の補正を、補正パラメータの切り替えを行うことにより、色差補正処理の簡略化を図ることができる。また、往路記録時の色調を通常の片方向記録時の色調と統一し、復路記録時のパラメータを往路の色調と同一になるよう調整することで、双方向記録時の色調と標準的な記録モードである片方向記録時の色調とのズレを抑えることができる。
【0072】
次に、画像データの流れについて説明する。図11は、インクジェット記録装置1における画像データの流れを示した図である。図11に示すように、PDL解釈部1101が、入力されたPDL中間データを、RGB表色系による画像データに変換し、第1のコントローラ1001に出力する(ステップS1101)。
【0073】
そして、第1の色変換処理部1015が、入力されたRGB表色系の画像データを、往路方向印字用のCMY表色系の画像データに変換する、第1の色変換処理を行う(ステップS1102)。その後、BG/UCR処理部1016が、CMY表色系の画像データに対して、黒生成及び下色除去を行うことで、CMYK表色系の画像データを生成する(ステップS1103)。
【0074】
次に、総量規制処理部1017は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、生成されたCMYK表色系の画像データの各色に対して、フィルタリングを行う(ステップS1104)。
【0075】
その後、印字方向決定部1027が、双方向印字の場合、第2のコントローラ1002に入力されたCMYK表色系の画像データについて、ヘッドユニット10の印字ラインの幅毎に往路方向で印字される領域か、復路方向で印字される領域かを決定する(ステップS1105)。
【0076】
そして、ON/OFF切替部1026が、印字方向決定部1027の決定に従って、第2色変換処理部1025で第2の色変換を行うか否かを切り替える(ステップS1106)。そして、第2の色変換処理部1025は、ON/OFF切替部1026の切り替えでONの場合に限り、CMYK表色系の画像データのうち、ブラック(K)を除いた往路方向印字用の3色(CMY)の画像データに対して、復路方向印字用のCMY表色系の画像データに変換する、第2の色変換処理を行う(ステップS1107)。
【0077】
次に、総量規制処理部1028が、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10において出力可能な各色の色材の総量を超えないよう、CMYK表色系の画像データの各色に対して、フィルタリングを行う(ステップS1108)。
【0078】
その後、γ補正部1029は、入力されたCMYK表色系の画像データに対して、γ補正を行う(ステップS1109)。最後に、中間調処理部1030は、CMYK表色系の画像データに対して、中間調処理を行う(ステップS1110)。
【0079】
上述した画像データの流れにより、往路方向用及び復路方向用に変換された画像データが、ヘッドユニット10に出力されることになる。
【0080】
次に、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10で行われる印字について説明する。図12は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット10で行われる印字の手順を示した図である。図12では、副走査方向Bに記録用紙が搬送される。そして、図12の(1)では、往路方向の印字が行われる。ヘッドユニット10が、往路方向において、CMYの色材が格納されている印字ヘッド12、13を用いて、記録用紙の印字ラインnに対して印字を行う。この場合、ブラック(K)が格納されている印字ヘッド11は使用しない。
【0081】
そして、印字ヘッド12、13による印字ラインnの印字が終了した後、図12の(2)で示されるように、用紙送りにより、記録用紙が副走査方向Bに搬送される。これにより、ヘッドユニット10の印字ヘッド14の印字対象が、印字ラインnとなり、印字ヘッド12、13の印字対象が、印字ラインn+1となる。
【0082】
その後、図12の(3)に示すように、復路方向の印字が行われる。(3−1)で示されるように、CMYの色材が格納されている印字ヘッド12、13で印字された後の印字ラインnに対して、ヘッドユニット10が、印字ヘッド14を用いて印字を行う。このように、ブラック(K)については、印字ヘッド14を用いて後打ちすることで、往路及び復路で、ブラック(K)が最後に印字されることとなる。これにより、ブラック(K)に関して、往路及び復路の違いによる色調の変化を抑止できる。
【0083】
この(3−1)によるブラックの印字と同時に、(3−2)に示されるように、ヘッドユニット10が、CMYの色材が格納されている印字ヘッド12、13を用いて、記録用紙の印字ラインn+1に対して印字を行う。この場合に、既に第2の色変換処理により、復路用に色が調整されている。
【0084】
このように、CMYKのうち、CMYについては復路用に第2の色変換を行い、Kについては最後に印字することで、往路と復路とで色調変化が生じることを抑止できる。
【0085】
次に、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1における、印字処理について説明する。図13は、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0086】
まず、第1のコントローラ1001が、RGB表色系の画像データと印字するための設定との入力を受け付ける(ステップS1301)。次に、第1のコントローラ1001のCPU1011が、入力された設定に基づいて、双方向印字であるか否かを判定する(ステップS1302)。
【0087】
CPU1011が、双方向印字ではないと判定した場合(ステップS1302:No)、第1の色変換処理部1015が、RGB表色系の画像データを、CMY表色系の画像データに変換する第1の色変換処理を行う(ステップS1303)。
【0088】
次に、総量規制処理部1017が、第1の色変換処理が行われた後のCMYK表色系の画像データの各色に対して、総量規制処理を行う(ステップS1304)。
【0089】
そして、第2のコントローラ1002に入力された段階で、第2のコントローラ1002の総量規制処理部1028が、CMYK表色系の画像データの各色に対して、総量規制処理を行う(ステップS1305)。
【0090】
その後、γ補正部1029が、CMYK表色系の画像データに対して、γ補正処理を行う(ステップS1306)。次に、中間調処理部1030が、γ補正処理後のCMYK表色系の画像データに対して、中間調処理を行う(ステップS1307)。
【0091】
そして、ヘッドユニット10が、印字ヘッド11〜13を用いて、CMYK表色系の画像データを印字する(ステップS1308)。
【0092】
そして、ステップS1302で、CPU1011が、双方向印字であると判定した場合(ステップS1302:Yes)、第1の色変換処理部1015が、RGB表色系の画像データを、CMY表色系の画像データに変換する第1の色変換処理を行う(ステップS1309)。その後、総量規制処理部1017が、第1の色変換処理が行われた後のCMYK表色系の画像データの各色に対して、総量規制処理を行う(ステップS1310)。
【0093】
そして、印字方向決定部1027が、印字方向が往路であるか否かを決定する(ステップS1311)。往路であると決定された場合(ステップS1311:Yes)、ON/OFF切替部1026による切り替えで第2の色変換処理部1025による処理は行われず、ステップS1305〜S1307と同様に、総量規制処理から中間調処理まで行われる(ステップS1312〜S1314)。その後、ヘッドユニット10が、ブラックの印字ヘッド11を用いず、CMYの印字ヘッド12〜13を用いて、CMY表色系の画像データを印字する(ステップS1315)。
【0094】
一方、印字方向決定部1027が、往路ではないと決定した場合(ステップS1311:No)、後で印字する色、換言すればブラックであるか否かにより処理が異なる(ステップS1316)。ブラック以外である場合(ステップS1316:No)、ON/OFF切替部1026による切り替えで、ブラックを除いたCMY表色系の画像データに対して、第2の色変換処理部1025が第2の色変換処理を行う(ステップS1317)。その後は、総量規制処理から、CMYの印字ヘッド12〜13を用いたCMY表色系の画像データの印字まで行われる(ステップS1312〜ステップS1315)。
【0095】
それに対し、ブラックである場合(ステップS1316:Yes)、色変換処理は行われず、ステップS1312〜S1314と同様に、総量規制処理から中間調処理まで行われる(ステップS1318〜S1320)。その後、ヘッドユニット10が、ブラックの印字ヘッド14を用いて、ブラックの画像データを印字する(ステップS1321)。
【0096】
上述した処理手順のステップS1303及びステップS1309に示されるように、入力された全ての画像データは、全領域について往路方向用の色処理として、往路方向用の色変換ルックアップテーブルを用いて色変換処理を行うこととした。
【0097】
そして、その後、復路方向で印字される領域については、ステップS1317で、第2の色変換処理部1025が、復路方向用の3次元ルックアップテーブルで色変換を行うことで、色調の変更を抑止できる。
【0098】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、第1の色変換処理及び第2の色変換処理で予め格納されている3次元ルックアップテーブルを用いて色変換を行うこととした。この第1の色変換処理及び第2の色変換処理は、印字対象となる記録媒体の種類に応じて変更可能としてもよい。記録媒体に合わせた色変換を行うことで、画質の向上を図ることができる。
【0099】
また、第1の色変換処理と第2の色変換処理とに関係なく、ブラックについては同一の値を用いることとした。しかしながら、ブラックを必ず同一の値を用いることに制限するものではなく、ブラックを、CMYより後に印字するか否かの制御を、ユーザが選択可能としても良い。
【0100】
さらに上述したように、画像データの色変換時の作業領域を削減するために、第2の色変換処理部1025による色変換では、1色(本実施形態ではブラックとする)について色変換せずに、他の色(CMY)を印字した後に印字することとした。なお、ブラックを後に印字することとしたのは、上述した理由により、後に印字する色は明度が低い色が好ましいためである。このようにブラックを最後に印字することで色調の変化を抑止でき、画質の向上を図ることができる。
【0101】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、上述した構成を備えることで、コストアップや速度低下を伴うことなくインク色の着弾順が異なる時に発生する色差を簡易かつ効果的に補正することを可能とした。
【0102】
ところで、近年、インクジェット記録装置をオフィスに利用される傾向が高くなりつつあるが、オフィスではモノクロで印字する傾向が高い。そこで、モノクロ印字の印字速度及び画質の向上が重要となる。そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、ブラックの印字ヘッド11、14を備えることで、モノクロ印刷の場合の2倍の領域を同時に印刷することで、速度向上を図ることとした。その上で、印字ヘッド11、14では、千鳥配列に2列の噴射ノズルを備えることで2倍の密度で印刷できるため、画質の向上を図れる。
【0103】
その上で、多色印刷を行う際にも速度の向上が図れることが望ましい。そこで、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1では、双方向印字を行うことで、速度の向上を図ることとした。そして、モノクロ印字の速度向上のために設けられた印字ヘッド14を、CMYより後に印字するために用いることとした。これにより、復路用の色変換がCMYのみで済むため、色変換用に必要な記憶領域の削減を図れると共に、色調の変化を抑止できる。
【0104】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、インクジェット記録装置1で色変換を行う場合について説明した。しかしながら、インクジェット記録装置1で色変換を行う場合に制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、インクジェット記録装置と接続されたPC側で色変換を行う場合について説明する。
【0105】
図14は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置1450と、PC1400と、による構成を示した図である。図14に示すように、PC1400では、第1の色変換処理部1411と、BG/UCR処理部1412と、総量規制処理部1413と、第2の色変換処理部1414と、γ補正部1415と、ズーミング部1416と、中間調処理部1417と、印字方向決定部1418と、ON/OFF切替部1419と、を有するプリンタドライバ1410が実行されている。
【0106】
インクジェット記録装置1450は、出力処理部1451を備える。また、インクジェット記録装置1450は、第1の実施形態のインクジェット記録装置1と同様のヘッドユニット10を備え、第1の実施形態と同様の印刷を可能としている。
【0107】
そして、出力処理部1451は、PC1400から入力された画像データについて、ヘッドユニット10を用いて印刷処理を行う。
【0108】
プリンタドライバ1410の各構成(第1の色変換処理部1411、BG/UCR処理部1412、総量規制処理部1413、第2の色変換処理部1414、γ補正部1415、中間調処理部1417、印字方向決定部1418、ON/OFF切替部1419)は、第1の実施形態の第1の色変換処理部1015、BG/UCR処理部1016、総量規制処理部1017、第2の色変換処理部1025、γ補正部1029、中間調処理部1030、印字方向決定部1027、及びON/OFF切替部1026と同様の処理を行うものとして説明を省略する。また、ズーミング部1416は、インクジェット記録装置145の解像度に合わせて拡大処理を行う。また、第2の実施形態のPC1400及びインクジェット記録装置1450で行われる処理手順も、図13とほぼ同様の手順で行われるため説明を省略する。
【0109】
そして、PC1400は、上述した構成で、インクジェット記録装置1450で双方向印字を行うために、印字ヘッド10の領域毎に、往路及び復路のそれぞれに適した色変換処理が行われた画像データを生成して、インクジェット記録装置1450に出力できる。
【0110】
このように、PC1400側で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令が、プリンタドライバ1410に送信される。これにより、PC1400にソフトウェアとして組み込まれたプリンタドライバ1410が、画像処理を行う。そして、当該画像処理で、記録ドットパターンのデータにラスタライズされた後、当該画像データがインクジェット記録装置1450に転送される。
【0111】
本実施形態のように、PC1400側のプリンタドライバ1410でγ補正を行う場合には、PC1400内の(図示しない)ハードディスクなどの記憶装置にγ補正用のパラメータが記憶される。さらに、本実施形態にかかるPC1400は、往路と復路とで異なる3次元ルックアップテーブルを、ハードディスクなどの記憶手段に記憶する。そして、プリンタドライバ1410は、ヘッドユニット10に送られる画像データを処理するために、往路又は復路に応じて、3次元ルックアップテーブルの使用を切り替える機能を有している。
【0112】
これにより、インクジェット記録装置1450は、PC1400から双方向印字に適した画像データが入力された場合に、当該画像データを双方向印字で印刷することで、印刷速度の向上と色調の変化の抑止とを実現できる。
【0113】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、インクジェット記録装置と接続されたPC側で色変換を行う一例について説明した。この第2の実施形態は、画像処理を全てPC1400側に任せる、いわゆる廉価機の場合について説明した。しかしながら、PCと連動する場合にPC側に全て任せることに制限するものではない。そこで第3の実施形態では、一部の処理実現可能なASIC1553を内蔵したインクジェット記録装置を用いた例について説明する。
【0114】
図15は、第2の実施形態にかかるインクジェット記録装置1550と、PC1500と、による構成を示した図である。図15に示すように、PC1500では、第1の色変換処理部1511と、BG/UCR処理部1512と、総量規制処理部1513と、第2の色変換処理部1514と、γ補正部1515と、印字方向決定部1516と、ON/OFF切替部1517と、を有するプリンタドライバ1510が実行されている。
【0115】
インクジェット記録装置1550は、ズーミング部1551と、中間調処理部1552と、出力処理部1554と、を備える。ズーミング部1551と、中間調処理部1552と、が、インクジェット記録装置1550内のASIC1553により実現される。また、インクジェット記録装置1550は、第1の実施形態のインクジェット記録装置1と同様のヘッドユニット10を備え、第1の実施形態と同様の印刷を可能としている。
【0116】
第3の実施形態の各構成は、PC側に存在するか、インクジェット記録装置側に存在するか、という違いはあるが、第2の実施形態と同様の機能を備えているものとして、説明を省略する。また、第3の実施形態のPC1500及びインクジェット記録装置1550で行われる処理手順も、図13とほぼ同様の手順で行われるため説明を省略する。
【0117】
そして、PC1500は、上述した構成で、インクジェット記録装置1550で双方向印字を行うために、印字ヘッドの領域毎に、往路及び復路のそれぞれに適した色変換処理が行われた画像データを生成して、インクジェット記録装置1550に出力できる。
【0118】
これにより、インクジェット記録装置1550及びPC1500は、第2の実施形態と同様の効果を得られる。さらに、第3の実施形態では、拡大処理や中間調処理が可能なASIC1553を搭載したインクジェット記録装置1550を用いたことで、画像処理をPC1500側との間で分担して処理することができるため、画像処理にかかる時間を短縮すると共に、PC1500を画像処理から早く開放することができる。
【0119】
本技術の提供形態としては、画像処理装置として提供されてもよい。また画像記録装置に画像処理が搭載されてもよい。また、プログラム形態で提供されてもよい。
【0120】
(変形例1)
上述した実施形態では、インクジェット記録装置のヘッドユニットが、ブラック用の印字インクを2個備えている場合について説明した。しかしながら、このような構成に制限するものではない。そこで、変形例では、ヘッドユニットの変形例について説明する。
【0121】
図16は、変形例にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニット1600の例である。CMY印字用の印字ヘッド12、13は、上述した実施形態と同様とする。そして、本変形例のヘッドユニット1600は、ブラック用の印字インク1601を備えている。
【0122】
このように、副走査方向Bに長い印字ヘッド1601を用いることで、モノクロ印字の際、広い領域を印字できるので、高速印刷を実現できる。そして、多色印字では、印字ヘッド1601の一部1602のみ用いて、CMY印字用の印字ヘッド12,13で印字が終了した領域に対して印字することとした。これにより、上述した実施形態と同様の効果を得られる。
【0123】
(変形例2)
上述した実施形態及び変形例では、CMYで印字した後、ブラックで印字する例について説明した。しかしながら、後から印字する色を1色に制限するものではない。そこで、変形例2では、後から印字する色が2色の場合について説明する。なお、本変形例では後から印字する色を2色としたが、3色以上であっても良い。
【0124】
図17は、変形例にかかるインクジェット記録装置が備えたヘッドユニット1700の例である。印字ヘッド11、12、13、14は、上述した実施形態と同様とする。そして、本変形例のヘッドユニット1700では、さらにグレー用の印字インク1701を備えている。
【0125】
このようにグレーとブラックは明度のみが異なるため、主走査方向に直列に印字ヘッドを配置しても、往路と復路とで色調がずれることはない。このように、後から印字する色を1色に制限するものでなく2色以上であっても、上述した実施形態と同様の効果を得られる。
【0126】
第2及び第3の実施形態のPCで実行されるプリンタドライバは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0127】
また、第2及び第3の実施形態のPCで実行されるプリンタドライバを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のPCで実行されるプリンタドライバをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0128】
1 インクジェット記録装置
10、1600、1700 ヘッドユニット
11、12、13、14 印字ヘッド
15 記録用紙
1001 第1のコントローラ
1002 第2のコントローラ
1003 ヘッドIC
1011 CPU
1012 メインメモリ
1013 DSP
1014 内部メモリ
1015 第1の色変換処理部
1016 BG/UCR処理部
1017 総量規制処理部
1018 往路用変換テーブル
1019 往路用変換テーブル
1021 CPU
1022 メインメモリ
1023 DSP
1024 内部メモリ
1025 第2の色変換処理部
1026 ON/OFF切替部
1027 印字方向決定部
1028 総量規制処理部
1029 γ補正部
1030 中間調処理部
1031 復路用変換テーブル
1400、1500 PC
1410、1510 プリンタドライバ
1411、1511 第1の色変換処理部
1412、1512 BG/UCR処理部
1413、1513 総量規制処理部
1414、1514 第2の色変換処理部
1415、1515 γ補正部
1416 ズーミング部
1417 中間調処理部
1418、1516 印字方向決定部
1419、1517 ON/OFF切替部
1450、1550 インクジェット記録装置
1451、1554、 出力処理部
1551 ズーミング部
1552 中間調処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】特公平3−545082公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドと、
入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換手段と、
前記第1の色変換手段により変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換手段と、
前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換手段で変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換手段による変換を行うか否かを切り替える切替手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印字ヘッドで用いられる前記任意の色の色材は、前記複数種類の色材のうち、もっとも明度が低い色材であること、
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記任意の色の色材の前記印字ヘッドが複数存在し、一方は、前記他の色材の前記印字ヘッドと共に主走査方向に直列に配置され、他方は、前記他の色材より後で吐出されるよう、当該他の色材の前記印字ヘッドより副走査方向にずらして配置されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記任意の色の色材の印字ヘッドは、前記他の色材の印字ヘッドと比べて、前記搬送手段で前記記録紙を搬送する副走査方向に長いこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記他の色材より後に吐出されるよう配置された前記印字ヘッドの任意の色が、複数種類であること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
第1の色変換手段は、RGBで構成される画像データをCMYで構成される画像データに変換すると共に、当該CMYで構成される画像データに対して下色除去を行い、CMYKで構成される画像データに変換すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドを備えた画像形成装置に画像データを送信するコンピュータに対して、
入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換ステップと、
前記第1の色変換ステップにより変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換ステップと、
前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換ステップで変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換ステップによる変換を行うか否かを切り替える切替ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドと、
入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換手段と、
前記第1の色変換手段により変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換手段と、
前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換手段で変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換手段による変換を行うか否かを切り替える切替手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印字ヘッドで用いられる前記任意の色の色材は、前記複数種類の色材のうち、もっとも明度が低い色材であること、
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記任意の色の色材の前記印字ヘッドが複数存在し、一方は、前記他の色材の前記印字ヘッドと共に主走査方向に直列に配置され、他方は、前記他の色材より後で吐出されるよう、当該他の色材の前記印字ヘッドより副走査方向にずらして配置されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記任意の色の色材の印字ヘッドは、前記他の色材の印字ヘッドと比べて、前記搬送手段で前記記録紙を搬送する副走査方向に長いこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記他の色材より後に吐出されるよう配置された前記印字ヘッドの任意の色が、複数種類であること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
第1の色変換手段は、RGBで構成される画像データをCMYで構成される画像データに変換すると共に、当該CMYで構成される画像データに対して下色除去を行い、CMYKで構成される画像データに変換すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
搬送手段により搬送される記録紙に対してノズルからインク滴を吐出する印字ヘッドであって、吐出可能な複数種類の色材のうち任意の色の色材が往路及び復路で他の色材より後で吐出されるよう配置され、且つ当該他の色材が主走査方向に直列に配置された印字ヘッドを備えた画像形成装置に画像データを送信するコンピュータに対して、
入力された画像データに対して、前記印字ヘッドで往路又は復路のいずれか一方向の印字に用いる、前記複数種類の色で構成された画像データに変換する第1の色変換ステップと、
前記第1の色変換ステップにより変換された前記複数種類の色で構成された画像データのうち、前記任意の色を除いた前記他の色材の画像データに対して、前記一方向と逆方向の印字に用いる画像データに変換する第2の色変換ステップと、
前記印字ヘッドの印字が往路又は復路であるかに従って、前記第1の色変換ステップで変換した前記他の色材の画像データに対して、前記第2の色変換ステップによる変換を行うか否かを切り替える切替ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−196830(P2012−196830A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61568(P2011−61568)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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