説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】液滴吐出により発生する、ドット形成のための主滴から分離した副滴に起因する画質劣化を抑制することができる、画像形成装置、及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】記録装置10の画像領域抽出部53は、画像データにおけるドットを記録する画素の内、走査方向に連続する複数の画素からなる画素群、及び走査方向に不連続な画素、の各々を画像領域として抽出する。境界特定部54は、抽出した画像領域の各々における、記録ヘッド26の走査方向の最下流に位置する画素を境界画素として特定する。走査速度決定部55は、境界画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度を、第1の速度より低速の予め定めた第2の速度に決定すると共に、記録ヘッド26の走査方向の各位置における走査速度を決定し、走査速度情報を生成する。印字制御部57は、走査速度情報に基づいて、記録ヘッド26を走査方向に走査移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、インクジェット方式の画像形成装置が知られている。インクジェット方式の画像形成装置としては、複数のノズルを配列した記録ヘッドと記録媒体を相対的に走査移動させながら該記録ヘッドからインク滴を吐出し、画像を形成する装置が知られている。
【0003】
具体的には、ノズルから吐出されたインク滴は、記録媒体に付着することによってドットを形成する。これによって、記録媒体に画像が形成される。
【0004】
ここで、走査移動する記録ヘッドのノズルから吐出されたインク滴は、主滴と、該主滴よりインク量の少ない副滴と、に分断されて記録媒体に付着する。これは、走査移動する記録ヘッドのノズルから吐出されたインク滴は、記録ヘッドの走査方向の上流側から下流側に向かって尾をひいた形状で記録媒体に向かって吐出されるためである。ノズルから吐出されたインク滴における、記録媒体に向かう先端の部分に表面張力によってインクが凝集することでドットとなる主滴が形成されはじめ、該主滴に合体しなかったインクが副滴となり、主滴と副滴に分離された状態で記録媒体に向かって飛翔する。このため、記録媒体には、主滴による主ドットが記録されると共に、該主ドットより走査方向の下流側に副滴による副ドットが付着した状態となる。
【0005】
記録ヘッドの走査方向に複数のドットを連続して記録する場合には、該走査方向の上流側の主ドット(主滴)に対応する副ドット(副滴)は、該主ドット(主滴)の走査方向下流側に隣接して形成される別の主ドット(主滴)によって覆われる。しかし、走査方向に連続する複数の主ドットにおける、該走査方向の最下流の主ドット(主滴)に対応する副ドット(副滴)や、走査方向に不連続の各主ドット(主滴)に対応する副ドット(副滴)は、他の主ドット(主滴)によって覆われないため、画質劣化の要因となる場合があった。
【0006】
画質劣化を抑制する技術として、特許文献1には、形成された主滴に対応するサテライト(副滴)が、別の主滴によって被覆されない画素を、境界部として抽出している。そして、特許文献1では、該境界部の画素に対応するドットの形成時には、該ドットに連続する先に形成された主滴の形成時の走査方向とは逆の方向に記録ヘッドを走査する。これによって、特許文献1では、サテライト(副滴)を、先に形成された他の主滴上に重ねて記録している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、走査方向に連続する複数のドットにおける、該走査方向の最下流のドットの記録時には、該ドットより走査方向上流側に連続するドットの記録時とは逆方向に記録ヘッドを走査する必要がある。このため、記録ヘッドの走査方向に連続するドット群毎に、記録ヘッドを往復走査させる必要があった。また、特許文献1に開示された技術では、走査方向に連続する複数のドットにおける、走査方向の最下流で吐出される主滴から分離した副滴によって記録される副ドットを、他の主滴によって記録される主ドットに重ねて形成するため、画質劣化が生じる場合があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液滴吐出により発生する、ドット形成のための主滴から分離した副滴に起因する画質劣化を抑制することができる、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、インク滴をノズルの各々から吐出することによって、各画素に対応するドットを記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に第1の速度で走査方向に走査移動させる駆動手段と、画像データにおける前記ドットを記録する画素の内、前記走査方向に連続する画素群、及び前記走査方向に不連続の画素、の各々を、画像領域として抽出する抽出手段と、前記画像領域の各々における前記走査方向の最下流に位置する画素を境界画素として特定する特定手段と、前記境界画素に対応するドットの記録時の前記記録ヘッドの走査速度を前記第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、前記記録ヘッドの前記走査方向の各位置における走査速度を決定する決定手段と、決定した前記走査速度に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えた画像形成装置である。
【0010】
本発明の画像形成方法は、インク滴をノズルの各々から吐出することによって、各画素に対応するドットを記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に第1の速度で走査方向に走査移動させる駆動手段と、を備えた画像形成装置で実行される画像形成方法であって、画像データにおける前記ドットを記録する画素の内、前記走査方向に連続する画素群、及び前記走査方向に不連続の画素、の各々を、画像領域として抽出するステップと、前記画像領域の各々における前記走査方向の最下流に位置する画素を境界画素として特定するステップと、前記境界画素に対応するドットの記録時の前記記録ヘッドの走査速度を前記第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、前記記録ヘッドの前記走査方向の各位置における走査速度を決定するステップと、決定した前記走査速度に応じて前記駆動手段を制御するステップと、を備えた画像形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液滴吐出により発生する副滴に起因する画質劣化を抑制することができる、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施の形態の記録装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態の記録装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、主滴によって記録される主ドットと副滴によって記録される副ドットの記録媒体への付着状態の一例を示す模式図であり、(A)は、記録ヘッドが走査順方向に走査移動されながらインク滴を吐出したときの主ドットと副ドットの記録状態を示す模式図であり、(B)は、記録ヘッドが走査逆方向に走査移動されながらインク滴を吐出したときの主ドットと副ドットの記録状態を示す模式図である。
【図4】図4は、印刷領域及び画像領域の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、境界部を示す模式図であり、(A)は、記録ヘッドが走査順方向に走査移動されながらインク滴を吐出するときの境界部を示す模式図であり、(B)は、記録ヘッドが走査逆方向に走査移動されながらインク滴を吐出するときの境界部を示す模式図である。
【図6】図6は、主滴と副滴の記録媒体への付着状態の一例を示す模式図であり、(A)は、異なる主滴から分離した副滴によって記録された副ドットが該異なる主滴の主ドットによって覆われない状態を示す模式図であり、(B)は従来技術における、異なる主滴から分離した副滴によって記録された副ドットが該異なる主滴の主ドットによって覆われた状態を示す模式図である。
【図7】図7は、従来技術における、走査方向にドットが不連続に記録された場合の、主ドットと副ドットとの関係を示す模式図である。
【図8】図8は、従来の記録装置の、記録ヘッドの走査方向の走査移動可能範囲A−Bにおける位置座標と、記録ヘッドの走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図9】図9は、第1の実施の形態における記録装置で記録した主ドット及び副ドットを示す模式図である。
【図10】図10は、第1の実施の形態における記録装置を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。
【図11】図11は、第1の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向の走査移動可能範囲A−Bにおける位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図12】図12は、第1の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向の走査移動可能範囲A−Bにおける位置座標と、記録ヘッドの走査逆方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図13】図13は、第1の実施の形態における画像形成処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図14−1】図14−1は、第1の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向における位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図14−2】図14−2は、第1の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向における位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図15】図15は、第2の実施の形態の記録装置を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。
【図16】図16は、第2の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向における位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図17】図17は、第2の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向における位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図18】図18は、第3の実施の形態の記録装置を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。
【図19】図19は、第3の実施の形態の記録装置で記録する主ドットと副ドットの関係を示す模式図であり、(A)は、黒色のドット記録時における主ドットと副ドットの関係を示す模式図であり、(B)は、黄色のドット記録時における主ドットと副ドットの関係を示す模式図である。
【図20】図20は、第3の実施の形態の記録装置で記録する主ドットと副ドットの関係を示す模式図である。
【図21】図21は、第4の実施の形態の記録装置を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。
【図22】図22は、第4の実施の形態における記録装置でドットを走査方向に連続して記録したときの該ドットの記録状態を示す模式図であり、(A)は予め定めた連続数以下のドットを走査方向に連続して記録したときのドットの記録状態を示す模式図であり、(B)は予め定めた連続数を超えるドットを走査方向に連続して記録したときのドットの記録状態を示す模式図である。
【図23】図23は、第5の実施の形態の記録装置を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。
【図24】図24は、第5の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向における位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【図25】図25は、第5の実施の形態の記録装置における、記録ヘッドの走査方向における位置座標と、記録ヘッドの走査順方向への走査速度と、の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法の一の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の画像形成装置としてのインクジェット記録装置10の一例を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置と称する)10は、走査方向(図1中、矢印X方向)に走査移動するキャリッジ24を備えている。キャリッジ24は、キャリッジ駆動部60の駆動力を伝達する伝達機構14の駆動ベルト7の一部に連結されている。また、キャリッジ24は、走査方向(矢印X方向)に延伸したガイドシャフト32に沿って摺動自在に支持されている。このため、キャリッジ24は、キャリッジ駆動部60の駆動によってガイドシャフト32に沿って走査方向(矢印X方向)に走査移動する。
【0016】
また、キャリッジ24は、記録ヘッド26を搭載している。このため、記録ヘッド26は、キャリッジ24の走査移動に伴って、走査方向(矢印X方向)に走査移動する。記録ヘッド26は、インクジェット方式に従ってノズルからインクを吐出して、各画素に対応するドットを記録媒体Pに記録する。記録ヘッド26としては、圧電方式や加熱方式等の電気機械変換素子を用いた公知の記録ヘッドが挙げられる。
【0017】
また、キャリッジ24は、記録ヘッド26と共に、記録ヘッド26に供給するためのインクを貯留したインクカートリッジ28を搭載している。インクカートリッジ28は、キャリッジ24に対して着脱自在に設けられている。
【0018】
本実施の形態の記録装置10は、複数色のインク滴を吐出するカラー記録装置である場合を説明する。このため、本実施の形態では、インクカートリッジ28として、例えば、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジ28を搭載する場合を説明する。なお、記録装置10は、1色のインクを吐出する装置であってもよく、多色画像を形成する構成に限られない。
【0019】
記録装置10には、記録媒体Pを載置する給紙機構12が設けられている。給紙機構12に載置された記録媒体Pは、搬送駆動部62によって、上記走査方向に交差する方向(図1中、矢印Y方向)に搬送される。記録装置10は、搬送ローラ42、ピンチローラ40、ピンチローラ40を支持するピンチローラホルダ34、搬送ローラギア38等を備えている。そして、搬送駆動部62の駆動によって、搬送ローラ42が駆動され、ピンチローラホルダ34によって搬送ローラ42に押圧された記録媒体Pが、矢印Y方向に搬送される。
【0020】
また、記録装置10には、検知部48が設けられており、記録媒体Pの該搬送方向(矢印Y方向)における位置を検知する。検知部48による記録媒体Pの位置検知によって、記録媒体Pの該搬送方向(矢印Y方向)における、記録ヘッド26に対する位置が調整される。また、記録装置10には、キャリッジ24の走査方向(矢印X方向)における絶対位置を示すためのスケール30が備えられている。スケール30の一方はシャーシ16に固着され、他方は板バネ(不図示)で支持されている。
【0021】
搬送駆動部62の駆動によって、記録媒体Pが搬送されて、記録媒体Pの搬送方向(矢印Y方向)の先端部が記録ヘッド26によってインク滴を吐出される領域にまで搬送される。すると、キャリッジ駆動部60の駆動によって走査方向(図1中、矢印X方向)に走査される記録ヘッド26が、記録媒体Pにインク滴を吐出する。これによって、記録媒体Pには、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)に記録ヘッド26が走査されて画素に応じたドットが形成される。そして、搬送方向(矢印Y方向)への記録媒体Pの搬送と、記録ヘッド26の走査方向への走査によるインク滴の吐出と、によって、記録媒体Pには、走査方向(矢印X方向)及び搬送方向(矢印Y方向)に、画素に応じたドットが形成されて画像が形成される。
【0022】
更に、記録装置10は、排出ローラ44を備える。排出ローラ44は、搬送駆動部62によって駆動し、記録ヘッド26によって画像を形成され且つ拍車ホルダ46によって支持された記録媒体Pを、記録装置10の外部へと排出する。
【0023】
また、記録装置10は、記録ヘッド26に対してノズルの詰まり等を除去するための回復装置22を備える。回復装置22は、記録ヘッド26のノズルをキャッピングするキャッピング機構20と記録ヘッド26のノズルの吐出口面をクリーニングするワイピング機構18を備えている。回復装置22は、キャッピング機構20によって、ノズルの吐出口面からインクを強制的に排出させ、吐出回復処理を行う。
【0024】
また、記録装置10は、記録装置10の装置各部を制御するための制御部50を備えている。制御部50は、上述した搬送駆動部62、キャリッジ駆動部60等の各種駆動部等に電気的に接続されており、装置各部を制御する。
【0025】
次に、記録装置10のハードウエア構成について説明する。図2は、記録装置10のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、記録装置10は、制御部50、操作部49、検知部48、インターフェース61、キャリッジモータドライバ58、及び搬送モータドライバ64を含む。これらの操作部49、検知部48、インターフェース61、キャリッジモータドライバ58、及び搬送モータドライバ64は、制御部50に電気的に接続されている。
【0027】
操作部49は、図1では図示を省略したが、各種情報を入力または出力する。操作部49としては、例えば、キーボード、タッチパネル付のディスプレイ等が挙げられる。ユーザによって操作部49が操作指示されることによって、操作部49から各種情報が制御部50に入力される。
【0028】
キャリッジモータドライバ58は、制御部50の制御によってキャリッジ駆動部60を駆動させるモータドライバである。搬送モータドライバ64は、制御部50の制御によって搬送駆動部62を駆動させるモータドライバである。インターフェース61は、パーソナルコンピュータ等の外部装置から、記録装置10で記録対象の画像データを受け付ける。
【0029】
制御部50は、CPU(CentrAl Processing Unit)50A、ROM(ReAd Only Memory)50E、RAM(RAndom Access Memory)50D、ASIC50B(特殊用途集積回路)、及びこれらを接続するシステムバス50Cを含んで構成されている。制御部50は、記録装置10に設けられた装置各部に電気的に接続されている。
【0030】
ROM50Eは、後述する画像形成処理を実行するプログラム等を記憶する。RAM50Dは、各種データを記憶する。ASIC50Bは、記録装置10における装置各部へ出力する各種制御信号を生成する。
【0031】
ここで、キャリッジ駆動部60によるキャリッジ24の走査移動によって記録装置10が走査方向(図1中、矢印X方向)に走査移動し、この走査方向への走査移動中に記録装置10からインク滴が吐出されることによって、記録媒体Pの該走査方向に沿ってインク滴に応じたドットが形成される。
【0032】
しかし、走査方向に走査移動する記録ヘッド26のノズルから吐出されたインク滴は、ここで、走査移動する記録ヘッド10のノズルから吐出されたインク滴は、主滴と、該主滴よりインク量の少ない副滴と、に分断されて記録媒体Pに付着することが知られている。なお、主滴とは、ノズルから吐出されたドット形成のためのインク滴である、副滴とは、ノズルから吐出されたドット形成のためのインク滴である主滴から分離した、該主滴よりインク量の少ない液滴を示す。
【0033】
このような副滴の発生は、下記の原因により生じる。すなわち、走査移動する記録ヘッド26のノズルから吐出されたインク滴は、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の上流側から下流側に向かって尾をひいた形状で記録媒体Pに向かって吐出される。その後、該インク滴における、記録媒体Pに向かう先端の部分に表面張力によってインクが凝集することで主滴が形成されはじめ、該主滴に合体しなかったインクが副滴となり、主滴と副滴とに分離された状態で記録媒体Pに向かって飛翔する。このため、記録媒体Pには、同じノズルから吐出されたインク滴から、主滴による主ドットが記録されると共に、該主ドットより走査方向の下流側に、該主滴から分類した副滴による副ドットが記録される。
【0034】
図3には、主滴によって記録される主ドットと副滴によって記録される副ドットの記録媒体Pへの付着状態の一例を示す模式図を示した。図3(A)に示すように、記録ヘッド26が走査方向における走査順方向(矢印XA方向)に走査移動されながらインク滴を吐出すると、各ノズルから吐出されたインク滴は、主滴と副滴に分断される。そして、記録媒体Pには、主滴により記録される主ドットMと、該主ドットMの走査順方向(矢印XA方向)の下流側に該主滴から分離した副滴により記録される副ドットSが記録された状態となる。図3(B)に示すように、記録ヘッド26が走査方向における走査逆方向(矢印XB方向)に走査移動されながらインク滴を吐出した場合についても同様に、各ノズルから吐出された液滴は、主滴と副滴に分断される。そして、記録媒体Pには、主滴により記録される主ドットMと、該主ドットMの走査逆方向(矢印XB方向)の下流側に該主滴から分離した副滴により記録される副ドットSが記録された状態となる。
【0035】
このため、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)に複数のドットを連続して記録する場合には、該走査方向(矢印X方向)の上流側の主ドットに対応する副ドットは、該主ドットの走査方向下流側に隣接して形成される別の主ドットによって覆われる。しかし、走査方向(矢印X方向)に連続する複数のドットにおける、該走査方向の最下流の主ドットに対応する副ドットや、走査方向に不連続の各主ドットに対応する副ドットは、主ドットによって覆われないため、画質劣化の要因となる場合があった。
【0036】
すなわち、図4に示すように、記録媒体Pの走査方向(矢印X方向)における画像の形成可能な領域である印刷範囲PAにおける走査方向の範囲である印刷領域70中に、複数の画像領域72(画像領域72A、画像領域72B)が存在したとする。なお、図4中、範囲A−Bは、キャリッジ24(すなわち記録ヘッド26)の走査方向(矢印X方向)における走査移動可能な範囲を示している。
【0037】
この場合、図5(A)に示すように、記録ヘッド26が走査順方向(矢印XA方向)に走査移動する場合には、各画像領域72A及び画像領域72Bにおける、該走査順方向の最下流側の画素の主ドットに対応する副ドットが、他の画素の主ドットによって覆われない状態となる。すなわち、該走査順方向の最下流側の画素に対応する主ドットの記録位置が、他の画素の主ドットによって副ドットの覆われない領域73となる。同様に、図5(B)に示すように、記録ヘッド26が走査逆方向(矢印XB方向)に走査移動する場合には、各画像領域72A及び画像領域72Bにおける、該走査逆方向の最下流側の画素の主ドットに対応する副ドットが、他の画素の主ドットによって覆われない状態となる。すなわち、該走査逆方向の最下流側の画素に対応する主ドットの記録位置が、他の画素の主ドットによって副ドットの覆われない領域73となる。
【0038】
そこで、従来では、図6(A)に示すように、他の主ドットによって副ドットの覆われない領域を境界部とし、該境界部に記録される主ドットMに対応する副ドットSを覆うために、図6(B)に示す処理を行っていた。すなわち、図6(B)に示すように、従来では、該境界部の画素に対応する主ドットM2の形成時には、該主ドットM2に連続する先に形成された他の主ドットM1の形成時の走査方向とは逆の方向に記録ヘッド26を走査していた。これによって、従来では、境界部で発生する副ドットS2を、先に形成された他の主ドットM1に重ねて記録していた。
【0039】
しかしながら、従来技術では、走査方向に連続するドット群毎に記録ヘッド26を往復走査させる必要があった。
【0040】
また、従来技術では、記録ヘッド26の走査方向に不連続のドットについては、何も処理を行わないため、図7に示すように、記録された各主ドットMの走査方向下流側に、各主ドットMに対応する副ドットSが記録されていた。
【0041】
さらに、従来技術においては、走査方向に連続するドット群毎に記録ヘッド26を往復走査させない場合には、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)における走査移動可能範囲A−Bにおいて、記録ヘッド26の走査速度(移動速度と称する場合もある)は、記録装置で実現可能な最大の走査速度としていた。図8には、従来の記録装置の、キャリッジ24すなわち記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の走査移動可能範囲A−Bにおける位置座標(位置Aを原点とする)と、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度と、の関係を示した。なお、キャリッジ24の速度は、図8中では、キャリッジ走査速度Vcとして記載している。詳細には、従来の記録装置においては、記録ヘッド26を位置Aから印刷領域70における走査順方向(矢印XA方向)の最上流の画素に対応するドットの記録位置に向かって、最大速度である第1の速度V2に向かって加速する。そして、そこから、該第1の速度V2を維持したまま、印刷領域70の各画素に対応するドットを記録していた(図8中、線図76参照)。このため、各画像領域72A及び画像領域72Bにおける、記録ヘッド26の走査方向の下流側には、主ドットに覆われない副ドットが発生していた。
【0042】
そこで、本実施の形態の記録装置10では、画像データにおけるドットを記録する画素の内、走査方向に連続する複数の画素からなる画素群、及び走査方向に不連続な画素、の各々を画像領域として抽出する。そして、記録装置10では、抽出した画像領域の各々における、記録ヘッド26の走査方向の最下流に位置する画素を境界画素として特定する。そして、境界画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度を、第1の速度より低速の予め定めた第2の速度に決定すると共に、記録ヘッド26の走査方向の各位置における走査速度を決定し、走査速度情報を生成する。そして、記録装置10は、走査速度情報に基づいて、記録ヘッド26を走査方向に走査移動させる。
【0043】
なお、走査方向とは、上述のように、キャリッジ24、すなわち記録ヘッド26の走査移動する方向(矢印X方向)を示す。
【0044】
また、上記第1の速度とは、記録ヘッド26からインクを吐出するときの速度として記録装置10で予め定められた速度である。第1の速度としては、例えば、記録装置10で実現可能な最大の速度が設定される。第2の速度とは、第1の速度より低速であり、且つ、吐出されたインク滴の内の主滴によって記録される主ドットと、該主滴から分離した副滴によって記録される副ドットと、が記録媒体Pで重ねて記録される速度以下であり且つ速度0を超える速度である。なお、この第1の速度及び第2の速度は、記録装置10の装置構成によって適宜調整すればよい。
【0045】
本実施の形態の記録装置10は、境界画素に対応するドットの記録時には、上記第2の速度で記録ヘッド26を走査移動する。このため、図9に示すように、本実施の形態の記録装置10では、境界画素に対応するドットの記録時には、主滴によって記録される主ドットと該主滴から分離した副滴によって記録される副ドットと、を重ねて記録することができる。従って、記録装置10は、インク滴吐出により発生する副滴に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0046】
以下、本実施の形態の記録装置10について、詳細に説明する。
【0047】
図10には、記録装置10を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図を示した。
【0048】
図10に示すように、制御部50は、画像データ受付部51、画像データ読取部52、画像領域抽出部53、境界特定部54、走査速度決定部55、インターフェース61、及び印字制御部57を備えている。
【0049】
画像データ受付部51は、外部装置からインターフェース61を介して画像データを受け付ける。そして、画像データ受付部51は、受け付けた画像データがRGBデータの場合には、YMCKの画像データに変換する。なお、この画像データは、各画素の画素位置や、各画素の濃度値(例えば、0〜255)を画素毎に示した画素データを含んで構成される。そして、画像データ受付部51は、該画像データを、記録装置10で記録可能な階調数の画像データに変換する、所謂、ハーフトーン処理等を実行する。なお、以下では、このハーフトーン処理された後の画像データを、単に、画像データと称して説明する。
【0050】
次に、画像データ読取部52は、画像データ受付部51で処理されたYMCKの画像データを読取り、画像領域抽出部53及び印字制御部57へ出力する。
【0051】
画像領域抽出部53は、画像データ読取部52から受け付けたYMCKの画像データにおけるドットを記録する画素の内、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)に連続する画素群、及び走査方向に不連続な画素、の各々を、画像領域として抽出する。詳細には、画像領域抽出部53は、画像データ読取部52から受け付けたYMCKの各々の画像データから、上記画像領域を抽出する。
【0052】
境界特定部54は、画像領域抽出部53で抽出されたYMCKの画像領域の各々における、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の最下流に位置する画素を境界画素として特定する。なお、画像領域が、1つの画素(走査方向に不連続の画素)から構成される場合には、境界特定部54は、該不連続の画素の各々を、境界画素として特定する。なお、以下では、説明を簡略化するために、YMCKの各々の画像データから抽出された画像領域を総称して単に画像領域として説明する。
【0053】
なお、画像領域における、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の最下流に位置する画素とは、画像領域における、インク滴の吐出時に記録ヘッド26が走査移動される方向の最下流に位置する画素を示す。
【0054】
例えば、記録装置10を、図1に示すように、走査方向(矢印X方向)における走査順方向(矢印XA方向)に記録ヘッド26を走査移動させるときにのみ、記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出する構成とする。この場合には、図5(A)に示すように、境界特定部54は、各画像領域72(画像領域72A、画像領域72B)における、走査順方向(矢印XA方向)の最下流に位置する画素を、境界画素として特定する。すなわち、図5(A)に示すように、各画像領域72(画像領域72A、画像領域72B)における、走査順方向(矢印XA方向)の最下流の領域73のドットを記録する画素を、境界画素として特定する。
【0055】
一方、記録装置10を、図1に示すように、走査方向(矢印X方向)における走査逆方向(矢印XB方向)に記録ヘッド26を走査移動させるときにのみ、記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出する構成としてもよい。この場合には、図5(B)に示すように、境界特定部54は、各画像領域72(画像領域72A、画像領域72B)における、走査逆方向(矢印XB方向)の最下流に位置する画素を、境界画素として抽出する。すなわち、図5(B)に示すように、各画像領域72(画像領域72A、画像領域72B)における、走査逆方向(矢印XB方向)の最下流の領域73のドットを記録する画素を、境界画素として特定する。
【0056】
なお、記録装置10が、記録媒体Pにおける、記録媒体Pの搬送方向(矢印Y方向)における位置に応じて、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)を、走査順方向(矢印XA方向)と走査逆方向(矢印XB方向)とに交互に往復走査する構成としてもよい。この場合には、境界特定部54は、まず、各画像領域72について、走査方向(矢印X方向)の画素列毎に、記録媒体Pに形成したときの記録媒体Pの搬送方向(矢印Y方向)における位置を特定する。この走査方向に沿った画素列毎の、記録媒体Pの該搬送方向(矢印Y方向)における位置は、各画像領域72の各画素の画素データによって示される位置座標から求める。そして、境界特定部54は、記録媒体Pの該搬送方向における位置に対応する、記録ヘッド26の走査方向として、走査順方向または走査逆方向を示す情報を予め記憶しておく。なお、この走査順方向及び走査逆方向を示す情報は、記録媒体Pにおける搬送方向の位置に応じて、記録ヘッド26を走査順方向(矢印XA方向)と走査逆方向(矢印XB方向)とに交互に走査するように、記録媒体Pの搬送方向における位置に応じて予め定めればよい。そして、境界特定部54は、画像領域抽出部53で抽出された画像領域の各々における、記録媒体Pの搬送方向(矢印Y方向)における位置に応じた走査順方向または走査逆方向を示す情報を読取り、読みとった走査方向(走査順方向または走査逆方向)の最下流に位置する画素を、境界画素として特定する。
【0057】
記録ヘッド26が、記録媒体Pに画像を形成するときと同じ記録媒体P内において走査順方向(矢印XA方向)に走査移動させるときに記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出するか、記録媒体P内において走査逆方向(矢印XB方向)に走査移動させるときに記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出するか、または記録媒体Pにおいて走査順方向と走査逆方向とに交互に走査移動させるときに記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出するか、を示す情報は、予め記憶部56等のメモリに記憶すればよい。そして、境界特定部54は、この情報を記憶部56等のメモリから読み取ることによって、インク滴吐出時の記録ヘッド26の走査移動方向を読取り、上記境界画素を特定すればよい。
【0058】
なお、該情報は、予め記憶部56に記憶してもよいし、ユーザによる操作部49の走査指示によって入力され記憶部56に記憶してもよい。
【0059】
なお、以下では、説明を簡略化するために、記録装置10では、図1に示すように、1枚の記録媒体Pにおいて、走査順方向(矢印XA方向)に記録ヘッド26を走査移動させるときに記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出する構成とした場合と、記録媒体Pにおいて、走査逆方向(矢印XB方向)に記録ヘッド26を走査移動させるときに記録ヘッド26のノズルからインク滴を吐出する構成とした場合について説明するが、この形態に限られない。
【0060】
そして、境界特定部54は、画像領域抽出部53から受け付けた画像データと、特定した境界画素を示す情報と、を走査速度決定部55へ出力する。
【0061】
走査速度決定部55は、画像データに含まれる各画像領域の各画素に対応するドットの形成時の、記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査方向の各位置における走査速度を決定する。具体的には、走査速度決定部55は、境界画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度を第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、走査方向(矢印X方向)における記録ヘッド26の走査移動可能範囲A−Bにおける各位置に対応する、記録ヘッド26の走査速度を決定し、走査速度情報を生成する。すなわち、走査速度決定部55は、画像データに含まれる各画像領域の各画素に対応するドットの形成時の記録ヘッド26の走査速度を決定する。
【0062】
記憶部56は、上記第1の速度及び上記第2の速度を示す情報を予め記憶している。第1の速度を示す情報としては、上述のように、記録装置10における記録ヘッド26からインク滴を吐出してドットを形成可能な最大の速度を示す情報が定められる。この第1の速度は、記録装置10の装置構成に応じて、予め設定され、記憶部56に記憶すればよい。第2の速度は、上述のように、第1の速度より低速であり、且つ、吐出されたインク滴の内の主滴によって記録される主ドットと、該主滴から分離した副滴によって記録される副ドットと、が記録媒体Pで重ねて記録される速度以下であり且つ速度0を超える速度である。この第1の速度及び第2の速度は、記録装置10の装置構成によって予め測定し、予め記憶部56に記憶すればよい。また、これらの記憶部56に記憶された第1の速度及び第2の速度は、ユーザによる操作部49の操作指示によって変更されてもよい。
【0063】
走査速度決定部55は、記憶部56に記憶されている第1の速度及び第2の速度と、境界特定部54から受け付けた画像データと、特定した境界画素を示す情報と、に基づいて、走査速度情報を生成する。
【0064】
具体的には、走査速度決定部55は、境界画素に対応するドットの記録時には第1の速度で記録ヘッド26を走査移動し、該境界画素の走査方向の上流側では、第1の速度から第2の速度に向かって走査速度を減速するように、各画像領域の各画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度を決定する。なお、走査速度決定部55は、この減速率として、予め定められた値を用いるものとする。例えば、この減速率は、記録ヘッド26で実現可能な減速率を予め測定して定めればよい。
【0065】
例えば、図4に示すように、記録媒体Pの走査方向(矢印X方向)における画像の形成可能な領域である印刷領域70中に、複数の画像領域72(画像領域72A、画像領域72B)が存在したとする。そして、図5(A)に示すように、記録ヘッド26が走査順方向(矢印XA方向)に走査移動し、各画像領域72A及び画像領域72Bにおける、該走査順方向の最下流側の領域73の画素を、境界画素として設定したとする。
【0066】
この場合に、走査速度決定部55が決定する走査速度情報の一例を図11に示した。図11は、記録ヘッド26を走査順方向(矢印XA方向)に走査移動させながらインク滴を吐出する場合の、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の走査移動可能範囲A−Bにおける位置座標(位置Aを原点とする)と、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度と、の関係を示した模式図である。
【0067】
図11に示すように、例えば、走査速度決定部55は、以下の走査速度の変動を示す走査速度情報を作成する。例えば、記録ヘッド26の走査方向の走査移動可能範囲A−Bにおける走査順方向の最上流位置である位置Aから、印刷領域70の走査順方向の最上流位置に向かって速度0から第1の速度V2に加速する。このときの加速率は、予め定めた加速率とする。そして、この第1の速度V2を維持して記録ヘッド26を走査順方向の下流側に向かって走査移動させ、画像領域72Aの走査順方向の最下流の境界画素に対応するドット記録時(位置73A参照)の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度V1となるように、予め定めた減速率で走査速度を減速する。そして、再度、記録ヘッド26の走査速度を第1の速度V2に向かって上記加速率で加速する。そして、画像領域72Bの走査順方向の最下流の境界画素に対応するドットの記録時(位置73B参照)の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度V1となるように予め定めた減速率で走査速度を減速する。そして、さらに、再度、記録ヘッド26の走査速度を第1の速度V2に向かって上記加速率で加速した後に、位置Bに向かって上記減速率で減速する。すなわち、走査速度決定部55は、例えば、図11の線図74によって示される走査速度情報を作成する。
【0068】
一方、図5(B)に示すように、記録ヘッド26が走査逆方向(矢印XB方向)に走査移動し、各画像領域72A及び画像領域72Bにおける、該走査逆方向の最下流側の領域73の画素を、境界画素として設定したとする。
【0069】
この場合に、走査速度決定部55が決定する走査速度情報の一例を図12に示した。図12は、記録ヘッド26を走査逆方向(矢印XB方向)に走査移動させながらインク滴を吐出する場合の、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の走査移動可能範囲A−Bにおける位置座標(位置Aを原点とする)と、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度と、の関係を示した模式図である。
【0070】
図12に示すように、例えば、走査速度決定部55は、以下の走査速度の変動を示す走査速度情報を作成する。例えば、記録ヘッド26の走査方向の走査移動可能範囲A−Bにおける走査逆方向の最上流位置である位置Bから、印刷領域70の走査逆方向の最上流位置に向かって速度0から第1の速度V2に加速する。このときの加速率は、予め定めた加速率とする。そして、この第1の速度V2を維持して記録ヘッド26を走査逆方向の下流側に向かって走査移動させ、画像領域72Bの走査逆方向の最下流の境界画素に対応するドット記録時(位置73B参照)の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度V1となるように、予め定めた減速率で走査速度を減速する。そして、再度、記録ヘッド26の走査速度を第1の速度V2に向かって上記加速率で加速する。そして、画像領域72Aの走査順方向の最下流の境界画素に対応するドットの記録時(位置73A参照)の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度V1となるように予め定めた減速率で走査速度を減速する。そして、さらに、再度、記録ヘッド26の走査速度を第1の速度V2に向かって上記加速率で加速した後に、位置Aに向かって上記減速率で減速する。すなわち、走査速度決定部55は、例えば、図12の線図75によって示される走査速度情報を作成する。
【0071】
図10に戻り、説明を続ける。走査速度決定部55は、記録ヘッド26の、走査方向(矢印X方向)の走査移動可能範囲A−Bにおける、各位置に対応する記録ヘッド26の走査速度を決定することによって走査速度情報を生成する。そして、走査速度決定部55は、決定した走査速度を示す走査速度情報を、印字制御部57へ出力する。
【0072】
印字制御部57は、画像データ受付部51で処理された画像データを受け付けると共に、走査速度決定部55から走査速度情報を受け付ける。そして、印字制御部57は、受け付けた画像データに基づいて記録ヘッド26を制御すると共に、走査速度情報に基づいてキャリッジ駆動部60及び搬送駆動部62を制御する。
【0073】
詳細には、印字制御部57は、走査速度制御部57A、搬送位置制御部57B、及び記録ヘッド駆動制御部57Cを備える。記録ヘッド駆動制御部57Cは、画像データ読取部52から受け付けた画像データを、記録ヘッド26で解読可能なデータ構造に変換し、記録順序(転送順序)にデータを並び替える。そして、記録ヘッド駆動制御部57Cは、この並び替えによって生成した記録データを、記録ヘッド26へ出力する。このとき、記録ヘッド駆動制御部57Cは、記録ヘッド26や記録ヘッド26のノズルの配列にマッピングさせた吐出タイミングやデータ配列も考慮してデータを並び替えて、記録データとして記録ヘッド26へ出力する。
【0074】
走査速度制御部57Aは、走査速度決定部55から受け付けた走査速度情報に応じて、キャリッジモータドライバ58を介してキャリッジ駆動部60を制御する。具体的には、走査速度制御部57Aは、記録ヘッド駆動制御部57Cから記録ヘッド26に送信される各画素データに応じた信号に同期させて、走査速度情報に示される速度で各画素のドットが記録されるように、キャリッジ駆動部60を制御する。搬送位置制御部57Bは、記録ヘッド駆動制御部57Cから記録ヘッド26に送信される各画素データに応じた信号に同期させて、搬送モータドライバ64を介して、搬送駆動部62を制御する。
【0075】
次に、本実施の形態に係る記録装置10における、画像形成処理の詳細を説明する。
【0076】
図13は、本実施の形態における画像形成処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【0077】
まず、画像データ読取部52が、画像データ受付部51で受け付けた画像データを読み取る(ステップS100)。次に、画像領域抽出部53が、画像データにおける、画像領域を抽出する(ステップS102)。次に、境界特定部54が、抽出された画像領域における境界画素を特定する(ステップS104)。次に、走査速度決定部55が、走査速度を決定し、走査速度情報を生成する(ステップS106)。そして、印字制御部57が、キャリッジ駆動部60、搬送駆動部62、及び記録ヘッド26を制御し、記録媒体Pに画像を形成する印字処理を行う(ステップS108)。
【0078】
記録装置10が上記画像形成処理を実行することによって、本実施の形態の記録装置10では、画像データにおけるドットを記録する画素の内、記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査方向(矢印X方向)に連続する複数のドットにおける該走査方向の最下流のドットに対応する画素、及び走査方向に不連続のドットに対応する画素の各々を、境界画素として特定される。そして、記録装置10では、境界画素に対応するドットの記録時に、第1の速度より低速の予め定めた第2の速度で記録ヘッド26を走査移動する。そして、この第2の速度は、第1の速度より低速であり、且つ、副滴が、該副滴に対応する主滴(ドット)上に重ねて記録される速度以下の速度である。
【0079】
このため、境界画素に対応するドットの記録時には、記録ヘッド26のノズルから吐出されたインク滴の主滴から分離した副滴による副ドットが、該インク滴における主滴の主ドットに重ねて記録される速度で、記録ヘッド26が走査方向(矢印X方向)に走査移動する。具体的には、図9で説明したように、本実施の形態の記録装置10では、境界画素に対応するドットである主ドットMに対応する副ドットSを、該副ドットSに対応する主ドットMに重ねて記録することができる。
【0080】
従って、本実施の形態の記録装置10は、インク滴吐出により発生する副滴に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0081】
また、画像領域抽出部53は、画像データにおける、走査方向(矢印X方向)に連続する画素群と、主走査方向(矢印X方向)に不連続な画素と、の各々を画像領域として抽出する。そして、走査速度決定部55は、境界画素に対応するドットの記録時には第2の速度で記録ヘッド26(キャリッジ24)を走査移動し、該境界画素の走査方向の上流側では、第1の速度から第2の速度に向かって走査速度を減速するように、記録ヘッド26の走査速度を決定する。
【0082】
このため、例えば、記録ヘッド26(キャリッジ24)が走査順方向(矢印XA方向)に走査されてインク滴が吐出され、且つ走査方向(矢印X方向)に不連続に1ドット(1画素)間隔を空けて不連続に複数の画素に対応するドットが記録されるとする。この場合、図14−1に示すように、該不連続な複数の画素の各々に対応するドットの記録時の走査速度が第2の速度V1となり、且つドット間では第1の速度V2に向かって加速した後に第2の速度V1に向かって減速するように、記録ヘッド26の走査速度が決定される。このため、走査方向(矢印X方向)に不連続に1ドット(1画素)間隔を空けて不連続に複数の画素に対応するドットを記録する場合には、走査速度決定部55によって設定された走査速度で、キャリッジ駆動部60が走査され、キャリッジ24に保持された記録ヘッド26が走査移動することにより、図14−1に示すような波線図76によって示される走査速度で、記録ヘッド26が走査移動する。このため、走査方向に不連続な各画素に対応する主ドットMから分離した副ドットSは、該副ドットSに対応する(該副ドットSの分離元である)主滴の主ドットMに重ねて記録される。
【0083】
従って、本実施の形態の記録装置10では、インク滴吐出により発生する副滴に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0084】
また、記録媒体Pにおける走査方向の一端から他端に渡る領域を印刷領域70とする、所謂、縁なし印刷を行う場合についても、インク滴吐出により発生する副滴に起因する画質劣化を抑制することができる。この場合には、画像データとして、例えば、走査方向の端部にドットを記録する画素を含む画像データを用いればよい。
【0085】
なお、本実施の形態では、形成されるドットの大きさによらず、境界画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査速度を第2の速度とする場合を説明した。しかし、境界画素に対応するドットの大きさに応じて、キャリッジ24(記録ヘッド26)の速度を調整してもよい。
【0086】
この場合には、例えば、記憶部56は、境界画素に対応するドットの大きさ、すなわち、吐出されるインク滴の量を示す情報と、記録ヘッド26の走査速度を示す情報と、を対応づけて記憶する。なお、この記録ヘッド26の走査速度を示す情報としては、上述した第2の速度、すなわち、第1の速度より低速で且つ主ドットに対応する副ドットが該主ドットに重ねて記録される速度の範囲内であればよい。そして、走査速度決定部55は、インク滴の量が多くなるほど、該第2の速度に向かって高速の走査速度を決定すればよい。
【0087】
具体的には、記録装置10で記録可能な階調数によって示されるハーフトーン処理された画像データに含まれる各画素データが、大滴、中滴、小滴、の3種類を示すとする。この場合には、小滴から、よりインク量の多い大滴に向かって、第2の速度に向かって高速となるように各液滴(ドット)の大きさに対応する走査速度を示す情報を、インク滴の量を示す情報(大滴、中滴、小滴)に対応づけて記憶すればよい。そして、走査速度決定部55では、境界画素に対応する画素データによって示されるインク滴の量を示す情報に対応する走査速度を示す情報を記憶部56から読み取ることによって、上記走査速度情報を作成すればよい。
【0088】
このようにすることで、境界画素に対応する主ドットの大きさによって、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度を調整することができ、効率的な印字処理が可能となる。
【0089】
なお、本実施の形態では、第2の速度は、第1の速度より低速で且つ速度0より高速であるものとして説明した。しかし、この第2の速度は、速度0を示す情報であってもよい。
【0090】
このようにすることで、記録装置10では、境界画素に対応するドットの記録時に、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査移動を停止する。このため、副ドットが主ドットから外れた位置に記録されることが更に抑制され、副滴による画質劣化を更に抑制することができる。
【0091】
なお、本実施の形態では、上記図14−1に示すように、走査方向(矢印X方向)に不連続な複数の画素の各々に対応するドットの記録時の走査速度が第2の速度V1となり、且つドット間では第1の速度V2に向かって加速した後に第2の速度V1に向かって減速するように、記録ヘッド26の走査速度を決定する場合を説明した。
【0092】
しかし、本実施の形態の記録装置10では、図14−2に示すように、走査方向(矢印X方向)に不連続な複数の画素の各々に対応するドットの記録時に走査速度が第2の速度V1となればよく、これらの不連続な画素間に対応するドット間においても、第2の速度V1を維持したままとしてもよい(図14−2中。線図81参照)。また、例えば、走査方向(矢印X方向)に不連続な複数の画素の各々に対応するドット間の距離が予め定めた間隔以下である場合に、走査方向(矢印X方向)に不連続な複数の画素の各々に対応するドットの記録時に走査速度が第2の速度V1となり、且つこれらの不連続な画素間に対応するドット間においても、第2の速度V1を維持したままとしてもよい。そして、この予め定めた間隔を示す情報は、記憶部56に予め記憶してもよいし、ユーザによる操作部49の操作指示によって入力されて記憶部56に記憶してもよい。
【0093】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査方向に不連続の画素の各々に対応するドットの記録時には、記録ヘッド26を第2の速度に減速し、各ドット間では第2の速度から第1の速度に向かって加速及び第1の速度から第2の速度に向かって減速を行う場合を説明した。
【0094】
本実施の形態では、境界画素に対応するドットの記録時に第1の速度で記録ヘッド26を走査移動させた後に、予め定めた所定間隔を隔てた後の境界画素について、第2の速度で記録ヘッド26を走査移動させる。
【0095】
図15は、本実施の形態の記録装置10Aを、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。図15に示すように、本実施の形態の記録装置10Aは、操作部49、インターフェース61、検知部48、制御部51A、キャリッジモータドライバ58、キャリッジ駆動部60、搬送モータドライバ64、搬送駆動部62、及び記録ヘッド26を備える。制御部51Aは、画像データ受付部51、画像データ読取部52、画像領域抽出部53、境界特定部54A、走査速度決定部55A、記憶部56、及び印字制御部57を備える。なお、本実施の形態の記録装置10Aは、境界特定部54及び走査速度決定部55を備えた制御部50に代えて、境界特定部54A及び走査速度決定部55Aを備えた制御部51Aを有する以外は、第1の実施の形態の記録装置10と同じ構成である。このため、異なる部分のみ詳細に説明する。
【0096】
なお、本実施の形態では、記憶部56は、第1の速度及び第2の速度に加えて、速度調整間隔を示す情報をさらに記憶する。この速度調整間隔を示す情報とは、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度を第2の速度にしてから次に第2の速度にするまでの最低間隔を示す。この速度調整間隔を示す情報としては、たとえば、5ドットや、7ドット等があげられる。
【0097】
この速度調整間隔を示す情報は、予め記憶部56に記憶してもよいし、ユーザによる操作部49に操作指示によって入力されて記憶部56に記憶してもよい。
【0098】
境界特定部54Aは、画像領域抽出部53で抽出されたYMCKの画像領域の各々における、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の最下流に位置する画素を境界画素として特定する。なお、画像領域が、1つの画素(走査方向に不連続の画素)から構成される場合には、境界特定部54Aは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて走査方向に配列されているか否かを判別する。そして、境界特定部54Aは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて配列されていない場合には、第1の実施の形態における境界特定部54と同様の処理を行う。
【0099】
一方、境界特定部54Aは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて配列されている場合には、該走査方向に不連続な複数の画素の内、上記速度調整間隔を示す情報によって示される間隔を隔てた位置の画素の各々を、境界画素として特定する。
【0100】
そして、走査速度決定部55Aは、記憶部56に記憶されている第1の速度及び第2の速度と、境界特定部54Aから受け付けた画像データと、境界画素を示す情報と、に基づいて、第1の実施の形態の走査速度決定部55と同様に、走査速度情報を生成する。すなわち、走査速度決定部55Aは、境界画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度を第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、走査方向(矢印X方向)における記録ヘッド26の走査移動可能範囲A−Bにおける各位置に対応する、記録ヘッド26の走査速度を決定し、走査速度情報を生成する。
【0101】
ここで、境界特定部54Aから受け付ける境界画素を示す情報は、上記画像領域としての走査方向に不連続な画素が、該走査方向に間隔を隔てて複数配列されている場合には、該走査方向に不連続な複数の画素の内、該走査方向に予め定められた速度調整間隔を隔てて位置する画素を、境界画素として特定したものである。
【0102】
このため、走査速度決定部55Aが生成した走査速度情報は、走査方向に不連続な複数の画素が配列される場合には、これらの不連続の全ての画素ではなく、速度調整間隔に対応する画素毎に、各画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度となるように、生成される。
【0103】
図16には、走査速度決定部55Aが決定する走査速度情報の一例を示した。図16は、記録ヘッド26を走査順方向(矢印XA方向)に走査移動させながらインク滴を吐出する場合の、キャリッジ24すなわち記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)における位置座標と、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度と、の関係の一例を示した。
【0104】
例えば、図16に示すように、記録ヘッド26が走査順方向(矢印XA方向)に走査移動し、走査方向に間隔を隔てて複数の不連続な画素に対応するドットを記録する。そして、速度調整間隔を示す情報として、例えば、5ドットを示す情報が記憶部56に記憶されていたとする。
【0105】
この場合には、例えば、図16に示すように、走査速度決定部55Aは、以下の走査速度の変動を示す走査速度情報を作成する。例えば、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットの記録時に第2の速度V1となるように、記録ヘッド26(キャリッジ24)の速度を決定する。次に、走査順方向の下流側に向かって第2の速度V1から第1の速度V2に向かって予め定めた加速率で加速し、該第1の速度V2を維持する。そして、該最上流に位置する画素に対応するドットから速度調整間隔(例えば、5ドット)隔てた位置のドットの記録時に第2の速度V1となるように、予め定めた減速率で減速する。すなわち、走査速度決定部55Aは、例えば、図16の線図77によって示される走査速度情報を作成する。
【0106】
このため、図16に示すように、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットと、該ドットから速度調整間隔(例えば、5ドット)を隔てて走査方向下流側に記録されるドットと、が、第2の速度V1で走査移動する記録ヘッド26によって記録される。このため、これらのドットでは、主ドットM1に重ねて副ドットS1が記録され、主ドットM4に重ねて副ドットS4が記録される。一方、これらのドット間で記録されるドットは、第2の速度より高速で走査移動する記録ヘッド26によって記録される。このため、これらのドット間で記録されるドットは、主ドットと副ドットとが離れた位置に形成される(図16中、主ドットM2と副ドットS2、主ドットM3と副ドットS3参照)。しかし、本実施の形態の記録装置10Aでは、副滴による画質劣化を抑制しつつ、且つ、第1の実施の形態に比べて高速な印字を実現することができる。
【0107】
また、例えば、図17に示すように、記録ヘッド26が走査順方向(矢印XA方向)に走査移動し、走査方向に間隔を隔てて(例えば、5ドット間隔)複数の不連続な画素に対応するドットを記録する。そして、速度調整間隔を示す情報として、例えば、7ドットを示す情報が記憶部56に記憶されていたとする。
【0108】
この場合には、例えば、図17に示すように、走査速度決定部55Aは、以下の走査速度の変動を示す走査速度情報を作成する。例えば、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットの記録時に第2の速度V1となるように、記録ヘッド26(キャリッジ24)の速度を決定する。次に、走査順方向の下流側に向かって第2の速度V1から第1の速度V2に向かって予め定めた加速率で加速し、該第1の速度V2を維持する。そして、該最上流に位置する画素に対応するドットから速度調整間隔(例えば、7ドット)隔てた位置のドットの記録時に第2の速度V1となるように、予め定めた減速率で減速する。すなわち、走査速度決定部55Aは、例えば、図17の線図78によって示される走査速度情報を作成する。
【0109】
このため、図17に示すように、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットと、該ドットから速度調整間隔(例えば、7ドット)を隔てて走査方向下流側に記録されるドットと、が、第2の速度V1で走査移動する記録ヘッド26によって記録される。このため、これらのドットでは、主ドットM1に重ねて副ドットS1が記録され、主ドットM7に重ねて副ドットS7が記録される。一方、これらのドット間で記録されるドットは、第2の速度V1より高速で走査移動する記録ヘッド26によって記録される。このため、これらのドット間で記録されるドットは、主ドットと副ドットとが離れた位置に形成される(図17中、主ドットM2と副ドットS2、主ドットM3と副ドットS3参照)。しかし、本実施の形態の記録装置10Aでは、副滴による画質劣化を抑制しつつ、且つ、第1の実施の形態に比べて高速な印字を実現することができる。
【0110】
以上説明したように、第1の実施の形態で説明した図14−1の線図76に示すように、各ドット毎に第2の速度V1に減速して記録ヘッド26からインク滴を吐出してドットを記録する場合に比べて、本実施の形態の記録装置10Aでは、記録ヘッド26の第2の速度V1への減速回数が減少する。
【0111】
従って、本実施の形態の記録装置10Aでは、副滴による画質劣化を抑制しつつ、高速な画像形成を実現することができる。
【0112】
なお、記憶部56に記憶する速度調整間隔を示す情報が「0」である場合には、走査速度決定部55Aは、第1の実施の形態で説明した走査速度決定部55と同じ処理を行うようにすればよい。
【0113】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、境界特定部54が、YMCKの画像データの各々から抽出された、YMCKの画像領域の各々における境界画素を特定する場合を説明した。そして、第1の実施の形態では、走査速度決定部55は、特定されたYMCKの各画像領域の境界画素に対応するドットの記録時に、記録ヘッド26を第2の速度で走査移動するように走査速度情報を作成する場合を説明した。
【0114】
本実施の形態では、可視光線の光吸収率が予め定めた特定の値以上の色のインクで記録する画像の画像データについて、画像領域を抽出し、該画像領域の境界画素に対応するドットの記録時に、記録ヘッド26を第2の速度で走査移動する場合を説明する。
【0115】
図18は、本実施の形態の記録装置10Bを、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。図18に示すように、本実施の形態の記録装置10Bは、操作部49、インターフェース61、検知部48、制御部51B、キャリッジモータドライバ58、キャリッジ駆動部60、搬送モータドライバ64、搬送駆動部62、及び記録ヘッド26を備える。制御部51Bは、画像データ受付部51、画像データ読取部52、画像領域抽出部53B、境界特定部54B、走査速度決定部55B、記憶部56、及び印字制御部57を備える。なお、本実施の形態の記録装置10Bは、画像領域抽出部53、境界特定部54、及び走査速度決定部55を備えた制御部50に代えて、画像領域抽出部53B、境界特定部54B、及び走査速度決定部55Bを備えた制御部51Bを有する以外は、第1の実施の形態の記録装置10と同じ構成である。このため、異なる部分について詳細に説明する。
【0116】
なお、本実施の形態では、記憶部56は、第1の速度及び第2の速度に加えて、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度の調整対象色を示す情報をあらかじめ記憶する。この調整対象色としては、可視光線の光吸収率が予め定めた値以上の色があげられる。具体的には、記録ヘッド26で記録する複数色のインク色として、CMYKの4色のインクを用いるとする。この場合には、例えば、CMYに比べて可視光線の光吸収率の高い黒色を示す情報が、調整対象色を示す情報として記憶部56に記憶される。
【0117】
なお、この調整対象色を示す情報は、予め記憶部56に記憶してもよいし、ユーザによる操作部49に操作指示によって入力されて記憶部56に記憶してもよい。また、と調整対象色を示す情報は、黒色のみに限られない。
【0118】
画像領域抽出部53Bは、画像データ読取部52から受け付けたYMCKの画像データの内、記憶部56に記憶されている調整対象色を示す情報に対応する色の画像データを読み取る。例えば、画像領域抽出部53Bは、K(黒色)の画像データを読取り、該Kの画像データにおけるドットを記録する画素の内、記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査方向(矢印X方向)に連続する画素群、及び走査方向に不連続な画素、の各々を、画像領域として抽出する。
【0119】
境界特定部54Bは、画像領域抽出部53Bで抽出されたKの画像領域の各々における、走査方向(矢印X方向)の最下流に位置する画素を境界画素として特定する。なお、画像領域が、1つの画素(走査方向に不連続の画素)から構成される場合には、境界特定部54Bは、該不連続の画素の各々を、境界画素として特定する。なお、境界特定部54Bによる境界画素の特定方法は、第1の実施の形態の境界特定部54と同様である。
【0120】
走査速度決定部55Bは、K(黒色)の画像データに含まれる各画像領域の各画素に対応するドットの形成時の記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査速度を、第1の実施の形態における走査速度決定部55と同様にして決定する。
【0121】
このため、本実施の形態の記録装置10Bでは、可視光線の光吸収率が予め定めた光吸収率以上の色のドットの記録時に、記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査速度の調整を行い、境界画素のドットの記録時に第2の速度で走査移動を行う。
【0122】
このため、例えば、記録ヘッド26(キャリッジ24)が走査順方向(矢印XA方向)に走査されてインク滴が吐出され、且つ走査方向(矢印X方向)に不連続に1ドット(1画素)間隔を空けて不連続に複数の画素に対応するドットが記録されるとする。この場合、図19(A)に示すように、記録するドットの色が黒色である場合には、該不連続な複数の画素の各々に対応するドットの記録時の走査速度が第2の速度V1となるように、記録ヘッド26の走査速度が決定される。このため、図19(A)に示すように、黒色のドットについては、主ドットMに重なるように、各主ドットMに対応する副ドットSが記録される。
【0123】
一方、本実施の形態では、記録するドットが例えば黄色である場合には、記録ヘッド26の走査速度の調整は行われず、例えば、第1の速度V2となるように記録ヘッド26の走査速度が決定される。このため、図19(B)に示すように、黄色のドットについては、主ドットMとは異なる場所に該主ドットMに対応する副ドットSが記録される。
【0124】
また、走査方向の同じ画素列に異なる色のドットを記録する場合についても、可視光線の光吸収率が予め定めた光吸収率以上の色のドットの記録時に、記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査速度の調整を行い、境界画素のドットの記録時に第2の速度で走査移動を行う。
【0125】
このため、例えば、記録ヘッド26(キャリッジ24)が走査順方向(矢印XA方向)に走査されてインク滴が吐出され、且つ走査方向(矢印X方向)に不連続に1ドット(1画素)間隔を空けて異なる色のドットを記録する。この場合、記録するドットの色が黒色である場合には、ドットの記録時の走査速度が第2の速度V1となるように、記録ヘッド26の走査速度が決定される。また、記録するドットの色が黒色以外(例えば黄色)である場合には、ドットの記録時の走査速度は第1の速度V2となるように、記録ヘッド26の走査速度が決定される。このため、図20に示すように、黒色のドットについては、主ドットMBに重なるように、各主ドットMBに対応する副ドットSBが記録される。そして、黄色のドットについては、主ドットMYとは異なる位置に、各主ドットMYに対応する副ドットSYが記録される。
【0126】
このように、本実施の形態の記録装置10Bでは、可視光線の光吸収率が予め定めた値未満の色のドットの記録時には、記録ヘッド26(キャリッジ24)の走査速度の調整を行わず、光吸収率が予め定めた値以上の色のドットの記録時には、記録ヘッド26の走査速度を調整する。
【0127】
光吸収率が予め定めた値未満(例えば、黄色等)のドットは、黒色等の光吸収率の高い色のドットに比べて、画像品質への影響が少ない。従って、本実施の形態の記録装置10Bでは、印字速度の向上を図りつつ、且つ、インク滴吐出により発生する副滴に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0128】
(第4の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、記録ヘッド26の走査方向に連続した画素群(画像領域)の内、記録ヘッド26の走査方向の最下流に位置する画素を、境界画素として特定した。そして、境界画素に対応するドットの記録時に、第1の速度より低速の予め定めた第2の速度で記録ヘッド26を走査移動する場合を説明した。
【0129】
本実施の形態では、画像データに含まれる、走査方向に連続した画素群の内、予め定めた連続数以上連続する画素群を画像領域として抽出し、該画像領域における記録ヘッド26の走査方向の最下流に位置する画素を、境界画素として特定する場合を説明する。
【0130】
図21は、本実施の形態の記録装置10Cを、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。図21に示すように、本実施の形態の記録装置10Cは、操作部49、インターフェース61、検知部48、制御部51C、キャリッジモータドライバ58、キャリッジ駆動部60、搬送モータドライバ64、搬送駆動部62、及び記録ヘッド26を備える。制御部51Cは、画像データ受付部51、画像データ読取部52、画像領域抽出部53C、境界特定部54C、走査速度決定部55C、記憶部56、及び印字制御部57を備える。なお、本実施の形態の記録装置10Cは、画像領域抽出部53、境界特定部54、及び走査速度決定部55を備えた制御部50に代えて、画像領域抽出部53C、境界特定部54C、及び走査速度決定部55Cを備えた制御部51Cを有する以外は、第1の実施の形態の記録装置10と同じ構成である。このため、異なる部分のみ詳細に説明する。
【0131】
なお、本実施の形態では、記憶部56は、第1の速度及び第2の速度に加えて、走査方向に連続する画素群における速度調整対象となる連続数を示す情報をさらに記憶する。この速度調整対象となる連続数を示す情報とは、走査方向にドットを記録する複数連続する場合における、記録ヘッド26の走査速度を第2の速度に調整する対象となる画素の連続数を示す。
【0132】
この速度調整対象となる連続数を示す情報は、予め記憶部56に記憶してもよいし、ユーザによる操作部49に操作指示によって入力されて記憶部56に記憶してもよい。
【0133】
画像領域抽出部53Cは、画像データ読取部52から受け付けたYMCKの画像データにおけるドットを記録する画素の内、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)に不連続な画素の各々を、画像領域として抽出する。また、画像領域抽出部53Cでは、画像データ読取部52から受け付けたYMCKの画像データにおけるドットを記録する画素の内、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)に連続する画素群を抽出し、抽出した画素群の内、予め定められた所定数(上記速度調整対象となる連続数)以上画素の連続する画素群を、画像領域として抽出する。
【0134】
境界特定部54Cは、画像領域抽出部53Cで抽出されたYMCKの画像領域の各々における、走査方向(矢印X方向)の最下流に位置する画素を、第1の実施の形態における境界特定部54と同様にして、境界画素として特定する。ここで、画像領域抽出部53Cから境界特定部54Cへ出力された画像領域の内、走査方向に連続する画素群を示す画像領域は、予め定められた所定数(上記速度調整対象となる連続数)以上画素の連続する画素群である。このため、上記走査方向に連続する画素群の内、該所定数未満の画素の連続する画素群については、第2の速度への減速調整の対象外となる。
【0135】
そして、走査速度決定部55Cは、第1の実施の形態における走査速度決定部55と同様にして、記録ヘッド26の、走査方向(矢印X方向)における走査移動可能範囲A−Bにおける、各位置に対応する記録ヘッド26の走査速度を決定し、走査速度情報を生成する。
【0136】
図22には、走査速度決定部55Cが決定した走査速度情報に基づいて、キャリッジ24(記録ヘッド26)が走査移動したときに形成されるドットの一例を示した。例えば、記憶部56に、速度調整対象となる連続数を示す情報として、4ドットを示す情報が記憶されているとする。
【0137】
この場合には、走査速度決定部55Cは、走査方向に連続する画素数が4画素未満である画像領域については、記録ヘッド26の走査速度を第1の速度に設定する。そして、走査速度決定部55Cは、走査方向に連続する画素数が4画素以上である画像領域については、記録ヘッド26の走査方向(例えば、走査順方向(矢印XA方向))の最下流の画素に対応するドットの記録時における走査速度を第2の速度に設定する。
【0138】
このため、例えば、図22(A)に示すように、走査方向に3画素連続する画像領域については、該画像領域の各画素に対応するドットは、主ドット(M1〜M3)と、副ドット(S1〜S3)とが離れた位置に記録される。一方、図22(B)に示すように、走査方向に4画素連続する画像領域については、該画像領域における記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最下流の画素に対応するドットの記録時には、第2の速度で記録ヘッド26が走査移動する。このため、図22(B)に示すように、走査方向に4画素連続する画像領域については、該画像領域における記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最下流の画素に対応する主ドットM4については、該主ドットM4に対応する副ドットS4が該主ドットM4に重ねて記録される。
【0139】
従って、本実施の形態の記録装置10Cは、副滴による画質劣化を抑制しつつ、高速な画像形成を実現することができる。
【0140】
(第5の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査方向に不連続の画素の各々に対応するドットの記録時には、記録ヘッド26を第2の速度に減速し、各ドット間では第2の速度から第1の速度に向かって加速及び第1の速度から第2の速度に向かって減速を行う場合を説明した。
【0141】
本実施の形態では、キャリッジ24の走査方向に不連続の画素について、該不連続の画素間の間隔が予め定めた間隔以下であるときには、該不連続の画素群の内、キャリッジ24の走査方向の最上流の画素に対応するドットの記録時に第2の速度で記録ヘッド26を走査移動し、該画素よりキャリッジ24の走査方向の下流側の画素に対応するドットの記録時には、第1の速度で記録ヘッド26を走査移動する。
【0142】
そして、キャリッジ24の走査方向に不連続の画素について、該不連続の画素間の間隔が予め定めた間隔を超える場合には、該不連続の画素の各々に対応するドットの記録時に第2の速度で記録ヘッド26を走査移動する。
【0143】
図23は、本実施の形態の記録装置10Dを、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロック図である。図23に示すように、本実施の形態の記録装置10Dは、操作部49、インターフェース61、検知部48、制御部51D、キャリッジモータドライバ58、キャリッジ駆動部60、搬送モータドライバ64、搬送駆動部62、及び記録ヘッド26を備える。制御部51Dは、画像データ受付部51、画像データ読取部52、画像領域抽出部53、境界特定部54D、走査速度決定部55D、記憶部56、及び印字制御部57を備える。なお、本実施の形態の記録装置10Dは、境界特定部54及び走査速度決定部55を備えた制御部50に代えて、境界特定部54D及び走査速度決定部55Dを備えた制御部51Dを有する以外は、第1の実施の形態の記録装置10と同じ構成である。このため、異なる部分のみ詳細に説明する。
【0144】
なお、本実施の形態では、記憶部56は、第1の速度及び第2の速度に加えて、走査方向に不連続な画素における速度調整対象の画素間隔を示す情報をさらに記憶する。この速度調整対象の画素間隔を示す情報とは、画像データに含まれる、走査方向に不連続な(たとえば、nドット間隔等(nは1以上の整数))画素が該走査方向に間隔を隔てて存在する場合における、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度を第2の速度にする対象の画素の間隔を示す。この速度調整対象の画素間隔を示す情報としては、例えば、3ドット間隔や5ドット間隔を示す情報等があげられる。
【0145】
この速度調整対象の画素間隔を示す情報は、予め記憶部56に記憶してもよいし、ユーザによる操作部49に操作指示によって入力されて記憶部56に記憶してもよい。
【0146】
境界特定部54Dは、画像領域抽出部53で抽出されたYMCKの画像領域の各々における、記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)の最下流に位置する画素を境界画素として特定する。なお、画像領域が、1つの画素(走査方向に不連続の画素)から構成される場合には、境界特定部54Dは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて走査方向に配列されているか否かを判別する。そして、境界特定部54Dは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて配列されていない場合には、第1の実施の形態における境界特定部54と同様の処理を行う。
【0147】
一方、境界特定部54Dは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて配列されている場合には、該走査方向に不連続な複数の画素の間隔が、速度調整対象の画素間隔を示す情報以上であるときに、該各画素の各々を境界画素として特定する。また、境界特定部54Dは、この走査方向に不連続の画素が間隔を隔てて配列されている場合には、該走査方向に不連続な複数の画素の間隔が、速度調整対象の画素間隔を示す情報未満であるときには、該不連続で且つ走査方向に配列された複数の画素の内、記録ヘッド26の走査方向の最上流に位置する画素を、境界画素として特定する。そして、該複数の画素の内、境界画素として特定した画素より記録ヘッド26の走査方向の下流側の画素については、境界画素としての特定は行わない。
【0148】
そして、走査速度決定部55Dは、記憶部56に記憶されている第1の速度及び第2の速度と、境界特定部54Dから受け付けた画像データと、境界画素を示す情報と、に基づいて、第1の実施の形態の走査速度決定部55と同様に、走査速度情報を生成する。すなわち、走査速度決定部55Dは、境界画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度を第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、走査方向(矢印X方向)における記録ヘッド26の走査移動可能範囲A−Bにおける各位置に対応する、記録ヘッド26の走査速度を決定し、走査速度情報を生成する。
【0149】
ここで、境界特定部54Dから受け付ける境界画素を示す情報では、上記画像領域としての走査方向に不連続の画素が、間隔を隔てて配列されている場合に、該走査方向に不連続な複数の画素の間隔が速度調整対象の画素間隔を示す情報未満であるときには、該不連続で且つ走査方向に配列された複数の画素の内、記録ヘッド26の走査方向の最上流に位置する画素を、境界画素として特定したものである。また、境界特定部54Dから受け付ける境界画素を示す情報では、上記画像領域としての走査方向に不連続の画素が、間隔を隔てて配列されている場合に、該走査方向に不連続な複数の画素の間隔が速度調整対象の画素間隔を示す情報以上であるときには、該各画素の各々を境界画素として特定したものである。
【0150】
このため、走査速度決定部55Dが生成した走査速度情報は、走査方向に不連続な複数の画素が配列される場合には、走査方向に不連続な複数の画素の間隔が速度調整対象の画素間隔を示す情報以上であるときに、該各画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度となるように、生成される。また、走査速度決定部55Dが生成した走査速度情報は、走査方向に不連続な複数の画素が配列される場合には、走査方向に不連続な複数の画素の間隔が速度調整対象の画素間隔を示す情報未満であるときに、これらの複数の画素の内の記録ヘッド26の走査方向の最上流に位置する画素に対応するドットの記録時の記録ヘッド26の走査速度が第2の速度となるように、生成される。
【0151】
図24及び図25には、査速度決定部55Dが決定する走査速度情報の一例を示した。図24及び図25は、記録ヘッド26を走査順方向(矢印XA方向)に走査移動させながらインク滴を吐出する場合の、キャリッジ24すなわち記録ヘッド26の走査方向(矢印X方向)における位置座標と、キャリッジ24(記録ヘッド26)の走査速度と、の関係の一例を示した。
【0152】
例えば、図24に示すように、記録ヘッド26が走査順方向(矢印XA方向)に走査移動し、走査方向に1ドット間隔を隔てて複数の不連続な画素に対応するドットを記録する。そして、速度調整対象の画素間隔を示す情報として、例えば、5ドットを示す情報が記憶部56に記憶されていたとする。
【0153】
この場合には、例えば、図24に示すように、走査速度決定部55Dは、以下の走査速度の変動を示す走査速度情報を作成する。例えば、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットの記録時に第2の速度V1となるように、記録ヘッド26(キャリッジ24)の速度を決定する。次に、走査順方向の下流側に向かって第2の速度V1から第1の速度V2に向かって予め定めた加速率で加速し、該第1の速度V2を維持する。すなわち、走査速度決定部55Dは、例えば、図24の線図79によって示される走査速度情報を作成する。
【0154】
このため、本実施の形態では、図24に示すように、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットについては、主ドットM1に、該主ドットM1に対応する副ドットS1が重ねて記録される。そして、該ドットM1より走査順方向(矢印XA方向)下流側に3ドット以下の間隔を隔てて記録される主ドットM2〜M4については、第1の速度V2で走査移動する記録ヘッド26によって記録される。このため、これらの主ドットM2〜M4については、対応する副ドットS2〜S4が主ドットM2〜M4とは重ならない位置に記録される。
【0155】
また、図25に示すように、記録ヘッド26が走査順方向(矢印XA方向)に走査移動し、走査方向に5ドット間隔を隔てて複数の不連続な画素に対応するドットを記録する。そして、速度調整対象の画素間隔を示す情報として、例えば、5ドットを示す情報が記憶部56に記憶されていたとする。
【0156】
この場合には、例えば、図25に示すように、走査速度決定部55Dは、以下の走査速度の変動を示す走査速度情報を作成する。例えば、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの各々の記録時に第2の速度V1となるように、記録ヘッド26(キャリッジ24)の速度を決定する。そして、これらのドット間では、走査順方向の下流側に向かって第2の速度V1から第1の速度V2に向かって予め定めた加速率で加速した後に、該第1の速度V2から該第2の速度V1に向かって予め定めた減速率で減速する。すなわち、走査速度決定部55Dは、例えば、図25の線図80によって示される走査速度情報を作成する。
【0157】
このため、本実施の形態では、図25に示すように、走査方向に不連続な複数の画素に対応するドットの内、記録ヘッド26の走査順方向(矢印XA方向)の最上流に位置する画素に対応するドットについては、主ドットM1に、該主ドットM1に対応する副ドットS1が重ねて記録される。そして、該主ドットM1より走査順方向(矢印XA方向)下流側に5ドット以上の間隔を隔てて記録される主ドットM2についても、第2の速度V1で走査移動する記録ヘッド26によってドットが記録される。このため、この主ドットM2についても、対応する副ドットS2が主ドットM2に重なる位置に記録される。
【0158】
従って、本実施の形態の記録装置10Dでは、副滴による画質劣化を抑制しつつ、高速な画像形成を実現することができる。
【0159】
なお、上述の各実施形態において、制御部50、50A、50B、50C、50Dの各々で実行される各種プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また当該各種プログラムを、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(DigitAl VersAtile Disk)等のコンピュータで読取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0160】
10、10A、10B、10C、10D 記録装置
26 記録ヘッド
53、53B、53C 画像領域抽出部
54、54B、54C、54D 境界特定部
55、55A、55B、55C、55D 走査速度決定部
57 印字制御部
60 キャリッジ駆動部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0161】
【特許文献1】特開2006−27181号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴をノズルの各々から吐出することによって、各画素に対応するドットを記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に第1の速度で走査方向に走査移動させる駆動手段と、
画像データにおける前記ドットを記録する画素の内、前記走査方向に連続する画素群、及び前記走査方向に不連続の画素、の各々を、画像領域として抽出する抽出手段と、
前記画像領域の各々における前記走査方向の最下流に位置する画素を境界画素として特定する特定手段と、
前記境界画素に対応するドットの記録時の前記記録ヘッドの走査速度を前記第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、前記記録ヘッドの前記走査方向の各位置における走査速度を決定する決定手段と、
決定した前記走査速度に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の速度は、前記記録ヘッドのノズルから吐出された液滴の内の第1のインク量の主滴によって記録される主ドットと、該主滴から分離した副滴によって記録される副ドットと、が重ねて前記ドットとして記録される速度である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の速度は、前記記録ヘッドの走査移動を停止する速度である、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記境界画素に対応するドットの記録時の前記記録ヘッドの走査速度として、ドットを記録するときに吐出するインク量の多い境界画素ほど前記第2の速度に向かって高速の走査速度を決定する、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像データは、前記走査方向の端部にドットを記録する画素を含む、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、可視光線の光吸収率が予め定められた値以上の色の前記画像データにおけるドットを記録する画素の内、前記走査方向に連続する画素群、及び前記走査方向に不連続の画素、の各々を、画像領域として抽出する、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記抽出手段は、前記走査方向に連続する画素群が、予め定められた所定数以上画素の連続する画素群である場合に、該画素群を前記画像領域として抽出する、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記特定手段は、前記画像領域としての前記走査方向に不連続な画素が、該走査方向に間隔を隔てて複数存在する場合に、該走査方向に不連続な複数の画素の内、該走査方向に予め定められた間隔を隔てて位置する画素を境界画素として特定する、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記境界画素としての前記走査方向に不連続な画素の内、前記走査方向に予め定められた間隔以下の間隔を隔てて前記走査方向に配列された画素について、該画素に対応するドットの記録時の前記記録ヘッドの走査速度、及び該ドット間の前記記録ヘッドの走査速度を、前記第2の速度に決定し、前記走査速度情報を生成する、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
インク滴をノズルの各々から吐出することによって、各画素に対応するドットを記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に第1の速度で走査方向に走査移動させる駆動手段と、を備えた画像形成装置で実行される画像形成方法であって、
画像データにおける前記ドットを記録する画素の内、前記走査方向に連続する画素群、及び前記走査方向に不連続の画素、の各々を、画像領域として抽出するステップと、
前記画像領域の各々における前記走査方向の最下流に位置する画素を境界画素として特定するステップと、
前記境界画素に対応するドットの記録時の前記記録ヘッドの走査速度を前記第1の速度より低速の第2の速度に決定すると共に、前記記録ヘッドの前記走査方向の各位置における走査速度を決定するステップと、
決定した前記走査速度に応じて前記駆動手段を制御するステップと、
を備えた画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14−1】
image rotate

【図14−2】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate